東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・設置関係資料 その17 IAEA 既設の原子炉等施設に関する耐震安全性の評価

・設置関係資料 その17 IAEA 既設の原子炉等施設に関する耐震安全性の評価(原子力安全基盤機構訳) 

http://www.jnes.go.jp/content/000016962.pdf

Evaluation of Seismic Safety for Existing Nuclear Installations, Safety Standard Series No. NS-G-2.13、IAEA (2009)
既設の原子炉等施設に関する耐震安全性の評価

-------------------------------
目 次
1. はじめに
背景(1.1–1.6)
目的(1.7–1.8)
範囲(1.9–1.11)
構成(1.12)
2. 耐震安全性評価のための実施計画の策定
全般的な考察(2.1–2.8)
耐震安全性の評価(2.9–2.22)
実施計画の構成(2.23–2.26)
3. データの収集と調査
既設の原子炉等施設に関するデータの収集(3.1)
当初の設計の根拠に関するデータ及び図書資料(3.2–3.6)
現状の(評価時の実際の)データ及び情報(3.7–3.13)
推奨される調査(3.14–3.23)
4. 地震ハザードの評価(4.1–4.8)
5. 耐震安全性の評価のための手法(5.1)
耐震裕度の評価(SMA)(5.2–5.19)
地震に起因した確率論的安全評価(SPSA)(5.20–5.31)
SMA及びSPSA手法の共通要素(5.32–5.52)
6. 発電所以外の原子炉等施設(6.1–6.15)
7.耐震性向上に関する考察
耐震性が向上されるべき機器等(7.1–7.3)
改善の設計(7.4–7.11)
8. 耐震安全性評価のためのマネジメントシステム..
マネジメントシステムの適用(8.1–8.4)
文書及び記録(8.5–8.7)
構成管理(8.8)
<略>
-------------------------------

1. はじめに
背景
1.1. 本安全指針は、IAEAの安全基準の整備計画の下に作成された。これは、「原子力発電所の安全:運転」[1] に定める原子炉等施設に関する安全要件を満たす際の推奨事項を補足し、かつ提示するものである。本指針は、また、参考文献 [2 - 4] に掲げるような多くのIAEAの安全基準に関係するものである。
1.2. 本安全指針「既設の原子炉等施設に関する耐震安全性の評価」は、新規の原子力発電所の設計及び建設に関するIAEAの「原子力発電所の耐震の設計及び確認に関する安全指針」[5] を補完するものである。本指針は、参考文献 [1] における要件を満たす際の推奨事項を提示し、その適用範囲を既設の原子炉等施設、すなわち、研究用原子炉、核燃料サイクル及び再処理施設、並びに独立した使用済燃料貯蔵施設に拡大するものである。「既設の原子力発電所の耐震評価に関する安全報告書シリーズNo. 28」[6] には、本安全指針に関連する詳細な情報が提示されている(参考文献 [6] の改訂が計画されている)。
1.3. 安全要件出版物である「原子力発電所の安全:運転」[1]では、発電所の供用期間を通して運転組織が体系的な安全再評価を実施することが要求されると述べている。この要件及びその他の要件、ならびに定期安全レビューにおける外的危険事象の解析に関する推奨事項 [7]に照らして、本安全指針は、既設の施設の耐震安全性評価を扱う。
1.4. 既設の原子炉等施設(主として原子力発電所)の耐震安全性評価のための手引きが、多くの加盟国において策定されており、使われてきた2。1990年代の初めより、これらの手法が個々の状況に適合化されて、多くの原子炉等施設の耐震安全性評価に適用されてきた。IAEAは、多くの加盟国が稼働中の原子炉等施設のためにこれらの手法を適合化しかつ適用する際に、支援してきており、これらの施設では、耐震安全性評価及び耐震性向上の計画が必要とされ、また実施された。
1 原子炉等施設の立地評価における地震ハザードに関する安全指針案は、参考文献 [4] に置き換わるものとして、現在作成中である。
2 既設の原子炉等施設の耐震安全性評価に関する手引きの策定及び使用は、アメリカ合衆国で始まり、同国ではそのような手引きが策定され、全ての既設の原子力発電所への適用が求められた。
1.5. 耐震の設計及び確認は、構築物、系統及び機器(SSC)の耐震の設計及び確認がほとんどの場合施設の建設前の設計段階で行われるという点で、耐震安全性評価とは別のものである。耐震安全性評価は施設の建設終了後にのみ適用されるものである。勿論、例外はあり、例えば施設の建設後の新たな又は交換用の機器の耐震の設計及び確認のようなものがある。逆に、建設前の新しい設計に対する、設計用基準地震動を超える条件を評価するための耐震安全性評価において、耐震安全性評価に適用される判断基準を利用する場合もある。
1.6. したがって、既設の施設に関する耐震安全性評価は、評価が行われる時点でのその施設の実際の状態に強く依存している。この鍵となる状態は「評価時の実際の」状態と表記され、地震が発生した場合には、施設はその実際の状態で地震の影響を受け、施設の応答及び地震耐力は、施設の実際の物理的構成や運転状況に依存することを示している。施設の評価時の実際の状態が全ての耐震安全性評価実施計画の基準線である。評価時の実際の状態には、施設の「竣工された時」、「運転された時」、「保守された時」の状態、及び評価時点での経年変化した状態を含む。
目的
1.7. 本安全指針では、既設の原子炉等施設の耐震安全性評価に関わる推奨事項を提示する。そのような耐震安全性評価は、当初の設計の根拠で設定されたものよりも大きい地震ハザードが認識されたことにより、新たな規制要件により、SSCの耐震脆弱性に関する新たな知見が得られたことにより、あるいは設計用基準地震動を超える条件下での性能を、国際的に認められた良好事例と同列に、それと整合をとって実証する必要により、急遽実施される場合がある。また、本安全指針は、原子炉等施設の目的又は施設に付随する放射線リスクが変わった場合、あるいは変更が提案された場合、及び施設の長期間の運転が考慮されている場合に用いられることもある。
1.8. 本安全指針は、規制要件を制定する任にあたる規制当局、及び耐震安全性評価と耐震性向上計画について直接に実施責任を持つ事業者による活用が意図されている。
