東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その13 「過失」「瑕疵」「不可抗力」「強い不可抗力」の関係

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その13 「過失」「瑕疵」「不可抗力」「強い不可抗力」の関係


 現在の下級審判例では,「原子力損害」については,民法の不法行為規定(民法709条以下,民法717条の土地工作物責任も含む)は適用排除されるが,「過失」「瑕疵」「不可抗力」「強い不可抗力(超不可抗力)」との関係が,理論的には,どうなっているのか検討してみる。

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●民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2  前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3  前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

●原賠法
(無過失責任)
第三条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
2  前項の場合において、その損害が原子力事業者間の核燃料物質等の運搬により生じたものであるときは、当該原子力事業者間に特約がない限り、当該核燃料物質等の発送人である原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
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〔まず,民法709条の「過失」と土地工作物責任(民法717条)「瑕疵」との関係〕

ア説 客観説(判例・通説)
 「瑕疵」とは,工作物が、その種類に応じて、通常有すべき安全性を欠いている状態をいう(占有者の責任は中間責任,所有者の責任は無過失責任。「瑕疵」≠「過失」)。

イ説 義務違反説
 「瑕疵」とは,占有者・所有者の設置・保存の安全確保義務違反(なお,義務違反説でも,「瑕疵」=「過失」のように考える立場と,「瑕疵」≒「過失」とする立場がある。)


 判例・通説の客観説を前提にすると,自然災害のような外在的危険との関係では、「瑕疵」は,その工作物の種類に応じ,通常予想される危険に対して,通常有すべき安全性が欠如していたか否かで判断されることになる。



〔「瑕疵」と「不可抗力」の関係〕土地工作物責任について

 通常予想される危険と,通常有すべき安全性との関係は,論理的には以下のようになろう。

1 通常予想される危険(通常予想される自然災害等)発生
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →理論的には事故は起きない。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた(運良く起きないこともある)。
  ※土地工作物責任負う。

2 通常の予想を超えた危険(通常の予想を超える自然災害)発生
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →事故が起きた(運良く起きないこともある)。
  ※「瑕疵」がない以上,要件充たさず、土地工作物責任負わない。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた(運良く起きないこともある)。
  ※「瑕疵」がある以上,原則として土地工作物責任負うが,「瑕疵」があってもなくても同一結果が生じた,あるいは,その事故が「瑕疵」とは無関係に生じた場合は,因果関係なしとして,又は,「不可抗力」によるものとして免責?


 上の1のように考えると,通常予想される自然災害で、損害が発生した場合は、理屈の上では、通常有すべき安全性の有無を問うまでもなく、当然に「瑕疵」ありとなる?。なぜなら、通常有すべき安全性を備えている以上、通常予想される災害がきたとしても、損害が発生するはずがないからである。〔ただし「通常有すべき安全性」を備えている場合が、かならずしも「通常予想される危険に耐えられる状態」とは言えないと考えるなら、また別の可能性あり。〕

 結局、「通常有すべき安全性」の有無が問題となるのは、理屈の上では、上の2の「通常の予想を超える災害」が発生したような場合のみということになるのか?。

 また、土地工作物責任で「不可抗力」免責が問題となるのは,上の2bのような,施設に「瑕疵」があり,かつ,通常の予想を超える災害が発生した場合のみということになろうか。「瑕疵」が無い場合は、「不可抗力」を問題とするまでもなく、土地工作物責任は生じないからである。

※客観説に立って、「瑕疵」は,その工作物の種類に応じ,通常予想される危険に対して,通常備えているべき安全性が欠如していたか否かで判断するとしても、「通常予想される危険」を予見可能性、「通常有すべき安全性」を結果回避可能性ととらえると、ほとんど義務違反説と同様の思考過程に至る。この結果回避可能性の中に、物理的技術的な回避可能性のみならず、経済的制約を読み込むべきかという点で、差が出るのか?。

 
 単純に、思考経済を考えると、

1 まず、事故結果の有無。

2 発生した自然災害が通常予想されるものであるか否かを判断し、そうであるなら、当然に「瑕疵」ありとして、土地工作物責任負う。

3 通常予想される自然災害を越えるものであったら、「通常予想される危険に対して,通常有すべき安全性」を備えていたかを判断し、備えていたなら「瑕疵」がないので、土地工作物責任負わない。

4 備えていない場合は、「瑕疵」ありとなり、原則として土地工作物責任負うが,「瑕疵」があってもなくても同一結果が生じた,あるいは,その事故が「瑕疵」とは無関係に生じた場合は,因果関係なしとして,又は,「不可抗力」によるものとして免責?


※結局、「不可抗力」性の判断は、通常予想される危険を越えるもので〔予見可能性〕、かつ、「瑕疵」の有無にかかわらず、同一結果がもたらされるような場合〔結果回避可能性〕といえるか否かで判断することになる?。



〔「不可抗力」と「強い不可抗力」との関係〕

 原賠法3条1項での原子力事業者の責任については,施設の「瑕疵」すら要件とされない上に,立法過程での議論や,条文の「異常に巨大な」という表現から,1項但書の免責事由は,通常の不可抗力ではなく,特に強い不可抗力,いわば超不可抗力のみを意味するものと理解される。

 そこで,前記と同様に考えてみると


1 通常予想される危険(通常予想される自然災害等)発生
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →理論的には事故は起きない。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた。
  ※土地工作物責任の要件すら満たすのだから,原賠法の責任は当然負う。

2 通常の予想を超えた危険(自然災害)発生(ただし,強い不可抗力「異常に巨大」とはいえない場合)
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →事故が起きた。
  ※原賠法上「瑕疵」は要件ではなく,強い不可抗力ではないから免責はなく,責任負う。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた。
  ※2aと同様,強い不可抗力ではない以上,免責はなく,原賠法の責任負う。

3 通常の予想をはるかに超えた,異常に巨大な自然災害発生(「強い不可抗力」)
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →事故が起きた。
  ※「強い不可抗力」の場合で,原賠法3条1項但書によって免責。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた。
  ※「瑕疵」が作用して,その結果をもたらした場合は,避けえた損害であり,強い不可抗力によって生じたものとは言えず免責なし?。「瑕疵」があってもなくても同一結果が生じた場合は,「強い不可抗力」によるものとして免責。こちらで論じた「過失」の競合と同様の問題。


※「不可抗力」と「強い不可抗力」は程度の問題だから、前記のとおり、「不可抗力」性の判断は、通常予想される危険を越えるもので〔予見可能性〕、かつ、「瑕疵」の有無にかかわらず、同一結果がもたらされるような場合〔結果回避可能性〕といえるか否かで判断することになると考えるなら、結局、「強い不可抗力」は、予見可能性と結果回避可能性を判断する際に可能性を緩く認める〔相当低い場合でも各可能性あり〕という方法で認定していくことになろうか。前にこちらで触れた。


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2011-07-31 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・設置関係資料 その17 IAEA 既設の原子炉等施設に関する耐震安全性の評価

・設置関係資料 その17 IAEA 既設の原子炉等施設に関する耐震安全性の評価(原子力安全基盤機構訳) 

http://www.jnes.go.jp/content/000016962.pdf

Evaluation of Seismic Safety for Existing Nuclear Installations, Safety Standard Series No. NS-G-2.13、IAEA (2009)
既設の原子炉等施設に関する耐震安全性の評価

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目 次
1. はじめに
背景(1.1–1.6)
目的(1.7–1.8)
範囲(1.9–1.11)
構成(1.12)
2. 耐震安全性評価のための実施計画の策定
全般的な考察(2.1–2.8)
耐震安全性の評価(2.9–2.22)
実施計画の構成(2.23–2.26)
3. データの収集と調査
既設の原子炉等施設に関するデータの収集(3.1)
当初の設計の根拠に関するデータ及び図書資料(3.2–3.6)
現状の(評価時の実際の)データ及び情報(3.7–3.13)
推奨される調査(3.14–3.23)
4. 地震ハザードの評価(4.1–4.8)
5. 耐震安全性の評価のための手法(5.1)
耐震裕度の評価(SMA)(5.2–5.19)
地震に起因した確率論的安全評価(SPSA)(5.20–5.31)
SMA及びSPSA手法の共通要素(5.32–5.52)
6. 発電所以外の原子炉等施設(6.1–6.15)
7.耐震性向上に関する考察
耐震性が向上されるべき機器等(7.1–7.3)
改善の設計(7.4–7.11)
8. 耐震安全性評価のためのマネジメントシステム..
マネジメントシステムの適用(8.1–8.4)
文書及び記録(8.5–8.7)
構成管理(8.8)
<略>
-------------------------------

1. はじめに
背景
1.1. 本安全指針は、IAEAの安全基準の整備計画の下に作成された。これは、「原子力発電所の安全:運転」[1] に定める原子炉等施設に関する安全要件を満たす際の推奨事項を補足し、かつ提示するものである。本指針は、また、参考文献 [2 - 4] に掲げるような多くのIAEAの安全基準に関係するものである。
1.2. 本安全指針「既設の原子炉等施設に関する耐震安全性の評価」は、新規の原子力発電所の設計及び建設に関するIAEAの「原子力発電所の耐震の設計及び確認に関する安全指針」[5] を補完するものである。本指針は、参考文献 [1] における要件を満たす際の推奨事項を提示し、その適用範囲を既設の原子炉等施設、すなわち、研究用原子炉、核燃料サイクル及び再処理施設、並びに独立した使用済燃料貯蔵施設に拡大するものである。「既設の原子力発電所の耐震評価に関する安全報告書シリーズNo. 28」[6] には、本安全指針に関連する詳細な情報が提示されている(参考文献 [6] の改訂が計画されている)。
1.3. 安全要件出版物である「原子力発電所の安全:運転」[1]では、発電所の供用期間を通して運転組織が体系的な安全再評価を実施することが要求されると述べている。この要件及びその他の要件、ならびに定期安全レビューにおける外的危険事象の解析に関する推奨事項 [7]に照らして、本安全指針は、既設の施設の耐震安全性評価を扱う。
1.4. 既設の原子炉等施設(主として原子力発電所)の耐震安全性評価のための手引きが、多くの加盟国において策定されており、使われてきた2。1990年代の初めより、これらの手法が個々の状況に適合化されて、多くの原子炉等施設の耐震安全性評価に適用されてきた。IAEAは、多くの加盟国が稼働中の原子炉等施設のためにこれらの手法を適合化しかつ適用する際に、支援してきており、これらの施設では、耐震安全性評価及び耐震性向上の計画が必要とされ、また実施された。
1 原子炉等施設の立地評価における地震ハザードに関する安全指針案は、参考文献 [4] に置き換わるものとして、現在作成中である。
2 既設の原子炉等施設の耐震安全性評価に関する手引きの策定及び使用は、アメリカ合衆国で始まり、同国ではそのような手引きが策定され、全ての既設の原子力発電所への適用が求められた。
1.5. 耐震の設計及び確認は、構築物、系統及び機器(SSC)の耐震の設計及び確認がほとんどの場合施設の建設前の設計段階で行われるという点で、耐震安全性評価とは別のものである。耐震安全性評価は施設の建設終了後にのみ適用されるものである。勿論、例外はあり、例えば施設の建設後の新たな又は交換用の機器の耐震の設計及び確認のようなものがある。逆に、建設前の新しい設計に対する、設計用基準地震動を超える条件を評価するための耐震安全性評価において、耐震安全性評価に適用される判断基準を利用する場合もある。
1.6. したがって、既設の施設に関する耐震安全性評価は、評価が行われる時点でのその施設の実際の状態に強く依存している。この鍵となる状態は「評価時の実際の」状態と表記され、地震が発生した場合には、施設はその実際の状態で地震の影響を受け、施設の応答及び地震耐力は、施設の実際の物理的構成や運転状況に依存することを示している。施設の評価時の実際の状態が全ての耐震安全性評価実施計画の基準線である。評価時の実際の状態には、施設の「竣工された時」、「運転された時」、「保守された時」の状態、及び評価時点での経年変化した状態を含む。
目的
1.7. 本安全指針では、既設の原子炉等施設の耐震安全性評価に関わる推奨事項を提示する。そのような耐震安全性評価は、当初の設計の根拠で設定されたものよりも大きい地震ハザードが認識されたことにより、新たな規制要件により、SSCの耐震脆弱性に関する新たな知見が得られたことにより、あるいは設計用基準地震動を超える条件下での性能を、国際的に認められた良好事例と同列に、それと整合をとって実証する必要により、急遽実施される場合がある。また、本安全指針は、原子炉等施設の目的又は施設に付随する放射線リスクが変わった場合、あるいは変更が提案された場合、及び施設の長期間の運転が考慮されている場合に用いられることもある。
1.8. 本安全指針は、規制要件を制定する任にあたる規制当局、及び耐震安全性評価と耐震性向上計画について直接に実施責任を持つ事業者による活用が意図されている。
範囲
1.9. 本安全指針は、参考文献 [8] で定義されている広範な既設の原子炉等施設、すなわち、陸上に定置された原子力発電所、研究用原子炉、核燃料加工工場、濃縮工場、再処理施設、及び独立した使用済燃料貯蔵施設を扱う。手法の多くは原子炉等施設の種類や原子炉の型式には依存していないが、プラントの性能判断基準、システムのモデル化等は、施設の種類ごとに固有である。原子力発電所用に開発された手法は、等級別扱いを通してその他の原子炉等施設にも適用可能である。
1.10. 本安全指針の目的のために、既設の原子炉等施設とは、(a) 運転段階にある施設(長期運転中の施設、及び一時的停止期間の長期化にある施設を含む)、あるいは (b) 運転前段階にある施設で、構築物の建設、機器及び系統の製造、据付及び/又は組立、並びに試運転活動が、大幅に進んだ又は完了した施設のいずれかである。運転段階及び運転前段階にある既設の原子炉等施設では、サイトでの新たな地震ハザードなど当初の設計の根拠の変更、あるいは、施設の地震ハザード及び/又は耐震設計の考慮に関する規制要件における変更は、設計への重大な影響、またその結果として重要な設備の変更につながることがある。
1.11. 本安全指針では、二つの手法、すなわち一般に耐震裕度評価(SMA)で代表される決定論的方法と地震に起因した確率論的安全評価(SPSA)が詳細に論じられている。これらの方法の変形又は代替方法が、第2章で論じられるように、容認可能であることを示してもよい。
構成
1.12. 第2章は原子炉等施設の耐震安全性評価に関する全般的な考察と全般的な推奨事項を提示する。第3章はデータの必要性(収集及び調査)を記す。第4章はサイトの地震ハザード評価に関する推奨事項を提示する。第5章は既設の原子力発電所に関する耐震安全性評価を行うための決定論的なSMAとSPSA手法の実施について詳述する。第6章は原子力発電所以外の原子炉等施設の評価に対する等級別扱いの適用について、(適宜第5章を参照しながら)推奨事項を提示する。第7章は耐震性向上に関する考察を示す。第8章は全ての活動を実施するために整備すべきマネジメントシステムに関する情報を提示するとともに、地震耐力を評価どおりに維持するための将来的活動における構成管理上の必要事項を特定する。第1~4章、第7章及び第8章は、全体的又は部分的に、全ての原子炉等施設に適用される。第5章は原子力発電所に特有の内容である。添付資料は、関連する参考文献を含めて、現在までの手法の開発と適用に関する広範な背景資料の概要を示す。技術用語の定義と説明については、IAEA安全用語集 [8] を参照願いたい。本安全指針に特有な用語の説明は脚注に提示される。


2. 耐震安全性評価に関する実施計画の策定
全般的な考察
2.1. よく設計された工業施設、特に原子力発電所が、当初の設計で考慮された地震よりも大きな地震に耐える内在的な能力を持っていることは、通常、認知されている。保守性は、耐震解析と一連の設計を通して織り込まれている。この内在的な能力又は頑強性は、通常、「耐震設計裕度」という言葉で表現され、(a) 地震工学において以前又は現在の慣行に従って用いられた耐震の設計及び確認の手順に存在する保守性、及び (b) 原子力発電所の設計においては地震荷重がいくつかのSSCに対しては主要な荷重とはならないことがあるという事実、の直接的な帰結である。
2.2. 原子力発電所に適用されている耐震の設計及び確認に関する現行の判断基準は、典型的には、大きな耐震設計裕度を取り入れてはいるが、裕度の程度が示されていないことが多く、その大きさが定量化されていることは殆どない。産業界の基準と手引き―特に原子炉等施設に適用される基準と手引きにおける設計基準の使用を通して、損傷に対して十分なかつ適切な耐震設計裕度が存在しかつ確保されていることが知られている。このことは、いくつかの加盟国で既設の原子力発電所に対するSMAもしくはSPSAの手法の実施を通して実証されている。当初の解析及び設計にかかわる種々の段階を通しての耐震設計裕度の導入は、原子炉等施設の全体を通して大きな期待される差異につながる。耐震設計裕度は、プラント内の場所ごとに、構築物、系統あるいは機器ごとに、また同一構築物内の場所ごとに、一般的に、大きく異なる。このように変動する主な理由の1つは、2.1項に記したように、原子炉等施設が事故条件や航空機衝突、竜巻、配管破断による圧力及びその他の環境からの荷重の例のような、広範囲の内的及び外的な極端な荷重に対して設計され、地震荷重が幾つかのSSCに対して支配的な荷重とならないことがあるという事実である。もう一つの理由は、設備確認の方法であり、これには包絡的な応答スペクトルが一般的に用いられている。保守性の因って来たるところを理解するためには、実際の設計慣行を詳細に調査すべきである。設計過程には余剰な保守性があるものだと無意識に当然のことと思うべきではない。そのように思えば、耐震安全性評価が独りよがりなものに陥ってしまうからである。
2.3. 本安全指針に示す手法は、評価時の実際の状態に従って既設の施設の地震耐力を評価し定量化することが意図されている。
2.4. 原子炉等施設の耐震安全性評価において、その目的は、必要とされる安全機能と地震耐力に関してSSCの本当の状態を把握し、その結果として、施設の耐震安全裕度を評価することである。したがって重要なことは、評価時の実際のSSCに関する現実的で最良の推定値を用い、結果に不必要な偏りをもたらすような安全係数を導入しないことである。例えば、SMAで用いられている手法では、(設計地震動よりも大きな)より高レベルの地震ハザードを考慮し、それと施設の現実的な地震耐力を関係付けている。そうすることで、SSCの内在的な余剰耐力が考慮され得る。
2.5. 加盟国の規制上の慣行に従って、SMA又はSPSAのいずれの手法においても、耐震分類I [5] には属さない機器等で、事故の防止又は事故条件の緩和のために用いられ当初の設計の根拠では耐震性の確認がなされていなかったものは、耐震安全性評価実施計画に含められる場合がある。例えば、シビアアクシデントマネジメントに用いられる既設の設備である。
2.6. 既設の原子力発電所に関して、発電所の評価時の実際の状態に基づいて実施された耐震安全性評価の実施計画は、広範囲に及ぶ複雑な解析を用いるよりは、実際的な評価に重点を置いていた。比較的簡単な構造モデルによる限定的な非線形解析、あるいはより高い減衰値と延性率の使用は、それが注意深く使われ、かつ許容変形と矛盾しないかぎり、弾性領域を超えた挙動を理解する際に特に有用となることがある。しかしながら、詳細で高度な非線形解析は、通常の慣行において一般的には行われていない。
2.7. 最大加速度は地震入力の大きさを表すために広く使われているパラメータであるが、延性挙動を示すSSCに地震動が損傷を引き起こす能力と最大加速度レベルとの間には明確な相関関係がないことは周知の技術的知見である。地震動がSSCに与える影響の思慮のある評価の際には、速度、変位、強震動継続時間、スペクトル加速度、パワースペクトル密度及び累積絶対速度のような他のパラメータが重要な役割を果たすべきことが知られている。もう一つの例がマグニチュードの小さな(即ち、M≤5.5の)直下型地震によって引き起こされる影響である。そのような地震の大部分が高周波数成分を含んでおり、高い最大加速度を生ずるが、それが構造物や機械装置に重大な損傷を与えることはない。しかしながら、そのような直下型地震によって生ずる高周波数成分が構造物に伝わると、装置の種類によっては運転上の問題を引き起こすことがあり得る。また、ガラスのように脆い物質に影響を及ぼすこともある。関連する安全上の懸念には、電気器具又は装置及び/又は計測制御系統の誤作動を含む。
2.8. 構築物、機器及び分配系(例えば、配管、ケーブルトレイ、換気ダクト)の挙動に関して、多くの現場での観測や研究開発計画が示してきたことは、弾性挙動と等価な静的方法に基づいて、通常、算出される力のような計算で求められる大きな力だけが釣り合う場合よりもむしろ、SSCの延性挙動が大きな歪みを吸収する場合に地震耐力の高い設計が得られることである。
耐震安全性の評価
耐震安全性評価を行う理由と目的
2.9. 安全要件出版物である「原子力発電所の安全:運転」に定められているように、「運転組織は、発電所の供用期間を通して、運転経験とすべての関連する分野からの新たな重要な安全情報を考慮し、規制要件に従って発電所の体系的な安全再評価を行わなければならない」(参考文献 [1] 10.1項)。 6
2.10. 上記の要件に従って、かつ国際的な慣行に沿って、下記のいずれかが起きたときに、既設の原子炉等施設について耐震安全性の評価が実施されるべきである。
(a) 設計用基準地震よりも大きな地震ハザードがサイトで発生する証拠。新しい又は追加的なデータ(例えば、新たに発見された地震構造、新たに設置された地震観測網、又は新たな歴史地震の証拠)、新しい地震ハザード評価方法、及び/又は施設に影響を及ぼす実際の地震の発生から得られる。
(b) 規制要件。「最新の知見」と施設の実際の状態を考慮に入れた定期安全レビューの要求。
(c) 不適切な耐震設計。概して設備が古いためによる。
(d) 新しい技術的知見。特定の構造物及び/又は非構造要素(例えば、石積壁)、及び/又は系統又は機器(例えば、継電器)についての脆弱性。
(e) 実際に発生した地震から得られる新しい経験。(例えば、地震動のより良好なデータの記録及びSSCについて観測された挙動)。
(f) 「クリフエッジ効果」が生じないことを確証するため、設計用基準地震動を超える地震動に対する施設の挙動を扱う必要性。即ち、設計用基準地震よりもわずかに大きな地震が起きたとしても施設には重大な損害が発生しないことを示すこと。(参考文献 [2] 4.6項及び5.73項)。
(g) そのような評価が一部となる長期運転の実施計画。
2.11. 上述の理由又はその他の理由により、既設の原子炉等施設の耐震安全性評価が要求される場合には、評価の目的が、評価工程が始められる前に明確に定められるべきである。これは、評価の目的次第で、利用可能な評価手順及び容認基準が大きく異なってくるためである。これに関して、耐震安全性評価の目的は以下に掲げるものの1つ又はそれ以上を含むことがある。
(a) 当初の設計用基準地震動を超える地震動に対する耐震設計裕度を示し、クリフエッジ効果が無いことを確認すること。
(b) 地震事象に関して、施設とその運転における繋がりが弱いことを明らかにすること。(c) 施設間の相対的な地震耐力及び/又はリスク順位を判断するために、施設の集まり(例えば、1地域あるいは1国内の全ての施設)を評価すること。このためには、同種の比較できる手法が採用されるべきである。
(d) リスク情報を活用した意思決定のための入力情報を提供すること。
(e) 考えられる耐震性向上案を特定し、優先度付けすること。
(f) 規制上の要件(もしあるならば)に対して、リスク指標(例えば、炉心損傷頻度、早期大規模放出頻度)を評価すること。
(g) 規制上の期待事項に対して、プラントの耐力指標(例えば、系統レベル及びプラントレベルでの耐力又は低い故障確率への高い確信度(HCLPF)の値)を評価すること。
2.12. 既設の施設に関する耐震安全性評価の目的は、規制要件に沿って、かつ規制当局と協議し、合意の上で定められるべきである。その結果、そのような目的に従って、入力地震動のレベル、地震耐力の評価手法、及び適用される容認基準は、最終的に要求される結果とともに規定されるべきである。特に、当初の設計の根拠で設定された事象よりも厳しい地震事象に対する耐震安全性の評価を行うに対しては、安全目的には、地震発生時もしくは発生後に確保されることが要求される機能と防止されるべき損傷モードを含むべきである。
2.13. 評価の最後に作成されるべき最終文書は、規制当局と合意の上で最初から明確にしておくべきであり、定められた実施計画の目的に合ったものとすべきである。これらの評価の最終的な成果物は、以下の事項の一つ又はそれ以上であり得る。
(a) 決定論的又は確率論的に表された原子炉等施設の地震耐力の程度。
(b) 耐震性向上計画に関する意思決定のための、地震耐力の低いSSCの特定及びそのプラント安全に対する影響。
(c) 地震耐力を向上するための運転上の改善事項の特定。
(d) 整理整頓の慣行(例えば、保守装置の保管)に関する改善事項の特定。
(e) 火災の防止設備と防護設備との相互作用の特定、等。
(f) 施設に影響を及ぼす地震の発生前、発生時、及び発生後に取るべき行動の特定。これには、運転面及び管理面での対応のための取り決めと措置、得られる計器観測による地震測定記録と実施される検査の分析、結果として実施される健全性評価を含む。
(g) リスク情報を活用した意思決定への入力情報を提供する枠組み。
耐震安全性評価手法の選択
2.14. 耐震安全性評価実施計画の最初の段階の1つは、用いられる手法の選択であるべきである。評価の目的によって、用いられる手法、その手法のためのパラメータ値、共通のデータとサイト固有及びプラント固有のデータ、並びにその他の重要な要素が決まる。本安全指針の範囲の節に示されたように、2つの手法が推奨され、詳細に検討される。これらは、決定論的なSMAと確率論的なSPSAである。SMA 又はSPSAのいずれかの手法が計画の目的を満たし得るので、両方の手法が実施されるように意図されてはいない。これらの方法の変形又は代替方法についても容認可能であることを示してもよい。
2.15. 設計用基準地震動(即ちSL-2、参考文献 [4] 参照)の変更を伴わない耐震安全性評価と、規制当局によって設計用基準地震動の変更が求められる耐震安全性評価は、明確に区別されるべきである。本安全指針で重点的に扱う手法は、設計用基準地震動の変更は無いが、当初の設計の根拠のために定めたものよりも厳しい地震ハザードに対する既設の施設の耐震安全性の評価、及び有効な安全裕度の現実的な決定に関わるものである。この評価と決定の過程に対する地震入力と評価の容認基準を決めるに当たって規制当局の合意を得るべきことは明らかである。新しい施設の耐震の設計及び確認に適用される現行の地震工学的方法と容認基準が、既設の施設の耐震安全性評価と安全余裕の決定の目的のために用いられる場合には、最新の工学的方法と容認基準が、適用不可能で無いならば、大幅な耐震性向上の要求につながる可能性がある。
2.16. 評価手法を選択した後に、耐震安全性評価実施計画は以下の項目を包含すべきである。
(a) 地震入力、すなわち地震動パラメータの明確化(第4章参照)。
(b) 潜在的な地表断層活動に関するサイトの地質学的安定性の検証、及びその他の地盤の危険度(例えば液状化)の再評価のために新たに決められた地震ハザードの使用(第4章参照)。
(c) 地震ハザードを受けた際の施設の耐震挙動、すなわち、SSCに対する地震荷重とそれらの地震耐力又は脆弱性、系統の性能等。第5章ではこれらの課題を論じる。
(d) 容認基準と施設の耐震性向上の必要性(施設面と運転面の両方)。第7章ではこれらの課題を論じる。
2.17. 本安全指針では、SSCの現実的な損傷モード、すなわち、不十分な地震耐力又は地震相互作用のいずれかの原因でSSCが要求される機能を果たせなくなる状態を扱う。構築物についてのこの機能は、閉じ込め、他のSSCの支持及び/又は保護であり得る。分配系及び機器については、操作性及び/又は流体の保持であり得る。例えば、配管系統についての損傷は流れの保持能力の喪失であり、系統についての損傷は容認可能な性能の欠如である。構築物及び機械的な機器については、耐震安全性評価では、ある程度の非線形挙動を許容するにしても、在来型の工業施設で許されるよりは低いレベルにおいてである。SSCから求められる機能とそれらのSSCの損傷モードが特定されるべきである。
2.18. 系統及び機器の地震耐力又は脆弱性の評価は、多くの場合、地震の経験データや試験データに依存すべきである。既に大量のデータが取得され、評価され、審査され、評価手順に組み込まれている。これらのデータは、以下のような地震経験データ及び試験データから成っている。
(a) 地震経験データは、広範囲の国際的な情報源から得られており、概ね、強い地震を受けた工業施設の機械的及び電気的装置や分配系の挙動を反映したものである。
(b) 試験データは、機器の確認試験又は耐力試験に基づくものである。ある場合には、試験データのデータベースは、製造者、寸法、機能、固定法のような機器に固有な情報に依存している。
全ての場合、これらの地震経験データ及び試験データの適用性は、評価対象とする特定の原子炉等施設に関して検証されるべきである。
2.19. SMAの手法は、SSCが容認可能な地震耐力を持つことが示されたときに、地震の発生後に施設が無事に安全な状態に到達するであろうことの高い確信度を与える、1組のSSCを明らかにすることに基づいている。特定されたSSCは、「成功パス」を構成する。原子力発電所に対する成功パスは、第5章で適用されているように、「安全停止パス」と呼ばれる。原子力発電所以外の原子炉等施設(第6章)に対しては、「成功」は、評価対象とする原子炉等施設について達成されるべき最終状態、例えば地震の発生時及び発生後に核物質を無事に閉じ込めること、に応じて定められるべきである。成功パスに対する要求事項には、規制当局との合意のもとに定められた深層防護、系統の多重性などの考慮を含むことがある。これについては、5.2項と関連する脚注3も参照のこと。
2.20. プラントの現場確認は、SMA及びSPSAの手法に欠かせない部分である。全ての手法に対して、プラント現場確認は耐震安全性評価の実施計画の重要要素であるべきである。現場確認は、5.32–5.40項に詳しく論じられている。
経年変化に関する考慮
2.21. 全ての種類の原子炉等施設の耐震安全性評価において、経年劣化が考慮されるべきである。経年劣化は、SSCの地震耐力を減少させるような経年効果である。代表的な経年劣化影響としては、配管、タンク及び金属製機器の腐食並びに浸食、熱及び中性子照射による効果(例えば、原子炉圧力容器の脆化、コンクリート構造物、機器及び固定装置の劣化、電気設備の劣化)、応力腐食割れ(沸騰水型原子炉の炉心シュラウド、一次系配管等に対するもの)、塩水や地下水中の過剰な塩素濃度に浸ることに因る環境誘起腐食、並びに電気系統及び装置の経年変化がある。
地震計
2.22. サイト(堆積層又は岩盤上の自由表面及びボーリング孔内)及び施設内(基礎上及び構造物内の場所)に設置された地震計は、サイト近傍で地震が発生した場合に信頼できる実際の記録が得られることを確実なものとするために評価されるべきである。必要ならば、地震計は、地震の発生時及び発生後に地震動に関する適切な情報を得るために、またその後のプラントに対する対応措置を決めるために、最近の国際的な良好事例に照らして、適切に最新化し高性能化されるべきである。また、地震計に関する保守計画とデータ伝達計画が機能していることを確実なものとすべきである。地震計は、着目している大及び小地震を記録できるように適切なものとすべきである。
実施計画の構成
2.23. 施設の耐震安全性評価実施計画を実行するためには、完全かつ詳細な作業計画が作成されるべきである。作業計画では施設の運転が配慮されるべきである。評価時の実際のデータの収集、プラント現場確認の実施及び物理的な耐震性向上のような、施設の運転中には実施し難い作業も有り得る。作業計画では、懸案となっている物理的な又は運転上の変更についてそれらが評価に反映されるように考慮すべきである。耐震安全性評価実施計画の典型的な特徴である段階的な取組みは、これらの目的に合致している。
2.24. 本安全指針では、耐震安全性評価実施計画の実行に必要な工程表に関する具体的な推奨事項については提示されていない。この重要な側面については、安全に関わる高品質化の実施のために策定された全般的なマイルストーンを置いた工程表に従って、利用可能な資源の枠内で、規制当局の合意を得て事業者により定められるべきである。耐震性には関わらない追加的な高品質化が実施される場合には、耐震とそうではない面の高品質化の間の両立性の検証が実施計画に入れられるべきである。工程表は、放射線防護の最適化の原則とともに施設の運転上の必要性を考慮すると、評価段階(主にデータ収集関連)と高品質化段階(主に高品質化実施関連)の両方にわたって、建屋、区域、及び/又は設備へ接近できるか否かによって大きく影響される。
2.25. 耐震安全性評価実施計画を成功裡に策定して完了するためには、責任関係が明確で、その計画に従事するために必要な技術的能力を備えた専任組織の設立が要求される。この点に関しては、事業者は、施設のシニアマネジメントの直接の指揮命令下にある計画管理者によって監督される、評価を実施する専任グループ(通常の運転業務を伴わない)を設置すべきである。
2.26. 資源上の制約から生じる状況に対処するためには、最適リスク低減原則に基づいた優先度付け計画が用いられることがある。この計画は、論理的かつ技術的な順序を維持したより小さな基本作業に分割されることがある。便宜上、評価工程は主要作業に分けることができ、それぞれの作業はいくつかの活動を包含する。例えば以下に掲げる作業が特定される。
(a) 当初の耐震設計に関連する利用可能な情報の整理。
(b) 所在不明の評価時の実際の情報の特定と取得。
(c) 評価に使われる地震ハザードの決定。
(d) SMAについては、地震時の安全停止手順の設定、確保すべき安全目的と安全機能の明確化、及びそれに対応して選定される評価すべきSSC一式の特定。
(e) 評価時の実際のデータを収集するためのプラント現場確認の実行。これは、系統と機器間の地震相互作用の弱い連結と問題点を特定し、固有のまた実証され得る地震耐力のために評価の対象外とするSSCを選別しながら行われる。
(f) 適切な数学モデルの作成と建屋及び構築物の地震応答の計算。これには、地盤と建屋間の相互作用及び構築物内の応答スペクトル(床応答スペクトル)の計算を含む。
(g) 建屋及び構築物の地震耐力の評価。
(h) 設備及び装置の地震応答と地震耐力の評価。
(i) 地震耐力が不十分で耐震性向上されるべきSSCの特定。
(j) 地震耐力が不十分なSSCの耐震性向上。
(k) 必要ならば、数学モデル、地震応答の計算、及び耐震性向上された状態でのSSCの地震耐力の検証についての最新化。

3. データの収集と調査
既設の原子炉等施設に関するデータの収集
3.1. 既設の原子炉等施設に関して実施されるべきあらゆる耐震安全性評価の全般的特徴として、その評価は、それが実施される時点における施設の状態を考慮して行なわれるべきである。施設のこの重要な状態は、「評価時の実際の」状態と表わされる。これは、地震が発生した場合に、その実際の状態の施設に影響を与え、施設の応答と耐力は、その実際の物理的構成及び運転状況に依存することを意味する。したがって、耐震安全性評価のための実施計画の最初のまたより重要な段階の一つは、施設の実際の状況の完全な表現を提示するための全ての必要なデータと情報を収集することである。評価時の実際のデータの収集は、耐震安全性評価の実施計画の範囲に入ると考えられ、また、システムの性能に対して直接的な影響を及ぼすか、又は地震動をある場所から他の場所に伝達することによって間接的な影響を与える、それらの選定されたSSCを網羅すべきである。評価時の実際の状態は、供用期間中における施設の経年劣化の影響を適切に反映しかつ含むべきであることもまた、強調されるべきである。未決定の物理的又は運転上の変更についてもまた、評価において考慮され得ることを認識しておくべきである。
当初の設計の根拠に関するデータ及び図書資料
3.2. 当初の設計の根拠に関するデータと図書資料は、利用可能なあらゆる情報源から収集されるべきである。設計段階において使用された原子炉等施設に関する固有のデータや情報の収集と整理には、可能な限り、重点が置かれるべきである。もし、より完全な情報が設計段階から収集されたならば、耐震安全性評価の実施計画のために要求される労力と資源は、より少なくて済む。
施設の全般的図書資料
3.3. 施設の設計段階において設計や許認可の目的のために使用されたすべての利用可能な全般的及び特定の図書資料は、以下を含めて、集められるべきである。
(a) 安全解析報告書、望むべくは、最終安全解析報告書。
(b) 施設の当初の設計時に使用された規格と基準。
(i) 使用された材料の公称値とその機械的特性を指定するために採用された基準と当初に適用された手順。
(ii) 当初の負荷組合せを明確にするため、また耐震設計パラメータを計算するために採用された基準と適用された手順。
(iii) 構築物、機器、配管系統、及び他の機器等の設計のために、適宜、使用された国の工業基準。
(iv) 施設設計時において在来建屋の設計に使用され、また、最低限の要件であったと考えられる国の基準と手順。
(c) 構築物、装置、及び分配系(例えば、配管、ケーブルトレイ、換気ダクト)に関する全体配置と配置図面。
(d) 内部(及び外部)事象の確率論的安全評価(PSA)の結果(実施された場合)。
(e) 試運転期間中に実施されたSSCの耐震確認試験の結果と報告に関するデータと情報。これには、検査、保守、及び不適合報告書や是正処置報告書に関する利用可能な全ての情報を含む
(f) 品質保証と品質管理の図書資料。これには、建設、製作、組立、及び試運転時の変更を評価するために材料、形状、及び配置構成の建設時の状態に特に重点を置いた不適合報告書や是正処置報告書を含む。これらのデータの正確度は評価されるべきである。
耐震安全性評価の実施計画に含まれるSSC固有の図書資料
3.4. 施設の当初の設計に関する固有情報、特に、耐震安全性評価の実施計画に含まれるSSCの情報は、以下のように収集されるべきである。
(a) システム設計
(i) システムの説明資料
(ii) 安全区分、品質区分、及び耐震区分
(iii) 設計報告書
(iv) システムの機能性の確認報告書
(v) 細部を含む計測制御
(b) 地盤設計
(i) 掘削、地質構造の埋戻し、及び基礎部管理(例えば、沈下、隆起、排水)
(ii) 擁壁、土手等の建設
(iii) 地盤‐基礎部‐構築物の損壊モードと耐力(例えば、推定される沈下、滑り、転倒、隆起、液状化)
(c) 構造設計
(i) 全ての着目すべき構築物の応力解析報告書
(ii) 構造図(例えば、構造用鋼、鉄筋コンクリート及び/又はプレストレストコンクリート)、望むべくは、建設時の図書資料
(iii) 材料物性(仕様及び試験データ)
(iv) 代表的な詳細(例えば、結合部)
(d) 機器設計
(i) 耐震解析及び設計の手順
(ii) 試験仕様書、試験報告書、等を含む耐震確認手順
(iii) 代表的な固定手段の要求事項と使用された種類
(iv) 応力解析報告書
(v) 運転前試験報告書(あれば)
(e) 分配系設計(配管、ケーブルトレイ、ケーブル導管、換気ダクト)
(i) 系統説明資料
(ii) 配管と計装の図表
(iii) 配管とその支持構造物の配置と設計図面
(iv) ケーブルトレイとケーブル導管、及びそれらの支持構造物の図表
(v) 換気用ダクトとその支持構造物の図表
(f) 役務用及び取扱用の装置(たとえ、その一部は安全上の関連がない装置であっても、運転時及び貯蔵時の配置構成における相互作用効果の解析と検討のために、その評価が必要となる場合がある)
(i) 主クレーン、及び補助クレーン
(ii) 燃料交換機
耐震設計の根拠
3.5. 耐震安全性評価の実施計画の実施に当たっては、当初の設計段階において使用された地震入力の特性がよく理解されるべきである。サイトの評価検討時に実施された地震ハザード解析の図書資料と、最終的に採用された当初の設計の根拠の値との乖離は、全て特定されるべきである。この情報は、参考レベルを決定する上で不可欠である。この参考レベルは、評価計画のために設定されるべき新しい地震入力に対する施設の耐震安全裕度を評価するために使用されることになる。この観点から、以下の事が包含されるべきである。
(a) SSCの設計と確認に使用された当初の設計の地震レベルの仕様書[4]。
(b) 弾性地盤応答スペクトル、加速度時刻歴、又は他の表現による自由表面の地震動パラメータ。
(c) マグニチュード(M)や強度(I)、震央距離(Δ)、強震動の定義と継続時間、又は、他の地震パラメータ、等の当初の入力地震動を定義するために使用された主要な地震の震源パラメータ。 16
(d) 構築物の一部が、設計スペクトルが非弾性挙動に関して内在的に減衰する内容の設計規格に従って設計されている場合には、新たに定義される地震入力に対する耐震安全性評価の実施計画の要求事項と比較する根拠を与えるために、それに対応する弾性地盤応答スペクトルが導出されるべきである。
地盤‐構造物の相互作用、構造物のモデル化、及び構造物内の応答の詳細
3.6. 当初の設計時に使用された地盤‐構造物の相互作用の解析、モデル化の技術、及び構造物の応答解析の技術に関する情報は、以下のように収集されるべきである。
(a) 地盤‐構造物の相互作用パラメータ
(i) 基準点の位置、即ち、入力地震動を適用するために選択された位置― 例えば、自由地盤面、基礎部マット上、又は基盤岩レベルに接した自由表面。
(ii) サイト固有の応答解析に使用された地盤の剛性や減衰特性、地下水位の変動に関する情報、及び歪み依存特性についての考慮、等を含む地盤の特性(3.14~3.17項を参照のこと)。
(iii) 地盤特性、及び、地盤‐構造物の相互作用解析技術の不確実性を説明する方法、例えば、地盤特性に関する最適推定、下限及び上限の三つの解析が当初の設計において使用されている場合には、その包絡線。
(b) モデル化の技術
(i) 構造物の地震応答と構造物内の応答スペクトル(床の応答スペクトル)の計算に使用されたモデル化の技術と解析の方法。
(ii) 物質とシステムの減衰、モード減衰の切り捨て。
(iii) 設計段階において想定され、また、建設時に実行されたような非弾性的挙動の許容幅。
(c) 構造物の解析と応答パラメータ
(i) 地盤と構造物の連結モデル又は基礎構造モデルを用いた1又は2段階の解析。
(ii) 機器と構造物の動的解析。
(iii) もし利用可能ならば、固有振動数とモードの形状。
(iv) 構造物の応答出力 (例えば、構造物の内部荷重 (力とモーメント);構造物内の加速度;変形又は変位)。 17
(v) 滑りや隆起等の全体的挙動を含む基盤の応答。
(vi) 構造物内の応答スペクトルの計算 (床応答スペクトル)、これには以下を含む。
— 設備の減衰。
— 包絡し且つ幅を持たせる判断基準(使用されている場合)。
現状の(評価時の実際の)データ及び情報
3.7. 前項までに推奨されたように、当初の設計の根拠に関連する可能な限り多くのデータを収集した後に、施設の現状と実際の状態(即ち、評価時の実際の状態)が評価されるべきである。この点に関して、評価を行う者は、実施する全ての段階を適切に文書化しつつ、一貫したかつ包括的な方法で行うべきである。
3.8. 施設が、参考文献[7]において推奨されているような定期安全レビューを受けてきている場合には、これらのレビューの報告書は、耐震安全性評価の実施計画の目的のために利用できるようにすべきである。
3.9. 建設時と運転前の全ての利用可能な図書資料(報告書、図面、写真、フィルム記録、非破壊検査報告書等)の精密なレビューが実施されるべきである。この目的のために、文書化されたデータを確認し、また、新しい、更新された情報を入手するために、予備的な選別のための現場確認が実施されるべきである。この現場確認中においては、施設の供用期間中に実施されたあらゆる重要な改修、及び/又は高品質化、及び/又は補修手段に関するデータが収集され、文書化されるべきである。これには、すべての経年変化影響の報告が含まれる。施設の地震応答と地震耐力に対して効果的であるためには、どの程度の改修が必要になるかについての判断は、地震耐力の評価に関する専門家によって行なわれるべきである。
3.10. 以下の項目に関連する建設及び/又は組立てに関する要求事項、手順、及び不適合報告書に対しては、特に注意が払われるべきである。
(a) 掘削と埋戻し
(b) 現場を経由する機器等 (例えば、配管、ケーブルトレイ、導管、管類)
(c) 非安全関連の機器等の据付け (例えば、石壁、遮蔽ブロック、室内ヒータ、飲用水配管と消火用水配管、つり天井)
(d) 機器間の分離距離又は間隔
(e) 現場試験を受けた機器等
(f) 固定手段
3.11. 施設の運転期間中において利用可能なすべての記録と図書資料は、補修記録や残存供用期間について実施された評価結果も含めて、現場検査や運転履歴によって特定された偶発故障や経年変化の影響に関するSSCの信頼性との関連で、評価されるべきである。SSCの動的特性付けに関して(もし、行われたならば)実施された試験の報告書の存在には、検査、保守、及び/又はモニタリング記録とともに、特に注意が払われるべきである。
3.12. サイトの定期的な地質工学的な監視や測地調査、及び施設の構築物からの利用可能な情報は、変形や沈下、基礎部の挙動、構築物の相対変位、等の評価に使用されるべきである。
3.13. サイト選定、サイト評価、運転前活動及び運転にわたる全期間を通してサイトに設置された地震計は、現実に地震に遭遇したときの地盤、構築物及び機器の固有の挙動をより良く理解し、評価するためのデータを提供するであろう。この観点から、全ての利用可能なデータは、編集され、解析されるべきである。原子炉等施設の地震計と緊急停止系については、それらの操作性や機能性とともに現状の評価が実施されるべきである(2.22項を参照)。既設の地震計の評価においては、以下の点を考慮すべきである。
(a) サイト周辺の近隣地域における地域の地震観測網
(b) 施設自体の地震計
(c) 地震発生時及びそれ以降に要求される活動のために定められた操作手順
推奨される調査
地盤に関するデータ
3.14. 信頼性のあるかつ現実的なサイト固有の地震応答解析を実施するためには、地盤と岩盤の断面の静的及び動的な物性が入手されるべきである。これらのデータがより初期の段階に(例えば、設計段階において)入手されたのであれば、現行の手法への妥当性が評価されるべきである。この点に関して、 19
(a) 岩盤層に関しては、各層の岩盤の物性の資料が妥当である。
(b) 多層地盤に関しては、各層に関して歪みに対する剛性率や減衰は、多層地盤の数学的モデルを導出する基盤となる。密度や低歪み物性(通常は、PとS波の速度のその場での測定値や3軸静的物性の実験室での測定値、及び可能ならば、動的物性と物質の減衰率)が与えられるべきである。歪みレベルの増大に伴う動的剛性率の値と減衰値の変動が深さの関数として必要である。歪みによる地盤の物性の変化は、地盤の種類が一般的区分と適切に関連付けされている場合には、一般的データに基づいてもよい。サイト固有の地盤特性を明らかにする静的及び動的物性値の妥当な範囲については、耐震安全性評価の実施計画における使用のために調査され、文書化されるべきである。
3.15. 代表的な一年間のその地域の地下水位の位置とその変動に関する情報が入手されるべきである。
3.16. サイト調査、設計、及び建設の種々の段階に関しては、運転職員やその他の人々によって記録された写真、覚書、及び観察結果のような通常には得られない情報源から、他のデータが利用できることがある。これらのデータは、それらの情報源や文書化の方法に照らして評価されるべきである。そのようなデータの収集は、参考文献 [9] に従い、可能な限り実施されるべきである。
3.17. サイトにおける又はその地域にある他の工業施設における実際の地震経験に関連するすべての利用可能な情報は、入手されるべきである。ダムの決壊による河川の氾濫、津波による沿岸の冠水、地滑りや液状化等の地震の誘発による現象に対しては、特に注意が払われるべきである。
建屋構造物に関するデータ
3.18. 安全関連の構造物の建設のために使用される評価時の実際のコンクリートの等級は、既存のプラント固有の試験とコンクリートに関する工業規格に基づいて検証されるべきである。試験には、破壊又は非破壊のいずれかの方法が使用され得る。当初の設計のデータの代わりに収集されたデータは、さらなる解析と耐力評価のために使用され 20
るべきである。設計値からの大きな差異がある場合には、その差異の原因とその結果が調査されるべきである。
3.19. 評価においては、鉄筋の実際の材料物性が使用されるべきである。材料物性は、既存の試験データから利用可能であるべきである。そうでない場合には、破壊及び非破壊試験の信頼できる方法が使用されるべきである。鉄筋の解析には、機械的物性と詳細項目(例えば、鉄筋の寸法、配置、形状特性、コンクリートかぶり、鉄筋の間隔)を含めるべきである。構造物全体の耐力評価のためには、全ての重要な載荷構成材の物性が評価されるべきである。その他、鉄筋の詳細が重要となるような場合には、例えば、貫通部及び大型機器の固定部が含まれる。
3.20. 経年効果は、通常、別個の計画において評価されるが、耐震安全性評価において、コンクリート建屋の調査は、最低限、亀裂、侵食/腐食や表面損傷の影響、中性化の程度、コンクリートかぶりの厚さ、及び、例えば地下水中に存在する塩化物や他の腐食性汚染物等による地下基礎部の劣化の程度についての目視検査を含めるべきである。
3.21. 抜き取り調査は、選択された構築物の構成材の形状特性を検証するために行なわれるべきである。
3.22. 評価の重要な要素は、地震荷重以外の、耐震安全性評価に使用される荷重の検証及びことによると新たな評価である。通常、評価時の実際の状態における静荷重と動荷重の両方とも、当初の設計に使用されたものとは異なる。その差異に関しては、慎重に吟味され、記録されるべきである。
配管及び装置に関するデータ
3.23. 配管、装置、及びそれらの支持構造物に対する設計情報が不十分な場合には、解析及び/又は試験が、それらの動的特性と挙動を定めるため実施されるべきである。この場合、代表的なもので十分である。

