東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■18条 原子力損害賠償紛争審査会 その7 原子力損害の範囲の判定等に関する第二次指針

■18条 原子力損害賠償紛争審査会 その7 原子力損害の範囲の判定等に関する第二次指針


東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第二次指針
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/houkoku/1306698.htm

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「東京電力(株)福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第二次指針」

平成23年5月31日
原子力損害賠償紛争審査会

第1 はじめに
1 平成23年4月28日に「東京電力(株)福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する第一次指針」(以下「第一次指針」という。)を決定・公表した。
 第一次指針においては、その対象とされなかった損害項目やその範囲、具体的な損害額算定方法等について、今後検討することとされた。

2 これを受けて、このたびの指針(以下「第二次指針」という。)においては、第一次指針の対象とされなかった損害項目や範囲のうち現時点で追加的に提示することが可能な事項につき、基本的な考え方を明らかにするとともに、同指針の対象とされた損害項目の一部につき具体的な損害額算定方法の考え方を明らかにする。
 具体的には、①「政府による避難等の指示に係る損害」として、「一時立入費用」、「帰宅費用」、「精神的損害(避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害)」、「避難費用の損害額算定方法」、「避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害の損害額算定方法」、②「政府等による出荷制限指示等に係る損害」として、「出荷制限指示等の対象品目の作付断念に係る損害」、「出荷制限指示等の解除後の損害」、③「政府等による作付制限指示等に係る損害」及び④「いわゆる風評被害」を対象とした。

3 なお、第一次指針及び第二次指針で対象とされなかったものが賠償すべき損害から除外されるものでないことは、第一次指針の「第1 はじめに」の2で述べたとおりであり、これらについても、今後検討する。

第2 政府による避難等の指示に係る損害
[損害項目]
1 一時立入費用
(指針)
政府の指示により避難等した者のうち、警戒区域(避難区域でもある。以下同じ。)内に住居を有する者が、市町村が政府及び県の支援を得て実施する「一時立入り」に参加するために自己負担した交通費、家財道具移動費用、除染費用等(前泊や後泊が不可欠な場合の宿泊費等も含む。以下同じ。)は、必要かつ合理的な範囲内において、賠償の対象となる。
(備考)
1) 政府による避難等の指示を受けて対象区域に係る避難等を余儀なくされた者のうち、原則として立入りが禁止されている警戒区域(東京電力(株)福島第一原子力発電所から半径20km圏内)の中に住居を有している者(但し、同発電所から半径3km圏内に住居を有している者などを除く。)は、平成23年5月10日以降、当面の生活に必要な物品の持ち出し等を行うことを目的として市町村が政府及び県の支援を得て実施する「一時立入り」に参加して一時的に住居に戻ることが可能となった。
 その「一時立入り」の方法は、参加者が「一時立入り」の出発点となる集合場所(中継基地)に集合し、地区ごとに専用バスで住居地区まで移動することとなっている。
2) しかしながら、対象区域外滞在をしている場所から上記集合場所までの移動に際して、その往復の交通費等の自己負担が発生する場合、また、上記集合場所から住居地区までの交通費、人及び物に対する除染費用、家財道具(自動車等を含む。)の移動費用等について、自己負担が発生する場合も否定できない。
 このような「一時立入り」への参加に要する費用についても、本件事故により避難等を余儀なくされた者が、同事故による放射性物質の放出により住居を含む警戒区域内への立入りが原則として禁止されたことに伴い、住居から当面の生活に必要な物品の持ち出し等を行うために必要な費用であるから、本件事故と相当因果関係のある損害と認めることができる。
 したがって、上記のように「一時立入り」に参加するために参加者が自己負担した交通費、家財道具移動費用、除染費用等(前泊や後泊が不可欠な場合の宿泊費等も含む。以下同じ。)については、それが必要かつ合理的な範囲内において、賠償の対象となる。
3) なお、その際の交通費等の算定方法については、後記[損害額算定方法]の1に同じ。

