東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・設置関係資料 その24 福島原発事故調査・検証委員会 中間報告

・設置関係資料 その24 福島原発事故調査・検証委員会 中間報告


http://icanps.go.jp/post-1.html
http://icanps.go.jp/111226Honbun6Shou.pdf


●中間報告のおもしろ箇所


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384頁以下

b 改訂耐震設計審査指針
 平成18 年9 月19 日に改訂された耐震設計審査指針では、津波に関しては、施設の周辺斜面の崩壊等とともに地震随伴事象として、「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」を「十分考慮したうえで設計されなければならない。」と記述されており、これが全てである。発電用原子炉施設の設計に当たり、必ず津波の影響を考慮するものとした初の指針であった。
 安全委員会事務局で本指針の改訂作業を担当した当時の課長は、当委員会によるヒアリングに対し、安全設計審査指針では、津波を最も過酷な自然現象の例として挙げているだけで、必ず津波を考慮すべきとは読めないため、改訂指針において頭出しをする必要があったとしている。
 この「極めてまれ」以下の表現ぶりは、同指針中で地震動に関して「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動」を適切に策定して耐震設計を行うこととしたことと表現ぶりを合わせたものとのことだが、津波に関して「極めてまれ」の意味するところについては具体的には書かれていない。なお、地震動に関しては、「設計上考慮する活断層として、後期更新世以降の活動が否定できないものとする。」(後期更新世以降とは、13 万年から12 万年前以降をいう。)との記述がある
 津波水位の評価方法や津波に対する安全設計の考え方についても、具体的な記述はない。
改訂指針では、地震学的見地からは策定された地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定できず、「残余のリスク」が存在することも初めて明記された。ただし、残余のリスクについては、改訂指針の「基本方針」の項に記載され、基本方針としては「・・・と想定することが適切な地震動による地震力に対して、その安全機能が損なわれることがないように設計されなければならない。」としているのに対し、残余のリスクについては同項の解説の中で策定地震動を上回る地震動の影響が施設に及ぶことによって生ずる様々なリスクとして記述されており、必ずしも想定津波を超える高さの津波等の地震動以外の地震力に起因するリスクを含む概念であるとは明記されていない

c 耐震設計審査指針改訂に係る主な議論等
 平成13 年7 月10 日の第1 回耐震指針検討分科会において、NUPEC の取りまとめた「平成12 年度原子力施設の耐震安全性に関する調査成果報告書」が資料として提出され、安全設計審査指針に基づいて安全性評価の行われている津波に関して、津波評価法の標準化の検討が土木学会で進められていること及び前記(2)のとおり関係省庁が津波評価の検討を行い「地域防災計画における津波対策強化の手引き」をまとめたことが紹介され、さらに口頭で津波に関する今後の検討の方向性としては、同報告書で記載されたものは特にないことが申し添えられている。このことについて特段の議論はなかったが、事務局として、検討の当初から津波評価が視野に入っていたことがうかがえる。
 平成13 年10 月30 日の第3 回分科会で、事務局より検討すべき項目の分類・整理案が提案され、検討すべき22 項目中、地震による二次的影響という項目の中で津波の評価方法が挙げられている。具体的には、地震による津波の影響を評価するための具体的な指針を明記すべきこと及び津波に関する安全性に関して①過去の津波評価、②津波シミュレーションによる評価、③設計津波高さの想定、④引き波に関する安全性等の検討が必要ということが挙げられている。
 その後、分科会の下に基本ワーキンググループ、施設ワーキンググループ及び地震・地震動ワーキンググループの三つのワーキンググループが置かれて議論が引き継がれ、津波を含む地震随伴事象に関しては、平成15 年2 月13 日の第6 回及び3 月20 日の第7 回の地震・地震動ワーキンググループにおいて議論が行われた。
 第6 回地震・地震動ワーキンググループでは、事務局より津波に対する安全性評価に関する資料が提出され、安全設計審査指針等の記述に基づく当時の基本的考え方、津波水位評価方法及び土木学会の津波評価技術について説明がなされた。
 これに対して様々な議論がなされたが、その一つとして、民間学協会が策定した手法を安全審査で採り入れようとしたときにどのようなプロセスを踏んで採り入れるのかというものがあった。これに対し、事務局からは、津波評価技術について、「『地域防災計画における津波対策の手引き』の取りまとめ等に関与した人々が参加して、民間手法としてある程度オーソライズされたものであり、教科書的な手法がない中では安全審査に使えるのではないか。」、また、「今後社団法人日本電気協会の電気技術指針等に反映されるのであろうが、その際にはパブリックコメント手続も含めて透明性の高い審議プロセスが取られるので、これを参考に安全審査できるのではないか。」といった回答がなされている。津波評価技術で示された津波の評価方法について、事務局担当者は、当委員会によるヒアリングに対し、既往津波の2 倍を超える波高程度に計算される方法であり、良いものではないかと単純に思っていたと述べている。
 また、他の議論として、土木学会の方法には津波の高さの評価は書かれているが、そのような津波に対して施設が安全かどうかの評価については書かれていないことや、津波水位のシミュレーションを行うに当たり、そもそも津波の何が原子力発電所のどこをどのように安全性を損なうおそれがあるのかを押さえるべきといった指摘があった。この点については、次の会合の際に追加資料を出すこととされたが、関連して、原子炉が停止した後でも崩壊熱の除去が必要で、どんなルートを通ってでも最後は海水に熱を逃がすことのできる設備の機能が維持されなければならないといった指摘がなされた。
 第7 回地震・地震動ワーキンググループでは、追加資料が事務局から出され、「止める」・「冷やす」・「閉じ込める」の機能のうち、津波は「冷やす」の部分に影響を与え得ること、非常用海水ポンプは耐震As クラスとして設計されており地震動への心配はないが、海抜の低いところに設置されることが多いため津波を考慮する必要があり、水密性を確保させることなどで安全審査を通した例があること等の説明があった。これに対し、安全審査に当たり、各原子力発電所でどこに津波に関する話が明示されているのか、原子炉設置許可申請書等に津波の話は出てこないではないかといった質問があり、指針上全く書かれていないわけではなく、申請書上も添付書類の水理のところで記述があるが、細かいことは書かれていないというイメージであること、津波に対する評価については、安全審査の中だけではなく、詳細設計の段階も含めて個別に審査されていることが確認された。
 この回の最後の方で、ある委員から、津波が本当に大切な問題と捉えるならば、この場で議論して安全委員会として津波に対する安全審査指針を作ればよいし、そうでないなら、今のところは行政庁に任せ、詳細設計の中で見ていけばよいといった発言があった。これに対し、グループリーダーは、今日はそこまで踏み込んだ議論をするつもりはなく、今後指針を検討する場合に、このような観点が非常に重要になろうというコメントで議論を取りまとめた。当該グループリーダーは、ワーキンググループは、意思決定の場というよりも、分科会のための議論の整理を行う場という役割分担であると事務局から聞かされており、それに従ったとの供述が得られている。
 これら2 回の議論以降、津波についてはワーキンググループで議論はなされず、平成16 年5 月26 日の第9 回耐震指針検討分科会で、地震・地震動ワーキンググループでの検討状況が報告された際にも、第7 回ワーキンググループで結論が持ち越された議論のまま両論併記の形で資料が作成された。耐震指針検討分科会では、この後津波に関して特に議論はなされなかった。
 ワーキンググループでの議論からかなり後になって、平成17 年12 月28 日の第34 回耐震指針検討分科会において、事務局より、津波の安全性評価に関する部分を含む改訂耐震設計審査指針の文案が提示された。その後、津波については多少の文言修正は行われたが、いずれの回も目立った意見はなかった。
 全体を通じて、津波に関して「極めてまれ」という文言や「残余のリスク」の意味合いに関する議論はなされなかった。「極めてまれ」の意味するところについては、地震動評価で対象としている活断層の活動期間である後期更新世以降に、1 回でも活動があるような地震による津波ならば対象に含まれるとイメージする関係者が少なからず存在した。しかし、数値シミュレーションは文献記録のある数百年前以降に起こった津波のデータから行うものであり、どの程度の期間に起きた津波が対象となるかについて、認識のギャップが存在した。
 「残余のリスク」についても、当委員会によるヒアリングに対し、当時の地震・地震動ワーキンググループのグループリーダーは、新指針の基本方針で、それに対し安全機能が損なわれることのないよう設計しなければならないとした「地震力」には津波の影響も含まれると主張するが、前記のとおり、残余のリスクについては、策定地震動を上回る地震動の影響が施設に及ぶことによって生ずる様々なリスクとして記述されており、必ずしも想定津波を超える高さの津波によるリスクを含むとは読めない表現ぶりにとどまっている。
 なお、当委員会によるヒアリングに対し、当時の地震・地震動ワーキンググループのグループリーダーは、「基本ワーキンググループには参加したが施設ワーキンググループには参加しておらず、施設側の議論の雰囲気は分からなかった。また、耐震指針検討分科会の主査とも、あまり頻繁に会って話をするというようなことはなかった。」と述べている



