東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・被爆関係資料 その3 原爆症認定制度の在り方に関する検討会

・被爆関係資料 その3 原爆症認定制度の在り方に関する検討会


※原爆症認定に関する政府側の議論は、原発事故による被ばく問題とも関係するはず。


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○原爆症認定制度の在り方に関する検討会
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/zenkokukenkou/dl/110204-shiryo-a_0023.pdf
〔構成員〕
・荒井史男 弁護士
・田中煕巳 日本原水爆被害者団体協議会事務局長
・石弘光 放送大学学長
・智多正信 長崎市副市長
※・草間朋子 大分県立看護科学大学学長
・坪井直 日本原水爆被害者団体協議会代表委員
・潮谷義子 長崎国際大学学長
・長瀧重信 (財)放射線影響研究所元理事長
・神野直彦 東京大学名誉教授
・三宅吉彦 広島市副市長
※・高橋滋 一橋大学大学院法学研究科教授
・森亘(座長) 東京大学名誉教授
・高橋進 株式会社日本総合研究所副理事長
・山崎泰彦 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授

※原子力損害賠償紛争審査会の委員。
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-41.html


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http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001luvv.html
第三回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録

○日時
平成23年6月13日(月) 10:00~12:00
○場所
中央合同庁舎第5号館 厚生労働省省議室(9階)
○議題
1.開会
2.議事
(1) 原子爆弾被爆者医療分科会関係者からのヒアリング
(2) 原爆放射線に関する科学者からのヒアリング
(3) 裁判官出身者からのヒアリング
3.閉会

○議事
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 おはようございます。
まず、開会に先立ちまして、傍聴者の方におかれましては、お手元にお配りしております傍聴される皆様への留意事項を御確認いただきまして、厳守をお願いしたいと思います。また、この部屋少々暑いかと思いますけれども、クールビズでございますので、適宜、上着など取っていただけたらと思います。
それでは、これ以降の進行につきましては神野座長代理にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○神野座長代理 おはようございます。
それでは、定刻でございますので「第3回原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を開催したいと存じます。
初めにお断りを申し上げておきますけれども、本日は森座長がやむを得ない事情で急遽御欠席という事態になりました。座長からの御指示によりまして、座長代理である私が進行役を務めさせていただくことになりました。何分にも行き届きませんので、委員の皆様方には議事の運営につきまして御協力をいただければとお願い申し上げる次第でございます。
 それでは、委員の出席状況につきまして、事務局の方から御報告いただきたいと思いますのでよろしくお願いします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 本日の出席状況でございますが、森座長と潮谷委員が欠席との御連絡をいただいております。
 カメラ撮りはこの辺りまででお願いします。
(報道関係者退室)
○神野座長代理 それでは、議事に入りたいと思います。
改めて私から申すまでもありませんが、この間、東日本を巨大な大地震が襲い、かつ、津波がそれに加わって信じ難いような被害が生じる大災害が起きました。そのため、この間、検討会を延期せざるを得なくなっておりましたが、今回、前回、座長から皆様の方にお諮りをいたしましたとおり、ヒアリングを行いたいと思っております。議事次第、あるいは事前に皆様に御連絡を申し上げているかと思いますけれども、原爆症認定審査を実際に行われている原子爆弾被爆者医療分科会の方、放射線の健康影響に関する科学者の方、それから、裁判官御出身の方からお話をちょうだいするということになっております。
また、前回、田中委員の方から、被爆者医療に携わる医師の方からのヒアリングを含めて御提案がございました。この田中委員の御提案を含めて、今後のこの検討会の進め方については、ヒアリングの後に時間を取ってお話をさせていだきたいと考えております。
 それでは、資料の確認と本日のヒアリングの進め方について、事務局の方から御説明いただければと思いますので、よろしくお願いします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 お手元の資料を確認させていただきたいと思います。
資料1、ヒアリングの参考人名簿でございます。本日の前半でございますが、原子爆弾被爆者医療分科会の関係者と原爆放射線に関する科学者の方からヒアリングを行うこととしております。お名前を紹介させていただきたいと存じます。原子爆弾被爆者医療分科会会長の谷口英樹様でございます。谷口様には原爆症認定制度と医療特別手当の在り方というテーマでお話をいただくこととしております。
続きまして、御紹介させていただきます。京都大学名誉教授で国際放射線防護委員会主委員会委員の丹羽太貫様でございます。丹羽様には放射線の健康影響についてというテーマでお話をいただくこととしております。お二方のお話が終わりましたら、各委員からそれぞれの皆様方に対しまして、御自由に御質問、御発言をいただければと思います。
本日の後半ですが、裁判官出身の方からのヒアリングを行うこととしております。お名前を御紹介いたします。駿河台大学法科大学院教授の岩井俊様でございます。岩井様には原爆症の取消し訴訟を念頭に、判決に至るまでの流れや法律関係の判断に当たって考慮する事項などについてお話をいただくこととしております。岩井様からお話をいだいた後、各委員から自由に御質問、御発言をいただければと思います。
委員の皆様には資料2といたしまして、谷口参考人、丹羽参考人、岩井参考人からの提出資料をそれぞれ配付させていただいております。
事務局から参考資料として2種類の資料をお配りしております。ごく簡単に資料の性格だけ御説明をさせていただきたいと思います。参考資料1ですが、原爆症認定審査体制の資料でございます。おめくりをいただきまして、原爆症認定手続の概要、原爆症認定の審査体制、委員名簿、新しい審査の方針、審査待機者の計画的解消に向けて、医療分科会の開催実績を示したものでございます。
参考資料2は原爆症認定関係訴訟についての資料でございます。めくっていただきまして、平成12年7月に出されました松谷訴訟最高裁判決について、その後の集団訴訟の経緯、平成21年に署名されました確認書について、御参考までに用意したものでございます。
説明は以上でございますが、資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお願いします。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、早速ヒアリングを開始したいと思います。最初に谷口先生からちょうだいいたしますが、時間その他の都合がございまして、20分程度で御発表いただけたらと思います。よろしくお願いします。
○谷口参考人 医療分科会の谷口でございます。本日はよろしくお願いいたします。
資料2の1を御参照いただきまして、大体この資料に沿って御説明を申し上げたいと思っております。
まず「1 制度設立当初からの原爆症認定制度と手当の趣旨」ということで、これは委員の先生方には繰り返しになるかもしれませんけれども、比較的重要なことでございますので、ここからスタートをしたいと思っております。昭和32年、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律が制定されまして、原子爆弾の放射線の傷害作用により疾病にかかり、医療を要する状態にある。これをいわゆる原爆症と申しますけれども、そう認定された方々に対しまして、医療手当が創設されております。これは、原爆症と認定された方は、原爆放射線の影響が立証された疾病に罹患し、その医療についていまだ治療方法が確立されておらず、回復の望みのないまま死に対する不安にさらされている特殊な環境にあるということで、医療に関連して何らかの慰安の手段を与えることにより精神的な安定を図り、同時に幾分でも治療効果の向上を図るということを目的にしたものでございました。
更に、昭和43年には原子爆弾被爆者に対する特別措置法が制定されまして、原爆症と認定された方々に対しまして、特別手当が創設されております。これは原爆症の方は原爆の被害を最も強く受けた方でございまして、健康上、生活上、悪条件下にさらされている上、原爆症にかかっているため、一般人と異なる特別な出費を余儀なくされているということに対して、生活面の安定を図るためでございました。
一方、同じく昭和43年に健康管理手当も創設されておりますけれども、この手当は、立証前の原爆症の可能性もある原爆の放射線の影響を疑われる障害を伴う疾病に罹患したものを対象としておりまして、すなわち、健康管理手当は放射線との因果関係が科学的に厳密に否定できない疾病罹患者まで拡大されたものでございます。
このように、健康管理手当と原爆症と認定されることによる支給される手当、現在の医療特別手当でございますが、この差異が疾病と放射線との因果関係を高度に証明できるかどうかということで差がついていると理解しております。この考え方は後で述べます最高裁判所による判決によっても支持をされていると考えております。
さて、近年の原爆症認定制度と医療特別手当を取り巻く、特に最近の事情でございますけれども、先ほど事務局から御紹介がありましたように、平成12年7月、最高裁判所により、頭部外傷及びそれに起因する右片麻痺が放射線に起因するとして原爆症認定を求めた原告に対し、物理的打撃では説明し切れないほどの脳損傷の拡大の事実などを基に考えると、原告の脳損傷は、放射線起因性があるとの認定を導くことも可能であって、それが経験則上許されないものとまで断ずることができないとの判決がなされております。
この原告の疾病が本当に原爆放射線によるものであったかどうかという、いわゆる科学的な議論というのはあるのでございますけれども、より原爆症認定の判断根拠をわかりやすく示し、明確な科学的根拠に基づいた認定を行うために、平成13年5月、医療分科会では、疫学調査より得られました、疾病の発症が原爆放射線の影響を受けている蓋然性があると考えられます確率、これを原因確率と申しますけれども、これに基づいた審査の方針を導入しております。
しかしながら、この審査の方針によって認定とされなかった方々から却下を不服とした集団提訴が提起されまして、国の敗訴が続いております。このような状況から、平成19年8月、当時の安倍総理大臣より、審査の方針の見直しが指示されております。
これを受けまして、厚生労働大臣の下、科学者による原爆症認定の在り方に関する検討会が設置されております。この検討会では、疫学的な調査に基づく指標として設定された原因確率を、放射線の健康影響を判断する目安として使うことには合理性があるということを前提に、残留放射線についても、個人ごとの移動経路あるいは滞在時間に基づいて線量計算を導入することや、急性症状等も評価して総合判断を行うなどが提言されております。
これと別に、同時期に、当時の与党プロジェクトチームにおきまして、被爆者の方々からのヒアリングを踏まえた議論が行われ、がん、白血病、老人性を除く白内障等の対象疾患のある被爆者で直爆距離あるいは入市時期など、一定の被爆要件を満たすものを積極的に認定すべきであるという提言がなされております。
