東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・設置関係資料 その22 津波の試算

・設置関係資料 その22 津波の試算


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毎日jp
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/nuclear/archive/news/2011/08/20110826k0000m040088000c.html
福島第1原発:大津波試算 東電と保安院に見解の相違


 東京電力が「福島第1原発に10メートルを超える津波が押し寄せる可能性がある」との試算を08年にまとめていながら、経済産業省原子力安全・保安院に今年3月7日まで報告せず、公表もしていなかった問題で、東電と保安院の間で見解の相違が表面化している。

 保安院の森山善範対策監は25日の会見で、「試算であったとしても、それまでの想定(1~4号機で最大5・7メートル)と大きな違いがあるのだから早く公表し、専門家の前で説明をすべきだった」と東電の対応を批判。一方、東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「東電が勝手な想定をして原発の安全性を評価するよりも、(原発の津波対策の基準を策定する)土木学会の評価に基づいた方が合理性があり、その上で報告すべきだと思っている」と反論する。

 さらに保安院は、3月7日に東電から報告を受けた際、対応した耐震安全審査室長が東電に「設備面で対応が必要」と口頭指導したと説明。だが東電側は「そういう事実はない」(松本本部長代理)と否定している。

 また、東電は25日、08年の試算結果を経営層も把握していたことを明らかにした。東電は08年10月、土木学会に対し、津波対策の基準となる「原子力発電所の津波評価技術」の改訂を要請した。その際、当時の原子力・立地副本部長で、事故後は副社長として会見などに出席していた武藤栄顧問に報告し、了承を得ていた。武藤顧問は事故後「想定外の津波」との説明を繰り返していた。また、学会への要請後、当時原子力・立地本部長だった武黒一郎フェローにも報告していたという。

 一方、東電は25日、同原発3号機で26日から始める予定だった注水方法の変更を延期すると発表した。水を送り込むために使用予定だったステンレス製配管が、4号機使用済み燃料プール循環冷却装置で23日に微量な漏えいが見つかった配管と同じものだったため。【藤野基文】


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毎日jp
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110826k0000m040046000c.html
福島第1原発:津波試算に対応なし 東電に枝野長官が遺憾

 枝野幸男官房長官は25日午前の記者会見で、東京電力が「福島第1原発に10メートルを超える津波が押し寄せる可能性がある」との試算を08年にまとめながら対策を取っていなかったことについて「08年からであれば、今回の地震に十分に対応する時間的余裕があった。認識しながら対応できていなかったのは大変遺憾だ」と述べた。

 また、東電は試算結果を東日本大震災の直前の3月7日まで経済産業省原子力安全・保安院に報告せず、東電も保安院も震災前には公表しなかった。東電は政府の事故調査・検証委員会に報告したうえで、24日に明らかにしたが、枝野氏は「予測情報が保安院にあったことが、(検証委の)調査を踏まえないと出てこなかったのも大変遺憾なことだ」と不快感を示した。
毎日新聞 2011年8月25日 19時52分


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毎日jp
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/nuclear/archive/news/2011/08/20110825k0000m040070000c.html
福島第1原発:10メートル超津波 東電、直前に試算報告
毎日新聞 2011年8月24日 20時54分(最終更新 8月25日 1時22分)

 東京電力は24日、「福島第1原発に10メートルを超える津波が押し寄せる可能性がある」との試算結果を08年4~5月にまとめていたことを明らかにした。しかし「評価の必要がある」として具体的な対策を取らず、経済産業省原子力安全・保安院に報告したのも事故直前の今年3月7日だった。これらの事実を東電も保安院も公表せず、10メートルを超す3月11日の津波について「想定外だった」との説明を繰り返していた。

 試算は06年の原発耐震設計審査指針改定に伴い、保安院が指示した再評価作業の一環。東電は、政府の地震調査研究推進本部の見解に基づき、三陸沖から房総沖で明治三陸地震(1896年)並みの地震(マグニチュード8.3)が起きたと想定した。その結果、福島第1原発に到達する津波は▽5、6号機が10.2メートル▽1~4号機が8.4~9.3メートル▽防波堤南側で15.7メートルなどと推定された。

 しかし東電は結果を保安院へ報告せず、1~4号機で5.7メートルとしていた想定津波高の見直しもしなかった。

 東電の松本純一原子力・立地本部長代理は24日の会見で「(10メートル超は)あくまで試算で、運用を変えるほど信用に足る数値か慎重に判断する必要があった」と説明。事故後、津波を「想定外」としたことについても「うそをついたわけではない。運用変更は学説や試算でなく固まった評価基準で行われるべきだ」と釈明した。

 保安院によると、3月7日の報告では耐震安全審査室長が報告書面を受け取り「設備面で何らかの対応が必要」と指導したが、4日後に巨大地震が発生。想定を大幅に上回る津波が深刻な事故を招いた。

 東電は08年12月にも、869年の「貞観(じょうがん)地震」を想定した試算で「8.7~9.2メートル」との結果をまとめ、09年9月、保安院に報告した。しかし報告は口頭だったうえ、保安院の担当者から上司に伝わったかどうかも不明という。

 保安院は、事故直前の東電からの報告も含め、こうした事実を公表しなかった。森山善範対策監は24日、政府の事故調査・検証委員会には説明したことを明らかにし、「規制機関として十分な対応を取れていなかった」と話した。【藤野基文、岡田英】


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時事ドットコム
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011082400796
東電、津波15メートル超を想定=震災4日前、保安院に報告-福島第1

 福島第1原発事故で、東京電力は24日、同原発に押し寄せる津波の高さが15メートルを超える可能性があることを、東日本大震災発生4日前の3月7日に経済産業省原子力安全・保安院に報告していたことを明らかにした。
 東電のこれまでの説明では、震災前の津波の想定高さは5.7メートルだった。東電の松本純一原子力・立地本部長代理は「あくまでも調査・研究の試算で公表に値しないと思った」と釈明。保安院の森山善範原子力災害対策監は政府の事故調査・検証委員会に同様の説明をしたことを明かした上で、「今後の検証対象になると思う」と述べた。(2011/08/24-22:06)


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Yomiuri.online
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110823-OYT1T01155.htm?from=top
東電福島原発、2008年に「津波10m」試算

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、東電が、同原発に従来の想定を超える10メートル以上の津波が到来する可能性があると2008年に試算していたことを、政府の事故調査・検証委員会(委員長=畑村洋太郎・東大名誉教授)に説明していたことが分かった。

 東電はこの試算結果を非常用ディーゼル発電機の位置を高くするなどの津波対策に結びつけていなかった。速やかに対策が取られていれば、今回の事故被害を小さくできた可能性もあり、事故調は詳しい経緯を調べている。

 東電は、土木学会が02年2月にまとめた指針「原子力発電所の津波評価技術」に基づき、福島県沿岸部に津波を引き起こす地震は1938年の「塩屋崎沖地震」が最大級だと仮定。同原発での津波の高さを最大5・7メートルと計算し、冷却水(海水)をくみ上げるポンプの電動機の位置をかさ上げするなどの対策を取ってきた。だが東日本大震災で襲来した津波は14~15メートルに達したため、非常用発電機が浸水して全電源を喪失し、炉心の溶融を招いた。

 国の耐震設計審査指針が改定された06年9月、経済産業省原子力安全・保安院は電力各社に、各原発の耐震安全性を再評価(バックチェック)するよう指示した。関係者によると、これを受けて東電は08年夏、福島第一原発で想定される津波の高さについて新たに試算していた。
(2011年8月24日03時03分 読売新聞)


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asahi.com
http://www.asahi.com/national/update/0423/OSK201104230072.html
想定外の大津波「50年以内に10%」 東電06年発表
2011年4月24日8時5分

東京電力は、福島第一原発に、設計の想定を超える津波が来る確率を「50年以内に約10%」と予測し、2006年に国際会議で発表していた。東電は「試算の段階なので、対策にどうつなげるかは今後の課題だった」と説明している。

 東電原子力・立地本部の安全担当らの研究チームは福島原発を襲う津波の高さを「確率論的リスク評価」という方法で調べ、06年7月、米国であった原子力工学の国際会議で報告した。

 その報告書は「津波の影響を評価する時に、『想定外』の現象を予想することは重要である」と書き始められている。

 報告書によると、東電は慶長三陸津波(1611年)や延宝房総津波(1677年)などの過去の大津波を調査。予想される最大の地震をマグニチュード8.5と見積もり、地震断層の位置や傾き、原発からの距離などを変えて計1075通りを計算。津波の高さがどうなるか調べた。

 東電によると、福島第一原発は5.4~5.7メートルの津波を想定している。だが報告書によると、今後50年以内にこの想定を超える確率が約10%あり、10メートルを超える確率も約1%弱あった。

 報告書は「想定を超える可能性が依然としてある」と指摘。「津波について知識が限られていることや、地震のような自然現象にはばらつきがある」ことを理由にあげている。

 確率で原発の危険度を評価する方法は、地震の揺れが原因になるものは実用化されているが、津波についてはまだ基準が決まっていない。一方で、東電は、地震の規模を最大でも東日本大震災の約5分の1として予測しており、「10%」でも過小評価だった可能性がある。

 報告書について東電は「津波の評価法を検討するための試算段階のもの。まだ広く認められた方法ではないので、公表は考えていない」と説明する。

 また、設計の想定を最大5.7メートルと決めた根拠について、東電は「社内で経緯などを整理しているところ」として明らかにしていない。(木村俊介)


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毎日jp 毎日新聞社
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/nuclear/news/20111128k0000m040140000c.html

福島第1原発:08年に津波可能性 本店は対策指示せず
 2008年に東京電力社内で、福島第1原発に想定を大きく超える津波が来る可能性を示す評価結果が得られた際、原発設備を統括する本店の原子力設備管理部が、現実には「あり得ない」と判断して動かず、建屋や重要機器への浸水を防ぐ対策が講じられなかったことが27日、分かった。東電関係者が明らかにした。

 12月に中間報告を出す政府の事故調査・検証委員会も経緯を調べており、研究の進展で得た津波リスク評価の扱いや対応が適切だったかが焦点となる。

 東電関係者によると、社内研究の成果である新たな津波評価を受け、原子力・立地本部の幹部らが対応策を検討した。その際、設備を主管する原子力設備管理部は「そのような津波が来るはずはない」と主張。評価結果は学術的な性格が強く、深刻に受け取る必要はないとの判断だったという。同本部の上層部もこれを了承した。

 原子力設備管理部は、06年に発覚したデータ改ざんの再発防止のため実施した07年4月の機構改革で「設備の中長期的な課題への計画的な対応や設備管理の統括をする」として新設された。部長は発足時から昨年6月まで吉田昌郎現福島第1原発所長が務めた。

 東電は08年春、明治三陸地震が福島沖で起きたと仮定、想定水位5.7メートルを大幅に超え、最大で水位10.2メートル、浸水高15.7メートルの津波の可能性があるとの結果を得た。東電関係者は「評価結果をきちんと受け止めていれば、建屋や重要機器の水密性強化、津波に対応できる手順書作りや訓練もできたはずだ」と指摘している。

 東電広報部は「自主的に試算した内容については、土木学会に審議してもらい、設備に反映させていくつもりだった。学会に審議を要請したのは08年10月で、軽視や放置をしていたわけではない」としている。

毎日新聞 2011年11月28日 2時00分

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2011-08-31 : ・設置関係資料2 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・土地建物,土壌等の汚染 その7 放射性物質汚染対処特別措置法 条文

・土地建物,土壌等の汚染 その7 放射性物質汚染対処特別措置法


官報 平成23年8月30日付(特別号外 第42号)
http://kanpou.npb.go.jp/20110830/20110830t00042/20110830t000420000f.html
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平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法


目次
第一章 総則(第一条-第六条)
第二章 基本方針(第七条)
第三章 監視及び測定の実施(第八条)
第四章 事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理及び除染等の措置等
 第一節 関係原子力事業者の措置等(第九条・第十条)
 第二節 事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理(第十一条-第二十四条)
 第三節 除染等の措置等(第二十五条-第四十二条)
第五章 費用(第四十三条-第四十五条)
第六章 雑則(第四十六条-第五十九条)
第七章 罰則(第六十条-第六十三条)
附則


第一章
総則
(目的)
第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故(以下本則において単に「事故」という。)により当該原子力発電所から放出された放射性物質(以下「事故由来放射性物質」という。)による環境の汚染が生じていることに鑑み、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、国、地方公共団体、原子力事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、国、地方公共団体、関係原子力事業者等が講ずべき措置について定めること等により、事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「原子力事業者」とは、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第二条第三号に規定する原子力事業者をいい、「関係原子力事業者」とは、事故由来放射性物質を放出した原子力事業者をいう。
2 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(土壌を除く。)をいう。
3 この法律において「土壌等の除染等の措置」とは、事故由来放射性物質により汚染された土壌、草木、工作物等について講ずる当該汚染に係る土壌、落葉及び落枝、水路等に堆積した汚泥等の除去、当該汚染の拡散の防止その他の措置をいう。
4 この法律において「除去土壌」とは、第二十五条第一項に規定する除染特別地域又は第三十五条第一項に規定する除染実施区域に係る土壌等の除染等の措置に伴い生じた土壌をいう。
5 この法律において「水道事業者」又は「水道用水供給事業者」とは、それぞれ水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三条第五項に規定する水道事業者又は水道用水供給事業者をいい、「水道施設」とは、同条第八項に規定する水道施設をいう。
6 この法律において「公共下水道」、「流域下水道」、「公共下水道管理者」、「発生汚泥等」及び「流域下水道管理者」の意義は、それぞれ下水道法(昭和三十三年法律第七十九号)第二条第三号及び第四号、第四条第一項、第二十一条の二第一項並びに第二十五条の三第一項に規定する当該用語の意義による。
7 この法律において「工業用水道事業者」とは、工業用水道事業法(昭和三十三年法律第八十四号)第二条第五項に規定する工業用水道事業者をいい、「工業用水道施設」とは、同条第六項に規定する工業用水道施設をいう。
8 この法律において「一般廃棄物」、「特別管理一般廃棄物」、「産業廃棄物」、「特別管理産業廃棄物」、「一般廃棄物処理基準」、「特別管理一般廃棄物処理基準」、「一般廃棄物処理施設」、「産業廃棄物処理基準」、「特別管理産業廃棄物処理基準」及び「産業廃棄物処理施設」の意義は、それぞれ廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号。以下「廃棄物処理法」という。)第二条第二項から第五項まで、第六条の二第二項及び第三項、第八条第一項、第十二条第一項、第十二条の二第一項並びに第十五条第一項に規定する当該用語の意義による。
9 この法律において「農用地」とは、耕作の目的又は主として家畜の放牧の目的若しくは養畜の業務のための採草の目的に供される土地をいう。

(国の責務)
第三条 国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、必要な措置を講ずるものとする。

(地方公共団体の責務)
第四条 地方公共団体は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、国の施策への協力を通じて、当該地域の自然的社会的条件に応じ、適切な役割を果たすものとする。

(原子力事業者の責務)
第五条 関係原子力事業者は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、誠意をもって必要な措置を講ずるとともに、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力しなければならない。
2 関係原子力事業者以外の原子力事業者は、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(国民の責務)
第六条 国民は、国又は地方公共団体が実施する事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に協力するよう努めなければならない。


第二章 基本方針
第七条 環境大臣は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策を適正に策定し、及び実施するため、最新の科学的知見に基づき、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
2 基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
 一 事故由来放射性物質による環境の汚染への対処の基本的な方向
 二 事故由来放射性物質による環境の汚染の状況についての監視及び測定に関する基本的事項
 三 事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理に関する基本的事項
 四 土壌等の除染等の措置に関する基本的事項
 五 除去土壌の収集、運搬、保管及び処分に関する基本的事項
 六 その他事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する重要事項
3 環境大臣は、第一項の規定により基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
4 環境大臣は、基本方針につき第一項の閣議の決定があったときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 第一項及び前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。


第三章 監視及び測定の実施
第八条 国は、事故由来放射性物質による環境の汚染の状況を把握するための統一的な監視及び測定の体制を速やかに整備するとともに、自ら監視及び測定を実施し、その結果を適切な方法により随時公表するものとする。
2 地方公共団体は、国との適切な役割分担及び相互の協力の下、事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について監視及び測定を実施し、その結果を適切な方法により随時公表するよう努めるものとする。


第四章 事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理及び除染等の措置等
第一節 関係原子力事業者の措置等
(関係原子力事業者による廃棄物の処理等)
第九条 事故に係る原子力事業所内の廃棄物の処理並びに土壌等の除染等の措置及びこれに伴い生じた土壌の処理並びに事故により当該原子力事業所外に飛散したコンクリートの破片その他の廃棄物の処理は、次節及び第三節の規定にかかわらず、関係原子力事業者が行うものとする。

(関係原子力事業者による協力措置)
第十条 関係原子力事業者は、この法律に基づく措置が的確かつ円滑に行われるようにするため、専門的知識及び技術を有する者の派遣、当該措置を行うために必要な放射線障害防護用器具その他の資材又は機材であって環境省令で定めるものの貸与その他必要な措置(以下「協力措置」という。)を講じなければならない。
2 国又は地方公共団体は、この法律に基づく措置が的確かつ円滑に行われるようにするため必要があると認めるときは、環境省令で定めるところにより、当該関係原子力事業者に対し、協力措置を講ずることを要請することができる。
3 地方公共団体は、前項の規定による要請を受けた関係原子力事業者が当該要請に応じないときは、その旨を環境大臣に通知することができる。
4 環境大臣は、第二項の規定による要請を受けた関係原子力事業者が正当な理由がなくてその要請に係る協力措置を講じていないと認めるときは、当該要請を受けた関係原子力事業者に対し、当該協力措置を講ずべきことを勧告することができる。
5 環境大臣は、前項の規定による勧告を受けた関係原子力事業者がその勧告に従わなかったときは、その旨を公表することができる。

第二節 事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理
(汚染廃棄物対策地域の指定)
第十一条 環境大臣は、その地域内において検出された放射線量等からみてその地域内にある廃棄物が特別な管理が必要な程度に事故由来放射性物質により汚染されているおそれがあると認められることその他の事情から国がその地域内にある廃棄物の収集、運搬、保管及び処分を実施する必要がある地域として環境省令で定める要件に該当する地域を、汚染廃棄物対策地域として指定することができる。
2 環境大臣は、汚染廃棄物対策地域を指定しようとするときは、あらかじめ、関係地方公共団体の長の意見を聴かなければならない。
3 環境大臣は、汚染廃棄物対策地域を指定したときは、遅滞なく、環境省令で定めるところにより、その旨を公告するとともに、関係地方公共団体の長に通知しなければならない。
4 都道府県知事又は市町村長は、当該都道府県又は市町村の区域内の一定の地域で第一項の環境省令で定める要件に該当するものを、汚染廃棄物対策地域として指定すべきことを環境大臣に対し要請することができる。

(汚染廃棄物対策地域の区域の変更等)
第十二条 環境大臣は、汚染廃棄物対策地域の指定の要件となった事実の変更により必要が生じたときは、当該汚染廃棄物対策地域の区域を変更し、又はその指定を解除することができる。
2 前条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による汚染廃棄物対策地域の区域の変更又は汚染廃棄物対策地域の指定の解除について準用する。

(対策地域内廃棄物処理計画)
第十三条 環境大臣は、汚染廃棄物対策地域を指定したときは、当該汚染廃棄物対策地域内にある廃棄物(当該廃棄物が当該汚染廃棄物対策地域外へ搬出された場合にあっては当該搬出された廃棄物を含み、環境省令で定めるものを除く。以下「対策地域内廃棄物」という。)の適正な処理を行うため、遅滞なく、対策地域内廃棄物の処理に関する計画(以下「対策地域内廃棄物処理計画」という。)を定めなければならない。
2 対策地域内廃棄物処理計画においては、環境省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めるものとする。
 一 対策地域内廃棄物の量及び処理量の見込み
 二 対策地域内廃棄物処理計画の目標
 三 前号の目標を達成するために必要な措置に関する基本的事項
 四 その他対策地域内廃棄物の適正な処理に関し必要な事項
3 環境大臣は、対策地域内廃棄物処理計画を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、関係地方公共団体の長の意見を聴かなければならない。
4 環境大臣は、対策地域内廃棄物処理計画を定めたときは、遅滞なく、これを公告するとともに、関係地方公共団体の長に通知しなければならない。

(対策地域内廃棄物処理計画の変更)
第十四条 環境大臣は、汚染廃棄物対策地域の区域の変更により、又は対策地域内廃棄物の事故由来放射性物質による汚染の状況の変動等により必要が生じたときは、対策地域内廃棄物処理計画を変更することができる。
2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による対策地域内廃棄物処理計画の変更(環境省令で定める軽微な変更を除く。)について準用する。

(国による対策地域内廃棄物の処理の実施)
第十五条 国は、対策地域内廃棄物処理計画に従って、対策地域内廃棄物の収集、運搬、保管及び処分をしなければならない。

(水道施設等における廃棄物の調査)
第十六条 次の各号に掲げる者は、環境省令で定めるところにより、当該各号に定める廃棄物の事故由来放射性物質による汚染の状況について、環境省令で定める方法により調査し、その結果を環境大臣に報告しなければならない。
 一 水道施設であって環境省令で定める要件に該当するものを管理する水道事業者又は水道用水供給事業者 当該水道施設から生じた汚泥等の堆積物その他の環境省令で定めるもの
 二 公共下水道であって環境省令で定める要件に該当するものを管理する公共下水道管理者又は流域下水道であって環境省令で定める要件に該当するものを管理する流域下水道管理者 当該公共下水道又は当該流域下水道に係る発生汚泥等
 三 工業用水道施設であって環境省令で定める要件に該当するものを管理する工業用水道事業者 当該工業用水道施設から生じた汚泥等の堆積物その他の環境省令で定めるもの
 四 第二十四条第一項に規定する特定一般廃棄物処理施設である焼却施設の設置者(市町村が廃棄物処理法第六条の二第一項の規定により一般廃棄物を処分するために設置する第二十四条第一項に規定する特定一般廃棄物処理施設である焼却施設にあっては、管理者)又は同条第二項に規定する特定産業廃棄物処理施設である焼却施設の設置者 当該焼却施設から生じたばいじん及び焼却灰その他の燃え殻
 五 集落排水施設であって環境省令で定める要件に該当するものを管理する者 当該集落排水施設から生じた汚泥等の堆積物その他の環境省令で定めるもの
2 環境大臣は、前項各号に掲げる者が同項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたときは、環境省令で定めるところにより、その者に対し、その報告を行い、又はその報告の内容を是正すべきことを命ずることができる。

(特別な管理が必要な程度に事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の指定等)
第十七条 環境大臣は、前条第一項の規定による調査の結果、同項各号に定める廃棄物の事故由来放射性物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないと認めるときは、当該廃棄物を特別な管理が必要な程度に事故由来放射性物質により汚染された廃棄物として指定するものとする。
2 前条第一項各号に掲げる者は、当該各号に定める廃棄物であって前項の規定による指定に係るものが、国、国の委託を受けて当該廃棄物の収集、運搬、保管又は処分を行う者その他第四十八条第一項の環境省令で定める者に引き渡されるまでの間、環境省令で定める基準に従い、これを保管しなければならない。

(特別な管理が必要な程度に事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の指定の申請)
第十八条 その占有する廃棄物の事故由来放射性物質による汚染の状況について調査した結果、当該廃棄物の事故由来放射性物質による汚染状態が環境省令で定める基準に適合しないと思料する者(関係原子力事業者を除く。)は、環境省令で定めるところにより、環境大臣に対し、当該廃棄物について前条第一項の規定による指定をすることを申請することができる。
2 前項の申請をする者は、環境省令で定めるところにより、同項の申請に係る廃棄物の事故由来放射性物質による汚染の状況の調査(以下この条において「申請に係る調査」という。)の方法及び結果その他環境省令で定める事項を記載した申請書に、環境省令で定める書類を添付して、これを環境大臣に提出しなければならない。
3 環境大臣は、第一項の申請があった場合において、申請に係る調査が環境省令で定める方法により行われたものであり、かつ、当該廃棄物の事故由来放射性物質による汚染状態が同項の環境省令で定める基準に適合しないと認めるときは、当該申請に係る廃棄物について、前条第一項の規定による指定をすることができる。この場合において、当該申請に係る調査は、第十六条第一項の規定による調査とみなす。
4 環境大臣は、第一項の申請があった場合において、必要があると認めるときは、当該申請をした者に対し、申請に係る調査に関し報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、当該申請に係る廃棄物が保管されている場所に立ち入り、当該申請に係る調査の実施状況を検査させることができる。
5 前条第二項の規定は、第一項の申請をした者について準用する。この場合において、
同条第二項中「当該各号に定める」とあるのは「当該申請に係る」と、「前項」とあるのは「第十七条第一項」と読み替えるものとする。

(国による指定廃棄物の処理の実施)
第十九条 国は、第十七条第一項の規定による指定に係る廃棄物(以下「指定廃棄物」という。)の収集、運搬、保管(同条第二項(前条第五項において準用する場合を含む。)の規定による保管を除く。次条、第四十八条第一項、第四十九条第三項、第五十条第三項、第五十一条第二項及び第六十条第一項第三号において同じ。)及び処分をしなければならない。

(特定廃棄物の処理の基準)
第二十条 対策地域内廃棄物又は指定廃棄物(以下「特定廃棄物」という。)の収集、運搬、保管又は処分を行う者は、環境省令で定める基準に従い、特定廃棄物の収集、運搬、保管又は処分を行わなければならない。

(廃棄物処理法の適用関係)
第二十一条 対策地域内廃棄物であって事故由来放射性物質により汚染されていないものについては、廃棄物処理法の規定は、適用しない。
第二十二条 廃棄物処理法第二条第一項の規定の適用については、当分の間、同項中「汚染された物」とあるのは、「汚染された物(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)第一条に規定する事故由来放射性物質によつて汚染された物(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)又は放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号)の規定に基づき廃棄される物、放射性物質汚染対処特措法第十三条第一項に規定する対策地域内廃棄物、放射性物質汚染対処特措法第十九条に規定する指定廃棄物その他環境省令で定める物を除く。)を除く。)」とする。

(特定一般廃棄物等の処理の基準)
第二十三条 前条の規定により読み替えて適用される廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物(一般廃棄物に該当するものに限る。)であって、事故由来放射性物質により汚染され、又はそのおそれがあるもの(環境省令で定めるものに限る。以下「特定一般廃棄物」という。)の処理を行う者(一般廃棄物処理基準(特別管理一般廃棄物にあっては、特別管理一般廃棄物処理基準)が適用される者に限る。)は、当該基準のほか、環境省令で定める基準に従い、特定一般廃棄物の処理を行わなければならない。
2 前条の規定により読み替えて適用される廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物(産業廃棄物に該当するものに限る。)であって、事故由来放射性物質により汚染され、又はそのおそれがあるもの(環境省令で定めるものに限る。以下「特定産業廃棄物」という。)の処理を行う者(産業廃棄物処理基準(特別管理産業廃棄物にあっては、特別管理産業廃棄物処理基準)が適用される者に限る。)は、当該基準のほか、環境省令で定める基準に従い、特定産業廃棄物の処理を行わなければならない。
3 特定一般廃棄物を輸出しようとする者に係る廃棄物処理法第十条の規定(この規定に係る罰則を含む。)の適用については、同条第一項第三号中「特別管理一般廃棄物処理基準)」とあるのは、「特別管理一般廃棄物処理基準)及び平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)第二十三条第一項の環境省令で定める基準」とする。
4 特定産業廃棄物を輸出しようとする者に係る廃棄物処理法第十五条の四の七の規定(この規定に係る罰則を含む。)の適用については、同条第一項中「同条第一項第四号中「市町村」」とあるのは「同条第一項中「一般廃棄物」とあるのは「産業廃棄物」と、同条第三号中「一般廃棄物処理基準」とあるのは「産業廃棄物処理基準及び平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)第二十三条第二項の環境省令で定める基準(以下この号において「特別処理基準」という。)」と、「特別管理一般廃棄物」とあるのは「特別管理産業廃棄物」と、「特別管理一般廃棄物処理基準」とあるのは「特別管理産業廃棄物処理基準及び特別処理基準」と、同項第四号中「市町村」」と、「読み替えるほか、同条の規定に関し必要な技術的読替えは、政令で定める」とあるのは「、同条第二項第一号中「一般廃棄物」とあるのは「産業廃棄物」と読み替えるものとする」とする。
5 特定一般廃棄物又は特定産業廃棄物を焼却する場合に係る廃棄物処理法第十六条の二の規定(この規定に係る罰則を含む。)の適用については、同条第一号中「特別管理産業廃棄物処理基準」とあるのは、「特別管理産業廃棄物処理基準及び平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)第二十三条第一項又は第二項の環境省令で定める基準」とする。
6 第一項に規定する者が特定一般廃棄物の処理を行う場合に係る廃棄物処理法第十九条の三及び第十九条の四の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)の適用については、廃棄物処理法第十九条の三第一号中「特別管理一般廃棄物処理基準)」とあるのは「特別管理一般廃棄物処理基準)又は平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)第二十三条第一項の環境省令で定める基準(第三号及び次条第一項において「特別処理基準」という。)」と、同条第三号中「特別管理一般廃棄物処理基準)」とあるのは「特別管理一般廃棄物処理基準)若しくは特別処理基準」と、廃棄物処理法第十九条の四第一項中「特別管理一般廃棄物処理基準)」とあるのは「特別管理一般廃棄物処理基準)又は特別処理基準」とする。
7 第二項に規定する者が特定産業廃棄物の処理を行う場合に係る廃棄物処理法第十九条の三及び第十九条の五の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)の適用については、廃棄物処理法第十九条の三第二号中「産業廃棄物処理基準」とあるのは「産業廃棄物処理基準若しくは平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)第二十三条第二項の環境省令で定める基準(以下この条及び第十九条の五第一項において「特別処理基準」という。)」と、「特別管理産業廃棄物処理基準」とあるのは「特別管理産業廃棄物処理基準若しくは特別処理基準」と、同条第三号中「特別管理産業廃棄物処理基準)」とあるのは「特別管理産業廃棄物処理基準)若しくは特別処理基準」と、廃棄物処理法第十九条の五第一項中「産業廃棄物処理基準」とあるのは「産業廃棄物処理基準若しくは特別処理基準」と、「特別管理産業廃棄物処理基準」とあるのは「特別管理産業廃棄物処理基準若しくは特別処理基準」とする。

(特定一般廃棄物処理施設等の維持管理の基準)
第二十四条 一般廃棄物処理施設であって環境省令で定める要件に該当するもの(以下「特定一般廃棄物処理施設」という。)の設置者(市町村が廃棄物処理法第六条の二第一項の規定により一般廃棄物を処分するために設置する特定一般廃棄物処理施設にあっては、管理者。第三項において同じ。)は、当分の間、廃棄物処理法第八条の三第一項の環境省令で定める技術上の基準のほか、環境省令で定める技術上の基準に従い、当該特定一般廃棄物処理施設の維持管理をしなければならない。
2 産業廃棄物処理施設であって環境省令で定める要件に該当するもの(以下「特定産業廃棄物処理施設」という。)の設置者は、当分の間、廃棄物処理法第十五条の二の三第一項の環境省令で定める技術上の基準のほか、環境省令で定める技術上の基準に従い、当該特定産業廃棄物処理施設の維持管理をしなければならない。
3 特定一般廃棄物処理施設の設置者が当該特定一般廃棄物処理施設の維持管理を行う場合に係る廃棄物処理法第九条の二第一項第一号及び第九条の三第十項の規定(廃棄物処理法第九条の二の規定に係る罰則を含む。)の適用については、これらの規定中「技術上の基準」とあるのは、「技術上の基準(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)第二十四条第一項の環境省令で定める技術上の基準を含む。)」とする。
4 特定産業廃棄物処理施設の設置者が当該特定産業廃棄物処理施設の維持管理を行う場合に係る廃棄物処理法第十五条の二の七第一号の規定(この規定に係る罰則を含む。)の適用については、同号中「技術上の基準」とあるのは、「技術上の基準(平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)第二十四条第二項の環境省令で定める技術上の基準を含む。)」とする。

第三節 除染等の措置等
(除染特別地域の指定)
第二十五条 環境大臣は、その地域及びその周辺の地域において検出された放射線量等からみてその地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染が著しいと認められることその他の事情から国が土壌等の除染等の措置並びに除去土壌の収集、運搬、保管及び処分(以下「除染等の措置等」という。)を実施する必要がある地域として環境省令で定める要件に該当する地域を、除染特別地域として指定することができる。
2 環境大臣は、前項の環境省令を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
3 環境大臣は、除染特別地域を指定しようとするときは、あらかじめ、関係地方公共団体の長の意見を聴かなければならない。
4 環境大臣は、除染特別地域を指定したときは、遅滞なく、環境省令で定めるところにより、その旨を公告するとともに、関係地方公共団体の長に通知しなければならない。
5 都道府県知事又は市町村長は、当該都道府県又は市町村の区域内の一定の地域で第一項の環境省令で定める要件に該当するものを、除染特別地域として指定すべきことを環境大臣に対し要請することができる。

(除染特別地域の区域の変更等)
第二十六条 環境大臣は、除染特別地域の指定の要件となった事実の変更により必要が生じたときは、当該除染特別地域の区域を変更し、又はその指定を解除することができる。
2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による除染特別地域の区域の変更又は除染特別地域の指定の解除について準用する。

(除染特別地域内の汚染の状況の調査測定)
第二十七条 国は、除染特別地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について調査測定をすることができる。
2 国は、前項の調査測定をしたときは、その結果を公表しなければならない。
3 国の行政機関の長は、事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について調査測定をするため、必要があるときは、その必要の限度において、その職員に、土地又は工作物に立ち入り、土壌その他の物につき調査測定をさせ、又は調査測定のため必要な最小量に限り土壌その他の物を無償で収去させることができる。
4 国の行政機関の長は、その職員に前項の規定による立入り、調査測定又は収去をさせようとするときは、あらかじめ、土地又は工作物の所有者、管理者又は占有者(以下「所有者等」という。)にその旨を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、過失がなくて当該土地若しくは工作物の所有者等又はその所在が知れないときは、この限りでない。
5 第三項の規定による立入り、調査測定又は収去をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
6 土地又は工作物の所有者等は、正当な理由がない限り、第三項の規定による立入り、調査測定又は収去を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。

(特別地域内除染実施計画)
第二十八条 環境大臣は、除染特別地域を指定したときは、当該除染特別地域について、除染等の措置等を総合的かつ計画的に講ずるため、当該除染特別地域に係る除染等の措置等の実施に関する計画(以下「特別地域内除染実施計画」という。)を定めなければならない。
2 特別地域内除染実施計画においては、環境省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めるものとする。
 一 除染等の措置等の実施に関する方針
 二 特別地域内除染実施計画の目標
 三 前号の目標を達成するために必要な措置に関する基本的事項
 四 その他除染特別地域に係る除染等の措置等の実施に関し必要な事項
3 環境大臣は、特別地域内除染実施計画を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するとともに、関係地方公共団体の長の意見を聴かなければならない。
4 環境大臣は、特別地域内除染実施計画を定めたときは、遅滞なく、これを公告するとともに、関係地方公共団体の長に通知しなければならない。

(特別地域内除染実施計画の変更)
第二十九条 環境大臣は、除染特別地域の区域の変更により、又は除染特別地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染の状況の変動等により必要が生じたときは、特別地域内除染実施計画を変更することができる。
2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による特別地域内除染実施計画の変更(環境省令で定める軽微な変更を除く。)について準用する。

(国による特別地域内除染実施計画に基づく除染等の措置等の実施)
第三十条 国は、除染特別地域について、特別地域内除染実施計画に従って、除染等の措置等を実施しなければならない。
2 特別地域内除染実施計画に基づく土壌等の除染等の措置は、関係人(土壌等の除染等の措置を実施しようとする土地又はこれに存する工作物、立木その他土地に定着する物件(以下「土地等」という。)に関し土壌等の除染等の措置の実施の妨げとなる権利を有する者をいう。以下同じ。)の同意を得て、実施しなければならない。
3 関係人は、特別地域内除染実施計画が円滑に実施されるよう、特別地域内除染実施計画に基づく土壌等の除染等の措置に協力しなければならない。
4 国は、特別地域内除染実施計画に基づく土壌等の除染等の措置を実施しようとする場合において、過失がなくて関係人又はその所在が知れないため、第二項の同意を得ることができないときは、当該土壌等の除染等の措置を実施する土地等、当該土壌等の除染等の措置の内容その他環境省令で定める事項を官報に掲載することができる。
5 前項の掲載があったときは、関係人は、その掲載の日から三月を経過する日までの間に、環境省令で定めるところにより、国に対し、当該土壌等の除染等の措置についての意見書を提出することができる。
6 第四項の掲載があった場合において、前項に規定する期間が経過する日までの間に、関係人から当該土壌等の除染等の措置について異議がある旨の同項の意見書の提出がなかったときは、当該土壌等の除染等の措置を実施することについて第二項の同意があったものとみなす。
7 国は、第二項の同意を得ることができない場合又は第五項の規定により関係人から当該土壌等の除染等の措置について異議がある旨の同項の意見書の提出があった場合において、当該土壌等の除染等の措置が実施されないことにより、当該土地等の事故由来放射性物質による汚染に起因して当該土地又はその周辺の土地において人の健康に係る被害が生ずるおそれが著しいと認めるときは、当該汚染による人の健康に係る被害を防止するため必要な限度において、第二項の同意を得ることなく当該土壌等の除染等の措置を実施することができる。

(除染特別地域内の土地等に係る除去土壌等の保管)
第三十一条 国は、除染特別地域内の土地等に係る除去土壌等(除去土壌及び土壌等の除染等の措置に伴い生じた廃棄物をいう。以下同じ。)を、やむを得ず当該除去土壌等に係る土壌等の除染等の措置を実施した土地において保管する必要があると認めるときは、当分の間、当該土地の所有者等(これらの者から権利を承継した者又は権利の設定を受けて、新たに当該土地の所有者等となった者を含む。第五項並びに第三十九条第一項及び第七項において同じ。)に対し、当該土地において当該除去土壌等を保管させることができる。ただし、当該土地が警戒区域設定指示(事故に関して原子力災害対策特別措置法第十五条第三項又は第二十条第三項の規定により内閣総理大臣又は原子力災害対策本部長(同法第十七条第一項に規定する原子力災害対策本部長をいう。)が市町村長に対して行った同法第二十八条第二項の規定により読み替えて適用される災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第六十三条第一項の規定による警戒区域の設定を行うことの指示をいう。)の対象区域であること、過失がなくて当該土地の所有者等が知れないこと等により当該土地の所有者等に当該除去土壌等を保管させることが困難な場合には、国が、当該土地において当該除去土壌等を保管することができる。
2 国は、前項の規定により、土地の所有者等に当該土地等に係る除去土壌等を保管させ、又は自らが当該土地において除去土壌等を保管しようとするときは、あらかじめ、当該土地の所有者等にその旨を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、過失がなくて当該土地の所有者等又はその所在が知れないときは、この限りでない。
3 環境大臣は、環境省令で定めるところにより、除染特別地域内の土地等に係る除去土壌等の保管に関する台帳を作成し、これを管理しなければならない。
4 環境大臣は、台帳の閲覧を求められたときは、正当な理由がなければ、これを拒むことができない。
5 除染特別地域内の土地等に係る土壌等の除染等の措置に伴い生じた廃棄物(第二十二条の規定により読み替えて適用される廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物のうち産業廃棄物に該当するものに限る。)を当該土壌等の除染等の措置が実施された土地において当該土地の所有者等又は国が保管する場合には、廃棄物処理法第十二条第二項(特別管理産業廃棄物にあっては、第十二条の二第二項)の規定は、適用しない。

(汚染状況重点調査地域の指定)
第三十二条 環境大臣は、その地域及びその周辺の地域において検出された放射線量等からみて、その地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染状態が環境省令で定める要件に適合しないと認められ、又はそのおそれが著しいと認められる場合には、その地域をその地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について重点的に調査測定をすることが必要な地域(除染特別地域を除く。以下「汚染状況重点調査地域」という。)として指定するものとする。
2 環境大臣は、前項の環境省令を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
3 環境大臣は、汚染状況重点調査地域を指定しようとするときは、あらかじめ、関係地方公共団体の長の意見を聴かなければならない。
4 環境大臣は、汚染状況重点調査地域を指定したときは、遅滞なく、環境省令で定めるところにより、その旨を公告するとともに、関係地方公共団体の長に通知しなければならない。
5 都道府県知事又は市町村長は、当該都道府県又は市町村の区域内の一定の地域で第一項の環境省令で定める要件に適合しないと認められるものを、汚染状況重点調査地域として指定すべきことを環境大臣に対し要請することができる。

(汚染状況重点調査地域の区域の変更等)
第三十三条 環境大臣は、汚染状況重点調査地域の指定の要件となった事実の変更により必要が生じたときは、当該汚染状況重点調査地域の区域を変更し、又はその指定を解除することができる。
2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の規定による汚染状況重点調査地域の区域の変更又は汚染状況重点調査地域の指定の解除について準用する。

(汚染状況重点調査地域内の汚染の状況の調査測定)
第三十四条 都道府県知事又は政令で定める市町村の長(以下「都道府県知事等」という。)は、環境省令で定める方法により、汚染状況重点調査地域内の事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について調査測定をすることができる。
2 都道府県知事等は、前項の調査測定をしたときは、その結果を公表するよう努めなければならない。
3 都道府県知事等は、事故由来放射性物質による環境の汚染の状況について調査測定をするため、必要があるときは、その必要の限度において、その職員に、土地又は工作物に立ち入り、土壌その他の物につき調査測定をさせ、又は調査測定のため必要な最小量に限り土壌その他の物を無償で収去させることができる。
4 都道府県知事等は、その職員に前項の規定による立入り、調査測定又は収去をさせようとするときは、あらかじめ、土地又は工作物の所有者等にその旨を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、過失がなくて当該土地若しくは工作物の所有者等又はその所在が知れないときは、この限りでない。
5 第三項の規定による立入り、調査測定又は収去をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
6 土地又は工作物の所有者等は、正当な理由がない限り、第三項の規定による立入り、調査測定又は収去を拒み、妨げ、又は忌避してはならない。

(除染実施区域に係る除染等の措置等の実施者)
第三十五条 次条第一項に規定する除染実施計画の対象となる区域として当該除染実施計画に定められる区域(以下「除染実施区域」という。)内の土地であって次の各号に掲げるもの及びこれに存する工作物、立木その他土地に定着する物件に係る除染等の措置等は、当該各号に定める者が実施するものとする。
 一 国が管理する土地 国
 二 都道府県が管理する土地 当該都道府県
 三 市町村が管理する土地 当該市町村
 四 環境省令で定める者が管理する土地 当該環境省令で定める者
 五 前各号に掲げる土地以外の土地 当該土地が所在する市町村
2 前項の規定にかかわらず、除染実施区域内の土地であって同項第五号に掲げるもののうち農用地又はこれに存する工作物、立木その他土地に定着する物件にあっては、当該農用地が所在する市町村の要請により、当該農用地が所在する都道府県が除染等の措置等を実施することができる。
3 前二項の規定にかかわらず、除染実施区域内の土地であって第一項各号に掲げるもの又はこれに存する工作物、立木その他土地に定着する物件にあっては、国、都道府県、市町村、同項第四号の環境省令で定める者又は当該土地等の所有者等が、当該各号に定める者との合意により、除染等の措置等を実施することができる。

(除染実施計画)
第三十六条 都道府県知事等は、汚染状況重点調査地域内の区域であって、第三十四条第一項の規定による調査測定の結果その他の調査測定の結果により事故由来放射性物質による環境の汚染状態が環境省令で定める要件に適合しないと認めるものについて、除染等の措置等を総合的かつ計画的に講ずるため、当該都道府県又は市町村内の当該区域に係る除染等の措置等の実施に関する計画(以下「除染実施計画」という。)を定めるものとする。
2 除染実施計画においては、環境省令で定めるところにより、次に掲げる事項を定めるものとする。
 一 除染等の措置等の実施に関する方針
 二 除染実施計画の対象となる区域
 三 除染等の措置等の実施者及び当該実施者が除染等の措置等を実施する区域
 四 前号に規定する区域内の土地の利用上の区分等に応じて講ずべき土壌等の除染等の措置
 五 土壌等の除染等の措置の着手予定時期及び完了予定時期
 六 除去土壌の収集、運搬、保管及び処分に関する事項
 七 その他環境省令で定める事項
3 都道府県知事等は、除染実施計画に定められるべき事項について調査審議するとともに、当該除染実施計画の効果的かつ円滑な実施を図るため、当該除染実施計画において除染等の措置等の実施者として定められることが見込まれる国、都道府県、市町村、前条第一項第四号の環境省令で定める者その他都道府県知事等が必要と認める者を含む者で組織される協議会を置くことができる。
4 都道府県知事等は、除染実施計画を定めようとするときは、あらかじめ、前項に規定する協議会を設置している場合にあってはその意見を、その他の場合にあっては当該除染実施計画において除染等の措置等の実施者として定められることが見込まれる者その他の関係者の意見を聴くとともに、環境大臣に協議しなければならない。
5 都道府県知事等は、除染実施計画を定めたときは、遅滞なく、環境省令で定めるところにより、これを公告するとともに、関係市町村長に通知しなければならない。

(除染実施計画の変更)
第三十七条 都道府県知事等は、除染実施区域内の事故由来放射性物質による環境の汚染の状況の変動等により必要が生じたときは、除染実施計画を変更することができる。
2 前条第四項及び第五項の規定は、前項の規定による除染実施計画の変更(環境省令で定める軽微な変更を除く。)について準用する。

(除染実施計画に基づく除染等の措置等の実施)
第三十八条 第三十六条第二項第三号に規定する除染等の措置等の実施者(以下「除染実施者」という。)は、除染実施計画に従って、除染等の措置等を実施しなければならない。
2 除染実施計画に基づく土壌等の除染等の措置は、関係人の同意を得て、実施しなければならない。
3 関係人は、除染実施計画が円滑に実施されるよう、除染実施計画に基づく土壌等の除染等の措置に協力しなければならない。
4 国、都道府県又は市町村は、除染実施計画に基づく土壌等の除染等の措置を実施しようとする場合において、過失がなくて関係人又はその所在が知れないため、第二項の同意を得ることができないときは、当該土壌等の除染等の措置を実施する土地等、当該土壌等の除染等の措置の内容その他環境省令で定める事項を官報(都道府県又は市町村にあっては、当該都道府県又は市町村の公報)に掲載することができる。
5 前項の掲載があったときは、関係人は、その掲載の日から三月を経過する日までの間に、環境省令で定めるところにより、同項の掲載をした国、都道府県又は市町村に対し、当該土壌等の除染等の措置についての意見書を提出することができる。
6 第四項の掲載があった場合において、前項に規定する期間が経過する日までの間に、関係人から当該土壌等の除染等の措置について異議がある旨の同項の意見書の提出がなかったときは、当該土壌等の除染等の措置を実施することについて第二項の同意があったものとみなす。
7 国、都道府県又は市町村は、第二項の同意を得ることができない場合又は第五項の規定により関係人から当該土壌等の除染等の措置について異議がある旨の同項の意見書の提出があった場合において、当該土壌等の除染等の措置が実施されないことにより、当該土地等の事故由来放射性物質による汚染に起因して当該土地又はその周辺の土地において人の健康に係る被害が生ずるおそれが著しいと認めるときは、当該汚染による人の健康に係る被害を防止するため必要な限度において、第二項の同意を得ることなく当該土壌等の除染等の措置を実施することができる。
8 除染実施計画を定めた都道府県知事等は、環境省令で定めるところにより、除染実施者に対し、当該除染実施計画の進{状況について報告を求めることができる。

(除染実施区域内の土地等に係る除去土壌等の保管)
第三十九条 除染実施者(国、都道府県又は市町村に限る。以下この項及び次項において同じ。)は、除染実施区域内の土地等に係る除去土壌等を、やむを得ず当該除去土壌等に係る土壌等の除染等の措置を実施した土地において保管する必要があると認めるときは、当分の間、当該土地の所有者等に対し、当該土地において当該除去土壌等を保管させることができる。ただし、過失がなくて当該土地の所有者等が知れないこと等により当該土地の所有者等に当該除去土壌等を保管させることが困難な場合には、当該除染実施者が、当該土地において当該除去土壌等を保管することができる。
2 除染実施者は、前項の規定により、土地の所有者等に当該土地等に係る除去土壌等を保管させ、又は自らが当該土地において除去土壌等を保管しようとするときは、あらかじめ、当該土地の所有者等にその旨を通知し、意見を述べる機会を与えなければならない。ただし、過失がなくて当該土地の所有者等又はその所在が知れないときは、この限りでない。
3 除染実施者は、除去土壌等を保管したとき、又は第一項の規定により土地の所有者等に除去土壌等を保管させたときは、遅滞なく、環境省令で定めるところにより、当該土壌等の除染等の措置を実施した土地等に係る除染実施計画を定めた都道府県知事等に当該除去土壌等を保管した土地の所在地及び保管の状態その他環境省令で定める事項を届け出なければならない。
4 前項の規定による届出をした除染実施者は、その届出に係る事項が変更されたときは
、遅滞なく、その旨を当該届出をした都道府県知事等に届け出なければならない。
5 除染実施計画を定めた都道府県知事等は、環境省令で定めるところにより、除染実施
区域内の土地等に係る除去土壌等の保管に関する台帳を作成し、これを管理しなければならない。
6 除染実施計画を定めた都道府県知事等は、台帳の閲覧を求められたときは、正当な理由がなければ、これを拒むことができない。
7 除染実施区域内の土地等に係る土壌等の除染等の措置に伴い生じた廃棄物(第二十二条の規定により読み替えて適用される廃棄物処理法第二条第一項に規定する廃棄物のうち産業廃棄物に該当するものに限る。)を当該土壌等の除染等の措置が実施された土地において当該土地の所有者等又は除染実施者が保管する場合には、廃棄物処理法第十二条第二項(特別管理産業廃棄物にあっては、第十二条の二第二項)の規定は、適用しない。

(土壌等の除染等の措置の基準)
第四十条 除染特別地域又は除染実施区域に係る土壌等の除染等の措置を行う者は、環境省令で定める基準に従い、当該土壌等の除染等の措置を行わなければならない。
2 除染実施区域に係る土壌等の除染等の措置を行う者は、当該土壌等の除染等の措置を委託する場合には、環境省令で定める基準に従わなければならない。
3 環境大臣は、前二項の環境省令を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。

(除去土壌の処理の基準等)
第四十一条 除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を行う者は、環境省令で定める基準に従い、当該除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を行わなければならない。
2 除染実施区域に係る除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を行う者は、当該除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を委託する場合には、環境省令で定める基準に従わなければならない。
3 環境大臣は、前二項の環境省令を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。
4 除染特別地域内又は除染実施区域内の土地等に係る土壌等の除染等の措置に伴い生じた廃棄物(特定廃棄物を除く。)を当該土壌等の除染等の措置を実施した土地において保管する者は、環境省令で定める基準に従い、当該廃棄物の保管を行わなければならない。

(国による措置の代行)
第四十二条 国は、都道府県知事、市町村長又は環境省令で定める者から要請があり、かつ、次に掲げる事項を勘案して必要があると認められるときは、当該都道府県、市町村又は環境省令で定める者に代わって自らこの節(第三十四条、第三十六条及び第三十七条を除く。以下同じ。)に規定する措置を行うものとする。
 一 当該都道府県、市町村又は環境省令で定める者における除染等の措置等の実施体制
 二 当該除染等の措置等に関する専門的知識及び技術の必要性
2 前項の規定により国がこの節に規定する措置を行う場合においては、当該措置に関する事務を所掌する大臣は、政令で定めるところにより、同項の都道府県、市町村又は環境省令で定める者に代わってその権限を行うものとする。


第五章 費用
(財政上の措置等)
第四十三条 国は、地方公共団体が事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策を推進するために必要な費用についての財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。

(この法律に基づく措置の費用負担)
第四十四条 事故由来放射性物質による環境の汚染に対処するためこの法律に基づき講ぜられる措置は、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第三条第一項の規定により関係原子力事業者が賠償する責めに任ずべき損害に係るものとして、当該関係原子力事業者の負担の下に実施されるものとする。
2 関係原子力事業者は、前項の措置に要する費用について請求又は求償があったときは、速やかに支払うよう努めなければならない。

(国の措置)
第四十五条 国は、第三条に規定する社会的な責任に鑑み、地方公共団体等が滞りなくこの法律に基づく措置を講ずることができ、かつ、当該措置に係る費用の支払が関係原子力事業者により円滑に行われるよう、必要な措置を講ずるものとする。


第六章 雑則
(汚染廃棄物等の投棄の禁止)
第四十六条 何人も、みだりに特定廃棄物又は除去土壌(以下「汚染廃棄物等」という。)を捨ててはならない。

(特定廃棄物の焼却の禁止)
第四十七条 何人も、特定廃棄物を焼却してはならない。ただし、国、国の委託を受けて焼却を行う者その他環境省令で定める者が第二十条の環境省令で定める基準に従って行う特定廃棄物の焼却については、この限りでない。

(業として行う汚染廃棄物等の処理の禁止)
第四十八条 国、国の委託を受けて特定廃棄物の収集、運搬、保管又は処分を行う者その他環境省令で定める者以外の者は、特定廃棄物の収集、運搬、保管又は処分を業として行ってはならない。
2 国、都道府県、市町村、第三十五条第一項第四号の環境省令で定める者(国、都道府県、市町村又は同号の環境省令で定める者から委託を受けて除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を行う者を含む。)その他環境省令で定める者以外の者は、除去土壌の収集、運搬(土壌等の除染等の措置が行われた土地外に搬出するものに限る。第六十条第一項第四号において同じ。)、保管又は処分を業として行ってはならない。

(報告の徴収)
第四十九条 環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、関係原子力事業者に対し、第十条第一項の規定により当該関係原子力事業者が講ずべき協力措置に関し、必要な報告を求めることができる。
2 環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、第十七条第二項(第十八条第五項において準用する場合を含む。)の規定により指定廃棄物の保管を行う者に対し、当該保管に関し、必要な報告を求めることができる。
3 環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、特定廃棄物の収集、運搬、保管又は処分を行った者その他の関係者に対し、特定廃棄物の収集、運搬、保管又は処分に関し、必要な報告を求めることができる。
4 環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、除染特別地域に係る除染等の措置等を行った者その他の関係者に対し、当該除染等の措置等に関し、必要な報告を求めることができる。
5 除染実施計画を定めた都道府県知事等は、この法律の施行に必要な限度において、除染実施区域に係る除染等の措置等を行った者その他の関係者に対し、当該除染等の措置等に関し、必要な報告を求めることができる。

