東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■3条1項本文の賠償責任 その9 雇用保険法に基づく給付との関係

■3条1項本文の賠償責任 その9 雇用保険法に基づく給付との関係


 下記通達にあるとおり,震災や津波ではなく,福島原発事故により,避難等指定地域にあたり、休業や就労不能に陥った場合にも,雇用保険法により,失業給付や雇用調整助成金等を受けられる。ただし、雇用調整助成金については、経済上の理由による事業活動縮小が条件。

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http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000016n92-img/2r98520000016s6m.pdf
職保発0328第1号
平成23年3月28日
都道府県労働局職業安定部長 殿
厚生労働省職業安定局 雇用保険課長

 福島原子力発電所の影響を踏まえた「激甚災害法の雇用保険の特例措置」の取扱いについて

「激甚災害法の雇用保険の特例措置」について、福島原子力発電所の影響により、避難指示地域及び屋内退避指示地域にある事業所が事業を休業するに至り、その労働者が、就労することができず、賃金を受け取ることができない場合には、この特例措置の対象となるものであること。
このため、各都道府県労働局においては、福島原子力発電所の避難指示地域及び屋内退避指示地域の事業主及び被災者等に対して、この特例措置に関する周知や相談等をはじめとして適切な支援を実施していただくよう、よろしくお願いする。
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http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001a4gt-img/2r9852000001a8bq.pdf
職開発0422第1号
職保発0422第1号
平成23年4月22日
都道府県労働局職業安定部長 殿
厚生労働省職業安定局
雇 用 開 発 課 長
雇 用 保 険 課 長

福島原子力発電所の影響を踏まえた「雇用調整助成金」及び「激甚災害法の雇用保険の特例措置」の取扱いについて

 雇用調整助成金については、福島原子力発電所に係る「避難指示地域」(現在の「警戒区域」)及び「屋内退避指示地域」に所在する事業所が当該指示を理由として休業等を実施した場合については、経済上の理由に当たらないことから、雇用調整助成金の助成対象とはならないところである。
 また、「激甚災害法の雇用保険の特例措置」に関して、福島原子力発電所に係る「避難指示地域」及び「屋内退避指示地域」についての取扱いについては、平成23年3月28日付け職保発0328第1号『福島原子力発電所の影響を踏まえた「激甚災害法の雇用保険の特例措置」の取扱いについて』により通知したところである。
 今般、4月22日(金)より、福島原子力発電所について新たに「計画的避難区域」及び「緊急時避難準備区域」が設定されたことに伴い、下記のとおり取り扱うこととするので、遺漏のないようよろしくお願いする。



第1 雇用調整助成金について
1.「計画的避難区域」について
 「計画的避難区域」とは、概ね1ヶ月を目処に計画的に避難することが求められる区域であることから、当該区域に所在する事業所については、雇用調整助成金の助成対象とはならない
 なお、計画的な避難を実施するまでの間事業活動を継続し、その間に事業活動が縮小した場合であっても、1ヶ月後を目途に避難を求められ事業を行うことができなくなることが明確であることを踏まえ、「計画的避難区域」の指定を受けた以後に行われた休業等については、雇用調整助成金の助成対象とはならない。
 ただし、計画的避難地域に指定される前に雇用調整助成金の利用を開始した事業所については、引き続き利用することができることに留意すること。
2.「緊急時避難準備区域」について
 「緊急時避難準備区域」とは、常に緊急時の屋内退避や避難が可能な準備をしておくことが必要とされる区域であり、当該区域に所在する事業所であっても事業活動を継続することができることから、当該地域の指定を受けた後に、経済上の理由により事業活動が縮小し休業等を実施した場合等、雇用調整助成金の支給要件を満たす事業所については、雇用調整助成金の助成対象となる
 ただし、「緊急時避難準備区域」においては、子供、妊婦、要介護者、入院患者は立ち入らないことが求められる区域とされていることから、こうした者を主な利用客とする事業所等(学習塾、病院等)については、「緊急時避難準備区域」に指定されたことにより事業活動が縮小されたと見なすべきであり、経済上の理由に当たらないことから、雇用調整助成金の助成対象とはならない
3.上記以外の地域について
 以前に「屋内退避指示地域」であって、4月22日(金)に上記1、2のいずれの区域にも指定されなかった地域に所在する事業所については、雇用調整助成金の対象となるが、屋内退避指示が解除された以後に経済上の理由により事業活動が縮小した場合に限られることに留意すること。
 このため、平成23年3月17日付け職発第0317第2号「東北地方太平洋沖地震等の発生に伴う雇用調整助成金の特例について」の第2の6については、計画届を事前に届け出たものと取り扱ったとしても、屋内退避指示が解除されるまでの間の事業活動の縮小については経済上の理由と認められないことに留意すること。