2 帰宅費用
(指針)
 本件事故により避難等を余儀なくされた者が、対象区域内の住居に戻るために負担した交通費、家財道具の移動費用は、必要かつ合理的な範囲内において、賠償すべき損害となる。
(備考)
1) 平成23年4月22日に屋内退避区域の指定が解除されたことに伴い、対象区域外滞在をしていた者の一部は、同区域内にある住居に戻ることが可能となった。
 そして、このように帰宅するために負担した交通費や家財道具の移動費用については、第一次指針の第3の2で述べた避難費用と同様、それが必要かつ合理的な範囲内において、賠償すべき損害となる。
2) なお、その際の交通費、家財道具移動費用の算定方法については、後記[損害額算定方法]の1に同じ。
3 精神的損害(避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害)
(指針)
Ⅰ) 本件事故により避難及びこれに引き続く対象区域外滞在を余儀なくされた者が、自宅以外での生活を長期間余儀なくされ、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛の部分については、賠償すべき損害と認められる。
Ⅱ) 同様に、本件事故により屋内退避を余儀なくされた者が、行動の自由の制限等を余儀なくされ、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛の部分については、賠償すべき損害と認められる。
(備考)
1) 第一次指針の第3の4の(備考)の2)で述べたように、本件事故による精神的苦痛のうち、少なくとも避難等対象者の相当数は、その状況に応じて、①避難及びこれに引き続く対象区域外滞在を余儀なくされたことに伴い、自宅以外での生活を長期間余儀なくされ、あるいは、②屋内退避を余儀なくされたことに伴い、行動の自由の制限等を長期間余儀なくされるなど、避難等による長期間の精神的苦痛(以下、併せて「避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害」という。)を被っており、少なくともこれについては賠償すべき損害と観念することが可能である。
 したがって、この精神的損害については、合理的な範囲内において、賠償の対象となる。
なお、この精神的損害の算定方法については、後記[損害額算定方法]の2に記載する。
2) その他の本件事故による精神的苦痛として、例えば相当量の放射線に曝露したため健康状態に対する具体的な不安感を抱くことによる精神的苦痛など、様々なものが考えられるが、これらが賠償の対象となる損害に該当するか否かを含め、今後、引き続き検討する。

[損害額算定方法]
1 避難費用の損害額算定方法
(指針)
Ⅰ) 避難費用のうち「交通費」、「家財道具移動費用」、「宿泊費等」については、避難等した者が現実に自己負担した費用が賠償の対象となり、その実費を損害額とするのが合理的な算定方法と認められる。
 但し、領収証等による損害額の立証が困難な場合には、客観的な統計データ等を用いて推計することにより損害額を立証することも認められるべきである。
Ⅱ) 他方、避難費用のうち「生活費の増加費用」については、原則として、避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害の額に加算し、その加算後の一定額をもって両者の損害額とするのが合理的な算定方法と認められる。
 その具体的な方法については、後記[損害額算定方法]の2のとおりである。
(備考)
1) 第一次指針においては、避難費用のうち「交通費」及び「家財道具移動費用」については、実費を賠償する方法が原則であるが、被害者の早期の救済のため一定金額を平均的な損害額と算定した上、対象者全員に一律に支払うことが考えられるとし、その平均的損害額については今後早急に検討するとしていた(第一次指針の第3の2(備考)2)参照)。
 また、避難費用のうち「宿泊費等」についても、宿泊場所等によって正義に反し公平さを欠く結果とならないよう、①実際に宿泊費等を負担したか否かにかかわらず、避難生活を送っている者全員に平均的な宿泊費等を一律に賠償することとするか、あるいは、②体育館、公民館、避難所等に宿泊する場合には、精神的苦痛がより大きいとして慰謝料の金額を増額するなど、一定の調整をする方法が考えられるが、これらについてできるだけ早急に検討するとしていた(第一次指針の第3の2(備考)4)参照)。
2) しかしながら、その後に避難等した者らの避難状況及び支出状況等を一定程度調査したところによれば、一回的な支出である「交通費」及び「家財道具移動費」については、これらを自己では負担していない者も少なくなく、また、最終避難先が全国に及び、その交通手段が多様化していることから、自己負担している者の間でもその金額には相当の差異があると推定された。また、「宿泊費等」についても、地方公共団体等が負担している場合が多く、継続して自己負担している者は比較的少数に止まると認められる上、自己負担した金額も宿泊場所に応じて相当の差異があると推定された。したがって、これらの損害項目につき、一定額を「平均的損害額」として避難等した者全員に賠償するという方法は、必ずしも実態に即しておらず、また、公平でもないと考えられる。
 また、原則どおり実費賠償とした場合、費用の立証が問題になるが、仮に領収証等でその金額を立証することができない場合には、客観的な統計データ等により損害額を推計する方法、例えば自己所有車両で避難した場合の「交通費」であれば、避難先までの移動距離からそれに要したガソリン代等を算出し、また、「宿泊費等」であれば、当該宿泊場所周辺における平均的な宿泊費等を算出してこれを損害額と推計するなどの方法で立証することも認められるべきである。こうした対応により、これらの費用につき、原則どおり実費賠償としたとしても、被害者に特段の不利益を生じさせるとまでは認め難い。
 以上のことから、避難費用のうち「交通費」、「家財道具移動費」、「宿泊費等」については、対象者が全員同一の平均的損害額を被った、あるいは、平均的費用を負担したと仮定して金額を算定するとの方法を採ることなく、原則どおり、上記各損害項目を自己負担した者のみが、合理的な範囲内において、その実費の賠償を受けるのが公平かつ合理的である。
3) 他方、避難費用のうち「生活費の増加費用」については、第一次指針において、避難等により増加した食費等は賠償の対象となり得るとしていた(第一次指針の第3の2(備考)3)参照)。
 しかしながら、避難等により生ずる「生活費の増加費用」は、避難等した者の大多数に発生すると思われる上、通常はさほど高額となるものではなく、個人ごとの差異も少ない反面、その実費を厳密に算定することは実際上極めて困難であり、その立証を強いることは被害者に酷である。
 また、この「生活費の増加費用」は、避難等及びこれに引き続く対象区域外滞在又は屋内退避における生活状況等と密接に結びつくものであることから、「避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害」に加算して、両者を一括して一定額を算定することが、公平かつ合理的であると判断した。
 但し、上記のように「避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害」の加算要素として一括して算定する「生活費の増加費用」は、あくまで通常の範囲の費用を想定したものであるから、避難等した者の中で、特に高額の「生活費の増加費用」の負担を余儀なくされた者がいた場合には、そのような高額な費用を負担せざるを得なかった特別の事情がある場合にのみ、別途、合理的な範囲内において、その実費の賠償が認められる。

