東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■18条 原子力損害賠償紛争審査会 その4 原子力損害の範囲の判定等に関する第一次指針

■18条 原子力損害賠償紛争審査会 その4 原子力損害の範囲の判定等に関する第一次指針

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/houkoku/1305640.htm

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「東京電力(株)福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第一次指針」
平成23年4月28日
原子力損害賠償紛争審査会

第1 はじめに
1 平成23年3月11日に発生した東京電力株式会社(以下「東電」という。)福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所における事故(以下「本件事故」という。)は、広範囲にわたる放射性物質の放出をもたらした上、更に深刻な事態を惹起しかねない危険を生じさせた。このため、政府による避難、屋内退避の指示などにより、多数の住民らが、避難その他の行動を余儀なくされ、あるいは、生産及び営業を含めた事業活動の断念を余儀なくされるなど、福島第一原子力発電所から半径約30㎞圏内を中心に福島県全体のみならず周辺の各県も含めた広範囲に影響を及ぼす事態に至った。これら周辺住民らの被害は、その規模、範囲等において未曾有のものであり、本件事故発生から1ヶ月を経過してもなお依然として事故が終息しない状況が続いている。また、数万人以上に及ぶ避難者、営業被害等を受けた多数の事業者を始めとする被害者らの生活状況等は、今後の被害の全容の確認を待つことができないほど切迫しており、このような被害者を迅速、公平かつ適正に救済する必要がある。
 このため、原子力損害による賠償を定めた原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」という。)に基づき、「原子力損害の範囲の判定の指針その他の当該紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針」(同法18条2項2号、以下「指針」という。)を策定するに当たっては、上記の事情にかんがみ、原子力損害に該当する蓋然性の高いものから、順次指針として提示することとし、可能な限り早期の被害者救済を図ることとした。
2 そこで、まず、このたびの指針(以下「第一次指針」という。)においては、政府による指示に基づく行動等によって生じた一定の範囲の損害についてのみ、基本的な考え方を明らかにする。
 具体的には、①「政府による避難等の指示に係る損害」として、「避難費用」、「営業損害」、「就労不能等に伴う損害」、「財産価値の喪失又は減少等」、「検査費用(人)」、「検査費用(物)」、「生命・身体的損害」、「精神的損害」を、②「政府による航行危険区域設定に係る損害」として、「営業損害」、「就労不能等に伴う損害」を、③「政府等による出荷制限指示等に係る損害」として、「営業損害」、「就労不能等に伴う損害」を対象とした。 なお、政府の指示等によるもの以外が損害賠償の対象から除外されるものではなく、第一次指針で対象とされなかった損害項目やその範囲、例えば、第一次指針の対象外となった者の避難費用や営業損害(いわゆる風評被害も含む。)、本件事故の復旧作業等に従事した原子力発電所作業員、自衛官、消防隊員、警察官又はその他の者が被った放射線被曝等に係る被害、本件事故により代替性のない部品等の仕入れが不能となった取引先のいわゆる間接損害、地方公共団体独自の財産的被害、政府指示等が解除された後に発生する損害などのうち、合理的な範囲内で原子力損害に該当し得るものについては、今後検討する。
 他方で、被害者が被った損害に関しては、原賠法に基づく賠償以外にも、被災者救済のための複数の措置等が既に実施され、あるいは、今後実施される予定のもの等が想定されるが、これらの措置等との関係(損益相殺の可否等)についても、今後検討する。
3 第一次指針で示した損害の範囲に関する考え方が、今後、被害者と東電との間における円滑な話し合いと合意形成に寄与することが望まれるとともに、東電に対しては、多数の被害者への賠償が可能となるような体制を早急に整えた上で、迅速、公平かつ適正な救済が行われることを期待する。

