東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■2条「原子力損害」の意味・範囲 その27 間接被害者の固有損害と特別事情の予見可能性の問題

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その27 間接被害者の固有損害と特別事情の予見可能性の問題


http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-105.html
こちらで論じた問題の続き


特別事情の予見可能性についてはこちらでも触れた。
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-158.html
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-150.html


-----------------------------
民法
(損害賠償の範囲)
第四百十六条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
-----------------------------


〔相当因果関係説に立って、民法416条を類推適用する立場から、特別事情の予見可能性というものを考えてみると〕

 不法行為の因果関係について、相当因果関係説に立って、民法416条を類推適用する立場から、相当因果関係があるといえるには、原則として、当該行為から当該結果が生じることが、平均的な一般人を基準に、通常といえることが必要であるとする(通常損害)。また、通常損害以外の、特別の事情によって生じた損害であっても、その事情を予見し、又は、予見することができたときはで賠償責任を負うと考える(特別損害)。

 つまり

1 通常の事情→因果の流れの通常性→通常損害
2 特別の事情→因果の流れの通常性→特別損害

となる。
 
・まず、1と2ともに、その予見や予見可能性は、「損害」ではなく、損害発生に至る基礎「事情」についてのものである。

・1と2ともに、因果の流れの「通常性」は、平均的な一般人を基準に、社会通念によって決する。〔規範的判断であるが、「それが起きれば、あるいは、そういう事実があれば、普通はそうなるだろう」という程度のものであって、それほど幅が大きいとは思われない。〕

・1の通常の事情は、平均的な一般人なら当然予見可能な事情なので、特に行為者の具体的認識や予見可能性は問題とならない。平均人より劣っているために予見できなくても、〔責任能力の問題は別にして〕因果関係については関係がない。

・2の特別の事情についての予見可能性は、これを平均的な一般人を基準にすると、通常の事情と異ならないことになってしまって無意味なので、これは行為者を基準に判断されると思う。

・そして、「特別の事情」は、通常損害よりも拡大した損害、つまり特別損害の基礎となるものなので、これは損害拡大に関係する事情だと思われる。

・「特別の事情」を「予見し」は、行為者が、損害拡大につながる事情を予め知っていたことを意味し、規範的要素の判断ではなく、事実認定の問題である。これは厳密には、主観的要件の故意・過失とは関係がないが、「損害拡大につながる事情を予め知っていた」場合に該当するのは、故意不法行為の方が、過失不法行為のより多いとは言えるだろう。

・「特別の事情」を「予見することができたとき」とは、予見可能性を意味し、これについては、大雑把に以下の3つのスタンスがありうる。

A 予見可能性は、事実認定の問題である。過去のその時点で、行為者において、現実に予見することが可能であったか否かを判断する。価値判断は入らない。

B 予見可能性は、基本的には、過去のその時点で、行為者において、予見することができたか否かという事実認定の問題であるが、「予見可能性」の認定は、「知っていたか否か」という一個一義的な事実の認定とは異なり、幅があるものだから、そこに法政策的価値判断が入り込む余地があり、それでかまわないというスタンス。※予見可能性の幅については、「可能性」の幅以外に、「予見」の対象となる事実がどこまで抽象的であってよいかという点についても幅があろう。

C 予見可能性は、事実認定の問題はなく、端的に、行為時に、その行為者において、その特別の事情の予見が、法的に期待されていたといえるか否かという、規範的要素の認定場面である。〔ほとんど義務射程説〕


・つまり、不法行為に416条を類推適用すると

〔416条1項「通常生ずべき損害」〕
 当該行為から当該結果が生じることが、平均的な一般人を基準に、通常といえる限り、仮に行為者が、平均的な一般人より劣った認識能力しかなく、通常事情すら認識できなかったとしても〔責任能力の問題はあるとしても〕、因果関係のレベルでは免責されない。

〔416条2項「予見し」〕
 損害拡大につながる特別の事情を、行為者が予め知っていた場合には、予見の可能性は問題とならず、特別事情からの因果の流れが通常といえる限り、特別損害について相当因果関係が肯定される。

〔416条2項「予見することができたとき」〕
 行為時の諸事情から、損害拡大の基礎となった特別の事情について、その予見が、その行為者において、可能〔この認定は上のABCの各スタンス〕であった場合には、特別損害について相当因果関係が肯定される。

