東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・電気料金原価の過剰見積もりについて

・電気料金原価の過剰見積もりについて

 原賠法とも原発事故と直接関係がないが,事故後に設置された経営・財務調査委員会で,東電の電気料金原価が過剰に見積もられていたとの指摘があったとする以下のような記事がある。この点について,考えてみる。

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asahi.com 平成23年9月29日
http://www.asahi.com/business/update/0929/TKY201109280716.html

電気料金原価、6千億円高く見積もり 東電、10年間で

 東京電力の電気料金算定のもとになる見積もり(燃料費などを除く)が、実際にかかった費用よりも、過去10年間で計約6千億円高いことが、政府の「東京電力に関する経営・財務調査委員会」の調査でわかった。電気代が必要以上に高く設定されていた可能性があり、調査委は近くまとめる報告書に盛り込む。

 自由化されていない家庭用の電気料金は、電力会社が今後1年間にかかる人件費や燃料費、修繕費などの原価を見積もり、一定の利益を上乗せして決める。

 報告書案によると、過去10年で計6186億円分、見積もりが実績を上回っていた。大きな原因として修繕費を挙げ、1割ほど過大とした。報告書案は「経営効率化によるものというよりも、そもそも届け出時の原価が適正ではなかったと推察される」と指摘した。

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そこで「東京電力に関する経営・財務調査委員会」の報告書を見てみる。



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平成23年10月3日 東京電力に関する経営・財務調査委員会

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keieizaimutyousa/dai10/gijisidai.html

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keieizaimutyousa/dai10/siryou1.pdf

報告書121頁
「東電は、規制小売料金について、値下げ届出制導入以後、5 回の料金改定においていずれも届出による値下げ料金改定を行っている。
 この点、原価等の適正性については、上述のとおり、届出による値下げ料金改定においては、原価(営業費)や利潤(事業報酬)等の適正性の具体的な審査が制度上なされないことから、東電については少なくとも約13 年間にわたり、規制当局による原価(営業費)や利潤(事業報酬)の適正性の具体的な確認が行われなかった。
 ここで「原価の適正性」という場合、次の二つを分けて議論することが肝要である。第一は、届けられた原価が原価算定期間中に実際に支出が見込まれるコストを的確に反映しているかどうかという、いわば名目値の議論である。第二は、その原価が適切なコスト削減努力や設備投資形成を前提としたものであるかどうかという実質値の議論である。後者に関しては、すでに本報告において調達面及び人件費に関してコスト削減の余地があることや中期的な設備投資形成に当たっての留意点について触れたところである。したがって、委員会として、そうした実質的努力を織り込む前の「名目値」としての原価が、現行届出制の下で適正に届けられ、規制当局によって把握されていたのかについて検証を行った。」

報告書124頁
「なお、固定費の届出時と実績の料金原価の乖離を合計すると、直近10年間の累計で5,624 億円となる。」

報告書126頁
「なお、燃料費及び購入電力費等以外の可変費について、届出時と実績の料金原価の乖離を合計すると、直近10 年間の累計で561 億円となる。」

報告書127頁
「なお、固定費並びに燃料費及び購入電力費等以外の可変費の届出時と実績の料金原価の乖離を合計すると、直近10 年間の累計で6,186 億円となる。」

報告書127頁
「固定費と、燃料費及び購入電力費等以外の可変費の乖離の大きな要因が修繕費であることから、規制料金の原価として織り込まれている修繕費について、届出時の料金原価と実績の料金原価を比較すると、料金改定を行った年度(原価算定期間)において、既に約10%程度の乖離が生じている。すなわち、この乖離については、東電の経営効率化努力による部分が含まれている可能性はあるが、その点を考慮したとしても、乖離の程度からすると、そもそも届出時の料金原価が「適正な原価」ではなかった可能性が十分に推察される。(ただし、その詳細はさらなる検証が必要である。)」

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 この上の記載が問題の箇所と思われるが,これに対して東電側は,以下のように反論している。



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http://www.tepco.co.jp/cc/kanren/11100401-j.html
当社関連報道について

「東京電力に関する経営・財務調査委員会」による「届出時と実績の料金原価が過去10年間で6,000億円過大」との指摘に対する当社見解

平成23年10月4日
東京電力株式会社

 「東京電力に関する経営・財務調査委員会」が10月3日に発表した報告の中で、当社の電気料金算定において、届出時の料金原価が、その後の支出実績と比べて、直近10年間で約6,000億円過大であったとの指摘がなされております。

 これは、平成12年の電気料金値下げ以降、電気料金の値上げを回避するため、直近10年間において、修繕費を中心としたコストダウンを徹底した結果です。

 こうした合理化努力の結果、この10年間で4回にわたり、ご家庭のお客さまなど(規制分野)において、総額約3兆5,000億円の電気料金の値下げを実施しております。
 また、合理化努力の一部は内部留保させていただきましたが、これにより、新潟県中越沖地震の被災による柏崎刈羽原子力発電所の停止に伴う火力発電の燃料費増分を吸収し、電気料金の値上げを回避しております。

 このように、届出時の料金原価が、結果的に一部で実績値を上回ったのは、当社の経営努力の結果であり、料金算定時に過大な原価計算を行ったということは一切ございません。


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 とのことである。

 電気事業の原価計算や会計等について,こまかいことは知らないが,コストダウンや合理化努力は私企業として当然すべきものであって,普通は,それも含めて原価を見積もり計算するの筋ではないかという気がする。また,10年間で4回値下げしたというが,見積もりして届け出た原価と実績との「乖離」が発生し続けることについての説明になっていない気がする。さらに,「合理化努力の一部は内部留保させていただきましたが、これにより、新潟県中越沖地震の被災による柏崎刈羽原子力発電所の停止に伴う火力発電の燃料費増分を吸収」とあるが,これは確実に予見されていて,そのためなんらかの予め引当金として積み上げていたものでもなかろうから,それが発生するまでに見積もられる原価の計算とは関係ないのではないかという気がする。


