東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■原発事故による風評被害対策について考える その2 損害の立証

■原発事故による風評被害対策について考える その2 損害の立証

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【風評被害の種類】
1 人の汚染が恐れられて発生するもの
  避難者の宿泊拒否など
2 物の汚染が恐れられて発生するもの
(1)動産
 a 農作物、海産物、畜産物等一次産品(売れなくなる)
 b 食品加工物(売れなくなる)
 c 衣類・機器等工業製品(売れなくなる)
(2)不動産
 a 土地建物(売れなくなる、価値の低下)
3 場所の汚染が恐れられて人が来なくなって発生するもの
 a 観光業(宿泊施設・運輸業)(客減る)
 b 賃貸業、教育、娯楽、医療、その他サービス業(客・利用者減る)
 c 農業その他産業で労働者の不足による損失(労働力不足)
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1 風評被害といえるか
 まず,農作物等で考えれば,現に放射性物質で汚染されて,規制値を超えいてれば,風評というより現実に財物汚損があるので,賠償対象となる「原子力損害」に該当するはずである。あるいは出荷制限(原子力災害対策特別措置法第20条第3項,食品衛生法第6条第2号)や出荷自粛要請がなされているものも,同様に扱われるだろう。
 問題は,それ以外で汚染が全くなく,あるいは規制値以下で,出荷制限や自粛要請されていないものが,距離の近さ等から風評被害の対象となった場合である。

2 風評被害という営業損害については,他の財産上の損害と同様,その発生・存在を示す証拠と,その金額の評価に関する証拠の収集が必要である。

(1)風評被害の発生,存在を示す証拠
 原発事故による風評被害の発生は,通常,事故発生後,放射能漏れの情報が伝わり,食品や土壌大気等の汚染を示唆する情報が消費者に伝わり,小売店で食品等が売れなくなり,仲買,卸とその情報が伝わり,生産者が出荷しようとしても取引拒否される,あるいは,価格が大幅に下落するという過程をたどるはずである。さらに,その後は,生産者側での廃棄,生産調整等を強いられ,損害が拡大することになるはずである。
 風評被害による損害の発生,存在を示す証拠の収集とは,これら全経緯をできるだけ客観的な証拠で保存することである。
・農産物等の生産者は,自分自身で収集できるものとして,生産,出荷の記録類は当然必要であり,過去の取引関係書類も当然必要となろう。
・また自主的に検査等した場合はその費用等も損害に該当する可能性があるので,機器の入手や検査機関への依頼に関してかかった費用等を示す書類も保存しておくべきであろう。
・また,今回の原発事故は,地震と津波という自然災害を起点としているため,消費者の買い控え,売上げの低下が,大災害後の消費自粛によるものか判然としない可能性があるので,生産,卸,仲買,小売の各段階で,どのような経緯で,当該生産物について,そのような取引停止,価格下落に至ったのか,自治体,業界団体,組合を通してでも,記録,電話調査,録音,アンケート調査,小売店での客の態度に関する小売り関係者の証言等を,可能な限り客観的な形(録音,ビテオ,書類等)で保存しておくべきであろう。
・さらに,生産物の買い手が無くなり,廃棄せざるをえない場合も,廃棄過程は全て,可能な限り客観的な証拠として保存すべきである。廃棄数量等の記録,廃棄過程の写真,ビデオや,あるいは廃棄を業者に依頼するような場合には,その品目,数量,廃棄場所,廃棄方法,廃棄費用等の確認ができる形での領収書類をもらい保存しておくべきである。
・また,福島県やその近接自治体の観光産業などは,原発事故後に多数のキャンセル等が発生し,多大な損失を被ることになるが,キャンセル理由を示す客観的証拠の保存が必要となろう。キャンセル客が,自己の全く個人的な理由でキャンセルすることもあるし,自然災害に対する恐怖からキャンセルした可能性があり,裁判等ではその点について反論が出される可能性がある。そこで,ホテル,旅館等の観光業者としては,キャンセル客からできるだけその理由をきいて,記録し,また風評被害に関する事情を説明するなどして協力を得て,録音やアンケートはがき等で,福島第一原発事故による放射能漏れに対するおそれから宿泊予定等をキャンセルしたかどうかについて客観的証拠を得るべきだだろう。また,旅行代理店等を通した団体予約などの場合は,代理店の協力を得るなどして,キャンセル客に対するアンケート調査をしてでも,原発事故によるキャンセルであったことを示す客観的証拠を入手しておくべきであろう。

(2)風評被害の金額の評価に関する証拠
・それまでの取引価格を示す証拠は,重要な証拠になるので,過去の取引記録は,可能な限り保存しておくべきである。仮に廃業に追い込まれても,捨てずに過去の記録は保管すべきである。また,価格下落後のものも保管する必要がある。
・また,同産地同種商品の小売店での価格等の記録も参考になるかもしれない。
・各紛争解決機関で,損害がどような方法で算出されるか不明であるが,過去数年間の同時期の粗利益の平均額と,原発事故後の同時期の粗利益との差額が,損害になると考えるとすると,それらを示す決算書類,税務関係書類等は当然に必要である。

(3)経営努力,営業努力に関する証拠
 これは,後述の相当因果関係や過失相殺(民法722条2項)に関して問題となるが,ここで論じておく。
 風評被害にあった生産者が,過度に悲観して,過剰な廃棄や生産調整に至った場合は,過失相殺規定(民法722条2項)が適用され,その分,賠償額が減らされる可能性がある。あるいは,その場合,風評と損害との間に相当因果関係か無いとして,請求が認められない可能性がある。
 JCO臨界事故事件に関して,水産加工会社が風評被害による賠償を求めた事件で,平成15年6月24日水戸地裁判決(判時1830号103頁)では,損害の存在を否定した上,「更に取引を求めて交渉したり,当該品物の転売先を探す努力をした形跡は全くないのであり,そのような努力をしてもなお損失を被らざるを得なかったことを認めるに足りる証拠はないから,原告主張の損害には,本件事故との相当因果関係を認めることはできない」などとして請求を棄却している。
 したがって,風評被害を被った者が,廃棄や生産調整する場合には,営業努力をしてもそこに追い込まれざるえなかったという事実を示す証拠も同時に用意しておいた方がよいということである。生産者が取引停止されたり,価格を下げられたりしたら,前記のとおり,その経緯は保存しておくべきだし,他の取引先を探す努力をし,それらも断られたとしたら,その経緯を記録し,また取引を拒否した業者やその先の仲買,小売まで話を聞いて記録しておくべきだろう。また,生産物の場合,出荷時の値段が,生産に要する金額(原価)を下回ると,生産調整はやむを得ないことであろうから,価格交渉経緯の客観的証拠は重要と思われる。さらに,農協漁協等の業者団体による風評被害対策等の努力がなされていることも,その際の営業努力を示す証拠であり,風評被害抑止の業界の努力経過も写真,録音,ビデオ,書類等の客観的証拠で保存しておくべきである。


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2011-04-22 : ・風評被害対策 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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