範囲
1.9. 本安全指針は、参考文献 [8] で定義されている広範な既設の原子炉等施設、すなわち、陸上に定置された原子力発電所、研究用原子炉、核燃料加工工場、濃縮工場、再処理施設、及び独立した使用済燃料貯蔵施設を扱う。手法の多くは原子炉等施設の種類や原子炉の型式には依存していないが、プラントの性能判断基準、システムのモデル化等は、施設の種類ごとに固有である。原子力発電所用に開発された手法は、等級別扱いを通してその他の原子炉等施設にも適用可能である。
1.10. 本安全指針の目的のために、既設の原子炉等施設とは、(a) 運転段階にある施設(長期運転中の施設、及び一時的停止期間の長期化にある施設を含む)、あるいは (b) 運転前段階にある施設で、構築物の建設、機器及び系統の製造、据付及び/又は組立、並びに試運転活動が、大幅に進んだ又は完了した施設のいずれかである。運転段階及び運転前段階にある既設の原子炉等施設では、サイトでの新たな地震ハザードなど当初の設計の根拠の変更、あるいは、施設の地震ハザード及び/又は耐震設計の考慮に関する規制要件における変更は、設計への重大な影響、またその結果として重要な設備の変更につながることがある。
1.11. 本安全指針では、二つの手法、すなわち一般に耐震裕度評価(SMA)で代表される決定論的方法と地震に起因した確率論的安全評価(SPSA)が詳細に論じられている。これらの方法の変形又は代替方法が、第2章で論じられるように、容認可能であることを示してもよい。
構成
1.12. 第2章は原子炉等施設の耐震安全性評価に関する全般的な考察と全般的な推奨事項を提示する。第3章はデータの必要性(収集及び調査)を記す。第4章はサイトの地震ハザード評価に関する推奨事項を提示する。第5章は既設の原子力発電所に関する耐震安全性評価を行うための決定論的なSMAとSPSA手法の実施について詳述する。第6章は原子力発電所以外の原子炉等施設の評価に対する等級別扱いの適用について、(適宜第5章を参照しながら)推奨事項を提示する。第7章は耐震性向上に関する考察を示す。第8章は全ての活動を実施するために整備すべきマネジメントシステムに関する情報を提示するとともに、地震耐力を評価どおりに維持するための将来的活動における構成管理上の必要事項を特定する。第1~4章、第7章及び第8章は、全体的又は部分的に、全ての原子炉等施設に適用される。第5章は原子力発電所に特有の内容である。添付資料は、関連する参考文献を含めて、現在までの手法の開発と適用に関する広範な背景資料の概要を示す。技術用語の定義と説明については、IAEA安全用語集 [8] を参照願いたい。本安全指針に特有な用語の説明は脚注に提示される。


2. 耐震安全性評価に関する実施計画の策定
全般的な考察
2.1. よく設計された工業施設、特に原子力発電所が、当初の設計で考慮された地震よりも大きな地震に耐える内在的な能力を持っていることは、通常、認知されている。保守性は、耐震解析と一連の設計を通して織り込まれている。この内在的な能力又は頑強性は、通常、「耐震設計裕度」という言葉で表現され、(a) 地震工学において以前又は現在の慣行に従って用いられた耐震の設計及び確認の手順に存在する保守性、及び (b) 原子力発電所の設計においては地震荷重がいくつかのSSCに対しては主要な荷重とはならないことがあるという事実、の直接的な帰結である。
2.2. 原子力発電所に適用されている耐震の設計及び確認に関する現行の判断基準は、典型的には、大きな耐震設計裕度を取り入れてはいるが、裕度の程度が示されていないことが多く、その大きさが定量化されていることは殆どない。産業界の基準と手引き―特に原子炉等施設に適用される基準と手引きにおける設計基準の使用を通して、損傷に対して十分なかつ適切な耐震設計裕度が存在しかつ確保されていることが知られている。このことは、いくつかの加盟国で既設の原子力発電所に対するSMAもしくはSPSAの手法の実施を通して実証されている。当初の解析及び設計にかかわる種々の段階を通しての耐震設計裕度の導入は、原子炉等施設の全体を通して大きな期待される差異につながる。耐震設計裕度は、プラント内の場所ごとに、構築物、系統あるいは機器ごとに、また同一構築物内の場所ごとに、一般的に、大きく異なる。このように変動する主な理由の1つは、2.1項に記したように、原子炉等施設が事故条件や航空機衝突、竜巻、配管破断による圧力及びその他の環境からの荷重の例のような、広範囲の内的及び外的な極端な荷重に対して設計され、地震荷重が幾つかのSSCに対して支配的な荷重とならないことがあるという事実である。もう一つの理由は、設備確認の方法であり、これには包絡的な応答スペクトルが一般的に用いられている。保守性の因って来たるところを理解するためには、実際の設計慣行を詳細に調査すべきである。設計過程には余剰な保守性があるものだと無意識に当然のことと思うべきではない。そのように思えば、耐震安全性評価が独りよがりなものに陥ってしまうからである。
2.3. 本安全指針に示す手法は、評価時の実際の状態に従って既設の施設の地震耐力を評価し定量化することが意図されている。
2.4. 原子炉等施設の耐震安全性評価において、その目的は、必要とされる安全機能と地震耐力に関してSSCの本当の状態を把握し、その結果として、施設の耐震安全裕度を評価することである。したがって重要なことは、評価時の実際のSSCに関する現実的で最良の推定値を用い、結果に不必要な偏りをもたらすような安全係数を導入しないことである。例えば、SMAで用いられている手法では、(設計地震動よりも大きな)より高レベルの地震ハザードを考慮し、それと施設の現実的な地震耐力を関係付けている。そうすることで、SSCの内在的な余剰耐力が考慮され得る。
2.5. 加盟国の規制上の慣行に従って、SMA又はSPSAのいずれの手法においても、耐震分類I [5] には属さない機器等で、事故の防止又は事故条件の緩和のために用いられ当初の設計の根拠では耐震性の確認がなされていなかったものは、耐震安全性評価実施計画に含められる場合がある。例えば、シビアアクシデントマネジメントに用いられる既設の設備である。
