東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・土地建物,土壌等の汚染 その8 放射性物質,「無主物」「附合」の問題

・土地建物,土壌等の汚染 その8 放射性物質,「無主物」「附合」の問題

二本松のゴルフ倶楽部による仮処分申立事件に関してネットでいろいろと話題になっている。

〔無主物〕
まず,
・「無主物」とは,現に所有者のない物である。
・現在は無主の動産が過去において,誰かの所有に属していた場合でも,その者が所有権を放棄していれば無主物となる。
・したがって,飛散して放射性物質の所有権放棄が許されない場合には,無主物たりえないこととなろう。

・そして放射性物質の管理や廃棄等の処理については,炉規法その他規則で定められているが,所有権放棄を認めない旨の規定は無さそうなので,観念的には所有権放棄も不可能ではないようだが微妙。もっとも,後述のとおり,飛散した放射性物質の所有権の帰属の問題と物権的妨害排除請求権の成立とは無関係と思われるので,あまり意味のない論点ではなかろうか。


〔附合〕
・不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する(民法242条本文)。
・一般に,不動産に「附合」するとは,物が不動産に付着合体して独立性を失い,一般に不動産そのものとみられ,その分離復旧が社会経済的に不利益となる場合と解される。
 そもそも,民法の添付(「附合」含む。)の規定は,数個の物が結合して一個の新たな物が生じたような場合に,その所有権の帰属を決定する必要があることと,分離復旧による社会的経済的損失を防ぐ趣旨から規定されたものである。
 つまり〔無権限であったとしても〕物が付着合体して社会的経済的価値が上がったのに,もういちど無理に分離復旧してそれぞれ元の所有者に所有権を認めることは,社会的経済的損失なので,その復旧を阻止するとというのが法の趣旨である。したがって,分離復旧で物の価値が上昇するような場合には,あてはまらないのであって,放射性物質による土地の汚染をもって土地への「附合」というのは強弁にすぎるということになろうか。
・いずれにしても飛散した放射性物質の所有権の帰属の問題と物権的妨害排除請求権の成立とは無関係と思われるので,あまり意味のない論点ではなかろうか。
〔飛散した放射性物質の所有権の帰属論に意味があるとすれば,東電からの放射性物質についての物権的返還請求権の成否の問題のみではないか?〕


〔物権的妨害排除請求権との関係〕
・物権は,物を直接かつ排他的に支配する権利である。つまり物権の物に対するこの支配関係は,法的に保護され,この直接的・排他的支配という本質的内容を脅かす侵害に対しては,自力救済が禁止さている法治主義の下では,それを排除する救済手段が与えられる必要があり,それが物権的請求権である。
・そして,物権的妨害排除請求権とは,占有以外の方法によって物権の内容の実現が妨げられている場合に,その侵害の除去を求めるという請求権である。
・したがって,直接的排他的支配という物権の内容の実現が妨げられているといえるかぎり,汚染物質の所有権が現に誰に帰属しているかは問題ではなく,その妨害状態ないしその原因を誰が作出したかが重要である。
・このため結局,放射性物質の「無主物」性や「附合」の論点は,本来,ゴルフ場側の物権的請求権の成否とは直接関係がないはずである。
〔せいぜい,その汚染物質の所有権の帰属主体なら,妨害状態を作出した者であると当然に推定が及ぶという程度であって,現に妨害状態が作られた時点で,妨害原因物の所有者でなければ,妨害排除請求を受けないという論理的関係はない。〕


〔物権的妨害排除請求権の成否〕
・同請求権の成否との関係では,ゴルフ場の敷地,施設の所有権に基づく直接的排他的支配がその放射性物質汚染によって脅かされているかが問題となろう。
 ごく微量の汚染で,人が入ってプレーしても,全く害がないというなら,直接的排他的支配の「妨害」がないとして,物権的妨害排除請求権の成立自体が否定されるかもしれない。〔汚染の程度の除染請求の関係については,以前に論じた。〕
 さらにもう1つ,妨害が侵害者の故意・過失によらない場合にも〔今回の事故は不明であるが〕,その侵害者の費用において妨害除去をするよう請求することができるのかという問題もある。


