東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■4条 責任集中の原則 その3 第5条求償権との関係

■4条 責任集中の原則 その3 第5条求償権との関係

条文
(責任集中の原則)
第4条1項「前条の場合においては、同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない。」
(求償権)
第5条1項「第三条の場合において、その損害が第三者の故意により生じたものであるときは、同条の規定により損害を賠償した原子力事業者は、その者に対して求償権を有する。
 2項  前項の規定は、求償権に関し特約をすることを妨げない。」

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 4条において,3条の無過失責任(損害賠償責任)は,原子力事業者しか負わないとされている(責任集中の原則)。これは,被害者が請求相手を容易に認識できるようにし(1条「被害者の保護」),他方で,機器や原料を提供する他の関連事業者が,莫大な損害について責任を負わせられないようにして,安定的に資材を供給することを可能にするためのもの(1条「原子力事業の健全な発達」)と説明されている。
 損害額が莫大で,原子力事業者の責任財産が十分でない場合に,この規定が,かならずしも被害者の保護にならない規定であることは,以前に述べた。
 また,この4条は,次ぎの5条を前提としている。5条は,原子力事業者から関連事業者への求償権を定めている。これは,原子力事業者に機器や原料等を納品した関連事業者側の落ち度によって原子力損害が発生したような場合に,原子力事業者のみが賠償責任を負うとして,その賠償をした原子力事業者が,落ち度のある関連事業者に何らかの請求をできるようにするのが公平であると配慮から定められたものである。
 ただし,この求償を広くみとめると,関連事業者の責任を緩和して,取引しやすくして,原子力事業の遂行を容易にしようとした趣旨が失われる。そこで,立法前には,以下のような議論があった。

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原子力災害補償専門部会の答申(昭和34年12月)
「(5)「原子力事業者」に、被害者である第三者に対する責任を集中し、それ以外の者はこれらに対する責任を負わないものとする。ただし原子力事業者との間で燃料の供給、設備の請負等について直技間接の契約関係にある者の故意または重大な過失によって原子力事故が生じたとき、およびこれらの関係のない第三者の故意過失によって原子力事故が生じたときは、原子力事業者は、これらの者に対し求償することができるものとする。」

 ※原子力事業者との直接の契約業者→「故意又は重過失」で求償される。
  その他の関係業者→「故意又は過失」で求償される。

原子力委員会内定「原子力災害補償制度の確立について」(昭和35年3月)
「(3)責任の集中
 原子力事業者に、第三者に対する原子力損害についての責任を集中し原子力事業者以外の者は責任を負わないものとする。
 (4)求 償 権
 原子力事業者との間で燃料の供給、設備の請負等について直接間接の契約関係にある者の故意によって原子力損害が生じたとき、およびこれらの関係のない者の故意または過失によって原子力損害が生じたときは、原子力事業者はこれらの者に対し求償権を有するものとする。ただし、これらの求償権に関し特約をすることを妨げない。」

 ※原子力事業者との直接の契約業者→「故意」で求償請求される。
  その他の関係業者→「故意又は過失」で求償請求される。

衆議院国会審議(昭和35年5月17日)の中曽根趣旨説明「原子力事業が広範な産業の頂点に立つ総合産業でありますだけに、損害発生時における責任の帰属が不明確になる場合が予想されるのであります。それでは被害者の保護に欠けるばかりでなく、原子力事業に対する資材、役務等の供給が円滑を欠き、事業そのものの発達が阻害されることとなるおそれが強い点もあわせ考慮して責任の集中を行なったのであります。従ってまた、損害の発生が資材、役務の供給に原因するような場合にありましても、原子力事業者の求償権は原則としてこれらの者に故意がある場合に限って行使できるものとしたのであります」

 取引業者→「故意」がある場合に限り求償請求される。
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 結局,昭和35年年提出の法案は,廃案になり,翌36年に再提出の上,成立したのであるが,その制定当時の旧5条には,
「第5条 第3条の場合において、その損害が第三者の故意又は過失により生じたものであるときは、同条の規定により損害を賠償した原子力事業者は、その者に対して求償権を有する。ただし、その損害が原子炉の運転等の用に供される資材の供給又は役務(労務を含む。)の提供(以下「資材の供給等」という。)により生じたものであるときは、当該資材の供給等をした者又はその者の従業員に故意があるときに限り、これらの者に対して求償権を有する。
 2 前項の規定は、求償権に関し特約をすることを妨げない。」

 資材役務の提供業者→「故意」がある場合に限り求償請求される。
 その他の第三者の場合→「故意又は過失」で求償請求される。

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 しかし,昭和36年に原賠法が制定されてから9年ほど経過して,以下のとおり,見直しとなり,昭和46年の原賠法改正により,「過失」が削られ,原子力事業者は,現行法5条のとおり,取引事業者に故意があった場合のみ,その損害の求償請求ができることになった。
 http://www.shugiin.go.jp/itdb_housei.nsf/html/houritsu/06519710501053.htm
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原子力損害賠償制度検討専門部会答申(昭和45年11月30日)
「(4)原子力事業者の求償権の制限
 現行賠償法では、原子力損害を賠償した原子力事業者は、その損害が、①一般第三者の故意または過失により生じた場合はその者に対し ②資材もしくは役務の供給者またはその従業員の故意により生じた場合は、それぞれその者に対し、求償権を有することとし ③ただし、求償権に関し特約をすることを妨げないとしている。
 しかしながら、たまたま過失で核燃料物質を運搬中の輸送手段等と衝突したために、一般の第三者が巨額の求償を受けることになるのは、その者にとって酷であり、さらに現行賠償法の責任集中の原則を徹するためにも、諸条約等を参考に原子力事業者の求償は、関連事業者の場合と同様一般第三者に対しても、故意ある場合に限定することが妥当である。
 さらに故意の内容も諸条約のように「原子力損害を発生させようとする」故意に限定することが望ましい。」
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 これによって,原子力事業者と取引する者(原材料,機器,役務等を提供する事業者)は,損害発生につき過失や重過失が有ったとしても,責任集中原則(4条)で被害者への賠償責任を免れた上,故意に損害を与えない限り,「原子力損害」については,原子力事業者からの求償請求すら免れるという,極めて有利な立場に立つことになった。なお、この「故意」の場合の責任すら、5条2項により、特約で排除することが可能となっている。




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2011-04-11 : ■4条責任集中の原則 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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