4. 地震ハザードの評価
4.1. 耐震安全性評価のためのあらゆる実施計画の最初の段階は、第3章に示された関連データの収集と並行して、地震ハザードを確定することであるべきであり、それとの関連において既設の施設の耐震安全性が評価される。この点に関して、サイト特有の地震ハザードが、下記の3つの主要な要素との関連において評価されるべきである。
(a) サイトの地質の安定性評価 [4、9]。これには主たる2つの目的を持つ。
(i) 安全上重要な建屋や構築物の直下、又は非常に接近した場所において、相対的な地盤変位現象を生じる可能性のあるいかなる活断層も存在しないことを検証すること。新たな証拠がサイト区域内やサイト近傍における活断層の可能性を示した場合は、断層変位の危険性が、先ず、参考文献[4 ]に示される手引きに従って評価されるべきである。この問題の明確な解決が未だ不可能である場合には、断層変位の危険性は、確率論的手法を用いて評価されるべきである。
(ii) 恒久的な地盤変位現象が存在しないことを検証すること(即ち、液状化、斜面の不安定性、地盤沈下や崩壊、等)。
(b) サイトにおける地震動の強さの決定、即ち、調査対象となる4領域における地震構造論的影響の全範囲を考慮に入れた、参考文献[4 ]が推奨するような地盤震動パラメータの評価。
(c) 地震によって生じるダム決壊による河川の氾濫、津波による沿岸の冠水、及び地滑り、等の他の随伴現象の評価
4.2. 一般的に、地震ハザード評価は、その実施計画の目的と要求事項に依存して、決定論的又は確率論的方法を用いて実施され得る。いずれの方法においても、偶発的な不確実性及び認識可能な不確実性は、両方共、考慮されるべきである。
4.3. 4.1(a) 項と4.1(c)項 において推奨される評価は、使用されている方法論には拘りなく、参考文献 [4, 9, 10 ] に従い耐震安全性評価のための実施計画のあらゆる場合について実施されるべきである。地盤工学上の危険度(例えば、液状化、斜面の不安定性、地盤沈下、崩壊)の評価においては、新しい地震ハザードパラメータが使用されるべきである。4.4. 4 .1(b)項に関するサイトの地震ハザード評価に対する推奨事項は、その評価の目的に依存する。以下の場合における地震ハザード評価は、参考文献 [4 ] に推奨されるように実行されるべきである。
(a) 当初の設計用基準地震動の改定を行なう場合。これは、サイトにおける地震ハザードに関する新しい情報(例えば、新たに特定された断層)、不適切又は推奨された最低限度以下と判明した当初の設計の根拠(例えば、参考文献 [4~6]に与えられるような)、又は、設計の根拠の地盤震動特性が当初に使用されたものと異なること(例えば、直下型地震に関するより大きな高周波数成分)などのような状況により企てられることがある。
(b) 当初の設計用基準地震動を超える耐震安全裕度を設定する場合、及び、クリフエッジ効果がないことを実証する場合。
(c) 基準の改訂による規制要件に従った耐震安全性評価、もしくは長期運転(即ち、プラントの供用期間の延長)の支援における耐震安全性評価を実施する場合。
(d) あるレベルの地震動を受けたとき新たに観測されたSSCの挙動が、施設の地震耐力を損なわないことを検証するために評価を行う場合。
地震ハザード評価の結果、新たなサイト固有の地震ハザードが規定され、評価用の地震動として指定される。これは、施設の耐震安全性の評価に使用されるべきである。
4.5. ある場合には、規制当局が、明示的に地震ハザード評価を行うことなく、耐震安全性評価が実施されるための地盤震動を直接指定することがある。いかなる場合においても、評価用の地震動を決定する際の、また評価の結果を解釈する際の意思決定に有用な情報を提供するために、参考文献 [4] の推奨事項に従って(決定論的又は確率論的のいずれかの)地震ハザード評価が実施されることが推奨される。
4.6. 4 .4項の目的以外の目的を達成するためには、サイト固有の確率論的地震ハザード評価 [4] が実施されるべきである。通常、その目的には、以下を伴う。
(a) リスク指標の計算(例えば、炉心損傷頻度と早期大量放出の頻度)。
(b) リスク情報を活用した意思決定のためのリスク管理手段の確立。
(c) 地震ハザードと他の内的及び外的ハザードとの間の相対的な危険性の決定。
(d) プラントの耐震性向上に関する意思決定のために費用-便益分析に関する手段の提供。
4.7. SMA手法に関しては、評価用の地震動(4.5項)が、耐震安全性評価の実施計画に使用されるべき地震入力を規定する。この場合には、当初の設計基準地震動に対して十分に裕度のある評価用の地震動が定義されるべきである。これは、プラントの安全を確保するため、また、当初の設計用基準地震動以上の大きな地震事象に十分耐えるべき施設の能力を制限することのあるあらゆる「弱点」を見出すために行われる。
4.8. SPSA手法に関しては、評価用の地震動(4.5項)が、サイト固有の確率論的地震ハザードを意味する。一般的に、サイト固有の確率論的地震ハザード評価の結果は、地盤振動パラメータ(例えば、最大加速度)の年間超過頻度(しばしば、年超過確率と呼ばれる)を定める地震ハザード曲線、それに基づく応答スペクトル(例えば、一様ハザードスペクトル)、及び、有力な震源パラメータ(例えば、マグニチュードやサイトからの距離)の特性、等を含む。


<略>


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クリフエッジ効果
In a nuclear power plant, an instance of severely abnormal plant behaviour caused by an abrupt transition from one plant status to another following a small deviation in a plant parameter, and thus a sudden large variation in plant conditions in response to a small variation in an input.
原子力発電所において、一つの発電所パラメータの小さな逸脱の結果、ある発電所の状態から別の状態への急激な移行によって生じる、通常から大きく外れる発電所挙動の事例であり、このように入力の小さな変動に反応して発電所の状態が突然大きく変動すること。


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・設置関係資料 その16 安全性に関する総合的評価に関する評価手法及び実施計画 原子力安全・保安院

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http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan053/siryo1.pdf

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第53回原子力安全委員会
資料第1 号

東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価に関する評価手法及び実施計画

平成23 年7 月15 日
原子力安全・保安院

 平成23 年7 月6 日付け23 安委決第7 号において原子力安全委員会から求められた、東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の発電用原子炉施設の安全性に関する総合的評価に関する評価手法及び実施計画について、以下のとおり定める。

Ⅰ.評価手法
1.評価対象施設
 全ての既設の発電用原子炉施設を対象とし、建設中のものを含める。ただし、東京電力福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所及び廃止措置中であって燃料が発電所内に存在しないものは除く。
 核燃料サイクル関連施設については別途実施を検討する。

2.評価対象時点
 評価は、平成23 年7 月31 日時点の施設と管理状態を対象に実施する。

3.評価対象事象
 東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえ、以下の事象を対象とする。
・自然現象: 地震、津波
・安全機能の喪失: 全交流電源喪失、最終的な熱の逃し場(最終ヒートシンク)の喪失

4.評価実施方法
 事業者は、以下の方法に基づく評価を行い当院に提出する。当院は、事業者の評価結果に対する評価を行うとともに、原子力安全委員会に対し、当院の評価結果の確認を求める。
 事業者による評価は、一次評価と二次評価により構成する。なお、いずれの場合も、東京電力福島第一原子力発電所事故の後に緊急安全対策等として実施した措置について、明示すること。
(1)一次評価
 安全上重要な施設・機器等について、設計上の想定を超える事象に対してどの程度の安全裕度が確保されているか評価する。評価は、許容値に対しどの程度の裕度を有するかという観点から行う。また、設計上の想定を超える事象に対し安全性を確保するために取られている措置について、多重防護(defense in depth)の観点から、その効果を示す。これにより、必要な安全水準に一定の安全裕度が上乗せされていることを確認する。
(2)二次評価
 設計上の想定を大幅に超える事象の発生を仮定し、評価対象の原子力発電所が、どの程度の事象まで燃料の重大な損傷を発生させることなく耐えることができるか、安全裕度(耐力)を評価する。また、燃料の重大な損傷を防止するための措置について、多重防護の観点から、その効果を示すとともに、クリフエッジ効果を特定して、潜在的な弱点を明らかにする。これにより、既設の発電用原子炉施設について、設計上の想定を超える外部事象に対する頑健性に関して、総合的に評価する。
(3)評価の進め方
 評価において、事象の進展過程については、イベントツリーの形式で示すこととし、イベントツリーの各段階において、その段階で使用可能な防護措置について検討し、それぞれの有効性及び限界を示す。評価に当たっては、以下の点に留意する。
・起因事象発生時の状況として、最大出力下での運転など最も厳しい運転条件を想定するとともに、使用済燃料プールが使用済燃料で満たされるなど最も厳しいプラント状態を設定する。
・想定する自然現象は、地震及び津波とする。さらに二次評価においてはこれらの重畳についても想定することとし、設計段階での想定事象に限らず、最新の知見に照らして最も過酷と考えられる条件や、さらにそれを上回る事象をも考慮する。
・事象の過程の検討においては、事象の進展や作業に要する時間をあわせて検討する。
・原子炉及び使用済燃料プールが同時に影響を受けると想定する。また、防護措置の評価にあたっては、合理的な想定により機能回復を期待できる場合を除き一度機能を失った機能は回復しない、プラント外部からの支援は受けられない等、厳しい状況を仮定する。
・二次評価においては、事業者が自主的に強化した施設・機能や、耐震B・Cクラスの構造物・機器であっても合理的な推定によって機能維持が期待できるものについては、評価に含めることができる。
・喪失する安全機能として、全交流電源喪失及び最終ヒートシンクの喪失を想定するが、二次評価においてはこれらの重畳についても想定する。
・複数号機を有する発電所については、複数号機間の相互作用の可能性について考慮する。
・決定論的な手法を用い、過度の保守性を考慮することなく現実的な評価を行う。

5.一次評価実施事項
 以下に示す事項について実施する。
(1)地震
 ①地震動が、設計上の想定を超える程度に応じて、耐震Sクラス及び燃料の重大な損傷に関係し得るその他のクラスの建屋、施設・機器等が損傷・機能喪失するか否かを許容値等との比較若しくは地震PSA(確率論的安全評価)の知見等を踏まえて評価する。
 ②①の評価結果を踏まえて、発生する起因事象により燃料の重大な損傷に至る事象の過程を同定し、その地震動の大きさを求めるとともに、設計の弱点を明らかにして、クリフエッジの所在を特定する。
 ③特定されたクリフエッジへの対応を含め、燃料の重大な損傷に至る事象の過程の進展を防止するための措置について、多重防護の観点から、その効果を示す。
(2)津波
 ①津波高さが、土木学会「原子力発電所の津波評価技術」(平成14年)を用いて評価した設計想定津波の高さ(設計津波高さ)を超える程度に応じて、安全上重要な建屋、施設・機器等が損傷・機能喪失するか否かを設計津波高さ等との比較若しくは津波PSAの知見等を踏まえて評価する。
 ②①の評価結果を踏まえて、発生する起因事象により燃料の重大な損傷に至る事象の過程を同定し、その津波高さを求めるとともに、設計の弱点を明らかにして、クリフエッジの所在を特定する。
 ③特定されたクリフエッジへの対応を含め、燃料の重大な損傷に至る事象の過程の進展を防止するための措置について、多重防護の観点から、その効果を示す。
(3)全交流電源喪失
 ①内的事象PSAの知見を踏まえて、全交流電源喪失を起因事象として燃料の重大な損傷に至る事象の過程を明らかにするとともに、その場合の全交流電源喪失の継続時間を明らかにする。
 ②①において特定された事象の過程及び外部電源喪失から全交流電源喪失への進展過程を踏まえ、設計の弱点を明らかにして、クリフエッジの所在を特定する。
 ③特定されたクリフエッジへの対応を含め、燃料の重大な損傷に至る事象の過程の進展を防止するための措置について、多重防護の観点から、その効果を示す。
(4)最終的な熱の逃し場(最終ヒートシンク)の喪失
 ①内的事象PSAの知見を踏まえて、最終ヒートシンク喪失を起因事象として燃料の重大な損傷に至る事象の過程を明らかにするとともに、その場合の最終ヒートシンク喪失の継続時間を明らかにする。
 ②①において特定された事象の過程の進展を踏まえ、設計の弱点を明らかにして、クリフエッジの所在を特定する。
 ③特定されたクリフエッジへの対応を含め、燃料の重大な損傷に至る事象の過程の進展を防止するための措置について、多重防護の観点から、その効果を示す。

6.二次評価実施事項
 以下に示す事項について実施する。
(1)地震
 ①地震動が、設計上の想定を超える程度に応じて、建屋、施設・機器等が損傷・機能喪失するか否かを地震PSAの知見等を踏まえて評価する。
 ②①の評価結果を踏まえて、発生する起因事象により燃料の重大な損傷に至る事象の過程を同定し、その地震動の大きさを求めるとともに、設計の弱点を明らかにして、クリフエッジの所在を特定する。
 ③特定されたクリフエッジへの対応を含め、燃料の重大な損傷に至る事象の過程の進展を防止するための措置について、多重防護の観点から、その効果を示す。
(2)津波
 ①津波高さが、設計上の想定を超える程度に応じて、建屋、施設・機器等が損傷・機能喪失するか否かについて、津波PSAの知見等を踏まえて評価する。
 ②①の評価結果を踏まえて、発生する起因事象により燃料の重大な損傷に至る事象の過程を同定し、その津波高さを求めるとともに、設計の弱点を明らかにして、クリフエッジの所在を特定する。
 ③特定されたクリフエッジへの対応を含め、燃料の重大な損傷に至る事象の過程の進展を防止するための措置について、多重防護の観点から、その効果を示す。
(3)地震と津波との重畳
 ①設計上の想定を超える地震とそれに引き続く設計上の想定を超える津波が発生した場合において、燃料の重大な損傷に至る事象の進展を地震・津波PSAの知見を踏まえて同定し、設計の弱点を明らかにして、クリフエッジの所在を特定する。
 ②特定されたクリフエッジへの対応を含め、燃料の重大な損傷に至る事象の過程の進展を防止するための措置について、多重防護の観点から、その効果を示す。
(4)全交流電源喪失
 ①内的事象PSAの知見を踏まえて、全交流電源喪失を起因事象として燃料の重大な損傷に至る事象の過程を明らかにするとともに、その場合の全交流電源喪失の継続時間を明らかにする。
 ②①において特定された事象の過程及び外部電源喪失から全交流電源喪失への進展過程を踏まえ、設計の弱点を明らかにして、クリフエッジの所在を特定する。
 ③特定されたクリフエッジへの対応を含め、燃料の重大な損傷に至る事象の過程の進展を防止するための措置について、多重防護の観点から、その効果を示す。
(5)最終的な熱の逃し場(最終ヒートシンク)の喪失
 ①内的事象PSAの知見を踏まえて、最終ヒートシンク喪失を起因事象として燃料の重大な損傷に至る事象の過程を明らかにするとともに、その場合の最終ヒートシンク喪失の継続時間を明らかにする。
 ②①において特定された事象の過程の進展を踏まえ、設計の弱点を明らかにして、クリフエッジの所在を特定する。
 ③特定されたクリフエッジへの対応を含め、燃料の重大な損傷に至る事象の過程の進展を防止するための措置について、多重防護の観点から、その効果を示す。
(6)全交流電源喪失と最終ヒートシンクの喪失の複合
 ①内的事象PSAの知見を踏まえて、全交流電源喪失と最終ヒートシンク喪失の複合事象を起因事象として燃料の重大な損傷に至る事象の過程を明らかにするとともに、その場合の全交流電源喪失と最終ヒートシンク喪失の複合事象の継続時間を明らかにする。
 ②①において特定された過程を踏まえ、設計の弱点を明らかにして、クリフエッジの所在を特定する。
 ③特定されたクリフエッジへの対応を含め、燃料の重大な損傷に至る事象の過程の進展を防止するための措置について、多重防護の観点から、その効果を示す。
(7)シビアアクシデント対策
 ①現在備えているアクシデント・マネージメント対策におけるクリフエッジ効果を明確にするとともに、シビアアクシデントの発生からそこに至るまでの時間を評価する。
 ②クリフエッジ効果を防止するために実施可能な措置について、多重防護の観点から、その効果を示す。その際、ハードウェアのみならず、手順書、組織体制の整備などソフト面について考慮する。


Ⅱ.実施計画
1.一次評価
 定期検査中で、起動準備の整った原子炉に対して実施する。

2.二次評価
 全ての既設の発電用原子炉施設(ただし、東京電力福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所及び廃止措置中であって燃料が発電所内に存在しないものは除く)に対して実施し、事業者からの報告の時期は本年内を目途とするが、欧州諸国におけるストレステストの実施状況、東京電力福島第一原子力発電所事故調査・検証委員会の検討状況を踏まえ、必要に応じ見直す。
 建設中の発電用原子炉施設については、起動までに本評価を実施する。
 評価は、発電所単位で実施する。

3.当院の対応
(1)一次評価
 当院は、一次評価の提出を受けた場合には、その内容を評価する。評価結果については、原子力安全委員会に報告し、同委員会の確認を求める。
(2)二次評価
 当院は、提出された報告について、その内容を評価する。評価結果については、原子力安全委員会に報告し、同委員会の確認を求める。
 なお、当院は、欧州諸国におけるストレステストの実施状況、東京電力福島第一原子力発電所事故調査・検証委員会の検討状況も踏まえ、必要に応じ、二次評価実施事項を修正し、修正後の実施事項に基づいて評価を実施するよう事業者に対し改めて指示を行う。


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■16条「必要な援助」国の措置 その11 原子力損害賠償支援機構法案に対する附帯決議

■16条「必要な援助」国の措置 その11 原子力損害賠償支援機構法案に対する附帯決議

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http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/current/f422_080201.pdf
原子力損害賠償支援機構法案に対する附帯決議
平成二十三年八月二日
参議院東日本大震災復興特別委員会


政府は、本法施行に当たり、次の諸点について適切な措置を講じるべきである。

一 原子力政策における国の関与及び責任の在り方については、東京電力福島第一原子力発電所事故の収束等に向けた措置を国自ら実施することも含め、早急に見直しを行うこと。

二 本法はあくまでも被災者に対する迅速かつ適切な損害賠償を図るためのものであり、東京電力株式会社を救済することが目的ではない。したがって、東京電力株式会社の経営者の責任及び株主その他の利害関係者の負担の在り方を含め、国民負担を最小化する観点から、東京電力株式会社の再生の在り方については、東京電力福島第一原子力発電所事故の収束、事故調査・検証の報告、概ねの損害賠償額などの状況を見つつ、早期に検討すること。

三 本法附則第六条第二項に規定する見直しに備え、原子力損害賠償支援機構の各機能が明確になるように計数管理する体制を整えること。

四 今回の賠償に際しては、原子力事業者による負担に伴う電気料金の安易な引上げを回避するとともに、電力供給システムのあり方について検討を行うなど、国民負担の最小化を図ること。

五 東京電力株式会社に対し、すべてのステークホルダーに対して必要な協力の要請を行うことを求めること。

六 今回の賠償の実施に当たっては、迅速かつ適切な紛争解決の仕組みを早急に構築すること。

七 本法附則第六条第一項に規定する「抜本的見直し」に際しては、原子力損害の賠償に関する法律第三条の責任の在り方、同法第七条の賠償措置額の在り方等国の責任の在り方を明確にすべく検討し、見直しを行うとともに、その際賠償の仮払いの法定化についても検討すること。

八 国からの交付国債によって原子力損害賠償支援機構が確保する資金は、原子力事業者が、原子力損害を賠償する目的のためだけに使われること。

九 原子力損害を受けた被害者の救済に万全を期すため、「特定地域中小企業特別資金」や「中小企業基盤整備機構を活用した無利子融資制度」等の政策金融の周知を図り、その最大限の活用を促すほか、金融機関に対し、被害者への円滑な資金融通に努めるよう要請すること。

十 本委員会は、本法の制定に伴い、平成二十三年六月十四日の閣議決定「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて」の「具体的な支援の枠組み」は、その役割を終えたものと認識し、政府はその見直しを行うこと。

十一 本委員会は、本法附則第六条第一項に規定する「できるだけ早期に」は、一年を目途と、同条二項に規定する「早期に」は、二年を目途とすると認識し、政府はその見直しを行うこと。

十二 東京電力株式会社による賠償金等の支払いが停滞することのないよう、本法施行後、早急に原子力損害賠償支援機構を発足させ、迅速な賠償金等の支払いに係る体制の整備構築に万全を期すること。

十三 機構及び政府は、機構の活動状況及び財務状況、特別資金援助を受ける原子力事業者の特別事業計画の実施状況等を国会に対して求めに応じ定期に報告し、機構運営の透明性を担保するとともに、国民負担の最小化や安易な電気料金値上げの回避に努めること。

十四 政府は、原子力事業者の株式や電力債の市場動向を注視して、機構と協力して原子力事業者を起因した金融市場の大きな混乱や金融システムの機能不全が発生することのないように努力すること。

十五 原子力損害賠償の特別事業計画の策定に当たっては、福島原子力発電事故の収束がいまだ見えない中、長期的な視点に立って、原子力事業者による被災地域の土地の買取りや放射性物質で汚染された土壌やがれき等の処理などの検討を含め、国の責任により迅速かつ適切な損害賠償の枠組みを構築するように万全を期すこと。

右決議する。

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・東京プレスクラブ
http://tokyopressclub.com/

https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0B1xBQ3bNCL-XMWU0ZmEzZjItZWRiMC00NDY1LWIxNWItZGQwYTk5NjcxMjA5&hl=ja


原子力損害賠償支援機構法案に対する附帯決議(案)
平成二十三年七月○日
衆議院東日本大震災復興特別委員会

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について遺漏なきを期すべきである。

一 原子力政策における国の関与及び責任の在り方について、東京電力福島第一原子力発電所事故の収束等を国自ら実施することも含め、早急に見直しを行うこと。

二 東京電力株式会社の再生の在り方については、東京電力福島第一原子力発電所事故の収束、事故調査・検証の報告、概ねの損害賠償額などを見つつ、改めて検討すること。

三 法附則第六条第二項に規定する見直しに備え、原子力損害賠償支援機構の各機能が明確になるように計数管理する体制を整えること。

四 今回の賠償に際しては、原子力事業者による負担に伴う電気料金への転嫁の回避など、国民負担の最小化を図ること。

五 東京電力株式会社に対し、すべてのステークホルダーに対して必要な協力の要請を行うことを求めること。

六 賠償の実施に当たっては、標準的な処理を行うなど迅速かつ適切な紛争解決の仕組みを早急に構築すること。

七 法附則第六条第一項に規定する「抜本的見直し」に際しては、原子力損害の賠償に関する法律第三条の責任の在り方、同法七条の賠償措置額の在り方等国の責任の在り方を明確にすべく検討し、見直しを行うこと。

八 国からの交付国債によって原子力損害賠償支援機構が確保する資金は、原子力事業者が、原子力損害を賠償する目的のためだけに使われること。

九 原子力損害を受けた被害者の救済に万全を期すため、「特定地域中小企業特別資金」や「中小企業基盤整備機構を活用した無利子融資制度」等の政策金融の周知を図り、その最大限の活用を促すほか、金融機関に対し、被害者への円滑な資金融通に努めるよう要請すること。


一 本委員会は、本法の制定に伴い、平成二十三年六月十四日の閣議決定「東京電力福島第一原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて」の「具体的な支援の枠組み」は、その役割を終えたものと認識する。

二 本委員会は、法附則第六条第一項ら規定する「できるだけ早期に」は、一年を目途とすると認識する。

 右決議する。


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2011-07-27 : ・原子力損害賠償支援機構 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・原賠法改正 その2 賠償額スキーム法案に対する自民党の考え方(案)

・原賠法改正 その2  賠償額スキーム法案に対する自民党の考え方(案)

https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0B1xBQ3bNCL-XNjc5MTQ5YTctN2UyZS00ZjE4LTgxZjItNTEzMWZlM2I1ZTA0&hl=ja
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賠償額スキーム法案に対する自民党の考え方(案)

(主な修正ポイント)

2011.07.15

1.原子力被害者への賠償を尽速かつ確実に進めるために、東電の賠償の支援・再生を行う新機構の設立の必要性は認識する。

2.また、将来の原子力事故に対する備えとしての保険機構的な機能の必要性も認識する。(この点は.下記の原賠法の見直しがなされれば、その役割は減少、消滅する)

3.東電の再生の在り方については、福島第一原発が収束し、事故調査委の報告も出され、賠償がおおよそ見えてきた段階で、改めて検討する。

4,このため、新機構の両機能を区別して管理できるよう措置を講じつつ、新機構のスキームを認める。

5.国の賠償の責任を明確にしつつも、株主等のステークホルダ-の責任を求めずして、電気料金値上げや最終的に税金の負担とすることを決めないことを求める。

6.さらに、仮払いを円滑に進めるとの観点から、新機構に仮払いの事務を代行する機能を追加する。

7.また、現実には使えない原賠法第3条但書の規定(天災地変による免責条項)や第16条(事業者の無過失無限責任)の規定など、民間の原子力事業者の事業の安定性・リスク逓減の観点から、原賠法の見直し条項(プログラム規定)、原子力事業の在り方の検討条項を追加する。
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2011-07-26 : ■原賠法の改正論 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■16条「必要な援助」国の措置 その10 原子力損害賠償支援機構法案(修正案)

■16条「必要な援助」国の措置 その10 原子力損害賠償支援機構法案(修正案)


・東京プレスクラブ
http://tokyopressclub.com/
http://tokyopressclub.com/post/8042816081


原子力損害賠償支援機構法案(修正案)
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0B1xBQ3bNCL-XZDEyMTY2YTQtYzM5ZC00N2EzLThiOGYtNjk4OGMxMTgxNzZi&hl=ja


修正前の法案
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-127.html



主要箇所
・第2条(国の責務)新設
・第51条(資金の交付)新設
・第55条(機構による原子力損害の賠償の支払等)新設
・第58条4項 計数の管理 新設
・附則3条2項以下 原子力事業者の経営の合理化、株主その他の利害関係人の協力
・附則6条 賠償法の改正等の抜本的見直し等の必要な措置

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(国の責務)
第2条 国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、原子力損害賠償支援機構が前条の目的を達することができるよう、万全の措置を講ずるものとする。

(資金の交付)
第51条 政府は、機構が特別資金援助に係る資金交付を行う場合において、第48条第2項の規定による国債の交付がされてもなお当該資金交付に係る資金に不足を生ずるおそれがあると認めるときに限り、当該資金交付を行うために必要となる資金の確保のため、予算で定める額の範囲内において、機構に対し、必要な資金を交付することができる。

(機構による原子力損害の賠償の支払等)
第55条 機構は、資金援助を受けた原子力事業者の委託を受けて、当該原子力事業者に係る原子力損害の賠償の全部又は一部の支払を行うことができる。
 2 機構は、前項の規定による支払を行うため必要があると認めるときは、官庁、公共団体その他の者に照会し、又は協力を求めることができる。
 3 機構は、平成23年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律(平成23年法律第   号)の定めるところにより、同法第15条に規定する主務大臣又は同法第8条第1項の規定により仮払金の支払に対する事務の一部を行う都道府県知事の委託を受けて、同法第3条第1項の規定による仮払金の支払に関する事務の一部(会計法(昭和22年法律第35号)に基づく支出の決定及び交付の事務を除く。)を行うことができる。

(財務諸表等)
第58条 機構は、毎事業年度、貸借対照表、損益計算書、利益の処分又は損失の処理に関する書類その他主務省令で定める書類及びこれらの附属明細書(以下この条において「財務諸表」という。)を作成し、当該事業年度の終了後三月以内に主務大臣に提出し、その承認を受けなければならない。
2 機構は、前項の規定により財務諸表を主務大臣に提出するときは、これに当該事業年度の事業報告書及び予算の区分に従い作成した決算報告書並びに財務諸表及び決算報告書に関する監事の意見書を添付しなければならない。
3 機構は、第一項の規定による主務大臣の承認を受けたときは、遅滞なく、財務諸表を官報に公告し、かつ、財務諸表並びに前項の事業報告書、決算報告書及び監事の意見書を、各事務所に備えて置き、主務省令で定める期間、一般の閲覧に供しなければならない。
4 機構は,負担金について,原子力事業者ごとに計数を管理しなければならない。


付則
(経過措置)
第3条 第41条の規定は、この法律の施行前に生じた原子力損害についても適用する。
 2 この法律の施行前に生じた原子力損害に関し資金援助を機構に申し込む原子力事業者は、その経営の合理化及び経営責任の明確化を徹底して行うとともに、当該原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施のため、当該原子力事業者の株主その他の利害関係者に対し、必要な協力を求めなければならない。

(検討)
第6条 政府は、この法律の施行後できるだけ早期に、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故(以下「平成23年原子力事故」という。)の原因等の検証、平成23年原子力事故に係る原子力損害の賠償の実施の状況、経済金融情勢等を踏まえ、原子力損害の賠償に係る制度における国の責任の在り方、原子力発電所の事故が生じた場合におけるその収束等に係る国の関与及び責任の在り方等について、これを明確にする観点から検討を加えるとともに、原子力損害の賠償に係る紛争を迅速かつ適切に解決するための組織の整備について検討を加え、これらの結果に基づき、賠償法の改正等の抜本的な見直しをはじめとする必要な措置を講ずるものとする。
 2 政府は、この法律の施行後早期に、平成23年原子力事故の原因等の検証、平成23年原子力事故に係る原子力損害の賠償の実施の状況、経済金融情勢等を踏まえ、平成23年原子力事故に係る資金援助に要する費用に係る当該資金援助を受ける原子力事業者と政府及び他の原子力事業者との間の負担の在り方、当該資金援助を受ける原子力事業者の株主その他の利害関係者の負担の在り方等を含め、国民負担を最小化する観点から、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする。
 3 政府は、国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図る観点から、電気供給に係る体制の整備を含むエネルギーに関する政策の在り方についての検討を踏まえつつ、原子力政策における国の責任の在り方等について検討を加え、その結果に基づき、原子力に関する法律の抜本的な見直しを含め、必要な措置を講ずるものとする。


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■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その12 立法技術

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その12 立法技術


〔立法時の考え方〕
 原賠法成立以前の昭和34年のジュリストに,立法にも携わった加藤一郎教授の以下のような論文がある。

・加藤一郎「原子力災害補償立法上の問題点」(ジュリスト190号15頁)
「(2)免責事由
無過失責任を採用した場合には、免責事由をどの範囲まで認めるかが問題になり、それによって、無過失責任の幅が左右されることになる。
 一般理論からすれば、不可抗力が一般的な免責事由になる。不可抗力としては、戦闘行為(たとえば爆撃)地震、風水害などが考えられるが、その内容は必ずしも明確でない。地震の例をとれば、第一に、一般に起りうる程度の地震で原子炉が破壊されたとすれば、それは不可抗力ではなく、はじめからの設計や管理に瑕疵があったことになり、現行法の下でも責任が生じうるであろう。その場合に、どの程度の地震が一般に起りうるものと考えてよいかという基準の問題が起るが、原子炉では、ひとたび事故が起れば大災害の生ずるおそれがあるから、少なくともわが国でわれわれの経験した最大の地震にも堪えうるようになっていなければいけないし、さらに、それに相当の余裕を見て科学的に予想しうる最大の地震にも堪えうるようにしておくべきであろう。このように同じく不可抗力といっても、原子炉のように危険性が大きくなれば、その範囲を狭めて考えていくのが合理的だと思われる。第二に、それでも、われわれの予想をこえるような大地震が起きれば、それはいちおう不可抗力といわざるをえない。それも、そもそもそういう危険のある施設を作ったために被害が起ったのだから、設置者が責任を負うべきだという絶対的な無過失責任も立法論として考えられるが、因果関係の点からいえば、その場合には、施設の設置と損害の発生との間の因果関係が不可抗力によって中断されているとも見られるから、少なくとも一般理論からすれば責任を認めることは困難であろう
 そこで、免責事由についての立法のしかたとしては、次の四つが考えられる。
第一は、はっきり一切の免責を認めないという規定をおくこと(免責否定)で、そこまで重い責任を課することは問題だが、その責任を保険や国家補償でカバーすれば実質的には重くもなくなるので、それらとの関連でそういう方法をとることも考えられる(6)。ただ、そういう規定をおいても、特別の場合には免責を認めるという解釈が出ている可能性がないわけではない。
第二は、何も規定をおかず解釈にまかせること(免責放置)だが、この場合には、第三の方法として「不可抗力」を免責とする規定をおいた場合(不可抗力免責)と、解釈上は似た結論になり、ただ明文の規定があるときよりも不可抗力が狭く解される可能性があることになろう。第四には、「戦争、地震・・・」というように不可抗力を列挙すること(免責事由の列挙)だが、そうしても、地震の程度の問題が残り、「不可抗力としての地震」ということにならざるをえないし、最後に「その他の不可抗力」とう条項が入るとすれば列挙の意味は少なくなってくる。こうしてみると、免責事由の規定のしかたによってそれほど大きな違いは生じないようだが、考え方としては、それをできるだけ狭く限定すべきであろう。そして、実際には、免責を認めた場合に国家補償のような形で被害者保護をはかるかどうかの方が、それよりも大きな問題にとなる。
   (6)西ドイツの法案は、はじめ不可抗力を免責事由としていたが、のちにその規定を削っている。その場合にも理論的に免責が認められるという解釈も出てくるかもしれないが、法案の説明では、施設からの損害であれば因果関係があり責任が生じると考えているようである。それ以外の国では、スイスが戦闘行為、天災、被害者の過失、イギリスが戦闘行為、被害者の過失、アメリカが戦闘行為(あとは州法による)を免責事由としている。被害者の過失はドイツも認めているが、これは過失相殺の問題であって不可抗力とは性質を異にしている。」



この加藤教授の論述を参考にして考えると,

原賠法での不可抗力免責について,立法のあり方として

A 不可抗力免責は一切認めない。その旨を明文化する(免責否定)。
B 免責規定を設けず,解釈に委ねる(免責放置)。
C 「不可抗力」による免責を認めるとする(不可抗力免責)
D 「戦争、地震・・・」というように不可抗力を列挙(免責事由の列挙)制限列挙?
E 「戦争、地震・・・」というように不可抗力を列挙し,最後に「その他の不可抗力」と規定する。 例示列挙?

 しかし,A免責否定で,戦争の場合など強い不可抗力に起因する場合にも責任を負わせるというのは原子力事業者に酷すぎるし,免責否定の明文を置いても,やはり特別の場合は免責するという解釈が出てくる余地があって不都合。
 B免責放置で,解釈で決めるとすると,通常の不可抗力ではなく,特に強い不可抗力に限定しようとする趣旨が貫けない。
 CやEでの「不可抗力」という文言では,やはり解釈の幅がありすぎて,通常の不可抗力ではなく,特に強い不可抗力に限定しようとする趣旨が貫けない。
 かといって全免責事由の制限列挙は技術的に難しい。



・要するに,いかなる場合でも免責しないという立法主義は取らない。
・かといって,通常の不可抗力免責は,原発の危険性,被害の甚大性を考えると,あり得ない。
・単に解釈に委ねたのでは,その辺りの趣旨が曖昧になるので,はっきりさせたい。
・かといって不可抗力性の特に強い事由を,全部列挙することは難しい。




 そこで文言としては,当時のOEEC(OECD)のパリ条約?の文言「a grave natural disaster of an exceptional character」を参考とし、原子力災害補償専門部会の答申(昭和34年12月)では,

----------------------------
1.原子力損害賠償責任
(1)原子力事故による原子力損害については原子力事業者が無過失責任を負うものとし、きわめて特別の場合にのみ免責されるものとする。ただし、この特別の場合は通常「不可抗力」と呼ばれるもののすべてに及ぶのではなく、そのうちでもいわば不可抗力性の特に強いものに限るべきであるから、たとえば「異常かつ巨大な自然的または社会的災害」というなどこの内容を適確に表現する努力のなされることが望ましい
----------------------------

とされた。

 だいたいこういう流れで,この「異常に巨大な天災地変」という文言が決まったのではなかろうか。


 要するに,原賠法3条1項では,原子力事業者に絶対的な無過失責任を負わせることはしない。そういう意味では,3条1項但書は,原子力事業者の責任の軽減を図ったものともいえるが,そもそも絶対的な無過失責任は法論理的にも難しいので,当たり前のことを規定しただけともいえる。むしろ,これは,解釈で軽々に原子力事業者が免責されるのを特に防ぐという意味で,特に規定を設けて,土地工作物責任や営造物責任の場合の不可抗力免責(これもなかなか認められにくいものではあるが)よりも,もっと強い不可抗力が作用した場合に限定するという趣旨で,特に「異常に巨大な天災地変」と規定されたものということだろう。


 このように考えれば、原賠法施行の翌年昭和37年9月10日に発行された,科学技術庁原子力局監修「原子力損害賠償制度」(初版)44頁以下の、3条1項但書の趣旨に関する叙述も理解できる。

--------------------------------
(7)このただし書は、本文に規定する責任の範囲をとくに狭める趣旨のものではなく,当然のことを述べた注意的規定であるとともに,更には免責の範囲の拡大を防ごうとするものである。原子力事業者が責任を負うべき原子力損害は,その原子炉の運転等と因果関係があるものに限られることは当然である((3)参照)。従って,原子力損害が不可抗力によって生じたものであるときは,因果関係が中断して原子力事業者が免責されることは明らかである。しかしながら,原子力事業者が軽々に不抗力によるものと認定されることがあっては,この法律の意図する被害者の保護を充分におし進めることは不可能である。そこで,原子力事業者の無過失責任は,ここに掲げるような不可抗性のとくに強い特別の事由がある場合に限り,因果関係の中断により免除されるものとするのが,このただし書の趣旨である。
--------------------------------


 上の初版の「原子力損害賠償制度」の該当箇所を誰が執筆を担当したのかは不明であるが,その理解は,原賠法成立直前の下の加藤教授の国会答弁とも一致する。



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- 参 - 商工委員会 - 27号
昭和36年05月30日
○参考人(加藤一郎君) 加藤でございます。
第二の問題といたしまして、その場合の免責事由をどこまで認めるかということがございます。この法案では、三条一項ただし書きにおきまして、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」というものを免責事由としてあげております。この点は、ともかく原子炉のように非常に大きな損害が起こる危険のある場合には、今までのところから予想し得るようなものは全部予想して、原子炉の設定その他の措置をしなければならない。従って、普通の、いわゆる不可抗力といわれるものについて、広く免責を認める必要はないわけであります。むしろ今まで予想されたものについては万全の措置を講じて、そこから生じた損害は全部賠償させるという態勢が必要であります。そこで、たとえばここでいう「巨大な天災地変」ということの解釈といたしましても、よくわが国では地震が問題になりますが、今まで出てきたわが国最大の地震にはもちろん耐え得るものでなければならない。さらにそれから、今後も、今までの最大限度を越えるような地震が起こることもあり得るわけですから、そこにさらに余裕を見まして、簡単に言いますと、関東大震災の二倍あるいは三倍程度のものには耐え得るような、そういう原子炉を作らなければならない。逆に言いますと、そこまでは免責事由にならないのでありまして、もう人間の想像を越えるような非常に大きな天災地変が起こった場合にだけ、初めて免責を認めるということになると思われます。そういう意味で、これが「異常に巨大な」という形容詞を使っているのは適当な限定方法ではないだろうかと思われます。これは、結局、保険ではカバーできないことになりますので、あとで出ます政府が十七条によって災害救助を行なうことになるわけであります。
---------------------------------


 結局,3条1項但書は、原発の特殊な危険性から、安易な免責はさせまいという意図を明示する趣旨を有するものであったものと思われ、知りうる過去の最大のものの2、3倍ではなく、過去にみられた程度の揺れの地震、波高の津波などの自然災害に、それに余裕をもって耐えるどころか、簡単に爆発にまで至っているような場合に、免責を認めようとするのは、やはり筋が悪いように思える。
「人間の想像を越えるような非常に大きな天災地変」でなければ、免責されないとするのでは、実際には免責の余地がほとんどなく、3条1項但書が規定された意味が無くなり、そのような解釈は法解釈として間違っているという主張もありうるが、そもそも、この但書は、特に、そのような場合に限って免責を定めたものであって、その他の免責を安易に認めさせないことにこそ意味がある規定であって、今回の事件で、裁判等で免責が否定されたならば、まさしく、50年前に、この但書が、わざわざ規定された意味が発揮された場面であったとさえ言えるかもしれない。とはいえ、世にはさまざな感覚をもった裁判官がいるので、裁判で争ってみなければ、わからないところがあり、また、このあたりは曖昧にしたまま政治的決着がなされ、終わってしまうかもしれない。



〔斟酌規定〕
 なお、無過失責任で、自然災害での不可抗力免責を認めず、そのかわり賠償額の認定において、裁判所が、それを斟酌できるとする立法方法もある。

----------------------------
・大気汚染防止法
(賠償についてのしんしやく)
第二十五条の三  第二十五条第一項に規定する損害の発生に関して、天災その他の不可抗力が競合したときは、裁判所は、損害賠償の責任及び額を定めるについて、これをしんしやくすることができる。

・水質汚濁防止法
(賠償についてのしんしやく)
第二十条の二  第十九条第一項に規定する損害の発生に関して、天災その他の不可抗力が競合したときは、裁判所は、損害賠償の責任及び額を定めるについて、これをしんしやくすることができる。

・水洗炭業に関する法律
(賠償についてのしんしやく)
第十九条 第十六条第一項に規定する損害の発生に関して被害者の責に帰すべき事由があつたときは、裁判所は、損害賠償の責任及び範囲を定めるのについて、これをしんしやくすることができる。天災その他の不可抗力が競合したときも、同様とする。

・鉱業法
(賠償についてのしんしやく)
第百十三条 損害の発生に関して被害者の責に帰すべき事由があつたときは、裁判所は、損害賠償の責任及び範囲を定めるのについて、これをしんしやくすることができる。天災その他の不可抗力が競合したときも、同様とする。
--------------------------

 鉱業法や水洗炭業に関する法律は、原賠法よりも古い法律で、その斟酌規定は当初からあり、原賠法制定時においても、このような斟酌規定を置くことは、可能性としてはあり得たはずだが、原賠法では、このような行き方は採られていない。他国の制度の比較もあったろうが、原発事故が、上の各法津の予想する災害とは比べものにならないほどの甚大なものであること考えれば、当然だったのかもしれない。



〔類似の規定〕
 原賠法3条1項但書に似た免責規定として、以下のようなものがある。ただし、「異常な天災地変」とあるだけで、「異常に巨大な」との規定があるのは、やはり原賠法だけであり、これが我が国の全法大系の中で、最も狭い範囲での不可抗力免責を定めたものであり、1項本文は、あらゆる無過失責任のうち、最も厳格なものと言えよう。

------------------------------
・船舶油濁損害賠償保障法
(タンカー油濁損害賠償責任)
第三条
 タンカー油濁損害が生じたときは、当該タンカー油濁損害に係る油が積載されていたタンカーのタンカー所有者は、その損害を賠償する責めに任ずる。ただし、当該タンカー油濁損害が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 戦争、内乱又は暴動により生じたこと。
二 異常な天災地変により生じたこと。
三 専ら当該タンカー所有者及びその使用する者以外の者の悪意により生じたこと。
四 専ら国又は公共団体の航路標識又は交通整理のための信号施設の管理の瑕疵により生じたこと。
<略>

(一般船舶油濁損害賠償責任)
第三十九条の二
 一般船舶油濁損害が生じたときは、当該一般船舶油濁損害に係る燃料油が積載されていた一般船舶の一般船舶所有者等は、連帯してその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、当該一般船舶油濁損害が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 戦争、内乱又は暴動により生じたこと。
二 異常な天災地変により生じたこと。
三 専ら当該一般船舶所有者等及びその使用する者以外の者の悪意により生じたこと。
四 専ら国又は公共団体の航路標識又は交通整理のための信号施設の管理の瑕疵により生じたこと。
2 第三条第二項及び第三項並びに第四条の規定は、一般船舶油濁損害の賠償について準用する。この場合において、第三条第二項中「タンカーに」とあるのは「一般船舶に」と、「油に」とあるのは「燃料油に」と、同項及び同条第三項中「タンカー所有者」とあるのは「一般船舶所有者等」と読み替えるものとする。

・海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
(海上保安庁長官の措置に要した費用の負担)
第四十一条
 海上保安庁長官は、第三十九条第一項から第三項まで及び第五項並びに第四十条の規定により措置を講ずべき者がその措置を講ぜず、又はこれらの者が講ずる措置のみによつては海洋の汚染を防止することが困難であると認める場合において、排出された油、有害液体物質、廃棄物その他の物の除去、排出のおそれがある油若しくは有害液体物質の抜取り又は沈没し、若しくは乗り揚げた船舶の撤去その他の海洋の汚染を防止するため必要な措置を講じたときは、当該措置に要した費用で国土交通省令で定める範囲のものについて、国土交通省令で定めるところにより、当該排出された油、有害液体物質、廃棄物その他の物若しくは排出のおそれがある油若しくは有害液体物質が積載されていた船舶の船舶所有者、これらの物が管理されていた海洋施設等の設置者又は沈没し、若しくは乗り揚げた船舶の船舶所有者に負担させることができる。ただし、異常な天災地変その他の国土交通省令で定める事由により、当該油、有害液体物質、廃棄物その他の物が排出されたとき、当該油若しくは有害液体物質の排出のおそれが生じたとき又は船舶が沈没し、若しくは乗り揚げたときは、この限りでない。
<略>
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■2条「原子力損害」の意味・範囲 その28 国の被った反射損害

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その28 国の被った反射損害

第2次補正予算
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2011/sy230715/sy230715c.pdf

------------------------------
(単位百万円)
歳出の補正
原子力損害賠償法等関係経費  275,404
原子力損害賠償法関係経費   247,383
原子力損害賠償支援機構法(仮称)関係経費   28,021
被災者支援関係経費   377,386
二重債務問題対策関係経費   77,386
被災者生活再建支援金補助金   300,000
東日本大震災復興対策本部運営経費   518
東日本大震災復旧・復興予備費   800,000
地方交付税交付金   545,469
合計1,998,777