第2 雇用保険の特例措置について
1. 「計画的避難区域」及び「緊急時避難準備区域」とされた地域にある事業所が事業を休業するに至り、その労働者が、就労することができず、賃金を受け取ることができない場合には、雇用保険の特例措置の対象となること。
2. これまで「避難指示地域」及び「屋内退避指示地域」ではなかった地域で、「計画的避難区域」及び「緊急時避難準備区域」とされた地域については、本日(4月22日(金))以後の休業について、雇用保険の特例措置の対象となること。
3. これまで「屋内退避指示地域」とされていた地域で、「計画的避難区域」または「緊急時避難準備区域」とされなかった地域についても、当分の間の経過措置として、この地域にある事業所が事業を休業するに至り、その労働者が、就労することができず、賃金を受け取ることができない場合には、雇用保険の特例措置の対象となること。

第3 その他
 上記の取扱いについては、別紙も参照しつつ、雇用調整助成金と雇用保険の特例措置を必ずセットにして周知や説明を行うこと。

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 雇用保険法に基づく給付の財源は,今のところ13.75%は国庫負担があるが,その余は事業主と労働者の負担によるものである。


雇用保険の目的は,以下のとおり。
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雇用保険法
第1条 雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。
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 雇用保険は,このように多様な目的を有するが,失業給付などは,その支給された金員は,通常は,生活の安定のために生活費として費消されるから,実質的には,原発事故による休業失職等で得られなかった収入(逸失利益)の填補と同様の効果をもつことになる。


 しかし,雇用保険法は,労災保険法(労働者災害補償保険法)とは異なり,以下のような第三者加害の場合の調整規定が存在しない。
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労働者災害補償保険法
第12条の4 政府は、保険給付の原因である事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、保険給付を受けた者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
 2 前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる。
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 また,雇用保険法には,生活保護法のような受給者からの返還に関する規定も存在しない。
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生活保護法
(費用返還義務)
第六十三条  被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還しなければならない。
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 このため,

・加害者東電から見れば,賠償請求に対して損益相殺できないか,
・支給する保険者側からみると東電に求償請求できないか,
・被害者からすれば,失業給付を受けたもの以外に,東電から休職失職を強いられたことによる減収分の損害(逸失利益)について満額の賠償を受けることができるのか

が問題となる。

 この種の問題についての基本的な考え方については,こちらで述べた。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-150.html

 結局,給付が直接の被害者の損害填補の目的を有しているか,また,加害第三者との関係での調整規定が存在するかなどを考慮して,①直接の被害者の被った1つの損害を,最終的に加害者にどのように負担させるかという調整の問題なのか,②直接の被害者が被った損害とは別に,直接の被害者と一定の社会的関係にある主体自身に生じた固有の損害を,どこまで加害者に負担させるかという問題かを区別することになろう。

 この点,交通事故の事案で,雇用保険による給付分を,損益相殺で考慮してよいかが争われた裁判では,損益相殺は許されないとする下級審判例がいくつかある(神戸地判昭和45.11.18,交民3-6-1788,東京地判昭和47.8.28,判タ285-179,福井地判昭和48.12.24,交民6-6-1937)。

 東京地裁昭和47年8月28日判決(判タ285-179)
「思うに、失業保険が、事実上、失業による被保険者の損害を軽減する作用を有することは、否定しえないところであるが、法律上は、失業した被保険者の生活の安定を図る(失業保険法1条参照)会社保障制度の一種であり、その支給される保険金の日額も、具体的な損害の有無、程度のいかんを問わず、当該被保険者の賃金日額の60パーセントを基準とし、しかも、その最高額が1,400円(昭和45年8月1日以降は改正により1,800円)におさえられている(同法17条参照)ことからみて、それは失業による被保険者の損害の補填を目的とするものではないというべく、また、技能習得手当も、失業保険制度の一環として、失業保険金の受給資格者が公共職業安定所の指示した公共職業訓練を受ける場合に支給される(同法25条参照)ものであって、失業保険金と全く同一趣旨の給付金である。それ故、被告らの右抗弁は、失業保険金等の給付原因が本件事故と相当因果関係に立つかどうかの点を審究するまでもなく、採用に由ないものというほかはない。」


