東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■立法過程 その3 答申(昭和34年12月)

【立法過程 その3 答申】
 以下は,原賠法成立前の昭和34年12月,原子力災害補償専門部会長我妻栄から,原子力委員会委員長中曽根康弘にあてられた,答申書である。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V04/N12/19591206V04N12.html


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原子力災害補償専門部会の答申
 原子力災害補償専門部会は昨年10月22日付で原子力委員会から原子力賠償責任、原子力責任保険、その他国家補償等の問題について審査を求められた結果、12月12日付で原子力委員会委員長に次のとおり答申した。
昭和34年12月12日  

原子力委員会委員長
中曽根康弘殿
原子力災害補償専門部会長    
我妻栄 

 本部会は、昭和33年10月22日付で審査を求められた原子力賠償責任に関する問題、原子力責任保険の問題その他国家補償等の問題について、18回にわたる審議を重ね、かつ数回の小委員会を開いて結論を得たので、次のとおり答申する。

 原子力事業は、いうまでもなく、学術上および産業上きわめて大きな利益をもたらすと同時に、万一事故を生じた場合には、その損害の及ぶところは測り知ることのできないものである。しかも、その運営に関しては、科学上未知の点が少なくないといわれている。したがって政府が諸般事情を考慮してわが国においてこれを育成しようとする政策を決定した以上、万全の措置を講じて損害の発生を防止するに努めるべきことはもちろんであるが、それと同時に万一事故を生じた場合には、原子力事業者に重い責任を負わせて被害者に十分な補償をえさせて、いやしくも泣き寝入りにさせることのないようにするとともに、原子力事業者の賠償責任が事業経営の上に過当な負担となりその発展を不可能にすることのないように、適当な措置を講ずることが必要である。
 上記のことは、諸外国において進められている立法作業においても例外なく認められている原理である。本専門部会は、これらの立法作業の内客とこれに関連する研究を詳細に検討し、あわせてわが国の事情を考慮し、上記の原理を次のような仕組によって実施することが適当と考えた。
 第1に、原子力事業者は、その事業の経営によって生じた損害については、いわゆる責に帰すべき事由の存在しない場合にも賠償責任を負うべきである。けだし、近代科学の所産たる不可避の危険を包蔵する事業を営もうとする者は、よって生ずる損害については故意過失の有無を問わず賠償責任を負うべし、とすることは、今日ではすでに確立された原則であり,交通事業等についてはすでに広く適用されていることだからである。
 第2に、原子力事業を営むにあたっては、一定金額までの供託をするかまたは責任保険契約を締結する等の損害賠償措置を具備することを条件とすべきである。このことは原子力事業者の損害賠償義務の履行を確保することを第1の狙いとするものであるが、責任保険の方法による場合には、万一の場合に生ずる巨額の賠償責任を毎年支払う保険料に転化することによって原子力事業の合理的経営を可能ならしめるものである。
 第3に、損害賠償措置によってカバーしえない損害を生じた場合には国家補償をなすべきである。損害賠償措置はそれによって確保される金額に限度があるだけでなく、現実の問題としては、種々の理由によって賠償義務の履行の確保として不十分な場合を生ずることを否定することができないが、かような場合には政府が補償を行ない、被害者の保護に欠けるところがないようにしなければならない。ただし、国家補償を行なうについては、原子力事業者からあらかじめ適当な補償料を徴収すべきのみならず、場合によっては補償 した全額を原子力事業者から求償することにして、原子力事業者の責任と政府の原子力事業の助成政策との 調和を図らなければならない
 なお、本部会は、損害賠償措置の実際上の中心となる責任保険については原子力保険プールの作成にかかる数次の保険約款を逐一検討し、できるだけ多額かつ完全な責任保険の実現を目指して努力を重ねたが、外国の保険会社に対する再保険引受の折衝の必要等の障害のため、まだ最終的に約款の確定をみるに至っていない。しかし、基本的な方向はすでに明らかになったと考えるので、その線に沿って今後も努力を続けるよう期待する。
 以下、損害賠償責任、損害賠償措置,国家補償、賠償処理委員会の順序で大綱を述べる。
 なお、この答申については、大蔵省主計局長石原周夫委員が3および4の項について、銀行局長石野信一委員が2項の(2)のうち「損害賠償措置として認められる責任保険契約の内容は、政令で定めることとする」の部分および同項の(3)のうち責任保険契約の締結の拒絶に関する適当な措置の部分について、それぞれ態度を保留したことを付記する。

