東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・設置関係資料 その3 指摘、専門家等

・設置関係資料 その3 指摘、専門家等

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産経ニュース
【東日本大震災】No.36 津波に薄かった危機意識 専門家、以前から警告
http://photo.sankei.jp.msn.com/essay/data/2011/03/0327earth_quake_chiso/

マグニチュード(M)9・0の東日本大震災で高さ14メートル以上とされる大津波が直撃した東京電力福島第1原発。浸水で非常用発電機のほとんどが壊れ、原子炉の冷却機能を失った。新潟県中越沖地震など国内の原発が次々と地震に見舞われ、国や東電は地震の揺れへの対策は急いだが、専門家の警告にもかかわらず、津波への危機意識は薄かった。
 ▽大津波
「869年の貞観の地震は、津波に関しては非常にでかいものが来ている。全く触れられていないのは納得できない」。2009年6月、経済産業省で開かれた審議会の席上、独立行政法人産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の岡村行信活断層・地震研究センター長は、東電の報告に厳しい言葉で異議を唱えた。
 06年に改定された国の原発耐震指針に沿って東電は08~09年、福島第1原発の再評価結果を国に提出。海と陸のプレート間で起きるM7・9の地震などを想定したが、近年の研究でM8以上とされた貞観地震については、特別な考慮をしなかった。従来、最大5・7メートルと見積もってきた津波の再評価は先送りされた。
岡村さんの追及に対し、東電は学会で提案されている震源モデルを基にして、原発への影響は「想定の範囲内」と主張。「貞観地震については、まだ情報を収集する必要がある」として事実上、評価を棚上げした。
 ▽証拠
 貞観津波を研究する産総研の宍倉正展海溝型地震履歴研究チーム長(古地震学)によると、宮城県から福島県の太平洋岸には、過去に津波が繰り返した証拠となる、複数の砂の層が地中で見つかっている。津波は4世紀ごろと室町時代にも起き、500年程度の間隔で起きた可能性が高いという。
 年代測定で貞観津波の痕跡と特定できたのは宮城県石巻市から福島県浪江町までだが、砂層は茨城県日立市近辺まで広がっていた。宍倉さんは「原発の防災上、少なくとも高さ10メートル程度の津波を想定しておくべきだったのではないか」と指摘する。
 岡村さんも「石巻―浪江は確実な部分だけで、ほかにもグレーの部分はある。砂の侵入は内陸3~4キロだが、津波自体はもっと奥まで進んだだろう」と指摘。厳密な証拠を求める科学研究と、想定外にも備える必要のある原発の防災対策を混同するべきではないと指摘する。
 ▽過小評価
 原発の耐震安全性審査をめぐっては、これまでも同様のことが指摘されてきた。
 地下の活断層がつくる地表の〝たわみ〟の存在が中国電力島根原発(島根県)、日本原子力発電敦賀原発(福井県)などで指摘されてきた。いずれも研究者の間では広く知られているが、科学的な異論が残ることなどを理由に原発防災には活用されていない。原発と活断層の問題に詳しい名古屋大の鈴木康弘教授(変動地形学)は「最新の知見を原発の防災に生かせるよう、国の安全審査は、広く第三者の意見を取り入れるなどの抜本的改革が必要だ」としている。

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総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会
耐震・構造設計小委員会 地震・津波、地質・地盤
合同WG(第32-33回)議事録
日 時:平成21年6月24日 7月13日
岡村行信活断層・地震研究センター長
http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/107/3/032/gijiroku32.pdf
http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/107/3/033/gijiroku33.pdf

カスケード型地震と大津波の可能性について指摘
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-26.html


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Bloomberg
福島原発の事故、米NRCが20年前に警鐘-非常用発電機にリスク
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=a.lK3UI3LjpM

3月16日(ブルームバーグ):東日本大震災で東京電力福島第一原発に起きた事故について、20年前に警鐘を鳴らしていたリポートがある。米国の原子力規制委員会(NRC)による「NUREG-1150」だ。
 それによると、地震発生時に炉心溶融につながる事故の例として、原子炉を冷却するため水を外部からくみ上げるポンプを動かす非常用ディーゼル発電機の破損や停電、貯水タンクの故障などによる冷却機能不全が高い確率で起こると指摘していた。
 今回の事故は、福島第一原発の原子炉6機のうち運転中だった1、2、3号機は地震の揺れを感知して運転を自動停止したが、非常用ディーゼル発電機が作動せず、冷却ができない状態になった。日本政府は、経産省原子力安全・保安院が04年6月に公表した「リスク情報を活用した原子力安全規制の検討状況」という資料で、このリポートも紹介している。
 元日本原子力研究所研究員で核・エネルギー問題情報センターの舘野淳事務局長は、リポートが提示したリスクへの対応策について、「東電は学んでいなかったのだろうか」と指摘、「天災が1000年に一度や想定外といった規模であったとしても、そんな言い訳は許されない」と述べた。
 東電の広報担当、元宿始氏は当社がそのリポートを認識していたかどうか直ちには確認できない、と述べた。
 原発は、原子炉圧力容器内で燃料が核分裂する熱で蒸気を発生させ、タービンを回している。緊急停止した際には、高温になっている燃料を冷やすため冷却水を注入して冷やす。冷却に失敗すると、炉内の温度が上昇し、核燃料自体が溶け出す「炉心溶融」に陥る危険がある。
http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/nuregs/staff/sr1150/v1/sr1150v1part-2.pdf
http://www.meti.go.jp/committee/downloadfiles/g40614b50j.pdf


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swissinfo.ch
2011-04-01 15:14
福島第一原発、その欠陥が指摘される
http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=29904250

 核の番人と言われる、国際原子力機関 ( IAEA ) の元副事務局長でスイス人のブルーノ・ペイヨ氏は、福島第一原発が過去に指摘された欠陥をまったく改善していなかったことに怒りを覚えるという。
こうした過ちから、ペイヨ氏は世界のすべての原発が例外なく検証されるべきだと訴える。
swissinfo.ch : 米エネルギー省のペーター・ライヨンズ原子力担当次官補代行は3月29日に、上院議会で「福島第一原発はゆっくりと復旧している」と報告しましたが、あなたの評価はどうですか。
ペイヨ : 「ゆっくりと復旧」という表現は楽観的すぎる。大量の放射能が漏出しており、作業が困難になっている。幾つかの原子炉では冷却に成功しているようだが、炉心の溶融が進んでおり、放射能もここから漏れている。
もし、2号機の炉心の溶融が進み、金属製の原子炉圧力容器と共に溶けた高熱のマグマ状のものが下降して格納容器も破壊した場合、その下のコンクリートの土台はそれに耐えられるようには設計されていない。だが、もし冷却が続けられ、水が十分に補充され続ければ、希望はある。
重要なことは、燃料棒が溶融したものを圧力容器の中に封じ込め続けることだ。
swissinfo.ch : 日本政府と東電の対応をどう思われますか。正しい対応をしたのでしょうか?
ペイヨ : 原発対応にミスがあったことは明らかだ。第1日目にただちにほかの冷却方法を実施すべきだった。日本にはこうした重大決定を行う場合、すぐに行われないという欠点がある。だが、これ以上に批判すべきことは、きちんとした管理がなされていなかったことだ。検査が実施されず、チェックリストが作成されていなかった。政府に対しても偽りの報告をしていた。
 しかし、わたしが最も怒りを覚えるのは、福島原発の原子炉に欠陥があることは随分前に指摘されていたのに、それが改善されなかったことだ。
スイスでは、福島第一原発と同型のミューレベルク ( Mühleberg ) 原発に対し、地下深くから地下水をくみ上げる、ないしは原発の近くにため池を設置するなど、二重の冷却設備を設置。また予備の電線を何本も用意し、第2の堅強な屋根が初期の段階から取り付けられている。また、水素爆発を防ぐための「水素・リ・コンバイナース ( Hydrogen re-combiners ) 」設置は常識だが、こうした安全対策が福島では一切されてなかった。
これらはわずかなお金でできることだ。スイスに限らず、ほかの国ではすでに行われている。
 また、福島原発の製作元、米ゼネラル・エレクトリック ( GE ) は、スイスやヨーロッパで実施されている安全対策を日本に十分に知らせていなかった。
 日本のほうがヨーロッパより原発をよく理解しているという話は完全な幻想になった。まさに、こうした事態を避けるために、きちんとした安全対策が取られていなかったからだ。たとえ主な原因が津波だったとしてもだ。
swissinfo.ch : 日本の情報に関してはどう思われますか?
ペイヨ  : 混乱状態にもかかわらず、情報を伝えようという努力はなされたと思う。しかし原発の責任者、現地で検証する人間、東京での記者会見という流れの中では、情報に多くの間違いがあっても当然だと思う。
ただ、チェルノブイリとは比較にならない。チェルノブイリでは、情報を隠ぺいしようという意図が初めからあったからだ。
swissinfo.ch : 国際原子力機関の反応が遅かったという批判についてはどうですか?それに国際原子力機関にはもっとできることがあるのではないでしょうか。
ペイヨ  : 国際原子力機関には歴史が与えた任務というものがあり、それは核不拡散を監視することだ。核利用の安全対策分野では、ただ一つ行っているのが安全基準見直しの専門家会議だ。
ここで2008年に東電に対し、福島原発の津波対策が十分ではないと警告がなされた。しかし東電は何もしなかった。
今回の危機で、国際原子力機関ができるのは事実に基づいた技術的情報を提供することだけだ。
もっと何かができるのではという質問だが、確かに国際レベルでもっと何かをすべきだが、それを国際原子力機関が行うのか、ほかの機関が行うのかは別の議論になる。
現在、国際原子力機関は国ないしは電力会社の要請により、10人から15人の専門家を現地に送り、原発の建設、操作、管理状況を検査し、その結果を公表する義務がある。しかし、実際には何も隠すことがなくきちんと管理している「模範生」である5、6カ国からしか検査要請がこないのが現状だ。過去に、福島原発からはこうした要請はなく、したがって国際原子力機関の見直しレポートは存在しなかった。
今後検査はすべての原発に対しなされるべきだ。それを行うのは、政府以外の独立機関であり、具体的には例えば他国や隣国が検査を行いレポートを作成するようなシステムが必要だ。
サイモン・ブラッドレー, swissinfo.ch
( 英語からの翻訳・編集、里信邦子 )


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zakzak
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110318/dms1103181534014-n1.htm

事故原発は“欠陥品”? 設計担当ら35年ぶり仰天告白
2011.03.18
 自衛隊に警視庁機動隊、そして東京消防庁の特殊部隊まで巻き込むことになった空前の原発事故は、実は人災である可能性が浮上している。
 福島第1の原子炉は米ゼネラル・エレクトリック(GE)が開発した。そのGE元社員のデール・ブライデンボー氏はロイター通信の取材に対し、福島第1と同型の原子炉について35年前に安全面での不安を指摘していたと打ち明けたのだ。
 そのうえで同氏は「分析が終わるまで一部の原発は閉鎖されるべきだと思ったが、GE側は応じなかった。そのため、私はGEを辞めた」と、退社した経緯を説明した。
 米ニューヨーク・タイムズも、米原子力委員会の専門家が1972年、この原子炉は水素がたまって爆発した場合、放射能を封じる格納容器が損傷しやすいため、「使用を停止すべき」と指摘した、と報じた。
 今回、事故を起こしたのは「マーク1」という沸騰水型原子炉の一種で、60年代にGEが開発した。中心の燃料棒を圧力容器、さらにその外側をフラスコ状の格納容器で守っている。格納容器が小さく、設備建設費が安く済むため、計104基の原子炉が稼働している米国では同型の炉が23基も稼働している。米国外にも9基あり、計32基が現在も運転中だが、格納容器が小さいゆえに、水素爆発で損傷するリスクが高いというのだ。
 福島第1の原子炉はGEの設計図をもとに、東芝や日立製作所が関わって建設、運転されてきた。設計に携わった東芝の元技術者、小倉志郎氏(69)は16日、外国特派員協会の記者会見で驚きの証言をした。
 「(67年に)設計した当時は、津波は前提になかった。日本で事実上、初の原子炉設計だけに知識に乏しく、耐震設計基準についても判断できなかったと思う」
 小倉氏は福島第1原発の1、2、3、5、6号機の冷却部分などを設計した。その小倉氏によれば、津波の対応はその後、日本独自の設計で織り込まれるようになった。しかし、推定で最大10メートルとされる今回の大津波より「想定規模ははるかに小さかった」。また、地震の規模についても「マグニチュード(M)8・0以上の地震は起きない、と社内で言われた」とし、M9・0の巨大地震は想定外であったことを明かした。
 地震対策は「私の定年が近くなってやっと見直しをしたが、それでも大地震は想定しなかった。責任を感じる」と語っている。
 米メディアの報道と設計者の証言をまとめると、もともと事故時の危険が高い米国発の原発が、津波や地震のリスクを十分に考慮せず建設、運転されてきたことになる。前出のブライデンボー氏は今回の事故について、「マーク1型格納容器が、他の原子炉ほど地震や津波の負担に耐えられないことから(事故が)生じた」と分析している。
 福島第1原発の1号機が運転を開始したのは71年。40年もの間、周囲を巻き込む深刻な事故を起こさなかったのは奇跡だったともいえる。

http://www.youtube.com/watch?v=P8-qzwzRKvw


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@niftyニュース
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20110329-02/1.htm
危機続く福島第一原発 「GEスリー」元設計者が米メディアで告白 「原子炉構造に欠陥あり」
2011年3月29日(火)