結果的に我々の分科会では、与党プロジェクトチームの提言を基にした、厳密な科学的知見にこだわらず、より幅広く被爆者救済の立場に立った新しい審査の方針を平成20年度から導入することとなりました。現在も、分科会はこの方針に基づいて認定審査を行っております。
その現在の実情でございますが、新しい審査の方針を導入いたしまして以来、平成20年度以前は月平均10件程度でございました申請件数が、平成20年度以降、月平均700件と急増いたしております。これに対応するため、平成20年4月以降、委員の数を17名から31名と大幅に増加いたしまして、分科会の下に4つの部会を設置し、審査機会の増加を図っております。その結果、月に280件程度の審査を行うことができるようになりましたが、申請件数の伸びはこれを上回り、平成21年10月には最大8,000件の待機件数ということになりました。
この状態を解消し、認定をお待ちいだいている方々に対し、より迅速な審査を行うべく、平成22年5月に、月平均500件以上の処理を目標とする計画を策定いたしまして、審査を行っております。このとき、同時に、新たに2名の委員を追加いたしまして、2つの部会を新たに追加し、審査体制の拡充を図っております。このような取り組みの結果、昨年度は6,435件審査を行いまして、待機件数は昨年度末で約3,000件、現在は2,400件まで減らすことができております。
一方、分科会の委員の先生方も、この業務以外に多数御自分の業務を抱える中で、現委員が現状以上の時間を捻出することは非常に困難でございまして、当分科会の処理能力はほぼ限界に達していると認識しております。
最近の原爆症認定の問題点でございますが、制度の趣旨と現状、大分時間が経ってきて乖離してきているのではないかというお話をさせていただきます。終戦から65年が経過いたしておりまして、被爆者の方々、平均年齢77歳となっております。原爆症として認定の対象となっておりますがん、白内障、心疾患等は、高齢者には非常にポピュラー、珍しくない疾患でございます。例えばがんは生涯で2人に1人は罹患する疾病でございます。白内障に関しましては、程度の差はあるものの、60歳代で66~83%、70歳では84~97%、80歳以上の方では100%の方に白内障の原因である水晶体の混濁が見られると言われております。このように、実際には加齢あるいは生活習慣を原因として疾病が発生している可能性が高いと考えられる中で、現状は、放射線による影響と放射線以外の原因、それによる影響を厳密に切り分けることは非常に難しいという中で審査を続けているわけでございます。
また、この間、医学は進歩いたしまして、制度設立当時、昭和30年~40年代には不治の病と考えられておりましたがんも多くは治癒が期待できるようになり、かつては失明の原因であった白内障に関しても、濁った水晶体を人工レンズに交換する手術等の治療により、日常生活に支障なく暮らせるようになったということもございます。このように、制度設立当初と現在は、疾病にかかった場合の予後あるいは障害の程度が変化していることも事実でございます。
現在の新しい審査の方針、先ほど申し上げました平成20年度から導入しております新しい審査の方針に基づいて、今、審査を行っておりますが、これは各疾患の放射性起因性について、厳密な科学的知見にこだわらず、より被爆者救済の立場に立って幅広く認定対象としております。当然、この中で取り入れられている考え方は、UNSCEAR等の放射線の人体影響に関する国際的に確立されている科学者の合意に沿わないものも含まれております。例えばC型肝炎などはウイルスが原因で起こることは証明されておりまして、放射線の影響も余りペーパー報告などはないんですけれども、認定疾患の中に入っております。
しかしながら、一般社会からは、私ども公的な審査会で基準として用いられるということを理由として、純粋に科学的なガイドラインであるように誤解をされるおそれがございまして、医療現場あるいは労働現場において、国民に放射線の人体への影響に対する不必要な心配を与え、混乱が生じることがないかと懸念をしております。
以上、まとめますと、制度創立当時において、治療法が確立されておらず予後の悪かった白血病や固形がんが、その当時、働き盛りの被爆者の方々あるいはその家族の方々に大きな負担となっていたと思われ、放射性起因性の程度と要医療性の基準により、高額の手当を給付する基準を設けたことは時代の要請であったと考えられます。
一方で、現代においては、被爆者は高齢化が進んでおり原爆症と同じ病名の疾患の罹患率は著しく高くなっております。また、先ほど申し述べましたように、医学の進歩により、これらの疾病にかかっても予後は依然と比べはるかに改善をいたしております。
当分科会といたしましては、最大限被爆者救済の立場に立ち、幅広く認定を行うことを基本として科学的な審査を行っておりますが、科学をよりどころとする専門家集団としては、その基本になる審査の方針の考え方が、国際的に認められた科学的知見に沿わないということもありまして、放射線起因性を科学的に証明されているとは言えない疾病まで認定対象となっている現状に違和感を覚えていることもまた事実でございます。また、放射線による影響と加齢・生活習慣による影響を厳密に切り分けることが難しい中で、疾病や悪性度や予後に関わらず、疾病と放射線との因果関係があると認定された一部の被爆者の方々に医療特別手当という、いわゆる手厚い手当が支給され、それ以外の放射線の影響が否定できない疾病にかかられた方々には、健康管理手当という金額的に大きな差のある手当が支給されているという現在の仕組みが、本当に被爆者の方々の実態に合っているのかどうかということに関しても、分科会の委員の方々から疑問がときどき出されているところでございます。
原爆症制度の在り方につきましては、被爆者援護施策であるがゆえに、放射線との関わりについてはある程度担保されなくてはならないと考えますが、被爆者のみならず、費用負担者でございます国民全体の理解が得られるよう、高齢化いたしました被爆者の方々の実態に即した公平な制度を検討していただきたいと考えております。また、その際には、金額の差が大きい2段階の手当にこだわらず、かかっている疾病の特性、あるいは個人個人の重症度などを実態反映するようなきめ細やかな段階や金額の設定を含め、検討することが必要ではないかと考えております。
以上で、私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、丹羽先生に御発表いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○丹羽参考人 それでは御報告させていただきます。
私に与えられたテーマは、一応これまでの被爆者の研究についての科学的合意形成の過程及び、そのような科学的合意から出てきたリスクの科学についての国際的合意形成。そういう点についてお話をさせていただきます。今の先生のお話にありました、結局放射線というものの位置づけ、そういうものでございます。
(PP)
今回お話しすることは、科学的合意形成のステップと被爆者研究の評価ということ。被爆者の、皆様方の研究が教えてくれたこと。それから、被爆者研究に基づいた放射線リスクに関する国際的合意。この国際的合意は、過去においてチェルノブイリ、今回の福島、そういうようなところにおいても非常に大きな意味を持っております。
(PP)
科学的合意形成のステップというものについてお話しさせていただきたいと思います。研究というものはすべて科学的合意形成に資するか。それはまた違うということを述べたいと思います。
まず、研究の第一段階は、当然ながら、これは研究者個人のレベルで、例えば放射線の健康影響がいかであるかということを研究いたします。そのような研究には、例えば分子・細胞・動物個体での実験的研究がありまして、これは専らメカニズム、健康影響に関する放射線のどのような関与があるかと機構を解明するスタンスであります。あと一つは、被爆者の研究あるいは放射線事故、そのほかにおける人の疫学調査で、これは必ずしも機構ではなくて、実態がいかであるかということを明らかにする。こういう2つの側面があるということであります。これは個人でありますので、そのような個人がどのような結果を出そうが、それはその個人の研究者の責任で行われる。
ところが2番目、その個人の研究者が研究者コミュニティーに対して、自分の研究成果をまずは上げるという過程がありまして、これは学会発表であり、論文発表であって、それをもって世界に発信をするというステップがございます。
そのようなステップを踏みまして、次に学会で発表されたこと、あるいは論文で発表されたことが世界の研究者コミュニティーに対して投げかけられる。そうすると、研究者コミュニティーは研究者により、そのような個人の研究者の研究成果の解析と検証をやる。例えば、大事な実験研究であれば、研究のシステムを持っておられる方は追試。更に自分でもテストをするという過程もできます。それから、いろいろな比較検討により、それが正しいものであるか、もっともであるいうことが検証できます。
疫学研究の場合は、すべての疫学研究というのは対象になる集団が変わりますし、例えば放射線の被爆の状況も変わります。だから、非常に個別的なものでありますが、そのような個別的なものを、例えば世界のいろいろなところでやられている研究を受けて、その比較検討により、より正しいか、あるいはそのような個人の行った研究というものの中身が何か間違いがないであろうか。こういうことを検証いたしまして、科学的な合意形成というものに進んでいきます。こういう過程を経て、ようやく科学的な手順を踏んだ合意形成というものが行われるわけであります。
(PP)
例えば論文発表というのは我々研究者にとっては大変高いハードルでありまして、なかなか簡単ではないということを申し上げます。まずは我々、私も含めてそうなんですが、研究者は思い込みがどうも強いところがございまして、自分でこうであると信じると、一生懸命そのことに合うようなデータが欲しい、あるいは自分で一生懸命実験をくみ上げてそのようなデータを出そうと努力いたします。それで証明できたものを学会で発表するなり、あるいは論文に発表するということになります。実際のデータが、例えば思い込み。自分がこうであろうと考えたことと合致した場合は、たまたま合致したということがあります。バイチャンス。もう一つは、何度調べても合致する。これは結構なことであります。自分の研究、例えば自分の研究室ではうまくいくんだけれども、ほかの研究者がやったデータとはなかなか合わないという場合がある。あるいはほかのデータとも合うという場合がある。
いずれであっても、学会発表は可能です。こういうことを発見しました。また、そのような発見というものは論文になる場合があると括弧で付けましたのは、これは次に述べます論文の査読のシステムと関係しております。とにかく、なる場合もあるし、ならない場合もある。
赤字で示した左のような場合の論文というものは、科学的合意に寄与しませんし、だれかがそれは間違いだというような論争になる場合もありますが、普通、大した研究でなければ時代とともに忘れられていくということが通常でございます。右の場合で、しかも価値がある論文。みんなそれは大変新しい発見だと言う論文のみが科学的合意に寄与していくという過程であります。
このような過程を経て、例えば科学的合意に形成するかしないかというのは、研究のタイプあるいは発表の雑誌というものに影響されて、我々研究者はやはりいい論文を書きたいと日々努力するわけであります。
(PP)
論文もいろいろでありまして、発表雑誌による差というのは歴然としております。研究発表する雑誌は非常に大事であります。
査読制度というものが我々研究者の仲間で使われている国際雑誌では一般でありまして、主に19世紀イギリスで発達した制度であります。これは同業者がその論文の内容を厳密に査定して、自分の専門性に応じて、間違いあるいは正しいかと検証する。この査読の検証に耐えた論文のみが普通掲載されるということになります。