第2 各損害項目に共通する考え方
1 原賠法により原子力事業者が負うべき責任の範囲は、原子炉の運転等により与えた「原子力損害」であるが(3条)、その損害の範囲につき、一般の不法行為に基づく損害賠償請求権における損害の範囲と特別に異なって解する理由はない。したがって、指針策定に当たっても、本件事故と相当因果関係のある損害、すなわち社会通念上当該事故から当該損害が生じるのが合理的かつ相当であると判断される範囲のものであれば、原子力損害に含まれると考える。
 これに関連して、損害項目のうち、避難費用、営業損害、就労不能等に伴う損害など、継続的に発生し得る損害については、その終期をどう判断するかという困難な問題があるが、この点については今後検討する。
2 また、本指針策定に当たっては、平成11年9月30日に発生した株式会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所における臨界事故に関して原子力損害調査研究会が作成した同年12月25日付け中間的な確認事項(営業損害に対する考え方)及び平成12年3月29日付け最終報告書を参考とした。
 ただし、本件事故は、その事故の内容、深刻さ、周辺に及ぼした被害の規模、範囲、期間等において上記JCOの臨界事故を遙かに上回るものであり、その被害者及び損害項目の類型も多岐にわたるものであることから、本件事故に特有の事情を十分考慮して策定することとした。
3 また、損害の算定に当たっては、例えば、避難費用等についてはその証明をもとに実費賠償をすることが原則であるが、本件事故による被害者が数万人規模にも上り、その早急な救済が求められる現状にかんがみれば、合理的に算定した一定額の賠償を認めるなどの方法も考えられる。ただし、上記一定金額を超える避難費用等の負担を余儀なくされたことが証明された場合には、必要かつ合理的な範囲で増額されることがあり得る。なお、営業損害についても、避難により証拠の収集が困難である場合など必要かつ合理的な範囲で証明の程度を緩和して賠償することや、大量の請求を迅速に処理するため、客観的な統計データ等による合理的な算定方法を用いることが考えられる。
4 賠償金の支払方法についても、早急な救済が必要な被害者の現状にかんがみれば、例えば、賠償額が最終的に確定する前であっても、一定期間ごとに支払いをしたり、請求金額の一部を前払いするなど、合理的かつ柔軟な対応が東電に求められる。

第3 政府による避難等の指示に係る損害について
[対象区域]
政府による避難等の指示があった区域は、以下のとおりである。
(1) 避難区域
①政府が原子力災害対策特別措置法に基づいて各地方公共団体の長に対して住民の避難を指示した区域
福島第一原子力発電所から半径20km圏内(平成23年4月21日には、原則立入り禁止となる警戒区域にも設定)
② 福島第二原子力発電所から半径10km圏内(同年4月22日には、半径8km圏内に縮小)
(2) 屋内退避区域
政府が原子力災害対策特別措置法に基づいて各地方公共団体の長に対して住民の屋内退避を指示した区域
③ 福島第一原子力発電所から半径20km以上30km圏内
(注) この屋内退避区域について、同年3月25日、官房長官より、住民の生活維持困難を理由とする自主避難の促進等が発表された。但し、同区域は、同年4月22日、下記の(3)計画的避難区域及び(4)緊急時避難準備区域の指定に伴い、解除された。
(3) 計画的避難区域
政府が原子力災害対策特別措置法に基づいて各地方公共団体の長に対して計画的な避難を指示した区域
④ 福島第一原子力発電所から半径20km以遠の周辺地域のうち、本件事故発生から1年の期間内に積算線量が20ミリシーベルトに達するおそれのある区域であり、概ね1か月を目途に、別の場所に計画的に避難することが求められる区域
(4) 緊急時避難準備区域
政府が原子力災害対策特別措置法に基づいて各地方公共団体の長に対して緊急時の避難等の準備を指示した区域
⑤ 福島第一原子力発電所から半径20km以上30km圏内の部分から「計画的避難区域」を除いた区域のうち、常に緊急時に屋内退避や避難が可能な準備をすることが求められ、引き続き自主的避難をすること及び特に子供、妊婦、要介護者、入院患者等は立ち入らないことが求められる区域

[避難等対象者]
避難等対象者の範囲は、政府の指示により避難その他の行動を余儀なくされた者として、以下のとおりとする。
1 本件事故が発生した後に対象区域内から同区域外へ避難のための立退き(以下「避難」という。)及びこれに引き続く同区域外滞在(以下「対象区域外滞在」という。)を余儀なくされた者
2 本件事故発生時に対象区域外に居り、同区域内に生活の本拠としての住居があるものの引き続き対象区域外滞在を余儀なくされた者
3 対象区域内で屋内への退避(以下「屋内退避」という。)を余儀なくされた者
(備考)
1) 以上の「避難」、「対象区域外滞在」及び「屋内退避」を併せて、「避難等」という。
 また、避難等対象者には、いったん避難した後に住居に戻って屋内退避をした者なども含まれる(但し、損害額の算定に当たっては、これらの差異が考慮されることはあり得る。)。
2) 対象区域に居住する者に対しては、政府により、前記のとおり、区域に応じて、避難が指示され(避難区域及び計画的避難区域)、又は自主的な避難(屋内退避区域、緊急時避難準備区域)が求められている。したがって、政府の避難指示の対象となった区域の居住者のみならず、自主的な避難が求められている区域の居住者についても、対象区域外に避難する行動に出ることや、同区域外に居た者が同区域内の住居等に戻ることを差し控える行動に出ることは、合理的な行動であり、「政府の指示により」避難や対象区域外滞在を「余儀なくされた」場合に該当する。また、政府の避難指示や自主的避難の要請の前に避難や対象区域外滞在をした者についても、政府の指示に照らし、その行為は客観的・事後的にみて合理的な行動であったと認められ、「政府の指示により」避難又は対象区域外滞在を「余儀なくされた者」の範疇に含めて考えるべきである。

