東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・従業員,作業員の被爆,損害 その1 条文,改正過程

・従業員,作業員の被爆,損害 その1 条文,改正過程

 昭和36年の立法当初は,以下のとおり,原子力事業者の従業員の受けた損害は,「原子力損害」からは除外され,原賠法の適用の余地がなかった。〔反対解釈として,原子力事業者と直接雇用関係のない下請作業員については,原賠法適用の余地があったはずである。〕

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・昭和36年成立時点の原賠法
第2条2項 この法律において「原子力損害」とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物(原子核分裂生成物を含む。)の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう。ただし、次条の規定により損害を賠償する責に任ずべき原子力事業者の受けた損害及び当該原子力事業者の従業員の業務上受けた損害を除く
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 その後,原子力委員会原子力事業従業員災害補償専門部会報告(昭和40年5月31日)において,「賠償法を改正して、従業員損害を賠償の対象に含めることが適当であると考える」との答申がなされた。

 しかし,原子力損害賠償制度検討専門部会(昭和45年11月30日)では,以下のとおり,当面必要ないとして,改正には否定的態度となった。

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原子力損害賠償制度検討専門部会答申(昭和45年11月30日)
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-31.html
Ⅳ 従業員災害
 現行賠償法では、原子力事業者の従業員が業務上被った原子力損害については、その対象から除外しているが、これは従業員は雇用契約に基づき原子力事業に従事するもので、このような関係にない一般第三者の被った原子力損害に対する保護をまず優先させるべきものと考えられたほか、従業員については、労働者災害補償保険制度があるので、それに委ねるべきものと考えられたことによる。原子力事業者の従業員災害も賠償法により填補することが妥当であるか否かについては、昭和40年原子力事業従業員災害補償専門部会より労働者災害補償保険制度をさらに充実する必要があるとともに、原子力損害の賠償に関する諸条約との関係において、労働者災害補償保険制度で填補されない損害に限り一般第三者の保護を阻害することのないような形で、賠償法で填補することが望ましいとの答申が出されている。当専門部会としても、この点について再度十分に検討したところ、①労働者災害補償保険制度もILO条約並みの水準に相当充実されてきているとともに、すでに相当数の原子力事業においては、従業員災害について労働協約等により労働者災害補償保険制度の上積みの補償が行なわれていること ②同一の事業体において原子力部門に従事する従業員に限り特別の措置を講ずることは、他部門の従業員との間においてバランスを失することになること ③従業員災害を責任保険等の損害賠償措置で填補する場合には、それだけ一般第三者に向けられる分が少なくなること ④従業員災害を填補するための新しい損害保険を損害保険業界において創設することとなり、検討を進めることとなったこと等の理由により、当面現行賠償法を改正する必要はないものと考える。
 しかし、この問題については、今後とも原子力事業者の従業員の一層の保護のため、慎重に検討を続けることが必要である。また、別に労働者災害補償保険制度については、その給付水準、給付範囲等の改善につき検討が加えられることが望ましい。
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 その後,再び,原子力事業従業員災害補償専門部会報告(昭和50年7月21日)において,「賠償法を改正し従業員損害も対象に含めることを基本的方針とすべきであると考える」とされた。
 
 また,原子力損害賠償制度問題懇談会報告書(昭和53年12月26日)でも,「形式上は全損害について原賠法の対象となり得るものとしつつ、労災保険等の給付を受けるべきときは、原子力事業者はこれらの給付に相当する価額については賠償の履行を猶予することができるものとするのが適当」とされた。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V23/N12/197815V23N12.html
 これらを受けて,昭和54年に法改正となり,昭和55年1月1日から,現行法と同様2条2項は以下のとおりとなった。

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原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律  昭和54・6・12・法律 44号 原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)の一部を次のように改正する。
第2条第2項ただし書中
「及び当該原子力事業者の従業員の業務上受けた損害」を削る。
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現行法
第2条2項 この法律において「原子力損害」とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう。ただし、次条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者の受けた損害を除く。
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2011-05-11 : ・従業員,作業員の被爆,損害 : コメント : 1 : トラックバック : 0
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原賠法改正に伴う労災保険法関係通達
労働者災害補償保険法による調整通達は次のとおり

原子力損害の賠償に関する法律の一部改正に伴う労災保険の取り扱いについて
(昭和54年12月27日 基発第654号)