2 避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害の損害額算定方法
(指針)
Ⅰ) 避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害の損害額については、前記[損害額算定方法]の1の「生活費の増加費用」と合算した一定の金額をもって両者の損害額と算定するのが合理的な算定方法と認められる。
Ⅱ) また、具体的な算定に当たっては、宿泊場所等によって、生活環境、利便性、プライバシー確保等の点からみて精神的苦痛の程度は異なると考えられるため、以下の順序で段階的に金額の差を設けることが考えられるが、なお引き続き検討する。
① 避難所・体育館・公民館等
② アパート・借家・公営住宅・仮設住宅・実家・親戚方・知人方等
③ ホテル・旅館等
Ⅲ) また、④屋内退避を長期間余儀なくされた者については、自宅で生活しているという点では上記①ないし③のような精神的苦痛は観念できないが、他方で、外出等行動の自由を制限されていることなどを考慮し、上記③の金額を超えない範囲で損害額を算定することが考えられるが、なお引き続き検討する。
(備考)
1) 第一次指針においては、「避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害」については、①避難等における生活状況等に応じて避難等対象者を類型化した上、段階的かつ合理的な差を設けるなどして、類型化された対象者ごとに共通する一定の精神的損害及びこれに対する賠償額を認めることや、②宿泊場所にかかわらず一定額を算定して、これをもって両者を併せた損害額と認定することなどが考えられ、あわせて今後検討するとしていた(第一次指針の第3の4(備考)3)参照)。
しかしながら、前記[損害項目]の1の(備考)2)のとおり、「宿泊費等」については、避難等をした者の避難状況及び支出状況に照らせば、実際に負担した実費を賠償させることとしても被害者の速やかな救済にとって必ずしも支障とはならず、かえって公平かつ合理的であると判断した。
 したがって、上記①の手法が合理的であると判断するに至った。
2) また、前記[損害項目]の1の(備考)3)で述べたとおり、避難費用のうち「生活費の増加費用」は、原則として、「避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害」に加算して、両者を一括して一定額を算定することが、公平かつ合理的であると判断した。
そして、避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害については、少なくとも一定期間の対象区域外滞在又は屋内退避を余儀なくされたことによるものに限り、賠償の対象とすべきであることからすれば、損害額の算定方法としても、例えば1か月当たりの金額で算定する方法が考えられるが、なお引き続き検討する。