2.6. 既設の原子力発電所に関して、発電所の評価時の実際の状態に基づいて実施された耐震安全性評価の実施計画は、広範囲に及ぶ複雑な解析を用いるよりは、実際的な評価に重点を置いていた。比較的簡単な構造モデルによる限定的な非線形解析、あるいはより高い減衰値と延性率の使用は、それが注意深く使われ、かつ許容変形と矛盾しないかぎり、弾性領域を超えた挙動を理解する際に特に有用となることがある。しかしながら、詳細で高度な非線形解析は、通常の慣行において一般的には行われていない。
2.7. 最大加速度は地震入力の大きさを表すために広く使われているパラメータであるが、延性挙動を示すSSCに地震動が損傷を引き起こす能力と最大加速度レベルとの間には明確な相関関係がないことは周知の技術的知見である。地震動がSSCに与える影響の思慮のある評価の際には、速度、変位、強震動継続時間、スペクトル加速度、パワースペクトル密度及び累積絶対速度のような他のパラメータが重要な役割を果たすべきことが知られている。もう一つの例がマグニチュードの小さな(即ち、M≤5.5の)直下型地震によって引き起こされる影響である。そのような地震の大部分が高周波数成分を含んでおり、高い最大加速度を生ずるが、それが構造物や機械装置に重大な損傷を与えることはない。しかしながら、そのような直下型地震によって生ずる高周波数成分が構造物に伝わると、装置の種類によっては運転上の問題を引き起こすことがあり得る。また、ガラスのように脆い物質に影響を及ぼすこともある。関連する安全上の懸念には、電気器具又は装置及び/又は計測制御系統の誤作動を含む。
2.8. 構築物、機器及び分配系(例えば、配管、ケーブルトレイ、換気ダクト)の挙動に関して、多くの現場での観測や研究開発計画が示してきたことは、弾性挙動と等価な静的方法に基づいて、通常、算出される力のような計算で求められる大きな力だけが釣り合う場合よりもむしろ、SSCの延性挙動が大きな歪みを吸収する場合に地震耐力の高い設計が得られることである。
耐震安全性の評価
耐震安全性評価を行う理由と目的
2.9. 安全要件出版物である「原子力発電所の安全:運転」に定められているように、「運転組織は、発電所の供用期間を通して、運転経験とすべての関連する分野からの新たな重要な安全情報を考慮し、規制要件に従って発電所の体系的な安全再評価を行わなければならない」(参考文献 [1] 10.1項)。 6
2.10. 上記の要件に従って、かつ国際的な慣行に沿って、下記のいずれかが起きたときに、既設の原子炉等施設について耐震安全性の評価が実施されるべきである。
(a) 設計用基準地震よりも大きな地震ハザードがサイトで発生する証拠。新しい又は追加的なデータ(例えば、新たに発見された地震構造、新たに設置された地震観測網、又は新たな歴史地震の証拠)、新しい地震ハザード評価方法、及び/又は施設に影響を及ぼす実際の地震の発生から得られる。
(b) 規制要件。「最新の知見」と施設の実際の状態を考慮に入れた定期安全レビューの要求。
(c) 不適切な耐震設計。概して設備が古いためによる。
(d) 新しい技術的知見。特定の構造物及び/又は非構造要素(例えば、石積壁)、及び/又は系統又は機器(例えば、継電器)についての脆弱性。
(e) 実際に発生した地震から得られる新しい経験。(例えば、地震動のより良好なデータの記録及びSSCについて観測された挙動)。
(f) 「クリフエッジ効果」が生じないことを確証するため、設計用基準地震動を超える地震動に対する施設の挙動を扱う必要性。即ち、設計用基準地震よりもわずかに大きな地震が起きたとしても施設には重大な損害が発生しないことを示すこと。(参考文献 [2] 4.6項及び5.73項)。
(g) そのような評価が一部となる長期運転の実施計画。
2.11. 上述の理由又はその他の理由により、既設の原子炉等施設の耐震安全性評価が要求される場合には、評価の目的が、評価工程が始められる前に明確に定められるべきである。これは、評価の目的次第で、利用可能な評価手順及び容認基準が大きく異なってくるためである。これに関して、耐震安全性評価の目的は以下に掲げるものの1つ又はそれ以上を含むことがある。
(a) 当初の設計用基準地震動を超える地震動に対する耐震設計裕度を示し、クリフエッジ効果が無いことを確認すること。
(b) 地震事象に関して、施設とその運転における繋がりが弱いことを明らかにすること。(c) 施設間の相対的な地震耐力及び/又はリスク順位を判断するために、施設の集まり(例えば、1地域あるいは1国内の全ての施設)を評価すること。このためには、同種の比較できる手法が採用されるべきである。
(d) リスク情報を活用した意思決定のための入力情報を提供すること。
(e) 考えられる耐震性向上案を特定し、優先度付けすること。
(f) 規制上の要件(もしあるならば)に対して、リスク指標(例えば、炉心損傷頻度、早期大規模放出頻度)を評価すること。
(g) 規制上の期待事項に対して、プラントの耐力指標(例えば、系統レベル及びプラントレベルでの耐力又は低い故障確率への高い確信度(HCLPF)の値)を評価すること。
2.12. 既設の施設に関する耐震安全性評価の目的は、規制要件に沿って、かつ規制当局と協議し、合意の上で定められるべきである。その結果、そのような目的に従って、入力地震動のレベル、地震耐力の評価手法、及び適用される容認基準は、最終的に要求される結果とともに規定されるべきである。特に、当初の設計の根拠で設定された事象よりも厳しい地震事象に対する耐震安全性の評価を行うに対しては、安全目的には、地震発生時もしくは発生後に確保されることが要求される機能と防止されるべき損傷モードを含むべきである。
2.13. 評価の最後に作成されるべき最終文書は、規制当局と合意の上で最初から明確にしておくべきであり、定められた実施計画の目的に合ったものとすべきである。これらの評価の最終的な成果物は、以下の事項の一つ又はそれ以上であり得る。
(a) 決定論的又は確率論的に表された原子炉等施設の地震耐力の程度。
(b) 耐震性向上計画に関する意思決定のための、地震耐力の低いSSCの特定及びそのプラント安全に対する影響。
(c) 地震耐力を向上するための運転上の改善事項の特定。
(d) 整理整頓の慣行(例えば、保守装置の保管)に関する改善事項の特定。
(e) 火災の防止設備と防護設備との相互作用の特定、等。
(f) 施設に影響を及ぼす地震の発生前、発生時、及び発生後に取るべき行動の特定。これには、運転面及び管理面での対応のための取り決めと措置、得られる計器観測による地震測定記録と実施される検査の分析、結果として実施される健全性評価を含む。
(g) リスク情報を活用した意思決定への入力情報を提供する枠組み。