しかしながら、査読制度がある科学雑誌であっても格付けは大いに異なります。例えば掲載論文が非常によく引用される雑誌というのは格付けが非常に高くて、みんなそういう雑誌に論文を書きたいわけです。そのような論文は残念ながら、幸か不幸か、当たり前なんですが査読は非常に厳しいです。例えば我々、生命科学、生物学をやっている研究者が一生に1本でいいから書きたいとあこがれている『Nature』というイギリスの雑誌がございますが、これの採択率は10%以下、はるかに切ります。ほとんどの論文は門前払いです。あなたの論文はこういうことで我々のフィールドに合いませんとか、まず門の前でシャットオフされて、門の中に入ったものの採択率が10%以下というもの。
このような格付けのランクとしては、雑誌にインパクトファクターというものがありまして、このインパクトファクターというのは、その論文に掲載された論文の平均引用頻度というものです。これはどういうものかというと、例えば『Nature』誌というものはインパクトファクターが30。例えば『Nature』誌に年間100本の論文が採択されて出ると、30というのはすなわち3,000回、100本が引用される。だから、1回の論文当たり30回引用されるという非常に高い引用率を誇っております。だから我々はそこに出したいと大いに努力するわけであります。
査読制度を持たない雑誌。これは一般誌で、普通の週刊誌などはそうですが、科学的な論文を出すものではありません。自分の意見を出すというところであるということで、科学的合意まで持っていこうと思えば、論文であったら何でもいいというわけでないということでございます。
(PP)
被爆者研究は放射線リスクの世界標準と我々は考えております。これは科学的な合意になっております。それは被爆者研究が非常に質の高い研究デザインを持ち、また、さまざまな面で過去50年以上検証されておるからでございます。原爆が落ちて、急性影響に関する記述があり、胎児影響に関する記述があり、次は白血病が出始めた。しかしながら、子どもさんを調べても遺伝的影響は見られない。それから、固形腫瘍が出始めて、晩発性の非がん影響というもの。時間系列でこのような形で出ておりますが、これは50年以上検証されて出てきたデータであり、何度も何度も検証されております。
(PP)
被爆者研究が世界標準として認められている理由というのは、まずは対象集団が非常に多い。すなわち12万人という多くの被爆者の方々の御協力を得て、非常に厳密な研究デザインを持ってつくられた研究であるからであります。その集団の中には寿命調査集団、成人健康調査集団、胎児被爆者集団、2世の集団。このようなものがセットアップされて、それぞれの方々について非常に緻密な追跡調査がなされております。
線量についても、実測ができないものでありますが、同じ広島型、長崎型の原爆をつくって、更にそれを実際爆発させて距離と線量の関係でテストしたりしております。そのような中から、計算による被爆線量の推定としてDS86、DS02というようなものができて、個人個人の被爆者の線量が策定されており、それが正しいかどうかということを染色体異常の頻度で更に検証する。あるいは数は少ないんですが、歯の奥歯などの内側のエナメル質を使って、電子スピン共鳴法でこのような線量が正しいかどうかの検証もして、おおむね全部が合うということで、線量については非常に厳密であるということである。
それから、調査集団についての厳密な追跡があり、これは健康データであり、死亡あるいは罹患データであり、死因の解析であるということで、非常に長期にわたるものであります。
発表論文は、例えば放射線影響研究の関連の国際誌『Radiation Research』にたくさんこれまで報告されてきておりますが、そこに出された広島、長崎の研究の引用率は非常に高いです。2007年にリー・プレストンという先生が、やはり被爆者研究についての非常に膨大で分厚い論文を掲載されました。これは既にオフィシャルには28回の引用があり、先ほど出てまいりました国連科学委員会の報告とか、そういうものにも常に載録されて高い評価を受けております。
(PP)
調査集団の3つ、4つの集団についてざっくり書いたものですが、寿命調査集団が1958年に設定されて12万人。その中で2万人が成人健康調査。これは被爆なさった方の身体的影響というものを見るもので、同じ身体的影響でも胎内被爆者集団というものがありまして3,600人。1956年に設定されております。それから、次世代影響集団があって、2世集団で7万7,000人。これは50年以上の追跡調査でありまして、世界的に類例がございません。
(PP)
そのような中から出てきたデータを2、3お見せいたします。これは被爆者研究の固形がんの過剰相対リスクと線量。我々はよくいろいろなところで引用するのでありますけれども、大体1Gyぐらい当たった集団でリスクは0.5。すなわち、5割ほどがんのリスクは増えるということで、1998年までの7,851名のがん罹患の死亡の方の中で、848名が原爆放射線に起因するということが推定されておりまして、それから得られた数値であります。
もう一つは、1Gyでこれから計算しまして、がんの生涯リスクは10%増えるであろうということが言われておりまして、これが今の世界の放射線の防護基準の1つの基盤になっております。
それから、100mGy以上で固形がんの頻度は直線的に増えるということであります。
100mGy以下では、試算の点のところでばらついておりますが、統計的な有意性がないということも科学者内ではコンセンサスになっております。
(PP)
次に、このような100mGy以下ではどうなんだということで、100mGy以下で1%の変動ということなんですが、1%の増加を12万人で検証できるどうかという問題は非常に難しいと言うべきであります。がんの死亡の、例えば地域変動をとってみますと、我が国では高発がん県、低発がん県に簡単に分けることができまして、例えば長野県とか山梨県、あの辺りは低発がん県で有名であります。秋田県は全部のがんが高くて、主に胃がん関係が高いということで、それを押し上げております。大阪府は肝がん。大阪及び関西、伊勢は肝がんの頻度が高くて、これは多分肝炎ウイルスの感染頻度の問題であると考えられております。
それで、頻度の地域変動がどのぐらいあるかと言いますかと、高い県と低い県で10%ぐらいの差がございます。そのようなぶれがある中で、1%の増加を検証するというのは非常に難しいということがこれからもわかりますが、1%のぎりぎりのところまで追い詰めたということで、被爆者研究というものが世界標準になるゆえんであります。がん以外の疾患についても非常に長期の追跡で明らかにされました。
(PP)
これは数年前に世界がびっくりしたんですが、これまでがんが中心であると言われておったのが、心疾患であり、白内障であり、脳卒中であるというのが、追跡期間が長くなればなるほど明らかになってきたのは、線量に対して割と直線的に増える傾向が見えてまいりました。しかしながら、リスクの増加自体はそれほど高くありませんので、がんほどの増えではないということであります。これは被爆者研究が世界で初めて明らかにしたもので、それから放射線防護などのシステムがこれを中心にまた変わろうとしております。
(PP)
 胎児期の被爆に関しましても1950年~60年代にイギリスでやられた研究があって、それが一応世界のコンセンサスとなっておった時代があります。胎児は非常に放射線に感受性が高いのではないかと言われておりました。しかしながら、広島のデータを精緻に調べますと、胎児被爆の過剰相対リスクは小児被爆よりかえって低いのではないかという研究が近年明らかになっております。そのために、国際放射線防護委員会、ICRPと言いますが、いろいろなリスクの評価をやり防護の勧告を出す団体でありますが、その団体では、胎児被爆による発がんについて胎児は小児に同等、あるいはそれよりも感受性が低いという結論を出しております。これも被爆者研究が起きらかにした非常に大きいポイントであります。
(PP)
それから、2世の調査。これはこれまでの研究で、一応7万7000人を調べても、いわゆる遺伝的影響というものが見られていない。これも被爆者研究が何度も検証して明らかにしたことであります。
(PP)
このような被爆者研究から得られた科学的合意というものは、ざっくり言いますと、急性の確定的影響は数Gyの閾値線量で発症するということ。
長潜伏期の非がん影響というものは今、確定的影響に分類されておりますが、1Gyで約10%の頻度上昇で閾値はごく小さい、ないしはない可能性もあるというのが被爆者研究から出ているところであります。しかしながら、0.5Gy以下では自然頻度の変動の範囲に入ってしまって、はっきりとないとかあるとかいうことは言えないというのが実際の状況であります。
確率的影響、すなわち、がんでございますが、1Gyでは相対リスクが50%上昇し、1Gyで生涯リスク、死亡リスクが10%増えるということで、50と10でちょっと面倒くさいんですが、これは堪忍してください。それから、閾値はないとしてもよいという考え方であります。ただし、ないかどうかということは、そのすぐ下にあります0.1Gy以下でのリスクは自然頻度の範囲の中であるということで、これはわからない。科学的検証はできないと言うべきであります。胎児被爆は小児被爆同等あるいは低いということ。
科学的合意は0.1Gy以下でのリスクの有無は言えない。しかしながら、放射線防護を考える上では、0.1Gy以下でも直線的増加というものを想定しております。この矛盾に見えるものについては次のスライドで申し上げます。
(PP)
被爆者研究から明らかになった確定的影響と確率的影響をざっくりまとめます。
まず、確率的影響と言われるものは自然発症頻度が必ずあります。例えば数%から数十%の自然発症頻度があり、線量に対して直線的に増加するわけであります。だから、この絵で真ん中のところに点々の自然発症頻度というものがありまして、必ず自然発症頻度、この場合は死亡率で見たら30%、発症率で見ますと50、60%。そのような上に重なって直線的に上がっていく。そのために、この自然発症頻度の変動とか集団によって変わりますので、その変動の中に隠れて0.1までははっきり見えない。科学的にある、ないは厳密には言えないということであります。
これまで確定的影響とされてきた晩発的組織障害。緑色で書いたものですけれども、同様に自然発症頻度がものによっては数%、数十%、あるいは100%まであるというような状況で、放射線は薄く頻度を上げるということで閾値は0.5以上ではないかと言われております。
それに対して、急性の組織障害については自然発症頻度ゼロです。何もない健康な方が下痢をするでもないし、血を吐くわけでもなんでもない。そういうゼロが、ある線量以上を浴びるとどんと出てくるということで、閾値線量は0.5以上ということに、これは非常に丸めた数字でそれぞれの症状によって全部違いますが、このようなことが言われております。閾値以下では影響がない。これがコンセンサスであります。
(PP)
国際的合意がこれから必要になって、それは防護のために国際的な合意というものが必要になっております。科学的合意というものは、まず国際的合意形成が行われて、特にリスク関係を考えるためには国連科学委員会というところに上げられて、そこで更に厳密な検証をされて報告書としてまとめられます。世界21か国からの専門家の合議によって合意されたものを報告として刊行する。だから、最初の研究から科学的合意、国際的合意に行って、国際的合意から防護政策につくられていく。これが国際放射線防護委員会、先ほどのICRPといった組織でありますが、国連科学委員会でのリスク評価に準拠しまして、防護政策になる基準の考え方を勧告する。それが各国政府に行き、防護政策の立案というものになります。
(PP)
だから、最初、一番上のある程度合意された科学的知見。線量とリスクの関係はある線量以上で直線性があります。逆に言えば、直線性があるかないかというのは、ある線量以下ではわからないですということがそこに含まれております。
それが国連科学委員会に行きますと、全部をまとめて国際放射線防護委員会に上げていって、そのような国連科学委員会の報告に基づいて防護基準を勧告する。その場合は防護のため、低線量でも直接閾値なし仮説で、すなわち直線である。だから、ここで直線性があり、あるいはないとも言えるというものが防護という政策的なものを含んだ場合には、これはないと考えて評価しましょうという形で平常時の放射線防護がなされております。緊急時、今の福島のような場合はまた問題が変わってまいりまして、福島などの場合には実際浴びてしまった方々について、それは本当にリスクがあるんでしょうか、ないんでしょうかという議論を真面目に積み上げていく。そのような中で、広島、長崎のデータというものが非常に大きな意味を持っておる。更に、それが登場しておるというのが現状であります。
