東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■4条 責任集中の原則 その5 東電経営者の責任はどうなるのか?

■4条 責任集中の原則 その5 東電経営者の責任はどうなる?

未だ原発事故は終息せず,事実関係も不明である。このため以下は,全て仮定の話で,東電の役員(取締役等)に,今回の事故について,なんらかの落ち度が存在したことが前提である。

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〔取締役ら役員個人の責任について〕

1 民事責任
(1)対第三者責任
・民法上の債務不履行責任(停電等での電気供給契約に基づく責任・民法415条)
・民法上の不法行為責任(民法709条)
・会社法上の責任(会社法429条)
・原賠法上の責任(原賠法3条)
(2)対会社責任
・民法上の債務不履行責任(民法415条)
・民法上の不法行為責任(民法709条)
・会社法上の責任(会社法423条)

2 刑事責任
(1)刑法(211条)
・業務上過失致死罪(従業員の死亡について)
・業務上過失致傷罪(被爆や負傷した従業員等について)
(2)特別法
・原子炉等規制法(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律)
・労働安全衛生法
・電気事業法etc

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1 民事責任
(1)対第三者責任
・民法上の債務不履行責任(停電等での電気供給契約に基づく責任)
 電気供給契約の当事者は,東電と契約を結んでおり,取締役個人との契約ではないので,東電に対する請求はまだしも,取締役個人に契約上の責任追及はできない。
※震災後の停電,計画停電等で電気供給契約の当事者(個人・企業)が,損失を被っているはずで,東電側に過失があった場合,被害者は,契約に基づく責任を東京電力に追及したいところである。これには難しい問題が多数からんでくる。別項で扱いたい。(そもそもこの停電による損害が「原子力損害」といえるのかという問題がある。また因果関係についても,大震災と大津波が起点となっており,他の発電所の停止もあることから,停電は原発事故のみを原因とするものではない。原発事故が仮になくても,震災津波で他の発電所も停止せざるを得なかったといえるような場合だとしたら,相当因果関係が認められるのか問題があろう。あるいはそうでないとしても,自然力が競合した場合に,その責任負担をどう考えるのかという問題(自然力競合の場合の減責,割合的因果関係論?)がある。さらに,「原子力損害」に該当した場合に,原賠法以外に,民法の不法行為責任が別途問題とならないように(水戸地裁平20年2月27日判決判タ1285号201頁),民法の債務不履行責任(民法415)も同様に適用排除されるのかも問題となろう。)
〔結論〕
 不可

・民法上の不法行為責任(民法709条)
 東電と契約関係の有無にかかわらず第三者が被ったあらゆる損害が問題となろう。
 「原子力損害」に該当するとされるものについては,そもそも民法709条の適用はないものと解されているので,取締役ら個人に対する賠償請求を民法709条を根拠として行うことは困難であろう。そもそも原賠法4条責任集中原則との関係でも困難である。
 「原子力損害」に該当しないとされるもの(原発事故に起因し,かつ「原子力損害」に該当しないものとは?。停電による損失は?株価下落による損失は?→別項)については,民法709条の責任を問いうる予知もあるはずである。
 ただし,取締役が業務と関係なく飲み屋で酔っぱらって人を殴ったとかのケースでなく,そもそも取締役の業務執行上の落ち度を問う場合には,会社法429条との関係が問題となり,同条の性質の理解(法定責任説,不法行為責任説)などによって見解は異なりうる。判例では,法定責任説に立って,会社法429条と民法709条の競合の余地を認めることになろうから,民法709条の不法行為責任を問う余地はあろう。
〔結論〕
「原子力損害」→不可
「原子力損害」以外→可?

・会社法上の責任(会社法429条)
「会社法429条1項  役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。 」
 「原子力損害」に該当するものについては,民法709条の不法行為責任の適用はないものと解すなら(前掲判決),会社法429条1項の法的性質について不法行為責任説に立つ場合,同様に適用排除されることになろう。法定責任説に立つなら,第三者保護の見地から,429条の競合を認める余地もあろう。
 ただし,こう解したとしても「原子力損害」に該当する以上,原賠法4条の責任集中の原則の適用が問題となってくる。同法4条については,原子力損害について賠償責任を「原子力事業者」に集中し,被害者が賠償請求相手を特定しやすくするとともに,莫大な損害になりかねない原子力損害に関して,原子力事業者に機器や原材料等を提供する関係業者の責任を軽くして,もって原子力事業の発達を図ろうとしたものである。そこで取締役は関係事業者ではなから,同法での免責はないと解する余地もあろう。
 この点について,前掲判決事案では,原子力事業者(JCO)とともに,その親会社(住友金属鉱山)の責任が追及され,裁判所は,「原賠法上,被告住友金属鉱山が本件において損害賠償責任を負う余地はない」として4条を前提として,親会社への請求を失当としている。
 そもそも,取締役も東電と委任契約している受任者であり,関係事業者と言えなくもなく,莫大な損害を負わせられる可能性の下ではなり手がなく,「原子力事業の健全な発達」(1条)を図れないということもあるかもしれない。また4条1項の文言上は「原子力事業者以外の者」について限定はなく,裁判では,おそらく取締役についても,4条1項の免責が認められるのではなかろうか。なお,取締役らが「原子力事業者」そのものには該当しないことは,2条3項の定義から当然とされよう。
 「原子力損害」以外の損害については,取締役らは,職務を行うについて悪意又は重過失があれば,第三者に対する賠償責任を負う可能性がある。
〔結論〕
「原子力損害」→不可
「原子力損害」以外→可