[損害項目]
1 検査費用(人)
(指針)
 本件事故の発生以降、「避難等対象者」のうち、対象区域内で屋内退避し、又は、同区域内から同区域外に避難した者が、放射性物質への曝露の有無等を確認する目的で受けた合理的な範囲での検査につき検査費用及びその付随費用(検査のための交通費等)を負担した場合には、被害者の損害と認められる。
(備考)
1) 放射性物質は、その量によっては人体に多大な負の影響を及ぼす危険性がある上、人の五感の作用では知覚できないという性質を有している。それゆえ、本件事故の発生により、少なくとも、避難等対象者のうち、対象区域内に屋内退避し、又は、同区域内から同区域外に避難した者が、自らの身体が放射性物質に曝露したのではないかとの不安感を抱き、この不安感を払拭するために検査を受けることは合理的な行動といえる。
2) 無料の検査を受けた場合の検査費用については、被害者に実損が生じておらず、損害とは認められない。
3) なお、政府による避難等の指示の前に本件事故により生じた部分があれば、これを賠償対象から除外すべき合理的な理由はないから、本件事故日以降の検査費用が賠償すべき損害と認められる。

2 避難費用
(指針)
避難等対象者が負担した以下の費用が、損害と認められる。
Ⅰ) 対象区域から避難するために負担した交通費、家財道具の移動費用
Ⅱ) 対象区域外に滞在することを余儀なくされたことにより負担した宿泊費及びこの宿泊に付随して負担した費用
Ⅲ) 避難等対象者が、避難等によって生活費が増加した部分があれば、その増加費用
(備考)
1) 対象区域内の居住者らが負担した避難費用(交通費、家財道具の移動費用、宿泊費及びこの宿泊に付随して負担した雑費、以下「宿泊費等」という。)についても、賠償の対象とするのが妥当である。
 なお、屋内退避をした者には、避難費用は原則として認められないが、Ⅲ)に該当する費用は賠償の対象となるほか、屋内退避を余儀なくされたことに伴う生活の困難や不安については、精神的損害において考慮される。
 また、屋内退避区域が解除された後、何らの規制も及ばなくなった区域については、解除から相当期間経過後に生じた避難費用等は賠償の対象とならない。この相当期間がどの程度かは今後検討する。
2) 避難費用のうち、Ⅰ)の交通費及び家財道具移動費用について、損害額算定及び支払方法としては、対象区域内の居住者らが実際に負担した費用を領収証等で確認した上で損害額を算定し、その実費を賠償する方法が原則である。しかしながら、本件において、数万人に及ぶ多数の被害者から逐一領収証等で実費を確認することが困難で、かえって被害者の早期の救済が図られなくなるおそれがあるので、一定金額を平均的な損害額と算定した上、対象者全員に一律に支払うことが考えられる。その際の平均的損害額については、今後早急に検討する。
3) 避難費用のうち、Ⅲ)の生活費の増加費用については、例えば、屋内退避した者が食品購入のため遠方までの移動が必要となったり、避難等した者が自家用農作物の利用が不能又は著しく困難(以下「不能等」という。)となったため食費が増加したりしたような場合には、その増加分は賠償の対象となり得る。
4) 避難費用のうち、Ⅱ)の宿泊費等については、避難等した者の中でも、自らこれを負担してホテル、旅館等に宿泊する場合と、宿泊費等は負担しないで体育館、公民館、避難所等に宿泊する場合など、様々な類型が考えられるところ、厳密に言えば、後者は宿泊費等の実費負担がないから、この費用が損害と認められないこととなる。しかし、これでは、相対的に見てより不便な生活を長期間余儀なくされた者への賠償額が少なくなるという正義に反し公平性を欠く結論となりかねない。したがって、賠償の方法としては、①実際に宿泊費等を負担したか否かにかかわらず、避難生活を送っている者全員に平均的な宿泊費等を一律に賠償することとするか、あるいは、②後者の場合には、精神的苦痛がより大きいとして慰謝料の金額を増額するなど、一定の調整をする方法が考えられるが、これらについてできるだけ早急に検討する。

