東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・土地建物,土壌等の汚染 その4 賠償額等の問題

・土地建物,土壌等の汚染 その4 賠償額等の問題

 土地等の財物汚染の原状回復費は,財物を破壊したような場合の修理費に似ている。

 自動車事故で,相手の自動車を一部損傷させ,その修理費が,相手の自動車の事故時の時価を超える場合は,全損扱いとなり,その時価が,車体に関する賠償額の限度となるのが普通である。したがって,時価より高い修理費までは請求できない。

 今のところ,土地建物等の除染がどの範囲で必要であり,どこまで除染すべきか,その方法や技術の有無,その費用等について知らないが,仮に,除染費用が高くて,それよりも土地の時価が安いような場合,どうなるのだろうか。坪単価の安い土地など,ひょっとしたら問題となるかもしれない。
 ただし,土地建物などは,個性の少ない自動車等とは同様には扱えず,除染等による原状回復費用が,時価を上回る場合であっても,被害者としては,それを利用し続けなければならないという必要性が高い場合が多く,そういった場合にまで,同様に扱われるのかは不明である。

 この点,第一次指針には,避難等の指定がなされた区域内について,「8 財物価値の喪失又は減少等」として,

「財物につき、現実に発生した以下のものについては、損害と認められる。なお、ここで言う「財物」は動産のみならず不動産をも含む
Ⅰ) 政府の指示による避難等を余儀なくされたことに伴い、対象区域内に所有していた財物の管理が不能等となったため、当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合には、現実に価値を喪失した部分及びこれに伴う追加的費用(当該財物の廃棄費用等)については合理的な範囲で損害と認められる。
Ⅱ) Ⅰ)のほか、当該財物が本件事故の発生時対象区域内にあり、) 財物の価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に曝露した場合又は、 ) )には該当しないものの、財物の種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及び除染等の追加的費用について損害と認められる。」

また備考として,

「4) なお、Ⅱ)の)及び)に関しては、喪失又は減少した財物の価値を回復するため、除染等の措置が必要となる場合がある。この場合に、価値の喪失又は減少を損害ととらえるか、あるいは、その除染等の措置費用を損害ととらえるか、という問題があるが、この点は今後検討する。」

とある。

 この点について,避難等区域内で汚染があった場合,価値の喪失,減少,除染費用等は以下のような関係になろう。

ア 財物の使用価値(賃料相当損害金)
イ 財物の交換価値
 イ1 全部(汚染時の時価全額)厳密に言うと汚染直前の時価
 イ2 下落分(売却時点での時価の下落分)
ウ 原状回復費用(除染費用等)


(1)除染費用等が汚染時の時価を下回る場合の処理(ア+イ2+ウ<イ1)
ア 使用価値(除染が完了して戻るまでの賃料相当損害金。※自宅建物の場合,宿泊費用の損害分との関係が問題となりうる。)
 +
イ2 交換価値下落分(地価下落による損失,※もともと売却予定地であったような場合で,完全に除染されたのに,時価の下落があったときは,風評被害と同様に考えて,相当因果関係の有る範囲で賠償義務ありとする?)
 +
ウ 原状回復費用(除染費用等)

(2)除染費用等が汚染時の時価を上回る場合の処理(ア+イ2+ウ>イ1)
イ1 交換価値全部(汚染時の時価)+これに対する汚染時から年利5パーセント相当の遅延損害金
 ※ただし,前述のとおり不動産等は同様に扱えないかも。


 この(2)の場合,結局土地建物の所有者は,その土地建物に関しては,汚染時の時価の賠償しか受けられず,帰還するためには,その賠償額を超える分の除染費用を自ら捻出しなければならなくなる。〔もちろん,避難や失職を余儀なくされたことによる精神的,経済的損害等の他の損害は別途賠償対象となる。〕

 土地建物,土壌等が広範囲かつ長期にわたってダメになるようなことは,普通の不法行為では考えにくく,また,自分の土地建物だけ除染しても,日常生活の範囲内で,受忍限度を超えるような線量がある場合は無意味となる。原発事故の重大性,破局的性質から余り考えたことのない法律関係が生じているものといえよう。

 この(2)の場合が多くなると,結局,町や村をまるごと諦めるということになるのだろうか。
 経済的な合理性だけを考えると,除染費用>土地価格の場合は,〔その差の程度にもよるだろうが,除染費用の方がはるかに高くつくような場合は〕,事実上除染不可能で,帰還不能な土地ということになるのかもしれない。
 ただ,土地は原状に復しさえすれば,その後の使用価値はほぼ永久にあるわけで,除染費用>土地価格であったとしても,除染費用<土地価格+帰還後使用価値となる場合があるだろうから,経済的合理性だけを見ても簡単には言えない。
 もっとも,個人としてみると,普通は100年も寿命はないのだから,除染のために要した費用を,その個人が,その後の余命で回収できる程度でなければ,これも現実的ではないかもしれない。

 結局,このあたりの問題は,チェルノブイリの一定地域のように,長期に亘り使用不能,帰還不能な土地をつくっていいのかという国の政策の問題となってきて,東電の賠償義務から法律上漏れる部分が発生したとき,公的負担(ひいては国民の負担)で,どこまで短期的な経済合理性を超えて,国土を回復させるべきかという問題となるのかもしれない。


 ※なお,風評による地価の下落についてはこちらでふれた。
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2011-06-08 : ・土地建物,土壌等の汚染 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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