 以上であります。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。お二人の方からは極めて短時間のうちに要領よく、また御丁寧に御説明をいただきましたことを感謝申し上げます。
谷口先生からは原爆症認定審査に実際に携われている原子爆弾被爆者医療分科会の立場から、原爆症認定制度及び医療特別手当の趣旨、現状、審査の実情、更には問題点と御指摘をいただきました。また、丹羽先生からは被爆者研究についての科学的合意形成やリスク科学についての国際的合意形成について御説明をいだいた上で、放射線の健康医療の影響について、極めて御丁寧に御説明をいただいたところでございます。
それでは、ここでひとつ区切りとさせていただいて、委員の皆様方から御自由に御質問や御発言をいただきたいと存じます。いかがでございましょうか。どうぞ。
○草間委員 今日は谷口先生、丹羽先生にそれぞれ、谷口先生には医療分科会の御説明いただきまして、大変御苦労されている状況がよくわかりました。丹羽先生には原爆被爆者の調査の結果、ありがとうございました。
それで、谷口先生のに関連しまして事務局にお伺いししたいんですけれども、本日の谷口先生の御提案の最後にもありましたし、前回の伊藤参考人からも、健康管理手当と医療特別手当が分けてあること、一緒にしたらどうかというような御提案があったりしました。そこで、健康管理手当あるいは医療特別手当が、例えば健康管理手当3万数千円、あるいは医療特別手当の11万7,000円でしょうか。こういった金額がどういうことで決められたか。今日の谷口先生の御提案の中でも大変両者に差異があるということで、特に原爆被爆者の皆様に関しましては、医療費あるいは介護費等につきましては現物給付という形で行われているわけですので、健康管理手当と医療特別手当がどういう根拠でこういった金額が決められたかというのをお話しいただきたい。
もう一つ、そのほか社会保障給付金。例としては生活保護などがあるかもしれませんけれども、日本ではほかの社会保障給付金というのがどのぐらい支払われているかというのを是非お示しいただいて、同じ国のお金が出ているわけですので、その辺をお伺いしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○神野座長代理 事務局、いかがでしょうか。1番目の点、手当の金額の根拠及び経緯。2番目の点は、他の社会保障との給付についての実態ですが、別途御説明いただくのであればその機会でもいいですし、今、とりあえず簡単に御説明しておいていただけるのであればお願いできればと思います。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 手当の根拠や特に経緯については、昭和35年の医療手当ができたときからの変遷になりますので、それはきちんとした形でまた資料を提示したいと思っておりますが、健康管理手当と医療特別手当とではそもそもの考え方、趣旨が異なります。健康管理手当については、いわゆる原爆症の認定の方とは異なる形で、原爆の放射線に起因する、あるいは要医療というところまでは言えないけれども、そういった方についても、疾病により一般の方よりも多くの出費が必要となっている。それは当時の説明であると栄養補給費、保健薬費等といったかかり増しの費用もあるという中で、一定額の手当を支給しましょうという考え方で、昭和43年当時は月額3,000円だったわけですけれども、それが徐々に変遷を経て、今3万3,000円程度まで上がっているというものでございます。
医療特別手当については原爆症と認定された方々が対象でございます。こちらは原爆症と認定をされたというところで、ある意味、相当重度の方、重症の方でいらっしゃいます。また、生活面でも相当程度、稼得能力という面でも限られているという中で、生活面での安定を期するということも含めて額を設定しております。制度が始まった当時、特別手当と医療手当に分かれていたわけですが、その手当を統合する形で、これもさまざまな変遷がございましたけれども、昭和56年から医療特別手当ということになっております。現在、約13万7,000円になっておりますけれども、健康管理手当の額との違いというのは、今、申し上げましたように、特に生活の安定まで期するかどうかというところまで趣旨として持っているかどうかという違いが大きいところがございます。
これまでの経緯があって今の額が設定されているものでございますけれども、繰り返しになりますが、説明が行き足らないところがあると思いますので、これまでの変遷、根拠、額の設定の考え方については、資料を提示して説明させていだきたいと思います。
また、ほかに社会保障の給付金というのは、草間先生、例えばどんなイメージですか。
○草間委員 例がいいかどうかわかりませんけれども、生活保護とか、そういったものがどのぐらい支払われているかということをお伺いしたいなと思います。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 わかりました。そういう意味では、生活保護の考え方。生活保護でも状況の方によって額が異なると思いますけれども、生活保護でどのような形でお金が出ているのか。また、この手当と生活保護の給付金との関係と言うんですかね。それを収入と認定するかどうかという話もあるかと思いますので、その辺の考え方も含めて、資料として、また御提示させていただきたいと思います。
○神野座長代理 前の資料は、これをもうちょっとバージョンアップしたものがある。前にも一応出ているんですよね。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 第1回目で、本当に概要的な健康管理手当について、あるいは医療特別手当についてという資料は事務局からお示しをさせていただきました。ただ、これは額の根拠とか変遷まできちんと書いたものではございませんので、そういう意味で、もう少し提示をしたいと思います。
○神野座長代理 石先生、どうぞ。
○石委員 両先生の関係と言いますか、意識の中に、この2つを御説明があった中で何か関係などを聞いてわからないんですけれども、谷口先生がやっておられるのは一番現場の生々しいところで大変苦労されているわけです。そして、何か足をこうするとか、具体的には物差しが必要だとお考えだと思いますが、そのときの物差しというのは、恐らく丹羽先生がお出しになっているような科学的な知見ですとか、国際的な合意を得たものがあれば本当はいいんでしょうけれども、そこまでいっているんですか、いっていないんですかというのが私の質問なんです。具体的に科学者がやっている学問の世界の話が、現場のいろんな政策的なジャッジメントをするときに役に立っているのか。あるいはこれはまた別の問題だ、そういう意識はないんだとお考えになるのかどうか。それを確かめたいと思いまして、質問させていただきました。
○神野座長代理 どうぞ。
○谷口参考人 勿論何らかの物差しがないと審議できないわけでございまして、一応公開したものがございますけれども、ある程度の物差しの中で審議をしております。ただ、先ほどの丹羽先生のお話を改めて聞かせていただきまして、やはり科学に立脚した部分とそうではない部分が混在しておりまして、特に平成20年の新しい審査の方針。今、やっております審査の方針を、我々としては受け入れたという言い方をしておりますけれども、その方針でやるようになってからは、その前はいわゆる原因確率と言って、幾分なりとも科学に立脚した審査方針でやっていたわけです。現在は大きくかじを切って、救済という言い方は変かもしれませんけれども、より被爆者の方々を広く認定するという立場に立って、大きく広げた物差しでやっているというところが現状でございまして、なかなか科学者の集団としては、内心違和感を覚えているというのも事実でございます。
○神野座長代理 ありがとうございました。
丹羽先生、補足して丹羽先生のお立場から御意見をいただけますか。
○石委員 具体的な物差し等々に役立てようというような問題意識かあるのか、ないのか。別の問題なのかを聞きたい。
○丹羽参考人 私個人では、被爆者の問題というのは、被爆者個人の方にとってはやはり御経験なさったことが一番大きいわけです。我々、科学者というのは、その中で放射線の部分だけをどう切り出して、それの影響を見るかということが一番大事だと思っておるんです。しかしながら、被爆者の方にとって、放射線もあれば、爆風もあるというものであり、それは混然一体となっておるものでございます。この場合の放射線起因性というものを、逆に言えば、非常にきつく言われると、多分被爆者の心情とハート、それから理性ですか。そこの間のそごというものが、私の話したことと谷口先生のお話になったことのギャップであろうかと思っております。
○神野座長代理 ありがとうございました。
どうぞ。
○荒井委員 私も新しい審査の方針になりましてから、主として、被爆の場所あるいは入市の場所、時間的な関係の事実認定関係でお手伝いをするということで分科会に参加させていただいております。谷口先生から、今日、お話いただきましたように、大変な時間的な制約の中で、あえて言うと、ある意味学問的良心との葛藤の中で頑張っておられるということで敬服をしている次第なんですが、今日は2点お尋ねさせていただきたいと思います。
1つは、主として、今日のお話は今の法律あるいは新しい審査の方針の下での放射線との起因性の関係についての御説明だったと思います。もう一つの要件としての要医療性という問題がございますけれども、審査の中で専門の先生方の見る、いわゆる要医療性の御判断と申請をされる被爆者の方々の、まだ投薬は受けているんだという場面での要医療性の感覚と少しギャップがあるのではないかという気がするんです。今後の制度の在り方を考えていく上において、要医療性の問題については現状のままでよろしいというお考えなのかどうかが1つ。
もう一つは、今日の御説明の終わりのところで、被爆者援護施策であるがゆえに、放射線との関わりについてある程度担保されなければならないがという御説明がございました。大変難しいところであろうと思うんですが、ある程度担保ということをどう制度として実現していくかについて、何か具体的なお考えがございましたらお教えいただきたい。この2つでございます。よろしくお願いいたします。
○神野座長代理 2点、お願いできますか。
○谷口参考人 確かに要医療性のギャップというのは、私どもが審査いたしまして認定と却下の処分を出すわけですけれども、却下の処分を出した方々の中から異議申立てというのがときどき出てまいります。異議申立てについても私どもが審査をしているわけでございますけども、その中で、自分は治療を受けているのに要医療性なしという判断で却下になったのはおかしいという御意見が多々見られるのも事実でございます。
私どもが考えております要医療性というのは、もともとの疾患に対する治療が行われているかどうかということが1点。
もう一点は、例えば悪性腫瘍であれば、現時点で再発の可能性があるかどうか。ですから、再発の可能性を目途として、いろんな検査を、例えば数年にわたって検査を密に行っている期間といったものは要医療性ありと判断するわけです。しかし、明らかにその疾患が治癒したであろうと思われる期間で、例えば病院に通って年に1回、いわゆる健康診断的にやっている。これはこういう制度以外の方々もやっておられることで、それを要医療性の中に入れるかということに関しては少し疑問に思っているというところで、原疾患に対する治療が行われているということと再発の可能性がある期間は要医療性を認めようということで現状はやっております。よろしいでしょうか。
○荒井委員 ありがとうございます。
○谷口参考人 もう一つ、放射線起因性についてのある程度担保というのは、我々の医学者、科学者としてのぎりぎりのところでありまして、先ほど100mSvから直線的に上がるというお話がありましたけれども、それこそ1mSvぐらいのところで議論をしているというのが現状でございます。全く放射線の起因性を考えずにやるのであれば、我々科学者は要らないわけで、本当に事務方だけで審査をすればいいわけです。私どもがその役に任じられて審査をしているということは、やはりある程度の科学的な担保を見ているというところがベースにあるのではないかと私は思っておりますし、恐らく分科会の先生方もそういう思いで御協力をいただいているのではないかと考えております。