(立入検査)
第五十条 環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、関係原子力事業者の事務所、事業場その他の場所に立ち入り、第十条第一項の規定により当該関係原子力事業者が講ずべき協力措置に関し、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、第十七条第二項(第十八条第五項において準用する場合を含む。)の規定により指定廃棄物の保管を行う者の事務所、事業場その他の場所に立ち入り、当該保管に関し、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において指定廃棄物を無償で収去させることができる。
3 環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、特定廃棄物の収集、運搬、保管若しくは処分を行った者その他の関係者の事務所、事業場、車両、船舶その他の場所に立ち入り、特定廃棄物の収集、運搬、保管若しくは処分に関し、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において特定廃棄物を無償で収去させることができる。
4 環境大臣は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、除染特別地域に係る除染等の措置等を行った者その他の関係者の事務所、事業場、車両、船舶その他の場所に立ち入り、当該除染等の措置等に関し、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において除去土壌等を無償で収去させることができる。
5 除染実施計画を定めた都道府県知事等は、この法律の施行に必要な限度において、その職員に、除染実施区域に係る除染等の措置等を行った者その他の関係者の事務所、事業場、車両、船舶その他の場所に立ち入り、当該除染等の措置等に関し、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において除去土壌等を無償で収去させることができる。
6 前各項の規定により立入り、検査又は収去をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
7 第一項から第五項までの規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(措置命令)
第五十一条 環境大臣は、第十七条第二項(第十八条第五項において準用する場合を含む。)の環境省令で定める基準に適合しない指定廃棄物の保管が行われた場合において、指定廃棄物の適正な保管を確保するため必要があると認めるときは、必要な限度において、当該保管を行った者に対し、期限を定めて、当該指定廃棄物の適正な保管のための措置その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
2 環境大臣は、第二十条の環境省令で定める基準に適合しない特定廃棄物の収集、運搬、保管又は処分が行われた場合において、特定廃棄物の適正な処理を確保するため必要があると認めるときは、必要な限度において、当該収集、運搬、保管又は処分を行った者(第十五条又は第十九条の規定により当該収集、運搬、保管又は処分を行った国を除く。)に対し、期限を定めて、当該特定廃棄物の収集、運搬、保管又は処分の方法の変更、当該特定廃棄物の適正な処理のための措置その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
3 環境大臣又は除染実施計画を定めた都道府県知事等は、第四十条第一項の環境省令で定める基準に適合しない除染特別地域又は除染実施区域に係る土壌等の除染等の措置が行われた場合において、適正な土壌等の除染等の措置を確保するため必要があると認めるときは、必要な限度において、次に掲げる者に対し、期限を定めて、当該土壌等の除染等の措置の方法の変更、適正な土壌等の除染等の措置その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
 一 当該土壌等の除染等の措置を行った者(当該土壌等の除染等の措置を行った国、都道府県又は市町村を除く。)
 二 第四十条第二項の規定に違反する委託により当該土壌等の除染等の措置が行われたときは、当該委託をした者(当該委託をした国、都道府県又は市町村を除く。)
4 環境大臣又は除染実施計画を定めた都道府県知事等は、第四十一条第一項の環境省令で定める基準に適合しない除染特別地域又は除染実施区域に係る除去土壌の収集、運搬、保管又は処分が行われた場合において、除去土壌の適正な処理を確保するため必要があると認めるときは、必要な限度において、次に掲げる者に対し、期限を定めて、当該除去土壌の収集、運搬、保管又は処分の方法の変更、当該除去土壌の適正な処理のための措置その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
 一 当該除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を行った者(当該除去土壌の収集、運
搬、保管又は処分を行った国、都道府県又は市町村を除く。)
 二 第四十一条第二項の規定に違反する委託により当該除去土壌の収集、運搬、保管又は処分が行われたときは、当該委託をした者(当該委託をした国、都道府県又は市町村を除く。)
5 環境大臣又は除染実施計画を定めた都道府県知事等は、第四十一条第四項の環境省令で定める基準に適合しない除染特別地域内又は除染実施区域内の土地等に係る土壌等の除染等の措置に伴い生じた廃棄物(特定廃棄物を除く。)の保管が行われた場合において、当該廃棄物の適正な保管を確保するため必要があると認めるときは、必要な限度において、当該保管を行った者に対し、期限を定めて、当該廃棄物の適正な保管のための措置その他必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
6 前各項の規定による命令をするときは、環境省令で定める事項を記載した命令書を交付しなければならない。

(関係地方公共団体の協力)
第五十二条 国、都道府県及び市町村は、この法律に基づく措置の実施のために必要があると認めるときは、関係地方公共団体に対し、必要な協力を求めることができる。

(汚染廃棄物等の処理等の推進)
第五十三条 国は、基本方針に基づき、地方公共団体の協力を得つつ、汚染廃棄物等の処理のために必要な施設の整備その他の事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理及び除染等の措置等を適正に推進するために必要な措置を講ずるものとする。

(調査研究、技術開発等の推進等)
第五十四条 国は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策の総合的かつ効果的な実施を推進するため、事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響を低減するための方策等に関する調査研究、技術開発等の推進及びその成果の普及に努めなければならない。

(知識の普及等)
第五十五条 国及び地方公共団体は、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する施策に関し、国民の理解と協力を得るため、事故由来放射性物質による環境の汚染が人の健康又は生活環境に及ぼす影響及びその影響を低減するための方策に関する知識の普及及び情報の提供に努めなければならない。

(原子力安全委員会の意見)
第五十六条 環境大臣は、第二十条、第二十三条第一項及び第二項、第二十四条第一項及び第二項、第四十条第一項並びに第四十一条第一項の環境省令の制定又は改廃をしようとするときは、あらかじめ、原子力安全委員会の意見を聴かなければならない。

(権限の委任)
第五十七条 この法律による権限は、政令で定めるところにより、地方支分部局の長に委任することができる。

(環境省令への委任)
第五十八条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、環境省令で定める。

(事務の区分)
第五十九条 第三十四条第一項から第四項まで、第三十五条第一項(第五号に係る部分に限る。)、第二項及び第三項(同条第一項第五号に係る部分に限る。)、第三十六条第一項、第四項(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)及び第五項(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)、第三十七条第一項、第三十八条第二項(第三十五条第一項第五号に係る土壌等の除染等の措置に係る部分に限る。)、第四項(第三十五条第一項第五号に係る土壌等の除染等の措置に係る部分に限る。)、第七項(第三十五条第一項第五号に係る土壌等の除染等の措置に係る部分に限る。)及び第八項、第三十九条第一項から第四項まで(第三十五条第一項第五号に掲げる土地における除去土壌等の保管に係る部分に限る。)及び第五項、第四十九条第五項、第五十条第五項並びに第五十一条第三項、第四項及び第五項の規定により都道府県又は市町村が処理することとされている事務は、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。


第七章 罰則
第六十条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
 一 第四十六条の規定に違反して、汚染廃棄物等を捨てた者
 二 第四十七条の規定に違反して、特定廃棄物を焼却した者
 三 第四十八条第一項の規定に違反して、特定廃棄物の収集、運搬、保管又は処分を業として行った者
 四 第四十八条第二項の規定に違反して、除去土壌の収集、運搬、保管又は処分を業として行った者
 五 第五十一条第一項から第五項までの規定による命令に違反した者
2 前項第一号及び第二号の罪の未遂は、罰する。

第六十一条 第十六条第二項の規定による命令に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第六十二条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
 一 第二十七条第六項又は第三十四条第六項の規定に違反して、第二十七条第三項又は第三十四条第三項の規定による立入り、調査測定又は収去を拒み、妨げ、又は忌避した者
 二 第三十九条第三項又は第四項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者(除染実施者が国、都道府県又は市町村である場合を除く。)
 三 第四十九条第一項から第五項までの規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
 四 第五十条第一項から第五項までの規定による立入り、検査又は収去を拒み、妨げ、又は忌避した者

第六十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
 一 第六十条第一項第一号から第四号まで 三億円以下の罰金刑
 二 第六十条第一項第五号又は第六十一条 各本条の罰金刑
2 前項の規定により第六十条又は第六十一条の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、これらの規定の罪についての時効の期間による。


附則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第四章第二節及び第三節、第四十六条から第四十八条まで、第四十九条(第一項を除く。)、第五十条(第一項を除く。)、第五十一条、第六十条、第六十一条、第六十二条第一号、第二号、第三号(第四十九条第一項に係る部分を除く。)及び第四号(第五十条第一項に係る部分を除く。)並びに第六十三条の規定は、平成二十四年一月一日から施行する。

(準備行為)
第二条 第十一条第一項、第二十五条第一項及び第三十二条第一項の規定による指定並びに第二十五条第一項、第三十二条第一項、第四十条第一項及び第二項並びに第四十一条第一項及び第二項の環境省令の制定並びにこれらに関し必要な手続その他の行為は、前条ただし書に規定する規定の施行前においても、第十一条、第二十五条、第三十二条、第四十条並びに第四十一条第一項から第三項までの規定の例により行うことができる。
2 第十三条第一項の対策地域内廃棄物処理計画、第二十八条第一項の特別地域内除染実施計画及び第三十六条第一項の除染実施計画の策定に関し必要な手続その他の行為は、前条ただし書に規定する規定の施行前においても、第十三条、第二十七条、第二十八条、第三十四条及び第三十六条の規定の例により行うことができる。

第三条 地方自治法の一部を次のように改正する。
別表第一に次のように加える。
平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)
第三十四条第一項から第四項まで、第三十五条第一項(第五号に係る部分に限る。)、第二項及び第三項(同条第一項第五号に係る部分に限る。)、第三十六条第一項、第四項(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)及び第五項(第三十七条第二項において準用する場合を含む。)、第三十七条第一項、第三十八条第二項(第三十五条第一項第五号に係る土壌等の除染等の措置に係る部分に限る。)、第四項(第三十五条第一項第五号に係る土壌等の除染等の措置に係る部分に限る。)、第七項(第三十五条第一項第五号に係る土壌等の除染等の措置に係る部分に限る。)及び第八項、第三十九条第一項から第四項まで(第三十五条第一項第五号に掲げる土地における除去土壌等の保管に係る部分に限る。)及び第五項、第四十九条第五項、第五十条第五項並びに第五十一条第三項、第四項及び第五項の規定により都道府県又は市町村が処理することとされている事務

(土地収用法の一部改正)
第四条 土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)の一部を次のように改正する。
第三条第二十七号の次に次の一号を加える。
二十七の二
国が設置する平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法(平成二十三年法律第百十号)による汚染廃棄物等の処理施設

(検討)
第五条 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

第六条 政府は、放射性物質により汚染された廃棄物、土壌等に関する規制の在り方その他の放射性物質に関する法制度の在り方について抜本的な見直しを含め検討を行い、その結果に基づき、法制の整備その他の所要の措置を講ずるものとする。

第七条 政府は、原子力発電所において事故が発生した場合における当該事故に係る原子炉、使用済燃料等に関する規制の在り方等について検討を行い、その結果に基づき、法制の整備その他の所要の措置を講ずるものとする。


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2011-08-30 : ・土地建物,土壌等の汚染 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■18条 原子力損害賠償紛争審査会 原子力損害賠償紛争解決センター

■18条 原子力損害賠償紛争審査会 原子力損害賠償紛争解決センター


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文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/baisho/1310412.htm

原子力損害賠償紛争解決センターについて

センターでの和解の仲介を希望される方は、センターに「和解仲介手続申立書」をご郵送ください。
郵送先は、下記となります。

〒105-0004
東京都港区新橋1-9-6(COI新橋ビル3階)
原子力損害賠償紛争解決センター

お問い合わせ電話番号

0120-377-155(平日10時から17時)
(注)9月1日(木曜日)からのご案内となります。

和解の仲介について
原子力損害賠償紛争解決センターの手引き (PDF:168KB)
和解仲介手続申立書(様式) (PDF:172KB)
和解仲介手続申立書(様式:記載例) (PDF:367KB)

お問い合わせ先
原子力損害賠償紛争解決センター
電話番号:0120-377-155


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http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/baisho/__icsFiles/afieldfile/2011/08/29/1310412_1.pdf
原子力損害賠償紛争解決センターの手引き

Ⅰ 原子力損害賠償紛争解決センターについて
Q1. 原子力損害賠償紛争解決センター(以下「紛争解決センター」といいます。)とは何ですか?
A1. 紛争解決センターは、原子力事故により被害を受けた方の原子力事業者に対する損害賠償請求について、円滑、迅速、かつ公正に紛争を解決することを目的として設置された公的な紛争解決機関です。今般の東京電力株式会社(以下「東京電力」といいます。)の福島第一、第二原子力発電所事故を受け、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(以下「審査会」といいます。)のもとに設置されました。紛争解決センターは、文部科学省の他、法務省、裁判所、日本弁護士連合会出身の専門家らにより構成されています。
 紛争解決センターは、被害者の申立てにより、弁護士等の仲介委員らが原子力損害の賠償に係る紛争について和解の仲介手続を行い、当事者間の合意形成を後押しすることで紛争の解決を目指します。
Q2. 紛争解決センターは、いつから申立ての受付けを開始するのですか?
A2. 紛争解決センターは、平成23年9月1日から、申立ての受付けを開始することになっています。なお、申立てに必要な書類は、原則として、郵送にて、紛争解決センター東京事務所宛てに提出いただくことになっています。
Q3. 紛争解決センターで解決できる紛争には、どのようなものがありますか?
A3. 紛争解決センターで解決できる紛争は、原子力事故により損害を被られた方の原子力事業者に対する損害賠償に関するものに限定されています。今回は、原子力事業者たる東京電力に対する、原子力事故に基づく損害賠償に関する紛争が対象になります。そのため、東京電力以外の者との間で生じた紛争、東京電力に対するものであっても原子力事故とは無関係な事情によって生じた紛争、あるいは、損害賠償以外の請求は取り扱うことはできません。
 例えば、東京電力に対して、土地や車両の買取りを求めたり、原子力発電所の操業停止を求めたり、放射能汚染により廃棄を余儀なくされた商品の引取りを求めたりすることは、いずれも原子力事故に起因しているものの、損害賠償に関する紛争の解決を求めるものではありませんので、紛争解決センターで解決することはできません。
Q4. 紛争解決センターでは、どのような手続で紛争を解決するのですか?
A4. 紛争解決センターにおいては、当事者間の和解交渉を仲介することにより、原子力事故に関する紛争を解決します(以下、これを「和解の仲介手続」といいます)。
 和解の仲介手続では、中立・公正な立場の仲介委員が、申立人と相手方の双方から事情を聴き取って損害の調査・検討を行い、双方の意見を調整しながら、和解案を提示するなどして、当事者の合意(和解契約の成立)による紛争解決を目指します。
Q5.和解仲介手続はどこで開催されるのですか?
A5. 和解仲介手続の開催場所については、基本的には、紛争解決センターの東京事務所又は福島事務所になりますが、今後は、利用者の利便性を考え、被害者の方々が多く避
難されている市区町村でも開催することを予定しております。
Q6.紛争解決センターでの紛争解決手続の特徴は何ですか?
A6. まず、紛争解決センターでは、当事者間の原子力事故に関する紛争を、「円滑」「迅速」「安価」「秘密」「適切かつ公平」に解決できることが特徴の一つ目として挙げられます。
 つぎに、紛争解決センターは、文部科学省が審査会のもとに設置した公的機関であり、東京電力福島第一、第二原子力発電所事故に関する紛争の解決にあたって、審査会が公表した「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」(以下「中間指針」といいます。)を基準として紛争の解決を図ることが特徴の二つ目として挙げられます。
Q7. 紛争解決センターで紛争を解決する場合のメリットは何ですか?
A7.(1) 手続の円滑性
 紛争解決センターで取り扱う紛争は損害賠償に関するものに限定されており、損害の種類に応じて、当事者双方に対し、必要な証拠資料を早期に提出していただくようお願いをしていますので、和解仲介手続が開始された後、速やかに、和解に向けた手続を進めることができます。
(2) 早期解決
 紛争解決センターでは、申立受理から3か月程度を目途に、和解による紛争の解決に至るように努めます。
(3) 安価
 紛争解決センターでは、申立てに関する手数料はいただいておりません。この点で、裁判所における訴訟や調停よりも安価です。ただし、紛争解決センターに提出するための書類の作成費用、郵送費用、期日出席のための交通費、弁護士を依頼した場合の弁護士費用などは当事者に各自ご負担いただくことになります。
(4) 秘密性
 紛争解決センターにおける手続は、原則として、非公開で行われますし、事件記録等は公開されません。また、仲介委員には、その職務上知り得た情報について、みだりに外部に開示しないという守秘義務が課されています。
(5) 適切かつ公平な解決
 和解の仲介手続は、弁護士等の仲介委員によって、中間指針を基準に、中立公正に運用されます。また、紛争解決センターでは、同種被害に関する申立てを多数取り扱うことを予定しております。和解は当事者の合意に基づくものですので、同種被害であっても和解内容が異なることは当然ですが、中間指針により紛争解決に向けた一定の基準が示されており、同種被害の申立てについては公正な解決が図られる必要があります。
 そこで、仲介委員は、豊富な法律知識や社会的経験をもとに紛争の適切かつ公平な解決を行うよう全力を尽くします。

Ⅱ 原子力損害賠償紛争解決センターの利用にあたって
Q8. 紛争解決センターで申立てをしたいのですが、どのようにすればよいのですか?
A8. 申立書に必要事項を記載の上、必要書類を添付して、紛争解決センター東京事務所宛てにご郵送下さい。
 申立書用紙は、各紛争解決センター事務所の受付に備え付け、また、ホームページからダウンロードもできますので、これをご利用いただくことも可能です。申立書の記載内容については、ホームページに記載例を掲載しましたのでご参照下さい。なお、今後は、申立書用紙や記載例については、被災地の県庁、市役所、避難所、弁護士会等にも備え付ける予定です。
Q9.申立ての際、申立書の他に何か書類を用意する必要がありますか?
A9. 申立ての際、申立書とは別に申立てを理由づける証拠資料(例:契約書、納品書、領収書、税務申告書類、決算書類、登記簿謄本等)や一定の資格を証明する資料(会社
登記簿謄本、委任状等)を提出していただく必要があります。
 提出していただく資料についてはホームページにも掲載しておりますが、迅速に紛争解決を図るためにも、早期に全ての証拠資料を提出することをお願いしています。
Q10.相手方が出席しないような場合はどうなるのですか?
A10. 相手方が出席せず、手続に応じない場合には、和解の仲介手続を進めることができませんので手続を終了させていただくことがあります。
Q11.申立てがなされた後の手続はどのようなものですか?
A11.(1) 申立ての受理
 まず、紛争解決センターは、申立てを受けた後、申立書に形式的不備がないかを検討して、形式上不備がなければ申立てを受理します。形式上不備があれば申立書の補正を求めることがあり、補正がなされれば申立書を受理します。
(2) 仲介委員の指名
 申立書の受理後、仲介委員が指名されます。
(3) 事案の詳細な検討
 仲介委員は、速やかに当事者の意見を聴いて口頭審理期日開催の要否、口頭審理期日を開催する場合の日時・場所等を指定した上、充実した審理が行えるように事案の詳細な検討を開始します。
(4) 当事者からの事情聴取
① 必要に応じて、当事者の双方又は一方から面談、電話、書面等により事情をお伺いします。
② 口頭審理期日を開催する場合、当事者には、手続の開始時間までに紛争解決センター事務所受付など、紛争解決センターが指定する場所にお越しいただきます。
 手続が開始されるまでは、紛争解決センター事務所内の待合室などでお待ちいただきます。なお、遠方にお住まいの方、健康上の問題がある方などは、電話による手続参加という方法もあります。
③ 当日は、提出された資料を前提に、仲介委員が当事者双方からお互いの主張や資料について詳細に事情を確認します。口頭審理期日を行う場合の手続は、当事者双方が同席する方法で進めていくことを原則としますが、和解の仲介を行うにあたって、当事者から個別に事情をお伺いすることもあります。
④ 口頭審理期日外においても、事案の適切な解決を目的として当事者に必要事項の問い合わせをしたり、紛争の対象となっている物件を調査したりすることもあります。
Q12.事件が終了した場合の手続はどうなりますか。
A12. 当事者間で損害賠償に関する紛争について和解の合意が成立した場合には、和解契約書を作成していただき、当事者双方が署名捺印(又は記名押印)の後、紛争解決センターに、その写しを提出していただくことになります。紛争解決センターが和解契約書の写しを受け取り、当事者間に和解合意が成立したことを確認できた時点で、和解の仲介手続は終了となります。
 和解が不成立の場合は、別途、訴訟等の裁判手続を利用するなどして紛争解決を検討していただくことになります。


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毎日jp
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/nuclear/news/20110829k0000e040012000c.html

福島第1原発:「損害賠償紛争解決センター」開所

 東京電力福島第1原発事故の賠償をめぐり、東電と被害者がトラブルになった場合などに和解を仲介する「原子力損害賠償紛争解決センター」(東京都港区)が29日、開所した。

 同センターは、被害者救済を迅速化するのが目的。賠償範囲の目安となる指針を策定している文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会の下に新設され、東京のほか福島にも拠点を置く。

 元東京高裁判事の大谷禎男弁護士を委員長とする「総括委員会」が、被害者からの仲介申請を引き受けるかどうかなどを決定。受理した場合、日本弁護士連合会などから派遣された数十人の弁護士らが「仲介委員」となり、個別事案ごとに和解案を提示し早期合意を促す。不服があれば、被害者は裁判手続きで解決を目指すことになる。

 紛争審査会はもともと和解を仲介する機能があり、99年に茨城県東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」で起きた臨界事故時の仲介申請は2件だった。ただ今回の原発事故は被害者の数が膨大で、申請が殺到する可能性があるため、文科省は7月に政令を改正し機能を強化することにした。
毎日新聞 2011年8月29日 10時31分(最終更新 8月29日 10時38分)


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・自治体の損害 その3 税収減は損害か

・自治体の損害 その3 税収減は損害か


平成23年8月5日出された,原子力損害賠償紛争審査会の中間指針では,以下のとおり。

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http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-196.html
2 地方公共団体等の財産的損害等
(指針)
 地方公共団体又は国(以下「地方公共団体等」という。)が所有する財物及び地方公共団体等が民間事業者と同様の立場で行う事業に関する損害については、この中間指針で示された事業者等に関する基準に照らし、本件事故と相当因果関係が認められる限り、賠償の対象となるとともに、地方公共団体等が被害者支援等のために、加害者が負担すべき費用を代わって負担した場合も、賠償の対象となる。
(備考)
1)地方公共団体等が被った損害のうち、地方公共団体等が所有する財物の価値の喪失又は減少等に関する損害及び地方公共団体等が民間事業者と同様の立場で行う事業(水道事業、下水道事業、病院事業等の地方公共団体等の経営する企業及び収益事業等)に関する損害については、個人又は私企業が被った損害と別異に解する理由が認められないことから、この中間指針で示された事業者等に関する基準に照らして、賠償すべき損害の範囲が判断されることとなる。加えて、地方公共団体等が被害者支援等のために、加害者が負担すべき費用を代わって負担した場合も、前記第8の(備考)3)で述べたことと同様に、賠償の対象となる。なお、地方公共団体等が被ったそれ以外の損害についても、個別具体的な事情に応じて賠償すべき損害と認められることがあり得る。
2)他方、本件事故に起因する地方公共団体等の税収の減少については、法律・条例に基づいて権力的に賦課、徴収されるという公法的な特殊性がある上、いわば税収に関する期待権が損なわれたにとどまることから、地方公共団体等が所有する財物及び地方公共団体等が民間事業者と同様の立場で行う事業に関する損害等と同視することはできない。これに加え、地方公共団体等が現に有する租税債権は本件事故により直接消滅することはなく、租税債務者である住民や事業者等が本件事故による損害賠償金を受け取れば原則としてそこに担税力が発生すること等にもかんがみれば、特段の事情がある場合を除き、賠償すべき損害とは認められない
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 要するに,①税金は,商品・サービス・労働等の対価として支払われるものではなく,法により強制的に徴収されるものという特殊性があること,②被害者が損害賠償金を受け取れば,そこからの徴税の余地があることから,原子力損害とはしないということだろうか。


 これに対して,日本弁護士連合会の意見は,

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http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/110817.pdf

「東京電力株式会社福島第一,第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」についての意見書

〈略〉

6 東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「本件事故」という。)に起因する固定資産税・住民税等の地方公共団体等の税収の減少についても損害賠償の対象とされるべきである。

〈略〉
5 本件事故に起因する固定資産税・住民税等の地方公共団体等の税収の減少についても損害賠償の対象とされるべきこと中間指針は,次のように述べて,税収の減少については,原則として賠償すべき損害には含まれないとしている。
「本件事故に起因する地方公共団体等の税収の減少については,法律・条例に基づいて権力的に賦課,徴収されるという公法的な特殊性がある上,いわば税収に関する期待権が損なわれたにとどまることから,地方公共団体等が所有する財物及び地方公共団体等が民間事業者と同様の立場で行う事業に関する損害等と同視することはできない。これに加え,地方公共団体等が現に有する租税債権は本件事故により直接消滅することはなく,租税債務者である住民や事業者等が本件事故による損害賠償金を受け取れば原則としてそこに担税力が発生すること等にもかんがみれば,特段の事情がある場合を除き,賠償すべき損害とは認められない。」
 しかし,この見解には直ちに賛同できない。
 まず,税金には「法律・条例に基づいて権力的に賦課,徴収されるという公法的な特殊性がある」ことはそのとおりであるとしても,この減収を東京電力株式会社に請求できないという積極的な理由はない。また,一般的にみても逸失利益は期待権侵害という側面を持っているのであって,これも理由にはならない。
 さらに,既発生の租税債権については,市町村の税収の中心をなす固定資産税は,本件事故によってその価値を喪失しているものが多く,明らかに徴収すべきでない状況になっており(現在,固定資産税は徴収延期となっているようである。),それは,東京電力株式会社からの損害賠償があれば直ちに課税して徴収するということも適切とは思われない。さらに,住民税についても,頭割り部分は,本来確実な徴収ができるはずであるのに,今回の事態で徴収すること自体が適切かどうかという問題があり,所得比例部分についても,損害賠償がされれば直ちに課税して徴収することが適切かどうか疑問がある。
 以上を考えると,本件事故に起因する固定資産税・住民税等の地方公共団体等の税収の減少についても損害賠償の対象とされるべきである。
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※警戒区域の固定資産税,都市計画税の減免については,改正地方税法51条以下
http://shop.gyosei.jp/contents/sinsai/honbun/12008000_2.pdf

※改正法の概要
http://www.soumu.go.jp/main_content/000122790.pdf
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 東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に対処するための地方税法及び東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の一部を改正する法律案の概要

 東日本大震災における原子力発電所の事故による災害に対処するため、固定資産税及び都市計画税の課税免除等の措置並びに不動産取得税、自動車取得税、自動車税等に係る特例措置を講ずることとし、あわせて、これらの措置による減収額を埋めるための地方債の特例措置等を講じる。

◎ 地方税法の一部改正
Ⅰ 避難区域内等の資産について特例を講ずるもの
【固定資産税・都市計画税】
1.警戒区域・計画的避難区域・緊急時避難準備区域等のうち市町村長が指定する区域における土地及び家屋に係る平成23年度分の課税免除
 警戒区域・計画的避難区域・緊急時避難準備区域等のうち、避難等の実施状況等を総合的に勘案して市町村長が指定する区域内に所在する土地及び家屋について、平成23年度分の課税を免除する。

【自動車税・軽自動車税】
1.警戒区域内自動車に係る自動車税・軽自動車税の特例
 警戒区域内にある自動車で、用途の廃止を事由とした永久抹消登録等がなされたものに対しては、平成23年3月11日にさかのぼって自動車税・軽自動車税が課されないようにする特例を講じる。


Ⅱ 警戒区域内の資産の代替資産について特例を講ずるもの
【固定資産税・都市計画税】
1.警戒区域内住宅用地に係る代替住宅用地の特例
 警戒区域内住宅用地の所有者等が当該住宅用地に代わる土地(代替土地)を警戒区域が解除されるまでの間に取得した場合等において、当該代替土地のうち警戒区域内住宅用地の面積相当分について、取得後3年度分、当該土地を住宅用地とみなす(※)。
※ 住宅用地とみなされた場合には、固定資産税・都市計画税が軽減される。
2.警戒区域内家屋に係る代替家屋の特例
 警戒区域内家屋の所有者等が当該家屋に代わる家屋(代替家屋)を警戒区域が解除されるまでの間に取得した場合等において、当該代替家屋に係る税額のうち当該警戒区域内家屋の床面積相当分について、4年度分2分の1、その後の2年度分3分の1を減額する。
3.警戒区域内償却資産に係る代替償却資産の特例
 警戒区域内償却資産の所有者等が当該償却資産に代わる償却資産を警戒区域が解除されるまでの間に、被災地域において取得した場合等においては、課税標準を4年度分2分の1とする。

【不動産取得税】
1.警戒区域内家屋に係る代替家屋の取得に係る特例
 警戒区域内家屋の所有者等が当該家屋に代わる家屋(代替家屋)を警戒区域が解除されるまでの間に取得した場合等において、当該家屋の床面積相当分には不動産取得税が課されないようにする特例を講じる。
2.警戒区域内家屋に係る代替家屋の敷地の用に供する土地の取得に係る特例代替家屋の敷地の用に供する土地で、警戒区域内家屋の敷地の用に供されていた土地(従前の土地)に代わるものを警戒区域が解除されるまでの間に取得した場合等において、従前の土地の面積相当分には不動産取得税が課されないようにする特例を講じる。

【自動車取得税】
1.警戒区域内自動車の代替自動車の取得の非課税警戒区域内にある自動車で、用途の廃止を事由とした永久抹消登録等がなされたものに代わる自動車(代替自動車)を平成26年3月31日までの間に取得した場合には、自動車取得税を非課税とする。

【自動車税・軽自動車税】
1.警戒区域内自動車の代替自動車に係る自動車税・軽自動車税の非課税警戒区域内にある自動車で、用途の廃止を事由とした永久抹消登録等がなされたものに代わる自動車(代替自動車)に係る平成23年度から平成25年度までの各年度分の自動車税・軽自動車税を非課税とする。


◎ 東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の一部改正
【地方債の特例等】
 上記の地方税法の一部改正による地方税等の平成23年度の減収額を埋めるための地方債の特例及び基準財政収入額の算定方法の特例を講じる。


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・まず,上のような法律によって,地方税が減免されたような場合は,国側が自ら徴税権を放棄したようなものなので,それを「原子力損害」とみることは困難かもしれない。
・「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」による援助・助成による回復分との関係も問題となる。
・逸失利益とみるには,対価性が必要なようにも思えるがその点はどうか。
・事故の有無にかかわらず,将来の不確実性があった点をどうするか。逸失利益一般の問題。税収に関しては,将来の不確実性の要素がかなり大きい。
・たとえばA市在住で高収入を得ているXをYが殺害した場合。A市は,翌年度以降,Xからの市民税が得られなくなる。A市が,その減った市民税分を,Yに対して損害賠償請求できるのか。これを認めると,国税についても,国の損害を同様に考えることになるだろうから,およそ人の収入を減少させたり,ゼロにさせたりする類の不法行為一般について,国や自治体からの賠償請求が問題となりかねない。何か特別な理屈がないと無理っぽい?


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・被爆関係資料 その5 原爆症認定訴訟,平成21年5月28日東京高裁判決

・被爆関係資料 その5 原爆症認定訴訟,平成21年5月28日東京高裁判決


事件番号 平成19(行コ)137
事件名 原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成15年(行ウ)第320号,第341号,第343号から第356号,第520号から第523号,平成16年(行ウ)第38号から第43号,第145号,第146号,第304号,第305号)
裁判年月日 平成21年05月28日
裁判所名 東京高等裁判所

判示事項 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定の各申請に対し,厚生労働大臣がした同申請を却下する旨の各処分は,各申請者の疾病の放射線起因性についての判断を誤り違法であるなどとしてした前記各処分の各取消請求が,一部認容された事例


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54頁
「審査の方針の検討に当たっては,その基礎となる①DS86による原爆被曝の線量評価の相当性,②疫学に基づく寄与リスク(原因確率)やしきい値(閾値)を用いた起因性判断の相当性が問題となるのは当然として,これまでの当事者の主張(特に当審における主張)に照らせば,①の線量評価については,残留放射線の評価,内部被曝の問題,②の原因確率については,審査の方針に挙げられていない疾病について起因性を肯定するだけの科学的知見があるといえるかどうかが重要な問題点として顕在化しているといえる。また,原判決が,急性症状に着目した判断をしているところから,当事者の当審における主張立証の力点がその点にあるので,詳しく検討する必要がある。」

78頁
線量評価について
「(8) 以上を要約すると,次のとおりである。被爆者ごとの線量評価に関する問題については,DS86(あるいはその後継モデルであるDS02)について,その存在意義自体を否定することはできないし,初期放射線の被曝線量評価については他に手段はなく,これに誤差があることを考慮しつつ原爆症認定にあたって利用することは相当であるといえるが,残留放射線(誘導放射線,放射性降下物)についての影響の程度について,審査の方針が定めたような方式により被爆者ごとに機械的に線量評価をしてよいかどうかについては疑問があり,被爆者の内部被曝の影響の程度については,専門家の間で意見が分かれるところであって,内部被曝の影響が無視し得るものであることを前提とした原爆症認定審査については相当とは考えられない。」

106頁
急性症状について
「(8) 以上検討したところによれば,調査結果が示す,被曝距離,遮蔽の有無,入市の有無及びその時期,滞在時間と相関する発現率によって急性症状が現れたことの事実は,初期放射線による被曝線量が少ないかほとんどゼロと評価される者について生じている症状の発症機序が明らかではないとしても,集団的な観察としては,調査結果が示す脱毛等の症状が原爆放射線の影響によるものと推認することができ,これらが原爆の放射線被曝によるものではなく,他の原因によるものであるとする1審被告らの主張は採用しがたい。
(9) 前記「第5 線量評価について」で検討したところの当裁判所の見解は,①DS86に基づいて定められた審査の方針(13年方針)の被曝線量の評価基準について,初期放射線の評価については,爆心地から1000メートルを超える部分についての誤差が大きい難点(過小評価)があるものの,DS86全体の存在意義を否定する科学的知見はないこと,②誘導放射線については,DS86と異なる知見が見当たらないこと,③放射性降下物については,審査の方針に定められた地域に限定されるかについてはなお疑問があること,④内部被曝については,科学的知見としては無視してもよいとする審査の方針は相当ではないこと,⑤そうであるとしても,被爆者ごとに原爆の各種放射線による合計した被曝線量を正確に評価することは困難であり,およそ基準化することは至難というべきであること,以上のとおり要約することができる。
 爆心地から1000メートルを超える初期放射線のDS86による計算上の線量値に誤差があるとしても,その誤差は大きいものではなく,DS86を前提にすると,Z116意見書等によって認められる放射線被曝治療における急性放射線障害のしきい値に関する知見と被爆者の急性症状の調査結果には相容れない矛盾があるとするほかはない。そして,前記のとおり,被爆者の急性症状の調査結果について,原爆放射線以外の原因であると説明することも当を得ているといえないし,DS86に誤りがあると断定することも困難である。このような場合,原爆症の認定過程においては,これをあるがままの前提として判断していくほかはないものと考える。すなわち,原爆症認定における放射線起因性の判断は,放射線や負傷又は疾病に関する科学的知見に基づく法律判断であって,科学的知見が日々発展していく性質が有するものであるから,あくまでもその時点における科学的知見という限定を常に伴うものである性格に照らすと,その時点における科学的知見に基づいて法的判断を行うことになる。本件においては,①DS86,放射線被曝治療,放射線防護学等の科学的知見が被爆者の初期症状をすべて説明し尽くしていないこと,②被爆者調査における被爆者の初期症状が原爆放射線の影響によるものであると考えることが最も合理的であること,③しかし,個々の被爆者に被爆直後に放射線の急性症状類似の症状が現れたとしても,そのことだけで直ちに当該被爆者に相当程度の放射線被曝があったと断定することはできないこと,以上を念頭において判断するのが相当である。
(10) 上記の見地に立って,原爆症認定の放射線起因性判断における急性症状の問題についていえば,まず,前に列挙した被爆者調査の結果からみると,審査の方針(13年方針)が定める線量評価の手法は,特に残留放射線(誘導放射線及び放射性降下物)及び内部被曝の問題についての点で過小評価に陥る危険があり,これをそのまま是認することはできず,審査の方針の基準に基づいた被曝線量を誤りのないものであることを前提に判断することはできないということがいえる。この場合,正確な線量評価ができないことになるが,60年以上前の目に見えない放射線の量を評定することが困難であることは,決して特異なことではない。
 次に,原爆症認定の申請をした被爆者に急性症状が認められる場合には,その具体的症状により,原爆放射線の影響を受けたことの根拠の1つとして考慮することが相当である。この点は,元来,13年方針の第1の1,4)の「既往歴」には被爆者の急性症状を含むと解されることのほか,前記在り方検討会の報告でも急性症状についても考慮すべき分野及び手法を具体的に指摘したことを受けて,再び新審査の方針(20年方針)の第1の2(総合認定)中に「被曝線量」と並んで「既往歴」を明記するなど急性症状の認定及びその意義が有する比重が増していることが認められる。したがって,その急性症状の具体的内容,発症時期,継続期間等を把握し,放射線被曝治療に係る急性症状の知見を参考としつつ検討するのが相当である。」

139頁
原因確率について
(7) 以上整理すると次のとおりである。審査の方針(13年方針)の採用する原因確率については,①基礎資料である放影研の疫学調査に用いられた線量評価では,DS86の初期放射線以外の線量が考慮されておらず,ポアソン回帰分析の手法による解析結果から得られた過剰リスクが低いものとなっている可能性がある,②死亡率調査と発生率調査における過剰リスクには相当差があり,死亡率調査によれば,発生率調査よりも低い過剰リスクとなる可能性があり,③死亡率調査及び発生率調査による結果を一律に10パーセント及び50パーセントの数値を基準に評価することに問題があるという3点において,その正確性に問題があるといわざるを得ない。放影研の疫学調査が,被爆者の晩発障害と放射線との関連性を探求してきた功績は高く評価されるべきである。被爆者医療に当たる医療従事者が,被爆者に発現率が高いと感じられる疾病について,疫学的に放射線との関係が
あるといえるかどうかの裏付けを行ったものであり,また,現在では,遺伝子レベルでの疫学調査も進み,人体の免疫機能への影響の検討にまで至っている。これらが,疾病の発症機序の解明に貢献するであろうことは疑いがない。
 しかし,疫学調査の結果が,原爆症認定の放射線起因性の有無の判断についていかなる程度において認定作業上の貢献ができるかは,別途の諸点から検討を要する。まず,そもそも疫学調査の結果から,原爆放射線と被爆者ごとの疾病との関連性がないということがいい得る資料は,検討する視点によるものではあるが,必ずしも多くはないと思われる。次に,寿命調査,成人健康調査において,線量反応関係が認められる疾病が,がん及びそれ以外の疾病について次第に明らかになった経緯は,長年月の経過及びこの間の多くの科学者等の長期にわたる学的営為の蓄積の後に,当初は気づかれなかった健康上の影響が判明され,その疾病の複雑多様さが確認されるようになったことは前示のとおりである。これら諸活動の中心的な立場にある放影研の上記調査は,原爆放射線と疾病との因果関係の不存在を証明してきたのではないことはいうまでもない。そうであれば,放影研の疫学調査の結果,有意な線量反応関係が認められない部分については,それゆえに放射線起因性の認定判断を遮断すべきであると論決すべきではなく,疫学調査の結果以外の学問的な成果をも考慮に入れて上記起因性の有無につき審査すべきであるとする考慮も求められる。たしかに,原因確率が審査の公平性のために有用であるとの考え方もあり得るが,13年方針が採用した原因確率と称する方式が完全でないとすれば,他の事実からアプローチする道を閉ざすこともまた公平性を失わせるものといえる。」


196頁
放射線起因性の判断基準について
「(1) 以上のとおり,審査の方針(13年方針)は原爆症認定の判断基準として相当とはいえないので,改めて,本件の1審原告ら(取消請求に係る訴えを却下された者を除く。)の放射線起因性を判断するに当たっての判断基準について検討する。その際,13年方針が改められ,その一部はすでに20年方針により原爆症認定が行なわれている段階にあることを念頭に置いて考察する。
(2) 判断の前提としての科学的知見は,これまで検討したところを前提とする。
ア 1審原告らの被曝の有無及び程度については,「第5 線量評価について」及び「第6 急性症状について」において検討したところによる。すなわち,DS86による初期線量の評価について尊重し,定量的判断は困難であるものの,誘導放射線,放射性降下物による放射線,内部被曝の存在について配慮して,被曝の有無及び程度を判断するという基本的考え方になる。
イ 疾病の原爆放射線との関連性については,「第7 原因確率について」,「第8 肝機能障害と原爆放射線との関連について」及び「第9 甲状腺機能低下症と原爆放射線との関連性について」において検討したところを考慮し,さらに,個別の1審原告に必要な知見を証拠上認定しつつ判断をする。
(3) 個別1審原告の事情としては,次の事情を考慮することになる。
ア 原爆被爆の状況被爆地点,被爆時の遮蔽状況等が被曝の程度の判断の基本である。
イ 被爆後の行動被爆後どのような行動をとったかは,誘導放射線の影響,内部被曝の影響を判断する上で必要な事項である。
ウ 被爆後現れた急性症状放射線被曝の有無及び程度の1つの指標として必要な事項である。
エ 被爆前の健康状態,生活状況1審原告らの生活及び健康状態を知ることは,その後の経緯を検討する上での基本である。
オ 被爆後の健康状態,生活状況被爆後の身体の状況がどのようであったかは,放射線被曝の影響があったかどうかについての1つの判断資料となりうるものであり,その前提としては,生活状況を知る必要がある。
カ 申請疾病の内容,発症の経過等申請疾病がどのようなものであり,どのような経緯をたどったのかは重要な事情である。
(4) 判断の基準としては,最高裁平成12年判決に従い,原爆放射線被曝の事実が1審原告らの疾病の発生を招来した関係を是認できる高度の蓋然性が認められるか否かである。
(5) 特に,前提となる事実の認定については,申請疾病に係る客観資料についてはあまり問題がないものの,被爆状況,被爆後の行動については,60年以上前の事実であり,原爆投下の後という客観証拠が少ない特殊な状況にあったのであるから,1審原告らの供述に依存する比重が大きくならざるを得ない。その供述は,他の証拠との対比においても慎重に検討する必要がある。
また,被爆前後の生活状況,健康状況についても,古い事実については客観資料が得がたく,これも同様慎重に検討する必要がある。
(6) 前にも述べたが,判断基準としては,「原爆被爆がなければこのような病気にならなかった」ということに通常人が疑いを差し挟まないかどうかであり,被爆者援護法の精神に則って慎重に判断すべきところである。」


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・被爆関係資料 その4 松谷訴訟,平成12年7月18日最高裁判決

・被爆関係資料 その4 松谷訴訟,平成12年7月18日最高裁判決


事件番号 平成10(行ツ)43
事件名 原爆被爆者医療給付認定申請却下処分取消請求事件
裁判年月日 平成12年07月18日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
判例集等巻・号・頁 集民第198号529頁

原審裁判所名 福岡高等裁判所
原審事件番号 平成5(行コ)17
原審裁判年月日 平成9年11月07日

判示事項 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律八条一項に基づく認定の要件であるいわゆる放射線起因性の意義及びその立証の程度

裁判要旨 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律八条一項に基づく認定の要件であるいわゆる放射線起因性は、原子爆弾の放射線と被爆者の現に医療を要する負傷又は疾病ないしは治ゆ能力低下との間に通常の因果関係があることを意味し、右認定拒否処分の取消訴訟において、被処分者は、右因果関係について高度の蓋然性を立証することを要する。
参照法条 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律7条1項・原子爆弾被爆者の医療等に関する法律8条1項

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主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理    由
 上告代理人細川清、同富田善範、同高野伸、同久留島群一、同中村和博、同田川直之、同星野敏、同林田雅隆、同木村政之、同小宮山健彦、同宮田智、同佐藤敏信、同岡田文夫、同宮田清美、同内山博之、同黒木弘雅の上告理由について
 一 本件は、長崎に投下された原子爆弾の被爆者である被上告人が、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(昭和三二年法律第四一号。平成六年法律第一一七号により廃止。以下「法」という。)八条一項に基づき、被上告人の右半身不全片麻痺及び頭部外傷が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の認定の申請をしたのに対し、昭和六二年九月二四日、上告人がこれを却下したため、右却下処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める事件である。
 二 法七条一項は「厚生大臣は、原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対し、必要な医療の給付を行う。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは、その者の治ゆ能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る。」と、法八条一項は「前条第一項の規定により医療の給付を受けようとする者は、あらかじめ、当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生大臣の認定を受けなければならない。」と規定している。これらの規定によれば、法八条一項に基づく認定をするには、被爆者が現に医療を要する状態にあること(要医療性)のほか、現に医療を要する負傷又は疾病が原子爆弾の放射線に起因するものであるか、又は右負傷又は疾病が放射線以外の原子爆弾の傷害作用に起因するものであって、その者の治ゆ能力が原子爆弾の放射線の影響を受けているため右状態にあること(放射線起因性)を要すると解される。原審は、右認定は放射線起因性を具備していることの証明があった場合に初めてされるものであるが、原子爆弾による被害の甚大性、原爆後障害症の特殊性、法の目的、性格等を考慮すると、認定要件のうち放射線起因性の証明の程度については、物理的、医学的観点から「高度の蓋然性」の程度にまで証明されなくても、被爆者の被爆時の状況、その後の病歴、現症状等を参酌し、被爆者の負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因することについての「相当程度の蓋然性」の証明があれば足りると解すべきであると判断した。
 しかしながら、行政処分の要件として因果関係の存在が必要とされる場合に、その拒否処分の取消訴訟において被処分者がすべき因果関係の立証の程度は、特別の定めがない限り、通常の民事訴訟における場合と異なるものではない。そして、【要旨】訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではないが、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とすると解すべきであるから、法八条一項の認定の要件とされている放射線起因性についても、要証事実につき「相当程度の蓋然性」さえ立証すれば足りるとすることはできない。なお、放射線に起因するものでない負傷又は疾病については、その者の治ゆ能力が放射線の影響を受けているために医療を要する状態にあることを要するところ、右の「影響」を受けていることについても高度の蓋然性を証明することが必要であることは、いうまでもない。そうすると、原審の前記判断は、訴訟法上の問題である因果関係の立証の程度につき、実体法の目的等を根拠として右の原則と異なる判断をしたものであるとするなら、法及び民訴法の解釈を誤るものといわざるを得ない。
 もっとも、実体法が要証事実自体を因果関係の厳格な存在を必要としないものと定めていることがある。例えば、原審が右判断の過程において検討対象としている原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律(昭和四三年法律第五三号。平成六年法律第一一七号により廃止。以下「特措法」という。)五条一項が健康管理手当の支給の要件として定めているのは、被爆者のかかっている造血機能障害等が「原子爆弾の放射能の影響によるものでないことが明らかでないこと」というものであるから、この規定は、放射線と造血機能障害等との間に因果関係があることを要件とするのではなく、右因果関係が明らかにないとはいえないことを要件として定めたものと解される。原審の前記判断も、特措法の関連法規である法八条一項の放射線起因性の要件についても同様の解釈をすべきであるという趣旨に解されないではない。しかし、特措法は各給付ごとに支給要件を書き分けていることが明らかであり、同法五条一項が健康管理手当について右の程度の弱い因果の関係でよいと明文で規定しているのと対比すれば、同法二条の医療特別手当の支給については、このような弱い因果の関係では足りず、通常の因果関係を要するものとされていると解するほかはない。そして、これらの特措法の規定と対比すれば、むしろ、【要旨】法七条一項は、放射線と負傷又は疾病ないしは治ゆ能力低下との間に通常の因果関係があることを要件として定めたものと解すべきである。このことは、法や特措法の根底に国家補償法的配慮があるとしても、異なるものではない。そうすると、原審の前記判断は、実体要件に係るものであるとしても、法の解釈を誤るものといわなければならない。
 三 ところで、原審は、本件全証拠を総合検討し、被上告人が現に医療を要する状態にあり、かつ、放射線起因性が認められると認定判断し、本件処分を違法としているので、右の放射線起因性を肯定した原審の認定判断について、以下検討する。
 1 原審が、右認定判断の前提として適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
 (一) 長崎に原子爆弾が投下された昭和二〇年八月九日午前一一時二分、被上告人(当時三歳五箇月)は、爆心地から約二・四五キロメートル離れた長崎市a町b丁目c番地(現同市d町e番地f)の自宅の縁側付近において、爆風により飛来した屋根がわらにより左頭頂部を直撃され、左頭頂部頭蓋骨陥没骨折、一部欠損の重傷を負った。被上告人は、右傷害により一時意識不明、上下肢運動機能喪失等に陥ったが、マーキュロクロムを塗布する治療を受けたのみであった。その後数日間、被上告人は、自宅にとどまっていたが、下痢症状があり、頭髪が少しずつ抜け始めた。
 (二) 同月一六日、被上告人は、両親と共に、自宅から徒歩で、爆心地から約一・七キロメートルの地点を経てg駅に至り、列車で爆心地の直近を通過して、長崎県南高来郡h町に避難し、一〇日間ほどを過ごした後帰宅した。避難先では、被上告人は、寝たきりであり、治療を受けることはなかったところ、頭部の傷口は化のうし、うみが出ていた。
 (三) 同年一〇月上旬ころ、被上告人は、両親と共に、同県南松浦郡i町に疎開した。同所でも、被上告人は、寝たきりであり、頭髪は一層薄くなった。頭部の傷口は、ふさがらず、水が噴き出すように腐臭の強いうみないし分泌物が流出し続け、医師からいったん短期間で治る旨の診断を受け、治療を受けたものの、傷口の一部がふさがりかけると、今度は別の部分からうみ等が出始めるという状況の繰返しで、治療は効を奏せず、一応の治ゆをみたのは、被爆後二年半ほどたってからであった。このような症状の経過、治ゆの遷延は、治療の不十分、不適切さだけでは十分に説明することができないものであった。同町での治療期間中に、被上告人の頭部の傷口からかわらの破片が出てきた。
 (四) 同年一二月三一日から翌二一年一月一日にかけて、被上告人は、失神を伴う継続的な重度のけいれん発作に襲われ、心マッサージにより息を吹き返した。同様の発作の回数は次第に減少していったが、その後の学校時代を通じて、年に一、二回くらい一時的に意識不明の状態に陥ることがあり、同四二年ころまで続いた。同三四年ころには、約三九度の高熱が一週間ほど継続する症状を呈したが、当時としては明確に感染症とは判定することができず、原因は明らかにならなかった。
 (五) 被上告人は、本件処分時においても、現在においても、右片麻痺(脳萎縮)、頭部外傷と診断され、右半身不全麻痺、右肘関節屈曲拘縮等の障害を有する。被上告人の左頭頂部の頭蓋骨には陥没骨折があって、骨折部分に対応する部分の脳実質が欠損しており、この欠損と側脳室が交通していて、脳孔症と診断されるほか、様々な不定愁訴を有している。これらの根本的治療は困難であるが、症状を緩和させるための薬物療法、理学療法等が現に必要である。
 (六) 高速度で飛んできた小物体による頭部外傷の場合には、脳実質への影響は、受傷した局所では高度であるが、局限性で脳全体に与える影響は少ないのが通常であるのに、被上告人の場合は、脳実質にこれを超える広範な損傷がある。このように広範な脳孔症は、頭部外傷の合併症というだけでは説明することができないようなまれな状態であり、このことは、かわらの打撃以外の要因も加味していることを強く推認させる。
 (七) 昭和二〇年に日米合同調査団が行った調査結果によれば、長崎においては、爆心地から一・五キロメートルの地点で約一八パーセント、二キロメートルの地点で約一〇パーセントの者に、広島においては、爆心地から一・五キロメートルの地点で約一九パーセント、二キロメートルの地点で約七・五パーセントの者に、それぞれ脱毛が生じており、いずれにおいても爆心地からの距離が遠くなるに従って脱毛の発症頻度が減少していたなどとされている。また、昭和四〇年に厚生省が行った調査によれば、被爆地点が二キロメートルを超える場合も、相当多数の者に脱毛等の急性症状があり、四キロメートルを超える場合も、早期入市者で一一パーセント、それ以外の者で三・一パーセントに脱毛が生じたとされている。さらに、昭和六〇年に厚生省が行った調査によれば、爆心地から二ないし三キロメートルの地点で被爆した死亡者のうち急性障害によるものが、長崎においては三・二パーセント、広島においては五・四パーセントであったとされている。
 また、長崎市内の爆心地から約二・九キロメートルの、被上告人の被爆場所とほぼ同一方向の地点で被爆したDは、倒壊した工場の鉄骨製のはりの下敷きとなってせき椎を骨折したが、被爆直後から発熱が続き、しばらくして脱毛が起こり、被爆後一年間無月経であった。外傷部は、容易に治ゆせず、腐食して悪臭を発した。同人は、昭和三四年六月二九日付けで、法八条一項の認定を受けた。
 長崎市内の爆心地から約二・四キロメートルの地点で被爆したEは、被爆の約一箇月後に若干の脱毛があり、一緒に被爆した友人は毛髪全部が脱毛した。
 長崎市内の爆心地から約二・五キロメートルの地点で被爆したFは、被爆直後から発熱し、約一箇月後に脱毛が認められ、約二箇月後に鼻血、おう吐、下痢があった。
 2 その一方で、原審は、右事実関係のほかにも、次の事実を適法に確定している。
 (一) 放射線被爆の人体に及ぼす影響には、確率的影響と確定的影響とがあり、がんの誘発と遺伝的影響のみが前者に属し、それ以外はすべて後者に属するから、本件で問題となるのは確定的影響であるところ、確定的影響には一定線量以上の放射線を浴びないと影響が起こらないしきい値があるとされ、各症状についてのしきい値としては、脳神経細胞の損傷が一〇〇ラド、白血球減少が五〇ラド、脱毛が三〇〇ないし五〇〇ラド、リンパ球の障害による免疫能の低下は一〇ラド強などとされている。
 (二) 原子爆弾による放射線の線量評価システムであるDS八六は、線量評価に関し設置された日米合同の委員会が一九八六年(昭和六一年)三月に承認し、世界中において優良性を備えた体系的線量評価システムとして取り扱われてきたものであり、DS八六によれば、長崎におけるガンマ線と中性子線の空気中線量を合計した放射線量は、爆心地から二・四キロメートルの地点で二・九六三ラド、二・五キロメートルの地点で二・〇九二ラドであり、残留放射線等による放射線量は評価するに足りず、右線量についての不確定性の推定値は空気中線量で一三パーセントであり、臓器線量では二五ないし三五パーセントになるなどとされている。
 3 確かに、右に記載したしきい値理論とDS八六とを機械的に適用する限り、被上告人の現症状は放射線の影響によるものではないということになり、本件において放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難いところである。
 しかしながら、DS八六もなお未解明な部分を含む推定値であり、現在も見直しが続けられていることも、原審の適法に確定するところであり、DS八六としきい値理論とを機械的に適用することによっては前記三1(七)の事実を必ずしも十分に説明することができないものと思われる。例えば、放射線による急性症状の一つの典型である脱毛について、DS八六としきい値理論を機械的に適用する限りでは発生するはずのない地域で発生した脱毛の大半を栄養状態又は心因的なもの等放射線以外の原因によるものと断ずることには、ちゅうちょを覚えざるを得ない。このことを考慮しつつ、前記三1の事実関係、なかんずく物理的打撃のみでは説明しきれないほどの被上告人の脳損傷の拡大の事実や被上告人に生じた脱毛の事実などを基に考えると、被上告人の脳損傷は、直接的には原子爆弾の爆風によって飛来したかわらの打撃により生じたものではあるが、原子爆弾の放射線を相当程度浴びたために重篤化し、又は右放射線により治ゆ能力が低下したために重篤化した結果、現に医療を要する状態にある、すなわち放射線起因性があるとの認定を導くことも可能であって、それが経験則上許されないものとまで断ずることはできない
 四 そうであるとするならば、本件において放射線起因性が認められるとする原審の認定判断は、是認し得ないものではないから、原審の訴訟上の立証の程度に関する前記法令違反は、判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。したがって、結局、論旨は採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 奥田
昌道)