耐震安全性評価手法の選択
2.14. 耐震安全性評価実施計画の最初の段階の1つは、用いられる手法の選択であるべきである。評価の目的によって、用いられる手法、その手法のためのパラメータ値、共通のデータとサイト固有及びプラント固有のデータ、並びにその他の重要な要素が決まる。本安全指針の範囲の節に示されたように、2つの手法が推奨され、詳細に検討される。これらは、決定論的なSMAと確率論的なSPSAである。SMA 又はSPSAのいずれかの手法が計画の目的を満たし得るので、両方の手法が実施されるように意図されてはいない。これらの方法の変形又は代替方法についても容認可能であることを示してもよい。
2.15. 設計用基準地震動(即ちSL-2、参考文献 [4] 参照)の変更を伴わない耐震安全性評価と、規制当局によって設計用基準地震動の変更が求められる耐震安全性評価は、明確に区別されるべきである。本安全指針で重点的に扱う手法は、設計用基準地震動の変更は無いが、当初の設計の根拠のために定めたものよりも厳しい地震ハザードに対する既設の施設の耐震安全性の評価、及び有効な安全裕度の現実的な決定に関わるものである。この評価と決定の過程に対する地震入力と評価の容認基準を決めるに当たって規制当局の合意を得るべきことは明らかである。新しい施設の耐震の設計及び確認に適用される現行の地震工学的方法と容認基準が、既設の施設の耐震安全性評価と安全余裕の決定の目的のために用いられる場合には、最新の工学的方法と容認基準が、適用不可能で無いならば、大幅な耐震性向上の要求につながる可能性がある。
2.16. 評価手法を選択した後に、耐震安全性評価実施計画は以下の項目を包含すべきである。
(a) 地震入力、すなわち地震動パラメータの明確化(第4章参照)。
(b) 潜在的な地表断層活動に関するサイトの地質学的安定性の検証、及びその他の地盤の危険度(例えば液状化)の再評価のために新たに決められた地震ハザードの使用(第4章参照)。
(c) 地震ハザードを受けた際の施設の耐震挙動、すなわち、SSCに対する地震荷重とそれらの地震耐力又は脆弱性、系統の性能等。第5章ではこれらの課題を論じる。
(d) 容認基準と施設の耐震性向上の必要性(施設面と運転面の両方)。第7章ではこれらの課題を論じる。
2.17. 本安全指針では、SSCの現実的な損傷モード、すなわち、不十分な地震耐力又は地震相互作用のいずれかの原因でSSCが要求される機能を果たせなくなる状態を扱う。構築物についてのこの機能は、閉じ込め、他のSSCの支持及び/又は保護であり得る。分配系及び機器については、操作性及び/又は流体の保持であり得る。例えば、配管系統についての損傷は流れの保持能力の喪失であり、系統についての損傷は容認可能な性能の欠如である。構築物及び機械的な機器については、耐震安全性評価では、ある程度の非線形挙動を許容するにしても、在来型の工業施設で許されるよりは低いレベルにおいてである。SSCから求められる機能とそれらのSSCの損傷モードが特定されるべきである。
2.18. 系統及び機器の地震耐力又は脆弱性の評価は、多くの場合、地震の経験データや試験データに依存すべきである。既に大量のデータが取得され、評価され、審査され、評価手順に組み込まれている。これらのデータは、以下のような地震経験データ及び試験データから成っている。
(a) 地震経験データは、広範囲の国際的な情報源から得られており、概ね、強い地震を受けた工業施設の機械的及び電気的装置や分配系の挙動を反映したものである。
(b) 試験データは、機器の確認試験又は耐力試験に基づくものである。ある場合には、試験データのデータベースは、製造者、寸法、機能、固定法のような機器に固有な情報に依存している。
全ての場合、これらの地震経験データ及び試験データの適用性は、評価対象とする特定の原子炉等施設に関して検証されるべきである。
2.19. SMAの手法は、SSCが容認可能な地震耐力を持つことが示されたときに、地震の発生後に施設が無事に安全な状態に到達するであろうことの高い確信度を与える、1組のSSCを明らかにすることに基づいている。特定されたSSCは、「成功パス」を構成する。原子力発電所に対する成功パスは、第5章で適用されているように、「安全停止パス」と呼ばれる。原子力発電所以外の原子炉等施設(第6章)に対しては、「成功」は、評価対象とする原子炉等施設について達成されるべき最終状態、例えば地震の発生時及び発生後に核物質を無事に閉じ込めること、に応じて定められるべきである。成功パスに対する要求事項には、規制当局との合意のもとに定められた深層防護、系統の多重性などの考慮を含むことがある。これについては、5.2項と関連する脚注3も参照のこと。
2.20. プラントの現場確認は、SMA及びSPSAの手法に欠かせない部分である。全ての手法に対して、プラント現場確認は耐震安全性評価の実施計画の重要要素であるべきである。現場確認は、5.32–5.40項に詳しく論じられている。
経年変化に関する考慮
2.21. 全ての種類の原子炉等施設の耐震安全性評価において、経年劣化が考慮されるべきである。経年劣化は、SSCの地震耐力を減少させるような経年効果である。代表的な経年劣化影響としては、配管、タンク及び金属製機器の腐食並びに浸食、熱及び中性子照射による効果(例えば、原子炉圧力容器の脆化、コンクリート構造物、機器及び固定装置の劣化、電気設備の劣化)、応力腐食割れ(沸騰水型原子炉の炉心シュラウド、一次系配管等に対するもの)、塩水や地下水中の過剰な塩素濃度に浸ることに因る環境誘起腐食、並びに電気系統及び装置の経年変化がある。
地震計
2.22. サイト(堆積層又は岩盤上の自由表面及びボーリング孔内)及び施設内(基礎上及び構造物内の場所)に設置された地震計は、サイト近傍で地震が発生した場合に信頼できる実際の記録が得られることを確実なものとするために評価されるべきである。必要ならば、地震計は、地震の発生時及び発生後に地震動に関する適切な情報を得るために、またその後のプラントに対する対応措置を決めるために、最近の国際的な良好事例に照らして、適切に最新化し高性能化されるべきである。また、地震計に関する保守計画とデータ伝達計画が機能していることを確実なものとすべきである。地震計は、着目している大及び小地震を記録できるように適切なものとすべきである。
実施計画の構成