第3 政府等による出荷制限指示等に係る損害
1 出荷制限指示等の対象品目の作付断念に係る損害
(指針)
Ⅰ) 農林業者が、政府等による出荷制限指示等(第一次指針第5の「政府等による出荷制限指示等」をいう。以下同じ。)により、同指示等に係る対象品目の作付けの全部又は一部の断念を余儀なくされ、これによって減収が生じた場合には、その減収分が賠償すべき損害(営業損害)と認められる。
 また、上記作付けの断念により生じた追加的費用(苗の廃棄費用等)も合理的な範囲内において賠償すべき損害(営業損害)と認められる。
Ⅱ) 政府等による出荷制限指示等により、同指示等に係る対象品目の作付けの全部又は一部の断念を余儀なくされ、これにより農林業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、かかる勤労者について、給与等の減収が賠償すべき損害と認められる。
(備考)
1) 第一次指針の第5の1で述べたとおり、農林漁業者が、政府等による出荷制限指示等により、同指示等に係る対象品目の出荷又は操業の断念を余儀なくされ、これによって減収が生じた場合には、その減収分及び追加的費用は合理的な範囲内において賠償すべき損害と認められる。
 これに加え、農林業者の場合には、農林産物の作付けから出荷まで相当期間を要するという特徴があることから、政府等による出荷制限指示等により作付け自体が制限されるわけではないものの、現に出荷制限指示等が出され、その解除の見通しが立たない状況下であれば、その作付けの全部又は一部を断念することもやむを得ない場合が多いと思われることから、その判断が不合理である場合を除き、作付けの断念によって生じた減収分及び追加的費用並びに就労不能等に伴う損害も、賠償すべき損害と認められる。
2) 減収分の算定方法は、第一次指針の第3の5(営業損害)と同じである。また、就労不能等に伴う損害については、第一次指針の第3の6の(備考)の1)ないし5)に同じ(但し、避難等に特有の通勤困難等の部分は除く。)。

2 出荷制限指示等の解除後の損害
(指針)
Ⅰ) 農林漁業者が、政府等による出荷制限指示等により、同指示等に係る対象品目の出荷、操業又は作付けの断念を余儀なくされ、同指示等の解除後においても、これによって減収が生じた場合には、その減収分も賠償すべき損害と認められる。
Ⅱ) また、同指示等の解除後において、上記の出荷、操業又は作付けの再開のために必要な追加的費用(農地や機械の再整備費等)も、合理的な範囲内において、賠償すべき損害と認められる。
(備考)
減収分の算定方法は、第一次指針の第3の5(営業損害)と同じである。

第4 政府等による作付制限指示等に係る損害
[対象区域及び品目]
 政府による作付制限指示、放牧及び牧草等の給与制限指導等又は地方公共団体が本件事故に関し合理的理由に基づき行う作付けその他の営農に係る自粛要請等(生産者団体が政府又は地方公共団体の関与の下で本件事故に関し合理的理由に基づき行う場合を含む。以下「政府等による作付制限指示等」という。)があった区域及びその対象品目に係る損害を対象とする。

[損害項目]
1 営業損害
(指針)
Ⅰ) 農業者が、政府等による作付制限指示等により、同指示等に係る対象品目の作付け、放牧、牧草等の給与その他の営農に関する行為(以下「作付け等」という。)の全部又は一部の断念を余儀なくされ、これによって減収が生じた場合には、その減収分が賠償すべき損害と認められる。
Ⅱ) また、作付け等の断念により生じた追加的費用(代替飼料の購入費用等)も合理的な範囲内において賠償すべき損害と認められる。
(備考)
1) 減収分の算定方法は、第一次指針の第3の5(営業損害)と同じである。
2) なお、政府等による作付制限指示等がなされる前に、当該指示等の対象品目につき、自主的に作付け等を断念していたものについては、これも本件事故の発生により合理的な判断に基づいて実施されたものと推認でき、これを賠償対象から除外すべき合理的な理由はないから、本件事故日以降のものが賠償すべき損害と認められる。