〔物権的妨害排除請求権の行使の可否〕
・物権的妨害排除請求権が,観念的にゴルフ場側の権利として認められたとして,それを現に行使することができるのかという問題がある。
 つまり,権利として観念できるが,現実に除染が不可能である場合には,〔少なくとも本案の結論が出ていない仮処分申立事件においては〕裁判所は不可能を強いることはできないとして,権利行使自体が否定されるかもしない〔権利濫用?、請求内容の不明確性?〕。
 なお,この場合の「除染不可能性」については,物理的に不可能であること,法令上私企業に不可能であること,〔経済的に不可能であることなど?〕,いくらか考えられる。
 そして,現に除染が全く不可能ならば,金銭賠償による満足以外は得られないことなるのかもしれない。

〔請求する行為内容の不明確性〕
最近は、放射性物質の除染が簡単なものでないことが報道されるようになって、一体どうやって除染するのかという、除染作業の内容そのものが問題とされるようになっている。
 運動場に丸太をばらまいたような事案なら、妨害排除として請求する内容は、「丸太をどけろ」というものではっきりしているだろうが、放射性物質による汚染の場合、義務者に具体的にどのような行為をせよと請求するのか、その内容が不明確であるということから、請求権の成立ないしその行使が否定される可能性はある。


※結局,「除染」というものが物理的に可能で,法令上の問題もなく,その具体的行為内容がある程度明確な場合には,東電側に除染義務が認められて当然だろう。ただし,その除染の費用が,汚染された不動産に関係する財産的損害を大幅に上回るような場合には,以前にも触れた除染費用と賠償額との関係が問題となるかもしれない。



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2011-11-30 : ・土地建物,土壌等の汚染 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・設置関係資料 その23 福島原発事故調査・検証委員会

・設置関係資料 その23 福島原発事故調査・検証委員会

http://icanps.go.jp/2011/07/29/0708gijiroku.pdf
第2回東電福島原発事故調査・検証委員会議事録
日 時:平成23 年7月8日(金)15:00~17:33
場 所:TKP 大手町カンファレンスセンターWEST ホールA

