東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- : スポンサー広告 :
Pagetop

■18条 原子力損害賠償紛争審査会 中間指針の論点の整理(案) 第11回審査会

■18条 原子力損害賠償紛争審査会 中間指針の論点の整理(案) 第11回審査会

平成23年7月19日 第11回審査会資料


-------------------------------
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/07/19/1308665_1_1.pdf

(審11)資料1

中間指針の論点の整理(案)

本資料は、審査会における議論のために作成したものであり、指針の内容、損害の範囲に何ら予断を与えるものではない。中間指針の作成に向けて、今後の議論に必要だと考えられる内容を以下に示す。

第1 指針の位置づけ
1 第一次指針を始めこれまでに既に決定・公表した内容にその後の検討事項を加え、賠償すべき損害と認められる一定の損害類型を示すもの。
2 中間指針では、当面の被害のうち、類型化が可能で賠償すべき損害について示すが、今後、事故の収束、避難区域等の見直し、新たな被害の判明等の状況の変化に伴い、必要に応じてあらためて指針で示すべき事項について検討を行う。
3 中間指針に示されなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められ得る。中間指針で明示されないものについても、東京電力によって、迅速、公平かつ適正な賠償が行われることを期待する。

第2 各損害項目に共通する考え方
1 本件事故と相当因果関係のある損害、すなわち社会通念上当該事故から当該損害が生じるのが合理的かつ相当であると判断される範囲のものが原子力損害に含まれる。
2 JCO事故を参考としつつ、本件事故特有の事情を十分考慮する。
3 地震・津波による損害は賠償の対象とはならないが、原子力損害との区別が判然としない場合には、合理的な範囲で、特定の損害が原子力損害に該当するか否か及びその損害額の推認をすることが考えられる。
4 膨大な被害者に対する迅速な救済が求められるため、合理的な範囲で証明の程度の緩和、客観的な統計データ等による合理的な算定方法等により、一定額の賠償を認めることが考えられる。
5 請求金額の一部の前払いなど、東京電力の合理的かつ柔軟な対応が求められる。

第3 政府による避難等の指示等に係る損害について
[対象区域]
避難区域(警戒区域)、屋内退避区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域、特定避難勧奨地点及び一部の地方公共団体が住民に一時避難を要請した区域