3 生命・身体的損害
(指針)
避難等対象者につき、以下のものが、損害と認められる。
Ⅰ) 本件事故により対象区域からの避難等を余儀なくされたため、傷害を負い、健康状態が悪化し、疾病にかかり、あるいは死亡したことにより生じた逸失利益、治療費、薬代、精神的損害等
Ⅱ) 本件事故により対象区域からの避難等を余儀なくされ、これによる健康状態の悪化等を防止するため、負担が増加した検査費、治療費、薬代等
(備考)
1) 避難等対象者が、本件事故により対象区域からの避難等を余儀なくされたため、生命・身体的損害を被った場合には、それによって失われた逸失利益のほか、被った治療費や薬代相当額の出費、精神的損害等の損害が認められる。なお、この生命・身体的損害を伴う精神的損害の額は、下記4の場合とは異なり、生命・身体の損害の程度に従って個別に算定されるべきである。
2) また、対象区域からの避難等により実際に健康状態が悪化したわけではなくとも、高齢者や持病を抱えている者らが、避難等による健康悪化防止のために従来より費用の増加する治療を受けることも合理的な行動であるから、これによって増加した費用も損害と認められる。
3) なお、例えばPTSD(心的外傷後ストレス障害)などがここで言う「身体的損害」に該当し得るか否かについては、今後検討する。

4 精神的損害
(指針)
 本件事故において、避難等対象者が受けた精神的苦痛(ここでは、生命・身体的損害を伴わないものに限る。)について、そのどこまでが相当因果関係のある損害と言えるか判断が難しい。しかしながら、少なくとも避難等を余儀なくされたことに伴い、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛の部分については、損害と認められる余地があり、今後、その判定基準や算定の要素などをできるだけ早急に検討する。
(備考)
1) 前述したように、本件事故と相当因果関係のある損害であれば「原子力損害」に該当するから、生命・身体的損害を伴わない精神的損害(慰謝料)についても、相当因果関係が認められる限り、賠償すべき損害といえる。
2) 生命・身体的損害を伴わない精神的苦痛の有無、態様及び程度等は、当該被害者の年齢、性別、職業、性格、生活環境及び家族構成等の種々の要素によって著しい差異を示すものである点からも、損害の有無及びその範囲を客観化することには自ずと限度がある。
しかしながら、本件事故においては、実際に周辺に広範囲にわたり放射性物質が放出され、これに対応した政府からの避難や屋内退避等の指示があったのであるから、対象区域内の住民らが、住居から避難し、あるいは、屋内退避することを余儀なくされるなど、日常の平穏な生活が現実に妨害されたことは明らかであり、また、その避難等の期間も総じて長く、また、その生活も過酷な状況にある者が多数であると認められる。
 したがって、本件事故においては、少なくとも避難等対象者については、その状況に応じて、避難等により正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたことによる一定の精神的損害を観念することができる。
3) この精神的損害に係る損害額の具体的な算定は困難であるが、例えば、避難等を余儀なくされた経緯(避難指示、屋内退避指示の別等)、避難等の別(避難、対象区域外滞在、屋内退避)、避難等の期間及び避難した施設の居住環境その他の避難等における生活状況等に応じて避難等対象者を類型化した上、段階的かつ合理的な差を設けるなどして、類型化された対象者ごとに共通する一定の精神的損害及びこれに対する賠償額を認めることが考えられる。
 他方で、上記2(避難費用)で述べたとおり、一般的に言えば、宿泊費等を負担してホテル、旅館等に宿泊する場合と、宿泊費等は負担しないで体育館、公民館、避難所等に宿泊する場合とでは、後者の方が精神的苦痛は大であると認められるから、このような差異にかんがみ、宿泊場所にかかわらず一定額を算定して、これをもって両者を併せた損害額と認定することにも合理性があると考えられ、あわせて今後検討する。
4) また、これまで述べた、生命・身体的損害に伴う精神的損害、避難等による正常な日常生活の著しい阻害に伴う精神的損害のほかにも、一定以上の放射性物質に曝露したことによる精神的苦痛など様々なものが考えられる。もちろん、原子力事故や放射性物質の放出に対する一般的・抽象的不安感や危惧感等は、精神的損害として認められるものではない。このような一般的・抽象的不安感や危惧感にとどまらないものについて、何が、またどこまで損害と認められるかは、今後検討する。