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〈略〉

○高須委員 私も今の点については、委員長のおっしゃったとおりだと思うんですけれども、2、3申し上げたいのは、今日、この委員会で基本的にはこのラインでやるということで走って、そして、動いている間に更に追加があるかもしれないし、更にここまでいくと無理かなということであれば、そこは議論するということだと思うんです。
 特に、私は第1チームについては非常に重要な役割だと思うんですけれども、過去のいろいろな重要な決定があるわけです。それは政府が決定したこともあるし、運営者が決定したこともあるかもしれないけれども、そういうときに、単に技術だけではなくて政策的、あるいは経営的、経済的な判断があって、実は印象としては、そちらの方が強かったのではないかという気がするわけです。日本の風潮として、専門家の意見というか知見よりも、かなり経営なり何なりの方が有利だということで、大事にしない風潮があるのではないかという気がしています。
 ですから、今の段階でコストはもう議論しないということになってしまうと、余り意味がないのではないかと思うんですが、他方、どこまでやるのか。一番バックエンドまでやるのかという話になってくると、これはかなり大変な話で、我々の作業ではできないのではないかという議論があると思うけれども、とりあえず、やはり走り出すということが大事だと思います。
 しかし、その側面を常に念頭に置いていただきたいというのは、私も同じ意見です。つまり、専門家の知見を徹底的に重視していないのではないか、今もそうではないかというのが印象としてあって、それが本当なのかどうか配慮するということを、その背景が何なのか、構造的な原因もあるだろうし、背景についても留意しつつ見るというのが第1チームは、第2チームもそうかもしれませんけれども、大事だということを申し上げたいと思います。
 もう一つは、この第2チームでいろいろ事故発生後の対応について、特に4で津波から耐震バックチェックといろいろ書いてあるわけですけれども、トータルしてまとめたようなもの、つまり多重防護という考え方が機能しなかったわけですが、なぜなのか、十分でなかった背景は何なのかということ。
 印象ですけれども、格納容器の冠水計画が一度報道されたと思います。やはり最悪の事態を想定して、いろいろな手を打つべきだったのが、そういう意味では見通しが甘かったのではないか。どのぐらい時間をロスして、本当にしなくてはいけないことが遅れたのかということはわかりませんけれども、この辺についても第2チームの「2 現場における対処に係る実態解明」の(6)でベント、代替注水とかありますが、そのほかのところもあります。その辺でも議論していただければと思います。
 大体の言葉はどこかで読めるのだから、余り変える必要はないと思うんですけれども、1点だけ気になったのは、国際的な側面なんです。つまり、第3チームの一番最後に「世界が求める情報の提供・外国等との連携」ということで、特にIAEA 等、国際機関との連携とあります。私の理解では、これは事故が起こった後の連携だと思うんです。
 私が気になるのは、事故が起きる前。実はいろいろと調べると、IAEA が原子力安全に関する基本原則とか規制要件ということをずっとやっているわけですけれども、その調和という問題があるわけです。各国の需要が勿論一番重要なんですけれども、それにできるだけハーモナイズしていくことについて、必ずしも日本は熱心ではなかったとか、あるいはCSS(Commission on Safety Standards)というのがあるんですけれども、そこの日本勧告は、規制当局の独立性を強く勧告してきているわけです。これについて、やはり日本政府当局者の対応が十分でなかったということなんだと思うんです。
 そういう意味で、今までどうだったかというのがこれでは読み取れないので、これだけは付け加えていただければということで、一案ですけれども、第2調査チームの最後の4に事前の対策と(1)~(11)まであるんですが、その中にもう一つ(12)として、例えばの話ですけれども、国際的な安全原則とか基準との調和と。
○畑村委員長 3ページ目のここのところに入れると。
○高須委員 そこに(12)として、国際的な安全原則・基準等の調和ということで、今までどのぐらい努力してきたのかということは調べる必要があるのかなと思います。
 以上でございます。
○畑村委員長 今、おっしゃったことは、もともと第1回目のときから本当は出ていた問題で、ここでも意識をしているけれども、項目として載っていませんが、当然やらなけれ
ばいけないことだと思っています。
 もう少し違うので見ると、もっと違う考えも本当は入れないと、取り扱えないかもしれないぐらい大事な部分ではないか。それは先ほどあった技術的な来歴とか、どこの技術をどう採用していくからこうなったというところから、全部が絡んでくる問題だと理解しています。
