東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■4条 責任集中の原則 その6 国の過失の競合

■4条 責任集中の原則 その6 国の過失の競合

 損害発生とその拡大に国の過失が寄与していた場合どう考えるか。未だ事件は収束の兆し無く、事実関係も不明なままであり、以下は全て仮定の話である。

〔国の過失の可能性〕
・震災前の設置、保存、管理に関する監督等における過失
・震災後の原子炉等発電施設の扱いに関する過失
・原発事故後の避難地域指定、出荷規制等各命令指示における過失

 原賠法上の賠償責任(3条1項本文)は、無過失責任であるが、後述のとおり求償関係の問題があると思われるので、以下のように場合分けする。

A 国に過失なし
 a 東電に無過なし → 東電のみの責任(無過失責任主義)
 b 東電に過失あり → 東電のみの責任
B 国に過失あり
 a 東電に無過なし → 問題?
 b 東電に過失あり → 問題?


 問題があるのはBの場合のみであり、国の過失が関与した場合に、東電と国の法的な関係はどうなるのか。

 すでに(国の責任はどうなるのか?)で論じたように、国の過失があった場合、原賠法4条(責任集中原則)が適用あるのか否かが問題となり、いずれの立場に立つかによって、その余の法的関係が異なってくる。立法過程の資料をざっと見たところでは、原子力損害が、国の過失ある行為と競合して発生拡大したような場合についての議論が見あたらず、4条の適用関係についても、今のところ不明である。ただ、少なくとも以下の二つの考え方はありうる。

・4条適用肯定説
 原賠法4条の文言からして、「原子力事業者以外の者」には,国も含まれるので、国に過失があっても、国の責任は、対第三者との関係では問われないとする考え方。ただし、5条で、国に故意があった場合のみ、東電から求償請求される。

・4条適用否定説
 原賠法4条は,被害者保護の観点から,被害者が容易に賠償責任を追及する相手方を知うるようにし,かつ,原子力事業者に機器や原料等を提供している関連事業者に,莫大になりかねない原発事故等の賠償責任を予め免れさせて,原子力事業をしやすくして,もって「原子力事業の健全な発達」を達成しようとする趣旨のものであるから,国家の側に過失があるような場合にまで,この免責を受けさせることは,本来法が予定していないものであり,4条による国の免責は無いものとする考え。5条は、4条の責任の集中を前提とするから、この立場では、5条の適用もないはずである。したがって、求償関係は、通常の共同不法行為の場合と同様に考える。?


・4条適用肯定説に立った場合

B 国に過失あり
 a 東電に無過なし
 → 東電のみが責任、国に故意が無い限り求償請求もできず
 → 第三者が国賠請求することもできない。
 b 東電に過失あり
 → 東電のみが責任、国に故意が無い限り求償請求もできず
 → 第三者が国賠請求することもできない。


・4条適用否定説に立った場合

B 国に過失あり
 a 東電に無過なし
 → 東電(無過失責任・原賠法)と国(過失責任・国賠法)の競合で、共同不法行為のような関係?
 → 5条適用無く東電から国への求償請求可
 → 第三者は、東電と国を両方訴えることができる。
 b 東電に過失あり
 → 東電(無過失責任・原賠法)と国(過失責任・国賠法)の競合で、共同不法行為のような関係?
 → 東電と国との過失割合に応じて求償権決まる。
 → 第三者は、東電と国を両方訴えることができる。


※一応上のように考えことができるが、国の関与の態様によっては、東電が責任を免れ、国だけが責任を負う可能性もある。
 たとえば原発事故が起きて、放射性物質が飛散し、その情報を東電も国も掴んでいるが、単に国の判断の鈍さ等で、国の権限である避難勧告や待避勧告等が著しく遅れて、住民がしなくてよい被爆をしてしまったような場合や、農作物等の出荷制限の出し方等について国に落ち度があり、そのため風評被害が発生し、その判断に東電が何ら関与していないような場合など、原発事故との条件関係はあるが、後に、国の異常な判断、過失行為等が関与して、結果が発生したような場合には、東電側にとって結果について予見可能性がなく、それらによる損害は原発事故と相当因果関係は無いとして、東電が免責され、国のみが国賠法で損害賠償義務を負うと考える余地があろう。
 もっとも、緊急事態において因果関係の切断があると認められるほどの国の異常な過失行為があったことの立証は困難だろうし、そもそも、他の損害のみでのも、それが莫大で国の「援助」(原賠法16条)なしには支払いをなしえないような場合には、国と賠償責任や求償を巡って対立する意味はほとんどなかろう。



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2011-04-24 : ・国の責任 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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