東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■4条 責任集中の原則 その13 公務員個人の責任

■4条 責任集中の原則 その13 公務員個人の責任

 今回の原発事故について,公務員個人で,なんらかの責任がありそうなのは,現在までの政府関係者,議員,原子力安全保安院などの職員ら公務員,原子力安全委員会のような特別職国家公務員等であろうが,これらの者が,個人として,今回発生した原子力損害について,何らかの責任を負わないのだろうか。

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国家賠償法
第1条
 1 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
 2 前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。
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1 被害者から公務員個人への損害賠償請求
 まず,国賠法1条1項では,公務員が,その職務を行うについて,故意又は過失あるとき,被害者は,国や公共団体に損害賠償請求ができるとあって,公務員個人の責任については明文ははなく,解釈に委ねられる。

 最高裁昭和30年4月19日判決では,「国または公共団体が賠償の責に任ずるのであって、公務員が行政機関としての地位において賠償の責任を負うものではなく、また公務員個人もその責任を負うものではない」とする。
 したがって,外形上公権力の行使にあたる公務員の行為については、原則として、公務員個人には原則として責任追及できない。
 また行為時において、公務員であればよく、結果発生時において、公務員でなかったとしても、公務員個人の責任は問われないことになろう(平成22年8月26日東京地裁判決)。

 ただし,公務員の故意での職権濫用行為による不法行為の場合は,公務員個人に対する損害賠償請求の余地があるかもしれない。
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・大阪高裁昭和37年5月17日判決「<要旨>若し公務員が職務の執行に藉口して、故ら越権行為をなし、或は私心を満足するための報復行為をなして、之が為他人に損害を及ぼしたものとすればそれは職権の濫用であつて本来は職務の執行ではなく、正しく公務員個人の不法行為と見るべきものであるが、それがいやしくも客観的に職務執行の外形をそなえる行為である限り、国民の権益の擁護の立場から国家賠償法に基き国家において損害賠償責任を負うべきものとしたのが前掲第二の判例であつて、之は当該公務員個人の責任の有無については何等触れるところはない。而してこの点は同法第一条第一、二項の明文上においても解決されていないので、専ら解釈に委ねられる問題である。もとより単に被害者の受けた損害の救済という面のみを考えると、国又は公共団体において損害賠償責任を負担しさえすれば十分であると謂えないこともないけれども、職務の執行を装うという方法を選んで公務員が不法行為を行つたものとすれば、之に対し直接被害者より損害賠償責任を問う道を遮断することは、民法の道義性の見地よりしてその当否は極めて疑わしいものがある。昭和七年五月二七日の大審院判例は法人の機関として不法行為をなした以上、その者は個人としても損害賠償責任を負うべきものとしたが、公務員についてのみ之を別個に解する余地は全くないと謂わなければならない。かように解しなければ、右第二の判例の事案のごとき、巡査が職務執行をよそおい、強盗殺人を犯したような場合にも、国家賠償法の救済があるとの一事により被害者の遺族から右犯人に対する直接の損害賠償請求を許さない結論を生じ、その不当なること明白である。前掲第一の判例は、単に旧農地調整法施行令第二八条の四第一項に基き地方長官が職務行為としてなした市町村農地委員会解散命令に付公務員が個人として名誉毀損による損害賠償責任を負うものではないことを判示したものであつて、公務員の私心に基く権限濫用行為に関する判例ではないから、本件に適切ではない。 以上の理由により当裁判所は少くとも公務員の故意に基く職権濫用行為については、当該公務員は個人としても損害賠償責任を負担すべきものと解する」
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 したがって,原発事故の被害者らは,先の公務員らに対しては,原則として,直接の損害賠償請求はできず,ただ,少なくとも当該公務員に故意の職権濫用行為があった場合には,民法709条で公務員個人に対する損害賠償請求の余地があるということになろう。

 今回の原発事故ではちょっと考えにくいが,仮に公務員に故意があった場合,国賠法との関係ではいけるとして,さらに原賠法4条と関係が問題になる。
 この点については、4条の人的適用範囲について、法の趣旨から4条は公務員には適用ないとするか、事後的関与になった場合は4条の適用がないとするかして、公務員に4条による免責がないとされた場合にようやく、故意ある公務員個人に対して、民法709条での損害賠償請求ができるということになる。この場合の原子力事業者と当該公務員の共同不法行為関係については、こちらで触れたのと同様になろう。



2 国から公務員への求償請求
 国賠法1条2項では,国からの求償権が定められており,当該公務員に故意又は重過失があった場合は,国からの求償請求を受けることになる。

 ただし,これは,国が原発事故について賠償責任(国賠法1条)を負って,その支払をすることが前提であって,そもそも原賠法4条で,国は,「原子力事業者以外の者」として責任を免れるとするなら,この求償権の問題は生じないはずである。
・4条の人的適用範囲〔国に適用されるか
・4条の時的適用範囲〔事故後関与でも適用されるか


 結局,今回の原発事故について関係した公務員らに,仮に,事故を起こしてやろうという「故意」があるか,又は,「重過失」があった場合で,かつ,国については原賠法4条の免責はないとするか〔人的適用範囲〕,原発事故発生後の公務員の行為については,原賠法4条による国の免責は余地はないとするかして〔時的適用範囲〕,国の被害者への直接の賠償責任〔原賠法16条での「援助」ではなく,国賠法1条の責任〕が認められるような場合に限って,当該公務員は,自らの職務行為の落ち度について,国からの求償請求という形で責任を負うことになる。



3 東電から公務員への請求
 おそらく,1で述べたのと同じ理由で,東電から,当該公務員への直接の損害賠償請求は、原則としてできない。
 当該公務員に「故意」があった場合は、東電は、〔原発施設損壊等で東電自身が被った損害について〕当該公務員に民法709条で損害賠償請求する余地があるが、1で述べたのと同様、この場合も原賠法4条との関係では公務員は免責されないという解釈が認められた場合に限られる。

 なお、当該公務員に「故意」があった場合は,原賠法5条1項と,国賠法1条2項の規定の適用関係が問題となろうが,おそらく,この場合には,東電は,まず〔被害者に支払った賠償金分について〕原賠法5条1項の求償を,国賠法1条1項に基づいて国に対して請求し,国がそれを支払った場合に,国は国賠法1条2項で,当該公務員に求償請求する形になるのではないか。


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2011-06-17 : ・個人その他の責任 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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