 今、言われた最後の方ですが、もう一つ、最初に言われた専門家の考えを大事にしない社会とか理由とか、そういうのを踏みこまなくてはいけない。これも全くそのとおりだという気がします。
 もう一つ、これは根本的で非常に大事な問題だと思うんですが、だれも今、言わなかったことを、実は高須さんはおっしゃっていて、多重防護が働かなかった理由です。
 多重防護があるから絶対かどうか知りませんが、だから、大丈夫だという説明をしていたんだけれども、多重防護があってもだめだったという事実があったときに、それでは多重防護でこれから先もずっとやり尽くすことができるのかといったら、本当はノーだとなっているとすると、多重防護に代わる新しい考えか、もっと進んだ考えをどこかで取り込まないと、本当の対策にはならないということになるのでないかという気がするんです。
 きっと吉岡先生がおっしゃった、次のソフトランディングの中で一番大事なのは、考え方の根本のところまで、そういう新しい考えを持ってこないとだめなんだということを言われているのでないかと思うんですが、これは推測です。
 だけれども、私はやはりその辺が大事なところかなと思っています。
 どうぞ、尾池委員。
○尾池委員 今のところなんですけれども、私は、多重防護はいいと思います。考えられるだけ全部やっておくという。ただ、多重防護になっていたのかというのが大事な観点だと思います。やっている、やっていると言っているけれども、私はこの前、現地へ行って本当にびっくりしましたが、津波が当然来るところまで何で削って下げなくてはいけないのか。あんなの多重防護とは言えないです。
 ですから、想定とそれに対する対策があって、多重防護の一つひとつの要素が成り立つわけですから、それが成り立っていたかどうかという方が大事な視点ではないかと思います。
○畑村委員長 検証をするには、誠に本当に検証でやらなくてはいけないのは、そこだろうと思います。そして、この間、2度に分けて、みんなが行ったから行ってみると、多重防護と言っているけれども、多重防護が成り立つには、実は1つずつが全部独立でないとだめなんです。
 だけれども、本当に多重防護というのはあの考えで、本当に1つずつが独立になっていたんだろうかと考えると、そうでもないのではないかと、行ってみると、そういうことを感じました。
 電源の喪失というけれども、切換えが本当にできるようになっているのかという、切換えが自由に効かないと多重になっていないことになって、どれか1個がやられてしまったら、みんなやられてしまうということになるんだが、本当にそういうことをちゃんとだれも考えなかったのか、それとも考えても大丈夫と思ったのかとか、そんなことがとても気になりました。
 自分の関心を言い過ぎるとだめになるから、もうやめます。
○高須委員 野さんがお待ちです。
○畑村委員長 済みません。
○野委員 この各チームの項目については、皆さんがおっしゃったとおりで、私も個別にお願いをしておりまして、大体入れていただいているので、後はこれを更に項目ごとに増やしていくことになるかと思います。
 若干、視点のことだけお願いをしたいと思います。私は津波のことは全く素人でわかりませんが、勿論、調査チームは考えてはおられるとは思うのですけれども、ここに書いてある項目だけ見ますと、国内のことのみを言っておられるわけですが、例えば2004 年にスマトラ沖で地震が起きて、カルバッカム原子力所に津波が押し寄せて、一部電力がなくなったとか、なくならないとか、そういう問題が起きているわけです。
 その時にどうして福島第一原発と同じような大事故にならなかったのか、スマトラ沖地震それを踏まえて各国はどんな対応をしたのか、東電はどんな対応をしたのか。念のためにお願いをしたいと思います。
 もう一点、これは1、2チームに関連するんですが、要は東京電力の意思決定システムといいますか、ある意味で体質の問題とかいろいろ言われていますが、そういうものが本当にあるのか、ないのか。これを探っていくのはなかなか難しいと思うのですけれども、大きな意味で言えば、東電のガバナンスの問題にもなろうかと思います。
 そういうものを検証するためには、過去の原子炉の損傷事故の隠し事件、それを受けてのいろいろな対応、対策、再発防止策をとっていると思いますけれども、そういうものがきちんとなされてきているかどうなのか。あるいは中越沖地震もありましたけれども、そういうものを踏まえて、どういう対応をとったのか。
 東電の中には、水力、火力、原子力があるわけですが、その中で原子力はどういう位置に置かれて、原子力の人たちの意見は上にどう伝わっていたのか、いないのか。全体のそういう意味での東電におけるガバナンス、統治能力の問題の是非、いろいろな問題に関わってくるお話だと思いますので、ひとつお願いをしたいと思います。よろしくどうぞ。