○荒井委員 ありがとうございました。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。田中委員。
○田中委員 私からお二人に御質問があるんですが、まず、丹羽参考人はどういう目的で今日の報告をされたかというのがわからないんですけれども、私がおもんぱかると、恐らく谷口先生もおっしゃった、原因確率というのは正しいんだ。それを採用されなかったことについて、谷口先生は若干不満の言葉を述べておりましたけれども、原因確率を出してきたABCC、放影研の研究は国際的に認められているんだということを丹羽先生は主張されたんだと思います。
そのことだけは事実なんですけれども、もともとABCCの基礎的なデータがどういうふうにとらえたかということを考えると、これは残念ながら、米軍の意図があって、初期放射線の影響だけしか見ていない。ですから、線源から発せられる線源の影響だけについては、すばらしい研究であったかと私は思います。私も科学者の端くれですので、そう思います。しかし、今、問題になってきている残留放射線がこの研究の中に全く考慮されていない。だとすれば、今、福島でも問題になっておりますけれども、この研究に大きな欠陥があったと私は思っているんです。そのことを科学者は認めないといけない。とにかく初期放射線という線源から放出された放射線の影響だけは、かなり綿密に実験までやって求められている。しかし、繰り返しになりますけれども、残留放射線の影響は全く考慮されていない。それをどうカバーしていくことかということを科学者が謙虚に反省しながら、これを活用していかなければいけないんだと私は思っております。
そういう意味で、原因確率というのはあくまでも目安。もともと確率そのものが認定する場合の目安にしか過ぎないわけです。防護のために使うわけですから、ある人間の個人の起因性を求めるものではありません。だから、防護のために使うんですけれども、あくまでも目安であるということを、やはり最初に丹羽先生はおっしゃるべきでなかったかと私は思っております。
 それから、谷口先生にですけれども、今、申しましたように、原因確率はあくまでもリスクの問題です。だから、それを被爆者の起因性にそのまま適用するというのは間違っているわけです。防護のためのリスクの数値なわけですから、それを原因確率という数字で出して、しかも、機械的に適用するというのを、最初の新しい審査の方針を決めたときには採用してしまったわけです。そこにもともとの間違いがあった。
その新しい方針を決める前の、なぜ決めなければいけなかったかということについては、最高裁の判決があって、見直しをするときにそういう判断をしてしまった。これは決定的な誤りです。最高裁の判断は、そういう数字を機械的に適用すべきであるとは言っていないんです。むしろそれに必ずしも影響しないでもよろしいということを言っているわけです。それを原因確率という数字を出して機械的に適用した。これがやはり被爆者の、私は被爆者でもありますけれども、怒りを買ってしまったということです。
それでも、なおかつ見直しがやられて、与党PTの方針で決まったわけですけれども、皆、見直しをやっている段階で、丹羽先生はあくまでも原因確率というものが正しいんだ。それから、残留放射線の影響は調べることはできないんだということを主張されたと私は記憶しております。そうでなかったら申し訳ありませんけれども、そういうことを考えれば、谷口先生、やはり原因確率に物すごい郷愁を持っていらっしゃるようですけれども、それはきっぱり捨てていただかなければいけないと思っています。そういう立場で考えていただかないと審査はできないんだと私は思っております。
○神野座長代理 第1の質問は丹羽先生にお答えいただいた方がよろしいでしょうか。その後に谷口先生、お願いします。
○丹羽参考人 まず第1に残留放射線のことですが、残留放射線の扱いというのは今のところ、まずDS86でやられておるということは御存じだろうと思います。西山地区に関しても、たしか長崎が市だったと思いますが、非常に緻密な研究をやっておられて、特に染色体異常の頻度も解析されております。少なくともそのようなデータから示すところでは、これぐらいの線量というのが出ておりまして、それは直接被爆の線量を大幅に変えなければならないということではない。そういう評価が下された結果、今のDS02になっておると私自身は理解しております。
そのほかに、入市被爆の残留被爆に関して、今中先生が随分と精緻な研究をやっておられます。彼のデータを拝見しても、例えば原爆が落ちた後の何日目に入って、市内をこのように動いてという解析がなされていて、そのデータである程度の推定がなされていて、それが非常に高いものであるかということになりますと、今のところはそのようなデータであるとは私は理解しておりません。
もう一つは、歯のESRのデータがまだ残念ながら論文としては出ていなかったと思いますが、入市被爆の方についても一応解析されております。そのようなデータから合わせて、残留放射線の問題というのは非常に大きな寄与をする。今の線量の倍になるとかというものではないと私は研究者として理解しております。
それで、私が申し上げた今日の話は、あくまで放射線という要因だけを切り取って、それと健康影響の関係が今、どこまでわかっているかということを、私自身がこれまで理解したものに基づいて申し上げたのでありまして、原因確率云々に関しては、これは言うなれば政策的な判断である。我々科学者の立ち入る部分ではないと実は思っております。だから、国が原因確率を捨てる捨てない。これは別な話でありまして、私自身はマウスを使った実験を随分長いことやっておりましたし、広島にもおりました。それで、放影研のデータをいろいろ勉強させていただいて、非常に感銘を受けたのであります。そういうことで、私が今日、申し上げたかったことは、放射線の人体影響というものを示すに、広島でのデータというのは世界標準になるまで追跡されてすばらしいものであるということだけを申し上げるということで、それ以外の部分についての言及は私自身はしなかったと理解しております。
以上です。
○神野座長代理 後者の問題について、谷口先生、何かございますか。
○谷口参考人 私は別に原因確率に郷愁を持っているわけではございませんで、やはり現場といたしましては、審査をしていく上で何らかの物差しが要るというのはやむを得ないことでございます。その1つの一助として扱って、今、田中委員がおっしゃった、前の審査方針のときはそれをある程度使っていたということは事実でございます。ただ、機械的に当てはめたというお言葉でしたけれども、実は全くそうではございませんで、先ほど丹羽先生もおっしゃった、残留放射線の推定の線量というのはほぼわかっておりましたので、それは全部つけ加えて審査にしております。ですから、いわゆる原因確率だけを機械的に当てはめていたことはないということは、ひとつ申し上げておきたいと思います。
それから、現在、更に平成20年度の審査の方針が新しくなったところで、実はその審査の方針を決めたときは、委員の先生方から、いわゆる科学というところから大きく足を踏み出してやっていくんだという意見が出まして、そういう立場で、現在は広く厳密に科学的な知見にこだわらずやりましょうというところでやっている。だだし、現場としましては、何らかの基準と言いますか、物差しが要るということだけは御理解いただきたいと思っております。
○神野座長代理 それでは、高橋先生、どうぞ。
○高橋滋委員 まず、谷口先生にお聞きしたいんですが、先ほどC型肝炎の話を言及いただきました。これは新しい審査でも放射線起因性が認められる肝炎となっていると思うんですけれども、C型肝炎に言及されたポイントは何なのかなということを1点お聞きしたいということ。
 それから、新しい指針でも2号要件というのがあるはずでございまして、1号以外に2号で総合的に判断するという一般条項があるわけでございます。その辺の2号要件の運用について少しお教えいただきたいというのが、谷口先生に対しての御質問でございます。
 丹羽先生について1点だけ細かいお話ですが、14ページのスライドでGyの話が出ています。やはりSv換算をするんだろうと思うんですけれども、通常、長崎の場合にどのぐらいのSv換算になっているのかなということを、その被爆の状況によっていろいろと違うと思いますが、どのぐらいのSv換算になるのかなということを教えていただきたい。
以上2点、合計3点です。
○神野座長代理 それでは、最初の2点。C型肝炎の件と2号要件の件について、谷口先生。
○谷口参考人 C型肝炎につきましては、我々が審査をしている疾病がたくさんある中で、この場合はウイルスですけれども、いわゆるほかの放射線以外の原因が明らかであるということで例に挙げさせていただきました。
総合判定の話、2号要件の御質問ですね。
○高橋滋委員 済みません。C型肝炎で認定されているということですか。それとも、認定されていないということですか。
○谷口参考人 認定されております。
○高橋滋委員 その根拠はどういう根拠ですか。
○谷口参考人 ですから、その根拠は科学的な根拠ではないということです。いわゆるC型であろうと、B型であろうと、現状は肝炎も認定される疾患の中に入っているということです。
総合認定の2号要件の件ですけれども、まず被爆要件でございます。オープンにされています2km以内、100時間以内の入市という要件がございますけれども、これは特に法曹委員の先生方に事前審査をしていただいております。例えば3.8km直爆とか、120時間ぐらいで入市とかいうようなことが手帳上はあっても、古い、いわゆる原申とかをずっと見ていただいて、それよりも早く入市したのではないかとか、あるいはそれよりも少し近いところで手帳ではない要件はないかということを個々に精査をしていただいております。そういうことで、手帳上は3.8kmとか4kmの直爆であっても認定に至るケースがあるということが1つでございます。
もう一つは疾患に関しましてですけれども、疾患に関しまして、今、オープンにしているがんとか白血病、いろんな疾患をしてあります。あれにオープンになっていないものの中でも、いわゆる疾患の特異性と言いますか、その被爆者の方々に対する悪い影響と言いますか、そういったものを勘案してオープンにされていない、例えば脳腫瘍。良性の脳腫瘍とかいったものであっても認定になっている。あるいは再生不良性貧血といったものも認定の対象になっている。それが今のところの2号の運用であると御理解いただければと思います。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、Svの問題について。
○丹羽参考人 この14ページのものはミスプリというか、昨日の晩につくっておりまして、数値を全部Gyにするべきところを、しかも、ただのGyでmSvとかそういうことでないようにしなければならないのを残しております。
Gyにした理由は、1つは広島、長崎の場合は全身被爆であるということです。それと、Sv表示にするために必要な要因が2つございまして、1つは普通のγ線以外の放射線。すなわち広島、長崎の場合、中性子線なんですけれども、中性子線の寄与はどれぐらいであるかということが問題になります。これの場合は中性子線の寄与が少なくとも低い。
もう一つは、疫学では、Sv表示というのは下手をすると非常に誤解を招くということで、最近は疫学では全部Gy表示でやるということになっております。そのために、ここのところで下の線で線量、ちょんちょんでmSvというところを全部Gyにしていただいて、500という数値は0.5、0.5に変えていっていただきたいと思います。
以上です。どうも失礼いたしました。
○神野座長代理 よろしいですか。
それでは、どうぞ。
○田中委員 追加の質問と言いましょうか、私が申し上げましたのは、ABCCの調査の段階で放射線量を推定していくときに、被爆者たちが残留放射線の放射性降下物による残留放射線の影響を受けていたはずなんです。ところが、それを勘案することができなかった。それが基になっているデータであるということを1つは強調したかった。
