東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■2条「原子力損害」の意味・範囲 その12 東電株暴落による株主の損失

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その12 東電株暴落による株主の損失

 現在、事故前の4分の1程度まで下落しているようだが、この下落が原発事故に起因することは明白で、事故前から株主であった者は、多大な損失を出しているだろう。そこで、この責任を東京電力やその役員に直接問えないかが問題となる。結論としては、「原子力損害」の解釈よりも、会社法上の理屈で、最近の下級審判例の趣旨に従う限り直接請求には困難性があり、株主の損害回復は、責任追及等の訴え(会社法847条・株主代表訴訟)を通じて行われることになるのではないか。

第1 株価下落による損失は原賠法3条の「原子力損害」に該当するのか?
 「原子力損害」の解釈については、こちら。http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-16.html
 まず、「原子力損害」の意味を、2条2項の字義どおり,核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用により生じた損害として、狭く考えていく限定説では、株価下落による損失は、「原子力損害」には当たらないことになろう。
 これに対して、いくつかの下級審判例のように、原子炉の運転等(2条1項)により発生した損害で,2条3項の「作用」と相当因果関係あるもの全てを含むと広く捉える説では、「原子力損害」に該当する可能性がある。
 相当因果関係は、一般の社会通念上、その原因があれば、その結果が生じることが、通常といえるかという観点で判断されるので、大規模原発事故があれば、東電株が暴落するのは通常のことといえ、相当因果関係は認められることなろう。
 ただし、今までの判例で扱われた事例は、放射線による身体の障害、原発事故によるPTSD等精神的損害、危険性認識による近隣土地の価値の下落、漁業や加工食品への風評被害等が問題となったものであり、これらに共通するのは、放射性物質の危険性が前提で、その物理的又は精神的影響により発生した損害であって、株価の下落をこれらと同様に考えてよいのかは問題である。そもそも原賠法3条は、危険責任の法理に基礎を置くものであることから、核燃料物質の特殊な危険性から、かなり遠い損害である株価の下落までは、「作用」(2条2項)によるものとは言えないとして、無限定説に立った場合でも、「原子力損害」には当たらないとされる可能性もある。
 以下、場合分けして検討してみる。

第2 株価下落による損失が「原子力損害」に当たらないとした場合(民法・会社法によるもので過失立証必要)
 1 株主から取締役ら役員個人に対する責任追及
 第三者からの、取締役個人に対する責任追及については、こちら(http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-45.html)で述べた。株主といえど会社との関係では「第三者」であり、損害が、「原子力損害」に該当しない場合は、その損害の賠償を取締役ら役員個人に請求できる可能性がある。
 ただし、これは株主としての地位と全く関係なく原発事故等から直接被害(避難者等)を受けた場合や、株主としての地位に基づくとしても株主平等原則に反する扱いを受けた場合(直接損害)であって、株価下落による損失(間接損害)については、会社法上の別の問題がある。
 取締役の任務懈怠等によって、会社が損失を出し、その結果株価が暴落し、株主が損失を被ったような場合(間接損害)、株主は株主代表訴訟によらずに、個人で役員に損害賠償請求できるのかという問題(会社法429条「第三者」の範囲等)である。
 最高裁の昭和44年11月26日判決では、間接損害も含むと理解されていたのであるが、近時の下級審判例でこれと異なった結論が出されてきている。
 東京地判平成8年6月20日(判タ927号233頁)では、いわゆる間接損害に関する限り株主は代表訴訟を提起すべきで,商法266条の3(現行会社法429条)に基づく請求を提起できないとし、東京高判平成17年1月18日(雪印食品損害賠償請求事件控訴審判決・金融商事判例1209号10頁)では、公開会社の業績悪化による株価下落など,全株主が平等に不利益を受けた場合,株主は特段の事情がない限り商法266条の3のみならず民法709条によっても取締役に対して直接損害賠償を請求することはできないとした。このような結論に至るのは、①資本維持原則、②424条以下の免責規定との均衡論、③株主平等原則その他が理由である。
 したがって、こと株価下落による損失に関する限り〔決算書類の不実記載等については金融商品取引法、旧証券取引法上の別の問題あり〕、株主から、役員個人への直接の責任追及は、こういった最近の判例に従うかぎりできないことになる。
 2 株主から会社に対する責任追及
 株価下落によって被った損害について、株主が、会社に対して、直接に損害賠償請求しうるかという問題であるが、これについても上記と同様の問題がある。会社への請求根拠としては、民法709条、同715条、会社法350条があり、特に会社法の350条の「第三者」の範囲が論点となっている。
 ここで、「第三者」に株主が含まれるという説に立つと、株主から会社への請求が可能となる。
 逆に、上の会社法429条の「第三者」と同様に、「第三者」には株主が含まれないという説に立つと、株主から会社への直接請求はできず、株主は株主代表訴訟を通じて、取締役ら役員から会社に損害を賠償させて、それによって株価を回復して、株価下落の損害を回復せよということになる。〔こういった考え方は、要するに株主は、会社との関係で、全くの第三者ではなく、株主総会を通じて、取締役を選任できるわけだし、自分が雇った役員がヘマをやらかして、会社に損失が出たとしても、それはある程度甘受せよ、あるいは代表訴訟を通じて回復せよという判断があるのかもしれない。〕

第3 株価下落による損失が「原子力損害」に当たるとした場合(原賠法3条によるもので過失立証不要)
 1 株主から取締役ら役員個人に対する責任追及
上記の同様、会社法上の問題があるが、いずれにしても、原賠法4条の責任集中の原則により、取締役は、「原子力事業者以外の者」として免責されることになろう。
 2 株主から会社に対する責任追及
 原賠法3条は、民法の不法行為規定の特則と理解されているので、株価下落の場合に、民法709条で株主が会社に損害賠償請求できるのかという論点と同様の問題であり、これについても、資本維持原則、その他の理論で、否定する説と肯定する説に分かれることになろう。


〔結論〕
1 株価下落による損失が「原子力損害」に当たらないとした場合
(1)株主から取締役ら役員個人に対する責任追及
  可?→古い最高裁判例
  不可→最近の下級審判例
(2)株主から会社に対する責任追及
  可?
  不可→最近の下級審判例の趣旨から
2 株価下落による損失が「原子力損害」に当たるとした場合
(1)株主から取締役ら役員個人に対する責任追及
  不可→原賠法4条
(2)株主から会社に対する責任追及
  可?
  不可→最近の下級審判例の趣旨から


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2011-04-17 : ・二次的損害,間接被害者等 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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