東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・法規制関係資料 その2

・法規制関係資料 その2

http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2010/genan050/siryo4-2.pdf
第50回原子力安全委員会資料第4-2号
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原子力安全規制~日本における段階規制の特色~
平成22年8月5日
山内 喜明

○ はじめに
① 施設の建設段階・運転段階と、原子力施設が操業に向けて変化していく段階に合わせて規制をしていくのは各国とも共通。
② 日本における特色は、以下のとおり。
→最初の許可段階(原子炉設置許可等)においてのみ、総合的な安全評価がなされること。
→最初の許可が、後段規制の大枠を拘束する運用がなされていること。
すなわち、米国のように、施設の建設許可と、施設の運転認可とが独立し、運転後は、後者の運転認可で規制が行われる、いわば、二本立ての許認可体制になっていないこと。
→バックフィット制度が整備されていないこと。
③ 以上の特色を前提に、先ずは、日頃思うことを述べ、次に最近の状況についての所見を述べ、最後に法改正について考えることを述べていきたい。

Ⅰ 日本における段階規制の特色
1.後段規制で総合的な安全評価(安全解析)がなされないこと
① 設置許可段階では、原子力施設の基本設計について安全審査し、その際に、総合的な安全評価が行われる。
② 後段規制は、この設置許可の大枠の中で、
→設計面では、詳細設計について工事計画認可や設計・工事方法認可がなさ
れる。
→運転面では、保安規定の認可がなされる。
③ したがって、当初の設置許可の枠内で後段規制が行われるので、個々の後段規制において総合的な安全評価は不要であると考えられる。
④ これは、一つの考え方(法令の運用)である。
原子力施設の立地にあたっては、当該立地を適正とする基本的な許認可が必要だと思うので、当初の許可段階で総合的な安全評価が行われることが望ましいと思う。
⑤ しかし、最初の段階である、基本設計段階では、施設・設備については概念的な状態である。したがって、その際の安全評価は、余裕を十分に取り、必ずしも現実を反映したモノではない、保守的になされたモノであると考えられる。その後、工事計画認可等によって詳細設計が審査され、具体的な設備が設置され、施設として具現化される。その段階で、再度、総合的な安全評価を実施した方が、具体的な施設に適合した、現実的な安全評価となるのではないか。(設計建設規格と維持規格のアナロジー)
⑥ 米国の運転認可は、正に施設が具現化した際に、現実の施設に適合した運転規制を行うことを目的にしたものではないかと考える。
日本においては、例えば、使用前検査の最終合格の前に、総合的な安全評価を実施し、それに基づき、使用前検査に合格証を発給すると共に、運転のための保安規定の認可を行うとすることが、施設の現実に適合した、より高い安全性が期待できるのではないかと思われる。

2.設置許可による後段規制への拘束。
① 当初の許可が、後段規制を拘束する点については、2点述べたい。
② 一つは、単一故障の仮定の考え方の適用である。
・ 設置許可における安全審査においては、単一故障の考え方に基づき安全評価がなされるが、これは、前述のように、設置許可(基本設計)段階では、設備については概念的な状態であるから採用された信頼性確保の方法論だと考えられる。
・ 最初の許可段階(設置許可等)から後続規制が積み重なることで、原子力施設は、より具体的になり、それに伴い安全性も確かなものになっていく。
・ 最初は、安全性を確保するために保守的に評価することは必要だが、具体的な施設が完成し、安全余裕が具体的に把握できた段階、いわば運転段階においては、単一故障の考え方も変わってもいいのではないかと思われる。
・ 原子力施設が運転段階に至れば、単一故障の目指した信頼性確保やリスク抑制等は、具体的な設備に基づいた,他の規制手段(例えばAOTの設定等)で確保することができるのではないか。
・ すなわち、具体的な運転段階においては、設置許可段階の単一故障の考え方を柔軟に応用することを検討すべきであると考える。
・ 例えば、適切な運転管理・保守管理により二系統が同時にダウンする可能性は低い等が示されれば、一系統については、運転中保全(オンラインメンテナンス:OLM)を認めても不都合はないのではないか。研究炉はともかく、実用炉では、こうしたリスクが把握できるほど、データの蓄積や定量化が進んでいると考える。
③ もう一つは、設置許可と後続の工事計画認可等における各々の書類の継続性である。
・ 設置許可段階では、設備の目的が安全確保の観点から妥当かどうかの観点で安全審査がなされ、その際の参考資料として、設置許可申請書本文を説明する資料として、その添付書類がある。
・ 一方、後続の工事計画認可等における書類は、それ自体が、設備の設計に対する規制の根本となるものである。
・ このように、両者の書類の目的が異なるので、同一の施設に関する、設置許可申請書の添付書類の記載と、後続の工事計画認可等における書類の記載が異なっていても問題はないと考える。
・ 何故なら、前者は、申請書本文にある目的の説明であり、規制そのものの対象ではなく、後者は、規制対象そのものであるからである。
・ しかしながら、何時までも記載が異なっているのは、説明性の観点では、問題が生じる可能性がある。
・ 西脇先生提案のように、設置許可申請書の添付書類の改定手続きを整備し、工事計画認可等・保安規定の主要部分のエッセンスの最新状況を添付書類に追加記載することで、設置許可と後続規制である工事計画認可等との継続性を明確にする方が原子力安全の説明性の観点からみて望ましいものと考える。