原子力損害の賠償については、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三六年法律第一四七号)(以下「原賠法」という。)に規定するところであるが、このたび原子力損害の賠償に関する法律の一部を改正する法律(昭和五四年法律第四四号)(以下「原賠法改正」という。)により原賠法の一部が別紙のとおり改正され、昭和五五年一月一日から施行されることとなった。この改正により、従来、原子力損害の範囲から除かれていた原子力事業者の従業員の業務上受けた損害が、新たに原子力損害の範囲に加えられることとなったので、下記に留意のうえ事務処理に遺憾のないようにされたい。

一 原子力事業者の従業員が業務上受けた損害を原子力損害に含めたこと
原子力損害の賠償については原賠法の規定するところによるものとされているが、原子力事業者の従業員が業務上受けた損害(以下「従業員損害」という。)については従来原子力損害に含まれておらず民法の規定するところによっていたが今回の改正により従業員損害についても原子力損害の範囲に含まれることとなった(原賠法第二条第二項改正関係)。
なお、原賠法にいう原子力損害とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質若しくは核燃料物質により汚染された物の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発性を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう(同法第二条第二項参照)。
二 従業員損害の原賠法による賠償と労災保険法の規定による給付との調整について
この改正により、従業員損害については、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)及び原賠法の双方より補填が行われることとなったことに伴い、その間の調整が必要とされることとなった。このため原子力事業者の従業員が原子力損害を受け、当該従業員又はその遺族がその損害のてん補に相当する労災保険法の規定による給付(以下「労災保険給付」という。)を受けるべきときは、その原子力損害の賠償については、暫定措置として、以下の方法による調整が行われることとなっている(原賠法改正法附則第四条第一項)。
(1) 原子力事業者は、原子力事業者の従業員又はその遺族の労災保険給付を受ける権利が存在する間は、原子力損害賠償額のうち将来の労災保険給付相当額の部分については履行が猶予され、全損害から当該相当額を控除した額を賠償すれば足り、保険給付を受ける権利が受給権者の死亡、再婚等により消滅した時点において履行が猶予されていた部分について履行期が到来することとなる。
(2) (1)において、現実に労災保険給付が支給される都度、履行が猶予されている額がその分だけ減少し、原子力事業者はその分について最終的に賠償の責めを免れることとなる。
以上のように、従業員損害を原子力損害に含めるに当たっては、原則として労災保険給付でてん補されない損害のみを原賠法の対象とするということが両者間の調整の基本的な考え方であって、これによって被害者が労災保険法と原賠法により二重にてん補されること及び原子力事業者の賠償と労災保険の保険料の二重負担という不合理を避けることができるものである。したがって、原賠法の側で両者間の調整がなされることとされているので、労働者災害補償保険(以下「労災保険」という。)の側では調整のため何らの取扱いを行う必要はないので念のため申し添える。
三 労災保険からの第三者に対する求償について
(1) 労災保険では、給付の対象となる損害が第三者の行為によって生じた場合には、給付をした者(政府)は、その給付した価額の限度で被害者が第三者に対して有する損害賠償請求権を代位行使しうることとなっている(労災保険法第一二条の四)。
これに対して原賠法では第三者の行為により原子力損害が生じた場合でも原子力事業者に賠償責任が集中されており、賠償を行った原子力事業者は原則として第三者に対する求償権を有しないが、公序良俗の観点から故意ある第三者に対してのみ求償権を有することとなっている(原賠法第五条第一項)。
したがって、第三者の行為によって生じた損害については、労災保険が給付を行っても、被害者は、原子力損害賠償制度における責任集中の原則により加害第三者に対する請求権を有しないので、労災保険は、被害者に対して給付した分について被害者の加害第三者に対する請求権を代位取得して第三者に求償することはできない。
しかしながら、原子力損害が第三者の故意によって生じた場合までも、当該第三者に求償せず放置しておくことは、原子力事業者が賠償を行った場合に故意ある第三者に求償できることとの均衡上問題があるので、第三者に故意のある場合について労災保険から求償することができることとされた(原賠法改正法附則第四条第二項)。
(2) なお、この求償は、改正法附則第四条第二項に基づいて行われるものであり、労災保険法第一二条の四に基づいて行われる求償権の行使とは損害賠償請求権の代位取得という構成をとらない点において異なるものであるが、実際の取扱いについては、労災保険法第一二条の四に基づく求償事務の例(昭和四一年六月一七日付け基発第六一〇号)に準じて加害第三者に対して求償事務を行なうこととする。ただし、本事務を取扱うこととなる可能性は、現在のところ余り多いとは考えられないこと、原子力損害には特殊性・専門性があること、原子力事業者の求償との均衡を考慮する必要があること等にかんがみ、万一本事務を取り扱う必要が生じた場合には本省に協議することとされたい。
(別紙 略)
2011-05-12 03:48 : igovall URL : 編集
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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