2.23. 施設の耐震安全性評価実施計画を実行するためには、完全かつ詳細な作業計画が作成されるべきである。作業計画では施設の運転が配慮されるべきである。評価時の実際のデータの収集、プラント現場確認の実施及び物理的な耐震性向上のような、施設の運転中には実施し難い作業も有り得る。作業計画では、懸案となっている物理的な又は運転上の変更についてそれらが評価に反映されるように考慮すべきである。耐震安全性評価実施計画の典型的な特徴である段階的な取組みは、これらの目的に合致している。
2.24. 本安全指針では、耐震安全性評価実施計画の実行に必要な工程表に関する具体的な推奨事項については提示されていない。この重要な側面については、安全に関わる高品質化の実施のために策定された全般的なマイルストーンを置いた工程表に従って、利用可能な資源の枠内で、規制当局の合意を得て事業者により定められるべきである。耐震性には関わらない追加的な高品質化が実施される場合には、耐震とそうではない面の高品質化の間の両立性の検証が実施計画に入れられるべきである。工程表は、放射線防護の最適化の原則とともに施設の運転上の必要性を考慮すると、評価段階(主にデータ収集関連)と高品質化段階(主に高品質化実施関連)の両方にわたって、建屋、区域、及び/又は設備へ接近できるか否かによって大きく影響される。
2.25. 耐震安全性評価実施計画を成功裡に策定して完了するためには、責任関係が明確で、その計画に従事するために必要な技術的能力を備えた専任組織の設立が要求される。この点に関しては、事業者は、施設のシニアマネジメントの直接の指揮命令下にある計画管理者によって監督される、評価を実施する専任グループ(通常の運転業務を伴わない)を設置すべきである。
2.26. 資源上の制約から生じる状況に対処するためには、最適リスク低減原則に基づいた優先度付け計画が用いられることがある。この計画は、論理的かつ技術的な順序を維持したより小さな基本作業に分割されることがある。便宜上、評価工程は主要作業に分けることができ、それぞれの作業はいくつかの活動を包含する。例えば以下に掲げる作業が特定される。
(a) 当初の耐震設計に関連する利用可能な情報の整理。
(b) 所在不明の評価時の実際の情報の特定と取得。
(c) 評価に使われる地震ハザードの決定。
(d) SMAについては、地震時の安全停止手順の設定、確保すべき安全目的と安全機能の明確化、及びそれに対応して選定される評価すべきSSC一式の特定。
(e) 評価時の実際のデータを収集するためのプラント現場確認の実行。これは、系統と機器間の地震相互作用の弱い連結と問題点を特定し、固有のまた実証され得る地震耐力のために評価の対象外とするSSCを選別しながら行われる。
(f) 適切な数学モデルの作成と建屋及び構築物の地震応答の計算。これには、地盤と建屋間の相互作用及び構築物内の応答スペクトル(床応答スペクトル)の計算を含む。
(g) 建屋及び構築物の地震耐力の評価。
(h) 設備及び装置の地震応答と地震耐力の評価。
(i) 地震耐力が不十分で耐震性向上されるべきSSCの特定。
(j) 地震耐力が不十分なSSCの耐震性向上。
(k) 必要ならば、数学モデル、地震応答の計算、及び耐震性向上された状態でのSSCの地震耐力の検証についての最新化。

3. データの収集と調査
既設の原子炉等施設に関するデータの収集
3.1. 既設の原子炉等施設に関して実施されるべきあらゆる耐震安全性評価の全般的特徴として、その評価は、それが実施される時点における施設の状態を考慮して行なわれるべきである。施設のこの重要な状態は、「評価時の実際の」状態と表わされる。これは、地震が発生した場合に、その実際の状態の施設に影響を与え、施設の応答と耐力は、その実際の物理的構成及び運転状況に依存することを意味する。したがって、耐震安全性評価のための実施計画の最初のまたより重要な段階の一つは、施設の実際の状況の完全な表現を提示するための全ての必要なデータと情報を収集することである。評価時の実際のデータの収集は、耐震安全性評価の実施計画の範囲に入ると考えられ、また、システムの性能に対して直接的な影響を及ぼすか、又は地震動をある場所から他の場所に伝達することによって間接的な影響を与える、それらの選定されたSSCを網羅すべきである。評価時の実際の状態は、供用期間中における施設の経年劣化の影響を適切に反映しかつ含むべきであることもまた、強調されるべきである。未決定の物理的又は運転上の変更についてもまた、評価において考慮され得ることを認識しておくべきである。
当初の設計の根拠に関するデータ及び図書資料
3.2. 当初の設計の根拠に関するデータと図書資料は、利用可能なあらゆる情報源から収集されるべきである。設計段階において使用された原子炉等施設に関する固有のデータや情報の収集と整理には、可能な限り、重点が置かれるべきである。もし、より完全な情報が設計段階から収集されたならば、耐震安全性評価の実施計画のために要求される労力と資源は、より少なくて済む。
施設の全般的図書資料
3.3. 施設の設計段階において設計や許認可の目的のために使用されたすべての利用可能な全般的及び特定の図書資料は、以下を含めて、集められるべきである。
(a) 安全解析報告書、望むべくは、最終安全解析報告書。
(b) 施設の当初の設計時に使用された規格と基準。
(i) 使用された材料の公称値とその機械的特性を指定するために採用された基準と当初に適用された手順。
(ii) 当初の負荷組合せを明確にするため、また耐震設計パラメータを計算するために採用された基準と適用された手順。
(iii) 構築物、機器、配管系統、及び他の機器等の設計のために、適宜、使用された国の工業基準。
(iv) 施設設計時において在来建屋の設計に使用され、また、最低限の要件であったと考えられる国の基準と手順。
(c) 構築物、装置、及び分配系(例えば、配管、ケーブルトレイ、換気ダクト)に関する全体配置と配置図面。
(d) 内部(及び外部)事象の確率論的安全評価(PSA)の結果(実施された場合)。
(e) 試運転期間中に実施されたSSCの耐震確認試験の結果と報告に関するデータと情報。これには、検査、保守、及び不適合報告書や是正処置報告書に関する利用可能な全ての情報を含む
(f) 品質保証と品質管理の図書資料。これには、建設、製作、組立、及び試運転時の変更を評価するために材料、形状、及び配置構成の建設時の状態に特に重点を置いた不適合報告書や是正処置報告書を含む。これらのデータの正確度は評価されるべきである。