2 就労不能等に伴う損害
(指針)
政府等による作付制限指示等により、対象品目を生産する農業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、かかる勤労者について、給与等の減収が賠償すべき損害と認められる。
(備考)
 第一次指針の第3の6の(備考)の1)ないし5)に同じ(但し、避難等に特有の通勤困難等の部分は除く。)。

第5 いわゆる風評被害
1 一般的基準
(指針)
Ⅰ) いわゆる風評被害については確立した定義はないものの、この指針で「風評被害」とは、報道等により広く知らされた事実によって、商品又はサービスに関する放射性物質による汚染の危険性を懸念し、消費者又は取引先が当該商品又はサービスの買い控え、取引停止等を行ったために生じた被害を意味するものとする。
Ⅱ)「風評被害」についても、本件事故と相当因果関係のあるものであれば賠償の対象とする。その一般的な基準としては、消費者又は取引先が、商品又はサービスについて、本件事故による放射性物質による汚染の危険性を懸念し、敬遠したくなる心理が、平均的・一般的な人を基準として合理性を有していると認められる場合とする。
Ⅲ) 具体的にどのような「風評被害」が本件事故と相当因果関係のある損害と認められるかは、業種毎の特徴等を踏まえ、営業や品目の内容、地域、損害項目等により類型化した上で、次のように考えるものとする。
① 一定の範囲の類型については、本件事故以降に現実に生じた買い控え等による被害(Ⅳ)に相当する被害をいう。以下同じ。)は、原則として本件事故との相当因果関係が認められるものとする。
② ①以外の類型については、本件事故以降に現実に生じた買い控え等による被害を個別に検証し、Ⅱ)の一般的な基準に照らして、本件事故との相当因果関係を判断するものとする。その判断の際に考慮すべき事項については、この指針又は今後作成される指針において示すこととする。
Ⅳ) 損害項目としては、消費者又は取引先が商品又はサービスの買い控え、取引停止等を行ったために生じた次のものとする。
① 営業損害
取引数量の減少又は取引価格の低下による減収分及び合理的な範囲の追加的費用(商品の返品費用、廃棄費用等)
② 就労不能等に伴う損害
①の減収により、事業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合の給与等の減収
③ 検査費用(物)
取引先の要求等により実施を余儀なくされた検査の費用
(備考)
1) いわゆる風評被害という表現は、人によって様々な意味に解釈されており、放射性物質等による危険が全くないのに消費者や取引先が危険性を心配して商品やサービスの購入・取引を回避する不安心理に起因する損害という意味で使われることもある。しかしながら、少なくとも本件事故のような原子力事故に関していえば、むしろ必ずしも科学的に明確でない放射性物質による汚染の危険を回避するための市場の拒絶反応によるものと考えるべきであり、したがって、このような回避行動が合理的といえる場合には、原子力損害として賠償の対象となる。
 このような理解をするならば、そもそも風評被害という表現自体を避けることが本来望ましいが、現時点でこれに代わる適切な表現は、裁判実務上もいまだ示されていない。また、この種の被害は、避難等に伴い営業を断念した場合の営業損害とは異なり、報道機関や消費者・取引先等の第三者の意思・判断・行動等が介在するという点に特徴があり、一定の特殊な類型の被害であることは否定できない。
 したがって、上記のような誤解を招きかねない点に注意しつつ、Ⅰ)で定義した「風評被害」という表現を用いることとする。
2) 「風評被害」には、農林水産物等の食料に限らず、商品一般、あるいは、商品以外の無形のサービス(例えば観光業において提供される各種サービス等)に係るものも含まれる。
3) そもそも「風評被害」は、その外延が必ずしも明確ではなく、本件事故との相当因果関係は最終的には個々の事案毎に判断するべきものであるが、このような被害についても、相当因果関係が認められる蓋然性が特に高い類型や、相当因果関係を判断するに当たって考慮すべき事項を示すことは、本件事故に係る紛争解決に当たっての有効な指針となると考える。
Ⅲ)①の類型に該当する損害については、それが本件事故後に生じた買い控え等による被害である場合には、それだけで原則として本件事故と相当因果関係のある損害と推認されるものとする。
 第二次指針においては、差し当たって、現時点においてⅢ)①の類型に該当すると判断できたものに限って提示することとし、それ以外のものについても、今後、原則として本件事故との相当因果関係を認め得る類型と判断できたものをⅢ)①の類型として追加して提示することを検討する。
 そして、上記判断に当たっては、商品・サービスの取扱量、価格等の市場動向の推移が重要な要素となるが、それ以外にも、風評被害を防止するための各種対策の状況(例えば、製造業等に関する平成23年4月22日の経済産業大臣による下請中小企業との取引に関する配慮の要請等)が講じられていることなども要素となる。
4) Ⅲ)①の類型の範囲は、損害項目によって異なり得る。
5) なお、上記のように、第二次指針及び今後の指針においてⅢ)①の類型として提示するものは、原則として本件事故との相当因果関係を肯定し得る類型と判断したものであるが、本件事故と相当因果関係のある「風評被害」はこれらに限定されない。Ⅲ)①の類型に該当しなかった「風評被害」(Ⅲ)②の「風評被害」)についても、別途、本件事故と相当因果関係がある損害であることが立証された場合には、賠償の対象となる。
 その場合の立証の方法としては、例えば、客観的な統計データ等による合理的な立証方法を用いることが考えられる。
6) 本件事故と他原因(例えば、東日本大震災自体による消費マインドの落ち込み等)との双方の影響が認められる場合には、本件事故と相当因果関係のある範囲で賠償すべき損害と認められる。
7) なお、「風評被害」は、上記のように当該商品等に対する危険性を懸念し敬遠するという消費者・取引先等の心理的状態に基づくものである以上、そこには一定の時間的限界がある。
 但し、いまだ本件事故が終息していない現状においては、具体的にその終期を示すことは困難であり、今後の状況を踏まえて引き続き検討する。
8) 「風評被害」における減収分の算定方法は、第一次指針の第3の5(営業損害)と同じである。
9) 就労不能等に伴う損害は、第一次指針の第3の6の(備考)の1)ないし5)と同じ(但し、避難等に特有の通勤困難等の部分は除く。)である。