 法令を見ると以下のとおり。
 ↓

●電気事業法  
第19条2項
「2  経済産業大臣は、前項の認可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときは、同項の認可をしなければならない。
一  料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること。二  料金が供給の種類により定率又は定額をもつて明確に定められていること。
三  一般電気事業者及び電気の使用者の責任に関する事項並びに電気計器その他の用品及び配線工事その他の工事に関する費用の負担の方法が適正かつ明確に定められていること。
四  特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないこと。」

●一般電気事業供給約款料金算定規則
第2条1項
「法第十九条第一項 の規定により定めようとする、又は変更しようとする供給約款で設定する料金を算定しようとする一般電気事業者(以下「事業者」という。)は、四月一日又は十月一日を始期とする一年間を単位とした将来の合理的な期間(以下「原価算定期間」という。)を定め、当該期間において電気事業を運営するに当たって必要であると見込まれる原価に利潤を加えて得た額(以下「原価等」という。)を算定しなければならない。」



 要するに電気供給約款の認可においては,原価は,「適正な原価」「電気事業を運営するに当たって必要であると見込まれる原価」であることを要するということだろう。

 そして,この適正性や必要性については,事業者側の言い分もあろうが,見積もりと実績の差以外に,費目によってはそもそも原価として乗せることが適正か否かという問題も有る。このあたりを掘っていくと,ひょっとすると「原価」の設定が客観的にみて適正でなく,電力会社は長年にわたって不当・違法に儲け過ぎていた,したがって,消費者へ取りすぎ分の返還や賠償義務があるなどとして,法的問題となるかもしれない。


 詳細は知らないが,乖離分だけ問題にするとしても,報酬率を3%と仮定すると,10年間で約6000億円余分に原価計上し,そのため,3%にあたる180億円を余分に電気料金として取りすぎたということになろうか。このあたりの計算はよくわからないが,いわゆる総括原価方式の下,原価が過大である分,事業報酬もそれだけ過大に請求されたと考えるとこういうことだろう。さらに原価の見積もりと実績の乖離分は,現実には原価としての支出がないので,電気料金として得ておきながら,その分を丸取りどりしていたとなるとプラス6000億円分取りすぎということか?。〔ただ電力料金の値下げできちんと全部返したという場合は,取りすぎ分は既に返しましたということ?。そこで本当にこの分の利得は全部消費者に還元する形で,事実上の返還処理をしていたか否かを委員会が今後「さらなる検証」をするということか?〕

〔訴訟制度〕
 仮に,東電が違法・不当に原価を大きく見積もり,不適正な原価で過大な料金を設定し,それを消費者に負担させていたとなると,これは,被害者が多数だが,一人一人の損害は小さいというパターンなので,個別に訴訟を提起するのは現実的ではないかもしれない。5年ほど前にできた消費者団体訴訟制度(消費者契約法12条以下)は,差止請求に関するもので,集団的消費者被害を救済するための損害賠償訴訟制度ではない。米国だと,たまに電話料金とかケーブル料金の取りすぎとかいうことで,一般家庭にクラスアクションの通知が届くということがあるが,我が国では未だ制度化されていない。
 ただ,現行法でも選定当事者(民事訴訟法30条)や共同訴訟(同法38条)で,やってやれないことはない。

〔法律構成〕
ア 不法行為〔料金の取りすぎに故意又は過失あるとして〕(民法709条)
・消滅時効は3年(損害を知ったときから3年なので(民法724条),委員会報告の内容があきらかになったときからとすると本年9月ころから3年?)
・遅延損害金は,不法行為時から発生するので,各過払い時から発生。
・その利率は5%(民法404条)

イ 不当利得(民法703条,704条)
・消滅時効は10年(民法167条)
・電力会社が不当利得になることを知っていた場合は,悪意の受益者として,利息を付して返還する義務あり(民法704条)。そうでない場合は,利息を付す必要は無し。
・この利息も,おそらく過払い時から発生。
・利率はおそらく5%〔ただし,商法514条で6%となる余地がないではない。〕

ウ 債務不履行〔電気供給契約に基づく債務履行責任・付随義務違反?として,損害賠償請求〕(民法415条)
・消滅時効は10年(民法167条),又は,5年(商法522条)・
・請求時から遅滞?。遅延損害金はそこから?
・利率は,5%(民法404条),又は,6%(商法522条)

 それぞれ一長一短あるが,利息もつけて返還してもらいたい場合は,アの不法行為が楽かもしれない。

 元金が大きいと利息は馬鹿にならないもので,10年間で仮に180億円を取りすぎたとなると,毎年平均18億円積み上がると仮定した場合,年利5%の単純計算で45億円の遅延損害金となる。あわせて225億円の賠償か。
 
 さらに6000億円取りすぎていたとなると,プラス1500億円の遅延損害金か。


〔経営者の責任〕
 仮に,原価の計算の「適正」を保てなかったとして,上記のような訴訟が提起されて認容されてしまったような場合で,その責任が,経営者にあるとした場合,取締役ら経営者は,会社(東電)に対して,賠償責任(会社法423条,355条)を負う可能性がある。
この場合,会社(東電)の被った損害には,返還分の180億円〔+6000億円〕は含まれないだろう。これは東電が取りすぎた分を返還しただけだからである。この場合の会社の損害は,返還の際して付した遅延損害金分〔45億円+1500億円?〕となろうか。(ただし,取りすぎていた料金分を利用して,利潤をあげていたとなると,その部分との差額は会社の損害とはならないのか?。単に内部留保していただけだとダメ?)


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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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