歳入の補正
前年度剰余金受入  1,998,777
合計1,998,777

------------------------------
(A) 歳出
1 原子力損害賠償法等関係経費
 補正第2 号追加275,404(百万円)

( 1 ) 原子力損害賠償法関係経費
 補正第2 号追加247,383(百万円)
 ① 原子力損害賠償補償金
 補正第2 号追加120,000(百万円)
 上記の追加額は、「原子力損害の賠償に関する法律」(昭36 法147)第10 条の規定による政府補償契約に基づく原子力事業者に対する補償金を支払うために必要な経費である。
 ② 健康管理・調査事業費 
 補正第2 号追加78,182(百万円)
 上記の追加額は、原子力災害から福島県内の子どもや住民の健康を守るため、同県が設置した基金に交付金を交付することにより、全県民を対象とした放射線量の推定調査等を行うために必要な経費である。
 ③ 特別緊急除染事業費
 補正第2 号追加17,982(百万円)
 上記の追加額は、福島県が設置した基金に補助することにより、同県の学校・公園等の公共施設や通学路等の放射線量低減事業等を行うために必要な経費である。
 ④ 環境放射線モニタリング強化事業費
 補正第2 号追加19,201(百万円)
 上記の追加額は、福島県内の学校等に設置するリアルタイム放射線監視システムの構築、大気中の放射線量を計測する全国のモニタリングポストの増設、東京電力株式会社福島原子力発電所周辺を含む広域環境放射線モニタリング及び農産物・水産物・河川・地下水・飲料水等の各省協働によるモニタリング強化等を行うために必要な経費である。
 ⑤ 対外発信強化事業費
 補正第2 号追加5,281(百万円)
 上記の追加額は、原子力災害に伴い低下した日本ブランドの信頼性を回復するため行う海外に対する的確かつ迅速な情報発信等に必要な経費である。
 ⑥ 校庭等の放射線低減事業費
 補正第2 号追加4,961(百万円)
 上記の追加額は、毎時1 マイクロシーベルト以上の放射線量を観測した福島県内外の学校や保育所などの校庭・園庭について、地方公共団体等が行う表土除去処理事業に要する費用の一部補助を追加するのに必要な経費である。
 ⑦ 原子力損害賠償和解仲介業務経費
 補正第2 号追加1,030(百万円)
 上記の追加額は、原子力損害賠償に係る紛争が見込まれる中、迅速かつ適正な紛争解決を図るため、法律専門家等を活用し、原子力損害賠償紛争審査会における「和解の仲介」業務を円滑に処理するために必要な経費である。
 ⑧ その他
 補正第2 号追加745(百万円)
 上記の追加額の内訳は、次のとおりである。
  (単位百万円)
  原子力損害賠償補償金審査・調査業務経費299
  東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会経費250
  除染ガイドライン作成等事業費196
  計745

( 2 ) 原子力損害賠償支援機構法(仮称)関係経費
 補正第2 号追加28,021(百万円)
 ① 交付国債の償還財源に係る利子負担
 補正第2 号追加20,000(百万円)
 上記の追加額は、「原子力損害賠償支援機構法」(仮称)に基づき、原子力事業者が原子力損害賠償を行うための交付国債の償還金の財源に充てるための借入金の利子等の支払いに必要な経費である。
 ② 原子力損害賠償支援機構(仮称)に対する出資
 補正第2 号追加7,000(百万円)
 上記の追加額は、「原子力損害賠償支援構法」(仮称)に基づき、原子力損害賠償支援機構(仮称)の設立に要する資金に充てるための同機構に対する出資を行うために必要な経費である。
 ③ 東京電力に関する経営・財務調査委員会経費
 補正第2 号追加1,021(百万円)
 上記の追加額は、東日本大震災により発生した原子力損害の賠償に係る厳正な資産評価、徹底した経費の見直し等のための「東京電力に関する経営・財務調査委員会」の運営に必要な経費である。


2 被災者支援関係経費
 補正第2 号追加377,386(百万円)

(1) 二重債務問題対策関係経費
 補正第2 号追加77,386(百万円)
 ① 旧債務
 補正第2 号追加25,518(百万円)
 上記の追加額は、東日本大震災による被災者が復興に向けて再スタートを切る際の二重債務問題(旧債務)への対応として、中小企業の再生に向けた経営相談から再生計画策定までの取り組みを支援する中小企業再生支援協議会事業の強化及び中小企業の旧債務に係る利子負担の軽減等を行うために必要な経費であって、その内訳は次のとおりである。
 (単位百万円)  
  中小企業再生支援利子補給補助金18,400
  独立行政法人福祉医療機構出資金4,000
  中小企業再生支援協議会事業費3,023
  被災中小企業再生支援出資事業費95
  計25,518
 ② 新債務
 補正第2 号追加51,868(百万円)
 上記の追加額は、東日本大震災による被災者が復興に向けて再スタートを切る際の二重債務問題(新債務)への対応として、被災した中小企業が新たに事業を再開するための貸工 場や貸店舗等の事業基盤の整備の支援及び被災した漁業協同組合等が所有する水産業共同利用施設の早期復旧に必要な機器等の整備の支援等を行うために必要な経費であって、その内訳は次のとおりである。
  (単位百万円)
  被災地域産業地区再整備事業費21,493
  水産業共同利用施設復旧支援事業費19,316
  中小企業組合等共同施設等災害復旧費9,958
  株式会社日本政策金融公庫出資金(財務省分) 600
  株式会社日本政策金融公庫出資金(経済産業省分) 400
  木質系震災廃棄物等活用可能性調査費100
  計51,868

(2) 被災者生活再建支援金補助金
 補正第2 号追加300,000(百万円)
 上記の追加額は、東日本大震災により住宅が全壊した世帯等に対し支給される被災者生活再建支援金に要する費用の一部補助を追加するのに必要な経費である。


3 東日本大震災復興対策本部運営経費
 補正第2 号追加518(百万円)
 上記の追加額は、「東日本大震災復興基本法」(平23 法76)第11 条の規定により、東日本大震災からの復興の円滑かつ迅速な推進と活力ある日本の再生を図るために設置された東日本大震災復興対策本部の運営に必要な経費である。


4 東日本大震災復旧・復興予備費
 補正第2 号追加800,000(百万円)
 上記の追加額は、東日本大震災に係る復旧及び復興に関連する経費の予見し難い予算の不足に充てるための予備費である。


5 地方交付税交付金
 補正第2 号追加545,469(百万円)
 上記の追加額は、22 年度の地方交付税に相当する金額のうち未繰入額を、交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れるために必要な経費である。




歳入〈略〉


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〔国の被った反射損害(肩代わり損害)と思われるもの〕
※被害者が損害回復、損害拡大防止のために自ら行った場合には、加害者にその費用を請求できると思われるものを、他の第三者(国)が、その費用で行った場合。
・健康管理・調査事業費 補正第2 号追加78,182(百万円)←健康被害拡大防止費
・環境放射線モニタリング強化事業費 補正第2 号追加19,201(百万円)←健康被害拡大防止費
・特別緊急除染事業費 補正第2 号追加17,982(百万円)←除染費用
・対外発信強化事業費 補正第2 号追加5,281(百万円)←風評損害拡大防止費
・校庭等の放射線低減事業費 補正第2 号追加4,961(百万円)←除染費用


---------------------------------
●原子力災害対策特別措置法
http://www.bousai.go.jp/jishin/law/002-1.html
(原子力事業者の責務)
第三条  原子力事業者は、この法律又は関係法律の規定に基づき、原子力災害の発生の防止に関し万全の措置を講ずるとともに、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止及び原子力災害の復旧に関し、誠意をもって必要な措置を講ずる責務を有する。

(国の責務)
第四条  国は、この法律又は関係法律の規定に基づき、原子力災害対策本部の設置、地方公共団体への必要な指示その他緊急事態応急対策の実施のために必要な措置並びに原子力災害予防対策及び原子力災害事後対策の実施のために必要な措置を講ずること等により、原子力災害についての災害対策基本法第三条第一項 の責務を遂行しなければならない。
 2  指定行政機関の長(当該指定行政機関が委員会その他の合議制の機関である場合にあっては、当該指定行政機関。第十七条第六項第三号及び第二十条第三項を除き、以下同じ。)及び指定地方行政機関の長は、この法律の規定による地方公共団体の原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策の実施が円滑に行われるように、その所掌事務について、当該地方公共団体に対し、勧告し、助言し、その他適切な措置をとらなければならない。
 3  主務大臣は、この法律の規定による権限を適切に行使するほか、この法律の規定による原子力事業者の原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策の実施が円滑に行われるように、当該原子力事業者に対し、指導し、助言し、その他適切な措置をとらなければならない。

(地方公共団体の責務)
第五条  地方公共団体は、この法律又は関係法律の規定に基づき、原子力災害予防対策、緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策の実施のために必要な措置を講ずること等により、原子力災害についての災害対策基本法第四条第一項 及び第五条第一項 の責務を遂行しなければならない。

(放射線測定設備その他の必要な資機材の整備等)
第十一条  原子力事業者は、主務省令で定める基準に従って、その原子力事業所内に前条第一項前段の規定による通報を行うために必要な放射線測定設備を設置し、及び維持しなければならない。
 2  原子力事業者は、その原子力防災組織に、当該原子力防災組織がその業務を行うために必要な放射線障害防護用器具、非常用通信機器その他の資材又は機材であって主務省令で定めるもの(以下「原子力防災資機材」という。)を備え付け、随時、これを保守点検しなければならない。
 3  原子力事業者は、第一項の規定により放射線測定設備を設置し、又は前項の規定により原子力防災資機材を備え付けたときは、主務省令で定めるところにより、これらの現況について、主務大臣、所在都道府県知事、所在市町村長及び関係隣接都道府県知事に届け出なければならない。
 4  第八条第四項後段の規定は、前項の届出について準用する。
 5  原子力事業者は、第一項の規定により放射線測定設備を設置したときは、主務省令で定めるところにより、その性能について主務大臣が行う検査を受けなければならない。
 6  主務大臣は、原子力事業者が第一項又は第二項の規定に違反していると認めるときは、当該原子力事業者に対し、放射線測定設備の設置、維持、若しくは改善又は原子力防災資機材の備え付け若しくは保守点検のために必要な措置を命ずることができる。
 7  原子力事業者は、主務省令で定めるところにより、第一項の放射線測定設備により検出された放射線量の数値を記録し、及び公表しなければならない。

(緊急事態応急対策及びその実施責任)
第二十六条  緊急事態応急対策は、次の事項について行うものとする。
 一  原子力緊急事態宣言その他原子力災害に関する情報の伝達及び避難の勧告又は指示に関する事項
 二  放射線量の測定その他原子力災害に関する情報の収集に関する事項
 三  被災者の救難、救助その他保護に関する事項
 四  施設及び設備の整備及び点検並びに応急の復旧に関する事項
 五  犯罪の予防、交通の規制その他当該原子力災害を受けた地域における社会秩序の維持に関する事項
 六  緊急輸送の確保に関する事項
 七  食糧、医薬品その他の物資の確保、居住者等の被ばく放射線量の測定、放射性物質による汚染の除去その他の応急措置の実施に関する事項
 八  前各号に掲げるもののほか、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止を図るための措置に関する事項
 2  原子力緊急事態宣言があった時から原子力緊急事態解除宣言があるまでの間においては、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関、原子力事業者その他法令の規定により緊急事態応急対策の実施の責任を有する者は、法令、防災計画又は原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、緊急事態応急対策を実施しなければならない。
 3  原子力事業者は、法令、防災計画又は原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長その他の執行機関の実施する緊急事態応急対策が的確かつ円滑に行われるようにするため、原子力防災要員の派遣、原子力防災資機材の貸与その他必要な措置を講じなければならない。

(原子力災害事後対策及びその実施責任)
第二十七条  原子力災害事後対策は、次の事項について行うものとする。
 一  緊急事態応急対策実施区域その他所要の区域(第三号において「緊急事態応急対策実施区域等」という。)における放射性物質の濃度若しくは密度又は放射線量に関する調査
 二  居住者等に対する健康診断及び心身の健康に関する相談の実施その他医療に関する措置
 三  放射性物質による汚染の有無又はその状況が明らかになっていないことに起因する商品の販売等の不振を防止するための、緊急事態応急対策実施区域等における放射性物質の発散の状況に関する広報
 四  前三号に掲げるもののほか、原子力災害(原子力災害が生ずる蓋然性を含む。)の拡大の防止又は原子力災害の復旧を図るための措置に関する事項
 2  指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長、地方公共団体の長その他の執行機関、指定公共機関及び指定地方公共機関、原子力事業者その他法令の規定により原子力災害事後対策に責任を有する者は、法令、防災計画又は原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、原子力災害事後対策を実施しなければならない。
 3  原子力事業者は、法令、防災計画又は原子力事業者防災業務計画の定めるところにより、指定行政機関の長及び指定地方行政機関の長並びに地方公共団体の長その他の執行機関の実施する原子力災害事後対策が的確かつ円滑に行われるようにするため、原子力防災要員の派遣、原子力防災資機材の貸与その他必要な措置を講じなければならない。


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2011-07-24 : ・二次的損害,間接被害者等 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その11 因果関係の中断論

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その11 因果関係の中断論


昭和37年9月10日初版発行 科学技術庁原子力局監修「原子力損害賠償制度」44頁以下のある原賠法3条の解説
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(3)原子力事業者の無過失賠償責任も,その原子炉の運転等と因果関係のあるものに限られることは,いうまでもない。「により」は,このことを示すものである。
 因果関係の範囲については,相当因果関係の原則の適用がある。公権力による強制立退き(避難)費用,損害拡大防止費用,汚染を受けた周辺土地の価格の低落等がこの点で問題になるが,要はその場合の具体的な事情に基づき判断することとなろう。しかしながら,汚染がないにもかかわらず地価が低落したような場合は,一般的にいって因果関係がないものと考えるべきであろう。
 因果関係の中断による免責については,本条ただし書が規定している

〈略〉

(7)このただし書は、本文に規定する責任の範囲をとくに狭める趣旨のものではなく,当然のことを述べた注意的規定であるとともに,更には免責の範囲の拡大を防ごうとするものである。原子力事業者が責任を負うべき原子力損害は,その原子炉の運転等と因果関係があるものに限られることは当然である((3)参照)。従って,原子力損害が不可抗力によって生じたものであるときは,因果関係が中断して原子力事業者が免責されることは明らかである。しかしながら,原子力事業者が軽々に不抗力によるものと認定されることがあっては,この法律の意図する被害者の保護を充分におし進めることは不可能である。そこで,原子力事業者の無過失責任は,ここに掲げるような不可抗性のとくに強い特別の事由がある場合に限り,因果関係の中断により免除されるものとするのが,このただし書の趣旨である
(8)日本の歴史上余り例の見られない大地震、大噴火、大風水災等をいう。例えば、関東大震災は巨大ではあっても異常に巨大なものとはいえず、これを相当程度上回るものであることを要する。
(9)社会的動乱も、質的、量的に異常に巨大な天災地変に相当する社会的事件であることを要する。戦争、海外からの武力攻撃、内乱等がこれに該当するが、局地的な暴動、蜂起等はこれに含まれないと考えられる。
(10)これらの事由による原子力損害については、原子力事業者は免責となり、また、この法律により政府が援助を行うのも、原子力事業者が賠償責任を負った場合であるから、ただし書の場合には、原子力損害について賠償を行うものが存在しないことになる。しかしながら、このような場合には、原子力損害と言うよりはむしろ社会的、国家的災害であり、政府が被害者の救助及び被害の拡大の防止につとめるべきことは当然で、第一七条は、このことを念のために規定したものである。
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 このように,昭和36年に原賠法が成立した翌年に発行された科技庁篇の「原子力損害賠償制度」という書籍では,同法3条1項但書は,「因果関係の中断」による免責を定めたものと理解されていた。〔なお,3条1項但書のような事情について,これを因果関係の中断の問題と言及するものとして,立法前昭和34年の加藤一郎教授の「原子力災害補償立法上の問題点」(ジュリスト190号14頁)がある。〕

 
 ただし,原発事故に,自然災害等の不可抗力が介在した場合に,「因果関係の中断」とはどういう理屈なのか詳細が不明である。

 因果関係については,以下のとおり,事実的因果関係と相当因果関係が必要

1 事実的因果関係(条件関係)
 ア説 不可欠条件公式(「AなければBなし」)で判断
 イ説 合法則条件公式(「AからBが生じたか」)で判断
2 相当因果関係

 果たして,自然力のような不可抗力を,「因果関係の中断」との関係で,理屈上,どの点で扱うのだろうか。

 単純に,不可欠条件公式で扱うと,およそいかなる自然力が介在しようが,そもそも放射性物質の漏出・飛散などというものは,そこに原発が存在しなければ,ありえないものであることは明白なので,条件関係は常に満たされるともいえる。したがって,中断というものは考えにくい。
 合法則条件公式でも,他の第三者の介在ではなく,自然力が介在する原子力災害などでは,介在事情が自然法則に従うものであることは明白なので,条件関係が否定されるとは考えにくく,これも因果関係の中断の話にはなりにくい?。
 かといって,相当因果関係の問題とするとなると,どのみち「相当性」という規範的要素の判断になるので,「因果関係の中断」論とはせずに,端的に「不可抗力免責」の特殊な場合〔不可抗力性の特に強い事由〕の問題として,その予見可能性,結果回避可能性,危険性,結果の甚大さ,被侵害利益の重大性等の諸般の事情を考慮して,法の趣旨,損害の公平な分担の観点から決するということで問題がないはずである。


 結局,この書籍の「因果関係の中断」論の部分は,どういう議論があったのか知らないが,平成3年の改訂版では,(7)が,以下のように書き換えられている。



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平成3年4月30日改訂版 科学技術庁原子力局監修「原子力損害賠償制度」55頁
(7)このただし書は、原子力事業者の免責事由を定めるものである。無過失責任を課し、さらに責任を集中しているので、原子炉の運転等と相当因果関係を有する原子力損害は、全て原子力事業者が賠償しなければならないことになり、危険責任の考え方に基づく責任としては酷に過ぎる場合もあり得る。例えば、戦争のような状況の中で原子炉が破壊され、核分裂生成物が大気中に放置されたような場合に、その被害を原子力事業者に賠償させるのは行き過ぎであり、そもそも民事賠償の問題ではないと考えられる。しかし、一方では、不可抗力による免責が軽々に認められるようでは、被害者の保護を図るというもう一つの方目的が損なわれることになる。そこで(8)、(9)で述べるような非常に稀な場合に限って原子力事業者を免責することとしたものである。このような不可抗力性の特に強い事由について原子力事業者の責任を免除することは、多くの国際条約、諸外国の法制においても認められており、また、無過失賠償責任を定めた他の立法においてもみられるものである。
(8)日本の歴史上余り例の見られない大地震、大噴火、大風水災等をいう。例えば、関東大震災は巨大ではあっても異常に巨大なものとはいえず、これを相当程度上回るものであることを要する。
(9)社会的動乱も、質的、量的に異常に巨大な天災地変に相当する社会的事件であることを要する。戦争、海外からの武力攻撃、内乱等がこれに該当するが、局地的な暴動、蜂起等はこれに含まれないと考えられる。
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 立法当時の旧版にある「このただし書は、本文に規定する責任の範囲をとくに狭める趣旨のものではなく,当然のことを述べた注意的規定であるとともに,更には免責の範囲の拡大を防ごうとするものである。」という部分が削られ,全体として,ずいぶんニュアンスが変わってしまっているが,要するに,改訂版では,特に不可抗力性の特に強い事由についての,特殊な「不可抗力免責」の問題として扱われ,「因果関係」の有無・中断の問題として論じるというニュアンスは後退している。

 因果関係の中断というのは,原発事故との関係では,なじみにくい理屈かもしれない。それは先ほど述べたのように,放射性物質の漏出・飛散による原子力損害は,明らかにそこに原発がなければ発生しないものであり,他の原因によっても生じうる損害とは異なり,いかに異常に巨大な自然力であっても,事実的因果関係が否定されるとは考えにくいからである。ただ,このような「因果関係の中断」論が立法当初,理屈として考えられていたということは,3条但書の事情が,いかに異例なものと考えられていたかを物語っているようにも思える。



※ここでいう「因果関係」は,原子炉の運転等と原子力損害との間の関係(3条1項本文の「により」)を指すものであって,異常に巨大な天災地変と原子力損害との間の関係(3条1項但書の「によって」)ではない。


※なお,原子力事業者の落ち度を一切問題としない完全な無過失責任の場面ではなく,「過失」や「瑕疵」と,自然力との競合を問題とする場面では,同一結果が,「過失」や「瑕疵」が無くても生じたかという問題となりえ,条件関係の否定という点で,因果関係の中断の問題として論じる余地はあるように思える。こちらで,触れた。




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2011-07-23 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・原賠法改正 その1

・原賠法改正 その1


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asahi.com 2011年7月22日2時21分
http://www.asahi.com/politics/update/0721/TKY201107210762.html

電力会社への国の補償増も 原賠法改正で与野党検討
 
 民主、自民、公明3党は21日、原発事故の賠償責任などを定めた「原子力損害賠償法」(原賠法)の改正を目指すことで大筋合意した。電力会社の負担額に上限を設けることや、国が電力会社に払う補償額を引き上げることが柱で、国の責任をより明確にする。

 3党は東京電力福島第一原発事故の賠償の仕組みを定めた「原子力損害賠償支援機構法案」の今国会での成立に向け、衆院復興特別委員会で修正協議を進めている。この協議で、原賠法改正も必要ということを確認した。機構法案の付則や付帯決議で、原賠法を一定期間内に見直すと明記する方向で調整している。

 協議では、原発事故に対する国の責任の明確化がテーマになっている。東電の原発事故では賠償額が数兆円に達する見通しだが、原賠法では対応できず、東電の資金繰りを国などが支える機構の設立を迫られた。


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電気新聞
http://www.shimbun.denki.or.jp/news/main/20110722_01.html

賠償枠組で国の責任明確化へ 政府が追加負担検討

2011/07/22

国会審議中の原子力損害賠償支援機構法案に関連し、政府が「国の責任の明確化」の具体化に向けて追加的な真水支援の検討に入ったことが21日までに明らかになった。自民党など野党は法案審議の中で、政府の賠償枠組み案では国の真水負担が極めて限定的であり、国の責任を一層明確化するよう政府・与党に迫っている。このため、事後の国庫納付(返済)を原子力事業者に課さない形で、賠償額の一部を国が負担する案が浮上している。

同法案65条では、事業者の負担額が膨らんで安定供給や国民生活・経済に支障をきたすと認められる場合、予算で定める範囲内で原子力損害賠償支援機構に国が必要な資金を交付できると規定。関係者によると、国の責任の明確化にあたっては(1)65条の積極適用(2)福島第一原子力発電所の廃炉費用の国による負担(3)賠償への税投入--の3点が想定されている。

ただ、財務省は財政規律の観点から真水負担に慎重。一般会計ではなく、エネルギー対策特別会計を用いた真水支援が有力視される。原子力関連の研究開発費などの予算組み替えによって、最大で年数百億円を賠償に振り向けることも政府は視野に入れている。

自民党や公明党は、国策として原子力を推進してきた経緯を踏まえ、賠償枠組みでは国が一層の責任を負うべきと主張。与野党の法案修正協議では国の責任が焦点となっている。電力業界も国の責任と負担の明確化を要望している。

原賠機構は電力会社などから負担金を集め、東京電力に資金を交付。福島の事故では賠償が巨額となるため、政府から無利子の交付国債も渡される。交付国債の現金化後は事業者が負担金によって国庫納付していく。この現行案では国の真水負担が交付国債の利子分など少額にとどまる。

また、東電が支払う「特別負担金」と他の電力会社も負担する「一般負担金」を区分管理することも自民党は求めている。しかし、明確に区分すると東電が債務超過に陥る見込み。明確な区分を避けつつ、一般負担金の額を当初は低く抑え、事故の検証や賠償総額の確定がある程度終わった段階で、負担のあり方を見直す案も政府内にある。

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asahi.com 2011年7月21日14時10分
http://www.asahi.com/politics/update/0721/TKY201107210336.html

民自公、原賠法改正で大筋合意 電力会社負担に上限

 衆院復興特別委員会の民主、自民、公明の理事が、事故時に電力会社が無限の責任を負う原子力損害賠償法(原賠法)の改正を進めることで大筋合意した。21日午前の協議で、東京電力福島第一原発事故の賠償を国が支えるための「原子力損害賠償支援機構法案」を修正して成立を目指すことを確認、原賠法改正の必要性も認めた。

 原賠法は電力会社に対し、事故が起きた際は過失の程度などを問わずに無限の賠償責任を負わせるとしている。福島の事故では、数兆円に達する見通しの負担を東電が背負いきれず、資金繰りなどを支える機構を設けることになった。

 機構法案の修正協議の過程で、今後の事故に備えるため、損害賠償の前提となる原賠法を改める必要があるとの認識で一致。負担に上限を設けるなどの改正を一定期間で進めることを、機構法の付則や付帯決議で定める方向で調整する。


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日本経済新聞
電力会社の無限責任見直しを 自民が原賠法修正案
国の責任明確に 2011/7/15 20:49
http://www.nikkei.com/news/latest/related-article/g=96958A9C93819481E3E7E2E19E8DE3E7E2E5E0E2E3E38297EAE2E2E2
 自民党は15日、東京電力福島第1原子力発電所事故を受けた合同会議を開き、原発賠償支援法案の修正方針をまとめた。国の責任や負担を明確にするため、電力会社の無限責任を定めた原子力損害賠償法(原賠法)の見直し条項を、支援法案に盛り込むよう求めることなどが柱。

 東電の資金繰りを助けるために設立する「原子力損害賠償支援機構」が、東電の代わりに国が賠償を仮払いする事務を担うことなども規定する。来週中に正式に民主党との修正協議に入る見通しだ。

 支援法案は「相互扶助」の考え方に基づき、東電以外の電力会社にも同機構への負担金を求めるとしている。自民党は同機構は必要とした上で、福島原発事故への賠償支援と、東電以外の各社が参加する将来の事故に備える賠償支援の仕組みを「別勘定」とするように求める。

 東電の再建を巡っては原発事故が収束し、賠償金額の全容がほぼ判明した段階で着手する。政調幹部は「2年後をメドに、東電の法的整理の可能性も排除せずに再建方針を改めて考えなければいけない」と語った。

 原子力事故の損害賠償制度について、原賠法の見直しも求める。自民党は原賠法が認める電力会社の無限責任規定を問題視しており、支援法案の付帯決議などに1年後の見直しを盛り込む。

 同日の合同会議では「東電は法的整理して経営者や株主などの責任を明確化すべきだ」との意見も出た。塩崎恭久元官房長官も「国民負担の最小化を明文化すべきだ」と指摘、賠償額の不足分は国が全額負担するように新たな法律を制定すべきだと主張した。最終的には修正協議について、衆院東日本大震災復興特別委員会の額賀福志郎筆頭理事に一任した。


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■3条1項本文の賠償責任 その12 民間の損害保険との関係

■3条1項本文の賠償責任 その12 民間の損害保険との関係

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保険法
(請求権代位)
第二十五条  保険者は、保険給付を行ったときは、次に掲げる額のうちいずれか少ない額を限度として、保険事故による損害が生じたことにより被保険者が取得する債権(債務の不履行その他の理由により債権について生ずることのある損害をてん補する損害保険契約においては、当該債権を含む。以下この条において「被保険者債権」という。)について当然に被保険者に代位する。
一  当該保険者が行った保険給付の額
二  被保険者債権の額(前号に掲げる額がてん補損害額に不足するときは、被保険者債権の額から当該不足額を控除した残額)
2  前項の場合において、同項第一号に掲げる額がてん補損害額に不足するときは、被保険者は、被保険者債権のうち保険者が同項の規定により代位した部分を除いた部分について、当該代位に係る保険者の債権に先立って弁済を受ける権利を有する。
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 下記の例にあるように、損害保険、傷害保険等の民間の保険のほとんどで、原発事故による汚染、被曝等により被った損害については、保険会社は保険金の支払い義務を免れることになっている。したがって、「原子力損害」については、民間の保険との関係で保険法25条(旧商法662条は、平成22年4月1日より前に締結された保険契約)の保険代位が問題となる場面はほとんどないと思われる。


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●地震保険普通保険約款
http://www.ms-ins.com/pdf/information/product/kasai/20100101_jishin_yakkan_kaitei/yakkan.pdf
第3条(保険金を支払わない場合)
(1)当会社は、地震等の際において、次のいずれかに該当する事由によって生じた損害に対しては、保険金を支払いません。
〈略〉
⑤ 核燃料物質(注4)もしくは核燃料物質(注4)によって汚染された物(注5)の放射性、爆発性その他の有害な特性またはこれらの特性による事故
〈略〉
(注4)使用済燃料を含みます。
(注5)原子核分裂生成物を含みます。


http://www.jiko-online.com/yakkan1.htm
●自動車保険
第9条(保険金を支払わない場合-その1 対人・対物賠償共通)
①当会社は、次の各号のいずれかに該当する事由によって生じた損害に対しては、保険金を支払いません。
(6)核燃料物質(使用済燃料を含みます。以下この号において、同様とします。)もしくは核燃料物質によって汚染された物(原子核分裂生成物を含みます。) の放射性、爆発性その他有害な特性の作用またはこれらの特性に起因する事故
(7)前号に規定した以外の放射線照射または放射能汚染
(8)第3号から前号までの事由に随伴して生じた事故またはこれらにともなう秩序の混乱に基づいて生じた事故


http://www.jiko-online.com/yakkan6.htm
●自動車保険、車両条項
第2条(保険金を支払わない場合-その1)
当会社は、次の各号のいずれかに該当する事由によって生じた損害に対しては、保険金を支払いません。
(3)地震もしくは噴火またはこれらによる津波
(4)核燃料物質(使用済み燃料を含みます。以下この号において、同様とします。)もしくは核燃料物質によって汚染された物(原子核分裂生成物を含みます。)の放射性、爆発性その他有害な特性の作用またはこれらの特性に起因する事故
(5)前号に規定した以外の放射線照射または放射能汚染
(6)第2号から前号までの事由に随伴して生じた事故またはこれらにともなう秩序の混乱に基づいて生じた事故


http://seno.jp/pages/pdf/kokunai.pdf
●がん保険 傷害および疾病による入院・手術保障特約
第3条(保険金を支払わない場合)
(1)当会社は、次のいずれかに該当する身体障害に対しては、保険金を支払いません。⑪ 核燃料物質(注6)もしくは核燃料物質(注6)によって汚染された物(注7)の放射性、爆発性その他の有害な特性またはこれらの特性による事故によって被った身体障害
⑫ ⑨から⑪までの身体障害の原因になった事由に随伴して生じた事故またはこれらに伴う秩序の混乱に基づいて生じた事故によって被った身体障害
⑬ ⑪以外の放射線照射または放射能汚染によって被った身体障害
(注6)使用済燃料を含みます。
(注7)原子核分裂生成物を含みます。


http://pet.axa-direct.co.jp/file/yakkan.pdf
●ペット保険
第3条(保険金を支払わない場合)
(1)当会社は、次のいずれかに規定する場合には、保険金を支払いません。
⑤核燃料物質1注6)もしくは核燃料物質[注6)によって汚染された物6主7)の放射性、爆発性その他の有害な特性またはこれらの特性による事故によって生じた身体障害
⑥③から⑤に規定する身体障害の原因となった事由に随伴して生じた事故また はこれらに伴う秩序の混乱に基づいて生じた事故によって生じた身体障害
⑦⑤以外の放射線照射または放射能汚染によって生じた身体障害
[注6]使用済燃料を含みます。
[注7]原子核分裂生成物を含みます。

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■18条 原子力損害賠償紛争審査会 中間指針の論点の整理(案) 第11回審査会

■18条 原子力損害賠償紛争審査会 中間指針の論点の整理(案) 第11回審査会

平成23年7月19日 第11回審査会資料


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http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/07/19/1308665_1_1.pdf

(審11)資料1

中間指針の論点の整理(案)

本資料は、審査会における議論のために作成したものであり、指針の内容、損害の範囲に何ら予断を与えるものではない。中間指針の作成に向けて、今後の議論に必要だと考えられる内容を以下に示す。

第1 指針の位置づけ
1 第一次指針を始めこれまでに既に決定・公表した内容にその後の検討事項を加え、賠償すべき損害と認められる一定の損害類型を示すもの。
2 中間指針では、当面の被害のうち、類型化が可能で賠償すべき損害について示すが、今後、事故の収束、避難区域等の見直し、新たな被害の判明等の状況の変化に伴い、必要に応じてあらためて指針で示すべき事項について検討を行う。
3 中間指針に示されなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められ得る。中間指針で明示されないものについても、東京電力によって、迅速、公平かつ適正な賠償が行われることを期待する。

第2 各損害項目に共通する考え方
1 本件事故と相当因果関係のある損害、すなわち社会通念上当該事故から当該損害が生じるのが合理的かつ相当であると判断される範囲のものが原子力損害に含まれる。
2 JCO事故を参考としつつ、本件事故特有の事情を十分考慮する。
3 地震・津波による損害は賠償の対象とはならないが、原子力損害との区別が判然としない場合には、合理的な範囲で、特定の損害が原子力損害に該当するか否か及びその損害額の推認をすることが考えられる。
4 膨大な被害者に対する迅速な救済が求められるため、合理的な範囲で証明の程度の緩和、客観的な統計データ等による合理的な算定方法等により、一定額の賠償を認めることが考えられる。
5 請求金額の一部の前払いなど、東京電力の合理的かつ柔軟な対応が求められる。

第3 政府による避難等の指示等に係る損害について
[対象区域]
避難区域(警戒区域)、屋内退避区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域、特定避難勧奨地点及び一部の地方公共団体が住民に一時避難を要請した区域

A.対象区域に係る避難等をした者に係る損害
[損害項目]
1 検査費用(人)
本件事故の発生以降、避難等対象者のうち、対象区域内で屋内退避し、又は同区域内から同区域外に避難した者が、放射性物質への曝露の有無等を確認する目的で必要かつ合理的な範囲で検査を受けた場合には、これらの者が負担した検査費用及びその付随費用(検査のための交通費等)は、賠償すべき損害と認められる 。
2 避難費用
①避難等対象者(対象区域内に生活の本拠としての住居がある者であって、避難指示の解除等以降に避難を開始した者、及び6月20日以降に緊急時避難準備区域から同区域外に避難を開始した者のうち子ども、妊婦、要介護者、入院患者等以外の者を除く。)が必要かつ合理的な範囲で負担した以下の費用が、賠償すべき損害と認められる。
) 対象区域から避難するために負担した「交通費」、「家財道具の移動費用」
) 対象区域外に滞在することを余儀なくされたことにより負担した宿泊費及びこの宿泊に付随して負担した費用(宿泊費等)
) 避難等対象者が、避難等によって生活費が増加した部分があれば、その増加費用
② 避難費用の損害額算定方法は、以下のとおりとする。
) 避難費用のうち「交通費」、「家財道具の移動費用」、「宿泊費等」については、避難等対象者が現実に負担した費用が賠償の対象となり、その実費を損害額とするのが合理的な算定方法と認められる。但し、領収証等による損害額の立証が困難な場合には、平均的な費用を推計することにより損害額を立証することも認められるべきである。
) 他方、避難費用のうち「生活費の増加費用」については、原則として、「避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害の額」に加算し、その加算後の一定額をもって両者の損害額とするのが公平かつ合理的な算定方法と認められる。その具体的な方法については、後記6のとおりである。
③ 避難指示の解除等から「相当期間」経過後に生じた避難費用は賠償の対象とはならない。
3 一時立入費用
避難等対象者のうち、警戒区域内に住居を有する者が、市町村が政府及び県の支援を得て実施する「一時立入り」に参加するために負担した「交通費」、「家財道具の移動費用」、「除染費用等(前泊や後泊が不可欠な場合の宿泊費等も含む。)」は、 必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
4 帰宅費用
避難等対象者が、対象区域の指定の解除等に伴い、対象区域内の住居に戻るために負担した交通費、家財道具の移動費用は、必要かつ合理的な範囲で 賠償すべき損害と認められる。
5 生命・身体的損害
避難等対象者が負担した以下の費用が、賠償すべき損害と認められる。
① 本件事故により避難等を余儀なくされたため、傷害を負い、治療を要する程度に健康状態が悪化し、疾病にかかり、あるいは死亡したことにより生じた逸失利益、治療費、薬代、精神的損害等
② 本件事故により避難等を余儀なくされ、これによる治療を要する程度の健康状態の悪化(精神的障害を含む。)等を防止するため、負担が増加した診断費、治療費、薬代等
6 精神的損害(避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害)
① 本件事故において、避難等対象者が受けた精神的苦痛(ここでは、「生命・身体的損害」を伴わないものに限る。)のうち、少なくとも以下の精神的苦痛は、賠償すべき損害と認められる。
) 対象区域から実際に避難した上引き続き同区域外滞在を長期間余儀なくされた者(又は余儀なくされている者)及び本件事故発生時には対象区域外に居り、同区域内に生活の本拠としての住居があるものの引き続き対象区域外滞在を長期間余儀なくされた者(又は余儀なくされている者)が、自宅以外での生活を長期間余儀なくされ、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛
) 屋内退避区域の指定が解除されるまでの間、同区域における屋内退避を長期間余儀なくされた者が、行動の自由の制限等を余儀なくされ、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛
② 上記①の)及び)に係る「精神的損害」の損害額については、前記2の「避難費用」のうち「生活費の増加費用」と合算した一定の金額をもって両者の損害額と算定するのが合理的な算定方法と認められる。そして、上記①の)又は)に該当する者であれば、その年齢や世帯の人数等にかかわらず、避難等対象者個々人が賠償の対象となる。
③ 上記①の)の具体的な損害額の算定に当たっては、差し当たって、その算定期間を以下の3段階に分け、それぞれの期間について、以下のとおりとする。
) 事故発生から6ヶ月間(第1期)
第1期については、一人月額10万円を目安とする。
但し、この間、避難所・体育館・公民館等(以下「避難所等」という。)における避難生活等を余儀なくされた者については、避難所等において避難生活をした期間は、一人月額12万円を目安とする。
) 第1期終了から6ヶ月間(第2期)
但し、警戒区域等が見直される等の場合には、必要に応じて見直す。
第2期については、一人月額5万円を目安とする。
) 第2期終了から終期までの期間(第3期)
第3期については、今後の本件事故の収束状況等諸般の事情を踏まえ、改めて損害額の算定方法を検討するのが妥当であると考えられる。
④ 上記①の)の損害発生の始期及び終期については、以下のとおりとする。
) 始期については、個々の避難等対象者が避難等をした日にかかわらず、原則として本件事故発生日である平成23年3月11日とする。但し、緊急時避難準備区域内に生活の本拠としての住居がある対象者(子ども、妊婦、要介護者、入院患者等)であって、6月20日以降に避難した者及び特定避難勧奨地点から避難した者については、当該者が実際に避難した日を始期とする。
) 終期については、基本的には対象者が対象区域内の住居に戻ることが可能となった日(避難指示の解除等から「相当期間」経過後)とすることが合理的である。 4
⑤ 上記①の)の損害額については、屋内退避区域の指定が解除されるまでの間、同区域において屋内退避をしていた者(緊急時避難準備区域から平成23年6月19日までに避難を開始した者及び計画的避難区域から避難した者を除く。)につき、一人10万円を目安とする。
7 営業損害
①従来、対象区域内で事業の全部又は一部を営んでいた者(特定避難勧奨地点が設定され避難した事業者を含む。以下同じ。)が、政府による避難等の指示等があったことにより、営業が不能になる等、同事業に支障が生じたため、現実に減収のあった営業、取引等については、その減収分が賠償すべき損害と認められる。
上記減収分は、原則として、本件事故がなければ得られたであろう収益から、本件事故により負担を免れた費用を控除した額(以下「逸失利益」という。)とする。
・「収益」には、商品やサービスの売上高のほか、事業の実施に伴って得られたであろう交付金等(例えば、農業における戸別所得補償交付金、医療事業における診療報酬等、私立学校における私学助成)がある場合は、これらも含まれる。また、「費用」には、商品やサービスの売上原価や販売費・一般管理費が含まれる。
②また、上記のように同事業に支障が生じたために負担した追加的費用(商品、営業資産の廃棄費用等)や、事業への支障を避けるため又は事業を変更したために生じた追加的費用(事業拠点の移転費用、営業資産の移動・保管費用等)も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
③更に、同指示等の解除後も、事業者において、同指示等によって事業に支障が生じたための減収があった場合には、その減収分も合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。また、同指示等の解除後に、事業の全部又は一部の再開のために生じた追加的費用(機械等設備の復旧費用、除染費用等)も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
④終期は、基本的には対象者が従来と同じ又は同等の営業活動を営むことが可能となった日とすることが合理的であるが、本件事故により生じた減収分がある期間を含め、どの時期までを賠償の対象とするかについては、現時点で全てを示すことは困難であるため、下記⑤及び⑥に掲げる部分以外については、改めて検討することとする。ただし、その検討に当たっては、一般的には事業拠点の移転や転業等の可能性があることから、終期には一定の限度があることや、早期に転業する等特別の努力を行った者が存在することに、留意する必要がある。
⑤倒産・廃業した場合は、営業資産の価値が喪失又は減少した部分(減価分)、一定期間の逸失利益及び倒産・廃業に伴う追加的費用を損害とする。営業資産の減価分の算定は、財物に関しては、10.の財物価値の例により、無形資産に関しては、有形資産と独立に取引される慣習があるものについては、その通常の取引価格とする。
⑥既に対象区域内の拠点を閉鎖し、事業拠点を移転又は転業した場合は、営業資産の減価分、事業拠点移転又は転業に至るまでの期間における逸失利益、事業拠点移転又は転業後の一定期間における従来収益との差額分及び②に掲げる移転に伴う追加的費用が賠償の対象となる。対象区域内の拠点を閉鎖せず、一時的に移転又は転業した場合は、移転又は転業に至るまでの期間における逸失利益、事業拠点移転又は転業後の一定期間における従来収益との差額分及び②に掲げる移転に伴う追加的費用等が賠償の対象となる。
8 就労不能等に伴う損害
①対象区域内に住居又は勤務先がある勤労者について、同区域内に係る避難等を余儀なくされたことに伴い、その就労が不能等となった場合には、かかる勤労者について、給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。
②就労不能等に伴う損害の終期については、基本的には対象者が従来と同じ又は同等の就労活動を営むことが可能となった日とすることが合理的であるが、本件事故により生じた減収分がある期間を含め、どの時期までを賠償の対象とするかについて、その具体的な時期等を現時点で見通すことは困難であるため、改めて検討することとする。ただし、その検討に当たっては、一般的には、就労不能等に対しては転職等により対応する可能性があると考えられることから、終期には一定の限度があることや、早期の転職や臨時の就労等特別の努力を行った者が存在することに留意する必要がある。
9 検査費用(物)
対象区域内にあった商品を含む財物が、①当該財物の性質等から、検査を実施して安全を確認することが必要かつ合理的であり、又は②取引先の要求等により検査の実施を余儀なくされたものと認められた場合には、被害者の負担した検査費用は必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
10 財物価値の喪失又は減少等
財物につき、現実に発生した以下のものについては、賠償すべき損害と認められる。なお、ここで言う「財物」は動産のみならず不動産をも含む。
① 政府の指示による避難等を余儀なくされたことに伴い、対象区域内に所有していた財物の管理が不能等となったため、当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及びこれに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用(当該財物の廃棄費用等)について、賠償すべき損害と認められる。
② ①のほか、当該財物が本件事故の発生時に対象区域内にあり、
) 財物の価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に曝露した場合
又は、
) )には該当しないものの、財物の種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合
には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及びこれに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用(当該財物の除染費用等)について賠償すべき損害と認められる。
・上記①及び②について、除染や修理に係る費用は、原則として当該財物の客観的価値の範囲内のものとするが、文化財、農地など代替性のない又は低い財物については、必ずしも交換価値の賠償が妥当な場合のみだとは考えられないため、当該価値を超えたとしても必要かつ合理的な範囲内で賠償すべき損害と認められ得る。
・賠償の基準となる財物の価値は、原則として、本件事故発生持点における財物の時価に相当する額とすべきであるが、時価の算出が困難である場合には、合理的な額の簿価を基準として算出することも認められる。
・また、売買契約、賃貸借契約等の不動産関連の契約に係る損害については、その契約成立の確実性及び契約等の理由の相当性から判断して、合理的な範囲で損害が認められる。
③ 対象区域内に所有又は管理する財物の管理が不能等となり、又は放射性物質に曝露することにより、その価値が喪失又は減少することを予防するため、所有者等が支出した費用は、必要かつ合理的な範囲内において賠償すべき損害と認められる。

B.対象区域内に滞在している者に係る損害
[損害項目]
1 検査費用(人)
本件事故の発生以降、対象区域内居住者のうち、避難等をしなかった者(以下、「対象区域内滞在者」という。)が、放射性物質への曝露の有無等を確認する目的で必要かつ合理的な範囲で検査を受けた場合には、これらの者が負担した検査費用及びその付随費用(検査のための交通費等)は、賠償すべき損害と認められる 。
2 避難費用
3 一時立入費用
4 帰宅費用
5 生命・身体的損害
6 精神的損害
7 営業損害
①対象区域内で避難等指示後も事業の全部又は一部を営んでいる者において、同指示等によって営業、取引等に支障が生じたための減収があった場合には、その減収分も合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。また、同指示後に、事業の全部又は一部を継続するために必要な追加的費用も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
②更に、同指示等の解除後も、事業者において、同指示等によって事業に支障が生じたための減収があった場合には、その減収分も合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。また、同指示等の解除後に、事業の全部又は一部の再開のために必要な追加的費用(機械等設備の復旧費用、除染費用等)も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
③営業損害の終期については、上記Aと同様。
8 就労不能等に伴う損害
①対象区域内に住居がある勤労者について、その就労が不能または著しく困難となった場合等には、かかる勤労者について、給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。
②就労不能等に伴う損害の終期については、改めて検討する。
9 検査費用(物)
対象区域内にあった商品を含む財物が、①当該財物の性質等から、検査を実施して安全を確認することが必要かつ合理的であり、又は②取引先の要求等により検査の実施を余儀なくされたものと認められた場合には、被害者の負担した検査費用は必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
10 財物価値の喪失又は減少等
財物につき、現実に発生した以下のものについては、賠償すべき損害と認められる。なお、ここで言う「財物」は動産のみならず不動産をも含む。
① 当該財物が本件事故の発生時に対象区域内にあり、
) 財物の価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に曝露した場合
又は、
) )には該当しないものの、財物の種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合
には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及びこれに伴う必要かつ合理的な範囲の追加的費用(当該財物の除染費用等)について賠償すべき損害と認められる。
② 対象区域内に所有又は管理する財物が放射性物質に曝露することにより、その価値が喪失又は減少することを予防するため、所有者等が支出した費用は、必要かつ合理的な範囲内において賠償すべき損害と認められる。

第4 政府による航行危険区域設定等に係る損害について
[対象]
航行危険区域等、飛行禁止区域
[損害項目]
1 営業損害
① 航行危険区域等の設定により、)漁業者が、対象区域内での操業又は航行の断念を余儀なくされたため、現実に減収があった場合又は迂回のため費用が増加した場合は、その減収分及び費用の増加分、)内航海運業又は旅客船事業を営んでいる者等が、同区域での航行が不能となり迂回のため費用が増加した場合又は現実に減収があった場合は、その費用の増加分又は減収分が、いずれも必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
② 飛行禁止区域の設定により、航空運送事業を営んでいる者が、同区域を迂回して飛行したことによって費用が増加した場合には、当該費用の増加分が必要かつ合理的な範囲で損害と認められる。
2 就労不能等に伴う損害
航行危険区域等又は飛行禁止区域の設定により、同区域での操業が不能等となった漁業者若しくは内航海運業者又は航空運送事業者等の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、かかる勤労者について、給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。