2つ目は、疫学調査をやっていくわけですけれども、コントロール。要するに、被爆していない人と被爆している人の比較をする場合に、例えば比較的遠距離、3kmとか4kmの人たちをコントロールとして使っているわけです。そうなりますと、今の福島などを見ていただければわかるように、3kmとか4kmという被爆者たちは大量に放射性降下物を浴びているわけです。そういう被爆者であるわけです。ところが、その人たちがコントロールになってしまった。そういう疫学の結果というのは、やはりそういう弱点があるということを認めていただかないといけないというのが私の言いたかったことです。丹羽先生がおっしゃった黒い雨地域の、長崎の西山地区とか高須地区の人たちについては、審査のところと言いますか、DS86のところで付加する。付加するという線量の評価をしているわけですけれども、もっと被爆者自身が放射性の降下物の影響を受けているということを考えていただかないといけないというのが、私の言いたかったことであります。
○神野座長代理 丹羽先生、何かコメントございますか。
○丹羽参考人 御意見、十分受け止めます。ただ、放射線の影響というのは、線量が幾らであれば身体的影響はどうであったかということの関係をつけるというのが、放射線の健康影響なんです。その場合に線量の寄与がどれぐらいであるか。勿論全部足し算していきます。足し算していって、その寄与がどういうことであるかという形を検討した結果として、一応、今のデータがあるということ。
それと、まず福島の場合を今、言及なさいましたけれども、あれの場合は原発から徐々に吹き上がったものが雲となって飛んでいったという状況。それと、実際、原爆の場合で吹き上がったという状況とは当然違うということで、遠距離に関しての線量測定も十分やっておると私自身は理解しています。だから、その内部被曝とか残留放射線の影響があったというものを込めて、その皆様方がおられて、皆様方の健康状況があり、それを踏まえて実際はデータが出ておると理解しております。
それで、特に遠距離に関して高いというのは20年、30年前から問題で、この被爆者研究の一番当初に、どの集団をコントロール、対象として取るかというのは大議論がありました。実は郡部に行くと、市内の居住の方と疾患のパターンが変わってまいります。がんに関しては郡部の方が高いです。広島という県において、農村部の方々だと思うんですけれども、その辺りでそれではどういう方々をとろうか。そうすると、実際は当時広島の市内におられなかった広島の市民という方々とか、少し遠距離の方で推定線量はこれこれ以下という方々を対象集団として、そのような対象集団として使うにおいては、両者においてもそごがないという議論は、非常に初期のときになされておると理解しております。がんの頻度だけ取れば、郡部の方で高く、だんだん市内に近づくにしたがってリスクが落ちてきて、また市内に入って線量が高くなると上がるという傾向があるというのは20年以上前に研究されております。それに基づいた対象群の取り方であるということで、多分その辺りは初期の論文の著者、チャールス・ランドという方なんけれども、非常に私は尊敬する研究者なんですが、その方の解析というものは、私は科学者として信用に足りると実は思っております。
○神野座長代理 申し訳ありません。予定の時間をかなりオーバーいたしておりますので、この議題につきましては、ここら辺で打ち切らせていただきたいと思います。谷口先生、丹羽先生、本当にどうもありがとうございました。
 引き続きまして、裁判官御出身の方からヒアリングをちょうだいするという趣旨で、岩井先生から御発表をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


○岩井参考人 岩井でございます。裁判官として長く裁判に携わっていた関係で呼ばれたのかと思いますので、この種の事件に関する裁判の状況について、主として一般的なことになりますが、簡単にお話をさせていただきたいと思います。
 まず第1に、民事訴訟の手続の概略を申し上げようと思います。
被爆者援護法による認定申請却下処分の取消しの訴えというのが普通の裁判のスタイルで、これは実は行政事件訴訟であります。行政事件訴訟につきましては、行政事件訴訟法という法律で扱うことになっておりますが、行政事件訴訟法は行政事件に特有な点のみを規定しておりまして、一般的なことについては民事訴訟の例によると定めております。したがいまして、手続は一般的には民事訴訟法によって行われるということになります。
次に、手続き流れのイメージをつかんでいただくために申し上げますと、まず原告が訴えを提起します。原告になるのは認定申請をして却下された被爆者の方で、被告になるのは現行法では国ということになっていますが、その原告が、却下された処分の取消しを求めるという趣旨の訴状を作成しまして、裁判所に提出するということになります。裁判所の方でその訴状を被告に送達する。そして、第1回の口頭論弁期日が開かれるわけですが、やや大きい訴訟事件では、そこで進行協議期日というものが設けられて、事件全体の進行について協議が行われ、審議の計画が定められることが多いかと思います。第1回口頭弁論期日におきまして、原告は訴状を陳述し、被告は答弁書を陳述して、双方が基本的な書証を提出するという扱いになります。
その後、争点整理、証拠の整理の過程がありまして、それを現行法では大きく口頭弁論の形で行う準備的口頭弁論の制度と弁論準備手続という、法廷ではなくて、準備手続室というようなところで行うスタイルのものと2つ設けられておりますが、そこでそれぞれが主張を応酬し、書証等を提出し合って争点を整理するという手続が行われます。そして、その最後に、争点に基づいて、証人や当事者のうちのだれを調べるかということを決定して、準備的口頭弁論を終了し、または弁論準備手続を終結するという扱いになります。
そして、その後に決定された証人や当事者本人について法廷で証拠調べを行うことになっております。現行法では、人証の証拠調べは集中して行うということになっております。また、争点整理が行われた結果として、証人は重要な証人に絞られるという傾向があろうかと思います。証人と言っても事実の証人だけではありませんで、科学的な知見が大きい争点になっている場合には、科学的知見に関する専門的な証人も申請され採用されることもございます。
そのようにして証拠調べが終わりますと、最終的に最終弁論が行われます。これは証拠調べの結果を踏まえて、当事者双方の最終的な主張をまとめて陳述するというものです。そのようにして口頭弁論が終結し、裁判所の方で判決書を作成し、その判決を言い渡すというプロセスになっております。更に、その判決に対して控訴、上告が行われて、最終的に確定するということになるのが民事訴訟あるいは行政訴訟の一般的な流れであります。
 行政処分の手続と訴訟手続を若干対比、対比と言っても私は行政処分の手続に詳しいわけではありませんが、対比してみますと、今申したように訴訟手続では必ず対立した当事者がいて、対立した当事者が主張、立証を応酬して、それに対して裁判所が第三者的な立場で判断するというシステムを基本としております。それらは先ほどの弁論準備手続は別として、基本的には法廷で行われ、手続も民事訴訟法及び行政事件訴訟法の規定に従って行われるということになっております。
次に、法律関係の判断に関する裁判所の基本的な建前について申し上げたいと思いますが、裁判所は御承知のとおり、法と証拠に基づいて判断するというのを使命としております。すなわち証拠に基づいて事実を認定する。基本的に証拠以外のもので事実を認定するということはない。そして、認定された事実に法を適用するということが裁判所の使命であります。それ以外の事情によって判断をすることは原則としてないということになっています。すなわち裁量的な判断、あるいは政治的な判断をすることはありません。もっとも、行政事件訴訟法ではいわゆる事情判決という制度が設けられておりまして、諸般の特別な事情を考慮して、なお、裁量的に請求を棄却するという制度があるという特色はあります。しかし、事情判決の制度は、大きい公益的な影響の出るような事件について行われることが予定されておりまして、原爆症の認定に関する事件ではまずないと考えております。
次に、裁判所の在り方として、当事者の主張に基づき、当事者の提出した証拠だけを基礎に判断するという原則がございます。これは、もともとは民事訴訟の原則であります。民事訴訟では一般市民あるいは企業との間の紛争を扱うということから、当事者にそのような主張、立証のリーダーシップを委ねるということで十分であり、また、かえって当事者にそのようなリーダーシップを与えた方が、真実を究明し適正な判断を得るために適しているという経験によっているかと思います。その結果、当事者の主張した事実以外の事実は判断せず、また当事者の提出した証拠だけを基礎に判断するという原則が行われております。
行政事件訴訟も基本的にはこの民事訴訟の例によるわけですけれども、行政事件の特色としては、私人間の紛争を扱うわけではなくて、公益に関する事項を対象とするという面があります。しかし、先ほど申したように、民事訴訟は当事者のリーダーシップに委ねることがかえって真実を究明し、適正な判断を導くのに適しているという経験に基づいていることから、行政事件訴訟でも基本的にそのようなシステムをとっております。我が国の行政事件訴訟はアメリカの制度をモデルにしておりまして、アメリカでは基本的に行政訴訟を別枠のものとは見ていないということでありますが、そういう思想的な背景もあるかと思います。
しかし、行政事件については先ほどのように公益的な色彩もありますことから、民事訴訟の例外として職権証拠調べを行うことができるという建前になっております。これは、1,訴訟の対象が公益に関する事項であるということ、2,行政事件訴訟の場合には私人が原告となり行政機関を代表する国が被告となるというようなことから、立証等の能力に差異があるということにかんがみ、実質的な公平を保つべきであると考えられることから、職権証拠調べが設けられたと説明されております。
なお、このように訴訟手続を当事者に任せるというと、当事者の流れのままに訴訟がどこに行くかわからないというような御心配もあろうかと思いますけれども、ここに釈明という制度があります。裁判所は当事者の主張に対して質問を発し、それが適正であるかどうか疑義を抱いたような場合には、当事者にそれを釈明して主張を促す、あるいは立証を促すという制度があって、この釈明制度と相まって訴訟が適正に運用をされることが期待されているかと思います。行政事件訴訟については、更に、資料を持っております行政庁側に資料の提出を求めるような釈明処分の制度も設けられております。
以上が、民事訴訟の手続についての概略でございます。
 次に、第2として、原爆症認定の一般的な法律上の要件について簡単に申し上げます。
被爆者援護法の10条の要件がありますと、医療給付が行われるということになっております。そして、医療特別手当の支給もこの要件を具備することが必要とされております。更に、要件を満たせば直ちに医療給付等を請求できるという扱いにはなっておりませんで、これらの給付等を求めるためには、援護法11条で、医療の給付を受けようとする者は、あらかじめ、厚生労働大臣による当該負傷、又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の認定を受けなければならないとされております。
ここで言う認定は放射線起因性の認定だけではなく、要医療性を含めた認定であると解釈されています。したがいまして、11条の認定が給付を受けるための決め手となるわけであります。申請をして認定が得られれば、それによって医療の給付等を請求できるわけですけれども、その認定が却下された場合には、そのままでは医療の給付や医療特別手当の支給を受けることはできませんので、認定申請を却下された被爆者は、裁判所に対する訴えによって、認定申請却下処分の取消しを求めるということになります。その取消判決が得られ確定することによって、厚生労働大臣による新たな認定がされることになり、その際には、判決の趣旨に沿った判断をしなければいけないという拘束力が生ずる建前となっておりますので、そこで取消しの判決が機能するということになっております。