〈略〉

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■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その10 中間指針追補(自主的避難等に係る損害関係)のイメージ(案)

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その10 中間指針追補(自主的避難等に係る損害関係)のイメージ(案)


原子力損害賠償紛争審査会第17回資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/1313502.htm

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(審17)資料1

中間指針追補(自主的避難等に係る損害関係)のイメージ(案)

第1 はじめに
(1)自主的避難等の現状等
○原子力損害賠償紛争審査会(以下「本審査会」という。)は、平成23年8月5日に決定した「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下「中間指針」という。)において、政府による避難等の指示等(以下「避難指示等」という。)に係る損害を示したが、その際、避難指示等に基づかずに行った避難(以下「自主的避難」という。)に係る損害については、引き続き検討することとした。
○本審査会において、関係者へのヒアリングを含めて調査・検討を行った結果、避難指示等があった区域(以下「避難指示等対象区域」という。)の周辺地域では自主的避難をした者が相当数存在していることが確認された。自主的避難に至った主な類型としては、①本件事故当初の時期に、自らの置かれている状況について十分な情報がない中で、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の水素爆発が発生したことなどから、大量の放射性物質の放出による放射線被曝への恐怖や不安を抱き、その危険を回避しようと考えて避難を選択した場合、及び②本件事故後しばらく経過した後、生活圏内の空間放射線量や放射線被曝による影響等に関する情報がある程度入手できるようになった状況下で、放射線被曝や未確認の放射性物質の存在への不安や恐怖を抱き、その危険を回避しようと考えて避難を選択した場合が考えられる。
○同時に、当該地域の住民は、そのほとんどが自主的避難をせずにそれまでの住居に滞在し続けていたこと、これら避難をしなかった者が抱き続けたであろう上記の恐怖や不安を無視することはできないこと等も確認された。(以下、当該地域の住民による自主的避難と滞在を併せて「自主的避難等」という。)
(2)基本的考え方
○中間指針の対象となった避難指示等によって避難等を余儀なくされた場合以外の損害として、自主的避難者及び滞在者(以下「自主的避難者等」という。)に係る損害について併せて示すこととする。
○本件事故と自主的避難者等の被害との相当因果関係は、最終的には個々の事案毎に判断すべきものであるが、本中間指針追補では、本件事故に係る紛争解決に資するため、避難指示等を受けこれまで賠償の対象となっているもの以外で賠償が認められるべき一定の範囲を示すとともに、この際に共通に認められるべき損害項目・金額を示すこととする。
※避難指示等を受けて避難等をした者につき、既に精神的損害の賠償対象となっている場合を、本中間指針追補の対象とすべきか否か。
○したがって、本中間指針追補で明示していない損害であっても、個別具体的な事情によっては、賠償すべき損害と認められることがあり得る。

