東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■2条「原子力損害」の意味・範囲 その13 風評被害6 地価の下落

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その13 風評被害6 地価の下落

原発事故と土地価格の低下

(1)汚染がひどく長期間住めない,あるいは土地改良に莫大な費用がかかる。
→地価の低下が当然予想され「原子力損害」といえる。
→事実上売却不能で事故時の地価全部が損害?

(2)汚染がひどいが一定期間経過後に戻って以前と同じく健康に生活できる。
→地価の低下が当然予想され「原子力損害」といえる。
→損害額をどのように認定すべきか?。使用価値×期間?
→しかし,汚染が止んでも,一旦汚染されたということから,その後も忌避される可能性あり。
※風評被害の問題と同様に考える?。

(3)汚染が軽く住んでいても健康に全く問題はない。
→微量といえども汚染があることから,土地が忌避される可能性あり
※風評被害の問題?

(4)近隣ではあるが放射性物質による汚染が全くないもの。
※風評被害の問題

(5)遠方の他の原発施設の付近の土地
※風評被害の問題

※風評被害(考え方http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-44.html
 上の(2)から(5)までの場合で,現実に地価の低下がおきた場合にどのように考えるのかが問題となろう。
 原発事故と地価低下との相当因果関係について,その土地を忌避するかどうかを,一般通常人を基準とする説に立ち,科学的に安全である以上,そのような忌避は特殊な事情であるとして相当因果関係が否定される可能性がある。→地価下落は損害認定されない?
 あるいは,汚染された程度や,原発との距離とか,ひどい汚染土地に隣接するとか,その他諸般の事情を考慮して,一般通常人から見て,そのような忌避が一般に是認されるものであるとされると,原発事故と相当因果関係のある地価の下落として,「原子力損害」と認定される可能性もあるのか?。
 なお、(5)の場合は、下の判例のような判断によると、「原子力関連施設が存在すること自体から生じる一般的な危険性の再認識」に過ぎないとして、相当因果関係が否定され、「原子力損害」には該当しないことになろう。


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〔判例〕
 業者が,売却予定で宅地造成中に,JCOの臨界事故が起き,予定価格での売却ができなったとして,原賠法等を根拠に損害賠償請求した事例
①平成16年9月27日東京地裁判決(判タ1195号263頁)
 原賠法3条1項の「原子力損害」の解釈として,土地価格の下落のような純粋経済損失も「原子力損害」に該当しうる余地を認めつつ,損害と相当因果関係の存在を否定し,請求を棄却した。(事案の特殊性として,裁判所の認定では売却時点では時価はほぼ回復していたこと,事故現場から約3キロの地点であるが汚染はなかったこと,売り出し時点でJCO東海事業所が閉鎖され同所が再度事故を起こす危険がなくなっていたこと等がある)
「本件臨界事故が,東海村の住民に本件土地の放射能汚染のおそれや,被告が再び同様の事故を起こすおそれを意識させ,その結果,本件土地の価格の下落が生じたのであれば,その下落は,本件臨界事故と相当因果関係のある損害につながるということができるが,本件臨界事故が,被告東海営業所が存在することから生じる危険性ではなく,原子力関連施設が存在すること自体から生じる一般的な危険性を再認識させることになり,それが本件土地の価格の下落の主たる原因であるとすると,原子力関連施設の存在すること自体から生じる危険性は,本件臨界事故の前後を通じて変化があったわけではないから,被告が主張するとおり,本件臨界事故と本件土地の価格の下落との間に相当因果関係を認めることはできない。(そのような一般的な危険性の再認識は,東海村だけに限らず,日本各地の原子力施設の存在する土地に同様に生じうる。)」

②平成17年9月21日東京高裁判決(判時1914号95頁)
 ①の控訴審判決。控訴棄却。
「一般的危険性が再認識される原子力関連施設の存在状況は,本件臨界事故の前後を通じて変化があったわけではないのであり,そうすると,本件臨界事故と控訴人主張の本件土地の価格の下落損失との間に相当因果関係があるとまで認めることはできない」
「本件証拠関係から認められる被控訴人東海事業所と本件土地との距離ないし位置関係,本件臨界事故の発生状況,本件臨界事故発生後に東海村及び茨城県によって行われた避難勧告等の内容,その後の臨界の終息及びそれが確認されたこと,上記の避難勧告等の解除,本件臨界事故による食品,水,土壌汚染等に対する影響についてなされた茨城県等の検査結果とその公表,前示のような,被控訴人に他する原子力事業許可の取消処分,これに従い被控訴人東海事業所が原子力事業に起因する危険を引き起こす存在でなくなったこと,このような事態に対する一般の認識が広まり,住民の定住志向の回復がみとめられることなどの諸事情を総合して考えると,本件臨界事故と控訴人主張に係る下落損害との相当因果関係を認めるべき根拠と解することはできない」

