東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■2条「原子力損害」の意味・範囲 その26 間接被害者,反射損害(肩代わり損害),固有損害など まとめ

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その26 間接被害者,反射損害(肩代わり損害),固有損害など まとめ

〔考え方〕
 原発事故で,被害者がまず被災し,被害者と一定の関係にある,周りの第三者(国,自治体,家族,勤務先,取引先,組合,基金,保険会社など)が支出を強いられたり、得られるべき利益を得られなかったりするなどして損害を被った場合

 この種の問題の基本的な考え方はこちらで述べたのと同じ。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-150.html

 つまり,この種の問題には,

(1)間接被害者の反射損害
 直接の被害者の被った1つの損害を,最終的に加害者にどのように負担させるかという調整の問題。直接被害者が負担したなら、その分の賠償を加害者に請求できるようなものを、他の者(間接被害者)が負担した場合。

(2)間接被害者の固有損害
 直接被害者が被った損害とは別に,直接被害者と一定の社会的関係にある主体自身に生じた固有の損害(支出を強いられたり,得られたはずの利益が得られなかったり)を,どこまで加害者に負担させるかという問題

 がある。

 そして(1)は結論は決まっているので(求償の法律構成など)論理的,技術的に解決可能と思われる。

 これに対して,(2)は,以前にも論じた波及的に広がる二次的な損害をどこまで,加害者に負わせるのが妥当かというもので(政策的価値判断の要素の強い法解釈の場面),難しい問題がある。


〔間接被害者という概念〕
 また,「間接被害者」という概念については,これに特に法律論上の意味を見いだす立場と,直接被害者の場合となんら差はないと考える立場がある。

 たとえば

加害者A
直接被害者B
間接被害者C

とする。

 この場合,「間接被害者」という概念に特別に意味を見いだす説(の中)では,不法行為の成立要件のうち故意・過失,権利侵害(違法性)は,AB間に有れば足り,AがCの損害まで賠償すべきか否かは,それが賠償範囲に含まれるか否かによって決せられるとする。〔この立場は,因果関係論における危険性関連説になじむということだろう。〕

 他方,Cへの賠償義務が生じるためには,AC間においても,不法行為の全ての成立要件(故意・過失,損害,因果関係,権利侵害(違法性))が必要であるとする立場では,特に「間接被害者」という概念に特別の意味を見いださないことになる。


〔反射損害の扱い〕
最終的に加害者に損害を負担させるための法律構成の問題

法律等に規定がある場合(労災保険法12条の4,保険法25条など)

・賠償者の代位 民法422条の類推
 ※最高裁昭和36年1月24日判決(判タ115号67頁)

・債権者代位の利用 民法423条

・弁済者の代位,民法499条,500条の類推
 ※札幌地裁昭和44年12月26日判決(判タ242号139号)
 ※東京地裁昭和58年7月25日判決(判タ517号207頁)
 
・事務管理の費用償還請求権 民法702条
 ※東京地裁昭和47年1月31日判決(判タ276号330頁)
 ※東京地裁昭和58年7月25日判決(判タ517号207頁)→類推
 ※神戸地裁尼崎支部昭和55年11月13日(交民13-6-1543)→直接被害者に対する事務管理に基づく費用償還請求権の保全のため直接被害者の加害者に対する損害賠償請求権に代位

・不当利得返還請求権 民法703条

・反射損害の場合も端的に相当因果関係のある間接被害者自身の損害として構成 民法709条


〔固有損害の扱い〕
 裁判所は,おそらく,いまのところ相当因果関係説に立って,AC間においても,個別に不法行為成立の要件を全て満たす必要があるとの立場であろう。そして,無過失責任をとる原賠法では,故意過失といった要件は問題とならず,損害と相当因果関係が問題とされる。特に,特別損害について特別事情の予見可能性を問題とすると、難しい問題がある。

予見可能性については、このあたりで触れた。
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-105.html
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-158.html
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-150.html
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-163.html

