東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■1条 立法目的・趣旨

■1条 立法目的・趣旨

(条文)
第1条  この法律は、原子炉の運転等により原子力損害が生じた場合における損害賠償に関する基本的制度を定め、もつて被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする。

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 この法律は,「被害者の保護」と「原子力事業の健全な発達」を目的とするとされる。

 ここでの「被害者の保護」は,原発事故等で損害を被った被害者の救済と,損害の賠償に遺漏がないようにする趣旨のものである。その立法過程の議論・審議を見てると,この被害者保護も結局は,原子力事業の推進・遂行のためには,国民や特に地元住民を安心させ,その受け入れを容易にさせ,原子力事業を可能ならしめるためのものであり,「原子力事業の健全な発達」と強く結びついている。
 この「原子力事業の健全な発達」とは,原子力事業者以外の関係事業者の責任を軽くして,参入・取引を容易にして,やはり原子力事業の遂行を可能ならしめるためという意味である。「健全」とあるから,ここに原子力事業の安全性の意味合いもあるのかと思って,立法過程の資料を読んでみたが,見た範囲ではそのような趣旨は無かった。この「健全」は,原発事故等による巨額損失の負担の恐れのもとに,関係各業者が事業に関与しなければならない状態を不健全と見て,それに対する「健全」を意味しているように思われる。
 立法過程の関係資料をざっと見たところでは,昭和30年代当時,原子力発電の導入は,わが国の国策としてなされたが,その技術は欧米にしかない時代で,要するに,売ってもらうには,取引相手に相当の妥協をしなければ手に入らなかったらしく,原賠法は,機器・原料等を売る側にとって大変有利なものとなった。他方,核爆弾を落とされた国であるから国民の核に対するアレルギーは強く,それを納得されるために被害者の保護も特に厚くしなければならなかったはずである。
 そこでできたのが原賠法で,立法時(昭和36年)には,スリーマイル島事故(昭和54年)もチェルノブイリ事故(昭和62年)も起きておらず,立法関係者の認識としては,原子力発電は,核爆発ではなく核分裂反応時の熱を利用するだけのもで安全であって,万が一にも大規模事故は起きることがないであろうという認識があったように思われる。その後,物価の上昇や事故等によって,賠償措置額はしばしば引き上げられることとなったが,やはり賠償措置額を超える莫大な損害が生じる可能性はほとんど無いものと高を括っていた感がある。
 普通に考えると,原子力事業者以外の関係事業者の責任を緩和すると,モラルハザードを招くおそれがある。あるいは,そこまでいかなくても,多角的な監視・監督や忠告がなされないまま,事業が進んでいく可能性がある。それによって事業遂行が容易になるが,安全が脅かされる可能性もある。今回の事故でも,これを提供したGEや設計者や設置運転管理する現場など,その関係者が,その事故による莫大な賠償の責任の一部でも負担させられる恐れがあるなら,原子力発電所の安全性の強化が外部からの圧力によってなされていた可能性がある。



〔被害者の保護のため〕
・3条1項本文 無過失責任→過失立証不要
・6~15条 損害賠償措置→賠償財源確保
・16~17条 国の措置→莫大な損害でも国による補償余地

〔原子力事業の健全な発達のため〕
・3条1項但書 異常に巨大な天災等による免責→原子力事業者免責
・4条1項 責任の集中→原子力事業者以外の関係事業者の免責
 (4条は被害者保護の趣旨もあるとされるがあまり意味なし)
・4条3項 製造物責任等の適用排除→原子力事業者以外の関係事業者の免責
・5条 求償権の限定→原子力事業者以外の関係事業者の責任限定


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2011-04-12 : ■1条 立法目的・趣旨 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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Author:text2
原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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