東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- : スポンサー広告 :
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その9 第17条との関係

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その9 第17条との関係

原賠法17条
「政府は、第三条第一項ただし書の場合又は第七条の二第二項の原子力損害で同項に規定する額をこえると認められるものが生じた場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。」

条文では,16条は,3条1項本文の原子力損害の賠償に関する国の措置(「必要な援助」),17条は,3条1項但書の免責があった場合の国の措置(「被災者の救助」等の措置)が規定されている。
 最近の経団連会長や国会議員らの発言において誤解があると思われるのは,17条についてである。これは3条1項但書の場合に国による賠償の肩代わりや,補償措置を定めたものではなく,通常の災害時に国が当然になすべき被災者救助を注意的に規定しただけのものである。したがって,3条1項但書にあたる場合は,原子力事業者は賠償を免責されるが,かといって国が賠償義務を負うものではなく,その場合の原発事故による被災者は,自然災害の被災者と同様に,国家よって「救助」されるだけである。
 つまり法は,「異常に巨大な天災地変」という超不可抗力によって,原発事故が起きてしまったら,それは全体として巨大な自然災害と同様なものと考えて,通常の意味で災害救助を当然に国家が行うことを意図しているに過ぎない。翻って考えてみると,3条1項但書の「異常に巨大な天災地変」とは,原発事故も含めて全体として自然災害と見てよいほどの巨大なものであることが想定されているということになる。



 以下が,立法過程における17条に関する国会審議である。

-----------------------------
-衆-科学技術振興対策特別委…-13号 昭和35年05月18日
○中曽根国務大臣 条文のどこに書いてあるということはございませんが、この語の定義というものが、そういうふうに立法のときに了解してあるわけであります。そうして今お話になりました、しからば、その異常に巨大な場合にはどうするかという問題については、第十七条に規定してありまして、「政府は、第三条第一項ただし書の場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。」この場合は、一般の災害救助法もありますし、それ以外のこともありましょう。とにかく、そういう場合には、国民の民生に関することでもあり、生命財産に関することでもありますから、最善を尽くして必要最大の措置を行なうわけであります。しかし、それは、十六条とか、そのほかの場合における損害賠償という意味ではなくして、国の一般政策として当然これは行なうべきことでありますが、特に念のためにこれは書いてあるのでございます。
--------------------------
○中曽根国務大臣 これは災害救助法もございましょうし、ともかく、戦争や内乱が起きた場合に、国が乱れていろいろな事故が起きる、そういう場合におけるいろいろな応急措置、その他全般が入るわけでありますので、今からどうというように限定するわけには参りません。少なくとも、災害救助法程度のことはやるという、最低限のことは言えると思いますが、それ以上は、そのときの情勢によって、政府なり国会なりがきめることになるだろうと思います。
--------------------------
○中曽根国務大臣 外国の立法例で、第十七条のようなものを置いたものはないのであります。しかし、日本の場合は、特に国民の皆さんが心配されるという関係があって、第十七条というのを置きました。さらに「報告及び意見書の提出」というような条文が第六章にございまして、第十九条「政府は、相当規模の原子力損害が生じた場合には、できる限りすみやかに、その損害の状況及びこの法律に基づいて政府のとった措置を国会に報告しなければならない。」また、第二項に「政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力委員会が損害の処理及び損害の防止等に関する意見書を内閣総理大臣に提出したときは、これを国会に提出しなければならない。」こういう条文を特に置きました。これは各国の立法例にはございません。これはすべて国会に事態を報告して、国会の措置を仰げるようにしよう、国会は国民代表の機関でありますから、国家財政等とにらみ合わせて、国民の納得のいく措置をやっていただけるとも考えまして、条文を置いたのであります。茨城県の御要望の後段の方、異常、巨大というような場合まで、すべて国家が、法律上明記して、賠償に応ずるというようなところは書いてございませんけれども、それはほかの立法例にもございません。外国はすべて異常巨大の災害並びに社会的内乱という場合には免責されておりますので、大体外国の立法例にも従っておるのでございます
--------------------------
○奧村(又)政府委員 この十七条の場合は、先ほど中曽根大臣の御答弁にもありましたように、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたもの」というのでありますから、原子力損害だけじゃなしに、あらゆるり災害が起こるという――十六条は原子力の損実賠償だけに限る、十七条は、ほかに一般の災害もあるわけでありまして、主として行政措置として行なうという意味で書かれてあるので、規定の性格が全然違っておる、かように存ずる次第であります。
--------------------------
○奧村(又)政府委員 政府部内でその点についてまだ検討しておりませんが、この法律の趣旨からいきまして、十九条の規定は、主として十六条の規正を受けておるのでありまして、十七条はごらんの通り一般的な規定で、率直に言えば、この規定は法律にあってもなくても当然政府のなすべき規定でございますから、十九条は十六条を受けておる、かように私は読みます。もちろん、十九条もこれは含んでおる。しかし、主たるなには十六条であって、十九条の場合は、十七条ももちろん受けてはおりますが、十六条の方を主として受けておる、かように考えます。
---------------------------