3.バックフィット制度
① 伊方原子力発電所1号機の設置許可取消をめぐる事案について、最高裁は、
判決において
『現在の科学技術水準』に照らし,
イ)調査審議で用いられた「具体的審査基準」に不合理な点があり,
【具体的審査基準の不合理な点の有無】
あるいは
ロ)当該原子炉施設が具体的審査基準に適合するとした原子力委員会、若しくは原子炉安全専門審査会の『調査審議及び判断の過程』に『看過し難い過誤,欠落』があり,被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合
被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして,
右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。
とした。
② この判決を文字通りに考えれば、日本においても、事業者はバックフィット制度を甘受すべきと考える。すなわち、最新の知見にそって、当初の許認可の適正さを検証するということはバックフィット制度の根幹であるからである。
③ ただ、一方で、事業者にしてみれば、設置許可等の許可を取得していることの既存の権利の保障を主張したいのではないかと考える。この調整が制度導入の際の大きな課題である。
④ 法改正して、バックフィット制度を構築する方法もあると思うが、法改正をしなくても、バックフィット制度を導入できるものと考える。
⑤ すなわち、炉規制法62条の2は、許可等において条件を付すことを認めている。これを活用し、設置許可等の当初許可を発給する段階において、その許可条件として、将来にわたって、許可対象の施設が最新の知見に適合することを義務づければ、事実上のバックフィット制度が導入できるものと考える。
⑥ 但し、最新知見に基づいた施設改造の要求については、代替手段等を事業者に認めるべきである。
例えば、新基準に従えば、設備改造が必要になる場合、
事業者は、原則設備改造の義務を負うが、
⇒運転管理手法で同等の安全性を保障できる場合には、
そのような手法を採用することで、新基準に適合したものと
みなすことができるようにする。
⇒既存施設を改造しなくても、PSA等で安全評価して、
同等の安全性の確保が証明できる場合には、
その安全評価をもって、新基準に適合した施設とみなすものとする。
等の事業者に選択の余地を認める制度にすべきと考える。
⑦ なお,設備要求を課すことは,性能規定化の国の規制の方向性と逆行するものであり,上記の運用上の混乱を避ける観点から,規制要求は可能な限り性能要求であるべきものと考えられる。

Ⅱ 最近の課題から
1.検査:米国との相違
① 日本の検査は、米国のインスペクションとは異なるのではないか。
日本の検査は行政処分の一形態である。したがって、日本では常時検査はあり得ない。何故なら、常時検査は常に行政処分がなされている状態であるからである。
② 米国のように、常時チェックするインスペクション制度を日本に導入しようとすると、先ずは、検査官が、事業者の如何なる場所、如何なる書類にでもアクセスできる、フリーアクセスを認めてもらうことが必要である。
これには、検査当局が事業者との協定で認めてもらう方法か、
または、炉規制法の中に、立入権限を含む「保安調査」のような、フリーアクセスを認める根拠規定を設ける方法か、
いずれかの手当が必要である。
③ 次に、上記フリーアクセスの結果、規制当局(検査官)が強制措置が必要であると判断した場合には、強制権限を有する保安検査へ切り替える措置が必要である。これには、現行の炉規制法の改正が必要である。

