東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■2条「原子力損害」の意味・範囲 その11 風評被害5 過剰な買い控えによる損失

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その11 風評被害5 過剰な買い控えによる損失

 原発事故に起因する風評被害事例の判例をいくつか見たが,生産者の側から見ると納得いかない判断が多いのではないか。この点について考えてみた。

 消費者の過剰な回避行為(買い控え)による損害について,裁判所は,その相当因果関係の認定に関して,下のように判断している。

「かかる心理状態は,一般には是認できるものではなく,事故を契機とする消費者の心情的な判断の結果であり,事故の直接の結果とは認められない。」「極めて主観的な心理状態であって,同一条件のもとで,常に同様の状態になるとは言い難く,また一般的にも予見可能性があったともいえない」(敦賀原発風評被害訴訟,平成元年5月17日名古屋高裁金沢支部判決・判タ705号108頁)

 JCO臨界事故に関する平成18年2月27日東京地裁判決(判タ1207号116頁)においては「もっとも,本件臨界事故後,一般消費者が納豆商品を買い控えるに至ったことが窺われるものの,それは一般消費者の個別的な心情に基づくものであり,放射線汚染という具体的な危険が存在しない商品であるのにもかかわらず,それが危険であるとして,上記商品を敬遠し買い控えるに至るという心理的状態に基づくものである以上,そこには一定の時間的限界があるというべきである。この時間的限界をどのように画すかは困難な問題であるが,それは一般消費者が上記のような心情を有することが反復可能性を有する期間,あるいは一般的に予見可能性があると認め得る期間に限定されるというべきである。」

原子力損害調査研究会の最終報告書(平成12年3月29日)においても「平均的・一般的な人を基準として合理性のあるものであること」とされている。

 つまり第三者である消費者の行動が,「一般に是認」できる,あるいは「合理性ある」行動であるか否かによって,その判断・行動に全く関係のない生産者が,負担を強いられることになる。

ここで損害を分類すると
A 現に汚染されていて,基準値こえる(健康に害を及ぼす程度?)→「原子力損害」に該当
B 現に汚染されているが基準値以下(健康に害を及ぼさない程度?)
C 全く汚染されていない。

このBCが風評被害の対象となる。

この風評被害の対象となる作物等について,相当因果関係の認定との関係で,裁判所等は二つにわけて考えていることになる。

ア 買い控えが一般に是認できる合理性のあるもの
イ 買い控えが一般に是認できない過剰(不合理)なもの

 ここで一般に是認できるか否かは,科学的な安全性があることを前提に,当該時点での政府や専門家の発表や,マスコミでの取り上げられ方等を勘案して,どの程度正確な情報が消費者に伝わっていたかなどにより判断することになろう。

 そして,確かに,予見不可能な第三者の異常な行動が介在して,損害が発生・拡大したような場合に,その責を加害者に負わせるのは不当かもしれない。
 しかし,消費者は,多数の集団である。その一人をとり出して,その人の行動の合理性を問題とすれば,過剰な買い控えは異常な因果経過をたどった結果生じたものと言えるかもしれないが,多数者の中には,必ずそのような行動をする者がいることは,経験則上明白なのであって,一定割合の消費者のそのような過剰な買い控えは,そもそも原発事故などが起これば,通常生じうるものである(そもそも政府や専門家の発言を信じることが必ずしも合理的といえないこともあるし,放射線障害のように素人の分かりようのない専門性の強い事象についても,その権威から出される情報を疑う人間が,多数の消費者の中に一定割合でいるのはむしろ当然である)。
 仮に,そのような過剰な買い控えによる損失が,通常損失ではなかったとしても,原子力事業者が予見し又は予見しうべき特別損失(民法416Ⅱ)には当たるはずで,一定割合で相当因果関係が肯定されるべきではないか。
 なぜなら,原発事故であれば,そのような過剰な買い控えが発生することはあり得,原子力事業者もそのことは予見していたであろうし,過去にも事故が起き同様のことが起きているのだから,少なくとも予見可能性は十分にあったはずである。
 したがって,上のイ(買い控えが一般に是認できない過剰(不合理)なもの)であっても,一定割合の消費者が,そのような過剰な買い控えに出ることが一般的にありうると予見できる範囲では,やはり相当因果関係ある損失というべきで,生産者は,その範囲で保護されるのが妥当ではないか。

 そもそも,原発事故について何の落ち度もない農家等が,放射能漏れ事故があれば必ず発生するだろうと予想される過剰買い控えによる損失を負担しなければならないというのは,農家にとっては全く納得できないはずである。

 なお,今回は大規模な震災・津波・原発事故の同時発生があり,震災後の自粛による消費の低下や,政府やマスコミの情報伝達の不足など,原発事故以外に,いくつも買い控えの要因が考えられ,損害発生原因の競合で,JCO臨界事故のときとは比べものにならない複雑さがある。

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2011-04-14 : ・風評被害 法律的な理屈 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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