A.対象区域に係る避難等をした者に係る損害
[損害項目]
1 検査費用(人)
本件事故の発生以降、避難等対象者のうち、対象区域内で屋内退避し、又は同区域内から同区域外に避難した者が、放射性物質への曝露の有無等を確認する目的で必要かつ合理的な範囲で検査を受けた場合には、これらの者が負担した検査費用及びその付随費用(検査のための交通費等)は、賠償すべき損害と認められる 。
2 避難費用
①避難等対象者(対象区域内に生活の本拠としての住居がある者であって、避難指示の解除等以降に避難を開始した者、及び6月20日以降に緊急時避難準備区域から同区域外に避難を開始した者のうち子ども、妊婦、要介護者、入院患者等以外の者を除く。)が必要かつ合理的な範囲で負担した以下の費用が、賠償すべき損害と認められる。
) 対象区域から避難するために負担した「交通費」、「家財道具の移動費用」
) 対象区域外に滞在することを余儀なくされたことにより負担した宿泊費及びこの宿泊に付随して負担した費用(宿泊費等)
) 避難等対象者が、避難等によって生活費が増加した部分があれば、その増加費用
② 避難費用の損害額算定方法は、以下のとおりとする。
) 避難費用のうち「交通費」、「家財道具の移動費用」、「宿泊費等」については、避難等対象者が現実に負担した費用が賠償の対象となり、その実費を損害額とするのが合理的な算定方法と認められる。但し、領収証等による損害額の立証が困難な場合には、平均的な費用を推計することにより損害額を立証することも認められるべきである。
) 他方、避難費用のうち「生活費の増加費用」については、原則として、「避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害の額」に加算し、その加算後の一定額をもって両者の損害額とするのが公平かつ合理的な算定方法と認められる。その具体的な方法については、後記6のとおりである。
③ 避難指示の解除等から「相当期間」経過後に生じた避難費用は賠償の対象とはならない。
3 一時立入費用
避難等対象者のうち、警戒区域内に住居を有する者が、市町村が政府及び県の支援を得て実施する「一時立入り」に参加するために負担した「交通費」、「家財道具の移動費用」、「除染費用等(前泊や後泊が不可欠な場合の宿泊費等も含む。)」は、 必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
4 帰宅費用
避難等対象者が、対象区域の指定の解除等に伴い、対象区域内の住居に戻るために負担した交通費、家財道具の移動費用は、必要かつ合理的な範囲で 賠償すべき損害と認められる。
5 生命・身体的損害
避難等対象者が負担した以下の費用が、賠償すべき損害と認められる。
① 本件事故により避難等を余儀なくされたため、傷害を負い、治療を要する程度に健康状態が悪化し、疾病にかかり、あるいは死亡したことにより生じた逸失利益、治療費、薬代、精神的損害等
② 本件事故により避難等を余儀なくされ、これによる治療を要する程度の健康状態の悪化(精神的障害を含む。)等を防止するため、負担が増加した診断費、治療費、薬代等
6 精神的損害(避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害)
① 本件事故において、避難等対象者が受けた精神的苦痛(ここでは、「生命・身体的損害」を伴わないものに限る。)のうち、少なくとも以下の精神的苦痛は、賠償すべき損害と認められる。
) 対象区域から実際に避難した上引き続き同区域外滞在を長期間余儀なくされた者(又は余儀なくされている者)及び本件事故発生時には対象区域外に居り、同区域内に生活の本拠としての住居があるものの引き続き対象区域外滞在を長期間余儀なくされた者(又は余儀なくされている者)が、自宅以外での生活を長期間余儀なくされ、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛
) 屋内退避区域の指定が解除されるまでの間、同区域における屋内退避を長期間余儀なくされた者が、行動の自由の制限等を余儀なくされ、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛
② 上記①の)及び)に係る「精神的損害」の損害額については、前記2の「避難費用」のうち「生活費の増加費用」と合算した一定の金額をもって両者の損害額と算定するのが合理的な算定方法と認められる。そして、上記①の)又は)に該当する者であれば、その年齢や世帯の人数等にかかわらず、避難等対象者個々人が賠償の対象となる。
③ 上記①の)の具体的な損害額の算定に当たっては、差し当たって、その算定期間を以下の3段階に分け、それぞれの期間について、以下のとおりとする。
) 事故発生から6ヶ月間(第1期)
第1期については、一人月額10万円を目安とする。
但し、この間、避難所・体育館・公民館等(以下「避難所等」という。)における避難生活等を余儀なくされた者については、避難所等において避難生活をした期間は、一人月額12万円を目安とする。
) 第1期終了から6ヶ月間(第2期)
但し、警戒区域等が見直される等の場合には、必要に応じて見直す。
第2期については、一人月額5万円を目安とする。
) 第2期終了から終期までの期間(第3期)
第3期については、今後の本件事故の収束状況等諸般の事情を踏まえ、改めて損害額の算定方法を検討するのが妥当であると考えられる。
④ 上記①の)の損害発生の始期及び終期については、以下のとおりとする。
) 始期については、個々の避難等対象者が避難等をした日にかかわらず、原則として本件事故発生日である平成23年3月11日とする。但し、緊急時避難準備区域内に生活の本拠としての住居がある対象者(子ども、妊婦、要介護者、入院患者等)であって、6月20日以降に避難した者及び特定避難勧奨地点から避難した者については、当該者が実際に避難した日を始期とする。
) 終期については、基本的には対象者が対象区域内の住居に戻ることが可能となった日(避難指示の解除等から「相当期間」経過後)とすることが合理的である。 4
⑤ 上記①の)の損害額については、屋内退避区域の指定が解除されるまでの間、同区域において屋内退避をしていた者(緊急時避難準備区域から平成23年6月19日までに避難を開始した者及び計画的避難区域から避難した者を除く。)につき、一人10万円を目安とする。
7 営業損害
①従来、対象区域内で事業の全部又は一部を営んでいた者(特定避難勧奨地点が設定され避難した事業者を含む。以下同じ。)が、政府による避難等の指示等があったことにより、営業が不能になる等、同事業に支障が生じたため、現実に減収のあった営業、取引等については、その減収分が賠償すべき損害と認められる。
上記減収分は、原則として、本件事故がなければ得られたであろう収益から、本件事故により負担を免れた費用を控除した額(以下「逸失利益」という。)とする。
・「収益」には、商品やサービスの売上高のほか、事業の実施に伴って得られたであろう交付金等(例えば、農業における戸別所得補償交付金、医療事業における診療報酬等、私立学校における私学助成)がある場合は、これらも含まれる。また、「費用」には、商品やサービスの売上原価や販売費・一般管理費が含まれる。
②また、上記のように同事業に支障が生じたために負担した追加的費用(商品、営業資産の廃棄費用等)や、事業への支障を避けるため又は事業を変更したために生じた追加的費用(事業拠点の移転費用、営業資産の移動・保管費用等)も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
③更に、同指示等の解除後も、事業者において、同指示等によって事業に支障が生じたための減収があった場合には、その減収分も合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。また、同指示等の解除後に、事業の全部又は一部の再開のために生じた追加的費用(機械等設備の復旧費用、除染費用等)も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
④終期は、基本的には対象者が従来と同じ又は同等の営業活動を営むことが可能となった日とすることが合理的であるが、本件事故により生じた減収分がある期間を含め、どの時期までを賠償の対象とするかについては、現時点で全てを示すことは困難であるため、下記⑤及び⑥に掲げる部分以外については、改めて検討することとする。ただし、その検討に当たっては、一般的には事業拠点の移転や転業等の可能性があることから、終期には一定の限度があることや、早期に転業する等特別の努力を行った者が存在することに、留意する必要がある。
⑤倒産・廃業した場合は、営業資産の価値が喪失又は減少した部分(減価分)、一定期間の逸失利益及び倒産・廃業に伴う追加的費用を損害とする。営業資産の減価分の算定は、財物に関しては、10.の財物価値の例により、無形資産に関しては、有形資産と独立に取引される慣習があるものについては、その通常の取引価格とする。
⑥既に対象区域内の拠点を閉鎖し、事業拠点を移転又は転業した場合は、営業資産の減価分、事業拠点移転又は転業に至るまでの期間における逸失利益、事業拠点移転又は転業後の一定期間における従来収益との差額分及び②に掲げる移転に伴う追加的費用が賠償の対象となる。対象区域内の拠点を閉鎖せず、一時的に移転又は転業した場合は、移転又は転業に至るまでの期間における逸失利益、事業拠点移転又は転業後の一定期間における従来収益との差額分及び②に掲げる移転に伴う追加的費用等が賠償の対象となる。
8 就労不能等に伴う損害
①対象区域内に住居又は勤務先がある勤労者について、同区域内に係る避難等を余儀なくされたことに伴い、その就労が不能等となった場合には、かかる勤労者について、給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。
②就労不能等に伴う損害の終期については、基本的には対象者が従来と同じ又は同等の就労活動を営むことが可能となった日とすることが合理的であるが、本件事故により生じた減収分がある期間を含め、どの時期までを賠償の対象とするかについて、その具体的な時期等を現時点で見通すことは困難であるため、改めて検討することとする。ただし、その検討に当たっては、一般的には、就労不能等に対しては転職等により対応する可能性があると考えられることから、終期には一定の限度があることや、早期の転職や臨時の就労等特別の努力を行った者が存在することに留意する必要がある。
9 検査費用(物)
対象区域内にあった商品を含む財物が、①当該財物の性質等から、検査を実施して安全を確認することが必要かつ合理的であり、又は②取引先の要求等により検査の実施を余儀なくされたものと認められた場合には、被害者の負担した検査費用は必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
10 財物価値の喪失又は減少等
財物につき、現実に発生した以下のものについては、賠償すべき損害と認められる。なお、ここで言う「財物」は動産のみならず不動産をも含む。
① 政府の指示による避難等を余儀なくされたことに伴い、対象区域内に所有していた財物の管理が不能等となったため、当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及びこれに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用(当該財物の廃棄費用等)について、賠償すべき損害と認められる。
② ①のほか、当該財物が本件事故の発生時に対象区域内にあり、
) 財物の価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に曝露した場合
又は、
) )には該当しないものの、財物の種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合
には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及びこれに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用(当該財物の除染費用等)について賠償すべき損害と認められる。
・上記①及び②について、除染や修理に係る費用は、原則として当該財物の客観的価値の範囲内のものとするが、文化財、農地など代替性のない又は低い財物については、必ずしも交換価値の賠償が妥当な場合のみだとは考えられないため、当該価値を超えたとしても必要かつ合理的な範囲内で賠償すべき損害と認められ得る。
・賠償の基準となる財物の価値は、原則として、本件事故発生持点における財物の時価に相当する額とすべきであるが、時価の算出が困難である場合には、合理的な額の簿価を基準として算出することも認められる。
・また、売買契約、賃貸借契約等の不動産関連の契約に係る損害については、その契約成立の確実性及び契約等の理由の相当性から判断して、合理的な範囲で損害が認められる。
③ 対象区域内に所有又は管理する財物の管理が不能等となり、又は放射性物質に曝露することにより、その価値が喪失又は減少することを予防するため、所有者等が支出した費用は、必要かつ合理的な範囲内において賠償すべき損害と認められる。

