東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■4条 責任集中の原則 その12 時的適用範囲と後続侵害

■4条 責任集中の原則 その12 時的適用範囲と後続侵害

 後続侵害については,一般に,ある人が交通事故で被害者に怪我をさせ,病因に入院させたが,その際の治療で医師が過失により,被害者の病状を悪化させたり,死亡させたよう場合に,交通事故の加害者が,その拡大結果にまで責任を負うべきかという問題として論じられる。これは講座事例ではなくて,現実にいくつも裁判例がある。

 そして,今回の原発事故については,東電が原発事故を起こして,放射性物質をまき散らし,被害者に損害を与えた上に,第三者(国,マスコミ,専門家,流通業者等)が故意又は過失によって,その損害を拡大させたような場合に,東電が拡大損害部分についてまで,賠償責任を負うべきかという問題となる。

 さらに原賠法4条の責任集中原則との関係で,原発事故後に関与した第三者まで,4条によって免責されるのかという,同条の時的適用範囲が問題となろう。



〔後続損害〕
 後続侵害があった場合に,先行する加害者に,後続の拡大損害についての責任を負わせることができるのかという問題。これは,因果関係論に関係して,以下のようになる。

ア 相当因果関係説(通説・判例)
 先行行為のとの関係で,後続侵害による結果が,通常損害といえるか,いえない場合でも,予見可能性な特別損害といえるかという観点から,判断される。

イ 保護範囲説(義務射程説)
 後続損害が,加害者が違反した義務の射程内か否かで判断される。

ウ 危険性関連説
 後続侵害が,先行行為によって特別に高められた危険が実現したものといえるか否かにより判断される。


 上の相当因果関係説だと,先行行為者が,後続侵害部分についてまで責任を負うのかという問題については,通常は,「予見可能性」の問題となり,その具体的認定は,おそらく時間的近接性や先行の侵害の程度や状況,後続侵害の内容等の諸般の事情からケースバイケースで判断されるとしか言いようがなく,特に過失〔原賠法では過失すら問われない〕での不法行為については,どこまで加害者に具体的な認識の「可能性」があったのかという点が問題となり,裁判官の感覚次第という可能性があり,適当なところで自由に絞りをかけることができるという点ではメリットがあり,他方,裁判の予測可能性が低くなる。




〔4条の時的適用範囲〕
 原発事故後の第三者の後続行為によって,損害が発生,拡大させられたような場合,後続行為をなした第三者は,東電とともに,損害賠償義務を負うのかという点が,原賠法4条(責任集中の原則)との関係で問題となる。
 
 原賠法4条1項は,「前条の場合においては、同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない」とし,原子力事業者以外の者は一切,被害者に賠償する必要がないことを規定している。

 原賠法2条3項の定義から第三者(国,マスコミ,専門家,流通業者等)が,「原子力事業者」に該当しないのは明白であり,原賠法3条の無過失の損害賠償責任を負うことはないが,故意又は過失ある場合に,民法709条で損害賠償責任を負う可能性がある。ただし,この場合,原発事故後の第三者の行為による損害については,法の趣旨からして,4条の適用による第三者の免責がどうなるのかは問題となろう。

・4条適用肯定説
 特に4条の文言に,時間的先後関係に関する文言もなく,また,同条は,被害者保護の観点から,被害者が容易に賠償責任を追及する相手方を知りうるようにするため,第三者に賠償責任を拡大させない趣旨のものであり,後続侵害についても,4条の適用で第三者は「原子力事業者以外の者」として賠償責任を免ぜられると考える。〔ただし,故意ある場合には,5条により,原子力事業者から求償請求される。〕

・4条適用否定説
 原賠法4条は,被害者保護の観点から,被害者が容易に賠償責任を追及する相手方を知りうるようにするとともに,原子力事業者に機器や原料等を提供している関連事業者に,莫大になりかねない原発事故等の賠償責任を予め免れさせて,原子力事業をしやすくして,もって「原子力事業の健全な発達」を達成しようとする趣旨のものであるから,既に生じてしまった原発事故について,後から損害を拡大させるような行為をした者まで,免責させることは,法の意図を離れるとして,後続侵害をなした第三者には,4条での免責の余地はないと考える。




〔共同不法行為〕
 上で,4条適用否定説に立った場合,第三者は,不法行為に基づく損害賠償義務を負うことになり,その場合,東電の賠償責任と関係が問題となる。

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民法第719条
1 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2 行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。
----------------

・まず,東電と第三者の共謀があった場合は別として,普通は,東電と後続行為をなした第三者との間に,主観的関連共同性はなく,この場合に,民法719条前段の「共同不法行為」の成立を認めてよいかという問題がある。判例・通説では,客観的関連共同性があればよいとしている。

・共同不法行為と認められた場合,その効果として,東電と第三者は,「各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」とされ,これは通説では,不真性連帯債務と理解される。被害者は,原則として,両者に対して満額まで請求できる。二重取りはできない。

・不真性連帯債務の場合,共同不法行為者間の求償関係が生じうるか,一応問題となるが,肯定するのが判例・通説と思われる。

・後続行為をなした第三者が,東電の先行行為によって発生した損害部分まで,連帯して賠償責任を負うのかという問題があり,

①全部連帯説
 第三者も,全部責任を負うとした上で,共同不法行為者間の求償で解決する説
②一部連帯説
 第三者は,その寄与度に応じた割合でのみ連帯して責任を負うとする説(横浜地裁,昭和57年11月2日,判タ495-167)
③分割責任説
 寄与度に応じて,それぞれが応じた額の賠償責任を負い,連帯責任部分を認めない説
④競合的不法行為説
 弱い関連共同性しかないような場合は,単に個別の不法行為責任が,損害(額)の面でが重なっているだけであるとする説

などがあり得る。

・なお,後続侵害を為した第三者に「故意」がある場合は,原賠法4条の適用について,肯定説に立ったとしても,同法5条1項で,東電は,第三者に対して,求償請求をなし得る。


 
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2011-06-16 : ■4条責任集中の原則 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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