それから、このような認定申請の却下処分の取消訴訟において、要件は、放射線起因性があることと要医療性があることですが、これらの主張、立証責任はどちらにあるのかという点が問題となっております。最高裁の松谷訴訟判決によりますと、この場合も、申請の要件は原告である申請者の方が主張立証すべきであるとされております。これが認定申請却下処分に対する訴訟のシステムと要件です。
次に、司法判断は、これらについてどのように判断するかということですが、行政的な判断との違いというものを意識しながら考えてみますと、大きく見た場合には、個々の申請、あるいは個々の訴訟の事案が法律上の要件に該当するかどうかを判断するという点では、司法判断と行政判断は同じものと考えられます。しかし、行政判断では大量の申請に対し、適正公平な処分を行うということが課題であろうかと思いますが、そのために、申請に関する処分について審査の基準を設け、その審査の基準によって判断するというシステムが予定されております。本件のような科学的な認定のための審査の基準(方針)に直接該当するのかどうかわかりませんが、行政手続法において、審査に対する判断の行政処分においては審査の基準を設けるべきことがうたわれております。
これに対して、司法判断の場合には、法の要件の決め方によるわけですけれども、法律自体が具体的な基準や認定方法を明示している場合、あるいは法律が政令、省令等に判断の基準を委ね、その委任に基づいて政令等で判断の基準を定めている場合には、それらは法令の一部ですので、裁判所もそれらに基づいて判断をするということになります。しかし、そうでなくて、法律で一般的な要件を定めているような場合には、裁判所はその法律の規定そのものを解釈適用することによって判断するということになります。
被爆者援護法の場合には、その認定の基準を具体化した規定はなく、また政令等に基準の設定を委ねておりませんので、裁判所が10条、11条の要件そのものを直接判断するという建前になっております。それでは裁判所の判断も、行政庁の審査の基準(方針)を全く無視して独自に判断するかということですが、決してそうではないと言えるかと思います。例えば最近の判決で東京高裁の平成21年の判決がございますが、これは新しい審査の方針に対するものではなくて、旧審査の方針を対象にしたものでございます。ここでは審査の方針を尊重し、その当否を検討した上で、審査の方針をそのまま適用することが妥当かどうかを検討し審査の方針をそのまま適用することが妥当でない場合に、裁判所としての別途の判断を行っていると言うことができるのではないかと考えます。
 次に、3番目として、原爆症の司法審査における判断の枠組み、松谷訴訟判決等について申し上げます。
これも皆様十分御承知のことについて申し上げることになるかもしれませんが、レジュメに書いておきましたように、1点の疑義も許されない自然科学的な証明ではないが、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することである、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得ることを必要とする、放射線起因性についても、相当程度の蓋然性さえ立証すれば足りるというのではなくて、高度の蓋然性を立証することが必要である、としたものでございます。
松谷訴訟判決に至る判例の流れを若干申し上げますと、まず、民事訴訟あるいは行政訴訟の原則として、裁判所は、証拠がどのような証明力を有するかという点については裁判官の自由な心証によるという原則がございます。立証の程度についてある事実が証明されたというためには、裁判官あるいは一般市民が確信を得る程度のものでなければならない、一応確からしいという推測を生じさせる程度のものでは足りないというのが、古くから確立された理論でございました。そして、これは裁判官の個々的な基準というのでは妥当でないのであって、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を用いることが必要であるということが、民事訴訟法の理論として、松谷訴訟判決以前に確立していたところでございます。
そこに続きまして、いわゆるルンバール判決という事件がございました。これは民事訴訟の医療過誤(不法行為と言われるものですが)に基づく損害賠償請求における因果関係の立証の程度に関する判例でございます。不法行為に基づく損害賠償では加害行為(医療過誤では医療行為)と結果(被害の発生)との間に因果関係があることが必要なわけです。化膿性髄膜炎に陥った子どもに対してルンバール治療を行ったところ、発作が起きて一定の障害が発生した場合に、そのルンバールという治療法と結果発生との因果関係があるかということが問題になった事件です。原審の高等裁判所は、ルンバール治療によって生じた可能性もあるけれども、もともとの化膿性髄膜炎が悪化した可能性もあるとして、結局、因果関係を否定したわけであります。それに対して、最高裁判所はこれを覆して因果関係があるとしたわけですが、ここでこのような医療過誤に基づく因果関係の立証の程度について、要旨、次のように判断しました。
訴訟上の因果関係の立証は一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認できる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持つことができるものであることを必要とし、かつ、それで足りるという一般論を提示したわけであります。これは従来の民事訴訟の理論を、この医療事故の因果関係に当てはめたものでございますが、最高裁判所調査官の判例解説などによりますと、因果関係の立証は自然科学的医学のメカニズムを解明するものではなく、不法行為責任を負わせるための、法的な評価としての因果関係を明らかにするものであるということを言っております。
そして、ルンバール事件は不法行為に基づく損害賠償請求事件に係るものであり、行政訴訟のものではなかったわけですが、その後、松谷訴訟がありまして、この事件では、本件と同じような認定申請を却下した処分の当否が争われたものです。この事件では、原審の福岡高裁は、この種の事件ではルンバール事件のような高度の蓋然性までは必要がなく、相当程度の蓋然性を持って足りると判断したわけであります。それに対して被告行政庁側が上告をしたわけですが、最高裁は原審の判断のうち理論の部分は破って、行政訴訟(認定申請却下処分の取消訴訟)においても、ルンバール事件と同じ基準を適用すべきだとしました。
その要旨を述べますと、要医療性と放射線起因性が11条の認定の要件であるということが第1点。申請拒否処分の取消訴訟においては、被処分者の側が認定の要件を主張立証すべきであるというのが第2点。第3点として、放射線起因性の立証の程度は、民事訴訟の因果関係の立証の程度と異ならないとしたわけであります。そして、ルンバール事件の判決をここで繰り返しまして、訴訟上の因果関係の立証は一点の疑義も許さない自然科学的証明ではない。因果関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することである、高度の蓋然性の判定は、通常人が疑いの差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得ることが必要であるということを言っております。そして、その認定は経験則に照らし、全証拠を総合検討して行うという一般論を提示いたしました。
ここでちょっとコメントをさせていただきますと、最高裁は、そのようにして原審の福岡高裁の判断基準(相当程度の蓋然性)はとらず、高度の蓋然性基準をとったのですが、事案の解決といたしましては、原審福岡高裁の認定した事実に基づいて(最高裁は事実認定というのはしないことになっていますから)、最高裁の基準とした高度の蓋然性が認められるとしたものであります。
 4番目に、司法審査における具体的事実の判断の視点について申し上げます。
司法は法的な判断をする場であり、科学的な真実を究明する場ではないということが言えるかと思います。これは、先ほどの最高裁判決のルンバール事件、あるいは松谷訴訟判決でそう言っております。そうでありますが、科学的知見が基礎になるということはどの判決も認めておりまして、裁判所としては、確立された科学知見を踏まえて判断するということになろうかと思います。
この辺の判断の裁判所のスタイルにつきまして、先ほど来申し上げております東京高裁の平成21年判決というのがございますので、それを紹介いたします。この判決は、科学的知見が不動のものであればこれに反することは違法であるが、科学知見の通説に対して異説がある場合は、通説的見解がどの程度の確かさであるかを見極め、両説ある場合においては両説あるものとして訴訟手続上の前提とせざるを得ない、科学的知見によって決着がつけられない場合であっても、因果関係なしとすることはできないのであって、最高裁の言うとおり、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果を招いたかどうかを肯定できるような高度の蓋然性があるかを判断するということになると言っています。
 戻りますが、この辺は松谷訴訟の最高裁判決も、一般的には科学的知見の評価に言及していませんが、問題となりました閾値論とDS86の基準について触れております。これらを機械的に適用すると、松谷訴訟の松谷さんの症状に対する放射線の影響が否定される可能性があるが、DS86も未解決の部分を含む推定値であり、見直しが続けられている。閾値論とDS86の機械的適用では、その原告に現れたいろいろな症状を十分説明することができない、閾値論とDS86の機械的な適用をすると、治療方法が悪かったということになるが、それだけでは合理性がないのではないかということを言いまして、原告の脳損傷の拡大や脱毛の事実に照らすと、放射線を相当程度浴びたため脳損傷が重篤化したか、治癒能力が低下したと認めることが経験則に合致するという言い方をしております。
 この程度で私の報告ということにさせていただきたいと思います。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
私の議事運営の不手際で既に終了時間を迎えようとしておりますので、ただいまの御発表について、できるだけ簡潔に御質問いただければと思います。どうぞ。
○荒井委員 ありがとうございました。わかりやすい説明をいただきました。
ただ1点、司法は個別判断、行政は言わば大量的に公平にという、そこがメインだということもよくわかりましたし、最高裁判決の高度の蓋然性についての御説明も理解できたのですが、やはり司法の判断と、行政と言いますか、医療分科会での判断との食い違いということが結果としてはかなり出てきていて、この検討会でも大きな関心事の1つになっていると思うんです。科学的知見だけで司法判断があるのではないというのはそのとおりだと思うのですが、やはり高度の蓋然性を肯定する支えとしては、科学的知見なるものが大きな判断の基礎に置かれるのではないか。先ほど丹羽先生のお話からも、科学的な合意形成についてのプロセスと言いますか、コンセンサスがどの辺にあるかという御説明、あるいは論文にもいろいろあるんだという御説明との関係で申しますれば、丹羽先生のペーパーを引用させていただくと『Nature』誌に出るような論文と、極端に言えば一般週刊誌に出るような文章とを同列に論ずることはできないだろうと思うんです。そこで、この手の事件について、司法の場において、当事者双方から論文の評価とか位置づけについての主張、立証というものがどの程度なされているのか。これが1つ。
 もう一つは、裁判所が最終的に依拠するところの調査研究なり論文を、なぜそちらを採用するかということについて、先ほど、専門的知見についての証人調べも時にはあるんだというお話をいただきましたけれども、何か裁判所がそこを採択するかどうかについての工夫と言いますか、どういう勉強をしておられるのか。その辺を少し御説明いただけるとありがたいと思います。
○神野座長代理 2点について、コメントいただければと思います。
○岩井参考人 科学的知見をどの程度考えるかということですが、やはり科学的知見が基礎にあるということは十分に認識されておりますし、当事者双方から多数の論文等が出されますので、それらを十分しんしゃくして判断をするということになっていると思います。