B.対象区域内に滞在している者に係る損害
[損害項目]
1 検査費用(人)
本件事故の発生以降、対象区域内居住者のうち、避難等をしなかった者(以下、「対象区域内滞在者」という。)が、放射性物質への曝露の有無等を確認する目的で必要かつ合理的な範囲で検査を受けた場合には、これらの者が負担した検査費用及びその付随費用(検査のための交通費等)は、賠償すべき損害と認められる 。
2 避難費用
3 一時立入費用
4 帰宅費用
5 生命・身体的損害
6 精神的損害
7 営業損害
①対象区域内で避難等指示後も事業の全部又は一部を営んでいる者において、同指示等によって営業、取引等に支障が生じたための減収があった場合には、その減収分も合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。また、同指示後に、事業の全部又は一部を継続するために必要な追加的費用も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
②更に、同指示等の解除後も、事業者において、同指示等によって事業に支障が生じたための減収があった場合には、その減収分も合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。また、同指示等の解除後に、事業の全部又は一部の再開のために必要な追加的費用(機械等設備の復旧費用、除染費用等)も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
③営業損害の終期については、上記Aと同様。
8 就労不能等に伴う損害
①対象区域内に住居がある勤労者について、その就労が不能または著しく困難となった場合等には、かかる勤労者について、給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。
②就労不能等に伴う損害の終期については、改めて検討する。
9 検査費用(物)
対象区域内にあった商品を含む財物が、①当該財物の性質等から、検査を実施して安全を確認することが必要かつ合理的であり、又は②取引先の要求等により検査の実施を余儀なくされたものと認められた場合には、被害者の負担した検査費用は必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
10 財物価値の喪失又は減少等
財物につき、現実に発生した以下のものについては、賠償すべき損害と認められる。なお、ここで言う「財物」は動産のみならず不動産をも含む。
① 当該財物が本件事故の発生時に対象区域内にあり、
) 財物の価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に曝露した場合
又は、
) )には該当しないものの、財物の種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合
には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及びこれに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用(当該財物の除染費用等)について賠償すべき損害と認められる。
② 対象区域内に所有又は管理する財物が放射性物質に曝露することにより、その価値が喪失又は減少することを予防するため、所有者等が支出した費用は、必要かつ合理的な範囲内において賠償すべき損害と認められる。

