東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その11 因果関係の中断論

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その11 因果関係の中断論


昭和37年9月10日初版発行 科学技術庁原子力局監修「原子力損害賠償制度」44頁以下のある原賠法3条の解説
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(3)原子力事業者の無過失賠償責任も,その原子炉の運転等と因果関係のあるものに限られることは,いうまでもない。「により」は,このことを示すものである。
 因果関係の範囲については,相当因果関係の原則の適用がある。公権力による強制立退き(避難)費用,損害拡大防止費用,汚染を受けた周辺土地の価格の低落等がこの点で問題になるが,要はその場合の具体的な事情に基づき判断することとなろう。しかしながら,汚染がないにもかかわらず地価が低落したような場合は,一般的にいって因果関係がないものと考えるべきであろう。
 因果関係の中断による免責については,本条ただし書が規定している

〈略〉

(7)このただし書は、本文に規定する責任の範囲をとくに狭める趣旨のものではなく,当然のことを述べた注意的規定であるとともに,更には免責の範囲の拡大を防ごうとするものである。原子力事業者が責任を負うべき原子力損害は,その原子炉の運転等と因果関係があるものに限られることは当然である((3)参照)。従って,原子力損害が不可抗力によって生じたものであるときは,因果関係が中断して原子力事業者が免責されることは明らかである。しかしながら,原子力事業者が軽々に不抗力によるものと認定されることがあっては,この法律の意図する被害者の保護を充分におし進めることは不可能である。そこで,原子力事業者の無過失責任は,ここに掲げるような不可抗性のとくに強い特別の事由がある場合に限り,因果関係の中断により免除されるものとするのが,このただし書の趣旨である
(8)日本の歴史上余り例の見られない大地震、大噴火、大風水災等をいう。例えば、関東大震災は巨大ではあっても異常に巨大なものとはいえず、これを相当程度上回るものであることを要する。
(9)社会的動乱も、質的、量的に異常に巨大な天災地変に相当する社会的事件であることを要する。戦争、海外からの武力攻撃、内乱等がこれに該当するが、局地的な暴動、蜂起等はこれに含まれないと考えられる。
(10)これらの事由による原子力損害については、原子力事業者は免責となり、また、この法律により政府が援助を行うのも、原子力事業者が賠償責任を負った場合であるから、ただし書の場合には、原子力損害について賠償を行うものが存在しないことになる。しかしながら、このような場合には、原子力損害と言うよりはむしろ社会的、国家的災害であり、政府が被害者の救助及び被害の拡大の防止につとめるべきことは当然で、第一七条は、このことを念のために規定したものである。
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 このように,昭和36年に原賠法が成立した翌年に発行された科技庁篇の「原子力損害賠償制度」という書籍では,同法3条1項但書は,「因果関係の中断」による免責を定めたものと理解されていた。〔なお,3条1項但書のような事情について,これを因果関係の中断の問題と言及するものとして,立法前昭和34年の加藤一郎教授の「原子力災害補償立法上の問題点」(ジュリスト190号14頁)がある。〕

 
 ただし,原発事故に,自然災害等の不可抗力が介在した場合に,「因果関係の中断」とはどういう理屈なのか詳細が不明である。

 因果関係については,以下のとおり,事実的因果関係と相当因果関係が必要

1 事実的因果関係(条件関係)
 ア説 不可欠条件公式(「AなければBなし」)で判断
 イ説 合法則条件公式(「AからBが生じたか」)で判断
2 相当因果関係

 果たして,自然力のような不可抗力を,「因果関係の中断」との関係で,理屈上,どの点で扱うのだろうか。

 単純に,不可欠条件公式で扱うと,およそいかなる自然力が介在しようが,そもそも放射性物質の漏出・飛散などというものは,そこに原発が存在しなければ,ありえないものであることは明白なので,条件関係は常に満たされるともいえる。したがって,中断というものは考えにくい。
 合法則条件公式でも,他の第三者の介在ではなく,自然力が介在する原子力災害などでは,介在事情が自然法則に従うものであることは明白なので,条件関係が否定されるとは考えにくく,これも因果関係の中断の話にはなりにくい?。
 かといって,相当因果関係の問題とするとなると,どのみち「相当性」という規範的要素の判断になるので,「因果関係の中断」論とはせずに,端的に「不可抗力免責」の特殊な場合〔不可抗力性の特に強い事由〕の問題として,その予見可能性,結果回避可能性,危険性,結果の甚大さ,被侵害利益の重大性等の諸般の事情を考慮して,法の趣旨,損害の公平な分担の観点から決するということで問題がないはずである。