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・被爆関係資料 その3 原爆症認定制度の在り方に関する検討会

・被爆関係資料 その3 原爆症認定制度の在り方に関する検討会


※原爆症認定に関する政府側の議論は、原発事故による被ばく問題とも関係するはず。


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○原爆症認定制度の在り方に関する検討会
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/zenkokukenkou/dl/110204-shiryo-a_0023.pdf
〔構成員〕
・荒井史男 弁護士
・田中煕巳 日本原水爆被害者団体協議会事務局長
・石弘光 放送大学学長
・智多正信 長崎市副市長
※・草間朋子 大分県立看護科学大学学長
・坪井直 日本原水爆被害者団体協議会代表委員
・潮谷義子 長崎国際大学学長
・長瀧重信 (財)放射線影響研究所元理事長
・神野直彦 東京大学名誉教授
・三宅吉彦 広島市副市長
※・高橋滋 一橋大学大学院法学研究科教授
・森亘(座長) 東京大学名誉教授
・高橋進 株式会社日本総合研究所副理事長
・山崎泰彦 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授

※原子力損害賠償紛争審査会の委員。
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-41.html


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http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001luvv.html
第三回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録

○日時
平成23年6月13日(月) 10:00~12:00
○場所
中央合同庁舎第5号館 厚生労働省省議室(9階)
○議題
1.開会
2.議事
(1) 原子爆弾被爆者医療分科会関係者からのヒアリング
(2) 原爆放射線に関する科学者からのヒアリング
(3) 裁判官出身者からのヒアリング
3.閉会

○議事
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 おはようございます。
まず、開会に先立ちまして、傍聴者の方におかれましては、お手元にお配りしております傍聴される皆様への留意事項を御確認いただきまして、厳守をお願いしたいと思います。また、この部屋少々暑いかと思いますけれども、クールビズでございますので、適宜、上着など取っていただけたらと思います。
それでは、これ以降の進行につきましては神野座長代理にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○神野座長代理 おはようございます。
それでは、定刻でございますので「第3回原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を開催したいと存じます。
初めにお断りを申し上げておきますけれども、本日は森座長がやむを得ない事情で急遽御欠席という事態になりました。座長からの御指示によりまして、座長代理である私が進行役を務めさせていただくことになりました。何分にも行き届きませんので、委員の皆様方には議事の運営につきまして御協力をいただければとお願い申し上げる次第でございます。
 それでは、委員の出席状況につきまして、事務局の方から御報告いただきたいと思いますのでよろしくお願いします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 本日の出席状況でございますが、森座長と潮谷委員が欠席との御連絡をいただいております。
 カメラ撮りはこの辺りまででお願いします。
(報道関係者退室)
○神野座長代理 それでは、議事に入りたいと思います。
改めて私から申すまでもありませんが、この間、東日本を巨大な大地震が襲い、かつ、津波がそれに加わって信じ難いような被害が生じる大災害が起きました。そのため、この間、検討会を延期せざるを得なくなっておりましたが、今回、前回、座長から皆様の方にお諮りをいたしましたとおり、ヒアリングを行いたいと思っております。議事次第、あるいは事前に皆様に御連絡を申し上げているかと思いますけれども、原爆症認定審査を実際に行われている原子爆弾被爆者医療分科会の方、放射線の健康影響に関する科学者の方、それから、裁判官御出身の方からお話をちょうだいするということになっております。
また、前回、田中委員の方から、被爆者医療に携わる医師の方からのヒアリングを含めて御提案がございました。この田中委員の御提案を含めて、今後のこの検討会の進め方については、ヒアリングの後に時間を取ってお話をさせていだきたいと考えております。
 それでは、資料の確認と本日のヒアリングの進め方について、事務局の方から御説明いただければと思いますので、よろしくお願いします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 お手元の資料を確認させていただきたいと思います。
資料1、ヒアリングの参考人名簿でございます。本日の前半でございますが、原子爆弾被爆者医療分科会の関係者と原爆放射線に関する科学者の方からヒアリングを行うこととしております。お名前を紹介させていただきたいと存じます。原子爆弾被爆者医療分科会会長の谷口英樹様でございます。谷口様には原爆症認定制度と医療特別手当の在り方というテーマでお話をいただくこととしております。
続きまして、御紹介させていただきます。京都大学名誉教授で国際放射線防護委員会主委員会委員の丹羽太貫様でございます。丹羽様には放射線の健康影響についてというテーマでお話をいただくこととしております。お二方のお話が終わりましたら、各委員からそれぞれの皆様方に対しまして、御自由に御質問、御発言をいただければと思います。
本日の後半ですが、裁判官出身の方からのヒアリングを行うこととしております。お名前を御紹介いたします。駿河台大学法科大学院教授の岩井俊様でございます。岩井様には原爆症の取消し訴訟を念頭に、判決に至るまでの流れや法律関係の判断に当たって考慮する事項などについてお話をいただくこととしております。岩井様からお話をいだいた後、各委員から自由に御質問、御発言をいただければと思います。
委員の皆様には資料2といたしまして、谷口参考人、丹羽参考人、岩井参考人からの提出資料をそれぞれ配付させていただいております。
事務局から参考資料として2種類の資料をお配りしております。ごく簡単に資料の性格だけ御説明をさせていただきたいと思います。参考資料1ですが、原爆症認定審査体制の資料でございます。おめくりをいただきまして、原爆症認定手続の概要、原爆症認定の審査体制、委員名簿、新しい審査の方針、審査待機者の計画的解消に向けて、医療分科会の開催実績を示したものでございます。
参考資料2は原爆症認定関係訴訟についての資料でございます。めくっていただきまして、平成12年7月に出されました松谷訴訟最高裁判決について、その後の集団訴訟の経緯、平成21年に署名されました確認書について、御参考までに用意したものでございます。
説明は以上でございますが、資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお願いします。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、早速ヒアリングを開始したいと思います。最初に谷口先生からちょうだいいたしますが、時間その他の都合がございまして、20分程度で御発表いただけたらと思います。よろしくお願いします。
○谷口参考人 医療分科会の谷口でございます。本日はよろしくお願いいたします。
資料2の1を御参照いただきまして、大体この資料に沿って御説明を申し上げたいと思っております。
まず「1 制度設立当初からの原爆症認定制度と手当の趣旨」ということで、これは委員の先生方には繰り返しになるかもしれませんけれども、比較的重要なことでございますので、ここからスタートをしたいと思っております。昭和32年、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律が制定されまして、原子爆弾の放射線の傷害作用により疾病にかかり、医療を要する状態にある。これをいわゆる原爆症と申しますけれども、そう認定された方々に対しまして、医療手当が創設されております。これは、原爆症と認定された方は、原爆放射線の影響が立証された疾病に罹患し、その医療についていまだ治療方法が確立されておらず、回復の望みのないまま死に対する不安にさらされている特殊な環境にあるということで、医療に関連して何らかの慰安の手段を与えることにより精神的な安定を図り、同時に幾分でも治療効果の向上を図るということを目的にしたものでございました。
更に、昭和43年には原子爆弾被爆者に対する特別措置法が制定されまして、原爆症と認定された方々に対しまして、特別手当が創設されております。これは原爆症の方は原爆の被害を最も強く受けた方でございまして、健康上、生活上、悪条件下にさらされている上、原爆症にかかっているため、一般人と異なる特別な出費を余儀なくされているということに対して、生活面の安定を図るためでございました。
一方、同じく昭和43年に健康管理手当も創設されておりますけれども、この手当は、立証前の原爆症の可能性もある原爆の放射線の影響を疑われる障害を伴う疾病に罹患したものを対象としておりまして、すなわち、健康管理手当は放射線との因果関係が科学的に厳密に否定できない疾病罹患者まで拡大されたものでございます。
このように、健康管理手当と原爆症と認定されることによる支給される手当、現在の医療特別手当でございますが、この差異が疾病と放射線との因果関係を高度に証明できるかどうかということで差がついていると理解しております。この考え方は後で述べます最高裁判所による判決によっても支持をされていると考えております。
さて、近年の原爆症認定制度と医療特別手当を取り巻く、特に最近の事情でございますけれども、先ほど事務局から御紹介がありましたように、平成12年7月、最高裁判所により、頭部外傷及びそれに起因する右片麻痺が放射線に起因するとして原爆症認定を求めた原告に対し、物理的打撃では説明し切れないほどの脳損傷の拡大の事実などを基に考えると、原告の脳損傷は、放射線起因性があるとの認定を導くことも可能であって、それが経験則上許されないものとまで断ずることができないとの判決がなされております。
この原告の疾病が本当に原爆放射線によるものであったかどうかという、いわゆる科学的な議論というのはあるのでございますけれども、より原爆症認定の判断根拠をわかりやすく示し、明確な科学的根拠に基づいた認定を行うために、平成13年5月、医療分科会では、疫学調査より得られました、疾病の発症が原爆放射線の影響を受けている蓋然性があると考えられます確率、これを原因確率と申しますけれども、これに基づいた審査の方針を導入しております。
しかしながら、この審査の方針によって認定とされなかった方々から却下を不服とした集団提訴が提起されまして、国の敗訴が続いております。このような状況から、平成19年8月、当時の安倍総理大臣より、審査の方針の見直しが指示されております。
これを受けまして、厚生労働大臣の下、科学者による原爆症認定の在り方に関する検討会が設置されております。この検討会では、疫学的な調査に基づく指標として設定された原因確率を、放射線の健康影響を判断する目安として使うことには合理性があるということを前提に、残留放射線についても、個人ごとの移動経路あるいは滞在時間に基づいて線量計算を導入することや、急性症状等も評価して総合判断を行うなどが提言されております。
これと別に、同時期に、当時の与党プロジェクトチームにおきまして、被爆者の方々からのヒアリングを踏まえた議論が行われ、がん、白血病、老人性を除く白内障等の対象疾患のある被爆者で直爆距離あるいは入市時期など、一定の被爆要件を満たすものを積極的に認定すべきであるという提言がなされております。
結果的に我々の分科会では、与党プロジェクトチームの提言を基にした、厳密な科学的知見にこだわらず、より幅広く被爆者救済の立場に立った新しい審査の方針を平成20年度から導入することとなりました。現在も、分科会はこの方針に基づいて認定審査を行っております。
その現在の実情でございますが、新しい審査の方針を導入いたしまして以来、平成20年度以前は月平均10件程度でございました申請件数が、平成20年度以降、月平均700件と急増いたしております。これに対応するため、平成20年4月以降、委員の数を17名から31名と大幅に増加いたしまして、分科会の下に4つの部会を設置し、審査機会の増加を図っております。その結果、月に280件程度の審査を行うことができるようになりましたが、申請件数の伸びはこれを上回り、平成21年10月には最大8,000件の待機件数ということになりました。
この状態を解消し、認定をお待ちいだいている方々に対し、より迅速な審査を行うべく、平成22年5月に、月平均500件以上の処理を目標とする計画を策定いたしまして、審査を行っております。このとき、同時に、新たに2名の委員を追加いたしまして、2つの部会を新たに追加し、審査体制の拡充を図っております。このような取り組みの結果、昨年度は6,435件審査を行いまして、待機件数は昨年度末で約3,000件、現在は2,400件まで減らすことができております。
一方、分科会の委員の先生方も、この業務以外に多数御自分の業務を抱える中で、現委員が現状以上の時間を捻出することは非常に困難でございまして、当分科会の処理能力はほぼ限界に達していると認識しております。
最近の原爆症認定の問題点でございますが、制度の趣旨と現状、大分時間が経ってきて乖離してきているのではないかというお話をさせていただきます。終戦から65年が経過いたしておりまして、被爆者の方々、平均年齢77歳となっております。原爆症として認定の対象となっておりますがん、白内障、心疾患等は、高齢者には非常にポピュラー、珍しくない疾患でございます。例えばがんは生涯で2人に1人は罹患する疾病でございます。白内障に関しましては、程度の差はあるものの、60歳代で66~83%、70歳では84~97%、80歳以上の方では100%の方に白内障の原因である水晶体の混濁が見られると言われております。このように、実際には加齢あるいは生活習慣を原因として疾病が発生している可能性が高いと考えられる中で、現状は、放射線による影響と放射線以外の原因、それによる影響を厳密に切り分けることは非常に難しいという中で審査を続けているわけでございます。
また、この間、医学は進歩いたしまして、制度設立当時、昭和30年~40年代には不治の病と考えられておりましたがんも多くは治癒が期待できるようになり、かつては失明の原因であった白内障に関しても、濁った水晶体を人工レンズに交換する手術等の治療により、日常生活に支障なく暮らせるようになったということもございます。このように、制度設立当初と現在は、疾病にかかった場合の予後あるいは障害の程度が変化していることも事実でございます。
現在の新しい審査の方針、先ほど申し上げました平成20年度から導入しております新しい審査の方針に基づいて、今、審査を行っておりますが、これは各疾患の放射性起因性について、厳密な科学的知見にこだわらず、より被爆者救済の立場に立って幅広く認定対象としております。当然、この中で取り入れられている考え方は、UNSCEAR等の放射線の人体影響に関する国際的に確立されている科学者の合意に沿わないものも含まれております。例えばC型肝炎などはウイルスが原因で起こることは証明されておりまして、放射線の影響も余りペーパー報告などはないんですけれども、認定疾患の中に入っております。
しかしながら、一般社会からは、私ども公的な審査会で基準として用いられるということを理由として、純粋に科学的なガイドラインであるように誤解をされるおそれがございまして、医療現場あるいは労働現場において、国民に放射線の人体への影響に対する不必要な心配を与え、混乱が生じることがないかと懸念をしております。
以上、まとめますと、制度創立当時において、治療法が確立されておらず予後の悪かった白血病や固形がんが、その当時、働き盛りの被爆者の方々あるいはその家族の方々に大きな負担となっていたと思われ、放射性起因性の程度と要医療性の基準により、高額の手当を給付する基準を設けたことは時代の要請であったと考えられます。
一方で、現代においては、被爆者は高齢化が進んでおり原爆症と同じ病名の疾患の罹患率は著しく高くなっております。また、先ほど申し述べましたように、医学の進歩により、これらの疾病にかかっても予後は依然と比べはるかに改善をいたしております。
当分科会といたしましては、最大限被爆者救済の立場に立ち、幅広く認定を行うことを基本として科学的な審査を行っておりますが、科学をよりどころとする専門家集団としては、その基本になる審査の方針の考え方が、国際的に認められた科学的知見に沿わないということもありまして、放射線起因性を科学的に証明されているとは言えない疾病まで認定対象となっている現状に違和感を覚えていることもまた事実でございます。また、放射線による影響と加齢・生活習慣による影響を厳密に切り分けることが難しい中で、疾病や悪性度や予後に関わらず、疾病と放射線との因果関係があると認定された一部の被爆者の方々に医療特別手当という、いわゆる手厚い手当が支給され、それ以外の放射線の影響が否定できない疾病にかかられた方々には、健康管理手当という金額的に大きな差のある手当が支給されているという現在の仕組みが、本当に被爆者の方々の実態に合っているのかどうかということに関しても、分科会の委員の方々から疑問がときどき出されているところでございます。
原爆症制度の在り方につきましては、被爆者援護施策であるがゆえに、放射線との関わりについてはある程度担保されなくてはならないと考えますが、被爆者のみならず、費用負担者でございます国民全体の理解が得られるよう、高齢化いたしました被爆者の方々の実態に即した公平な制度を検討していただきたいと考えております。また、その際には、金額の差が大きい2段階の手当にこだわらず、かかっている疾病の特性、あるいは個人個人の重症度などを実態反映するようなきめ細やかな段階や金額の設定を含め、検討することが必要ではないかと考えております。
以上で、私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、丹羽先生に御発表いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○丹羽参考人 それでは御報告させていただきます。
私に与えられたテーマは、一応これまでの被爆者の研究についての科学的合意形成の過程及び、そのような科学的合意から出てきたリスクの科学についての国際的合意形成。そういう点についてお話をさせていただきます。今の先生のお話にありました、結局放射線というものの位置づけ、そういうものでございます。
(PP)
今回お話しすることは、科学的合意形成のステップと被爆者研究の評価ということ。被爆者の、皆様方の研究が教えてくれたこと。それから、被爆者研究に基づいた放射線リスクに関する国際的合意。この国際的合意は、過去においてチェルノブイリ、今回の福島、そういうようなところにおいても非常に大きな意味を持っております。
(PP)
科学的合意形成のステップというものについてお話しさせていただきたいと思います。研究というものはすべて科学的合意形成に資するか。それはまた違うということを述べたいと思います。
まず、研究の第一段階は、当然ながら、これは研究者個人のレベルで、例えば放射線の健康影響がいかであるかということを研究いたします。そのような研究には、例えば分子・細胞・動物個体での実験的研究がありまして、これは専らメカニズム、健康影響に関する放射線のどのような関与があるかと機構を解明するスタンスであります。あと一つは、被爆者の研究あるいは放射線事故、そのほかにおける人の疫学調査で、これは必ずしも機構ではなくて、実態がいかであるかということを明らかにする。こういう2つの側面があるということであります。これは個人でありますので、そのような個人がどのような結果を出そうが、それはその個人の研究者の責任で行われる。
ところが2番目、その個人の研究者が研究者コミュニティーに対して、自分の研究成果をまずは上げるという過程がありまして、これは学会発表であり、論文発表であって、それをもって世界に発信をするというステップがございます。
そのようなステップを踏みまして、次に学会で発表されたこと、あるいは論文で発表されたことが世界の研究者コミュニティーに対して投げかけられる。そうすると、研究者コミュニティーは研究者により、そのような個人の研究者の研究成果の解析と検証をやる。例えば、大事な実験研究であれば、研究のシステムを持っておられる方は追試。更に自分でもテストをするという過程もできます。それから、いろいろな比較検討により、それが正しいものであるか、もっともであるいうことが検証できます。
疫学研究の場合は、すべての疫学研究というのは対象になる集団が変わりますし、例えば放射線の被爆の状況も変わります。だから、非常に個別的なものでありますが、そのような個別的なものを、例えば世界のいろいろなところでやられている研究を受けて、その比較検討により、より正しいか、あるいはそのような個人の行った研究というものの中身が何か間違いがないであろうか。こういうことを検証いたしまして、科学的な合意形成というものに進んでいきます。こういう過程を経て、ようやく科学的な手順を踏んだ合意形成というものが行われるわけであります。
(PP)
例えば論文発表というのは我々研究者にとっては大変高いハードルでありまして、なかなか簡単ではないということを申し上げます。まずは我々、私も含めてそうなんですが、研究者は思い込みがどうも強いところがございまして、自分でこうであると信じると、一生懸命そのことに合うようなデータが欲しい、あるいは自分で一生懸命実験をくみ上げてそのようなデータを出そうと努力いたします。それで証明できたものを学会で発表するなり、あるいは論文に発表するということになります。実際のデータが、例えば思い込み。自分がこうであろうと考えたことと合致した場合は、たまたま合致したということがあります。バイチャンス。もう一つは、何度調べても合致する。これは結構なことであります。自分の研究、例えば自分の研究室ではうまくいくんだけれども、ほかの研究者がやったデータとはなかなか合わないという場合がある。あるいはほかのデータとも合うという場合がある。
いずれであっても、学会発表は可能です。こういうことを発見しました。また、そのような発見というものは論文になる場合があると括弧で付けましたのは、これは次に述べます論文の査読のシステムと関係しております。とにかく、なる場合もあるし、ならない場合もある。
赤字で示した左のような場合の論文というものは、科学的合意に寄与しませんし、だれかがそれは間違いだというような論争になる場合もありますが、普通、大した研究でなければ時代とともに忘れられていくということが通常でございます。右の場合で、しかも価値がある論文。みんなそれは大変新しい発見だと言う論文のみが科学的合意に寄与していくという過程であります。
このような過程を経て、例えば科学的合意に形成するかしないかというのは、研究のタイプあるいは発表の雑誌というものに影響されて、我々研究者はやはりいい論文を書きたいと日々努力するわけであります。
(PP)
論文もいろいろでありまして、発表雑誌による差というのは歴然としております。研究発表する雑誌は非常に大事であります。
査読制度というものが我々研究者の仲間で使われている国際雑誌では一般でありまして、主に19世紀イギリスで発達した制度であります。これは同業者がその論文の内容を厳密に査定して、自分の専門性に応じて、間違いあるいは正しいかと検証する。この査読の検証に耐えた論文のみが普通掲載されるということになります。
しかしながら、査読制度がある科学雑誌であっても格付けは大いに異なります。例えば掲載論文が非常によく引用される雑誌というのは格付けが非常に高くて、みんなそういう雑誌に論文を書きたいわけです。そのような論文は残念ながら、幸か不幸か、当たり前なんですが査読は非常に厳しいです。例えば我々、生命科学、生物学をやっている研究者が一生に1本でいいから書きたいとあこがれている『Nature』というイギリスの雑誌がございますが、これの採択率は10%以下、はるかに切ります。ほとんどの論文は門前払いです。あなたの論文はこういうことで我々のフィールドに合いませんとか、まず門の前でシャットオフされて、門の中に入ったものの採択率が10%以下というもの。
このような格付けのランクとしては、雑誌にインパクトファクターというものがありまして、このインパクトファクターというのは、その論文に掲載された論文の平均引用頻度というものです。これはどういうものかというと、例えば『Nature』誌というものはインパクトファクターが30。例えば『Nature』誌に年間100本の論文が採択されて出ると、30というのはすなわち3,000回、100本が引用される。だから、1回の論文当たり30回引用されるという非常に高い引用率を誇っております。だから我々はそこに出したいと大いに努力するわけであります。
査読制度を持たない雑誌。これは一般誌で、普通の週刊誌などはそうですが、科学的な論文を出すものではありません。自分の意見を出すというところであるということで、科学的合意まで持っていこうと思えば、論文であったら何でもいいというわけでないということでございます。
(PP)
被爆者研究は放射線リスクの世界標準と我々は考えております。これは科学的な合意になっております。それは被爆者研究が非常に質の高い研究デザインを持ち、また、さまざまな面で過去50年以上検証されておるからでございます。原爆が落ちて、急性影響に関する記述があり、胎児影響に関する記述があり、次は白血病が出始めた。しかしながら、子どもさんを調べても遺伝的影響は見られない。それから、固形腫瘍が出始めて、晩発性の非がん影響というもの。時間系列でこのような形で出ておりますが、これは50年以上検証されて出てきたデータであり、何度も何度も検証されております。
(PP)
被爆者研究が世界標準として認められている理由というのは、まずは対象集団が非常に多い。すなわち12万人という多くの被爆者の方々の御協力を得て、非常に厳密な研究デザインを持ってつくられた研究であるからであります。その集団の中には寿命調査集団、成人健康調査集団、胎児被爆者集団、2世の集団。このようなものがセットアップされて、それぞれの方々について非常に緻密な追跡調査がなされております。
線量についても、実測ができないものでありますが、同じ広島型、長崎型の原爆をつくって、更にそれを実際爆発させて距離と線量の関係でテストしたりしております。そのような中から、計算による被爆線量の推定としてDS86、DS02というようなものができて、個人個人の被爆者の線量が策定されており、それが正しいかどうかということを染色体異常の頻度で更に検証する。あるいは数は少ないんですが、歯の奥歯などの内側のエナメル質を使って、電子スピン共鳴法でこのような線量が正しいかどうかの検証もして、おおむね全部が合うということで、線量については非常に厳密であるということである。
それから、調査集団についての厳密な追跡があり、これは健康データであり、死亡あるいは罹患データであり、死因の解析であるということで、非常に長期にわたるものであります。
発表論文は、例えば放射線影響研究の関連の国際誌『Radiation Research』にたくさんこれまで報告されてきておりますが、そこに出された広島、長崎の研究の引用率は非常に高いです。2007年にリー・プレストンという先生が、やはり被爆者研究についての非常に膨大で分厚い論文を掲載されました。これは既にオフィシャルには28回の引用があり、先ほど出てまいりました国連科学委員会の報告とか、そういうものにも常に載録されて高い評価を受けております。
(PP)
調査集団の3つ、4つの集団についてざっくり書いたものですが、寿命調査集団が1958年に設定されて12万人。その中で2万人が成人健康調査。これは被爆なさった方の身体的影響というものを見るもので、同じ身体的影響でも胎内被爆者集団というものがありまして3,600人。1956年に設定されております。それから、次世代影響集団があって、2世集団で7万7,000人。これは50年以上の追跡調査でありまして、世界的に類例がございません。
(PP)
そのような中から出てきたデータを2、3お見せいたします。これは被爆者研究の固形がんの過剰相対リスクと線量。我々はよくいろいろなところで引用するのでありますけれども、大体1Gyぐらい当たった集団でリスクは0.5。すなわち、5割ほどがんのリスクは増えるということで、1998年までの7,851名のがん罹患の死亡の方の中で、848名が原爆放射線に起因するということが推定されておりまして、それから得られた数値であります。
もう一つは、1Gyでこれから計算しまして、がんの生涯リスクは10%増えるであろうということが言われておりまして、これが今の世界の放射線の防護基準の1つの基盤になっております。
それから、100mGy以上で固形がんの頻度は直線的に増えるということであります。
100mGy以下では、試算の点のところでばらついておりますが、統計的な有意性がないということも科学者内ではコンセンサスになっております。
(PP)
次に、このような100mGy以下ではどうなんだということで、100mGy以下で1%の変動ということなんですが、1%の増加を12万人で検証できるどうかという問題は非常に難しいと言うべきであります。がんの死亡の、例えば地域変動をとってみますと、我が国では高発がん県、低発がん県に簡単に分けることができまして、例えば長野県とか山梨県、あの辺りは低発がん県で有名であります。秋田県は全部のがんが高くて、主に胃がん関係が高いということで、それを押し上げております。大阪府は肝がん。大阪及び関西、伊勢は肝がんの頻度が高くて、これは多分肝炎ウイルスの感染頻度の問題であると考えられております。
それで、頻度の地域変動がどのぐらいあるかと言いますかと、高い県と低い県で10%ぐらいの差がございます。そのようなぶれがある中で、1%の増加を検証するというのは非常に難しいということがこれからもわかりますが、1%のぎりぎりのところまで追い詰めたということで、被爆者研究というものが世界標準になるゆえんであります。がん以外の疾患についても非常に長期の追跡で明らかにされました。
(PP)
これは数年前に世界がびっくりしたんですが、これまでがんが中心であると言われておったのが、心疾患であり、白内障であり、脳卒中であるというのが、追跡期間が長くなればなるほど明らかになってきたのは、線量に対して割と直線的に増える傾向が見えてまいりました。しかしながら、リスクの増加自体はそれほど高くありませんので、がんほどの増えではないということであります。これは被爆者研究が世界で初めて明らかにしたもので、それから放射線防護などのシステムがこれを中心にまた変わろうとしております。
(PP)
 胎児期の被爆に関しましても1950年~60年代にイギリスでやられた研究があって、それが一応世界のコンセンサスとなっておった時代があります。胎児は非常に放射線に感受性が高いのではないかと言われておりました。しかしながら、広島のデータを精緻に調べますと、胎児被爆の過剰相対リスクは小児被爆よりかえって低いのではないかという研究が近年明らかになっております。そのために、国際放射線防護委員会、ICRPと言いますが、いろいろなリスクの評価をやり防護の勧告を出す団体でありますが、その団体では、胎児被爆による発がんについて胎児は小児に同等、あるいはそれよりも感受性が低いという結論を出しております。これも被爆者研究が起きらかにした非常に大きいポイントであります。
(PP)
それから、2世の調査。これはこれまでの研究で、一応7万7000人を調べても、いわゆる遺伝的影響というものが見られていない。これも被爆者研究が何度も検証して明らかにしたことであります。
(PP)
このような被爆者研究から得られた科学的合意というものは、ざっくり言いますと、急性の確定的影響は数Gyの閾値線量で発症するということ。
長潜伏期の非がん影響というものは今、確定的影響に分類されておりますが、1Gyで約10%の頻度上昇で閾値はごく小さい、ないしはない可能性もあるというのが被爆者研究から出ているところであります。しかしながら、0.5Gy以下では自然頻度の変動の範囲に入ってしまって、はっきりとないとかあるとかいうことは言えないというのが実際の状況であります。
確率的影響、すなわち、がんでございますが、1Gyでは相対リスクが50%上昇し、1Gyで生涯リスク、死亡リスクが10%増えるということで、50と10でちょっと面倒くさいんですが、これは堪忍してください。それから、閾値はないとしてもよいという考え方であります。ただし、ないかどうかということは、そのすぐ下にあります0.1Gy以下でのリスクは自然頻度の範囲の中であるということで、これはわからない。科学的検証はできないと言うべきであります。胎児被爆は小児被爆同等あるいは低いということ。
科学的合意は0.1Gy以下でのリスクの有無は言えない。しかしながら、放射線防護を考える上では、0.1Gy以下でも直線的増加というものを想定しております。この矛盾に見えるものについては次のスライドで申し上げます。
(PP)
被爆者研究から明らかになった確定的影響と確率的影響をざっくりまとめます。
まず、確率的影響と言われるものは自然発症頻度が必ずあります。例えば数%から数十%の自然発症頻度があり、線量に対して直線的に増加するわけであります。だから、この絵で真ん中のところに点々の自然発症頻度というものがありまして、必ず自然発症頻度、この場合は死亡率で見たら30%、発症率で見ますと50、60%。そのような上に重なって直線的に上がっていく。そのために、この自然発症頻度の変動とか集団によって変わりますので、その変動の中に隠れて0.1までははっきり見えない。科学的にある、ないは厳密には言えないということであります。
これまで確定的影響とされてきた晩発的組織障害。緑色で書いたものですけれども、同様に自然発症頻度がものによっては数%、数十%、あるいは100%まであるというような状況で、放射線は薄く頻度を上げるということで閾値は0.5以上ではないかと言われております。
それに対して、急性の組織障害については自然発症頻度ゼロです。何もない健康な方が下痢をするでもないし、血を吐くわけでもなんでもない。そういうゼロが、ある線量以上を浴びるとどんと出てくるということで、閾値線量は0.5以上ということに、これは非常に丸めた数字でそれぞれの症状によって全部違いますが、このようなことが言われております。閾値以下では影響がない。これがコンセンサスであります。
(PP)
国際的合意がこれから必要になって、それは防護のために国際的な合意というものが必要になっております。科学的合意というものは、まず国際的合意形成が行われて、特にリスク関係を考えるためには国連科学委員会というところに上げられて、そこで更に厳密な検証をされて報告書としてまとめられます。世界21か国からの専門家の合議によって合意されたものを報告として刊行する。だから、最初の研究から科学的合意、国際的合意に行って、国際的合意から防護政策につくられていく。これが国際放射線防護委員会、先ほどのICRPといった組織でありますが、国連科学委員会でのリスク評価に準拠しまして、防護政策になる基準の考え方を勧告する。それが各国政府に行き、防護政策の立案というものになります。
(PP)
だから、最初、一番上のある程度合意された科学的知見。線量とリスクの関係はある線量以上で直線性があります。逆に言えば、直線性があるかないかというのは、ある線量以下ではわからないですということがそこに含まれております。
それが国連科学委員会に行きますと、全部をまとめて国際放射線防護委員会に上げていって、そのような国連科学委員会の報告に基づいて防護基準を勧告する。その場合は防護のため、低線量でも直接閾値なし仮説で、すなわち直線である。だから、ここで直線性があり、あるいはないとも言えるというものが防護という政策的なものを含んだ場合には、これはないと考えて評価しましょうという形で平常時の放射線防護がなされております。緊急時、今の福島のような場合はまた問題が変わってまいりまして、福島などの場合には実際浴びてしまった方々について、それは本当にリスクがあるんでしょうか、ないんでしょうかという議論を真面目に積み上げていく。そのような中で、広島、長崎のデータというものが非常に大きな意味を持っておる。更に、それが登場しておるというのが現状であります。
 以上であります。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。お二人の方からは極めて短時間のうちに要領よく、また御丁寧に御説明をいただきましたことを感謝申し上げます。
谷口先生からは原爆症認定審査に実際に携われている原子爆弾被爆者医療分科会の立場から、原爆症認定制度及び医療特別手当の趣旨、現状、審査の実情、更には問題点と御指摘をいただきました。また、丹羽先生からは被爆者研究についての科学的合意形成やリスク科学についての国際的合意形成について御説明をいだいた上で、放射線の健康医療の影響について、極めて御丁寧に御説明をいただいたところでございます。
それでは、ここでひとつ区切りとさせていただいて、委員の皆様方から御自由に御質問や御発言をいただきたいと存じます。いかがでございましょうか。どうぞ。
○草間委員 今日は谷口先生、丹羽先生にそれぞれ、谷口先生には医療分科会の御説明いただきまして、大変御苦労されている状況がよくわかりました。丹羽先生には原爆被爆者の調査の結果、ありがとうございました。
それで、谷口先生のに関連しまして事務局にお伺いししたいんですけれども、本日の谷口先生の御提案の最後にもありましたし、前回の伊藤参考人からも、健康管理手当と医療特別手当が分けてあること、一緒にしたらどうかというような御提案があったりしました。そこで、健康管理手当あるいは医療特別手当が、例えば健康管理手当3万数千円、あるいは医療特別手当の11万7,000円でしょうか。こういった金額がどういうことで決められたか。今日の谷口先生の御提案の中でも大変両者に差異があるということで、特に原爆被爆者の皆様に関しましては、医療費あるいは介護費等につきましては現物給付という形で行われているわけですので、健康管理手当と医療特別手当がどういう根拠でこういった金額が決められたかというのをお話しいただきたい。
もう一つ、そのほか社会保障給付金。例としては生活保護などがあるかもしれませんけれども、日本ではほかの社会保障給付金というのがどのぐらい支払われているかというのを是非お示しいただいて、同じ国のお金が出ているわけですので、その辺をお伺いしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○神野座長代理 事務局、いかがでしょうか。1番目の点、手当の金額の根拠及び経緯。2番目の点は、他の社会保障との給付についての実態ですが、別途御説明いただくのであればその機会でもいいですし、今、とりあえず簡単に御説明しておいていただけるのであればお願いできればと思います。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 手当の根拠や特に経緯については、昭和35年の医療手当ができたときからの変遷になりますので、それはきちんとした形でまた資料を提示したいと思っておりますが、健康管理手当と医療特別手当とではそもそもの考え方、趣旨が異なります。健康管理手当については、いわゆる原爆症の認定の方とは異なる形で、原爆の放射線に起因する、あるいは要医療というところまでは言えないけれども、そういった方についても、疾病により一般の方よりも多くの出費が必要となっている。それは当時の説明であると栄養補給費、保健薬費等といったかかり増しの費用もあるという中で、一定額の手当を支給しましょうという考え方で、昭和43年当時は月額3,000円だったわけですけれども、それが徐々に変遷を経て、今3万3,000円程度まで上がっているというものでございます。
医療特別手当については原爆症と認定された方々が対象でございます。こちらは原爆症と認定をされたというところで、ある意味、相当重度の方、重症の方でいらっしゃいます。また、生活面でも相当程度、稼得能力という面でも限られているという中で、生活面での安定を期するということも含めて額を設定しております。制度が始まった当時、特別手当と医療手当に分かれていたわけですが、その手当を統合する形で、これもさまざまな変遷がございましたけれども、昭和56年から医療特別手当ということになっております。現在、約13万7,000円になっておりますけれども、健康管理手当の額との違いというのは、今、申し上げましたように、特に生活の安定まで期するかどうかというところまで趣旨として持っているかどうかという違いが大きいところがございます。
これまでの経緯があって今の額が設定されているものでございますけれども、繰り返しになりますが、説明が行き足らないところがあると思いますので、これまでの変遷、根拠、額の設定の考え方については、資料を提示して説明させていだきたいと思います。
また、ほかに社会保障の給付金というのは、草間先生、例えばどんなイメージですか。
○草間委員 例がいいかどうかわかりませんけれども、生活保護とか、そういったものがどのぐらい支払われているかということをお伺いしたいなと思います。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 わかりました。そういう意味では、生活保護の考え方。生活保護でも状況の方によって額が異なると思いますけれども、生活保護でどのような形でお金が出ているのか。また、この手当と生活保護の給付金との関係と言うんですかね。それを収入と認定するかどうかという話もあるかと思いますので、その辺の考え方も含めて、資料として、また御提示させていただきたいと思います。
○神野座長代理 前の資料は、これをもうちょっとバージョンアップしたものがある。前にも一応出ているんですよね。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 第1回目で、本当に概要的な健康管理手当について、あるいは医療特別手当についてという資料は事務局からお示しをさせていただきました。ただ、これは額の根拠とか変遷まできちんと書いたものではございませんので、そういう意味で、もう少し提示をしたいと思います。
○神野座長代理 石先生、どうぞ。
○石委員 両先生の関係と言いますか、意識の中に、この2つを御説明があった中で何か関係などを聞いてわからないんですけれども、谷口先生がやっておられるのは一番現場の生々しいところで大変苦労されているわけです。そして、何か足をこうするとか、具体的には物差しが必要だとお考えだと思いますが、そのときの物差しというのは、恐らく丹羽先生がお出しになっているような科学的な知見ですとか、国際的な合意を得たものがあれば本当はいいんでしょうけれども、そこまでいっているんですか、いっていないんですかというのが私の質問なんです。具体的に科学者がやっている学問の世界の話が、現場のいろんな政策的なジャッジメントをするときに役に立っているのか。あるいはこれはまた別の問題だ、そういう意識はないんだとお考えになるのかどうか。それを確かめたいと思いまして、質問させていただきました。
○神野座長代理 どうぞ。
○谷口参考人 勿論何らかの物差しがないと審議できないわけでございまして、一応公開したものがございますけれども、ある程度の物差しの中で審議をしております。ただ、先ほどの丹羽先生のお話を改めて聞かせていただきまして、やはり科学に立脚した部分とそうではない部分が混在しておりまして、特に平成20年の新しい審査の方針。今、やっております審査の方針を、我々としては受け入れたという言い方をしておりますけれども、その方針でやるようになってからは、その前はいわゆる原因確率と言って、幾分なりとも科学に立脚した審査方針でやっていたわけです。現在は大きくかじを切って、救済という言い方は変かもしれませんけれども、より被爆者の方々を広く認定するという立場に立って、大きく広げた物差しでやっているというところが現状でございまして、なかなか科学者の集団としては、内心違和感を覚えているというのも事実でございます。
○神野座長代理 ありがとうございました。
丹羽先生、補足して丹羽先生のお立場から御意見をいただけますか。
○石委員 具体的な物差し等々に役立てようというような問題意識かあるのか、ないのか。別の問題なのかを聞きたい。
○丹羽参考人 私個人では、被爆者の問題というのは、被爆者個人の方にとってはやはり御経験なさったことが一番大きいわけです。我々、科学者というのは、その中で放射線の部分だけをどう切り出して、それの影響を見るかということが一番大事だと思っておるんです。しかしながら、被爆者の方にとって、放射線もあれば、爆風もあるというものであり、それは混然一体となっておるものでございます。この場合の放射線起因性というものを、逆に言えば、非常にきつく言われると、多分被爆者の心情とハート、それから理性ですか。そこの間のそごというものが、私の話したことと谷口先生のお話になったことのギャップであろうかと思っております。
○神野座長代理 ありがとうございました。
どうぞ。
○荒井委員 私も新しい審査の方針になりましてから、主として、被爆の場所あるいは入市の場所、時間的な関係の事実認定関係でお手伝いをするということで分科会に参加させていただいております。谷口先生から、今日、お話いただきましたように、大変な時間的な制約の中で、あえて言うと、ある意味学問的良心との葛藤の中で頑張っておられるということで敬服をしている次第なんですが、今日は2点お尋ねさせていただきたいと思います。
1つは、主として、今日のお話は今の法律あるいは新しい審査の方針の下での放射線との起因性の関係についての御説明だったと思います。もう一つの要件としての要医療性という問題がございますけれども、審査の中で専門の先生方の見る、いわゆる要医療性の御判断と申請をされる被爆者の方々の、まだ投薬は受けているんだという場面での要医療性の感覚と少しギャップがあるのではないかという気がするんです。今後の制度の在り方を考えていく上において、要医療性の問題については現状のままでよろしいというお考えなのかどうかが1つ。
もう一つは、今日の御説明の終わりのところで、被爆者援護施策であるがゆえに、放射線との関わりについてある程度担保されなければならないがという御説明がございました。大変難しいところであろうと思うんですが、ある程度担保ということをどう制度として実現していくかについて、何か具体的なお考えがございましたらお教えいただきたい。この2つでございます。よろしくお願いいたします。
○神野座長代理 2点、お願いできますか。
○谷口参考人 確かに要医療性のギャップというのは、私どもが審査いたしまして認定と却下の処分を出すわけですけれども、却下の処分を出した方々の中から異議申立てというのがときどき出てまいります。異議申立てについても私どもが審査をしているわけでございますけども、その中で、自分は治療を受けているのに要医療性なしという判断で却下になったのはおかしいという御意見が多々見られるのも事実でございます。
私どもが考えております要医療性というのは、もともとの疾患に対する治療が行われているかどうかということが1点。
もう一点は、例えば悪性腫瘍であれば、現時点で再発の可能性があるかどうか。ですから、再発の可能性を目途として、いろんな検査を、例えば数年にわたって検査を密に行っている期間といったものは要医療性ありと判断するわけです。しかし、明らかにその疾患が治癒したであろうと思われる期間で、例えば病院に通って年に1回、いわゆる健康診断的にやっている。これはこういう制度以外の方々もやっておられることで、それを要医療性の中に入れるかということに関しては少し疑問に思っているというところで、原疾患に対する治療が行われているということと再発の可能性がある期間は要医療性を認めようということで現状はやっております。よろしいでしょうか。
○荒井委員 ありがとうございます。
○谷口参考人 もう一つ、放射線起因性についてのある程度担保というのは、我々の医学者、科学者としてのぎりぎりのところでありまして、先ほど100mSvから直線的に上がるというお話がありましたけれども、それこそ1mSvぐらいのところで議論をしているというのが現状でございます。全く放射線の起因性を考えずにやるのであれば、我々科学者は要らないわけで、本当に事務方だけで審査をすればいいわけです。私どもがその役に任じられて審査をしているということは、やはりある程度の科学的な担保を見ているというところがベースにあるのではないかと私は思っておりますし、恐らく分科会の先生方もそういう思いで御協力をいただいているのではないかと考えております。
○荒井委員 ありがとうございました。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。田中委員。
○田中委員 私からお二人に御質問があるんですが、まず、丹羽参考人はどういう目的で今日の報告をされたかというのがわからないんですけれども、私がおもんぱかると、恐らく谷口先生もおっしゃった、原因確率というのは正しいんだ。それを採用されなかったことについて、谷口先生は若干不満の言葉を述べておりましたけれども、原因確率を出してきたABCC、放影研の研究は国際的に認められているんだということを丹羽先生は主張されたんだと思います。
そのことだけは事実なんですけれども、もともとABCCの基礎的なデータがどういうふうにとらえたかということを考えると、これは残念ながら、米軍の意図があって、初期放射線の影響だけしか見ていない。ですから、線源から発せられる線源の影響だけについては、すばらしい研究であったかと私は思います。私も科学者の端くれですので、そう思います。しかし、今、問題になってきている残留放射線がこの研究の中に全く考慮されていない。だとすれば、今、福島でも問題になっておりますけれども、この研究に大きな欠陥があったと私は思っているんです。そのことを科学者は認めないといけない。とにかく初期放射線という線源から放出された放射線の影響だけは、かなり綿密に実験までやって求められている。しかし、繰り返しになりますけれども、残留放射線の影響は全く考慮されていない。それをどうカバーしていくことかということを科学者が謙虚に反省しながら、これを活用していかなければいけないんだと私は思っております。
そういう意味で、原因確率というのはあくまでも目安。もともと確率そのものが認定する場合の目安にしか過ぎないわけです。防護のために使うわけですから、ある人間の個人の起因性を求めるものではありません。だから、防護のために使うんですけれども、あくまでも目安であるということを、やはり最初に丹羽先生はおっしゃるべきでなかったかと私は思っております。
 それから、谷口先生にですけれども、今、申しましたように、原因確率はあくまでもリスクの問題です。だから、それを被爆者の起因性にそのまま適用するというのは間違っているわけです。防護のためのリスクの数値なわけですから、それを原因確率という数字で出して、しかも、機械的に適用するというのを、最初の新しい審査の方針を決めたときには採用してしまったわけです。そこにもともとの間違いがあった。
その新しい方針を決める前の、なぜ決めなければいけなかったかということについては、最高裁の判決があって、見直しをするときにそういう判断をしてしまった。これは決定的な誤りです。最高裁の判断は、そういう数字を機械的に適用すべきであるとは言っていないんです。むしろそれに必ずしも影響しないでもよろしいということを言っているわけです。それを原因確率という数字を出して機械的に適用した。これがやはり被爆者の、私は被爆者でもありますけれども、怒りを買ってしまったということです。
それでも、なおかつ見直しがやられて、与党PTの方針で決まったわけですけれども、皆、見直しをやっている段階で、丹羽先生はあくまでも原因確率というものが正しいんだ。それから、残留放射線の影響は調べることはできないんだということを主張されたと私は記憶しております。そうでなかったら申し訳ありませんけれども、そういうことを考えれば、谷口先生、やはり原因確率に物すごい郷愁を持っていらっしゃるようですけれども、それはきっぱり捨てていただかなければいけないと思っています。そういう立場で考えていただかないと審査はできないんだと私は思っております。
○神野座長代理 第1の質問は丹羽先生にお答えいただいた方がよろしいでしょうか。その後に谷口先生、お願いします。
○丹羽参考人 まず第1に残留放射線のことですが、残留放射線の扱いというのは今のところ、まずDS86でやられておるということは御存じだろうと思います。西山地区に関しても、たしか長崎が市だったと思いますが、非常に緻密な研究をやっておられて、特に染色体異常の頻度も解析されております。少なくともそのようなデータから示すところでは、これぐらいの線量というのが出ておりまして、それは直接被爆の線量を大幅に変えなければならないということではない。そういう評価が下された結果、今のDS02になっておると私自身は理解しております。
そのほかに、入市被爆の残留被爆に関して、今中先生が随分と精緻な研究をやっておられます。彼のデータを拝見しても、例えば原爆が落ちた後の何日目に入って、市内をこのように動いてという解析がなされていて、そのデータである程度の推定がなされていて、それが非常に高いものであるかということになりますと、今のところはそのようなデータであるとは私は理解しておりません。
もう一つは、歯のESRのデータがまだ残念ながら論文としては出ていなかったと思いますが、入市被爆の方についても一応解析されております。そのようなデータから合わせて、残留放射線の問題というのは非常に大きな寄与をする。今の線量の倍になるとかというものではないと私は研究者として理解しております。
それで、私が申し上げた今日の話は、あくまで放射線という要因だけを切り取って、それと健康影響の関係が今、どこまでわかっているかということを、私自身がこれまで理解したものに基づいて申し上げたのでありまして、原因確率云々に関しては、これは言うなれば政策的な判断である。我々科学者の立ち入る部分ではないと実は思っております。だから、国が原因確率を捨てる捨てない。これは別な話でありまして、私自身はマウスを使った実験を随分長いことやっておりましたし、広島にもおりました。それで、放影研のデータをいろいろ勉強させていただいて、非常に感銘を受けたのであります。そういうことで、私が今日、申し上げたかったことは、放射線の人体影響というものを示すに、広島でのデータというのは世界標準になるまで追跡されてすばらしいものであるということだけを申し上げるということで、それ以外の部分についての言及は私自身はしなかったと理解しております。
以上です。
○神野座長代理 後者の問題について、谷口先生、何かございますか。
○谷口参考人 私は別に原因確率に郷愁を持っているわけではございませんで、やはり現場といたしましては、審査をしていく上で何らかの物差しが要るというのはやむを得ないことでございます。その1つの一助として扱って、今、田中委員がおっしゃった、前の審査方針のときはそれをある程度使っていたということは事実でございます。ただ、機械的に当てはめたというお言葉でしたけれども、実は全くそうではございませんで、先ほど丹羽先生もおっしゃった、残留放射線の推定の線量というのはほぼわかっておりましたので、それは全部つけ加えて審査にしております。ですから、いわゆる原因確率だけを機械的に当てはめていたことはないということは、ひとつ申し上げておきたいと思います。
それから、現在、更に平成20年度の審査の方針が新しくなったところで、実はその審査の方針を決めたときは、委員の先生方から、いわゆる科学というところから大きく足を踏み出してやっていくんだという意見が出まして、そういう立場で、現在は広く厳密に科学的な知見にこだわらずやりましょうというところでやっている。だだし、現場としましては、何らかの基準と言いますか、物差しが要るということだけは御理解いただきたいと思っております。
○神野座長代理 それでは、高橋先生、どうぞ。
○高橋滋委員 まず、谷口先生にお聞きしたいんですが、先ほどC型肝炎の話を言及いただきました。これは新しい審査でも放射線起因性が認められる肝炎となっていると思うんですけれども、C型肝炎に言及されたポイントは何なのかなということを1点お聞きしたいということ。
 それから、新しい指針でも2号要件というのがあるはずでございまして、1号以外に2号で総合的に判断するという一般条項があるわけでございます。その辺の2号要件の運用について少しお教えいただきたいというのが、谷口先生に対しての御質問でございます。
 丹羽先生について1点だけ細かいお話ですが、14ページのスライドでGyの話が出ています。やはりSv換算をするんだろうと思うんですけれども、通常、長崎の場合にどのぐらいのSv換算になっているのかなということを、その被爆の状況によっていろいろと違うと思いますが、どのぐらいのSv換算になるのかなということを教えていただきたい。
以上2点、合計3点です。
○神野座長代理 それでは、最初の2点。C型肝炎の件と2号要件の件について、谷口先生。
○谷口参考人 C型肝炎につきましては、我々が審査をしている疾病がたくさんある中で、この場合はウイルスですけれども、いわゆるほかの放射線以外の原因が明らかであるということで例に挙げさせていただきました。
総合判定の話、2号要件の御質問ですね。
○高橋滋委員 済みません。C型肝炎で認定されているということですか。それとも、認定されていないということですか。
○谷口参考人 認定されております。
○高橋滋委員 その根拠はどういう根拠ですか。
○谷口参考人 ですから、その根拠は科学的な根拠ではないということです。いわゆるC型であろうと、B型であろうと、現状は肝炎も認定される疾患の中に入っているということです。
総合認定の2号要件の件ですけれども、まず被爆要件でございます。オープンにされています2km以内、100時間以内の入市という要件がございますけれども、これは特に法曹委員の先生方に事前審査をしていただいております。例えば3.8km直爆とか、120時間ぐらいで入市とかいうようなことが手帳上はあっても、古い、いわゆる原申とかをずっと見ていただいて、それよりも早く入市したのではないかとか、あるいはそれよりも少し近いところで手帳ではない要件はないかということを個々に精査をしていただいております。そういうことで、手帳上は3.8kmとか4kmの直爆であっても認定に至るケースがあるということが1つでございます。
もう一つは疾患に関しましてですけれども、疾患に関しまして、今、オープンにしているがんとか白血病、いろんな疾患をしてあります。あれにオープンになっていないものの中でも、いわゆる疾患の特異性と言いますか、その被爆者の方々に対する悪い影響と言いますか、そういったものを勘案してオープンにされていない、例えば脳腫瘍。良性の脳腫瘍とかいったものであっても認定になっている。あるいは再生不良性貧血といったものも認定の対象になっている。それが今のところの2号の運用であると御理解いただければと思います。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、Svの問題について。
○丹羽参考人 この14ページのものはミスプリというか、昨日の晩につくっておりまして、数値を全部Gyにするべきところを、しかも、ただのGyでmSvとかそういうことでないようにしなければならないのを残しております。
Gyにした理由は、1つは広島、長崎の場合は全身被爆であるということです。それと、Sv表示にするために必要な要因が2つございまして、1つは普通のγ線以外の放射線。すなわち広島、長崎の場合、中性子線なんですけれども、中性子線の寄与はどれぐらいであるかということが問題になります。これの場合は中性子線の寄与が少なくとも低い。
もう一つは、疫学では、Sv表示というのは下手をすると非常に誤解を招くということで、最近は疫学では全部Gy表示でやるということになっております。そのために、ここのところで下の線で線量、ちょんちょんでmSvというところを全部Gyにしていただいて、500という数値は0.5、0.5に変えていっていただきたいと思います。
以上です。どうも失礼いたしました。
○神野座長代理 よろしいですか。
それでは、どうぞ。
○田中委員 追加の質問と言いましょうか、私が申し上げましたのは、ABCCの調査の段階で放射線量を推定していくときに、被爆者たちが残留放射線の放射性降下物による残留放射線の影響を受けていたはずなんです。ところが、それを勘案することができなかった。それが基になっているデータであるということを1つは強調したかった。
2つ目は、疫学調査をやっていくわけですけれども、コントロール。要するに、被爆していない人と被爆している人の比較をする場合に、例えば比較的遠距離、3kmとか4kmの人たちをコントロールとして使っているわけです。そうなりますと、今の福島などを見ていただければわかるように、3kmとか4kmという被爆者たちは大量に放射性降下物を浴びているわけです。そういう被爆者であるわけです。ところが、その人たちがコントロールになってしまった。そういう疫学の結果というのは、やはりそういう弱点があるということを認めていただかないといけないというのが私の言いたかったことです。丹羽先生がおっしゃった黒い雨地域の、長崎の西山地区とか高須地区の人たちについては、審査のところと言いますか、DS86のところで付加する。付加するという線量の評価をしているわけですけれども、もっと被爆者自身が放射性の降下物の影響を受けているということを考えていただかないといけないというのが、私の言いたかったことであります。
○神野座長代理 丹羽先生、何かコメントございますか。
○丹羽参考人 御意見、十分受け止めます。ただ、放射線の影響というのは、線量が幾らであれば身体的影響はどうであったかということの関係をつけるというのが、放射線の健康影響なんです。その場合に線量の寄与がどれぐらいであるか。勿論全部足し算していきます。足し算していって、その寄与がどういうことであるかという形を検討した結果として、一応、今のデータがあるということ。
それと、まず福島の場合を今、言及なさいましたけれども、あれの場合は原発から徐々に吹き上がったものが雲となって飛んでいったという状況。それと、実際、原爆の場合で吹き上がったという状況とは当然違うということで、遠距離に関しての線量測定も十分やっておると私自身は理解しています。だから、その内部被曝とか残留放射線の影響があったというものを込めて、その皆様方がおられて、皆様方の健康状況があり、それを踏まえて実際はデータが出ておると理解しております。
それで、特に遠距離に関して高いというのは20年、30年前から問題で、この被爆者研究の一番当初に、どの集団をコントロール、対象として取るかというのは大議論がありました。実は郡部に行くと、市内の居住の方と疾患のパターンが変わってまいります。がんに関しては郡部の方が高いです。広島という県において、農村部の方々だと思うんですけれども、その辺りでそれではどういう方々をとろうか。そうすると、実際は当時広島の市内におられなかった広島の市民という方々とか、少し遠距離の方で推定線量はこれこれ以下という方々を対象集団として、そのような対象集団として使うにおいては、両者においてもそごがないという議論は、非常に初期のときになされておると理解しております。がんの頻度だけ取れば、郡部の方で高く、だんだん市内に近づくにしたがってリスクが落ちてきて、また市内に入って線量が高くなると上がるという傾向があるというのは20年以上前に研究されております。それに基づいた対象群の取り方であるということで、多分その辺りは初期の論文の著者、チャールス・ランドという方なんけれども、非常に私は尊敬する研究者なんですが、その方の解析というものは、私は科学者として信用に足りると実は思っております。
○神野座長代理 申し訳ありません。予定の時間をかなりオーバーいたしておりますので、この議題につきましては、ここら辺で打ち切らせていただきたいと思います。谷口先生、丹羽先生、本当にどうもありがとうございました。
 引き続きまして、裁判官御出身の方からヒアリングをちょうだいするという趣旨で、岩井先生から御発表をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