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上のJCO事故の控訴審判例で類推すると

 福島第一原発について,原発事故が終息し,避難勧告が解除され,現場の放射性物質が全て処理され,政府によって安全宣言がなされ,廃炉等によって再び同様の事故が起きる危険性がなくなり,水や食品,土壌等について,放射能汚染か無いことが自治体等の検査によって確認され,そのような事態に対する一般の認識が広まるに至っている場合には,その時点で,仮に何らかの理由で地価が低下していても,それは原発事故と相当因果関係ある損害とは言えないということになるのであろうか。
 しかし,今回の事故と,比較的短期間(2ヶ月程度)で安全宣言がなされ,汚染も今回ほどひどくは漏れなかったJCO事故とでは,全く様相が異なってくるのではないか。



なおJCO事故のついて原子力損害調査研究会の損害認定指針は以下の通り
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5[財物汚損]
(指針)
 現実に発生した以下のものについては、損害と認められる。
 I)  動産については、当該動産が本件事故の発生当時茨城県内にあり、その種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたものと認められる場合には、現実に価値を喪失し又は減少した部分について損害と認められる。
 II)  不動産については、i)売却予定のない所有不動産の価値が下落したことを理由とする請求については、現実の損害発生を認めることはできず、賠償の対象とは認められない。
ii)不動産売買契約の解約、不動産を担保とする融資の拒絶又は売却予定価格の値下げを理由とする請求については、請求者の側が、当該不動産が屋内退避勧告のなされた区域内にあること、その不動産取引について既に売買契約等が締結されているか締結の可能性が極めて高い状況であり、対価額等も確定しているか確定しつつあること、平成11年11月末までに生じた解約や値下げであり、これらに応じざるを得なかった相当な事由があったこと、更に解約の場合には当該不動産を緊急に売却処分せざるを得なかった相当な事由があったこと、その解約や値下げが本件事故を理由とするものであること、当該請求の合理性(損害の発生と損害額)を立証した場合には、賠償が認められる余地がある。
iii)賃料の減額を行ったこと又は本件事故後に賃貸借契約を解約されたことを理由とする請求については、請求者の側が、当該賃貸不動産が屋内退避勧告のなされた区域内にあること、現に賃貸借契約が締結されていたこと、平成11年11月末までに賃貸借契約の解約又は賃料の減額がなされ、これらに応じざるを得なかった相当な事由があったこと、賃料の減額又は解約が本件事故を理由とするものであること、当該請求の合理性(損害の発生と損害額)を立証した場合には、賠償が認められる余地がある。
(備考)
 1)  I)については、前記4[検査費用(物)](備考)の1)に同じ。
 2)  II)のi)、ii)については、不動産の特殊性に由来する価格形成過程の複雑さ等にも十分配慮して、賠償の要否及び範囲を慎重に検討する必要がある。
 不動産の価格は、取引当事者の取得目的等に大きな影響を受けるものであり、これを一義的かつ客観的に把握することが非常に困難であることが多い。
 不動産の価格は、景気等からも大きな影響を受ける。そして、一般的な動産とは異なり、一度下落した価格が再び上昇することも十分にあり得る。
 不動産の価格が一時的に下落したとしても、当該不動産が滅失して利用可能性を喪失することはなく、これを廃棄する行動に出ることも考えられない。
 3)  II)のii)については、不動産の売却の予定がない以上損害が現実に発生しているとはいえないうえ、仮に価格が一時的に下落したとしても将来回復し又は上昇する可能性があること、本件事故による価値の下落分を一義的かつ客観的に把握できないこと、価格の下落が見られても、不動産自体の利用可能性は些かも失われないこと等からして、賠償の対象とすることは妥当でない。
 II)のii)については、当該価格で売却できることが確定していた又は確定しつつあった状況のもとで、本件事故の発生を理由に当該減額又は解約(合意解約)がなされたこと等の前記各事実を請求者が立証した場合には、賠償が認められる余地がある。これに対して、当該減額又は解約が本件事故の発生を理由とする旨を立証できな
い場合、当該価格で売却できる状況又は売却できつつある状況にあったことが確定していなかった場合、売却交渉が進行中であったが売買代金額等の売買条件が全く未確定であった場合等では、本件事故に起因する「損害」が発生したものと認めることは極めて困難である。
 II)のiii)についても、本件事故の発生を理由として賃貸借契約を解約又は賃料の減調額がなされ、これらに応じざるを得なかった相当な事由があったこと等の前記各事実が請求者によって立証された場合には、営業損害の考え方に準じて相当な期間の減収分について損害と認められる余地がある。
   4)  なお、損害が発生したと認められる場合であっても、賠償すべき損害額の算定にあたっては、損失の公平かつ適正な分担を図る見地から、具体的な事実関係に従って、過失相殺や原因競合等の法理論を適用すべき場合(例えば、その性質から廃棄の必要性が認められない動産を軽率な判断で廃棄してしまった場合など)もあり得る。

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2011-04-18 : ・風評被害 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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