第2 自主的避難者等の損害について
(1)対象区域
自主的避難者等の損害を賠償する対象となる区域(以下「自主的避難等対象区域」という。)は、○○、○○、・・・・、○○の市町村とする。
※対象区域をどうするか。
(考え方)
1)「第1 はじめに」で示したように、本件事故を受けて自主的避難に至った主な類型は2種類考えられるが、いずれの場合もこのような恐怖や不安は、東京電力株式会社福島第一原子力発電所の状況が安定していない状況下で、同発電所や避難指示等対象区域からの距離、政府や地方公共団体から公表された放射線量に関する情報、居住地域の他の住民の自主的避難の状況等の要素が複合的に関連して生じていると考えられる。以上の要素を総合的に勘案すると、少なくとも自主的避難等対象区域においては、住民が放射線被曝への相当程度の恐怖や不安を抱いたことには相当の理由があり、また、それに基づき自主的避難を行ったことについてもやむを得ない面がある。
2)自主的避難者等の事情は個別に異なり、損害の内容も多様であるが、本中間指針追補では、自主的避難等の対象者全員に公平かつ等しく賠償すること、及び可能な限り広くかつ早期に救済するとの観点から、一定の自主的避難等対象区域を設定した上で、同対象区域に居住していた者に少なくとも共通に生じた損害を示すこととする。
3)上記自主的避難等対象区域以外の地域についても、個別具体的な事情に応じて、賠償の対象となる場合を排除するものではない。
(2)対象者
今回の自主的避難等の損害賠償の対象者は、本件事故発生時点において自主的避難等対象区域内に生活の本拠としての住居があった者(ただし、これらの者が避難指示等による避難等対象者として既に精神的損害の賠償対象とされている場合を除く。)とするか否か。
(考え方)
1)損害賠償請求権は個々人につき発生するものであるから、損害の賠償についても、世帯単位ではなく、個々人に対してなされるべきである。
2)上記対象者以外の者についても、個別具体的な事情に応じて、賠償の対象となる場合を排除するものではない。
(3)損害項目及び損害額
ア)自主的避難者等が受けた損害のうち、以下のものが一定の範囲で賠償すべき損害と認められるのではないか。ただし、個別の事情によっては、この他の損害項目も認められ得ることとしてはどうか。
① 放射線被曝への恐怖や不安により自主的避難を行った場合における以下のもの。
)自主的避難によって生じた生活費の増加費用
)自主的避難により、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛
)避難及び帰宅に要した移動費用
② 放射線被曝への恐怖や不安を抱きながら自主的避難等対象区域内の住居に滞在を続けた場合における以下のもの。
)放射線被曝への恐怖や不安、これに伴う行動の自由の制限等により正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり相当程度阻害されたために生じた精神的苦痛
)放射線被曝への恐怖や不安、これに伴う行動の自由の制限等により生活費が増加した分があれば、その増加費用
イ)ア)の①の)、)及び)に係る損害額、②の)及び)に係る損害額ともに、これらを合算した額を同額として算定するのが、公平かつ合理的な算定方法と認められるのではないか。
※損害項目とその算定方法をどのように考えるか。
案1 自主的避難者も滞在者も、同様の苦痛等を受けていたと評価し得るのであり、自主的避難者と滞在者で、避難費用の負担の有無等個々の事情は異なるにせよ、両者同額の賠償とする。また、実際に、誰がどの時点で「自主的避難」を行ったのかを認定するのは困難。
案2 自主的避難者も滞在者も、同様の苦痛等を受けていたが、自主的避難者には実際に避難費用が生じているので、前者については例えば往復の交通費(合理的な範囲の実費あるいは定額)を加算した賠償とする。
ウ)イ)の具体的な損害額の算定に当たっては、対象者のうち子供及び妊婦については一人○○円を目安とし、その他の対象者については一人○○円を目安とする。
※損害額はいくらか。
(考え方)
1)本件事故において自主的避難を行った者は、主として自宅以外での生活による生活費の増加並びに避難及び帰宅に要した移動費用が生じ、併せてこうした避難生活によって一定の精神的苦痛を被っていることから、少なくともこれらについては賠償すべき損害と観念することが可能である。また、自主的避難等対象区域内の住居の滞在者は、主として放射線被曝への恐怖や不安、これらに伴う行動の自由の制限等を余儀なくされることによる精神的苦痛を被っており、併せてこうした不安等によって生活費の増加も生じていることが考えられることから、少なくともこれらについては賠償すべき損害と観念することが可能である。
2)賠償すべき損害額については、自主的避難が、避難指示等により避難等を余儀なくされた場合とは異なるため、これに係る損害について避難指示等の場合(ア)①)及び②)の生活費増加分を除き実費が損害額)と同じ扱いとすることは、必ずしも公平かつ合理的ではない。
 一方、自主的避難者と滞在者とでは、現実に被った精神的苦痛の内容及び程度並びに現実に負担した費用の内容及び額に差があることは否定できないものの、いずれも自主的避難等対象区域内の住居に滞在することに伴う放射線被曝への恐怖や不安に起因して発生したものであること、当該滞在に伴う精神的苦痛等は自主的避難によって解消される一方で、新たに避難生活に伴う生活費増加等が生じるという相関関係があること、自主的避難等対象区域の住民の中には諸般の事情により滞在を余儀なくされた者もいるであろうこと、広範囲に居住する多数の居住者につき、自主的避難者と滞在者を区別し、個別に自主的避難の有無及び期間等を認定することは実際上極めて困難であり早期の救済が妨げられること等を考慮し、自主的避難の有無によりできるだけ金額に差を設けないことが公平かつ合理的である。
 こうした事情を考慮して、精神的損害と避難費用等を一括して一定額を算定するとともに、自主的避難者と滞在者の損害額については、基本的に同額とすることが妥当と判断した。
3)対象者の属性との関係については、特に本件事故発生当初において、大量の放射性物質の放出による放射線被曝への恐怖や不安を抱くことについては、年齢・性別を問わず一定の合理性を認めることができる。その後においても、少なくとも子供・妊婦の場合は、放射線への感受性が高い可能性があるとされていることから、比較的低線量とはいえ通常時より相当程度高い放射線量による放射線被曝への不安を抱くことについては、人口移動により推測される自主的避難の実態からも、一定の合理性を認めることが可能である。
このため、子供・妊婦については、少なくとも本件事故発生後○○までの分を、また、その他の対象者については、少なくとも本件事故発生当初の時期の分を、それぞれ賠償の対象期間として算定することが妥当と判断した。
4)ア)~ウ)については、個別具体的な事情に応じて、これ以外の損害項目が賠償の対象となる場合や異なる賠償額が算定される場合を排除するものではない。
※子供や妊婦が自主的避難した際の同伴者の損害をどう考えるか。
案1 損害は個々人に生じるものであり、子供や妊婦を対象として損害を認める以上、同伴者の損害を認める必要はない。仮に認めれば、滞在者との関係で不公平。
案2 子供や妊婦が避難する場合、同伴者が同行するのが通常であり、同伴者の損害を認めてよい。滞在者には同伴者の損害は生じないのだから、差が生じてもやむを得ない。
案3 同伴者の損害は子供や妊婦の損害に伴って生じるものとして一応観念できるが、実際には子供や妊婦の生活費増加分に含まれると評価することができ、金額として加算する必要はない。
※いつまでの損害額として算定するか。
案1 9月末+α
理由:9月末に緊急時避難準備区域が解除されたことから、その時点以降は、その外の区域に滞在することに不安を持つのが合理的とは言い難い。
案2 本中間指針追補策定時点まで
理由:損害賠償は過去の事象について判断するものであり、将来の状況が不明な中、将来分の賠償も認めるべきではない。
案3 12月末まで
理由:ステップ2の年内終了が見込まれており、原子力発電所の状況もある程度安定すると考えられる。また、少なくとも12月末までであれば、本中間指針追補策定時から確実な将来として見通すことができる期間として賠償対象としても不合理ではない。
案4 来年3月10日まで
理由:本件事故後1年という一つの区切りである(避難指示等による避難等の賠償における精神的損害の第2期の終期でもあり、整合性がとれる)。また、そのころ以降には、今後の状況の改善により、現在の不安は一定程度解消していることも考えられる。
(以上)