○岩井参考人 岩井でございます。裁判官として長く裁判に携わっていた関係で呼ばれたのかと思いますので、この種の事件に関する裁判の状況について、主として一般的なことになりますが、簡単にお話をさせていただきたいと思います。
 まず第1に、民事訴訟の手続の概略を申し上げようと思います。
被爆者援護法による認定申請却下処分の取消しの訴えというのが普通の裁判のスタイルで、これは実は行政事件訴訟であります。行政事件訴訟につきましては、行政事件訴訟法という法律で扱うことになっておりますが、行政事件訴訟法は行政事件に特有な点のみを規定しておりまして、一般的なことについては民事訴訟の例によると定めております。したがいまして、手続は一般的には民事訴訟法によって行われるということになります。
次に、手続き流れのイメージをつかんでいただくために申し上げますと、まず原告が訴えを提起します。原告になるのは認定申請をして却下された被爆者の方で、被告になるのは現行法では国ということになっていますが、その原告が、却下された処分の取消しを求めるという趣旨の訴状を作成しまして、裁判所に提出するということになります。裁判所の方でその訴状を被告に送達する。そして、第1回の口頭論弁期日が開かれるわけですが、やや大きい訴訟事件では、そこで進行協議期日というものが設けられて、事件全体の進行について協議が行われ、審議の計画が定められることが多いかと思います。第1回口頭弁論期日におきまして、原告は訴状を陳述し、被告は答弁書を陳述して、双方が基本的な書証を提出するという扱いになります。
その後、争点整理、証拠の整理の過程がありまして、それを現行法では大きく口頭弁論の形で行う準備的口頭弁論の制度と弁論準備手続という、法廷ではなくて、準備手続室というようなところで行うスタイルのものと2つ設けられておりますが、そこでそれぞれが主張を応酬し、書証等を提出し合って争点を整理するという手続が行われます。そして、その最後に、争点に基づいて、証人や当事者のうちのだれを調べるかということを決定して、準備的口頭弁論を終了し、または弁論準備手続を終結するという扱いになります。
そして、その後に決定された証人や当事者本人について法廷で証拠調べを行うことになっております。現行法では、人証の証拠調べは集中して行うということになっております。また、争点整理が行われた結果として、証人は重要な証人に絞られるという傾向があろうかと思います。証人と言っても事実の証人だけではありませんで、科学的な知見が大きい争点になっている場合には、科学的知見に関する専門的な証人も申請され採用されることもございます。
そのようにして証拠調べが終わりますと、最終的に最終弁論が行われます。これは証拠調べの結果を踏まえて、当事者双方の最終的な主張をまとめて陳述するというものです。そのようにして口頭弁論が終結し、裁判所の方で判決書を作成し、その判決を言い渡すというプロセスになっております。更に、その判決に対して控訴、上告が行われて、最終的に確定するということになるのが民事訴訟あるいは行政訴訟の一般的な流れであります。
 行政処分の手続と訴訟手続を若干対比、対比と言っても私は行政処分の手続に詳しいわけではありませんが、対比してみますと、今申したように訴訟手続では必ず対立した当事者がいて、対立した当事者が主張、立証を応酬して、それに対して裁判所が第三者的な立場で判断するというシステムを基本としております。それらは先ほどの弁論準備手続は別として、基本的には法廷で行われ、手続も民事訴訟法及び行政事件訴訟法の規定に従って行われるということになっております。
次に、法律関係の判断に関する裁判所の基本的な建前について申し上げたいと思いますが、裁判所は御承知のとおり、法と証拠に基づいて判断するというのを使命としております。すなわち証拠に基づいて事実を認定する。基本的に証拠以外のもので事実を認定するということはない。そして、認定された事実に法を適用するということが裁判所の使命であります。それ以外の事情によって判断をすることは原則としてないということになっています。すなわち裁量的な判断、あるいは政治的な判断をすることはありません。もっとも、行政事件訴訟法ではいわゆる事情判決という制度が設けられておりまして、諸般の特別な事情を考慮して、なお、裁量的に請求を棄却するという制度があるという特色はあります。しかし、事情判決の制度は、大きい公益的な影響の出るような事件について行われることが予定されておりまして、原爆症の認定に関する事件ではまずないと考えております。
次に、裁判所の在り方として、当事者の主張に基づき、当事者の提出した証拠だけを基礎に判断するという原則がございます。これは、もともとは民事訴訟の原則であります。民事訴訟では一般市民あるいは企業との間の紛争を扱うということから、当事者にそのような主張、立証のリーダーシップを委ねるということで十分であり、また、かえって当事者にそのようなリーダーシップを与えた方が、真実を究明し適正な判断を得るために適しているという経験によっているかと思います。その結果、当事者の主張した事実以外の事実は判断せず、また当事者の提出した証拠だけを基礎に判断するという原則が行われております。
行政事件訴訟も基本的にはこの民事訴訟の例によるわけですけれども、行政事件の特色としては、私人間の紛争を扱うわけではなくて、公益に関する事項を対象とするという面があります。しかし、先ほど申したように、民事訴訟は当事者のリーダーシップに委ねることがかえって真実を究明し、適正な判断を導くのに適しているという経験に基づいていることから、行政事件訴訟でも基本的にそのようなシステムをとっております。我が国の行政事件訴訟はアメリカの制度をモデルにしておりまして、アメリカでは基本的に行政訴訟を別枠のものとは見ていないということでありますが、そういう思想的な背景もあるかと思います。
しかし、行政事件については先ほどのように公益的な色彩もありますことから、民事訴訟の例外として職権証拠調べを行うことができるという建前になっております。これは、1,訴訟の対象が公益に関する事項であるということ、2,行政事件訴訟の場合には私人が原告となり行政機関を代表する国が被告となるというようなことから、立証等の能力に差異があるということにかんがみ、実質的な公平を保つべきであると考えられることから、職権証拠調べが設けられたと説明されております。
なお、このように訴訟手続を当事者に任せるというと、当事者の流れのままに訴訟がどこに行くかわからないというような御心配もあろうかと思いますけれども、ここに釈明という制度があります。裁判所は当事者の主張に対して質問を発し、それが適正であるかどうか疑義を抱いたような場合には、当事者にそれを釈明して主張を促す、あるいは立証を促すという制度があって、この釈明制度と相まって訴訟が適正に運用をされることが期待されているかと思います。行政事件訴訟については、更に、資料を持っております行政庁側に資料の提出を求めるような釈明処分の制度も設けられております。
以上が、民事訴訟の手続についての概略でございます。
 次に、第2として、原爆症認定の一般的な法律上の要件について簡単に申し上げます。
被爆者援護法の10条の要件がありますと、医療給付が行われるということになっております。そして、医療特別手当の支給もこの要件を具備することが必要とされております。更に、要件を満たせば直ちに医療給付等を請求できるという扱いにはなっておりませんで、これらの給付等を求めるためには、援護法11条で、医療の給付を受けようとする者は、あらかじめ、厚生労働大臣による当該負傷、又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の認定を受けなければならないとされております。
ここで言う認定は放射線起因性の認定だけではなく、要医療性を含めた認定であると解釈されています。したがいまして、11条の認定が給付を受けるための決め手となるわけであります。申請をして認定が得られれば、それによって医療の給付等を請求できるわけですけれども、その認定が却下された場合には、そのままでは医療の給付や医療特別手当の支給を受けることはできませんので、認定申請を却下された被爆者は、裁判所に対する訴えによって、認定申請却下処分の取消しを求めるということになります。その取消判決が得られ確定することによって、厚生労働大臣による新たな認定がされることになり、その際には、判決の趣旨に沿った判断をしなければいけないという拘束力が生ずる建前となっておりますので、そこで取消しの判決が機能するということになっております。
それから、このような認定申請の却下処分の取消訴訟において、要件は、放射線起因性があることと要医療性があることですが、これらの主張、立証責任はどちらにあるのかという点が問題となっております。最高裁の松谷訴訟判決によりますと、この場合も、申請の要件は原告である申請者の方が主張立証すべきであるとされております。これが認定申請却下処分に対する訴訟のシステムと要件です。
次に、司法判断は、これらについてどのように判断するかということですが、行政的な判断との違いというものを意識しながら考えてみますと、大きく見た場合には、個々の申請、あるいは個々の訴訟の事案が法律上の要件に該当するかどうかを判断するという点では、司法判断と行政判断は同じものと考えられます。しかし、行政判断では大量の申請に対し、適正公平な処分を行うということが課題であろうかと思いますが、そのために、申請に関する処分について審査の基準を設け、その審査の基準によって判断するというシステムが予定されております。本件のような科学的な認定のための審査の基準(方針)に直接該当するのかどうかわかりませんが、行政手続法において、審査に対する判断の行政処分においては審査の基準を設けるべきことがうたわれております。
これに対して、司法判断の場合には、法の要件の決め方によるわけですけれども、法律自体が具体的な基準や認定方法を明示している場合、あるいは法律が政令、省令等に判断の基準を委ね、その委任に基づいて政令等で判断の基準を定めている場合には、それらは法令の一部ですので、裁判所もそれらに基づいて判断をするということになります。しかし、そうでなくて、法律で一般的な要件を定めているような場合には、裁判所はその法律の規定そのものを解釈適用することによって判断するということになります。
被爆者援護法の場合には、その認定の基準を具体化した規定はなく、また政令等に基準の設定を委ねておりませんので、裁判所が10条、11条の要件そのものを直接判断するという建前になっております。それでは裁判所の判断も、行政庁の審査の基準(方針)を全く無視して独自に判断するかということですが、決してそうではないと言えるかと思います。例えば最近の判決で東京高裁の平成21年の判決がございますが、これは新しい審査の方針に対するものではなくて、旧審査の方針を対象にしたものでございます。ここでは審査の方針を尊重し、その当否を検討した上で、審査の方針をそのまま適用することが妥当かどうかを検討し審査の方針をそのまま適用することが妥当でない場合に、裁判所としての別途の判断を行っていると言うことができるのではないかと考えます。
 次に、3番目として、原爆症の司法審査における判断の枠組み、松谷訴訟判決等について申し上げます。
これも皆様十分御承知のことについて申し上げることになるかもしれませんが、レジュメに書いておきましたように、1点の疑義も許されない自然科学的な証明ではないが、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することである、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得ることを必要とする、放射線起因性についても、相当程度の蓋然性さえ立証すれば足りるというのではなくて、高度の蓋然性を立証することが必要である、としたものでございます。
松谷訴訟判決に至る判例の流れを若干申し上げますと、まず、民事訴訟あるいは行政訴訟の原則として、裁判所は、証拠がどのような証明力を有するかという点については裁判官の自由な心証によるという原則がございます。立証の程度についてある事実が証明されたというためには、裁判官あるいは一般市民が確信を得る程度のものでなければならない、一応確からしいという推測を生じさせる程度のものでは足りないというのが、古くから確立された理論でございました。そして、これは裁判官の個々的な基準というのでは妥当でないのであって、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を用いることが必要であるということが、民事訴訟法の理論として、松谷訴訟判決以前に確立していたところでございます。
そこに続きまして、いわゆるルンバール判決という事件がございました。これは民事訴訟の医療過誤(不法行為と言われるものですが)に基づく損害賠償請求における因果関係の立証の程度に関する判例でございます。不法行為に基づく損害賠償では加害行為(医療過誤では医療行為)と結果(被害の発生)との間に因果関係があることが必要なわけです。化膿性髄膜炎に陥った子どもに対してルンバール治療を行ったところ、発作が起きて一定の障害が発生した場合に、そのルンバールという治療法と結果発生との因果関係があるかということが問題になった事件です。原審の高等裁判所は、ルンバール治療によって生じた可能性もあるけれども、もともとの化膿性髄膜炎が悪化した可能性もあるとして、結局、因果関係を否定したわけであります。それに対して、最高裁判所はこれを覆して因果関係があるとしたわけですが、ここでこのような医療過誤に基づく因果関係の立証の程度について、要旨、次のように判断しました。
訴訟上の因果関係の立証は一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認できる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持つことができるものであることを必要とし、かつ、それで足りるという一般論を提示したわけであります。これは従来の民事訴訟の理論を、この医療事故の因果関係に当てはめたものでございますが、最高裁判所調査官の判例解説などによりますと、因果関係の立証は自然科学的医学のメカニズムを解明するものではなく、不法行為責任を負わせるための、法的な評価としての因果関係を明らかにするものであるということを言っております。
そして、ルンバール事件は不法行為に基づく損害賠償請求事件に係るものであり、行政訴訟のものではなかったわけですが、その後、松谷訴訟がありまして、この事件では、本件と同じような認定申請を却下した処分の当否が争われたものです。この事件では、原審の福岡高裁は、この種の事件ではルンバール事件のような高度の蓋然性までは必要がなく、相当程度の蓋然性を持って足りると判断したわけであります。それに対して被告行政庁側が上告をしたわけですが、最高裁は原審の判断のうち理論の部分は破って、行政訴訟(認定申請却下処分の取消訴訟)においても、ルンバール事件と同じ基準を適用すべきだとしました。
その要旨を述べますと、要医療性と放射線起因性が11条の認定の要件であるということが第1点。申請拒否処分の取消訴訟においては、被処分者の側が認定の要件を主張立証すべきであるというのが第2点。第3点として、放射線起因性の立証の程度は、民事訴訟の因果関係の立証の程度と異ならないとしたわけであります。そして、ルンバール事件の判決をここで繰り返しまして、訴訟上の因果関係の立証は一点の疑義も許さない自然科学的証明ではない。因果関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することである、高度の蓋然性の判定は、通常人が疑いの差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得ることが必要であるということを言っております。そして、その認定は経験則に照らし、全証拠を総合検討して行うという一般論を提示いたしました。
ここでちょっとコメントをさせていただきますと、最高裁は、そのようにして原審の福岡高裁の判断基準(相当程度の蓋然性)はとらず、高度の蓋然性基準をとったのですが、事案の解決といたしましては、原審福岡高裁の認定した事実に基づいて(最高裁は事実認定というのはしないことになっていますから)、最高裁の基準とした高度の蓋然性が認められるとしたものであります。
 4番目に、司法審査における具体的事実の判断の視点について申し上げます。
司法は法的な判断をする場であり、科学的な真実を究明する場ではないということが言えるかと思います。これは、先ほどの最高裁判決のルンバール事件、あるいは松谷訴訟判決でそう言っております。そうでありますが、科学的知見が基礎になるということはどの判決も認めておりまして、裁判所としては、確立された科学知見を踏まえて判断するということになろうかと思います。
この辺の判断の裁判所のスタイルにつきまして、先ほど来申し上げております東京高裁の平成21年判決というのがございますので、それを紹介いたします。この判決は、科学的知見が不動のものであればこれに反することは違法であるが、科学知見の通説に対して異説がある場合は、通説的見解がどの程度の確かさであるかを見極め、両説ある場合においては両説あるものとして訴訟手続上の前提とせざるを得ない、科学的知見によって決着がつけられない場合であっても、因果関係なしとすることはできないのであって、最高裁の言うとおり、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果を招いたかどうかを肯定できるような高度の蓋然性があるかを判断するということになると言っています。
 戻りますが、この辺は松谷訴訟の最高裁判決も、一般的には科学的知見の評価に言及していませんが、問題となりました閾値論とDS86の基準について触れております。これらを機械的に適用すると、松谷訴訟の松谷さんの症状に対する放射線の影響が否定される可能性があるが、DS86も未解決の部分を含む推定値であり、見直しが続けられている。閾値論とDS86の機械的適用では、その原告に現れたいろいろな症状を十分説明することができない、閾値論とDS86の機械的な適用をすると、治療方法が悪かったということになるが、それだけでは合理性がないのではないかということを言いまして、原告の脳損傷の拡大や脱毛の事実に照らすと、放射線を相当程度浴びたため脳損傷が重篤化したか、治癒能力が低下したと認めることが経験則に合致するという言い方をしております。
 この程度で私の報告ということにさせていただきたいと思います。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
私の議事運営の不手際で既に終了時間を迎えようとしておりますので、ただいまの御発表について、できるだけ簡潔に御質問いただければと思います。どうぞ。
○荒井委員 ありがとうございました。わかりやすい説明をいただきました。
ただ1点、司法は個別判断、行政は言わば大量的に公平にという、そこがメインだということもよくわかりましたし、最高裁判決の高度の蓋然性についての御説明も理解できたのですが、やはり司法の判断と、行政と言いますか、医療分科会での判断との食い違いということが結果としてはかなり出てきていて、この検討会でも大きな関心事の1つになっていると思うんです。科学的知見だけで司法判断があるのではないというのはそのとおりだと思うのですが、やはり高度の蓋然性を肯定する支えとしては、科学的知見なるものが大きな判断の基礎に置かれるのではないか。先ほど丹羽先生のお話からも、科学的な合意形成についてのプロセスと言いますか、コンセンサスがどの辺にあるかという御説明、あるいは論文にもいろいろあるんだという御説明との関係で申しますれば、丹羽先生のペーパーを引用させていただくと『Nature』誌に出るような論文と、極端に言えば一般週刊誌に出るような文章とを同列に論ずることはできないだろうと思うんです。そこで、この手の事件について、司法の場において、当事者双方から論文の評価とか位置づけについての主張、立証というものがどの程度なされているのか。これが1つ。
 もう一つは、裁判所が最終的に依拠するところの調査研究なり論文を、なぜそちらを採用するかということについて、先ほど、専門的知見についての証人調べも時にはあるんだというお話をいただきましたけれども、何か裁判所がそこを採択するかどうかについての工夫と言いますか、どういう勉強をしておられるのか。その辺を少し御説明いただけるとありがたいと思います。
○神野座長代理 2点について、コメントいただければと思います。
○岩井参考人 科学的知見をどの程度考えるかということですが、やはり科学的知見が基礎にあるということは十分に認識されておりますし、当事者双方から多数の論文等が出されますので、それらを十分しんしゃくして判断をするということになっていると思います。
 それから、それらをどう評価して取捨選択するかということですけれども、まず、私どもは素人でございますので、それぞれの論文を正確に理解しようと一生懸命努めます。そして、ある知見に対してはほとんど反対意見が出されていますので、それらを突き合わせます。また、それらの全体的な評価に関する意見の論文も出されますので、それらを総合して、いずれが合理的であるかということを探求するということになります。
しかし、そこでは東京高裁の平成21年判決が言っておりますところですが、対立する科学的知見については、厳密な学問的な意味における真偽を見極めることは裁判手続において必ずしも十分にできることではなく、厳密な意味では訴訟上の課題であるとも言い難いと言っています。これは先ほどのように、因果関係の判断は最終的には法的な判断であるということだろうと思います。そこで、裁判手続において、課題としては一定水準にある学問成果として是認されたものについては、そのあるがままの科学的状態において、法律判断の前提としての科学的知見を把握するということが限度であります。取るに足りない反対説があるから、それだけで確立されていないとしてしまうということではなくて、その評価も含めて論文を読みこなして、場合によっては証人尋問もして判断するということであります。逆に言うと、確立されていないところまで裁判所が踏み込むことはできないということになろうかと思います。そういうようなことでよろしいでしょうか。
○荒井委員 ありがとうございました。
○神野座長代理 ほかに御質問、御意見ございますか。どうぞ。
○長瀧委員 今の荒井先生の後、議論なんですが、多数の論文を裁判官が判断なさるというときに、多数の論文を、先ほど丹羽先生のように国際的な合意というのがなされて、ある程度の合意がある。そうすると、その合意に参加した我々としては、日本としてはこういう科学的なデータを出して、国際的な合意の重要なデータを提供している国であるということを常に主張しているわけです。そうすると、今度、裁判でその合意から離れたものが、裁判官が科学的な判断をするんだとすると、それは国際的な合意と違った判断というと、それは科学的な議論と考えるのかです。
簡単に言いますと、国際的な合意をつくる形成のような社会に対して、日本の裁判官はどういう理由でということを聞きたいんですが、そのときに科学的にと言うと、これはあり得ない。国際的な合意とは違う。ですから、科学的でない、何か司法としての理由をきちっと説明していただけると、私たちも外に対して話ができるんですけれども、そこがどうも、その科学的な合意という言葉で限られた論文をそこの場所で議論して、裁判官という1人の方が国際的な合意と違う判断を科学的にしたと言うと非常に困るわけです。ですから、本当に司法の立場からどういう理由で判決をなさるかというのは常に疑問に思っておりました。
簡単に言いますと、国際的な場所に行って、日本の司法はこういう理由でこういう考え方でこういう判決をしているんだということを、高度の蓋然性の中に科学がどれぐらい入っていてというようなところを、何か一言とか二言で説明できるような説明がないかと思っているんです。
○岩井参考人 難しいことでありますので、私もそういう事件ばかりやっているわけではございませんので、一般的なことを言うと難しいと思います。なお、裁判官1人でということではなくて、通常の事件では合議体でありますので、3人の裁判官が十分に意見を交換してやるわけでございます。
繰り返しになりますが、最高裁の判決では、閾値論とDS86については、なお、機械的な適用をすることは問題があるのではないか、合理的に事象を説明できない部分があるのではないかというような認識に立って、あのような判決をしたと思います。私ども下級審の裁判官も基本的にはそのような考え方でやっているのではないかと推察します。それ以上のことはなかなか正確にはお答えし難いというのが実情でございます。
○長瀧委員 もっと簡単に言いますと、科学的に認められないから、認められないところから司法的に決めるというようなお話なら納得しやすいという部分があるんです。科学的な結論に対して、同じレベルで裁判所が各事例について科学的な判断をするというと、ちょっと抵抗があります。否定できないから認めるという言い方なら、それは別に我々は困らないと思いますけれども、そういう言い方はできますでしょうか。
○岩井参考人 科学的に確立された基準に基づき、基準を想定しながら、個々の事件についての具体的な事実関係を総合して判断するとしか言いようがないかと思います。
○神野座長代理 よろしいですか。申し訳ありません。なかなか難しい問題で、あと特になければ、時間オーバーをいたしておりますので、この辺でこの議論は打ち切らせていただければと思います。岩井先生、本当にありがとうございました。
それから、冒頭に申し上げましたけれども、これからは検討会の運営について議事に入りたいと思っておりますので、今日御発表いただいた3人の方々はここで御退室いただいて結構でございます。どうも本当にありがとうございました。
 それでは、時間をオーバーいたしまして大変恐縮でございますけれども、冒頭に申し上げましたように、次回のこの検討会の進め方について、何か御発言ございましたらば、ちょうだいしたいと思います。いかがでございますか。
田中委員、どうぞ。
○田中委員 前回のときも申し上げて、医師と弁護士の2人の方を、第3回検討会にヒアリングの報告者として呼んでいただきたいということをお願いしたつもりなんです。そのとき、時間の問題もありますからと座長がおっしゃったんですけれども、そのまま決定していただくことにならなくて、その後、今日の第3回の会合を持つのに当たって、事務局の方から私の方に直接お見えになりました。今日御報告いただきました3人の方の報告を受けたいということでありましたので、私どもが提案した候補の方はどうなったんでしょうかと申し上げたんですけれども、それはそのままになりまして、とにかく3人の報告を第3回は聞くことにしてほしいということでありました。それは認められないと私は申し上げまして、検討会の持ち方そのものについて議論をしていだたくというのと、次回どうするかというのは前の会合できちんと決めるということをやっていただきたい。そうでないと、事務局が決めて、それを持ち込んでくるということになりますので、是非それをやっていただきたいというのが私からのプレゼンでございました。この行動は座長にお手紙を出しまして、委員の皆さんにもそれを出しましたので御存じかと思いますので、あえてそれ以上は申し上げません。
○神野座長代理 それでは、今、田中委員の御発言について何かございましたら御意見ちょうだいしたいと思います。いかがでございましょうか。
今日は座長御欠席でございますけれども、森座長に私、前任校のときから、さまざまなこういう立場で責任者を座長としておやりになったときについております。森座長は皆さんもほぼお感じになっているかと思うんですが、極めて中立的に運営しようということについて、特に少数意見に配慮しながら運営しようということについては意をくだいていらっしゃる方でございますので、私も座長の意を酌みながら次回以降決めてまいりたいと思っております。何か御意見ちょうだいできればと思います。
○山崎委員 私の方から、せっかく広島、長崎で日常的に被爆者と向き合って行政を進めておられる副市長さんに、現場の実態についてお話をいただければと思います。
○神野座長代理 どうぞ。
○三宅委員 ただいま山崎先生からの現場の副市長というお声がかかりましたが、今日ここでそれをという話でしょうか。そうではなくて次回にということですか。
○山崎委員 次回にということでございます。
○三宅委員 私、聞くところによりますと、次回は広島、長崎の事務的な実態というようなことをお話するようなことに、そういう方向で準備が進んでいるのではないかと私は思っております。
○山崎委員 私の方から、次回の運営についてというのは議題でございますから、そこでお願いしたいということです。
○三宅委員 わかりました。
○神野座長代理 次回については田中委員にも御指摘いただきました。座長は、ヒアリングをもう一回やるかどうかを含めてということで引き取られていると思います。だから、中身については特にここで決めておりません。
○三宅委員 今の山崎先生の御発言は、この場での私に対する質問かと受け止めたものですから、大変失礼いたしました。
○山崎委員 今後の運営についての議題になっているので、次回、お願いしたいということでございます。
○神野座長代理 よろしいですか。どうぞ。
○田中委員 私が座長に申し上げましたのは、この検討会は何をやるのかということを、きちっと最初に合議をして進めていだきたいということでありました。それは会議の冒頭でということだったんですが、その時間はありませんで、今もなおかつ時間がありませんので、そのことは委員の皆さんに踏まえていただいて、これからの発言等々、運営等々に努力していただければありがたいと思います。次回についてはきちっと決めていただきたいと思っております。
○神野座長代理 それでは、私、事前に森座長の御意向などを拝聴しておりますので、次回の検討会については、私どもが今、ヒアリングしているのは、現状の制度や現状について可能な限り、委員の間で共通の認識を共有できればしたいという趣旨で進めております。次回については、原爆症の申請に携わった医師の方、原爆症裁判に携わった方々から現状の制度、その他についての経緯についてヒアリングを行うということ。それと、ただいま山崎委員からお話がございましたように、広島市、長崎市の行政の方々からもお話をちょうだいするというようなことで、次回のヒアリングをもう一度行いたいと考えておりますが、そういうことでよろしいでしょうか。それでは、長崎、広島、よろしいですか。
○智多委員 準備できる限り対応したいと思います。
○神野座長代理 一応、次回だけ決めさせていただいて、今後の議論、この検討会の進め方については座長と御相談しながら、坪井先生、どうぞ。
○坪井委員 やはり全体の大まかなスケジュールでも出ていないと、その都度考えるのはロスする時間が多いです。したがって、どこかで全体の姿が先に出るべきだと思っております。
○神野座長代理 当面1回ないしは2回ヒアリングを行うということを座長から申し上げているかと思いますので、次回のヒアリングをこのまま行うということにさせていただいて、今後のことにつきましては、座長と御相談しながら進めたいと思っております。ヒアリングについては、座長のお考えですと、一応、次回で打ち切る。その後、皆様から意見をちょうだいしながら、そろそろ本格的な議論を進めていく段階に移らないと検討会の意見がまとまりませんので、そういう大まかなスケジュールで、前回も議長がおっしゃられていると思います。そういうことで、また座長と御相談しながら皆様方にお伝えしたいと思っております。次回につきましては、今のようなことでよろしいでしょうか。
それでは、次回は、今、申し上げましたようなヒアリングをさせていただくということ。それと、今、運営についてさまざまな御議論が出ておりますので、この件については私の方から責任を持って座長に伝え、また座長と御相談の上、多分次回は座長がお出ましいただけるだろうと思いますが、進め方については意見をお伝えした上で御指示を仰ぎたいと思っております。
 それでは、申し訳ありません。私の不手際でもって本日は時間を大幅にオーバーしてしまったことをおわび申し上げまして、これにて終了させていいただきたいと思います。事務局の方から不足して御説明していたことがあれば、お願いいたします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 長時間ありがとうございました。
次回の第4回検討会は、6月27日月曜日10時からを予定しております。場所は今回と同じ厚生労働省9階省議室でございます。正式には追って御案内をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○神野座長代理 それでは、重ねてでございますが、時間をオーバーいたしまして、御予定にいろいろ差し支えがあったのではないかと思います。おわびを申し上げまして、本日お忙しい中御参集いただきましたことを重ねて御礼申し上げます。どうもありがとうございました。


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・被爆関係資料 その2 原爆症認定に関する審査の方針

・被爆関係資料 その2 原爆症認定に関する審査の方針


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http://shoruisouko.xsrv.jp/kntk/ss2.pdf
原爆症認定に関する審査の方針
平成13年5月25日
疾病・障害認定審査会
原子爆弾被爆者医療分科会

 疾病・障害認定審査会運営規程(平成13年2月2日疾病・障害認定審査会決定)第9条の規定に基づき、原爆症認定に関する審査の方針を次のように定める。

 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成6年法律第117号)第11条第1項の認定に係る審査に当たつては、それぞれ、以下に定める方針を目安として、これを行うものとする。

第1 原爆放射線起因性の判断
1 判断に当たつての基本的な考え方
1) 申請に係る負傷又は疾病(以下「疾病等」という。)における原爆放射線起因性の判断に当たつては、原因確率(疾病等の発生が、原爆放射線の影響を受けている蓋然性があると考えられる確率をいう。以下同じ。)及び闘値(一定の被曝線量以上の放射線を曝露しなければ、疾病等が発生しない値をいう。以下同じ。)を目安として、当該申請に係る疾病等の原爆放射線起因性に係る「高度の蓋然性」の有無を判断する。
2) この場合にあっては、当該申請に係る疾病等に関する原因確率が、
① おおむね50パーセント以上である場合には、当該申請に係る疾病の発生に関して原爆放射線による一定の健康影響の可能性があることを推定
② おおむね10パーセント未満である場合には、当該可能性が低いものと推定する。
3) ただし、当該判断に当たつては、これらを機械的に適用して判断するものではなく、当該申請者の既往歴、環境因子、生活歴等も総合的に勘案した上で、判断を行うものとする。
4) また、原因確率等が設けられていない疾病等に係る審査に当たつては、当該疾病等には、原爆放射線起因性に係る肯定的な科学的知見が立証されていないことに留意しつつ、当該申請者に係る被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴等を総合的に勘案して、個別にその起因性を判断するものとする。

<略>

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http://www.jtuc-rengo.or.jp/rentai_katsudo/peace/kakuheiki/data/hibakusya/20080326.pdf
新しい審査の方針
平成20年3月17日
平成21年6月22日改

疾病・障害認定審査会
原子爆弾被爆者医療分科会

 疾病・障害認定審査会運営規程( 平成13年2月2日疾病・障害認定審査会決定) 第9条の規定に基づき、原爆症認定に関する審査の方針を次のように定める。
 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律( 平成6年法律第1 1 7 号)第11 条第1 項の認定に係る審査に当たっては、被爆者援護法の精神に則り、より被爆者救済の立場に立ち、原因確率を改め、被爆の実態に一層即したものとするため、以下に定める方針を目安として、これを行うものとする。

第1 放射線起因性の判断
1 積極的に認定する範囲
(1) 被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者
(2) 原爆投下より約100時間以内に爆心地から約2 k m 以内に入市した者
(3) 原爆投下より約100時間経過後から、原爆投下より約2 週間以内の期間に、爆心地から約2km以内の地点に1 週間程度以上滞在した者から、放射線起因性が推認される以下の疾病についての申請がある場合については、格段に反対すべき事由がない限り、当該申請疾病と被曝した放射線との関係を積極的に認定するものとする。
(1)悪性腫瘍( 固形がんなど)
(2)白血病
(3)副甲状腺機能亢進症
(4)放射線白内障( 加齢性白内障を除く)
(5)放射線起因性が認められる心筋梗塞
(6)放射線起因性が認められる甲状腺機能低下症
(7)放射線起因性が認められる慢性肝炎・肝硬変
 この場合、認定の判断に当たっては、積極的に認定を行うため、申請者から可能な限り客観的な資料を求めることとするが、客観的な資料が無い場合にも、申請書の記載内容の整合性やこれまでの認定例を参考にしつつ判断する。

2 1に該当する場合以外の申請について
 1に該当する場合以外の申請についても、申請者に係る被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴等を総合的に勘案して、個別にその起因性を総合的に判断するものとする。

第2 要医療性の判断
 要医療性については、当該疾病等の状況に基づき、個別に判断するものとする。

第3 方針の見直し
 この方針は、新しい科学的知見の集積等の状況を踏まえて随時必要な見直しを行うものとする。


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・被爆関係資料 その1 原爆被爆者援護法

・被爆関係資料 その1 原爆被爆者援護法



原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律
最終改正:平成二三年六月二四日法律第七四号

前文
 昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾という比類のない破壊兵器は、幾多の尊い生命を一瞬にして奪ったのみならず、たとい一命をとりとめた被爆者にも、生涯いやすことのできない傷跡と後遺症を残し、不安の中での生活をもたらした。
 このような原子爆弾の放射能に起因する健康被害に苦しむ被爆者の健康の保持及び増進並びに福祉を図るため、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律を制定し、医療の給付、医療特別手当等の支給をはじめとする各般の施策を講じてきた。また、我らは、再びこのような惨禍が繰り返されることがないようにとの固い決意の下、世界唯一の原子爆弾の被爆国として、核兵器の究極的廃絶と世界の恒久平和の確立を全世界に訴え続けてきた。
 ここに、被爆後五十年のときを迎えるに当たり、我らは、核兵器の究極的廃絶に向けての決意を新たにし、原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ、あわせて、国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記するため、この法律を制定する。

第一章 総則
(被爆者)
第一条  この法律において「被爆者」とは、次の各号のいずれかに該当する者であって、被爆者健康手帳の交付を受けたものをいう。
一  原子爆弾が投下された際当時の広島市若しくは長崎市の区域内又は政令で定めるこれらに隣接する区域内に在った者
二  原子爆弾が投下された時から起算して政令で定める期間内に前号に規定する区域のうちで政令で定める区域内に在った者
三  前二号に掲げる者のほか、原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者
四  前三号に掲げる者が当該各号に規定する事由に該当した当時その者の胎児であった者

(被爆者健康手帳)
第二条  被爆者健康手帳の交付を受けようとする者は、その居住地(居住地を有しないときは、その現在地とする。)の都道府県知事に申請しなければならない。
2  被爆者健康手帳の交付を受けようとする者であって、国内に居住地及び現在地を有しないものは、前項の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その者が前条各号に規定する事由のいずれかに該当したとする当時現に所在していた場所を管轄する都道府県知事に申請することができる。
3  都道府県知事は、前二項の規定による申請に基づいて審査し、申請者が前条各号のいずれかに該当すると認めるときは、その者に被爆者健康手帳を交付するものとする。
4  前三項に定めるもののほか、被爆者健康手帳に関し必要な事項は、政令で定める。

第二章 削除
第三条  削除
第四条  削除
第五条  削除

第三章 援護
第一節 通則
(援護の総合的実施)
第六条  国は、被爆者の健康の保持及び増進並びに福祉の向上を図るため、都道府県並びに広島市及び長崎市と連携を図りながら、被爆者に対する援護を総合的に実施するものとする。

第二節 健康管理
(健康診断)
第七条  都道府県知事は、被爆者に対し、毎年、厚生労働省令で定めるところにより、健康診断を行うものとする。

(健康診断に関する記録)
第八条  都道府県知事は、前条の規定により健康診断を行ったときは、健康診断に関する記録を作成し、かつ、厚生労働省令で定める期間、これを保存するものとする。

(指導)
第九条  都道府県知事は、第七条の規定による健康診断の結果必要があると認めるときは、当該健康診断を受けた者に対し、必要な指導を行うものとする。

第三節 医療
(医療の給付)
第十条  厚生労働大臣は、原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対し、必要な医療の給付を行う。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは、その者の治癒能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る。
2  前項に規定する医療の給付の範囲は、次のとおりとする。
一  診察
二  薬剤又は治療材料の支給
三  医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
四  居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五  病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
六  移送
3  第一項に規定する医療の給付は、厚生労働大臣が第十二条第一項の規定により指定する医療機関(以下「指定医療機関」という。)に委託して行うものとする。

(認定)
第十一条  前条第一項に規定する医療の給付を受けようとする者は、あらかじめ、当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生労働大臣の認定を受けなければならない。
2  厚生労働大臣は、前項の認定を行うに当たっては、審議会等(国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第八条 に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴かなければならない。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因すること又は起因しないことが明らかであるときは、この限りでない。

(医療機関の指定)
第十二条  厚生労働大臣は、その開設者の同意を得て、第十条第一項に規定する医療を担当させる病院若しくは診療所(これらに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)又は薬局を指定する。
2  指定医療機関は、三十日以上の予告期間を設けて、その指定を辞退することができる。
3  指定医療機関が次条第一項の規定に違反したとき、担当医師に変更があったとき、その他指定医療機関に第十条第一項に規定する医療を担当させるについて著しく不適当であると認められる理由があるときは、厚生労働大臣は、その指定を取り消すことができる。
(指定医療機関の義務)
第十三条  指定医療機関は、厚生労働大臣の定めるところにより、第十条第一項に規定する医療を担当しなければならない。
2  指定医療機関は、第十条第一項に規定する医療を行うについて、厚生労働大臣の行う指導に従わなければならない。

(診療方針及び診療報酬)
第十四条  指定医療機関の診療方針及び診療報酬は、健康保険の診療方針及び診療報酬の例による。
2  前項に規定する診療方針及び診療報酬の例によることができないとき又はこれによることを適当としないときの診療方針及び診療報酬は、厚生労働大臣の定めるところによる。

(診療報酬の審査及び支払)
第十五条  厚生労働大臣は、指定医療機関の診療内容及び診療報酬の請求を随時審査し、かつ、指定医療機関が前条の規定により請求することができる診療報酬の額を決定することができる。
2  指定医療機関は、厚生労働大臣が行う前項の規定による診療報酬の額の決定に従わなければならない。
3  厚生労働大臣は、第一項の規定による診療報酬の額の決定に当たっては、社会保険診療報酬支払基金法 (昭和二十三年法律第百二十九号)に定める審査委員会、国民健康保険法 (昭和三十三年法律第百九十二号)に定める国民健康保険診療報酬審査委員会その他政令で定める医療に関する審査機関の意見を聴かなければならない。
4  国は、指定医療機関に対する診療報酬の支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会その他厚生労働省令で定める者に委託することができる。
5  第一項の規定による診療報酬の額の決定については、行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。

(報告の請求及び検査)
第十六条  厚生労働大臣は、前条第一項の規定による審査のため必要があるときは、指定医療機関の管理者に対して必要な報告を求め、又は当該職員をして指定医療機関についてその管理者の同意を得て、実地に診療録その他の帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。)を検査させることができる。
2  指定医療機関の管理者が、正当な理由がなく前項の規定による報告の求めに応ぜず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の同意を拒んだときは、厚生労働大臣は、当該指定医療機関に対する診療報酬の支払を一時差し止めることができる。

(医療費の支給)
第十七条  厚生労働大臣は、被爆者が、緊急その他やむを得ない理由により、指定医療機関以外の者から第十条第二項各号に掲げる医療を受けた場合において、必要があると認めるときは、同条第一項に規定する医療の給付に代えて、医療費を支給することができる。被爆者が指定医療機関から同条第二項各号に掲げる医療を受けた場合において、当該医療が緊急その他やむを得ない理由により同条第一項の規定によらないで行われたものであるときも、同様とする。
2  前項の規定により支給する医療費の額は、第十四条の規定により指定医療機関が請求することができる診療報酬の例により算定した額とする。ただし、現に要した費用の額を超えることができない。
3  厚生労働大臣は、第一項の規定により医療費を支給するため必要があるときは、当該医療を行った者又はこれを使用する者に対し、その行った医療に関し、報告若しくは診療録若しくは帳簿書類その他の物件の提示を命じ、又は当該職員をして質問させることができる。

(一般疾病医療費の支給)
第十八条  厚生労働大臣は、被爆者が、負傷又は疾病(第十条第一項に規定する医療の給付を受けることができる負傷又は疾病、遺伝性疾病、先天性疾病及び厚生労働大臣の定めるその他の負傷又は疾病を除く。)につき、都道府県知事が次条第一項の規定により指定する医療機関(以下「被爆者一般疾病医療機関」という。)から第十条第二項各号に掲げる医療を受け、又は緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたときは、その者に対し、当該医療に要した費用の額を限度として、一般疾病医療費を支給することができる。ただし、その者が、当該負傷若しくは疾病につき、健康保険法 (大正十一年法律第七十号)、船員保険法 (昭和十四年法律第七十三号)、国民健康保険法 、国家公務員共済組合法 (昭和三十三年法律第百二十八号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)若しくは地方公務員等共済組合法 (昭和三十七年法律第百五十二号)(以下この条において「社会保険各法」という。)、高齢者の医療の確保に関する法律 (昭和五十七年法律第八十号)、介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)、労働者災害補償保険法 (昭和二十二年法律第五十号)、船員法 (昭和二十二年法律第百号)若しくは独立行政法人日本スポーツ振興センター法 (平成十四年法律第百六十二号)の規定により医療に関する給付を受け、若しくは受けることができたとき、又は当該医療が法令の規定により国若しくは地方公共団体の負担による医療に関する給付として行われたときは、当該医療に要した費用の額から当該医療に関する給付の額を控除した額(その者が社会保険各法若しくは高齢者の医療の確保に関する法律 による療養の給付を受け、又は受けることができたときは、当該療養の給付に関する当該社会保険各法若しくは高齢者の医療の確保に関する法律 の規定による一部負担金に相当する額とし、当該医療が法令の規定により国又は地方公共団体の負担による医療の現物給付として行われたときは、当該医療に関する給付について行われた実費徴収の額とする。)の限度において支給するものとする。
2  前条第二項の規定は、前項の医療に要した費用の額の算定について準用する。
3  被爆者が被爆者一般疾病医療機関から医療を受けた場合においては、厚生労働大臣は、一般疾病医療費として当該被爆者に支給すべき額の限度において、その者が当該医療に関し当該医療機関に支払うべき費用を、当該被爆者に代わり、当該医療機関に支払うことができる。
4  前項の規定による支払があったときは、当該被爆者に対し、一般疾病医療費の支給があったものとみなす。
5  社会保険各法若しくは高齢者の医療の確保に関する法律 の規定による被保険者又は組合員である被爆者が、第一項に規定する負傷又は疾病について被爆者一般疾病医療機関から医療を受ける場合には、当該社会保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律 の規定により当該医療機関に支払うべき一部負担金は、当該社会保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律 の規定にかかわらず、当該医療に関し厚生労働大臣が第三項の規定による支払をしない旨の決定をするまでは、支払うことを要しない。

(被爆者一般疾病医療機関)
第十九条  都道府県知事は、その開設者の同意を得て、前条第三項の規定による支払を受けることができる病院若しくは診療所(これらに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)又は薬局を指定する。
2  被爆者一般疾病医療機関は、三十日以上の予告期間を設けて、その指定を辞退することができる。
3  都道府県知事は、被爆者一般疾病医療機関に前条第三項の規定による支払を受けるについて著しく不適当であると認められる理由があるときは、その指定を取り消すことができる。

第二十条  厚生労働大臣は、第十八条第三項の規定による支払をなすべき額を決定するに当たっては、社会保険診療報酬支払基金法 に定める審査委員会、国民健康保険法 に定める国民健康保険診療報酬審査委員会その他政令で定める医療に関する審査機関の意見を聴かなければならない。
2  国は、第十八条第三項の規定による支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会その他厚生労働省令で定める者に委託することができる。

(報告の請求等)
第二十一条  第十六条の規定は、第十八条第三項の規定による支払のため必要がある場合に、第十七条第三項の規定は、一般疾病医療費を支給するについて必要がある場合に、それぞれ準用する。

(一般疾病医療費の支給の制限)
第二十二条  被爆者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に負傷し、又は疾病にかかったときは、当該負傷又は疾病に係る一般疾病医療費の支給は、行わない。

第二十三条  被爆者が、闘争、泥酔又は著しい不行跡によって負傷し、又は疾病にかかったときは、当該負傷又は疾病に係る一般疾病医療費の支給は、その全部又は一部を行わないことができる。被爆者が、重大な過失により、負傷し、若しくは疾病にかかったとき、又は正当な理由がなく療養に関する指示に従わなかったときも、同様とする。

(政令への委任)
第二十三条の二  この節に定めるもののほか、第十一条の規定による認定、指定医療機関及び被爆者一般疾病医療機関について必要な事項は、政令で定める。

第四節 手当等の支給
(医療特別手当の支給)
第二十四条  都道府県知事は、第十一条第一項の認定を受けた者であって、当該認定に係る負傷又は疾病の状態にあるものに対し、医療特別手当を支給する。
2  前項に規定する者は、医療特別手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3  医療特別手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、十三万五千四百円とする。
4  医療特別手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、第一項に規定する要件に該当しなくなった日の属する月で終わる。
(特別手当の支給)
第二十五条  都道府県知事は、第十一条第一項の認定を受けた者に対し、特別手当を支給する。ただし、その者が医療特別手当の支給を受けている場合は、この限りでない。
2  前項に規定する者は、特別手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3  特別手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、五万円とする。
4  特別手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、第一項に規定する要件に該当しなくなった日の属する月で終わる。

(原子爆弾小頭症手当の支給)
第二十六条  都道府県知事は、被爆者であって、原子爆弾の放射能の影響による小頭症の患者であるもの(小頭症による厚生労働省令で定める範囲の精神上又は身体上の障害がない者を除く。)に対し、原子爆弾小頭症手当を支給する。
2  前項に規定する者は、原子爆弾小頭症手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3  原子爆弾小頭症手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、四万六千六百円とする。
4  原子爆弾小頭症手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、その者が死亡した日の属する月で終わる。

(健康管理手当の支給)
第二十七条  都道府県知事は、被爆者であって、造血機能障害、肝臓機能障害その他の厚生労働省令で定める障害を伴う疾病(原子爆弾の放射能の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。)にかかっているものに対し、健康管理手当を支給する。ただし、その者が医療特別手当、特別手当又は原子爆弾小頭症手当の支給を受けている場合は、この限りでない。
2  前項に規定する者は、健康管理手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3  都道府県知事は、前項の認定を行う場合には、併せて当該疾病が継続すると認められる期間を定めるものとする。この場合においては、その期間は、第一項に規定する疾病の種類ごとに厚生労働大臣が定める期間内において定めるものとする。
4  健康管理手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、三万三千三百円とする。
5  健康管理手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、その日から起算してその者につき第三項の規定により定められた期間が満了する日(その期間が満了する日前に第一項に規定する要件に該当しなくなった場合にあっては、その該当しなくなった日)の属する月で終わる。

(保健手当の支給)
第二十八条  都道府県知事は、被爆者のうち、原子爆弾が投下された際爆心地から二キロメートルの区域内に在った者又はその当時その者の胎児であった者に対し、保健手当を支給する。ただし、その者が医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当又は健康管理手当の支給を受けている場合は、この限りでない。
2  前項に規定する者は、保健手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3  保健手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、一万六千七百円とする。ただし、次の各号のいずれかに該当する旨の都道府県知事の認定を受けた者であって、現に当該各号のいずれかに該当するものに支給する保健手当の額は、一月につき、三万三千三百円とする。
一  厚生労働省令で定める範囲の身体上の障害(原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。)がある者
二  配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。第三十三条第二項において同じ。)、子及び孫のいずれもいない七十歳以上の者であって、その者と同居している者がいないもの
4  保健手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、第一項に規定する要件に該当しなくなった日の属する月で終わる。
5  第二項の認定を受けた者が新たに第三項ただし書に規定する都道府県知事の認定を受けた場合における保健手当の額の改定は、その認定の申請をした日の属する月の翌月から行う。
6  第二項の認定を受けた者が第三項ただし書に規定する者に該当しなくなった場合における保健手当の額の改定は、その該当しなくなった日の属する月の翌月から行う。

(手当額の自動改定)
第二十九条  医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当及び保健手当(以下この条において単に「手当」という。)については、総務省において作成する年平均の全国消費者物価指数(以下「物価指数」という。)が平成五年(この項の規定による手当の額の改定の措置が講じられたときは、直近の当該措置が講じられた年の前年)の物価指数を超え、又は下るに至った場合においては、その上昇し、又は低下した比率を基準として、その翌年の四月以降の当該手当の額を改定する。
2  前項の規定による手当の額の改定の措置は、政令で定める。

(届出)
第三十条  第二十四条第二項、第二十五条第二項、第二十六条第二項、第二十七条第二項又は第二十八条第二項の認定を受けた者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、厚生労働省令で定める事項を届け出なければならない。
2  都道府県知事は、医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当又は保健手当の支給を受けている者が、正当な理由がなく前項の規定による届出をしないときは、その支払を一時差し止めることができる。

(介護手当の支給)
第三十一条  都道府県知事は、被爆者であって、厚生労働省令で定める範囲の精神上又は身体上の障害(原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。以下この条において同じ。)により介護を要する状態にあり、かつ、介護を受けているものに対し、その介護を受けている期間について、政令で定めるところにより、介護手当を支給する。ただし、その者(その精神上又は身体上の障害が重度の障害として厚生労働省令で定めるものに該当する者を除く。)が介護者に対し介護に要する費用を支出しないで介護を受けている期間については、この限りでない。

(葬祭料の支給)
第三十二条  都道府県知事は、被爆者が死亡したときは、葬祭を行う者に対し、政令で定めるところにより、葬祭料を支給する。ただし、その死亡が原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかである場合は、この限りでない。

(特別葬祭給付金)
第三十三条  被爆者であって、次の各号のいずれかに該当する者(次項において「死亡者」という。)の遺族であるものには、特別葬祭給付金を支給する。
一  昭和四十四年三月三十一日以前に死亡した第一条各号に掲げる者
二  昭和四十四年四月一日から昭和四十九年九月三十日までの間に死亡した第一条各号に掲げる者(当該死亡した者の葬祭を行う者が、附則第三条の規定による廃止前の原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律(昭和四十三年法律第五十三号。以下「旧原爆特別措置法」という。)による葬祭料の支給を受け、又は受けることができた場合における当該死亡した者を除く。)
2  前項の遺族の範囲は、死亡者の死亡の当時における配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹とする。
3  特別葬祭給付金の支給を受ける権利の認定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、厚生労働大臣が行う。
4  前項の請求は、厚生労働省令で定めるところにより、平成九年六月三十日までに行わなければならない。
5  前項の期間内に第三項の請求をしなかった者には、特別葬祭給付金は、これを支給しない。

(特別葬祭給付金の額及び記名国債の交付)
第三十四条  特別葬祭給付金の額は、十万円とし、二年以内に償還すべき記名国債をもって交付する。
2  前項の規定により交付するため、政府は、必要な金額を限度として国債を発行することができる。
3  前項の規定により発行する国債は、無利子とする。
4  第二項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除き、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。
5  前各項に定めるもののほか、第二項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、財務省令で定める。

