東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■4条 責任集中の原則 その11 東電は国を訴えることができるのか?

■4条 責任集中の原則 その11 東電は国を訴えることができるのか?

 被害者が国を訴えることができるのかについては,こちら(http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-38.html)で論じた。

 東電株主が国を訴えることができるのかについては,こちら(http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-63.html)で論じた。
 

 では,東電が,国を訴えることはできないか。
 16条による「援助」枠組みが決まりそうだが、国の「援助」が実質的に貸し付けと変わらず、損害全額の賠償を東電が最後まで負担すると考えた場合、東電側としては,我々の落ち度より,むしろ国の今までのやり方だとか,震災後の国の対応に落ち度があってこうなったのだから国も負担せよ、と考えているかもしれないので,一応検討してみる。

 まず,東電は,落ち度があるか否かにかかわらず,原賠法3条で,「原子力損害」については,被害者に対して損害賠償義務を負うことになる。
 また,「原子力損害」の意味の捉え方にもよるが,これまでの下級審判例のとおり,無限定説に立つと,今回の原発事故と相当因果関係がある第三者の被った損害については,原則として全て「原子力損害」に該当するはずのなで,ここでは東電が被った損害を「原子力損害」以外の損害と考えてみる(原賠法2条2項但書「ただし、次条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者の受けた損害を除く。」)。
 ここで,東電が被った損害とは,原発事故で直接東電自身が被った損害のことで,原発施設の損壊による損害とか,今後10年ほど稼動して得られたであろう利益とか,通常の廃炉より余分に費用がかかってしまった分だとか,そういったものを想定している。

 この東電から国への求償請求ないし損害賠償請求が認められるかという問題は、国に原賠法4条,5条を適用して良いかという問題に関係する。

 これについては,以前にも述べた。国に過失があった場合、原賠法4条(責任集中原則)が適用あるのか否かが問題となり、いずれの立場に立つかによって、その余の法的関係が異なってくる。少なくとも以下の二つの考え方がありうる。

・4条適用肯定説
 原賠法4条の文言からして、「原子力事業者以外の者」には,国も含まれるので、国に過失があっても、国の責任は、対第三者との関係では責任は問われないとする考え方。ただし、5条で、国に故意があった場合のみ、東電から求償請求される。(原賠法23条では,国に対する適用除外として,「第三章、第十六条及び次章の規定は、国に適用しない。」とあるが,同条では4条,5条が適用除外されていない。)

・4条適用否定説
 原賠法4条は,被害者保護の観点から,被害者が容易に賠償責任を追及する相手方を知うるようにし,かつ,原子力事業者に機器や原料等を提供している関連事業者に,莫大になりかねない原発事故等の賠償責任を予め免れさせて,原子力事業をしやすくして,もって「原子力事業の健全な発達」を達成しようとする趣旨のものであるから,国家の側に過失があるような場合にまで,この免責を受けさせることは,本来法が予定していないものであり,4条による国の免責は無いものとする考え。5条は、4条の責任の集中を前提とするから、この立場では、5条の適用もないはずである。

 これを前提に場合分けして考えると,結論としては,以下のようになるのではないか。


〔国に落ち度(故意又は過失)あると仮定して〕
1 東電に過失なし
(1)「原子力損害」について
 A 4条適用肯定説
 →国は免責。国に故意あるときのみ5条で東電は国に求償請求できる。
 B 4条適用否定説
 →国は4条では免責されない。東電は国に求償請求できる。
(2)「原子力損害」以外(東電が被った損害)について
 →東電は国に損害賠償請求できる。

2 東電に過失あり
(1)「原子力損害」について
 A 4条適用肯定説
 →国は4条で免責(ただし,国に故意があるときは5条で東電は国に過失の割合に応じて一部求償請求できる。)
 B 4条適用否定説
 →国は4条では免責されない。東電は国に対して,過失の割合に応じて一部求償請求できる。
(2)「原子力損害」以外(東電が被った損害)について
 →東電は国に過失の割合に応じて一部損害賠償請求できる。



※なお,国の落ち度が異常に大きくて,そもそも原発事故との相当因果関係すら否定(因果関係が切断)されるような場合は,東電は,第三者との関係においても「相当因果関係なし」として,その損害について賠償責任を負わなくてよいので,国に対する求償等の問題は生じない。

※また,上の検討は,原子力事業所として東電が,被った損害,負担した賠償義務に関する損害賠償,求償の問題であり,国が今回の事故で直接被った損害は別である。今回の原発事故で,国自身がその資産等について膨大な損害を被った可能性があり,それについては原賠法3条で,「原子力損害」として,国が東電に損害賠償請求できるのは当然である。この場合,国に過失ある限り,過失相殺規定(民法722条2項)で,国の東電に対する請求は減額されることになろう。さらに,東電に過失なく,国にのみ過失ある場合は,ややこしいことになるが,上の1(1)Bなら結果的に国は東電に何の請求もできず,1(1)Aなら国の過失に応じて減額される?

※東電が直接被った損害と,国が直接被った損害については,おそらく双方とも相殺主張はできない(民法509条)。東電の求償権と,国が被った損害の賠償請求権については,東電からの相殺主張はできないが,国からの相殺主張は不法行為に基づく損害賠償請求権(原賠法に基づく損害賠償請求権)を自働債権としているだけなので可能ということになろうか?。



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2011-05-12 : ・国の責任 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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