東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・土地建物,土壌等の汚染 その1 環境損害

・土地建物,土壌等の汚染 その1 環境損害

 福島県内の小学校等の土壌の汚染や農地の汚染が問題となっている。その他にも,個人の不動産,自治体の所有する土地(森林,河川,池沼,道路,その他施設の敷地等)や,建物(役所,その他施設)が放射性物質によって汚損している可能性がある。
 この種の損害に関して,平成10年9月,原子力委員会では,「環境損害」という概念について,その賠償をどうするのかという議論がなされていた。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo03/siryo3-5.htm
資料3-5
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原子力損害(環境損害)について
1. 環境損害の概念について
 ウィーン条約改正議定書においては、「環境損害の原状回復措置費用」が原子力損害に該当することとされたが、条約上、環境損害の定義は規定されていない。また、各国法において当該費用を原子力損害と規定することは、必ずしも条約加盟の条件とはされておらず、条約上も「管轄裁判所の法が決する限りにおいて」とされているところ。
 環境損害とは極めて多義的な概念であり、漠然と大気、海洋、河川などの汚染を環境損害と呼ぶ場合もあるが、一般的には被害者が特定の個人だけでなく、その環境に接する不特定多数の者であるような損害であり、公共の財産である環境そのものが侵害されるという点に特殊性を有するものと捉えることが可能である。また、個人の所有地が汚染される場合にあっても、地下水等を通じて不特定多数の者に汚染が及ぶ可能性があるので、このような場合は環境損害と捉えることが可能であり、所有権の有無にはかかわらないと考えられる。
2. 原賠法における環境損害の位置づけ
(1) 現行の原賠法においては、「環境損害」は規定しておらず、
 a.核燃料物質の原子核分裂の過程の作用
 b.核燃料物質等の放射線の作用
 c.核燃料物質等の毒性的作用
 により生じた損害を「原子力損害」と規定しているのみである。ここで「作用により生じた損害」とは、「作用」との間で相当因果関係がある損害を指すものであり、その限りにおいては、直接損害のみならず、間接損害も含まれるものとして捉えられている。
 このように、我が国原賠法は損害の種類によって賠償の対象になるか否かを分類していないため、「環境損害」に伴う原状回復措置費用も原子力損害に該当しうるものであり、排除されているものではない。
(2) ただし、この場合も環境損害に伴う原状回復措置費用が全て原子力損害として認められる訳ではなく、「相当因果関係」の存在が必要とされるであろう。また、額についても原状回復に要した費用全額ではなく、現実に支払った費用のうち合理的な費用に限定されるものと考えられる。
 以上のとおり、現行の原賠法でも相当因果関係のある環境損害に伴う原状回復措置費用は原子力損害として認められるものであり、かつこれ以上に新しく環境損害を定義するだけの必要性も無いものと考える
3. 油濁損害賠償保障法上の考え方
 なお、「環境損害」の検討に当たっては、「油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(油濁損害条約)」及び「油濁損害賠償保障法」が参考になると考えられる。
 油濁損害条約においては、汚染損害の定義に環境損害に係る原状回復措置費用を規定しているが、本条約の国内実施法である油濁損害賠償保障法においては、油濁損害の定義(「船舶から流出し、又は排出された油による汚染により生ずる責任条約の締約国の領域内又は二百海里水域等内における損害」)の中で環境損害を読み込むことができるものとして、特別に環境損害に係る原状回復措置費用を規定することとしていない。
 油濁損害は原子力損害に比較して、環境損害(海洋汚染等)に伴う経済的損失が多くを占め、人的損害は比較的少ないとの相違が存在すると考えられ、必ずしも原子力損害の概念を油濁損害の概念と一致させる必要性はないとも考えられるが、改めて「環境損害」を定義せずとも、損害の定義の中において相当因果関係から読み込むことが可能である例として参考になると考えられる。
 なお、「合理的な費用」といえるか否かについて、油濁損害においては、「油濁損害賠償基金請求の手引き」を定めており、補償の対象となる請求としての環境損害について一定の指針を示している。(別紙参照)
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3回原子力損害賠償制度専門部会議事要旨(案)
1.日時     平成10年9月11日(金)
         午前10:00~12:00
2.場所     科学技術庁 第7会議室(通産省別館9階)
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo04/siryo1.htm
(4)原子力損害(環境損害)の概念について
事務局より資料3-5に基づき、説明があった後、主に次の質疑応答があった。
(能見)整理すると、原子力損害に入るのかという問題と、賠償の対象になるとして一定の制限を設ける必要がないのかという問題がある。前者については、原子力損害の定義から予防措置費用は別としても、対象になるといってよいと考える。問題は後者で、裁判になれば相当因果関係で切られるだろうが、油濁と比較して原子力は環境以上に人身損害が大きい。理論的には無限責任ゆえ、すべての賠償はなされるにしても、現実には賠償措置額があって、限定された資金の中で環境損害と人身損害が一時的には取り合いになる。人身損害の重要性を考えると、環境損害には一定の限界を明確に設け、人身損害の保護を手厚くするのがよいのではないか。
(住田)結論に異論はないが、放射線の作用等による損害という定義は、損害の概念というよりは原因行為による類型にすぎず、損害が何かということは一切規定していないのではないか。そこで環境損害はどういうものかを一般法たる民法から考えていくことになる。油賠法の場合は条約を批准するための国内法整備として行われたため、条約の文言に引っ張られた面もあろうが、今回は条約とは別に独立した国内法として考えればよい。資料中、原賠法の原子力損害からは排除されていないとあるが、むしろこの点は規定されていないということであろう。環境損害の内容について各国なりの考え方があろうが、被害者が特定しがたいだけで、損害自体は発生しているわけだから、当然原賠法の損害概念に入るといってよい。そして損害賠償の範囲として、合理的な、社会通念上相当なものという判例があり、そこで縛りがかかると思う。よって、環境損害を入れることにつき、特別の規定は必要ないと考えている。ただ、油賠法の場合は経済的損失だけだが、我が国の一般原則でいくと、非財産的損害も入ってくることになろう。ただ、どのような取扱いにするかは議論をしておく必要があろう。避難費用については、前回法改正時に議論があったようだが、避難を余儀なくされたということは一つの損害であり、その賠償の範囲としては社会通念上相当なものとなり、やはり特別の規定は必要ないと考える。
(山嵜)原賠法は不法行為法の特別規定にすぎず、無過失責任や賠償措置額の強制を特別に定めたものである。原子力損害の損害に関する限り、不法行為法が基礎にある。能見委員の意見だが、環境損害の賠償額自体を制限するということか、それとも人身損害よりも弁済の順序を遅らせるということか。
(能見)勿論、賠償額を民事責任のレベルで制限することではない。将来的には、責任は限定せず、賠償措置額から取る順序なりルールなりを決めておくのがよいのではないか。

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 上の資料3-5にあるように,特に「環境損害」という概念を用いなくても,原発事故により,個人や自治体所有の土地建物等の財物汚損が生じている場合には,相当因果関係が認められる範囲で,その除染等の原状回復費用は,「原子力損害」として認めるられることになろう。〔主として海洋汚染に関するものであるが,上の資料にもあるとおり,油濁損害賠償補償制度については,今回の事件でも参考になるかもしれない。〕

問題として
・原状回復,除染等の必要な範囲の問題
・請求の法律構成
・損害額の算定
・除染等費用>土地価格の場合の問題
など

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2011-06-08 : ・土地建物,土壌等の汚染 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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