5 営業損害
(指針)
Ⅰ) 従来、対象区域内で事業の全部又は一部を営んでいた者が、政府による避難等の指示があったことにより、営業が不能になる等、同事業に支障が生じたため、現実に減収のあった営業、取引等については、その減収分が損害と認められる。
 上記減収分は、原則として、本件事故がなければ得られたであろう売上高から、本件事故がなければ負担していたであろう(本件事故により負担を免れたであろう)売上原価を控除した額(逸失利益)とする。
Ⅱ) また、上記のように同事業に支障が生じたために負担した追加的費用(商品、営業資産の廃棄費用等)や、事業への支障を避けるため又は事業を変更したために生じた追加的費用(事業拠点の移転費用、営業資産の移動・保管費用等)も合理的な範囲で損害と認められる。
(備考)
1) 政府による避難等の指示があったことにより、自己又は従業員等が対象区域からの避難等を余儀なくされ、又は、車両や商品等の同区域内への出入りに支障を来したことなどにより、同区域内で農業その他の事業の全部又は一部を営んでいた者が、その事業の継続に支障が生じた場合には、当該事業に係る営業損害は損害と認められる。
 対象となる事業は、農林水産業、製造業、建設業、販売業、サービス業、運送業その他の事業一般であり、営利目的の事業に限られず、また、その事業の一部を対象区域内で営んでいれば対象となり得る。
 また、上記事業の支障により生じた商品や営業資産の廃棄、返品費用など、あるいは、このような事態を避けるために、当該事業者が対象区域内から同区域外に事業拠点を移転させた費用や、事業に必要な営業資産等(家畜等を含む。)を搬出した費用、事業を変更した場合にかかる費用などの追加的費用についても、それが必要かつ合理的な範囲内に止まる限り、損害と認められる。
2) 将来の売上高のための売上原価を既に負担し、又は継続的に負担せざるを得ないような場合には、当該売上原価は本件事故によっても負担を免れなかったとしてこれを控除せずに減収分(損害額)を算定するのが相当と認められる。
3) また、政府による避難等の指示の前に本件事故により生じた部分があれば、これを賠償対象から除外すべき合理的な理由はないから、本件事故日以降の営業損害が賠償すべき損害と認められる。
4) 事業の廃止や倒産に至った場合の損害額の算定方法等は、困難な問題であるため、今後検討する。

6 就労不能等に伴う損害
(指針)
対象区域内に住居又は勤務先がある勤労者について、同区域内に係る避難等を余儀なくされたことに伴い、その就労が不能等となった場合には、給与等の減収が損害と認められる。
(備考)
1) 対象区域内に係る避難等を余儀なくされた勤労者が、例えば、同区域内にあった勤務先が本件事故により廃業を余儀なくされ、または、避難先が勤務先から遠方となったために就労が不能等となった場合には、その給与等の減収が相当因果関係のある損害に該当するといえる。
 なお、就労の不能等には、本件事故と相当因果関係のある解雇その他の離職も含まれる。
2) 但し、自営業者や家庭内農業従事者等の逸失利益分については、別途営業損害の対象となり得るから、ここでいう就労不能等に伴う損害の対象とはならない。
3) また、就労が不能等となった期間のうち、雇用者が勤労者に給与等を支払った場合には、当該雇用者の出捐額が損害となり、これは当該雇用者の営業損害で考慮されるべきものである。
他方、既に就労したものの未払いである賃金については、当該賃金は本来雇用者が支払うべきものであるが、本件事故により当該賃金の支払が不能等となったと認められる場合には、当該賃金部分も勤労者の損害に該当し得る。
4) また、政府による避難等の指示の前に本件事故により生じた就労不能等に伴う損害があれば、これを賠償対象から除外すべき合理的な理由はないから、本件事故日以降のものが賠償すべき損害と認められる。
5) なお、未就労者のうち就労が予定されていた者については、その就労の確実性によっては、就労不能等に伴う損害を被ったとして賠償の対象となり得る。

