東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その7 過失の競合と立証責任

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その7 過失の競合と立証責任

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1「異常に巨大な天災地変」に該当しないとき→3条1項本文の責任あり
2「異常に巨大な天災地変」に該当するとき
(1)原子力事業者に過失なし→3条1項但書で免責
(2)原子力事業者に過失あり(「によつて生じた」の解釈?)
 A 過失があっても無くても当該原発事故が発生したといえるとき
 B 過失と災害が相まって当該原発事故が発生したといえるとき

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 上の2(2)のAとBの場合に,どう解釈するかが問題となる。
 
1 Aの場合
 この場合,原子力事業者の過失の有無にかかわらず,同一結果が生じたといえる以上,不可抗力性ははっきりしており,但書の適用による免責は認められることにろう(択一的因果関係?として,条件関係ないし相当因果関係の否定の問題として捉える余地?)。
 ただし,通常は,過失が存在し競合したような場合では,それが無き場合と全く同一の「その結果」が生じたといえる場面は少なく,過失が競合して損失が拡大しているような場合は,次ぎのBの場合に該当するはずである。

2 Bの場合
 原子力事業者の過失と自然災害が相まってその事故が発生したような場合どう考えるかが問題となる。
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・原子力災害補償専門部会の答申(昭和34年12月)
「原子力事故による原子力損害については原子力事業者が無過失責任を負うものとし、きわめて特別の場合にのみ免責されるものとする」

・原子力委員会内定「原子力災害補償制度の確立について」(昭和35年3月)
「原子力損害については、その損害を生ぜしめた原子力事業者が無過失責任を負うものとし、不可抗力性の特に強い特別の場合にのみ免責されるものとする」

・衆議院国会審議(昭和35年5月17日)の中曽根趣旨説明
「無過失責任といたしましたのは、原子力の分野においては、未知の要素が含まれるという実情にかんがみ、原子力損害の発生について故意、過失の存在しない場合も考えられ、また、かりにこれらの要件が存在するといたしましても、その立証は事実上不可能と認められるからであり、一方、近代科学の所産である危険を内包する事業を営む者は、よって生ずる損害については故意、過失の有無を問わず責任を負うべしとして無過失責任を課している各国の例に徹しても妥当であると考えられるからであります。また、原子力事業が広範な産業の頂点に立つ総合産業でありますだけに、損害発生時における責任の帰属が不明確になる場合が予想されるのであります。それでは被害者の保護に欠けるばかりでなく、原子力事業に対する資材、役務等の供給が円滑を欠き、事業そのものの発達が阻害されることとなるおそれが強い点もあわせ考慮して責任の集中を行なったのであります。従ってまた、損害の発生が資材、役務の供給に原因するような場合にありましても、原子力事業者の求償権は原則としてこれらの者に故意がある場合に限って行使できるものとしたのであります。ただし、異常に巨大な天災地変等によって損害が生じた場合まで、原子力事業者に賠償責任を負わせますことは公平を失することとなりますので、このような不可抗力性の特に強い特別の場合に限り、事業者を免責することといたしたのであります」

・ジュリスト1961年10月15日号13頁(No.236)【特集】原子力損害補償 原子力災害補償をめぐって(座談会)我妻栄,鈴木竹雄,加藤一郎,井上亮,福田勝治,堀井清章,長崎正造,杉村敬一郎
(3条1項但書について)井上「これは無過失責任の原則を原子力事業者に適用したが,諸外国の例にもあるように不可抗力性の特に強い天災地変や社会的動乱の場合に,一体原子力事業者に最後まで賠償責任を負わすべきかどうかという点について,結論的にはこういう表現のただし書きをおいたのであります。」
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 立法経過を考慮すれば,3条1項但書は,原子力事業者に,重い無過失責任を課した一方で,特に不可抗力の強い場合に,例外的に免責するための規定を置いたものと理解されるはすで,過失と自然力が相まって当該原発事故が発生したような場合には,それは原子力事業者の過失が無ければ避けることができた事故ということになり,「不可抗力性の特に強い」(原子力災害補償専門部会の答申(昭和34年12月)等)場合とはいえず,また「異常に巨大な天災地変」には該当するが、当該事故は「によって生じたもの」とは言えないとして、但書の適用による免責はないことになろう。つまり、但書に該当する場合は,無過失責任の負担が緩和され,過失責任の原則に戻る、あるいは無過失の抗弁が許される状態に戻るという理解でよいのではなかろうか。
〔もっとも立法過程を見ると,「異常に巨大な天災地変」については,想像を絶するようなものと考えられていたようで,これは,そもそも過失など問題とならないほどの異常に巨大なものだと考えると,二つが相まってはじめて損害が生じるような、上のBのようなケースは存在しないのかもしれない。〕

3 立証責任の問題
 まず,原賠法3条1項本文との関係で,例外としての同条項但書がある以上,通常の文言の解釈としては,「異常に巨大な天災地変」の存在については,抗弁としてそれを主張する原子力事業者がその立証責任を負うはずである。
 そして「異常に巨大な天災地変」の存在が立証されたとして,無過失の立証,ないし過失があっても同事故となっていたことの立証を原子力事業者が負うべきか,あるいは但書の適用否定を主張し,損害賠償請求する側が,原子力事業者の過失を立証すべきかが問題となろう。
 この点,過失の競合の問題を,因果関係(条件関係+相当因果関係)の存在の問題と理解すると,異常に巨大な天災地変「によって生じた」(因果関係)ことの立証責任は,文理からして,但書適用を主張する側の原子力事業者が負うことになる。そうではなくて,純粋に過失の有無の問題として,通常の不法行為(民法709条)と同様に考えれば,その立証責任は賠償を請求する被害者側にあることになる。もっとも,立証責任の分担は,理論的に厳密に決定しうるものではなく,最終的には,法の趣旨(原賠法1条)や公平の理念等から,裁判所が判断するということになろう。

〔結論〕
・原子力事業者に有利な解釈
但書適用による免責が認められるには,原子力事業者が
①当該災害が「異常に巨大な天災地変」であること
②当該災害と当該原発事故との因果関係の存在
を立証すればよい。

・原子力事業者に不利な解釈
但書適用による免責が認められるには,原子力事業者が
①当該災害が「異常に巨大な天災地変」であること
②当該災害と当該原発事故との因果関係の存在
③原子力事業者の無過失(ないし過失の有無にかかわらず当該事故が発生したこと)
の立証を要する。

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2011-04-18 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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