第5 政府等による農林水産物の出荷制限指示等に係る損害について
[対象]
農林水産物(加工品を含む。以下同じ。)の出荷、作付けその他の生産及び流通に関する制限又は農林水産物に関する検査について、政府が本件事故に関し行う指示等(地方公共団体が本件事故に関し合理的理由に基づき行うもの及び生産者団体が政府又は地方公共団体の関与の下で本件事故に関し合理的理由に基づき行うものを含む。)に伴う損害を対象とする。
・当該指示等には、出荷制限指示、作付制限指示、放牧及び牧草等の給与制限指導等のほか、暫定規制値を超える放射性物質が検出された食品についての食品衛生法による出荷、使用等の禁止等を含む。

[損害項目]
1 営業損害
① 農林漁業者において、同指示等があったことに伴い、同指示等に係る行為の断念を余儀なくされる等、その事業に支障が生じたため、現実に減収のあった場合には、その減収分が賠償すべき損害と認められる。
② また、農林漁業者において、上記のように同事業に支障が生じたために負担した追加的費用(商品の回収費用、廃棄費用、汚染された生産資材の更新費用等)や、事業への支障を避けるため又は事業を変更したために生じた追加的費用(代替飼料の購入費用等)も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
③ 同指示等の対象品目を仕入れ又は加工した加工・流通業者において、同指示等に伴い、当該品目又はその加工品の販売の断念を余儀なくされる等、その事業に支障が生じたために現実に生じた減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用も賠償すべき損害と認められる。
④ 更に、同指示等の解除後も、農林漁業者又は③の加工・流通業者において、同指示等に伴い事業に支障が生じたために減収があった場合には、その減収分も合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。また、同指示等の解除後に、事業の全部又は一部の再開のために生じた追加的費用(農地や機械の再整備費、除染費用等)も、必要かつ合理的な範囲内で賠償すべき損害と認められる。
2 就労不能等に伴う損害
政府等による出荷制限指示等に伴い、同指示等の対象となった農林漁業者又は上記1③の加工・流通業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、かかる勤労者について、給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。
3 検査費用(物)
政府等による出荷制限指示等に基づき行われた検査に関し、農林漁業者又は農林水産物の加工・流通業者が負担を余儀なくされた費用は、賠償すべき損害と認められる。

第6 その他の政府指示等に係る損害について
[対象]
第3ないし第5に掲げられた政府指示等の他、事業活動に関する制限又は検査について、政府が本件事故に関し行う指示等(水道水の摂取制限指導、放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の取扱いに関する指導等)に伴う損害を対象とする。

[損害項目]
1 営業損害
① 事業者において、政府による制限指示等に伴い、当該指示等に係る行為の断念を余儀なくされる等、その事業に支障が生じたため、現実に減収が生じた場合には、その減収分が賠償すべき損害と認められる。
② また、上記のように同事業に支障が生じたために負担した追加的費用(商品の回収費用、保管費用、廃棄費用等)や、事業への支障を避けるため等に生じた追加的費用(代替水の提供費用、除染費用等)も必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
③ 更に、同指示等の解除後も、事業者において、同指示等に伴い事業に支障が生じたために減収があった場合には、その減収分も合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。また、同指示等の解除後に、事業の全部又は一部の再開のために必要な追加的費用も、必要かつ合理的な範囲で賠償すべき損害と認められる。
2 就労不能等に伴う損害
政府による制限指示等に伴い、当該指示等の対象となった事業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合には、給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用が賠償すべき損害と認められる。
3 検査費用(物)
政府による制限指示等に基づき行われた検査に関し、事業者が負担を余儀なくされた費用は、賠償すべき損害と認められる。

第7 いわゆる風評被害について
1 一般的基準
① いわゆる風評被害については確立した定義はないものの、この指針で「風評被害」とは、報道等により広く知らされた事実によって、商品又はサービスに関する放射線物質による汚染の危険性を懸念し、消費者又は取引先が当該商品又はサービスの買い控え、取引停止等を行ったために生じた被害を意味するものとする。
②「風評被害」についても、本件事故と相当因果関係のあるものであれば賠償の対象とする。その一般的な基準としては、消費者又は取引先が、商品又はサービスについて、本件事故による放射性物質による汚染の危険性を懸念し、敬遠したくなる心理が、平均的・一般的な人を基準として合理性を有していると認められる場合とする。
③ 具体的にどのような「風評被害」が本件事故と相当因果関係のある損害と認められるかは、業種毎の特徴等を踏まえ、営業や品目の内容、地域、損害項目等により類型化した上で、次のように考えるものとする。
) 一定の範囲の類型については、本件事故以降に現実に生じた買い控え等による被害(④に相当する被害をいう。)は、原則として本件事故との相当因果関係が認められるものとする。
))以外の類型については、本件事故以降に現実に生じた買い控え等による被害を個別に検証し、②の一般的な基準に照らして、本件事故との相当因果関係を判断するものとする。
④ 損害項目としては、消費者又は取引先が商品又はサービスの買い控え、取引停止等を行ったために生じた次のものとする。
)営業損害
取引数量の減少又は取引価格の低下による減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用(商品の返品費用、廃棄費用等)
)就労不能等に伴う損害
)の営業損害により、事業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合の給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用
)検査費用(物)
取引先の要求等により実施を余儀なくされた検査の費用
2 農林漁業・食品産業の風評被害
3 光業の風評被害
4 造業その他の風評被害
5 輸出に係る風評被害
我が国の輸出品等に係る被害については、損害項目及び時期を考慮して一定の範囲に限定しつつ、国内取引よりは広く賠償対象と認める。

第8 いわゆる間接被害について
1 一般的基準
① この指針で「間接被害」とは、本件事故により第3ないし第7で賠償の対象と認められる損害(以下「第一次被害」という。)が生じたことにより、一次被害を受けた者(以下「第一次被害者」という。)以外の者(以下「間接被害者」という。)において第一次被害者と一定の関係にあったことにより生じた被害を意味するものとする。
② 「間接被害」については、間接被害者の事業等の性格上、第一次被害者との取引に代替性がない場合には、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。具体的な類型としては、例えば次のようなものが挙げられる。
) 事業の性質上、販売先が地域的に限られている事業者の被害であって、販売先である第一次被害者の避難、事業休止等に伴って必然的に生じたもの。
) 事業の性質上、調達先が地域的に限られている事業者の被害であって、調達先である第一次被害者の避難、事業休止等に伴って必然的に生じたもの。
) 原材料やサービスの性質上、調達先が限られている事業者の被害であって、調達先である一次被害者の避難、事業休止等に伴って必然的に生じたもの。
・ここに挙げた類型以外にも、間接被害者に生じた被害を個別に検証し、第一次被害者との取引に代替性がない場合には、本件事故との相当因果関係が認められる。例えば、第一次被害者との取引が法令により義務付けられている間接被害者において、第一次被害者との取引に伴って必然的に生じた被害についても、相当因果関係が認められる。なお、間接被害のうち、本来は第一次被害者又は加害者が負担すべき費用を代わって負担した場合の損害(いわゆる肩代わり損害)は、当然に賠償の対象となる。
2 損害項目
損害項目としては、次のものとする。
① 営業損害
第一次被害が生じたために間接被害者において生じた減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用
② 就労不能等に伴う損害
①の営業損害により、事業者である間接被害者の経営が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合の給与等の減収及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用

第9 放射線被曝による損害について
本件事故の復旧作業等に従事した原子力発電所作業員、自衛官、消防隊員、警察官又は住民その他の者が、本件事故に係る放射線被曝による急性又は晩発性の放射線障害により、治療を要する程度に傷害を負い、健康状態が悪化し、疾病あるいは死亡により生じた逸失利益、治療費、薬代、精神的損害等は、賠償すべき損害と認められる。

第10 その他
1 被害者への各種給付金等と損害賠償金との調整
本件事故により原子力損害を被った者が、同時に本件事故に起因して一定の利益を受けたと評価できる場合には、損害と当該利益との間に同質性が認められる限り、公平の見地から、その利益の額を損害額から控除すべきである。
・一般の不法行為法上、被害者が不法行為によって損害を被ると同時に、同一の原因によって利益を受けた場合には、損害と利益との間に同質性がある限り、公平の見地から、その利益の額を加害者が賠償すべき損害額から控除すること(損益相殺の法理)が認められている。そのため、本件事故により原子力損害を被った被害者についても、同時に本件事故に起因して一定の利益を得たと評価できる場合には,損害と当該利益との間に同質性が認められる限り、公平の見地から、その利益の額を損害額から控除すべきである。
・具体的にどのような利益が損害額から控除されるべきかについては、個々の利益毎に損害との同質性の有無を判断していくほかないが、少なくとも、現時点で明確に整理できるものについては例示をする。
2 地方公共団体の財産的損害
地方公共団体が所有する財物に関する損害及び地方公共団体が民間事業者と同様の立場で行う事業(水道事業、下水道事業、病院事業、地方公共団体の経営する企業の事業等)に関する損害については、本指針に示された事業者等に関する基準に照らして賠償すべき損害の範囲を判断することが適当である。


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・事故後の国会審議 その5 寺坂政府参考人

・事故後の国会審議 その5 寺坂政府参考人

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177-衆-経済産業委員会-3号 平成23年04月06日

平成二十三年四月六日(水曜日)
    午前九時開議


○寺坂政府参考人 まず、今回の福島第一原子力発電所の課題につきまして、現在なお収束に至っていないという状態でありますことを、安全規制を担当している部局といたしましても、国民の皆様、地元の関係の皆様初め各皆様に改めておわびを申し上げます。
 ただいま御指摘のあった、全体をどのように見ているかということでございますけれども、今回の事案は、御案内のように、地震と巨大な津波によりまして全交流電源を喪失したということから生じているわけでございます。そういったことで、各号機、複数の号機に問題が生じて、それぞれのことに一つ一つ対応をしてきたところでありますけれども、いろいろな課題がある中で、ある程度の見通しを立てつつ早目早目に手を打っておかなければならないという御指摘は、今振り返ってみましたとき、また、結果を見てみましたとき、そのような御指摘については深く考えていかなければならない、これからの検証はそういったことがあると考えております。
 ただ、全体といたしまして、非常に未曾有の状態になった中で、個々の対応に集中といいますか、一つの課題を処理しているうちに次の課題が生じてきたというような現状、それから、もともと津波の発生、引き続き津波が襲ってくるかもわからない、あるいは非常に暗やみの中の作業、計器類について電源喪失の観点、いろいろあったこともございまして、これからの大いなる教訓、反省とするべき点はあるかと思いますけれども、そのような事情の中で懸命に努力を重ねてきているということと私は認識をしてございます。

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○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 私は、まず最初に、今回の地震、大津波で犠牲となられた方々に対して哀悼の意を表したいと思います。それからまた、今も大変な生活を余儀なくされている被災者の皆さんに心よりお見舞いを申し上げたいと思います。
 地震と津波というのは、これは間違いなく自然災害です。しかし、全電源喪失と炉心溶融という問題については、実は私は、二〇〇五年の質問主意書以降、二〇〇六年の国会質問なども通じて、ずっとこの問題を取り上げてきたんです。対策をとらなきゃだめだということを言ってきたんです。
 最初、寺坂原子力安全・保安院長に伺っておきますが、昨年五月二十六日の当委員会で、私の質問に対して、全電源喪失で炉心溶融は論理的には考え得ると答弁しておられました。今回の原発事故というのは、論理的な話じゃなくて、現実のものとなったのではありませんか。

○寺坂政府参考人 お答え申し上げます。
 昨年五月、吉井委員からの御質問に対しまして今御指摘のような答弁をしたことは事実でございます。
 原子力発電所におきましては、複数の非常用ディーゼル発電機の起動、あるいは直流電源の活用、他号機からの電源の融通、そういった多重性や多様性を持った対応を図ることによりまして、重要な事故に至ることのないような、そういう対策がなされてきていたわけでございます。そのような意味におきまして、それぞれの要素につきまして可能性が大きくはない、そういう認識のもとに昨年の答弁を申し上げたところでございます。
 現実に、ただいま御指摘のような事態が発生をしたわけでございまして、そのような意味におきまして、私の当時の認識におきまして甘さがあったことは深く反省をしているところでございます。

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○吉井委員 一応制御棒は入ったという話、これは入ったから一応とまったんですよ。それはよくわかるんです。しかし、巨大地震によって、一〇〇%、一本でも二本でも入り切らなかったら、部分的には臨界も残ることはあり得るんですよね。だから、中性子が測定されたという話も出てきたのはそういうことだろうと思うんです。
 原子炉停止後の核燃料の自然崩壊熱による温度上昇を避けるために機器冷却系が働かなくてはならないわけですけれども、これが、地震でまず送電鉄塔が破損した、これは保安院からいただいた資料で、倒壊したということですから、外部電源がだめ。その上、内部電源を構成するDGが津波で破損した。何とかいけたバッテリーも、三月十一日の夜の十時ごろには大体ダウンの方向へと。バッテリーは時間が来たらだめになりますから。外部から持ち込んだ電源車からの電源接続もなかなかうまくいかない。
 だから、機器冷却系が機能しないということになって、当日の二十二時だったと思うんですが、二十二時五十分には炉心が露出する、二十三時五十分に燃料被覆管が破損する、そして二十四時五十分には燃料熔融の可能性ありと保安院は予測したと発表されております。
 班目委員長と寺坂原子力安全・保安院長は、これは深刻な事態だと考えて危機感を持って臨まれたのか、まあ何とかなると楽観的なものもお持ちだったのかを伺っておきたいと思います。

○班目参考人 まことに申しわけないんですが、JNESによる解析結果というのは当時持ち合わせてございませんでした。したがって、時間的なことで、どれぐらい緊急を要しているかは当時把握してございませんでした。
 しかしながら、アイソレーションコンデンサーとかRCIC、最初にRCIC、二号機がとまっていると聞いたときには、もうかなりびっくりして跳び上がったぐらいなのでございますが、危機的な状況にあるということはよく認識しているので、直ちにアクシデントマネジメント対策として定められたプロセスに移るようにというふうに進言したところでございます。

○寺坂政府参考人 全電源喪失状態になりまして、非常に深刻な状態に至っているという認識は持っておりました。
 一方で、アイソレーションコンデンサーあるいはRCIC、そういったものがまだ機能している、そういうこともございまして、その間にしっかりと対応を重ねていかなければならないという意識のもとに行動をしたわけでございますけれども、結果におきましてそこが届かなかったという点は深く感じておるところでございます。


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177-参-経済産業委員会-3号 平成23年04月12日

平成二十三年四月十二日(火曜日)
   午前十時開会


○若林健太君 これは原子力安全・保安部会、総合エネルギー調査会での議事録なんですね。ここでより高い想定をするべきではないかという指摘があり、後日報告をすると、こういうことになっていたんだけれども、事実関係としてそれはどう結果として対処したのか、これについて教えていただきたいと思いますが。

○政府参考人(寺坂信昭君) 今の件についてお答え申し上げます。
 平成十八年に新しい耐震指針が原子力安全委員会の方でまとめられまして、新しい耐震指針に基づく審査、バックチェックと呼んでおりますけれども、それを全発電所におきまして作業を進めているところでございます。それで、今は大半のものはまだ中間的な評価しか終わっていないところでございますけれども、中間評価におきましては、主として、新しい活断層がないのかどうか、時期を遡ることも含めまして、知見の進展、技術の進展に伴って今まで活断層と思われていなかったものにつきましても活断層ではないかといったような、そういうことを中心に審査を行ってきました。これが中間評価でございます。
 今御指摘の部会での、専門委員会での指摘というのはその後の津波の問題でございまして、津波に関しましては、この活断層の審査の後に最終報告の過程で津波について更にしっかりとした審査をするという、そういう手順で進めてきておったのが実情でございます。
 そういう意味におきましては、津波の審査が必要であるということの指摘あるいは私どもの問題意識というものは持っておりまして、これからの作業ということであったわけでございますが、結果的に今回の津波に対する対応の検討には間に合わなかったということについては、大変考えをしっかり持たなければいけないというふうに思っているところでございます。

○若林健太君 津波に対するこうした指摘があったけれども、結果としてまだそれに対する対処をしておりませんでしたと、こういうお話でございます。一年十か月たっているんですね。平成二十一年の六月でございます。一年十か月たってなお対処しなかったところ、今回の災害を受けたと。この事態についてどういうふうにお考えになるか、反省をされるのかしないのかと、こうお聞きしたいと思いますが。

○政府参考人(寺坂信昭君) 結果におきまして津波についての審査、検討が間に合わなかったということにつきましては、大変私どもとして改めてよく考えていかなければならない、反省も含めて考えていかなければならない問題と思ってございます。
 ただ、実情を申し上げますと、先ほど申し上げた活断層についての再チェック、これにつきまして、全国五十四基ある、それからサイトの数でも二十前後ある、そういったところで地質調査から始めまして、活断層の調査、それに伴います、新しい地震動に伴います機器とか設備のチェック、どこまですればいいのかというようなことで相当時間を取られておったということはまた実情でございまして、そういった意味で、結果において津波のところまでまだ届かなかったということについてはよく考え直さなければならない、検証しなければならないと思っております。

○若林健太君 質問について端的に答えていただければ結構です。要は、一年六か月前に指摘されていた事項、これについて対処できなかったと、これはもう反省すべきだと、私はそういうふうに思います。そのことを反省すると最初にそうおっしゃっていただいたので、その点はよかったんですが、それが、ほかのことをやっていたからできなかったというのは、これ理由にならないですね。全くもって理由にならないと。被災者の皆さんに対する思いをもう一度新たにしていただきたいと、こんなふうに思います。


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177-衆-内閣委員会-5号 平成23年04月13日

平成二十三年四月十三日(水曜日)
    午後零時十五分開議

○吉井委員 簡単に低レベルだからといって放出しているんですけれども、そもそも何が放出されているのか、さっぱり国民に公開されていない、東京電力の言いなり、私はこれはとんでもない話だと思うんです。
 実は、一九九六年五月の国会でロンドン条約にかかわる法案を審議したときに、外務委員会と科学技術委員会の連合審査を行うことになりました。このときの五月十六日の科学技術委員会で、私は、スリーマイル島原発事故で、原発から放射能汚染水が河川に流され、それが海洋に汚染が広がったという問題を取り上げたんです。
 改めて伺っておきますが、ロンドン条約の目的では、陸上発生の廃棄物の投棄による海洋汚染の防止を示し、附属書1の第四項により、放射性廃棄物の投棄禁止が定められていると思うんです。なお、この審査をする前には、一九九三年十一月二日に原子力委員会の方で、低レベル放射性廃棄物の処分の方針として、海洋投棄については選択肢としないとしていると思うんですが、これは原子力保安院長に確認しておきます。

○寺坂政府参考人 御指摘のように、本件に関する条約といたしまして国連海洋法条約があるわけでございますけれども、いずれの国も、海洋汚染を防止する一般的義務を負っていると承知をしてございます。
 放射性物質による汚染についての明文の規定はございませんけれども、放射性物質による汚染も当然防止する必要があるわけでございまして、このような一般的な義務のもとに、いずれの国も、あらゆる発生源からの海洋汚染の防止、軽減、規制するために実行可能な最善の手段を用い、自国の能力に応じて、海洋汚染の発生源からの放出をできる限り最小とするための措置をとることとされているわけでございます。
 今回の措置自体、国際法上の義務との関係で問題となるものではないというふうに認識はしておりますけれども、拡散低減のための措置と並びまして、近隣国に対する丁寧な説明、国際社会に対する情報提供を一層丁寧に進めてまいりたいと考えてございます。


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177-衆-経済産業委員会-5号 平成23年04月20日

平成二十三年四月二十日(水曜日)
    午前九時三十分開議


○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 私は、きょうは、最初に工程表にかかわって質問をしたいというふうに思います。
 いただいた資料を見ておっても、一号機、二号機、三号機とも原子炉内の圧力、水位が上がらないわけですね。要するに、核燃料棒が半分近く露出した状態がずっと続いているわけですよ。このことは、格納容器に冷却水を入れても漏れているということをあらわすものでありますし、水素爆発対策で窒素ガスを封入したんだけれども圧力が上がらないのは、これは格納容器からも漏れが出ているということになると思うんですが、津波が圧力容器の中に及ぶわけはないので、それでつぶれるほどやわな装置だったら話にならないんですが、最初の地震の一撃でプラントのどこが傷んだのか、保安院長に伺いたいと思います。

○寺坂政府参考人 お答え申し上げます。
 最初の一撃に関しましては、まず送電線、鉄塔の倒壊ということがございます、それによりまして外部電源の喪失が生じたわけでございますけれども、その後、非常用ディーゼルが動きまして、そこで津波が襲来をしたということでございます。その時点で、最初の地震、それから津波の襲来、これによりましてどこがどのように傷んだのかということに関しましては、現時点でまだ確定がされておりません。さまざまな現場の事情等々があったわけでございます。
 ですけれども、今委員御指摘のように、燃料棒につきまして、今把握しているデータを前提といたしますと、一定程度の燃料ペレットの溶融といった事態が生じているというふうに、一号機、二号機、三号機、それぞれそのように私どもはとらえておるところでございます。

○吉井委員 せんだっての原子力安全委員会でも、炉心が溶けているという、この溶融のことは報告をしておられるんですが、そのプラントの状況がどうなっているかということをきちんとつかまないことには、そもそも工程表をつくるということがなかなか大変なことなんですよ。
 それで海江田大臣に伺っておきたいんですけれども、工程表でちゃんとやるというふうに会見でおっしゃったのを私は聞いていましたけれども、当分の間は高レベル汚染水は出し続けるということは判断していらっしゃるんですね。

○海江田国務大臣 出し続けるという意味がちょっと正確ではないと思いますが、これは、とりわけ今重点的に集中などに移すのは二号ということを決めておりますから、今二号にたまっております水はかなり高濃度だということでございますので、これを一日も早く集中などに移さなければいけない、こういうことでございます。

○吉井委員 努力しているという方向はおっしゃったんだけれども、そもそもプラントのどこが壊れているかわからないわけですから、あちこちから破損が出てくるので、それは簡単にとまるということは言えない。だからこそ、私が前から言っておりますように、きちんとしたデータをまず出させるようにしなさいということを言っているわけです。
 次に伺っておきますが、実は二〇〇六年十二月十三日に質問主意書を出しました。これは、原発停止後の崩壊熱を除去できなかったときには核燃料棒はバーンアウトするんじゃないかということを言ったんですが、そういう場合についてどういう評価をやっているんだといったら、経済産業省として評価していないということでした。
 二〇〇五年十月三十一日には、今三号機で問題のプルサーマルの利用の場合、炉内の安全性及び過酷事故の放射能被害について質問しました。これに対して、東電第一・三号などの設置許可書があり、過酷事故については、「技術的見地からは起こるとは考えられない事故を想定し、周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないことを確認している。」というのがこのときの答弁なんです。もちろん、総理大臣名の答弁書でありますけれども、答弁の作文をしたのは保安院なんですよ。
 そこで伺っておきたいのは、周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないことを確認した、どういうふうに確認したのかを伺います。

○寺坂政府参考人 二〇〇五年の質問主意書に関しましての御質問でございます。
 プルサーマル利用時の過酷事故時の放射能被害に関します評価について質問をいただきまして、設置許可時の安全審査におきましては、立地指針に基づきまして、技術的見地からは起こることが考えられない事故を想定して、その場合におきましても周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないことを確認したところでございますけれども、今回の福島第一発電所の事故に関しましては、答弁書においてお答えいたしました内容と異なりまして、巨大な津波あるいは地震で長時間にわたり電源が失われ、ほかのプラントからの電力の融通もできなかったという状況のもとで原子炉の冷却が確保できない事態が生じたものと認識をしております。
 この事故原因等に関しまして……(吉井委員「原因はいいです」と呼ぶ)はい。
 そのような事態が生じた、確認した以上の事態が生じたというふうに認識をしてございます。

○吉井委員 だから、「周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないことを確認している。」と言ったんですよ。しかし、確認していなかったんですよ。ここは非常に大事なところだと思うんです。
 そこで、海江田大臣、政府はこれまで東京電力の言いなりになってしまって過酷事故を想定しない。それから、そのとき「公衆に著しい放射線災害を与えないことを確認している。」と言ったんだけれども、何の確認もしていなかったわけですよ。やはりこういうふうな、電力は大丈夫だといったら大丈夫だと思うような原発政策というのは改めるべきじゃないですか。これは一言伺っておきます。

○海江田国務大臣 そうした質問主意書に対する答弁なども、いわゆる原発安全神話に基づいていたのではないだろうかと私は思います。現実にああいう事故が起きましたから、今、私の頭の中には、そうした安全神話は全くございません。

○吉井委員 まず、そういう原発政策を改めなきゃならぬと思います。
 次に、電源喪失についてです。
 実は、福島第一原発一号機運転開始三十周年記念文集というのがあるんですが、そこで、一号機の建設に携わった、元副社長で所長も務められた豊田正敏さんが、この方は一九五六年からやっているんですけれども、安全性については、緊急停止措置、緊急炉心冷却装置ECCSなど、多重防護の徹底を期した、盲点は所内電源系だ、内部電源だ、その信頼性が意外に低く、系統構成の改善を図った、非常用電源のDGの信頼度が当初極めて低かった、このようにちゃんと指摘しておられて、東京電力でも一号機の早い段階から電源については喪失することのないようにしなければならないと考えていたと思うんです。
 そこで保安院長に伺いますが、電源喪失により機器冷却系が働かなくなって炉心溶融に至ったわけですが、電源喪失は許されない、対策をとらせるという立場で東京電力に指示したのは何年からですか。

○寺坂政府参考人 電源喪失を初めといたします外部電源の問題、あるいは所内電源の問題、これは非常用ディーゼルの問題でございますけれども、そういった事態が生じました場合に、いわゆるアクシデントマネジメント対策ということでどのような対応をしていくのかということの検討を、平成四年の安全委員会の指示以来、東京電力においても作業を行っております。
 その結果におきましては、他のプラントからの電力の融通というような対応、それから、実際にそのアクシデントマネジメント対策が実行可能かどうか、そういうことについての訓練を行う等々の、いわゆるアクシデントマネジメント対策をまとめているところでございますけれども、今回はアクシデントマネジメント対策においては十分にその対応ができる状態にはならなかった、そのように考えてございます。

○吉井委員 実は、一九九二年、先ほどもありましたように、原子力安全委員会がBWRにおけるアクシデントマネジメントについてという文書を出しております。その翌年になりますが、日本原子力学会誌で、軽水炉のシビアアクシデント研究の現状ということで、さまざまな検討をやっているんですね。
 その中には、一九九三年七月二十一日に、軽水炉のアクシデント研究の現状ということで出しておりますが、実は、一九八三年度より、炉心の損傷についての研究、検討、地震問題の想定、それから、BWRでも全交流電源が喪失するという問題、水素爆発の問題、圧力容器貫通部のリーク、つまり、圧力容器には制御棒とか計装装置の案内管がいっぱい走っているわけですが、そういうところが一番弱いと。それから、ベントの重要性ですね。水素ガスは、ジルコニウムとの化学反応やら水蒸気が放射線で分解されますから当然出るんですよ。そうすると、窒素ガスで置換することをやるか、フィルターを通してベントをしないと危ないんだということは、もうちゃんと研究しているわけですね。そういうことを既に一九九三年の原子力学会誌でも出されていたわけですが、なぜそういうことがきちんと生かされてこないのか。
 私が先ほど紹介しましたように、私の質問主意書に対しては、要するに、そういうことは起こらない、まず評価の対象にならない、それから、「周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないことを確認している。」と。もともと検討もしないで確認していると、これはだれが考えてみてもおかしいことだと思うんですよ。
 原子力安全・保安院長、今までの原子力安全・保安院のあり方について根本的な反省が必要なんじゃないですか。

○寺坂政府参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、アクシデントマネジメント対策についての対応を行いましたけれども、その前提となっております内容を超えるような事態が生じたということでございます。そのような事態を前提とした対応がなされていなかったということにつきましては、私ども保安院としても、しっかり考えを改めていかなければならないものだと承知してございます。

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○柿澤委員 済みません、もう一度だけ。
 二百五十ミリシーベルトの値が健康に影響を与えないぎりぎりの値だというこの見解を、今もなおそうだというふうに海江田大臣はおっしゃるんでしょうか。もう一度お伺いします。

○寺坂政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど、ICRPの見解、緊急時、今回の福島の案件に関しまして、そういうICRPの見解も踏まえまして二百五十ミリシーベルトまで上げたものでございますけれども、放射線被曝線量が二百五十ミリシーベルト以下におきましては、急性期の臨床症状があるとの明らかな知見が認められない、そういったことも踏まえまして、今回に限り二百五十ミリシーベルトまで引き上げることとしたものでございます。

○柿澤委員 ICRPの勧告にのっとって決めたと言いながら、ICRPの勧告に書いてあることと全く違うことを言っているというふうに思います。
 ICRPの勧告をもう一度だけ読んでおきますけれども、「百ミリシーベルトより高い線量では、確定的影響の増加、がんの有意なリスクがあるため、参考レベルの最大値は年間百ミリシーベルト」である、こういうふうに書かれております。それだけ申し上げて、もう時間も参っておりますので、質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございます。


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177-衆-経済産業委員会内閣委員…-1号 平成23年04月27日

平成二十三年四月二十七日(水曜日)
    午前九時開議


○寺坂政府参考人 私からの説明におきまして、正確なところは記憶してございませんけれども、全体としては低いということは申し上げたと思います。
 あわせまして、特定の地点、三十キロを少し超えている地点でありますけれども、今委員御指摘のように、三十一ポイントあるいは三十二ポイント、そういったところについては高い数値が出ておるということについても触れたように記憶はしております。ただ、議事録とかを私は持ち合わせておるわけではございませんので、正確なところはわかりません。

○柿澤委員 寺坂保安院長はそのときに、一部に特異点がある、谷があるとか地形的なものに依存をしている、そして、念のためこの周辺の住民は区域外であっても自主避難してもらっている、こういうふうに言ったんですよ、院長は。
 本当はどうだったんですか。後になって、実は住民は残っていました、こういうふうに訂正したではありませんか。結果的に、特異点だと言っていたところを中心に、北西方向に同心円状に、まあ同心円とは言えませんけれども、外に百五十ミリシーベルト以上から十ミリシーベルトに広がっていて、そして、結局、今回、計画的避難区域の設定をせざるを得ない状況になってしまったではありませんか。
 さらに言えば、IAEAは、四十キロの飯舘村で高い数値があるとして、避難指示を検討するように日本政府に勧告したけれども、これは三月三十日の時点だったと思います、それは必要ないといって拒否しているではありませんか。結局今になって、飯舘村の村長や住民に、無理無理説得をして避難をしてもらおうとしている。
 最初に、安心だ、大丈夫だ、こういうふうに情報を出して、そして、住民をもう避難させたとまで言っているんですよ。後になって、実はそうでもありませんでした、避難してください、こういうことをやっているからこそ、今回の政府の対応が不信感を買っているのではないですか。
 そして、この結果になることはもっともっと早い段階で予測をできたというふうに思うんです。
 アメリカのNNSA、エネルギー省国家核安全保障局は、三月の事故直後の時点で、一年間の放射線量がこの福島第一原発周辺はどうなっているか、マッピングして地図を出していますよ。全く今回の、皆さんがきのうお出しをしたマッピングと同じ結果になっているではありませんか。
 なぜこういうふうに、後からこういう形で出してくるのか。これは、結果として、この間に住民がそれだけの内部被曝等をこうむっている、こうしたことにつながるからこそ、私は申し上げたいんです。御答弁をお願いします。

○寺坂政府参考人 お答え申し上げます。
 数字の件についてどのように説明をしたかということは、先ほどお話ししたとおりでございます。
 あわせまして、当時、地域的な、地形の関係、そういったもので、特異点という言葉を使用したかどうか覚えておりませんけれども、そういった要素があるのではないかということに触れたことも記憶はしてございます。
 それから、当時、私が得た情報から、浪江町あるいは飯舘村の近くに住んでおられる方は自主的な避難がなされているというふうに承知をしておりましたので、そういったことは触れておりました。その後の調査によって、戻ってこられた方も含めまして、何人かの方が地域に残っておられたということがわかりまして、その旨は別途お話を申し上げた、そういう経緯と記憶してございます。

○柿澤委員 私たちからすると、特異点があるといって私たちの指摘を切り抜けて、そして、住民は避難させました、そういうふうに私たちに説明しておいて、後から、両方そうではありませんでしたと。当初の説明が全くでたらめだったと思うしかないというように思います。
 こういう状況であるという認識に立つと、私、内閣委員会でも一回お取り上げさせていただきましたけれども、水素爆発の直後、大変多くの放射性物質が放出をされたということでもあるわけですので、実態が正確につかめない状況の中、経口等により内部被曝をしてしまった方が大変たくさんいらっしゃる、こういうふうに思うんです。
 そういう意味で、私は、周辺住民の方々の、少なくともサンプリングの内部被曝の測定調査、そしてその結果を踏まえた検診、こうしたことをやはり体制として整備する責任が政府にあるというふうに思いますが、御答弁を伺います。


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177-参-予算委員会-13号 平成23年05月01日

平成二十三年五月一日(日曜日)
   午前八時五十四分開会


○森ゆうこ君 交換していないんですね。
 皆様のところに資料をお付けをいたしました。図解したものを見ていただきますと、総理は大変お詳しいようですけれども、私は完全に文系ですのでよく分からないながらも、このプラント系統図を見ますと、この流量計がいかに重要なものかは素人でも分かります。つまり、原子炉は冷やさなきゃいけないんでしょう。その冷やす水、それをしっかりと規定どおり流されているのか確認するためのこの流量計、これが試験をするときにデータが不正に改ざんをされている。そして、まだ交換もしていない。全部メーカー任せなんです。東芝ですね。そういう不正が行われて、これは内部告発によって発覚をしたということであります。
 そして、これだけ重大な問題にもかかわらず、原子力保安院、何で厳重注意、これで終わったんですか。

○政府参考人(寺坂信昭君) お答え申し上げます。
 経緯についてはただいま委員御指摘のとおりでございまして、流量計に関しましては、内部告発から始まって、原子力安全・保安院の方におきまして精密な検査等々、原データに当たるなどの調査をした結果、安全性については問題ないと確認したものでございますけれども、内容に関しましては、今御指摘のように厳重注意ということで、その後、再発防止対策、そういったことを求めまして、その実施を確認していくということで処理をしていったものでございます。

○森ゆうこ君 経産大臣、お聞きしたいんですけれども、こういう重要な不正、これは厳重注意で終わっている。これについていかが思われますか。

○国務大臣(海江田万里君) 特に、内部告白がありながらそれを握り潰していたということは大変大きな事柄でございますので、もちろん今そういうことのないようにしっかり指導をしているところでございますが、そういった厳重注意ということだけでは済まされるものではないと思っております。

○森ゆうこ君 亡くなられた中川経済産業大臣がこの問題に非常に怒られて、相当詳しく厳しく調べられていたと。しかし、中川大臣が替わられて直後に、時系列を見ますと、この厳重注意でさらっと終わっている。なぜなのかなという気がいたしますし、この制御棒なんですけれども、図を見ていただくと、ぼろぼろなんですよ、これ。まだ図はこういうふうになっていますけれども、このひび割れ事件の報告書には写真も付いておりますが、大丈夫なんですか。制御棒がちゃんと働かないと緊急停止もできないんじゃないんですか。

○政府参考人(寺坂信昭君) お答え申し上げます。
 当時、制御棒のひび割れに関しまして、私どもと専門家との間での様々な意見交換の結果、一定数値、要は中性子の照射時間、制御棒の使用時間、これを超えますとひび割れが発生するという可能性が高いというふうに推定をいたしまして、したがいまして、その一定数値に至るまではともかくといたしまして、それに近づいて超える場合には制御棒をあらかじめ全挿入ということで、完全に挿入をした状態で運転するように指示をし、そのように電力事業者の方でも対応をしてきたところでございます。


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177-衆-経済産業委員会-8号 平成23年05月11日

平成二十三年五月十一日(水曜日)
    午前九時開議


○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 きょうは、浜岡原発を中心に質問したいと思います。
 この浜岡原発問題というのは、日本共産党が国会で取り上げたのは三十年前からになりますが、一九八一年の二月四日の予算委員会で、当時、書記局長だった不破哲三議員が、確実に来る大地震への備えこそ最大の安全保障だとして、浜岡原発のすべてが東海地震の震源域の真上にあると。ですから、一、二号機はもとより、さらにその上に三号機の建設を当時の通産省が認可した問題を追及しました。
 それで、先日ようやく、三十年おくれましたけれども、菅総理が浜岡原発運転停止を求めたわけです。
 そこで、きょうは順番に伺っておきたいんですが、日本と世界で、震源域の真上に原発をつくっているところはどこにあるのかをお示しいただきたい。それからもう一つは、活断層から一キロメートル以内に設置している原発は世界と日本でどの原発なのか、これを大臣に伺っておきたいと思います。

○寺坂政府参考人 事実関係なので、私からまずお答え申し上げます。
 まず、震源域の真上にある原子力発電所でございますけれども、世界の原子力発電所の事例に関しましては、今、私どもが資料を見ている限りでは、承知をしてございません。
 それから、活断層から一キロメートル以内にある原子力発電所、世界に関しましては十分承知してございませんけれども、日本におきましては、平成十八年の耐震設計審査指針の改訂に伴いましてバックチェックが行われているところでございますけれども、現在までの評価におきましては、関西電力の美浜発電所、日本原子力発電株式会社の敦賀発電所、それから日本原子力研究開発機構「もんじゅ」におきましては、敷地から約一キロメートル以内に耐震設計上考慮すべき活断層が確認されているというふうに承知してございます。

○吉井委員 ですから、世界じゅう探しても、そもそも東海地震とか、さらに東海・東南海・南海地震あるいは日向までずっと連動した場合に巨大な地震になるわけですが、震源域の真上に原発をつくっている国というのはないんです。
 それで、今、敦賀、美浜、「もんじゅ」の例を挙げられましたけれども、外国の場合についても、実は、これは二〇〇八年四月四日に原子力安全・保安院の佐藤審議官の答弁で、アメリカでも一キロメートル以内はない、最も近いのでディアブロキャニオンの二基が四・八キロ、それからサンオノフレ原発で八キロ離れていると。ですから、日本のように、原発が活断層の真上とか、美浜はたしか活断層の真上だったと思いますが、二百メートルほど離れたところに表層に活断層が見つかるようなところはないというのが現実だと思うんですが、再度確認しておきます。

○寺坂政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほどの平成二十年の内閣委員会での原子力安全・保安院からの答弁でございますけれども、アメリカのディアブロキャニオン原子力発電所、約五キロメートル近傍に活断層、それから同じくサンオノフレ原子力発電所におきましては八キロメートル近傍に活断層があるという旨答弁をしているのは、そのとおりでございます。

○吉井委員 ですから、震源域の真上とか、活断層の集中地帯に原発を立地するということ自体が国際的に見て異常なんです。
 大臣に伺っておきますが、アメリカのボデガベイ原発というのは、近くに震源域があると地質学者が指摘した後、この原発の扱いはどうなりましたか。

○海江田国務大臣 御指摘の原子力発電所は、建設計画が提案されたものの、現在はその計画が破棄されているということでございます。

○吉井委員 これは、一九六四年十月二十七日に、アメリカの原子力委員会、当時のAECの規制部は、三十二万五千キロワットのボデガベイ原発については、要するに近くに震源域があるということがわかって、耐震設計の点から不適当という見解を出して、運転中止といいますか、そもそもつくること自体をやめた。当時、日本では浜岡三号機をつくろうとしておったときなんですよ。
 それで、次に伺っておきたいのは、当時の不破委員の質問に答えた中で、森山資源エネルギー庁長官は、浜岡原発三号機の審査に当たって、マグニチュード八・四が安政大地震だが、マグニチュード八・六という、理論的に考えられる最高震度を想定した審査をしたと発言したわけです。
 しかし、当時から、マグニチュード八を超えるものというのは、この千年以内に、安政の大地震だけじゃなしに、永長、明応、宝永というふうに四回記録しているんですよ。それで、何かあると想定外という話になるんですけれども、その想定外の話はだめだということをずっと私たちは言ってきたわけです。
 「地震地体構造から将来起こると予想されております直下型地震を含む最大の地震動すべてを勘案して安全審査をした」、これは浜岡三号機に当たってのエネ庁長官の答弁だったんです。
 しかし、現在は、もうそういうのは今回福島でも超えてしまったわけです。東海・東南海・南海地震、さらには日向まで連動して動くことも想定されているんですが、このときにはマグニチュードは幾らぐらいになると想定しておられますか。

○寺坂政府参考人 マグニチュードの数字をちょっと持ち合わせておりませんで恐縮でございますけれども、当時の最大加速度、基準地震動に関しましては六百ガルを想定したというふうに承知してございます。

○吉井委員 それは何ガルかの話なんですね。大体、多くの地震学者などが、連動したときにはマグニチュード九を超えることも考えなきゃいけないと指摘しているときですから、当時考えておった六百ガルというのは既にもう突破してしまっているわけです。それは新潟県中越沖地震で、柏崎刈羽原発ではタービン建屋で二千ガルを超えたんですね。これを経験し、約三千カ所の機器類の損傷、破壊が記録されました。
 福島第一では、今回、受電鉄塔が倒壊する。内部の方は、津波とは別に、そもそも最初の地震の一撃でどれぐらい原発プラントが損壊したかということ自体がまだつかまれていないんですね。しかし、少なくとも柏崎刈羽の三千カ所分に並ぶ分ぐらいが地震だけでも被害を受けているということを考えなきゃいけない問題だと思うんです。
 浜岡原発がマグニチュード九を超えるぐらいの地震に遭遇したときには、大体どれくらいの機器類が破損、故障するというふうにお考えなのかを、想定を伺っておきます。

○寺坂政府参考人 現在、耐震バックチェックの作業を重ねてきているところでございますけれども、具体的に今どのような数の損傷、もちろんその損傷のいろいろな程度はあるかと思いますけれども、その点についての数字は把握してございません。

○吉井委員 柏崎刈羽の場合はマグニチュード六・八で直下型ではあったんですが、それで三千カ所なんですね。震源域で、マグニチュード九ぐらいが連動してあるということを考えた場合には、これはとてつもなく大きな故障、損傷を、地震だけでも、津波対策をとったって地震でそもそも原発プラントがいかれてしまうということを考えておかなきゃいけないと思うんです。
 あわせて伺っておきますが、地震のときには液状化現象があります。三十年前にも実はこれが不破委員の方から取り上げられて、それで静岡県自身が調査してまとめたもので、三百ガルの加速度で液状化するという、その液状化状況について調べた報告書も地図の上で紹介されました。
 今回、千葉県浦安では地域の八五%が液状化して、下水管、水道管が各所で破断して、市民生活が普通に成り立たないという事態になっています。浜岡原発の冷却水配管は液状化した場合にどうなるのか。とりわけあそこは砂地盤ですから、八百メーターですから約一キロぐらい先まで冷却水配管を延ばしているわけですね。砂を巻き込まないように、延ばした先で高さ二メートルぐらいにして取水口を設けておりますが、そもそも液状化したときに、約一キロ先まで延ばしている取水配管を含めてどういう状態になるのか。これは私は破壊されるということを心配しなきゃいけないんじゃないかと思いますが、どういう想定をしておられますか。

○寺坂政府参考人 先ほど来申し上げております新耐震審査指針に基づきます事業者の評価、それに対します保安院、国としての評価の作業を続けているわけでございますけれども、まず、三連動のマグニチュードに関しましては、今、事業者から出されているものにつきましては八・七で評価の作業を今現在は進めているところでございます。
 それから、液状化に関しましては、原子力発電所の原子炉建屋などいろいろな構造物があるわけでございます。耐震設計上重要な建物、構築物に関しましては、原子炉建屋などでございますけれども、岩盤に直接支持されているということがございます。それから、耐震設計上の、現在の重要度分類では、SクラスではなくてB、Cクラス、そういった建物、構築物に関しましては、重要度に応じた設計荷重に対して十分な支持性能を持つ地盤に設置されており、ごく一部の例外を除き岩盤に設置されていることを、これは事業者の方でございますけれども、確認したとしております。これは、新潟県中越沖地震などの経験も踏まえたものでございます。
 そういったことでございますが、いずれにいたしましても、現在、そのような点も含めまして、耐震バックチェックの作業を進めているところでございますが、今回の東京電力福島第一発電所に関するさまざまな事故原因の検証、そういったものも踏まえた上での作業が必要であるというふうに考えてございます。


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177-衆-予算委員会-23号 平成23年05月16日

平成二十三年五月十六日(月曜日)
    午前八時五十九分開議


○笠井委員 福島原発事故を一刻も早く収束させる、そしてきちんと賠償するということとあわせて、今回のような大事故を再び繰り返させない、そうした国の責任を果たすことが何より重要だと思います。
 今回の福島原発事故を踏まえて、今般、中部電力は、総理の要請に基づいて、浜岡原発のすべての原子炉を停止する措置をとりました。我が党はかねてから、東海地震の想定震源域の真上にある浜岡原発の運転を停止するように強く求めてまいりました。私自身も視察に行ったことがありますけれども、今回の運転停止の措置自体は当然のことだと思います。しかし、問題は、総理の要請のように、一たんとめて、防潮堤設置などの津波対策をやれば安全は確保されたとして運転の再開を認めていいのかどうかということであります。
 まず、原子力安全・保安院に確認したいと思いますが、津波対策そのものでありますけれども、保安院の言う巨大地震に付随した極めて大きな津波への安全対策というのは、今の時点で、福島第一原子力発電所と同程度の津波を受けた場合、つまり十五メートルの大津波が来ても深刻な事態にならない、大丈夫だという対策ということで理解してよろしいですか。

○寺坂政府参考人 お答え申し上げます。
 今般実施いたしておりますいわゆる緊急安全対策におきます中長期対策におきます津波高さの想定は、今回の東京電力福島第一原子力発電所に襲来しました津波の高さを踏まえたものを念頭に置いてございます。東京電力の福島第一原子力発電所におきましては、今般の地震に伴いまして約十五メートル程度の津波が襲来したというふうに認識してございますけれども、これは、同発電所におきます土木学会の津波高さの評価値であります五・五メートルを九・五メートル上回るものでございます。
 したがいまして、各電気事業者におきましては、各地点の土木学会による津波高さの評価値にこの九・五メートルを加えまして、さらに津波の高さを十五メートルを一つの上限として考慮し、その津波の対策を講じること、そのようにしたものでございます。

○笠井委員 そうしますと、総理、そういう対策をとって、浜岡原発に福島原発事故のときの大津波以上のさらに巨大な大津波が来ないという保証はあるんでしょうか。

○寺坂政府参考人 お答え申し上げます。
 各地域の津波の高さでございますけれども、ただいま申し上げましたように十五メートルを一つの上限としてございますけれども、それを上回る津波につきまして、その可能性は論理的にはゼロということはないと思いますけれども、今般は非常に高い津波、十五メートルということでございますので、そういう意味合いでの十五メートルというものを一つの目安としたもの。
 いずれにいたしましても、津波対策につきましては、今般のその検証、そういった作業の中でしっかりと考えていくべきものと考えてございます。

○笠井委員 論理的にゼロじゃないとかいう話じゃないんですよ。だって、何の科学的根拠もないですよ。想定を超えた事態が起こったと言っているのが今回の福島の場合でしょう。だから、これまで起こったものよりもそれ以上のことが起こらないなんてことは、あり得ないということは言えないはずなんですよ。最悪に備えるというのが今回の教訓じゃないですか。
 しかも、東海地震に伴う浜岡原発の耐震安全対策そのものについてもどうかと見ますと、では保安院にもう一つ確認しますけれども、原発の耐震性について、二〇〇六年に発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針というのが改定をされました。これに基づいて、中部電力は、浜岡原発の三、四、五号機に関する耐震安全性評価結果報告書というのを、二〇〇七年に三号機、四号機、そして五号機については二〇〇九年に提出しておりますが、保安院として、この中電の提出した耐震の報告書についての評価をバックチェックする、つまり、これでいいかどうかというのをバックチェックする作業というのはもう終わったんですか。