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439頁以下

(6)自然災害等についての事前対策
a 東京電力における自然災害等についての事前対策
 東京電力は、原子炉施設における地震、津波等の自然災害等を想定した上で、安全委員会が策定した安全設計審査指針、耐震設計審査指針等を踏まえ、原子炉施設が当該自然災害等に十分耐えられるような設計をし、それ自体が自然災害等への対策であるとの立場をとってきた。また、既設の原子炉施設については、耐震バックチェック等を通じて、改めて自然災害等に十分耐えられるかどうかを調査し、それへの耐性が十分でない場合には必要と考える対策工事を行うことにより対処してきた。社内でのかかる事前災害の想定、設計等は、原子力設備管理部原子力耐震技術センター(平成23 年2 月、新潟県中越沖地震対策センターから改称。以下「耐震技術センター」という。)等が担当していた。
 しかしながら、東京電力は、かかる事前の想定を超えた自然災害等が発生した場合のSA への対処方策を検討することまではしていなかった。当委員会によるヒアリングに対し、武藤栄顧問(取締役副社長兼原子力・立地本部長等を歴任)、小森明生常務取締役(元原子力・立地副本部長(原子力担当))(以下「小森常務」という。)及び吉田昌郎福島第一原発所長(元原子力設備管理部長)(以下「吉田所長」という。)を始めとする幹部や耐震技術センターのグループマネージャーらは、皆一様に、「設計基準を超える自然災害が発生することや、それを前提とした対処を考えたことはなかった。」旨述べたが、設計基準を超える自然災害が発生することを想定しなかった理由について明確な説明をした者はおらず、「想定すべき外部事象は無数にあるので、外部事象を想定し始めるときりがない。」旨供述した幹部もいた。吉田所長は、「平成19 年7 月の新潟県中越沖地震の際、柏崎刈羽原発において事態を収束させることができたことから、ある意味では設計が正しかったという評価になってしまい、設計基準を超える自然災害の発生を想定することはなかった。」旨述べており、かかる供述は、東京電力において、設計基準を超える自然災害が発生することを想定した者がいなかったことの一つの証左といえる
 また、事前の想定を超えた自然災害が発生した場合のSA への対処方策の策定に当たっては、ある特定の部署だけが検討するのでは不十分であり、総合的、横断的な検討が必要となるところ、小森常務は、この点につき「自然災害への対策を検討するという見地から新潟県中越沖地震対策センターを新設したのであるが、同センターにおいても、後記bのとおり、ワーキングが立ち上げられるまでは横断的な検討がなされていなかったようであり、今になって指摘されれば、社内において、自然災害に対する総合的な対策を実施する意識や体制が不十分であったかもしれない。」旨述べている


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445頁以下

5 津波対策・シビアアクシデント対策についての基本的な考え方
(1)想定津波以上の規模の津波の可能性
 土木学会原子力土木委員会津波評価部会の首藤主査は、総説「津波」(『電力土木』電力土木技術協会、1988 年11 月)の中で、
「どの様に大きな構造物を作ったとしても,それを上回る津波が来襲する恐れは常に存在する。」「強度や安定性の検討には,波力や洗掘力の詳細な推定を必要とする。・・・にもかかわらず,これらの大きさを的確に推定する方法はまだ存在しない。したがって,主要施設については,少なくとも既往の巨大津波の到達域外に建造するのが安全である。」「意外と見過ごされているのが,浸水による機能障害である。既往実績あるいはそれを元にした数値計算の結果,浸水域外となったとしても,浸水の可能性が全く無いわけではない。・・・計画時の浸水域外のため防水を考慮してない電気系統などが,塩水に浸かつて障害を起こす。」
と記述しており、今回の調査過程で行われたヒアリングにおいても、
「津波は地震から完全に説明できるわけではなく、局所的に波高が高くなったりすることもある。原発ではいかなる状況下でも確実に冷却系を動かさなくてはならないが、非常時に使用する電源系などは少しでも水に濡れたら機能不全に陥る。少なくとも冷却補機は必ず動くように言い続けてきた。」
としている。この考え方は、原子力発電所の津波対策の本質を突いたものと思われたため、当委員会として、
 原子力施設の性格を考えると、再来するかも不確かだが、500 年から1000 年等と再来間隔が長く、規模も大きい可能性のある津波の可能性もあり、これを防潮堤等で対策しようというのは合理的でないが、多くの設備が被害を受けても冷却のための非常用設備だけは守れるような設計にするのが工学的に適した設計ではないか。多重防護の観点からは、例えば普通の構造物に対しては補正係数1.0 でよいが、非常用設備については2 倍や3 倍の高さにする等といった手立てを講じることが適切だったのではないか。
といった設計思想を関係者のヒアリングにおいて投げかけたところ、これに対する各社の受け止め方は以下のとおりであった

① 東京電力関係者
 理解はするが、2 段階にしなかった理由は、リスクが著しく大きなものではなかったことである。すなわち、津波は地震に随伴して発生する事象ではあるものの、取り扱う領域の広がり、そもそものモデル設定の考え方、設計用津波の設定方法等、当時の指針に基づく基準地震動設定とは策定方針自体は異なるものではあるが、平成14 年の津波評価技術策定時点では、算定される想定津波の波高は既往津波の2 倍程度となり、既往津波に相当すると考えられるS1 地震動の最大加速度振幅の1.5 倍程度になることの多かったS2 地震動に近いことから、津波評価技術に基づく津波水位はS2 地震動的な概念と考えた。このことを踏まえて、想定津波を超える確率はS2 地震動の発生確率として理解されていた10-4/年~10-5 /年(1 万年から10 万年に1 回発生)オーダー程度と考えた。その後、土木学会では平成15~17 年にリスクを確率論的に見積もる方向の検討が行われ、評価手法として未確立ではあるものの、その検討成果に基づいて福島第一原発のリスク評価を行ったところ、設計津波水位を超える確率は10-4/年オーダーであり、CDF の観点からリスクレベルとしては大きくないと認識した。
② 電力中央研究所関係者
 異論はない。コストとの兼ね合いはあるが、原子力発電所ならコストも見合うと思う。ただし、津波評価技術を事業者に受け入れられるものとする必要があった。そのためには数値的な考え方を打ち出すことが必要だが、再来期間のより長い不確かな津波については困難。不確かな津波については確率論的評価の中で対応しようと考えていた。
③ その他の関係者
 当委員会による関係者へのヒアリングにおいて、その他の学識経験者や行政官からは特に反論はなく、例えば、津波評価部会の委員も務めた佐竹教授からは、津波評価部会での議論は「2 倍や3 倍」にする前の高さの評価に関するものであり、2 倍、3 倍につながるような議論は当該部会の役割ではないと思っていたとの供述が得られている。また、東北大学大学院工学研究科の今村教授は、当時は決定論の限界を感じており、そのため確率論的評価の議論に進む必要があると認識していたが、それだけでなく、危機管理的な考え方による議論との2 本立てで進めるべきであったと述懐している。さらに、今村教授は、津波評価部会の第1期活動中には想定された設計津波水位を超えることへの危機感を持ってもらうチャンスがあったかも知れないが、第2 期以降は精度を向上させるという違う方向へ進んでしまったと述べている。


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2011-12-28 : ・設置関係資料2 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■4条 責任集中の原則 その16 プラントメーカーの責任

■4条 責任集中の原則 その16 プラントメーカーの責任

 原発の引き渡しを受けた時点から既に欠陥があったと仮定して。
 
 原発のプラントメーカーの責任について,誰に対する,どの損害についての責任かで分類してみると。

1 対第三者責任(原発事故の被害者に対する責任)
(1)「原子力損害」(原賠法2条2項,3条1項)について
 ・原賠法4条1項(責任集中)によって,「原子力事業者以外の者」として責任を負わない。
 ・原賠法4条3項で,製造物責任法の適用も排除されている。
〔なお,被害が外国に及んだ場合は,その地の法律によることになるだろうから,原賠法4条による免責は前提とされない。〕

(2)「原子力損害」以外の損害について
 ・原賠法4条は,同法3条の「原子力損害」の賠償を前提とする規定のなので,「原子力損害」以外の損害については,特に規定がないことから,被害者からプラントメーカーに民法709条や製造物責任法による責任追及の余地がある。
・民法709条 被害者がメーカーの故意又は過失を立証することが必要。
・製造物責任法 製造物の「欠陥」(当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていること)の立証で足る。
〔ただし,下級審の裁判例では,損害結果の類型については純粋経済損失等についても「原子力損害」は広く認められることから,「原子力損害」以外の損害に該当するものはきわめて限定される。また,製造物責任法自体が新しい法律で,平成7年7月1日の施行日以降に引き渡された製造物についてのみ適用されるので,今回の事故に至ったような古い原発はそもそも適用対象にならない。〕

