東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・土地建物,土壌等の汚染 その3 除染とその費用の請求,法律構成

・土地建物,土壌等の汚染 その3 除染とその費用の請求,法律構成

 以下の二つの請求が考えられる。

a 自らの費用で除染して,その費用を東電に請求する。
b 東電に除染等原状回復ないし財物の利用妨害排除を請求する。

1 不法行為〔原賠法〕
a 自らの費用で除染して,その費用分を損害として東電に賠償請求する。
「原子力損害」といえる限り,原賠法3条1項本文で,請求可能。
 原発事故と汚染との事実的因果関係の立証は容易。ただし,どの程度の汚染なら,自ら除染して,その費用を賠償請求できるかは現在のところ不明。これは前項で述べた。
 除染の要否の問題に関しては,最終的には受忍限度論の問題になるかもしれないが,その限度内なのに除染してしまった場合は,除染費用については,「相当因果関係」が無いとして賠償請求が全く認められないか,過失相殺等で大幅に減額されることになるかもしれない。〔ただし,現時点ではどの程度まで受忍すべきかは不明であって,文科省の20ミリとかいう基準も専門家に批判されたりして,ふらついているし,よほど遠方で極微量でも無い限り,仮に将来,受忍限度を下回っていたと判明したとしても,過失相殺等による減額はそれほどでもないかもしれない。〕

b 東電に除染等原状回復ないし財物の利用妨害排除を請求する。
原賠法に基づいて,東電に除染を請求することはできない。原賠法は,民法の不法行為規定の特別法であり,金銭賠償の原則(民法722条1項,同417条)が適用され,行為請求権は原則として認められないからである(ただし,異説はある。)。

2 物権的請求権
a 自らの費用で除染して,その費用分を損害として東電に賠償請求する。
物権的請求権の内容として,費用負担まで含める説もあるが,通常は否定。

b 東電に除染等原状回復ないし財物の利用妨害排除を請求する。
 所有権等の物権は,物を直接かつ排他的に支配する権利であり,この支配関係は法によって保護されるものであり,これを脅かす侵害に対しては,自力救済が禁止されている法治主義の下では,それを排除する救済手段が与えられる。これが物権的請求権であり,民法上は占有訴権(民法197条以下)を除いて,特に規定な無いが,当然のこととして認められる。
 これには,①目的物返還請求権,②物権的妨害排除請求権,③物権的妨害予防請求権があり,ここで特に問題となるのは,②妨害排除請求権であろう。
 物権的妨害排除請求権は,占有以外の方法によって,物権の内容の実現が妨げられている場合に,その侵害の除去を求める請求権である。

 放射性物質によって,土地や建物等の利用が妨げられている場合には,当然,その土地建物等の所有者は,妨害原因を作り出した者(放射性物質の所有者である東電)に対して,妨害の排除を請求できることになろう。
 この場合,妨害者側の故意,過失は問われない。訴状に書くとすれば,原告が当該土地建物の所有者であること,そこに被告所有の放射性物質が飛来付着して,放射線によって,その利用が妨げられていることくらいのことであって,被告の抗弁としては受忍限度とか権利濫用の抗弁程度か。

※民法242条以下の「付合」の問題は別項で〔汚染態様による場合分け必要?〕

※物権的請求権について費用負担等の問題
 不可抗力で,Aの所有物が,Bの土地に入り,Bの土地利用を妨げている場合。
 理屈の上では,Aは所有権に基づき目的物の返還請求権を有し,Bは土地所有権に基づき物権的妨害排除請求権を有することになる。
 現実問題として,東電が,裁判等で,汚染地域の個人や自治体に対して,放射性物質を返還するよう請求することは考えにくいが,理論上は,AとBの請求権が両方なりたち,判例・通説では,権利濫用等にあたらない限り,先に訴えた方が勝つことになる。
 その場合の現実の返還費用や妨害排除費用を誰が負担すべきかという問題があり,これについては,そのまま敗訴した被告とする説や,責任割合に応じて求償請求しうるとする説がある。

※物権的請求権の時効
 原賠法に基づく損害賠償請求権については,原則として3年の時効にかかる。
 物権的請求権については,判例・通説では,所有権等その物権が存続する限り,消滅時効にはかからないと理解されている。ただし,これも反対説あり。

※物権的請求権と原賠法に基づく損害賠償請求権との競合問題。
 一般に,不法行為に基づく損害賠償請求権は,金銭賠償の請求であり,物権的請求権は,行為請求権であることから,その競合は生じないと理解されている。そして,原賠法は,不法行為法の特別法であることから,物権的請求権との競合は生じないと解されよう。
 なお,原賠法と民法の規定との適用関係を論じた判例(平成20年2月27日・水戸地裁判決・判タ1285号201頁)では,「原賠法に規定する原子力損害の賠償責任は,原子力事業者に対して原子力損害に関する無過失責任を規定するなどした民法の損害賠償責任に関する規定の特則であり,民法上の債務不履行責任又は不法行為の責任発生要件に関する規定は適用を排除され,その類推適用の余地もない」としているだけで,民法上のあらゆる請求権の排除を言ってるわけではない。

※不動産の賃借人の場合,債権しか有しないので,妨害排除請求をなしうるか問題となるが,登記等により対抗力のある賃借権については排他性があり,賃借人も妨害排除請求しうるとするのが判例通説。

※強制執行
 妨害排除請求訴訟で勝訴したものの,原子力事業者側が除染等を行わない場合,民法414条2項本文(「債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる」)によって,代換執行が可能となる。




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2011-06-08 : ・土地建物,土壌等の汚染 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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