○寺坂政府参考人 委員御指摘のとおり、新耐震指針に基づきますいわゆる耐震バックチェックを実施中でございます。
 中部電力からの報告は受けてございますけれども、耐震指針の後の新潟県中越沖地震、あるいは一昨年の駿河湾におきます地震、そういったものも踏まえた調査などを行っている、そういったものもございまして、報告は受けておりますけれども、まだ国としてのバックチェックの作業は終了はしてございません。

○笠井委員 だから、終わっていないんですよ、総理。福島原発を含めて、その事故前の指針に照らしてさえ、保安院のバックチェックは終わっていないと。つまり、浜岡原発は耐震設計上も大丈夫という結論は保安院自身出してないんです、作業中と。
 でも、海江田大臣は、今回の浜岡原発の停止に伴う九日の談話の中で、浜岡原発の耐震安全対策はこれまで適切に講じられている、一連の津波対策を講じれば再起動するのに十分な安全性を備えると今から言っちゃったんですよ。しかし、そうした対策だけで東海地震に対して安全だという客観的な保証はどこにもないと、保安院自身は、耐震についてまだ、オーケーしていい、これで結構と言ってないと。
 絶対安全でないと動かさない、停止要請というのはそういう政治判断だということを総理も繰り返し言われてきました。そうおっしゃるなら、浜岡原発で中部電力がやろうとしている津波対策だけで再開よしとは到底ならないんじゃないでしょうか。これは要請をされた総理に伺いたいと思います。


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177-衆-科学技術・イノベーショ…-4号 平成23年05月19日

平成二十三年五月十九日(木曜日)
    午前九時開議


○吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 私は、きょうは最初に「もんじゅ」にかかわって伺っておきたいと思います。
 二〇〇八年の四月四日の内閣委員会で、実は原発敷地や直下に活断層のあるものはあるのかという質問をいたしましたときに、当時の佐藤均原子力安全・保安審議官は、原電敦賀の敷地表面に耐震設計上考慮すべき活断層がある、関電美浜については、原発の地下深く活断層があります、「もんじゅ」から二百メートルのところに活断層を認めているという御答弁がありました。
 寺坂院長も五月十一日の経産委員会で、活断層から一キロメートル以内の原発として上記三つを挙げられたわけですが、福島第一では、外部電源の喪失が炉心溶融の大きな要因の一つになりました。たとえ津波で内部電源が喪失しても外部電源が生きておればよかったんですが、夜の森線、受電鉄塔倒壊ということによって外部電源がとれなくなった。
 女川原発の調査をやりましたら、外部電源は生きていたわけですね。五系列のうち四系列だめになったけれども、一系列生きていた。これは、仮に女川で内部電源が喪失しても大丈夫だったということになると思うんです。
 そこで、最初に寺坂保安院長に伺っておきたいんですが、よく原発プラントの評価はやるんですね。しかし、今、活断層の上とか近くにある福井県の三つの原発について見たときに、外部電源の鉄塔そのもの、送電鉄塔あるいは受電鉄塔、これの耐震安全性についての評価というものはやっているのかどうかを伺います。

○寺坂政府参考人 お答え申し上げます。
 原子力発電所の耐震安全性を検討するに当たりまして、外部電源、そういったものについての評価は一応行いますけれども、耐震安全性という意味合いにおきましては、原子炉あるいはその他の重要な設備に比べますと、重要度が相対的に低い、そういう内容での審査になっているのが現状でございます。

○吉井委員 ですから、プラントの評価はするんですけれども、外部電源等の評価についてはやっていなかった、これが今回、夜の森線の鉄塔倒壊につながったと思うんです。
 あわせて伺っておきますが、内部電源もまた問題になるわけですね。巨大な地震動が来たときにDGが破損しないのかどうか、それからバッテリーが大丈夫か、あるいはバッテリーの破損だけじゃなしに断線、そういったことがないのかということについての点検が必要だと思うんです。
 伺っておきたいのは、ディーゼル発電機についても破損事故がこれまで結構あったのではないか。これは、何も東電の福島だけじゃないですよ、ほかも含めてですが、そのことについて伺っておきたい。
 もう一つ、この機会に寺坂保安院長に伺っておきたいのは、福島第一の二号機の今後の進展についてというプラント班の、プラント解析予測システム、ERSSによる保守的に評価した結果がどうなるかというのはいただいていますし、国会にも出ているんですが、同じことは、二号機だけじゃなしに、一号機についても三号機についても四号機についても、当然プラント班としては予測というものを当日行っていると思うんですが、これについても伺っておきます。

○寺坂政府参考人 まず、非常用電源と申しますか、バックアップ電源に係りますトラブルに関しましては、手元の資料で、過去十年間、法令報告の対象になるトラブルについてさかのぼってみましたら、これまでに法令報告対象のトラブルは七件ございます。さまざまなケースがあるわけでございますけれども、そのような件数がトラブルとして法令報告をされてございます。
 それから、事故進展の関係でございますけれども、二号機に関しましては、先ほど委員からお話がございましたような、当面二号機についてどのように評価をしていくのかということについて情報共有をしたものでございます。
 あと、他の号機に関しましては、全体としてどこまでの情報共有ができているかということについてはともかくといたしまして、幾つかの作業をしていることはそのとおりでございます。

○吉井委員 要するに、一号、三号、四号についても、一号の方が早く問題になったわけですから、プラント班の方でちゃんと進展予測を行っていたということで理解していいですね。

○寺坂政府参考人 先ほど申し上げましたように、どのような形で最終的に情報共有がなされているかということについては確認をする必要がございますけれども、さまざまな作業をいろいろなレベルでやっておるということは、そのとおりでございます。


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177-参-予算委員会-19号 平成23年06月10日

平成二十三年六月十日(金曜日)
   午前九時開会


○福島みずほ君 メルトダウンでもびっくりですが、メルトスルーが起きている。そのことを今回のIAEAの報告書にも言っています。可能性という形で書いてありますが、このIAEAに出した報告書の中で、メルトスルー、原子炉、要するに圧力容器から格納容器に落ちちゃったと、落ちているというか、半熟卵がどどどどと落ちていっていると、こういう状況を日本政府が認めたと。これは本当に、日本でメルトスルーまで起きてしまった、大変な事態だというふうに考えています。
 ところで、三月十二日午前八時三十九分、放射性物質テルル132、東京電力福島第一原発から六キロ離れた福島県浪江町で検出をされております。このテルル132の検出は、核燃料が千度以上になったことを示すもので、ペレット、燃料が損傷し、放射性物質が格納容器から外に出ていることを明らかにしています。つまり、既に三月十二日の朝八時三十九分には燃料棒が溶融しているし、さらに外に出ているわけです。このことをなぜ早く国民に言わなかったのか。
 これは経済産業省、そして官房長官、官邸はこのことを知っていたんですか。

○政府参考人(寺坂信昭君) お答え申し上げます。
 三月十四日に私どもが地震被害情報として公表している資料がございますけれども、そこの添付資料といたしまして、現地からの情報ということで、緊急時環境放射線モニタリングの実施によりましてテルルの分析結果についても公表してございます。
 なお、この公表した数字につきましては、三月十三日八時から八時十分に採取した試料からのものでございまして、テルル132について公表しているところでございます。

○福島みずほ君 確かに、数字だけはテルル132って出ているんです。でも、それ国民には分からないですよ。重要なことは、最近保安院が解析したら、それは本当かどうか分かりませんが、地震から五時間後にメルトダウンが起きていた、そして当時七十七万テラベクレルもの放射性物質が出ていたと発表しました。大事なことは、もう十二、十三で燃料棒が溶融し、かつそれが外に出ているということなんですよ。
 それをなぜ国民に分かりやすくそのとききちっと伝えなかったんでしょうか。官邸、どうですか。

○国務大臣(枝野幸男君) 私も今、テルルという、これ放射性物質だと思いますけれども、について、今委員が御指摘いただいたような、何というんでしょう、根拠になるようなものだということについては、今の御質問をお聞きをして初めて承知をしたものでございます。
 原子力発電所の事故以降、原子炉の燃料が溶融をしている可能性があるということについては報告を受けておりましたし、私自身も記者会見でそのことを申し上げて、そのことについては、例えば三月十三日の朝日新聞の夕刊などでもそのことをきちっと報道していただいているところでございます。
 ただ、まさにいわゆる全炉心溶融であるとか、それが原子炉から外に漏れ出ているということについては、その後の解析の結果の報告としてそういうことであったという報告を受けたものでございます。
 逆に、十三日とか十四日のころには、全炉心溶融とか、それから、つまり、メルトスルーですか、原子炉から漏れ出ているということにさせないためにどうしたらいいんだということで、もうまさに徹夜でやっておりましたので、そういったこと、起きている可能性については十分配慮して避難等についての指示を出しておりますが、何とか、しないうちに止められないかということで努力をしていた時期でございます。

○福島みずほ君 私は、十二日の朝、保安院に電話をして燃料棒が溶融している可能性があると聞いて、本当に驚愕をしました。でも、このテルル132が検出されていたということは、既に燃料棒が十二、十三で溶融し、かつ格納容器の外に出ているということなんです。
 保安院、なぜこれをきちっと説明しなかったんですか、国民に対して。

○政府参考人(寺坂信昭君) お答え申し上げます。
 テルル132に関しましての直接の説明はしていなかったというふうに認識してございますけれども、こういう注水が行われずにその水位が低下していきますと、その燃料の一部が露出して被覆管の一部が溶け始めていることも考えられると、そういった旨の説明につきましては三月十二日時点で行っているところでございます。

○福島みずほ君 国民には燃料棒の溶融がしていると十二日にきちっと伝わっていないんです。そして、保安院、あなたたちは、テルルが出ているということは、燃料棒が溶融している可能性があるじゃなくて、燃料棒が溶融し、かつ格納容器の外に出ていると分かっているわけじゃないですか。七十七万テラベクレルの放射性物質が外に出ているんですよ。このことを保安院が、経済産業省がきちっと国民に伝えていたら、国民の行動は変わっていますよ。
 官房長官は水素爆発の後の記者会見で、一号機の建屋がなくなっても格納容器は健全に保たれている、外部のモニターでは線量がむしろ下がっているので炉心の冷却は進行していると記者会見でおっしゃっています。しかし、そうじゃないんですよ。既にメルトダウン、そして外に出ているんですよ。国民は、直ちに健康に影響はありません、コントロール下にありますというふうに言われたんですよ。国民は本当に、十二日の時点で外に出ている、燃料棒が溶融していると分かったら、子供を避難させていますよ。東京でも子供を外に出さないですよ。どうしてそれが、十二日、保安院、分かっているのに国民に分かりやすく言わないんですか。

○政府参考人(寺坂信昭君) 先ほど申し上げましたけれども、三月十二日時点での燃料が一部溶け始めていることも考えられるというその旨の会見は行っているところでございますけれども、それ以上の詳しい話については当時できていなかったことについては、今後の様々な検証、そういったものの中で検証されるものと考えているところでございます。

○福島みずほ君 いや、駄目ですよ。
 当時、中村審議官は、メルトダウンの可能性があると言いましたよ。でも、すぐ替わりましたよね。国民に、可能性じゃないんですよ、燃料棒が溶融している証拠が出ているんですよ、格納容器の外に。それを言わなくて、今ごろになって五時間後にメルトダウンしていると解析結果分かりましたと言われたって、国民はもう被曝しているんですよ。これで、保安院、保安院は何でそういう態度なんですか。大事なことを言わなかったんですよ。
 そして、それと官邸が連携していないことも本当に問題です。このIAEAの報告書の中には、リスクの見通しまでは十分には示してこなかったため、かえって今後の見通しに不安を持たれる面もあったと書いてあります。社民党はずっと、十キロ圏内では駄目だと言いました。十二日三時に言いましたよね、官邸に行ったとき。燃料棒が溶融している可能性がある、十キロでは足りない。十キロで足りるというのが当時の官邸でしたよ。早く、なぜ二十キロ、三十キロやらなかったのか。なぜ屋内退避を一か月も延ばしたのか。反省はありますか。


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177-参-東日本大震災復興特別委…-2号 平成23年06月14日

平成二十三年六月十四日(火曜日)
   午前九時開会


○小熊慎司君 そういう話は平成十五年も十六年も私、聞いているんですよ。何回聞いても同じなんですよ。今の社長の答弁も、それは文章化すればそれはきれいな文章になりますよ。だけど、信頼がないんですよ、そこに。
 そして、その当時、保安院長も県議会に来られてこんなことを言っていますよ。規制当局自身として不正を見抜けなかった規制行政の今までの現実の問題がある。そこで問題点を自覚していながら、結局は今回の対応においても何らその反省に立った問題の解決で事に当たらなかった。保安院、この点どうですか。

○政府参考人(寺坂信昭君) お答え申し上げます。
 平成十四年八月に発覚いたしました自主点検作業記録に係るデータ改ざんの不正問題、そういったことに対しまして、制度改正を始め対応を進めてまいりました。さらに、平成十八年の秋から翌年にかけまして、過去のデータ改ざんあるいは手続の不備、そういったものにつきましての総点検を実施いたしました。そこから洗い出されました問題についての制度の見直し、対応なども進めてまいったところでございます。
 日々の保安検査あるいは東京電力幹部との意見交換、そういった中で情報発信の必要性、そういったものは積み重ねてきたところでございますけれども、今回の事故に関しまして、情報発信の仕方あるいは信頼性、そういったものについて様々な御批判があることは承知をしてございます。こういったことも含めまして、どのように更なる透明性確保を図っていくか、事故原因の徹底的な検証も含めまして、これから対応を考えていくべきものと考えてございます。


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177-参-内閣委員会-9号 平成23年06月16日

平成二十三年六月十六日(木曜日)
   午前十時開会


○政府参考人(班目春樹君) まずは、この全交流電源喪失という事態を引き起こしたということの元々の原因として、長期間にわたるそのようなものは考えなくてもいいという安全設計指針というものがあったということは事実でございます。これについては根本的な見直しをさせていただきたいと思います。
 それから、原子力安全委員会は、これは助言機関といいますか、そういう指針を定めるところなので、規制行政庁である原子力安全・保安院の方におかれては、我々が示す基本方針に基づいてしっかりとしたチェックを既設の炉に対してやっていただきたいというふうに思っているところでございます。

○大久保潔重君 そうしたら、そういう安全委員会のいわゆる助言を受けて、保安院、どういうふうなことを考えておられますか。

○政府参考人(寺坂信昭君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、東京電力の福島第一原子力発電所、一号機から六号機までございまして、外部電源の喪失は共通をしておったものでございますけれども、六号機におきましては非常用ディーゼル三台のうちの一台が稼働ができたということによりまして、この六号機とつながっております五号機も電源が確保できた、非常用ディーゼルでですね、そういった意味で、五号機、六号機につきましては早い段階で冷温停止の状態になったということで、そこまで持っていくことができたということでございます。
 ただ、その電源の確保の仕方につきましては、非常用ディーゼルの場所あるいはディーゼルの方式、同じようなものがあるよりも、多様的なそういったものがある、そういったものも含めまして、まずは緊急の安全対策ということで各電力会社にその対策を取ることを求めてきたわけでございますけれども、あわせまして、全体といたしまして、ただいま安全委員長が御答弁申し上げましたように、電源の喪失、これを前提としてどのような対応を考えていくのかということは非常に大事な問題でございます。これまでそこの点についての準備が不十分なところがございますので、こういったことについても早急に基準の見直し、そういったものも含めまして対応を図ってまいりたいと考えておるところでございます。

○大久保潔重君 あの事故直後に、本当にその当事者の皆さんが右往左往されたわけですよね。地震の観測データがその基準値を上回る場所も当然何か所か、五百五十ガルとかですね、そういうのを観測されておりますけれども、多くはその基準値を下回っていたわけですよね。それで、いとも簡単に外部の電源がやられたのかということが問題ですし、さらには、やはり多重系の電源というのをしっかり確保していく必要があるんじゃなかろうかということで質問をさせていただきました。
 それから、水が漏れているという状況であります。原子炉から漏れた大量の水がタービン建屋などに今たまっております。この水漏れについても、メルトダウンによりスルーしたものとか、そういう情報も今日まで相当錯綜したわけでありますけれども、そのメルトダウン以外に、当初の地震の一撃によってプラントが破損したんじゃないかというような、そういう話も聞きますが、それはどういう認識でございましょうか。

○政府参考人(寺坂信昭君) 先ほど申し上げましたように、地震の最初のことによりまして電源の喪失ということが起こったわけでございますけれども、その直後には非常用ディーゼル発電機の稼働など、そのような事態になったときの様々な防護システムと申しましょうか、安全を確保するためのシステムは作動をしたというふうに私どもはデータなどから確認をしてございます。それで、約一時間弱後に大きな津波が襲来いたしまして、非常用電源そのものについても確保ができなくなってきたというようなことでございまして、そういった意味におきましては、その最初の地震によりまして何か大きな破断とかそういったようなものが生じたというふうには見ておりません。
 ただ、現実にどの程度の損傷といいますか、ひびとか、そういったものにつきましては、現場の様々な制約から実際に点検とかそういったところまで至っていないというようなところもございますので、そういったことについての最終的な確認というものはできておりませんけれども、いずれにいたしましても、当初の段階におきましては、非常用発電機の作動を始めといたしまして、あるいは大きな圧力の低下とか、そういったものはなかったというようなことでございまして、地震が今回の事態につながった原因というふうには見ておらないところでございます。


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・設置関係資料 その15 日本原子力学会原子力安全調査専門委員会

・設置関係資料 その15 日本原子力学会原子力安全調査専門委員会


http://www.aesj.or.jp/information/fnpp201103/chousacom/gb/gbcom_kyokun_gaiyo20110509.pdf

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福島第一原子力発電所事故からの教訓
2011年5月9日
一般社団法人日本原子力学会
原子力安全調査専門委員会
技術分析分科会
(QandA_gb@aesj.or.jp)

はじめに
福島第一原子力発電所の事故から教訓をくみ取り、世界で稼働中の原子力発電所で同じような事故を二度と起こさないようにすることが重要である。
公開されている情報を元に、今回の事故とその対応を、テーマに分類、分析し、その中から得られる教訓をまとめ、考えられる対策の例を提言としてとりまとめた。
なお、提言としては、「1年程度の短期に行うべき対策の例」と、「2、3年程度の中期にじっくり改革すべき対策の例」にまとめた。
1. 地震
2 津波
3 全電源喪失
4 全冷却系喪失
5. アクシデントマネジメント
6. 水素爆発
7. 使用済み燃料貯蔵プール
8. 安全研究
9. 安全規制と安全設計
10 組織・危機管理
11. 情報公開
12. 緊急時安全管理

1.地震の揺れに対する教訓
a. 地震の揺れに対する従来の対策は、おおむね有効であった可能性が高いと推定される
b. 外部電源系の地震対策が十分でなく、事故の拡大を防げなかった
提言(短期)
(1) 一部基準地震動Ssを越えた女川、東海第二原子力発電所については、地震の揺れによる影響について、定量的な評価を実施。再起動に向けて、必要があれば安全強化を行う
(2) 福島第一及び福島第二原子力発電所について、今回の地震に対する耐震評価を実施し、得られた知見を耐震設計の改善に資すること
提言(中期)
(3) 日本国内の発電所に今回の地震のメカニズムから必要があれば基準地震動Ssの見直しを行い、バックチェックを急ぐこと
(4) 外部電源の耐震性の考え方について、再度検討する必要がある

2.津波に対する教訓
a. 耐震設計で考慮していた津波の規模が不十分であった
b. 海水の浸水により、安全上重要な機器が停止し、事故の拡大を防げなかった
c. 地下構造物の浸水防止が不十分であり復旧作業を妨げている
提言(短期)
(1) 安全上重要な機器の損傷を防ぐため、これらが配置されている建物に海水が入らないようにするなどの、ハードウエア対応
(2) 今回の知見に基づき、津波の想定を見直すリスク評価手法を取り入れ、想定する津波に対する標準化を進める
提言(中期)
(3) 津波が敷地内に浸入しないように、防潮堤を作る
(4) 建物の水密性を高める。電線管など、すべての浸水経路を塞ぐ
(5) 津波によって機器や構造物が流され、建屋に障害を与える可能性考慮
(6) 排水ポンプをあらかじめ設置しておく
(7) 機器の予備品を、津波に影響を受けない場所に準備しておく
(8) 津波により散乱する瓦礫を除去する重機などをあらかじめ準備
(9) 安全重要度が低いピットであっても、海岸に近いものについては水密性を高め、津波が侵入しないようにする

3.全電源喪失に対する教訓
a. 安全審査が不十分であった
b. 全電源が長期間喪失し、事象の進展が防げなかった
c. 原子炉内の状況把握が困難となった
d. 電源が一部でも残っていれば、事象の進展を食い止められる可能性がある
提言(短期)
(1) 電源車、小型発電機など多様な方法で電源を供給する
(2) 交流電源がすべて喪失した場合を想定し、重要な機器および炉心の監視系供給をへの電力行えるようにする
(3) 発電機を複数機設置する場合は、あらかじめケーブルを接続しておく
提言(中期)
(4) 安全審査指針などの見直しをすすめる
(5) ガスタービン発電機など、多様な発電機を導入する。配置にも多様性を求め、固定式のものは免震床などを考慮する
(6) 海水冷却に頼らない、空冷式発電機を準備する
(7) 予備の電源盤を準備する
(8) 他の発電所(例えば水力)との電源融通を行う
(9) 蒸気タービン駆動炉心注水ポンプには小型の発電機を取り付け、制御用のバッテリーの充電を行う

4.全冷却系喪失に対する教訓
a. 海水冷却は津波に対して脆弱性がある
b. 電源があれば炉心損傷までの時間的余裕が比較的ある
提言(短期)
(1) 消防車などを用いた冷却系への注水訓練の実施とハードウエア整備
提言(中期)
(2) 海水ポンプモータなどの予備品をあらかじめ、津波の影響を受けない場所に準備しておく
(3) 海水ポンプに対する浸水防止対策例えば防水壁や専用、建屋の設置を行う
(4) 海水に頼らない冷却システムを準備し冗長性を担保する。例えば崩壊熱除去が可能な容量の空気冷却機などを設置しておく
(5) 動力の要らない自然循環冷却システムを考案する
(6) 水源を多様化しておく。(河川、ダム、防火用水など)。必要に応じて送電線をさらに多重化する

5.アクシデントマネジメントに対する教訓(1/2)
a. アクシデントマネジメント(AM)対策が事故の大幅な悪化を防いだ
b. 全電源喪失を考慮したアクシデントマネジメント(AM)が不十分であった可能性がある
c. 炉心が損傷した後、放射性物質が放出された後のAM対策が十分に検討されていなかった
提言(短期)
(1) シビアアクシデントのAM対策として、下記目的のため、数日間使用可能な予備電源を準備する。また、空気作動弁操作のために窒素ボンベを常備しておくことも有効である
i) 炉心の重要なパラメータおよび排気塔放射線モニター計測用電源ベントラインの制御が行えるように電源ラインを準備する
ii) 水素再結合機及び非常用ガス処理系電源
(2) ベント実施が現地責任者の判断でできるようにする
(3) AM対策の訓練を実際の状況(津波により瓦礫が散乱している状況など)を想定して実施する。なお、瓦礫の散乱を考慮し、あらかじめ炉心給水用ホースの設置をしておく対策なども有効である

5.アクシデントマネジメントに対する教訓(2/2)
a. アクシデントマネジメント(AM)対策が事故の大幅な悪化を防いだ
b. 全電源喪失を考慮したアクシデントマネジメント(AM)が不十分であった可能性がある
c. 炉心が損傷した後、放射性物質が放出された後のAM対策が十分に検討されていなかった
提言(中期)
(4) 全電源喪失以外の起因事象によるAMを見直すとともに、必要な常設の設備対応を実施する。なお、今回の事故における具体的なAM対応やプラントの挙動を評価し、AMの改善に繋げることが重要である
(5) ベントラインにゼオライトの砂と水を入れたフィルタードベント等を設置
(6) 同一敷地内に複数立地している場合のAM同時対応策について評価
(7) 大量の汚染水が発生する可能性がある事を考慮し、移動式汚染水処理設備をあらかじめ準備しておく(事故後に発災事業所に輸送)
(8) 炉心損傷が起きた後の、炉心冷却手法や閉じ込め手法を系統的に検討する。また、必要なハードウエア対応を考慮する
(9) 放射性物質を放出した後の、炉心冷却手法や閉じ込め手法を検討する。また、必要なハードウエア対応も考慮する

6.水素爆発に対する教訓
a. 水素爆発により原子炉建屋が破損した
b. 格納容器外の水素爆発は考慮されていなかった
c. 格納容器外への水素漏洩経路が不明
提言(短期)
(1) 格納容器パラメータ計測システムや水素結合器などへ、予備電源を供給ーモニターができできる仕組みと、パラメタの遠隔るようにする
(2) ベントラインの再チェックと漏洩検査を行う。また、ベントの訓練を実施する
提言(中期)
(3) 格納容器外水素爆発のメカニズムを評価する
(4) 格納容器外に水素が漏れないようなAM対策を行う。例えば、静的触媒再結合器の設置などが考えられる

7.使用済み燃料貯蔵プールに対する教訓
a. 使用済み燃料貯蔵プールの冷却に失敗した
b. 建屋が破損した後の使用済み燃料の閉じ込めに課題がある
提言(短期)
(1) 使用済み燃料貯蔵プールに対するAMを見直す
具体的には電源喪失直後に消防車による注水ができるように準備する、プールのある運転床にある消火栓から注水ができるように準備する、あらかじめフレキシブルホースなどを設置して地上からの注水が容易になるようにしておくことなどが考えられる
(2) 電源喪失しても予備電源などで燃料プール温度及び漏洩監視モニターを監視できるように電源を準備する
提言(中期)
(3) 使用済み燃料貯蔵プールの自然循環冷却システムを導入する
(4) 空冷の中間貯蔵設備を導入する
(5) シミュレーションによって事故挙動を評価し、4号機建屋破損の原因を調査・特定する。また使用済み燃料貯蔵プールの状況を調査する

8.安全研究の推進に対する教訓
a. シビアアクシデント研究と成果の活用が不十分であった
b. 国家予算の使い方に無駄が多い
提言(短期)
(1) JAEAやJNESを通じた、既存のシビアアクシデント研究成果の規制への反映
(2) 人材育成シビアアクシデントを含む安全研究、安全設計に係わる人材育成を体系的に実施する
提言(中期)
(3) シビアアクシデント研究の推進
特に、水素挙動解析、水素燃焼、使用済み燃料プール評価など
(4) モデリング・シミュレーション技術の推進
特に、原子力安全の高度化、シミュレーションの検証と妥当性確認
(5) 災害時に必要な研究成果については、予算措置を行い、維持していくことが必要である。場合によっては法律改正も必要である

9.安全規制と安全設計に対する教訓
a. 外的事象に対する安全設計の考え方が不十分であった
b. 極まれに発生するが、影響が大きな事象に対する評価が不十分
c. 共通要因故障への備えが不十分であった
d. 日本の安全規制の仕組みが不十分であった
提言(短期)
(1) 津波に対するアクシデントマネジメント(AM)対策を評価する
提言(中期)
(2) 外的事象に対する定量的リスク評価手法の確立
(3) 内的事象に対する深層防護の再確認と定量的リスク評価の高度化
(4) 不確定性が大きく影響が巨大な事象に関するリス、ク評価手法確立
(5) 定量的リスク評価でカバーできない事象に対するAM対応策
(6) 安全重要度・多様性多重性の見直し。特に電気系の見直し
(7) 日本の安全規制システムの全面的な見直し。
i) 法律体系を見直し、原子炉等規制法に電気事業法を統一する
ii) 原子炉等規制法を改正しシビアアクシデントを規制範囲に取り込む
iii) 設置許可に包括的安全解析書を導入する。
iv) 民間第三者認証制度を導入し、あわせて監査的検査制度を導入する

10.組織、危機管理に対する教訓
a. 責任体制が不十分であった
b. 停電や情報伝達の問題などにより緊急時の円滑な対応がうまくいかなかった
提言(短期)
(1) 専門性を持った責任者がすべての責任の統括する
提言(中期)
(2) 専門性を持った規制組織を作る
i) 原子力安全委員会を三条機関化し、日本版NRC(米国原子力安全規制委員会)のような専門性の高い規制組織を作る
ii) 環境放射線モニタリングを原子炉等規制法に取込み、都道府県が実施することで、原子力施設の監視を強化し、透明性を高めるとともに、原災法への円滑な橋渡しを図る
iii) 役職に応じた資格制度を導入するとともに、人事の固定化を図る
iv) 規制監査機関を作り、委員会事務局の監査を行う
v) 同機関は、諸外国の規制機関との連携を緊密に保つとともに、IAEAの活動に能動的に参画する

11.情報公開に対する教訓
a. 情報公開が十分ではないと見られている
b. 技術的な説明が不十分であった
c. 放射線安全に対する説明性が低い
d. 避難区域の設定が段階的に拡大した
e. 避難区域などの設定に関する自治体との連携不足
f. 自治体と災害本部の意思疎通が無い
提言(短期)
(1) SPEEDIの全面的な公開
(2) プレス発表における技術的な説明の改善
(3) 統一された放射線安全の考え方に基づいた防護措置の発表
(4) 原子力災害対策法の見直し。特に国と自治体の役割を実態に合わせて明確化
提言(中期)
(5) 見直された原子力災害対策法にのっとり、事故が起こることを前提とした訓練の実施
(6) ERSSやSPEEDIの高度化と利用法に関する議論を明確化
(7) 原子力透明化法の制定

12.緊急時安全管理に対する教訓
a. 構内の放射線量に関する情報一元化、共有化に課題がある
b. 免震重要棟の設計条件に放射性物質の流入は想定されていなかった
c. 緊急事態での従業員・作業員への健康等への影響の認識が不足
提言(短期)
(1) 情報共有化の徹底
(2) 緊急時における放射線管理要員の確保および資機材の調達の事前計
提言(中期)
画と実行可能性確認
(3) 緊急時の人間行動など行動科学および健康科学面からの分析とその知見の反映

重要な教訓のまとめ
a. 耐震設計で考慮していた津波の規模が不十分であった
b. 海水の浸水により、安全上重要な機器が停止し、その結果、全交流電源喪失、全冷却系喪失となり、事故の拡大を防げなかった
c. 全電源が長期間喪失し、非常用冷却システムの稼動が十分ではなく、事象の進展が防げなかった。
d. 電源喪失により、原子炉内の状況把握が困難となった。
e. 海水冷却は津波に対して脆弱性があり、ヒートシンクが失われた
f. 全電源喪失を考慮したアクシデントマネジメント(AM)が不十分であった可能性がある
g. 格納容器外の水素爆発は考慮されていなかった
h. 建屋が破損した後の使用済み燃料の閉じ込めに課題がある
i. 外的事象に対する安全設計の考え方が不十分であった
j. 日本の安全規制の仕組みが不十分であった
k. 情報発信に多くの課題がある
l. アクシデントマネジメント(AM)対策が事故の大幅な悪化を防いだ。
m. 地震の揺れに対する従来の対策は、おおむね有効であった可能性が高いと推定される

重要な対策のまとめ
1. 津波対策として水密性強化など物理的な対策を行うこと
2. 多様な電源をあらかじめ準備しておくこと
3. 海水冷却だけではない、多様な冷却システムを検討し準備すること
4. シビアアクシデントが発生しうることを想定し、アクシデントマネジメント(AM)対策を十分に検討すること。また、AM対策として複数電源ラインなど必要なハードウエアを整備すること。さらに、AMに対する訓練や教育を実施すること
5. 水素爆発を起こさないAM対策や、使用済み燃料貯蔵プールに対するAM対策を検討し、必要な手当てをすること
6. シビアアクシデント研究を推進するとともに、人材育成につとめること
7. 安全規制のあり方について、法律改正、組織改正を含めて根本から見直すこと
8. 定量的リスク評価手法を確立し、リスクを全面的に規制に取込むこと
9. 緊急時の情報公開や情報共有について再評価すること
10. 事故が起こることを前提とした防災訓練を実施すること
11 今回の地震・津波・事故に対して、耐震設計、配置設計、AM対応、プラント応答などを詳細に評価し、改善に資すること

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福島第一原子力発電所事故「事故調査・検討委員会」の調査における個人の責任追及に偏らない調査を求める声明 (2011/7/7)
http://www.aesj.or.jp/info/pressrelease/pr20110707.pdf


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・税金関係 その2 受け取った損害賠償金についての課税

・税金関係 その2 受け取った損害賠償金についての課税

 国税庁のサイト、交通事故に関して

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http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1700.htm

No.1700 加害者から治療費、慰謝料及び損害賠償金などを受け取ったとき

[平成22年4月1日現在法令等]

 交通事故などのために、被害者が次のような治療費、慰謝料、損害賠償金などを受け取ったときは、これらの損害賠償金等は非課税となります
 ただし、これらの損害賠償金のうちに、その被害者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、その補てんされた金額に相当する部分については、各種所得の収入金額とされます。

1 心身に加えられた損害について支払を受ける慰謝料など
 具体的には、事故による負傷について受ける治療費や慰謝料、それに負傷して働けないことによる収益の補償をする損害賠償金などです。
 ただし、治療費として受け取った金額は、医療費を補てんする金額であるため、医療費控除を受ける場合は、支払った医療費の金額から差し引くことになります。しかし、その医療費を補てんし、なお余りがあっても他の医療費から差し引く必要はありません。

2 不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害について受ける損害賠償金など
 具体的には、事故による車両の破損について受ける損害賠償金などです。
 しかし、損害を受けた資産が事業用の資産の場合、次のようなケースでは注意が必要です。
(1) 商品の配送中の事故で使いものにならなくなった商品について損害賠償金などを受け取ったケース
 棚卸資産の損害に対する損害賠償金などは、収入金額に代わる性質を持つものであり、非課税とはならず、事業所得の収入金額となります。

(2) 車両が店舗に飛び込んで損害を受けた場合で、その店舗の補修期間中に仮店舗を賃借するときの賃借料の補償として損害賠償金などを受け取ったケース
 この損害賠償金などは、必要経費に算入される金額を補てんするためのものであり、非課税とはならず、事業所得の収入金額となります。

(3) 事故により事業用の車両を廃車とする場合で、その車両の損害について損害賠償金などを受け取ったケース
 車両の損害に対する損害賠償金などは非課税となります。ただし、車両について資産損失の金額を計算する場合は、損失額から損害賠償金などによって補てんされる部分の金額を差し引いて計算します。
 なお、この場合、損害賠償金などの金額がその損失額を超えたとしても、全額が非課税となります。

3 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金
 非課税となる見舞金は、社会通念上それにふさわしい金額のものに限られます。また、収入金額に代わる性質を持つものや役務の対価となる性質を持つものは、非課税所得から除かれます。

(所法9、51、73、所令30、94、所基通9-19、9-23)

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・所得税法9条1項
十七  保険業法 (平成七年法律第百五号)第二条第四項 (定義)に規定する損害保険会社又は同条第九項 に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの


・所得税法施行令
(非課税とされる保険金、損害賠償金等)
第三十条  法第九条第一項第十七号 (非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号 の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。
一  損害保険契約(保険業法 (平成七年法律第百五号)第二条第四項 (定義)に規定する損害保険会社若しくは同条第九項 に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約又は同条第十八項 に規定する少額短期保険業者(以下この号において「少額短期保険業者」という。)の締結したこれに類する保険契約をいう。以下この条において同じ。)に基づく保険金、生命保険契約(同法第二条第三項 に規定する生命保険会社若しくは同条第八項 に規定する外国生命保険会社等の締結した保険契約又は少額短期保険業者の締結したこれに類する保険契約をいう。以下この号において同じ。)又は旧簡易生命保険契約(郵政民営化法 等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十七年法律第百二号)第二条 (法律の廃止)の規定による廃止前の簡易生命保険法(昭和二十四年法律第六十八号)第三条 (政府保証)に規定する簡易生命保険契約をいう。)に基づく給付金及び損害保険契約又は生命保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受けるものを含む。)
二  損害保険契約に基づく保険金及び損害保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金(前号に該当するもの及び第百八十四条第四項(満期返戻金等の意義)に規定する満期返戻金等その他これに類するものを除く。)で資産の損害に基因して支払を受けるもの並びに不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金(これらのうち第九十四条(事業所得の収入金額とされる保険金等)の規定に該当するものを除く。)
三  心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(第九十四条の規定に該当するものその他役務の対価たる性質を有するものを除く。)

(事業所得の収入金額とされる保険金等)
第九十四条  不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務を行なう居住者が受ける次に掲げるもので、その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは、これらの所得に係る収入金額とする。
一  当該業務に係るたな卸資産(第八十一条各号(譲渡所得の基因とされないたな卸資産に準ずる資産)に掲げる資産を含む。)、山林、工業所有権その他の技術に関する権利、特別の技術による生産方式若しくはこれらに準ずるもの又は著作権(出版権及び著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)につき損失を受けたことにより取得する保険金、損害賠償金、見舞金その他これらに類するもの(山林につき法第五十一条第三項 (山林損失の必要経費算入)の規定に該当する損失を受けたことにより取得するものについては、その損失の金額をこえる場合におけるそのこえる金額に相当する部分に限る。)
二  当該業務の全部又は一部の休止、転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの
2  第七十九条第一項(資産の譲渡とみなされる行為)の規定に該当する同項の行為に係る対価で法第三十三条第二項第一号 (譲渡所得)の規定により譲渡所得の収入金額に含まれないものは、事業所得又は雑所得に係る収入金額とし、当該対価につき第百七十四条から第百七十七条まで(借地権の設定をした場合の譲渡所得に係る取得費等)の規定に準じて計算した金額は、当該事業所得又は雑所得に係る必要経費に算入する。


・必要経費に算入される金額を補てんするための金額の範囲(所得税基本通達9-19)
 令第30条本文かっこ内に規定する「必要経費に算入される金額を補てんするための金額」とは、例えば、心身又は資産の損害に基因して休業する場合にその休業期間中における使用人の給料、店舗の賃借料その他通常の維持管理に要する費用を補てんするものとして計算された金額のようなものをいい、法第51条第1項又は第4項《資産損失の必要経費算入》の規定によりこれらの項に規定する損失の金額の計算上控除される保険金、損害賠償金その他これらに類するものは、これに含まれない。(平元直所3-14、直法6-9、直資3-8改正)


・葬祭料、香典等(所得税基本通達9-23)
 葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、令第30条の規定により課税しないものとする。(平元直所3-14、直法6-9、直資3-8改正)


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 大雑把にいうと、心身の損害について支払われた賠償金については全部、資産に加えられた損害については、棚卸資産、必要経費の補填分を除いて、原則として全部が非課税となる。
 心身の被害で健康を害して休業の場合は、その休業損の賠償金は、非課税(所得税法30条)。店舗等資産の被害で休業の場合は、その休業損の賠償金は、課税(所得税法施行令94条1項2号)?。


 なお、これら規定によって、賠償金について非課税となり、税金を免れたことを利益と見て、加害者が損益相殺を主張してよいかという問題については、以下のとおり、裁判所は否定。

・昭和45年7月24日最高裁判決
「被上告人が本件事故による負傷のためたばこ小売業を廃業するのやむなきに至り、右営業上得べかりし利益を喪失したことによつて被つた損害額を算定するにあたつて、営業収益に対して課せられるべき所得税その他の租税額を控除すべきではないとした原審の判断は正当であり、税法上損害賠償金が非課税所得とされているからといつて、損害額の算定にあたり租税額を控除すべきものと解するのは相当でない。」


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・設置関係資料 その14 原子力施設事故・故障分析評価検討会

・設置関係資料 その14 原子力施設事故・故障分析評価検討会

YOMIURI ONLINE
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110716-OYT1T00168.htm

原発の電源喪失、安全委93年に検討…公表せず

東京電力の福島第一原子力発電所事故の原因となった全交流電源喪失について、国の原子力安全委員会の作業部会が1993年に国内の原発の実態を検討し、「原子炉が重大な事態に至る可能性は低い」とする報告書をまとめていたことが15日、明らかになった。

 同日開かれた内閣府の原子力安全委員会の安全設計審査指針等検討小委員会で、同委員会が報告した。報告書は、原子力施設事故・故障分析評価検討会の全交流電源喪失事象検討ワーキンググループがまとめた。メンバーは5人の専門委員のほか日本原子力研究所、東京電力、関西電力からの各1人。同報告書の存在を含め、当時は作業部会で検討した事実すら公表されなかった。
(2011年7月16日08時51分 読売新聞)

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http://www.nsc.go.jp/info/20110713_dis.pdf

原子力発電所における全交流電源喪失事象について

平成5年6月11日

原子力施設事故・故障分析評価検討会
全交流電源喪失事象検討ワーキング・グループ

一 目 次 一
1.まえがき
2.国外における全交流電源喪失事象(SBO)の位置付けと現状等について
 2.1国外のSBOの規制上の位置付け及び取り扱いとプラント設計の現状
 2.2国外の交流電源喪失事例等
 2.3国外のSBO等に対する信頼性評価
3.我が国におけるSBOの位置付けと現状等について
 3.1SBOの規制上の位置付け及び取り扱い
 3.2SBOに対するプラント設計の現状
 3,3プラントの運転管理実施状況
 3.4交流電源喪失事例等
 3.5SBO等に対する信頼性評価
4.SBOに対する指針及び安全確保対策の評価
5.結論
 5.1調査結果のまとめ
 5.2SBOに関する今後の課題
6.添付図表


1.まえがき
 全交流電源喪失事象(Station Blackout,以下「SBO」という。)とは、「外部交流電源喪失と同時に所内非常用交流電源が喪失する事象」をいう。(注)
 即ち、SBOは、外部電源がすべて喪失し、かつ非常用ディーゼル発電機(Emergency Diesel Generator,以下「EDG」という。)の全数起動失敗等により発生する複合事象であり、その発生頻度は非常に低いと考えられる。
 この万一のSBOの発生に備えて、原子カプラントは、短時間のSBOの発生に対して、原子炉を安全に停止し、かつ、停止後の冷却を確保できるよう設計されている。しかし、仮に短時間で交流電源が復旧できずSBOが長時間に及ぶ場合には、非常用蓄電池の枯渇による運転監視・制御機能等が失われ炉心の冷却等が維持できなくなることから、炉心の損傷等の重大な結果に至る可能性が生じると考えられる。なお、近年、SBOのような発生頻度が非常に低いと考えられる事象を含む課定し得るすべての事故シナリオを対象として、炉心損傷等の可能性を定量的に扮析・評価する確率論的安全評価(以下「PSA」という。)が多くの国で行われている。
 本ワーキンググルーブでは、①海外においては、短時間(調査した範囲では最長36分)ではあるがSBO事例が報告されていること、②米国の代表的な原子カプラントのPSAの結果によるとSBOが炉心損傷の主要な寄与要因となる原子カプラントがあることが報告されていること、更に、③近年、米国でSBOに対する規制措置がとられていること等に鑑み、SBOに関して国内外の原子カプラントについて規制上の要求事項、事故故障事例の調査等を行い、主にこれらの現状について以下のとおり取りまとめた。(本ワーキンググループの構成員等は別紙の通り)

(注)我が国の「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」では、全交流動力電源喪失事象とされている。     ・


<略>


4.SBOに対する指針及び安全確保対策の評価
(1)安全設計審査指針に関して
我が国の原子力プラントの電源設備は.安全設計審査指針に基づき高い信頼性と冗長性 及砂短時固の全交流電源喪失に対する原子炉の安全性確保等が求められている。一方、 我が国の原子力プラントの運転実績は約300炉年に達しており、この間、電源設備が十分に高い信頼性を達成してきているぶどうかを評価することは有用であり、このため各電源系統の信頼性、電源設備で発生しだ障害とそのプラントへの影響及び全交流電源が喪失した場合の原子炉の耐久能力を評価した。
①我が国の原子力発電所においては、これまでにSBOの事例は生じていない。なお、国 外において発生した主なSBO事例として、米国の軽水炉において発生した3件の事例 .について調査した。これらの事例からの我が国の原子力発電所への反映事項としては、 設計や運転管理の状況が必ずしも同じでないことから直接的に比較して検討することは 困難であるが、一般的涯教訓事項として、①ヒューマンエラー対策(運転員の教育訓練等)の重要性く及び②電源設備を含あた原子炉施設の安全を確保するための施設に対する原子炉停止時の適切な点検及び保守計画の重要性等についで再認識すぺきであると考えられる。
②外部電源喪失頻度について、我が国の実績は約0.01/炉年で、米国の実績約0.1/サイト年に比ぺ1桁程度低い。我が国の実績は、全て発電所外の送電線路に原因するもので、この送電線路の原因による発生率は米国とほぼ同じであるが、栄国では発電所内の原因による発生事例が多いため低い信頼性となっている。
③外部電源喪失時の復旧性能について、我が国の原子力プラントの外部電源喪失の実績データが少ないことを考慮し、ここでは原子力プラントに係静る事例に限定せず広く薮が国の2回線送電線路の復旧性能を評価し、米国の原子力プラントの実績に基づく評価値と参考までに比較した。その緒果、我が国の復旧性能ぽ全般的に良好であり、例えば復旧性能の指標としての8時間復旧失敗確率は我が国では約10-3で、米国の最も信頼性の高いクラスタの場合の10"2に比ぺても信頼性は高い。この比較ほ、概括的な比較であって相違理由についての正確な評価は困難であるが、我が国の艮好族築績は、恐らく送電線路の構成等の相違によるものと推測される。な蔚、我が国の原子力プラントの実績では、すぺて30分以内に復旧しているが、米国では復旧に量大19時間(1989年までの統計)を要した事例がある。
④EDGの起動の失敗確率にっいて、我が国の鼓近1ロ年間の実績は、約5.5×10-4/demandで、これは米国の実績約2×10'2/demandに比べて信頼性が高く、各種信頼性向上対策の結果と評価される。今後は、EDGの起助時の信頼性と起動後の運転継続信頼性についてのデータをそれぞれ分離しつつ収集一整理し、故障の分祈やPSAに反映していくことが望まれる。
⑤非常用直流電源(非常用蓄電池等)は万一のSBO時に特に重要であり、我が国の原子力プラントにおいて非常用誓電油の容量は5時間以上'(負荷の一部切り離しペース)である。非常用直流電源設備の信頼性について、我が国ではこれまでのところ蓄電池性能の劣化も含境機能の喪失事例は経験していない。従って、非常用直流電源設備の信頼性は高く維持されて亦ると考えられるが、引続き国外の事例等を収集整理し、これから得られる教訓を基に信頼性の確保に努めることが望まれる。なお、米国挺蠢いては非常用直流電源系の非常用蓄電池等の故障事例が報告されている。また、非常用蓄電池の容量は、例えばSurryにおいて、負荷の一部切り離しを行った場合寧駐4時間と評価されている。
⑥このように我が国の外部電源系統、EDG及び非常用直流電源設備の信頼性は良好であるが、更に万一のSBOを仮定した場合の原子炉の耐久能力を評価した。即ち、原子炉の耐久能力は既に手順化きれている対応操作により、蓄電池負荷の一部の切り離しを行う等により、5時間以上と評価される.試みに、米国のRG1.155に基づいて我が国のプラントの米国の新しい規制に対する適合性を評価した場合、EDGの信頼性及び発電所周囲の気象条件について我が国におけるそれらの特性を勘案すると耐久能力の時間は全てのプラントで4時間となり、これに対し我が国の代表的なプラントのSBOに対する原子炉の耐久能力は、既に手順花されている蓄電池負荷の一部の切り離しを行う等の対応操作により、約5時間以上と評価されることから、米国NRCのSBO規則に対する条件を満たしている。これらのことから、我が国のプラントのSBOに対する耐久能力は良好であると言える。
⑦我が国の代表的プラントについて行ったPSA緒果(内的事象のみを起因事象とした。)によれば、全炉心損傷頻度は小さく、SBOによる炉心損傷頻度白体も小さい。なおPWR及びBWR-3では、 SBOは炉心損傷に寄与する主要因で睦旗く、一方BWR- 4/5では、PWR及びBWR-3に比ぺその寄与割合は高いものの、 SBOによる炉心損傷頻度それ自体は小さい。
⑧主要諸外国においては、外部電源及び非常用所内電源の設置等について我国とほぼ同様な規制上の要求となっている。また、主要諸外国におげるSBOに対する規制上の要求については、米国及び仏国がSBO(長時間のSBOを含む)に対して規制上の要求を行っている。英国及び独国は、我国とほぼ同椴な規制上の要求となっている。