2 農林漁業の「風評被害」
(指針)
Ⅰ) 農林漁業において、本件事故以降、現実に生じた買い控え等による被害のうち、少なくとも次に掲げる産品に係るものについては、1Ⅲ)①の類型として、原則として本件事故との相当因果関係が認められる。
① 農林産物(畜産物を除く。)に係る政府等による出荷制限指示等(平成23年4月までのものに限る。)が出されたことがある区域(県又は市町村単位。以下同じ。)において産出された全ての農林産物(畜産物を除き、食用に限る。)
②畜産物に係る政府等による出荷制限指示等(同年4月までのものに限る。)が出されたことがある区域において産出された全ての畜産物(食用に限る。)
③ 水産物に係る政府等による出荷制限指示等(同年4月までのものに限る。)が出されたことがある区域において産出された全ての水産物(食用に限る。)
Ⅱ) Ⅰ)の産品について、農林漁業者が買い控え等による被害を懸念し、事前に自ら出荷、操業又は作付けの全部又は一部を断念したことによって生じた被害も、かかる判断がやむを得ないものと認められる場合には、原則として本件事故との相当因果関係が認められる。
(備考)
1) 食品である農林水産物については、以下の特徴が認められる。
① 消費者が摂取により体内に取り入れるものであることから、放射性物質による内部被曝を恐れ、特に敏感に敬遠する傾向がある。
② 農地、漁場等で生育する動植物であり、放射性物質による土地や水域の汚染の危険性への懸念が、これら農林水産物への懸念に直結する傾向がある。
③ ある地域に関して一部の対象品目につき暫定基準値を超える放射性物質が検出されたため政府等による出荷制限指示等があった場合には、同じ地域にある同一類型(農林産物・畜産物・水産物)の別の品目についても同様の量の放射性物質が付着したのではないかとの懸念が生じやすい。
④ 食品である農林水産物は、日常生活に不可欠なものであり、また、通常はさほど高価なものではないから、東日本大震災自体による消費マインドの落ち込みという原因で買い控え、取引停止等に至ることは通常は考えにくい。他方、代替品として他の生産地の物を比較的容易に入手できるので、それに対応して、買い控え、取引停止等も比較的容易に起こりやすい。
2) 食品である農林水産物については、上記のような特徴があるため、政府等による出荷制限指示等があった区域においては、出荷制限指示等が解除されたとしても、一定期間は、その対象品目に限らず、同区域内で生育した同一の類型(農林産物・畜産物・水産物)の農林水産物につき、消費者や取引先が放射性物質の付着及びこれによる内部被曝等を懸念し、取引等を敬遠するという心情に至ったとしても、平均的・一般的な人を基準として合理性があると認められる。
3) なお、農林漁業における「風評被害」の実態が必ずしも判明していない現時点においては、差し当たって本件事故との相当因果関係が認められる蓋然性が高いⅠ)の産品を類型化し提示することとした。Ⅰ)以外の産品については、引き続き市場動向等の調査、分析等を行った上で、今後検討する。