1.原子力損害賠償責任
(1)原子力事故による原子力損害については原子力事業者が無過失責任を負うものとし、きわめて特別の場合にのみ免責されるものとする。ただし、この特別の場合は通常「不可抗力」と呼ばれるもののすべてに及ぶのではなく、そのうちでもいわば不可抗力性の特に強いものに限るべきであるから、たとえば「異常かつ巨大な自然的または社会的災害」というなどこの内容を適確に表現する努力のなされることが望ましい。
(2)無過失責任を負担する「原子力事業者」とは、原子炉の設置者のほか、加工、再処理、核燃料物質の使用等原子力損害を生ずる危険性のある事業を行なう者のうち政令で定めるものを指すものとする。
(3)無過失責任の対象となる「原子力損害」とは、核燃料物質等の放射性、爆発性その他の有害な特性によって第三者のこうむった損害を指し、一般災害による損害を含まないものとする
(4)「原子力事故」とは、偶発的事故のみでなく、広く原子力損害の発生原因となったすべての出来事や状態をいう。したがって、常時運転による放射能の緩慢な累積をも含む。
(5)「原子力事業者」に、被害者である第三者に対する責任を集中し、それ以外の者はこれらに対する責任を負わないものとする。ただし原子力事業者との間で燃料の供給、設備の請負等について直技間接の契約関係にある者の故意または重大な過失によって原子力事故が生じたとき、およびこれらの関係のない第三者の故意過失によって原子力事故が生じたときは、原子力事業者は、これらの者に対し求償することができるものとする。

2.損害賠償措置
(1)原子力事業者による損害賠償の確実な履行を確保するため、法律の定める一定の損害賠償措置を具備しなければ、原子力事業の操業を行なわしめないこととすべきである。
 この損害賠償措置は、民営の原子力損害賠償責任保険を中心とするが、供託その他これらに相当する措置によってこれに代えまたはこれを補うことを認めるのが妥当であろう。その額は現在の段階では1工場または1事業所あたり50億円とし、小規模のものについては、例外的にこの金額を低めるのが妥当である。しかし,将来は民営保険の引受能力等を考慮して上記の最低限度額を引き上げ、それによって国家補償のになうべき役割を民営責任保険を中心とする損害賠償措置に順次移していくことが望ましい。
 損害賠償措置の金額が損害の発生によって減少し、将来発生する事故による損害賠償措置として不十分になったと認められる場合には、政府は事業者に対しその補充を命ずることができるものとすること。
(2)損害賠償措置として認められる責任保険契約の内容は、政令で定めることとする。填補すべき危険の範囲については、コンプレヘソシブ・ライアビリティ方式が理想であることはいうまでもないところであって、そのような保険を実現するよう努力を続けるべきであるそれとともに、保険者による契約解除はその者の通知後一定期間経過後にのみ効力を生ずることとし、通知義務違反、保険料支払の慨怠等の事由による保険者の免責についても約款に適当な規定を加えるとともに、保険契約の締結・履行について適切な行政的監督を行ない、事故発生後に法の期待に反して保険金の支払を受けえないような事態が生ずるのを防止する必要がある。
(3)原子力事業は慎重な審査に基づいて許可され、かつその運営についても厳重な監督が行なわれるものであるから、保険者が正当な理由がないのに責任保険契約の締結を拒絶することのないように適当な措置を講ずることが望ましい。なお、保険料率は合理的な利潤を含めて適正な額とするよう行政的規制の方法を確保すべきである。