(2)安全評価審査指針に関して
上記「4.(1)」のように、我が国のプラントの電源系統の信頼性は現状において高く、また信頼性の維持・向上に努力が払われている。SBOの発生確率は小さい。また、万一のSBOに対しても短時間で外部電源等の復旧が期待できるので原子炉が重大な事態に至る可能性は低いと考えられる

(3)安全性の一層の向上に関して
①我が国のプラントのSBOに対する安全性の現状は、良好な運転一保守管理等に基づくものであり、これを継続していく努力が必要である。さらに、安全性を向上していくためには、運転員が手順書に習熟していくことはもちろんのこととして、今後新たな知見が得られた場合には、これを適切に設計・運転・保守管理、手順書等に反映していく努力が必要である
②国内の代表的プラントのPSAの緒果によれぱ、SBOによる炉心損傷頻度は特段高くはなっていないが、原子力安全委員会としてはシビアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントの奨励を決定しているところであり、個別プラントのPSAによりSBOによる炉心損傷頻度の検討を行うとともに、より一層効果的なアクシデントマネージメント等の整備に向けて、その検討に努めていくことが重要である。
③近年、海外のプラントにおいて原子炉停止時に非常用所内交流電源が喪失した事例も生じていること及び定期点検時の機器の分解点検等により安全系等の系統・機器の冗長性が失静れる可能性があることから、原子炉停止時の運転管理等については、十分に注意を払うことが肝要である。なお原子炉停止時のPSAにおいて、今後その検討が望まれる。

5 結論
5.1 調査結果のまとめ
全交流電源喪失事象について、これまでの我が国の原子カプラントの運転実績等に基づき、また国外の報告等を参考とし、調査した結果は以下のとおりである。
①我が国の原子力プラントにおいては、これまでにSBOの事例は生じていない。なお、国外において発生した主なSBO事例として、米国の軽水炉において発生した3件の事例について調査した。これらの事例からの我が国の原子力プラントへの反映事項としては、設計や運転管理の状況が必ずしも同じでないことから直接的に比較して検討することは困難であるが、一般的な教馴事項として、①ヒューマンエラー対策(運転員の教育訓練等)の重要性、及び②電源設備を含萄た原子炉施設の安全を確保するための施設に対する原子炉停止時の適切な点検及び保守の計画の重要性等について再認議すべきであると考えられる。
②我が国の外部電源喪失頻度は約0.01/炉年と低く、また外部電源復旧時間もこれまでの原子力プラントにおける事例はすぺて30分以内である。これば米国の外部電源喪失頻度が約0.1/サイト年、及び外部電源復旧時間が中央値で約30分、最長で約19時間(1989年までの統計)であるのと比ぺ信頼性は高い。
③EDGの起動失敗確率について、我が国の最近10年間の実績は、約6x10-4/demandであり、米国の実績約2x10-2/demandに比べ、我が国のEDGの信頼性は高い。
④直流電源(非常用蓄電池等)は万一のSBO時に特に重要である。我が国の原子力プラントにおいて非常用蓄電池の容量は5時間以上(負荷の一部切り離しベース)である。また、これまでのところ非常用直流電源系の非常用蓄電池等の故障事例はなく、信頼性は高く維持されていると考えられる。なお、米国においては非常用直流電源系の非常用蓄電池等の故障事例が報告されている。まだ、非常用蓄電池の容量は、例えSurryおいて、負荷の一部切り離しを行った場合には4時間と評価されている。
⑤このように我が国の外部電源系統、EDG及び非常用直流電源系の非常用蓄電池等の信頼性は良好でありSBOの発生は起こりにくいと考えられる。なお、万一に備え指針で要求されている2回線の送電線と独立した送電系統がら非常用電源系に電力供給可能な設計や隣接の原子力プラントからの電力供給可能な設計がされて恥る原子力プラントもある。
⑥SBO時の耐久能力については、試みに米国のRG1.155に基づいて我が国の原子力プラントを評価した場合、耐久能力の要求時間は4時間となり、これに対し我が国の代表的な原子力プラントのSBOに対する原子炉の耐久能力は、既に手順化されている蓄電池負荷の一部の切り離し等の対応操作により、5時間以上と評価されることから、米国NRCのSBO規則に対する条件を満たしている。
⑦我が国の代表的な原子力プラントについて行った内的事象のみを起因事象としたPSA結果によれは、SBOによる炉心損傷発生頻度は低く、参考として米国NRCがNUREG1032の申で示している10-5/炉年以下の目標値と比較しても低い。また、これを含めた全炉心損傷発生頻度も低い。
⑧主要諸外国におけるSBOに対する規制上の要求にっいては、米国及び仏国がSBO(長時間のSBOを含む)は対して規制上の要求を行っている。英国及び独国は、我が国とほぼ同様な規制上の要求となっでいる。
5.2 SBOに関する今後の課題
現在の良好な運転管理、保守管理及び余裕をもった設計等を継続することに加えて、安全性のより一層の向上のため、次のような措置を講ずることが望まれる
我が国の原子力プラントのSBOに対する安全性を更に向上していくためには、運転員が手順書に十分習熟した状態を維持して担くことはもちろんのこととして、今後新たな知見が得られた場合には、これを適切に設計・通転・保守管理、手順書等に反映していく努力が必要である
②国内の代表的な原子力プラントのPSAの結果からはSBOによる炉心損傷頻度は、特段高くはなっていないが、個別プラントのPSAによりSBOによる炉心損傷頻度の検討等を行うとともに、より一層効果的なアクシデントマネージメント等の整備に向けて、その検討に努めていくことが必要である。
③現状の我が国の原子力プラントの良好な運転・保守管理等を維持し、更にPSAの際には我が国の原子力プラントに対する各種データを収集することが重要なことに鑑み、今後は、EDGの起動時の信頼性及び起動後の運転継続信頼性等についてのデータを収集・整理し、故障率の分析やPSAへの反映・検討が行われることが望まれる。

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別紙
[検討の経緯]
 原子力施設事故・故障分析検討会は、平威3年4月23日に開催された第7回検討会において、全交流電源喪失事象に関して国内外の原子力プラントについて規制上の取扱い、事故故障事例等の調査を行うため、下記の構成員からなる、全交流電源喪失事象検討ワーキング・グループを設置した。
 本ワーキングーグループは、平成3年10月22日に第五回ワーキングーグループを開催し、調査を行ってきた結果、平成5年6月11日の第12回ワーキング・グループにおいて結論を得た。

ワーキング・グループの構成員
(専門委員)
竹越 尹  (主査)前電力中央研究所
相沢 清人 動力炉・核燃料開発事業団
川崎 稔 (財)放射線照射振興協会(平成3年当時、日本原子力研究所)
竹村 数男 東京商船大学名誉教授
生田目 健 日本原子力研究所

(部外協力者)
及川哲邦  日本原子力研究所.
■■■■  東京電力㈱
■■■■  関西電力㈱(平威4年6月まで)
■■■■  関西電力㈱(平成4年7月より)
[黒塗り]





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■18条 原子力損害賠償紛争審査会 中間指針の論点(案) 第10回審査会

■18条 原子力損害賠償紛争審査会 中間指針の論点(案) 第10回審査会

平成23年7月14日 第10回審査会資料

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2011/07/14/1308423_2.pdf
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(審10)資料2

中間指針の論点(案)

 本資料は、審査会における議論のために作成したものであり、指針の内容、損害の範囲に何ら予断を与えるものではない。中間指針の作成に向けて、今後の議論に必要だと考えられる内容を以下に示す。

第1 指針の位置づけ
1 第一次指針を始めこれまでに既に決定・公表した内容にその後の検討事項を加え、賠償すべき損害と認められる一定の損害類型を示すもの。
2 中間指針では、当面の被害のうち、類型化が可能で賠償すべき損害について示すが、今後、事故の収束、避難区域等の見直し等の状況の変化に伴い、必要に応じてあらためて検討を行う。
3 中間指針に示されなかったものが直ちに賠償の対象とならないというものではなく、個別具体的な事情に応じて相当因果関係のある損害と認められ得る。中間指針で明示されないものについては、東京電力によって、迅速、公平かつ適正な賠償が行われることを期待する。


第2 各損害項目に共通する考え方
1 本件事故と相当因果関係のある損害、すなわち社会通念上当該事故から当該損害が生じるのが合理的かつ相当であると判断される範囲のものが原子力損害に含まれる。
2 JCO事故を参考としつつ、本件事故特有の事情を十分考慮する。
3 地震・津波による損害は賠償の対象とはならないが、原子力損害との区別が判然としない場合には、合理的な範囲で、特定の損害が原子力損害に該当するか否か及びその損害額の推認をすることが考えられる。
4 膨大な被害者に対する迅速な救済が求められるため、合理的な範囲で証明の程度の緩和、客観的な統計データ等による合理的な算定方法等により、一定額の賠償を認めることが考えられる。
5 請求金額の一部の前払いなど、東京電力の合理的かつ柔軟な対応が求められる。


第3 政府による避難等の指示に係る損害について
[対象区域]
避難区域(警戒区域)、屋内退避区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域
※特定避難勧奨地点及び一部の地方公共団体の要請による一時避難を対象に追加することとして良いか。

[損害項目]
1 検査費用(人)
対象区域内で屋内退避し、又は同区域内から同区域外に避難した者が、放射性物質への曝露の有無等を確認する目的で受けた検査につき支出した必要かつ合理的な範囲の検査費用及びその付随費用。
※特定避難勧奨地点で避難を選択しなかった者の検査費用及びその付随用を賠償の対象とすべきか。

2 避難費用
対象者が負担した必要かつ合理的な範囲の以下の費用
)対象区域から避難するために負担した交通費、家財道具の移動費用
)対象区域外に滞在することを余儀なくされたことにより負担した宿泊費及びこの宿泊に付随して負担した費用
)避難等による生活費の増加分(避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害の額に加算)

3 一時立入費用
一時立入りに参加するために負担した必要かつ合理的な範囲の交通費、家財道具の移動費用、除染費等(前泊や後泊が不可欠な場合の宿泊費等も含む。)。

4 帰宅費用
対象区域の指定の解除に伴い、対象区域内の住居に戻るために負担した必要かつ合理的な範囲の交通費、家財道具の移動費用。

5 生命・身体的損害
①対象者が負担した以下の費用
)避難等を余儀なくされたため、傷害を負い、治療を要する程度に健康状態が悪化し、疾病にかかり、あるいは死亡したことにより生じた逸失利益、治療費、薬代、精神的損害等
)避難等を余儀なくされ、これによる治療費を要する程度の健康状態の悪化(精神的障害を含む。)等を防止するため、負担が増加した検査費、治療費、薬代等

6 精神的損害(避難生活等を余儀なくされたことによる精神的損害)
対象者個々人が受けた精神的苦痛のうち、少なくとも以下のものが賠償すべき損害と認められる。
)避難及び対象区域外滞在を長期間余儀なくされた者が、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛
)屋内退避を長期間余儀なくされた者が、正常な日常生活の維持・継続が長期間にわたり著しく阻害されたために生じた精神的苦痛
※特定避難勧奨地点から避難した者等の精神的損害の算定方法はどうするか。

7 営業損害
①対象区域内で事業の全部又は一部を営んでいた者が政府による指示等を受けて避難したことで営業不能になる等、同事業に支障が生じたことによる営業、取引等の減収分。この減収分は、本件事故がなければ得られたであろう収益から、本件事故により負担を免れた費用を控除した額としてよいか。(「収益」には、商品やサービスの売上高のほか、事業の実施に伴って得られたであろう交付金等(例えば、農業における戸別所得補償交付金、医療事業における診療報酬、私立学校における私学助成)がある場合は、これらも含まれる。また、「費用」には、商品やサービスの売上原価や販売費・一般管理費が含まれる。)
②同事業に支障が生じたために負担した必要かつ合理的な範囲の追加的費用(商品、営業資産の廃棄費用等)や、事業への支障を避けるため又は事業を変更したために生じた必要かつ合理的な範囲の追加的費用(事業拠点の移転費用、営業資産の移動・保管費用等)
③対象区域内(警戒区域を除く。)で避難等指示後も事業の全部又は一部を営んでいる者が政府による指示等により生じた営業、取引等の減収分及び追加的費用
④政府による避難指示等の解除後に合理的な範囲内で生じた減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用(機械の再整備費等)
※廃業や倒産の場合の損害の算定方法、営業損害の終期について、どのように扱うか。【別紙参照】

8 就労不能等に伴う損害
対象区域内に住居又は勤務先がある勤労者について、同区域内に係る避難等を余儀なくされたことに伴い、その就労が不能となった場合の給与等の減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用。
就労不能等に伴う終期について、どのように扱うか。【別紙参照】

9 検査費用(物)
対象区域内にあった商品を含む財物に対する以下の場合の検査費用
)当該財物の性質等から検査を実施して安全を確認することが必要かつ合理的である場合
)取引先の要求等により必要かつ合理的な範囲で検査の実施を余儀なくされたものと認められた場合

10 財物価値の喪失又は減少等
財物(動産及び不動産)につき、現実に発生した以下の損害。
①政府の指示による避難等を余儀なくされたことに伴い、対象区域内に所有していた財物の管理が不能等となったため、当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合には、現実に価値を喪失し又は減少した部分及びこれに伴う必要かつ合理的な範囲内の追加的費用(当該財物の廃棄費用、除染費用、修理費用等)
②①のほか、当該財物が本件事故の発生時に対象区域内にあった以下の場合についても、①と同様に損害を算定する。
)財物の価値を喪失又は減少させる程度の量の放射性物質に曝露した場合
))には該当しないものの、財物の種類、性質及び取引様態から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合
③対象区域内に所有又は管理する財物の管理が不能等となり、又は放射性物質に曝露することにより、その価値が喪失又は減少することを予防するため、必要かつ合理的な範囲内で所有者等が支出した費用
④賠償の基準となる財物の価値は、原則として、本件事故発生時点における財物の時価に相当する額とすべきであるが、時価の算出が困難である場合には、合理的な額の簿価を基準として算出することも認められるのか。
⑤除染や修理に係る費用は、原則として当該財物の客観的価値の範囲内のものとするが、代替性のない財物等については、当該価値を超えたとしても必要かつ合理的な範囲内で賠償すべき損害と認められ得るか。
⑥不動産に係る以下の損害については、その契約成立の確実性及び解約等の理由の相当性から判断して、合理的な範囲で損害が認められるとして良いか。
・不動産売買契約又は不動産賃貸借契約の解約による損害
・不動産を担保とする融資の拒絶による損害
・不動産の売却予定価格の値下げによる損害
・不動産賃貸契約における賃料の減額を行ったことによる損害


第4 政府による航行危険区域設定等に係る損害について
[対象]
航行危険区域等、飛行禁止区域

[損害項目]
1 営業損害
①航行危険区域等の設定により、現実に発生した以下の損害。
)漁業者が、対象区域内での操業の断念を余儀なくされたことによる減収分
)内航海運業及び旅客船事業を営んでいる者等が、同区域を迂回して航行したことによる必要かつ合理的な範囲での費用の増加分又は減収分
②飛行禁止区域の設定により、航空運送事業を営んでいる者が、同区域を迂回して飛行したことによる必要かつ合理的な範囲での費用の増加分
2 就労不能等に係る損害
航行危険区域等又は飛行禁止区域の設定により、同区域での操業が不能等となった漁業者若しくは内航海運業者又は航空運送事業者等の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされたことによる勤労者の給与等の減収分。


第5 政府等による出荷制限指示等に係る損害について
[対象]
農林水産物の出荷、作付け等について、政府が本件事故に関し行う制限の指示等(地方公共団体が本件事故に関し合理的理由に基づき行うもの及び生産者団体が政府又は地方公共団体の関与の下で本件事故に関し合理的理由に基づき行うものを含む。)に係る損害

[損害項目]
1 営業損害
①農林漁業者において、同指示等により同指示等に係る行為の断念を余儀なくされた等のため現実に生じた減収分。
②農林漁業者において、同指示等により事業に支障が生じたために負担した必要かつ合理的な範囲の追加的費用(商品の回収費用、廃棄費用等)や、事業への支障を避けるため又は事業を変更したために生じた必要かつ合理的な範囲の追加的費用(代替飼料の購入費用等)
③農林漁業者において、同指示等の解除後に合理的な範囲内で生じた減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用(農地や機械の再整備費等)
④同指示等の対象品目を仕入れた加工・流通業者において、同指示等によりその販売等の断念を余儀なくされて生じた減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用

2 就労不能等に伴う損害
政府等による出荷制限指示等により、農林漁業者等の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合の給与等の減収分。

3 検査費用(物)
政府等による出荷制限指示等に基づき検査を行った場合に農林漁業者等が負担した検査費用。


第6 その他の政府指示等に係る損害について
その他の政府指示等に係る損害として、以下を追加して良いか。
[対象]
事業活動に係る行為について、第5のほか、政府が本件事故に関し行う制限の指示等(地方公共団体が本件事故に関し合理的理由に基づき行う場合を含む。)に係る損害(政府の指標に基づき水道水の摂取制限を実施した水道事業者等の損害、政府の指導等に基づき放射性物質が検出された上下水処理等副次産物の取扱いを行った事業者の損害など)

[損害項目]
1 営業損害
①事業者において、同指示等により同指示等に係る行為の断念を余儀なくされたため現実に生じた減収分。
②同事業に支障が生じたために負担した必要かつ合理的な範囲の追加的費用(商品の回収費、廃棄費用等)や、事業への支障を避けるため又は事業を変更したために生じた必要かつ合理的な範囲の追加的費用(代替水の提供に係る費用等)
③同指示等の解除後に合理的な範囲内で生じた減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用
2 就労不能等に伴う損害
政府等による制限指示等により、事業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合の給与等の減収分。
3 検査費用(物)
事業者が政府等による制限指示等に基づき検査を行った場合に事業者の負担した検査費用。


第7 いわゆる風評被害について
1 一般的基準
①「風評被害」についても、本件事故と相当因果関係のあるものであれば賠償対象とする。その一般的な基準は、消費者又は取引先が、商品又はサービスについて、本件事故による放射性物質による汚染の危険性を懸念し、敬遠したくなる心理が、平均的・一般的な人を基準として合理性を有していると認められる場合とする。
②具体的には、業種毎の特徴等を踏まえ、営業や品目の内容、地域、損害項目等により類型化した上で判断する。
③損害項目は、消費者又は取引先が商品又はサービスの買い控え、取引停止等を行ったために生じた次のもの。
)営業損害
取引数量の減少又は取引価格の低下による減収分及び必要かつ合理的な範囲の追加的費用(商品の返品費用、廃棄費用等)
)就労不能等に伴う損害
事業者の経営状態が悪化したため、そこで勤務していた勤労者が就労不能等を余儀なくされた場合の給与等の減収分。
)検査費用(物)
取引先の要求等により実施を余儀なくされた必要かつ合理的な範囲の検査の費用
2 農林漁業の風評被害
3 観光業の風評被害
4 その他の風評被害
※原則として相当因果関係が認められる風評被害の類型として何を追加できるか。
※外国政府による食品等の輸入規制(輸入停止・検査要求など)、外国人観光の減少等、外国人又は外国政府が介在する被害について、どのように取り うか。【別紙参照】


第9 放射線被曝による損害について
 本件事故の復旧作業等に従事した原子力発電所作業員、自衛官、消防隊員、警察官又はその他の者(住民を含む。)が、本件事故によって放出された放射性物質による急性又は晩発性の放射線障害により、傷害を負い、健康状態が悪化し、疾病にかかり、あるいは死亡したことにより生じた逸失利益、治療費、薬代、精神的損害等は、賠償すべき損害として良いか。


第10 その他
1 被害者への各種給付金等と損害賠償金との調整
①本件事故により原子力損害を被った者が、同時に本件事故に起因して一定の利益を受けたと評価できる場合には、損害と当該利益との間に同質性が認められる限り、公平の見地から、その利益の額を損害額から控除することとして良いか。
②同質性の認められる各種逸失利益の金額から控除される、又は損害額から控除されるべきではない給付金等として、いくつかの給付金等を例示する必要があるか。
2 地方公共団体の財産的損害
 地方公共団体が民間事業者と同様の立場で行う事業(水道事業、下水道事業、病院事業等の地方公共団体の経営する企業及び収益事業)に関する損害については、本指針に示された事業者等に関する基準に照らして賠償すべき損害の範囲を判断することとして良いか。
※直接の被害者と一定の関係にある第三者、あるいはその第三者と一定の関係にある者の損害は、どこまで相当因果関係があり賠償すべき損害と認めらるか。【別紙参照】
以上


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■16条「必要な援助」国の措置 その9 原子力事故被害緊急措置法(仮払い法) 条文

■16条「必要な援助」国の措置 その9 原子力事故被害緊急措置法(仮払い法) 条文


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平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律
(平成二十三年八月五日)
(法律第九十一号)
第百七十七回通常国会
菅内閣
平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律をここに公布する。

平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律

(趣旨)
第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電施設の事故(以下「平成二十三年原子力事故」という。)による災害が大規模かつ長期間にわたる未曽有のものであり、これによる被害を受けた者を早期に救済する必要があること、これらの者に対する特定原子力損害の賠償の支払に時間を要すること等の特別の事情があることに鑑み、当該被害に係る対策に関し国が果たすべき役割を踏まえ、当該被害に係る応急の対策に関する緊急の措置として、平成二十三年原子力事故による損害を填補するための国による仮払金の迅速かつ適正な支払及び原子力被害応急対策基金を設ける地方公共団体に対する補助に関し必要な事項を定めるものとする。

(定義)
第二条 この法律において「特定原子力損害」とは、平成二十三年原子力事故による損害であって原子力事業者(原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第二条第三項に規定する原子力事業者をいう。以下同じ。)が同法第三条第一項の規定により賠償の責めに任ずべきものをいう。

(仮払金の支払)
第三条 国は、この法律の定めるところにより、特定原子力損害であって政令で定めるものを受けた者に対し、当該特定原子力損害を填補するためのものとして、仮払金を支払う。
2 前項の規定に基づき国が行う仮払金の支払は、特定原子力損害を受けた者の早期の救済のために迅速なものであり、かつ、国民負担の観点から適正なものでなければならない。

(仮払金の額)
第四条 仮払金の額は、その者が受けた前条第一項に規定する特定原子力損害につき、当該者が提出した政令で定める資料に基づき、政令で定める簡易な方法により算定した当該特定原子力損害の概算額に十分の五を下らない政令で定める割合を乗じて得た額とする。ただし、当該者が当該資料を提出することが困難であると認められるときは、政令で定めるところにより、当該者が居住する地域又は事業を営む地域、当該特定原子力損害の種類等の事情に基づいて推計した当該特定原子力損害の額に当該割合を乗じて得た額とする。
2 前条第一項及び前項の政令は、原子力損害賠償紛争審査会が定める特定原子力損害の賠償に係る原子力損害の賠償に関する法律第十八条第二項第二号の指針に定められた事項に基づき、かつ、特定原子力損害を受けた者の早期の救済に資するものとなるように定めるものとする。

(仮払金の支払の請求)
第五条 仮払金の支払を受けようとする者は、政令で定めるところにより、主務大臣にこれを請求しなければならない。
2 仮払金の支払を受ける権利を有する者について相続、合併又は分割(その者が受けた第三条第一項に規定する特定原子力損害に係る事業を承継させるものに限る。)があった場合において、その者が死亡、解散又は分割の前に仮払金の支払を請求していなかったときは、その者の相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該事業を承継した法人は、自己の名で、その者の仮払金の支払を請求することができる。
3 前項の規定により仮払金の支払を受けることができる同順位の相続人が二人以上あるときは、その一人がした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支払は、全員に対してしたものとみなす。

(書類の作成等についての援助)
第六条 地方公共団体及び農業協同組合、漁業協同組合、商工会議所、商工会その他の事業者を直接又は間接の構成員とする団体は、仮払金の支払の請求を行う者の便宜を図るため、当該請求を行うに当たって必要となる書類の作成等について、必要な援助を行うよう努めるものとする。

(資料の提供その他の協力等の求め)
第七条 主務大臣は、仮払金の支払を迅速かつ適正に行うため必要があると認めるときは、地方公共団体、当該原子力事業者その他公私の団体に対し、資料の提供その他必要な協力又は確認を求めることができる。

(事務の処理等)
第八条 仮払金の支払に関する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
2 前項の政令を定めるに当たっては、都道府県知事に過重な負担を課することのないよう十分に配慮するものとする。
3 主務大臣又は第一項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行う都道府県知事は、政令で定めるところにより、仮払金の支払に関する事務の一部(会計法(昭和二十二年法律第三十五号)に基づく支出の決定及び交付の事務を除く。)を、その事務を行うのにふさわしい者として政令で定める者に委託することができる。
4 主務大臣又は第一項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行う都道府県知事は、前項に規定する政令で定める者に対し、仮払金の支払に必要となる資金を交付することができる。
5 前項の規定により資金の交付を受けた者は、会計法第十七条の規定により資金の交付を受けた職員とみなし、同法、予算執行職員等の責任に関する法律(昭和二十五年法律第百七十二号)その他関係法令の適用を受けるものとする。この場合において、必要な読替えは、政令で定める。
6 農業協同組合、漁業協同組合その他の政令で定める団体は、他の法律の規定にかかわらず、第三項の規定による事務の委託を受け、当該事務を行うことができる。
7 第三項の規定による事務の委託を受けた者若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由なしに、その委託を受けた事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
8 都道府県知事が第一項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行い、又は第三項の規定によりその委託を行う場合においては、国は、予算の範囲内で、政令で定めるところにより、当該事務の処理及び委託に要する費用の全部を負担する。
9 前項に規定する場合においては、国は、同項に定めるもののほか、当該都道府県に対し、その円滑な実施を図るために必要な支援その他の措置を講ずるものとする。
10 関係行政機関の長は、仮払金の支払に関し、主務大臣、第一項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行う都道府県知事又は第三項の規定による事務の委託を受けた者に協力するものとする。

(損害賠償との関係)
第九条 第三条第一項に規定する特定原子力損害を受けた者又は第五条第二項の規定により自己の名で仮払金の支払を請求することができる者が当該特定原子力損害の賠償(これに相当する金銭の支払として政令で定めるものを含む。)を受けたときは、その価額の限度において、仮払金を支払わない。
2 国は、仮払金を支払ったときは、その額の限度において、当該仮払金の支払を受けた者が有する特定原子力損害の賠償請求権を取得する。
3 前項の場合において、国は、速やかに当該損害賠償請求権を行使するものとする。
(仮払金の返還)
第十条 仮払金の支払を受けた者は、その者に係る特定原子力損害の賠償の額が確定した場合において、その額が仮払金の額に満たないときは、その差額を返還しなければならない。

(不正利得の徴収)
第十一条 偽りその他不正の手段により仮払金の支払を受けた者があるときは、主務大臣は、国税徴収の例により、その者から、その支払を受けた仮払金の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

(仮払金の支払を受ける権利の保護)
第十二条 仮払金の支払を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

(税制上の措置)
第十三条 国及び地方公共団体は、特定原子力損害を受けた者の置かれている状況に配慮し、その支払を受けた仮払金について必要な税制上の措置を講じなければならない。

(原子力被害応急対策基金)
第十四条 地方公共団体が、平成二十三年原子力事故による被害について原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)又は関係法令の規定に基づいて地方公共団体が行う応急の対策に関する事業及び特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)第八十五条第四項の財政上の措置の対象となり得る地方公共団体の事業(その区域内の経済社会若しくは住民の生活への平成二十三年原子力事故による影響の防止若しくは緩和又はその影響からの回復を図るために行う応急の対策に関する事業に限る。)に要する経費の全部又は一部を支弁するため、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十一条の基金として、原子力被害応急対策基金を設ける場合には、国は、予算の範囲内において、その財源に充てるために必要な資金の全部又は一部を当該地方公共団体に対して補助することができる。
2 前項の規定は、地方公共団体がその経費を原子力被害応急対策基金から支弁して特定原子力損害に係る措置を講じた場合において、国が当該原子力事業者に対して、同項の規定により補助した額に相当する額の限度において求償することを妨げるものではない。
3 国は、第一項の規定の運用に当たっては、関係地方公共団体の意見に配慮するものとする。

(主務大臣)
第十五条 この法律における主務大臣は、文部科学大臣及び特定原子力損害を受けた事業者の事業を所管する大臣その他の政令で定める大臣とする。

(政令への委任)
第十六条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

(罰則)
第十七条 第八条第七項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。


附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して四十五日を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

(適用)
2 第三条第一項の規定は、同項に規定する特定原子力損害を受けた者であってこの法律の施行前に死亡し、又は合併若しくは分割の対象となったものについても適用する。

(財源の確保)
3 国は、仮払金の支払及び原子力被害応急対策基金を設ける地方公共団体に対する補助に要する費用の財源の確保に資するため、国の資産、剰余金及び積立金の活用、歳出の見直しその他の措置に努めるものとする。

(検討)
4 国は、この法律の施行後おおむね二年以内に、平成二十三年原子力事故に係る原子力事業者による損害賠償の支払の状況、この法律の施行の状況等を踏まえ、この法律の規定について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

5 原子力損害の賠償に関する制度については、原子力損害を受けた者の早期の救済に資するものとなるよう、速やかに検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。


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http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/177/pdf/t071770091770.pdf
第一七七回
参第九号

平成二十三年原子力事故による被害に係る緊急措置に関する法律案

(趣旨)
第一条 この法律は、平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電施設の事故(以下「平成二十三年原子力事故」という。)による災害が大規模かつ長期間にわたる未曽有のものであり、これによる被害を受けた者を早期に救済する必要があること、これらの者に対する特定原子力損害の賠償の支払に時間を要すること等の特別の事情があることに鑑み、当該被害に係る対策に関し国が果たすべき役割を踏まえ、当該被害に係る応急の対策に関する緊急の措置として、平成二十三年原子力事故による損害を迅速に填補するための国による仮払金の支払及び原子力被害応急対策基金を設ける地方公共団体に対する補助に関し必要な事項を定めるものとする。

(定義)
第二条 この法律において「特定原子力損害」とは、平成二十三年原子力事故による損害であって原子力事業者(原子力損害の賠償に関する法律(昭和三十六年法律第百四十七号)第二条第三項に規定する原子力事業者をいう。以下同じ。)が同法第三条第一項の規定により賠償の責めに任ずべきものをいう。

(仮払金の支払)
第三条 国は、この法律の定めるところにより、特定原子力損害であって政令で定めるものを受けた者に対し、当該特定原子力損害を填補するためのものとして、仮払金を支払う。

(仮払金の額)
第四条 仮払金の額は、その者が受けた前条に規定する特定原子力損害につき、当該者が提出した政令で定める資料に基づき、政令で定める簡易な方法により算定した当該特定原子力損害の概算額に十分の五を下らない政令で定める割合を乗じて得た額とする。ただし、当該者が当該資料を提出することが困難であると認められるときは、政令で定めるところにより、当該者が居住する地域又は事業を営む地域、当該特定原子力損害の種類等の事情に基づいて推計した当該特定原子力損害の額に当該割合を乗じて得た額とする。
2 前条及び前項の政令は、原子力損害賠償紛争審査会が定める特定原子力損害の賠償に係る原子力損害の賠償に関する法律第十八条第二項第二号の指針に定められた事項に基づき、かつ、特定原子力損害を受けた者の早期の救済に資するものとなるように定めるものとする。

(仮払金の支払の請求)
第五条 仮払金の支払を受けようとする者は、政令で定めるところにより、文部科学大臣にこれを請求しなければならない。
2 仮払金の支払を受ける権利を有する者について相続、合併又は分割(その者が受けた第三条に規定する特定原子力損害に係る事業を承継させるものに限る。)があった場合において、その者が死亡、解散又は分割の前に仮払金の支払を請求していなかったときは、その者の相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該事業を承継した法人は、自己の名で、その者の仮払金の支払を請求することができる。
3 前項の規定により仮払金の支払を受けることができる同順位の相続人が二人以上あるときは、その一人がした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした支払は、全員に対してしたものとみなす。

(書類の作成等についての援助)
第六条 地方公共団体及び農業協同組合、漁業協同組合、商工会議所、商工会その他の事業者を直接又は間接の構成員とする団体は、仮払金の支払の請求を行う者の便宜を図るため、当該請求を行うに当たって必要となる書類の作成等について、必要な援助を行うよう努めるものとする。

(資料の提供その他の協力の求め)
第七条 文部科学大臣は、仮払金の支払を迅速に行うため必要があると認めるときは、地方公共団体、当該原子力事業者その他公私の団体に対し、資料の提供その他必要な協力を求めることができる。

(事務の処理等)
第八条 仮払金の支払に関する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事が行うこととすることができる。
2 文部科学大臣又は前項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行う都道府県知事は、政令で定めるところにより、仮払金の支払に関する事務の一部(支払の決定を除く。)を、その事務を行うのにふさわしい者として政令で定める者に委託することができる。
3 農業協同組合、漁業協同組合その他の政令で定める団体は、他の法律の規定にかかわらず、前項の規定による事務の委託を受け、当該事務を行うことができる。
4 第二項の規定による事務の委託を受けた者若しくはその役員若しくは職員又はこれらの者であった者は、正当な理由なしに、その委託を受けた事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
5 都道府県知事が第一項の規定により仮払金の支払に関する事務の一部を行い、又は第二項の規定によりその委託を行う場合においては、国は、予算の範囲内で、政令で定めるところにより、当該事務の処理及び委託に要する費用の全部を負担する。
6 前項に規定する場合においては、国は、同項に定めるもののほか、当該都道府県に対し、その円滑な実施を図るために必要な支援その他の措置を講ずるものとする。
7 関係行政機関の長は、仮払金の支払に関し、文部科学大臣、第一項の規定により仮払
金の支払に関する事務の一部を行う都道府県知事又は第二項の規定による事務の委託を受けた者に協力するものとする。

(損害賠償との関係)
第九条 第三条に規定する特定原子力損害を受けた者又は第五条第二項の規定により自己の名で仮払金の支払を請求することができる者が当該特定原子力損害の賠償(これに相当する金銭の支払として政令で定めるものを含む。)を受けたときは、その価額の限度において、仮払金を支払わない。
2 国は、仮払金を支払ったときは、その額の限度において、当該仮払金の支払を受けた者が有する特定原子力損害の賠償請求権を取得する。
3 前項の場合において、国は、速やかに当該損害賠償請求権を行使するものとする。

(仮払金の返還)
第十条 仮払金の支払を受けた者は、その者に係る特定原子力損害の賠償の額が確定した場合において、その額が仮払金の額に満たないときは、その差額を返還しなければならない。

(不正利得の徴収)
第十一条 偽りその他不正の手段により仮払金の支払を受けた者があるときは、文部科学大臣は、国税徴収の例により、その者から、その支払を受けた仮払金の額に相当する金額の全部又は一部を徴収することができる。
2 前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

(仮払金の支払を受ける権利の保護)
第十二条 仮払金の支払を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。

(税制上の措置)
第十三条 国及び地方公共団体は、特定原子力損害を受けた者の置かれている状況に配慮し、その支払を受けた仮払金について必要な税制上の措置を講じなければならない。

(原子力被害応急対策基金)
第十四条 地方公共団体が、平成二十三年原子力事故による被害について原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)又は関係法令の規定に基づいて地方公共団体が行う応急の対策に関する事業及び特別会計に関する法律(平成十九年法律第二十三号)第八十五条第四項の財政上の措置の対象となり得る地方公共団体の事業(その区域内の経済社会若しくは住民の生活への平成二十三年原子力事故による影響の防止若しくは緩和又はその影響からの回復を図るために行う応急の対策に関する事業に限る。)に要する経費の全部又は一部を支弁するため、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十一条の基金として、原子力被害応急対策基金を設ける場合には、国は、予算の範囲内において、その財源に充てるために必要な資金の全部又は一部を当該地方公共団体に対して補助することができる。
2 前項の規定は、地方公共団体がその経費を原子力被害応急対策基金から支弁して特定原子力損害に係る措置を講じた場合において、国が当該原子力事業者に対して、同項の規定により補助した額に相当する額の限度において求償することを妨げるものではない。
3 国は、第一項の規定の運用に当たっては、関係地方公共団体の意見に配慮するものとする。

(政令への委任)
第十五条 この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。

(罰則)
第十六条 第八条第四項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して十日を経過した日から施行する。
(適用)
2 第三条の規定は、同条に規定する特定原子力損害を受けた者であってこの法律の施行前に死亡し、又は合併若しくは分割の対象となったものについても適用する。
(財源の確保)
3 国は、仮払金の支払及び原子力被害応急対策基金を設ける地方公共団体に対する補助に要する費用の財源の確保に資するため、国の資産、剰余金及び積立金の活用、歳出の見直しその他の措置に努めるものとする。
(検討)
4 原子力損害の賠償に関する制度については、原子力損害を受けた者の早期の救済に資するものとなるよう、速やかに検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。



理 由
 平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電施設の事故による災害が大規模かつ長期間にわたる未曽有のものであり、これによる被害を受けた者を早期に救済する必要があること、これらの者に対する特定原子力損害の賠償の支払に時間を要すること等の特別の事情があることに鑑み、当該被害に係る対策に関し国が果たすべき役割を踏まえ、当該被害に係る応急の対策に関する緊急の措置として、当該事故による損害を迅速に填補するための国による仮払金の支払及び原子力被害応急対策基金を設ける地方公共団体に対する補助に関し必要な事項を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

この法律の施行に伴い必要となる経費
 この法律の施行に伴い必要となる経費としては、仮払金の支払に要する費用として現時点で見込まれるもの及び原子力被害応急対策基金を設ける地方公共団体に対する補助に要する費用として、約五千億円の見込みである。


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2011-07-15 : ■16条「必要な援助」国の措置 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・事故後の国会審議 その4 班目政府参考人 5~6月分

・事故後の国会審議 その4 班目政府参考人 5~6月分


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177-参-予算委員会-13号 平成23年05月01日

平成二十三年五月一日(日曜日)
   午前八時五十四分開会


○森ゆうこ君 安全委員会にちょっと伺いたいんですけれども、この二十ミリシーベルトに決めた過程、議論が安全委員会のホームページに載っておりません。議事録がない。一体誰が、いつ、どのように議論をしたんですか。
 ICRP、ICRPといいますけれども、ICRPに対する批判として、ECRR、欧州放射線リスク委員会、内部被曝をきちんと重視する、そうしなければならないという、そういうものもあるんですよ。しかも、皆さんが引用されているICRP一一一、一〇九に、どちらにおいても女性と子供、特に子供たちには特に配慮をすべきということも書いてあるじゃないですか。子供たちの配慮はちゃんと入って二十ミリシーベルトなんですか。

○政府参考人(班目春樹君) この問題につきましては、四月の九日ぐらいだったと思いますけれども、文部科学省の方からいろいろと御提案があって、その後、断続的に安全委員会と文部科学省の方で協議を進めてきております。そして、結局、安全委員会としては子供たちに年間二十ミリシーベルトを浴びさせていいとは回答してございません。あくまでも、これICRPで定めた現存被曝状況である一から二十ミリシーベルト・パー・イヤーを守ることはもちろんのこと、その範囲内で、ALARAといいますけれども、できる限りの努力をして浴びる線量を減らすこと、それを条件に助言をしたということでございます。
 したがいまして、文部科学省に対しましては、少なくとも二週間置きには安全委員会の方にモニタリングの結果などを報告し、その結果次第では安全委員会としては更なる助言を行っていくというつもりでございます。


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177-衆-予算委員会-23号 平成23年05月16日

平成二十三年五月十六日(月曜日)
    午前八時五十九分開議

○西村(康)委員 そもそも指示を出す時間は私は遅いと思っているんです。
 本来なら、二十二時の時点、直ちにその時点で、聞いた時点でベントの命令を出し、そして避難指示もする、それが私は当然の初期動作だと思います。それが、十キロ圏内、出したのは五時四十四分で、これは危険な状態にあったからということをいみじくも言われました。そこへ総理が飛んでいったんです。
 原子力安全委員長に確認します。このような状況の中で安全委員長も一緒に行かれていますが、最高指揮者である総理大臣が、圧力が上がって、どうなるか今後わからない非常に危険な状態、跳び上がってびっくりされたという答弁もされています。そして水素爆発や水蒸気爆発、これはマニュアルにもこういうことが起こり得るということが書いてあります。そうした状況の中に、あなたは総理に、行くということを了解したわけですか。総理に爆発が起こることを言わなかったんですか。

○班目参考人 当時の状況としては、かなり緊迫しているという認識は私はもちろんございました。しかしながら、総理が現地をちゃんと指導してくるとおっしゃっているのに対して、ついていってくれと言われたので従ったということでございますので、それ以上のことについては私からは申し上げられません。

○西村(康)委員 水素爆発や水蒸気爆発が起こる可能性があるということを助言しなかったんですか。総理が行かれるに当たって助言しなかったんですか。

○班目参考人 水素爆発については、そのときは助言していないと思いますが、当然、格納容器の圧がかなり高くなっていますので、格納容器が、爆発という言い方をしたかもしれませんけれども、要するに破裂する可能性はあるということは認識していましたし、そのようなことは助言していたと思います。

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○西村(康)委員 自民党の西村康稔でございます。
 午前中に引き続きまして、原発事故の初動について議論をしていきたいと思います。
 午前中明らかになった事柄、十一日、事故、つまり震災のあったその当日の十時の段階で、保安院は、炉心溶融、いわゆるメルトダウンを予見していた。しかし実際には、ベント、いわゆる圧力を逃がして水を注入するために、冷やすために圧力を逃がさなきゃいけない。最悪の事態、メルトダウンも防ぎ、爆発を防ぐために、ベントということをやらなきゃいけない。そのベントが行われたのは、事実として、次の日の十時十七分であります。このパネルのとおりであります。そして、実際に命令が出されたのは、その日の朝の六時五十分、こういうことであります。
 私は、早い段階で、少なくとも十時の段階でベントの命令を出し、やっていれば、もっと事態の悪化を防げたのではないか、そういう視点に立っておりますけれども、その点の検証をしてまいりたいと思います。
 まず、安全委員長の班目委員長にお伺いをいたします。
 この保安院の十時の段階の見解は、二号機でありますけれども、二号機のいわゆるRCICという注水機能が喪失をした、これが八時半でありますけれども、この時点で安全委員長はどういう認識を持たれ、何を進言されたのか、お伺いをしたいと思います。

○班目参考人 正直申しまして、私もずっとその後徹夜が続いたので、はっきりとは記憶しておりませんが、この保安院からの報告とは全く別の問題として、夜中過ぎあたりには、かなり危険な事態に至るという認識を持っておりました。
 したがって、とにかく早く東京電力にベントまで含む一連の作業をするようにということを言い、また、かつ、そこにいらっしゃった海江田大臣、総理その他の方々に進言をしておったということでございます。

○西村(康)委員 確認をしたいと思いますが、班目委員長、四月六日の衆議院の経済産業委員会で、最初に二号機のRCIC、注水機能がとまっていると聞いたときに大変びっくりしておられる様子を言っておられますし、いわゆるアクシデントマネジメントのマニュアル、これに従って行動するようにということを進言したと言われていますが、そのあたりの様子を御説明いただいていいですか。

○班目参考人 驚いたというのは、もちろんそのとおりだったと思います。
 それから、こういう場合に備えてアクシデントマネジメントの手順書というのを東京電力が定めているところであり、それに従って行動してくれさえすれば事態の悪化は防げるというふうに認識していたので、それを進言していたところでございます。

○西村(康)委員 どなたに、何時の段階で、正確でなくてもいいんですけれども、これがとまったのは二十時三十分と実績がありますが、何時の段階で、どなたに進言されたのかをお伺いしたいと思います。

○班目参考人 申しわけございません、何時何分とか、そういうのはもうほとんど覚えていないんです。それから、どなたにというのもきちっとは覚えていません。
 その場には、海江田大臣と、それから総理補佐官も何人か複数いらっしゃいましたし、総理ももちろんいらっしゃったと思います。出たり入ったりされていたと思います、ほかの災害のこともありましたので。それから枝野長官もいらしたんじゃないかなという感じがしますが、そのあたりの方々に進言したというふうに記憶しております。

○西村(康)委員 ベントも含めて進言をされたという理解でいいですか。

○班目参考人 はい、そのとおりでございます。

○西村(康)委員 班目委員長が進言されたとおり、ベントを早い段階で実施ができていれば事態悪化は防げたというふうに考えられるんじゃないかと思いますけれども、委員長、何かもし新しい事実関係がわかれば教えていただきたいんですけれども、それも含めてお答えをいただけますか。

○班目参考人 少なくとも、ベントがここまで遅くならず、もう少しでも早く実行されていたらば事態の悪化は防げた、それは確かだったと思います。

○西村(康)委員 大変大事な指摘でありまして、少なくとも二十二時、地震、津波、震災のあったあの十一日の二十二時の段階でベントの命令を早く出していれば事態の悪化が防げた、そういう理解でありますけれども、今まさに安全委員長が言われたように、早くできていれば、早くやれていれば事態の悪化は防げたという答弁であります。
 班目委員長、班目委員長は三月二十八日の、これは参議院予算委員会ですけれども、海江田大臣に進言をした後、その後、どういうわけか、私のところにはさっぱり情報が上がってこないんです、なかなかベントされないということを聞いていましたということですが、ここのあたりの状況、つまり、進言をされた後、その後、総理から班目委員長には相談がありましたか、あるいは海江田大臣から相談がありましたか。

○班目参考人 当時、その部屋には、そういう方々以外に東京電力の幹部の方もいらっしゃいました。それで、私どものいる部屋と東京電力の本店とがつながっておりました。それから、東京電力の本店と現地のサイトがつながっておりました。連絡網はそれしかないという状況でございました。
 それで、伝言ゲームみたいな形で、東京電力の本店に、何で進まないのかというのを幹部の方が一生懸命聞いているのに対し、向こうからなかなか返答がない、そんな状況で時間が過ぎてしまった、そういうふうに私は認識しております。


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177-衆-文部科学委員会-10号 平成23年05月18日

平成二十三年五月十八日(水曜日)
    午前九時開議


○河井委員 文科大臣、先ほど、自分たちの管轄では校庭、園庭だというふうにおっしゃいましたけれども、通学路も大事なんですからね、通学路。通学路における内部被曝の問題もあるわけですから、校庭、園庭だけでないということをあえて申し上げたいと思います。
 原子力安全委員会班目委員長、お待たせをいたしました。
 四月十九日の、二十ミリシーベルトに文科省が突如引き上げたときの決定過程、幾つかお尋ねをいたしたいと思います。
 原案は文科省から持ってきたんですね。

○班目参考人 文部科学省とは四月九日から断続的にいろいろな御相談をさせていただいております。最終的な暫定案に関しましては四月十九日にいただいて、それで議論の末、差し支えない旨回答してございます。
 ただし、留意事項をつけてございまして、二週間に一回以上の頻度でモニタリングの結果を原子力安全委員会に報告してくださいということ。それからもう一つ、特にやはり実際に子供たちがどれだけの線量を被曝するのかということを気にしましたので、教員の方どなたか一名に、子供たちと同じような振る舞いをする先生方を選んでいただいて、その方に線量計をつけてはかってください、その結果も報告してください、そういう留意事項をつけてございます。

