東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・土地建物,土壌等の汚染 その2 除染等による原状回復の必要な範囲

・土地建物,土壌等の汚染 その2 除染等による原状回復の必要な範囲

 どの程度の汚染ならば,その除染費用が「原子力損害」として認められるか,あるいは東電に対する除染請求が認められるかという問題がある。

 避難勧告が出ているような地域については,現に使用できない程度の汚染が進んでいるおそれがあり,その除染費用の多くは「原子力損害」として認められることになろうが,基本的には各地点の汚染の程度によるのではないか。
 本来は,福島第一から飛散した全ての放射性物質については,東電が除染や回収すべきところ,極微量でも除染を要することになると,少なく見積もっても東日本の大半がその対象になり,現実的ではないとして,政府や裁判所の判断では,そこまでは及ばないのではなかろうか。
 結局,人の健康等の影響などについて,合理的に考えて,どの程度であれば,除染を要するかということになり,逆にいうとどの程度なら市民は我慢すべきかということであって,騒音や日照権侵害等の公害訴訟でよくある「受忍限度論」が持ち出されるかもしれない。
 そして原発由来の放射性物質による汚染について,「社会共同生活を営む上で一般通常人ならば当然受忍すべき限度」がどの程度かが問題となり,人の健康に及ぼすリスクなど自然科学的なデータなり研究が基礎となり,一定程度の汚染地域については,除染等の措置が必要であるが,それ以下は一般公衆は,受忍せよということになるのかもしれない。

 ここで問題なのは,どの程度の汚染なら健康に全く問題がないのか,その程度が科学的にさほど明確でない場合に,線を引く作業を裁判所がなしうるのかということである。騒音や,振動や,日照阻害は,生命や健康の被害に直結するというものでもなく,どこでも日常的にあることで,商業地等のその地域の特異性や,他との比較や,法律・条例等での基準値,規制値があって,それなりの線を見つけることになろうが,放射性物質による汚染については,手がかりは少ない。


 労働関係法令を見てみる。
 
------------------------
●労働安全衛生法
第22条  事業者は、次の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
<略>
二  放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による健康障害
<略>

(作業環境測定)
第65条  事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。
<略>

(健康診断)
第66条  事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない。
2  事業者は、有害な業務で、政令で定めるものに従事する労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による特別の項目についての健康診断を行なわなければならない。有害な業務で、政令で定めるものに従事させたことのある労働者で、現に使用しているものについても、同様とする。
<略>

●労働安全衛生法施行令
(作業環境測定を行うべき作業場)
第21条  法第六十五条第一項の政令で定める作業場は、次のとおりとする。
<略>
六  別表第二に掲げる放射線業務を行う作業場で、厚生労働省令で定めるもの

(健康診断を行うべき有害な業務)
第22条  法第六十六条第二項前段の政令で定める有害な業務は、次のとおりとする。<略>
二  別表第二に掲げる放射線業務
----
別表第二 放射線業務(第六条、第二十一条、第二十二条関係)
<略>
六 原子炉の運転の業務

●電離放射線障害防止規則
(定義等)
第2条  この省令で『電離放射線』(以下『放射線』という。)とは、次の粒子線又は電磁波をいう。
(1)  アルフア線、重陽子線及び陽子線
(2)  ベータ線及び電子線
(3)  中性子線
(4)  ガンマ線及びエツクス線
<略>
3  この省令で『放射線業務』とは、 労働安全衛生法施行令(以下『令』という。)別表第2に掲げる業務をいう。
<略>

(管理区域の明示等)
第3条  放射線業務を行う事業の事業者(第62条を除き、以下『事業者』という。)は、次の各号のいずれかに該当する区域(以下『管理区域』という。)を標識によつて明示しなければならない。
(1)  外部放射線による実効線量と空気中の放射性物質による実効線量との合計が3月間につき1.3ミリシーベルトを超えるおそれのある区域(2)  放射性物質の表面密度が別表第3に掲げる限度の10分の1を超えるおそれのある区域
2  前項第1号に規定する外部放射線による実効線量の算定は、1センチメートル線量当量によつて行うものとする。
3  第1項第1号に規定する空気中の放射性物質による実効線量の算定は、1.3ミリシーベルトに1週間の労働時間中における空気中の放射性物質の濃度の平均(1週間における労働時間が40時間を超え、又は40時間に満たないときは、1週間の労働時間中における空気中の放射性物質の濃度の平均に当該労働時間を40時間で除して得た値を乗じて得た値。以下『週平均濃度』という。)の3月間における平均の厚生労働大臣が定める限度の十分の一に対する割合を乗じて行うものとする。
4  事業者は、必要のある者以外の者を管理区域に立ち入らせてはならない。
5  事業者は、管理区域内の労働者の見やすい場所に、第8条第3項の放射線測定器の装着に関する注意事項、放射性物質の取扱い上の注意事項、事故が発生した場合の応急の措置等放射線による労働者の健康障害の防止に必要な事項を掲示しなければならない。