7 検査費用(物)
(指針)
対象区域内にあった商品を含む財物が、①当該財物の性質等から、検査を実施して安全を確認することが必要かつ合理的であり、又は②取引先の要求等により検査の実施を余儀なくされたものと認められた場合には、被害者の負担した検査費用は損害と認められる。
(備考)
1) 本件事故による被害の全貌はいまだ判明しておらず、個々の財物がその価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に曝露しているか否かは不明である。
 しかしながら、財物の価値ないし価格は、当該財物の取引等を行う人の印象・意識・認識等の心理的・主観的な要素によって大きな影響を受ける。しかも、財物に対して実施する検査は、取引の相手方らによる取引拒絶、キャンセル要求又は減額要求等を未然に防止し、営業損害の拡大を最小限に止めるためにも必要とされる場合が多い。
 したがって、①平均的・一般的な人の認識を基準として当該財物の種類及び性質等から、その所有者等が当該財物の安全性に対して危惧感を抱き、この危惧感を払拭するために検査を実施することが合理的であると認められる場合、又は②取引先の要求等により検査の実施を余儀なくされた場合には、その負担した検査費用を損害と認めるのが相当である。
2) また、政府による避難等の指示の前に本件事故により生じた検査費用があれば、これを賠償対象から除外すべき合理的な理由はないから、本件事故日以降のものが賠償すべき損害と認められる。

8 財物価値の喪失又は減少等
(指針)
 財物につき、現実に発生した以下のものについては、損害と認められる。なお、ここで言う「財物」は動産のみならず不動産をも含む。
Ⅰ) 政府の指示による避難等を余儀なくされたことに伴い、対象区域内に所有していた財物の管理が不能等となったため、当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合には、現実に価値を喪失した部分及びこれに伴う追加的費用(当該財物の廃棄費用等)については合理的な範囲で損害と認められる。
Ⅱ) Ⅰ)のほか、当該財物が本件事故の発生時対象区域内にあり、
) 財物の価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に曝露した場合
又は、
) )には該当しないものの、財物の種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合
には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及び除染等の追加的費用について損害と認められる。
(備考)
1) Ⅰ)については、対象区域から避難等したことに伴い、例えば農産物や家畜等の管理が不能等になったため、農産物の収穫ができないまま廃棄物とせざるを得なくなったり、家畜が死亡するなど、当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合には、その現実に価値を喪失し又は減少した部分については、損害と認められる。
 但し、当該財物が商品である場合には、これを財物価値(客観的価値)の喪失又は減少等と評価するか、あるいは、営業損害としてその減収分(逸失利益)と評価するかは、個別の事情に応じて判断されるべきである。
 なお、立ち入りができないため、価値の喪失又は減少について現実に確認できないものは、蓋然性の高い状況を想定して喪失又は減少した価値を算定することも考えられるが、このような想定ができない場合の手法については今後検討する。
2) Ⅱの)については、本件事故により放出された放射性物質が当該財物に付着したことにより、当該財物の価値が喪失又は減少した場合には、その価値喪失分又は減少分は賠償の対象となる。
3) Ⅱ)の)については、Ⅱの)のように放射性物質の付着により財物の価値が喪失又は減少したとまでは認められなくとも、財物の価値ないし価格が、当該財物の取引等を行う人の印象・意識・認識等の心理的・主観的な要素によって大きな影響を受けることにかんがみ、その種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、財物の価値が喪失又は減少したと認められてもやむを得ない場合には、賠償の対象となる。
4) なお、Ⅱ)の)及び)に関しては、喪失又は減少した財物の価値を回復するため、除染等の措置が必要となる場合がある。この場合に、価値の喪失又は減少を損害ととらえるか、あるいは、その除染等の措置費用を損害ととらえるか、という問題があるが、この点は今後検討する。
5) また、不動産売買契約の解約、不動産を担保とする融資の拒絶又は売却予定価格の値下げによる損害、あるいは、賃料の減額を行ったこと又は本件事故後に賃貸借契約を解約されたことによる損害などについては、これが本件事故と相当因果関係のある損害と認められるか否かは、今後検討する。

第4 政府による航行危険区域設定に係る損害について
[対象区域]
海上保安庁により航行危険区域に設定された、福島第一原子力発電所を中心とする半径30kmの円内海域