(国債の償還を受ける権利の承継)
第三十五条  前条第一項に規定する国債の記名者が死亡した場合において、同順位の相続人が二人以上あるときは、その一人のした当該死亡した者の死亡前に支払うべきであった同項に規定する国債の償還金の請求又は同項に規定する国債の記名変更の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした同項に規定する国債の償還金の支払又は同項に規定する国債の記名変更は、全員に対してしたものとみなす。

第三十六条  削除

第五節 福祉事業
(相談事業)
第三十七条  都道府県は、被爆者の心身の健康に関する相談、被爆者の居宅における日常生活に関する相談その他被爆者の援護に関する相談に応ずる事業を行うことができる。

(居宅生活支援事業)
第三十八条  都道府県は、被爆者の居宅における日常生活を支援するため、次に掲げる事業を行うことができる。
一  被爆者であって、精神上又は身体上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるものにつき、その者の居宅において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活を営むのに必要な便宜を供与する事業
二  被爆者であって、精神上又は身体上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるものを、都道府県知事が適当と認める施設に通わせ、入浴、食事の提供、機能訓練その他の便宜を供与する事業
三  被爆者であって、その介護を行う者の疾病その他の理由により、居宅において介護を受けることが一時的に困難となったものを、都道府県知事が適当と認める施設に短期間入所させ、必要な養護を行う事業

(養護事業)
第三十九条  都道府県は、精神上若しくは身体上又は環境上の理由により養護を必要とする被爆者であって、居宅においてこれを受けることが困難なものを、当該被爆者又はその者を現に養護する者の申出により、都道府県知事が適当と認める施設に入所させ、必要な養護を行う事業を行うことができる。

第四章 調査及び研究
(調査及び研究)
第四十条  国は、原子爆弾の放射能に起因する身体的影響及びこれによる疾病の治療に係る調査研究(次項において「原爆放射能影響調査研究」という。)の推進に努めなければならない。
2  国は、原爆放射能影響調査研究の促進を図るため、公益社団法人又は公益財団法人であって、原爆放射能影響調査研究を主たる目的とするものに対し、予算の範囲内において、当該法人が行う原爆放射能影響調査研究に要する費用の一部を補助することができる。
第五章 平和を祈念するための事業
(平和を祈念するための事業)
第四十一条  国は、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記し、かつ、恒久の平和を祈念するため、原子爆弾の惨禍に関する国民の理解を深め、その体験の後代の国民への継承を図り、及び原子爆弾による死没者に対する追悼の意を表す事業を行う。

第六章 費用
(都道府県の支弁)
第四十二条  次に掲げる費用は、都道府県の支弁とする。
一  医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当、保健手当、介護手当及び葬祭料の支給並びにこの法律又はこの法律に基づく命令の規定により都道府県知事が行う事務の処理に要する費用
二  第三十七条から第三十九条までの規定により都道府県が行う事業に要する費用

(国の負担等)
第四十三条  国は、政令で定めるところにより、前条の規定により都道府県が支弁する同条第一号に掲げる費用(介護手当に係るものを除く。)を当該都道府県に交付する。
2  国は、政令で定めるところにより、前条の規定により都道府県が支弁する同条第一号に掲げる費用のうち、介護手当の支給に要する費用についてはその十分の八を、介護手当に係る事務の処理に要する費用についてはその二分の一を負担する。
3  国は、予算の範囲内において、都道府県に対し、前条の規定により都道府県が支弁する同条第二号に掲げる費用の一部を補助することができる。

第七章 雑則
(譲渡又は担保の禁止)
第四十四条  この法律に基づく給付を受ける権利は、譲り渡し、又は担保に供することができない。

(差押えの禁止)
第四十五条  この法律に基づく給付を受ける権利及び第三十四条第一項に規定する国債は、差し押さえることができない。

(非課税)
第四十六条  租税その他の公課は、この法律に基づく給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。
2  特別葬祭給付金に関する書類及び第三十四条第一項に規定する国債を担保とする金銭の貸借に関する書類には、印紙税を課さない。

(不正利得の徴収)
第四十七条  偽りその他不正の手段によりこの法律に基づく給付を受けた者がある場合は、厚生労働大臣(当該給付が都道府県知事により行われた場合にあっては、都道府県知事)は、国税徴収の例により、その者から、当該給付の価額の全部又は一部を徴収することができる。
2  前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

(戸籍事項の無料証明)
第四十八条  市町村長(地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市においては、区長とする。)は、第二十四条第一項、第二十五条第一項、第二十六条第一項、第二十七条第一項若しくは第二十八条第一項に規定する者又は第三十三条第一項に規定する遺族である者に対して、当該市町村の条例で定めるところにより、これらの者の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。

(広島市及び長崎市に関する特例)
第四十九条  この法律の規定(第六条、第五十一条及び第五十一条の二を除く。)中「都道府県知事」又は「都道府県」とあるのは、広島市又は長崎市については、「市長」又は「市」と読み替えるものとする。

(再審査請求)
第五十条  広島市又は長崎市の長が行う被爆者健康手帳の交付又は医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当、保健手当、介護手当若しくは葬祭料の支給に関する処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、厚生労働大臣に対して再審査請求をすることができる。

(都道府県等が処理する事務)
第五十一条  この法律に規定する厚生労働大臣の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事並びに広島市長及び長崎市長が行うこととすることができる。

(事務の区分)
第五十一条の二  この法律(第三章第五節、第六章及び第四十八条を除く。)の規定により都道府県並びに広島市及び長崎市が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号 に規定する第一号 法定受託事務とする。

(権限の委任)
第五十一条の三  この法律に規定する厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、地方厚生局長に委任することができる。
2  前項の規定により地方厚生局長に委任された権限は、厚生労働省令で定めるところにより、地方厚生支局長に委任することができる。

(省令への委任)
第五十二条  この法律に特別の規定があるものを除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生労働省令で定める。

(罰則)
第五十三条  第七条に規定する健康診断、第九条に規定する指導又は第三十七条に規定する事業の実施の事務に従事した者が、その職務に関して知り得た人の秘密を正当な理由がなく漏らしたときは、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第五十四条  第十条第二項各号に掲げる医療を行った者又はこれを使用する者が、第十七条第三項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定により報告若しくは診療録若しくは帳簿書類その他の物件の提示を命ぜられて、正当な理由がなくこれに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は第十七条第三項の規定による当該職員の質問に対して正当な理由がなく答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたときは、十万円以下の過料に処する。

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http://law.e-gov.go.jp/announce/H21HO099.html
原爆症認定集団訴訟の原告に係る問題の解決のための基金に対する補助に関する法律
(平成二十一年十二月九日法律第九十九号)

(趣旨)
第一条  この法律は、原爆症認定集団訴訟に関し、これを契機に原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)に基づく医療の給付を受けるための認定に関する見直しが行われたことを踏まえ、訴訟の長期化、被爆者である原告の高齢化等の事情にかんがみ、平成二十一年八月六日に関係者の間において行われた原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認の内容に基づき、原告に係る問題の解決のための基金に対する補助に関し必要な事項を定めるものとする。

(定義)
第二条  この法律において「原爆症認定集団訴訟」とは、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律第十一条第一項の認定の申請に係る却下の処分の取消しの訴えであって、平成十五年四月十七日から同日後同条第二項に規定する審議会等が当該認定に関する意見を述べるに当たっての新たな審査の方針が初めて定められた日の前日までの間に提起されたもの(同日までに取り下げられたものを除く。)をいう。

(補助)
第三条  政府は、予算の範囲内において、一般社団法人又は一般財団法人であって、原爆症認定集団訴訟の原告に係る問題の解決のための支援を行う事業(以下「支援事業」という。)を行うもの(次条において「支援事業実施法人」という。)に対し、支援事業に要する費用の一部を補助することができる。

(基金の設置等)
第四条  前条の規定により補助金の交付を受ける支援事業実施法人は、支援事業に関する基金を設けるものとし、同条の規定により補助を受けた金額をもって当該基金に充てるものとする。この場合において、当該支援事業実施法人は、支援事業に要する費用に充てることを条件として政府以外の者から出えんされた金額を同条の規定により補助を受けた金額に加えることができる。


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■16条「必要な援助」国の措置 その13 原子力損害賠償支援機構法 条文

■16条「必要な援助」国の措置 その13 原子力損害賠償支援機構法 条文


http://shop.gyosei.jp/contents/sinsai/honbun/56ab226004230201h.html
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○原子力損害賠償支援機構法
(平成二十三年八月十日)
(法律第九十四号)
第百七十七回通常国会
菅内閣
原子力損害賠償支援機構法をここに公布する。
原子力損害賠償支援機構法

目次
第一章 総則(第一条―第八条)
第二章 設立(第九条―第十三条)
第三章 運営委員会(第十四条―第二十二条)
第四章 役員等(第二十三条―第三十四条)
第五章 業務
第一節 業務の範囲等(第三十五条―第三十七条)
第二節 負担金(第三十八条―第四十条)
第三節 資金援助
第一款 通則(第四十一条―第四十四条)
第二款 特別事業計画の認定等(第四十五条―第四十七条)
第三款 特別資金援助に対する政府の援助(第四十八条―第五十一条)
第四款 負担金の額の特例(第五十二条)
第四節 損害賠償の円滑な実施に資するための相談その他の業務(第五十三条―第五十五条)
第六章 財務及び会計(第五十六条―第六十三条)
第七章 監督(第六十四条・第六十五条)
第八章 雑則(第六十六条―第七十二条)
第九章 罰則(第七十三条―第七十九条)
附則


第一章 総則
(目的)
第一条 原子力損害賠償支援機構は、原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号。以下「賠償法」という。)第三条の規定により原子力事業者(第三十八条第一項に規定する原子力事業者をいう。第三十七条において同じ。)が賠償の責めに任ずべき額が賠償法第七条第一項に規定する賠償措置額(第四十一条第一項において単に「賠償措置額」という。)を超える原子力損害(賠償法第二条第二項に規定する原子力損害をいう。以下同じ。)が生じた場合において、当該原子力事業者が損害を賠償するために必要な資金の交付その他の業務を行うことにより、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給その他の原子炉の運転等(第三十八条第一項に規定する原子炉の運転等をいう。)に係る事業の円滑な運営の確保を図り、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展に資することを目的とする。

(国の責務)
第二条 国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、原子力損害賠償支援機構が前条の目的を達することができるよう、万全の措置を講ずるものとする。

(法人格)
第三条 原子力損害賠償支援機構(以下「機構」という。)は、法人とする。

(数)
第四条 機構は、一を限り、設立されるものとする。

(資本金)
第五条 機構の資本金は、その設立に際し、政府及び政府以外の者が出資する額の合計額とする。
2 機構は、必要があるときは、主務大臣の認可を受けて、その資本金を増加することができる。

(名称)
第六条 機構は、その名称中に原子力損害賠償支援機構という文字を用いなければならない。
2 機構でない者は、その名称中に原子力損害賠償支援機構という文字を用いてはならない。

(登記)
第七条 機構は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。
2 前項の規定により登記しなければならない事項は、登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない。

(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の準用)
第八条 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第四条及び第七十八条の規定は、機構について準用する。


第二章 設立
(発起人)
第九条 機構を設立するには、電気事業に関して専門的な知識と経験を有する者三人以上が発起人になることを必要とする。

(定款の作成等)
第十条 発起人は、速やかに、機構の定款を作成し、政府以外の者に対し機構に対する出資を募集しなければならない。
2 前項の定款には、次の事項を記載しなければならない。
一 目的
二 名称
三 事務所の所在地
四 資本金及び出資に関する事項
五 運営委員会に関する事項
六 役員に関する事項
七 業務及びその執行に関する事項
八 財務及び会計に関する事項
九 定款の変更に関する事項
十 公告の方法

(設立の認可)
第十一条 発起人は、前条第一項の募集が終わったときは、速やかに、定款を主務大臣に提出して、設立の認可を申請しなければならない。

(事務の引継ぎ)
第十二条 発起人は、前条の認可を受けたときは、遅滞なく、その事務を機構の理事長となるべき者に引き継がなければならない。
2 機構の理事長となるべき者は、前項の規定による事務の引継ぎを受けたときは、遅滞なく、政府及び出資の募集に応じた政府以外の者に対し、出資金の払込みを求めなければならない。

(設立の登記)
第十三条 機構の理事長となるべき者は、前条第二項の規定による出資金の払込みがあったときは、遅滞なく、政令で定めるところにより、設立の登記をしなければならない。
2 機構は、設立の登記をすることにより成立する。


第三章 運営委員会
(設置)
第十四条 機構に、運営委員会を置く。

(権限)
第十五条 この法律で別に定めるもののほか、次に掲げる事項は、運営委員会の議決を経なければならない。
一 定款の変更
二 業務方法書の作成又は変更
三 予算及び資金計画の作成又は変更
四 決算
五 その他運営委員会が特に必要と認める事項

(組織)
第十六条 運営委員会は、委員八人以内並びに機構の理事長及び理事をもって組織する。
2 運営委員会に委員長一人を置き、委員のうちから、委員の互選によってこれを定める。
3 委員長は、運営委員会の会務を総理する。
4 運営委員会は、あらかじめ、委員のうちから、委員長に事故がある場合に委員長の職務を代理する者を定めておかなければならない。

(委員の任命)
第十七条 委員は、電気事業、経済、金融、法律又は会計に関して専門的な知識と経験を有する者のうちから、機構の理事長が主務大臣の認可を受けて任命する。

(委員の任期)
第十八条 委員の任期は、二年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。

(委員の解任)
第十九条 機構の理事長は、委員が次の各号のいずれかに該当するに至ったときは、主務大臣の認可を受けて、その委員を解任することができる。
一 破産手続開始の決定を受けたとき。
二 禁錮以上の刑に処せられたとき。
三 心身の故障のため職務を執行することができないと認められるとき。
四 職務上の義務違反があるとき。

(議決の方法)
第二十条 運営委員会は、委員長又は第十六条第四項に規定する委員長の職務を代理する者のほか、委員並びに機構の理事長及び理事の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決をすることができない。
2 運営委員会の議事は、出席した委員並びに機構の理事長及び理事の過半数をもって決する。可否同数のときは、委員長が決する。

(委員の秘密保持義務)
第二十一条 委員は、その職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。委員がその職を退いた後も、同様とする。

(委員の地位)
第二十二条 委員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。


第四章 役員等
(役員)
第二十三条 機構に、役員として理事長一人、理事四人以内及び監事一人を置く。

(役員の職務及び権限)
第二十四条 理事長は、機構を代表し、その業務を総理する。
2 理事は、理事長の定めるところにより、機構を代表し、理事長を補佐して機構の業務を掌理し、理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠員のときはその職務を行う。
3 監事は、機構の業務を監査する。
4 監事は、監査の結果に基づき、必要があると認めるときは、運営委員会、理事長又は主務大臣に意見を提出することができる。

(役員の任命)
第二十五条 理事長及び監事は、主務大臣が任命する。
2 理事は、理事長が主務大臣の認可を受けて任命する。

(役員の任期)
第二十六条 役員の任期は、二年とする。ただし、役員が欠けた場合における補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 役員は、再任されることができる。

(役員の欠格条項)
第二十七条 政府又は地方公共団体の職員(非常勤の者を除く。)は、役員となることができない。

(役員の解任)
第二十八条 主務大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が前条の規定に該当するに至ったときは、その役員を解任しなければならない。
2 主務大臣又は理事長は、それぞれその任命に係る役員が第十九条各号のいずれかに該当するに至ったときその他役員たるに適しないと認めるときは、第二十五条の規定の例により、その役員を解任することができる。

(役員の兼職禁止)
第二十九条 役員(非常勤の者を除く。)は、営利を目的とする団体の役員となり、又は自ら営利事業に従事してはならない。ただし、主務大臣の承認を受けたときは、この限りでない。

(監事の兼職禁止)
第三十条 監事は、理事長、理事、運営委員会の委員又は機構の職員を兼ねてはならない。

(代表権の制限)
第三十一条 機構と理事長又は理事との利益が相反する事項については、これらの者は、代表権を有しない。この場合においては、監事が機構を代表する。

(代理人の選任)
第三十二条 理事長は、機構の職員のうちから、機構の業務の一部に関する一切の裁判上又は裁判外の行為を行う権限を有する代理人を選任することができる。

(職員の任命)
第三十三条 機構の職員は、理事長が任命する。

(役員等の秘密保持義務等)
第三十四条 第二十一条及び第二十二条の規定は、役員及び職員について準用する。


第五章 業務
第一節 業務の範囲等
(業務の範囲)
第三十五条 機構は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行う。
一 次節の規定による負担金の収納
二 第三節の規定による資金援助その他同節の規定による業務
三 第四節の規定による相談その他同節の規定による業務
四 前三号に掲げる業務に附帯する業務

(業務方法書)
第三十六条 機構は、業務開始の際、業務方法書を作成し、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 前項の業務方法書には、負担金に関する事項その他主務省令で定める事項を記載しなければならない。

(報告の徴収等)
第三十七条 機構は、その業務を行うため必要があるときは、原子力事業者に対し、報告又は資料の提出を求めることができる。
2 前項の規定により報告又は資料の提出を求められた原子力事業者は、遅滞なく、報告又は資料の提出をしなければならない。

第二節 負担金
(負担金の納付)
第三十八条 原子力事業者(次に掲げる者(これらの者であった者を含む。)であって、原子炉の運転等(賠償法第二条第一項に規定する原子炉の運転等のうち第一号に規定する実用発電用原子炉又は第二号に規定する実用再処理施設に係るものをいう。以下同じ。)をしているものをいう。以下同じ。)は、機構の事業年度ごとに、機構の業務に要する費用に充てるため、機構に対し、負担金を納付しなければならない。
一 実用発電用原子炉(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。次号において「原子炉等規制法」という。)第二十三条第一項第一号に規定する実用発電用原子炉をいう。次号において同じ。)に係る同項の許可を受けた者
二 実用再処理施設(原子炉等規制法第四十四条第二項第二号に規定する再処理施設のうち実用発電用原子炉において燃料として使用した核燃料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号に規定する核燃料物質をいう。)に係る再処理(原子炉等規制法第二条第八項に規定する再処理をいう。)を行うものとして政令で定めるものをいう。)に係る原子炉等規制法第四十四条第一項の指定を受けた者
2 前項の負担金は、当該事業年度の終了後三月以内に納付しなければならない。ただし、当該負担金の額の二分の一に相当する金額については、当該事業年度終了の日の翌日以後六月を経過した日から三月以内に納付することができる。
3 機構は、負担金をその納期限までに納付しない原子力事業者があるときは、遅滞なく、その旨を主務大臣に報告しなければならない。
4 主務大臣は、前項の規定による報告を受けたときは、その旨を公表するものとする。

(負担金の額)
第三十九条 前条第一項の負担金の額は、各原子力事業者につき、一般負担金年度総額(機構の事業年度ごとに原子力事業者から納付を受けるべき負担金の額(第五十二条第一項に規定する特別負担金額を除く。)の総額として機構が運営委員会の議決を経て定める額をいう。以下この条において同じ。)に負担金率(一般負担金年度総額に対する各原子力事業者が納付すべき額の割合として機構が運営委員会の議決を経て各原子力事業者ごとに定める割合をいう。以下この条において同じ。)を乗じて得た額とする。
2 一般負担金年度総額は、次に掲げる要件を満たすために必要なものとして主務省令で定める基準に従って定められなければならない。
一 機構の業務に要する費用の長期的な見通しに照らし、当該業務を適正かつ確実に実施するために十分なものであること。
二 各原子力事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営に支障を来し、又は当該事業の利用者に著しい負担を及ぼすおそれのないものであること。
3 負担金率は、各原子力事業者の原子炉の運転等に係る事業の規模、内容その他の事情を勘案して主務省令で定める基準に従って定められなければならない。
4 機構は、一般負担金年度総額若しくは負担金率を定め、又はこれらを変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
5 主務大臣は、一般負担金年度総額について前項の認可をしようとするときは、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。
6 機構は、第四項の認可を受けたときは、遅滞なく、当該認可に係る一般負担金年度総額又は負担金率を原子力事業者に通知しなければならない。
7 主務大臣は、機構の業務の実施の状況、各原子力事業者の原子炉の運転等に係る事業の状況その他の事情に照らし必要と認めるときは、機構に対し、一般負担金年度総額又は負担金率の変更をすべきことを命ずることができる。

(延滞金)
第四十条 原子力事業者は、負担金をその納期限までに納付しない場合には、機構に対し、延滞金を納付しなければならない。
2 延滞金の額は、未納の負担金の額に納期限の翌日からその納付の日までの日数に応じ年十四・五パーセントの割合を乗じて計算した額とする。

第三節 資金援助
第一款 通則
(資金援助の申込み)
第四十一条 原子力事業者は、賠償法第三条の規定により当該原子力事業者が損害を賠償する責めに任ずべき額(以下この条及び第四十三条第一項において「要賠償額」という。)が賠償措置額を超えると見込まれる場合には、機構が、原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に資するため、次に掲げる措置(以下「資金援助」という。)を行うことを、機構に申し込むことができる。
一 当該原子力事業者に対し、要賠償額から賠償措置額を控除した額を限度として、損害賠償の履行に充てるための資金を交付すること(以下「資金交付」という。)。
二 当該原子力事業者が発行する株式の引受け
三 当該原子力事業者に対する資金の貸付け
四 当該原子力事業者が発行する社債又は主務省令で定める約束手形の取得
五 当該原子力事業者による資金の借入れに係る債務の保証
2 前項の規定による申込みを行う原子力事業者は、機構に対し、次に掲げる事項を記載した書類を提出しなければならない。
一 原子力損害の状況
二 要賠償額の見通し及び損害賠償の迅速かつ適切な実施のための方策
三 資金援助を必要とする理由並びに実施を希望する資金援助の内容及び額
四 事業及び収支に関する中期的な計画

(資金援助の決定)
第四十二条 機構は、前条第一項の規定による申込みがあったときは、遅滞なく、運営委員会の議決を経て、当該申込みに係る資金援助を行うかどうか並びに当該資金援助を行う場合にあってはその内容及び額を決定しなければならない。
2 機構は、前項の規定による決定をしたときは、遅滞なく、当該決定に係る事項を当該申込みを行った原子力事業者に通知するとともに、主務大臣に報告しなければならない。
3 主務大臣は、前項の規定による報告を受けた場合において、当該報告に係る決定を受けた原子力事業者の原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を図るため必要があると認めるときは、機構に対し、当該決定の変更を命ずることができる。

(資金援助の内容等の変更)
第四十三条 前条第一項の規定による資金援助を行う旨の決定を受けた原子力事業者は、要賠償額の増加その他の事情により必要が生じた場合には、当該資金援助の内容又は額の変更の申込みをすることができる。
2 前項の申込みを行う原子力事業者は、機構に対し、第四十一条第二項各号に掲げる事項を記載した書類を提出しなければならない。
3 機構は、第一項の申込みがあったときは、遅滞なく、運営委員会の議決を経て、当該申込みに係る資金援助の内容又は額の変更を行うかどうかを決定しなければならない。
4 前条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による決定について準用する。

(交付資金の返還)
第四十四条 機構は、資金交付を受けた原子力事業者の損害賠償の履行の状況に照らし、当該原子力事業者に対する当該資金交付の額から当該履行に充てられた額を控除した額の全部又は一部が、当該履行に充てられる見込みがなくなったと認めるときは、その額を機構に対し納付することを求めなければならない。

第二款 特別事業計画の認定等
(特別事業計画の認定)
第四十五条 機構は、第四十二条第一項の規定による資金援助を行う旨の決定をしようとする場合において、当該資金援助に係る資金交付に要する費用に充てるため第四十八条第二項の規定による国債の交付を受ける必要があり、又はその必要が生ずることが見込まれるときは、運営委員会の議決を経て、当該資金援助の申込みを行った原子力事業者と共同して、当該原子力事業者による損害賠償の実施その他の事業の運営及び当該原子力事業者に対する資金援助に関する計画(以下「特別事業計画」という。)を作成し、主務大臣の認定を受けなければならない。
2 特別事業計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 第四十一条第二項第一号、第二号及び第四号に掲げる事項
二 原子力事業者の経営の合理化のための方策
三 前号に掲げるもののほか、原子力損害の賠償の履行に充てるための資金を確保するための原子力事業者による関係者に対する協力の要請その他の方策
四 原子力事業者の資産及び収支の状況に係る評価に関する事項
五 原子力事業者の経営責任の明確化のための方策
六 原子力事業者に対する資金援助の内容及び額
七 交付を希望する国債の額その他資金援助に要する費用の財源に関する事項
八 その他主務省令で定める事項
3 機構は、特別事業計画を作成しようとするときは、当該原子力事業者の資産に対する厳正かつ客観的な評価及び経営内容の徹底した見直しを行うとともに、当該原子力事業者による関係者に対する協力の要請が適切かつ十分なものであるかどうかを確認しなければならない。
4 主務大臣は、第一項の認定の申請があった特別事業計画が次に掲げる要件の全てに該当すると認める場合に限り、同項の認定をすることができる。
一 当該原子力事業者による原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施及び電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保を図る上で適切なものであること。
二 第二項第二号に掲げる事項が、当該原子力事業者が原子力損害の賠償の履行に充てるための資金を確保するため最大限の努力を尽くすものであること。
三 円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。
5 主務大臣は、第一項の認定をしようとするときは、あらかじめ、財務大臣その他関係行政機関の長に協議しなければならない。
6 主務大臣は、第一項の認定をしたときは、遅滞なく、その旨及び当該認定に係る特別事業計画(以下「認定特別事業計画」という。)を公表するものとする。ただし、当該特別事業計画を提出した原子力事業者の取引者の秘密を害するおそれのある事項及び当該原子力事業者の業務の遂行に不当な不利益を与えるおそれのある事項については、この限りでない。

(認定特別事業計画の変更)
第四十六条 機構及び原子力事業者は、認定特別事業計画の変更(主務省令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、主務大臣の認定を受けなければならない。
2 機構は、前項の認定の申請をしようとするときは、運営委員会の議決を経なければならない。
3 主務大臣は、第一項の認定の申請があったときは、次に掲げる要件の全てに該当すると認める場合に限り、同項の認定をするものとする。
一 変更後の特別事業計画が前条第四項各号に掲げる要件を満たしていること。
二 損害賠償の実施の状況その他の事情に照らし、認定特別事業計画の変更をすることについてやむを得ない事情があること。
4 前条第五項及び第六項の規定は、第一項の認定について準用する。

(認定特別事業計画の履行の確保)
第四十七条 主務大臣は、第四十五条第一項の認定の日から次に掲げる条件の全てが満たされたと認めて主務大臣が告示する日までの間(第三項及び第五十二条第一項において「特別期間」という。)、認定特別事業計画(変更があったときは、その変更後のもの。以下この項において同じ。)の履行の確保のために必要があると認めるときは、第四十五条第一項の認定(前条第一項の認定を含む。第六十九条第二項において同じ。)を受けた原子力事業者(以下「認定事業者」という。)に対し、認定特別事業計画の履行状況につき報告を求め、又は必要な措置を命ずることができる。
一 認定事業者の損害賠償の履行の状況及び認定特別事業計画に基づく資金援助(以下「特別資金援助」という。)の実施の状況に照らし、当該認定事業者に対する特別資金援助に係る資金交付を行うために新たに次条第二項の規定による国債の交付を行う必要が生ずることがないと認められること。
二 次条第二項の規定により機構に交付された国債のうち第四十九条第二項の規定により償還を受けていないものが政府に返還されていること。
三 第五十九条第四項の規定により機構が国庫に納付した額の合計額が第四十九条第二項の規定により国債の償還を受けた額の合計額に達していること。
2 主務大臣は、前項の規定により報告を求めた場合には、当該報告を公表することができる。
3 認定事業者が、当該認定に係る特別期間中に原子力事業者でなくなった場合には、当該原子力事業者でなくなった認定事業者は、当該特別期間中においては、引き続き原子力事業者であるものとみなして、この章の規定(これらの規定に係る罰則を含む。)を適用する。

第三款 特別資金援助に対する政府の援助
(国債の交付)
第四十八条 政府は、機構が特別資金援助に係る資金交付を行うために必要となる資金の確保に用いるため、国債を発行することができる。
2 政府は、前項の規定により、予算で定める額の範囲内において、国債を発行し、これを機構に交付するものとする。
3 第一項の規定により発行する国債は、無利子とする。
4 第一項の規定により発行する国債については、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。
5 前三項に定めるもののほか、第一項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、財務省令で定める。

(国債の償還等)
第四十九条 機構は、特別資金援助に係る資金交付を行うために必要となる額を限り、前条第二項の規定により交付された国債の償還の請求をすることができる。
2 政府は、前条第二項の規定により交付した国債の全部又は一部につき機構から償還の請求を受けたときは、速やかに、その償還をしなければならない。
3 前項の規定による償還は、この法律の規定により行う原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施を確保するための財政上の措置に関する措置の経理を明確にすることを目的としてエネルギー対策特別会計に設けられる勘定の負担において行うものとする。
4 前項に規定する勘定の負担は、特別の資金の設置及び当該資金の適切な受払いその他の当該勘定における資金の確保に必要な措置により円滑に行われなければならない。
5 前各項に定めるもののほか、前条第二項の規定により政府が交付した国債の償還に関し必要な事項は、財務省令で定める。

(国債の返還等)
第五十条 機構は、第四十八条第二項の規定により交付された国債のうち償還されていないものがある場合において、認定事業者の損害賠償の履行の状況及び特別資金援助の実施の状況に照らし、当該認定事業者に対する特別資金援助に係る資金交付を行うために新たに前条第一項の規定により国債の償還の請求を行う必要が生ずることがないと認めるときは、その償還されていない国債を政府に返還しなければならない。
2 政府は、前項の規定により国債が返還された場合には、直ちに、これを消却しなければならない。
3 前二項に定めるもののほか、第四十八条第二項の規定により政府が交付した国債の返還及び消却に関し必要な事項は、財務省令で定める。

(資金の交付)
第五十一条 政府は、機構が特別資金援助に係る資金交付を行う場合において、第四十八条第二項の規定による国債の交付がされてもなお当該資金交付に係る資金に不足を生ずるおそれがあると認めるときに限り、当該資金交付を行うために必要となる資金の確保のため、予算で定める額の範囲内において、機構に対し、必要な資金を交付することができる。

第四款 負担金の額の特例
第五十二条 認定事業者が、当該認定に係る特別期間内にその全部又は一部が含まれる機構の事業年度について納付すべき負担金の額は、第三十九条第一項の規定にかかわらず、同項の規定により算定した額に特別負担金額(認定事業者に追加的に負担させることが相当な額として機構が事業年度ごとに運営委員会の議決を経て定める額をいう。以下この条において同じ。)を加算した額とする。
2 特別負担金額は、認定事業者の収支の状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に支障を生じない限度において、認定事業者に対し、できるだけ高額の負担を求めるものとして主務省令で定める基準に従って定められなければならない。
3 機構は、特別負担金額を定め、又はこれを変更しようとするときは、主務大臣の認可を受けなければならない。
4 主務大臣は、前項の認可をしようとするときは、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。
5 機構は、第三項の認可を受けたときは、遅滞なく、当該認可に係る特別負担金額を認定事業者に通知しなければならない。

第四節 損害賠償の円滑な実施に資するための相談その他の業務
(相談及び情報提供等)
第五十三条 機構は、原子力事業者に対する資金援助を行った場合には、当該原子力事業者に係る原子力損害を受けた者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行うものとする。この場合において、機構は、当該業務を第三者に委託することができる。

(資産の買取り)
第五十四条 機構は、資金援助を受けた原子力事業者からの申込みに基づき、当該資金援助に係る原子力損害の賠償の履行に充てるための資金の確保に資するため、当該原子力事業者の保有する資産の買取りを行うことができる。
2 機構は、前項の資産の買取りの申込みがあったときは、遅滞なく、運営委員会の議決を経て、当該資産の買取りを行うかどうかを決定しなければならない。
3 第四十二条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による決定について準用する。

(機構による原子力損害の賠償の支払等)
第五十五条 機構は、資金援助を受けた原子力事業者の委託を受けて、当該原子力事業者に係る原子力損害の賠償の全部又は一部の支払を行うことができる。
2 機構は、前項の規定による支払を行うため必要があると認めるときは、官庁、公共団体その他の者に照会し、又は協力を求めることができる。
3 機構は、平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律(平成二十三年法律第九十一号)の定めるところにより、同法第十五条に規定する主務大臣又は同法第八条第一項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行う都道府県知事の委託を受けて、同法第三条第一項の規定による仮払金の支払に関する事務の一部(会計法(昭和二十二年法律第三十五号)に基づく支出の決定及び交付の事務を除く。)を行うことができる。


第六章 財務及び会計
(事業年度)
第五十六条 機構の事業年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わる。

(予算等の認可)
第五十七条 機構は、毎事業年度、予算及び資金計画を作成し、当該事業年度の開始前に、主務大臣の認可を受けなければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 主務大臣は、前項の認可をしようとするときは、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。

(財務諸表等)
第五十八条 機構は、毎事業年度、貸借対照表、損益計算書、利益の処分又は損失の処理に関する書類その他主務省令で定める書類及びこれらの附属明細書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に主務大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 機構は、前項の規定により財務諸表を主務大臣に提出するときは、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添付しなければならない。
3 機構は、第一項の規定による主務大臣の承認を受けたときは、遅滞なく、財務諸表を官報に公告し、かつ、財務諸表並びに前項の事業報告書、決算報告書及び監事の意見書を、各事務所に備えて置き、主務省令で定める期間、一般の閲覧に供しなければならない。
4 機構は、負担金について、原子力事業者ごとに計数を管理しなければならない。

(利益及び損失の処理)
第五十九条 機構は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失を埋め、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならない。
2 機構は、毎事業年度、損益計算において損失を生じたときは、前項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならない。
3 機構は、予算をもって定める額に限り、第一項の規定による積立金を第三十五条第二号及び第三号に掲げる業務に要する費用に充てることができる。
4 機構は、特別資金援助に係る資金交付を行った場合には、毎事業年度、第一項に規定する残余があるときは、当該資金交付を行うために既に第四十九条第二項の規定により国債の償還を受けた額の合計額からこの項の規定により既に国庫に納付した額を控除した額までを限り、国庫に納付しなければならない。この場合において、第一項中「なお残余があるとき」とあるのは、「なお残余がある場合において、第四項の規定により国庫に納付しなければならない額を控除してなお残余があるとき」とする。
5 前項の規定による納付金に関し、納付の手続その他必要な事項は、政令で定める。

(借入金及び原子力損害賠償支援機構債)
第六十条 機構は、主務大臣の認可を受けて、金融機関その他の者から資金の借入れ(借換えを含む。)をし、又は原子力損害賠償支援機構債(以下「機構債」という。)の発行(機構債の借換えのための発行を含む。)をすることができる。この場合において、機構は、機構債の債券を発行することができる。
2 主務大臣は、前項の認可をしようとするときは、あらかじめ、財務大臣に協議しなければならない。
3 第一項の規定による借入金の現在額及び同項の規定により発行する機構債の元本に係る債務の現在額の合計額は、政令で定める額を超えることとなってはならない。
4 第一項の規定による機構債の債権者は、機構の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。
5 前項の先取特権の順位は、民法(明治二十九年法律第八十九号)の規定による一般の先取特権に次ぐものとする。
6 機構は、主務大臣の認可を受けて、機構債の発行に関する事務の全部又は一部を銀行又は信託会社に委託することができる。
7 会社法(平成十七年法律第八十六号)第七百五条第一項及び第二項並びに第七百九条の規定は、前項の規定により委託を受けた銀行又は信託会社について準用する。
8 第一項、第二項及び第四項から前項までに定めるもののほか、機構債に関し必要な事項は、政令で定める。

(政府保証)
第六十一条 政府は、法人に対する政府の財政援助の制限に関する法律(昭和二十一年法律第二十四号)第三条の規定にかかわらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、機構の前条第一項の借入れ又は機構債に係る債務の保証をすることができる。

(余裕金の運用)
第六十二条 機構は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。
一 国債その他主務大臣の指定する有価証券の保有
二 主務大臣の指定する金融機関への預金
三 その他主務省令で定める方法

(省令への委任)
第六十三条 この法律に定めるもののほか、機構の財務及び会計に関し必要な事項は、主務省令で定める。


第七章 監督
(監督)
第六十四条 機構は、主務大臣が監督する。
2 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構に対し、その業務に関して監督上必要な命令をすることができる。

(報告及び検査)
第六十五条 主務大臣は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、機構に対しその業務に関し報告をさせ、又はその職員に機構の事務所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。
2 前項の規定により職員が立入検査をする場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人にこれを提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。


第八章 雑則
(定款の変更)
第六十六条 定款の変更は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。

(解散)
第六十七条 機構は、解散した場合において、その債務を弁済してなお残余財産があるときは、これを各出資者に対し、その出資額を限度として分配するものとする。
2 前項に規定するもののほか、機構の解散については、別に法律で定める。

(政府による資金の交付)
第六十八条 政府は、著しく大規模な原子力損害の発生その他の事情に照らし、機構の業務を適正かつ確実に実施するために十分なものとなるように負担金の額を定めるとしたならば、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営に支障を来し、又は当該事業の利用者に著しい負担を及ぼす過大な額の負担金を定めることとなり、国民生活及び国民経済に重大な支障を生ずるおそれがあると認められる場合に限り、予算で定める額の範囲内において、機構に対し、必要な資金を交付することができる。

(法人税の特例)
第六十九条 原子力事業者が第三十八条の規定に基づき機構の事業年度について機構の業務に要する費用に充てることとされる負担金を納付する場合には、その納付する負担金の額は、当該事業年度終了の日の属する当該原子力事業者の事業年度(法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第十三条及び第十四条に規定する事業年度をいう。次項において同じ。)の所得の金額又は連結事業年度(同法第十五条の二に規定する連結事業年度をいう。次項において同じ。)の連結所得(同法第二条第十八号の四に規定する連結所得をいう。次項において同じ。)の金額の計算上、損金の額に算入する。
2 原子力事業者が第四十五条第一項の認定を受けたときは、その特別資金援助(第四十一条第一項第一号に掲げる措置に限る。)による収益の額については、機構から交付を受けた資金の額を当該交付を受けた日の属する事業年度の所得の金額又は連結事業年度の連結所得の金額の計算上、益金の額に算入する。
3 前二項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

(登録免許税の特例)
第七十条 機構が第五十四条第一項の規定により特別資金援助に係る資金交付を受けた認定事業者から資産の買取りを行う場合における当該資産の買取りに伴う不動産の所有権の移転の登記については、財務省令で定めるところにより当該買取り後三月以内に登記を受けるものに限り、登録免許税を課さない。

(主務省令への委任)
第七十一条 この法律に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な事項は、主務省令で定める。

(主務大臣及び主務省令)
第七十二条 この法律における主務大臣及び主務省令は、政令で定める。


第九章 罰則
第七十三条 第二十一条(第三十四条において準用する場合を含む。)の規定に違反してその職務上知ることのできた秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

第七十四条 第四十七条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、五十万円以下の罰金に処する。

第七十五条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした機構の役員又は職員は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第四十二条第二項(第四十三条第四項及び第五十四条第三項において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
二 第六十五条第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき。

第七十六条 第三十七条第二項の規定による報告若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出をした者は、三十万円以下の罰金に処する。
第七十七条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第七十四条又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の刑を科する。

第七十八条 次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした機構の役員は、二十万円以下の過料に処する。
一 この法律により主務大臣の認可又は承認を受けなければならない場合において、その認可又は承認を受けなかったとき。
二 第七条第一項の規定による政令に違反して登記することを怠ったとき。
三 第三十五条に規定する業務以外の業務を行ったとき。
四 第三十八条第三項の規定に違反して、報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
五 第三十九条第七項、第四十二条第三項(第四十三条第四項及び第五十四条第三項において準用する場合を含む。)又は第六十四条第二項の規定による主務大臣の命令に違反したとき。
六 第五十八条第三項の規定に違反して、書類を備え置かず、又は閲覧に供しなかったとき。
七 第六十二条の規定に違反して業務上の余裕金を運用したとき。

第七十九条 第六条第二項の規定に違反した者は、二十万円以下の過料に処する。


附 則 抄
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第五十五条第三項の規定は、平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律の施行の日又はこの法律の施行の日のいずれか遅い日から施行する。

(経過措置)
第二条 この法律の施行の際現にその名称中に原子力損害賠償支援機構という文字を用いている者については、第六条第二項の規定は、この法律の施行後六月間は、適用しない。

第三条 第四十一条の規定は、この法律の施行前に生じた原子力損害についても適用する。
2 この法律の施行前に生じた原子力損害に関し資金援助を機構に申し込む原子力事業者は、その経営の合理化及び経営責任の明確化を徹底して行うとともに、当該原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施のため、当該原子力事業者の株主その他の利害関係者に対し、必要な協力を求めなければならない。

第四条 機構の最初の事業年度は、第五十六条の規定にかかわらず、その成立の日に始まり、その後最初の三月三十一日に終わるものとする。

第五条 機構の最初の事業年度の予算及び資金計画については、第五十七条第一項中「当該事業年度の開始前に」とあるのは、「機構の成立後遅滞なく」とする。

(検討)
第六条 政府は、この法律の施行後できるだけ早期に、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故(以下「平成二十三年原子力事故」という。)の原因等の検証、平成二十三年原子力事故に係る原子力損害の賠償の実施の状況、経済金融情勢等を踏まえ、原子力損害の賠償に係る制度における国の責任の在り方、原子力発電所の事故が生じた場合におけるその収束等に係る国の関与及び責任の在り方等について、これを明確にする観点から検討を加えるとともに、原子力損害の賠償に係る紛争を迅速かつ適切に解決するための組織の整備について検討を加え、これらの結果に基づき、賠償法の改正等の抜本的な見直しをはじめとする必要な措置を講ずるものとする。
2 政府は、この法律の施行後早期に、平成二十三年原子力事故の原因等の検証、平成二十三年原子力事故に係る原子力損害の賠償の実施の状況、経済金融情勢等を踏まえ、平成二十三年原子力事故に係る資金援助に要する費用に係る当該資金援助を受ける原子力事業者と政府及び他の原子力事業者との間の負担の在り方、当該資金援助を受ける原子力事業者の株主その他の利害関係者の負担の在り方等を含め、国民負担を最小化する観点から、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。
3 政府は、国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図る観点から、電気供給に係る体制の整備を含むエネルギーに関する政策の在り方についての検討を踏まえつつ、原子力政策における国の責任の在り方等について検討を加え、その結果に基づき、原子力に関する法律の抜本的な見直しを含め、必要な措置を講ずるものとする。


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○原子力損害賠償支援機構法施行令
(平成二十三年八月十日)
(政令第二百五十七号)
原子力損害賠償支援機構法施行令をここに公布する。

原子力損害賠償支援機構法施行令
内閣は、原子力損害賠償支援機構法(平成二十三年法律第九十四号)第七条第一項、第十三条第一項、第三十八条第一項第二号、第五十九条第五項、第六十条第三項及び第八項、第六十九条第三項並びに第七十二条の規定に基づき、この政令を制定する。

(実用再処理施設)
第一条 原子力損害賠償支援機構法(以下「法」という。)第三十八条第一項第二号に規定する政令で定めるものは、実用発電用原子炉(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下この条において「原子炉等規制法」という。)第二十三条第一項第一号に規定する実用発電用原子炉をいう。)において燃料として使用した核燃料物質(原子力基本法(昭和三十年法律第百八十六号)第三条第二号に規定する核燃料物質をいう。)に係る再処理(原子炉等規制法第二条第八項に規定する再処理をいう。)を行う再処理施設(原子炉等規制法第四十四条第二項第二号に規定する再処理施設をいう。)であって試験研究の用に供するもの以外のものとする。

(国庫への納付手続)
第二条 原子力損害賠償支援機構(以下「機構」という。)は、法第五十九条第四項の規定による納付金を納付するときは、当該納付金を翌事業年度の七月三十一日までに国庫に納付しなければならない。
2 機構は、法第五十九条第四項の規定による納付金を納付するときは、同項の規定に基づいて計算した国庫に納付する額の計算書に、当該事業年度末の貸借対照表、当該事業年度の損益計算書その他主務省令で定める書類を添付して、翌事業年度の七月二十一日までに、これを主務大臣に提出しなければならない。

(納付金の帰属する会計)
第三条 法第五十九条第四項の規定による納付金は、エネルギー対策特別会計の原子力損害賠償支援勘定に帰属する。

(借入金及び原子力損害賠償支援機構債の発行の限度額)
第四条 法第六十条第三項に規定する政令で定める額は、二兆円とする。

(原子力損害賠償支援機構債の債券)
第五条 法第六十条第一項に規定する原子力損害賠償支援機構債(以下「機構債」という。)を発行するときは、当該機構債につき社債、株式等の振替に関する法律(平成十三年法律第七十五号。第八条第一項第六号及び第二項第三号において「社債等振替法」という。)の規定の適用がある場合を除き、機構債の債券を発行しなければならない。
2 前項の機構債の債券は、無記名式で利札付きのものとする。

(機構債の発行の方法)
第六条 機構債の発行は、募集の方法による。

(募集機構債に関する事項の決定)
第七条 機構は、その発行する機構債を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集機構債(当該募集に応じて当該機構債の引受けの申込みをした者に対して割り当てる機構債をいう。以下同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 募集機構債の総額
二 各募集機構債の金額
三 募集機構債の利率
四 募集機構債の償還の方法及び期限
五 利息支払の方法及び期限
六 機構債の債券を発行するときは、その旨
七 各募集機構債の払込金額(各募集機構債と引換えに払い込む金銭の額をいう。第十三条第二項第三号において同じ。)
八 募集機構債と引換えにする金銭の払込みの期日
九 一定の日までに募集機構債の総額について割当てを受ける者を定めていない場合において、募集機構債の全部を発行しないこととするときは、その旨及びその一定の日
十 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項

(募集機構債の申込み)
第八条 機構は、前条の募集に応じて募集機構債の引受けの申込みをしようとする者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 募集機構債の名称
二 当該募集に係る前条各号に掲げる事項
三 機構債の債券を発行するときは、無記名式である旨
四 引受けの申込みがあった募集機構債の額が募集機構債の総額を超える場合の措置
五 募集又は管理の委託を受けた者があるときは、その商号又は名称
六 社債等振替法の規定の適用があるときは、その旨及び振替機関(社債等振替法第二条第二項に規定する振替機関をいう。)の商号
七 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項
2 前条の募集に応じて募集機構債の引受けの申込みをする者は、次に掲げる事項を記載した書面を機構に交付しなければならない。
一 申込みをする者の氏名又は名称及び住所
二 引き受けようとする募集機構債の金額及び金額ごとの数
三 社債等振替法の規定の適用がある機構債(第十条第二項において「振替機構債」という。)の募集に応じようとする者については、自己のために開設された当該機構債の振替を行うための口座
3 前項の申込みをする者は、同項の書面の交付に代えて、主務省令で定めるところにより、機構の承諾を得て、同項の書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって主務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。この場合において、当該申込みをした者は、同項の書面を交付したものとみなす。
4 機構は、第一項各号に掲げる事項について変更があったときは、直ちに、その旨及び当該変更があった事項を第二項の申込みをした者(以下「申込者」という。)に通知しなければならない。
5 機構が申込者に対してする通知又は催告は、第二項第一号の住所(当該申込者が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を機構に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)に宛てて発すれば足りる。
6 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。

(募集機構債の割当て)
第九条 機構は、申込者の中から募集機構債の割当てを受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集機構債の金額及び金額ごとの数を定めなければならない。この場合において、機構は、当該申込者に割り当てる募集機構債の金額ごとの数を、前条第二項第二号の数よりも減少することができる。
2 機構は、第七条第八号の期日の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集機構債の金額及び金額ごとの数を通知しなければならない。

(募集機構債の申込み及び割当てに関する特則)
第十条 前二条の規定は、地方公共団体が募集機構債を引き受ける場合又は募集機構債の募集の委託を受けた者が自ら募集機構債を引き受ける場合においては、その引き受ける部分については、適用しない。
2 前項の場合において、振替機構債を引き受ける地方公共団体又は振替機構債の募集の委託を受けた者は、その引受けの際に、第八条第二項第三号に掲げる事項を機構に示さなければならない。

(募集機構債の権利者)
第十一条 次の各号に掲げる者は、当該各号に定める募集機構債の権利者となる。
一 申込者 機構の割り当てた募集機構債
二 募集機構債を引き受けた地方公共団体 当該地方公共団体が引き受けた募集機構債
三 募集機構債の募集の委託を受けた者で自ら募集機構債を引き受けたもの その者が引き受けた募集機構債

(機構債の債券の発行)
第十二条 機構は、機構債の債券を発行する旨の定めがある機構債を発行した日以後遅滞なく、当該機構債の債券を発行しなければならない。
2 機構債の各債券には、第七条第二号から第五号まで並びに第八条第一項第一号、第三号及び第五号に掲げる事項並びに番号を記載し、機構の理事長がこれに記名押印しなければならない。

(原子力損害賠償支援機構債原簿)
第十三条 機構は、主たる事務所に原子力損害賠償支援機構債原簿を備えて置かなければならない。
2 原子力損害賠償支援機構債原簿には、次の事項を記載し、又は記録しなければならない。
一 第七条第三号から第六号までに掲げる事項その他の機構債の内容を特定するものとして主務省令で定める事項(次号において「種類」という。)
二 種類ごとの機構債の総額及び各機構債の金額
三 各機構債の払込金額及び払込みの日
四 機構債の債券を発行したときは、機構債の債券の番号、発行の日及び機構債の債券の数
五 第八条第一項第一号、第五号及び第六号に掲げる事項
六 元利金の支払に関する事項
七 前各号に掲げるもののほか、主務省令で定める事項

(機構債の債券を発行する場合の機構債の譲渡)
第十四条 機構債の債券を発行する旨の定めがある機構債の譲渡は、当該機構債に係る債券を交付しなければ、その効力を生じない。

(権利の推定等)
第十五条 機構債の債券の占有者は、当該債券に係る機構債についての権利を適法に有するものと推定する。
2 機構債の債券の交付を受けた者は、当該債券に係る機構債についての権利を取得する。ただし、その者に悪意又は重大な過失があるときは、この限りでない。

(機構債の債券を発行する場合の機構債の質入れ)
第十六条 機構債の債券を発行する旨の定めがある機構債の質入れは、当該機構債に係る債券を交付しなければ、その効力を生じない。

(機構債の質入れの対抗要件)
第十七条 機構債の債券を発行する旨の定めがある機構債の質権者は、継続して当該機構債に係る債券を占有しなければ、その質権をもって機構その他の第三者に対抗することができない。

(機構債の債券の喪失)
第十八条 機構債の債券は、非訟事件手続法(明治三十一年法律第十四号)第百四十二条に規定する公示催告手続によって無効とすることができる。
2 機構債の債券を喪失した者は、非訟事件手続法第百四十八条第一項に規定する除権決定を得た後でなければ、その再発行を請求することができない。
(利札が欠けている場合における機構債の償還)

第十九条 機構は、債券が発行されている機構債をその償還の期限前に償還する場合において、これに付された利札が欠けているときは、当該利札に表示される機構債の利息の請求権の額を償還額から控除しなければならない。ただし、当該請求権が弁済期にある場合は、この限りでない。
2 前項の利札の所持人は、いつでも、機構に対し、これと引換えに同項の規定により控除しなければならない額の支払を請求することができる。

(機構債の償還請求権等の消滅時効)
第二十条 機構債の償還請求権は、十年間行使しないときは、時効によって消滅する。
2 機構債の利息の請求権及び前条第二項の規定による請求権は、五年間行使しないときは、時効によって消滅する。

(機構債の発行の認可)
第二十一条 機構は、法第六十条第一項の規定により機構債の発行の認可を受けようとするときは、機構債の募集の日の二十日前までに次に掲げる事項を記載した申請書を主務大臣に提出しなければならない。
一 機構債の発行を必要とする理由
二 第七条第一号から第五号まで及び第七号並びに第八条第一項第一号、第五号及び第六号に掲げる事項
三 機構債の募集の方法
四 機構債の発行に要する費用の概算額
五 前各号に掲げるもののほか、機構債の債券に記載しようとする事項
2 前項の申請書には、次に掲げる書類を添付しなければならない。
一 第八条第一項各号に掲げる事項を記載した書面
二 機構債の発行により調達する資金の使途を記載した書面
三 機構債の引受けの見込みを記載した書面

(主務省令への委任)
第二十二条 第五条から前条までに定めるもののほか、機構債に関し必要な事項は、主務省令で定める。

(法人税の特例)
第二十三条 法第六十九条第一項又は第二項の原子力事業者が同条第一項に規定する連結事業年度において同項又は同条第二項の規定の適用を受けた場合において、当該原子力事業者の法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第八十一条の十八第一項に規定する個別所得金額又は個別欠損金額を計算するときは、法第六十九条第一項の規定により損金の額に算入される金額は、法人税法第八十一条の十八第一項に規定する個別帰属損金額に、法第六十九条第二項の規定により益金の額に算入される金額は、法人税法第八十一条の十八第一項に規定する個別帰属益金額に、それぞれ含まれるものとする。