 昭和34年12月12日に,原子力災害補償専門部会長我妻栄から原子力委員会委員長中曽根康弘に答申が出された時点では,以下のように予定されていた。

・「原子力事業者の要求される損害賠償措置では損害賠償義務を履行しえない万一の場合には、原子力事業者に対して、国家補償をする必要がある。」
→原子力事業者の責任の限定

・「損害賠償措置をこえる損害が生じたときにその超過額について国家補償を行なう場合である。この場合には、損害の発生について原子力事業者に故意または重大な過失があるときにのみ、政府は求償権を有するものとする。」
→上の賠償を国家が補償した場合で,原子力事業者が悪意又は重過失なら国は求償できる。



 しかし,昭和36年に現実に原賠法が成立した時点では,先の国会答弁のような制度になっており,我妻栄が,以下のように嘆くことになった。

------------------------
・ジュリスト1961年10月15日号(No.236)9【特集】原子力損害補償 原子力二法の構想と問題点 我妻栄
「「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」に該当する事例は稀有であろう。しかし、その場合には、国は「被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする」というだけである(17条)被害者にとっては、まことに心細いものであろう。なるほど、台風・水害の災厄は他にもある。しかし、たまたまそこに原子炉があり、不幸にしてこれに事故を生じたとすれば、風水害だけの損害と原子炉に事故を生じたために増加した損害とは区別されるはずである。後者だけを別に取り扱っても、不都合があるとは考えられない。 そもそも「異常に巨大な……動乱」などはほとんどありえないと考えるのなら、何もわざわざ、補償はしない、国の救助に信頼せよなどと国民に不安を与えずに、国が補償すると気前よく出てもよいはずだろう。それができないのは、原子力事業者に責任のない事項について国が責任をもつことは考えられない、という、答申とは根本的に反した思想に立つからである。」

-------------------------


 なお,電気事業連合会のサイトでは,以下のように説明されている(4/21現在)。

http://www.fepc.or.jp/faq/1189681_1457.html
「よくあるご質問
事故が発生した場合の損害を誰が補償するのか?賠償額は無制限なのか?わが国では、原子力発電所の運転等により原子力損害が生じた場合、原子力事業者がその損害を賠償することが、「原子力損害の賠償に関する法律」と「原子力損害賠償補償契約に関する法律」の二法により定められています。
この法律は、被害者の救済を確保するとともに、原子力事業者の負担を軽減するという、双方の利益に配慮している点が最大の特徴となっています。
原子力事業者は、同法にもとづき損害賠償措置として、保険会社との間で「原子力損害賠償責任保険契約」を、政府との間で「原子力損害賠償補償契約」を締結しており賠償措置額は1,200億円となっています。
原子力事業者が損害賠償措置額を超えた損害に対する賠償責任を果たせないような場合、あるいは原子力事業者の責任範囲外であるため損害賠償措置で補えない損害(わが国においては社会的動乱、異常に巨大な天災地変)については、国が原賠法上の援助、措置を行うことにより、被害者への補償を確約することで、被害者は確実な賠償または補償を得られます。 」


関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-04-20 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

Pagetop
« next  ホーム  prev »

プロフィール

text2

Author:text2
原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

全記事のリスト表示

全ての記事を表示する

検索フォーム

カレンダー

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

QRコード

QR

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アクセスカウンター

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
592位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
267位
アクセスランキングを見る>>
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。