○河井委員 四月九日から文科省が話を持ってきたということを今答弁をされました。
 決定は四月十九日ですが、これは正式な会議ではなかったんですね。

○班目参考人 原子力安全委員会の会合では、ナンバーをつけている、正式といったらどうなのでしょうか、第何回とつけている委員会と、それからそれ以外に、随時開いている委員会と、現在ございます。そういう意味では、ナンバーはつけていない委員会ではございます。

○河井委員 月曜日が定例会議ですね。この十九日は火曜日なんですよ。確認をします。

○班目参考人 定例会議は月曜日でございます。そういう意味では、定例会議ではございません。

○河井委員 なぜ定例会議の月曜日に、あなたは今、九日から文科省から相談を受けたとお答えになった。なぜ前日の正式な会議のときにこの大事な話をしないで、次の日にこういうことをどさどさっとなし崩し的に決定したのか、お答えください。

○班目参考人 文部科学省の方からこの案が示されたのが十九日だったものですから、それから、この案件というのが非常に大切であり、なるべく早く決定をするべきものであるということから、至急開催したという次第でございます。

○河井委員 いやいや、先ほど、案を示されたのは十九日とおっしゃったけれども、九日から相談をされていたんですね。
 では、十日間一体何をやっていたんですか、原子力安全委員会におかれましては。

○班目参考人 原子力安全委員会では、四月九日に文科省から示された案に対して、いろいろな助言をしました。そして、ぜひこういうところを見直して、また持ってきてくださいということを何回かやったわけでございます。
 大変申しわけないんですけれども、原子力安全委員会の方では、それぞれの学校の個別の事情までは存じ上げません。そういう意味では、そういうことをよく御存じの文部科学省の方から具体的な提案をいただいて、それに対して助言をする、そういう仕組みになってございますので、そのためのいろいろなやりとりを続けていたということでございます。

○河井委員 当日の議事録はあるんでしょうか。

○班目参考人 申しわけございません、当日の正式な議事録はございませんけれども、そのときどのような議論が行われたかということについては、その後、きちんとしたメモとかいう形で残してございます。

○河井委員 正式な委員会でもない、正式な議事録でもない、そういうものが十九日の火曜日に重要な決定をなされた。どうしてもそこで疑念を抱かざるを得ないわけであります。
 委員長、今の状態では、福島県東半分の方々が年間被曝量一ミリを超えるのは確実ですね。お答えください。

○班目参考人 ちょっと、東半分、どこですか。(河井委員「福島県の東半分」と呼ぶ)福島県の東半分。
 いや、場所によるとは思いますけれども、多くのところは年間一ミリシーベルトを超えるだろうというふうに予想しております。

○河井委員 結局、一ミリシーベルトを超えるその見たくない現実に、一ミリから二十ミリに引き上げた。現実に基準を合わせただけじゃないか、そう考えております。
 文科省が話を持ってきたときに、住民の方々の健康以外に何を彼らは心配していたか、何を考慮していたか、教えてください。

○班目参考人 文科省が案を持ってきたときに、我々は、国際放射線防護委員会、ICRPでございますけれども、それの最新の勧告についていろいろとるる御説明申し上げました。
 それによりますと、このように不幸にして放射線量がふえてしまったような場所においては、一ミリシーベルトから二十ミリシーベルト・パー・イヤーの、参考値と言っていますけれども、参考レベルの中でできるだけ低くなるように、合理的に達成可能な限りの努力をするという条件でさまざまな生活を認めるというふうになってございます。
 そのあたりを申し上げて、その上で文科省の方で案をつくってくださいというふうに申し上げたわけでございます。

○河井委員 つまり、委員長、文科省は、学校の運営の方に力点を置いていたのか、そこに通っている子供たちの健康被害の方に力点を置いていたのか、どちらだというふうに印象を抱かれたでしょうか。

○班目参考人 もちろん、安全委員会に相談があったのは子供たちの健康の観点からの相談であったというふうに認識してございます。

○河井委員 しからば、二十ミリに引き上げたということについて、原子力安全委員会として助言をした、引き上げたということについて妥当だというふうに助言をしたということでありますので、例えば遊べなくなった校庭に置かれた土、それの除去や除染などについては思いが至らなかったんでしょうか、考えが至らなかったんでしょうか。

○班目参考人 まず第一に、二十ミリシーベルト・パー・イヤーに引き上げたという表現ですけれども、これは明確に否定させていただきます。あくまでも、一ミリシーベルトに近づける合理的に達成可能なできる限りの努力を払うという条件で、一ミリシーベルト・パー・イヤーから二十ミリシーベルト・パー・イヤーの参考レベルを使うことは差し支えないと申し上げたということでございます。
 それから、例えば土のことについては、これはあくまでも文部科学省の方から我々に説明がその後あったわけでございまして、その除去等々については、原子力安全委員会としては、我々自身が提案したものではないわけですので、その処理等々について特に何か考えたということではございません。

○河井委員 時間が来ましたので、最後に一つだけ、原子力安全委員長。
 委員長は会見で、自分たちには力がないんですということを、以前、この事故が起こった後おっしゃいましたね。今後、もう少し事態が収束して、いつ収束するかどうかわかりませんけれども、今後さまざまな原子力安全についての役割、体制などの見直しの議論をしなきゃいけないときに、委員長が発せられた言葉というのは大変重いというふうに思っておりますので、あえて聞かせていただきます。
 今回の一連の対応、みずからの身を振り返って、みずからの身というのは委員長御自身じゃないんですよ、原子力安全委員会全体、どのように自己評価をしていらっしゃるか、そして、どこに力がないという意味であの会見はおっしゃったのか、お聞かせください。

○班目参考人 原子力安全委員会というのは、法律上の位置づけは、いわゆる三条委員会みたいな強制力を持った委員会ではございませんで、いわゆる八条委員会、いわば諮問委員会のようなものでございます。ということは、いろいろなことをみずから調査したりする能力というのは余りない。
 実際に、常勤の職員というのは七十名ぐらいしかおりませんし、あと三十名ぐらい、臨時のといいますか、ある程度年齢のいった方をお願いしている。
 それからあと、三百人ぐらいの学識経験者を抱えてございますけれども、このような方たちは、大学の先生であったりお医者さんであったり、あるいは弁護士の方であったり、さまざまな職業を持っていらっしゃる方です。そういう方の協力のもとに成り立っているという組織でございますので、そういう意味からいくと、我々のやれることには限界がある。
 しかしながら、今みたいな大きな原子力災害が発生しているときには、助言を行っていくということは最大の任務でございますので、これについては、我々としてはもう最大限のことをやってきたというふうに自負してございます。


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177-衆-科学技術・イノベーション委員会 平成23年05月19日

平成二十三年五月十九日(木曜日)
    午前九時開議


○吉井委員 これは、実はエネルギー政策のかなめになってくるんですよね。
 要するに、軽水炉路線というのは、プルトニウム循環路線なんですよ。プルトニウムをどう循環させるかという中での課題で、これが今行き詰まっているんですから、「もんじゅ」をもうやめる、そして、廃炉研究等今なすべき課題に取り組むことが大事だということを申し上げておきたいと思います。
 次に、班目委員長に伺いますが、三月十一日の十四時四十六分に地震が発生して、外部電源が失われました。十五時三十分ごろに津波が襲来して、最初の地震によるものかどうかはともかくとして、とにかくDGが破損しました。十五時三十七分ごろ、バッテリーもだめになって、全電源喪失というふうに東電は見ているようですが、十五時四十二分ごろに、東京電力から政府に対して全交流電源喪失と、原子力災害対策特別措置法十条一項による報告がありました。十六時四十五分になるのですか、非常用炉心冷却による注水不能という通報もあり、十八時〇八分には冷却材漏えいという通報があり、せんだって発表された東電の解析によりますと、十八時ごろに冷却水の上に頂部が出てしまったと。
 そこで、東京電力のせんだって発表した公表資料によりますと、十八時ぐらいが炉心溶融の始まりと思うんですが、班目委員長にお伺いしておきたいのは、全交流電源喪失という報告を受けた後、バッテリーが生きているのかどうか、バッテリーが死んでしまったら大変なことですから、生きているかどうかの確認、機器冷却系が働いているかどうか、それから熱交換器の機能は大丈夫か、要するにバッテリーが生きているかというふうな確認を、いつ、何時の時点で判断されたのか。また、仮にバッテリーがだめですという回答があれば、これはもう全電源喪失ということを認識しなきゃいけないわけですが、それをいつ判断されたのか、伺っておきます。

○班目参考人 何時何分というところまでは正確ではございませんが、まず、四時ごろ、ERCというところから全交流電源喪失、原災法十条に基づく連絡がございました。その時点で原子力安全委員会としては緊急助言組織を立ち上げた、これは事実でございます。
 それで、それから我々としてはいろいろな形で連絡をとろうとしたんですが、電話がつながらないという状況がかなり続きまして、実は、詳細な状況の把握というのはかなりおくれてございます。実際には、その後、原子力災害対策本部が設置され、たしか七時過ぎだったと思いますが、そちらの方に行って、危機管理センターの方で詳細なことを東京電力から初めて聞いたというのが実態でございます。

○吉井委員 八時ごろ詳細な報告を聞いたというのは、聞いたのはいいんですよ。
 私がお伺いしておきたいのは、原子力安全委員長としては、全交流電源喪失ということになれば、交流電源が失われるだけじゃなくて直流電源まで失われたら、全電源喪失なんです。これは、圧力容器内ではどんどん蒸発が進み圧力が高まり液面は下がる、当然炉心溶融への道をたどるわけですね。ですから、全交流電源喪失ということをお聞きになったときに、全交流が全電源喪失になるなといつ判断されたかですね。これは大変だということをいつお考えになったのかを伺っておきます。

○班目参考人 基本的には、バッテリーで動くものは計測関係と小さな弁のたぐいです。
 実は、外部との連絡がとれない中、中で少し議論させていただいて、その結果、バッテリーが生き残っている可能性はかなり高いだろうというふうな認識はしておりました。今現在も、我々、時系列できちんとした把握はしてございませんけれども、完全な意味でバッテリーも何もかもだめになったという瞬間というのはかなり遅いし、バッテリー程度だったら、いざとなればほかのところから持ち込むことによって何とかなるのではないか、いろいろな議論をそういうときにしていたというのは事実でございます。

○吉井委員 私は、全電源喪失という問題は、もっと深刻な問題だと思うんです。
 今までの説明は、外部電源がだめでも内部電源があります、内部電源はDGとバッテリーの組み合わせですと。もちろん、おっしゃったように、DGが働けば、メーターその他計器類を多分読み取ることもできるんでしょうけれども、しかし、DGの機能を使って、逆にそれで交流電源の方を動かして、転換して、それで機器冷却系を動かすとか、それができるから大丈夫なんだ、これが今までのお話だったんですよ。
 だから、それだけに、全電源喪失ということになれば深刻な問題なんですが、今おっしゃったように全交流電源喪失だけでもだめだということになれば、全交流電源喪失を聞いた時点で、直ちにこれはベントしなさいとか、あるいは、真水が一番いいんですが、なければ海水注入してでも直ちに冷却をして、燃料棒の頂部が液面上に出ないようにしなさいということを指示する、その判断をしなきゃいけなかったと思うんですが、何時ごろその判断をされたのかを伺っておきます。

○班目参考人 四時にそういう意味で緊急助言組織を立ち上げましたけれども、その後、原子力災害対策本部が立ち上がるまでに少し時間がございました。その間に、少し委員間で議論させていただいております。全交流電源、要するに非常用DGもすべてこれはだめだというふうに判断していますので、しかも、テレビの映像なんかを見ると、これはかなり長時間にわたって回復不能だというふうに考えました。
 したがいまして、その議論の結論として、もうこれは最終的には格納容器をベントするしかないし、それによって、消火設備等を使って炉心に水を入れなきゃいけないというふうに判断してございます。これは既に七時ごろ、もうちょっと前だったかもしれませんけれども、原子力災害対策本部の方へ向かう前にそういう判断を原子力安全委員会としてはしてございます。


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177-衆-東日本大震災復興特別委…-3号 平成23年05月24日

平成二十三年五月二十四日(火曜日)
    午前九時開議


○吉野委員 本当に残念です。やり方によってはメルトダウンは防げたんです。でも、現実には、一号機のみならず、二号機、三号機、これもメルトダウンしている。そういう状況になって、本当に残念です。
 次に、海水注入、きのうのおさらいをしてみたいと思います。
 水素爆発が十二日の十五時三十六分です。ですから、現場は大混乱だと思います。そういう中にあって、十八時ごろ、対策本部で、菅総理を初めここにおられる皆様方、班目委員長も入って議論をしたと思います。その議論の中で、再臨界の議論がされています。いろいろな可能性について総理は多くの方々から意見を求めているんだ、それでいいと思います。でも、その議論の中身の中心というか、方向性というか、雰囲気というか、再臨界の議論が多かったんじゃないんですか、班目委員長。

○班目参考人 私の記憶としては、再臨界の議論が中心だったとは思っておりません。とにかく、こういう事態ですから、水を入れる。海水だろうと何だろうと、水を入れなければ炉心の溶融がどんどん進んでしまうという認識です。したがって、それがすぐできるんだったらもう何も考えずにしてくださいというふうにずっと助言をし続けてございます。
 ただし、海水にかえるということは、塩がたくさんたまってしまうとか、腐食の問題とか、いろいろな問題がありますので、そういう問題点についてもぜひ検討すべきだという議論はあったという記憶がございます。
 その中で、申しわけないんですけれども、私の記憶としては、再臨界ということが大きな話題だったという記憶はございませんし、少なくても、私の方から再臨界の可能性があるから注水はやめた方がいいということは絶対に申し上げてございません。

○吉野委員 けさの朝日新聞です。東京電力はなぜ中断したのかという記事が載っております。
 これを読むと、官邸で再臨界の可能性が大きな議論になっている、そういう雰囲気になっている、そのことを、東京電力の元副社長、武黒一郎フェローは官邸と東電との連絡役ですので、この方が、再臨界について議論が行われている、中止要請と受けとめた、これがけさの朝日新聞の記事なんです。
 官邸対策本部としては中止はしていない、確かにしていなかったでしょう。でも、受けとめる東京電力は中止要請と受けとめたんです。そして五十五分間の中断があったんです。とめる、冷やす、閉じ込めるなんです。真っ先に冷やさなきゃならないんです。真っ先に冷やさなきゃならないのにもかかわらず、中止要請と受けとめたんです。そこでの会議の雰囲気が、海水を入れれば再臨界が起きてしまうんじゃないのかな、こんな雰囲気だった。だから、武黒フェローは東電に、現場に、中止要請だという形で中止命令を出したと思うんです。
 班目委員長、そういうふうに再臨界の議論が、雰囲気が再臨界の雰囲気になっていたというふうに東電の元副社長は思ったんです。なぜ科学者として、再臨界は可能性はゼロではないけれども、起きる可能性は本当に少ないんだ、そういう立場で、ある意味の、総理は技術系でありますから私よりも原子力について理解が深いと思います、しょせんあなたから比べれば素人です。でも、聞きかじりの知識で議論しているんだったらば、もっと専門家として、可能性は物すごく少ないんだ、こういう議論をしたんでしょうか。

○班目参考人 当時のことを正確に覚えているつもりはございませんけれども、少なくても、私の発言として、再臨界の可能性はゼロではないということは、事実上ゼロだという意味でございます。したがって、そのときのその場の雰囲気として、再臨界を気にして注水をとめるというような雰囲気だったとしたら、それは私としては絶対に異議を申し立てたと思いますし、異議を申し立てていないということは、そういう雰囲気ではなかったと私は思います。

○海江田国務大臣 これはぜひ吉野委員、御理解をいただきたいんですが、実は、これは班目先生もそうだと思いますが、私ども、その場に居合わせた人間は、東京電力が既に注水をしているということを全然知らなかったんですよ。だから、もしやっているということがわかっておれば、それをそのまま継続ということになったと思いますが、まず、現実問題として、始まったということがわかっていなかったんですよ。これはぜひ御理解ください。

○吉野委員 緊急事態は現場に任せるんです。特に東京電力の技術屋さん、これは大変だといって海水注入を始めたんです。真水がなくなっちゃったから始めたんです。それを、官邸対策本部の皆様方がわかりもしない知識で再臨界が起きる可能性があるかもしれないという議論をしたから、東電の窓口である武黒フェローは、武黒フェローもわからなかったと思います。書いてあります、わからなかったと。でも、現場はやめたんです。まさにこれは人災なんです。
 なぜ現場に任せておかなかったか、なぜそんな議論をしたのか、そこら辺、お願いします。

○枝野国務大臣 報道にも正しい情報と正しくない情報がございます。そもそもこの件の発端は、総理がそこで水を入れているのを聞いて、おれは聞いていないと言ったという報道が端緒でありますが、そうしたことはなかったということは多くの皆さんの証言でもう裏づけられていると思います。報道にあったことを前提にお尋ねをいただいても、事実と異なりますので、そこのところは明確にさせていただきたいというふうに思っております。
 そして、私は、その局面においては、記者会見を同時に行っておりましたので、私はその席におりませんが、官房副長官のもとから報告を受けているところによりますと、そもそもが、東京電力の側から、海水注入には一時間から一時間半程度の時間がかかるんだということのもとで議論が行われていたということをまず大前提として御判断をいただきたいと思います。

○吉野委員 一番は、東電がなぜ中止命令だというふうに受けとめたかなんですよ。発信元の皆さんは中止命令を出していない、一時間半かかる、でも、なぜレシーバーの東電が中止命令として受けとめたかなんです。ここが大事なんです。ここがクエスチョンマークですから、これは後日、検証委員会、きちんと国会にも検証委員会をつくるように委員長の方からもお願いしたいと思いますけれども、検証委員会の方できちんとさせていただきたいと思います。
 次に、また朝日新聞なんですけれども、発言の訂正です。これはいろいろな会議で、記録、議事録まで要りません、記録、メモで結構です、メモはとっていなかったんですか。

○海江田国務大臣 これもぜひ御理解をいただきたいんですが、私ども、その場にいて、緊急な措置をしなければいけないということは、そこに専念をしておりました。ですから、メモがないものもございます。
 それからあと、大分事態が落ちついてきてから、メモがあるものももちろん、その後はメモがとれております。私も、統合本部に行きましてからはちゃんと自分でメモをとるようにしておりますが、やはり十一日、十二日、この時間に、私自身、メモをとる時間、ゆとりも全くございませんし、それから、一緒にごく少数事務方も入っておりましたけれども、その事務方もメモをとる余裕がなかったようでございますので、その時点ではメモのないものがたくさんございます。しかし、それ以降はメモをとるようにして、しっかりとメモをとってございます。
 それから、東京電力のメモも、これは早い段階で、とにかく、東京電力は作業の日程が全部入っておりますので、それは一つ残らずきちっと保全をするようにということは、私からこれは指示をしてございます。

○吉野委員 後で検証をするために、今大臣がおっしゃった記録、メモをとっていない時期、また、とってあるということをおっしゃいましたので、いろいろな場面で使うかもしれませんので、そのメモをこの委員会に提出してくれることを要求いたしたいと思います。

○黄川田委員長 その取り扱いについては、後刻理事会で協議いたしたいと思います。
 引き続き質問してください。

○吉野委員 水素爆発なんです。あの爆発の規模から見て、爆発の専門家はどのくらいの威力があったか、わかると思うんです。一号機、三号機、四号機。そうすると、その爆発の威力をつくるためにどのくらいの量の水素が必要か、これも推察できると思うんです。
 では、それだけの水素をつくるために、どれだけのさや管の金属、ジルコニウムが溶けたのか、ここも推察できると思うんです。そして、すなわち、燃料棒がどれだけ、さや管が溶けているか、ジルコニウムが溶けているか、爆発の規模からさかのぼって推察していくと、どれだけの量の燃料棒のさや管、ジルコニウムが溶けているかということも計算できるはずだと思うんです。そのことによって、もうメルトダウンが起きているという計算もできたと思います。
 四月の十七日に工程表が出ました。水棺です。燃料棒の頭まで冷やすんだ、こういう工程表でした。四月の十七日です。もうメルトダウンは三月の十一、十二で終わっているんです。水素の量を計算した、日本の英知を集めれば計算できたと思うんですけれども、そういう計算はしているんでしょうか。

○海江田国務大臣 委員にお答えをしますが、きょうちょっと事前の通告はありませんでしたね、この件については。ですから、手持ちの資料がありませんので、私の記憶に頼ってお話をいたしますので、一部間違いがあったら、それはぜひお許しをいただきたいと思います。
 四月の十七日のところで、一号機の損傷の度合いといいますか、特に炉心の、あるいは燃料棒の損傷の度合いというのは、東京電力は恐らく七〇%とか、だけれどもそれを一度訂正して五〇%とか、そういう数字を出しておりましたから、その数字に基づいてということに、その四月の十七日の直前に出ておりました、そうした東京電力が把握をしておりました燃料の損傷の度合いに基づいてあの計画を立てたということは事実でございます。
 そして、東京電力自身が本当に、メルトダウンという言葉を使うのがいいかどうかはわかりませんけれども、炉心が溶けまして、燃料棒がすべて溶けまして、そして下の方にたまっているという状況が特に一号機についてわかりましたのは、ついこの間、四月の十七日以降でございますし、きのうかおとといになってやっと二号機と三号機もやはり同じような状況にあるんじゃないだろうかということがわかった状況でありますから、その意味では、水素の量からというような御指摘もございましたけれども、そこの点はちょっとわかりませんが、東京電力は四月の十七日の時点では、いわゆるすべての燃料が溶けて、これは専門家の間ではコアメルトと言うようでございますが、炉心部分がすべて溶けたということの認識はなかったようであります。

○吉野委員 班目委員長に、どうして七割、五割の燃料棒が損傷しているという、その辺の技術的なところをちょっと教えてください。

○班目参考人 東京電力の方が発表した損傷割合というのは、これは燃料が損傷すると希ガスがぱっと出て、CAMSといいますけれども、放射線が出ます、その量から推定するものでございます。
 それでよろしゅうございますでしょうか。

○吉野委員 けさの産経新聞です。班目委員長について、産経新聞のインタビュー、「一問一答は次の通り。」と書いてあります。国民新党の亀井先生が「辞めるべきだと? ありがとうございます。私もぜひ辞めさせてほしい。でも、ここでもし自分から辞めたら末代の名折れだ」、こう委員長は発言をしております。本当の気持ちはどうなんですか。やめたいんですか。

○班目参考人 私としては、この職務を全うすることこそが私の使命だと思っています。ここで逃げ出したら本当に末代の名折れだと思っております。したがって、この問題については、とことんまでつき合わせていただきたいと思っております。

○吉野委員 民主党の空本議員も、原子力安全委員会はある意味で大きな批判といいますか間違いをしている、SPEEDIも情報隠しをしたし、緊急助言組織を十六時にすぐ立ち上げました、立ち上げたけれども、専門家はなかなか出席してこなかった。そのときの班目委員長の答弁は、それぞれの委員は自分の仕事があって忙しいからですと。私、この耳で災害特で聞かせていただきました。
 こんな安全委員会でいいのか。そして、SPEEDIについての情報隠しもしておりますので、そういう意味の責任というものを委員長は感じていないのか。感じているんだったらば、やめたいんだ、でも、とことんここに自分の力を注ぐんだ、こう言っていますけれども、責任を感じているのかどうか、お願いいたします。

○班目参考人 まず、緊急助言組織について申し上げます。
 緊急助言組織は、事故発生直後に立ち上げてございます。立ち上げようとしたんですが、一斉携帯メールを送信したところ、全く機能せず、通じませんでした。したがいまして、電話でもいろいろ連絡をとったんですが、ほとんどつながらない。さらに、たまたまつながった方も、交通機関が完全に麻痺して出席できないという返事ばかりでした。そんな中で、何人かの方は徒歩で駆けつけていただいたんです。次の日に駆けつけてきた方々もいらっしゃいます。
 したがって、緊急時応急対策調査委員の方十六名に集まっていただくとともに、それ以外の専門家の方十六名にも集まっていただいて、それから本当に連日連夜、徹夜で原子力災害対策本部からの助言要請にこたえてきております。
 しかも、その方たちというのは本職がございます。大学の先生であったり、あるいはお医者さんであったり、研究所の研究員であったり、あるいは弁護士さんであったり、そういう方でございます。そういう方たちに対して、怠けているというような意味の発言が空本議員の方からあったような気がしたので、それに対して猛烈に抗議させていただいたという次第でございます。


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177-衆-東日本大震災復興特別委…-6号 平成23年05月31日

平成二十三年五月三十一日(火曜日)
    午前九時開議


○中川(秀)委員 いずれにせよ、二転三転している印象はもう否めませんが、さらにその後、現地の吉田発電所長が海水注入を継続していたことがわかり、発表されたわけですから、当然、この政府・東電統合対策室の事実関係という文書、これは改正しなければおかしな公式文書になっちゃいますよね。だから、当然、再訂正しなければならないはずであります。
 しかし、そういう中で、今の十八時の総理指示というものの意味が何だったのか。十八時五分の経産大臣の指示、準備なのか法令に基づく指示なのか。どっちももうなぞだらけみたいな、そんな扱いにもなっている。
 さらにもう一言申し上げますと、さらなるなぞは、総理が、みずから総理指示を十八時に出した、もう真水はあきらめて海水注入しろと出した。その時間に、遺憾ながらまた迷って、本当にそれでいいのかと検討してくれという指示を出していることなんですよ。
 このなぞの総理指示と経済産業大臣指示と同じころ、この政府の資料によれば十八時から十八時二十分ごろ、この間にかけて、総理のもとで、御前会議というか何かそういうものが開かれていたらしい。それは、本委員会において総理自身が、先ほどの答弁にもありましたが、この間に、この十八時から十八時二十分の間に、再臨界という課題もあり、海水注入に当たってどうすべきかという検討を、東電の官邸に詰めていただいていた責任者、安全・保安院のメンバー、そして原子力安全委員会の委員長を初め委員の皆さん、そして私、あるいは海江田大臣、あるいは補佐官で検討していたと答弁していますね。
 原子力の素人である私でもわかることは、三月十二日十八時の段階で、総理のもとで、あるはずのない再臨界を議論し、原子炉がもう一回反応を起こして分裂を始めて、熱が発生して発電していく、そんな議論をして、その話が現地の福島原発まで行ったことの異常さなんですよ。
 ちょっとフリップを見せてください。
 地震発生当日の三月十一日の夜に、原子炉建屋の放射線レベルが異常に上昇していますね。明らかにもう空だきの状態が進行していた。これはもう兆候が確認されています。翌日午後には、セシウム、沃素、ストロンチウム、プルトニウム、セリウムなど、数十種類、五十種類ぐらいか知りませんが、放射性物質が漏れ出していることも確認されている。
 もう完全に、この図にあるように水がもう下がってしまい、四十分後にはもう空だき状態になり、燃料棒も制御棒も溶け、一時間半後にはこういう状態になり、そして二時間後にはこうなる。炉心がもう完全に本来の形を失っていることは疑いがないわけであります。二カ月以上たってから、炉心溶融みたいなことを、メルトダウンみたいなことを認めているではありませんか。
 したがって、こんな時期に及んでも再臨界を本当に心配していたというのは全く認識がずれていますし、愚かだったと思いますね。あり得るのは、本当にこれも偶然のことですが、スリーマイルの例も知っていますが、四十分、一時間半ぐらい、もう本当に、制御棒のジルコニウムというのは溶けちゃうんですが、何か膜みたいなのが残って、そして偶然にそういうことが起こる可能性が全くないとは言えないが、そういうことだということで、もうせいぜいそれは、十一日の発生から四十分から一時間半後。翌日の十二日の段階の夕方になって再臨界なんて、そんな議論をすることは、かつて科学技術庁長官で多少勉強しましたが、あり得ぬことですよ、そんなことは。
 班目委員長、あなたはこの御前会議で、再臨界について、最初は危険性があると言ったとされ、御自身が抗議されて、それは可能性はゼロでないと言ったことになり、しかし、それは事実上ゼロだという意味だとおっしゃり、最終的には、本当は海水注入が現地所長の判断で、これは正しい判断なんですが、続いたことがわかったから、最後に、私は一体何だったんでしょうかと言ったんですね。
 改めて聞きたいですが、三月十二日、翌日夕方十八時の段階で総理の前で海水注入を議論していたころには、もはや再臨界なんて懸念する、そんな時期は過ぎ去ってたんじゃないですか。正確に言わなきゃいけませんよ、国民に対して。総理のための安全委員長じゃないんです、あなたは。メルトダウンになっていたんじゃないですか、このときはもう。そのことを言うのがあなたの役割のはずだ。それを総理に言ったんですか。再臨界は事実上ゼロとあなたが言ったことに対し、総理は聞く耳を持っていたんですか。何と答えたんですか。

○班目参考人 まず第一に、私は、もうはるか前の時点から、こうなった場合には、真水がなくなったら海水注入しかないと言い続けておりました。
 それで、十八時からの御前会議でそのような議論があったかどうかについては記憶してございません。私がはっきり申し上げるのは、私の方から再臨界という言葉を持ち出すはずは絶対ございません。これはもう、私の専門性からいってどなたも認めていただけると思います。しかしながら、どなたか、これも総理かどうかわかりませんが、再臨界の可能性についてどうかと聞かれたら、それはゼロじゃないかもしれませんねと言うかもしれません。
 ただ、ここで理解していただきたいのは、その空気で何か起こったとかいうんですが、そのときに周りの方がざわざわしたとか、私に再臨界についてもっと検討しろとか、そういうような話があったという記憶は全くございません。
 とにかく、私としては、事故の収束だけが念頭にあったので、何時何分にだれからどのように聞かれたかとまで言われてしまうと、正直申し上げて、はっきりとしたお答えはできないというのが実情でございます。

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○西村(康)委員 前向きにとおっしゃいましたので、我々もこれは早急に提案をしたいと思いますので、できれば超党派で早く成立をさせたいと思います。総理にもぜひ御協力をいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 原発の話を引き続きやりますけれども、チェルノブイリの事故との比較をさせていただきます。
 原発については、安全基準や規制体制について、これは自民党時代にも進めてきた話でありますので、我々にも責任があります。そのことを反省もしながら、そして、一日も早く収束させることが我々にとっても責任だという思いで、これまで私も各党、政府との実務者会議の場でもいろいろ提案をし、協力をさせていただきながら、一日も早い収束に向けて努力をしてまいりました。
 しかし、やはりどう考えても事故発生後の対応の悪さ、先ほどの中川委員の指摘のあった海水注入をめぐるいろいろな混乱、そして、先般来私が指摘をしている初動のおくれ、こうしたものについてもう一度しっかり議論をしたいと思いますけれども、現状、今、汚染の状況がどうなっているか、これを確認したいと思います。
 パネルにはチェルノブイリの様子が出ていますけれども、これは真ん中に丸く円をかかせていただきました。チェルノブイリから大体三十キロ圏内でどんなふうに汚染されているか、これを見ていただきますと、一番高いところで三百七十万ベクレルの数字があります。これはセシウム137でありますけれども、三百七十万ベクレル、一番赤いところですね、中心部分であります。
 さて、それでは、日本の今の福島第一の周辺の様子はどうかということでありますが、これは先般、文科省とDOE、アメリカのエネルギー省が航空機のモニタリングをやった結果であります。これを見ていただきますと、同じセシウム137でありますけれども、五百万ベクレル以上のところが一番中心部であります。右上の数字を見ていただきますと、一番高いところで一千四百七十万、一千四百万を超える数字になっている。
 チェルノブイリですら、チェルノブイリは何年かたった後ですけれども、三百七十万、その後、三十キロ圏内は基本的に人が住まないというふうなことになっておりますが、これは非常に厳しい状況、汚染は進んでいる。このことは、先般、原子力委員会で河田さんが同じ報告をされたと伺っております。
 原子力安全委員長にお伺いをしたいと思います。
 この状況をどう考えるか。そして、先般の予算委員会の質疑で委員長は、少なくともベントがここまで遅くならなければこれほど被害は広がらなかった、事態の悪化は防げた、それは確かだったと思いますという答弁をされました。この状況を見て、今の状況をどう評価するか、そして、やはりベントのおくれがこうした状況を招いた、このようにお考えなのかどうか、お考えをお伺いしたいと思います。

○班目参考人 ベントがもしもう少し早く実施されていたらばこのような状況にはならなかった、特に二号機の格納容器の破損というのが結構大きな問題だと思っていまして、ベントによってそれを防ぐことができれば被害の量はもう少し少なかっただろうというふうには認識してございます。


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177-衆-東日本大震災復興特別委…-7号 平成23年06月09日

平成二十三年六月九日(木曜日)
    午前九時三十分開議


○谷委員 自由民主党の谷公一でございます。
 復興基本法の議論も大詰めを迎えました。きょうは五十分時間をいただいておりますので、被災者支援にかかわるさまざまな諸課題と、後で総理に、退陣に当たっての今の思い、そういったことを、首をひねっておられますが、お尋ねしたいと思います。
 きょうは原子力安全委員会の班目委員長にもお越しを願っております。まず、班目委員長にお尋ねをいたします。
 先日、日曜日、NHKでございましたが、班目委員長は、今回の事故は人災だったとテレビで述べておられました。それをより正確に表現を調べてみますと、次のように言われておられました。津波が大きいものが来たのだから、これは天災ですよねと言われたら、私は絶対にノーです、これは人災です、こういうふうに明確に言われておりました。
 そう述べられた根拠は何ですか。なぜ人災だとお考えなんですか。

○班目参考人 御承知のとおり、今回の事故は、地震や津波によって長時間の全交流電源喪失やあるいは冷却機能の喪失が行われたものでございます。原子力施設というのは、これは分厚く守られなければいけないわけでございます。したがって、たとえ津波が想定を超えたからといって、第二、第三の防護手段がなければいけない。それなのに、実際にそういう手段というのを講じていなかった。このことはまさに人災であるというふうに我々は考えております。
 原子力安全委員会といたしましては、基本的な考え方として指針類を定めているところでございますが、それにもやはり抜本的な見直しをしなきゃいけないと考えているところでございます。

○谷委員 班目委員長、そうすると委員長の認識は、今までの対策、ふだんからの、平時のそういう対策が十分ではなかったということかと思うんですけれども、そうしたら、そういうふだんの対策に加えて、あの地震以降の、特に初動対応、それらについては問題ないというふうにお考えですか。
 つまり、ふだんのそういう備えが十分ではなかった、これは天災のせいばかりにすることはできない、人災だという御認識だと思いますし、それに加えて、では地震以降の対応、これは十分であったか、人災とお考えなのか、そこをお尋ねします。

○班目参考人 事故発災後の対応については、これはこれから検証委員会等々で明らかになるところでございますので、私としては現時点では非常にコメントできないところでございます。
 しかしながら、少なくても現場の対応としては最大限のことをしていると思っておりますので、それについて人災云々を私の方から口にする気はございません。


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177-参-経済産業委員会-9号 平成23年06月16日

平成二十三年六月十六日(木曜日)
   午前十時開会


○若林健太君 原子力安全委員会が決定をした発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針二十七に、電源喪失に対する設計上の考慮というのがあります。この中に書いてあるのは、長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない。非常用交流電源設備の信頼度が、系統構成又は運用により、十分高い場合においては、設計上全交流動力電源喪失を想定しなくてもよいと、こういうふうに実は安全指針に書いてある。
 班目委員長はこの点について明らかに間違いだったということを率直に認められて指針を見直していくと、こういうふうに発言されておりますが、改めて、こうした指針を作ってしまったことについての責任、それについてお伺いしたい。そして見直しのスケジュール、いつごろこれを見直すのか、お伺いしたいと思います。

○政府参考人(班目春樹君) 確かにこの指針を作ったのはかなり前でございますけれども、米国のものを参考に作ったものと思われます。
 しかしながら、米国のものの場合にはちゃんとその外部電源の信頼性を評価してやりなさいということになっているところ、我が国の場合にはもう十分高いのでという感じでやっています。この辺りはもう本当に大変反省しなきゃいけないところだと思っております。
 したがいまして、原子力安全委員会といたしましては、今月中にもこの指針の見直しに着手いたしまして、かなり抜本的な改正になるかと思いますので、じっくりとした根本的な改正の話と別に、どんどん改正すべきところについてはその都度結論を出して改正していくという形を取っていきたいと考えているところでございます。


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177-参-内閣委員会-9号 平成23年06月16日

平成二十三年六月十六日(木曜日)
   午前十時開会


○大久保潔重君 皆さん、お疲れさまでございます。民主党の大久保潔重です。本日最後の一般質疑になりました。
 今日も朝から多くの委員の皆さんが東日本の大震災に関して、今後の電力政策であるとかあるいは生活再建等々、様々な議論がなされてまいりました。死者、行方不明者は二万三千人を超え、今もなお八万四千人を超える方々が避難を余儀なくされております。私自身も、本当に三月十一日以来、私にできることと考えて自分なりの活動を続けてきたつもりでございますし、三月十一日以降は多く私自身の思いを東日本に寄せてまいりました。
 そういう中で、今現在、参議院でも東日本復興特別委員会で復興基本法について議論がなされております。今後は、この復興基本法に加え、第二次補正予算あるいはその歳入を担保する特例公債法案など必要な法案を成立して、まさに人、物、金をこの東日本地域に集中的に投入をして復旧復興を成し遂げていかなければいけないというふうに考えております。
 実は、私の地元長崎県も、過去、昭和三十二年の諫早大水害、あるいは昭和五十七年は長崎大水害、さらには雲仙・普賢岳の噴火災害、もっと遡れば原爆投下という悲惨な歴史を有しております。そういう中で、全国の皆さんから本当に御支援をいただき、また励ましをいただき、見事に復旧復興を遂げてまいりました。東日本地域におかれましても、多少時間は掛かりましても必ず不屈の精神で復興を成し遂げられると、こう確信しております。
 ただ、この福島県の原発、第一原発のこの事故の問題に関してはちょっとやっぱり事情が異なるかなというふうに考えております。いまだに原子炉の火種は収まっておりません。今後どうなるのかというのは恐らく世界中の誰もが経験したことのない世界でありましょうし、だからこそ早急に国内外の英知を集めて、一日でも早い手を打って、どんどん手を打って、収束に向けて取組を進めていかなければいけないのに、やはり三か月もたって見通しが立っていないというところに恐らく今日の大きな問題があるのかなというふうに考えております。そういうことも踏まえて質問をさせていただきます。
 まず、この福島第一原発、震災後、何が問題かと。やっぱり電源が喪失したということかなとまずは思っております。そういう意味で、特に原発サイトの内部は津波によって喪失をした、外部は地震によって喪失した、こういうふうに公表をされておりますが、今まさにこの電源喪失、こういう事態に至った状況というのを、原子力安全委員会、どのように認識されておりますか、お尋ねいたします。

○政府参考人(班目春樹君) おっしゃるとおり、外部電源は、これは地震の影響により送電網がやられたというふうに理解しております。それから、内部の電源といいますか、非常用ディーゼル発電機は、これは津波によって水をかぶったために失われたというふうに理解してございます。

○大久保潔重君 一号機から五号機は恐らくそういう状況だろうと思います。六号機においては、当然外部は地震でやられましたけれども、内部においては津波でやられていないという状況だというふうにも聞いております。
 そういうことも踏まえて、今後、どのような見通しでやっていくのかということを是非お聞きしたいと思います。

○政府参考人(班目春樹君) まずは、この全交流電源喪失という事態を引き起こしたということの元々の原因として、長期間にわたるそのようなものは考えなくてもいいという安全設計指針というものがあったということは事実でございます。これについては根本的な見直しをさせていただきたいと思います。
 それから、原子力安全委員会は、これは助言機関といいますか、そういう指針を定めるところなので、規制行政庁である原子力安全・保安院の方におかれては、我々が示す基本方針に基づいてしっかりとしたチェックを既設の炉に対してやっていただきたいというふうに思っているところでございます。


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・事故後の国会審議 その3 班目政府参考人 3~4月分

・事故後の国会審議 その3 班目政府参考人 3~4月分


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177-参-予算委員会-7号 平成23年03月22日

平成二十三年三月二十二日(火曜日)
   午前十時開会
○福島みずほ君 このSPEEDIの結果が公表されておりません。なぜ公表されないんですか。

○政府参考人(班目春樹君) SPEEDIというソフトウエアは、原子炉施設からどのような放出があるかが分かったときに、そのときの気象条件等を用いてどこの線量がどのようになるかというのを予測するシステムでございます。残念ながら、現在のところ原子力施設からどのような形で放出されているかというのが分からないため、これは予測には現段階では使うことが無理でございます。そのため、むしろモニタリングということもポイントでやってございますけれども、それを面的に捕捉する手段としてSPEEDIを使っているということでございまして、それについてでしたら幾らでも公表することは可能でございますが、予測はちょっと無理だということを是非御理解いただきたいと思います。

○福島みずほ君 国の様々なデータが公表されないために国民は不安になるのです。即時の公表をお願いいたします。
 次に、避難についてお聞きをいたします。
 十二日朝、保安院と私は話をして、一号機の燃料棒の損傷の可能性がある、ベントをするということを聞きました。十五時に各党党首が集められた段階で、十キロ圏内では足りない、もっと避難を拡大すべきだということを言いましたが、その時点で、十五時、官房長官は、十キロで十分だということでした。その後の経過を見ても、避難はもっと拡大すべきではなかったんでしょうか。

○大臣政務官(中山義活君) ただいまのは十二日の時点でございますね。
 避難区域の設定というのは、住民の方々の安全、健康の確保に万全を期すとともに、発電所周辺の環境モニタリングの結果を総合的に勘案しつつ、余裕を持って設定をしているわけでございます。これまでも発電所周辺の環境モニタリング等の結果を注視しつつ、随時避難範囲を見直してまいりました。
 なお、十二日五時四十四分に総理より、十キロ圏内の住民に対して避難の指示を発出しております。
 以上でございます。

○福島みずほ君 冷却がうまくいかないことが十一日に分かり、十二日の段階では、朝の時点で、燃料棒が損傷している可能性がある、ベントをしなくちゃならない。ですから、十キロではなくて、その時点で二十キロにすべきですし、今、今日も二十キロから三十キロ圏内の人たちのことが議論になっています。社民党も服部議員が南相馬市に行きました。結局、中途半端なんですね。屋内退避だから大変で、物も来ない。
 社民党は十四日、官邸に行き、もうこれは三十キロより超えて出すべきだと、今ならまだ大丈夫だから出せるということを言いましたところ、四日掛かると言われました。でも、その時点で四日掛けてやっていたら、今二十キロから三十キロ圏内で苦しんでいる人たちは救済できたのではないかと思います。混乱回避も重要な要素ですが、むしろ命を助けるということに全力を挙げるべきであり、三十キロより外に避難せよという命令を、今だったらまだ間に合うので政府は出すべきではないでしょうか。公務員はこれがなければ逃げられません。

○大臣政務官(中山義活君) 屋内退避区域では、文部科学省の放射線モニターによれば放射線量は全体として低い値となっており、現時点では避難区域を拡大する必要はないものと思っております。

○福島みずほ君 冷却がまだ完全ではなく、ベントもしなければならない状況があります。だからこそ、今なら避難ができるということ、そして屋内退避を何週間も続けられないですよ。これは中途半端であり、三十キロ圏外にということを社民党は今日も強く申し上げます。
 班目原子力安全委員会委員長にお聞きいたします。
 十二日の朝、総理と一緒にヘリコプターで行き、大丈夫だと、水素爆発はないというふうにおっしゃったというのは事実でしょうか。

○政府参考人(班目春樹君) 総理と現地視察に参りました間、総理に対して原子炉の仕組みがどのようになっているかを説明させていただきました。その段階において、水素が発生しているおそれがあるが、格納容器まで出てもそこは窒素しかないので爆発のおそれはないというふうに申し上げました。

○福島みずほ君 水素爆発、起きたじゃないですか。大丈夫だ、大丈夫だ、水素爆発はないと十二日の朝、総理にあなたが言ったことで楽観的な見通しになったんではないですか。責任があると考えますが、いかがですか。

○政府参考人(班目春樹君) 私が申し上げたのは、あくまでも格納容器の中の話でございまして、建屋での爆発については言及してございません。

○福島みずほ君 水素が出るというのは、格納容器から出ているわけじゃないんですか。
 班目さん、二〇〇七年、平成十九年二月十六日、浜岡原子力発電所の裁判の証言で、非常用ディーゼル発電機が二個とも起動しない場合に大変なことになるのではないかと質問を受け、そのような事態は想定しない、そのような想定をしたのでは原発は造れない、だから割り切らなければ設計なんてできませんねと言っていますね。割り切った結果が今回の事故ではないですか。

○政府参考人(班目春樹君) 確かに割り切らなければ設計ができないというのは事実でございます。その割り切った割り切り方が正しくなかったということも、我々十分反省してございます。

○福島みずほ君 反省とはどういうことですか。

○政府参考人(班目春樹君) 今後の原子力安全規制行政においては、原子力安全委員会というところはいろいろと意見を申し上げるところでございますけれども、抜本的な見直しがなされなければならないというふうに我々感じております。

○福島みずほ君 裁判でいつも、非常用電気ディーゼルが作動しない、地震のときに、これ争われてきたんですよ。あなたは、そんなこと想定していたら原発はできないと言っているんですね。その責任はどうなるんですか。

○政府参考人(班目春樹君) 責任という意味がよく分からないんですが、今回の事象というのが、決して言ってはいけないことなんですけれども、想定を超えたものであった。想定を超えた、想定をどれぐらいしたかというと、ある意味では……(発言する者あり)そのとおりでございます。想定が悪かった……(発言する者あり)その想定について世界的な見直しがなされなければならないものと考えております。

○福島みずほ君 裁判でこういうことが想定されると言われ、あなたは原子力安全委員会委員長としてそんなこと想定されたら造れないよと言ってきたわけです。その責任はどうなんですか。

○政府参考人(班目春樹君) 私としても、また私だけでなく私と意見を交換している原子力の専門家の大多数の意見を総合して申し上げたわけでございますので、私個人の責任ということでしたらまた別の取りようはあるかもしれませんが、これはある意味では原子力をやってきた者全体として考え直さなきゃいけない問題だというふうに考えているということでございます。

○福島みずほ君 驚きです。裁判でこれは争点だったんですよ。指摘されているんですよ。想定されていたんですよ。それに対して、そんなことはないってあなたは言って、原子力安全委員会委員長としてやってきたんですよ。その責任があるじゃないですか。あなたが言っていたことが、あなたが大丈夫だって言ったことが起きたんですよ。

○政府参考人(班目春樹君) 私個人としてもそう申し上げましたし、私は当然、ある意味では原子力をやっている者全体の専門家の意見を代表して申し上げたというつもりでございますので、その点御理解いただけたらと思います。

○福島みずほ君 委員長は責任を取るべきです。また、そう言ってきた人たちがきちっとこのことについて反省あるいは謝罪をすべきです。班目さん、謝罪をする気はありますか。

○政府参考人(班目春樹君) 原子力を推進してきた者の一人として、私個人的にはもちろん謝罪する気持ちはございます。

○福島みずほ君 十二日の朝、あなたが総理に楽観的な見通し、水素爆発はない、大丈夫だと言ったことは見通しを狂わせたんじゃないですか。

○政府参考人(班目春樹君) この説明は、あくまでも水素は発生しますとまず申し上げました。それがもう既に圧力逃し弁というので格納容器に出ておりますという説明をしました。しかしながら、格納容器まで出ても大丈夫でございます、なぜならばそこには酸素はございませんという形で御説明を申し上げたわけでございまして、総理の判断がそれで甘くなったとか、そのようなことはないというふうに私は理解してございます。