2 対原子力事業者責任(たとえば東電に対する責任)
(1)「原子力損害」について
 ・原賠法2条2項の定義規定には,「この法律において「原子力損害」とは、核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害をいう。ただし、次条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者の受けた損害を除く」とあり,原発事故で原子炉が壊れたり,東電の所有物が汚染されたり,余計な燃料費がかかったり,そういった東電自身が被った損害は,「原子力損害」には,該当しないことになる。したがって,原子力事業者が自ら所有する原発の自己で「原子力損害」を被るということは論理的には無いことになろう。

(2)「原子力損害」以外の損害について〔東電自身が被った損害の全て〕
 ア 原子力事業者が原発事故被害者に支払った「原子力損害」の賠償金
 ・これは,求償の問題になるので,原賠法5条1項に規定があり,「第三条の場合において、その損害が第三者の故意により生じたものであるときは、同条の規定により損害を賠償した原子力事業者は、その者に対して求償権を有する。」とあり,プラントメーカーの「故意」が立証できた場合は求償請求可能だが,「故意」の立証は通常は困難である。また,この求償権については,原賠法5条2項で特約による排除が可能なので,おそらく契約上プラントメーカーは求償責任を負わないことになっているはず?。
 なお5条求償権については,こちらで論じた。

 イ 原子力事業者のいわば自損分(原子炉の損壊等)
 ・「原子力損害」ではないので原賠法4条によるメーカーの免責はないはず。
・原子力事業者と国外プラントメーカーとの具体的な契約関係については知らないが,国内で契約し,国内で完成させて引き渡すというだけなら国内私法の売買か請負等の規定が前提となるのか?。〔契約の態様,特約によっては,準拠法が日本の国内法としないことも可能か?〕
 1 債務不履行責任(民法415条)
 2 瑕疵担保責任(民法570条,商法526条)
 3 不法行為責任(民法709条)
↓ 
 以下のような仮定で考えてみる。
・プラントに「瑕疵」があった
・引き渡しを受けてから40年後の事故で,原子炉が壊れた。
・準拠法が国内法
・契約上,国内私法の任意規定の排除特約がない場合で
・商人間の取引で
・商事売買と同様に考えられる場合。
・現時点から見てプラントに欠陥があったしても,それが契約時の「仕様書」通りのものであったなら,債務不履行とは言えない。また,隠れたる瑕疵でもなく,瑕疵担保責任の問題はなく,なんの落ち度もないので不法行為にもならない。したがって,遅くとも引き渡し時点の技術水準で見て,「瑕疵」といえるようなものがあった場合を前提とする。
・引き渡しから40年後の事故だと仮定すると,除斥期間(民法724条)にかかっているので,不法行為に基づく損害賠償請求権は考えない。

A 隠れたる瑕疵について売り主が善意
 A1 6ヶ月以内の検査で判明する程度の瑕疵
   A1a 買い主が検査による瑕疵を発見し,通知義務(商法526条)を果たした。このような場合,そもそも事故は生じない?。なお,瑕疵担保責任(民法570条)については,「引き渡し」から10年(民法167条1項)で消滅時効にかかる(最判H13.11.27)。商事時効にかかるとすると5年(商法522条)。また,検査で瑕疵を発見していたなら,仮に瑕疵による不完全履行とみて民法415条による損害賠償請求権が観念できても,遅くとも瑕疵発見後5年ないし10年で時効によって消滅している。
   A1b 買い主が検査せず,又は,検査しても瑕疵を発見できなかった場合〔事故によって初めて瑕疵を知った〕。
 商法526条2項により、受領から6ヶ月経過していれば,瑕疵担保責任の追及はできない。また債務不履行責任の追及も同様にできない(判例,通説。最判S47.1.25)。
  A2 6ヶ月以内の検査では判明しえない瑕疵
  検査義務(商法526条1項)を尽くしても,6ヶ月以内に瑕疵は発見できない。
 商法526条2項の解釈にもよるが,通説的理解では,この場合も,上のA1bと同様に,買い主には,瑕疵担保責任も債務不履行責任も追及の余地がない。

B 隠れたる瑕疵について売り主が悪意
 この場合,商法526条3項により,同条2項の適用はないので,買い主が検査,通知義務を果たさなくとも,瑕疵担保責任と債務不履行責任の追及余地は残される。
 ただし,瑕疵担保責任ついては,「引き渡し」から10年で消滅時効にかかる(最判H13.11.27)。商事の場合は5年?。
 結局,知りながら何も告げず「瑕疵」あるものの引き渡しをするという不完全履行(信義則上の付随義務違反?)により,買い主は損害を被ったとして,悪意の売り主に民法415条の損害賠償請求をするということになるが,これについては,消滅時効の起算点の問題がある。本来の履行請求権と同一性のある損害賠償請求権については,本来の債務の履行請求時から時効進行となるが(最判S10.4.24),付随義務違反による損害発生の場合も同様に考えていいのか,事故による損害という拡大損害についても同様に考えていいのか,なぞ?。また,契約締結前の段階で,設計等に根本的欠陥があるのに,売り主がそれを秘していたため,契約締結にまで至ったような場合に,そもそも債務不履行責任の追及は可能かという問題もある(最判H23.4.22)。
 ただ、債務不履行責任の規定も任意規定なので、普通は特約での排除があるだろうし、そうでなくても原子力事業者もバカじゃないだろうから、売り主がはじめから瑕疵について悪意であるのに、買い主が長年その瑕疵に気づかずに経過して、その瑕疵が原因で原発事故に至るような事案は、実際にはあり得ないのかもしれない。


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条文

民法415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

民法416条(損害賠償の範囲)
1 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

民法566条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
1 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

民法570条(売主の瑕疵担保責任)
 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

民法572条(担保責任を負わない旨の特約)
 売主は、第五百六十条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

商法526条(買主による目的物の検査及び通知)
1 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。
2  前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が六箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。
3  前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。


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・土地建物,土壌等の汚染 その9 環境省 汚染廃棄物対策地域の指定の要件等を定める省令

・土地建物,土壌等の汚染 その9 環境省 汚染廃棄物対策地域の指定の要件等を定める省令

http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=18816&hou_id=14583
汚染廃棄物対策地域の指定の要件等を定める省令

○環境省令第三十四号
平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)第十一条第一項、第二十五条第一項、第三十二条第一項及び第三十六条第一項の規定に基づき、汚染廃棄物対策地域の指定の要件等を定める省令を次のように定める。

平成二十三年十二月十四日
環境大臣細野豪志
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汚染廃棄物対策地域の指定の要件等を定める省令

(定義)
第一条 この省令において使用する用語は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(以下「法」という。)において使用する用語の例による。

(汚染廃棄物対策地域の指定の要件)
第二条 法第十一条第一項の環境省令で定める要件は、第一号に該当し、第二号に該当しないこととする。
一 次のいずれかに該当すること。
イ 警戒区域設定指示(事故に関して原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第十五条第三項又は第二十条第三項の規定により内閣総理大臣又は原子力災害対策本部長(同法第十七条第一項に規定する原子力災害対策本部長をいう。以下同じ。)が市町村長に対して行った同法第二十八条第二項の規定により読み替えて適用される災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第六十三条第一項の規定による警戒区域の設定を行うことの指示をいう。ロにおいて同じ。)若しくは計画的避難指示(原子力災害対策特別措置法第二十条第三項の規定により原子力災害対策本部長が市町村長に対して行った避難のための計画的な立退きを行うことの指示をいう。ロにおいて同じ。)の対象区域であること、又はこれらの対象区域であったこと。
ロ その区域の大部分が警戒区域設定指示若しくは計画的避難指示の対象区域である市町村又はこれらの対象区域であった市町村の区域であること。
二 その区域内にある廃棄物(法第十一条第一項の規定による汚染廃棄物対策地域の指定後において対策地域内廃棄物に該当することとなるものに限る。)の収集、運搬、保管及び処分が相当程度実施されていることその他の事情から国が当該廃棄物の収集、運搬、保管及び処分を実施する必要があると認められない区域であること。

(除染特別地域の指定の要件)
第三条 前条の規定は、法第二十五条第一項の環境省令で定める要件について準用する。この場合において、前条第二号中「その区域内にある廃棄物(法第十一条第一号の規定による汚染廃棄物対策地域の指定後において対策地域内廃棄物に該当することとなるものに限る。)の収集、運搬、保管及び処分」とあるのは「その区域に係る除染等の措置等」と、「当該廃棄物の収集、運搬、保管及び処分」とあるのは「除染等の措置等」と読み替えるものとする。

(汚染状況重点調査地域の指定の要件)
第四条 法第三十二条第一項の環境省令で定める要件は、一時間当たり〇・二三マイクロシーベルト未満の放射線量とする。

(除染実施計画を定める区域の要件)
第五条 法第三十六条第一項の環境省令で定める要件は、一時間当たり〇・二三マイクロシーベルト未満の放射線量とする。


附則
この省令は、法の施行の日(平成二十四年一月一日)から施行する。


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■16条「必要な援助」国の措置 その14 原子力損害賠償支援機構