[損害項目]
1 営業損害
(指針)
 航行危険区域の設定により、①漁業者が、対象区域内での操業の断念を余儀なくされたため、現実に減収があった場合は、その減収分、②内航海運業又は旅客船事業を営んでいる者等が、同区域を迂回して航行したことにより費用が増加した場合又は減収が発生した場合には、当該費用の増加分又は発生した減収分、がいずれも合理的な範囲で損害と認められる。
(備考)
1) 海上保安庁による航行危険区域の設定により、漁業者が同区域で漁業を営むことが危険であるとしてこれを断念することは、合理的な行動であると認められるから、これによって減収が生じた場合には、損害と認められる。
減収分の算定方法は、前記第3の5(営業損害)と同じである。
2) また、同様に、内航海運業者又は旅客船事業等において、対象区域を航行することが危険であるとして、これを避けて航路の迂回を余儀なくされたことにより費用が増加した場合又は減収が発生した場合には、その費用の増加分又は発生した減収分についても、それが必要かつ合理的な範囲内に止まる限り、損害と認められる。
減収分の算定方法は、前記第3の5(営業損害)と同じである。
3) なお、政府による航行危険区域設定の前に本件事故により生じた損害があれば、これを賠償対象から除外すべき合理的な理由はないから、本件事故日以降の営業損害が賠償すべき損害と認められる。

2 就労不能等に伴う損害
(指針)
 航行危険区域の設定により、同区域での操業が不能等となった漁業者又は内航海運業者等の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、給与等の減収が損害と認められる。
(備考)
前記第3の6の(備考)の1)ないし5)に同じ(但し、避難等に特有の通勤困難等の部分は除く。)。

第5 政府等による出荷制限指示等に係る損害について
[対象区域及び品目]
 第一次指針においては、差し当たって、政府による出荷制限指示又は地方公共団体が本件事故に関し合理的理由に基づき行う出荷又は操業に係る自粛要請等(生産者団体が政府又は地方公共団体の関与の下で本件事故に関し合理的理由に基づき行う場合を含む。以下「政府等による出荷制限指示等」という。)があった区域及びその対象品目に係る損害を対象とする。
 但し、上記区域以外においても、また、上記品目以外についても、政府等による出荷制限指示等に伴い、返品、出荷停止、価格下落等の被害が生じているから、これらがどこまで賠償の対象となる損害に該当するかについては、今後検討する。

[損害項目]
1 営業損害
(指針)
Ⅰ) 農林漁業者が、政府等による出荷制限指示等により、同指示等に係る対象品目の出荷又は操業の断念を余儀なくされ、これによって減収が生じた場合には、その減収分が損害と認められる。
Ⅱ) また、上記出荷又は操業の断念により生じた追加的費用(商品の廃棄費用等)も合理的な範囲で損害と認められる。
Ⅲ) 対象品目を仕入れた流通業者等が、政府等による出荷制限指示等により、当該品目の販売等の断念を余儀なくされて生じた減収分も損害と認められる。
(備考)
1) 政府による出荷制限指示があった区域における当該指示の対象となっている品目については、出荷又は操業の断念を余儀なくされて減収が生じた場合には、損害と認められる。
 減収分の算定方法は、前記第3の5(営業損害)と同じである。
 また、上記出荷又は操業の断念により生じた商品の廃棄費用などの追加的費用についても、それが必要かつ合理的な範囲内に止まる限り、損害と認められる。
2) 県などの地方公共団体による出荷又は操業に係る自粛要請等については、例えば、特定の品目について暫定規制値を超える放射性物質の検出があったことを理由とする場合には、本件事故に関し合理的理由に基づき行われたものとして、これに伴う減収及び追加的費用は、1)と同様に損害として認められる。
3) 生産者団体による出荷又は操業に係る自粛要請等があった場合には、これをすべて相当因果関係のある損害といえるかは難しい問題であるが、少なくとも、福島県沖における航行禁止区域の設定、汚染水の排出等の事情を踏まえ、福島県の漁業者団体が県との協議に基づき行った操業自粛要請については、これに伴う減収及び追加的費用は、1)と同様に損害と認められる。
4) なお、政府等による出荷制限指示等がなされる前に自主的に出荷又は操業の停止をしていたものについては、これも事故の発生により合理的な判断に基づいて実施されたものと推認でき、これを賠償対象から除外すべき合理的な理由はないから、本件事故日以降のものが損害と認められる。
5) また、生産者のみならず、流通業者等も、仕入れた対象品目について、政府等による出荷制限指示等により当該品目の販売等を断念せざるを得なくなった場合には、これによる減収分も損害と認められる。損害額の算定方法は、前記第3の5(営業損害)と同じである。