※なお,「直接被害者」「間接被害者」という言葉は,被害主体が異なる場合を問題とするものであって,不法行為の教科書に載っているような,主体を問わず一次的損害から波及する損害が問題となる通常の意味での「直接損害」「間接損害」とは関係がない。また,会社法429条「第三者」としての株主の損害のところで使われるも株主の被った「直接損害」「間接損害」の話とも関係がない。


〔分類〕
1 直接被害者
 a 精神的損害(各種慰謝料,民法710条)
 b 財産的損害
  ア 積極損害(治療費,交通費,検査費,除染費,風評被害での廃棄損,廃棄費用等)
  イ 消極損害(休業廃業による逸失利益,風評被害による減収分等)

2 間接被害者
(1)反射損害
 b 財産的損害←支出等を強いられる場面の問題なので財産的損害のみ
  ア 積極損害(自治体の支出した宿泊費,被災休業中の会社が従業員に支払った給料等)
  イ 消極損害(被災者のために宿泊施設の営業を止めて一時避難所として無償提供した等)
(2)固有損害
 a 精神的損害(直接被害者の親族の精神的苦痛,民法711条)
 b 財産的損害
  ア 積極損害(自治体等の生活保護費の支出増加分のうち被災者から返還を受けられない分など,支出を強いられて求償もできない場合)
  イ 消極損害(被災企業から部品等調達できなかったことによる損失,被災物件の購入者〔引き渡し前〕の転売利益)

 
※ 間接被害者という枠組みに特に意味がないとする立場では,間接被害者の固有損害は,加害者の不法行為によって間接被害者自身が,直接に被った損害といえるので,直接被害者と同様であるが,間接被害者の場合は,自分以外の他の誰か(直接被害者)が,被害者となることを前提にしているという点で,区別は可能と思われる。ただし、他者かどうか微妙な問題もある。


------------------------------


 今回の原発事故に関して,これまで検討した中で,広い意味での間接被害者の反射損害や固有損害の類が問題になっていると思われるものは,

(1)間接被害者の反射損害の類

・国や自治体が,原発事故被害者の救助等のために支出した費用(宿泊費等)
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-108.html

・被災者が,避難や転居等を余儀なくされたときに,被災者以外の家族がかわりにその費用を出した場合。こちらで論じたのと似た問題
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-108.html

・事実行為(原発事故)による債権侵害のうち、第三者が事実行為によって目的たる給付を侵害する場合。反射損害に似たもの
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-125.html

・原発事故によって増えた各種社会保障制度等の支出分
 各制度の趣旨等によるが、第三者加害の場合の調整規定があるのは,反射損害のようなもの
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-150.html
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-157.html

・農畜産物などの事業者の互助基金のようなもので損害か填補された場合
 こちらで論じたのと似た問題
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-108.html
 なお,保険のようなものの場合は,保険法25条で,保険代位


(2)間接被害者の固有損害の類

・原発事故による避難等で被災者が職を失い,生活保護をうけるようになった場合の,国や自治体の支出分。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-151.html
 なお、生活保護法63条で受給者から返還を受けられる部分は損害ではない。

・原発事故による避難等で被災者が職を失い,雇用保険法に基づく失業給付をうけるようになった場合の保険者の損害
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-156.html

・被災者,被災企業と取引している企業が,材料,部品等の仕入れができなくなり,製造がストップするなどして,損害を出した。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-105.html

・事実行為(原発事故)による債権侵害のうち、債務者の一般財産(責任財産)を減少させられた場合(被災者,被災企業が破産し,金融機関等が貸金の返還を受けられなくなった場合)。債権者代位や破産手続きでの配当による回収ができなかった部分。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-125.html
 
・不動産業者の不動産転売利益分の損害
 こちらで触れた
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-158.html


・原発事故被災者に対して義援金を出した場合
 損害とは言えない。
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-160.html



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2011-07-09 : ・二次的損害,間接被害者等 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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