東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- : スポンサー広告 :
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その14 計画停電による損失

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その14 計画停電による損失

 今回の計画停電で,何らかの損失を被った人が,東電に対して,何らかの請求ができないか検討してみる。ただし,未だ原発事故は終息せず,事実関係も不明である。このため以下は,全て仮定の話であり,特に原賠法以外の責任については,東電側に,今回の計画停電等について,なんらかの落ち度が存在したことが前提である。

計画停電では,下記のとおり,概ね2~3週間ほど混乱があっただろうか。
3月11日 震災津波
3月13日 14日からの計画停電アナウンス
3月14,15日 停電なし
3月16日 停電あり
その後,有ったり無かったり,混乱
4月8日 計画停電原則停止宣言?

【停電による損害】

(契約関係の有無)
・東電と電気供給契約を締結している者
→原賠法3条の賠償責任→過失立証不要,東電は原則無過失又は不可抗力の抗弁もできず
→民法415条の債務不履行責任→過失立証不要,東電が不可抗力又は無過失立証要す
→民法709条の不法行為責任→過失立証必要
・東電と電気供給契約を締結していない者
→原賠法3条の賠償責任
→民法709条の不法行為責任

(現実の停電の有無)
・現実の停電での被害
・停電予定アナウンスでの被害




【原発事故を起点として考えるパターン】

1 原賠法上の責任
 まず,今回の計画停電による損害を,原発事故を起点として考えると,この損害が類型として「原子力損害」に該当しうるかが問題となる。「原子力損害」に該当しうる場合は,相当因果関係のある損害といえる限り,東電側の過失の有無にかかわらず,賠償請求できることになる。
 「原子力損害」の解釈については、こちら。http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-16.html 
まず、「原子力損害」の意味を、2条2項の字義どおり,核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用により生じた損害として、狭く考えていく限定説では、計画停電による損失は、「原子力損害」には当たらないことになろう。
 これに対して、いくつかの下級審判例のように、原子炉の運転等(2条1項)により発生した損害で,2条3項の「作用」と相当因果関係あるもの全てを含むと広く捉える説では、「原子力損害」に該当する可能性がある。
 相当因果関係は、一般の社会通念上、その原因があれば、その結果が生じることが、通常といえるかという観点で判断される。
 そこで,福島第一原発の事故があれば,通常,電力不足になって,不可避的に計画停電に陥るということであれば,相当因果関係は肯定されよう。しかし,福島第一の事故があろうが無かろうが関係なく,大地震と大津波で,火力発電所を含む他の多数の発電所の停止があって,主としてそちらが理由で,必然的に発電量不足が発生し,計画停電に至ったような場合には,福島第一の原発事故があれば,計画停電が生じることが通常であるとはいえないとして,裁判では相当因果関係が否定されるかもしれない。
 また,そうでなくても、原賠法について,今までの判例で扱われた事例は、放射線による身体の障害、原発事故によるPTSD等精神的損害、危険性認識による近隣土地の価値の下落、漁業や加工食品への風評被害等が問題となったものであり、これらに共通するのは、放射性物質の危険性が前提で、その物理的又は精神的影響により発生した損害であって、計画停電による損失をこれらと同様に考えてよいのかは問題である。そもそも原賠法3条は、危険責任の法理に基礎を置くものであることから、核燃料物質の特殊な危険性から、かなり遠い損害であるこういつた損害までは、「作用」(2条2項)によるものとは言えないとして、無限定説に立った場合でも、「原子力損害」には当たらないとされる可能性もある。

2 債務不履行責任
 これは契約上の責任の追及であって,債務不履行(停電等)がある以上,起点を問題とする必要がないので後述。
 なお、上で「原子力損害」に該当すると考えた場合に、契約上の責任も問えるか否か問題となるが、原賠法が不法行為の特則であるという理由で民法709条を排除するとすれば、この場合、債務不履行責任の追及を否定する理由はないと思われる。〔ただし,平成20年2月27日・水戸地裁判決では,原賠法で,債務不履行責任に関する規定も排除するような判決文になっている。〕

3 不法行為責任
 まず,原賠法の「原子力損害」に該当する場合には,判例上は,原賠法以外に,民法の不法行為責任を別途問題とできない(水戸地裁平20年2月27日判決判タ1285号201頁)。
 停電による損失を「原子力損害」以外のものとする場合は,民法709条の不法行為責任が問題となうる。そしてこの場合,原発事故について,東電側の故意又は過失と,原発事故と損害との間の相当因果関係の立証が必要になり,先に述べたのと,同様の問題となり,福島第一の事故があろうが無かろうが関係なく,大地震と大津波で,火力発電所を含む他の多数の発電所の停止があって,主としてそちらが理由で,必然的に発電量不足が発生し,計画停電に至ったような場合には,福島第一の原発事故があれば,計画停電が生じることが通常であるとはいえないとして,裁判では相当因果関係が否定されるかもしれない。