(主務大臣及び主務省令)
第二十四条 法及びこの政令における主務大臣は、次の各号に掲げる事項の区分に応じ、当該各号に定める大臣とする。
一 法第五条第二項、第十一条、第十七条及び第十九条の規定による認可、法第二十四条第四項の規定による意見の受理、法第二十五条第一項の規定による任命、同条第二項の規定による認可、法第二十八条の規定による解任、法第二十九条ただし書の規定による承認、法第六十四条第一項の規定による監督(法第五章及び第六章の規定を施行するために行うものを除く。)、同条第二項の規定による命令(法第五章及び第六章の規定を施行するために行うものを除く。)、法第六十五条第一項の規定による報告の徴収及び立入検査(法第五章及び第六章の規定を施行するために行うものを除く。)並びに法第六十六条の規定による認可に関する事項 内閣総理大臣及び文部科学大臣
二 法第三十六条第一項の規定による認可、法第三十八条第三項の規定による報告の受理、同条第四項の規定による公表、法第三十九条第四項の規定による認可、同条第五項の規定による協議、同条第七項の規定による命令、法第四十二条第二項(法第四十三条第四項及び第五十四条第三項において準用する場合を含む。)の規定による報告の受理、法第四十二条第三項(法第四十三条第四項及び第五十四条第三項において準用する場合を含む。)の規定による命令、法第四十五条第一項の規定による認定、同条第五項(法第四十六条第四項において準用する場合を含む。)の規定による協議、法第四十五条第六項(法第四十六条第四項において準用する場合を含む。)の規定による公表、法第四十六条第一項の規定による認定、法第四十七条第一項の規定による告示、報告の徴収及び命令、同条第二項の規定による公表、法第五十二条第三項の規定による認可、同条第四項の規定による協議、法第六十四条第一項の規定による監督(法第五章の規定を施行するために行うものに限る。)、同条第二項の規定による命令(同章の規定を施行するために行うものに限る。)並びに法第六十五条第一項の規定による報告の徴収及び立入検査(同章の規定を施行するために行うものに限る。)に関する事項 内閣総理大臣及び経済産業大臣
三 法第五十七条第一項の規定による認可、同条第二項の規定による協議、法第五十八条第一項の規定による承認、法第六十条第一項の規定による認可、同条第二項の規定による協議、同条第六項の規定による認可、法第六十二条第一号及び第二号の規定による指定、法第六十四条第一項の規定による監督(法第六章の規定を施行するために行うものに限る。)、同条第二項の規定による命令(同章の規定を施行するために行うものに限る。)並びに法第六十五条第一項の規定による報告の徴収及び立入検査(同章の規定を施行するために行うものに限る。)並びに第二条第二項の規定による計算書の受理及び第二十一条第一項の規定による申請書の受理に関する事項 内閣総理大臣、文部科学大臣及び経済産業大臣
2 法第六十五条第一項に規定する主務大臣の権限は、各主務大臣がそれぞれ単独に行使することを妨げない。
3 法及びこの政令における主務省令は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める命令とする。
一 法第三十六条第二項、第三十九条第二項及び第三項、第四十一条第一項第四号、第四十五条第二項第八号、第四十六条第一項並びに第五十二条第二項の主務省令並びに法第七十一条の主務省令(法第五章の規定の施行に関し必要な事項並びに同章の規定を施行するために行う法第六十四条第一項の規定による監督、同条第二項の規定による命令並びに法第六十五条第一項の規定による報告の徴収及び立入検査に関し必要な事項を定めるものに限る。) 内閣総理大臣及び経済産業大臣の発する命令
二 法第五十八条第一項及び第三項、第六十二条第三号並びに第六十三条の主務省令並びに法第七十一条の主務省令(法第六章の規定を施行するために行う法第六十四条第一項の規定による監督、同条第二項の規定による命令並びに法第六十五条第一項の規定による報告の徴収及び立入検査に関し必要な事項を定めるものに限る。)並びに第二条第二項、第七条第十号、第八条第一項第七号及び第三項、第十三条第二項第一号及び第七号並びに第二十二条の主務省令 内閣総理大臣、文部科学大臣及び経済産業大臣の発する命令
三 法第七十一条の主務省令(前二号に掲げるものを除く。) 内閣総理大臣及び文部科学大臣の発する命令

附 則 抄
(施行期日)
第一条 この政令は、公布の日から施行する。


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■2条「原子力損害」の意味・範囲 継続的損害の問題

■2条「原子力損害」の意味・範囲 継続的損害の問題


 損害発生が継続する場合に、加害者はどこまで賠償しなければならないのか。


1 精神的損害
 避難生活を強いられ、そのことによる精神的苦痛が継続している場合

2 財産的損害のうち積極損害
 避難生活を強いられ,自宅土地建物等の使用が継続的に不可能,また生活費の増大が継続する場合

3 財産的損害のうち消極損害(休業損害,逸失利益)
 避難、出荷制限、風評被害などで失職、求職、休業、廃業等を強いられ無収入あるいは減収が継続している場合


特に3が問題。

平成23年8月5日に出された中間指針を見ると
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-196.html
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〔営業損害〕
7)営業損害の終期は、基本的には対象者が従来と同じ又は同等の営業活動を営むことが可能となった日とすることが合理的であるが、本件事故により生じた減収分がある期間を含め、どの時期までを賠償の対象とするかについては、現時点で全てを示すことは困難であるため、改めて検討することとする。但し、その検討に当たっては、一般的には事業拠点の移転や転業等の可能性があることから、賠償対象となるべき期間には一定の限度があることや、早期に転業する等特別の努力を行った者が存在することに、留意する必要がある。

〔就労不能等に伴う損害〕
8)就労不能等に伴う損害の終期は、基本的には対象者が従来と同じ又は同等の就労活動を営むことが可能となった日とすることが合理的であるが、本件事故により生じた減収分がある期間を含め、どの時期までを賠償の対象とするかについて、その具体的な時期等を現時点で見通すことは困難であるため、改めて検討することとする。但し、その検討に当たっては、一般的には、就労不能等に対しては転職等により対応する可能性があると考えられることから、賠償対象となるべき期間には一定の限度があることや、早期の転職や臨時の就労等特別の努力を行った者が存在することに留意する必要がある。

〔風評被害〕
5)なお、「風評被害」は、上記のように当該商品等に対する危険性を懸念し敬遠するという消費者・取引先等の心理的状態に基づくものである以上、風評被害が賠償対象となるべき期間には一定の限度がある。
 一般的に言えば、「平均的・一般的な人を基準として合理性が認められる買い控え、取引停止等が収束した時点」が終期であるが、いまだ本件事故が収束していないこと等から、少なくとも現時点において一律に示すことは困難であり、当面は、客観的な統計データ等を参照しつつ、取引数量・価格の状況、具体的な買い控え等の発生状況、当該商品又はサービスの特性等を勘案し、個々の事情に応じて合理的に判定することが適当である。
-----------------------------



 このように中間指針では,継続的損害の「終期」の問題として扱うかのような表現である。

〔考え方〕 
 まず、一般的な価値判断として、被害者の意思と能力において、避けようのある損害については、特にやむを得ないよう事情がない限り,そのようなものまで全部加害者に賠償させる必要はない。
 被害者において、損害の発生拡大を避けようと思えばさけることができるのに、何もせず漫然と避難生活をすることか通常人の合理的判断に基づくものとはいえないような場合には、そのような損害発生拡大に至る経緯は、通常の因果の流れによるものとはいえず、通常損害ではないと理解し、原則として相当因果関係は否定されると解する余地はあろう。
 
 これは被害者の意思・判断が、損害の発生拡大に関与した場合に、その損害を加害者に負担させることができるのかという問題で、そういう意味では、被害者の自殺、自主避難者の問題と似たところもある。ただし、これは転職、転業、移転等の作為で損害の拡大を防ぐというものであるから、この場合、何もしないという不作為の合理性が問われることになる。これに対して、自主避難者の問題は、避難という作為の合理性が問われている。


 いくらか参考になるものとして、以下の最高裁判決がある。これは、店舗賃借人の営業損害が継続して発生する場合に、その範囲を「賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期」基準に限定しようとするものである。端的に被害者側の損害軽減「義務」を認めたものと理解されることもあるが、裁判所は、相当因果関係説を前提に、被害者の合理的でない意思・判断が作用して損害が発生・拡大した場合に、それを通常の因果経路による損害ではなく、民法416条1項の通常損害に該当しないものと解したものと理解する余地があろう。

・最高裁 平成21年1月19日判決(民集第63巻1号97頁)
〔事案〕
 店舗の賃借人が賃貸人の修繕義務の不履行により被った営業利益相当の損害について,賃借人が損害を回避又は減少させる措置を執ることができたと解される時期以降に被った損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできないとされた事例
〔裁判要旨〕
 ビルの店舗部分を賃借してカラオケ店を営業していた賃借人が,同店舗部分に発生した浸水事故に係る賃貸人の修繕義務の不履行により,同店舗部分で営業することができず,営業利益相当の損害を被った場合において,次の(1)~(3)などの判示の事情の下では,遅くとも賃貸人に対し損害賠償を求める本件訴えが提起された時点においては,賃借人がカラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を執ることなく発生する損害のすべてについての賠償を賃貸人に請求することは条理上認められず,賃借人が上記措置を執ることができたと解される時期以降における損害のすべてが民法416条1項にいう通常生ずべき損害に当たるということはできない。
(1) 賃貸人が上記修繕義務を履行したとしても,上記ビルは,上記浸水事故時において建築から約30年が経過し,老朽化して大規模な改修を必要としており,賃借人が賃貸借契約をそのまま長期にわたって継続し得たとは必ずしも考え難い。
(2) 賃貸人は,上記浸水事故の直後に上記ビルの老朽化を理由に賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしており,同事故から約1年7か月が経過して本件訴えが提起された時点では,上記店舗部分における営業の再開は,実現可能性の乏しいものとなっていた。
(3) 賃借人が上記店舗部分で行っていたカラオケ店の営業は,それ以外の場所では行うことができないものとは考えられないし,上記浸水事故によるカラオケセット等の損傷に対しては保険金が支払われていた。
〔判決文抜粋〕
「そうすると,遅くとも,本件本訴が提起された時点においては,被上告人がカラオケ店の営業を別の場所で再開する等の損害を回避又は減少させる措置を何ら執ることなく,本件店舗部分における営業利益相当の損害が発生するにまかせて,その損害のすべてについての賠償を上告人らに請求することは,条理上認められないというべきであり,民法416条1項にいう通常生ずべき損害の解釈上,本件において,被上告人が上記措置を執ることができたと解される時期以降における上記営業利益相当の損害のすべてについてその賠償を上告人らに請求することはできないというべきである。(3) 原審は,上記措置を執ることができたと解される時期やその時期以降に生じた賠償すべき損害の範囲等について検討することなく,被上告人は,本件修繕義務違反による損害として,本件事故の日の1か月後である平成9年3月12日から本件本訴の提起後3年近く経過した平成13年8月11日までの4年5か月間の営業利益喪失の損害のすべてについて上告人らに賠償請求することができると判断したのであるから,この判断には民法416条1項の解釈を誤った違法があり,その違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。5 以上によれば,上記と同旨をいう論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そこで,上告人らが賠償すべき損害の範囲について更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。」


 
 この判決は、賃貸借契約の契約当事者間に生じる損害賠償責任の問題であって、賃貸物の修繕義務との関係や、契約解除の成否・時期等の問題があって、その理屈を、原発事故のような不法行為の加害者・被害者の関係にそのまま持ち込むことはできないが、継続的に発生する営業損害について、被害者の意思・判断が損害拡大に関与した場合に、一定の事象の下に、通常生すべき損害(通常損害)ではないとして、賠償を否定している点は、参考になろう。


 結局、不法行為の場合、継続的に発生する損害の範囲を限定する理屈としては、以下のようなものがあるのではないか。
 ↓

A 損害の発生
  そもそも、その損害(利益)が継続しえたか否か、
 ex あと1年で退職予定だった場合は、当然2年目以降の損害は生じていない?

B 事実的因果関係
原発から避難等と関係なく、失職、減収等に至っている場合
ex 退職、失業、廃業直後に原発事故発生、または、原発事故発生前からそれが決まっていた場合など

C 相当因果関係(民法416条類推)
 損害軽減(転業、転職、営業所移転等)が現実に可能か、その容易性、元の職に戻れる可能性の有無程度等も勘案して、個別事情により、損害軽減行為に出ないという不作為の合理性(相当性?、やむを得なさ?)を判断して、被害者が損害の発生回避、損害軽減ができるのにしなかったといえるような場合は、その結果生じ拡大した損害については、通常生ずべき損害ではなく、賠償義務なしとする。〔ただし、特別事情の予見可能性がある場合は、責任負う余地ありとする?。〕

D 過失相殺(民法722条2項)
 損害発生、拡大について、被害者の〔落ち度ある〕判断、行動が関与している場合には、それに応じて、賠償額を減額する。

E 損害の金銭的評価においての調整(民事訴訟法248条)


 原発事故の被害者との関係でいえば、

1 被災地域が広汎に及ぶために、隣町に営業所を構えれば、また同じように仕事を継続できるというように簡単にはいかない。かといって、遠く離れた土地で再開業となると、これまでの顧客との縁が切れる。
2 農業、漁業など、土地との結びつきが強い産業については、簡単に代替地で再開というわけには行かない。上の、最高裁判例事案のカラオケ店との違い。
3 高齢者の場合、自分の農地で農業はできても、いまさら転職して稼ぐなどということは困難。
4 経済情勢からして給与所得者の転職も上手くいくとは限らない。転職後も同内容、同待遇の職ならいいが、そうでもない場合は、どこまで被害者が我慢すべきかという問題となる。逸失利益として差額の賠償なども問題。
5 もといたところが除染等によって復旧できる可能性があるなら、戻る余地もあるとして、転職、転業、移転など、確定的な行動に出にくいという問題。

 これら問題以外にも個別事情に応じて、様々な問題があろう。
 そもそも、これは継続的な損害発生の「終期」の問題というよりも、現実に発生する損害について、どこまでを賠償の範囲とみてよいか,その金銭的評価をどうするかという問題であって、本来は,「休業損害は事故から1年」とか「廃業による損害は5年まで」とか、一律に決めることはできない問題だろう。JCO臨界事故のように短期間で終結した事案の前例に引きずられたところがあるのかも知れないが,今回の原発事故の賠償では,損害継続の「終期」を待つことはできないものであろうから,失職や営業損害等については,今後予測されるの「逸失利益」の賠償の問題ということになるのではないか。

 この点,交通事故で後遺症を負った場合,たとえば,交通事故で片腕を失ったよう場合には,その障害そのものについての慰謝料以外に,その障害の程度・等級によって労働能力喪失率を観念し,通常67歳までの残労働可能期間に得られる収入を推定し,ライプニッツ計数で中間利息を控除し損害額を出すということになろうが,この場合は,障害が一生回復しないことがはっきりしているという前提がある。
 同じ交通事故でも,頸椎捻挫等の後遺障害の場合は,一生涯続くとは限らないことから裁判でも,一生涯続くものとは扱われず,数年程度は続くという前提で3年から5年程度の期間でのみ,逸失利益が認められることがある。

 結局,逸失利益は,将来得られるであろうと推定される利益を,今賠償させようとするものであるから,その推定に不確実性のある要素が増えれば増えるほど,その算定は困難になる。
 原発事故で避難を強いられたり,廃業させられた場合は,今のところ被害者本人の身体には問題がないだろうから,原発事故による労働能力喪失率というものは考えにくい。ただ,もとのところに帰還できるか否かについての不安定さがある上,避難生活から,再び仕事を再開したり転職したりすることの可能性も,被害者の年齢,性別,職種その他個別の事情によって様々であろう。風評被害による営業損害などは,この先,どの程度のものが,どこまで続くか分からない場合もあろう。

 これら損害が発生する都度,それを評価して,賠償を継続するという方法もあろうが,普通は,将来の損失もまとめて推定評価して,今,賠償するということになる。
 結局,逸失利益について,大量かつ迅速な解決のため一定の基準を設けるとなると,年齢や職種,自営業者か給与所得者か否かなど,類型化をして,過去の実収入や賃金センサス等の基準から将来得られるであろう収入を推定し,それを一定の期間〔この期間も転職,転業,再就職等の難易も勘案して,類型によっては長短を設けて〕に限定して賠償するということになろうか。あるいは一定の割合?。
 もっとも,高齢者がほとんど収入にならない畑を健康のためや生活の喜びとして作っていたよう場合は,逸失利益としての金銭的評価は低額になるだろうし,自営業者など,それまでの慣れた生業を失った苦痛や,転職,再就職の苦労などは財産的損害ではないが,賠償されるべき精神的損害であろうから,それらは慰謝料として,考慮されるということになろうか。

※なお,再就職等を強いられたことによる精神的苦痛については,判例としてJT乳業事件がある。 
・JT乳業事件
 平成17年5月18日,名古屋高裁金沢支部判決(平成15(ネ)329)
 会社代表者の任務懈怠で会社解散・解雇。従業員が会社代表者に損害賠償を求めた。
「既に認定した事実及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人従業員らは,Dの重大な過失に基づく本件任務懈怠により本件会社が解散,廃業に追い込まれたことで,突然に就業先を失って,日々の生活の糧を得る途を失う事態に遭遇するに至ったのであり,これにより,被控訴人従業員ら及びその家族が将来に対する大きな不安を抱いたこと,そして,被控訴人従業員らは,自らと家族の生計を維持するために相当に困難な再就職活動を余儀なくされ,そのための努力を強いられ,また,被控訴人従業員らのうち,再就職した従業員については,本件解雇前とは異なる職場環境で労働するほか,その多くは,本件解雇前の職種と異なる職種の労働に従事することになって,相当の苦労をし,他方,再就職できなかった従業員については,自己及び家族の生活上の将来への不安を一層募らせたことを推認することができる。そうすると,被控訴人従業員らがDの本件任務懈怠により被った精神的苦痛は相当に重大であったものというべきであるから,雇用保険法に基づく基本手当及び再就職手当の受領の事実,退職金差額による逸失利益の存在の可能性を加減事情として考慮すると,被控訴人従業員らの被った上記精神的苦痛を慰謝するための額として,被控訴人従業員ら一人について各100万円を認めるのが相当である。」




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・土地建物,土壌等の汚染 その6 土壌の処理等の特別措置法案に関する記事

・土地建物,土壌等の汚染 その6 土壌の処理等の特別措置法案に関する記事



※放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別特措法案骨子案
http://www.taniokachannel.com/report/recource0803_5.pdf



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毎日新聞
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110818k0000m010131000c.html
がれき処理法:26日成立へ 国が除染、処理計画

 民主、自民、公明3党は17日、東京電力福島第1原発事故による放射性物質で汚染されたがれきや土壌などの処理のための特別措置法案を、今国会で成立させることで合意した。議員立法で19日の衆院環境委員会に提案して即日採決し、衆院本会議、参院環境委での審議を経て26日の参院本会議で成立させる見通し。原発事故が原因の環境汚染に対処する初めての法律となる。

 法案名は「原発事故により放出された放射性物質による環境汚染への対処に関する特措法」。汚染の著しい地域を国が「特別地域」に指定し、国が除染することや、放射線で汚染されたがれきなどの処理計画を国が策定すると定めている。処理費用は原子力損害賠償法に基づいて主に東電が負担する。被災自治体支援のため、国が必要な措置を講ずることも定めた。

 民自公3党の実務者が17日の協議で最終合意。18日から他党にも法案の内容を説明し、賛成するよう働きかける。【田中成之】

毎日新聞 2011年8月18日 2時30分(最終更新 8月18日 9時54分)


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毎日新聞
http://mainichi.jp/select/today/news/20110816k0000m010112000c.html
放射性物質:高濃度土壌、国が除染…3党が特措法案提案へ
2011年8月16日 2時34分 更新:8月16日 9時36分

 民主、自民、公明3党などが、東京電力福島第1原発事故による放射性物質で汚染されたがれきや土壌の処理に向けてまとめた特別措置法案の骨子案が15日、判明した。土壌汚染が著しい地域を「特別地域」に指定し、国が除染を行う。議員立法で各党が賛成する「委員長提案」として提案し、26日の参院本会議での成立を目指す。

 民主党が3日にまとめた原案では特措法に基づく処理費用を東電に「請求するのを妨げない」としていたが、骨子案では原子力損害賠償法に基づき東電の「負担の下に実施する」と明記、東電により厳しい内容になった。

 「特別地域」は原発から20キロ圏内で立ち入りが禁止される「警戒区域」を想定しており、環境相が指定。特別地域以外でも土壌汚染が基準を超えれば「汚染状況重点調査地域」に指定し、自治体が除染を行う。民主党の原案では原則自治体が行うとしていたが、被災自治体に配慮した。

 がれきなどの廃棄物が「特別の管理が必要な程度に汚染されているおそれがある」地域は、環境相が「汚染廃棄物対策地域」に指定し、国が処理する。【中井正裕】

 ◇除染◇

 放射性物質を汚染場所から除去し、放射線量を下げる作業。拡散させないよう、土壌の表面をはぎとったり汚染された植物を刈り取ったりする。高い線量が確認された建物は、屋根や壁、雨どい、窓などを水などで洗う。福島県南相馬市災害対策本部のマニュアルでは、除去した土などは原則として発生敷地内に一時保管し、後に最終処分場へ移動するとしている。


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asahi.com
http://www.asahi.com/politics/update/0815/TKY201108150390.html
放射能、国が除染 特別地域を指定 与野党で法案提出へ

 東京電力福島第一原発の事故で飛散した放射性物質による環境汚染に対応する特別措置法案の全容が15日、明らかになった。国が汚染の著しい地域を指定し、土壌や草木、建物の除染のほか、がれきの処理を実施するとしている。法案には民主、自民、公明の3党が合意。来週中にも国会に提出され、今国会で成立する見通しだ。

 現行法では、環境中に出た放射性物質の汚染処理についての定めがない。法案が成立すれば、原発事故による放射能での環境汚染に対処する初の法律となる。

 法案は「汚染による人への健康影響を低減する」ために、土壌などの除染が必要な地域を環境相が「特別地域」として指定。国は関係する自治体などの意見を聞いた上で実施計画を策定し、除染する。

 また、汚染のレベルが特別地域よりも低い場所は、汚染状況を調査・測定する「重点調査地域」に指定できる。同地域の除染は、都道府県や市町村が担い、必要に応じて国が代行する。


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共同通信社
http://www.kyodonews.jp/feature/news05/2011/08/post-2998.html
高汚染地域は国が除染 民自公が共同骨子案

 民主、自民、公明3党は12日、東京電力福島第1原発の事故で放射性物質に汚染されたがれきなど廃棄物の処理や土壌の除染措置などを定める特別措置法の共同骨子案をまとめた。民主党と自民、公明両党がそれぞれ法案骨子を公表していたが、原発周辺で汚染が著しい地域の除染は国が実施することなどを盛り込んで折り合った。

 来週にも衆院環境委員会で委員長提案の法案として国会提出することを決める方針で、会期中の成立を図る。

 3党の骨子案は「国は原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っている」と明記し、汚染廃棄物の処理や除染が国の責務であることを明確化。除染措置について民主党案は都道府県知事が計画を策定した上で国と自治体の分担を明記していたが、3党案では汚染のひどい地域は国が計画策定と除染を行う「特別地域」に指定することになった。

 また除染の費用は国が責任を持って手当てし、自治体の申請に基づく国の除染代行規定も民主党案の「代行できる」から「代行する」と国の責任を強めた。
(2011年8月12日)


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・設置関係資料 その21 シビアアクシデントマネージメント

・設置関係資料 その21 シビアアクシデントマネージメント


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毎日新聞 2011年8月17日 2時31分

http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/nuclear/archive/news/2011/08/20110817k0000m040142000c.html
福島第1原発:東電、水素爆発予測せず ベント手順書なし

 東京電力福島第1原発事故で、3月12日に起きた1号機の水素爆発について、政府の「事故調査・検証委員会」(畑村洋太郎委員長)の聴取に対し、東電側が爆発前に予測できていなかったと証言していることが分かった。長時間の全電源喪失時に格納容器を守るため実施するベント(排気)のマニュアル(手順書)がなかったことも判明。このため、作業に手間取るなど、初期対応で混乱した様子が浮かび上がった。

 関係者によると、政府事故調はこれまでに、同原発の吉田昌郎所長ら東電社員や政府関係者らから聴取を続けている。

 1号機の水素爆発は、東日本大震災の翌日の3月12日午後3時36分に発生。建屋の上部が吹き飛んだ。水素は、燃料棒に使用されるジルコニウムが高温になって水と反応し発生したとみられている。

 関係者によると、事故調に対し、東電側は原子炉や格納容器の状態に気を取られ、水素が原子炉建屋内に充満して爆発する危険性を考えなかったという趣旨の発言をし、「爆発前に予測できた人はいなかった」などと説明しているという。

 また、ベントについては、マニュアルがなかったため設計図などを参考にして作業手順などを検討。全電源が喪失していたため作業に必要なバッテリーなどの機材を調達し始めたが、型式などの連絡が不十分だったこともあり、多種多様な機材が運び込まれて、必要なものを選別する手間が生じた。

 さらに作業に追われる中、機材が約10キロ南の福島第2原発や作業員らが宿泊する約20キロ南のJヴィレッジに誤って配送され、取りに行かざるをえない状況になった。ある社員は「東電本店のサポートが不十分だった」と話しているという。

 一方、1号機の炉心を冷却するための非常用復水器(IC)が一時運転を中断していたものの、吉田所長ら幹部がそのことを把握せず、ICが稼働しているという前提で対策が検討されていたことも判明。事故調の聴取に吉田所長は「重要な情報を把握できず大きな失敗だった」などと話しているという。

 事故調は、東電側からの聴取内容と一連の事故に関するデータなどを精査した上で事故原因を解明していく方針だ。

 ◇震災翌日の首相視察「目的分からぬ」

 「目的が全く分からない」--。菅直人首相が東日本大震災翌日の3月12日、東京電力福島第1原発を視察したことについて、現場のスタッフが政府の「事故調査・検証委員会」の調べに、懐疑的な感想を述べていることが明らかになった。

 菅首相からの「なぜこんなことになるのか」との質問には、「自由な発言が許され、十分な説明をできる状況ではなかった」と振り返る説明があった。また、海江田万里経済産業相が12日午前6時50分、1号機の原子炉格納容器の圧力を下げるベントの実施命令を出したことに、現場は「違和感が強く、意図的にぐずぐずしていると思われたら心外」と受け止めたという。

 陸上自衛隊のヘリコプターによる使用済み核燃料プールへの放水には、「ありがたかったが、作業効率が極めて低いと感じた。プールに入っていないと思われるケースが多かった」との感想があったという。



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http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/1/ho016.pdf

○発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて
平成4年5月28日
原子力安全委員会決定

1.はじめに
 当懇談会は、海外諸国においてシビアアクシデント(*)対策の一環としての格納容器対策が規制要求としてあるいは原子炉設置者の自主的意図によって採択され始めていることを踏まえ、国内原子炉のPSA、米国原子力規制委員会(NRC)が取りまとめを行っている「シビアアクシデントのリスク(NUREG-1150)」など海外のPSA及び国内外のシビアアクシデント研究の最新の成果などを基礎資料として、格納容器対策を主体とするアクシデントマネージメントについて、ワーキンググループを設置して検討してきた。本報告書はこの検討結果をまとめたものである。
 近年、アクシデントマネージメントは、原子炉施設のリスク管理手段の一つとして重要であることが国際的に広く認識されるようになり、設計基準事象を超える事象が万一発生した場合を想定して、炉心冷却機能の回復や格納容器の健全性の維持等を目指す緊急時操作手順の整備及びそれらに係わる要員の訓練、並びに関連機材の整備等が各国で検討され、あるいは実施されてきている
 アクシデントマネージメントとは、設計基準事象を超え、炉心が大きく損傷する恐れのある事態が万一発生したとしても、現在の設計に含まれる安全余裕や安全設計上想定した本来の機能以外にも期待し得る機能またはそうした事態に備えて新規に設置した機器等を有効に活用することによって、それがシビアアクシデントに拡大するのを防止するため、もしくはシビアアクシデントに拡大した場合にもその影響を緩和するために採られる措置をいう。ここではこれらのうち、前者をフェーズⅠのアクシデントマネージメント、後者をフェーズⅡのアクシデントマネージメントと呼ぶこととする。
 フェーズⅠのアクシデントマネージメントは、何らかの原因で喪失した炉心冷却等の安全機能を回復させるための様々の操作から構成される。これらの操作が的確に行われるためには、施設の状態が事象の全段階を通して把握しやすいように配慮された測定・表示・記録設備を整備するとともに、起因となる事象が容易に識別できないような複雑な事象の発生に際しても、プラント状態の表示内容に基づき、プラントを安全な状態に復帰させるために適切な操作を行えるように配慮された手順書等を整備すること、さらにアクシデントマネージメントの実施に携わる者の教育・訓練を実施することが重要である。これらの表示装置や手順書の整備等は各国で行われてきており、我が国においても、国の指導に基づき原子炉設置者は、このアクシデントマネージメントの一部についてその手順書を表示装置との関係に留意しながら検討・整備し、また要員に対して「運転訓練センター」等において教育・訓練を行ってきている
 一方、フェーズⅡのアクシデントマネージメントとしては、損傷炉心の冷却をはかるために炉心もしくは格納容器の熱除去機能を回復すること、また格納容器の過圧破損の防止を目的として核分裂生成物(FP)を含む格納容器雰囲気を部分的に環境へ放出せざるを得なくなった場合にも、これを管理された状態で行うために、格納容器に専用のベントライン(フィルター付の場合を含む)を設置して利用すること等が考えられている。欧米諸国においては、こうした操作に係わる手順書等の整備が進められてきており、特にスウェーデン、フランス、ドイツ等においては、格納容器にフィルター付ベント設備を付加して、これを利用することもその手順に含めている。また、PWRアイスコンデンサー型格納容器については、大量の水素ガス発生への対応策として水素燃焼装置を設置することが米国、フィンランドなどで行われている。我が国においては、このフェーズⅡのアクシデントマネージメントについては、現在原子炉設置者において検討中である。
 本報告では、これらの状況に鑑みて、まずアクシデントマネージメントの安全確保における役割と位置付けについて検討し、さらに国内のフェーズⅠのアクシデントマネージメントに係わる整備状況とその妥当性を国内原子炉のPSA及びNUREG-1150に示される米国原子炉のPSA等に基づき検討している。次いで、国内外のシビアアクシデント研究の最新の成果、各国において整備が検討され、あるいは既に整備された設備の様態・データなどをも参考に、フェーズⅡのアクシデントマネージメントに係わる格納容器対策、特にフィルター付格納容器ベント設備並びに水素燃焼装置についてその設備の利害得失を分析し、これに関して我が国が採るべき考え方を検討している。
(*) シビアアクシデント
 原子炉安全基準専門部会共通問題懇談会中間報告書(平成2年2月)では、次のようにしている。「設計基準事象を大幅に超える事象であって、安全設計の評価上想定された手段では適切な炉心の冷却または反応度の制御ができない状態であり、その結果、炉心の重大な損傷に至る事象」;なお、ここでいう設計基準事象とは、「原子炉施設を異常な状態に導く可能性のある事象のうち、原子炉施設の安全設計とその評価に当たって考慮すべき」とされた事象とする。

2.アクシデントマネージメントの役割と位置付け
 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下「原子炉等規制法」という。)は、原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質、核燃料物質によって汚染された物又は原子炉による災害の防止上支障がないものであることを原子炉の設置許可の要件の一つとしている。国はこの要件を満たしているか否かを判断するために、原子炉施設が適切な安全管理のもとで確実に事故を防止できること及び原子炉施設に設計基準事象の発生を仮定した場合にも周辺公衆に対して著しい放射線被ばくのリスク(以下、「原子炉施設による周辺公衆に対する放射線被ばくのリスク」を単に「リスク」という)を与えないよう事故の拡大を防止し、またその影響緩和に効果的な安全設備が備えられていることなどを審査している。これに加えて、安全管理のあり方については、運転開始に先立って、その方針を規定する保安規定を作成するよう原子炉設置者に求め、妥当と判断された場合にこれを認可することとし、さらに原子炉の運転約1年ごとに原子炉施設の定期検査を行うことを義務づけている。
 これらにより、原子炉施設の安全性は十分確保されるが、さらに万一の事態に備えて、災害対策基本法のもとに原子力防災対策を整備することとし、これに基づき、設計基準事象を大幅に上回るシビアアクシデントの知見も考慮して、放射性物質の大量の放出があった場合にも、災害の発生を未然に防止し又は被害の拡大を防止するために有効適切な体制、必要資機材の整備、防災訓練等のあり方が定められている。
 このようにして、原子炉施設のリスクは充分小さくなっているが、万一原子炉施設にシビアアクシデントに至るおそれのある事象、あるいはシビアアクシデントが発生した場合に、適切なアクシデントマネージメントが行われるものとすれば、シビアアクシデントに至る可能性はさらに減少し、あるいはシビアアクシデントによる公衆への影響を緩和できるため、リスクは一層小さいものとなる。アクシデントマネージメントは、本来原子炉設置者がその技術的知見に基づき、現実の事態に直面しての臨機の処置も含め、柔軟に行う措置である。これらのことから、あるアクシデントマネージメントが原子炉施設の設備を大幅に変更することなく実施可能であり、その実施を想定することによりリスクが効果的に減少する限りにおいて、その実施が奨励又は期待されるべきと考えられる。なお、そうしたリスクの減少の目標としては、フェーズⅠとフェーズⅡのアクシデントマネージメントの有効性のバランスにも配慮しつつ、例えばIAEA・INSAG(国際原子力安全諮問委員会)の基本安全原則が示す定量的な安全目標(炉心損傷の発生率10-4/炉年(既存炉に対して)、10-5/炉年(新設炉に対して)、また大規模なFP放出の発生率はさらにこれらの1/10)などを一つの参考とするのが適切であろう。
 ところで、アクシデントマネージメントが適切に行われるためには、原子炉設置者が、最新のシビアアクシデント研究の成果などを参考にして、その実施に関してあらかじめ有効適切と考えられる措置の手順を定め、それに必要な資機材並びに実施体制を整備し、要員を訓練しておくことが大切である。
 これらのことを考え合わせると、このアクシデントマネージメントに関して国のとるべき対応については、次のようないくつかの考え方がある。
 一つの考え方は、前述のようにアクシデントマネージメントについて効果的な実施が奨励又は期待されるという立場から、原子炉設置者がアクシデントマネージメントに係わる整備等を行うよう指導し、例えば保安規定の認可に際してその内容を確認するべきとするものである。
 また別の考え方は、不適切なアクシデントマネージメントが原子炉設置者によって計画され、設計基準事象に対する防護の水準が低下することを防止する観点から、原子炉設置者により計画されるアクシデントマネージメントが工学的安全施設の適切な利用を阻害するものでないことを、例えば、工事計画の認可の際に確認すべきとするものである。具体的には、格納容器にフィルター付ベント設備及び水素燃焼装置などを付加する場合、設計基準事象に対する工学的安全施設の機能に悪影響を及ぼす可能性について、安全規制の一環としてチェックされるべきであるとする考え方である。
 さらに次のような考え方もある。アクシデントマネージメントは本来原子炉設置者がその技術的知見に基づき、現実の事態に直面しての臨機の処置も含め、柔軟に行う措置であるから、国の事前評価により結果として特定の手段を排除することなどは、効果的なアクシデントマネージメントの実施を阻害することになりかねないと考えられる。しかし一方、緊急時対策の効果的実施の観点からは、関係者間で充分な調整が必要と考えられる。またPSAの結果などを分析するとアクシデントマネージメントの持つシビアアクシデント時の安全確保機能は、審査指針に基づく安全評価においては期待されていない機器あるいは機能を用いる場合でも、本来異常状態に対処するために設計された機器・系統等に匹敵する効果が得られる場合もある。これらのことから、国は、原子炉設置者がアクシデントマネージメントに係わる整備を行う際に参考とするための基本的考え方を整備しておくべきであるとする考え方である。

3.シビアアクシデントへの拡大防止のため(フェーズⅠ)のアクシデントマネージメン

3.1 整備の状況
 フェーズⅠのアクシデントマネージメントは、主として炉心冷却等の安全機能を回復させるための様々の操作から構成される。また、これらのアクシデントマネージメントが的確に行われるように配慮された手順書等の整備が考えられている。
 国内原子炉では、このようなフェーズⅠのアクシデントマネージメントとして、様々な対策が整備または検討されているが、その主なものを主要な事故シーケンス別に整理して示すと以下のとおりである。
1)BWRプラント
①全交流電源喪失事象に対して、
外部電源の復旧又はディーゼル発電機の修復
②原子炉スクラム失敗(ATWS)事象に対して、
a)原子炉保護系が作動しない場合に手動スクラムまたは制御棒の手動挿入
b)ホウ酸水注入系(SLC)の手動起動
③トランジェント時の崩壊熱除去機能喪失事象に対して、
a)残留熱除去系(RHR)の復旧
b)格納容器スプレイの手動起動
c)格納容器ベント
④トランジェント後の注水失敗に対して、
a)高圧系ECCS、原子炉隔離時冷却系(RCIC)の手動起動
b)自動減圧系(ADS)、低圧系ECCSの手動起動
c)代替注水設備の手動起動
 なお、後述する国内のレベル1PSAでは、上記の操作のうち、SLCの手動起動、ADSの手動起動、ECCSの手動起動、格納容器ベント及び機器の復旧等の操作を考慮に入れている。また、格納容器ベントについては、既存の設備(不活性ガス系(AC系)または非常用ガス処理系(SGTS)を用いたダクトベント)を利用するとして評価している。この場合のベントは、トランジェント後の崩壊熱除去機能喪失事象における格納容器の損傷を防止するためのものである。
2)PWRプラント
①トランジェントに対して、
主給水系の復旧
②トランジェント及び小LOCAに対して、
フィードアンドブリード
③中LOCA及び小LOCAに対して、
主蒸気逃し弁(MSRV)手動開による冷却
④全交流電源喪失に対して、
外部電源の復旧またはディーゼル発電機の修復
⑤ATWS事象に対して、
手動による原子炉トリップ及び緊急ホウ酸水注入
⑥安全注入(SI)信号不作動事象に対して、
SI信号不作動時のECCS手動起動
⑦格納容器スプレイ信号不作動事象に対して、
格納容器スプレイ信号不作動時のスプレイ手動起動
⑧再循環切り替えが必要な事象に対して、
燃料取替用水タンク(RWST)との代替水源からの水の補給
なお、後述する国内のレベル1PSAでは、上記操作のうち、フィードアンドブリード、MSRV手動開、緊急ホウ酸水注入系の手動起動及び機器の復旧等の操作を考慮に入れている。
3.2 フェーズⅠのアクシデントマネージメントの評価
 本節では、海外で行われたレベル1PSAの評価結果を参考にしつつ、国内原子炉に対して産業界及び原子力安全解析所の行ったレベル1PSAの結果に基づき、国内原子炉におけるフェーズIのアクシデントマネージメントの有効性について考察を行う。
1)BWRプラント
 海外におけるBWRプラントに関するPSA評価のうち、参考となる例としては、国内原子炉とも比較可能な米国のPeach Bottom炉(BWR-4・Mark Ⅰプラント)に対して行われた「原子炉安全研究(WASH-1400)」及びNUREG-1150を挙げることができる。このうち、WASH-1400においては、内的事象による炉心損傷の主要な事故シーケンスは、ATWS事象(以下「TCシーケンス」という。)及びトランジェント後の崩壊熱除去機能喪失事象(以下「TWシーケンス」という。)となっている。一方、NUREG-1150においては、最近の研究成果を踏まえて、格納容器ベント設備や格納容器破損後の炉心冷却などのアクシデントマネージメントを考慮した結果、炉心損傷に至る全事象の発生率(以下、「全炉心損傷発生率」という。)に占めるTWシーケンスの割合はかなり小さくなっている。また、全炉心損傷発生率についてもWASH-1400の例と比して約1/5程度に低減している。
 NRCは、Mark Ⅰプラントの格納容器容積が他の型式の格納容器に比べて小さいということから、Mark Ⅰプラントに対して格納容器性能改善対策を勧告することを決定し、その対策の一つとして、「耐圧強化ベント」の設置を掲げている。これは、TWシーケンスに対して考えられている格納容器ベント操作時に、ベントラインの過圧破損を恐れて操作をためらうことを防止するとの観点から、耐圧性のあるベントラインを設置するものである。なおNRCは、残留熱を大気に直接逃がす隔離時復水器(Isolation Condenser)を有するMark Ⅰプラントに対しても、この場合TWシーケンスが支配的とはならないにもかかわらず、他のMark Ⅰプラントと同様に「耐圧強化ベント」の設置を勧告している。
 一方、我が国の代表的BWR-4プラントの場合、既存のベント系(ダクトベント)を用いて運転員による手動の操作が可能であるとするなど前節に述べたフェーズIのアクシデントマネージメントの一部を考慮した結果、TWシーケンスの全炉心損傷発生率に占める割合は1%未満となっており、全炉心損傷発生率もNUREG-1150の数分の1以下の値となっている。
 我が国のその他の代表的BWRプラントであるBWR-3及びBWR-5についても、全炉心損傷発生率はBWR-4と同じオーダーである。なお、我が国のBWR Mark ⅠプラントとMark Ⅱプラントとでは、単位出力当たりの格納容器容積については大きな差異はない。
2)PWRプラント
 海外におけるPWRプラントに対するPSA評価のうち、参考となる例としては、米国のZion炉(4ループ、大型ドライ型格納容器プラント)及びSequoyah炉(4ループ、アイスコンデンサ型格納容器プラント)に対して行われたNUREG-1150の評価を挙げることができる。この例では、全炉心損傷発生率は概ね、10-5~10-4/炉年程度と評価されている。
 これに対し、我が国の代表的PWR4ループプラントの場合、前節のフェーズⅠのアクシデントマネージメントの一部を考慮した結果、全炉心損傷発生率はNUREG-1150の評価結果の1/10以下となっている。なお、ドイツの原子炉安全協会(GRS)がBiblis Bプラント(4ループ大型ドライ型格納容器プラント)を対象として実施した「リスク研究phase B」によれば、アクシデントマネージメントを考慮した場合としない場合とでは、全炉心損傷発生率に約1桁の差が生ずることが示されているが、我が国の評価ではこれらをも下回る結果となっている。
3.3 まとめ
 フェーズⅠのアクシデントマネージメントについては、我が国ではその一部が原子炉設置者において、「徴候ベース」あるいは「安全機能ベース」と呼ばれる手順書として、従来のいわゆる「イベントベース」の手順書を補完する形で整備されている。さらに、手順書に基づいてアクシデントマネージメントが適切に行われるよう、運転に携わる者に対し、「運転訓練センター」等において教育・訓練が行われてきている。
 これらのフェーズⅠのアクシデントマネージメントの一部を考慮したレベル1PSAによれば、代表的な国内原子炉の炉心損傷に至る事象の発生率は、評価の不確かさを考慮しても10-5/炉年より小さく、これは例えばIAEA・INSAG(国際原子力安全諮問委員会)の基本安全原則が示す定量的な安全目標(炉心損傷の発生率10-4/炉年(既存炉に対して)、10-5/炉年(新設炉に対して))を満足している。また米国においてPSAが実施されているプラントのうちシステム等の類似した同型プラントと比較しても、同様な手法により解析を行った我が国のプラントの炉心損傷の発生率は小さいと評価されている。ただし、我が国の代表的国内原子炉に対するこの評価結果は、これまでの良好な運転管理の信頼性が今後とも維持されること及び手順書に含まれているアクシデントマネージメントが的確に実施されることが前提となっている。
 なお、アクシデントマネージメントとしての安全機能の回復操作等をより高い信頼度で実施するためには、異常原因の認知や対応操作のための情報提供系・計測系の充実を行うこと及び操作内容の単純・自動化等を行うことが有効と考えられる。さらに、フェーズⅠのアクシデントマネージメントとして、現有設備の改造や可搬式設備の導入等の手段により安全機能の代替能力を拡充するなどその検討の範囲を広げることにより、シビアアクシデントへの拡大防止をより確実なものとすることが可能と考えられる。

4.シビアアクシデント時の影響を緩和するため(フェーズⅡ)のアクシデントマネージ
メント
4.1 整備の状況
 シビアアクシデントに至った場合に周辺環境への影響を緩和するために行われるフェーズⅡのアクシデントマネージメントについての基本的方針は、シビアアクシデント時に想定される様々な格納容器の破損モードに対し、『はじめに』で述べたような手段によって、格納容器の健全性を維持しつつ、その過程で必要に応じサプレッションプール水によるスクラビングやフィルターにより、放射性物質の環境への異常な放出を抑制することである。
 我が国においては、BWRについて格納容器の不活性化及び可燃性ガス濃度制御系(FCS)の設置、PWRについて格納容器スプレイの設置などの措置が既に採用されているが、これらの措置は、安全評価上想定した以外にも機能を期待でき、結果的にフェーズⅡのアクシデントマネージメントの一部とみなすこともできる。なお、これら以外のフェーズⅡのアクシデントマネージメントについては、現在原子炉設置者において検討中である。
 一方、海外においては、既存設備の有効な活用に加え、追加設備の設置による格納容器対策として以下に述べるようなものが考えられている。
1)BWRプラント
 海外のBWRプラントにおいて、現在設置または検討されているフェーズⅡのアクシデントマネージメントとしての格納容器対策としては次のようなものがある。
①フィルター付ベント設備またはウェットウェルベント設備
②格納容器内注水設備
③ADSの機能強化
④水素制御設備
 上記の格納容器対策は、後述するように、組み合わせて実施された場合に大きなリスク低減効果が得られる。すなわち、格納容器破損モードごとに、その破損モードに対処し得るそれぞれの対策を並行的に実施することにより、シビアアクシデント時の格納容器の信頼性を大きく向上させることができるようになる。
 例えば、想定される格納容器の破損モードとしては、過圧破損、過温破損、格納容器直接加熱(DCH)及び水素燃焼等が考えられるが、フィルター付ベント設備単独では過圧破損が回避できるのみで、過温破損にはほとんど効果がない。過温破損を防止するためには、格納容器内に注水すること等によって、溶融炉心を冷却し、それによってコア・コンクリート反応を抑制するとともに、格納容器内雰囲気温度を下げる必要がある。逆に、格納容器内注水設備のみでは過圧破損が回避できない。
 また、原子炉圧力容器が、内圧が高圧に保たれたまま破損して溶融炉心が噴出するとした場合、溶融炉心による格納容器直接加熱により格納容器が破損する可能性がある。このため、ADS機能の強化を図ることにより高圧での炉心溶融を回避することが検討されている。さらに、Mark Ⅲ型格納容器を有するプラントに対しては、水素燃焼による格納容器の破損を防止するための水素燃焼装置等の水素制御設備が設置または検討されている。
2)PWRプラント
 海外のPWRプラントにおいて、現在設置または検討されているフェーズⅡのアクシデントマネージメントとしての格納容器対策としては次のようなものがある。
①フィルター付ベント設備
②水素燃焼装置
③格納容器内部スプレイの強化
④格納容器外部スプレイ
⑤格納容器内注水設備
 上記の格納容器対策は、BWRプラントと同様、組み合わせて実施された場合に大きなリスク低減効果が得られる。
 例えば、フィルター付ベント設備単独では過圧破損が回避できるのみで、コア・コンクリート反応による格納容器破損にはほとんど効果がない。コア・コンクリート反応による格納容器破損を防止するためには、格納容器内部スプレイの強化や格納容器内注水設備により、溶融炉心を冷却し、それによってコア・コンクリート反応を抑制する必要がある。これらの格納容器対策は、大型ドライ型格納容器プラントを対象に設置または検討されている。
 また、アイスコンデンサ型プラントは、大量の水素発生時に水素燃焼による格納容器の早期破損の可能性が高いと考えられており、これを防止するために水素燃焼装置が設置または検討されている。さらに、格納容器の過圧破損を防止することを目的として、鋼製格納容器の外側にスプレイすることにより格納容器内雰囲気を冷却する格納容器外部スプレイが検討されている。
4.2 欧米諸国における格納容器対策の現状
 欧米諸国においてシビアアクシデント時のアクシデントマネージメントのための具体的手段として、各種の格納容器対策が検討されている。これらの格納容器対策のうち格納容器ベント設備と水素燃焼装置に係わる各国の規制上の位置付け及び設備の概要について調査を行った。
1)格納容器ベント設備
 欧米ではフェーズⅡのアクシデントマネージメントの一環としてフィルター付格納容器ベント設備が設置または検討されている。
 フランスでは、1978年にフランス電力庁(EDF)が実施したPSAを背景に、設計基準事象を上回る事象に対する安全目標として、炉心溶融に至った場合にも環境へのFP放出量をサイト周辺の緊急時計画に見合ったレベルまで低減させることを決定した。この安全目標に適合させるためのひとつの方策としてフィルター付格納容器ベント設備が採用されている。なお、具体的な設計では、FPエアロゾルに対する除染係数(以下「DF」という)を10以上とすることが要求されている。
 ドイツでは1986年~1987年にかけて原子炉安全委員会(RSK)がフィルター付格納容器ベント設備に関する基本要件を勧告している。その中では、フィルター付格納容器ベント設備は所内緊急時対応計画を完成させるための措置とされており、プラントの安全運転にとっての技術的要件としては位置付けられていない。なお、具体的な設計では、エアロゾルに対してDFを1,000以上とすることが、また元素状よう素に対してDFを10以上とすることが要求されている。現在、ほぼすべてのプラント(PWR及びBWRプラント)に格納容器ベント設備が設置済みと考えられる。
 スウェーデンではシビアアクシデントに関する基本方針が、1980年~1981年に政府から出された。その中では、土地汚染を生じるような大量の放射性物質放出の可能性は小さいが、これをさらに低減するため、その手段としてフィルター付格納容器ベント設備の設置が要求され、すべてのプラントに設置済みである。なお、具体的な設計では、大規模土地汚染と急性死亡の発生防止の観点から、放出FPを1,800MWtの原子炉の炉心インベントリの0.1%以内に抑えることが要求されている。
 フィンランドでは、BWRプラントについてフィルター付格納容器ベント設備を設置済みである。
 英国では、PWRプラントに対する格納容器ベント設備の採用について、どのシステムを採るかを含め検討中である。なお、その最終決定は1991年度中になされる見込みである。
 一方、米国においては、前述のように、BWR Mark Ⅰ格納容器に対してフェーズⅠのアクシデントマネージメントとして耐圧強化ベント対策を要求しているが、フェーズⅡのアクシデントマネージメントとしては注水設備と耐圧強化ベント対策の組み合わせが議論されている段階で、フィルター付ベント設備についてはNRCの検討要求項目の中には入っていない。また、PWRプラントに対しては格納容器ベント設備は特に検討項目として指摘されていない。
 格納容器ベント設備の設計において、フランス、ドイツでは単一故障、電源喪失及び地震を考慮していないが、スウェーデンではこれらを考慮している。
2)水素燃焼装置
 シビアアクシデント時の水素制御に関する各国の対応策は統一されておらず、今後の研究、開発成果を待って方策を講じるとしている国も多い。
 米国ではNRCが1979年~1980年に、TMI-2事故の検討に基づく勧告及びアクションプランを発表し、BWRプラント及びPWRアイスコンデンサ型プラントへの水素対策の実施を求めた。その後、1981年12月にBWR Mark Ⅰ、Ⅱ格納容器に対して窒素ガスによる不活性化対策を行うべきという規則が出された。続いて1985年1月にBWR Mark Ⅲ及びPWRアイスコンデンサ型プラントに対して水素制御系の改善等に関する要求をまとめた規則が出された。なお、これらのプラントについては「グロープラグ式水素燃焼装置」が設置済みである。
 フランスにおいては、フランス原子力庁(CEA)の研究所がPWRドライ型プラントの水素制御方式について研究を実施しているが、まだ水素対策の方針を決定していない。フランス電力庁(EDF)では米国、フランス等における関連する試験や研究結果から、水素制御系の設置の必要性が生じた場合には、これを考慮する方針としている。
 ドイツでは、水素対策の最終結論をまだ出していないが、水素不活性化と制御の可能性に関する研究の検討を通じて、PWRドライ型プラントの水素対策としては、燃焼方式によるものが適当と判断し、水素燃焼装置の設置を全原子炉設置者が同意した。なお、現在さらに詳細な研究を行っている。
 また、フィンランドにおいては、PWRアイスコンデンサ型プラントに対し、水素対策として「グロープラグ式水素燃焼装置」が設置済みである。
 一方、英国では、PWRプラントのPSA結果をもとに、水素燃焼により格納容器の健全性が損なわれる可能性は小さいとして、具体的な設備対応策はとられていない。
3)格納容器対策に要するコストについて
 格納容器対策の設備設置に要するコストは設備仕様により異なり一概に言えないが、フィルター付き格納容器ベント設備の設置コストは、一部を除き約100万ドルから約450万ドルまでの評価結果があり、また水素燃焼装置の設置コストは約490万ドルとの評価例がある。
4.3 格納容器対策の効用について
 格納容器ベント設備等のフェーズⅡのアクシデントマネージメント対策の効用を評価するに当たっては、レベル2PSAの評価結果が参考となる。
 このため、我が国の産業界及び原子力安全解析所で行われた予備的なレベル2PSAの評価結果について検討した。検討においては、格納容器破損の発生率、ソースターム評価結果及び格納容器ベント設備を採用した場合のソースタームの低減効果、並びに水素燃焼装置を設置した場合の格納容器破損の発生率の低減効果について調査を行うとともに、BWRについては米国のPSA結果との比較を行った。
 なお、今回検討したレベル2PSAの評価結果は現時点での知見に基づくものであり、レベル2PSAで取り扱っている現象に対する知見が今後増大すれば見直しが行われるべきものである。
1)格納容器ベント設備
〔BWR〕
 米国のPeach Bottom炉に関する評価結果によれば、格納容器ベント設備(耐圧型)のみでは、どのシーケースでも過温によるドライウェル破損が生じるとされている。なお、環境へのFP放出はこのドライウェルからの放出が主となることから、ベント設備の方式(耐圧強化ベント、フィルター付ベント、ダクトベント)の違いによってリスクに関し有意な差は生じていない。また、改良型ADS、バックアップスプレイ、バックアップ圧力容器注水などの対策は、個別的にはリスク低減効果は小さいものの、これらすべてを格納容器ベント設備と組み合わせて採用した場合には大きなリスク低減効果が期待できることが示されている。
 これに対し、我が国の代表的BWRプラントに対する予備的なレベル2PSAの評価結果は、概略次のとおりである。
)BWR-4・Mark Ⅰプラントの場合、格納容器破損に至る全事象の発生率(以下「全格納容器破損発生率」という)は全炉心損傷発生率の約1/7(産業界)と評価されている。また、格納容器の破損モードは、全交流電源喪失事象及びLOCA後の炉心冷却失敗事象など、炉心損傷後に格納容器が破損するシーケンスでは過温破損、TC及びTWシーケンスなどの事故シーケンスでは過圧破損である。(なお、レベル2PSAにおいては、格納容器の温度または内圧が一定の値を超えると評価された場合をもって、それぞれ「過温破損」もしくは「過圧破損」するとしている)また、このうち比較的早期(10時間以内)にFP放出に至る格納容器破損事故の発生率は、全炉心損傷発生率の約1/10である。
 また、ソースタームの評価結果によると、すべての事故シーケンスにおいて、CsI、CsOHの放出割合が他の核種に比べて1桁以上大きくなっている。
 BWR-5・Mark Ⅱプラントの場合、TC及びTWシーケンスでは、格納容器の過圧破損によって注水機能が喪失し、炉心溶融に至る。Mark Ⅱプラントの格納容器では溶融炉心によるコンクリート侵食により、原子炉圧力容器下部ペデスタル部に破損が生ずる。全格納容器破損発生率は、全炉心損傷発生率の約1/3(産業界)~約1/4(原子力安全解析所)と評価されている。また、このうち比較的早期にFP放出に至る格納容器破損事故の発生率は、全炉心損傷発生率の約1/5である。
 また、産業界のソースタームの評価結果によると、格納容器内に流出した溶融炉心の温度がMark Ⅰプラントの場合よりも高くなり、コア・コンクリート反応が増大し、Te、Sr、Moの寄与が増加する。また、ペデスタル部が破損するとスクラビング効果が期待できなくなるため、CsI、CsOHの放出割合についてもMark Ⅰプラントに比べて全般的に大きくなっている。
)格納容器ベント設備によるFP放出低減効果について、環境影響の観点から重要なCsIに着目した結果を以下に示す。
 BWR-4・Mark Ⅰプラントの場合、ダクトベント、耐圧強化ベントのいずれでも、これによる環境へのCsIの放出量の低減効果は大差なく、効果の大きい事故シーケンスでもファクター10程度である。これはドライウェルで過温破損が生じ、ベント配管をバイパスして放出されてしまうシーケンスが支配的となるためである。一方、注水設備によって溶融炉心の冷却の効果が確実に期待できるとすれば、ダクトベントまたは耐圧強化ベントの場合にはスクラビング効果に相当するDF、フィルター付格納容器ベント設備の場合にはフィルターのDFに相当するFP放出量の低減効果があると考えられる。
 BWR-5・Mark Ⅱプラントの場合、ダクトベント、耐圧強化ベントのいずれのケースも、環境へのCsIの放出量の低減効果は少ない。また、ダクトベントのケースに比べ、耐圧強化ベントのケースは放出割合がかえって増大している。これは、ダクトベントの場合には、放出されるFPの建屋内沈着が期待できるのに対し、耐圧強化ベントの場合には、建屋をバイパスするため、これを期待できないためである。一方、BWR-4・Mark Ⅰプラントの場合と同様、格納容器への注水が行われ溶融炉心の冷却の効果が確実に期待できるとすれば、フィルター付きベント設備の場合にはフィルターのDFに相当するFP
放出量の低減効果があると考えられる。
〔PWR〕
 我が国の代表的PWRプラントに対する予備的なレベル2PSAの評価結果は、概略次のとおりである。
)全格納容器破損発生率は大型ドライ型格納容器プラントの場合、全炉心損傷発生率の約1/7(産業界、原子力安全解析所とも)である。また、産業界の評価結果によれば、アイスコンデンサ型格納容器プラントの全格納容器破損発生率は、全炉心損傷発生率の約1/5(水素燃焼装置を設置しない場合)及び約1/10(水素燃焼装置を設置した場合)となっている。
 準静的圧力上昇(緩慢な圧力上昇)に伴う格納容器の過圧破損発生率は、大型ドライ型格納容器プラントについては全格納容器破損発生率の約62%(産業界)~約51%(原子力安全解析所)、アイスコンデンサ型格納容器プラントについては全格納容器破損発生率の約30%(水素燃焼装置を設置しない場合)及び約60%(水素燃焼装置を設置した場合)となっている。
)上記の結果から、大型ドライ型格納容器プラント及び水素燃焼装置を設置したアイスコンデンサ型格納容器プラントにおいて、格納容器への注水設備と組み合わせた格納容器ベント設備を採用すれば、全格納容器破損発生率を約1/3に低減することが可能と考えられる。
 また、フィルター付ベント設備による環境へのCsI放出の低減効果については、準静的圧力上昇により格納容器が過圧破損に至る事故シーケンスに対し、注水設備によって溶融炉心の冷却の効果が確実に期待できる場合には、フィルターのDFに相当するFP放出量の低減効果があると考えられる。
2)水素燃焼装置
 PWRアイスコンデンサ型格納容器プラントの全格納容器破損発生率は、大型ドライ型格納容器プラントの全格納容器破損発生率に比べ、格納容器自由体積が小さく破損圧力が低いため、5倍程度大きくなっているが、水素燃焼装置を設置することによって、次に示すように格納容器破損の発生率を低減し得ることが示されている。
 すなわち、産業界における予備的なレベル2PSAの評価結果によれば、PWRアイスコンデンサ型格納容器プラントにおいては、水素燃焼装置の設置により、全格納容器破損発生率は全炉心損傷発生率の約1/5から約1/10へと低減している。これは水素燃焼装置の設置により原子炉圧力容器破損以前に炉心で発生した水素が格納容器内で急速に燃焼するモード(アイスコンデンサ型格納容器プラントで水素燃焼装置無しの場合には約48%を占める)がほとんど無視できるようになるためである。
4.4 格納容器対策の実施に付随して発生する課題と対応
 前節までアクシデントマネージメントの一環としての格納容器ベント設備及び水素燃焼装置を対象として、PSAの観点からその効用について検討を行ってきた。
 しかしながら、これらの設備を採用した場合、その内容によっては機器の故障、誤動作や運転員の誤操作により、かえって原子炉施設全体としての安全性を阻害する可能性も考えられる。
 本節においては、これらの対策を施す場合、付随して発生すると考えられる技術的課題を可能な限り洗い出し、その課題に対する諸外国の対応状況を調査し、評価を行った。
1)格納容器ベント設備
 格納容器ベント設備は、格納容器の過圧破損を防ぎ、その健全性を維持するための設備であるため、ベント開始の設定圧力をいくらにするかということは、ベント設備の設計・運用上、重要である、種々の実験等により、格納容器の破損限界圧力は設計圧力の3倍程度といわれているが、これまでのベント設計では、設定圧力として格納容器の設計圧力又はこれを若干上回った値を採用している場合が多い。
 また、格納容器ベント設備を採用した場合、設備の故障、誤動作または運転員の誤操作が安全性をかえって阻害する可能性については、各国とも通常時閉止の隔離弁を2弁設置するか又はラプチャーディスクあるいはこれらの組み合わせにより対応している。特にラプチャーディスクを用いない手動開方式の場合には、誤操作防止の観点から、監視計器、手順書の整備及び訓練の充実が必要である。
 ベント中においては、①ベントラインでの水素燃焼、②BWRプラントにおける注水システムのキャビテーション、ベント後においては、③隔離弁再閉止失敗、④格納容器負圧破損の可能性などが考えられるが、各国とも①については、圧力開放装置(オリフィス)の設置又は窒素置換の設計対応、②については、注水系の水源切替や外部水源等による運用、③については隔離弁2弁構成による設計対応、④については格納容器内圧力モニタによる設計対応等が図られている。実際には手順書の作成時に監視項目、操作等の運転操作とこれらの設計対応とを十分関連づけ、その運用を具体化しておくことが必要である。
2)水素燃焼装置
 水素燃焼装置の機能は、大量に水素が発生する事故時において、格納容器内の水素濃度を低くすることである。水素燃焼装置の型式には、グロープラグ式、触媒式及びスパーク式があるが、米国等のPWRアイスコンデンサ型プラントに実際に設置されているのは、グロープラグ式である。
 本設備を採用するに当たっては、その効果を確実なものにするために、①作動時期、②大量の水素発生雰囲気条件下での機能、③局所的な爆ごうの発生の可能性、④電源系の信頼性の検討が必要である。①については、グロープラグ式の場合、事故検知後に運転員が手動投入を行うことになり(他の型式は自動作動)、その場合、操作開始までの時間的余裕は十分にあるものの、操作の時期を誤って過剰圧力を生じさせないよう適切な操作要領等の検討が必要である。また②については、グロープラグ式の場合、米国のいくつかの研究所において大量水素発生時のスプレイ、フォッギング等の影響評価実験が実施されているが、他の方式については今後確認が必要である。さらに③については、米国PWRプラントの水素燃焼装置の設置例は、局所的な水素の高濃度化を防止するために、格納容器の各区画ごとに水素燃焼装置を設置するなどの対策が講じられているが、これを含め局所的爆ごう防止の対策及びその妥当性については、我が国及び諸外国において水素燃焼挙動の把握に関する
 実験研究が進行中であり、これらの研究による知見を踏まえて判断することが肝要である。また、④については、グロープラグ式及びスパーク式水素燃焼装置の場合は、電源の信頼性についての検討が必要である。

