東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■2条「原子力損害」の意味・範囲 その2 予防措置費用・避難費用

【2条「原子力損害」の意味・範囲 その2】
予防措置費用について,以下のサイト(内閣府原子力委員会?)において,まとまって論じられていた。
-------------------------------------
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo04/siryo2.htm
(1)原子力事故の事前対策~原子力事故発生前に講じられるもの
  原子力事故が発生した際を想定した連絡体制の整備費用
  平常時からの放射線モニタリング費用
  個人による核シェルターの設置費用  等
(2)原子力事故の事後対策~原子力事故の発生後に講じられるもの
 ①避難費用~避難に直接要した費用
  避難する際及び避難先から戻る際の交通費
 ②避難に伴う派生的な費用
  避難に伴う費用であり、以下のようなものが考えられる。
  a.避難したことにより通常より余分に要した費用
   避難先での宿泊費
   避難先からの通勤費用であって自宅からの通勤費用を超える分
  b.避難したことによる損失
   住居等に残してきたペット、家畜等の死亡
   栽培植物の枯死 等
  c.逸失利益
   休業補償、逸失賃金
 ③避難費用以外の被害拡大防止費用
 原子力事故の発生後に、被害の拡大を防止あるいは最小化するために地 方公共団体や住民等が講じる費用であり、例えば、外部被ばくを防止する ための以下の措置等が考えられる。(「避難費用」についても人的損害の 発生を防止するという意味では被害拡大防止費用として整理することが可能であるが、ここでは別のものとして整理した。)
  ヨウ素剤の購入、頒布
  除染に係る費用(衣服の毀損、建設物の外部の除染、塗装、客土、アスファルト舗装等)
  私有地を利用した被害拡大防止のための何らかの工作物等の設置

-------------------------------------

原子力損害賠償法第2条2項で「原子力損害」とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害とされる。この文言からは,直接に放射線障害で生命・身体を害された場合は当然に「原子力損害」に含まれるだろうし,放射線の影響で,作物や家畜が現に汚染されて財産的価値が低下したような場合にも,文言上当然に損害として賠償の対象となるはずである。

ただし,今回の事故の場合,被爆を避けるため避難して不便な生活を強いられ,また仕事もできなくなり休業を余儀なくされ,さらに農業等の風評被害など,派生的な損害がむしろ莫大であり,それらが「原子力損害」に当たるか否かが問題となるはずである。

この点,上記のサイト(原子力委員会?)では,特に「避難費用」について論じてあり,上記の(1)は該当せず,(2)(3)については,おそらく「作用」と「損害」の「相当因果関係」の範囲内で認められるということであろう。相当因果関係とは,「社会生活上の経験に照らして,通常その行為からその結果が発生することが相当だとみられる関係」(因果経路の通常性)とされるが,最終的には裁判所が社会通念に従って判断するもので,明確な基準はない。

なお上記サイトでは、以下のとおり論じられている。
「(2)「作用」について
 法律上、原子核分裂の過程等の「作用」という用語が使用されていることから、「原子力損害」に該当するには、核分裂によるエネルギーや放射線が、何らかの影響を外部に対して与えることが要件となる。何らかの影響を外部に与えるとは、放射線が現実に放出される場合だけではなく、放射線の有する固有の特性(人、物に対する有害性等)に起因する場合も含まれるものと考えられる。「放射線の作用」や「毒性的作用」についても同様に、現実に人や物を被ばくさせたり、化学的影響を与える場合だけではなく、被ばく等を受けるというおそれを与えることも含まれると考えられる。
 なお、昭和35年の原子力委員会決定において「本制度の対象となる原子力損害は、原子力事業側の偶発的事故であると否とをとわず、核燃料物質等の特性により生じた第三者に対する損害とし、一般災害を含まないものとする。」とあり、立法当初は「核燃料物質の特性」に起因する損害を広く対象とすることを予定していたと考えられる。
 また、「作用により生じた損害」とあるため、「作用」と「損害」との間には相当因果関係の存在が必要とされる。」

その上で、

「4.避難費用について
(1)原賠法上の原子力損害に該当する場合
 上記3.のとおり捉えた場合、たとえば、適切に管理された施設に放射性物質が存在する場合に、放射線の放出のおそれがあるとして避難するような場合には、放射線の作用と損害(避難のための交通費等を出費したこと)との間には相当因果関係は認められないであろうが、当該施設が爆発して放射性物質が拡散するようなおそれがある緊急時に避難するような場合には、相当因果関係は認められ、「原子力損害」に該当するものと考えられる。
 相当因果関係の有無は、ケースバイケースで判断せざるを得ないであろうが、例えば地方公共団体の長によって避難勧告が出された場合などは認められよう。ただし、当該避難勧告が合理的な判断によってなされることが必要とされると考えられる。」

と論じている。

ということは、普通に考えて,国の避難勧告に従い避難した住民(20キロ圏内)については,その避難費用のほとんどは,相当因果関係は認められるはずである。他方,現在沖縄に住んでいる人が,被爆をおそれてハワイに避難した場合は、おそらく駄目であろう。では、30キロ圏内から外へ避難した場合は、50キロ圏内から外へ避難した場合は、関東から関西に避難した場合はどうか、妊婦の場合はどうか、子供の場合はどうかなど、いくらでも中間的な避難態様が考えられるが、それらについては「相当因果関係」の有無は、ケースバイケースで判断」ということになり、結局、避難時点における、避難者に対する危険の大きさや、その切迫性等に鑑みて、社会通念によって決するということになる。

そもそもこの規模の原発事故はわが国では初めてのことであり、原賠法の解釈適用について、判例の積み重ねもほとんどなく、手がかりとなる事例も少ない。ただし東海村JCO臨界事故は一部参考になる。

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2011-04-05 : ■2条「原子力損害」 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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