3 観光業の「風評被害」
(指針)
 本件事故以降、現実に生じた観光業に関する解約・予約控え等による被害のうち、少なくとも本件事故発生県に営業の拠点がある観光業については、本件事故及びその後の広範囲にわたる放射性物質の放出が原因で、消費者等による解約・予約控え等があった蓋然性が高いことから、本件事故後に観光業に関する解約・予約控え等による減収が生じていた事実が認められれば、1Ⅲ)①の類型として、原則として本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。
 但し、観光業における減収については、東日本大震災自体による消費マインドの落ち込みという理由による蓋然性も相当程度認められるから、損害の有無の認定及び損害額の算定に当たってはその点についての検討も必要である。
(備考)
1) いわゆる「観光業」は、ホテル、旅館、旅行業等の宿泊関連産業から、レジャー施設、旅客船等の観光産業やバス、タクシー等の交通産業、観光地での飲食業や小売業等までも含み得るが、これらの業種に関して観光客が売上に寄与している程度は様々であり、個別具体的な損害額の算定に当たっては、これらの事情も十分検討する必要がある。
2) 但し、一般的には、これら観光業について、以下の特徴が認められる。
① 観光業は、観光客が当該地域に足を運ぶことを前提とするものであるから、放射性物質による土地や水域の汚染の危険性への懸念が、これら地域における観光への懸念に直結する傾向がある。
② 観光業における各種サービスは、日々消費する食品等とは異なり、日常的な消費を必要とする物ではないため、ひとたび「風評被害」が生じると、各種サービスの利用は一気に落ち込むことになりやすく、さらに、観光業は、観光地域の食品や観光資源を目的に観光を行う消費者に複合的なサービスを提供する産業であるから、ひとたび「風評被害」が生ずると、個別サービスの利用が低下するだけでなく、サービス全体、すなわち当該地域の観光産業全体に影響を与える傾向が認められる。
3) 観光業については、上記のような特徴があるため、特に本件事故発生県全域においては、消費者等が放射性物質による被曝を懸念し、観光を敬遠するという心情に至ったとしても、平均的・一般的な人を基準として合理性があると認められる上、その影響は当該地域の観光産業全体に影響を与え得ると認められる。
 したがって、当該県内に営業拠点を有する観光業において、本件事故後、解約・予約控え等による減収分が認められた場合には、その減収分が他の原因によるものであるとの合理的な疑いがない限り、これらによる減収分及び追加的費用(廃棄費用等)は、原則として本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。
 なお、本件事故の影響により観光業に関する解約・予約控え等による減収が生じたのは、必ずしも本件事故発生県に営業拠点を有する観光業に限られず、同県以外に営業拠点を有する同県に関する観光業や、同県の近辺における観光業においても生じた可能性は十分認められる。しかし、必ずしも「風評被害」の実態が判明していない現時点においては、差し当たって、本件事故発生県に営業拠点を有する観光業という類型を提示することとし、これ以外のものについては、引き続き市場動向等の調査、分析等を行った上で、今後検討することとした。
4) ところで、観光業については、東日本大震災自体による消費マインドの落ち込みという理由から観光業に関する解約・予約控え等に至った蓋然性も相当程度認められる、という点に特徴がある。
 したがって、本件事故発生県内に営業拠点を有する観光業に関して解約・予約控え等が生じた場合には、上記のとおり、一応は本件事故と相当因果関係のある「風評被害」によるものと推認することが可能であるが、上記のような他原因(東日本大震災自体による交通インフラの損壊や消費マインドの落ち込みによる解約・予約控え等)が影響を与えている蓋然性も相当程度あることから、その損害の有無の認定及び具体的な損害額の算定等に当たっては、他地域との比較を行うなどの検討が必要である。
(以上)

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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
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