 福島第一原子力発電所の原子炉には重大な欠陥があった──爆発事故を起こした原子炉の設計にかかわった日米の元技術者がそろって証言を始めた。経済性を優先するあまりに小型に造ったため、冷却システムなどに余裕がなく、地震や大規模停電になると爆発しやすいという。今回の地震では、まさにその心配が現実になった可能性が高い。
 現地時間で3月15日、米CNNが、米国を代表する原子炉メーカーであるゼネラル・エレクトリック(GE)の元エンジニア、デール・ブライデンボー氏のインタビューを放送した。白髪に白いひげをたくわえたブライデンボー氏は悲痛な表情でこう語った。
「福島原発の事故は私たちが想定したシナリオよりもはるかに悪い。このままだと、何千もの命が失われる可能性がある。それが怖くてたまらない」
 遠い米国で、なぜ米国人に福島のことがわかるのか? 実は、ブライデンボー氏は福島第一原発の1~5号機で使われているマークI型原子炉の原設計をした人物だった。
 今回、最初に水素爆発を起こした1号機は日本製ではない。1号機の建造が始まった1960年代、日本はまだ自力で商業用原子炉を造っていなかった。このためGEが造った。このあと2号機はGEと東芝が共同で建設し、3、4号機になってようやく東芝や日立製作所が主体で造った。炉心損傷を起こしている1~3号機はいずれも、GEの設計を基にしたものなのだ。
 そしてブライデンボー氏は在職中から、このマークIの安全性に疑念を抱き、75年に同僚2人とともにGEを退職すると、米原子力規制委員会と共同戦線を張ってマークIの製造中止を訴えてきた。この3人は、いまでは「GEスリー」と呼ばれている。
前出の番組でブライデンボー氏はこう語っている。
 「マークIは大規模事故に耐えうるようには設計されていません。冷却システムがギリギリの容量で設計されているため、電力供給が途絶えて冷却システムが止まると、爆発を起こす危険性がある。使用済み核燃料の貯蔵プールも最新型のように自然に冷やされるタイプではないため、電気が切れるとすぐに温度が上がってしまう」
 福島でも地震で冷却システムが止まり、1、3号機はいずれも格納容器の圧力が高まった。使用済み核燃料の貯蔵プールの温度が上がり、消防車などで必死に水をつぎだした。
 まさに氏の指摘どおりだ。一体、このマークIとはどんな原子炉なのか。

 「マークIが欠陥を抱えているとの米国での指摘は当時から知られていました。格納容器全体の容積が小さいため、炉心部を冷却できなくなって、圧力容器内の蒸気が格納容器に抜けると格納容器がすぐに蒸気でパンパンになってしまう。最悪の場合は格納容器が破裂してしまう心配がありました」
 こう説明するのは68年から77年まで日立製作所の関連会社「バブコック日立」に勤務し、福島第一原発4号機の圧力容器などの設計に関わった田中三彦氏だ。圧力抑制プールを含めたマークIの格納容器の容量は、新型のマークIIIの4分の1程度しかない。
「今回、津波による電源喪失などで炉心冷却システムがすべて動かなくなったことで、格納容器が破裂しそうになりました。1号機の格納容器が8気圧になったのがそれを物語っています。運転中の格納容器は中の気体が外へ出ないように1気圧よりもすこし低くしており、設計上も約4気圧までしか耐えられないので、ものすごく大変な事態でした」(田中氏)

 このため東京電力は、格納容器にある「ガス放出弁」を開けて、容器内の圧力を下げざるを得なくなった。そしてこの弁こそ、ブライデンボー氏が会社人生をかけてまで求めたマークIの安全対策の一つだった。
 「80年代後半、私の訴えの一部が認められ、圧力を逃すガス放出弁を取り付けることが義務づけられました」(ブライデンボー氏)
 ガス放出弁がなければ今回、早い段階で格納容器が爆発しただろう。
 しかし皮肉にも、このガス放出弁から出た放射性物質を含む蒸気のために、原発周辺の放射線濃度が上がり、作業員らが被曝している。さらに、炉内で発生した水素ガスも蒸気と一緒に出て、1号機と3号機で水素爆発を起こし、建屋を吹き飛ばした。

 マークIの欠点はこれだけではなかった。再び、田中氏が証言する。
「圧力容器に付属する再循環ポンプは、重さが数十トンもあるのに支えが不安定で、大地震時に再循環系の配管が壊れないかがよく問題になってきました。もし壊れると、ここから冷却材が格納容器へ噴き出し、『冷却材喪失事故』という悪夢になってしまうからです」
 再循環ポンプは、原子炉内に発生する気泡を取り除くためのもの。最新型では圧力容器内にあるが、福島原発のような古い型では圧力容器の外にある。
「格納容器の圧力の上がり方、水素爆発の起こり方などから推測すると、とくに1、3号機では今回、冷却材喪失事故が起きたように思えます」(田中氏)

 国はこれまで、格納容器の欠点にどれだけ向き合ってきたのだろうか? 
「ガス放出弁について当初は『そんなバカな。格納容器は放射性物質が外に漏れないようにするものだ』としばらく検討していました。設置されたのは90年代に入ってからでした」(同)
 そもそも、40年以上前に設計された原子炉を今も使っていること自体どうなのか。田中氏は言う。
「日本の原発には法的な寿命がありません。設計者は耐用年数を40年としてきました。1号機は40年を過ぎていますが、日本は米国をまね、90年代に入って最長60年まで使えるとの見解を示しました」

 マークIのコンパクトな設計については、ロシアの専門家は、
「安全性よりも経済性を優先した結果ではないか」
 と、指摘している。ブライデンボー氏もCNNのインタビューで、こう話す。
「社員だった当時、上司にマークIの廃炉を嘆願すると、上司は『そんなことをしたら、わが社の原子炉部門だけでなく、会社自体がなくなってしまう』と聞き入れられなかった」
 被災から11日後の22日に、福島原発にはやっと電源が回復し、温度計が復活した。1号機の圧力容器の温度が設計限界の309度を超える400度だったことがわかり、東電はあわてて炉内への注水を増やすことにした。しかし、注水を増やすと、それによって発生する蒸気で圧力容器内の圧力が格納容器に抜けて、再び格納容器が爆発する危険が高まることになる。
 小さかった格納容器という欠陥が、今も福島原発を苦しめている。

◆現場作業員が語る「あのボロい原発が…」◆
 地震が起きた瞬間、私がいた福島第一原発の建屋では電気が消え、上から電球などいろいろなものが落ちてきました。サイレンが鳴って、「外に避難してください」というアナウンスが聞こえ、大勢の人たちが駆けだしているのが見えました。みんな口々に、
「爆発するんじゃないか」
「放射能にやられるかも」
 とさけび、原子炉から離れた事務本館に殺到。パニックになりました。最初は「落ち着いて」と制止していた警備員も、いつの間にか一緒に走っていました。
 本館で自分の車のカギを取って逃げようとしていると、おそらく東京電力の関係者が、
「帰るかどうか、もう勝手に自分で判断してくれ」
 と声を張り上げていました。もっとも、その本人がだれよりも早く逃げる態勢を整えていたのはびっくりしました。
 車にたどりつき、
「津波らしい」
「すぐそこまで来ているぞ」
 という声を聞きながらアクセルを踏みました。車を少し走らせ、高台で原発の方向を振り返ると、まさに津波が原発に襲いかかっていました。
これで福島第一は終わりだ、あのボロい原発が倒壊して放射能が漏れたらどうなる──と思うと、背筋がぞっとした。かなり頑丈な建屋が水素爆発で無残に吹き飛んだ姿を報道で見たとき、この考えは間違っていないと確信しました。
 地震の翌日だったか、施設の地下で働いていた作業員2人が行方不明だと聞きました。一人は顔見知りでした。放射能の餌食になっていないか、本当に心配です。
 その後、友人経由で東電の下請け会社からメールが来ました。
〈現在の報道は非常にセンセーショナルで、当社が確認したところでは、そこまで深刻ではないとの回答を東電サイドから得ています。今後、多数の方々のお力を必要といたします。これまでのベースから日給3倍をめどにご賛同をいただける方々を募集しております〉
 3倍なら日給5万円です。より危険な区域を担当したり、経験が豊富だったりすれば10万円という話も聞きました。「もしものときに人手がいるから登録だけでもどうかな」という誘いもあります。
 しかし、応募した人はいないとか。下請け会社の話だと、原子炉への海水注入を迫られた際に東電側は、
「この原発にどれだけカネを使っているのか、知っているのか。原発がなくなれば、お前らの仕事もなくなるぞ。海水を入れて廃炉にするなんて、とんでもない」
 と言い放ったというぐらいの会社ですから。 (本誌取材班=本誌・堀井正明、三嶋伸一、大貫聡子、永井貴子/今西憲之、シャノン・ヒギンス)


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MSN 産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110611/erp11061120230007-n1.htm
「東電の不作為は犯罪的」IAEA元事務次長一問一答
2011.6.11 20:22

 福島第1原発事故をめぐり産経新聞のインタビューに応じた国際原子力機関(IAEA)元事務次長でスイスの原子力工学専門家、ブルーノ・ペロード氏との一問一答は次の通り。

 --福島第1原子力発電所事故で日本政府がIAEAに事故に関する調査報告書を提出したが

 「私は事故後の対応について日本政府や東電を批判するつもりはないが、両者が事故前に対策を取らなかったことは深刻だ。特に、東電の不作為はほとんど犯罪的だ」

 --なぜ、そう思うのか

 「福島第1原発の米ゼネラル・エレクトリック(GE)製沸騰水型原子炉マーク1型は圧力容器と格納容器が近接しており、水素ガスが発生すれば圧力が急激に高まる危険性が1970年代から指摘されていた。福島で原発の建屋はクリスマスプレゼントの箱のように簡単に壊れたが、スイスでは90年代に格納容器も建屋も二重するなど水素ガス爆発防止策を強化した」

 --東電はどうしたのか

 「当時、スイスで原発コンサルティング会社を経営していた私はこの作業にかかわっており、マーク1型を使用する日本にも役立つと考えた。1992年ごろ、東電を訪れ、(1)格納容器と建屋の強化(2)電源と水源の多様化(3)水素再結合器の設置(4)排気口へのフィルター設置-を提案した」

 --対策費は

 「非常用の送電線は2千~3千ドル。排気口のフィルターは放射性物質を水で吸着する仕組みで電源を必要とせず、放射性物質の拡散を100分の1に減らせる。今回の震災でも放射性物質の拡散を心配せずに建屋内の水素ガスを排出できたはずだ。費用は300万~500万ドルで済む」

 --東電の対応は

 「東電は巨大で、すべてを知っていると思い込んでいた。神様のように尊大に振舞った。東電が原子力安全規制当局に提出していた資料には不正が加えられていた。これは東電が招いた事故だ」

(ロンドン 木村正人)

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2011-04-30 : ・設置関係資料 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・設置関係資料 その2 点検

・設置関係資料 その2 点検

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http://mytown.asahi.com/areanews/fukushima/TKY201102280471.html
福島第一原発の33機器で点検漏れ 最長は11年間
2011年3月1日

 東京電力は28日、柏崎刈羽原発(計7基)の多数の機器で点検漏れがあったことを受けた調査で、福島第一原発の1~6号機でも33機器で点検漏れが見つかったと発表した。6号機の原子炉建屋内にあり、残留熱除去系の電動弁に電力を供給する分電盤は11年間点検していなかった。東電は同日、調査結果と再発防止策を国に報告した。
 東電によると、点検の計画表作成時の記載ミスや点検発注時の書類の確認不足などのため、各号機で2~11機器の点検漏れがあり、点検期間を半年~11年過ぎていた。これらは定期検査ではなく、自主点検の対象という。いずれも健全性に問題はないなどとして運転は継続する。
 福島第二原発1~4号機でも21機器で点検漏れが見つかり、2月2日に発表した