・原賠法上の責任(原賠法3条)
「原子力損害」については,前述のとおり,「原子力事業者以外の者」として,4条1項で免責される可能性が高いだろう。
「原子力損害」以外については,そもそも原賠法の適用外で,同法による責任追及はできない。
〔結論〕
 全て不可

(2)対会社責任
 会社法423条「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」
 取締役は,会社に対して,善管注意義務(会社法330条,民法644)と忠実義務(会社法355条)を負っており(同質説と異質説),これら義務に違反した場合は,会社に対して損害賠償責任を負う。
 取締役ら役員が,善管注意義務・忠実義務に違反したという事実が認定されれば,会社が受けた損害について,取締役ら個人に対して,賠償請求することは,おそらく民法(民法415,709)や会社法(会社法423)のどの構成によっても可能なはずである。ただ,これらの競合があっても,実務上は,主として会社法423条1項の任務懈怠責任を問われることになろう。
 そして,これらと原賠法との関係も問題となってくる。まず,原賠法3条1項は,「原子力損害」についての賠償責任を定めている。「原子力損害」については,2条2項但書において,「次条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者の受けた損害を除く」とされている。
 したがって,原子力事業者が自ら受けた損害については,原賠法の適用の余地はなく,同法4条(責任集中原則)等は問題とならない。したがって,取締役の対会社責任ついて,会社法423条が排除されることはないはずである。
 ただし,原賠法2条2項但書の「原子力事業者の受けた損害」の意味は問題となろう。
 原発事故に関するものとして,安全性確保・事故後対応等について取締役らの任務懈怠が認められることになれば,その損害は,まず東電所有の原子炉等原発施設が損壊したことによる東電の損害があるだろう。これだけでも取締役ら個人で支払いきるのは困難かもしれない。
 問題は,それ以上に,原発事故によって,会社が被害者に支払う「原子力損害」の莫大な賠償金について,これが「原子力事業者の受けた損害」となるのか,原賠法5条との関係で問題となる。
 この点,原賠法5条には「第三条の場合において、その損害が第三者の故意により生じたものであるときは、同条の規定により損害を賠償した原子力事業者は、その者に対して求償権を有する。」とあり,「第三者」が「故意」である場合にのみ,原子力事業者は,求償請求しうるとしている。
 そこで取締役も会社との関係では独立の「第三者」であることから,仮に取締役の落ち度で事故を防げず又は拡大させたしても,「原子力損害」につき,会社が第三者に支払った賠償金については,会社(原子力事業者)は,取締役の故意を立証しない限り(ほぼ不可能),求償請求ができないと解される余地がある。
 つまり,求償権と会社法423条の任務懈怠責任の追及が競合する場合に,求償権行使を「故意」の場合に限定した原賠法の趣旨(関係事業者の責任の軽減)から考えて,任務懈怠責任についても「故意」の場合にしか請求できないとそれる可能性がある。
 もちろん,原子力事業者が被害者に賠償金を支払ったことによって,原子力事業者が被った損害は,2条2項但書の文言どおり「原子力事業者の受けた損害」とみて,「原子力損害」ではないとし,したがって,5条は問題とされる余地はなく,会社から取締役への求償請求も任務懈怠による損害賠償請求権も問題なく認められると解する余地もある。
 「原子力損害」以外のもので,東電が被害者に賠償したものについては,当然に原賠法の適用の余地がないので,これについては,役員らに任務懈怠責任があると認められる場合には,会社は,会社法423条による賠償責任を追及しうるはずである。
〔結論〕
 会社が原子炉損壊等により直接被った損失→可
 会社が「原子力損害」を賠償したことによる会社の損失→?
 会社が「原子力損害」以外を賠償したことによる会社の損失→可


※結局,第三者からの役員個人への責任追及は,「原子力損害」以外の損害について,民法709条や会社法429条を根拠にその責任を問うという道しかないのではなかろうか。
 会社から役員個人への責任追及は,会社法423条でいく余地が十分にあるものの,会社が被害者に支払った「原子力損害」の賠償金については,難しい問題があってなんとも言えない。また,会社法423条の責任については,424条以下の減免規定の適用による減免がありうる。 なお,会社から役員への責任追及は,会社がしない限り,おそらく株主によって,責任追及等の訴え(会社法847条・株主代表訴訟)を通じて行われることになろう。〔6ヶ月要件,本店専属管轄,印紙13000円〕

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2011-04-15 : ・経営者の責任 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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