2.シビアアクシデント(SA)
① 設計基準事象(DBE)を超える事故を想定し、原子力施設の安全性をより確実なものにすることは、方向性とは正しいと思われる。問題は、そうした活動を規制として取り扱う場合,全体の規制体系の下で、どのように位置づけるかである。
② 現行の規制では、設置許可(基本設計)段階では、平常時における被曝低減対策、事故防止対策が適切なモノであることをチェックし、事故防止対策の元である設計基準事象(DBE)により安全設計の妥当性を確認している。DBEを超える事故については、立地評価として、適切な立地を確保することで安全を確保するものとされており,設計の妥当性と関連付けられてはいない。
③ すなわち、現行規制の中でも、設計基準事象(DBE)を超える事故への対応はなされているのである。となると、シビアアクシデントを、この立地評価の中で、どのように位置づけるかが問題であると考える。
④ 自分としては、シビアアクシデント規模の事故は、立地評価の中の仮想事故の中に包含されていると思うので、設置許可段階の規制としてシビアアクシデントに関する規制を導入することは過剰な規制ではないかと思う。つまり、シビアアクシデントに関する規制は、設置許可とは別枠の規制であるべきではないかと思う。
⑤ 現在、シビアアクシデント対策類似のモノとして、日本では、運転管理段階でアクシデントマネージメント(AM)対策を実施しているが、それは、このように、設置許可段階ではシビアアクシデントを立地の観点からではあるものの,規制していると考えているからである。
⑥ 運転管理段階におけるAM対策では、適切な施設であるか否かのチェックがなされないとの批判がある。しかし、シビアアクシデント対策自体、設備規制になじまないモノが多いのではないか。
⑦ 仮に、AM対策特有の設備対応が必要な部分があるならば、それに対する設備規制を別途設けるのがDBE対応とシビアアクシデント対応の位置づけを明確にした規制体系になると考える。
⑧ 既存の制度を活用するならば、AM対策に必要な設備について、基準を設けた上で、工事計画認可等で、具体的な設備の詳細設計について申請させ、当該申請を基礎に規制を課すことも規制の方法論としては成り立つと思う。
⑨ 設置許可における施設関係の規制は、工事計画認可等で具体的な設備として規制されていくのは前述のとおりであるが、工事計画認可等の規制対象を、設置許可から流れるモノに限定する必要はない。
⑩ 運転管理段階で、AM対策を実施することを前提に、工事計画認可等の段階で、AM対策に必要な設備にとして規制することがあっても問題はないモノと考えられる。

Ⅲ 今後の炉規制法のあり方について
○ 今後の炉規制法改正の方向性だが、手続き重視の英米法系(NRC流)で行くのか、実体安全を重視する大陸法系(IAEA流)で行くのか、それを決めることが重要であると考える。
○ 次に、実用炉(軽水炉)だけの安全規制法を作るべきかと思う。現行の炉規制法は、廃棄物処分も、サイクル施設も、研究炉も、実用炉も、一律に規制している。しかし、各々、状況が異なるし、特に、実用炉では標準化も進んでいるので、別に規制すべきかと思う。
○ また、これだけ、標準化が進んでいる軽水炉については、トピカルレポート制度を活用し、現時点でも、(実質的な)型式認証制度を導入することは可能かと思われる。
その際、設置許可等の申請手続きを行うことは必要だが、安全審査においては、従前、既にチェックしてある(炉型)と、申請された原子炉とが同一ならば、安全審査を簡略する等の手法は採用できるはずと思う。
以 上


【注】高橋利文最高裁調査官は,「最高裁判所判例解説民事篇平成4年度」において,以下のとおり述べている。
a.本判決が,安全審査・判断の過程に「看過し難い過誤,欠落」がある場合に限って,原子炉設置許可処分が違法となると判示しているのは,安全審査・判断の過程に過誤,欠落があったとしても,それが軽微なものであって重大なものでない場合には,多角的・総合的な判断である被告行政庁の判断が不合理なものとなるものではないという趣旨であろう。
b.本判決は,「現在の科学技術水準に照らし」としているが,どの時点の科学技術水準により判断すべきかは,科学的経験則の問題であり,従来の科学的知識の誤りが指摘され,従来の科学的知識に誤りのあることが現在の学界の通説的見解となったような場合には,現在の通説的見解(これが当該訴訟において用いられるべき経験則である。)により判断すべきであろう。
c.処分当時の科学的知識によれば,当該基本設計が講じている事故防止対策で十分安全であると判断される場合であっても,現在の通説的な科学的知識によれば,当該事故防止対策は不十分であり,その基本設計どおりの原子炉を設置し,将来,これを稼働させた場合には,重大な事故が起こる可能性が高いと認定判断されるときには,当該原子炉の安全性を肯定した設置許可処分は違法であるとして,これを取り消すべきであろう。


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