【計画停電を起点として考えるパターン】

1 原賠法上の責任
 計画停電自体は,原賠法2条1項の「原子炉の運転等」に該当しないので,ここを起点とする限り,原賠法上の責任追及はできない。

2 債務不履行責任
 これは計画停電ないしその判断に落ち度あったとして,電気供給契約に基づく契約上の責任を追及するものである。
 東電の電気供給約款(平成22年10月12日)には以下のように書かれてある。〔なお工場等の大口需要家との契約は別ものと思われる。〕

----------------------
40 供給の中止または使用の制限もしくは中止
(1) 当社は,次の場合には,供給時間中に電気の供給を中止し,またはお客さまに電気の使用を制限し,もしくは中止していただくことがあります。
イ異常渇水等により電気の需給上やむをえない場合
ロ当社の電気工作物に故障が生じ,または故障が生ずるおそれがある場合
ハ当社の電気工作物の修繕,変更その他の工事上やむをえない場合
ニ非常変災の場合
ホその他保安上必要がある場合
(2) (1)の場合には,当社は,あらかじめその旨を広告その他によってお客さまにお知らせいたします。ただし,緊急やむをえない場合は,この限りではありません。
42 損害賠償の免責
(1) 40(供給の中止または使用の制限もしくは中止)(1)によって電気の供給を中止し,または電気の使用を制限し,もしくは中止した場合で,それが当社の責めとならない理由によるものであるときには,当社は,お客さまの受けた損害について賠償の責めを負いません。
(2) 36(供給の停止)によって電気の供給を停止した場合または48(解約等)によって需給契約を解約した場合もしくは需給契約が消滅した場合には,当社は,お客さまの受けた損害について賠償の責めを負いません。
(3) 漏電その他の事故が生じた場合で,それが当社の責めとならない理由によるものであるときには,当社は,お客さまの受けた損害について賠償の責めを負いません。
-----------------------

 今回の計画停電が,電気事業法27条によるものではなく,東電の自主的なものであるとすると,その根拠は,上の約款の40条(1)ということになろう。
 この場合,同約款42条,「それが当社の責めとならない理由によるものであるときには,当社は,お客さまの受けた損害について賠償の責めを負いません」とあるので,これは東電の債務不履行について東電に帰責事由がある場合には,賠償責任を負うことを前提とするもので,民法の規定(民法415条)の確認にすぎない。

 事実関係が不明なので,どういう債務不履行がありうるのか考えてみる。

A 客観的に電力不足だった
 →履行不能
 ※不能に至った経緯(発電所の防災対策等に問題?)に,過失が無かったか否かが問題。

B 客観的には電力不足ではなかった
 B1現実に停電された
 →履行遅滞?不能?
 ※そもそも停電実施の判断になんらかの落ち度? 節電の呼びかけで十分だった?
 B2アナウンスだけで現実には停電されなかったが迷惑被った
 →不完全履行?
 ※実施判断および計画に落ち度?
 
 上のどの類型でいくかによって,東電側のどの落ち度(故意又は過失)を突いていくかが異なるが,いずれにしても債務不履行がある以上は,東電側が,計画停電について帰責性なきこと(無過失)の立証をしなければならない。

 なお,どの場合でも,計画停電ないしそのアナウンスと損害との間の相当因果関係の立証は必要である。原発事故を起点にしなくてよい。損害内容によるが計画停電(ないしそのアナウンス)と損害との相当因果関係は比較的容易に立証できそう。あとは東電が無過失ないし不可抗力の抗弁を出してきて,それが認められる否かで勝敗が決まるだろう。

3 不法行為責任
 電気供給契約当事者でなくても,請求可能性がある。ただし,2の債務不履行責任の場合と異なり,請求する側が,東電の故意又は過失を立証しなければならない。それ以外はほぼ同様。
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-04-19 : ・二次的損害,間接被害者等 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

Pagetop
« next  ホーム  prev »

プロフィール

text2

Author:text2
原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

全記事のリスト表示

全ての記事を表示する

検索フォーム

カレンダー

10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

QRコード

QR

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アクセスカウンター

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
1090位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
470位
アクセスランキングを見る>>
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。