第4 政府による航行危険区域設定等に係る損害について
[対象]
航行危険区域等、飛行禁止区域
[損害項目]
1 営業損害
① 航行危険区域等の設定により、)漁業者が、対象区域内での操業又は航行の断念を余儀なくされたため、現実に減収があった場合又は迂回のため費用が増加した場合は、その減収分及び費用の増加分、)内航海運業又は旅客船事業を営んでいる者等が、同区域での航行が不能となり迂回のため費用が増加した場合又は現実に減収があった場合は、その費用の増加分又は減収分が、いずれも必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
② 飛行禁止区域の設定により、航空運送事業を営んでいる者が、同区域を迂回して飛行したことによって費用が増加した場合には、当該費用の増加分が必要かつ合理的な範囲で損害と認められる。
2 就労不能等に伴う損害
航行危険区域等又は飛行禁止区域の設定により、同区域での操業が不能等となった漁業者若しくは内航海運業者又は航空運送事業者等の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、かかる勤労者について、給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。

第5 政府等による農林水産物の出荷制限指示等に係る損害について
[対象]
農林水産物(加工品を含む。以下同じ。)の出荷、作付けその他の生産及び流通に関する制限又は農林水産物に関する検査について、政府が本件事故に関し行う指示等(地方公共団体が本件事故に関し合理的理由に基づき行うもの及び生産者団体が政府又は地方公共団体の関与の下で本件事故に関し合理的理由に基づき行うものを含む。)に伴う損害を対象とする。
・当該指示等には、出荷制限指示、作付制限指示、放牧及び牧草等の給与制限指導等のほか、暫定規制値を超える放射性物質が検出された食品についての食品衛生法による出荷、使用等の禁止等を含む。