ということになる。

 判例は、どうも上のCのようなスタンスで判断はしていないような気がする。というのは、予見可能とか、予見可能性があったとかなかったとか表現は見るが、予見すべきであったとか、予見が期待されているなどという表現はほとんどなく、まして予見義務の有無の検討などされていないからである。
 たぶんBのようなスタンスで判断がなされているものと思われるが、その場合の価値判断の基準・指標・観点がさほど明確には判決文に示されないために、過失不法行為における特別事情の予見可能性の判断においては、わずかな利益衡量と「損害の公平な分担の理念」ということばが出てくるだけで、結論に至る論理的思考過程がいまいち判然とせず、結論が唐突な感じがすることがある。
 特別事情の予見可能性が、故意ではない不法行為の場面で問題となり、特に、その解決が容易ではないのは、それが普通は偶発的に起きる事件であって、個別具体的事情については加害者の予見や予見可能性というものを〔不可能ではないが〕観念しにくい上に、一般的抽象的事情の予見可能性だけで足るとすると、多数の経済主体が、相互に密接複雑、広汎に関係しあうという社会状況を前提に、一つの行為・損害の影響が他に容易に広がってしまうという事情があるため、賠償範囲が広がりすぎるおそれがあるからである。
 これは、結局、不法行為責任の基礎にある損害の公平な分担という抽象的な理念を、特別事情の予見可能性の認定の際に、ある程度、判断基準・指標・観点のようなものを示して、裁判における判断の予測可能性を担保しながら、どう具体的に実現していくかという問題なのかもしれない。

 従来の裁判所のとる因果関係認定の枠組み(相当因果関係説)を維持するとして、たぶん「特別事情の予見可能性」認定の基礎としては、その「特別の事情」の特異性の程度がまず問題となるはずで、普通はあり得ない極めて特異な事情があったために、損害が拡大しているのかどうかなど、確率論的な問題が、まず事実のレベルで存在する。そのような事情の特異性の程度を基礎に、さらに以下のような当事者の事情をも勘案して、予見可能性を決するというのが、ありうべき態度かもしれない。


・行為者側の事情
①危険性。行為者のもとの行為が、そもそも危険なものであるか、その大きさ
※危険の大きい行為をする者には、予見について高度の期待がもたれてしかるべき
②業務性。特殊な事情でも、プロなら知っていて当然といえることがある
※業務としてその行為をなす者には、予見について高度の期待がもたれてしかるべき
③既知性。過去に同様の事情に基づく損害発生があったか
※過去にもあったことならば、今回については予見を期待されてしかるべき、
④悪質性。故意、過失。その程度
⑤広汎性。もとの加害行為が広汎多数に損害を与えるものか。
※もとの行為で広汎に影響を及ぼせば、そこに特異な事情が存する確率は当然に上がる。
[⑥社会的有用性]。

・被害者側の事情
①損害の重大性。被侵害利益の重大性。生命>身体>財産
②損害予期の可能性、程度
※予期できるなら回避策をとることが期待できる。
③損害回避の可能性。損害回避策の有無、可能性
※回避が可能ならば、予め回避、低減策をこうずることが期待できる。
④損害回避の容易性。費用の多寡、直接被害者との契約や保険等によるカバーの余地など
※回避が容易ならば、そのようにしておくべきことを社会的に期待される場合がありうる。
 ただし、被害者側の結果回避に関する事情は、過失相殺や素因減額でも考慮しうるので、あるかないかの判断になってしまう「因果関係」の判断では、あまり重要視しなくていいかもしれない。



〔間接被害者への適用〕
・まず,間接被害者の受けた損害については,特別損害として特別事情の「予見可能性」の問題がでてくる。(ただし,直接被害者が被った被害によって,一般的に生じるような間接被害者の定型的損害は,通常損害?)
・「予見可能性」を事実認定の問題のみとして考えると、故意なき不法行為の場合、ほとんど認められない。
・「損害の公平な分担」を理由づけにするだけでは、説得力がなく、法的安定性がない。
・「経済的一体性」基準では、その「一体性」をどの場合に認めるかという問題にずれるだけで、あまり上手くない。この要件を厳密に考えると,実質上直接被害者=間接被害者の場合なので,間接被害者の問題一般についての解決にはならない。あるいは間接被害者の固有損害については,規定(民法711条)がある場合と,間接被害者を害する意図がある場合を除いては,原則として全面否定説に立つということだろうか。