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http://www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2011/genan014/siryo4.pdf

第1 4 回原子力安全委員会
資料第4 号
平成2 3 年3 月3 日
原子力安全・保安院
東京電力株式会社柏崎刈羽、福島第一及び福島第二原子力発電所の点検周期を超過した機器に係る報告の評価について原子力安全・保安院(以下「保安院」という。)は、平成23年2月28日に東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)より柏崎刈羽、福島第一及び福島第二原子力発電所(以下「全発電所」という。)における点検周期を超過した機器に関する調査結果の報告を受けました。
東京電力からの報告によると、点検周期を超過している機器は、柏崎刈羽原子力発電所では新たに33機器が判明し合計117機器、また、福島第一原子力発電所では新たに合計33機器あることが判明しました。なお、福島第二原子力発電所では既に報告のとおり合計21機器ありました。
これらの新たに判明した計66機器は、福島第一原子力発電所の2機器を除き、既に点検が終了しているか、若しくは外観点検等による健全性を確認し、近日中に点検を終了するよう計画されています。また、点検を実施していない2機器については、外観点検等で異常がないことを確認し、技術評価を行い、次回の定期検査時に点検を実施することを決定していることから、当該66機器について、安全上の問題はないとしています。
保安院は、新たに点検周期の超過が判明した機器については、点検実施済または至近に点検実施を予定していること等から、直ちに安全上の問題が生じるものではないと評価します。また、同報告書における原因分析及び再発防止対策については、適切なものと評価します。
しかしながら、保安院は、全発電所において、①点検長期計画表の策定・変更、②調達管理における点検発注、③不適合管理、④保守管理における保全の実施が適切に行われていなかったことにより点検周期を超過した機器が多数発生したことは、東京電力の各原子力発電所原子炉施設保安規定(以下「保安規定」という。)の品質保証及び保守管理に係る要求事項を十分満たしていないと評価しました。
このため、保安院は、平成23年3月2日、東京電力に対し、保安規定の違反について、注意を行うとともに、当該違反について根本的な原因を究明※1し、それに対する再発防止対策を策定の上、その内容を平成23年6月2日までに報告するよう指示しました。今後、保安検査等において、東京電力から提出される報告内容を厳格に確認していくこととします。
※1 直接的な原因にとどまらず、組織的要因も含めた全ての原因を抽出して、発生事象の原因を明らかにすること。

1.経緯
・保安院は、中国電力株式会社島根原子力発電所及び中部電力株式会社浜岡原子力発電所の保守管理の不備に係る事案を踏まえ、柏崎刈羽原子力発電所を含む全ての原子力発電所に対して平成22年度第3回保安検査において、保守管理に問題がないかを確認したところ、柏崎刈羽原子力発電所2号機及び3号機において過去に点検周期を超過し、その後、点検を実施していた機器があることが判明しました。
・このため、保安院は、東京電力に対し、柏崎刈羽原子力発電所の全号機において、点検周期を超過した機器がないか確認するよう指示したところ、平成22年12月21日に1号機、5号機及び7号機の調査結果の報告を受けました。
これを受け保安院は、柏崎刈羽原子力発電所に対して、全ての号機の点検周期の超過の有無及びその原因と対策の検討並びに福島第一、第二原子力発電所において柏崎刈羽原子力発電所と同様な事象がないか確認を行い、平成23年2月28日までに報告するよう東京電力に対し指示しました。(平成22年12月21日お知らせ済み)
・平成23年1月20日及び2月2日に東京電力から保安院に対し、中間報告の提出があり(1月20日及び2月2日お知らせ済み)、平成23年2月28日、東京電力から保安院の指示を受けた最終報告の提出がありました。(2月28日お知らせ済み)
2.東京電力からの報告内容
(1)全発電所の点検周期を超過している機器
全発電所について点検周期を超過している機器がないか調査を行うとともに、特に、柏崎刈羽原子力発電所については、点検周期の超過の有無を過去に遡って調査した。その結果は以下のとおり。
①柏崎刈羽原子力発電所の調査結果
柏崎刈羽原子力発電所では、前回報告時(平成23年2月2日)に調査中であった2号機、3号機及び4号機については、点検周期を超過しているものが新たに33機器判明し、全号機合計で117機器となった。
新たに判明した点検周期を超過している33機器は、2号機については非常用ディーゼル発電機空気圧縮機3機器、主蒸気止め弁スプリングハウジング1機器など計7機器、3号機については非常用ディーゼル発電機調速機など関連機器16機器、原子炉給水ポンプ駆動用タービン蒸気加減弁用サーボ弁1機器など計21機器、4号機については非常用ディーゼル発電機機関付動弁注油ポンプ1機器、制御棒駆動系油冷却器1機器など計5機器である。
新たに判明した33機器は、本事案が判明後、既に21機器について点検を終了し、健全性を確認した。また、点検が終了していない12機器については現在定期検査のため原子炉が停止中のため、今定期検査中に点検を行う予定である。これらのことから、安全上の問題はない。なお、前回報告した1号機、
5号機、6号機、7号機及び共用設備の84機器についても既に全て点検や取替を終了し健全性を確認した。

上表の機器のほか、過去に点検周期を超過していたものは、1号機で33機器、2号機で45機器、3号機で77機器、4号機で30機器、5号機で38機器、6号機で1機器、共用設備で34機器となっている。いずれの機器についても至近の定期検査で点検を終了し、機器の健全性が確認されている。

②福島第一原子力発電所の確認結果(新規報告)
福島第一原子力発電所では、新たに点検周期を超過しているものが全号機合計で33機器判明した。そのうち20機器は保安院からの調査指示を受ける前から自主的に調査を行っていたものである。調査結果は以下のとおり。
点検周期を超過しているものとして、1号機については原子炉再循環ポンプMGセット可変流体継手2機器など計3機器、2号機については原子炉給水ポンプ駆動用タービンガス抽出機油分離器2機器など計3機器、3号機については非常用ディーゼル機関冷却系海水ポンプ電動機2機器、4号機については原子炉再循環系電動機・発電機セット調整器1機器など計3機器、5号機については原子炉給水ポンプ駆動用タービン油冷却器切替弁2機器など計11機器、6号機については余熱除去系電動弁リミトルク5機器など計6機器、その他設備については5機器であり、全号機で合計33機器となった。
これらの33機器は、本事案が判明後、既に16機器について点検を終了し健全性を確認した。また、点検が終了していない15機器については点検を近日中に行うよう計画するとともに、点検するまでの間の健全性を確認している。
また、1号機の原子炉再循環ポンプMGセット可変流体継手2機器は技術評価を行い次回定期検査時に点検を実施することを決定し、外観点検等で異常がないことを確認している。これらのことから安全上の問題はない。

③福島第二原子力発電所の確認結果(前回報告済)
福島第二原子力発電所では、前回報告のとおり、点検周期を超過しているものが21機器判明した。その内13機器は保安院からの調査指示を受ける前から自主的に調査を行っていたものである。調査結果は以下のとおり。
点検周期を超過しているものとして、1号機については原子炉建屋排気ファン用高圧ケーブル1機器、2号機については電動補助給水ポンプ封水ストレーナ4機器など計6機器、3号機については非常用ディーゼル機関の付属品(潤滑油冷却器など)4機器など計6機器、4号機については余熱除去ポンプ電動機用高圧ケーブル1機器など2機器、共用設備については6機器であり、全号機で合計21機器となった。
これらの21機器は、本事案が判明後、既に20機器について点検を終了し健全性を確認した。また、2号機のタービン駆動給水ポンプ排気弁リミトルク1機器は運転停止時の試験に用いる機器であり、原子炉の運転上の機能要求がなく、使用停止措置を講ずることから安全上の問題がないことを確認している。
これらのことから安全上の問題はない。

(2)原因及び再発防止対策
①原因
(Ⅰ)点検長期計画表策定プロセスでの誤り
・点検周期を超える計画を作成したことを確認できず、更に審査承認改訂審査でも是正できなかった。
・膨大な量の転記を実施しているが、ダブルチェックがなされていなかった。
・点検周期や点検時期の変更を計画に確実に反映することが徹底されていなかった(変更管理に対するルールの明確化不足)。
・点検周期を変更する際、点検長期計画表を変更した後に点検の発注をすることが徹底されていなかった。など
(Ⅱ)発注段階における仕様書作成プロセスでの誤り
・点検長期計画表と別管理の発注リストを使用し、点検長期計画表に基づかない発注を実施した。
・計画した全ての点検対象機器が発注されていることの確認を行っていなかった。など
(Ⅲ)点検長期計画表実績反映プロセスでの誤り
・点検実績を反映する方法が十分でなく、点検長期計画表への点検の有無や点検内容等の実績反映時の確認不足があった。
(Ⅳ)点検の実施時期の延長に関する技術評価プロセスでの誤り
・計画を変更することにより周期を超過する場合、不適合処理の実施、特に特別採用に伴う技術評価を行うことが徹底されていなかった。
・定められた点検周期内に点検を実施することに対する重要性の意識が薄く、周期内の点検実施や技術検討記録作成などの措置を行わなかった。
②再発防止対策
(Ⅰ)点検長期計画表策定プロセスでの誤り
・点検長期計画表の作成者は、点検長期計画表で定められた点検時期、点検周期、点検区分等を変更する際は、変更の理由及び変更後の実施予定時期の妥当性について記録するとともに、点検長期計画表の審査者は変更内容の妥当性や計画全体との整合性について審査を行うことをマニュアル・ガイドへ反映する。など
(Ⅱ)発注段階における仕様書作成プロセスでの誤り
・発注漏れを防止するため、仕様書の承認段階において、仕様書作成者以外の者が点検長期計画表及びマニュアルに記載の点検項目を仕様書と照らし合わせ、誤りがないかを確認し、仕様書の承認者である管理者は、作成者以外の者が再チェックしたことを確認することをマニュアル・ガイドへ反映する。
(Ⅲ)点検長期計画表実績反映プロセスでの誤り
・点検長期計画表の実績反映時において、工事を担当した工事監理員が、工事報告書を基に点検長期計画表へ実績を反映するとともに、原子炉起動前評価会議において原子炉起動前に終了すべき点検の確認を確実に行うことをマニュアル・ガイドへ反映する。
(Ⅳ)点検の実施時期の延長に関する技術評価プロセスでの誤り
・点検周期を超過する場合の処置方法として不適合管理の仕組みで管理し、その中で技術評価を行うとともに、その評価結果を確実に記録することをマニュアル・ガイドに反映する。など
(Ⅴ)中長期対策
・保全統合マネジメントシステムの導入
点検周期内に機器の点検を確実に行えるよう、前回の点検実績日から起算し、点検周期を超えないようシステムで管理された点検長期計画表を作成する。また、点検長期計画表から点検対象の機器毎に発注し、点検の計画から完了まで管理する仕組みを構築し、点検漏れを防止する。
当該システムにより、点検対象機器の登録、修正、削除の情報を記録する仕組みを設け、この情報を変更できる権限を制限することにより誤入力の防止を図る。
また、点検長期計画表の定期レビューの実施を行い、誤入力防止・妥当性確認のための対策を講じる。
3.東京電力の報告に対する保安院の評価
(1)点検周期を超過している機器に対する健全性評価の確認
保安院は、点検周期を超過していた機器については、既に点検が実施済み、または点検実施予定であり、それ以外の機器も外観点検や健全性評価等により、安全性が確認されていることから、直ちに安全上の問題が生じるものではないと評価します。
(2)原因分析と再発防止対策の評価
保安院は、東京電力から報告のあった原因分析とその結果に基づく再発防止対策については適切に検討がなされ、その内容についても適切なものと評価します。
(3)保安規定への適合性に係る評価
○保安規定第3条の品質保証に関する規定
保安規定第3条の7.1業務の計画では、確実な業務を達成するために必要な要求事項の明確化、必要な要員の力量の確保及びその業務を検証するための方法等を明確にすることが求められています。
本事象においては、保守管理を確実に行うために点検長期計画表に点検周期等を適切に反映することが要求事項ですが、点検周期の要員の理解不足及び点検長期計画表の膨大な作業量に起因する入力誤り並びに点検時期の変更管理の不十分さにより、点検長期計画表に誤りが生じたこと、また、点検長期計画表の適切性を確認できる検証方法が明確でないため、点検長期計画表に不適切な記入がされても発見できず、点検周期の超過を是正できずに点検長期計画表を作成したことは、保安規定第3条の7.1業務の計画の要求を満足するものではありません。
また、保安規定第3条の7.4調達では、点検における調達要求事項が妥当であることの確認を行うとともに当該点検が調達要求事項を満たしていることを確認することが求められています。
本事象においては、点検の発注を点検長期計画表に基づいて行っていなかったために点検の発注漏れがあり点検が一部実施できなかったこと、請負先からの工事要領書又は工事実績報告書の適切な検証を行わなかったため、点検長期計画表に誤った実績反映を行ったことは、保安規定第3条の7.4調達の要求を満足するものではありません。
さらに、保安規定第3条の8.3不適合管理では、業務に対する要求事項に適合しない状況が放置されることを防ぐために、それらを識別し管理すること、不適合の性質の記録及び不適合に対してとられた特別採用を含む処置の記録を維持することが求められています。
本事案においては、点検長期計画表に記載のある機器本来の点検周期を超えた点検周期を設定する場合及び所定の点検時期内に点検できないため延期した場合においても、不適合管理を行わず、かつ、特別採用を実施していませんでした。このため、不適合管理がされないまま、その結果が記録として保存されず、また、不適合事象が組織として認識されなかったため、再発を防止するための是正処置などの継続的な改善が行われず、不適切な状況が継続されていました。これらのことは、保安規定第3条の8.3不適合管理の要求を満足するものではありません。
○保安規定第107条の保守管理に関する規定
保安規定第107条の8.保全の実施では、適切な保全を行うために機器の特性に応じて定められた保全計画に従って確実な保全を行うことが求められています。
本事案においては、保全計画の一部である点検計画の点検実施を確実に行うため点検長期計画表を策定していますが、この点検長期計画表の一部に要員の理解不足及び点検長期計画表の膨大な作業量に起因する入力誤りがあったこと、並びに点検長期計画表どおりに調達に係る点検の発注を行わなかったこと等により、点検の一部が実施できず点検周期を超過していることは、保安規定第107条の8.保全の実施に係る要求を満足するものではありません。
4.当院の対応
保安院は、新たに点検周期の超過が判明した機器については、点検実施済または至近に点検実施を予定していること等から、直ちに安全上の問題が生じるものではないと評価します。
また、保安院は、東京電力からの報告を踏まえ、内容を精査し、保安規定との適合性について評価・検討を行った結果、本事象は保安規定に規定されている品質保証及び保守管理の該当条項に適切に対応したものではなく、保安規定に違反するものであったことを確認しました。
このため、保安院は、東京電力に対し、当該違反事項について注意を行うとともに、当該違反事項が生じることになった根本的な原因を究明し、再発防止対策の策定の上、平成23年6月2日までに報告するよう指示しました。
保安院は、東京電力が行う点検周期を超過した機器の点検状況や点検結果及び直接原因に係る再発防止対策の実施状況を起動時の保安検査等で確認していくこととします。また、今後、提出される東京電力からの根本的な原因及び再発防止対策の報告を踏まえ、保安検査等において、厳格に確認していくこととします。


