東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- : スポンサー広告 :
Pagetop

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その4 考え方

【2条「原子力損害」の意味・範囲 その4 考え方】

考え方再検討

-----------------------------------

条文

2条2項  この法律において「原子力損害」とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう。

3条1項  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。

-----------------------------------

A 無限定説
 「原子力損害」を,原子炉の運転等(2条1項)により発生した損害で,2条3項の「作用」と相当因果関係あるもの全てを含むと広くとらえる説(下級審判例)

B 限定説
 「原子力損害」を,2条2項の字義どおり,核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用により生じた損害とし,その範囲を限定していく考え(立法過程での関係者の考え,原子力事業者側の考え)
 B1 核燃料物質の放射線や毒性で生命身体財産が害された場合のみ(直接損害のみ)
 B2 直接損害以外にもその結果生じた逸失利益等の損害含む(直接損害+間接損害)


------------------------------------

判例
・平成16年9月27日・東京地裁判決・平14(ワ)第19606号・判タ1195号263頁 JCO臨界事故関係
 争点 原賠法2条2項,3条1項の「損害」に人身損害又は物に対する損害を伴わない損害(純粋経済損失→近隣土地の価格下落)が含まれるか否か。
「この点,原賠法2条2項,3条1項の「損害」とは,「原子炉の運転等」,「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用」と相当因果関係があるすぎり,すべての損害を含むと解すべきであって,条文上何らの限定が加えられていないことから,被告が主張するような人身損害又は物に対する損害を伴わない損害(純粋経済損失)を除外する根拠はないというべきである。」

・平成18年4月19日・東京地裁平14(ワ)6644号・判時1960号64頁 JCO臨界事故関係
 争点 風評被害が「原子力損害」たり得るか。
「同法が,賠償されるべき損害の範囲について何ら限定を付していないことからすれば,当該事故と相当因果関係が認められる損害である限り,これを「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害」(同法3条1項)と認めて妨げないというべきであり,いわゆる風評被害について,これと別異に解すべき根拠はない。」

・平成20年2月27日・水戸地裁平14(ワ)第513号・判タ1285号201頁 JCO臨界事故関係
「これは,同法3条1項本文にいう「原子炉の運転等の際」に発生したものである。」
「同法3条1項にいう「原子力損害」とは,「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害」をいう(同法2条2項本文)ところ,原賠法その他の法令上,原賠法3条1項によって賠償されるべき損害の範囲に関する規定は何ら存在しないから,民法上の債務不履行ないし不法行為による損害賠償責任に関する一般原則に従って,「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用」と相当因果関係がある損害の全てが原賠法3条1項により賠償されることになるものと解するのが相当である。」


----------------------------------


 判例の思考の手順は次のようなものではなかろうか。

・訴訟当事者が当事者が「原子力事業者」(2条3項)にあたると認定。



・次に,3条1項にあるとおり「当該原子炉の運転等」により損害を与えたか否か,損害発生の起点が「原子炉の運転等」(2条1項で定義、原子炉の運転,加工,再処理,核燃料物質の使用,核燃料物質等の廃棄))に当たるか否か検討(→危険業務の類型判断? 原発事故は「原子炉の運転」?)



・損害結果の有無判定
 損害「結果」については,その種類・類型等は問わない(なぜなら損害の類型について,特に範囲を限定する規定が存在しないから)。



・「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用」(2条2項)により生じたといえるか否か判断
 相当因果関係の判断(損害結果の類型は問わないので,相当因果関係ありと判断されるものは「原子力損害」に該当すると判断。また2条2項の「作用」は,被害者保護の観点から広く解釈?)





ただし,原子力事業者の側は理解はまた別のようである。
以下


---------------------------------

社団法人日本原子力産業協会
http://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/genbai/genbaihou_series03.html
Q2. (原子力損害の形態)
「原子力損害」とはどんな損害ですか?

A2.
 原子力損害は、原子核分裂の際の放射線や熱等により生じた損害、核燃料物質等の放射線や毒性により生じた損害です。事故と損害の間に相当因果関係がある損害は全て含まれ、放射線による身体的損害、物的損害などの直接損害だけでなく、逸失利益等の間接損害も原子力損害の対象となります。
 原子力損害の対象として認められる例を挙げると次のようなものがあります。但し、相当因果関係の有無は個別に判断されるため、損害形態によっては、地域的、時間的な制限が為される場合があります。
① 原子力施設で臨界が発生し、これによる放射線によって第三者が身体に傷害を負った場合の損害。
② 原子力施設所から放射性物質が大量に放出されて、これにより第三者が身体に傷害を負ったり、第三者の財物が汚染されたりした場合の損害。
③ 原子力施設で使用、貯蔵されているウラン溶液やプルトニウム溶液を第三者が摂取し、中毒症状により身体に傷害を負った場合の損害。
④ 原子力施設で事故が発生し、行政による緊急事態措置により、避難した場合の避難費用、および避難等に伴い勤務や事業活動を中止した場合の休業損害や営業損害。
⑤ 原子力施設で事故が発生し、放出された放射性物質による汚染が発生した場合、人体や財物の汚染を検査するための検査費用。
⑥ 原子力施設で事故が発生し、放出された核燃料物質による汚染が発生した場合、汚染されていない農水産物等に関わる生産、営業に生じる風評被害による損害。

 他方で、こうした原子力損害の考えから、認められない例を挙げるとは次のようなものがあります。
① 原子力施設で事故が発生し、周囲への放射性物質等の放出、漏洩が無かったにもかかわらず、所謂、風評被害により農水産物に発生した損害。(核燃料物質の放射線の作用や毒性的作用によらないため)
② 原子力施設での放射性同位元素(核燃料物質を含まない)の放射線の作用により発生した身体障害。(RIは原賠法の対象外のため)
③ 原子力施設の運転中に発生した蒸気(非放射能)配管の破断により発生した身体障害。(核燃料物質の放射線の作用や毒性的作用によらないため)

 なお、JCO事故時には、身体傷害、財物汚損、避難費用、検査費用(人、物)、休業損害、営業損害等が「原子力損害」の対象として取扱われました。
------------------------------



(検討)
 3条の賠償責任は、危険責任の法理に基づくものであるから、「原子力損害」も原子炉や核燃料物質の持つ特異な危険性に由来する損害であり、おそらくこの考え方は、立法段階からの関係者の共通に認識であったはずで、限定説では、発生結果や発生経緯の類型を限定して、「原子力損害」を狭く理解しようとするものだろう。
 無限定説では、2条2項の「作用」の解釈なり、相当因果関係の認定課程で、その危険性を考慮することになるのではないだろうか。風評被害も、もともと放射性物質の特異な危険性が前提のもので、これが火力発電所の事故ならば、そもそも発生しないものであろう。そういう意味で、風評被害も核燃料物質の危険性に基礎をおくものと理解することはできよう。
 では、今回の原発事故後の停電による損害は「原子力損害」であろうか。地震・津波が作用し他の発電所も停止しているので、福島第一原発事故のみが停電の原因ではなく、より難しい問題があるが、仮に原発事故のみで停電になったとした場合は、それによる損害は「原子力損害」といえるのだろうか。
 

関連記事
スポンサーサイト
2011-04-07 : ■2条「原子力損害」 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

Pagetop
« next  ホーム  prev »

プロフィール

text2

Author:text2
原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

全記事のリスト表示

全ての記事を表示する

検索フォーム

カレンダー

07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

QRコード

QR

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アクセスカウンター

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
615位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
276位
アクセスランキングを見る>>
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。