5.技術的検討結果
 格納容器ベント設備及び水素燃焼装置を中心として、フェーズⅠ及びフェーズⅡのアクシデントマネージメントの観点から利害得失を含めて検討し、得られた技術的検討結果を以下にまとめて示す。
1)格納容器ベント設備
)フェーズⅠのアクシデントマネージメントとしての格納容器ベント設備
 米国においては、前述のとおりTWシーケンスでの炉心損傷を防止するために、BWR Mark Ⅰプラントに耐圧強化型格納容器ベント設備の設置が勧告されている。一方、既存のベント系(ダクトベント)の利用を考慮に入れた、我が国の代表プラントのレベル1PSAによれば、炉心損傷発生率は十分に低く、また全炉心損傷発生率のうちTWシーケンスの割合も小さくなっている。
 米国における耐圧強化型格納容器ベント対策は、Mark Ⅰプラントの格納容器容積が他の格納容器の型式に比べて小さいという議論を背景として、主としてMark Ⅰプラントを対象として要求されている。しかし、実際には、国内BWRプラントのMarkⅠとMark Ⅱプラントでは単位出力当たりの格納容器容積について設計上の差はなく、また全炉心損傷発生率についても顕著な差はない。従って、Mark Ⅰプラントの格納容器に対してのみ特に耐圧強化型格納容器ベント設備を設置する必然性は必ずしも明らかではない。
 なお、国内PWRプラントにおいては、フェーズⅠのアクシデントマネージメントとしての格納容器ベント設備に期待していないので、これについての検討はここでは省くものとする。
)フェーズⅡのアクシデントマネージメントとしての格納容器ベント設備
 フェーズⅡのアクシデントマネージメントとしての格納容器ベント設備として特徴的なものは、欧州諸国のBWR及びPWRプラントで設置が進められているフィルター付きベント設備である。BWRプラントについては、サプレッションプールでのスクラビングによるFP放出低減効果を期待するウェットウェルベント設備もある。
 なお、前述の米国の耐圧強化型格納容器ベント設備は当初はフェーズⅡの段階でも使用することが考えられていた経緯がある。
 BWR Mark Ⅰ、Ⅱ格納容器の現状の設計においては、フィルター付ベント設備もしくはウェットウェルベント設備のみでは格納容器の過温破損が防止できないため、
 必ずしも環境へのFP放出の低減に関して有効とならないが、格納容器への注水と組み合わせた場合には、フィルターもしくはサプレッションプールのバイパスを回避することができ、環境へのFP放出量の低減に関して有効なものとなる。
 PWRでは、フィルター付ベント設備は、格納容器の準静的な過圧破損モードに対しては有効であるが、フィルター付ベント設備のみでは他の破損モードには有効ではないため、シビアアクシデント時の格納容器破損の発生率を低下する観点から、格納容器スプレー系の強化あるいは格納容器内注水等ベント設備以外の対策も併せて、総合的に検討していく必要がある。
 なお、格納容器ベント設備の設備仕様を具体的に決定するに当たっては、DCH、溶融炉心の冷却特性及びプールスクラビング効果等のシビアアクシデント時の物理現象に関する研究を推進し、不確かさの幅の低減に努めていく必要がある。
2)水素燃焼装置
 設計ベースを超える大量の水素ガスの発生に対する対応策については、原子炉安全基準専門部会のワーキンググループにおいて検討がなされてきた。
 同ワーキンググループにおいては、大量の水素発生時の問題点、今後の措置、格納容器の耐力、米国における規制、研究開発状況及び我が国の規制に適用する場合の問題点等について検討がなされてきた。その後、格納容器の安全性の役割、指針への導入方法などについて検討がなされている。その結果、大量水素発生時においても格納容器は、現設計のままで格納機能を維持できる可能性がかなり高いが、なお一層の検討が必要であるとの結論がまとめられている。さらに、同ワーキンググループにおいて、国内PWRアイスコンデンサ型プラントにつき、水素燃焼装置を水素制御対策のひとつとして検討している。その結果、計画的に水素の燃焼が制御できれば、格納容器の内圧上昇を極めて限られた範囲に止めうるものの、確実にかつ遅滞なく燃焼を起こさせる燃焼装置についてはまだ実証性が不十分であるとの結論がまとめられている。当懇談会においては、同ワーキンググループの検討結果を踏まえ、PSAの結果など国内外のシビアアクシデント研究の最新の成果、海外諸国において設置が検討され、あるいは既に設置された設備の様態、データ等を参考にその効用及び設置に付随して生ずる課題と対応について検討してきたが、現状で得られた知見をまとめると以下のとおりである。
①水素制御方式としては、水素再結合方式、水素燃焼方式及び不活性化方式があるが、このうち設計基準事象を超える大量の水素発生に対しては水素再結合方式は適さない。
②PWRプラントに比べ、格納容器容積が相対的に小さいBWR Mark Ⅰ、Ⅱプラントについては、我が国では設計当初より窒素ガスによる不活性化方式が採用されている。
③格納容器容積が相対的に大きいPWRプラントについては運転中に格納容器内の巡視・点検を行っていること及び格納容器容積が大きいことから不活性化方式は適さない。
④水素燃焼方式による水素燃焼装置の型式としては、グロープラグ式、スパーク式及び触媒式が挙げられるが、グローブラグ式及びスパーク式は電源の信頼性について検討が必要である。また、触媒式及びスパーク式はシビアアクシデント条件下での性能確認試験が完了していない。
⑤米国及びフィンランドのPWRアイスコンデンサ型プラントには既にグロープラグ式の水素燃焼装置が設置されている。
⑥我が国の産業界のレベル2PSAの結果によれば、PWRアイスコンデンサ型プラントに水素燃焼装置を設置することにより、全格納容器破損発生率は約半分になる。
⑦PWRドライ型格納容器プラントは格納容器容積・出力比が大きく破損限界圧力も高いため安全裕度は大きいと認識されており、ドイツにおいて水素燃焼装置が設置される予定であるのを除き各国でも水素燃焼装置を設置していない。
 また、水素燃焼装置の作動の時期を誤り、水素濃度が高くなった時点で作動させることになった場合に、過剰圧力を生じさせないよう適切な操作要領等の検討が必要である。
 また、このような状態に対して、可能性は低いと思われるが、爆ごうの発生について検
討が必要である。

6.結論と提案
 これまで我が国で行われたレベル1PSAの結果によれば、代表的な国内原子炉では、これまでの良好な運転実績が今後も維持されること及び国の指導に基づき整備が進められているフェーズⅠのアクシデントマネージメントが高い信頼度で実施されることが期待し得るならば、原子炉施設内部の原因によってシビアアクシデントが発生する可能性は充分小さいと判断される。また、このフェーズⅠのアクシデントマネージメントの整備に関し、その範囲を広げて検討することにより、シビアアクシデントの発生防止にさらに一層の効果があると考えられる。
 一方、米国等で実施されたレベル2PSA及び我が国で実施された予備的なレベル2PSAの結果によれば、不確実さはあるものの、格納容器内への注水等の対策と組み合わせて設置するフィルター機能を有する格納容器ベント設備(BWR及びPWR)、並びにPWRアイスコンデンサ型格納容器への水素燃焼装置の設置は、フェーズⅡのアクシデントマネージメントの一部として有効な対策となり得ると判断される。
 以上のこと及び『2.アクシデントマネージメントの役割と位置付け』で述べた考え方を踏まえると、アクシデントマネージメントを整備し、万一の場合にこれを的確に実施することは、強く奨励もしくは期待されるべきものと当懇談会は考える。そこで、今後アクシデントマネージメントの整備を一層促進するために、当懇談会は次のような提案を行うものである。
(1) 原子力安全委員会は、原子炉設置者が行うアクシデントマネージメントの整備につき、その性格と位置付け及び原子炉設置者・規制当局の任務等に関する基本的考え方を示し、今後の当事者の努力の方向と枠組みを明らかにすること。
(2) 上記考え方においては、アクシデントマネージメントを次のように位置付けることが適当であると考える。すなわち、アクシデントマネージメントは、これまでの対策によって十分低くなっているリスクをさらに低減するための、原子炉設置者の技術的知見に依拠する「知識ベース」の措置であり、状況に応じて原子炉設置者がその知見を駆使して臨機にかつ柔軟に行われることが望まれるものである。従って、現時点においては、これに関連した整備がなされているか否か、あるいはその具体的対策の内容の如何によって、原子炉の設置または運転を制約するような規制的措置が要求されるものではない。
(3) また、上記考え方においては、次の点を明示することが適当であると考える。すなわち、アクシデントマネージメントの範囲としては、フェーズⅠ、Ⅱの双方を含み、原子炉設置者は原子炉のリスクを一層低減する努力の一つとして、アクシデントマネージメントの整備に努めるべきである。ただし、原子炉施設の設計等によって、ある事故の可能性が存在しないかあるいは極めて低いと考えられる場合には、これに対応するアクシデントマネージメントについてはこれを除外することもあり得る。なお、その場合の目安としては、フェーズⅠとフェーズⅡのアクシデントマネージメントの有効性のバランスや海外で採用され始めている定量的な安全目標も参考となろう。
(4) さらに、上記考え方においては、アクシデントマネージメントの整備に際しての具体的検討事項として、少なくとも次の項目を掲げておくことが適当であると考える。
a)アクシデントマネージメントの整備の具体的内容に関し、
• アクシデントマネージメントの実施内容
• アクシデントマネージメント実施に係わる設備、機材の整備(異常診断、状況把握を運転要員が行いやすいように配慮した測定・表示・記録設備を含む)
• アクシデントマネージメントの手順書の整備と要員の教育訓練を検討すること
b)上記の整備に当たって、新たに設備を付加する場合、あるいは既設の設備を利用するにしても従来の手順書等に定めのない操作を行うことを規定する場合には、これらによって既存の安全機能を阻害しないことを確認すること
c)アクシデントマネージメントの整備は、適切な計画に基づき、可能な項目から順次実施されること。なお、原子炉設置者等において、適当な年限を定め、その整備状況がレビューされること
d)原子炉設置者は、その設備の様態、運転経験をもとに、個別プラントのPSAを実施し、アクシデントマネージメントを含む運転管理の重要性を再認識し、リスクの一層の低減に努めること
(5) 上記を進めるに当たり、アクシデントマネージメントの整備に関連する国の役割については、本報告書『2.アクシデントマネージメントの役割と位置付け』に述べられている考え方も参照して早急に議論を進め、コンセンサスを得る必要がある。
(6) 一方、国の研究機関等及び原子炉設置者においては、リスク低減努力に当たり、特に不確実さの大きい人的因子やシビアアクシデントに係わる物理的諸現象の研究等を進めて、不確かさの幅の低減を図るよう努力を払う必要がある。
 当懇談会は、シビアアクシデントに関する内外の状況を展望するとき、上記の提案は緊急かつ重要な意義を有すると確信するものであり、原子力安全委員会において早急に検討を開始されることを希望するものである。

(参考)
平成4年5月28日付け原子力安全委員会決定文(平成9年10月20日一部改正)
発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて
 当委員会は、原子炉安全基準専門部会に昭和62年7月、共通問題懇談会を設け、シビアアクシデントの考え方、確率論的安全評価手法、シビアアクシデントに対する格納容器の機能等について検討してきた。その後、平成2年2月19日、同懇談会からシビアアクシデントに関する知見及びそれまでに得られていた確率論的安全評価の一部について「原子炉安全基準専門部会共通問題懇談会中間報告書」を受けた。
 さらに当委員会は、平成4年3月5日、同懇談会から「シビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントに関する検討報告書-格納容器対策を中心として-」(以下、「報告書」という。)を受けた。これは、近年、シビアアクシデントへの拡大防止対策及びシビアアクシデントに至った場合の影響緩和対策(以下、「アクシデントマネージメント」という。)が発電用軽水型原子炉施設(以下、「原子炉施設」という。)の安全性の一層の向上を図る上で重要であると認識されていること、また、アクシデントマネージメントの一部として海外諸国において格納容器対策が採択され始めていることを踏まえ、我が国が採るべき考え方について検討を行ったものである。
 当委員会は、報告書の内容を検討した結果、報告書が述べるアクシデントマネージメントの役割と位置付け及び格納容器対策に関する技術的検討結果についてはこれを妥当なものであると考える。また、アクシデントマネージメントの整備を一層促進するための同懇談会の提案は、我が国の原子炉施設の安全性の一層の向上に資するものであり意義深いものと認識する。
 当委員会としては、同懇談会の提案を踏まえ、下記の方針で対応を行うこととする。また、原子炉設置者及び行政庁においても、同方針に沿って一層の努力をされるよう要望する。


1.我が国の原子炉施設の安全性は、現行の安全規制の下に、設計、建設、運転の各段階において、①異常の発生防止、②異常の拡大防止と事故への発展の防止、及び③放射性物質の異常な放出の防止、といういわゆる多重防護の思想に基づき厳格な安全確保対策を行うことによって十分確保されている。これらの諸対策によってシビアアクシデントは工学的には現実に起こるとは考えられないほど発生の可能性は十分小さいものとなっており、原子炉施設のリスクは十分低くなっていると判断される。
 アクシデントマネージメントの整備はこの低いリスクを一層低減するものとして位置付けられる。
 したがって、当委員会は、原子炉設置者において効果的なアクシデントマネージメントを自主的に整備し、万一の場合にこれを的確に実施できるようにすることは強く奨励されるべきであると考える。
2.原子炉設置者においては、原子炉施設の安全性の一層の向上を図るため、報告書が示す提案の具体的事項を参考としてアクシデントマネージメントの整備を継続して進めることが必要である。また、行政庁においても、報告書を踏まえ、アクシデントマネージメントの促進、整備等に関する行政庁の役割を明確にするとともに、その具体的な検討を継続して進めることが必要である。
3.当委員会としては、アクシデントマネージメントに関し、今後必要に応じ、具体的方策及び施策について行政庁から報告を聴取することとする。当面は以下のとおり行うこととする。
(1) 今後新しく設置される原子炉施設については、当該原子炉施設の詳細設計の段階以降速やかに、アクシデントマネージメントの実施方針(設備上の具体策、手順書の整備、要員の教育訓練等)について、行政庁から報告を受け、検討することとする。この検討結果を受け、原子炉設置者は、アクシデントマネージメント策を当該原子炉施設の燃料装荷前までに整備することとする。
(2) 運転中又は建設中の原子炉施設については、順次、当該原子炉施設のアクシデントマネージメントの実施方針について行政庁から報告を受け、検討することとする。
(3) 上記(1)及び(2)の際には、当該原子炉施設に関する確率論的安全評価について行政庁から報告を受け、検討することとする。
4.関係機関及び原子炉設置者においては、シビアアクシデントに関する研究を今後とも継続して進めることが必要である。さらに、当委員会としては、これらの成果の把握に努めるとともに所要の検討を行っていくこととする。



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・設置関係資料 その20 非常用電源

・設置関係資料 その20 非常用電源

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ウォール・ストリートジャーナル 日本版
http://jp.wsj.com/Japan/node_201568/?tid=tohoku
問われる福島原発の設計-非常用発電機の設置場所も対象に
2011年 3月 17日 10:26 JST

【東京】福島第1原子力発電所では、過熱した原子炉を冷却する努力が続いているが、危機を招いた原発の設計と安全性に問題はなかったか問われ始めている。


 福島原発は日本でも最も古い原発で、原子炉6基は1970年代に稼働を開始した。比較的旧式の技術である沸騰水型原子炉で、太平洋岸の6つの立方体の建物に収容されている。沿岸近くにあるのは、必要な場合、海水をくみ上げやすいし、重い資材を船で運搬できるためだ。

 福島原発は10年前、記録偽造スキャンダルの中心となり、原発を運転している東京電力は一時すべての原発の運転を停止し、多数の幹部が辞任した。原子力専門家によれば、この結果、福島原発で報告されていなかった問題が公開されたという。

 原子力業界は世界的な原発拡張を推進するにあたって、浮上している設計問題を綿密に精査することになりそうだ。近畿大学原子力研究所の伊藤哲夫所長は「先週の大地震と津波は、われわれのエンジニアリング上の想定を大きく超えていた」と述べ、「世界中の原子力産業が原発設計にあたってこうした想定をどうみるか再検討しなければならないだろう」と語った。

 精査の対象の一つは、福島第1原発の非常用ディーゼル発電機だ。これは地下にあり、安全な部屋に隔離されていた。原発が電力を失った際に13基の発電機が起動すると想定されていた。

 もう一つの精査対象は、原発の原子炉6基が互いに近接したところにあることだ。このため、一つの原子炉が打撃を受けると他の炉に波及し、復旧努力に障害になる。伊藤所長は、互いに近接していることで、機材を容易に移動できるし、労働力を低めに抑えられると指摘。ただし事故が発生した現在、こうした意図は「間違った考え」であったかにみえるとし、「運転上の効率性と安全性のバランスを保つ必要がある」と語った。

 米エクセル・エナジー社のテリー・ピケンズ取締役(原子力規制政策担当)は、福島原発と同じような原子炉は全くないと述べた。これは当時、電力会社は自らエンジニアリング会社や建設会社を採用し、カスタマイズされた設計をしていたためだという。米ミネソタ州にあるエクセルのモンティセロ原発では、ディーゼル発電機は出来るかぎり離れたところにある。これは「天変地異によって原発と発電機が同時に破壊されないようにする」ためだ。

 福島原発は11日の地震の際に電力を失った。運転していた3つの原子炉は設計通り、自動的に運転を停止した。だが電力が失われたことから、冷却システムが機能しなくなった。東電は、津波で非常用発電機が一つ残っただけだと述べた。地上にあった燃料タンクは津波で流されたようだという。

 東電の小森明生常務(原発担当)は先週末の会見で、非常用発電機をどの程度のエレベーション(高い場所、海抜)に設置するかは潜在的な問題だと指摘した。東電スポークスマンはこの発言を確認したが、完全な精査は作業員が原子炉を制御できてからになろうと述べた。

 原子力安全・保安院のスポークスマンによれば、福島第1原発の非常用発電機の設計は、日本の他の原発に「かなり普遍的」だという。同スポークスマンは、ディーゼル発電機の設置場所、とりわけエレベーションが問題との議論に反論し、原発は一定の規模の津波に耐えられると結論していたと述べた。同スポークスマンは「11日の大地震に続く津波がわれわれの想定を上回っていたのは疑いない。それが問題だ」と述べた。

 東電のスポークスマンは、発電機の設置場所を他に移せば、別の問題が発生すると述べた。同スポークスマンは「原子炉は海岸線から100メートル地点にあり、非常用発電機を収容している家屋はかなり防水機能があった」とし、「発電機をもっと高い場所に設置できたはずだと主張できるが、そうなれば、発電機は地震に脆弱になってしまう」と指摘した。同スポークスマンは「われわれはこうした諸リスクを徹底的に勘案して、非常用発電機を低めの場所に設置した」と強調。「(発電機の設置場所が誤っていたなどと主張するのは)後智恵というものだ」と述べた。

記者: Norihiko Shirouzu and Rebecca Smith


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asahi.com
http://www.asahi.com/special/10005/TKY201104060163.html
福島第一原発の安全不備 非常設備は改修せず
2011年4月6日11時41分

 東京電力の福島第一原発が津波に襲われた後、被害が拡大した理由に、非常用ディーゼル発電機などの設置場所など安全設計上の問題があった疑いが浮上した。1970年代から第一原発の運転を続ける中で、東電は改良工事など対策を講じることはできなかったのか。

■「大工事になり金かかる」関係者証言

 「福島第一原発は、ほかの原発と比べても極端に津波に弱い」。原発の安全確保の基本方針を決める原子力安全委員の一人は、事故から復旧の見通しが立たない中で、こう指摘した。

 福島第一原発は、国内の商業用原発としては最も古い部類に入り、60年代から70年代にかけて建設された。その後、耐震性などを強化するため、70~80年代にかけて大規模な改良工事が行われた。

 この工事にかかわった元東電社員の原子力技術者によると、各建屋につながれている電気ケーブルやパイプなどをコンクリートで覆い、岩盤と接するように工夫した工事などが繰り返されたという。ただ、今回、津波の被害を拡大させた疑いがある、非常用ディーゼル発電機の設置場所や、海水ポンプがほぼむき出しの状態で置かれていたことを見直すことについては、この技術者は「検討課題にはなっていなかった」。

 この理由について、原子力技術者は「想定した津波の高さで原子炉建屋は安全な位置にあると判断していることがまずあるが、発電機の位置などを変えようとしても、原子炉建屋の中に収納できるようなスペースはなく、設計の大幅な変更につながる。その発想は当時なかった」。また、東電の中堅幹部は、「もし、改修に踏み切ったとしたら、大規模な工事になり、多額のカネがかかる。当時は設計通りに作ることが至上命題だった」と話した。

 この背景には、60~70年代の建設当時、原発先進国・米国の技術を移入し、日本側はそれを学ぶ過程にあったことがある。東電元幹部はこう説明する。「福島第一はゼネラル・エレクトリック(GE)の設計を東芝と日立製作所が試行錯誤しながら学ぶ練習コースみたいなものだった」

 福島第一原発に六つある原子炉のうち、1~5号機はGEが開発をした、「マーク1」と呼ばれるタイプの沸騰水型炉。関係者によると、福島第一の非常用発電機の場所や、ポンプの構造は、GEの基本設計の通りだという。一方、6号機からは、原子炉建屋により余裕のある「マーク2」が採用され、70年代中ごろから90年代にかけて建設された福島第二と、柏崎刈羽両原発では「マーク2」の改良炉が主になっている。非常用発電機の位置やポンプを覆う建屋の建設も、東芝や日立製作所が経験を積み、改良していった点だ。

 だが、後発の原発に盛り込まれた安全設計の進展が、福島第一に活用されることはなかった。原子力技術者は「福島第二などの建設からも何年もたっているわけで、なぜ、福島第一に安全思想をリターンしなかったのかという点は、この大震災があったからこそ悔やまれる。東電は今後、厳しく検証を迫られることになるだろう」と指摘した。

■「後から直すと、当初の対策が甘かったと指摘される」

 一方、「日本では大きな原発事故はありえない」という、「安全神話」に頼る意識も影響した。

 東日本大震災が起きる前から、想定以上の津波が起きる危険性は指摘されていた。「防波堤をもっと高くできたはずだ」という声は東電社内でも起きている。ただ、東電の中堅幹部がかつての上司に「なぜ改良しなかったのか」と聞いたところ、「後から高くすると、当初の津波対策は甘かったという指摘を受ける。それを避けたかった」ということを言われたという。この中堅幹部は「非常用発電機を原子炉建屋に移すことについても、同じ考えがあったと思う」と話す。

 安全確保を目的とした、国の規制も改良を妨げたという指摘もある。原子力安全委員の一人は「日本は非常用発電機一つの位置を変えるにも、複雑な許認可が伴う。いまさら言っても遅いが、そのあたりが硬直化している」と話した。(板橋洋佳、市田隆、小島寛明)


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NHK newsweb
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111229/t10014975631000.html

東電 過去にも非常用発電機が水没
平成23年12月29日 4時40分
東京電力福島第一原子力発電所で、20年前、非常用発電機が、配管から漏れた水につかり、機能しなくなるトラブルが起きていたことが、東京電力の元社員らの話で分かりました。発電機の浸水対策を進め、今回の事故のような深刻な事態を防ぐきっかけにもなり得たトラブルでしたが、結果として、対策にはつながりませんでした。

福島第一原発の事故では、地下1階の非常用ディーゼル発電機が、津波によって流れ込んだ水につかって機能しなくなり、原子炉を冷やせなくなったことが、事態を深刻化させる原因の1つとなりました。このような浸水から、発電機を守るきっかけにもなり得たトラブルが、20年前の平成3年10月に起きていたことが、東京電力の元社員らの話で分かりました。元社員らによりますと、トラブルが起きたのは、福島第一原子力発電所1号機のタービン建屋で、配管から漏れ出した水が地下1階に流れ込み、非常用発電機が機能しなくなりました。当時、福島第一原発の技術者だった元社員は、タービン建屋が海に近かったことから、「もし津波が来たら、同じように地下の発電機が水につかって使えなくなると思い、上司に相談した」などと話しています。一方、東京電力は、当時、発電機のある部屋のドアに、防水対策を施したということですが、発電機を地下から高い場所に移し替えるなど、津波を想定した対策は採りませんでした。これについて東京電力は、「このトラブルの原因は、配管からの水漏れでその対策は講じている。また『津波の危険性を上司に相談した』という元社員の主張について、当時の上司は、相談を受けたという認識を持っていない」としています。

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毎日新聞 2012年1月4日 20時28分
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/nuclear/archive/news/2012/01/20120105k0000m040055000c.html


福島第1原発:91年事故でも非常用電源起動できない状態


 東京電力は4日、福島第1原発のタービン建屋地下で91年10月に起きた非常用電源部屋の浸水事故について、非常用電源は起動できない状況だったと発表した。昨年末の発表では非常用電源は機能していたとしていたが、当時の報告書を詳細に分析し、訂正した。

 東日本大震災に伴う津波で浸水し、非常用電源が起動できなかったことが今回の事故の一因になった。20年前は外部電源が機能していたとはいえ、当時の経験を教訓にできなかったことになる。

 東電によると、配管が腐食したために中を流れる原子炉の冷却用海水が毎時20立方メートル漏出。部屋にあふれて非常用発電機と配電盤が約60センチの深さで冠水した。報告書にあった電気抵抗データなどから起動できない状態だったことが判明したという。

 東電は「地下の方が耐震性が優れているので置いた」と説明した。【比嘉洋】

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・設置関係資料 その19 IAEA福島事故調査団報告書

・設置関係資料 その19 IAEA福島事故調査団報告書


・報告書
MISSION REPORT
http://www-pub.iaea.org/MTCD/meetings/PDFplus/2011/cn200/documentation/cn200_Final-Fukushima-Mission_Report.pdf



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・要旨
http://www.kantei.go.jp/foreign/kan/topics/201106/20110601iaea_tyousa_e.pdf

IAEA INTERNATIONAL FACT FINDING EXPERT MISSION OF THE NUCLEAR ACCIDENT FOLLOWING THE GREAT EAST JAPAN EARTHQUAKE AND TSUNAMI

Tokyo, Fukushima Dai-ichi NPP, Fukushima Dai-ni NPP and Tokai NPP, Japan 24 May- 1 June 2011

Preliminary Summary

IAEA EXPERT MISSION TO JAPAN

PRELIMINARY SUMMARY
1 JUNE 2011

The Great East Japan Earthquake on 11 March 2011, a magnitude 9 earthquake,generated a series of large tsunami waves that struck the east coast of Japan, thehighest being 38.9 meters at Aneyoshi, Miyako.

The earthquake and tsunami waves caused widespread devastation across a large part of Japan, with more than 14,000 lives lost. In addition to this, at least 10,000 people remain missing, with many more being displaced from their homes as towns and villages were destroyed or swept away. Many aspects of Japan’s infrastructure have been impaired by this devastation and loss.

As well as other industries, several nuclear power facilities were affected by the severe ground motions and large multiple tsunami waves: Tokai, Higashi Dori, Onagawa, and TEPCO`s Fukushima Dai-ichi and Dai-ni. The operational units at these facilities were successfully shutdown by the automatic systems installed as part of the design of the nuclear power plants to detect earthquakes. However, the large tsunami waves affected all these facilities to varying degrees, with the most serious consequences occurring at TEPCO`s Fukushima Dai-ichi.

Although all off-site power was lost when the earthquake occurred, the automatic systems at TEPCO`s Fukushima Dai-ichi successfully inserted all the control rods into its three operational reactors upon detection of the earthquake, and all available emergency diesel generator power systems were in operation, as designed. The first of a series of large tsunami waves reached the TEPCO`s Fukushima Dai-ichi site about 46 minutes after the earthquake.

These tsunami waves overwhelmed the defences of TEPCO`s Fukushima Dai-ichi facility, which were only designed to withstand tsunami waves of a maximum of 5.7 meters high. The larger waves that impacted this facility on that day were estimated to be larger than 14 meters high. The tsunami waves reached areas deep within the units causing the loss of all power sources except for one emergency diesel generator (6B), with no other significant power source available on or off the site, and little hope of outside assistance.

The station blackout at TEPCO`s Fukushima Dai-ichi and impact of the tsunami rendered the loss of all instrumentation and control systems at reactors 1-4, with emergency diesel 6B providing emergency power to be shared between Units 5 and 6.

The tsunami and associated large debris caused widespread destruction of many buildings, doors, roads, tanks and other site infrastructure at TEPCO`s Fukushima Dai-ichi, including loss of heat sinks. The operators were faced with a catastrophic, unprecedented emergency scenario with no power, reactor control or instrumentation, and in addition to this, severely affected communications systems both within and external to the site. They had to work in darkness with almost no instrumentation and control systems to secure the safety of six reactors, six associated fuel pools, a common fuel pool, and dry cask storage facilities.

With no means to control or cool the reactor units, the three reactor units at TEPCO’s Fukushima Dai-ichi that were operational up to the time of the earthquake quickly heated up due to usual reactor decay heating. Despite the brave and sometimes novel attempts of the operational staff to restore control and cool the reactors and spent fuel, severe damage of the fuel and a series of explosions occurred. These explosions caused further destruction at the site, making the scene faced by the operators even more demanding and dangerous. Moreover, radiological contamination spread into the environment. These events are provisionally determined to be of the highest rating on the International Nuclear Event Scale.

To date no health effects have been reported in any person as a result of radiation exposure from the nuclear accident.

By agreement with the Government of Japan, the International Atomic Energy Agency conducted a preliminary mission to find facts and identify initial lessons to be learned from the accident at TEPCO’s Fukushima Dai-ichi and promulgate this information across the world nuclear community. To this end, a team of experts undertook this fact finding mission from 24 May to 1 June 2011. The results of this mission will be reported to the IAEA Ministerial Conference on Nuclear Safety at IAEA headquarters in Vienna from 20-24 June 2011. This is a preliminary summary report to provide immediate feedback to the Government of Japan.

During the IAEA mission, the team of nuclear experts received excellent co-operation from all parties, receiving information from many relevant Japanese ministries, nuclear regulators and operators. The mission also visited three affected nuclear power facilities – Tokai, TEPCO’s Fukushima Dai-ni and Dai-ichi to gain an appreciation of the status of the plant and the scale of the damage. The facility visits allowed the experts to talk to the operator staff as well as to view the on-going restoration and remediation work.

The mission gathered evidence, undertook a preliminary assessment and has developed preliminary conclusions as well as lessons to be learned. These preliminary conclusions and lessons have been shared and discussed with Japanese experts and officials. They fall broadly under the three specialist areas of external hazards, severe accident management and emergency preparedness. They are of relevance to the Japanese nuclear community, the IAEA and for the worldwide nuclear community to learn lessons to improve nuclear safety.

The main preliminary findings and lessons learned are:
• The Japanese Government, nuclear regulators and operators have been extremely open in sharing information and answering the many questions of the mission to assist the world in learning lessons to improve nuclear safety.
• The response on the site by dedicated, determined and expert staff, under extremely arduous conditions has been exemplary and resulted in the best approach to securing safety given the exceptional circumstances. This has been greatly assisted by highly professional back-up support, especially the arrangements at J-Village to secure the protection of workers going on sites.
• The Japanese Government’s longer term response to protect the public, including evacuation, has been impressive and extremely well organized. A suitable and timely follow-up programme on public and worker exposures and health monitoring would be beneficial.
• The planned road-map for recovery of the stricken reactors is important and acknowledged. It will need modification as new circumstances are uncovered and may be assisted by international co-operation. It should be seen as part of a wider plan that could result in remediation of the areas off site affected by radioactive releases to allow people evacuated to resume their normal lives. Thus demonstrating to the world what can be achieved in responding to such extreme nuclear events.
• The tsunami hazard for several sites was underestimated. Nuclear designers and operators should appropriately evaluate and provide protection against the risks of all natural hazards, and should periodically update these assessments and assessment methodologies in light of new information, experience and understanding.
• Defence in depth, physical separation, diversity and redundancy requirements should be applied for extreme external events, particularly those with common mode implications such as extreme floods.
• Nuclear regulatory systems should address extreme external events adequately, including their periodic review, and should ensure that regulatory independence and clarity of roles are preserved in all circumstances in line with IAEA Safety Standards.
• Severe long term combinations of external events should be adequately covered in design, operations, resourcing and emergency arrangements.
• The Japanese accident demonstrates the value of hardened on-site Emergency Response Centres with adequate provisions for communications, essential
plant parameters, control and resources. They should be provided for all major nuclear facilities with severe accident potential. Additionally, simple effective robust equipment should be available to restore essential safety functions in a timely way for severe accident conditions.
• Hydrogen risks should be subject to detailed evaluation and necessary mitigation systems provided.
• Emergency arrangements, especially for the early phases, should be designed to be robust in responding to severe accidents.

The IAEA mission urges the international nuclear community to take advantage of the unique opportunity created by the Fukushima accident to seek to learn and improve worldwide nuclear safety.


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経済産業省 要旨の仮訳
http://www.nisa.meti.go.jp/oshirase/2011/files/230601-1-2.pdf


(仮訳)
IAEA調査団
暫定的要旨
2011年6月1日

マグニチュード9の地震であった2011年3月11日の東日本大地震は,日本の東海岸を直撃した数度に亘る津波を発生させ,そのうち最大のものは,宮古市姉吉における38.9メートルに及んだ。

地震及び津波は,日本の広い地域において広範囲の荒廃をもたらし,14,000名以上の死者を出した。これに加え,少なくとも10,000名の人々が今なお行方不明であり,町や村が破壊されたことで多くの避難者を出した。日本のインフラの多くが,この荒廃や喪失により損害を受けた。

他の産業と同様,いくつかの原子力発電施設が激しい地表の振動及び大規模な複数の津波により影響を受けた。東海,東通,女川並びに東京電力の福島第一及び福島第二である。これらの施設の運転中のユニットは,原子力発電所の設計の一部として備えられていた地震を検知するための自動システムにより,停止に成功した。しかし,大きな津波は,程度の差はあれ,これらの施設すべてに影響を与えた。その最も重大な結果が,東京電力福島第一で発生した。

地震発生時,施設外のすべての電源が失われたものの,東京電力福島第一の自動システムは,地震を検知した際,すべての制御棒を3機の運転中の炉に挿入させることに成功し,利用可能なすべての緊急ディーゼル発電システムは設計どおり作動した。大規模な津波の第一波は,東京電力福島第一のサイトに地震発生から約46分後に到達した。

津波は,最大5.7メートルの津波に持ち応えるよう設計されたに過ぎなかった東京電力福島第一の防御施設を圧倒した。同日,この施設に衝撃を与えた波のうち大きなものは14メートル以上と推定された。津波は,これらのユニット奥深くに到達し,緊急ディーゼル発電機の1台(6B)を除くすべての電源の喪失を引き起こし,施設内外に利用可能な電力源がなくまた外部からの支援の希望が殆どない状態をもたらした。

東京電力福島第一における全交流電源喪失と,津波の衝撃は,1~4号機のすべての機器とコントロール・システムの喪失をもたらし,緊急ディーゼル発電機6Bは,5,6号機間で共有される形で非常電源を供給する状況になった。津波及びそれに伴う大きながれきは,東京電力福島第一において,ヒートシンクの喪失も含め,広範囲にわたり多くの建物,戸口,道路,タンクその他のサイトのインフラの破壊を引き起こした。運転員は,電源も,炉の制御も,機器もない状態に加え,施設内部及び外部との通信システムも甚大な影響を受けるといった,壊滅的で先例のない緊急事態に直面した。彼らは,暗闇の中で,機器やコントロール・システムが殆どない状態で6機の炉及び付設された燃料プール,共用使用済燃料プール,乾式キャスクを用いた貯蔵施設の安全を確保するために作業しなければならなかった。

原子炉ユニットを制御又は冷却する手段がない状態で,地震発生時まで運転中であった東京電力福島第一原子力発電所の3つの原子炉ユニットの温度は通常発生する崩壊熱によって急速に上昇した。運転員が,制御能力を取り戻して原子炉及び使用済燃料の冷却を行うために勇敢でかつ時には前例のない取組を実施したにもかかわらず,燃料への重大な損傷及び一連の爆発が生じた。これらの爆発により,敷地において更なる損傷が発生し,運転員が直面する状況を一層困難かつ危険にした。更に,放射能汚染が周囲に広がった。これらの事象は,暫定的に国際原子力事象評価尺度(INES)で最も高い評価に分類されている。

今日まで,今回の原子力事故による放射線被ばくの結果として人が健康上の影響を受けた事例は報告されていない。

日本政府との合意により,国際原子力機関(IAEA)は東京電力福島第一原子力発電所における事故に関する事実を収集し,初期的な教訓を特定し,これらの情報を世界の原子力コミュニティに公表するために暫定的な調査を行った。そのために,2011年5月24日から6月1日まで専門家チームがこの事実調査を実施した。調査の結果は,2011年6月20日から24日までウィーンのIAEA本部で行われる原子力安全に関するIAEA閣僚会議に報告される。本稿は,日本政府に対し直ちに結果を伝えるための暫定的な要旨である。

IAEAによる調査期間中,原子力専門家からなる調査団は,全ての関係者から素晴らしい協力を得ることができ,多数の関係省庁,原子力規制当局及び原子力発電所の事業者から情報を得ることができた。また,調査団は原子力発電所の状況及び損傷の規模を完全に把握するため,東海原子力発電所並びに東京電力の福島第一発電所及び福島第二発電所を訪問した。

右訪問により,専門家は運転員と話すことができ,また現在進行中の復旧・改修作業を視察することができた。

調査団は証拠を収集し,暫定的な評価を行うとともに暫定的な結果及び教訓を得た。これらの暫定的な結論及び教訓は,日本の専門家及び政府関係者と共有され,議論された。これらは,大きく分けて外的事象のハザード,シビアアクシデント・マネジメント及び緊急に対する準備の3つの広い専門分野に該当する。これらは,原子力安全を改善するための教訓を得る上で,日本の原子力コミュニティー,IAEA及び世界の原子力コミュニティーにとって関連がある。

主な暫定的な調査結果及び教訓は,以下のとおり
● 日本政府,原子力規制当局及び事業者は,世界が原子力安全を改善する上での教訓を学ぶことを支援すべく,調査団との情報共有及び調査団からの多数の質問への回答におい
て非常に開かれた対応をとった。
● 非常に困難な状況下において,サイトの運転員による非常に献身的で強い決意を持つ専門的対応は模範的であり,非常事態を考慮すれば,結果的に安全を確保する上で最善のアプローチとなった。 これは,非常に高度な専門的な後方支援,就中,サイトで活動している作業員の安全を確保するためのJビレッジにおける対応が大きな助けとなっている。
● 避難を含め,公衆を保護するための日本政府の長期的な対応は見事であり,非常に良く組織されている。公衆及び作業員の被ばくに関する適切且つ時宜を得たフォローアップ計画及び健康モニタリングは有益であろう。
● 損傷した原子炉の復旧のために計画されたロード・マップは重要であり認知されている。新たな状況が発見されればその修正が必要となるが,国際協力による支援を受けることも可能である。(ロード・マップは,)サイト外で放射線の放出により影響を受けた地域の救済をもたらし,それにより避難した人々が通常の生活を取り戻すことを可能にするような,より広範な計画の一部と捉えるべきである。これにより,かような極限的な原
子力の事象に対応する上で何を成し遂げ得るのかを世界に示すことになる。
● いくつかのサイトにおける津波というハザードは過小評価されていた。原子力発電所の設計者及び運転者は,すべての自然のハザードの危険性を適切に評価し,これに対する防護措置を講ずるべきであり,新たな情報,経験や理解を踏まえて危険性についての評価及び評価手法を定期的に更新すべきである。
● 極限的な外部事象,特に大洪水のような共通性のある事象に対し,深層防護,物理的な分離,多様性及び多重性の要件が適用されるべきである。
● 原子力規制の制度は,極限的な外的事象に対し,それらの定期的な見直しを含めて適切に対処でき,また,規制の独立性及び役割の明確さがIAEA安全基準に沿ってあらゆる状況において維持されるようなものとすべきである。

● 外的事象の深刻で長期的な組み合わせについては,設計,運転,資源の調達及び緊急時対応において十分に考慮されるべきである。
● この日本の事故は,適切な通信手段,重要なプラント・パラメーター,コントロール及びリソースを十分に備えた敷地内の堅固な緊急対応センターの有用性を立証している。このような施設は,潜在的にシビア・アクシデントが起きる可能性のあるすべての主要な原子力施設に設けられるべきである。さらに,シビア・アクシデントの状況に対して重要な安全機能をタイミング良く回復させるため,簡単で有効且つ丈夫な設備が利用できるようにすべきである。
● 水素がもたらすリスクは詳細に評価され,必要な緩和システムが提供されるべき。
● 緊急時対応は,就中初期段階の対応は,シビア・アクシデントにしっかりと対応できるように設計されるべきである。


IAEA調査団は,国際的な原子力コミュニティに対し,世界の原子力安全について学び,これを改善することを追求すべく,福島の事故によって生み出されたこの比類ない機会を活用することを要請する。 (了)


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2011-08-15 : ・設置関係資料2 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・賠償措置額(原賠法7条,原賠法施行令2条)の変遷

・賠償措置額(原賠法7条,原賠法施行令2条)の変遷


現行原賠法
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(損害賠償措置の内容)
第七条  損害賠償措置は、次条の規定の適用がある場合を除き、原子力損害賠償責任保険契約及び原子力損害賠償補償契約の締結若しくは供託であつて、その措置により、一工場若しくは一事業所当たり若しくは一原子力船当たり千二百億円(政令で定める原子炉の運転等については、千二百億円以内で政令で定める金額とする。以下「賠償措置額」という。)を原子力損害の賠償に充てることができるものとして文部科学大臣の承認を受けたもの又はこれらに相当する措置であつて文部科学大臣の承認を受けたものとする。
2  文部科学大臣は、原子力事業者が第三条の規定により原子力損害を賠償したことにより原子力損害の賠償に充てるべき金額が賠償措置額未満となつた場合において、原子力損害の賠償の履行を確保するため必要があると認めるときは、当該原子力事業者に対し、期限を指定し、これを賠償措置額にすることを命ずることができる。
3  前項に規定する場合においては、同項の規定による命令がなされるまでの間(同項の規定による命令がなされた場合においては、当該命令により指定された期限までの間)は、前条の規定は、適用しない。
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http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/007/shiryo/08091008/005/001.htm

(施行日~)
・昭和37年3月15日~ 50億円
・昭和46年10月1日~ 60億円
・昭和55年1月1日~  100億円
・平成2年1月1日~  300億円
・平成12年1月1日~ 600億円
・平成22年1月1日~ 1200億円

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2011-08-14 : ■その他 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■2条「原子力損害」の意味・範囲 安愚楽牧場の問題

■2条「原子力損害」の意味・範囲 安愚楽牧場の問題


 以下のような記事があった。

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http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110802-OYT1T00343.htm
安愚楽牧場、賠償の可能性ある…細野原発相

福島原発
 「和牛オーナー制度」で知られる畜産会社「安愚楽(あぐら)牧場」(栃木県那須塩原市)が経営悪化した問題について、細野原発相は2日午前の閣議後記者会見で「牧場の場所からいっても、牛に関する問題ということからいっても、賠償スキーム(枠組み)に乗る可能性は十分ある」と述べ、同社が東京電力から損害賠償を受けられる可能性があることを示唆した。
(2011年8月2日11時39分 読売新聞)
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〔牛の所有者の東電への請求〕
 この和牛オーナー制度の詳細は知らないが,飼育している和牛の所有者(繁殖牛は会員?,子牛は牧場?)は,牛の汚染で被った損害(財物汚損,出荷停止,風評被害による価格低下等)について,原発事故と相当因果関係がある限り,直接の被害者として,東電に損害賠償請求することが可能であろう。

 なお,この和牛オーナー制度には,特定商品預託法(特定商品等の預託等取引契約に関する法律)の適用がある。


〔会社(牧場側)の東電への請求〕
 原発事故と,相当因果関係のある減益分については,牧場は東電に賠償請求できるはず。


〔会員(オーナー)の東電への請求〕
 解約時や委託期間終了時に戻ってくるはずの,委託牛買取り金(返戻金?)相当額の損害について,東電に請求できるのかという問題となろう。
 会員の牧場に対する債権を,第三者(東電)が侵害したとみると〔事実行為(原発事故)によって,債務者の一般財産を減少させることによって,債権の実現を妨げたという型のもの〕,単なる「過失」のみでは不法行為は成立しない?。
 こちらで述べた,第三者が事実行為によって債務者の一般財産(責任財産)を減少させた場合と同様のことが言えよう。
 なお,もともと原発事故前から,牧場側に返戻金分の原資が不足しているような場合は,その不足分については,そもそも原発事故と相当因果関係のある損害とはいえないだろう。
 こちらで述べたのと同様に,基本的には,債権者(会員)は,債務者(牧場)の無資力を前提に,牧場の東電に対する、原発事故と相当因果関係のある損害分について賠償請求権を代位行使(民法423条)して,損害を回復するということになろうか。ただし,会社更生,破産等開始決定がある場合は,それぞれ管財人等による回収を待つことになる。


〔株主(牧場の株主)の東電への請求〕
 債権者より劣後するが、考え方は,上の会員(債権者)の東電への請求と同様になるかもしれない。基本的には,牧場の東電に対する賠償請求を通じて,牧場の財産を回復させ,株式の価値を回復するということだろうか。事故前から,債務超過であったような場合は,賠償金を得ても元の程度の債務超過の状態に戻るだけなので,株主の損害回復にはならない?。そもそも損害がない?