■16条「必要な援助」国の措置 その14 原子力損害賠償支援機構

原子力損害賠償支援機構
http://www.ndf.go.jp/

名称
原子力損害賠償支援機構

設立年月日
平成23年9月12日(登記申請日)

設立根拠
原子力損害賠償支援機構法(平成23年法律第94号)
(特別の法律に基づく認可法人)

所在地
本部:東京都港区虎ノ門2-2-5
福島事務所:福島県郡山市駅前1-15-6明治安田生命ビル1F

代表者
理事長 杉山 武彦 (前一橋大学学長)

資本金
140億円(内訳) 政府出資:70億円  原子力事業者等12社 70億円

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機構の役員

理事長
杉山 武彦

理事
野田 健
丸島 俊介
振角 秀行
嶋田 隆

監事
佐藤 正典

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独立行政法人等の役員に就いている退職公務員等の状況等の公表について
http://www.ndf.go.jp/soshiki/yakuin_keireki.html



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■18条 原子力損害賠償紛争審査会  中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)

■18条 原子力損害賠償紛争審査会  中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/12/07/1309711_3_1.pdf

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「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)」

平成23年12月6日
原子力損害賠償紛争審査会

第1 はじめに
1 自主的避難等の現状等
 原子力損害賠償紛争審査会(以下「本審査会」という。)は、平成23年8月5日に決定・公表した「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下「中間指針」という。)において、政府による避難等の指示等(以下「避難指示等」という。)に係る損害の範囲に関する考え方を示したが、その際、避難指示等に基づかずに行った避難(以下「自主的避難」という。)に係る損害については、引き続き検討することとした。
 本審査会において、関係者へのヒアリングを含めて調査・検討を行った結果、中間指針第3の避難指示等の対象区域(以下「避難指示等対象区域」という。)の周辺地域では自主的避難をした者が相当数存在していることが確認された。
 自主的避難に至った主な類型としては、①東京電力株式会社福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所における事故(以下「本件事故」という。)発生当初の時期に、自らの置かれている状況について十分な情報がない中で、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の原子炉建屋において水素爆発が発生したことなどから、大量の放射性物質の放出による放射線被曝への恐怖や不安を抱き、その危険を回避しようと考えて避難を選択した場合、及び②本件事故発生からしばらく経過した後、生活圏内の空間放射線量や放射線被曝による影響等に関する情報がある程度入手できるようになった状況下で、放射線被曝への恐怖や不安を抱き、その危険を回避しようと考えて避難を選択した場合が考えられる。
 同時に、当該地域の住民は、そのほとんどが自主的避難をせずにそれまでの住居に滞在し続けており、これら避難をしなかった者が抱き続けたであろう上記の恐怖や不安も無視することはできないと考えられる(以下、当該地域の住民による自主的避難と滞在を併せて「自主的避難等」という。)。

2 基本的考え方
 上記の自主的避難等の現状を踏まえて、この度の中間指針の追補(以下「中間指針追補」という。)においては、中間指針の対象となった避難指示等に係る損害以外の損害として、自主的避難等に係る損害について示すこととする。
 本件事故と自主的避難等に係る損害との相当因果関係の有無は、最終的には個々の事案毎に判断すべきものであるが、中間指針追補では、本件事故に係る損害賠償の紛争解決を促すため、賠償が認められるべき一定の範囲を示すこととする。
 なお、中間指針追補で対象とされなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得る。


第2 自主的避難等に係る損害について
[自主的避難等対象区域]
 下記の福島県内の市町村のうち避難指示等対象区域を除く区域(以下「自主的避難等対象区域」という。)とする。

(県北地域)
福島市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村

(県中地域)
郡山市、須賀川市、田村市、鏡石町、天栄村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町

(相双地域)
相馬市、新地町

(いわき地域)
いわき市

(備考)
1)前記第1(はじめに)の1で示したように、本件事故を受けて自主的避難に至った主な類型は2種類考えられるが、いずれの場合もこのような恐怖や不安は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の状況が安定していない等の状況下で、同発電所からの距離、避難指示等対象区域との近接性、政府や地方公共団体から公表された放射線量に関する情報、自己の居住する市町村の自主的避難の状況(自主的避難者の多寡など)等の要素が複合的に関連して生じたと考えられる。以上の要素を総合的に勘案すると、少なくとも中間指針追補の対象となる自主的避難等対象区域においては、住民が放射線被曝への相当程度の恐怖や不安を抱いたことには相当の理由があり、また、その危険を回避するために自主的避難を行ったことについてもやむを得ない面がある。
2)自主的避難等の事情は個別に異なり、損害の内容も多様であると考えられるが、中間指針追補では、下記の[対象者]に対し公平に賠償すること、及び可能な限り広くかつ早期に救済するとの観点から、一定の自主的避難等対象区域を設定した上で、同対象区域に居住していた者に少なくとも共通に生じた損害を示すこととする。
3)上記自主的避難等対象区域以外の地域についても、下記の[対象者]に掲げる場合には賠償の対象と認められ、さらに、それ以外の場合においても個別具体的な事情に応じて賠償の対象と認められ得る。

[対象者]
 本件事故発生時に自主的避難等対象区域内に生活の本拠としての住居(以下「住居」という。)があった者(本件事故発生後に当該住居から自主的避難を行った場合、本件事故発生時に自主的避難等対象区域外に居り引き続き同区域外に滞在した場合、当該住居に滞 在を続けた場合等を問わない。以下「自主的避難等対象者」という。)とする。
また、本件事故発生時に避難指示等対象区域内に住居があった者についても、中間指針第3の[損害項目]の6の精神的損害の賠償対象とされていない期間並びに子供及び妊婦が自主的避難等対象区域内に避難して滞在した期間(本件事故発生当初の時期を除く。)は、自主的避難等対象者の場合に準じて賠償の対象とする。
(備考)
1)損害賠償請求権は個々人につき発生するものであるから、損害の賠償についても、個々人に対してなされるべきである。
2)本件事故発生時に避難指示等対象区域内に住居があった者についても、自主的避難等対象者と同様の損害を被っていると認められる場合には、同様に賠償の対象とすべきと考えられる。この場合、中間指針による賠償と重複しない限りにおいて中間指針追補による賠償の対象とすべきであるから、中間指針第3の[損害項目]の6の精神的損害の賠償対象とされていない期間(例えば、平成23年4月22日の緊急時避難準備区域の指定以降、同区域から避難せずに滞在した期間や、同区域の指定解除後に帰還した後の期間)が対象となる。一方、避難指示等対象区域内に居住していた者が、本件事故に起因して自主的避難等対象区域内に避難し、同区域内に引き続き長期間滞在した場合、当該避難期間については中間指針で精神的損害の賠償対象とされているが、これは避難生活等を長期間余儀なくされたことによる精神的損害であり、自主的避難等対象区域内の住居に滞在し続ける者(以下「滞在者」という。)としての精神的損害とは質的に異なる面があるから、中間指針追補の対象ともすべきである(具体的には、自主的避難等対象区域内に避難して滞在した子供及び妊婦が該当する。後記[損害項目]の(指針)Ⅲ)及び(備考)3)参照。)。
3)上記の[対象者]以外の者についても、個別具体的な事情に応じて賠償の対象と認められ得る。