3.国 家 補 償
(1)原子力事業者の要求される損害賠償措置では損害賠償義務を履行しえない万一の場合には、原子力事業者に対して、国家補償をする必要がある
(2)国家補償は次の三つの場合に行なわれる。
 第1は、責任保険契約に関し告知義務違反等の瑕疵があるために法律上要求される損害賠償措置が不十分であった場合である。この場合には事業者みずから賠償すべきことは当然であるが、被害者の保護に欠けるところがあると認められる場合には、一応国家補償をした上で政府が事業者に求償することとする。
 第2は、責任保険契約で填補されない危険によって損害が生じたため保険金の支払を受けえない場合である。コンプレヘソシブ・ライアビリティ方式の採用によってかような場合を生じないように努力すべきこと上記のとおりであるが、現在の段階では、国家補償を行なって被害者の保護に万全を期するとともに工作物の設量、保存に瑕疵があったために事故が生じたと認められる場合にかぎり、政府が事業者に求償することができるものとすることが妥当であろう。
 第3は、損害賠償措置をこえる損害が生じたときにその超過額について国家補償を行なう場合である。この場合には、損害の発生について原子力事業者に故意または重大な過失があるときにのみ、政府は求償権を有するものとする。
(3)国家補償については、原子力事業者に政令で定める基準により補償料を納付せしめる。その額については、原子力事故とりわけ損害賠償措置の額をこえるごとき損害を生ぜしめるような大事故の生ずるおそれがきわめて少ないことを考慮した上で、政府は、原子力産業の発展に関するその政策的立場から妥当な基準を定めるべきである

4.原子力損害賠償処理委員会
 原子力損害が生じた場合には、行政委員会を設けてその調査損害賠償の支払計画、支払方法の樹立およびその実施ならびに損害賠償に関する紛争の処理を行なうこととする。そしてこの委員会の行なった裁決に対する不服については、高等裁判所に対する不服の訴のみを認める等特別の措置を講ずるべきである。
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上の答申書で重要ポイトンとしては

・立法趣旨 概ね 原賠法に反映
「 政府が諸般事情を考慮してわが国においてこれを育成しようとする政策を決定した以上、万全の措置を講じて損害の発生を防止するに努めるべきことはもちろんであるが、それと同時に万一事故を生じた場合には、原子力事業者に重い責任を負わせて被害者に十分な補償をえさせて、いやしくも泣き寝入りにさせることのないようにするとともに、原子力事業者の賠償責任が事業経営の上に過当な負担となりその発展を不可能にすることのないように、適当な措置を講ずることが必要である」

・原子力事業者の無過失責任については,危険責任の法理が前提とされている。
「第1に、原子力事業者は、その事業の経営によって生じた損害については、いわゆる責に帰すべき事由の存在しない場合にも賠償責任を負うべきである。けだし、近代科学の所産たる不可避の危険を包蔵する事業を営もうとする者は、よって生ずる損害については故意過失の有無を問わず賠償責任を負うべし、とすることは、今日ではすでに確立された原則であり,交通事業等についてはすでに広く適用されていることだからである。」

・原賠法の3条1項の損害責任に反映
「(1)原子力事故による原子力損害については原子力事業者が無過失責任を負うものとし、きわめて特別の場合にのみ免責されるものとする。ただし、この特別の場合は通常「不可抗力」と呼ばれるもののすべてに及ぶのではなく、そのうちでもいわば不可抗力性の特に強いものに限るべきであるから、たとえば「異常かつ巨大な自然的または社会的災害」というなどこの内容を適確に表現する努力のなされることが望ましい。」
→1項但書について「不可抗力性の特に強いものに限るべき」と意見

・原子力損害の意味範囲 原賠法2条2の意味・範囲 一般災害による損害を含まないとしており,「原子力損害」の外側の損害がありうることを前提としている。
「(3)無過失責任の対象となる「原子力損害」とは、核燃料物質等の放射性、爆発性その他の有害な特性によって第三者のこうむった損害を指し、一般災害による損害を含まないものとする。」

・責任集中の原則 原賠法4条 この答申書では,故意又は過失を前提に,原子力事業者から,他の取引業者への求償を認めている。←重要(現行法は5条で故意の場合のみ求償可)
「(5)「原子力事業者」に、被害者である第三者に対する責任を集中し、それ以外の者はこれらに対する責任を負わないものとする。ただし原子力事業者との間で燃料の供給、設備の請負等について直技間接の契約関係にある者の故意または重大な過失によって原子力事故が生じたとき、およびこれらの関係のない第三者の故意過失によって原子力事故が生じたときは、原子力事業者は、これらの者に対し求償することができるものとする。」

・なお,この答申にある以下のような,限定責任論については立法段階では採用されなかった。詳細はこちら
「原子力事業者の要求される損害賠償措置では損害賠償義務を履行しえない万一の場合には、原子力事業者に対して、国家補償をする必要がある」


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2011-04-07 : ・立法過程資料 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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