耐震安全性評価の実施計画に含まれるSSC固有の図書資料
3.4. 施設の当初の設計に関する固有情報、特に、耐震安全性評価の実施計画に含まれるSSCの情報は、以下のように収集されるべきである。
(a) システム設計
(i) システムの説明資料
(ii) 安全区分、品質区分、及び耐震区分
(iii) 設計報告書
(iv) システムの機能性の確認報告書
(v) 細部を含む計測制御
(b) 地盤設計
(i) 掘削、地質構造の埋戻し、及び基礎部管理(例えば、沈下、隆起、排水)
(ii) 擁壁、土手等の建設
(iii) 地盤‐基礎部‐構築物の損壊モードと耐力(例えば、推定される沈下、滑り、転倒、隆起、液状化)
(c) 構造設計
(i) 全ての着目すべき構築物の応力解析報告書
(ii) 構造図(例えば、構造用鋼、鉄筋コンクリート及び/又はプレストレストコンクリート)、望むべくは、建設時の図書資料
(iii) 材料物性(仕様及び試験データ)
(iv) 代表的な詳細(例えば、結合部)
(d) 機器設計
(i) 耐震解析及び設計の手順
(ii) 試験仕様書、試験報告書、等を含む耐震確認手順
(iii) 代表的な固定手段の要求事項と使用された種類
(iv) 応力解析報告書
(v) 運転前試験報告書(あれば)
(e) 分配系設計(配管、ケーブルトレイ、ケーブル導管、換気ダクト)
(i) 系統説明資料
(ii) 配管と計装の図表
(iii) 配管とその支持構造物の配置と設計図面
(iv) ケーブルトレイとケーブル導管、及びそれらの支持構造物の図表
(v) 換気用ダクトとその支持構造物の図表
(f) 役務用及び取扱用の装置(たとえ、その一部は安全上の関連がない装置であっても、運転時及び貯蔵時の配置構成における相互作用効果の解析と検討のために、その評価が必要となる場合がある)
(i) 主クレーン、及び補助クレーン
(ii) 燃料交換機
耐震設計の根拠
3.5. 耐震安全性評価の実施計画の実施に当たっては、当初の設計段階において使用された地震入力の特性がよく理解されるべきである。サイトの評価検討時に実施された地震ハザード解析の図書資料と、最終的に採用された当初の設計の根拠の値との乖離は、全て特定されるべきである。この情報は、参考レベルを決定する上で不可欠である。この参考レベルは、評価計画のために設定されるべき新しい地震入力に対する施設の耐震安全裕度を評価するために使用されることになる。この観点から、以下の事が包含されるべきである。
(a) SSCの設計と確認に使用された当初の設計の地震レベルの仕様書[4]。
(b) 弾性地盤応答スペクトル、加速度時刻歴、又は他の表現による自由表面の地震動パラメータ。
(c) マグニチュード(M)や強度(I)、震央距離(Δ)、強震動の定義と継続時間、又は、他の地震パラメータ、等の当初の入力地震動を定義するために使用された主要な地震の震源パラメータ。 16
(d) 構築物の一部が、設計スペクトルが非弾性挙動に関して内在的に減衰する内容の設計規格に従って設計されている場合には、新たに定義される地震入力に対する耐震安全性評価の実施計画の要求事項と比較する根拠を与えるために、それに対応する弾性地盤応答スペクトルが導出されるべきである。
地盤‐構造物の相互作用、構造物のモデル化、及び構造物内の応答の詳細
3.6. 当初の設計時に使用された地盤‐構造物の相互作用の解析、モデル化の技術、及び構造物の応答解析の技術に関する情報は、以下のように収集されるべきである。
(a) 地盤‐構造物の相互作用パラメータ
(i) 基準点の位置、即ち、入力地震動を適用するために選択された位置― 例えば、自由地盤面、基礎部マット上、又は基盤岩レベルに接した自由表面。
(ii) サイト固有の応答解析に使用された地盤の剛性や減衰特性、地下水位の変動に関する情報、及び歪み依存特性についての考慮、等を含む地盤の特性(3.14~3.17項を参照のこと)。
(iii) 地盤特性、及び、地盤‐構造物の相互作用解析技術の不確実性を説明する方法、例えば、地盤特性に関する最適推定、下限及び上限の三つの解析が当初の設計において使用されている場合には、その包絡線。
(b) モデル化の技術
(i) 構造物の地震応答と構造物内の応答スペクトル(床の応答スペクトル)の計算に使用されたモデル化の技術と解析の方法。
(ii) 物質とシステムの減衰、モード減衰の切り捨て。
(iii) 設計段階において想定され、また、建設時に実行されたような非弾性的挙動の許容幅。
(c) 構造物の解析と応答パラメータ
(i) 地盤と構造物の連結モデル又は基礎構造モデルを用いた1又は2段階の解析。
(ii) 機器と構造物の動的解析。
(iii) もし利用可能ならば、固有振動数とモードの形状。
(iv) 構造物の応答出力 (例えば、構造物の内部荷重 (力とモーメント);構造物内の加速度;変形又は変位)。 17
(v) 滑りや隆起等の全体的挙動を含む基盤の応答。
(vi) 構造物内の応答スペクトルの計算 (床応答スペクトル)、これには以下を含む。
— 設備の減衰。
— 包絡し且つ幅を持たせる判断基準(使用されている場合)。
現状の(評価時の実際の)データ及び情報
3.7. 前項までに推奨されたように、当初の設計の根拠に関連する可能な限り多くのデータを収集した後に、施設の現状と実際の状態(即ち、評価時の実際の状態)が評価されるべきである。この点に関して、評価を行う者は、実施する全ての段階を適切に文書化しつつ、一貫したかつ包括的な方法で行うべきである。
3.8. 施設が、参考文献[7]において推奨されているような定期安全レビューを受けてきている場合には、これらのレビューの報告書は、耐震安全性評価の実施計画の目的のために利用できるようにすべきである。
3.9. 建設時と運転前の全ての利用可能な図書資料(報告書、図面、写真、フィルム記録、非破壊検査報告書等)の精密なレビューが実施されるべきである。この目的のために、文書化されたデータを確認し、また、新しい、更新された情報を入手するために、予備的な選別のための現場確認が実施されるべきである。この現場確認中においては、施設の供用期間中に実施されたあらゆる重要な改修、及び/又は高品質化、及び/又は補修手段に関するデータが収集され、文書化されるべきである。これには、すべての経年変化影響の報告が含まれる。施設の地震応答と地震耐力に対して効果的であるためには、どの程度の改修が必要になるかについての判断は、地震耐力の評価に関する専門家によって行なわれるべきである。
