東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・土地建物,土壌等の汚染 その8 放射性物質,「無主物」「附合」の問題

・土地建物,土壌等の汚染 その8 放射性物質,「無主物」「附合」の問題

二本松のゴルフ倶楽部による仮処分申立事件に関してネットでいろいろと話題になっている。

〔無主物〕
まず,
・「無主物」とは,現に所有者のない物である。
・現在は無主の動産が過去において,誰かの所有に属していた場合でも,その者が所有権を放棄していれば無主物となる。
・したがって,飛散して放射性物質の所有権放棄が許されない場合には,無主物たりえないこととなろう。

・そして放射性物質の管理や廃棄等の処理については,炉規法その他規則で定められているが,所有権放棄を認めない旨の規定は無さそうなので,観念的には所有権放棄も不可能ではないようだが微妙。もっとも,後述のとおり,飛散した放射性物質の所有権の帰属の問題と物権的妨害排除請求権の成立とは無関係と思われるので,あまり意味のない論点ではなかろうか。


〔附合〕
・不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する(民法242条本文)。
・一般に,不動産に「附合」するとは,物が不動産に付着合体して独立性を失い,一般に不動産そのものとみられ,その分離復旧が社会経済的に不利益となる場合と解される。
 そもそも,民法の添付(「附合」含む。)の規定は,数個の物が結合して一個の新たな物が生じたような場合に,その所有権の帰属を決定する必要があることと,分離復旧による社会的経済的損失を防ぐ趣旨から規定されたものである。
 つまり〔無権限であったとしても〕物が付着合体して社会的経済的価値が上がったのに,もういちど無理に分離復旧してそれぞれ元の所有者に所有権を認めることは,社会的経済的損失なので,その復旧を阻止するとというのが法の趣旨である。したがって,分離復旧で物の価値が上昇するような場合には,あてはまらないのであって,放射性物質による土地の汚染をもって土地への「附合」というのは強弁にすぎるということになろうか。
・いずれにしても飛散した放射性物質の所有権の帰属の問題と物権的妨害排除請求権の成立とは無関係と思われるので,あまり意味のない論点ではなかろうか。
〔飛散した放射性物質の所有権の帰属論に意味があるとすれば,東電からの放射性物質についての物権的返還請求権の成否の問題のみではないか?〕


〔物権的妨害排除請求権との関係〕
・物権は,物を直接かつ排他的に支配する権利である。つまり物権の物に対するこの支配関係は,法的に保護され,この直接的・排他的支配という本質的内容を脅かす侵害に対しては,自力救済が禁止さている法治主義の下では,それを排除する救済手段が与えられる必要があり,それが物権的請求権である。
・そして,物権的妨害排除請求権とは,占有以外の方法によって物権の内容の実現が妨げられている場合に,その侵害の除去を求めるという請求権である。
・したがって,直接的排他的支配という物権の内容の実現が妨げられているといえるかぎり,汚染物質の所有権が現に誰に帰属しているかは問題ではなく,その妨害状態ないしその原因を誰が作出したかが重要である。
・このため結局,放射性物質の「無主物」性や「附合」の論点は,本来,ゴルフ場側の物権的請求権の成否とは直接関係がないはずである。
〔せいぜい,その汚染物質の所有権の帰属主体なら,妨害状態を作出した者であると当然に推定が及ぶという程度であって,現に妨害状態が作られた時点で,妨害原因物の所有者でなければ,妨害排除請求を受けないという論理的関係はない。〕


〔物権的妨害排除請求権の成否〕
・同請求権の成否との関係では,ゴルフ場の敷地,施設の所有権に基づく直接的排他的支配がその放射性物質汚染によって脅かされているかが問題となろう。
 ごく微量の汚染で,人が入ってプレーしても,全く害がないというなら,直接的排他的支配の「妨害」がないとして,物権的妨害排除請求権の成立自体が否定されるかもしれない。〔汚染の程度の除染請求の関係については,以前に論じた。〕
 さらにもう1つ,妨害が侵害者の故意・過失によらない場合にも〔今回の事故は不明であるが〕,その侵害者の費用において妨害除去をするよう請求することができるのかという問題もある。


〔物権的妨害排除請求権の行使の可否〕
・物権的妨害排除請求権が,観念的にゴルフ場側の権利として認められたとして,それを現に行使することができるのかという問題がある。
 つまり,権利として観念できるが,現実に除染が不可能である場合には,〔少なくとも本案の結論が出ていない仮処分申立事件においては〕裁判所は不可能を強いることはできないとして,権利行使自体が否定されるかもしない〔権利濫用?、請求内容の不明確性?〕。
 なお,この場合の「除染不可能性」については,物理的に不可能であること,法令上私企業に不可能であること,〔経済的に不可能であることなど?〕,いくらか考えられる。
 そして,現に除染が全く不可能ならば,金銭賠償による満足以外は得られないことなるのかもしれない。

〔請求する行為内容の不明確性〕
最近は、放射性物質の除染が簡単なものでないことが報道されるようになって、一体どうやって除染するのかという、除染作業の内容そのものが問題とされるようになっている。
 運動場に丸太をばらまいたような事案なら、妨害排除として請求する内容は、「丸太をどけろ」というものではっきりしているだろうが、放射性物質による汚染の場合、義務者に具体的にどのような行為をせよと請求するのか、その内容が不明確であるということから、請求権の成立ないしその行使が否定される可能性はある。


※結局,「除染」というものが物理的に可能で,法令上の問題もなく,その具体的行為内容がある程度明確な場合には,東電側に除染義務が認められて当然だろう。ただし,その除染の費用が,汚染された不動産に関係する財産的損害を大幅に上回るような場合には,以前にも触れた除染費用と賠償額との関係が問題となるかもしれない。



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2011-11-30 : ・土地建物,土壌等の汚染 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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