 それから、それらをどう評価して取捨選択するかということですけれども、まず、私どもは素人でございますので、それぞれの論文を正確に理解しようと一生懸命努めます。そして、ある知見に対してはほとんど反対意見が出されていますので、それらを突き合わせます。また、それらの全体的な評価に関する意見の論文も出されますので、それらを総合して、いずれが合理的であるかということを探求するということになります。
しかし、そこでは東京高裁の平成21年判決が言っておりますところですが、対立する科学的知見については、厳密な学問的な意味における真偽を見極めることは裁判手続において必ずしも十分にできることではなく、厳密な意味では訴訟上の課題であるとも言い難いと言っています。これは先ほどのように、因果関係の判断は最終的には法的な判断であるということだろうと思います。そこで、裁判手続において、課題としては一定水準にある学問成果として是認されたものについては、そのあるがままの科学的状態において、法律判断の前提としての科学的知見を把握するということが限度であります。取るに足りない反対説があるから、それだけで確立されていないとしてしまうということではなくて、その評価も含めて論文を読みこなして、場合によっては証人尋問もして判断するということであります。逆に言うと、確立されていないところまで裁判所が踏み込むことはできないということになろうかと思います。そういうようなことでよろしいでしょうか。
○荒井委員 ありがとうございました。
○神野座長代理 ほかに御質問、御意見ございますか。どうぞ。
○長瀧委員 今の荒井先生の後、議論なんですが、多数の論文を裁判官が判断なさるというときに、多数の論文を、先ほど丹羽先生のように国際的な合意というのがなされて、ある程度の合意がある。そうすると、その合意に参加した我々としては、日本としてはこういう科学的なデータを出して、国際的な合意の重要なデータを提供している国であるということを常に主張しているわけです。そうすると、今度、裁判でその合意から離れたものが、裁判官が科学的な判断をするんだとすると、それは国際的な合意と違った判断というと、それは科学的な議論と考えるのかです。
簡単に言いますと、国際的な合意をつくる形成のような社会に対して、日本の裁判官はどういう理由でということを聞きたいんですが、そのときに科学的にと言うと、これはあり得ない。国際的な合意とは違う。ですから、科学的でない、何か司法としての理由をきちっと説明していただけると、私たちも外に対して話ができるんですけれども、そこがどうも、その科学的な合意という言葉で限られた論文をそこの場所で議論して、裁判官という1人の方が国際的な合意と違う判断を科学的にしたと言うと非常に困るわけです。ですから、本当に司法の立場からどういう理由で判決をなさるかというのは常に疑問に思っておりました。
簡単に言いますと、国際的な場所に行って、日本の司法はこういう理由でこういう考え方でこういう判決をしているんだということを、高度の蓋然性の中に科学がどれぐらい入っていてというようなところを、何か一言とか二言で説明できるような説明がないかと思っているんです。
○岩井参考人 難しいことでありますので、私もそういう事件ばかりやっているわけではございませんので、一般的なことを言うと難しいと思います。なお、裁判官1人でということではなくて、通常の事件では合議体でありますので、3人の裁判官が十分に意見を交換してやるわけでございます。
繰り返しになりますが、最高裁の判決では、閾値論とDS86については、なお、機械的な適用をすることは問題があるのではないか、合理的に事象を説明できない部分があるのではないかというような認識に立って、あのような判決をしたと思います。私ども下級審の裁判官も基本的にはそのような考え方でやっているのではないかと推察します。それ以上のことはなかなか正確にはお答えし難いというのが実情でございます。
○長瀧委員 もっと簡単に言いますと、科学的に認められないから、認められないところから司法的に決めるというようなお話なら納得しやすいという部分があるんです。科学的な結論に対して、同じレベルで裁判所が各事例について科学的な判断をするというと、ちょっと抵抗があります。否定できないから認めるという言い方なら、それは別に我々は困らないと思いますけれども、そういう言い方はできますでしょうか。
○岩井参考人 科学的に確立された基準に基づき、基準を想定しながら、個々の事件についての具体的な事実関係を総合して判断するとしか言いようがないかと思います。
○神野座長代理 よろしいですか。申し訳ありません。なかなか難しい問題で、あと特になければ、時間オーバーをいたしておりますので、この辺でこの議論は打ち切らせていただければと思います。岩井先生、本当にありがとうございました。
それから、冒頭に申し上げましたけれども、これからは検討会の運営について議事に入りたいと思っておりますので、今日御発表いただいた3人の方々はここで御退室いただいて結構でございます。どうも本当にありがとうございました。
 それでは、時間をオーバーいたしまして大変恐縮でございますけれども、冒頭に申し上げましたように、次回のこの検討会の進め方について、何か御発言ございましたらば、ちょうだいしたいと思います。いかがでございますか。
田中委員、どうぞ。
○田中委員 前回のときも申し上げて、医師と弁護士の2人の方を、第3回検討会にヒアリングの報告者として呼んでいただきたいということをお願いしたつもりなんです。そのとき、時間の問題もありますからと座長がおっしゃったんですけれども、そのまま決定していただくことにならなくて、その後、今日の第3回の会合を持つのに当たって、事務局の方から私の方に直接お見えになりました。今日御報告いただきました3人の方の報告を受けたいということでありましたので、私どもが提案した候補の方はどうなったんでしょうかと申し上げたんですけれども、それはそのままになりまして、とにかく3人の報告を第3回は聞くことにしてほしいということでありました。それは認められないと私は申し上げまして、検討会の持ち方そのものについて議論をしていだたくというのと、次回どうするかというのは前の会合できちんと決めるということをやっていただきたい。そうでないと、事務局が決めて、それを持ち込んでくるということになりますので、是非それをやっていただきたいというのが私からのプレゼンでございました。この行動は座長にお手紙を出しまして、委員の皆さんにもそれを出しましたので御存じかと思いますので、あえてそれ以上は申し上げません。
○神野座長代理 それでは、今、田中委員の御発言について何かございましたら御意見ちょうだいしたいと思います。いかがでございましょうか。
今日は座長御欠席でございますけれども、森座長に私、前任校のときから、さまざまなこういう立場で責任者を座長としておやりになったときについております。森座長は皆さんもほぼお感じになっているかと思うんですが、極めて中立的に運営しようということについて、特に少数意見に配慮しながら運営しようということについては意をくだいていらっしゃる方でございますので、私も座長の意を酌みながら次回以降決めてまいりたいと思っております。何か御意見ちょうだいできればと思います。
○山崎委員 私の方から、せっかく広島、長崎で日常的に被爆者と向き合って行政を進めておられる副市長さんに、現場の実態についてお話をいただければと思います。
○神野座長代理 どうぞ。
○三宅委員 ただいま山崎先生からの現場の副市長というお声がかかりましたが、今日ここでそれをという話でしょうか。そうではなくて次回にということですか。
○山崎委員 次回にということでございます。
○三宅委員 私、聞くところによりますと、次回は広島、長崎の事務的な実態というようなことをお話するようなことに、そういう方向で準備が進んでいるのではないかと私は思っております。
○山崎委員 私の方から、次回の運営についてというのは議題でございますから、そこでお願いしたいということです。
○三宅委員 わかりました。
○神野座長代理 次回については田中委員にも御指摘いただきました。座長は、ヒアリングをもう一回やるかどうかを含めてということで引き取られていると思います。だから、中身については特にここで決めておりません。
○三宅委員 今の山崎先生の御発言は、この場での私に対する質問かと受け止めたものですから、大変失礼いたしました。
○山崎委員 今後の運営についての議題になっているので、次回、お願いしたいということでございます。
○神野座長代理 よろしいですか。どうぞ。
○田中委員 私が座長に申し上げましたのは、この検討会は何をやるのかということを、きちっと最初に合議をして進めていだきたいということでありました。それは会議の冒頭でということだったんですが、その時間はありませんで、今もなおかつ時間がありませんので、そのことは委員の皆さんに踏まえていただいて、これからの発言等々、運営等々に努力していただければありがたいと思います。次回についてはきちっと決めていただきたいと思っております。
○神野座長代理 それでは、私、事前に森座長の御意向などを拝聴しておりますので、次回の検討会については、私どもが今、ヒアリングしているのは、現状の制度や現状について可能な限り、委員の間で共通の認識を共有できればしたいという趣旨で進めております。次回については、原爆症の申請に携わった医師の方、原爆症裁判に携わった方々から現状の制度、その他についての経緯についてヒアリングを行うということ。それと、ただいま山崎委員からお話がございましたように、広島市、長崎市の行政の方々からもお話をちょうだいするというようなことで、次回のヒアリングをもう一度行いたいと考えておりますが、そういうことでよろしいでしょうか。それでは、長崎、広島、よろしいですか。
○智多委員 準備できる限り対応したいと思います。
○神野座長代理 一応、次回だけ決めさせていただいて、今後の議論、この検討会の進め方については座長と御相談しながら、坪井先生、どうぞ。
○坪井委員 やはり全体の大まかなスケジュールでも出ていないと、その都度考えるのはロスする時間が多いです。したがって、どこかで全体の姿が先に出るべきだと思っております。
○神野座長代理 当面1回ないしは2回ヒアリングを行うということを座長から申し上げているかと思いますので、次回のヒアリングをこのまま行うということにさせていただいて、今後のことにつきましては、座長と御相談しながら進めたいと思っております。ヒアリングについては、座長のお考えですと、一応、次回で打ち切る。その後、皆様から意見をちょうだいしながら、そろそろ本格的な議論を進めていく段階に移らないと検討会の意見がまとまりませんので、そういう大まかなスケジュールで、前回も議長がおっしゃられていると思います。そういうことで、また座長と御相談しながら皆様方にお伝えしたいと思っております。次回につきましては、今のようなことでよろしいでしょうか。
それでは、次回は、今、申し上げましたようなヒアリングをさせていただくということ。それと、今、運営についてさまざまな御議論が出ておりますので、この件については私の方から責任を持って座長に伝え、また座長と御相談の上、多分次回は座長がお出ましいただけるだろうと思いますが、進め方については意見をお伝えした上で御指示を仰ぎたいと思っております。
 それでは、申し訳ありません。私の不手際でもって本日は時間を大幅にオーバーしてしまったことをおわび申し上げまして、これにて終了させていいただきたいと思います。事務局の方から不足して御説明していたことがあれば、お願いいたします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 長時間ありがとうございました。
次回の第4回検討会は、6月27日月曜日10時からを予定しております。場所は今回と同じ厚生労働省9階省議室でございます。正式には追って御案内をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○神野座長代理 それでは、重ねてでございますが、時間をオーバーいたしまして、御予定にいろいろ差し支えがあったのではないかと思います。おわびを申し上げまして、本日お忙しい中御参集いただきましたことを重ねて御礼申し上げます。どうもありがとうございました。


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