東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その3 立法過程と解釈

■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」その3 立法過程と解釈

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原子力災害補償専門部会の答申(昭和34年12月)
「原子力事故による原子力損害については原子力事業者が無過失責任を負うものとし、きわめて特別の場合にのみ免責されるものとする。ただし、この特別の場合は通常「不可抗力」と呼ばれるもののすべてに及ぶのではなく、そのうちでもいわば不可抗力性の特に強いものに限るべきであるから、たとえば「異常かつ巨大な自然的または社会的災害」というなどこの内容を適確に表現する努力のなされることが望ましい」

原子力委員会内定「原子力災害補償制度の確立について」(昭和35年3月)
原子力損害については、その損害を生ぜしめた原子力事業者が無過失責任を負うものとし、不可抗力性の特に強い特別の場合にのみ免責されるものとする。

衆議院国会審議(昭和35年5月17日)の中曽根趣旨説明
「異常に巨大な天災地変等によって損害が生じた場合まで、原子力事業者に賠償責任を負わせますことは公平を失することとなりますので、このような不可抗力性の特に強い特別の場合に限り、事業者を免責することといたしたのであります。」

同中曽根答弁
「第三条におきまする天災地変、動乱という場合には、国は損害賠償をしない、補償してやらないのです。つまり、この意味は、関東大震災の三倍以上の大震災、あるいは戦争、内乱というような場合は、原子力の損害であるとかその他の損害を問わず、国民全般にそういう災害が出てくるものでありますから、これはこの法律による援助その他でなくて、別の観点から国全体としての措置を考えなければならぬと思います」
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「異常に巨大な天災地変」の意味について,関東大震災の三倍以上というのは,すでに上の昭和35年の中曽根答弁に出ているが,もともと誰がいつ言い出したのかについては,今のところ不明である。過去になく,考えられないほど巨大なという意味かもしれないが,科学的根拠はなさそうである。そもそも,地震の何(震度・規模・加速度・損害規模など)を比較するのか不明であり,あまり意味がなさそうである。

 以下,「異常に巨大な天災地変」の意味を論理的に考えてみる。
 著名法学者が関与している原子力災害補償専門部会では,単なる不可抗力ではなく,「不可抗力性の特に強い特別の場合」をさすものとしているから,これは,おそらく誰の目からみても,天災等によって避けようのない事故が発生する場合を意味しているはずである。原賠法3条1項但書は,例外的に巨大な自然力が作用した場合に不可抗力の抗弁,いわば超不可抗力(我妻)の抗弁を認めたような規定である。
 
 不可抗力であったか否かは,自らの危険の支配可能性を超えたところにある統制困難な出来事であったか否かが問われ,それについては,結局は,結果回避可能性と予見可能性が問題となり,それらが経済的合理性のある範囲で可能であったか否かも問題となる(竹内昭夫「現在の技術をもってしては,経済性を全く無視しない限り,防止措置をとりえないような,極めて限られた「異常かつ巨大な」場合」ジュリスト1961年10月15日号(No.236)31頁)。