※会員による国、会社、会社役員の責任追及はまた別の問題


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2011-08-13 : ■2条「原子力損害」 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■2条「原子力損害」の意味・範囲 セシウム汚染牛の問題

■2条「原子力損害」の意味・範囲 セシウム汚染牛の問題


 以下のような記事があった。

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http://www.kahoku.co.jp/news/2011/08/20110804t65011.htm
河北新報社
牛肉汚染 東電職員「稲わら農家の責任」 抗議受け本社謝罪

 肉牛から国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されるなど、福島第1原発事故による農業被害が拡大している問題で、農民運動全国連合会(農民連)は3日、被災地で補償対応に当たる東京電力職員の言動が横暴だとして、東電に謝罪と迅速な賠償を求める要請活動を行った。
 農民連によると、東電職員は宮城県で「牛肉問題は汚染された稲わらを与えた農家の責任」と発言したという。福島県では「(補償対象だという)証拠を示す責任がある」と次々に資料を提出させ、賠償金の仮払いで「津波による被害分は後で返してもらう」と話したという。
 賠償金の支払い自体も停滞。原発から約12キロの南相馬市でコメなどを栽培していた三浦広志さん(51)は「20キロ圏内の場合は賠償請求の書式さえ決まっていない」と批判。福島市の服部崇さん(40)も「7月中に示すはずだった風評被害の書式もまだだ」と憤った。
 東電福島原子力被災者支援対策本部の橘田昌哉部長は「被害者の心情を踏まえない言動で、事実ならば申し訳ない」と謝罪。「初めてのことなので時間がかかっている。資料確認の迅速化を図る」と述べた。
 要請活動には宮城、福島両県などから約350人が参加。東京都千代田区の東電本店前に肉牛2頭を並べ、シュプレヒコールを上げた。
2011年08月04日木曜日
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 放射性物質はなかなか消えてなくならないので,なんらかの機序で濃縮等があって,二次,三次と被害が波及,拡大し,その場合,進むにつれて関係者が増えていくはずで,関係者相互の責任など,かなり問題が複雑なものになっていく可能性があって,牛以外でもこれからも同様の問題が出てくるかもしれないので,ここで考えてみる。

 事件のモデルとして以下のように単純化してみる。(経緯等はこちら



A 原発事故を起こした原子力事業者(東電)
B 稲ワラ汚染について監督指導をなすべき主体(国,自治体)
C 汚染稲ワラを生産販売した者(刈り取ったまま露天に放置)
D 買った汚染稲ワラを牛に食べさせてしまった畜産農家
E 汚染稲ワラを食べさせることなく飼育したが,他の畜産農家の汚染牛発覚で,出荷制限や風評による損害を被った畜産農家


1 ABの関係
 事故後の原子力損害の波及,拡大に,国の監督指示等の落ち度が関係していた場合に,どうなるのかという問題。
 東電の国との関係について論じたのと同様。こちら。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-category-14.html
 国,自治体の過失の有無,および,原賠法4条の適用範囲の問題
 さらに,
 国,自治体にかぎらず,事後的関与による損害拡大について,そもそも原賠法4条の適用があるのかという,4条の時的適用範囲の問題も関係する。
 こちらで触れた。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-129.html


2 ACの関係
・原賠法3条1項で過失の有無に関係なく責任を負うのが原則
・ただし,損害と原発事故との間に相当因果関係が必要

 まず,Cとの関係では,放射性物質によって稲ワラが汚染されたので,当然に稲ワラ生産販売したCに対しては,Aは財物汚損による賠償責任を負う。もし,CがDに稲ワラを売却していた場合は,その分は損害はないが,後述のとおり,DやEから損害賠償請求を受け,支払った場合は,その分は損害となるので,Aに対して,賠償請求する余地がある。ただし,過失相殺(民法722条2項)の余地あり。
 
※過失相殺(民法722条2項)について
・東電に有利な事情としては,
 ①事故後数日後には,東京の水道水からも放射性物質が検出され騒ぎとなっていたことや,茨城県のほうれん草からも規制値を超えるものが見つかっていたことなどから,少なくとも事故現場から東京までの範囲については,放射性物質が飛散してることは明白であったという事実。
 ②放射性物質が簡単に消失するものではないことは報道されていたこと。
 ③国は,3月19日段階で,「畜産農家の皆様へ」という文書などで,注意を呼びかけていたという事実。

・稲ワラ生産販売者に有利な事情としては,
 ①避難等指定区域外への汚染は,程度が低く,健康に影響はないと,繰り返し学者,専門家,メディアによって報道されていたという事実
 ②国の呼びかけ文書等があったが,それが不徹底であったとしたらその事実
 ③放射性物質飛散による広範な汚染は,世界でも珍しく,我が国では初めての出来事であること。
 ④放射性物質が無味無臭で五官で感得できないという事実。
 ⑤原子力災害対策特別措置法第3条で「原子力事業者は、この法律又は関係法律の規定に基づき、原子力災害の発生の防止に関し万全の措置を講ずるとともに、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止及び原子力災害の復旧に関し、誠意をもって必要な措置を講ずる責務を有する。」とあるように〔国の責務は4条,地方公共団体の責務は5条〕,原子力事業者が,一次的な災害拡大防止義務を負っていることから,これら災害拡大の防止に東電側が何らかの措置(国への働きかけ,農家への注意の不徹底等があれば自ら呼びかけるなど)をしていなかった場合はその事実。

 結局,これら事情などを考慮して,過失相殺の適用の有無,その割合を決するということになろう。


3 ADの関係
 汚染稲ワラをDに売り渡したCに不法行為(民法709条)の要件を満たすほどの落ち度が認められた場合,Aの不法行為(原発事故で放射性物質をまき散らした)と関係では,Cの行為は,後続侵害の問題となろう。
 つまり,Aは,このような場合にまで,後続侵害を経由して発生した損害の全部について責任を負うことになるのかという問題。
 相当因果関係説(通説・判例)では,先行行為(原発事故)のとの関係で,後続侵害による結果が,通常損害といえるか(因果経路の通常性),いえない場合でも,予見可能性な特別損害といえるかという観点から,判断される。
 予見可能性については,おそらく時間的近接性や先行の侵害の程度や状況,危険性,後続侵害の内容等の諸般の事情からケースバイケースで判断される。前述の過失相殺で述べた諸事情なども考慮されるだろう。〔先行行為(原発事故)の重大性,危険性,原子力災害対策特別措置法の存在等から見て,原子力事業者が責任を免れるはの難しそうだが。〕
 後続侵害については,こちらで触れた。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-129.html
 また,汚染稲ワラを食べさせた畜産農家Dについて,なんらかの落ち度が有れば,ACの関係で述べたの同様に,過失相殺(民法722条2項)による賠償額の減額の余地が生じてくる。前述のとおり,諸事情を考慮して決まるだろう。


4 AEの関係
 Eの損害に至るまでに,BCDの過失が関係している可能性がある。
 AC間で述べたとおり,先行行為(原発事故)のとの関係で,後続侵害による結果が,通常損害といえるか(因果経路の通常性),いえない場合でも,予見可能性な特別損害といえるかという観点から判断されるだろう。
 もっとも,汚染牛が出て,それが原因で,その県内の牛肉の出荷が制限されたり,風評被害が発生するのは通常の因果の経過であるから,AC間で,Aの責任が認められるような場合には,当然にAE間で,Aの責任は肯定されよう。
 また,Eは,自分の牛が汚染されていない以上,何の落ち度もないのは明らかなので,Aとの間で,過失相殺(民法722条2項)の問題は生じない。

※なお,同一県内に汚染食品がないのに,第三者の行為で,風評が発生したような事案については,こちらで触れた。http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-95.html
 

5 BCの関係
 稲ワラを汚染されてしまったCも被害者で,その賠償請求をA東電のみならず,B国にも請求できないかという問題。
 「原子力損害」を被った被害者が,国を訴えることができるのかという問題であり,以前に論じた原賠法4条による国の免責の問題。こちらで論じた。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-38.html
 なお,仮に国の賠償責任が認められても,AC間と同様に過失相殺(民法722条2項)の問題はある。


6 BDの関係
 知らずに,汚染稲ワラを食べさせた農家Dが,その賠償請求をA東電のみならず,B国にも請求できないかという問題。
 「原子力損害」を被った被害者が,事故後の国や自治体の指導等について落ち度かある場合に,国を訴えることができるのかという問題であり,ここで論じた原賠法4条による国の免責の問題。 
 こちらで論じた。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-38.html
 なお,仮に国の賠償責任が認められても,AD間と同様に過失相殺(民法722条2項)の問題はある。


7 BEの関係
 これも,汚染牛発生,出荷制限,風評被害に至る間に,国の指導等に落ち度があった場合に,畜産農家Eが,国の過失を根拠に国賠請求できるかという問題で,上と同じ。
 ただし,この場合は,Eは,自分の牛が汚染されていない以上,何の落ち度もないのは明らかなので,Bとの関係でも過失相殺(民法722条2項)の問題は生じない。


8 CDの関係
 CD間には稲ワラの売買契約があることから,少しややこしい。
・債務不履行責任
 Cに売却予定稲ワラ等の管理や検査等について,落ち度があって,汚染稲ワラをDに売却したことについて過失がある場合は,Dに対して,債務不履行に基づく損害賠償責任(民法415条)を負う。
 Dは無価値な稲ワラをつかまされたことで,売買代金分の損害は当然被っているので,その代金分は損害となる。さらに,それを知らずに食べさせたことによって,自分の牛が汚染されてしまって,無価値となってしまった場合,Cは,その分まで賠償責任を負うのか。
 積極的債権侵害の問題。諸説あるが,売買契約の売り主の給付義務に付随する注意義務違反として,債務不履行責任のひとつとして捉えられ,給付が不完全であったことと相当因果関係ある全損害について,賠償責任を負うことになる。
 したがって,CはDに対して,少なくとも汚染前の牛の時価相当額の賠償義務はあるということになろう。
 もっとも,Cから受け取った稲ワラを食べさせたDの行為にも落ち度があるとするなら,債権者に過失あるときとして,過失相殺(民法418条)による賠償額の減額がありうる。
・瑕疵担保責任
 当該稲ワラが何らかの理由で特定物と見られる場合,または,瑕疵担保責任の適用は特定物に限らないとする立場に立った場合。
 稲ワラが規制値を超える程度の汚染をもたらすものである場合は,当然に「瑕疵」があり,これが取引上一般に要求される程度の注意を払っても発見できないようものであった場合は,「隠れた瑕疵」ということになって,Cは売り主としては,瑕疵担保責任(民法570条,566条1項)を負うことになる。Cの過失の有無は問わない。
 原発事故と,その後の放射性物質の飛散,それによる土壌や農作物の汚染は騒がれていたのことから,セシウム汚染が,「隠れた」瑕疵といえるのかという点は,問題となる余地はある。
・もっとも,これら民法上の責任については,原賠法4条〔責任集中の原則〕との関係が問題となる。
 牛肉のセシウム汚染を,原発事故と相当因果関係のある「原子力損害」であると見た場合,原賠法4条で原子力事業者Aのみが責任を負うとされるので,CD間では賠償責任の問題生じないと考えられる。つまり,CはDに対して,契約上の賠償責任責任を負わない。(この場合でも,Cにもし「故意」が認められるなら,原子力事業者Aは,Dに支払った賠償金について,Cに対して求償権を有することになる(原賠法5条1項)。)
 これに対して,原賠法4条の適用範囲について,特に事後的な第三者の関与による損害拡大については,その趣旨から,責任集中の適用はないと解するなら,逆の結論になろう。4条の時的適用の範囲の問題。
 こちらで論じた。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-129.html
 第三者の事後的関与と原賠法4条との関係については,こちらでも触れた。
 http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-132.html
 また,上で論じたのAD間の関係について,その相当因果関係が否定される場合は,牛肉汚染と原発事故との,相当因果関係が切れている場合なので,「原子力損害」とはならず,原賠法4条の適用も問題とならず,当然CD間の民法上の責任のみが問題となろう。


9 CE間の関係
 CE間には契約関係が無いので,契約上の責任,債務不履行責任は問題とならない。
 したがって,仮に,Cの行為〔稲ワラを露天で置いておいて後に束ねて出荷〕が,Cの過失ある行為と認められ,Eら他の畜産農家の牛肉の出荷停止,風評被害による損害などと,相当因果関係あると見られる場合に,不法行為責任(民法709条)が問題となるだけだろう。
 ただし,この場合も,上のCD間で論じたのと同様に,原賠法4条との関係が問題となり,「原子力損害」といえる限りは,原則として,CE間でも賠償の問題は生じない。事後的関与について4条適用否定するなら,逆になる。
 Eに落ち度はないので,過失相殺(民法722条2項)は問題とならない。


10 DE間の関係
 DE間には契約関係が無いので,契約上の責任,債務不履行責任は問題とならない。
 したがって,仮に,Dの行為〔汚染稲ワラを自分の牛に食べさせて,汚染牛を発生させたこと〕が,Dの過失ある行為と認められ,それがEら他の畜産農家の牛肉の出荷停止,風評被害による損害などと,相当因果関係あると見られる場合に,DのEに対する不法行為責任(民法709条)が問題となる。
 ただし,この場合も,上のCD間で論じたのと同様に,原賠法4条との関係が問題となり,「原子力損害」といえる限りは,原則として,DE間でも賠償の問題は生じない。
 事後的関与について原賠法4条適用否定するなら,逆になる。
 Eに落ち度はないので,過失相殺(民法722条2項)は問題とならない。
 また,上で論じたのAD間の関係について,その相当因果関係が否定される場合は,牛肉汚染と原発事故との,相当因果関係が切れている場合なので,「原子力損害」とはならず,原賠法4条の適用も問題とならず,当然DE間の不法行為責任(民法709条)が問題となる余地がある。


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 結局,原子力事業者Aである東電としては,自然の作用による濃縮等だけでなく,第三者(国,自治体,会社,個人等)の行為が介在して,損害が波及して広がっていくような場合については,

①通常の因果経路ではない上,特別事情の予見可能性がなく,相当因果関係のある損害ではないと主張する。
②原賠法4条による免責は,国及び事後的に関与した第三者には適用がないと主張して,落ち度ある国など第三者を共同不法行為者として賠償責任に引きずり込む。
③被害者の落ち度を主張して,過失相殺(民法722条2項)を主張する。


 これに対して,被害者は,

①因果関係の通常性,特別事情の予見可能性等を主張し,相当因果関係があることを示す。
②被害者としては,他の第三者(国,自治体,会社,個人等)が,東電とともに共同不法行為者となることについては,特に損にはならない。
③また,損害発生拡大について,自分には何ら落ち度なく,過失相殺(民法722条2項)の余地はないのだと主張する。


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・設置関係資料 その18 パブリックコメント 平成18年6月

・設置関係資料 その18 パブリックコメント 平成18年6月


「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針(案)」に対する意見募集にご応募いただいたご意見及び対応方針案について

http://netstrage.com/2030200002-181.pdf


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183頁
【意見】
プレート境界地震の連動を明記すること。
【理由】
 近年の津波堆積物の研究成果から、プレート境界地震では、通常のプレート間地震に比較して極めて大きな地震の発生が確認されている。
 2004年12月のスマトラ沖地震でも、複数のセグメントが連動して破壊してマグニチュード9.0の超巨大地震となって大津波がインド洋沿岸を襲い、数十万人の命が失われた。
 これらの事実は、指針にプレート境界地震の連動を明記する必要があることを示す。しかし、改訂指針案にはプレート境界地震の連動が具体的に記載されていない。
 東北電力の女川原発が三基ともスクラムした、2005.8.16に発生した宮城県沖地震は、単独のセグメントが活動したプレート境界地震である。この地震は想定より小さい、遠くの地震であったが、想定を超える揺れが観測された。
 太平洋側の原子力施設の耐震設計指針には、広範囲のプレート境界地震の連動を明記すべきであるが、記述がない。
------------------
(意見) プレート境界地震の連動の可能性を明記するべき。(理由) 改定指針案のどこにも、上記の記述がない。このことは非常に重要で、例えば浜岡原発の立地について言えば、東海地震だけでなく、東南海地震、更にはまた南海地震との連動も想定される。それは宝永地震などの過去の例からも明らかであり、どのパターンを取るかは、実際に起きてみるまでは分からないところである。同様の事は、他の場所で起きるプレート境界地震についても、あり得ることである。 そして、そのことは更に、実は浜岡をめぐる想定においても、果たして南海地震までとの連動で留まるのか、との心配も否定のできないところとなる。これらは決して起り得ないことではない。或いは台湾あたりまでの範囲ともなり得る可能性さえ、ゼロではないと言えよう。考えられる全ての場合を想定しておくことが必要である。 我々が過去の記録を辿って知ることができるのは、地球の歴史から言って、現在に近い部分のほんの一部にしか過ぎない。ヴェーゲナーの死後、プレート理論が誕生して、まだたかだか42年である。我々は地底の活動について、未知の部分の方がはるかに多く、自然の大きな力の前には、本当に小さな存在でしかないことを謙虚に知るべきである。現にスマトラ沖地震では、予期もしない広範囲の連動によって、大破壊がもたらされたことを、我々は教訓としなければならない。 個々の立地状況における具体的な可能性を論ずる必要はないまでも、少なくとも、プレート境界地震について、連動の可能性があることだけは、新指針には明記しなければならない。そして、発電用原子炉施設は、この指針を満たすものでなくてはならない。



「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」については、解説Ⅱ.(3)に以下のように記述していま
す。
「①検討用地震の選定に当たっては、敷地周辺の活断層の性質や過去の地震の発生状況を精査し、さらに、敷地周辺の中・小・微小地震の分布、応力場、地震発生様式(プレートの形状・運動・相互作用を含む。)に関する既往の研究成果等を総合的に検討することとする。
②検討用地震は、次に示す地震発生様式等に着目した分類により選定することとする。
)内陸地殻内地震
「内陸地殻内地震」とは、陸のプレートの上部地殻地震発生層に生じる地震をいい、海岸のやや沖合
で起こるものを含む。
)プレート間地震
「プレート間地震」とは、相接する二つのプレートの境界面で発生する地震をいう。
)海洋プレート内地震
「海洋プレート内地震」とは、沈み込む(沈み込んだ)海洋プレート内部で発生する地震をいい、海
溝軸付近ないしそのやや沖合で発生する「沈み込む海洋プレート内の地震」と、海溝軸付近から陸側で発生する「沈み込んだ海洋プレート内の地震(スラブ内地震)」の2種類に分けられる。」
 また、耐震指針検討分科会報告書には、以下のように記述しています。
「「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」について、敷地に大きな影響を与えると予想される地震(以下「検討用地震」という。)を複数選定し、それぞれの検討用地震ごとに、「応答スペクトルに基づいた地震動評価」及び「断層モデルを用いた手法による地震動評価」の双方を実施し、それぞれによる基準地震動Ss を策定することとした。なお、検討用地震の選定に当たっては、「内陸地殻内地震」、「プレート間地震」及び「海洋プレート内地震」という地震発生様式等に着目した分類によることとした。」
 以上のように、検討用地震は、プレートの形状・運動・相互作用を含む地震発生様式に関する既往の研究成果等を総合的に検討したうえで選定することとしており、ご意見にあるプレートの動きやプレート間地震の連動についても検討が行われるものと考えています。
(石橋委員意見)
事務局の対応方針案は抜本的に短くしてよいのではないか。
説明/回答の一案:「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」の部分で個別に審査できるものと考えます。


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194頁
意見(7):6.耐震設計方針(1)基本的な方針に、次の⑤を追加せよ⑤地震による損傷は共通事象、同時多発的であることを配慮すること理由:原発の設計では“多重防護”が強調されていて、万一ある装置等に故障・事故等が発生しても、それをカバーして事故が進展しないようになっている、といわれてきた。しかし、地震時には安全装置を含む複数の装置・機器類が同時に損傷を被る恐れがあり、なおかつ、外部電源の喪失やサイト周辺の交通麻痺等の状況もあって、にわかに機能不全の修復に対応できない状況が懸念される。地震時に原発の安全が確保されるためには、複数の装置・機器類が共通事象として同時多発的に損傷を受ける事態を想定して設計しておくだけでなく、敷地外部と遮断される事態も想定して方策を準備しておかなければならない。
 審議過程において、このことは再三指摘されてきている。柴田委員は文書[41-3-2]で「・・平常時には、十分に、対策がされているが、地震時において、非常用諸システムの共通損傷モードとしての、考慮が必要と思われる」と指摘している。さらに文書[42-5-1]で同委員は「地震による損傷は、共通事象、同時多発的である。従って、単一事象としては、対策がとられていても、必要に応じ、同時多発的の可能性のあることを認識して、その対策を考えなければならない」との文言を、本文もしくは解説に加えることを提案した。そして事務局による報告書[43-3]にも「地震時随伴事象について・・以下のような具体的な案が追加的に出された」として、⑤共通事象、同時多発性、が記されている。しかるに指針(案)では、本文にも(解説)にも削除され、かつ、採用されなかった意見を記載することとしていた「見解」にも脱落している。



(対応方針案)
 地震随伴事象として考慮すべき事項について、改訂案にどのような事項を規定すべきかについての調査審議の経緯は、報告書に以下のとおり、記載されています。
「(5)地震随伴事象について
旧指針においては、地震随伴事象について特化した規定は存在していなかったが、今次改訂においては、原子力施設の周辺斜面の地震時における崩壊等への考慮、津波に対する考慮、地盤変動等についての考慮の取込みの要否等に関する幅広い調査審議が行われた。これに関連して、まず、周辺斜面の崩壊等及び津波への考慮についての議論がなされ、引き続き、以下のような具体的な案が追加的に出された。
①施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な地震時地殻変動(特に地震に伴う隆起・沈降)に起因する地盤の変形によっても、施設の安全機能が損なわれないこと。
②検討用地震に随伴すると想定することが適切な余震の地震動によっても、施設の安全機能が損なわれないこと。
③地震時に発生する可能性のある次の諸事象が、発電所の重大な事故の誘因とならないことを確認する。
 また、その安全性を評価する場合には、その事象の発生の可能性を考慮すること。
)発電所に繋がる送電線および、関連する送電網の状態
)冷却水(補助的工業用水を含む)の供給の安定性
)周辺の都市火災、およびそれに起因する煙、ガスの影響
)近接する化学プラントなどからの、可燃性ガス、毒性ガスの発電所、および、その従業員への影響
)上流にあるダムの崩壊の影響(地震に起因する堰止湖を含む)
④周辺人工物の地震による損傷に基づく、間接的影響、すなわち、火災、毒性ガス、爆発性ガスなどの影響を、評価しなければならない。
⑤地震による損傷は、共通事象、同時多発的である。従って、単一事象としては、対策がとられていても、必要に応じ、同時多発の可能性のあることを認識して、その対策を考えなければならない。
これらの意見も含め、地震随伴事象として考慮すべき事項について、原子炉施設の「基本設計ないし基本的設計方針」の妥当性に係る「安全審査」において、設置許可申請対象となる固有の原子炉施設の耐震設計についての妥当性を審査すべき事項として適切かつ不可欠であるかどうかという視点、及び現行の他の関連する指針類で対応されているかどうかとの視点から議論を重ね、最終的には、改訂指針案のようになった。」
 なお、安全保護系の多重性については、「発電用原子炉施設に関する安全設計審査指針」の指針34 に「安全保護系は、その系統を構成する機器若しくはチャンネルに単一故障が起きた場合、又は使用状態からの単一の取り外しを行った場合においても、その安全保護機能を失わないように、多重性を備えた設計であること。」と記されています。
 以上のことから、改めてご意見を採り入れる必要はないと考えます。


----------------------------------
239頁
(意見)
「8.地震随伴事象に対する考慮」の項に、次の規定も追加してください。
『地震時に発生する可能性のある次の諸事象が、発電所の重大な事故の誘因とならないこと、および事故の拡大を招かないことを確認する。また、その安全性を評価する場合には、その事象の発生の可能性を考慮すること。
)発電所に繋がる送電線および、関連する送電網の状態
)冷却水(補助的工業用水を含む)の供給の安定性
)非常用ディーゼルの燃料供給の安定性
)周辺の道路状況』
(理由)
「耐震指針検討分科会報告書」の18ページに、『旧指針においては、地震随伴事象について特化した規定は存在していなかったが、今次改訂においては、原子力施設の周辺斜面の地震時における崩壊等への考慮、津波に対する考慮、地盤変動等についての考慮の取込みの要否等に関する幅広い調査審議が行われた。これに関連して、まず、周辺斜面の崩壊等及び津波への考慮についての議論がなされ、引き続き、以下のような具体的な案が追加的に出された。』としてその上記))が示されています。)以降の代わりに燃料供給の安定性と道路事情を加えて、指針本文に明記することを提案します。なお、事故の誘因とならないだけではなく、事故の拡大を防止することの確認も必要であるので、下線部を追加します。
地震随伴事象について議論された第41回速記録によれば、たとえば「発電所に繋がる送電線および、関連する送電網の状態」について、『まず短期間であれば、もともと非常用発電機のようなものが用意されておりますし、それからもし長期間復旧できそうもないというようなときでも非常用発電機の燃料補充をするとかいうことも考えられます・・・(中略)要するに、災害対策という領域でも対応されるべきである』(事務局)とあり、安全審査指針類でカバーされているという意見でした。非常用発電機はもともと短期間の対策でしかないといわれているのですが、では長期間に亘る際にはというと、「非常用発電機の燃料補充をする」と簡単に片付けられます。しかし例えば中越地震のですら、がけ崩れや地割れで道路は寸断、平坦地でも柏崎原発の周辺道路はほとんど使い物にならなくなりました。下水管が埋設されていてマンホールが浮き上がったのです。
まして証言『異様な音と共にアスファルトの道路がパクッと割れ、幅一米弱の亀裂が生じた。(中略)地面は未だ大揺れ、その時亀裂した道路が又、異様な音と共に閉じた。開いたり閉じたりする様は人の力ではない。(中略)見れば、その亀裂の中に半身が落ち込みそうになっていた』(静岡新聞03.4.7)にあるように44 年東南海地震ほどの巨大地震の場合を想定すれば、指針に明記し、サイト周辺への対策をも求めるのは当然でしょう。『念には念を入れて、大前提なら大前提ということで書くべきであろうと。書いてなぜ悪いのかというのが僕にはよく分からない。』(芝田委員)に同感です。



(対応方針案)
 地震随伴事象として考慮すべき事項について、改訂指針案にどのような事項を規定すべきかについての調査審議の経緯は、意見募集の参考資料として示した耐震指針検討分科会報告書18 ページに以下のとおり、記載されています。
「(5)地震随伴事象について
旧指針においては、地震随伴事象について特化した規定は存在していなかったが、今次改訂においては、原子力施設の周辺斜面の地震時における崩壊等への考慮、津波に対する考慮、地盤変動等についての考慮の取込みの要否等に関する幅広い調査審議が行われた。これに関連して、まず、周辺斜面の崩壊等及び津波への考慮についての議論がなされ、引き続き、以下のような具体的な案が追加的に出された。
(中略)
③ 地震時に発生する可能性のある次の諸事象が、発電所の重大な事故の誘因とならないことを確認する。また、その安全性を評価する場合には、その事象の発生の可能性を考慮すること。
)発電所に繋がる送電線および、関連する送電網の状態
)冷却水(補助的工業用水を含む)の供給の安定性
)周辺の都市火災、およびそれに起因する煙、ガスの影響
)近接する化学プラントなどからの、可燃性ガス、毒性ガスの発電所、および、その従業員への影響
)上流にあるダムの崩壊の影響(地震に起因する堰止湖を含む)
(中略)
これらの意見も含め、地震随伴事象として考慮すべき事項について、原子炉施設の「基本設計ないし基本的設計方針」の妥当性に係る「安全審査」において、設置許可申請対象となる固有の原子炉施設の耐震設計についての妥当性を審査すべき事項として適切かつ不可欠であるかどうかという視点、及び現行の他の関連する指針類で対応されているかどうかとの視点から議論を重ね、最終的には、改訂指針案のようになった。」
なお、外部電源喪失については、「発電用原子炉施設に関する安全設計審査指針」の指針9「・・・外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できる設計であること」とされています。
また、冷却水のうち、原子炉停止後、炉心から崩壊熱を除去するための施設については、耐震クラスⅠとし、基準地震動Ss による地震力に対してその安全機能が保持できる設計であることが求められています.また、非常用ディーゼルの燃料供給については、非常用所内電源系としての安全性が求められています。
周辺の道路事情については、「発電用原子炉施設に関する安全設計審査指針」の指針6「環境条件に対する設計上の考慮」として、安全機能を有する構築物、系統および機器は、その安全機能が期待されているすべての環境条件に適合できる設計であることとされています。
以上のことから、改めてご意見を採り入れる必要はないと考えます。


--------------------------------
240頁
意見4 送電系統と冷却水の安定供給の確保 指針案8に、以下、も付け加えるべきである。)発電所につながる送電線、碍子及び関連する送電系統の健全性)冷却水(補助的工事用水を含む)の供給の安定性、について、地震によって起こり得るあらゆる場合を想定し、送電線の健全性と冷却水の継続的供給が、確実になされることを確保するべきである。理由)発電所につながる送電線とりわけ碍子及び関連する送電網の状態は、地震時には、まず停電し、原発内部の重要な送電が止まり機能しなくなる。又、鉄塔が倒れる、碍子が破壊される、道路も寸断され、復旧作業はいちじるしく困難になる事が想定される。)の冷却水(補助的工業用水を含む)の供給の安定性についても、配管が破断した時、純水をどのように補給するのか。地震は1回大きなものが来て終わりではなく、場合によっては、長期間にわたりくりかえし余震がおそってくる(今年3月の玄界島の地震も、北九州全域に未だに余震はくりかえし続いている)ことが分かってきているので、もし初期の大地震には耐えられたとしても、余震が続く中でも、送電線、配管、冷却水等にまったく問題が起こらないように、耐震設計を責任を持って行うべきである。



(対応方針案)
 地震随伴事象として考慮すべき事項について、改訂指針案にどのような事項を規定すべきかについての調査審議の経緯は、意見募集の参考資料として示した耐震指針検討分科会報告書18 ページに以下のとおり、記載されています。
「(5)地震随伴事象について
旧指針においては、地震随伴事象について特化した規定は存在していなかったが、今次改訂においては、原子力施設の周辺斜面の地震時における崩壊等への考慮、津波に対する考慮、地盤変動等についての考慮の取込みの要否等に関する幅広い調査審議が行われた。これに関連して、まず、周辺斜面の崩壊等及び津波への考慮についての議論がなされ、引き続き、以下のような具体的な案が追加的に出された。
(中略)
③ 地震時に発生する可能性のある次の諸事象が、発電所の重大な事故の誘因とならないことを確認する。また、その安全性を評価する場合には、その事象の発生の可能性を考慮すること。
)発電所に繋がる送電線および、関連する送電網の状態
)冷却水(補助的工業用水を含む)の供給の安定性
)周辺の都市火災、およびそれに起因する煙、ガスの影響
)近接する化学プラントなどからの、可燃性ガス、毒性ガスの発電所、および、その従業員への影響
)上流にあるダムの崩壊の影響(地震に起因する堰止湖を含む)
(中略)
 これらの意見も含め、地震随伴事象として考慮すべき事項について、原子炉施設の「基本設計ないし基本的設計方針」の妥当性に係る「安全審査」において、設置許可申請対象となる固有の原子炉施設の耐震設計についての妥当性を審査すべき事項として適切かつ不可欠であるかどうかという視点、及び現行の他の関連する指針類で対応されているかどうかとの視点から議論を重ね、最終的には、改訂指針案のようになった。」
 なお、外部電源喪失については、「発電用原子炉施設に関する安全設計審査指針」の指針9「・・・外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できる設計であること」とされています。
 また、冷却水のうち、原子炉停止後、炉心から崩壊熱を除去するための施設については、耐震クラスⅠとし、基準地震動Ss による地震力に対してその安全機能が保持できる設計であることが求められています.また、非常用ディーゼルの燃料供給については、非常用所内電源系としての安全性が求められています。
 周辺の道路事情については、「発電用原子炉施設に関する安全設計審査指針」の指針6「環境条件に対する設計上の考慮」として、安全機能を有する構築物、系統および機器は、その安全機能が期待されているすべての環境条件に適合できる設計であることとされています。
 以上のことから、改めてご意見を採り入れる必要はないと考えます。


----------------------------------
241頁
【意見9】
「8.地震随伴事象に対する考慮」として、原子炉への「冷却水(補助的工業用水を含む)の供給の安定性」についても指針の中に盛り込むべきである。
【理由】
 冷却水の確保は安全上極めて重要である。スクラムで原子炉が停止した後も、余熱除去のための冷却水は長時間にわたって必要だからである。新指針案においては、「原子炉停止後、炉心から崩壊熱を除去するための施設」が耐震クラス?の強度を要求されているが、これと「冷却水(補助的工業用水を含む)の供給の安定性」を確保できることとは同じではない。
 浜岡原発では敷地内に津波が侵入することも想定し、主要な施設に防水扉などを設けてはいるものの、津波の侵入によって持ち込まれた土砂で沈砂池(取水槽)が埋まり、冷却用の取水が妨げられる可能性については考慮されていない。津波そのものの評価だけでなく、必要ならば津波による土砂の移動量についても評価して設計に反映することが必要ではないか。地震動による施設の破壊以外に、津波随伴事象による取水能力への影響を考慮するためにも、冷却水(補助的工業用水を含む)の供給が安定的に確保されることを条件とすべきである。



(対応方針案)
 地震随伴事象として考慮すべき事項について、改訂指針案にどのような事項を規定すべきかについての調査審議の経緯は、意見募集の参考資料として示した耐震指針検討分科会報告書18 ページに以下のとおり、記載されています。
「(5)地震随伴事象について
旧指針においては、地震随伴事象について特化した規定は存在していなかったが、今次改訂においては、原子力施設の周辺斜面の地震時における崩壊等への考慮、津波に対する考慮、地盤変動等についての考慮の取込みの要否等に関する幅広い調査審議が行われた。これに関連して、まず、周辺斜面の崩壊等及び津波への考慮についての議論がなされ、引き続き、以下のような具体的な案が追加的に出された。
(中略)
③ 地震時に発生する可能性のある次の諸事象が、発電所の重大な事故の誘因とならないことを確認する。また、その安全性を評価する場合には、その事象の発生の可能性を考慮すること。
)発電所に繋がる送電線および、関連する送電網の状態
)冷却水(補助的工業用水を含む)の供給の安定性
)周辺の都市火災、およびそれに起因する煙、ガスの影響
)近接する化学プラントなどからの、可燃性ガス、毒性ガスの発電所、および、その従業員への影響
)上流にあるダムの崩壊の影響(地震に起因する堰止湖を含む)
(中略)
 これらの意見も含め、地震随伴事象として考慮すべき事項について、原子炉施設の「基本設計ないし基本的設計方針」の妥当性に係る「安全審査」において、設置許可申請対象となる固有の原子炉施設の耐震設計についての妥当性を審査すべき事項として適切かつ不可欠であるかどうかという視点、及び現行の他の関連する指針類で対応されているかどうかとの視点から議論を重ね、最終的には、改訂指針案のようになった。」
以上のことから、改めてご意見を採り入れる必要はないと考えます。


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242頁
(意見)
8.『地震随伴事象に対する考慮』に、次の項も加えるべき。「地震時に随伴して次の諸事象の変動が、発電用原子炉施設の重大な事故の誘因および促進因子にならないこと。すなわち、冷却水供給の安定、周辺道路状況の保全、等の事象の変動。」
(理由)
 巨大地震が起きた場合、原子炉が無事に緊急停止した場合にも、長時間にわたる冷却水の供給確保は最重要事項である。ましてやもし配管が破損した場合には、高圧噴出による相当な水量のロスも覚悟しなければならない。また、津波の前段階として引潮が大きかった場合、数分間の給水も一時途絶える上、波が戻った場合にも、太い給水管には空気が入っているため、再始動に時間がかかることも想定しなければならない。加えて、予備の貯水プールそのものにも、大きな地震によって亀裂が入り、かなり貯水量が減ることも有り得ないことではない。よって、実は予備プールは何倍も余るほどの数を備えておくことが必要である。また汲み出しポンプと、予備のディーゼル電源も十全の数を用意し、特に燃料については一週間以上、外部からの応援支給が届けられない事態に至っても、敷地内の原子炉全基を冷却できる程の分量を確保しておかなければならない。
 というのは、他発電所から電力補給してもらうはずの送電線網も、無事である保証はないからである。広範囲被害にて、他発電所自体も然りである。また、道路が破壊される恐れも十分にある。巨大地震がそのようであるのは、既に数多の事例が物語っている。場合によっては一週間でも通行不能となり、大きな専用機空輸による離着陸の場所も備えておくべきである。道路が破壊された場合の、外部からの救援部隊や消火部隊の入所方法も確保しておかなければならないこと等、地震随伴事象は軽んじられるべき事項ではない。



(対応方針案)
 地震随伴事象として考慮すべき事項について、改訂指針案にどのような事項を規定すべきかについての調査審議の経緯は、意見募集の参考資料として示した耐震指針検討分科会報告書18 ページに以下のとおり、記載されています。
「(5)地震随伴事象について
 旧指針においては、地震随伴事象について特化した規定は存在していなかったが、今次改訂においては、原子力施設の周辺斜面の地震時における崩壊等への考慮、津波に対する考慮、地盤変動等についての考慮の取込みの要否等に関する幅広い調査審議が行われた。これに関連して、まず、周辺斜面の崩壊等及び津波への考慮についての議論がなされ、引き続き、以下のような具体的な案が追加的に出された。
(中略)
③ 地震時に発生する可能性のある次の諸事象が、発電所の重大な事故の誘因とならないことを確認する。また、その安全性を評価する場合には、その事象の発生の可能性を考慮すること。
)発電所に繋がる送電線および、関連する送電網の状態
)冷却水(補助的工業用水を含む)の供給の安定性
)周辺の都市火災、およびそれに起因する煙、ガスの影響
)近接する化学プラントなどからの、可燃性ガス、毒性ガスの発電所、および、その従業員への影響
)上流にあるダムの崩壊の影響(地震に起因する堰止湖を含む)
(中略)
 これらの意見も含め、地震随伴事象として考慮すべき事項について、原子炉施設の「基本設計ないし基本的設計方針」の妥当性に係る「安全審査」において、設置許可申請対象となる固有の原子炉施設の耐震設計についての妥当性を審査すべき事項として適切かつ不可欠であるかどうかという視点、及び現行の他の関連する指針類で対応されているかどうかとの視点から議論を重ね、最終的には、改訂指針案のようになった。」
 なお、外部電源喪失については、「発電用原子炉施設に関する安全設計審査指針」の指針9「・・・外部電源が利用できない場合においても、その系統の安全機能が達成できる設計であること」とされています。
 また、冷却水のうち、原子炉停止後、炉心から崩壊熱を除去するための施設については、耐震クラスⅠとし、基準地震動Ss による地震力に対してその安全機能が保持できる設計であることが求められています.また、非常用ディーゼルの燃料供給については、非常用所内電源系としての安全性が求められています。
 周辺の道路事情については、「発電用原子炉施設に関する安全設計審査指針」の指針6「環境条件に対する設計上の考慮」として、安全機能を有する構築物、系統および機器は、その安全機能が期待されているすべての環境条件に適合できる設計であることとされています。
 以上のことから、改めてご意見を採り入れる必要はないと考えます。


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245頁
 意見及び理由:意見2 地震による共通原因故障について意見の趣旨「耐震指針検討分科会報告書」18 ページ(5)地震随伴事象「⑤地震による損傷は、共通事象、同時多発的である。従って、単一事象としては、対策がとられていても、必要に応じ、同時多発の可能性のあることを認識して、その対策を考えなければならない」は必ず指針に導入するべき考え方である。 新指針は、このような点について議論がなされたにもかかわらず、地震によって複数の不具合が同時に発生する可能性について適切に考慮していない点で必ず見直されなければならない。意見の理由 地震は、原子炉施設全体を激しく揺すぶるものであり、その外力によっていくつもの箇所に不具合が同時に発生する可能性が否定できない。ところが、これについて新指針は、考慮しておらず、その点で新指針は不十分である。 現在の設計では、「「事故」に対処するために必要な系統、機器について、原子炉停止、炉心冷却及び放射能閉じ込めの各基本的安全機能別に、解析の結果を最も厳しくする機器の単一故障を仮定した解析を行なわなければならない。この場合、事象発生後短期間にわたっては動的機器について、また、長期間にわたっては動的機器又は静的機器について、単一故障を考えるものとする。」とされていて、これが、耐震設計においても適用されることとなっている。 しかし、同時に複数の機器に不具合の生じる共通原因故障の可能性が、地震においては考えられる。また動的機器のみならず静的機器についても、同時に不具合となるおそれが否定できないのである。 このような事態について考慮することが、耐震設計では絶対に必要であるが、この点については十分に議論もされず、また指針に盛り込まれていない。これでは地震現象に十分に対処した設計は不可能であって指針にこのような考えを盛り込むべきである。



(対応方針案)
 地震随伴事象として考慮すべき事項について、改訂指針案にどのような事項を規定すべきかについての調査審議の経緯は、意見募集の参考資料として示した耐震指針検討分科会報告書18 ページに以下のとおり、記載されています。
「(5)地震随伴事象について
 旧指針においては、地震随伴事象について特化した規定は存在していなかったが、今次改訂においては、原子力施設の周辺斜面の地震時における崩壊等への考慮、津波に対する考慮、地盤変動等についての考慮の取込みの要否等に関する幅広い調査審議が行われた。これに関連して、まず、周辺斜面の崩壊等及び津波への考慮についての議論がなされ、引き続き、以下のような具体的な案が追加的に出された。
(中略)
⑤ 地震による損傷は、共通事象、同時多発的である。従って、単一事象としては、対策がとられていても、必要に応じ、同時多発の可能性のあることを認識して、その対策を考えなければならない。
 これらの意見も含め、地震随伴事象として考慮すべき事項について、原子炉施設の「基本設計ないし基本的設計方針」の妥当性に係る「安全審査」において、設置許可申請対象となる固有の原子炉施設の耐震設計についての妥当性を審査すべき事項として適切かつ不可欠であるかどうかという視点、及び現行の他の関連する指針類で対応されているかどうかとの視点から議論を重ね、最終的には、改訂指針案のようになった。」
 なお、安全保護系の多重性については、「発電用原子炉施設に関する安全設計審査指針」の指針34 に「安全保護系は、その系統を構成する機器若しくはチャンネルに単一故障が起きた場合、又は使用状態からの単一の取り外しを行った場合においても、その安全保護機能を失わないように、多重性を備えた設計であること。」と記されています。
 以上のことから、改めてご意見を採り入れる必要はないと考えます。
(石橋委員意見)
 この意見及びこれと同類の意見について、分科会で審議するべきである。


---------------------------------
249頁
指針の中で、津波のエネルギーがどんなにすごいものか、最悪の場合を想定しているのかが疑問です。 いずれにしても、自然災害が私たちの想像もつかない事態を招くことは、近年のあらゆる事例を見ても明らかです。 狭い国土に一億二千万もの人が住む日本列島に、原子炉を作ること自体をやめなければ、住民の安全を守ることは出来ません。



 津波に対する考慮については、改訂指針案の「8.地震随伴事象に対する考慮」の項目において、施設の設計において十分に考慮する必要のある事項として、「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」と規定しております。
 また、地震随伴事象として考慮すべき事項について、改訂指針案にどのような事項を規定すべきかについての調査審議の経緯は、意見募集の参考資料として示した耐震指針検討分科会報告書18 ページの「(5)地震随伴事象について」に以下のとおり、記載されています。
「(5)地震随伴事象について
(中略)
 地震随伴事象として考慮すべき事項について、原子炉施設の「基本設計ないし基本的設計方針」の妥当性に係る「安全審査」において、設置許可申請対象となる固有の原子炉施設の耐震設計についての妥当性を審査すべき事項として適切かつ不可欠であるかどうかという視点、及び現行の他の関連する指針類で対応されているかどうかとの視点から議論を重ね、最終的には、改訂指針案のようになった。」
なお、津波に対する具体的な対策については、個々の原子力発電所の敷地周辺の状況等を踏まえ個別の安全審査において、その妥当性の確認が行われるものと考えております。
以上のことから、改めてご意見を採り入れる必要はないと考えます。


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250頁
津波の影響を考慮すべきである
 2004年のスマトラ島沖津波災害や、1983年の日本海中部地震、1993年の北海道東方沖地震など津波災害の恐ろしさを目の当たりにしてきたのだが、耐震設計審査指針にはこのことが触れられていない。
 津波は原子炉建屋を崩壊させなくても、大量の海水により電気系統、特に非常用電源装置を全部破壊するなど、極めて深刻な事態を引き起こす大きな要因になる。
 そのうえ、巨大地震が襲った直後に津波に襲われるなどとなれば、極めて危険な事態を招くことは明らかである。
 津波に対してとりわけ脆弱と見られるのが冷却用の海水を取水する設備であるが、浜岡原発以外では特段の対策を取っているということもない。
 浜岡であっても、海底取水用のプールを設置しているというだけで、津波が引き起こす海底土石流により埋まってしまうのではないかと懸念される。
 つまり、巨大地震と津波の来襲はセットであり、この両者の競合にも耐える対策が必ず必要なのであるが、そういった考慮は何もなされていない。
--------------------
 宮城県ではここ数年震度6クラスの地震が、何度も何度もおこっています。死者が出ていないため、一時的なもののように扱われていますが、現地の人にきくと、死者が出なかったのは遇然であると思われるほどの大きなゆれ、また大きな建物の被害です。
 女川原発の立地は、近い将来必ずくると言われる宮城県沖地震の被害を必ずうけるだろう場所です。S.53年の震度5の宮城県沖地震のときも、無防備な住民の多かったせいか、20人以上の死者が出ています。そして、最近の海外での巨大地震の例、また中越での何度も何度も揺りかえす、今までにないタイプの地震等、こんど来る宮城県の地震も、前例を超えた巨大規模のものでない、という保証はなにもありません。女川町はまた20世紀に2度も巨大津波におそわれ、山の上に漁船がうちあげられた高さ40mときいています。原発の強度は、40mの高さをともなった巨大な体積の海水の圧力に耐えうるのですか?
 残余のリスクについての意見ということですが、すべて原発は、震度7のゆれ、そのゆれの連続した到来、それにともなう津波に耐えうるべきです。そんな揺れは来ない、とはもう言えないでしょう。事故がおきたら三陸海岸の環境は全滅状態です。
 「巨大津波に必ず耐える原発」でなければ、廃止すべきです。
--------------------
(意見) 「津波対策をもっと具体的に記述すること」(理由) 新指針では、「(2)施設の供用期間中に極めてまれであるが、発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと。」とだけしかない。もっと具体的に津波対策の基準を設けるべきである。例えば、当該原子力発電所で発生が予想される津波の高さによる施設への破壊力の検討。施設の津波に対する安全性の具体的なデータによる確認をすること。予想される津波による引き潮の深さが、取水口の深さを上まわっていないことを確認すること。さらに原子炉の冷却機能が、維持できることの具体的な確認をすること。



※前ページの対応方針案と同じ


---------------------------------
251頁
(意見)
8.『地震随伴事象に対する考慮』の(2)について、「想定することが適切な津波」との表現を、「過去の記録以上、また想定され得る最大の津波」という表現に変えるべき。また、本項の末尾に、「具体的には、津波に質量エネルギーに耐え得る防護策を講ずること。」の一文を加えるべき。
(理由)
「想定することが適切な津波」との表現では、その規模をどうしても甘く設定しがちになるのが人の常である。よって、上述提案の表現に変えるべきである。また、本項が本当に「施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」となるために、津波の脅威を正当に評価しておくことが必要である。津波被害はスマトラ沖地震を見ても分かる通り深刻極まりない。津波は単なる高波ではない。巨大な質量を持つ塊であり、しかも流動体である。数kmにもわたり一旦引潮になった後、勢いをもって押し寄せてくる。それは後方数kmないしはそれ以上にわたる海水全ての突進であり、また流動体にして、簡単に、その高さより高い防波堤や砂丘があれば遮れるというものではない。
 津波の巨大質量の流動は、陸への入射角度や海底の地形によっても違いは出るものの、少々の高低差は乗り越え、しかも上陸後、車や樹木、家屋さえ飲み込んだまま再び海へと引き返していく、復路も衝撃度が増える大災害である。これが襲う時、原子炉建屋が破壊されないことは勿論のこと、外部との様々な接続系統も全て無事に守られるかどうか、重点的な防護策が予め講じられていなければならない。
 最大想定地震により押し寄せる、津波に総質量とスピードをエネルギー計算し、往復路共にそれを解消できるだけの状況を、施設は確保しておかなければならない。



「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」の「指針2.自然現象に対する設計上の考慮」において、重要度の特に高い安全機能を有する構築物、系統及び機器は、津波を含め、予想される自然現象のうち最も過酷と考えられる条件を考慮した設計であることが規定されております。
 また、「8.地震随伴事象に対する考慮」においては、想定することが適切な津波を考慮するように求めており、想定することが適切な津波には、過去の津波も含まれます。
 さらに、「8.地震随伴事象に対する考慮」においては、「施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」と規定しており、これは当然ながら、津波の直接的な被害によっても、重大な影響を受けるおそれのないことを求めているものです。
 以上のことから、改めてご意見を採り入れる必要はないと考えます。


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■16条「必要な援助」国の措置 その12 原子力損害賠償支援機構法成立前のいわゆる「根回し文書」と噂されるもの

■16条「必要な援助」国の措置 その12 原子力損害賠償支援機構法成立前のいわゆる「根回し文書」と噂されるもの


・東京プレスクラブ
http://tokyopressclub.com/

https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0B1xBQ3bNCL-XNmE3NmJmYzEtNTljZi00ZGQ5LWEyYzYtNTUxNzQ1MGE1M2Qz&hl=ja

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法案修正のポイント

1 原子力損害賠償支援機構法案(「機構法案」)の修正
○国の責任について言及する。【第1条の2を新設】
・閣議決定(6月14日)の「これまで政府と原子力事業者が共同して原子力政策を推進してきた社会的責務を認識しつつ」の趣旨を法案に規定する。

○事後的な政府の支援(第65条)だけでなく、原子力事業者の負担に対して政府が資金支援を行う旨の規定を設ける。【第49条の2を新設】
・特別資金援助に対する政府の援助として、国債の交付だけでなく、エネルギー対策特別会計原子力損害賠償支援勘定から、資金の交付ができることとする。
(注)エネルギー政策特別会計を用いるのは経理区分を明らかにするため。

○原子力損害賠償支援機構(「機構」)が損害賠償を行うこととする。【第51条の2を新設】
・機構が損害賠償の支払代行(第三者弁済)を行うことができることとする。
(注)支払代行であって損害賠償債務を負うものではない。
・東京電力から機構に対して支払代行の委託をさせ、社員を出向させるなどによって、機構を事実上の支払窓口とし、東京電力に事故処理等に専心させる。
・機構には、東京電力の支払部局を移す形で大規模な支払部局を設ける。
・なお、機構は円滑な損害賠償の支払のため地方公共団体等に事情提供を求めることができる旨を規定する。

2 平成23年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律案(「仮払法案」)の修正
○国の仮払金の支払事務を、機構に委託できることとする。【第8条の修正】
・機構に対して支払事務を委託し、支払代行とともに行わせる。
 (注)機構が支払代行を行うとしても、事故が収束するまで最終的な損害賠償額が確定せず支払代行ができないため、仮払金の支払が必要である。
・機構が仮払金の支払と支払代行を合わせて行えば、次のメリットがある。
 ・仮払金の支払後の国と東京電力の間の精算が容易になる。
 ・損害賠償の支払に際して仮払金の支払の際に得た情報(家族構成等)を用いることが可能となり、損害賠償の支払の迅速化につながる。

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機構法案において、修正が許されないポイント

1 原子力損害賠償支援機構(「機構」)に、東京電力に対する支援について勘定区分を設けること
○東京電力に対する支援について勘定区分を設ける場合、会計上、東京電力への支援と認められず、債務超過と認定される(破綻する)。
・機構法案では、見積もられる損害賠償の総額を負債(未払費用)として計上する一方、同額以上の資産(機構に対する資金交付請求権)を計上することで、会計上、債務超過とならない仕組みとなっている。
・他電力の一般負担金を、機構が発足する以前の事故である今回の東京電力の支援に充てるのは適当でないとして、東京電力の支援に限って別勘定を設け、今後の支援と区別する(他電力の一般負担金を東京電力への支援及び国庫納付に充てない)との案をとる場合には、この仕組みが認められない。
・勘定区分を設ける場合、東京電力は機構から損害賠償に充てる資金の交付を受けてもその全額について自らが負担金をもって機構に支払う仕組みとなることから、機構から資金の交付は単なる借入れと評価されるため、資金として計上できなくなる。
(注)あるいは東京電力の損害賠償債務を事実上機構に付け替えた(「飛ばした」)と評価される。
・この結果、会計上、損害賠償額を負債として計上する一方、資産がなくなるため債務超過とされる。
・なお、これとは別に、原子力事業者(東京電力)に対する資金援助について、損害賠償に係る資金交付と、設備投資等に係る融資等について勘定区分を設けることは可能である。

2 原子力事業者(東京電力)の損害賠償総額や負担金額にあらかじめ上限を設けること
○損害賠償総額等にあらかじめ上限を設ける場合には、上限以上の損害賠償の支払について国の負担となることが確定する。
・事故が収束する見通しが立っておらず、また、事故が収束してもその後も損害賠償が発生する可能性があるため、損害賠償総額がどの程度の金額となるかは不明である。
・東京電力において、事故収束のための費用、廃炉費用、電力安定供給のための追加費用等がどの程度必要となるかは現時点で明らかではない。また、今後どの程度の利益の確保(電気料金の引上げ)ができるかも明らかではない。
・このような中で、仮に上限額を設けるとしても適切な損害賠償総額等の上限をあらかじめ定めることは困難であり、その金額が低い場合には国民負担が発生する。
・東京電力が徹底した合理化等により、負担できる限りの支払を行うべきものである。
・なお、時間をかければ上限を設けることはできる、原子力事業者の支払う負担金が巨額になる等の場合に政府が補助(資金交付)をおこなうこと(法案65条)とあらかじめ上限を設けることは同じ、との意見もあり得るが、東京電力への支援が急がれる中で、あらかじめ適切な上限額を設けることは困難であり、今後の事故の収束状況等によって、特別負担金の設定において、東京電力に適切な負担を定める、機構法案が適当である。

3 機構に、原子力事業者(東京電力)の損害賠償債務を承継させること
○仕組みによっては、損害賠償総額等に上限を設けることと同じとなる。この場合、上記2の問題がある。
○原子力事業者(東京電力)が損害賠償債務を負担しない場合、特別事業計画で定めた合理化等を実施させる実効性がなくなる。
・原子力事業者(東京電力)が損害賠償債務を負担しないこととなれば、原子力事業者は債務超過を免れ、資金繰り等について民間金融機関に依存することが可能となるため、機構から資金援助を受ける必要がなくなる。
・特別事業計画において合理化案を策定することを条件に、機構が損害賠償債務を承継する仕組みとしても、原子力事業者には合理化案を実施する必要がないため、実効性がない。
・機構案は、原子力事業者の損害賠償の実施状況を勘案しながら資金援助を行う仕組みであるため、合理化案等を実施させる実効性がある。
・なお、機構が損害賠償の支払事務を行うこととすることは問題はない。

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2011-08-10 : ・原子力損害賠償支援機構 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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