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2011-11-26 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その9 原子力損害賠償紛争審査会第16回資料

■2条「原子力損害」の意味・範囲 「自主」避難者の問題 その9 原子力損害賠償紛争審査会第16回資料


原子力損害賠償紛争審査会(第16回)
1.日時
平成23年11月10日(木曜日)16時00分~18時00分
2.場所
文部科学省(中央合同庁舎7号館東館) 3階講堂

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/1313180.htm

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(審16)資料1
自主的避難に関する主な論点(案)

本資料は、審査会における議論のために作成したものであり、指針の内容、損害の範囲について何ら予断を与えるものではない。

 自主的避難に係る原子力損害について、①対象時期、②対象区域、③対象者の属性、④損害項目等をどのように考えるべきか。
 また、自主的避難に一定の合理性を認め、賠償の対象とした場合、同区域の滞在者に対する賠償は認め得るか。認め得るとすればどのような損害なのか。
 さらに、政府指示に伴う避難者との関係はどのように考えるべきか。

1.対象時期
【論点】
1.これまで、自主的避難は、事故当初の類型(避難の理由:十分な情報がない中で大量の放射性物質の放出による被曝等の危険を回避。以下「第一期」という。)と一定時間が経過した以降の類型(避難の理由:低線量の被曝の危険を回避。以下「第二期」という。)では、その性質が異なるため、2つの類型を分けるべき、との議論があった。 一方、自主的避難の理由が異なるとしても、特定の時期で分けることは必ずしも合理的ではないとの見方もあるが、どのように考えるべきか。
2.仮に2つの類型に分けた場合、第一期にも含まれると考えられる低線量の被曝の危険を回避することに関する損害についてどう考えるか。
3.以上の両案につき、当面、指針で示す賠償の対象時期をいつまでとするか。
・ 過去のある時点(例えば9月末)までとするか。
・ 将来のある時点(例えば来年3月末)までとするか。


2.対象区域(別紙地図参照)
【論点】
1.対象区域の基準は何か。以下の要素が考えられるのではないか。あるいは,これらの他に何かあるか。
(1)自主的避難者の数、割合
(2)福島第一原発からの距離
(3)これまでの警戒区域、緊急時避難準備区域、計画的避難区域、特定避難勧奨地点等との近接性
(4)線量
2.区域設定する場合、以下のどの区域で考えるか。
(1)距離のみ(原発からの距離又は避難区域等からの距離)
(2)市町村より小さい単位(集落等)
(3)市町村
(4)福島県内の行政区域(県北、県中等)
(5)その他
※線量のみで区域設定することは困難
3.第一期と第二期と分ける場合、分けない場合で、上記1.2.の考慮内容は変わる
か。
【区域設定の例】
○自主的避難者が、一定の数、割合存在する地域(市町村又は行政区域)。
○福島第一原発から一定の距離の区域(距離、集落等、市町村又は行政区域)。
○これまでの警戒区域等と隣接した区域(距離、集落等、市町村又は行政区域)。
○一定の線量を示した区域(集落等、市町村又は行政区域)
○上記の要素を組み合わせて考慮した区域(集落等、市町村又は行政区域)
○その他