 結局、間接被害者事案における特別事情の予見可能性については、直接被害者の被害から間接被害者の損害に拡大するという特殊事情の存在の蓋然性の程度を基礎に、前述のような見地からの価値判断を経て〔予測可能性を担保するためその思考経過を示しつつ〕、それを認定し、さらに損害額の算定に当たっては、結果回避に関する社会的期待や損害拡大に到る被害者側の特殊事情に関して、過失相殺や素因減額と同様の理屈で、妥当な結論を導くという手があるのではないか。


※間接被害者に関する高裁レベルの判断→因果関係の問題とするまでもなく原則として否定
・高松高裁平成6年10月25日判決・判タ871-257
 雑誌による宗教法人及びその主催者に対する誹謗中傷で,その会員が宗教上の人格権が傷つけられたとして,その雑誌社等に対して,不法行為に基づく損害賠償請求をした事件。
「控訴人らは間接被害者に該当するというべきところ,直接被害者の損害以外に,すべての間接被害者の損害(以下,「間接損害」という。)についてもその損害賠償を一般的に認めることになれば,その被害者及び損害が不当に著しく拡大され,加害者に過大かつ予測不可能な負担を課することとなって,損害の公平な分担という不法行為制度の趣旨に照らして妥当でないと考えられるので,間接被害者は,その間接損害につき,原則として不法行為に基づく損害賠償請求ができず,例外的に,民法711条に基づき慰謝料請求をする場合,その他,直接被害者との人的結びつきが深く,固有の連繋性により直接被害者と社会経済的に一体関係がある場合で,かつ,直接被害者への損害賠償のみでは償いきれないものがあって,間接被害を認めることが相互の公平に合致する場合に限ってその請求ができるものと解するのが相当である。」

※近時の下級審の判断は様々
下でいうと
・A1説
・A2説+C2説
・A2説+C3説など


〔間接被害者の固有損害についての絞り〕

A 民法709条の主観的適用範囲で絞る。
1説 709条は直接被害者への賠償のみ認めている(ドイツ法的)。例外として711条が規定されたにすぎない。経済的一体性がある場合は,直接被害者=間接被害者のようなものなので,例外的に賠償請求を認める。
2説 709条は,請求権者を直接被害者に限定していない(フランス法的)。711条は,立証責任の転換の意味あり。


1説だと,そもそも他の要件の検討にも行かず,ここで絞られる。
2説だと,ここでの絞りはないため,他の要件の検討へいく。


B 権利侵害・違法性の要件で絞る。


C 相当因果関係で絞る。
1説 予見可能性の問題とせず,経済的一体性ない場合は,単に相当因果関係なしとして絞る。
2説 経済的一体性ある場合など特段の事情ないかぎり,予見可能性を否定し,絞る。
3節 単に予見可能性を厳しめに判断し,予見可能性なしとして絞る。
4説 予見可能性を,規範的価値判断を経て認定する。


D 間接被害者への過失で絞る。
1説 過失不法行為の場合,間接被害者の損害に関しても,別途過失を要すると考えると,ここでの間接被害者に対する注意義務(予見義務,結果回避義務)が検討され,絞られる余地がある。
2説 直接被害者との間において,故意・過失があれば足りるとする説では,特に間接被害者に対する過失は問題とならず?


E AからDまですり抜けたものについて
 過失相殺・素因減額等での損害額調整の余地あり。

 


〔原賠法との関係〕
 間接被害者という概念に特に意味を見いださない立場では,直接被害者に対するのと同様,間接被害者に対しても,主観的要件としての故意・過失を含む不法行為成立の全要件を満たす必要がある。
 この点,加害者において,間接被害者に対しても故意・害意がある場合は,問題は少なかろう。
 しかし,過失不法行為の場合は,直接被害者の背後に位置するはずの間接被害者に対しては,かなり抽象的な義務(予見義務,結果回避義務)とその違反を観念しなければならなくなる。通常の過失不法行為の場合,間接被害者に対する不法行為の成否は,この主観的要件の段階で切られてもおかしくない。
 ただし,原賠法は,無過失責任なので,この主観的要件は特に問題とならない。

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2011-07-10 : ・二次的損害,間接被害者等 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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