[損害項目]
(指針)
Ⅰ)自主的避難等対象者が受けた損害のうち、以下のものが一定の範囲で賠償すべき損害と認められる。
① 放射線被曝への恐怖や不安により自主的避難等対象区域内の住居から自主的避難を行った場合(本件事故発生時に自主的避難等対象区域外に居り引き続き同区域外に滞在した場合を含む。以下同じ。)における以下のもの。
)自主的避難によって生じた生活費の増加費用
)自主的避難により、正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛
)避難及び帰宅に要した移動費用
② 放射線被曝への恐怖や不安を抱きながら自主的避難等対象区域内に滞在を続けた場合における以下のもの。
)放射線被曝への恐怖や不安、これに伴う行動の自由の制限等により、正常な日常生活の維持・継続が相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛
)放射線被曝への恐怖や不安、これに伴う行動の自由の制限等により生活費が増加した分があれば、その増加費用
Ⅱ)Ⅰ)の①の)ないし)に係る損害額並びに②の)及び)に係る損害額については、いずれもこれらを合算した額を同額として算定するのが、公平かつ合理的な算定方法と認められる。
Ⅲ)Ⅱ)の具体的な損害額の算定に当たっては、①自主的避難等対象者のうち子供及び妊婦については、本件事故発生から平成23年12月末までの損害として一人40万円を目安とし、②その他の自主的避難等対象者については、本件事故発生当初の時期の損害として一人8万円を目安とする。
Ⅳ)本件事故発生時に避難指示等対象区域内に住居があった者については、賠償すべき損害は自主的避難等対象者の場合に準じるものとし、具体的な損害額の算定に当たっては以下のとおりとする。
① 中間指針第3の[損害項目]の6の精神的損害の賠償対象とされていない期間については、Ⅲ)に定める金額がⅢ)の①及び②における対象期間に応じた目安であることを勘案した金額とする。
② 子供及び妊婦が自主的避難等対象区域内に避難して滞在した期間については、本件事故発生から平成23年12月末までの損害として一人20万円を目安としつつ、これらの者が中間指針追補の対象となる期間に応じた金額とする。
(備考)
1)本件事故に起因して自主的避難等対象区域内の住居から自主的避難を行った者は、主として自宅以外での生活による生活費の増加費用並びに避難及び帰宅に要した移動費用が生じ、併せてこうした避難生活によって一定の精神的苦痛を被っていると考えられることから、少なくともこれらについては賠償すべき損害と観念することが可能である。また、滞在者は、主として放射線被曝への恐怖や不安やこれに伴う行動の自由の制限等を余儀なくされることによる精神的苦痛を被っており、併せてこうした不安等によって生活費の増加費用も生じている場合があると考えられることから、少なくともこれらについては賠償すべき損害と観念することが可能である。
2)賠償すべき損害額については、自主的避難が、避難指示等により余儀なくされた避難とは異なることから、これに係る損害について避難指示等の場合と同じ扱いとすることは、必ずしも公平かつ合理的ではない。
 一方、自主的避難者と滞在者とでは、現実に被った精神的苦痛の内容及び程度並びに現実に負担した費用の内容及び額に差があることは否定できないものの、いずれも自主的避難等対象区域内の住居に滞在することに伴う放射線被曝への恐怖や不安に起因して発生したものであること、当該滞在に伴う精神的苦痛等は自主的避難によって解消されるのに対し、新たに避難生活に伴う生活費増加等が生じるという相関関係があること、自主的避難等対象区域内の住民の中には諸般の事情により滞在を余儀なくされた者もいるであろうこと、広範囲に居住する多数の自主的避難等対象者につき、自主的避難者と滞在者を区別し、個別に自主的避難の有無及び期間等を認定することは実際上極めて困難であり、早期の救済が妨げられるおそれがあること等を考慮すれば、自主的避難者か滞在者かの違いにより金額に差を設けることは公平かつ合理的とは言い難い。
 こうした事情を考慮して、精神的損害と生活費の増加費用等を一括して一定額を算定するとともに、自主的避難者と滞在者の損害額については同額とすることが妥当と判断した。
3)自主的避難等対象者の属性との関係については、特に本件事故発生当初において、大量の放射性物質の放出による放射線被曝への恐怖や不安を抱くことは、年齢等を問わず一定の合理性を認めることができる。その後においても、少なくとも子供及び妊婦の場合は、放射線への感受性が高い可能性があることが一般に認識されていること等から、比較的低線量とはいえ通常時より相当程度高い放射線量による放射線被曝への恐怖や不安を抱くことについては、人口移動により推測される自主的避難の実態からも、一定の合理性を認めることができる。
 このため、自主的避難等対象者のうち子供及び妊婦については、本件事故発生から平成23年12月末までを、また、その他の自主的避難等対象者については、本件事故発生当初の時期を、それぞれ賠償の対象期間として算定することが妥当と判断した。なお、平成24年1月以降に関しては、今後、必要に応じて賠償の範囲等について検討することとする。
4)3)の期間の損害額の算定に当たっては、身体的損害を伴わない慰謝料に関する裁判例等を参考にした上で、精神的苦痛並びに子供及び妊婦の場合の同伴者や保護者分も含めた生活費の増加費用等について、一定程度勘案することとした。
5)本件事故発生時に避難指示等対象区域内に住居があった者のうち、子供及び妊婦が自主的避難等対象区域内に避難して滞在した期間の損害額の算定に当たっては、これらの者は、避難している期間について既に中間指針第3の[損害項目]の6の精神的損害の賠償対象とされており、両者の損害の内容に一部重複すると考えられる部分があることを勘案することとした。
6)Ⅰ)ないしⅣ)については、個別具体的な事情に応じて、これら以外の損害項目が賠償の対象となる場合や異なる賠償額が算定される場合が認められ得る。

(以上)



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・電気料金原価の過剰見積もりについて

・電気料金原価の過剰見積もりについて

 原賠法とも原発事故と直接関係がないが,事故後に設置された経営・財務調査委員会で,東電の電気料金原価が過剰に見積もられていたとの指摘があったとする以下のような記事がある。この点について,考えてみる。

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asahi.com 平成23年9月29日
http://www.asahi.com/business/update/0929/TKY201109280716.html

電気料金原価、6千億円高く見積もり 東電、10年間で

 東京電力の電気料金算定のもとになる見積もり(燃料費などを除く)が、実際にかかった費用よりも、過去10年間で計約6千億円高いことが、政府の「東京電力に関する経営・財務調査委員会」の調査でわかった。電気代が必要以上に高く設定されていた可能性があり、調査委は近くまとめる報告書に盛り込む。

 自由化されていない家庭用の電気料金は、電力会社が今後1年間にかかる人件費や燃料費、修繕費などの原価を見積もり、一定の利益を上乗せして決める。

 報告書案によると、過去10年で計6186億円分、見積もりが実績を上回っていた。大きな原因として修繕費を挙げ、1割ほど過大とした。報告書案は「経営効率化によるものというよりも、そもそも届け出時の原価が適正ではなかったと推察される」と指摘した。

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そこで「東京電力に関する経営・財務調査委員会」の報告書を見てみる。



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平成23年10月3日 東京電力に関する経営・財務調査委員会

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keieizaimutyousa/dai10/gijisidai.html

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/keieizaimutyousa/dai10/siryou1.pdf

報告書121頁
「東電は、規制小売料金について、値下げ届出制導入以後、5 回の料金改定においていずれも届出による値下げ料金改定を行っている。
 この点、原価等の適正性については、上述のとおり、届出による値下げ料金改定においては、原価(営業費)や利潤(事業報酬)等の適正性の具体的な審査が制度上なされないことから、東電については少なくとも約13 年間にわたり、規制当局による原価(営業費)や利潤(事業報酬)の適正性の具体的な確認が行われなかった。
 ここで「原価の適正性」という場合、次の二つを分けて議論することが肝要である。第一は、届けられた原価が原価算定期間中に実際に支出が見込まれるコストを的確に反映しているかどうかという、いわば名目値の議論である。第二は、その原価が適切なコスト削減努力や設備投資形成を前提としたものであるかどうかという実質値の議論である。後者に関しては、すでに本報告において調達面及び人件費に関してコスト削減の余地があることや中期的な設備投資形成に当たっての留意点について触れたところである。したがって、委員会として、そうした実質的努力を織り込む前の「名目値」としての原価が、現行届出制の下で適正に届けられ、規制当局によって把握されていたのかについて検証を行った。」

報告書124頁
「なお、固定費の届出時と実績の料金原価の乖離を合計すると、直近10年間の累計で5,624 億円となる。」

報告書126頁
「なお、燃料費及び購入電力費等以外の可変費について、届出時と実績の料金原価の乖離を合計すると、直近10 年間の累計で561 億円となる。」

報告書127頁
「なお、固定費並びに燃料費及び購入電力費等以外の可変費の届出時と実績の料金原価の乖離を合計すると、直近10 年間の累計で6,186 億円となる。」

報告書127頁
「固定費と、燃料費及び購入電力費等以外の可変費の乖離の大きな要因が修繕費であることから、規制料金の原価として織り込まれている修繕費について、届出時の料金原価と実績の料金原価を比較すると、料金改定を行った年度(原価算定期間)において、既に約10%程度の乖離が生じている。すなわち、この乖離については、東電の経営効率化努力による部分が含まれている可能性はあるが、その点を考慮したとしても、乖離の程度からすると、そもそも届出時の料金原価が「適正な原価」ではなかった可能性が十分に推察される。(ただし、その詳細はさらなる検証が必要である。)」

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 この上の記載が問題の箇所と思われるが,これに対して東電側は,以下のように反論している。



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http://www.tepco.co.jp/cc/kanren/11100401-j.html
当社関連報道について

「東京電力に関する経営・財務調査委員会」による「届出時と実績の料金原価が過去10年間で6,000億円過大」との指摘に対する当社見解

平成23年10月4日
東京電力株式会社

 「東京電力に関する経営・財務調査委員会」が10月3日に発表した報告の中で、当社の電気料金算定において、届出時の料金原価が、その後の支出実績と比べて、直近10年間で約6,000億円過大であったとの指摘がなされております。

 これは、平成12年の電気料金値下げ以降、電気料金の値上げを回避するため、直近10年間において、修繕費を中心としたコストダウンを徹底した結果です。

 こうした合理化努力の結果、この10年間で4回にわたり、ご家庭のお客さまなど(規制分野)において、総額約3兆5,000億円の電気料金の値下げを実施しております。
 また、合理化努力の一部は内部留保させていただきましたが、これにより、新潟県中越沖地震の被災による柏崎刈羽原子力発電所の停止に伴う火力発電の燃料費増分を吸収し、電気料金の値上げを回避しております。