[損害項目]
1 営業損害
① 農林漁業者において、同指示等があったことに伴い、同指示等に係る行為の断念を余儀なくされる等、その事業に支障が生じたため、現実に減収のあった場合には、その減収分が賠償すべき損害と認められる。
② また、農林漁業者において、上記のように同事業に支障が生じたために負担した追加的費用(商品の回収費用、廃棄費用、汚染された生産資材の更新費用等)や、事業への支障を避けるため又は事業を変更したために生じた追加的費用(代替飼料の購入費用等)も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
③ 同指示等の対象品目を仕入れ又は加工した加工・流通業者において、同指示等に伴い、当該品目又はその加工品の販売の断念を余儀なくされる等、その事業に支障が生じたために現実に生じた減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用も賠償すべき損害と認められる。
④ 更に、同指示等の解除後も、農林漁業者又は③の加工・流通業者において、同指示等に伴い事業に支障が生じたために減収があった場合には、その減収分も合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。また、同指示等の解除後に、事業の全部又は一部の再開のために生じた追加的費用(農地や機械の再整備費、除染費用等)も、必要かつ合理的な範囲内で賠償すべき損害と認められる。
2 就労不能等に伴う損害
政府等による出荷制限指示等に伴い、同指示等の対象となった農林漁業者又は上記1③の加工・流通業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、かかる勤労者について、給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。
3 検査費用(物)
政府等による出荷制限指示等に基づき行われた検査に関し、農林漁業者又は農林水産物の加工・流通業者が負担を余儀なくされた費用は、賠償すべき損害と認められる。

第6 その他の政府指示等に係る損害について
[対象]
第3ないし第5に掲げられた政府指示等の他、事業活動に関する制限又は検査について、政府が本件事故に関し行う指示等(水道水の摂取制限指導、放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の取扱いに関する指導等)に伴う損害を対象とする。

[損害項目]
1 営業損害
① 事業者において、政府による制限指示等に伴い、当該指示等に係る行為の断念を余儀なくされる等、その事業に支障が生じたため、現実に減収が生じた場合には、その減収分が賠償すべき損害と認められる。
② また、上記のように同事業に支障が生じたために負担した追加的費用(商品の回収費用、保管費用、廃棄費用等)や、事業への支障を避けるため等に生じた追加的費用(代替水の提供費用、除染費用等)も必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
③ 更に、同指示等の解除後も、事業者において、同指示等に伴い事業に支障が生じたために減収があった場合には、その減収分も合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。また、同指示等の解除後に、事業の全部又は一部の再開のために必要な追加的費用も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
2 就労不能等に伴う損害
政府による制限指示等に伴い、当該指示等の対象となった事業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。
3 検査費用(物)
政府による制限指示等に基づき行われた検査に関し、事業者が負担を余儀なくされた費用は、賠償すべき損害と認められる。

第7 いわゆる風評被害について
1 一般的基準
① いわゆる風評被害については確立した定義はないものの、この指針で「風評被害」とは、報道等により広く知らされた事実によって、商品又はサービスに関する放射線物質による汚染の危険性を懸念し、消費者又は取引先が当該商品又はサービスの買い控え、取引停止等を行ったために生じた被害を意味するものとする。
②「風評被害」についても、本件事故と相当因果関係のあるものであれば賠償の対象とする。その一般的な基準としては、消費者又は取引先が、商品又はサービスについて、本件事故による放射性物質による汚染の危険性を懸念し、敬遠したくなる心理が、平均的・一般的な人を基準として合理性を有していると認められる場合とする。
③ 具体的にどのような「風評被害」が本件事故と相当因果関係のある損害と認められるかは、業種毎の特徴等を踏まえ、営業や品目の内容、地域、損害項目等により類型化した上で、次のように考えるものとする。
) 一定の範囲の類型については、本件事故以降に現実に生じた買い控え等による被害(④に相当する被害をいう。)は、原則として本件事故との相当因果関係が認められるものとする。
))以外の類型については、本件事故以降に現実に生じた買い控え等による被害を個別に検証し、②の一般的な基準に照らして、本件事故との相当因果関係を判断するものとする。
④ 損害項目としては、消費者又は取引先が商品又はサービスの買い控え、取引停止等を行ったために生じた次のものとする。
)営業損害
取引数量の減少又は取引価格の低下による減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用(商品の返品費用、廃棄費用等)
)就労不能等に伴う損害
)の営業損害により、事業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合の給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用
)検査費用(物)
取引先の要求等により実施を余儀なくされた検査の費用
2 農林漁業・食品産業の風評被害
3 光業の風評被害
4 造業その他の風評被害
5 輸出に係る風評被害
我が国の輸出品等に係る被害については、損害項目及び時期を考慮して一定の範囲に限定しつつ、国内取引よりは広く賠償対象と認める。