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・設置関係資料 その1 原子力土木委員会 津波評価部会

・設置関係資料 その1 原子力土木委員会 津波評価部会

http://www.jsce.or.jp/committee/ceofnp/Tsunami/tsunami.html

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http://www.jsce.or.jp/committee/ceofnp/Oya/contents20110408.pdf
2011/04/08
東日本大震災を踏まえた原子力土木委員会における行動計画
原子力土木委員会
委員長 駒田広也
1.はじめに
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震により,多くの尊い命が失われたことに深く哀悼の意を表わします.同時に被災された皆さま,そのご家族に,心よりお見舞い申し上げます.
今回の地震津波により東京電力(株)福島第一原子力発電所において大きな事故が発生し,現在でも懸命な原子炉冷却作業が続けられております.周知のように,福島第一原子力発電所に来襲した津波高さは想定されていた津波水位を上回ったこと,津波が原子炉建屋敷地まで浸水して非常用電源が喪失されたことが事故の要因であること,津波の想定方法が原子力土木委員会でとりまとめた「原子力発電所の津波評価技術」に基づいたこと,などが公表されております.
当委員会では,東北地方太平洋沖地震の発生に伴う同原子力発電所の事故を原子力土木技術の観点から非常に重大なものと受け止め,今回の地震津波について調査研究を行い,その成果を公表することを予定しております.
2.これまでの対応
1)「原子力発電所の津波評価技術(平成14年2月)」を広く閲覧していただけるよう,原子力土木委員会のHP上で全文掲載しました.
http://www.jsce.or.jp/committee/ceofnp/Tsunami/tsunami-0408.html#hkgj
2)報道機関等から問い合わせの多い内容をとりまとめて原子力土木委員会のHP上に掲載しました.
http://www.jsce.or.jp/committee/ceofnp/Tsunami/tsunami-0408.html#QA
3.当面の活動
1)今回の地震を踏まえて,「原子力発電所の津波評価技術」に沿った評価を実施します.その結果は,原子力土木委員会での検討はもとより,インターネットサイトで公開し,報告会を実施する予定です.
2)今後,土木学会・東日本大震災特別委員会等と連携し,今回の地震及び津波の解明とその教訓を活かすために,行動していく所存です.
以上


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http://www.jsce.or.jp/committee/ceofnp/Tsunami/tnmlist.html
原子力土木委員会 津波評価部会 委員名簿
平成23年3月
  氏名 所属
主査 首藤伸夫 東北大学名誉教授
委員 浅野 彰洋 四国電力(株) 土木建築部
委員 磯部雅彦 東京大学大学院 大学院新領域創成科学研究科
委員 今村文彦 東北大学大学院 工学研究科 附属災害制御研究センター
委員 蛯沢勝三 (独)原子力安全基盤機構 解析部
委員 大坪武弘 九州電力(株) 土木部
委員 河田恵昭 京都大学防災研究所 巨大災害研究センター
委員 北川 陽一 日本原子力発電(株) 開発計画室
委員 黒岡 浩平 中国電力(株) 電源事業本部(耐震土木)
委員 小林 正典 東北電力(株)土木建築部(火力原子力土木)
委員 佐竹健治 東京大学 地震研究所
委員 諏訪 義雄 国土交通省 国土技術政策総合研究所
委員 関島 正浩 電源開発(株)原子力事業本部原子力建設部
委員 高尾 誠 東京電力(株) 原子力設備管理部
委員 高橋 智幸 関西大学 社会安全学部
委員 田中 良仁 中部電力(株)発電本部土木建築部
委員 富田 孝史 (独)港湾空港技術研究所
委員 中嶋 光浩 北陸電力(株) 土木建築部
委員 能島暢呂 岐阜大学 工学部社会基盤工学科
委員 野中 則彦 経済産業省
委員 平田 賢治 気象庁 気象研究所
委員 藤間 功司 防衛大学校
委員 堀江 正人 関西電力(株) 土木建築室
委員 薮 正樹 北海道電力(株) 土木部
委員 山中佳子 名古屋大学地震火山・防災研究センター
委員兼幹事 榊山勉 (財)電力中央研究所 地球工学研究所 流体科学領域
幹事長 松山 昌史 (財)電力中央研究所 地球工学研究所 流体科学領域
幹事 安中正 東電設計(株) 技術開発本部
幹事 稲垣和男 (株)ユニック
幹事 池野正明 (財)電力中央研究所 環境科学研究所 環境科学領域
幹事 及川 兼司 東京電力(株) 原子力設備管理部
幹事 栗田 哲史 東電設計(株)
幹事 木場 正信 (株)エングローブコンサルタント
幹事 芝 良昭 (財)電力中央研究所 地球工学研究所 地震工学領域
幹事 藤井直樹 東電設計(株)港湾・海岸部
幹事 藤田 尚毅 (株) 三菱総合研究所
幹事 文屋 信太郎 (株) 三菱総合研究所
幹事 柳沢賢 東京電力(株) 原子力設備管理部
幹事 柳澤 英明 東電設計(株)港湾・海岸部
幹事 山木滋 (有)シーマス
オブザーバー 鈴木 義和 一般社団法人 日本原子力技術協会


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▽「原子力発電所の津波評価技術」の概要
 原子力発電所の設計津波水位の標準的な設定方法を提案したものです.提案された手法の特長は,歴史的に過去最大の津波の波源を基に,津波予測の過程に存在する断層の設定誤差や数値計算誤差等の不確定性を考慮した上で,想定される最大規模の津波を評価します。これらの基礎となる地震や津波について,最新の知見を考慮します.この手法は国際原子力機関(IAEA)の基準に引用されています.
なお,「津波評価技術」は当時の最新の知見・技術に基づく学術的調査・研究結果をとりまとめた委員会報告です.民間指針等とは性格を異にしており,事業者に対する使用を義務付けているものではありません.

▽策定の経緯
1993年北海道南西沖地震津波が発生を契機に七省庁による津波対策が検討され,「地域防災計画における津波対策強化の手引き」(1998)がまとめられました.これ以前では,原子力発電所において既往最大の歴史津波および活断層から設定される最も影響の大きい津波を対象に設計津波を想定していましたが,上記手引きの中で,「現在の知見により想定し得る最大規模の地震津波を検討し,既往最大津波との比較検討を行った上で,常に安全側の発想から沿岸津波水位のより大きい方を対象津波として選定するものとする.」と記載されました.
このような背景の中で,1999年,土木学会原子力土木委員会の中に津波評価部会が立ち上がり,津波の波源や数値計算に関して培ってきた知見や技術進歩の成果を集大成して,原子力施設の設計津波の標準的な設定方法をとりまとめました.この成果が「原子力発電所の津波評価技術」(2002)となります.(以下,津波評価技術2002とする)

▽平成19年「高精度化研究」が事業者に求めた対策と各事業者の対応
  「津波評価手法の高精度化研究-津波水位の確率論的評価法ならびに分散性と砕波を考慮した数値モデルの検討-(土木学会論文集B,Vol. 63 ,2007)」(以下,津波高精度化研究2007)は,2002年度から2007年度に同部会が実施した,津波水位の確率論的評価,波の分散性と破砕を考慮した数値モデル,津波波力に関する調査研究について審議した結果をとりまとめたものです.「津波評価技術」と同様に事業者に具体的な対策を求めるものではありません.また,各事業者の対応については,情報を持ちあわせておりません.津波評価技術2002の策定後においても,津波の設定技術については,最近の発生事象を契機として発展しつつある分野であるため,これらの事象から新たに得られてくる種々の知見等を柔軟に取り込む必要があると考えており,津波評価部会は活動を継続しました.津波高精度化研究2007は,これらの成果をまとめたものです.


