東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■3条1項本文の賠償責任 その11 義捐金との関係

■3条1項本文の賠償責任 その11 義捐金との関係


 原発事故の被害者が受け取った義捐金(義援金)については,加害者東電は,損益相殺の主張ができるのか。

 普通は,義捐金というのは自然災害などで被災した人への見舞金として支出されるので,賠償請求の相手もおらず,損益相殺を主張してくる加害者もいないので,問題とならないが,今回は,原子力災害についての加害者が存在する事案なので,特に問題となる。

 まず,義援金が震災津波の被害者に対するものとして支給されている場合は,原発事故と同一の原因によって利益を受けた場合にはあたらないので,そもそも損益相殺は問題とならないだろう。

 そして,原発事故の被災者に対するものとして支給された場合〔震災津波では何も損害を被っていないが,避難指定地域などで避難生活を余儀なくされている人への義捐金の支給など〕には,原発事故と同一の原因によって利益を受けたとして,加害者東電側から,損益相殺の主張ができるのかが問題となろう。


 交通事故のような場合に、各種給付金との損益相殺の可否については、こちらで述べたとおり、その給付の趣旨・性質から判断しているのが裁判所の立場だと思われる。そして、基本的には,義捐金についても、その給付が,原発事故で被災者が被った損失填補の趣旨・性質を有するか否かで区別することになるのではないか。

参考 最高裁昭和43年10月3日判決
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=66440&hanreiKbn=02
被害者の遺族が受領した香典を損害額の算定にあたり控除することの要否
「被上告人BがDの葬式費用として原判示の支出をしたことは、原判決挙示の証拠に照らし肯認することができるし、右費用は、その額その他原審認定の諸般の事情に徴し、社会通念上不相当な支出とは解されない。そして、遺族の負担した葬式費用は、それが特に不相当なものでないかぎり、人の死亡事故によつて生じた必要的出費として、加害者側の賠償すべき損害と解するのが相当であり、人が早晩死亡すべきことをもつて、右賠償を免れる理由とすることはできない。また、会葬者等から贈られる香典は、損害を補填すべき性質を有するものではないから、これを賠償額から控除すべき理由はない。叙上の点に関する原審の判断には何らの違法もなく、論旨は採用するを得ない。」


 そして今回の場合、通常は,一人一人の義捐金の出捐者は,特に原発事故の被災者の損失の補填のためという趣旨でお金を出したということは考えにくい。せいぜい今回の大地震に起因する全ての被災者に対する慰謝激励のための見舞金の趣旨で出したのであろうから,それが特に原発事故の損失填補に充てられることを意図したものとは言いにくく,原発被害の損害填補の趣旨・性質を有するものとはいえず,損益相殺の対象とはならないと考えるのが妥当だと思われる。
 この場合,地震津波の被災者は義援金のみ,原発被害者はおそらく義援金と賠償金の両方を得られることになるが,後者は加害者のいる人災なので仕方がないとも考えられる。
〔もとの出捐者が原発事故の被害者分については義捐金を出す意図はなかった場合は,義捐金分配委員会のようなものは,もとの趣旨がある程度はっきりしている限り,その趣旨を汲むべきであろうが,そうでない場合は,分配者(分配委員会)の裁量ということになろう。仮に,分配委員会が,敢えて原発被害の損失填補のために分配したとすると,その求償を巡っては複雑な問題が生じるし、かといって,求償がないとなると東電が,その分の賠償を免れ,これでは義援金を出した人達は,東電を支援するためにお金を出した結果となってしまい不当なので,おそらく価値判断的にも裁判所は,損益相殺を認めることはなかろう。〕


※なお,第三者ではなく,加害者が被害者に見舞金を支払っていた場合については,判例は,金額が社会儀礼の範囲内なら損害填補の趣旨のものではなく,損益相殺対象とはならなず,それを超えた高額なものについては,超えた分は損益相殺の対象となるという立場だと思われる(大阪地判平5.2.22 交民26-2-233,神戸地判平5.3.10 交民26-2-329)。
〔社会儀礼の範囲内について考えてみると,たとえば被災者が,一世帯数十万円受けとることができたとしても,その額は高額ではあるが,義援金を出した側も多数にのぼり,普通は少額の出捐分が集積したものだろう。また,一人で一億円義援金を出した人がいたとしても,多数の被災者に分割支給される段階で少額なものになろう。したがって,大規模災害によって膨大な数にのぼる被災者に対する義援金のようなものが,社会儀礼の範囲を超えた高額なものになるようなことはほとんど無いのではないか。〕

※また,義捐金を出した人は,特に強制されることなく自らの意思で出したのであって,それが出捐者の損害になるということはない。

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〔義援金と生活保護との関係〕
 義援金と生活保護との関係については,このような通達がある。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-149.html
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社援保発0502第2号
平成23年5月2日
各 都道府県 指定都市 中核市 民生主管部(局)長 殿
厚生労働省社会・援護局保護課
東日本大震災による被災者の生活保護の取扱いについて(その3)
1 義援金等の生活保護制度上の取扱いについて
義援金等の生活保護制度上の収入認定の取扱いは、「生活保護法による保護の実施要領 について」(昭和36年4月1日厚生省発社第123号厚生事務次官通知)第8の3の (3)のオに従い、「当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額」を収入として認定しないこととし、その超える額を収入として認定すること。
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 要するに,義援金については,被保護世帯の自立更生のために当てられる額までは,収入認定されず,それを超える部分は収入認定される。収入認定された場合は,その分は支給額から差し引かれる。
 そして,具体的にどの部分までが,「自立更生のために当てられる額」といえるのかは,下記通達などを手がかりに,個別に検討するということになろう。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001bd6k-img/2r9852000001be5y.pdf


 


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2011-07-07 : ■3条1項本文の責任 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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