東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■2条「原子力損害」の意味・範囲 その25 サービス業等の商圏喪失による損害

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その25 サービス業等の商圏喪失による損害

 地域の経済状態や世の趨勢で、徐々に商圏内の人口が減少するなどして、売り上げが減っていくことはよくあるが、ある日、突然、商圏内の人が居なくなり、そのために小売業、サービス業等の売り上げが減少することは、大規模自然災害を除いて原発事故以外ではちょっと考えられない。自然災害の場合は、普通は、誰にも何も言えないだろうが、原発事故の場合は、原賠法に基づく損害賠償請求の問題があって、商圏喪失による損害がどうなるのか問題となろう。

 たとえば、自らの店舗は避難等指定区域には入っていないが、商圏が避難等指定区域を含んでおり、原発事故後、その区域の人口がゼロになり、あるいは大幅に減少し、売り上げが落ち込んでしまった小売業や、教育その他のサービス業を営む者が、これを「原子力損害」として東電に賠償請求できるのかという点が問題となる。
 これは、商圏内の人に、〔放射能汚染への虞れなどから出歩きたくないなど〕心理的影響を与えて、その結果生じた風評被害のようなものではなく、現に商圏内の人が住めなくなって居なくなり、その結果生じたものである。

 以下の判例は、風評被害に関する判例として論じられることがあるが、商圏人口が大幅に減少した場合の損害について、参考になる部分がある。

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〔風評被害,パチンコ店〕
・平成18年1月26日・東京地裁判決(判時1951号95頁)
 JCO臨界事故関係。風評被害により,パチンコ店の売上げ減少との主張。JCO側が,パチンコ店側に,仮払金(5850万円)の返還を求めた訴訟。損害を否定。
(事故前からの売上げの減少傾向を認定し)「そうである以上、対前年又は対前年同期で比較すれば、本件事故の前後で被告の売上げ等が減少したことは認められるものの、この減少が本件事故に起因するものとする根拠には欠けると見るのが相当である。すなわち、被告の売上げ等の減少と本件事故との間に相当因果関係を認めることはできない。
 したがって、本件事故についての被告の原告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権は成立しない。
(3) この点につき、被告は、本件事故により損害が発生した旨主張する。
 確かに、一般的抽象的には、被告が主張するように本件事故により原告東海事業所から一定の範囲内(本件では、屋内退避勧告の発せられた10キロメートル圏内)に居住する住民が外出を控えることは社会生活の経験上あり得るところであり、この範囲と被告の各店舗の商圏が重なり合う部分が存在する場合には、その限度で被告の売上げの減少を観念することが可能である。この際、被告の店舗自体が屋内退避勧告の対象地域内に存在するか否かは必ずしも問題ではない。
 しかし、被告は、全体として又は各店舗の売上げ等の減少を主張立証するのみであり、屋内退避勧告の対象地域と各店舗の商圏との重なり合い等については何ら主張立証しない。
また、前記のとおり、全体として又は各店舗の売上げ等を見ても、全体的な売上げ等の減少傾向が見られる中で更に本件事故の影響による売上げ等の減少が生じたことを裏付けるに足りる証拠はない。」

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 この判決理由のうち前半部分は、おそらく事実的因果関係の認定の問題であろう。もともと事故前から売上げは減少傾向にあり,事故後に顕著な減少がなく,そのまま下がり続けているにすぎないことから,事故後の売上げの減少は,事故によって住民が外出を控えた結果生じたものとはいえない〔そこまでは立証できていない〕としているのであり,JCO臨界事故との事実的因果関係のある売上げ減少が生じていないとするものであろう。判決文で,「相当因果関係を認めることはできない」とあるのは,当然,その前提となる事実的因果関係が存しないことからであろう。
〔臨界事故がなければ,その売上げ減少はなかったとはいえず,こちらで論じた,A1条件関係の部分で排除されたものと思われる。〕
 

 ただし,この判決理由の後半部分では,「被告の各店舗の商圏が重なり合う部分が存在する場合には、その限度で被告の売上げの減少を観念することが可能である。この際、被告の店舗自体が屋内退避勧告の対象地域内に存在するか否かは必ずしも問題ではない。しかし、被告は、全体として又は各店舗の売上げ等の減少を主張立証するのみであり、屋内退避勧告の対象地域と各店舗の商圏との重なり合い等については何ら主張立証しない」とあり,パチンコ店側の主張立証方法によっては,事実的因果関係が認められる余地があったのかも知れない。
 そして,その上で,〔これまでの下級審の判断方法に従うとすると〕外出しないという客の回避行動が,一般通常人を基準に合理的といえるか否かという点で,因果関係の「相当性」が判断され,それが認められれば,相当因果関係が存在するということになったのであろう。

 つまり,パチンコ店等でも,臨界事故等の原子力関連施設の事故によって,近隣の商圏内の客が外出を控えて,その結果,売上げが減少したと立証できるような場合には〔事実的因果関係〕,その回避行動が一般通常人を基準に合理的といえる範囲で,相当因果関係のある損害として,賠償対象となる余地はあるということであろう。

 そこで,商圏喪失の問題を考えてみると,原発事故等で,客に心理的影響を及ぼして,回避行動に走らせ,その結果,そこを商圏とする小売店やサービス業等が損害を被った場合ですら損害賠償請求の余地が存在する以上,現に商圏人口をゼロや大幅に減少させられて,その結果,来店客が減少したような場合は,当然に〔避難区域分の商圏喪失分などは回避行動の合理性を問うまでもなく〕,相当因果関係のある損害として,賠償対象となるはずである。

 ただし,従来から売り上げ減少傾向にあった場合や,震災津波による被災での人口減少分がある場合など,損害額の算定〔こちらで述べたCの部分〕において,実際の減少額の内どこまでが,原発事故によるものかという問題は残り,その部分での絞りはかけられることになろう。

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2011-06-14 : ・二次的損害,間接被害者等 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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