 このように、届出時の料金原価が、結果的に一部で実績値を上回ったのは、当社の経営努力の結果であり、料金算定時に過大な原価計算を行ったということは一切ございません。


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 とのことである。

 電気事業の原価計算や会計等について,こまかいことは知らないが,コストダウンや合理化努力は私企業として当然すべきものであって,普通は,それも含めて原価を見積もり計算するの筋ではないかという気がする。また,10年間で4回値下げしたというが,見積もりして届け出た原価と実績との「乖離」が発生し続けることについての説明になっていない気がする。さらに,「合理化努力の一部は内部留保させていただきましたが、これにより、新潟県中越沖地震の被災による柏崎刈羽原子力発電所の停止に伴う火力発電の燃料費増分を吸収」とあるが,これは確実に予見されていて,そのためなんらかの予め引当金として積み上げていたものでもなかろうから,それが発生するまでに見積もられる原価の計算とは関係ないのではないかという気がする。


 法令を見ると以下のとおり。
 ↓

●電気事業法  
第19条2項
「2  経済産業大臣は、前項の認可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときは、同項の認可をしなければならない。
一  料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること。二  料金が供給の種類により定率又は定額をもつて明確に定められていること。
三  一般電気事業者及び電気の使用者の責任に関する事項並びに電気計器その他の用品及び配線工事その他の工事に関する費用の負担の方法が適正かつ明確に定められていること。
四  特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないこと。」

●一般電気事業供給約款料金算定規則
第2条1項
「法第十九条第一項 の規定により定めようとする、又は変更しようとする供給約款で設定する料金を算定しようとする一般電気事業者(以下「事業者」という。)は、四月一日又は十月一日を始期とする一年間を単位とした将来の合理的な期間(以下「原価算定期間」という。)を定め、当該期間において電気事業を運営するに当たって必要であると見込まれる原価に利潤を加えて得た額(以下「原価等」という。)を算定しなければならない。」



 要するに電気供給約款の認可においては,原価は,「適正な原価」「電気事業を運営するに当たって必要であると見込まれる原価」であることを要するということだろう。

 そして,この適正性や必要性については,事業者側の言い分もあろうが,見積もりと実績の差以外に,費目によってはそもそも原価として乗せることが適正か否かという問題も有る。このあたりを掘っていくと,ひょっとすると「原価」の設定が客観的にみて適正でなく,電力会社は長年にわたって不当・違法に儲け過ぎていた,したがって,消費者へ取りすぎ分の返還や賠償義務があるなどとして,法的問題となるかもしれない。


 詳細は知らないが,乖離分だけ問題にするとしても,報酬率を3%と仮定すると,10年間で約6000億円余分に原価計上し,そのため,3%にあたる180億円を余分に電気料金として取りすぎたということになろうか。このあたりの計算はよくわからないが,いわゆる総括原価方式の下,原価が過大である分,事業報酬もそれだけ過大に請求されたと考えるとこういうことだろう。さらに原価の見積もりと実績の乖離分は,現実には原価としての支出がないので,電気料金として得ておきながら,その分を丸取りどりしていたとなるとプラス6000億円分取りすぎということか?。〔ただ電力料金の値下げできちんと全部返したという場合は,取りすぎ分は既に返しましたということ?。そこで本当にこの分の利得は全部消費者に還元する形で,事実上の返還処理をしていたか否かを委員会が今後「さらなる検証」をするということか?〕

〔訴訟制度〕
 仮に,東電が違法・不当に原価を大きく見積もり,不適正な原価で過大な料金を設定し,それを消費者に負担させていたとなると,これは,被害者が多数だが,一人一人の損害は小さいというパターンなので,個別に訴訟を提起するのは現実的ではないかもしれない。5年ほど前にできた消費者団体訴訟制度(消費者契約法12条以下)は,差止請求に関するもので,集団的消費者被害を救済するための損害賠償訴訟制度ではない。米国だと,たまに電話料金とかケーブル料金の取りすぎとかいうことで,一般家庭にクラスアクションの通知が届くということがあるが,我が国では未だ制度化されていない。
 ただ,現行法でも選定当事者(民事訴訟法30条)や共同訴訟(同法38条)で,やってやれないことはない。

〔法律構成〕
ア 不法行為〔料金の取りすぎに故意又は過失あるとして〕(民法709条)
・消滅時効は3年(損害を知ったときから3年なので(民法724条),委員会報告の内容があきらかになったときからとすると本年9月ころから3年?)
・遅延損害金は,不法行為時から発生するので,各過払い時から発生。
・その利率は5%(民法404条)

イ 不当利得(民法703条,704条)
・消滅時効は10年(民法167条)
・電力会社が不当利得になることを知っていた場合は,悪意の受益者として,利息を付して返還する義務あり(民法704条)。そうでない場合は,利息を付す必要は無し。
・この利息も,おそらく過払い時から発生。
・利率はおそらく5%〔ただし,商法514条で6%となる余地がないではない。〕

ウ 債務不履行〔電気供給契約に基づく債務履行責任・付随義務違反?として,損害賠償請求〕(民法415条)
・消滅時効は10年(民法167条),又は,5年(商法522条)・
・請求時から遅滞?。遅延損害金はそこから?
・利率は,5%(民法404条),又は,6%(商法522条)

 それぞれ一長一短あるが,利息もつけて返還してもらいたい場合は,アの不法行為が楽かもしれない。

 元金が大きいと利息は馬鹿にならないもので,10年間で仮に180億円を取りすぎたとなると,毎年平均18億円積み上がると仮定した場合,年利5%の単純計算で45億円の遅延損害金となる。あわせて225億円の賠償か。
 
 さらに6000億円取りすぎていたとなると,プラス1500億円の遅延損害金か。


〔経営者の責任〕
 仮に,原価の計算の「適正」を保てなかったとして,上記のような訴訟が提起されて認容されてしまったような場合で,その責任が,経営者にあるとした場合,取締役ら経営者は,会社(東電)に対して,賠償責任(会社法423条,355条)を負う可能性がある。
この場合,会社(東電)の被った損害には,返還分の180億円〔+6000億円〕は含まれないだろう。これは東電が取りすぎた分を返還しただけだからである。この場合の会社の損害は,返還の際して付した遅延損害金分〔45億円+1500億円?〕となろうか。(ただし,取りすぎていた料金分を利用して,利潤をあげていたとなると,その部分との差額は会社の損害とはならないのか?。単に内部留保していただけだとダメ?)


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■4条 責任集中の原則 その15 役員の任務懈怠責任

■4条 責任集中の原則 その15 役員の任務懈怠責任

 現在,株主からの提訴請求がなされて,その後の報道がなく,今のところ会社〔東電〕が直接に取締役ら役員を提訴するか,株主代表訴訟となるか不明であるが,いずれにしても,これらは東電の役員らの任務懈怠(会社法423条)を理由とする損害賠償請求訴訟となるのだろう。

〔理屈〕
・会社法 423条1項
「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

 旧法のようにように責任事由の列挙というものがなくなっているが,法令や定款に違反する行為があって,会社に損害を及ぼしたような場合には,当然に役員は,会社に対して賠償義務を負うことになる。
 ここでいう「法令」違反としては,ひとつは具体的な禁止規定,たとえば独占禁止法とか,会社法356条の競業・利益相反取引の制限だとかに違反することである。原発事故との関係でいえば,原子炉等規制法等の関係法規の違反があって,取締役が,そのことを知り,又は,過失により知らずに,その違反が本件原発事故につながったような場合には,取締役は責任を問われることになる。
 もうひとつは一般的抽象的な義務として,取締役ら役員には,善管注意義務(民法644条),忠実義務(会社法355条)があって,これらの違反があって,その結果,今回の事故につながり,ひいては会社(東電)に損害を与えたような場合は,やはり会社に対して賠償責任を負う。

・民法644条
「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」
・会社法 355条
「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」

 そこでこの手の訴訟は,①会社の具体的な法令違反行為を指摘して,その事実を取締役らが知り,又は,過失により知らなかったことから,損害を招いたと主張するパターンと,具体的法令違反の指摘ではなく,②抽象的な注意義務違反を主張し,その〔落ち度の〕根拠となる事実を指摘するパターンがある。つまり,この程度の事実があれば,当然,このように判断するのが,同種同等の会社経営者として当然なのに,その義務に反して,別の判断をして漫然と放置していたことや,そもそものリスク評価と安全管理体制に不備があり,そのことに気づいてしかるべきなのに,漫然と放置〔不作為〕していたことが,〔業務執行をなしていた取締役はもちろん、他の代表権の無い平取締役も、取締役会を通じて会社業務が適法・適正に行われることについて監視・監督すべき義務があるのに、それを怠り〕今回の事故につながったといえると主張して,任務懈怠を問うパターンである。

