東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その13 「過失」「瑕疵」「不可抗力」「強い不可抗力」の関係

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その13 「過失」「瑕疵」「不可抗力」「強い不可抗力」の関係


 現在の下級審判例では,「原子力損害」については,民法の不法行為規定(民法709条以下,民法717条の土地工作物責任も含む)は適用排除されるが,「過失」「瑕疵」「不可抗力」「強い不可抗力(超不可抗力)」との関係が,理論的には,どうなっているのか検討してみる。

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●民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2  前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3  前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

●原賠法
(無過失責任)
第三条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
2  前項の場合において、その損害が原子力事業者間の核燃料物質等の運搬により生じたものであるときは、当該原子力事業者間に特約がない限り、当該核燃料物質等の発送人である原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
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〔まず,民法709条の「過失」と土地工作物責任(民法717条)「瑕疵」との関係〕

ア説 客観説(判例・通説)
 「瑕疵」とは,工作物が、その種類に応じて、通常有すべき安全性を欠いている状態をいう(占有者の責任は中間責任,所有者の責任は無過失責任。「瑕疵」≠「過失」)。

イ説 義務違反説
 「瑕疵」とは,占有者・所有者の設置・保存の安全確保義務違反(なお,義務違反説でも,「瑕疵」=「過失」のように考える立場と,「瑕疵」≒「過失」とする立場がある。)


 判例・通説の客観説を前提にすると,自然災害のような外在的危険との関係では、「瑕疵」は,その工作物の種類に応じ,通常予想される危険に対して,通常有すべき安全性が欠如していたか否かで判断されることになる。



〔「瑕疵」と「不可抗力」の関係〕土地工作物責任について

 通常予想される危険と,通常有すべき安全性との関係は,論理的には以下のようになろう。

1 通常予想される危険(通常予想される自然災害等)発生
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →理論的には事故は起きない。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた(運良く起きないこともある)。
  ※土地工作物責任負う。

2 通常の予想を超えた危険(通常の予想を超える自然災害)発生
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →事故が起きた(運良く起きないこともある)。
  ※「瑕疵」がない以上,要件充たさず、土地工作物責任負わない。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた(運良く起きないこともある)。
  ※「瑕疵」がある以上,原則として土地工作物責任負うが,「瑕疵」があってもなくても同一結果が生じた,あるいは,その事故が「瑕疵」とは無関係に生じた場合は,因果関係なしとして,又は,「不可抗力」によるものとして免責?


 上の1のように考えると,通常予想される自然災害で、損害が発生した場合は、理屈の上では、通常有すべき安全性の有無を問うまでもなく、当然に「瑕疵」ありとなる?。なぜなら、通常有すべき安全性を備えている以上、通常予想される災害がきたとしても、損害が発生するはずがないからである。〔ただし「通常有すべき安全性」を備えている場合が、かならずしも「通常予想される危険に耐えられる状態」とは言えないと考えるなら、また別の可能性あり。〕

 結局、「通常有すべき安全性」の有無が問題となるのは、理屈の上では、上の2の「通常の予想を超える災害」が発生したような場合のみということになるのか?。

 また、土地工作物責任で「不可抗力」免責が問題となるのは,上の2bのような,施設に「瑕疵」があり,かつ,通常の予想を超える災害が発生した場合のみということになろうか。「瑕疵」が無い場合は、「不可抗力」を問題とするまでもなく、土地工作物責任は生じないからである。

※客観説に立って、「瑕疵」は,その工作物の種類に応じ,通常予想される危険に対して,通常備えているべき安全性が欠如していたか否かで判断するとしても、「通常予想される危険」を予見可能性、「通常有すべき安全性」を結果回避可能性ととらえると、ほとんど義務違反説と同様の思考過程に至る。この結果回避可能性の中に、物理的技術的な回避可能性のみならず、経済的制約を読み込むべきかという点で、差が出るのか?。

 
 単純に、思考経済を考えると、

1 まず、事故結果の有無。

2 発生した自然災害が通常予想されるものであるか否かを判断し、そうであるなら、当然に「瑕疵」ありとして、土地工作物責任負う。

3 通常予想される自然災害を越えるものであったら、「通常予想される危険に対して,通常有すべき安全性」を備えていたかを判断し、備えていたなら「瑕疵」がないので、土地工作物責任負わない。

4 備えていない場合は、「瑕疵」ありとなり、原則として土地工作物責任負うが,「瑕疵」があってもなくても同一結果が生じた,あるいは,その事故が「瑕疵」とは無関係に生じた場合は,因果関係なしとして,又は,「不可抗力」によるものとして免責?


※結局、「不可抗力」性の判断は、通常予想される危険を越えるもので〔予見可能性〕、かつ、「瑕疵」の有無にかかわらず、同一結果がもたらされるような場合〔結果回避可能性〕といえるか否かで判断することになる?。



〔「不可抗力」と「強い不可抗力」との関係〕

 原賠法3条1項での原子力事業者の責任については,施設の「瑕疵」すら要件とされない上に,立法過程での議論や,条文の「異常に巨大な」という表現から,1項但書の免責事由は,通常の不可抗力ではなく,特に強い不可抗力,いわば超不可抗力のみを意味するものと理解される。

 そこで,前記と同様に考えてみると


1 通常予想される危険(通常予想される自然災害等)発生
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →理論的には事故は起きない。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた。
  ※土地工作物責任の要件すら満たすのだから,原賠法の責任は当然負う。

2 通常の予想を超えた危険(自然災害)発生(ただし,強い不可抗力「異常に巨大」とはいえない場合)
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →事故が起きた。
  ※原賠法上「瑕疵」は要件ではなく,強い不可抗力ではないから免責はなく,責任負う。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた。
  ※2aと同様,強い不可抗力ではない以上,免責はなく,原賠法の責任負う。

3 通常の予想をはるかに超えた,異常に巨大な自然災害発生(「強い不可抗力」)
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →事故が起きた。
  ※「強い不可抗力」の場合で,原賠法3条1項但書によって免責。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた。
  ※「瑕疵」が作用して,その結果をもたらした場合は,避けえた損害であり,強い不可抗力によって生じたものとは言えず免責なし?。「瑕疵」があってもなくても同一結果が生じた場合は,「強い不可抗力」によるものとして免責。こちらで論じた「過失」の競合と同様の問題。


※「不可抗力」と「強い不可抗力」は程度の問題だから、前記のとおり、「不可抗力」性の判断は、通常予想される危険を越えるもので〔予見可能性〕、かつ、「瑕疵」の有無にかかわらず、同一結果がもたらされるような場合〔結果回避可能性〕といえるか否かで判断することになると考えるなら、結局、「強い不可抗力」は、予見可能性と結果回避可能性を判断する際に可能性を緩く認める〔相当低い場合でも各可能性あり〕という方法で認定していくことになろうか。前にこちらで触れた。


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2011-07-31 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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