3.対象者の属性
【論点】
1.子供、その親を中心として自主的避難をしている実態が推測される中、線量に対
する不安は、子供、妊婦には大きいと考えられるが、どう取り扱うか。
2.自主的避難者への賠償を認めた場合、滞在者への賠償は認め得るか。
3.滞在者への賠償を認めた場合、賠償を認める地域へ事故後に転入してきた者(①
避難指示区域等からの避難者、②業務等による転入者)の扱いをどうするか。


4.損害項目等
【論点】
賠償の対象となる者を決めた場合、
1.自主的避難者に、どのような損害項目が認められるか。
2.その際、滞在者はどうか。
3.さらに、政府指示による避難者との関係はどうか。
4.これらの議論の基礎として、自主的避難者や滞在者に対するこれらの損害賠償は、
法的にどのような性格のものか。政府指示による避難者の場合と同じか否か。
5.精神的損害を認める場合にその金額の算定方法をどうするか。政府指示に伴う
避難者の慰謝料との関係はどうか。自主的避難者と滞在者の関係はどうか。


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2011-11-11 : ・「自主」避難者の問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・原発事故後の関連訴訟等 その3 平成23年10月分

・原発事故後の関連訴訟等 その3 平成23年10月分

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時事ドットコム
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011101200351

東電「訴訟通じ支払い基準作る」=茨城のゴルフ場が賠償提訴-東京地裁

 東京電力福島第1原発事故による風評被害で売り上げが激減したとして、茨城県でゴルフ場を運営する東京都内の会社が東電を相手に、約1億円の損害賠償を求める訴訟を12日までに東京地裁(深山卓也裁判長)に起こした。同日開かれた第1回口頭弁論で、東電側は争う姿勢を示した上で、「訴訟手続きを積み重ね、適切な支払い基準を作りたい」と述べた。(2011/10/12-12:41)


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http://mainichi.jp/select/today/news/20111001k0000m040141000c.html
東海第2原発:茨城の生協が運転再開差し止め提訴へ

2011年10月1日 2時33分

 定期検査で運転停止中の東海第2原発(茨城県東海村)を巡り、常総生活協同組合(本部・同県守谷市、村井和美理事長)は、日本原子力発電(原電)を相手取り、運転再開差し止めと廃炉を求める訴訟を起こす方針を決めた。生協が原発訴訟の原告となるのは全国初。漁業者をはじめ幅広く参加を募り原告団を結成し、11月初めに水戸地裁に提訴する。

 常総生協は茨城県南部と千葉県北部を配達区域とし、組合員約7000人を擁する。6月の通常総代会で決議した脱原発宣言に基づき、9月26日の理事会で提訴を決定した。

 訴訟では「原発事故による放射能汚染は安心して暮らす人権を脅かし、公共性を損なう」と指摘した上で「処理の見通しがない使用済み核燃料を生み出すことをやめるべきだ」と主張する方針。原告団は県民や関東・東北などから150人規模を目指す。【安味伸一】


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YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20111020-OYT1T00430.htm

東電に免責不適用は誤り…株主が提訴、国は反論

 東京電力福島第一原発の事故を巡り、東電株を1500株保有する東京都内の男性弁護士が、原子力損害賠償法の免責規定を東電に適用しなかったことで株価を下落させたとして、国に150万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こし、同地裁で20日、口頭弁論が開かれた。国側は「東日本大震災は免責規定が適用される『異常に巨大な天災地変』には当たらず、東電が損害賠償責任を負うべきだとした対応は適法だ」と、これまで政府が示してきた見解と同様の主張をし、請求の棄却を求めた。

 原子力事故による賠償責任を定めた同法は、過失の有無にかかわらず、電力会社が損害賠償の責任を負うことを原則とし、「異常に巨大な天災地変」の場合は免責すると規定。男性は、1961年に同法が制定される前の国会審議で、政府が「(免責の対象は)関東大震災の3倍以上」などと説明していたとし、「東日本大震災の地震の規模は関東大震災の3倍をはるかに上回り、今回の政府の判断は誤り」と主張している。

 国側は、この日地裁に提出した書面で、「免責は、人類がいまだかつて経験したことのない、全く想像を絶するような事態に限られるべきだ」と反論。「3倍以上という説明は、分かりやすい例えに過ぎない」とした。

(2011年10月20日13時22分 読売新聞)


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