東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- : スポンサー広告 :
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その3 風評被害1

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その3 風評被害1

 風評被害は,とくに法律的概念として規定されているわけではないが,原発事故による場合、通常は、放射能汚染や放射性物質の毒性が全く及んでいない農作物や魚介類等の商品について,近隣であるなどなんらかの理由で売れなくなり,その結果被った損害であろう。「原子力損害」の意味を狭く解する説では、核燃料物質の「作用」によって発生したものとは言えず原賠法の「原子力損害」には当たらない、あるいは、「原子力損害」の意味を広く解する説でも、その風評被害の態様程度によっては、原子炉の運転等と相当因果関係がなく「原子力損害」にあたらないと解釈される可能性がある。判例の考え方についてはこちら。(原子力損害関連判例
 もっとも,一部放射能汚染があるが,その程度が,健康に害を及ぼさない程度で食しても問題ない場合にも,やはり売れなくなることが考えられ,この場合に「原子力損害」といえるのか問題となろう。
 なお,現に放射能汚染されて商品が売れなくなった場合には,これを「原子力損害」と見ることに問題はないはずである。

この点,原子力委員会では,平成10年に以下ような議論がなされていた。
---------------------------------------
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo05/siryo1.htm
(3)原子力損害(予防措置費用)について
事務局より資料4-2に基づき説明があった後、主に次の質疑応答があった。
(遠藤)いわゆる風評損害についての解釈・裁判例はどうか。また、条約での解釈を問う。
(事務局)風評損害は原子力損害に該当しないと考えている。原電敦賀で放射能汚染の風評と魚の売上げの減少との間に相当因果関係なしとの平成元年名古屋高裁判決がある。
(能見)まず、風評をもたらす原因を作出したことに責任(過失)があって、かつ、それと風評から生ずる損害が相当因果関係のある限り、民法不法行為法の賠償の対象にはなる。ただ、原子力損害ではないので、原賠法の問題ではないと理解している。条約上も同様であると考える。
(遠藤)核物質輸送船が沈没して実害又は風評損害が生じるケースを想定して質問した。
(鳥井)もんじゅのように放射線は出ていないが、ナトリウムの影響による場合はどうか。
(事務局)放射線の特性による損害であることが必要である。
(鳥井)これからの原子力のあるべき姿からしてそれでいいのか。ナトリウム化合物による腐食であっても原子炉事故による被害に変わりはない。
(住田)法律の守備範囲の問題と関わってくると考える。原賠法が無限責任や国の援助を定めているのは、原子力事故の甚大性・晩発性に配慮したものであり、過剰避難・誤想避難は原子力の心理的影響に基づくもので、これは他の法律が受け持っていると整理すべきである。原賠法は放射線等による損害すべてにつき補償するとの姿勢は鮮明にしておきたい。
---------------------------------------

上で言及されている平成元年名古屋高裁判決とは,名古屋高等裁判所金沢支部平成元年5月17日判決(昭62(ネ)第11号損害賠償請求控訴事件,判例タイムズ705号108頁)である。これは敦賀原発風評被害訴訟であり,昭和56年1月敦賀原発において,日本原子力発電が,放射性物質を漏洩させた事故に関するものである。事故事実の公表後,風評被害が広がり,水産市場関係者が,日本原子力発電株式会社を訴えたものである。
判旨は以下のとおりである。
「前認定のとおり,本件事故の発生とその公表及び報道を契機として,敦賀産の魚介類の価格が暴落し,取引量の低迷する現象が生じたものであるところ,敦賀湾内の浦底湾に放射能漏れが生じた場合,漏出量が数値的には安全でその旨公的発表がなされても,消費者が危険性を懸念し,敦賀湾産の魚介類を敬遠したくなる心理は,一般に是認でき,したがって,それによる敦賀湾周辺の魚介類の売上減少による関係業者の損害は,一定限度で事故と相当因果関係ある損害というべきである。」「前認定のとおり,事故による影響かどうか必ずしも明らかではないものの,一部売上減少が生じたことが窺われるが,敦賀における消費者が,敦賀湾から遠く離れ,放射能汚染が全く考えられない金沢産の魚まで敬遠し,更にはもっと遠隔の物も食べたくないということになると,かかる心理状態は,一般には是認できるものではなく,事故を契機とする消費者の心情的な判断の結果であり,事故の直接の結果とは認めがたい。金沢産の魚も心情的には不安であるとの理由で賠償を命ずるものとすれば,金沢における消費の低下も是認しなければならなくなり,損害範囲はいたずらに拡大することとなる。したがって,右控訴人らの売上高が本件事故後減少したとしても,消費者の個別的心理状態が介在した結果であり,しかも,安全であっても食べないといった,極めて主観的な心理状態であって,同一条件のもとで,常に同様の状態になるとは言い難く,また一般的にも予見可能性があったともいえない。すると,本件浦底湾における人体に影響のない微量の放射能漏れと敦賀の消費者の金沢産魚介類の買い控えとの間には,相当因果関係はないというべきである。」

関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-04-06 : ・風評被害 法律的な理屈 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

Pagetop
« next  ホーム  prev »

プロフィール

text2

Author:text2
原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

全記事のリスト表示

全ての記事を表示する

検索フォーム

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

QRコード

QR

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アクセスカウンター

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
541位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
246位
アクセスランキングを見る>>
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。