 いまのところ下級審の判例しかないが,概ね,判例は,失業給付が損害填補の趣旨のものではないこと,雇用保険法(旧失業保険法)に第三者加害での調整規定が存在しなこと,その財源が国と労使との負担によるものであること,などから損益相殺の対象にはならないとしている。

 したがって,東電が,被害者の受け取った失業給付をもって,損益相殺の主張をしても認められないこととなろう。そして被害者は,失業給付分を受け,さらに,失職休職による減収分の逸失利益全部の賠償を受けることが可能となろう。


 このため雇用保険の保険者(政府)による失業保険の支給分について,東電への求償(被害者の損害賠償請求権の代位取得)という問題はなく,あるとすれば,保険者自身の固有の損害ということになる。


 これを保険者の固有の損害として,東電に請求しうるかは,生活保護費増大での自治体の損害と似た問題であって,原発事故と相当因果関係のある損害といえるのか,予見可能性の有無等が問題となるのかもしれない。


 もっとも,生活保護は,何かの掛け金を支払った対価としての性格を有しないし,保険のように入る入らないという問題はない。これに対して,雇用保険は入っていない事業者もあり得るし,被保険者の要件を満たない労働者もいる。そして,保険者側の固有の損害についても賠償義務ありとすると,たまたま労働者が雇用保険の被保険者であったら,加害者は労働者と保険者に二重に賠償することになり,雇用保険の被保険者に該当しない場合は,労働者に対する逸失利益の賠償のみで足りるということになる。この結論が妥当でないという判断もあろう。〔相当因果関係が無い?。だたし、予見可能性の問題とすると、こちらで論じたのと同じで、何万人もの労働者から同時に仕事を奪えば、このくらいのことは起きるだろうことは当然に予見できてしまうのをどうするか?〕



 なお、生活保護も雇用保険も法律があって、前者は加入を前提としない義務だし、後者も一定の要件を満たせば使用者に加入義務があって、保険者側の選択権もない。これに対して民間の損害保険は、入る方も保険会社側も自由に契約するという違いがある。このため保険者が民間の保険会社であって,損失填補の意味のない上乗せ分の保険であった場合などは,以下の判例のように損益相殺の対象とはならないが(そもそも原発事故については通常は約款で免責となろうが、)、その部分を保険会社独自の損害として加害者に賠償を強いるのは過酷であって〔予見可能性が無いとして?〕,加害行為との相当因果関係は,当然否定されるであろう。

〔参考〕最高裁昭和55年5月1日判決,判時971-102
 生命保険契約に附加された特約による給付金と商法六六二条の適用の有無について
「生命保険契約に付加された特約に基づいて被保険者である受傷者に支払われる傷害給付金又は入院給付金は、既に払い込んだ保険料の対価としての性質を有し、たまたまその負傷について第三者が受傷者に対し不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償義務を負う場合においても、右損害賠償額の算定に際し、いわゆる損益相殺として控除されるべき利益にはあたらないと解するのか相当であり(最高裁昭和四九年(オ)第五三一号同五〇年一月三一日第三小法廷判決・民集二九巻一号六八頁参照)、また、右各給付金については、商法六六二条所定の保険者の代位の制度の適用はないと解するのが相当であるから、その支払をした保険者は、被保険者が第三者に対して有する損害賠償請求権を取得するものではなく、したがつて、被保険者たる受傷者は保険者から支払を受けた限度で第三者に対する損害賠償請求権を失うものでもないというべきである。」
 
 なおこの判例は,生命保険の付加特約に基づく給付金について,保険代位(旧商法662,現保険法25条)を否定し,また加害者からの損益相殺も否定しているが,それを支払った保険会社固有の損害については特に論じていない。

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2011-07-04 : ■3条1項本文の責任 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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