2 就労不能等に伴う損害
(指針)
 政府等による出荷制限指示等により、対象品目を生産する農林漁業者等の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、給与等の減収が被害者の損害と認められる。
(備考)
 前記第3の6の(備考)の1)ないし5)に同じ(但し、避難等に特有の通勤困難等の部分は除く。)。

(以上)
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2011-05-03 : ・指針 : コメント : 1 : トラックバック : 0
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東京電力の審査会宛要望書
平成23年4月25日

原子力損害賠償紛争審査会
会 長  能 見 善 久 殿

東京電力株式会社
代表取締役 清 水 正 孝

   要望書

 弊社は、貴審査会が定める原子力損害の範囲の判定等の指針(以下「指針」といいます。)について、下記の要望をいたします。

   記

1 貴審査会におかれては、標記指針を定めるに先立ち、被災者保護の観点から、可能な事項から順次指針を提示する方針である、と聞いております(ここで示される指針を、以下「一次指針」といいます。)。
福島第一原子カ発電所の放射性物質漏洩事故(以下「本件事故」といいます。)による原子力損害の発生は明らかであること、本件事故が発生から1ヶ月以上経た現在でも収束しておらず、被害が拡大していること、などを踏まえれば、早急な被災者の救済が必要であることについては、当社としでも十分認識しております。

2 本件事故が平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に起因して発生したものであり、当該地震がマグニチュード9.0という日本史上稀にみる規模の地震であったこと、およびその直後に努生した津波が福島第一原子カ発雷所において14~15メートルまで達する巨大なものであったことを踏まえれば、弊社としては、本件事故による損害が原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」といいます。)3条1項ただし書きにいう「異常に巨大な天災地変」に当たるとの解釈も十分可能であると考えております。しかしながら、弊社は、本件事故の当事者であることを真撃に受け止め、早期の被災者救済の観点から、国の援助を受けて法に基づく補償(法にいう賠償)を実施する準備を進めていることを明らかにするとともに、平成23年4月15日付「原子力発電所事故による経済被害対応本部」の決定を踏まえ、本件事故により避難等を余儀なくされておられる被災者に対し、当面の必要な資金のお支払いをする手続を進めているところです。

3.ところで、原賠法において、原子力損害については原子カ事業者が無制限の無過失責任を負う(同法3条1項本文)とされている一方、その「場合への備え」([原子力損害賠償制度」科学技術庁原子カ局監修、P102)として、原子力事業者が損害賠償すべき額が賠償措置額(1事業所当たり1,200億円)を超え、かつ、この法律の目的である被害者の保護等を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、損害を賠償するために必要な援助を行うという制度が設けられています(同法16条)。この援助は、必要と認められるときには必ずこれを行う趣旨であるとされていますが、本件事故についてその必要があることは明らかです。

4 弊社としても、可能な限り補償を実施したいと考えておりますが、予想される補償額、事故の起きた原子力発電所の安定のために要する費用、電力の安定供給の確保に向けた新規電源確保などを着実に、また安全を確保しつつ実現していくための費用等を踏まえた今後の収支見通しなども考慮すると、すべての補償を弊社が行うこととした場合、最大限の経営のスリム化を断行しても、そのために要する費用を弊社が支出・調達することが困難であることは既に明らかな状況です。この状況を踏まえれば、立法時の審議過程において考慮されていた「一人の被害者も泣き寝入りさせることなく」という原賠法の目的を実現するためには、同法16条に規定された国による援助が必要不可欠であり、そのような要素を欠いたままでは、原賠法の趣旨に反するスキームであるといわざるを得ません。

5 しかしながら、現時点では、国による援助の具体的な方策が確定していないことから、弊社としては、仮に一次指針が策定されたとしても、その全額の弁済をすることは早晩困難になると考えられるため、かえって被災者に対する公正な補償が妨げられるおそれすらあります。また、受付体制(要員、設備)の整備等に自ずから物理的制約のあるなかで、極めて多数の被災者への補償手続を円滑に実現するためには、受付数の均平化なども慎重に図っていく必要があります。さらに、的確な補償額の算定のためには、原子力事故と相当因果関係にある損害を的確に抽出できる判断基準の設定が必要であるとともに、損害を認定するためのエビデンスのあり方についても、指針に何らかの基準が示されることが必要と考えます。以上のように、一次指針の策定に当たっては、当社の実質的な負担可能限度も念頭に置かれたうえ、公正、円滑な補償の実現に資するものとなるようご配慮いただきますようお願い申し上げます。

以 上
2011-05-09 21:44 : igovall URL : 編集
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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