(放射線業務従事者の被ばく限度)
第4条  事業者は、管理区域内において放射線業務に従事する労働者(以下『放射線業務従事者』という。)の受ける実効線量が5年間につき100ミリシーベルトを超えず、かつ、1年間につき50ミリシーベルトを超えないようにしなければならない
2  事業者は、前項の規定にかかわらず、女性の放射線業務従事者(妊娠する可能性がないと診断されたもの及び第6条に規定するものを除く。)の受ける実効線量については、3月間につき5ミリシーベルトを超えないようにしなければならない。

第5条  事業者は、放射線業務従事者の受ける等価線量が、眼の水晶体に受けるものについては1年間につき150ミリシーベルト、皮膚に受けるものについては1年間につき500ミリシーベルトを、それぞれ超えないようにしなければならない。

第6条  事業者は、妊娠と診断された女性の放射線業務従事者の受ける線量が、妊娠と診断されたときから出産までの間(以下『妊娠中』という。)につき次の各号に掲げる線量の区分に応じて、それぞれ当該各号に定める値を超えないようにしなければならない。
(1)  内部被ばくによる実効線量については、1ミリシーベルト
(2)  腹部表面に受ける等価線量については、2ミリシーベルト

-----------------------------



 要するに,労働関係法令では,3ヶ月で1.3ミリシーベルトを超えるおそれがある場合は,管理区域として扱われ,事業者に作業環境測定,明示,健康診断等が義務づけられる。(年間5.2ミリシーベルトか?)

 また,放射線作業につく労働者については,緊急時を除いて,以下が限度となる。

 原則 50mSv/年 かつ 100mSv/5年
 妊娠可能性ある女性 5mSv/3月
 妊婦 妊娠診断から出産までの期間で1mSv


 このような労働関係法令を見ると,最大限に見つもっても,緊急時ではなく,日常使用に耐えうる土地,建物等は,せいぜい年間5ミリシーベルトまでということか。
 しかし,日常生活では,子供も妊婦もいるし,自らの選択で,通常より多量の放射線を浴びる可能性のある職業に就いている者と同レベルまで,一般市民に我慢しろというのもどうなのかという気がするので,結局,一般公衆の被爆線量(自然放射線,医療被曝等除く)に関する,ICRPの年間被曝許容限度1ミリシーベルト(あるいは5年平均で1ミリ)が限度となるのだろうか。
 このように考えた場合,どの範囲の建物,土地,山林等の除染が必要になるのだろうか。半減期の短いものについては崩壊してなくなるだろうが,セシウムなど長いものは除染等しないかぎり,そこに長期間にわたって存在し続けるわけで,これがどの範囲にまで及んでいるのだろうか。〔この一番外の青線が年2.2ミリ?〕

 考えれば,今回の事故は,自然災害が一因とはいえ,公害そのものであり,海洋汚染(漁業権侵害)もあって,その除染等による原状回復が必要な範囲の線引きは,特に立法がないかぎり,最終的には裁判所がすることになろう。〔ただし,現行法でも原子炉等規制法等の関連法規で,政府がある基準を決定して,それ以上のものについては除染措置をとらせることはできるだろう。〕


------------------
●核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
(危険時の措置)
第六十四条  原子力事業者等(原子力事業者等から運搬を委託された者及び受託貯蔵者を含む。以下この条において同じ。)は、その所持する核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉に関し、地震、火災その他の災害が起こつたことにより、核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉による災害が発生するおそれがあり、又は発生した場合においては、直ちに、主務省令(第三項各号に掲げる原子力事業者等の区分に応じ、当該各号に定める大臣の発する命令をいう。)で定めるところにより、応急の措置を講じなければならない。

(罰則)
第七十八条  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
<略>
二十七  第六十四条第一項の規定に違反し、又は同条第三項の規定による命令に違反した者

●核燃料物質等の工場又は事業所の外における廃棄に関する規則
(危険時の措置)
第六条  法第六十四条第一項 (原子力事業者等が工場又は事業所の外において放射性廃棄物を廃棄する場合に限る。)の規定により、原子力事業者等は、次の各号に掲げる応急の措置を講じなければならない。
一  放射性廃棄物による汚染が生じた場合には、その場所の周囲になわを張り、又は標識等を設け、及び見張人を配置することにより、関係者以外の者が立ち入ることを禁止すること。
二  放射性廃棄物による汚染が生じた場合には、速やかに、その広がりの防止及び汚染の除去を行うこと。
三  放射線障害を受けた者又は受けたおそれのある者がいる場合には、速やかに、その者を救出し、避難させる等緊急の措置を講じること。
四  その他放射線障害を防止するために必要な措置を講じること。

●原子力災害対策特別措置法
(原子力事業者の応急措置)
第二十五条  原子力防災管理者は、その原子力事業所において第十条第一項の政令で定める事象が発生したときは、直ちに、原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、当該原子力事業所の原子力防災組織に原子力災害の発生又は拡大の防止のために必要な応急措置を行わせなければならない。

(緊急事態応急対策及びその実施責任)
第二十六条  緊急事態応急対策は、次の事項について行うものとする。
<略>
七  食糧、医薬品その他の物資の確保、居住者等の被ばく放射線量の測定、放射性物質による汚染の除去その他の応急措置の実施に関する事項
八  前各号に掲げるもののほか、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止を図るための措置に関する事項


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2011-06-08 : ・土地建物,土壌等の汚染 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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