東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■4条 責任集中の原則 その8 東電経営者の責任,対会社責任,代表訴訟

■4条 責任集中の原則 その8 東電経営者の責任,対会社責任,代表訴訟

 原発事故の収束の兆しなく,事故調査どうなってるのか,事実関係も不明で,以下は全て仮定に基づいたものである。東電経営者の責任全般については,こちら(東電経営者の責任はどうなるのか?)で述べた。 

 役員らが,会社(東電)に対して,賠償義務を負うと考えられる場合,株主は,代表訴訟を起こすことが考えられる。

1 株主代表訴訟(責任追及等の訴え,会社法847条)
 6ヶ月前から引き続き株式を有する株主は、株式会社に対し、書面等で,役員らの責任を追及する訴えの提起を請求することができる(会社法847条1項本文)。会社に対して,取締役ら役員を訴えるように請求して,原則として60日以内に訴訟提起がなければ,当該株主は,自ら,会社に代わって,役員らの責任追及(損害賠償請求等)を行うことができる(同条3項)。請求額にかかわらず,印紙は13000円(同条6項)。管轄は本店所在地(同法848条)。ただし,被告となる取締役が,当該株主が悪意であることを疎明した場合には,株主は裁判所に担保提供を求められることがある(同条5項6項)。
 これは,株主が,個人の損失を個別に回復するために起こすものではなく,取締役に対して,会社への損害賠償等をさせて,会社の財産を回復して,全株主の利益を図るというものである。
 今回の事件で,責任追及等の訴えとして,可能性があるのは,取締役の任務懈怠責任の追及ではなかろうか。

2 任務懈怠責任(会社法423条)
 会社法423条1項には「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」とある。

 取締役は,会社と委任関係に立ち,善管注意義務(会社法330条,民法644)と忠実義務(会社法355条)を負っており,これら義務に違反した場合は,任務懈怠として,会社に対して損害賠償責任を負うことになる。
 かかる義務違反はいかなる基準によって認定されるかについては,一般に,社会通人上,取締役たる地位にある者に通常要求される注意をもってその職務を遂行していたか否かによって決まる。
 一般人としてではなく,会社経営者として,通常要求される程度の注意をもってその職務を遂行していたか否かが問題となり,今回の事件だと,原子力事業を含む電力会社の経営者として,福島第一原発を津波対策や,原発停電対策をあの程度で止めておいた点,その後の事故対応の各決定等さまざな段階における注意義務違反の有無が問われることになろう(事故前から市民団体,政治家,研究者その他の者による注意喚起等あり?。国の基準の範囲内で安全対策とっていた?。その他攻防)。
 このあたりは,いかなる事実が認定されるかによるし,その前提事実の下で,社会通人上,取締役たる地位にある者に通常要求される注意をもって各認識,判断がなされたといえるかという評価の問題となり,最終的には裁判所が決することになる。

3 損害
 任務懈怠が認定されたとして,いかなる損害の賠償請求をなし得るかについて,こちらでも触れた。
 まず,「原子力損害」については,「原子力事業者以外の者」に対する責任追及はできないが(原賠法4条),原賠法2条2項但書において,「ただし、次条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者の受けた損害を除く。」とあり,原子力事業者が自ら被った損害は,「原子力損害」とはいえず,原賠法4条の適用はないはずである。
 今回の原発事故では,おそらく東電は福島第一の1サイトまるごと失い,また通常の廃炉より余分な廃炉費用もかかるだろうし,さらに健全なら今後10年近く稼働して利益を出していたと予想される分など,莫大な損失を被っているはずであるが,この損失が仮に役員らの任務懈怠に起因するとなると,会社は,役員らに対して,その損害賠償ができることになる。(会社が,被害者に「原子力損害」の賠償をしたことによって,会社が被った損害をどう考えるかについては,問題あり。別項で触れた。)
 株主代表訴訟では,株主が,この会社の取締役に対する損害賠償請求権を会社に代わって行使することになる。

4 役員の責任の減免
 役員の責任の全部免除は,総株主の同意が必要であり(会社法424条),今回の件で,役員としては,これを期待することは困難であろう。

 ただし,会社法426条1項では

「第四百二十四条の規定にかかわらず、監査役設置会社(取締役が二人以上ある場合に限る。)又は委員会設置会社は、第四百二十三条第一項の責任について、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、前条第一項の規定により免除することができる額を限度として取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって免除することができる旨を定款で定めることができる。」

とされる。

 つまり,会社の定款に定めがあることを前提に,当該役員が,①職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、②責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは,取締役会決議で,会社法425条1項にある限度額まで責任を免除することができることになっている。

 425条の責任限度額は概ね以下のとおり。

・代表取締役,代表執行役 年報酬の6倍
・代表取締役以外の取締役 年報酬の4倍
・社外取締役,監査役,会計監査人 年報酬の2倍


 そして東京電力の平成22年1月6日付け定款では,以下のようになっている。

---------------
(取締役の責任免除)
第30条 本会社は,会社法第426条第1項の規定により,取締役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合は,取締役会の決議によって,その取締役の同法第423条1項の責任を法令の限度において免除することができる。
(監査役の責任免除)
第37条 本会社は,会社法第426条第1項の規定により,監査役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合は,取締役会の決議によって,その監査役の同法第423条1項の責任を法令の限度において免除することができる。
----------------

 よほどのことが無い限り,故意だとか,重過失があったとか認定されないので,前記の通り,仮に取締役らの任務懈怠責任が認められることがあっても,定款の規定に基づき責任一部免除の取締役会決議がなされると,各役員らの負うべき責任の限度は,会社法425条のとおりの年報酬の数倍程度の限度額までとなる。
 
 また,大会社の取締役の場合,役員賠償責任保険に入っていることがあるので,仮に東電役員らが,そういった保険に入っている場合には,上の限定された賠償額まで,保険でカバーされるかもしれない。


5 役員の責任の減免に不服あるとき
 会社が被った莫大な損失に比べて,役員らの負うべき責任が限定されていることについて,不服を持った株主はどうすればよいのか。
 上の決議があった場合は、取締役は、責任の原因となった事実及び賠償責任額、免除できる額の限度及び算定の根拠、責任免除すべき理由及び免除額、及び、責任免除に異議がある場合には、1ヶ月以上の所定期間内に異議を述べるべき旨を株主に通知しなければならい(426条3項)。
 これを受けて株主のうち議決権で3パーセント以上の株主が、責任一部免除について異議を述べれば、免除は不可となる(同条5項)。
 したがって、今回のような場合は、これで免除を阻止できるはず?。



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2011-04-27 : ・経営者の責任 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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