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土木学会原子力土木委員会 津波評価部会 第2回 議事録
日 時:平成15年11月28日(金)14:00~17:00

Q:波源については発生間隔のばらつきを用い,数値計算結果に対してもκを基にその結果にもばらつきを考慮するということでよいのか。
A:その通り。地震動に関するハザードでも同様の考え方を採用している。
C:南海トラフのモデルは,ポアソン分布に基づく確率過程に,物理過程を取り入れたものとするべきである。また,アスペリティモデルを取り入れるべきである。情報の少ない地域と多い地域とで,評価方法は変えるべきと考える。
A:物理過程を取り入れることは可能である。ただし,津波評価部会では従来,断層1枚モデルによる確定論的評価を実施しており,その評価結果が確率的において,どのような位置付けになるかを算定することが本部会の目的の一つである。このことから1枚モデルで提案している。アスペリティを考慮した枠組も可能ではある。
C:中央防災会議では10年後に東海地震,東南海地震と南海地震の評価をあわせて評価する予定であり,そのために,種々の観測やアスペリティを考慮した津波計算に関する研究が進行中である。本部会でも最新の研究成果を反映した手法とするべきである。
C:津波のような自然災害では不確定な要素が多く,その確率の幅があまりにも大きいため,代表値が一人歩きしないよう十分に気を付ける必要がある。
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Q:貞観の津波(869年)の取扱いはどうなっているか。
A:津波地震か正断層地震であるかによって取扱いが変わる。
C:その点は未解明と考えるべきである。


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土木学会 原子力土木委員会 津波評価部会 第5 回 議事録
日 時:平成16 年11 月1 日(月)14:00~17:00

3.津波水位の確率論的評価方法に関する検討
幹事団より,津波水位の確率論的評価法に関する検討(資料3-1)と先に実施したロジック分岐の重みづけ追加アンケートの回答を含めた集計分析結果(資料3-2)について,報告がなされた。その際,以下の質疑応答,コメントがあった。
Q:エルゴード仮定は,空間的バラツキと時間的バラツキを等価と考えることか,もしくは,数多くある地震のデータと数少ない津波のデータに基づく専門家の意見を等価と考えることか。
A:前者である。空間的なバラツキは過去の津波,スライド10 に示す11 津波から評価している。
Q:日本周辺では11 津波であるが,海域毎では少数の津波となる。
A:いずれの海域においても,空間的なバラツキがκ=1.45 程度となることは,データから求められている。時間的なバラツキでκ=1.25 を分岐に設定していることは判断である。
C:ある1地点を特定した場合,1つの波源から来る津波によるバラツキは,広域の指標であるκ=1.45 よりも明らかに小さいと考えられる。地点を特定した場合のバラツキは,波源のバラツキが支配的と考えられる。κ=1.25 の設定には妥当性があると考える。
Q:分岐を考えることが,結果にどのように効いているのか。10-7 の妥当性はどう考えるのか。
A:歴史地震が記録されている2.5×10-3 では妥当性の議論ができるが,それ以上については外挿となる。
C:超過確率が小さい領域では大きな津波高さとなっているが,物理現象としてあり得るのか。手順に従いバラツキを考慮して計算した結果,というのではなく,物理モデルとしての妥当性を検証し,フィードバックする必要があると考える。これは地震ハザードにおいても議論がなされている点である。
A:波源について,既往最大の津波に相当するマグニチュードまでは,検証がなされた物理モデルである。本検討では,既往最大もマグニチュードが0.2 大きいものを含んでおり,この外挿については検証ができていない。
C:既往津波のκを考える際に,過去の津波データで信頼できるのは日本海中部地震津波と北海道南西沖地震津波だけであり,それ以前の津波データにはかなりの誤差が含まれていると考
えるべきである。同一地点のκを求める際には,数値計算と痕跡が合わない理由を求めて,誤差を取り除く必要がある。


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土木学会原子力土木委員会津波評価部会第7 回津波評価部会議事録
日 時:平成17 年6 月3 日(金)13:30~16:30

4.陸上に遡上した津波による波力評価法の検討
幹事団より、陸上に遡上した津波による波力評価法の検討(資料4-1)について、報告がなされた.その際、以下の質疑応答、コメントがあった。
C:それぞれの実験について、護岸上に遡上した津波の水位変動だけではなく、大陸棚上を進行する海域での水位変動を追加して、海域で津波本体から発生した分裂波が護岸を越流遡上し建屋に到る過程が連続してわかるように示して欲しい。
C:打ち上げ高(作用高)は、波浪を対象にすると通常進行波水位振幅の3 倍程度である。建屋作用高の実験結果が進行波水位振幅の7 倍程度にまでなるとすると、打ち上げ高の相似律を考慮する必要が出てくる可能性がある。
C:防波堤は剛体と考えられるからローパスフィルターを用いても差し支えないが、建屋は壁であるため、フィルター処理を用いてよいのか検討する必要があるのではないか。平均値を用いて算定式を求め、ばらつきは安全率で考慮するという方法もある。
→ A:資料4-3 では、全体の安定性検討などに用いるフィルター処理後の波圧成分(本体)と、部材設計などに用いるべきフィルターにかかった本体以外の波圧成分(変動成分)に区分することを提案しており、その分離にローパスフィルターを用いている。
→ A:ローパスフィルター処理を実施した場合にも、孤立波60D のケースでは、進行波水位振幅の10 倍の水頭に相当する圧力が、衝撃的ではなく本体波圧として作用している。
C:検討の方向性として、大きな力が作用した原因が、ソリトン分裂が発達したためか、護岸に衝突して乱れたためか、資料4-3 の図4 のような整理が必要と考える。進行してきた津波が護岸に衝突して乱れ、そして建屋に衝突するという現象の過程と、護岸を通り越した成分を見たい。


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土木学会 原子力土木委員会 津波評価部会 第8 回 議事録
日 時:平成17 年9 月12 日(月)13:30~16:50

Q:水位の痕跡高は何に依っているか。
C:大学等による調査結果である。計測位置は、海岸にある建物の海側の壁などであろう。
Q:湾内での痕跡高を、ほぼ一様と捉えるか、狭窄部を境に変化していると捉えるかによって、結果の解釈も変わるのではないか。
C:痕跡高はほぼ一様と捉えたほうがよい。
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4.陸上に遡上した津波波力の検討
幹事団より、陸上に遡上した津波による波力評価法の検討(資料4)について、報告がなされた.その際、以下の質疑応答、コメントがあった。
<陸上構造物に作用する波圧特性と波圧算定式の提案>
Q:ソリトン分裂波の波長と護岸前面から建屋までの距離との関係はどのようか。護岸越流時の乱れから鉛直加速度を得て、波圧が大きくなるもしくは建屋衝突時の跳ね上がり高が大きくなる可能性がある。ηとhcの比によって波圧が決まるのではないか。
A:ソリトン分裂波の周期は1秒程度であるから、波長は1m程度となる。建屋設置位置は31、461、101cmなので、分裂波の波長に比べて、相対的に建屋は護岸前面に近い配置で実験を行った。
C:津波の波長に対して、建屋の設置位置が護岸前面から相対的に近いために、分裂だけではなく色々な現象が組み合わさり、大きな波圧が生じていると考えられる。
C:実際の発電所では護岸の外側に港湾があり、遮蔽されるため、本実験のように直接護岸や建屋に津波が当たることはなく、大きな波圧が作用する可能性は小さいと考えられる。
C:護岸天端高、静水深、津波水位の関係で、その後の越流特性や波圧特性がほとんど決まってしまっていると考えられる。波長に比べて建屋までの距離が短いため、護岸を越流する際に発生した乱れによる鉛直成分が影響しているのではないか。
Q:建屋について、耐震設計における地震力と津波波力の大小関係はどのようか。
A:未だ比較していない。
C:確認した方がよい。地震力の方が大きいと想定されるが、力が小さいか大きいかを確認しておくことは重要である。


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土木学会 原子力土木委員会 津波評価部会 第1回 議事録
日 時:平成19 年3 月14 日(水)10:00~12:45

3.津波ハザード解析手法の研究
(資料3-1)
Q:ばらつきを「中央値+対数正規分布」で評価することの妥当性については,第Ⅱ期にも,波源のばらつきをダブルカウントしているのでは,という議論があった。今回はその点をさらに検討するということか?(佐竹委員)
→ そういう側面も含まれると考えている。
C:津波ハザードの研究例としては,資料に記されている他に,ニュージーランドでの研究例がある。近いうちに出版されるPAGEOPHの津波特集号にも論文が掲載される予定なので,参照するとよい。(佐竹委員)
(資料3-2)
C:過去の津波記録で緯度経度が決定できるものはよいが,集落のどの位置が判らないものの取り扱いが問題となる。被災の状況から津波高さを推定した記録は,一定範囲の代表値と考えざるを得ない。(佐竹委員)
→ C:明治三陸津波に関して,伊木は津波直後に調査したが集落名のみの記載であり,一方,松尾は位置を明記したが津波から37 年後の調査である。どちらの記録がより信頼できるかは一概には言えない。(首藤主査)
C:過去の津波における平均海面を議論する場合には,地殻変動や海水準変動も考慮対象にあがってくるので難しい。(佐竹委員)
→ C:潮位変動については,地震の発生時刻が判っていれば,都司先生が以前作成された昔の潮位を計算するプログラムを活用できるのではないか。(首藤主査)
C:国土地理院がハザードマップ整備に向けて,全国で2m 格子レベルのレーザー測量を進めている。研究目的で申請したところ,千葉県や茨城県のデータを公開してもらえたので,活用を
考えてみてはどうか。(佐竹委員)
(資料3-3)
Q:検潮記録からのインバージョンにおいて,検潮所毎の特性は考慮しているか? (首藤主査)
→ A:考慮していない。
→ C:特性という問題はあるが,検潮記録は時間変化を検証できるという点で有用である。
その観点からすると,昭和南海地震の痕跡高のみを対象とした計算結果で,細島が引き津波から始まるというのは,検潮記録が押し津波から始まっていることに反しており,モデルの妥当性に疑問を感じる。(佐竹委員)
→ C:検潮所毎の特性を考慮したフィルターを設定し,フィルタリング後の計算結果との比較を行うのがよいのではないか。(首藤主査)
C:時刻歴波形では,波形の相似を確認することができる。人間の目による判断に近づくよう,評価関数を工夫するとよい。(磯部委員)
Q:評価関数において,痕跡の重みは均一か?(磯部委員)
→ A:均一としている。
→ C:例えば1つの集落に多数のデータがあると,その集落が重みを持つことになる。痕跡高で考えるということは,そのようなものであることを認識した上で検討を進める必要がある。(磯部委員)
C:検潮記録では検潮所の特性に応じて平滑化された数値が出てくるのに対して,痕跡高はピーク値を捉えるので,一般に痕跡高は検潮記録よりも大きくなる,すなわち,痕跡高による波源は大きくなる傾向があると考えられる。(磯部委員)
→ C:痕跡高調査の現場を考えると,痕跡高は地域の代表値よりも,地域のピーク値をとることが多いと考えられる。(佐竹委員)
→ C:痕跡高調査結果を見ていると,県など自治体の調査結果は大きめの値を報告している傾向も見受けられる。(首藤主査)
→ C:比較には,ある一定範囲の代表値を採用するように努めるべきと考えられる。(佐竹委員)
C:インバージョンの研究例としては,都司研究室の行谷さんが博士論文で安政南海地震津波を題材にしている。(佐竹先生)


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土木学会原子力土木委員会津波評価部会第4回議事録
日時:平成20 年3 月11 日(火)14:00~17:20

3.現状の確率論的津波ハザード評価モデルの見直しの方向(資料2)
C:貞観津波の波源は宮城県の調査結果だけから設定している。今後福島の調査結果も取り入れると変わる可能性がある
C:カスケードはそもそも陸の横ずれ断層である。縦ずれに適用するものではないのではないか。
C:高潮より陸棚波が大きくなる場合もあり、場所に応じて津波と同時に考慮する異常潮位を考えなければならない


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土木学会 原子力土木委員会 平成22 年度 第1 回 津波評価部会 議事録
日 時:平成22 年8 月4 日(水) 9:30~12:30

2.波源モデルの現状と取り組むべき課題について(資料2)
Q:南海トラフの連動型地震について、発生の時間差によりピークが重なって増幅することについて何か検討に加える予定はあるか。
A:今のところ考えていない。
C:発生の可能性は極めて低いが、それをどこまで考慮すれば良いかについて検討していただきたい。基準化は難しいかもしれないが、全く考えないのはどうかと思う 。
C:まず事例を収集して検討すること(首藤主査)。
C:日本海溝沿い海域の貞観津波について重要なのは、869 年に発生したことよりむしろ、1000 年ぐらいの間隔で繰り返し発生していることが、津波堆積物から分かってきていることである。
C:P.18 の確率論の海域区分に反映されているが、太平洋側では、2002 年以降に地震調査研究推進本部、中央防災会議の検討が出されているので、これらの知見を反映した検討を行ってほしい。


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http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1059/20110217_01.htm
河北新報社

意識を高め地域守ろう チリ大地震津波から1年、気仙沼でシンポ
昨年2月28日に発生したチリ大地震津波から、間もなく1年がたつことをきっかけに防災意識を高めようと気仙沼市は13日、「津波防災シンポジウム」を市内の気仙沼中央公民館で開いた。
 国の防災教育支援事業のモデル地域として、2009年度に取り組み始めた教育活動の報告会を兼ねて開催した。市民約400人が参加した。
 基調講演した首藤伸夫東北大名誉教授は、過去に気仙沼を襲った津波の特徴を振り返り、「従来の常識が当てはまるとは限らないのが津波。地震が弱いから津波も小さいと思い込むことなく、早く高い場所に逃げることが一番だ」と指摘。「津波が来ても死者を出さないまちづくりを」と強調した。
2011年02月17日木曜日

