東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■2条「原子力損害」の意味・範囲 その8 消滅時効・除斥期間

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その8 消滅時効・除斥期間
 
 原賠法は、民法の不法行為の特別法と理解されているので、原賠法に特に規定がない以上、損害賠償請求権の行使期間については、民法が適用されることになる。

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条文
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
民法724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
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この条文を前提とすれば、

[消滅時効]民法724条前段
 原子力損害の発生があって、それを知ってから3年以内に訴訟等をしなければ、原則として消滅時効にかかってしまい、請求権は消滅してしまう。日々継続的に発生し続ける損害については、通常は、それぞれ日々発生したときから、3年経過で消滅することとなる。

[除斥期間]民法724条後段
 後段は、判例で「除斥期間」と理解されている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%A4%E6%96%A5%E6%9C%9F%E9%96%93
 そして、条文には「不法行為の時から」とあるので、通常は、これは原発事故から20年と読まれることになろう。このため晩発生の障害がたとえば21年目に発生した場合は、除斥期間が経過しているため従来の理解では、既に請求権が消滅してしまっている可能性がある。

そこで、かつて原子力委員会で以下のような議論がなされていた。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo04/siryo37.htm
----------------------------------
除斥期間について
1.検討の趣旨
 原子力損害に係る賠償請求権の除斥期間について、前回平成元年の原賠法改正以降の原子力損害賠償関連条約等原子力損害賠償に関する最近の国際的動向を含む諸情勢の変化に鑑みた見直しの必要性等について検討を行うこととする。
2.現状
 従来、原賠法では賠償請求権の除斥期間に関する規定は特に置かれていないため、一般法である民法第724条が適用されることとされ、「不法行為の時」より20年間の除斥期間が適用される。これは、長期にわたって権利を行使しないと、権利関係の証明が困難になることから、権利を行使し得る期間を権利関係の証明が期待し得る合理的な範囲に制限することにより、法的関係の安定と明確化を図ったものである。
 除斥期間の起算点となる、「不法行為の時」が何時に当たるかについては争いがあり、これを (α) 加害行為が為された時とする見解と、(β) 不法行為の成立要件充足時(実際上は損害の発生時となる)とする見解が対立しているが、(β)説を明示的に採用する判例が無いこと、及び除斥期間の起算点を損害の発生時に変更する規定を置く具体的立法例(鉱業法、水質汚濁防止法、大気汚染防止法、製造物責任法)があることから、現行法制は(α)説に立つものとして考えざるを得ない。
 このため、現行法制下においては、原子力損害の原因たる加害行為(原子力事故)から20年を経過すると賠償請求権が消滅することとなる。
(略)
5.除斥期間の変更等の検討について
 我が国の原子力損害賠償制度における除斥期間を、ウィーン条約改正議定書の内容等の国際的な水準に合わせて変更するとした場合、諸外国の規定等を踏まえると、除斥期間を少なくとも30年に延長する必要があると考えられる。
 そこで、除斥期間の延長のために具体的に想定し得る方法を検討することとし、既に製造物責任法等において採用例のある、①除斥期間の起算点の規定の変更、及び当面の国際的な標準として考えられる改正ウィーン条約等に合わせた、②除斥期間の30年への延長、の2案について問題点を検討することとする。
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上の議論がなされたが、現行の原賠法には、除斥期間30年規定は追加されていない。したがって、21年目に出た晩発生障害は、除斥期間にかかり、事故から20年経過で賠償請求できなくなることも考えられるが、下のような近時の最高裁判例では、損害の性質を考慮し、除斥期間の進行時を損害発生時からとする見解が示されており、晩発生障害のようなものについては、病気・障害が発生したときから起算されるはずで、20年経過後に出た晩発生障害については、除斥期間経過による消滅はなさそうである。ただし、これも法解釈の問題であり、20年後にどうなっているのかははっきりしたことは言えない。

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除斥期間の起算点をずらした判例
・平成16年4月27日最高裁第三小法廷判決、三井鉱山じん肺訴訟
民法724条後段所定の除斥期間は,不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時から進行する。
・平成16年10月15日最高裁第二小法廷判決、関西水俣病訴訟
水俣病による健康被害につき,患者が水俣湾周辺地域から転居した時点が加害行為の終了時であること,水俣病患者の中には潜伏期間のあるいわゆる遅発性水俣病が存在すること,遅発性水俣病の患者においては水俣病の原因となる魚介類の摂取を中止してから4年以内にその症状が客観的に現れることなど判示の事情の下では,上記転居から4年を経過した時が724条後段所定の除斥期間の起算点
・平成18年6月16日最高裁第二小法廷判決、北海道B型肝炎訴訟
 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しB型肝炎を発症したことによる損害につき、B型肝炎を発症した時が724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例
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2011-04-10 : ・消滅時効の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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