・予見可能性
・結果回避可能性
・経済的制約性

 これを原発事故で考えるなら,

①経済的合理性のある範囲内での調査研究等による予見可能性
②経済的合理性のある範囲内での防護措置の可能性

 が検討対象になるはず。

 ただし,これは通常の不可抗力の有無の判断であり,土地工作物責任(民法717)や営造物責任(国賠法2条)の前提となる予見可能性等と異ならない。

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※(営造物(国賠法2)の「瑕疵」の認定の前提となる自然力の予見可能性)
昭和49年11月20日 名古屋高等裁判所判決(判タ318号121頁)
「災害をもたらす自然現象(外力)に対し道路の設置または管理の瑕疵を問い得るためには、まず当該自然現象の発生の危険を通常予測できるものであることを要すると解するのが相当であるが、元来、発生するか否か、発生するとしでもその時期・場所・規模等において不確定要素の多い自然現象について、いかなる場合に発生の危険が通常予測できるといえるかが問題となる。
 <要旨>思うに、自然現象については、必ずしも学問的にその発生機構が十分解明されているとはいい難いが、自然現象のもたらす災害は、学問的にすべてが解明されなければ防止できないというものではなく、また、そのために防災対策をゆるがせにすることは許されないのであつて、その当時において科学技術の到達した水準に応じて防災の行動をとり得るものであり、防災科学はまさにそのような見地に立つて、自然現象発生の危険性を検討し防災対策を研究する総合的な学問の分野である。そして、道路の設置・管理も当然このような防災科学の見地を取り入れて検討されるべきものである以上、当該自然現象の発生の危険を定量的に表現して、時期・場所・規模等において具体的に予知・予測することは困難であつても、当時の科学的調査・研究の成果として、当該自然現象の発生の危険があるとされる定性的要因が一応判明していて、右要因を満たしていること及び諸般の情況から判断して、その発生の危険が蓋然的に認められる場合であれば、これを通常予測し得るものといつて妨げないと考える。」
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 この判例では,「自然現象の発生の危険を定量的に表現して、時期・場所・規模等において具体的に予知・予測することは困難であつても、当時の科学的調査・研究の成果として、当該自然現象の発生の危険があるとされる定性的要因が一応判明していて、右要因を満たしていること及び諸般の情況から判断して、その発生の危険が蓋然的に認められる場合であれば」予見可能性があるものとされるが,原賠法3条1項但が「不可抗力性の特に強い特別の場合」を意味すると考えると,その予見可能性については,上の判例より,さらに厳しく認定されるべきはずで,蓋然性が相当低いものであっても,やはり予見可能性があった(予見可能性がなかったとは言えない)と解されるのではないか。

 また,同様に,3条1項但が「不可抗力性の特に強い特別の場合」を意味すると考える以上,②経済的合理性のある範囲内での防護措置の可能性についても,通常の工作物や営造物の場合よりも,厳格に判断されることになるのではなかろうか。

 そして,福島第1の事故の場合,経済的制約の中でも今回の津波に対する防護措置(結果回避策)はおそらく可能であり,またその津波の規模・発生についても,以前から,貞観地震等について,学者・研究者から,東電側に指摘があり,その予見可能性が無かったとはいえず,特に強い不可抗力性(超不可抗力性)があった場合には当たらないのではないか〔このあたりの問題は,事故前の段階で,どの程度の確実さをもって,巨大地震と大津波の可能性が伝えられ,東電がどの程度の情報を得ていたのか,当時の科学的調査の状況等の諸般の事情が関係してくるので,一概には言えないが,経済産業省の経済産業省総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の会議録をみたところでは,研究者がかなり執拗に,今回のようなカスケード型の大震災を考慮すべき旨を東電側の出席者に対して発言しているものがあり,次項で見てみたい。〕

 防護措置の可能性については,事故後から考えると,さまざな方策が考えられるが,そもそも他の発電所との比較でも,福島第一の防護はやはり科学的,技術的かつ経済的にも本来可能であったということになるのではないか。
 今回の地震後の津波について,福島第一にやってきた波だけが特別に強度のエネルギーを持っていたとは思えない。他の発電所にも同様にやってきたわけで,仮に福島第一だけ波高が異常に高かったとしても,それはもともと持つ津波のエネルギーというより,海岸までの地形等の影響だろうし,それは調査すれば分かる所与の条件であって,防護策が不可能ということにはならないだろう。

 さらに、3条1項但書で原子力事業者が免責される「損害」は、天災地変「によって生じた」ものでなければならない。
 特に強い不可抗力性がある場合に免責しようとした法の趣旨からすれば、「によって生じた」といえるためには原子力事業者側の原発の設置・保存・管理や事後対応に、落ち度があろうが、無かろうがその損害が生じたといえる場合でなければならないはずである。巨大天災と、原子力事業者側の原発の設置・保存・管理・事後対応の過失が相まって初めて、その損害が生じたような場合は、そもそも避けようがあった損害であり、特に強い不可抗力によるによる損害とはとても言えないからである。
 つまりその時点で予見可能といえるような災害について、通常考えうる耐久性・備えすら無く、また、災害後の誤った判断・対応があって事故が発生したような場合は、本来避け得た損害といえ、天災地変「によって生じたもの」ではなく、但書による免責はないものと考えられる。
 このあたりの問題は、今後の事故調査等によって明かにされるべきである。


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2011-04-08 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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