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2011年4月13日 朝日新聞夕刊
東日本大震災の衝撃 専門家に聞く
記録根拠に対策 限界―津波,東北大学名誉教授 首藤伸夫さん
「東日本大震災の津波は,2万2千人が犠牲になった1896年の明治三陸津波をはるかに超えた,歴史的な大津波だった。多くの大堤防を破壊し,過去に記録がない内陸部にまで浸水した。研究レベルでは知られる869年の貞観大津波と同等以上で,千年に1回どころか2千年に1回の災害かもしれない。私が主査を務める土木学会の津波評価部会は、原子力発電所の津波災害を評価する基準を策定してきた。想定したのには、多くの記録が残っている過去250年ほどの津波や、ある地域で起きるとされる最大地震の津波。これが政府の中央防災会議の勧告だ。「原発の津波対策になぜ貞観津波を考慮しなかったのか」との批判がある。しかし貞観津波は,古文書の短い記述と地層の痕跡があるだけで,討論に乗せるデータではない。そもそも貞観津波が東北地方の最大津波だと誰が断言できるのか。原発の津波対策に不安がなかったわけではない。水にぬれると壊れる電気コードや配線盤をむき出しのまま置いたり。低い位置に設けたりしている原発があった。視察して気がつくたびに注意したが、個別対応が限界。原発の設計思想には踏み込めなかった。」



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■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その10 当事者の見解

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その10 当事者の見解

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http://www.asahi.com/national/update/0428/TKY201104280255.html

東電、賠償免責の見解 「巨大な天変地異に該当」2011年4月28日15時32分

 福島第一原発の事故に絡み、福島県双葉町の会社社長の男性(34)が東京電力に損害賠償金の仮払いを求めた仮処分申し立てで、東電側が今回の大震災は原子力損害賠償法(原賠法)上の「異常に巨大な天災地変」に当たり、「(東電が)免責されると解する余地がある」との見解を示したことがわかった。
 原賠法では、「異常に巨大な天災地変」は事業者の免責事由になっており、この点に対する東電側の考え方が明らかになるのは初めて。東電側は一貫して申し立ての却下を求めているが、免責を主張するかについては「諸般の事情」を理由に留保している。
 東電側が見解を示したのは、東京地裁あての26日付準備書面。今回の大震災では免責規定が適用されないとする男性側に対して、「免責が実際にはほとんどありえないような解釈は、事業の健全な発達という法の目的を軽視しており、狭すぎる」と主張。「異常に巨大な天災地変」は、想像を超えるような非常に大きな規模やエネルギーの地震・津波をいい、今回の大震災が該当するとした。
 一方、男性側は「免責規定は、立法経緯から、限りなく限定的に解釈されなければならない」と主張。規定は、天災地変自体の規模だけから判断できるものではなく、その異常な大きさゆえに損害に対処できないような事態が生じた場合に限って適用されるとして、今回は賠償を想定できない事態に至っていないと言っている。
 菅政権は東電に第一義的な賠償責任があるとの立場で、枝野幸男官房長官は東電の免責を否定しているが、男性側代理人の松井勝弁護士(東京弁護士会)は「責任主体の東電自身がこうした見解を持っている以上、国主導の枠組みによる賠償手続きも、東電と国の負担割合をめぐって長期化する恐れがある」と指摘。本訴訟も視野に、引き続き司法手続きを進めるという。これに対して、東電広報部は「係争中であり、当社からのコメントは差し控えたい」と言っている。(隅田佳孝)
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東京電力の審査会宛要望書
平成23年4月25日

原子力損害賠償紛争審査会
会 長  能 見 善 久 殿

東京電力株式会社
代表取締役 清 水 正 孝

   要望書

 弊社は、貴審査会が定める原子力損害の範囲の判定等の指針(以下「指針」といいます。)について、下記の要望をいたします。

   記

1 貴審査会におかれては、標記指針を定めるに先立ち、被災者保護の観点から、可能な事項から順次指針を提示する方針である、と聞いております(ここで示される指針を、以下「一次指針」といいます。)。
福島第一原子カ発電所の放射性物質漏洩事故(以下「本件事故」といいます。)による原子力損害の発生は明らかであること、本件事故が発生から1ヶ月以上経た現在でも収束しておらず、被害が拡大していること、などを踏まえれば、早急な被災者の救済が必要であることについては、当社としでも十分認識しております。

2 本件事故が平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に起因して発生したものであり、当該地震がマグニチュード9.0という日本史上稀にみる規模の地震であったこと、およびその直後に努生した津波が福島第一原子カ発雷所において14~15メートルまで達する巨大なものであったことを踏まえれば、弊社としては、本件事故による損害が原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」といいます。)3条1項ただし書きにいう「異常に巨大な天災地変」に当たるとの解釈も十分可能であると考えております。しかしながら、弊社は、本件事故の当事者であることを真撃に受け止め、早期の被災者救済の観点から、国の援助を受けて法に基づく補償(法にいう賠償)を実施する準備を進めていることを明らかにするとともに、平成23年4月15日付「原子力発電所事故による経済被害対応本部」の決定を踏まえ、本件事故により避難等を余儀なくされておられる被災者に対し、当面の必要な資金のお支払いをする手続を進めているところです。

3.ところで、原賠法において、原子力損害については原子カ事業者が無制限の無過失責任を負う(同法3条1項本文)とされている一方、その「場合への備え」([原子力損害賠償制度」科学技術庁原子カ局監修、P102)として、原子力事業者が損害賠償すべき額が賠償措置額(1事業所当たり1,200億円)を超え、かつ、この法律の目的である被害者の保護等を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、損害を賠償するために必要な援助を行うという制度が設けられています(同法16条)。この援助は、必要と認められるときには必ずこれを行う趣旨であるとされていますが、本件事故についてその必要があることは明らかです。

4 弊社としても、可能な限り補償を実施したいと考えておりますが、予想される補償額、事故の起きた原子力発電所の安定のために要する費用、電力の安定供給の確保に向けた新規電源確保などを着実に、また安全を確保しつつ実現していくための費用等を踏まえた今後の収支見通しなども考慮すると、すべての補償を弊社が行うこととした場合、最大限の経営のスリム化を断行しても、そのために要する費用を弊社が支出・調達することが困難であることは既に明らかな状況です。この状況を踏まえれば、立法時の審議過程において考慮されていた「一人の被害者も泣き寝入りさせることなく」という原賠法の目的を実現するためには、同法16条に規定された国による援助が必要不可欠であり、そのような要素を欠いたままでは、原賠法の趣旨に反するスキームであるといわざるを得ません。

5 しかしながら、現時点では、国による援助の具体的な方策が確定していないことから、弊社としては、仮に一次指針が策定されたとしても、その全額の弁済をすることは早晩困難になると考えられるため、かえって被災者に対する公正な補償が妨げられるおそれすらあります。また、受付体制(要員、設備)の整備等に自ずから物理的制約のあるなかで、極めて多数の被災者への補償手続を円滑に実現するためには、受付数の均平化なども慎重に図っていく必要があります。さらに、的確な補償額の算定のためには、原子力事故と相当因果関係にある損害を的確に抽出できる判断基準の設定が必要であるとともに、損害を認定するためのエビデンスのあり方についても、指針に何らかの基準が示されることが必要と考えます。以上のように、一次指針の策定に当たっては、当社の実質的な負担可能限度も念頭に置かれたうえ、公正、円滑な補償の実現に資するものとなるようご配慮いただきますようお願い申し上げます。

以 上

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■4条 責任集中の原則 その8 東電経営者の責任,対会社責任,代表訴訟

■4条 責任集中の原則 その8 東電経営者の責任,対会社責任,代表訴訟

 原発事故の収束の兆しなく,事故調査どうなってるのか,事実関係も不明で,以下は全て仮定に基づいたものである。東電経営者の責任全般については,こちら(東電経営者の責任はどうなるのか?)で述べた。 

 役員らが,会社(東電)に対して,賠償義務を負うと考えられる場合,株主は,代表訴訟を起こすことが考えられる。

1 株主代表訴訟(責任追及等の訴え,会社法847条)
 6ヶ月前から引き続き株式を有する株主は、株式会社に対し、書面等で,役員らの責任を追及する訴えの提起を請求することができる(会社法847条1項本文)。会社に対して,取締役ら役員を訴えるように請求して,原則として60日以内に訴訟提起がなければ,当該株主は,自ら,会社に代わって,役員らの責任追及(損害賠償請求等)を行うことができる(同条3項)。請求額にかかわらず,印紙は13000円(同条6項)。管轄は本店所在地(同法848条)。ただし,被告となる取締役が,当該株主が悪意であることを疎明した場合には,株主は裁判所に担保提供を求められることがある(同条5項6項)。
 これは,株主が,個人の損失を個別に回復するために起こすものではなく,取締役に対して,会社への損害賠償等をさせて,会社の財産を回復して,全株主の利益を図るというものである。
 今回の事件で,責任追及等の訴えとして,可能性があるのは,取締役の任務懈怠責任の追及ではなかろうか。

2 任務懈怠責任(会社法423条)
 会社法423条1項には「取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」とある。

 取締役は,会社と委任関係に立ち,善管注意義務(会社法330条,民法644)と忠実義務(会社法355条)を負っており,これら義務に違反した場合は,任務懈怠として,会社に対して損害賠償責任を負うことになる。
 かかる義務違反はいかなる基準によって認定されるかについては,一般に,社会通人上,取締役たる地位にある者に通常要求される注意をもってその職務を遂行していたか否かによって決まる。
 一般人としてではなく,会社経営者として,通常要求される程度の注意をもってその職務を遂行していたか否かが問題となり,今回の事件だと,原子力事業を含む電力会社の経営者として,福島第一原発を津波対策や,原発停電対策をあの程度で止めておいた点,その後の事故対応の各決定等さまざな段階における注意義務違反の有無が問われることになろう(事故前から市民団体,政治家,研究者その他の者による注意喚起等あり?。国の基準の範囲内で安全対策とっていた?。その他攻防)。
 このあたりは,いかなる事実が認定されるかによるし,その前提事実の下で,社会通人上,取締役たる地位にある者に通常要求される注意をもって各認識,判断がなされたといえるかという評価の問題となり,最終的には裁判所が決することになる。

3 損害
 任務懈怠が認定されたとして,いかなる損害の賠償請求をなし得るかについて,こちらでも触れた。
 まず,「原子力損害」については,「原子力事業者以外の者」に対する責任追及はできないが(原賠法4条),原賠法2条2項但書において,「ただし、次条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者の受けた損害を除く。」とあり,原子力事業者が自ら被った損害は,「原子力損害」とはいえず,原賠法4条の適用はないはずである。
 今回の原発事故では,おそらく東電は福島第一の1サイトまるごと失い,また通常の廃炉より余分な廃炉費用もかかるだろうし,さらに健全なら今後10年近く稼働して利益を出していたと予想される分など,莫大な損失を被っているはずであるが,この損失が仮に役員らの任務懈怠に起因するとなると,会社は,役員らに対して,その損害賠償ができることになる。(会社が,被害者に「原子力損害」の賠償をしたことによって,会社が被った損害をどう考えるかについては,問題あり。別項で触れた。)
 株主代表訴訟では,株主が,この会社の取締役に対する損害賠償請求権を会社に代わって行使することになる。

4 役員の責任の減免
 役員の責任の全部免除は,総株主の同意が必要であり(会社法424条),今回の件で,役員としては,これを期待することは困難であろう。

 ただし,会社法426条1項では

「第四百二十四条の規定にかかわらず、監査役設置会社(取締役が二人以上ある場合に限る。)又は委員会設置会社は、第四百二十三条第一項の責任について、当該役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは、前条第一項の規定により免除することができる額を限度として取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって免除することができる旨を定款で定めることができる。」

とされる。

 つまり,会社の定款に定めがあることを前提に,当該役員が,①職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合において、②責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行の状況その他の事情を勘案して特に必要と認めるときは,取締役会決議で,会社法425条1項にある限度額まで責任を免除することができることになっている。

 425条の責任限度額は概ね以下のとおり。

・代表取締役,代表執行役 年報酬の6倍
・代表取締役以外の取締役 年報酬の4倍
・社外取締役,監査役,会計監査人 年報酬の2倍


 そして東京電力の平成22年1月6日付け定款では,以下のようになっている。

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(取締役の責任免除)
第30条 本会社は,会社法第426条第1項の規定により,取締役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合は,取締役会の決議によって,その取締役の同法第423条1項の責任を法令の限度において免除することができる。
(監査役の責任免除)
第37条 本会社は,会社法第426条第1項の規定により,監査役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がない場合は,取締役会の決議によって,その監査役の同法第423条1項の責任を法令の限度において免除することができる。
----------------

 よほどのことが無い限り,故意だとか,重過失があったとか認定されないので,前記の通り,仮に取締役らの任務懈怠責任が認められることがあっても,定款の規定に基づき責任一部免除の取締役会決議がなされると,各役員らの負うべき責任の限度は,会社法425条のとおりの年報酬の数倍程度の限度額までとなる。
 
 また,大会社の取締役の場合,役員賠償責任保険に入っていることがあるので,仮に東電役員らが,そういった保険に入っている場合には,上の限定された賠償額まで,保険でカバーされるかもしれない。


5 役員の責任の減免に不服あるとき
 会社が被った莫大な損失に比べて,役員らの負うべき責任が限定されていることについて,不服を持った株主はどうすればよいのか。
 上の決議があった場合は、取締役は、責任の原因となった事実及び賠償責任額、免除できる額の限度及び算定の根拠、責任免除すべき理由及び免除額、及び、責任免除に異議がある場合には、1ヶ月以上の所定期間内に異議を述べるべき旨を株主に通知しなければならい(426条3項)。
 これを受けて株主のうち議決権で3パーセント以上の株主が、責任一部免除について異議を述べれば、免除は不可となる(同条5項)。
 したがって、今回のような場合は、これで免除を阻止できるはず?。



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■原発事故 刑事事件としての側面は?

