東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■16条「必要な援助」国の措置 その4 原賠法では東電自壊は止められない?

■16条「必要な援助」国の措置 その4 原賠法では東電自壊は止められない?

 事故後の経緯を見ていると,どうも事後処理費用等の「原子力損害」以外の負担が,莫大になりそうなので,考えてみる。 

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原賠法第16条
1 政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者(外国原子力船に係る原子力事業者を除く。)が第三条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。
2  前項の援助は、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において行なうものとする。
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この16条については,以前にも触れたが,衆議院国会審議(昭和35年5月18日)において,政府委員が,

「原子力事業者が、第十六条の規定の場合に、破産してもかまわぬのかということでありますが、決してさようなことは考えておりません。つまり、第三章の損害賠償措置において、賠償措置が十分できない、その額をこえた場合において、原子力事業者に対して必要な援助を行なう援助の内容というものは、補助もあるし、貸付もあるし、融資もありますし、つまり、国の力を相当加えて、被害者に対しての援助を十分いたしますという意味でありますから、逆に言えば、原子力事業者を破産に追い込むまで、原子力事業者だけで被害者の損害を埋めろという意味を持っていない」

と述べているように,原賠法は,3条1項本文が無限責任であることを前提にしながら,その責任は原子力事業者に破産まで強いるものでなく,必要な場合には,16条で国が「必要な援助」を行うとしているものである。

 ただし,これは「原子力損害」の賠償に関するものであり,東電の財務一般を救済するものではない。原賠法は,被害者保護と原子力事業の健全な発達(1条)を目的とするが,あくまで原子力損害の賠償に関する法律であり,原子力事業者の救済法ではない。

〔原子力損害の賠償義務以外で東電の負担となるもの〕
①原発施設の損壊等で東電自ら受けた損害(2条2項但書で,「原子力損害」にあたらず。東電が原子力財産保険に入っている場合は一定額の損害填補の可能性があるが,震災津波等に起因する場合は保険会社は免責されるのではないか。)
②他の発電施設の停止による損害や検査,安全確保に要する追加費用
③福島第一の今後の廃炉等の処理費用
④土壌等に関する除染費用(これについては,「原子力損害」とされる可能性もあるが,被害者からの物権的請求権としての除染請求の場合は,原賠法に基づくものではなく,その費用は「原子力損害」の問題とはならない?。また,もそもそ請求がなくても法律で除染等は義務づけられているとも言えるので,そういう意味では,原子力事業者は,自らの費用でそれをなすのが原則であろう。〔原子炉等規制法64条,核燃料物質等の工場又は事業所の外における廃棄に関する規則6条,原子力災害対策特別措置法26条〕)
⑤この震災で受けたその他損害等

 東電が今回の事故で,上のような原子力損害の賠償以外の財産滅失,支出,負担などにより,そのことだけで債務超過に至るような場合は,電気料金の値上げというもの限度はあろうし,いくら原賠法の趣旨として原子力事業の健全な発達があるとしても,原子力損害の賠償義務負担以外のものまで,16条で「援助」することはあり得ないし,これだけで首が回らなくなる場合は,破綻は避けられないのではないか。
 そもそも16条は,原子力損害の賠償義務(3条1項本文)が無限責任であることを前提に,その額が大きすぎて,原子力事業者が支払えなくなる場合に,国が援助するものであり,その「支払えなくなる場合」の程度としては,「破産」までは要求しないというものであり,あくまで被害者に対する原子力損害の賠償に関して,国が助け船を出すというものであって,それ以外の事業者が自ら負った負担まで,16条で国が「援助」することは本来法が予定していないものであろう。
 つまり「原子力損害」の賠償義務が0だと仮定しても,他の要因による財務状態の悪化で破綻するような場合は,それは原賠法ではカバーされる問題ではなくなって,そのような原子力事業者は,原則として法的整理の対象となるのではなかろうか。

 これは結局,東電の財務状況と,上の①~⑤までの今後の費用がどのくらい膨大なものになるのかにかかってくるだろうから,いくら賠償スキームを作成しても,福島第一等の今後の事情によっては,破綻に至るかもしれないし,政治的に救済することにして,原賠法を超えて,どんどん税金をつぎ込んで生かすことになるのかも知れない。

 いずれにしても,法の目的が東電存続に直結するものではないし,原賠法16条は,原子力損害の賠償に関するものであって,それ以外の損失で,東電が自壊していくのを止めることは,少なくともこの法律によってはできないはずである。



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2011-06-08 : ■16条「必要な援助」国の措置 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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