 結局,この書籍の「因果関係の中断」論の部分は,どういう議論があったのか知らないが,平成3年の改訂版では,(7)が,以下のように書き換えられている。



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平成3年4月30日改訂版 科学技術庁原子力局監修「原子力損害賠償制度」55頁
(7)このただし書は、原子力事業者の免責事由を定めるものである。無過失責任を課し、さらに責任を集中しているので、原子炉の運転等と相当因果関係を有する原子力損害は、全て原子力事業者が賠償しなければならないことになり、危険責任の考え方に基づく責任としては酷に過ぎる場合もあり得る。例えば、戦争のような状況の中で原子炉が破壊され、核分裂生成物が大気中に放置されたような場合に、その被害を原子力事業者に賠償させるのは行き過ぎであり、そもそも民事賠償の問題ではないと考えられる。しかし、一方では、不可抗力による免責が軽々に認められるようでは、被害者の保護を図るというもう一つの方目的が損なわれることになる。そこで(8)、(9)で述べるような非常に稀な場合に限って原子力事業者を免責することとしたものである。このような不可抗力性の特に強い事由について原子力事業者の責任を免除することは、多くの国際条約、諸外国の法制においても認められており、また、無過失賠償責任を定めた他の立法においてもみられるものである。
(8)日本の歴史上余り例の見られない大地震、大噴火、大風水災等をいう。例えば、関東大震災は巨大ではあっても異常に巨大なものとはいえず、これを相当程度上回るものであることを要する。
(9)社会的動乱も、質的、量的に異常に巨大な天災地変に相当する社会的事件であることを要する。戦争、海外からの武力攻撃、内乱等がこれに該当するが、局地的な暴動、蜂起等はこれに含まれないと考えられる。
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 立法当時の旧版にある「このただし書は、本文に規定する責任の範囲をとくに狭める趣旨のものではなく,当然のことを述べた注意的規定であるとともに,更には免責の範囲の拡大を防ごうとするものである。」という部分が削られ,全体として,ずいぶんニュアンスが変わってしまっているが,要するに,改訂版では,特に不可抗力性の特に強い事由についての,特殊な「不可抗力免責」の問題として扱われ,「因果関係」の有無・中断の問題として論じるというニュアンスは後退している。

 因果関係の中断というのは,原発事故との関係では,なじみにくい理屈かもしれない。それは先ほど述べたのように,放射性物質の漏出・飛散による原子力損害は,明らかにそこに原発がなければ発生しないものであり,他の原因によっても生じうる損害とは異なり,いかに異常に巨大な自然力であっても,事実的因果関係が否定されるとは考えにくいからである。ただ,このような「因果関係の中断」論が立法当初,理屈として考えられていたということは,3条但書の事情が,いかに異例なものと考えられていたかを物語っているようにも思える。



※ここでいう「因果関係」は,原子炉の運転等と原子力損害との間の関係(3条1項本文の「により」)を指すものであって,異常に巨大な天災地変と原子力損害との間の関係(3条1項但書の「によって」)ではない。


※なお,原子力事業者の落ち度を一切問題としない完全な無過失責任の場面ではなく,「過失」や「瑕疵」と,自然力との競合を問題とする場面では,同一結果が,「過失」や「瑕疵」が無くても生じたかという問題となりえ,条件関係の否定という点で,因果関係の中断の問題として論じる余地はあるように思える。こちらで,触れた。




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なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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