■原発事故 刑事事件としての側面は?

・平成11年9月30日に発生したJCO臨界事故
 強制捜査まで一週間ほど
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http://www1.gifu-u.ac.jp/~wakailab/thermal/TokaiMura.html#eimi014606
(10/6)JCOを強制捜査・上層部の聴取本格化へ
 東海村臨界事故で茨城県警捜査本部は6日、業務上過失傷害と原子炉等規制法違反(施設の無許可変更)の疑いで、核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所と東京都港区の本社を家宅捜索した。同社は国に届けた作業工程を勝手に変更した上、社員に十分な安全指導もしていなかったことなどが次々に判明。捜査本部は安全管理を怠ったことが事故につながったとみており、刑事責任追及に向けて上層部の事情聴取を本格化させる。
 国内初の臨界事故は、発生から7日目で強制捜査に発展した。原子力事故の捜索で業務上過失傷害容疑が適用されるのも初めて。東海事業所に入った捜査員は線量計を付け、一部は防護服も用意。現場の転換試験棟は放射能汚染が続いているとみられるなど、安全が確認されないとして捜索を見送った。捜索令状の容疑者は、業務上過失傷害が不詳、原子炉等規制法違反が法人としてのJCOと木谷宏治社長。
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 今回の事故は大規模な自然災害が起点となっているが,作業員の死傷等が生じていることから,犯罪成立の余地が無いとは言えない。
 他の鉄道事故や飛行機事故等の大規模事故では,事故後に現場保存し,実況検分等事故調査が可能であろうが,原発事故の場合,現場が事故発生時の状態で保存できない上,冷却や放射性物質の漏出を止めるために,現場にどんどん手が加えられていく。検察,警察は,どれだけ先になるか分からない事故終結まで,これを放置するわけにはいかないだろう。原発処理が最優先だが,影響を与えない範囲ででも,できるだけのことをしているのだろうか。

 また事故調査は,刑事司法とは別のところで,可能な限り公平な人選で,速やかに事故調査委員を選任して,事故処理の外側からこれを監視,調査,資料収集しておいた方がよい。今福島で行われている事故処理について,口出しせずに外部から監視し,記録する者がいるのだろうか。事故進行中だからといって,できる作業もしないでいるのは明らかにおかしい。

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■4条 責任集中の原則 その7 東電株主は国を訴えることができるのか?

■4条 責任集中の原則 その7 東電株主は国を訴えることができるのか?

 損害発生とその拡大に国の過失が寄与していた場合どう考えるか。未だ事件は収束の兆し無く、事実関係も不明なままであり、以下は国に何らかの落ち度(過失)がっあたと仮定した場合の話である。

 まず,東電株主が,責任追及等の訴え(会社法847条・株主代表訴訟)によらずに,東電役員らを直接訴えることができるのか,あるいは,株主が,第三者として東電を直接訴えることができるのかについては,こちら(東電株暴落による株主の損失)で論じた。


第1 原発事故が起きて,東電の株価が暴落したのは周知の通りであり,株主は,損失を被っている。この事故に国家の過失ある行為が関与していたとすると,株主は,国に対して,損害賠償請求ができないか。
 国家賠償法1条1項では,「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」とされる。
 したがって,公務員の職務上の落ち度ある行為と,株主の下落による損失との間に相当因果関係が認められれば,国賠法に基づく損害賠償請求が可能なようにも思える。
 ただし,これは,株価下落を「原子力損害」と理解するか否かによって,結論は違ってくる。
 「原子力損害」の理解については、こちら
 まず、「原子力損害」の意味を、原賠法2条2項の字義どおり,核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用により生じた損害として、狭く考えていく限定説では、株価下落による損失は、「原子力損害」には当たらないことになろう。
 これに対して、いくつかの下級審判例のように、原子炉の運転等(2条1項)により発生した損害で,2条3項の「作用」と相当因果関係あるもの全てを含むと広く捉える説では、「原子力損害」に該当する可能性がある。
 相当因果関係は、一般の社会通念上、その原因があれば、その結果が生じることが、通常といえるかという観点で判断されるので、大規模原発事故があれば、東電株が暴落するのは通常のことといえ、相当因果関係は認められることなろう。
 ただし、今までの判例で扱われた事例は、放射線による身体の障害、原発事故によるPTSD等精神的損害、危険性認識による近隣土地の価値の下落、漁業や加工食品への風評被害等が問題となったものであり、これらに共通するのは、放射性物質の危険性が前提で、その物理的又は精神的影響により発生した損害であって、株価の下落をこれらと同様に考えてよいのかは問題である。そもそも原賠法3条は、危険責任の法理に基礎を置くものであることから、核燃料物質の特殊な危険性から、かなり遠い損害である株価の下落までは、「作用」(2条2項)によるものとは言えないとして、無限定説に立った場合でも、「原子力損害」には当たらないとされる可能性もある。
 以下、場合分けして検討してみる。

第2 株価下落による損失が「原子力損害」に当たらないとした場合
 この場合,株価下落による損失は,原賠法の適用範囲外の損害ということになり,同法4条(責任集中の原則)等は問題とならず,しかも以前に論じた会社法上の問題もないので,株主は,国に対して,国賠法に基づく損害賠償請求をすることができるはずである。もっとも,その場合,東電が被り,ひいては東電株主が被った損失の内,何割が国の責任によるもで,何割が東電側(無過失責任)が負うべきかの問題があり,損害額の算定については問題は生じうる。

第3 株価下落による損失が「原子力損害」に当たるとした場合
 この場合,そもそも「原子力損害」について,東電以外に,国に損害賠償請求できるのかが,原賠法4条(責任集中原則)との関係で問題となる。

 すでに別(国の責任はどうなるのか?)で論じたように、そもそも国に過失があった場合、原賠法4条(責任集中原則)が適用あるのか否かが問題となり、いずれの立場に立つかによって、結論が異なってくる。立法過程の資料をざっと見たところでは、原子力損害が、国の過失ある行為と競合して発生拡大したような場合についての議論が見あたらず、4条の適用関係についても、今のところ不明である。ただ、少なくとも以下の二つの考え方はありうる。

・4条適用肯定説
 原賠法4条の文言からして、「原子力事業者以外の者」には,国も含まれるので、国に過失があっても、国の責任は、対第三者との関係では責任は問われないとする考え方。

・4条適用否定説
 原賠法4条は,被害者保護の観点から,被害者が容易に賠償責任を追及する相手方を知うるようにし,かつ,原子力事業者に機器や原料等を提供している関連事業者に,莫大になりかねない原発事故等の賠償責任を予め免れさせて,原子力事業をしやすくして,もって「原子力事業の健全な発達」を達成しようとする趣旨のものであるから,国家の側に過失があるような場合にまで,この免責を受けさせることは,本来法が予定していないものであり,4条による国の免責は無いものとする考え。

 そして,国の過失について,4条適用肯定説に立つなら,国は「原子力事業者以外の者」として,原賠法上の原子力損害の賠償責任を負わない。そして,普通に考えると,原賠法は,特に厳格な無過失責任主義を採用しており,民法709条との関係で特別法であるのと同様,国賠法との関係でも特別法のような関係に立つはずで,国は国賠法上の責任も負わないはず?。(下級審で「原子力損害」については,民法709条の適用は問題とならないとするものがある。)あるいは国賠法は別か?

 これに対して,国の過失について,4条適用否定説に立つなら,国は,4条による免責を受けられず,原子力事業者とともに国賠法?に基づく,損害賠償責任を負うことになろうから,株主は,国対して損害賠償請求できることになる。

 ただし、どの場合でも、国に過失があったとして、その本来負担すべき割合以上に、東電に対する「援助」(16条)や被害者の救助等で支出させられている場合は、国の落ち度分による損失以上の支払いをしているのと同じなので、国の過失行為による東電の財産の逸失分はなく、株主が国を訴えても無意味ということになろう。

〔結論〕
1 株価下落による損失が「原子力損害」に当たらないとした場合
  →可(国賠法)
2 株価下落による損失が「原子力損害」に当たるとした場合
(1)4条適用肯定説
  →不可?
(2)4条適用否定説
  →可(国賠法?)


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■18条 原子力損害賠償紛争審査会 その3 動画

■18条 原子力損害賠償紛争審査会 その3 動画

・原子力損害賠償紛争審査会 第1回会合(平成23年4月15日)

ビデオニュース・ドットコム
http://www.videonews.com/press-club/0804/001826.php


http://www.youtube.com/watch?v=8a7n67UakLY



-------------------------------------
過去議事要旨・議事録・配付資料

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/giji_list/index.htm


-------------------------------------
ニコニコ動画
http://www.nicovideo.jp/search/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E6%90%8D%E5%AE%B3%E8%B3%A0%E5%84%9F%E7%B4%9B%E4%BA%89%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E4%BC%9A?track=nicouni_search_keyword

第2回
http://rd.nicovideo.jp/cc/search/timeshift?cc_live_id=lv47370550
第3回
http://rd.nicovideo.jp/cc/search/timeshift?cc_live_id=lv47944401
第4回
http://rd.nicovideo.jp/cc/search/timeshift?cc_live_id=lv50094934
第5回
http://rd.nicovideo.jp/cc/search/timeshift?cc_live_id=lv50682271
第6回
http://rd.nicovideo.jp/cc/search/timeshift?cc_live_id=lv51694734
第7回
http://live.nicovideo.jp/watch/lv52673722?ref=ser
第8回
動画なし
第9回
http://live.nicovideo.jp/watch/lv55059418
第10
第10回
動画なし
第11回
http://live.nicovideo.jp/watch/lv56654949

第15回 10月20日
http://www.ustream.tv/channel/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E3%81%AE%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%82%92%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E3%81%8B%E3%82%89%E5%AE%88%E3%82%8C


第16回 平成23年11月10日
http://www.youtube.com/watch?v=144tO-DOFG4

第17回 平成23年11月25日
http://www.youtube.com/watch?v=261VrKtWMP0

第18回 平成23年12月6日
http://www.ustream.tv/recorded/18961777

http://www.ustream.tv/recorded/18962200

第20回 平成24年1月17日
http://www.ustream.tv/recorded/19814709

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■4条 責任集中の原則 その6 国の過失の競合

■4条 責任集中の原則 その6 国の過失の競合

 損害発生とその拡大に国の過失が寄与していた場合どう考えるか。未だ事件は収束の兆し無く、事実関係も不明なままであり、以下は全て仮定の話である。

〔国の過失の可能性〕
・震災前の設置、保存、管理に関する監督等における過失
・震災後の原子炉等発電施設の扱いに関する過失
・原発事故後の避難地域指定、出荷規制等各命令指示における過失

 原賠法上の賠償責任(3条1項本文)は、無過失責任であるが、後述のとおり求償関係の問題があると思われるので、以下のように場合分けする。

A 国に過失なし
 a 東電に無過なし → 東電のみの責任(無過失責任主義)
 b 東電に過失あり → 東電のみの責任
B 国に過失あり
 a 東電に無過なし → 問題?
 b 東電に過失あり → 問題?