①法令上の具体的義務→違反の事実→役員らの故意過失、監視監督義務違反→任務懈怠責任
②忠実義務・善管注意義務→その違反を根拠づける事実→任務懈怠責任


※会社〔東電ひいては株主〕の側から見ると,何かの検査結果の報告義務違反だとか,炉規法等の法令違反の事実を挙げて,一点突破的にそのことだけで取締役の責任を問うというのは,あまり上手くない。
 会社の業務執行において,その具体的法令違反の事実がなかったり,あったしても,その具体的法令違反の事実が,今回の事故につながったものでなければ,責任が認められないだろうし,また役員らが知り得ない場合には,責任を免れる可能性がある。
 また,そもそも,①と②は両立するものだから,役員らを被告とする訴訟では,①と②の両方の主張を立てて,主張していくということになるのだろう。


〔争い方・事故状況〕
 事故調査等が進んで,今後も,いろいと明らかになるかもしれないが,争い方としては,事故原因との関係で二つの方向性がありうる。
 ひとつは,事故状況・原因について,概ね政府や東電の事故調査結果に乗っかって,津波主因説でいくパターン。もう一つは,地震で既に炉や冷却装置,鉄塔等が壊れほぼ冷却不能であり,津波はとどめの一撃であったとして,地震主因説でいくパターン。
 前者の場合は,主として津波対策の不備〔リスク評価,対応等〕について,取締役の任務懈怠を突いていくことになる。後者の場合は,津波対策はもちろん,その前段階の地震に対する対策すら不十分で,そのことについて取締役として落ち度ありと主張していくことになる。事実経過の立証面で面倒なのは後者となろう。

〔争い方・損害〕
 取締役に責任追及できる損害の範囲については,以前論じた。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-65.html
 いろいろ考え方はあるが,現実の支払いの可能性を考えると,東電が被害者に賠償したことによって東電に生じた損害分は除いて,東電自身の自損部分〔原子炉の損壊など〕の賠償だけで行くのが,ムダに争点を増やさない得策だろう。


〔抽象的な義務の違反〕
 裁判手続きにおいて,忠実義務や善管注意義務などの一般的抽象的な義務違反を根拠づける事実として,〔よほど条理に反した無茶苦茶な判断でもないかぎり〕,法令以外でなんらかの標準・指標となるものが持ち出されるかもしれない。
 その1つは,原子力安全委員会の「耐震設計審査指針」があるのではないか。
 これは,「発電用軽水型原子炉の設置許可申請(変更許可申請を含む。以下同じ。)に係る安全審査のうち、耐震安全性の確保の観点から耐震設計方針の妥当性について判断する際の基礎を示すことを目的として定めた」とある。当然,バックチェックも行われるもので,既存原子炉の安全性確保の指針となるものであろう。
 平成18年に改正されたが,そこでは基本方針として,「耐震設計上重要な施設は、敷地周辺の地質・地質構造並びに地震活動性等の地震学及び地震工学的見地から施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動による地震力に対して、その安全機能が損なわれることがないように設計されなければならない。」とある。

 そして,解説として,

「耐震設計においては、「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があり、施設に大きな影響を与えるおそれがあると想定することが適切な地震動」を適切に策定し、この地震動を前提とした耐震設計を行うことにより、地震に起因する外乱によって周辺の公衆に対し、著しい放射線被ばくのリスクを与えないようにすることを基本とすべきである。これは、旧指針の「基本方針」における「発電用原子炉施設は想定されるいかなる地震力に対してもこれが大きな事故の誘因とならないよう十分な耐震性を有していなければならない」との規定が耐震設計に求めていたものと同等の考え方である。」

 とされ,

 さらに,

「 「残余のリスク」の存在について
  地震学的見地からは、上記(1)のように策定された地震動を上回る強さの地震動が生起する可能性は否定できない。このことは、耐震設計用の地震動の策定において、「残余のリスク」(策定された地震動を上回る地震動の影響が施設に及ぶことにより、施設に重大な損傷事象が発生すること、施設から大量の放射性物質が放散される事象が発生すること、あるいはそれらの結果として周辺公衆に対して放射線被ばくによる災害を及ぼすことのリスク)が存在することを意味する。したがって、施設の設計に当たっては、策定された地震動を上回る地震動が生起する可能性に対して適切な考慮を払い、基本設計の段階のみならず、それ以降の段階も含めて、この「残余のリスク」の存在を十分認識しつつ、それを合理的に実行可能な限り小さくするための努力が払われるべきである。」

 とある。

 つまり,極めてまれではあるが発生する可能性のある地震動を適切に想定・策定した上に,さらにそれを上回る強さの地震が発生する可能性が否定できないので,この部分については,「残余リスク」として,その存在を十分認識し,そのリスクを「合理的に実行可能な限り小さくするための努力」が払われるべきとされる。

 そして,上の「残余リスク」の定義では,「策定された地震動を上回る地震動の影響が施設に及ぶことにより、施設に重大な損傷事象が発生すること、施設から大量の放射性物質が放散される事象が発生すること、あるいはそれらの結果として周辺公衆に対して放射線被ばくによる災害を及ぼすことのリスク」とあることから,津波も「地震動の影響」といえるだろうから,想定を超える巨大津波のリスクも,本来「残余リスク」として,考慮されるべきであり,それによるリスクを「合理的に実行可能な限り小さく」すべく努力が払われていたことが必要となろう。

 この点,津波については,指針の8(2)において,地震随伴現象に対する考慮として「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」とあるのみであり,これとの関係で,津波については,想定を超える「残余リスク」については,考慮する必要がないと読めないこともないが,そのように解する合理性がないし,平成18年の指針改定作業をした入倉氏自身が津波にも適用があると述べている。
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-80.html 

 指針としては基準地震動を超える地震とその影響による津波については,一切考慮しなくてよいというのならまだしも,平成18年の改正指針によれば,本来は,想定を超える津波もありうることを考慮し,その被害リスクを合理的に実行可能な限り小さくするよう努力すべであった。にもかかわらず,想定を超える津波については,多重防護どころか,ほとんどんど何もしていなかったというお粗末な状態であったなら,そのことについて,取締役のリスク評価・管理等の任務に懈怠があったと言われるかもしれない。
 その際,リスクを「合理的に実行可能な限り小さくすべき努力」がどの程度のことが要求されるのかが問題となるかもしれないが,原発事故によりもたらされる損害の甚大さを考えれば,原子力事業の経営者の安全確保に関する注意義務はそれなりのものであるはずで,津波が堤防を越えてきたら即アウトという状態だったとしたら,何の努力もしていなかったと判断されて,任務懈怠とされても仕方ないような気がする。

 ただし,これは株主側から見れば,戦線を最も後退させた最後の辺の主張であって,もっと前段階の,各種管理・検査・報告等の基本的義務のレベルで法令違反があったり,想定の前提となる調査データの隠蔽・捏造があったり,各種施設・設備の耐震性データの捏造があったり,それが日常化していて,いくら指針が改正されてもバックチェックが意味を為さなかったりしたら,そういったことが今回の事故につながったとして,取締役らの責任が問題とされるかもしれない。

 
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■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その12 中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)の概要

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その12 中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)の概要


http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/12/06/1309711_2_1.pdf

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中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)の概要
(平成23年12月6日 原子力損害賠償紛争審査会)


[基本的考え方]
○本中間指針追補の対象となる者については、
・事故発生当初の十分な情報がない時期は、大量の放射性物質の放出による被ばくへの恐怖・不安を抱くことは、年齢等問わず一定の合理性が認められる。
・事故発生からしばらく経過後は、放射線量等に関する情報がある程度入手できるようになった状況下にあり、少なくとも子供・妊婦の場合は、放射線への感受性が高い可能性があることが一般に認識されていることから、被ばくへの恐怖・不安を抱くことは、一定の合理性が認められる。
・上記恐怖・不安による自主的避難のみならず、自主的避難を行わずに滞在し続けた者にも賠償すべき損害が認められる。
○なお、本中間指針追補の対象以外の損害についても、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められることがあり得る。


[自主的避難等対象区域]
 発電所からの距離、避難指示等対象区域との近接性、政府等から公表された放射線量に関する情報、自主的避難の状況等を総合的に勘案して対象区域(以下の市町村から避難指示等対象区域を除く)を明示。

県北地域
福島市、二本松市、伊達市、本宮市、桑折町、国見町、川俣町、大玉村

県中地域
郡山市、須賀川市、田村市、鏡石町、天栄村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町、三春町、小野町

相双地域
相馬市、新地町

いわき地域
いわき市

※避難指示等対象区域南相馬市、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯舘村、いわき市の一部、田村市の一部、伊達市の一部及び川俣町の一部


[損害額]
○自主的避難者及び滞在者の損害について、精神的損害と生活費増等を一括して一定額を算定し、同額とすることが公平かつ合理的。
○具体的には、事故発生時に自主的避難等対象区域内に住居があった者の損害額は以下を目安とする。

対象区域内に居住していた子供・妊婦 40万円(事故発生から本年12月末までの損害)
    〃        上記以外の者 8万円(事故発生当初の時期の損害)