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177-参-予算委員会-9号 平成23年03月28日

平成二十三年三月二十八日(月曜日)
   午前十時一分開会

○福島みずほ君 班目さん、東電幹部と二時半に協議をし、一、二号機の炉内圧力を下げるため、ベントの必要性を確認していますね。

○政府参考人(班目春樹君) そのとおりでございます。

○福島みずほ君 じゃ、なぜやらないんですか。なぜあなたは総理と一緒に現地に行くんですか。

○政府参考人(班目春樹君) 私の知っている限りのことを申し上げます。
 私のすぐそばに海江田大臣がいらっしゃいまして、東電にとにかく早くベントしろと言い続けておりました。その結果なぜベントができなかったということについては、私は、申し訳ございませんが、今のところまだ承知してございません。

○福島みずほ君 いや、ちょっと唖然となってしまいます。もう炉心溶融かという事態で、何で班目さん、大丈夫とか言って総理と一緒に行くんですか。そのことそのものも問題じゃないですか。

○政府参考人(班目春樹君) 総理が現地を視察するということについては、私は、決まるまでいきさつを存じ上げませんので、ちょっと答弁は控えさせていただきます。

○福島みずほ君 二時半にちゃんとそういう話をしているんだったら、あなたが安全委員長としてちゃんとイニシアチブを取ってやるべきじゃないですか。東電がやらないんだったら、やれとやるべきじゃないですか。

○政府参考人(班目春樹君) 私の知る限り、海江田大臣が東電にとにかく早くベントしろと言い続けていたことだけは確かでございます。


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177-衆-経済産業委員会-3号 平成23年04月06日

平成二十三年四月六日(水曜日)
    午前九時開議

○吉井委員 ほかで動いたのが一つだけあったといったって、融通できないわけですから、それは全然違っておったということをやはりきちんと考えなきゃいけないと思います。
 班目委員長に次に伺いますが、今回の原発災害について、東京電力社長も菅総理も、想定外のことだったと発言をしておりました。
 NRCは三十年前に実験して検討しておりましたし、各国の過酷事故対策、シビアアクシデントマネジメントの中では、全電源喪失というのは考えていたんじゃありませんか。

○班目参考人 先生のおっしゃるとおり、各国ではこの問題をかなり注視していたのは事実でございます。

○吉井委員 そこで、続いて伺っておきたいんですけれども、JNESの報告書、昨年の十月に、全電源喪失の対策と。これによると、〇・六時間後には燃料が落下する、一・八時間後には圧力容器が破損する、十六・五時間後には格納容器の過温による破損。この破損の仕方はいろいろあります、爆発で破損する場合もあれば、いろいろな形があり得ることですけれども、しかし、それはJNESがちゃんと昨年の十月に出していたと思うんですよね。それに対してどのように対策を指示してこられたのか、伺っておきたいと思います。

○班目参考人 原子力安全委員会としましては、この全電源喪失ということに対して事態を非常に重く思っております。
 それで、こういう場合のアクシデントマネジメント対策というのを事業者にみずからきちんと定めさせており、それを保安院を通じて我々も伺っております。したがって、それに沿ってきちんとやるようにという指示を私どもの方としては進言してきたということでございます。

○吉井委員 シビアアクシデントマネジメントをちゃんとやらせる。実際に事故があったときに、シビアアクシデント、今度はマニュアルですね、それに基づいてきちんと対応するということをさせなきゃいけないと思うんですよ。それをやれば全電源喪失という事態は、これはまず起こらないようにさせなきゃいけないんですが、起こった場合にも、直ちに緊急に対応するというマニュアルがないと全くお話にならないと思うんです。
 班目委員長に伺っておきたいのは、地震や津波があろうがなかろうが、原発では、シビアアクシデントマネジメントとして全電源喪失を考えて、いかなる場合にも今回のような事態を起こさせないというのが本来の国の原子力安全行政であり、原子力安全委員会の使命ではないかと思うんですが、委員長、どうですか。

○班目参考人 まさにおっしゃるとおりだと思います。
 したがいまして、今回の事故を深く反省し、先生のおっしゃるとおり、二度とこのようなことが起こらないように指導してまいりたいと思っております。


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177-衆-経済産業委員会-4号 平成23年04月13日

平成二十三年四月十三日(水曜日)
    午前十時六分開議


○佐藤(茂)委員 最後になりますけれども、きょうは、原子力安全委員長、班目委員長にお忙しい中来ていただいているので、一点だけお聞きしたいと思うんです。
 先週の当委員会でも電源の問題が大きなテーマになりましたけれども、原子力安全委員会は、一九九〇年に定めた発電用軽水炉の安全設計審査指針の解説で次のように言われています。「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない。」とする考え方をその時点で明記されていました。
 それで、長時間の全電源喪失について考慮する必要はないという考え方は、今回の福島第一原発の事故を見ても、これは全く間違っておったことは明らかになっているわけでありますから、非常用電源を含むすべての電源喪失について万全の備えを当然今後はしていく必要があると思うので、原発のこの安全設計審査指針をしっかりと見直して改める意思があるのかどうか、原子力安全委員長に最後にお伺いしておきたいと思います。

○班目参考人 設計指針に関しましては、まさにおっしゃられるとおり、抜本的な見直しが必要だというふうに思っております。
 そういう意味では、まだ事故は収束してございませんが、何が大きな問題であったのかというのをしっかり調べ、それへの対応ができるような形にこれから指針を根本的に見直したいというふうに考えてございます。


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177-衆-消費者問題に関する特別…-2号 平成23年04月14日

平成二十三年四月十四日(木曜日)
    午前九時三十分開議


○吉井委員 今、魚にしても野菜にしても土壌にしても、私たちは汚染の問題で非常に国民みんな不安に思っているわけですよ。やはり、現実がどうなっているのかというところから物事は始まると思うんです。
 そこで、班目委員長に伺っておきたいんですが、三月十一日の午後二時四十六分に発災がありました。それから一時間後には、鉄塔倒壊などで全交流電源が失われた。これは東京電力から報告があり、その後、DGがだめになる。バッテリーは長くはもちませんから、だめになる。こういう状況の中で、班目委員長は何時ごろ、炉心の露出という問題が出てきて、炉心溶融ということを心配しなければいけないというふうにお考えになられたのか、伺います。

○班目参考人 これは非常に難しい質問でございます。といいますのは、実は、東京電力の方からの情報が非常に限られた状況であったということでございます。
 私自身は、少なくても、一号機でありましたらアイソレーションコンデンサーがある程度働いているので、しばらくはもつというふうに判断していたのは事実でございます。しかしながら、こういう場合の手続として定められているところの、といいますよりは、むしろ東京電力がみずから定めたアクシデントマネジメント対策というのがきちんと行われていないというのを知ったときには、相当心配し出した。(吉井委員「何時ですか」と呼ぶ)それは、正確にはわかりませんが、真夜中だったことは確かでございます。

○吉井委員 それで、外部電源が失われた、内部電源が失われた。当然、機器冷却系は働きませんから燃料が露出する、炉心溶融が起こる、これはプロとして判断されるのは当たり前だと思うんです。
 真夜中が何時なのかよくわからないんですが、判断して、総理、官房長官、経産大臣などに、これは極めて危険な状態だということを伝えられたのは何時ですか。

○班目参考人 まずは、定められた手続どおり原子炉の圧力を下げて、最終的には格納容器からベントをしなきゃいけない、それをしないともっと大変なことになるということは、真夜中になる前、多分八時とか九時ぐらいから少なくても海江田経産大臣にはお伝えしていますし、これもはっきりわかりませんけれども、一時か二時には総理も含めて御理解いただいているというふうに認識してございます。


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177-衆-内閣委員会-6号 平成23年04月15日

平成二十三年四月十五日(金曜日)
    午前十一時開議

○柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。
 前回、枝野官房長官に御質問をさせていただいたのは予算委員会のところだったと思うんですが、ちょうど、エネ庁長官の東電へのことし一月の天下りについて、形式的にはオーケーでありますが、こういう御答弁をいただいたのを思い出します。あの当時、こんなことになるとは思っていなかったわけでありますが、きょうは原発事故の問題を中心にお尋ねさせていただいてまいりたいと思っております。
 まず、国際評価尺度におけるレベル7、この認識についてであります。
 原子力安全委員会の代谷委員は、十二日の会見で、三月二十三日の時点で放出量がレベル7に該当する可能性が高いということがわかっていた、こういうふうに発言をされております。安全委員会は、先月二十三日の時点で、放射性物質の拡散シミュレーション、いわゆるSPEEDIの結果を公表しております。
 私も実務者会合に出ておりますから、SPEEDIの結果を出せ出せと言ってようやく出てきた二十三日を思い出しますけれども、そのときに試算に使った放射性物質の放出量から考えて、既にこの時点でレベル7に相当する可能性が高いということを認識していたというふうにお話をされております。三月二十三日で、正式な公表が四月の十二日、その間、三週間たっているわけであります。
 沃素131換算で一万テラベクレルを超える、つまり数万テラベクレルにはなる、こういう認識を、蓋然性として高いという認識を持ったのは、一体、何月何日で、どのような根拠に基づくのかということを改めてお伺いしたいというふうに思います。
    〔委員長退席、津村委員長代理着席〕

○班目参考人 蓋然性が高いという御質問だとすると、やはり四月五日までの三十点以上の計測の結果に基づいた逆算の結果であって、四月の七日とか八日とかということになるかと思います。
 ただ、三月の二十三日の時点で既にその可能性はあるということはもちろん認識しております。

○柿澤委員 代谷委員が、二十三日の時点でレベル7に該当する可能性が高いとわかっていた、こういう発言をされていることと、今の班目委員長の御答弁との整合性は一体どうなっているんですか。

○班目参考人 基本的に、三月二十三日の時点では三点のデータからの逆算でございます。したがって、誤差が非常に大きい、外部に発表するに当たってはそのあたりを十分注意しなければいけないということで、もうちょっと精度を上げようと。しかしながら、可能性はそれなりにある、一定の可能性はあるという認識が三月二十三日にあったということで、私の認識と代谷委員の認識は基本的には間違っていないと思います。

○柿澤委員 もう一度申し上げると、三月二十三日と四月十二日の間には三週間のタイムラグがあるわけであります。
 それで、安全委員会の代谷委員は、趣旨としては、評価のレベルが5になろうが7になろうが対策のいかんには影響を与えるものではない、こういうこともおっしゃっています。したがって、安全委員会としての認識に基づいて保安院等にレベル7への引き上げということを求める必要はない、こういうふうに判断をした、こういう趣旨の発言をされています。
 この点については班目委員長も同じ考えなんでしょうか。

○班目参考人 INES評価につきましては、この場合は保安院になりますが、行政庁がナショナルオフィサーとしてIAEA等の会合に参加しております。したがって、そこで言い出すのはあくまでも保安院の方であるという認識においては、私と代谷委員の認識は全く同じでございます。


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177-参-予算委員会-11号 平成23年04月18日

平成二十三年四月十八日(月曜日)
   午前九時五十分開会


○脇雅史君 これは驚きですね。総理になられたら、危機管理に自分はどう処したらいいのか最大の関心事なはずですよ。せめてこの法律に何が書いてあるか、原子力災害対策特別措置法というのは、菅総理がやるべきことが書いてあるんです、総理大臣がやるべきことが書いてあるんです。そのことを事前に勉強しておかなくて、どうしてちゃんと対処できるんですか。私は少しあきれています。
 そこで、東電の方にもちょっと、東電じゃない、班目さんにお聞きしたいんですが、今回、計画規模をはるかに超えるような津波災害ということもあって全電源がダウンしたわけでありますが、このような事態は考えていなかったというようなお話を私はお聞きしたことがあるんですが、過去にそういうことを言われていて、今どう思っていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(班目春樹君) このような事態を考えてなかったわけではございません。平成四年に原子力安全委員会としてこのようなシビアアクシデントに対するアクシデントマネジメント対策についてという文書を発出してございまして、その場合にはどういうふうな手続を取るべきかということについてきちんと事業者は決め、それを規制当局に報告するようにというように指示してございます。


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177-衆-災害対策特別委員会-9号 平成23年04月21日

平成二十三年四月二十一日(木曜日)
    午前九時一分開議


○江田(康)委員 大変回りくどい説明でございますが、国の設置基準、これは安全審査指針でもあり耐震設計審査指針でもあると思います。それに基づいて、国の基準に基づいてこれは設置されて運転されていた、こういうことだと思います。
 次に質問をいたしますが、これは原子力安全委員会の委員長に質問をさせていただきます。
 原子力安全委員会は、九二年に、スリーマイル島の原発事故を受けて、炉心溶融などの原発のシビアアクシデントへの対策を電力各社にまとめさせました。この報告書で、電力各社は電源が喪失した場合でも原子炉内に七時間から八時間は注水を続けられる冷却機能を備えていて、これに加えて、隣接する号機の電源を融通する非常用発電機を追加設置するとしたわけであります。しかし、全社とも、八時間を超えるような長時間にわたって全交流電源が喪失する事態を想定した社はなかった。当時の通産省や、経産省ですが、原子力安全委員会もこの報告書を了承していたわけであります。
 安全委員会が九〇年、平成二年に定めた原発の安全設計審査指針では、長期間にわたる全交流電源喪失は、送電線の復旧や非常用発電機の修復が期待できるために考慮する必要はないという考えを示しております。
 これは想定が甘かったんじゃないですか。地震への備えを重視する一方で、津波や電源喪失への備えが甘かったから、ここまで深刻な事態になったのではないか。これについて安全委員会の見解をお聞きいたします。

○班目参考人 そのことにつきましては、平成四年に、このような全交流電源喪失を含むシビアアクシデントに対するアクシデントマネジメントというのを事業者から出させ、それを行政庁の方で審査し、安全委員会に報告するようにしておったところでございます。
 さらには、昨年、このシビアアクシデントというものに対して全面的に見直すべきであるということを宣言し、本年になってからまさにそれに着手しようとしていたところでございます。
 しかしながら、指針の見直しが間に合わず、このような事態に至ったことに関しましては、安全委員会としては深く反省しており、今後、根本的に指針を見直そうと考えているところでございます。


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177-衆-経済産業委員会-6号 平成23年04月22日

平成二十三年四月二十二日(金曜日)
    午前九時三十二分開議


○吉井委員 陸上、海上ともそれをやっていただきたいと思います。
 次に、班目原子力安全委員長に伺っておきますが、先日の消費者特で私がSPEEDIにかかわる質問をしたときに、放出源、東京電力の放出源のデータがないと非常にあやふやになると。誤差があるということですね。だから日々のデータの公表を差し控えているというお答えでした。
 伺っておきたいのは、放出源データを出すように東京電力に求められたのかどうか。これを一言伺っておきます。

○班目参考人 SPEEDIにつきましては、三月十六日の時点で文部科学省の方からその運用を原子力安全委員会にゆだねられてございます。その時点で、文部科学省の方から放出源データはないとの説明を伺っております。
 さらに、これを運用するために必要なデータというのを、三月二十一日と二十七日に細かい項目まで示して保安院にお聞きしているところでございますが、いまだもってデータはいただいておりません。

○吉井委員 福島第一原発のオフサイトセンターは、国の保安院の方を初めとして、国も県も電力もみんなここに集まっているわけですね。このオフサイトセンターにあるERSSには、排気筒や排水口モニター、風向、風速、大気状態などのデータ、それ以外にいっぱいデータがあるわけですが、ERSSのこういうものについてはちゃんと入手しておられるのかどうか、伺っておきます。

○班目参考人 私の伺っている限りでは、ERSSというものでデータはとれていないというふうに聞いております。

○吉井委員 こういう事故時のためにオフサイトセンターをつくっておいて、データがとれないということは、これは言ってみれば、それぐらい地震動が深刻なものだったということを示しているんだろうと思いますが、実は、福島原発のさまざまなパラメーターを、もともとERSSをもとに、JNESで事故後のプラントの状況を自動的に推察して対策を支援する事故情報判断支援システム、DPSや予測解析システム、APSがありますね。そうすると、これらERSSもDPSもAPSも、オフサイトセンターはつくったはずなのに、全く班目委員長のところには判断する基礎的データが寄せられていなかったということですね。

○班目参考人 オフサイトセンターにつきましては、事故後しばらくして退避せざるを得なくなり、現在、福島県庁の方に移転してございます。したがいまして、オフサイトセンターとして設置されたものについては現在運用されていないというふうに伺っております。

○吉井委員 事故対策だといって莫大な金額をかけてオフサイトセンターをつくりながら、オフサイトセンターが丸ごと逃げ出してしまった。これは一体どういうことなんですかね。
 それで、SPEEDIについては、東京電力の情報不足で精度が悪いからということで公表をしない。本来オフサイトセンターから来るべきERSSもDPSもAPSも示されていないとしたら、これは、私はそのこと自体が深刻な問題だと思うんです。
 とりあえずSPEEDIのデータを信頼できるものにするためには、原子力安全委員会の機能が発揮できないじゃないかということで、東京電力にデータを出せと迫るべきだと思うんですが、なぜデータを出させないのか、伺っておきます。

○班目参考人 これは、制度的には、原子力安全委員会は原子力安全・保安院にデータを出すように求めるところでございまして、出すようにずっと求めているところでございます。

○吉井委員 それで、保安院やJNESの方から東京電力へ何ぼ言っても言うことを聞かないと。こんなことでは対策の立てようがないんですが、保安院長は、これをきちんと東京電力に求めているんですか。

○寺坂政府参考人 東京電力に対しまして、事故時あるいはその後の進展の状況につきまして、事実関係についての報告は求めているところでございます。
 ただ、当初は、現場におきまして当座の対応に非常に混乱を来す、あるいはそこに集中をする、そういったような状況がございまして、そういった面でおくれがございますけれども、しっかりと内容を求めているところでございます。

○吉井委員 しっかり求めていきたいと四十日間言い続けてきたんですよ。全然出てこないんです。
 これは、海江田大臣、あなたが所管の大臣なんです、対策本部長の命によってあなたが東京電力に命令して基礎的なデータを全部出させる、これをやらないことには何にもわからない。JNESという機構が、あるいは保安院があっても、データがないことには役に立たないんですよ。これは、今回の問題を収束に向かわせる上でも、データなしには、工程表といったって、その信憑性が今疑われているときなんですよ。私は、大臣として、東京電力にきちんと命令して出させる、全部出させる、これを求めたいと思いますが、どうですか。

○海江田国務大臣 データの中に、あれだけ規模の大きな地震と津波でございますから、失われたものがあるというのも事実でございます。しかし、それ以外のものについては全部出させるように、私は、既に、事態の動きに対してどういう対応をとったかなど、証拠書類についてはすべて保全をするように、これは炉規法に基づく、しかも、口頭でなしで文書によって指示を出したところでございます。
 ですから、同じような形でこれはしっかりと指示をしたいと思っております。

○吉井委員 とにかく、四十日間言うことを聞いていないんですよ。これは、本当に国家が機能しないのと同じ意味なんですよ。それぐらい深刻な問題に置かれている。だからこそ、今から文書を出すということですが、それは遅過ぎるとは思うけれども、出さないより今からでもいいですよ、徹底的にデータをきちんと出させる、このことを求めて、時間が参りましたので、質問を終わります。


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177-参-決算委員会-4号 平成23年04月25日

平成二十三年四月二十五日(月曜日)
   午前九時三十分開会


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 福島第一原発は、まさに最悪の事故になりました。初動における危機的事態にふさわしい政府の対応が決定的に遅れました。そして、政府は、まともな説明もないままに、避難指示、屋内退避、計画的退避、そして警戒区域など、周辺住民と自治体に多大な混乱と苦難を押し付けてきました。避難所の住民からは、安全と言ってきたじゃないか、どうしてくれるんだと、こういう怒りの声も上がっております。なぜこういう事態になったのかということを私は問いたいわけであります。
 まず、今回、地震と津波によって全ての電源が失われて、冷却水は確保できず、炉心損傷に至り、レベル7という事故になりました。シビアアクシデント、過酷事故と言われる重大な事故であります。アメリカのスリーマイル島原子炉事件、そして旧ソ連のチェルノブイリの事故、これを受けて国際原子力機関は、こうした重大な事故を想定した安全対策を全世界に求めております。
 安全委員会来ていただいておりますが、日本はこの全電源喪失などによって炉心損傷に至る重大事故についてどういう対策を取ってきたんでしょうか。

○政府参考人(班目春樹君) 原子力安全委員会では、平成四年にシビアアクシデントの対応として、「アクシデントマネージメントについて」という文書を発出したところでございます。その中で、シビアアクシデントが生じた場合の緩和策を事業者自身が整備し、それを確実に実行することを強く推奨してございます。
 それから、原子力安全委員会としましては、昨年、これから取り組むべき重要課題というのを少し整理してございまして、その中でこのシビアアクシデント対策というものについても徹底的に見直すということをまさに始めたところでございます。
 しかしながら、実際にはこのような大事故を防げなかったということに関しまして原子力安全委員会としては深く反省し、今後、指針類の改訂ですとかあるいは監督等に努めてまいりたいと思っている所存でございます。

○井上哲士君 これがそのアクシデントマネジメントの指針でありますが、これ、どういうふうに位置付けているのかと。今もありましたように、原子炉設置者において効果的なアクシデントマネジメントを自主的に整備することを奨励するということにすぎないわけですね。そして、その具体的な対策の内容いかんによって原子炉の設置又は運転を制約するような規制的措置が要求されるものではないと、ここまで言っているわけですね。
 これではもう電力会社に丸投げであって、国がこの重大事故に対する対策を放棄したものじゃないですか。経産大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(海江田万里君) 今お話のありました原子力安全委員会からの指摘を受けまして、原子力安全・保安院では平成四年の七月に事業者に対してアクシデントマネジメントの対策を取るように指示をいたしました。そして、その結果、平成六年三月に各社からアクシデントマネジメントの検討報告書が提出をされました。しかし、その中身は、先ほど委員長からもお話がありましたけれども、主に電源喪失の対策として複数号機間の電源の融通を可能とするよう設備改善を行うということを、実はこのアクシデントマネジメントの中身として位置付けがあったわけでございます。
 ですから、これだけでは特に津波の対策などでは不十分でございまして、こうした事態をあらかじめ想定し、十分な対策をできなかったという、限界があったというふうに認識をしております。

○井上哲士君 確認しますが、今言われた各電力会社からの報告の中で、今回福島で起きているように、冷却水を確保するための電源機能を長時間にわたって失うと、こういう事態を想定されたものはあったんですか、なかったんですか。

○国務大臣(海江田万里君) 今もお話をいたしましたけれども、とにかく電源の複数化と申しますか、備えを十分にしろということでございます。

○井上哲士君 つまり、隣の原発などから引いたら確保できるということで、長時間失うということは想定していないんですね。そういう報告書を政府は了承してきたわけなんです。
 それもそのはずでありまして、原子力安全委員会が九〇年に作った原子炉の安全設計審査指針というのがあります。こう書かれておりまして、長時間にわたる外部電源の喪失は送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要がないと。わざわざ、考慮する必要がないと、この安全指針自身が言っているんですよ。これでは電力会社がそういうことを想定していないのは当たり前なわけでありまして、なぜ安全委員会は、長時間の電源喪失は考慮する必要はないと、こういう指針を作っているんですか。

○政府参考人(班目春樹君) ただいま井上委員が御指摘になったとおり、指針はそのように書かれてございます。
 この指針の改訂は平成二年に行われております。したがって、平成四年に、むしろシビアアクシデント対策をしっかりやるようにという文書を提出したところでございます。

○井上哲士君 意味分からないですよね。大体、この指針は、津波については地震以外の想定される自然現象と、その他大勢にしかなっていないんですね。全く必要なものになっておりませんし、そもそも、安全設計をするときに地震の強さとか津波の大きさなど甘い想定をしては絶対なりません。同時に、どんな想定をしても想定外ということはあり得るという立場で重大事故に対する対策を取ることが必要なんですね。
 ところが、今、この九〇年の指針の後に九二年にアクシデントマネジメント対策を出したと言われましたけれども、そのアクシデントマネジメントの九二年の決定自身が全く逆の考え方なんですね。こう書いているんですよ。我が国の原子炉施設の安全性は、現行の安全規制の下に、設計、建設、運転の各段階において、多重防護の思想に基づき厳格な安全確保対策を行うことによって十分確保されていると、これらの諸対策によってシビアアクシデントは工学的には現実に起こるとは考えられないほど発生の可能性は十分小さいものとなっていると、こういうふうに書いているんですね。
 ですから、九〇年の指針で不十分だっただけじゃなくて、むしろこの九二年のアクシデントマネジメント対策で改めて安全神話を宣言しているんですよ。こういうことが事態をつくってきたわけで、ですから、世界各国はチェルノブイリなどの事件を受けて重大事故対策を強めているのに、日本は、現実に起こることは考えられないといって、むしろ国の規制対象から外して電力会社に丸投げしたんですよ。ですから、今回の事故が起きても、この間の東電社長、予算委員会に来られましたけれども、国の範囲内でやってきましたと、こういう発言になるわけですね。
 総理、やはりこういう安全神話の下で重大な事故に対する構えも備えもなかったということが私は今日の深刻な事態をつくり出したと思っておりますけれども、総理、いかがお考えでしょうか。


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177-衆-決算行政監視委員会-3号 平成23年04月27日

平成二十三年四月二十七日(水曜日)
    午後一時開議


○班目参考人 原子力安全委員会委員長を仰せつかっております班目でございます。
 原子力安全委員会の最大の責務は、原子力安全の確保のための規制の政策の企画、審議、決定ということになってございます。ほかの言葉で言いますと、要するに安全確保のための基本的な方針を示すことであり、具体的には安全審査のための指針類というのを作成してございます。
 原子力安全というのは分厚く守られなければいけません。想定を超える地震が来ようと、想定を超える津波に襲われようと、電源は確保されなければならない、そして原子炉は安全でなければならないはずでございます。しかしながら、実際には、全交流電源喪失という事態が発生し、かつ、事業者自身が定めたところのアクシデントマネジメント対策というのもおくれにおくれて、その結果、これだけの大きな事故に拡大してしまった。このあたりにつきましては、安全委員会が示してきた指針類にやはり足りないものがあったということは明らかでございます。その意味におきまして、原子力安全委員会を代表して、実際に被害を受けた方々はもちろん、全国民に対し、おわび申し上げたいと思います。
 また、安全審査の指針類につきましては、これから抜本的な見直しを行っていくこともお約束したいと思います。
 それでは、原子力安全委員会がこれまでとってきたことについて御説明申し上げます。
 全交流電源喪失の通報を受けて、直ちに委員会を開き、緊急助言組織というのを立ち上げてございます。そして、緊急事態応急対策調査委員という方が四十名いらっしゃるのですが、その方たちに直ちに携帯メールで発信しました。しかしながら、これは全く機能しませんでした。そこで、電話をあちらこちらにかけて、ようやくつかまった方も交通機関が全く麻痺して集まれないということがわかりました。その中で、数人の調査委員の方は徒歩で安全委員会の方へ来ていただいたわけでございます。
 原子力災害対策本部が立ち上がって以来、そちらの方から専門的助言依頼というのが安全委員会の方に殺到してございます。結局、安全委員はもちろんですが、調査委員十六名とそれ以外の専門の方、外部専門家の方十六名とでこれに対する対応に当たらせていただきました。実際には二十四時間体制で当たらなきゃいけないこと、それから、このような方はほかにちゃんとした職業をお持ちですので、それとの兼ね合いで大変な負担をかけてしまったということで心苦しく思っているところでございます。
 一方で、調査委員をお願いしておきながら、結局、お声をかけるのが随分遅くなってしまった先生方もいらっしゃいます。このあたりにつきましては、それでよかったかどうか、これから反省すべき材料ではないかと思っております。
 それから、現地対策本部が立ち上がったということで、早速安全委員を初め数名を派遣しようと思いました。しかしながら、本部の方に問い合わせたところ、現地に行くにはヘリコプター以外の方法はないこと、それからヘリコプターには安全委員会の方は一名だけにしてくれというふうに言われましたので、とりあえず事務局員一名だけを現地に送ってございます。
 しかしながら、現地の方は、最初はオフサイトセンターに立ち上がったんですが、避難区域の設定等によりまして、やがて福島県庁の方に移ってございます。その結果、現地対策本部との通信手段というのは非常に限られたものとなってございます。一方で、統合本部というのが東京電力の本店内に設けられまして、むしろ第一福島発電所のいろいろな情報はそちらからの方が入手しやすくなってございます。こんなことがありまして、現地対策本部へ安全委員や調査委員等、専門家を送るのは大変遅くなってしまいました。このあたりにつきましては本当に失敗だったと思って反省しております。
 安全委員会の方では、日ごろから防災訓練を重ねております。しかしながら、今回の事態においては、その多くが実は役に立たなかったという実態がございます。
 私どもとしては、限られたリソースというのを最善の使い方をするという方針に立ちまして最大限の努力をしたつもりでございますけれども、このあたりの評価につきましては第三者にお任せしたいと思っております。
 それから、原子力安全委員会の方で行った助言内容について若干紹介させていただきます。
 私自身は、三月十一日から十二日にかけて、いわゆる格納容器ベントをしてくださいという助言をしていたわけですが、このあたりにつきましてはほかの委員会等でも何回も答弁していますので省略させていただきます。
 実は、私自身、十二日から十四日、十五日ぐらいかな、ずっと官邸の方にこもっておりまして、事故としては一号機、三号機、二号機、そして四号機というふうに拡大していってしまったわけですけれども、その間もずっと政府に対して助言活動は続けております。事故の拡大を防げなかったのは、全く私の非力なんだということに尽きると思いますが、少なくても助言内容というのはその時点その時点では正しかったと私自身は思っております。
 それから、安全委員会としましては、例えば避難区域の設定ですとか変更等々におきましては、安全委員会があらかじめ定めていた指標というのが参考とされ、また我々の助言も参考とされて、原子力災害対策本部の方で総合的な観点から決められたものだと考えております。
 それから、あと、助言内容としては、例えば除染の基準だとか、それから食物摂取の制限基準だとか、あるいは学校再開のこととか非常に多岐にわたってございます。
 実は、安全委員会の顔が見えないという御批判をいただくようになりました。私としては、黒子に徹して行動したことがそれほど間違っているとは思っていないんですが、このあたりも第三者に評価していただきたいと思っております。
 なお、安全委員会では、三月の下旬あたりから、文科省の方で行っているモニタリングの評価ということで、毎日記者会見を開き、ただその評価結果を説明するだけではなくて、あらゆる専門的なことについて記者団に丁寧に説明し、御理解いただいている、そういう形で情報発信にも努めているところでございます。
 最後に、二点ほどお願いでございますが、私ども原子力安全委員会というところは、安全委員は五人でございますけれども、それ以外に、先ほどの調査委員ですとか、あるいは原子炉安全専門審査会等々の専門家の方たちを、合わせて三百名ぐらい抱えておりまして、常日ごろお世話になっております。そういう組織が背後にあるからこそ、今回のような予想もしなかったような事態に対しても、専門的知識というので助言を与えることができたというふうに考えてございます。このような機能はこれからもぜひきちんと残していただきたいと思っております。
 それからもう一つは、こういうところに加わっていただく原子力安全の専門家自体がやや減りぎみであるというよりは、かなり減ってきて危機的な状況にあるということもちょっと御理解いただきたいと思っております。以前、原子力ルネサンスと言われ続けながら、実は原子力安全研究自体がちょっとやせ細っている状態にあるということでございます。
 これから多分、組織の再編の話等々が出ると思いまして、そのときには原子力安全委員会自体が俎上にのせられることになると思いますので、それについては私の方から一切コメントする気はございませんけれども、ぜひ、安全委員会の果たしてきた機能、それからそれを支える安全研究の重要性だけは認識していただきたいと思っている次第でございます。
 それから、最後になりますけれども、この事故を収束させるには、一義的な責任を持っている東京電力が全力で立ち向かわなきゃいけない、これは当たり前のことだと思います。それから、それを直接的に監督している保安院においても全力で当たっていただきたい、これも当たり前のことでございます。
 原子力安全委員会としましては、まさに専門家としまして、例えばいろいろなデータがなくて、なかなか物が言いにくいようなところとか、あるいは責任の所在がはっきりしないようなところにおいても、勇気を持って発言していきたいというふうに思っている次第でございます。
 本日は、このような発言の機会を与えてくださったことに対して、大変感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

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○太田委員 ありがとうございます。
 今回、工程表を出したのは一定の評価ができるというふうに思います。
 政府の方にお願いをしたいのが、今回の工程表というのは最善のシナリオだと思うんですね。最悪のシナリオと、そして中ぐらいのシナリオ、この三つのシナリオを出すべきだというふうに思いますので、これは強く要望としてお訴えをさせていただきたいと思います。
 少し時間がなくなってきましたので、原子力安全委員会の班目さんの方にちょっとお伺いをしたいんですけれども、先日、計画避難区域が新たに設定されて、三十キロ圏外でも、飯舘村や川俣町の一部の方々らは今後泣く泣く避難していただくということになりました。この計画避難区域というのは、安全のために避難していただくというのが、年間二十ミリシーベルト以上の放射線を浴びる可能性のある地域ですよね。
 福島県で県内の学校の放射線を調査しました。県内で十三校が、年間二十ミリシーベルト以上の放射線を浴びる可能性があることがわかりました。私の地元事務所のすぐ目と鼻の先にある郡山市立薫小学校は、この十三校のうちの一つになりました。ここは第一発電所から六十キロ近く離れております。つまり、十三校というのは計画避難区域になるのではないでしょうか、御所見をお伺いしたいと思います。

○班目参考人 まず、二十ミリシーベルトという値についてちょっと御答弁させていただきます。
 二十ミリシーベルトという値は、それによって直ちに健康被害が出る値ではないということはまず御承知おきいただきたいと思います。
 しかしながら、先ほど佐藤さんがおっしゃったように、こういう場合は、ALARAと申しまして、アズ・ロー・アズ・リーズナブリー・アチーバブル、とにかく実行可能な手段はありとあらゆるものを用いて被曝線量は下げなければいけない、この精神にのっとっているものでございます。
 したがいまして、学校については、とりあえず再開するのは構わないけれども、そのままずっと一年何もしないでいいというふうには安全委員会の方では考えておりませんで、ぜひしっかりモニタリングをして、場合によっては対処手段も考える、そういう条件で学校の再開というのはして結構ですというふうにこちらからは助言した次第でございます。

○太田委員 そこにずっといては危険だから、残りたいというお年寄りも計画避難区域になっているわけですよね。しかし一方では、片や同じ二十ミリ超の地域でも、父母からは学童疎開が必要だという悲痛な声すら上がっております。校庭にいるのを一日一時間に制限すれば学校で授業を受けても大丈夫ですよと文科省は言っておりますが、私は、これは非常に矛盾しているのではないかなというふうに思っているところでございます。
 これまで、人工放射線で一般人が浴びていいのが一ミリシーベルトということとされておったはずだと思います。それが突然二十倍に緩和されたということで、しかも大人と子供では放射線に対する感受性が違うはずなのに同じになっていることに、地元の父母の間では不安が非常に高まっております。体外被曝が二十ミリということですが、体内被曝も同様にカウントしなければいけないはずです。そこはどうなっているのか。
 また、労働安全衛生法では、三カ月につき一・三ミリシーベルトを超えるおそれがある区域を管理区域というふうに定めております。放射能の危険から守るために、事業者には個別被曝管理を義務づけておりますよね。この法律の論理からいくと、学校にも黄色いマークを張りつけなければいけないんじゃないか、そういう不安が非常にあるんです。
 子供たちの健康は本当に大丈夫なのか。保護者の方たちが安心できる、わかりやすい説明をお願いいたします。時間がないので短目にお願いします。

○渡辺政府参考人 では、簡単に御説明申し上げます。
 まず、学校の基準における二十ミリシーベルトの考え方でございますが、学校に通うというのは、いわゆる事故が起こった後の復興期の第一歩でございますので、復興段階における一般公衆が受ける被曝線量の参考レベルとして、国際放射線防護委員会、ICRPは一から二十ミリシーベルトという値を適用しているところでございます。この参考レベルは大人も子供も含めた一般公衆全体に対するものでございますので、それを用いているところでございます。
 それから、管理区域の話がございましたが、放射線管理区域というのは、放射線従事者が大きな被曝を受けないように、一定のレベル以上は放射線の管理を始めてくださいという設定がございます。その始めてくださいというレベルが先ほどおっしゃったレベルということは御理解いただければと思います。

○太田委員 まだ安心できるような御説明だというふうにはちょっと思えないんですけれども、せめて、私がお願いしたいのは、即刻学校の除染をしてほしい、そのように思っております。先ほど班目委員長も言っておりましたけれども、少なくとも被曝線量を最低限に抑えていく、この努力をしていかなければいけないというのは、安全委員会の方でも助言として行っているはずだというふうに思います。
 郡山市では、五センチ程度の表土を除去する対策を実施することに決定をいたしました。対象は、地上一センチの地点から、数値が、小学校では毎時三・八マイクロシーベルト、保育所では三・〇マイクロシーベルト、保育所は低年齢を考慮して決めたそうです。また、屋外活動を制限する必要がない小中学校でも、屋外活動は一日一時間、部活動は一日二時間以内とするということを決めました。さらに、全校で、窓ガラスや昇降口、建物の周辺を、先生や保護者、そして地域住民の皆さんの協力を得て行うことを決めました。
 この取り組みについて、班目委員長、どういうふうに思いますか。お願いいたします。

○班目参考人 先ほども申し上げましたように、ALARAの精神、アズ・ロー・アズ・リーズナブリー・アチーバブルという観点からは、すべてしかるべき処置だろうと思っております。
 実際の処置としてどういうことを行うかというと、これは、各地方自治体であるとか、あるいは責任主体の責任でやっていただきたいものでございますが、一番大切なのは、きちんとモニタリングする、ちゃんとはかっていくということが大切でございますので、その結果がまた出てきたところで安全委員会としては意見を述べさせていただきたいというふうに考えているところでございます。

○太田委員 委員長、夏休みが終わってからとかいうのではなく、今すぐです。子供の学校はもう今始まっているんです。新学期が始まっているんですね。今すぐグラウンドの土を入れかえたり、施設の除染をするという、最大限の子供の安全を考えてほしい、そのように思っております。
 今の御発言からすると、この郡山市の取り組みを一定の評価をしていただけているというふうに、お墨をつけていただいたものだというふうに私は受けとめさせていただきます。
 今回、原子力災害というのは、そもそも国策で進めてきた国の責任があるはずです。ですから、私は、国としてできる限りのことをしていただきたい。土壌入れかえなど、無論、全額国費でお願いをしたいというふうに強くお願いをしたいというふうに思います。
 そしてもう一つ、これから窓があけられないということが予測されますので、梅雨どきに向けてエアコンの設置の要望も地方自治体から上がってきております。先日、委員長もおっしゃっておられましたけれども、スクール・ニューディールという形で、学校の上に太陽光パネルを敷いてエアコンを設置するのはどうかというような御提案は私は非常にすばらしいというふうに思っておりますので、子供たちの安全をやはり最大限に考えたときに、このような対策を検討していただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○班目参考人 原子力安全委員会としては、個別の行政処置については助言しかできない立場でございますが、アズ・ロー・アズ・リーズナブリー・アチーバブルということからは、そのような方向も検討されてしかるべきだというふうには思います。

-------

○住田参考人 大変難しい質問だと思いますが、率直に申しまして、今お話をいただいたような、若干私の理解とは違うところがございまして、ジェー・シー・オーの事故のときも、原子力安全委員会というのは本来は行政委員会ではなくて諮問委員会でございますから、諮問委員会としては明らかに、そのメンバーの一人である私がそういう行動をとりましたことについては叱責されてしかるべきでありまして、国会あたりで罷免という声が上がっても不思議ではなかったと思うんですけれども、幸いにして、先生方の御好意で見逃していただいたというのが本当だと思うんです。
 ただ、別な意味で申し上げますと、いろいろな状況から、先ほどから何回も話が出ているんですが、だれか非常に専門家がリーダーシップをとらなきゃいけないときと政治家がリーダーシップをとらなきゃいけないときと、はっきり違うと思うんです。技術のわかる人が技術的な判断を下して、それをサポートしていただくというのが政治家の役割だと私は理解しているんですけれども。
 そういう意味で、当時、私が東海村へ参りましたときに、現地本部長としては政務次官がついてこられまして、政務次官がそのときおっしゃったんですけれども、ここから先は技術的なことについては私はわからない、だれかにお願いしなきゃいけないということで私を指名されて、私もその場ですぐ申し上げたことは、原子力安全委員というのは諮問委員であって行政委員会ではないから、私がそれをお受けしていいかどうかわからないけれども、同じような原子力をやっているシニアの一人として、皆さんが私をサポートしてくださるというのなら、その立場でなら私、お引き受けしてもいいんですがということを申し上げて、ちょっとくどかったんですけれども、そういう条件をつけた上で、私自身は、だから、安全委員の一人としてというよりは、むしろ原子力シニアの一人としてそういうポジションをお引き受けしたというつもりでありまして、当時も、その後、やはり国会の科技特に呼ばれまして、その点は厳しく追及されたんですけれども、私の御説明で皆さん納得してくださったといういきさつがあります。
 ですから、原子力安全委員会が何でもかんでも前に出てやるということについては、私は個人的にも反対でありますし、私自身のやった行動も、もっとも、そのときとしてはやむを得なかったんですけれども、適切であったかどうかというのは若干疑問だと思っております。
 しかしながら、現在の状況においては、原子力安全委員会というのは諮問委員会でありますから、諮問委員会が前へ出るということは、これは日本の行政あるいは政治の体系からいいますとやはり出過ぎでありまして、要するに、質問されたことに対してきちっと答える、それから、もし非常に重要なことがあれば、原子力安全委員会は総理に意見を申し上げることができるということだと思っております。
 ただ、申し上げたいことは、一つは、行革のときに、実は、原子力安全委員会と原子力委員会、御存じのように、原子力委員会から分かれて出た原子力安全委員会でありますけれども、原子力安全委員会の方には、必要だと考えたときは原子力安全委員会は総理にそういうことを申し上げてよろしいという条項が一つあったんですけれども、なぜか行革のときにそれが削られてしまったんですね。二つとも同じような、今見ていただくとわかりますが、一つ並びになっています。私は当時、安全委員会の中での担当だったものですから、大分抵抗したんですけれども。だから、安全委員会が、今、諮問委員会としては、原子力委員会それから原子力安全委員会、同じ並びになっておりますから、そのことを一つ申し上げておきたいと思うんです。
 ただし、やはり重要だと思うことは私どもが進言をするという立場でありまして、ですから、現在の原子力安全委員会、班目先生以下五人の方の役割というのは、やはり諮問に答えてベストを尽くすということであって、みずからが陣頭指揮して何かをやるということではないと私は理解しております。
 先ほどちょっとお話がありました、カーター大統領がシッピングポートに行ったときに、当時のNRCのデントンという技術部長が実はシッピングポートの現地におりましたけれども、彼は頑として制御室に入らないで、外におって頑張っていたらしいんですけれども、カーターさんが来られるというので、やむを得ず同行したという話を後で聞かされています。それほど、諮問委員会の役割とそれから行政委員会の役割というのは、やはり日本の全体の政治をやっていく上では厳密に考えていただかないといけないと思うんです。
 そういう点で、私は、自分が元安全委員であったからということではないんですけれども、班目先生がいろいろな立場で政府に助言をされているとは思いますけれども、やはりデシジョンメーキングの責任というのは行政側がおとりになっていただかないと困ると思うんですね。その点はちょっと何か、私にすれば、余りにも安全委員会が行政委員会であるかのごとく確認されて、国家公安委員会とは違うんだということをぜひ覚えておいていただきたいと思うんです。
 それでお答えになったかどうかわかりませんが、以上です。

○斉藤(鉄)委員 班目委員長、今の住田先生のお話を聞かれて、いかがでしょうか。

○班目参考人 まさに私の思いを代弁していただいたという感じでございます。我々は、やはり法律にのっとって動かざるを得ないということをぜひ御理解いただいて、政府に対する助言役に徹しているということをどうか御理解いただければと思います。

○斉藤(鉄)委員 では、その位置づけについては私も理解しました。
 もう一つ、今回、原子力安全委員会に対して、いわゆるSPEEDI、放射能拡散予測プログラムですね、この結果をなぜ出し渋ったか、公表しなかったのかという批判もございます。先ほど、住田先生も最初のお話のときに、そこをぜひ聞きたい、このようにおっしゃっておりました。まだこの質問が出てきておりませんので。
 我々も、その日の気象状況を、いわゆるドイツの気象庁が発表した計算結果で知るような次第でした。私は、SPEEDIの結果をあのジェー・シー・オーのときに既に使える体制にあった、それから十二年もたった、随分機能も改善されたに違いないのに、今回なぜ出し渋ったのか。この点をお聞きします。

○班目参考人 ちょっと午前中の委員会でも同じようなことがあったので、もう事実関係ははっきりしていると思うんですが、SPEEDIというのは文部科学省によって開発されたものであるということが一点。それから、現在も文部科学省の予算のもとに、その関連団体であるところの原子力安全技術センターが計算を行っているものであるということ。その結果というのは、安全委員会にも三月十一日時点から配信はされておりましたけれども、その他のところにも全部配信されていたものであるということ。三月十六日になって、このSPEEDIというのが放出源データがないがゆえにちっとも活用できないではないか、専門家集団としてこれの活用策を何とか考えてくれないかというふうに言われて、それから初めて実は安全委員会の方でいろいろなことを試みたというのが実態でございます。
 そういう意味では、安全委員会の方からSPEEDIについての情報提供を出し渋ったという事実はないというふうに私は認識しております。

○斉藤(鉄)委員 例えば、最初の避難計画を立てるときに、済みません、今、具体的なある村の名前を忘れましたけれども、ある村の避難は、わざと風下の方になるように、つまり、二十キロ圏内ではあった、しかしそれが、二十キロ圏外には出るんだけれども、SPEEDIの計算結果を見れば、明らかに被曝線量は高くなる方向に避難計画が出されて、そのように実行された。
 情報は来ていると先ほど委員長はおっしゃった。では、なぜその計画を阻止されなかったんですか、安全委として。

○班目参考人 避難区域の設定とか、あるいは具体的な避難のオペレーションは、これは行政庁の方でやっているものであって、実は安全委員会としては、その指標みたいなものはつくってございますけれども、具体的なところまでは助言の時間もなかったというのが実態でございます。

○斉藤(鉄)委員 まさに住民の安全を守るために助言をするというのが安全委員会だったんじゃないでしょうか。

○班目参考人 その当時は私、ずっと官邸にこもっておりましたので、そのSPEEDIに関する実態は本当に全く知りません。
 少なくても十六日の時点までは、もうこれは避難は全部終わっております、それまではSPEEDIの管理は完全に文部科学省下にあったということだけはぜひ御認識いただきたいと思います。

------

○小泉(龍)委員 国守の会の小泉龍司でございます。
 私が伺いたいのは単純なことです。今回の事故は天災なのか人災なのか、その一点です。この公の場で、日本の最高の頭脳を持った原子力の専門家の方々がどういうふうに言われるのか、これは人災だったというのか、いや、天災で想定外だったというふうに言われるのか、その一点でございます。
 代表で班目委員長のお答えをいただいて、追加でもう一つだけ。
 甘かったと言いましたね、安全審査の指針が甘かった。五・七メートルに対して十四メートルの津波が来たんです。何で甘くなったんですか、どうして甘くなったんですか。住田先生もおっしゃいました、この辺に不安があったんだと。その不安をなぜ現実に指針にしなかったんですか。

○班目参考人 天災か人災かということですけれども、これは、私に言わせればフィフティー・フィフティー、天災の部分も五〇%ありますが、人災の部分もあったということはもう認めざるを得ないと思っております。
 それから指針の策定については、これは体制がやはりきちんとしていなかったのではないかということをちょっと気にかけております。


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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
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