3.10. 以下の項目に関連する建設及び/又は組立てに関する要求事項、手順、及び不適合報告書に対しては、特に注意が払われるべきである。
(a) 掘削と埋戻し
(b) 現場を経由する機器等 (例えば、配管、ケーブルトレイ、導管、管類)
(c) 非安全関連の機器等の据付け (例えば、石壁、遮蔽ブロック、室内ヒータ、飲用水配管と消火用水配管、つり天井)
(d) 機器間の分離距離又は間隔
(e) 現場試験を受けた機器等
(f) 固定手段
3.11. 施設の運転期間中において利用可能なすべての記録と図書資料は、補修記録や残存供用期間について実施された評価結果も含めて、現場検査や運転履歴によって特定された偶発故障や経年変化の影響に関するSSCの信頼性との関連で、評価されるべきである。SSCの動的特性付けに関して(もし、行われたならば)実施された試験の報告書の存在には、検査、保守、及び/又はモニタリング記録とともに、特に注意が払われるべきである。
3.12. サイトの定期的な地質工学的な監視や測地調査、及び施設の構築物からの利用可能な情報は、変形や沈下、基礎部の挙動、構築物の相対変位、等の評価に使用されるべきである。
3.13. サイト選定、サイト評価、運転前活動及び運転にわたる全期間を通してサイトに設置された地震計は、現実に地震に遭遇したときの地盤、構築物及び機器の固有の挙動をより良く理解し、評価するためのデータを提供するであろう。この観点から、全ての利用可能なデータは、編集され、解析されるべきである。原子炉等施設の地震計と緊急停止系については、それらの操作性や機能性とともに現状の評価が実施されるべきである(2.22項を参照)。既設の地震計の評価においては、以下の点を考慮すべきである。
(a) サイト周辺の近隣地域における地域の地震観測網
(b) 施設自体の地震計
(c) 地震発生時及びそれ以降に要求される活動のために定められた操作手順
推奨される調査
地盤に関するデータ
3.14. 信頼性のあるかつ現実的なサイト固有の地震応答解析を実施するためには、地盤と岩盤の断面の静的及び動的な物性が入手されるべきである。これらのデータがより初期の段階に(例えば、設計段階において)入手されたのであれば、現行の手法への妥当性が評価されるべきである。この点に関して、 19
(a) 岩盤層に関しては、各層の岩盤の物性の資料が妥当である。
(b) 多層地盤に関しては、各層に関して歪みに対する剛性率や減衰は、多層地盤の数学的モデルを導出する基盤となる。密度や低歪み物性(通常は、PとS波の速度のその場での測定値や3軸静的物性の実験室での測定値、及び可能ならば、動的物性と物質の減衰率)が与えられるべきである。歪みレベルの増大に伴う動的剛性率の値と減衰値の変動が深さの関数として必要である。歪みによる地盤の物性の変化は、地盤の種類が一般的区分と適切に関連付けされている場合には、一般的データに基づいてもよい。サイト固有の地盤特性を明らかにする静的及び動的物性値の妥当な範囲については、耐震安全性評価の実施計画における使用のために調査され、文書化されるべきである。
3.15. 代表的な一年間のその地域の地下水位の位置とその変動に関する情報が入手されるべきである。
3.16. サイト調査、設計、及び建設の種々の段階に関しては、運転職員やその他の人々によって記録された写真、覚書、及び観察結果のような通常には得られない情報源から、他のデータが利用できることがある。これらのデータは、それらの情報源や文書化の方法に照らして評価されるべきである。そのようなデータの収集は、参考文献 [9] に従い、可能な限り実施されるべきである。
3.17. サイトにおける又はその地域にある他の工業施設における実際の地震経験に関連するすべての利用可能な情報は、入手されるべきである。ダムの決壊による河川の氾濫、津波による沿岸の冠水、地滑りや液状化等の地震の誘発による現象に対しては、特に注意が払われるべきである。
建屋構造物に関するデータ
3.18. 安全関連の構造物の建設のために使用される評価時の実際のコンクリートの等級は、既存のプラント固有の試験とコンクリートに関する工業規格に基づいて検証されるべきである。試験には、破壊又は非破壊のいずれかの方法が使用され得る。当初の設計のデータの代わりに収集されたデータは、さらなる解析と耐力評価のために使用され 20
るべきである。設計値からの大きな差異がある場合には、その差異の原因とその結果が調査されるべきである。
3.19. 評価においては、鉄筋の実際の材料物性が使用されるべきである。材料物性は、既存の試験データから利用可能であるべきである。そうでない場合には、破壊及び非破壊試験の信頼できる方法が使用されるべきである。鉄筋の解析には、機械的物性と詳細項目(例えば、鉄筋の寸法、配置、形状特性、コンクリートかぶり、鉄筋の間隔)を含めるべきである。構造物全体の耐力評価のためには、全ての重要な載荷構成材の物性が評価されるべきである。その他、鉄筋の詳細が重要となるような場合には、例えば、貫通部及び大型機器の固定部が含まれる。
3.20. 経年効果は、通常、別個の計画において評価されるが、耐震安全性評価において、コンクリート建屋の調査は、最低限、亀裂、侵食/腐食や表面損傷の影響、中性化の程度、コンクリートかぶりの厚さ、及び、例えば地下水中に存在する塩化物や他の腐食性汚染物等による地下基礎部の劣化の程度についての目視検査を含めるべきである。
3.21. 抜き取り調査は、選択された構築物の構成材の形状特性を検証するために行なわれるべきである。
3.22. 評価の重要な要素は、地震荷重以外の、耐震安全性評価に使用される荷重の検証及びことによると新たな評価である。通常、評価時の実際の状態における静荷重と動荷重の両方とも、当初の設計に使用されたものとは異なる。その差異に関しては、慎重に吟味され、記録されるべきである。
配管及び装置に関するデータ
3.23. 配管、装置、及びそれらの支持構造物に対する設計情報が不十分な場合には、解析及び/又は試験が、それらの動的特性と挙動を定めるため実施されるべきである。この場合、代表的なもので十分である。

4. 地震ハザードの評価
4.1. 耐震安全性評価のためのあらゆる実施計画の最初の段階は、第3章に示された関連データの収集と並行して、地震ハザードを確定することであるべきであり、それとの関連において既設の施設の耐震安全性が評価される。この点に関して、サイト特有の地震ハザードが、下記の3つの主要な要素との関連において評価されるべきである。