※ 避難指示等対象区域内に住居があった者についても、自主的避難者や滞在者に準じて本中間指針追補の賠償の対象とし、対象期間に応じた額を損害額とする。


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2011-12-07 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その11 日弁連意見書

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その11 日弁連意見書

2011年11月24日
日本弁護士連合会

東京電力福島第一、第二原子力発電所事故における避難区域外の避難者及び居住者に対する損害賠償に関する指針についての意見書
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2011/111124.html

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意見書の趣旨
1 政府指示区域以外からの避難についても、合理性がある場合には救済対象とすることを指針に明記すべきである。その避難には、十分な情報がない中で東京電力福島第一原子力発電所からの大量の放射性物質の放出による被ばく等の危険を回避するためのもの(第一類型)と低線量の被ばくの危険を回避するためのもの(第二類型)があるとしても、両者は時期的に重なりある部分もあることを認めるべきであり、一期、二期という表現ではなく、類型という表現が適切である。
2 第一類型については、東京電力福島第一、第二原子力発電所事故後、大量の放射性物質放出の危険があったこと、情報が混乱していたこと、アメリカ合衆国政府が2011年(平成23年)3月17日に福島第一原子力発電所から80km圏内について避難勧告をしたこと(この避難勧告は同年10月6日まで継続された。)などを考えると、最低でも、福島第一原子力発電所から80km圏内となる部分がある市町村については、全ての者について、対象とすべきである。
3 第一類型における避難開始の終期としては、政府の認定でも、安定冷却・水素爆発の危険性が消失したとされるステップ1の達成後である、2011年(平成23年)7月末以降とすべきである。
4 第二類型については、低線量の被ばくの危険を回避するためのものである以上、対象地域を指定する際に考慮する要素として、放射線量を挙げるべきであり、第1に、少なくとも3月当たり1.3mSv(年間5.2mSv、毎時約0.6μSv)を超える放射線が検出された地域については、全ての者について対象とすべきであり、第2に、追加線量が年間1mSvを超える放射線量が検出されている地域についても、少なくとも子ども・妊婦とその家族については対象とすべきである。
5 いずれの類型においても、対象地域の指定に当たっては、コミュニティの分断や混乱を避けるために、原則として市町村単位とすべきであり、市町村の中に一部でも上記要素に該当する部分が存在する場合には対象とすべきである。
6 対象とされた市町村以外であっても、福島第一原子力発電所からの距離、放射線量、避難者の属性等から、個別に、避難に合理性が認められる場合には賠償されることを指針に明記すべきである。
7 損害賠償が認められるべき項目としては、避難者に対しては、生活費の増加分を含む、避難費用と精神的損害について認められるべきである。避難者の生活費の増加分については、全てが精神的損害と一括されるのではなく、避難に伴い、家族や地域社会が分断させられたために、一人当たり月1万円以上増加した携帯電話代や交通費等については、「高額の生活費の増加」として、精神的損害とは別に賠償されるべきである。
8 上記の第一類型及び第二類型の対象地域に居住する者についても、生活費の増加分及び精神的損害について賠償がされるべきである。
9 早急な除染実施の必要性は高いが、他方、除染によって、全ての問題が解決するわけではなく、相当長期にわたり、避難の必要が生じ、また、対象地域居住者の精神的・経済的負担が続くことを確認すべきである。


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意見書全文
http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/111124.pdf


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2011-12-02 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・原発事故後の関連訴訟等 その4 平成23年11月分

・原発事故後の関連訴訟等 その3 平成23年11月分

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YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20111103-OYT1T00869.htm
東電は歴代経営陣に賠償請求を…株主が要請へ

 東京電力福島第一原発事故で東電に巨額の損失が生じたのは、経営陣が地震や津波の安全対策を怠ってきたためだとして、株主らが東電に対し、歴代の経営陣に損害賠償請求訴訟を起こすよう求める書面を提出する方針を固めたことが分かった。

 請求額や対象者を検討した上で、今月中にも提出したいとしている。提出後、60日以内に東電が提訴しない場合、株主代表訴訟を東京地裁に起こすという。

 株主の一人は「このままでは、過去の経営陣の責任追及があいまいになってしまう。裁判で責任の所在をはっきりさせるべきだ」と話した。一方、東電は「内容を把握していないので、コメントは差し控える」としている。

(2011年11月4日07時26分 読売新聞)


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毎日jp(毎日新聞社)

http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/nuclear/archive/news/2011/11/20111104k0000m040075000c.html
福島第1原発:東電株主代表訴訟へ 損失分1兆円返還要求

 東京電力が福島第1原発事故で巨額の損失を出したのは、歴代の経営陣が安全対策を怠ってきたためだとして、一部の株主が、合わせて1兆1000億円余りの返還を求める株主代表訴訟を起こす方針であることが分かった。

 関係者によると、株主代表訴訟を検討しているのは、脱原発を求める株主約30人。歴代の役員らを対象に、今年8月に東電が原発事故の損失見込み額として明らかにした1兆1000億円を会社に返還するよう求める。会社法の手続きに従い、まず監査役に訴訟を起こすよう求め、60日以内に監査役が応じなかった場合は株主代表訴訟に移行する。【日下部聡】
毎日新聞 2011年11月3日 22時19分(最終更新 11月3日 23時42分)


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NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111114/t10013955171000.html
東電経営陣に株主代表訴訟も
11月14日 18時42分
福島第一原子力発電所の事故を巡り、東京電力の株主らが、会社が巨額の損失を受けたのは、安全対策を怠ってきたためだと主張して、歴代の経営陣に5兆円余りの賠償を求める株主代表訴訟に向けた手続きを始めました。

手続きを始めたのは東京電力の個人株主42人で、株主らは「3月の福島第一原発の事故は歴代の経営陣が地震や津波などの安全対策を怠ってきたために起きた」と主張して、平成14年以降、役員を務めた61人に対して、合わせて5兆5045億円の賠償を求める訴えを起こすよう、東京電力の監査役に、14日、請求したということです。株主らは、原発事故の被災者が家や故郷を失って苦しんでいるのに、歴代の経営陣の責任が問われないのは許されないとして、株主代表訴訟を起こす手続きに踏み切ったということで、5兆5045億円という請求額は、国内では過去最高になります。株主らは、監査役が60日以内に裁判を起こさなければ、株主代表訴訟を起こし、裁判を通じて経営陣の責任を追及していきたいとしています。原告の株主と弁護団は都内で記者会見し、このうち株主の女性は「裁判を通じて原発事故の責任は取締役個人にも及ぶということを明らかにしたい」と述べました。弁護団によりますと、当初は経営陣への請求額を1兆1000億円としていましたが、その後、政府の委員会が、東京電力の損失額を5兆5045億円と発表したため増額したということです。一方、東京電力は「株主との個別のやり取りについては回答を差し控えたい」とコメントしています。


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毎日jp(毎日新聞社)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111115k0000m040059000c.html
福島原発事故:ゴルフ場除染費支払い請求却下…東京地裁

 福島第1原発事故で、福島県二本松市のゴルフ場運営会社と敷地・施設所有会社が東京電力に対し、場内の除染と除染完了までの維持経費支払いを求めた仮処分申請で、東京地裁(福島政幸裁判長)が却下していたことが分かった。却下は10月31日付。2社は14日、高裁に即時抗告したことを明らかにした。

 ゴルフ場は、第1原発の西北西約45キロにある「サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部」。

 却下決定は、除染は国や自治体が計画的に行うとの方針があるため東電に現時点で独自に行わせることは困難として請求を退けた。

 維持経費についても、9月に受け付けが始まった東電による賠償手続きなどを踏まえ、「さまざまな施策を利用することで、(2社の)負担を回避できる可能性がある」として請求を認めなかった。ゴルフ場の地上1メートル地点の放射線量が毎時3.8マイクロシーベルトを下回る点にもふれ、「ゴルフ場営業に支障はない」とも付け加えた。【野口由紀】

毎日新聞 2011年11月14日 21時13分


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毎日jp(毎日新聞社)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20111125k0000m040141000c.html

東京電力:温泉施設客激減で原発影響否定 水戸地裁初弁論

 東京電力福島第1原発事故の影響で利用客が激減したとして、約130キロ離れた茨城県大洗町の日帰り温泉施設「潮騒の湯」が東電に約4700万円の賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が24日、水戸地裁(窪木稔裁判長)であった。東電側は「施設の損壊など震災の影響が原因で、事故とは因果関係がない」と請求棄却を求める答弁書を出し、全面的に争う姿勢を示した。

 訴状によると事故に伴い、施設前の海や海産物の汚染を人々が懸念したため「施設は最大のセールスポイントを失い、客が激減した」と主張。事故が未収束で放射性物質の拡散が続いている以上「人々が抱く『重大な危惧感』は風評被害とはいえない」と指摘している。

 これに対し東電側は「消費者心理や施設の損壊など震災自体の影響だ」として、事故との因果関係や賠償責任を否定した。【酒井雅浩】

毎日新聞 2011年11月25日 0時48分(最終更新 11月25日 2時08分)


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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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