第8 いわゆる間接被害について
1 一般的基準
① この指針で「間接被害」とは、本件事故により第3ないし第7で賠償の対象と認められる損害(以下「第一次被害」という。)が生じたことにより、一次被害を受けた者(以下「第一次被害者」という。)以外の者(以下「間接被害者」という。)において第一次被害者と一定の関係にあったことにより生じた被害を意味するものとする。
② 「間接被害」については、間接被害者の事業等の性格上、第一次被害者との取引に代替性がない場合には、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。具体的な類型としては、例えば次のようなものが挙げられる。
) 事業の性質上、販売先が地域的に限られている事業者の被害であって、販売先である第一次被害者の避難、事業休止等に伴って必然的に生じたもの。
) 事業の性質上、調達先が地域的に限られている事業者の被害であって、調達先である第一次被害者の避難、事業休止等に伴って必然的に生じたもの。
) 原材料やサービスの性質上、調達先が限られている事業者の被害であって、調達先である一次被害者の避難、事業休止等に伴って必然的に生じたもの。
・ここに挙げた類型以外にも、間接被害者に生じた被害を個別に検証し、第一次被害者との取引に代替性がない場合には、本件事故との相当因果関係が認められる。例えば、第一次被害者との取引が法令により義務付けられている間接被害者において、第一次被害者との取引に伴って必然的に生じた被害についても、相当因果関係が認められる。なお、間接被害のうち、本来は第一次被害者又は加害者が負担すべき費用を代わって負担した場合の損害(いわゆる肩代わり損害)は、当然に賠償の対象となる。
2 損害項目
損害項目としては、次のものとする。
① 営業損害
第一次被害が生じたために間接被害者において生じた減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用
② 就労不能等に伴う損害
①の営業損害により、事業者である間接被害者の経営が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合の給与等の減収及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用

第9 放射線被曝による損害について
本件事故の復旧作業等に従事した原子力発電所作業員、自衛官、消防隊員、警察官又は住民その他の者が、本件事故に係る放射線被曝による急性又は晩発性の放射線障害により、治療を要する程度に傷害を負い、健康状態が悪化し、疾病あるいは死亡により生じた逸失利益、治療費、薬代、精神的損害等は、賠償すべき損害と認められる。

第10 その他
1 被害者への各種給付金等と損害賠償金との調整
本件事故により原子力損害を被った者が、同時に本件事故に起因して一定の利益を受けたと評価できる場合には、損害と当該利益との間に同質性が認められる限り、公平の見地から、その利益の額を損害額から控除すべきである。
・一般の不法行為法上、被害者が不法行為によって損害を被ると同時に、同一の原因によって利益を受けた場合には、損害と利益との間に同質性がある限り、公平の見地から、その利益の額を加害者が賠償すべき損害額から控除すること(損益相殺の法理)が認められている。そのため、本件事故により原子力損害を被った被害者についても、同時に本件事故に起因して一定の利益を得たと評価できる場合には,損害と当該利益との間に同質性が認められる限り、公平の見地から、その利益の額を損害額から控除すべきである。
・具体的にどのような利益が損害額から控除されるべきかについては、個々の利益毎に損害との同質性の有無を判断していくほかないが、少なくとも、現時点で明確に整理できるものについては例示をする。
2 地方公共団体の財産的損害
地方公共団体が所有する財物に関する損害及び地方公共団体が民間事業者と同様の立場で行う事業(水道事業、下水道事業、病院事業、地方公共団体の経営する企業の事業等)に関する損害については、本指針に示された事業者等に関する基準に照らして賠償すべき損害の範囲を判断することが適当である。


---------------------------------
関連記事
スポンサーサイト
2011-07-20 : ・論点 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

Pagetop
« next  ホーム  prev »

プロフィール

text2

Author:text2
原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

全記事のリスト表示

全ての記事を表示する

検索フォーム

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

QRコード

QR

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アクセスカウンター

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
541位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
246位
アクセスランキングを見る>>
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。