(a) サイトの地質の安定性評価 [4、9]。これには主たる2つの目的を持つ。
(i) 安全上重要な建屋や構築物の直下、又は非常に接近した場所において、相対的な地盤変位現象を生じる可能性のあるいかなる活断層も存在しないことを検証すること。新たな証拠がサイト区域内やサイト近傍における活断層の可能性を示した場合は、断層変位の危険性が、先ず、参考文献[4 ]に示される手引きに従って評価されるべきである。この問題の明確な解決が未だ不可能である場合には、断層変位の危険性は、確率論的手法を用いて評価されるべきである。
(ii) 恒久的な地盤変位現象が存在しないことを検証すること(即ち、液状化、斜面の不安定性、地盤沈下や崩壊、等)。
(b) サイトにおける地震動の強さの決定、即ち、調査対象となる4領域における地震構造論的影響の全範囲を考慮に入れた、参考文献[4 ]が推奨するような地盤震動パラメータの評価。
(c) 地震によって生じるダム決壊による河川の氾濫、津波による沿岸の冠水、及び地滑り、等の他の随伴現象の評価
4.2. 一般的に、地震ハザード評価は、その実施計画の目的と要求事項に依存して、決定論的又は確率論的方法を用いて実施され得る。いずれの方法においても、偶発的な不確実性及び認識可能な不確実性は、両方共、考慮されるべきである。
4.3. 4.1(a) 項と4.1(c)項 において推奨される評価は、使用されている方法論には拘りなく、参考文献 [4, 9, 10 ] に従い耐震安全性評価のための実施計画のあらゆる場合について実施されるべきである。地盤工学上の危険度(例えば、液状化、斜面の不安定性、地盤沈下、崩壊)の評価においては、新しい地震ハザードパラメータが使用されるべきである。4.4. 4 .1(b)項に関するサイトの地震ハザード評価に対する推奨事項は、その評価の目的に依存する。以下の場合における地震ハザード評価は、参考文献 [4 ] に推奨されるように実行されるべきである。
(a) 当初の設計用基準地震動の改定を行なう場合。これは、サイトにおける地震ハザードに関する新しい情報(例えば、新たに特定された断層)、不適切又は推奨された最低限度以下と判明した当初の設計の根拠(例えば、参考文献 [4~6]に与えられるような)、又は、設計の根拠の地盤震動特性が当初に使用されたものと異なること(例えば、直下型地震に関するより大きな高周波数成分)などのような状況により企てられることがある。
(b) 当初の設計用基準地震動を超える耐震安全裕度を設定する場合、及び、クリフエッジ効果がないことを実証する場合。
(c) 基準の改訂による規制要件に従った耐震安全性評価、もしくは長期運転(即ち、プラントの供用期間の延長)の支援における耐震安全性評価を実施する場合。
(d) あるレベルの地震動を受けたとき新たに観測されたSSCの挙動が、施設の地震耐力を損なわないことを検証するために評価を行う場合。
地震ハザード評価の結果、新たなサイト固有の地震ハザードが規定され、評価用の地震動として指定される。これは、施設の耐震安全性の評価に使用されるべきである。
4.5. ある場合には、規制当局が、明示的に地震ハザード評価を行うことなく、耐震安全性評価が実施されるための地盤震動を直接指定することがある。いかなる場合においても、評価用の地震動を決定する際の、また評価の結果を解釈する際の意思決定に有用な情報を提供するために、参考文献 [4] の推奨事項に従って(決定論的又は確率論的のいずれかの)地震ハザード評価が実施されることが推奨される。
4.6. 4 .4項の目的以外の目的を達成するためには、サイト固有の確率論的地震ハザード評価 [4] が実施されるべきである。通常、その目的には、以下を伴う。
(a) リスク指標の計算(例えば、炉心損傷頻度と早期大量放出の頻度)。
(b) リスク情報を活用した意思決定のためのリスク管理手段の確立。
(c) 地震ハザードと他の内的及び外的ハザードとの間の相対的な危険性の決定。
(d) プラントの耐震性向上に関する意思決定のために費用-便益分析に関する手段の提供。
4.7. SMA手法に関しては、評価用の地震動(4.5項)が、耐震安全性評価の実施計画に使用されるべき地震入力を規定する。この場合には、当初の設計基準地震動に対して十分に裕度のある評価用の地震動が定義されるべきである。これは、プラントの安全を確保するため、また、当初の設計用基準地震動以上の大きな地震事象に十分耐えるべき施設の能力を制限することのあるあらゆる「弱点」を見出すために行われる。
4.8. SPSA手法に関しては、評価用の地震動(4.5項)が、サイト固有の確率論的地震ハザードを意味する。一般的に、サイト固有の確率論的地震ハザード評価の結果は、地盤振動パラメータ(例えば、最大加速度)の年間超過頻度(しばしば、年超過確率と呼ばれる)を定める地震ハザード曲線、それに基づく応答スペクトル(例えば、一様ハザードスペクトル)、及び、有力な震源パラメータ(例えば、マグニチュードやサイトからの距離)の特性、等を含む。


<略>


----------------------------------

クリフエッジ効果
In a nuclear power plant, an instance of severely abnormal plant behaviour caused by an abrupt transition from one plant status to another following a small deviation in a plant parameter, and thus a sudden large variation in plant conditions in response to a small variation in an input.
原子力発電所において、一つの発電所パラメータの小さな逸脱の結果、ある発電所の状態から別の状態への急激な移行によって生じる、通常から大きく外れる発電所挙動の事例であり、このように入力の小さな変動に反応して発電所の状態が突然大きく変動すること。


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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
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