 問題があるのはBの場合のみであり、国の過失が関与した場合に、東電と国の法的な関係はどうなるのか。

 すでに(国の責任はどうなるのか?)で論じたように、国の過失があった場合、原賠法4条(責任集中原則)が適用あるのか否かが問題となり、いずれの立場に立つかによって、その余の法的関係が異なってくる。立法過程の資料をざっと見たところでは、原子力損害が、国の過失ある行為と競合して発生拡大したような場合についての議論が見あたらず、4条の適用関係についても、今のところ不明である。ただ、少なくとも以下の二つの考え方はありうる。

・4条適用肯定説
 原賠法4条の文言からして、「原子力事業者以外の者」には,国も含まれるので、国に過失があっても、国の責任は、対第三者との関係では問われないとする考え方。ただし、5条で、国に故意があった場合のみ、東電から求償請求される。

・4条適用否定説
 原賠法4条は,被害者保護の観点から,被害者が容易に賠償責任を追及する相手方を知うるようにし,かつ,原子力事業者に機器や原料等を提供している関連事業者に,莫大になりかねない原発事故等の賠償責任を予め免れさせて,原子力事業をしやすくして,もって「原子力事業の健全な発達」を達成しようとする趣旨のものであるから,国家の側に過失があるような場合にまで,この免責を受けさせることは,本来法が予定していないものであり,4条による国の免責は無いものとする考え。5条は、4条の責任の集中を前提とするから、この立場では、5条の適用もないはずである。したがって、求償関係は、通常の共同不法行為の場合と同様に考える。?


・4条適用肯定説に立った場合

B 国に過失あり
 a 東電に無過なし
 → 東電のみが責任、国に故意が無い限り求償請求もできず
 → 第三者が国賠請求することもできない。
 b 東電に過失あり
 → 東電のみが責任、国に故意が無い限り求償請求もできず
 → 第三者が国賠請求することもできない。


・4条適用否定説に立った場合

B 国に過失あり
 a 東電に無過なし
 → 東電(無過失責任・原賠法)と国(過失責任・国賠法)の競合で、共同不法行為のような関係?
 → 5条適用無く東電から国への求償請求可
 → 第三者は、東電と国を両方訴えることができる。
 b 東電に過失あり
 → 東電(無過失責任・原賠法)と国(過失責任・国賠法)の競合で、共同不法行為のような関係?
 → 東電と国との過失割合に応じて求償権決まる。
 → 第三者は、東電と国を両方訴えることができる。


※一応上のように考えことができるが、国の関与の態様によっては、東電が責任を免れ、国だけが責任を負う可能性もある。
 たとえば原発事故が起きて、放射性物質が飛散し、その情報を東電も国も掴んでいるが、単に国の判断の鈍さ等で、国の権限である避難勧告や待避勧告等が著しく遅れて、住民がしなくてよい被爆をしてしまったような場合や、農作物等の出荷制限の出し方等について国に落ち度があり、そのため風評被害が発生し、その判断に東電が何ら関与していないような場合など、原発事故との条件関係はあるが、後に、国の異常な判断、過失行為等が関与して、結果が発生したような場合には、東電側にとって結果について予見可能性がなく、それらによる損害は原発事故と相当因果関係は無いとして、東電が免責され、国のみが国賠法で損害賠償義務を負うと考える余地があろう。
 もっとも、緊急事態において因果関係の切断があると認められるほどの国の異常な過失行為があったことの立証は困難だろうし、そもそも、他の損害のみでのも、それが莫大で国の「援助」(原賠法16条)なしには支払いをなしえないような場合には、国と賠償責任や求償を巡って対立する意味はほとんどなかろう。



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■原発事故による風評被害対策について考える その4 公的機関・準備等

■原発事故による風評被害対策について考える その4 公的機関・準備等

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・農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/syukka_kisei.html

2.出荷制限の対象外の品目に対する風評被害への賠償はどうなるのか
(答)
1.今回の原子力発電所の事故によって生じる損害については、出荷停止の指示を受けた農畜産物に限らず、一般論として、事故との相当因果関係が認められるものについて、原子力損害の賠償に関する法律に基づき適切な賠償が行われることになります。
2.また、出荷自粛や風評被害により売上が減少した農畜産物等に関 しても、このような考え方に照らして判断されるものと考えており ます。
3.この賠償については、原子力損害賠償法によって、一義的には原子力事業者である東京電力がその責任を負うべきものと考えておりますが、政府としても、被害者の方々が適切な補償を受けられるよ う万全を期してまいります。

3.農家は賠償のためにどのような準備が必要か
(答)
1.今回の補償の範囲については、原子力損害の賠償に関する法律に基づ き、今後、原子力損害賠償紛争審査会が定める原子力損害の範囲の判定の指針に基づいて判断されることとなります。
2.このような指針が明らかになるまで一定期間を要するため、現段階で、農家が前もって準備するものとして、
[1] 当該期間に生じた売上減少額や実損額
[2] 当該期間に商品が返品され、再販売できない場合の実損額
[3] 当該期間に販売できなかった生産物や在庫商品を廃棄した場合の処分補償額及び処分費用
[4] 運転資金等を借り入れざるを得ない場合の金利相当額
などが明らかになるような証拠書類を保管しておくことが必要です。
3.具体的には、
[1] 各種資材等の購入に係る領収書や購入伝票
[2] 収穫や給与に至らなかった農作物・飼料の数量等を明らかにできる作業日誌
[3] 出荷停止となった農畜産物に係る過去の生産量の記録、納品台帳、出荷伝票及び回収・処分した場合の領収書
[4] 家畜の能力を示す証明書や飼養管理に係る記録
[5] 納税関係書類(損益計算書等)
[6] 現況を示す写真
などを保管しておく必要があります。
4.農林水産省としては、農家のこうした準備について関係団体を通じて適切な指導を行っているところです。

----------------------------
・水産庁
http://www.jfa.maff.go.jp/j/sigen/gensiryoku/index.html
原子力発電所の事故への対応に関するQ&A

1.水産業に対する賠償はどうなるのか
1.今回の原子力発電所の事故によって生じる損害については、出荷制限によるものに限らず、一般論として、事故との相当因果関係が認められるものについて、原子力損害の賠償に関する法律に基づき適切な賠償が行われることになります。
2.また、風評被害により売上が減少した水産物等に関しても、このような考え方に照らして判断されるものと考えております。
3.この賠償については、原子力損害賠償法によって、一義的には原子力事業者である東京電力がその責任を負うべきものと考えておりますが、政府としても、被害者の方々が適切な補償を受けられるよう万全を期してまいります。

2.賠償を受けられるまでの間、資金面での漁業者への支援はないのか。
1.今回の福島原発の事故については、原子力損害賠償法に基づき、適切な補償が行われることとなっており、漁業者団体が多数の漁業者を代表して東京電力に対する損害賠償をとりまとめ、請求する作業を進めているところです。
2.また、東京電力による賠償が行われるまでの間のつなぎ融資としての対応に向けて、農林中央金庫は、信漁連等に対する資金供給・利子補給を行うこととしており、農林水産省としても、関係機関への働きかけを行うなど、協力して進めているところです。

3.漁業者は損害賠償請求のためにどのような準備が必要か
1.今回の補償の範囲については、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、今後、原子力損害賠償紛争審査会が定める原子力損害の範囲の判定の指針に基づいて判断されることとなります。
2.このような指針が明らかになるまで一定期間を要するため、現段階で、漁業者が前もって準備するものとして、
[1] 当該期間に生じた売上減少額や実損額
[2] 当該期間に生産物が返品され、再販売できない場合の実損額
[3] 当該期間に販売できなかった生産物や在庫商品を廃棄した場合の処分補償額及び処分費用
[4] 運転資金等を借り入れざるを得ない場合の金利相当額
などが明らかになるような証拠書類を保管しておくことが必要です。
3.具体的には、
[1] 各種資材等の購入に係る領収書や購入伝票
[2] 水揚げや給与に至らなかった生産物・餌料の数量等を明らかにできる作業日誌
[3] 水揚げに至らなかった水産物に係る過去の生産量の記録、納品台帳、出荷伝票及び回収・処分した場合の領収書
[4] 操業日誌や漁獲成績報告書、養殖の飼育管理に係る記録
[5] 納税関係書類(損益計算書等)
[6] 現況を示す写真
などを保管しておく必要があります。
4.農林水産省としては、漁業者のこうした準備について関係団体を通じて適切な指導を行っていきたいと考えているところです。

--------------------------
・文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/anzenkakuho/baisho/1304760.htm

・補償のために、どのようなことをすればよいですか。
(答)
 原子力発電所の事故により生じる原子力損害に関して、事故との相当因果関係※が認められるものについては、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、損害に対して適切な賠償が行われることとなります。
※社会通念上相当と認められる範囲で因果関係が認められるものとする考え方
 請求される方は、今後、東京電力が開設する被害申出窓口に、「被害申出書」を提出していただくことになりますので、現時点で分かる範囲で被害内容等を把握してください。
 その後、被害申出書を提出された方に対して、被害額の算定の確認書類を含む「被害明細書」を提出していただくことになりますので、可能な限り、実際に支出したことを証明する領収書等を保管しておいてください。
 想定される損害内容と賠償請求に際して必要になると見込まれる書類は以下のとおりです。
 ※今後、東京電力が開設する窓口において、詳細な情報提供がなされる予定です。

6.営業損害(事業遂行が不能になったことによる損害が生じた場合)
■確定申告書
事業の売上額等を確認する資料
■決算書類
事業内容や売上額等を確認する資料
■過去1年の売上実績
帳簿等、直近の売上額等を確認する資料
■事故後の売上実績
帳簿等、事故後の売上額等を確認する資料
■営業上の追加費用・代替費用
伝票や帳簿等、事故の影響により営業を継続するために追加的・緊急的に要した費用を確認する資料
■営業再開に伴う費用
伝票や帳簿等、営業を再開するにあたって追加的に要した費用を確認する資料

----------------------------
・栃木県上三川町
http://www.town.kaminokawa.tochigi.jp/f_sangyousinkou/sintyaku/songai.htm
福島第一原子力発電所の事故による農産物被害の損害賠償請求について
農産物被害の損害賠償請求について
 原発事故に伴い、栃木県産の農産物が出荷停止や風評被害などにより損害を受けたことに対し、JA栃木中央会が中心となり、農家が受けた被害に対する損害を取りまとめ、損害賠償請求の手続きを行うことになりました。
 つきましては、下記のとおり被害の申し出の受付を行いますので、ご案内いたします。
○ JAうつのみやの青果物専門部に加入されている農家の方
 JAうつのみや上三川営農経済センターで行っていますので、所属する青果物専門部の役員又はJA職員からの指示に従って下さい。
必要書類 
①委任状  (役場又は野菜集荷所にありますので、 印鑑をご持参下さい。)
②原発事故放射能汚染による廃作記録
(役場又は野菜集荷所にありますので、耕作地番、作付面積、 廃作面積、廃作日を記録してきて下さい。)
③被害を証明する資料
例)作業日誌、過去の出荷量の記録や出荷伝票等、費用に係る 領収書、納税関係書類、写真等

-------------------------
・宇都宮市
http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/oshiraselist/19078/019334.html

農家の皆さんへ(福島第1原子力発電所事故に伴う対応について)
【至急・重要】原発事故に伴う農産物損害賠償請求について
 福島第1原子力発電所事故による農産物被害(出荷制限や風評被害によるもの)の損害賠償請求につきましては、JA栃木中央会が中心となり、県内全ての農家が受けた損害を取りまとめ、原子力損害賠償紛争委員会へ提出することになりました。

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■原発事故による汚染と法令

■原発事故による汚染と法令

〔行為と結果〕
・原発水素爆発後→大気、土壌、水質、海洋等汚染
・汚染水1万1500トン放出(4月4日)→海洋汚染

----------------------------
〔適用除外関係〕

・水質汚濁防止法
第二十三条  この法律の規定は、放射性物質による水質の汚濁及びその防止については、適用しない。

・大気汚染防止法
第二十七条 この法律の規定は、放射性物質による大気の汚染及びその防止については、適用しない。

・土壌汚染対策法
第二条 この法律において「特定有害物質」とは、鉛、砒素、トリクロロエチレンその他の物質(放射性物質を除く。)であって、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして政令で定めるものをいう。

・海洋汚染等防止法(海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律)
第五十二条 この法律の規定は、放射性物質による海洋汚染等及びその防止については、適用しない。

・海洋水産資源開発促進法
第二十一条 この法律の規定は、放射性物質による水質汚濁等及びその防止については、適用しない。

・農用地の土壌の汚染防止等に関する法律
第二条
3 この法律において「特定有害物質」とは、カドミウム等その物質が農用地の土壌に含まれることに起因して人の健康をそこなうおそれがある農畜産物が生産され、又は農作物等の生育が阻害されるおそれがある物質(放射性物質を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。

・廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)
第二条 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。



〔その他〕
・公害犯罪防止法(人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律)
第一条  この法律は、事業活動に伴つて人の健康に係る公害を生じさせる行為等を処罰することにより、公害の防止に関する他の法令に基づく規制と相まつて人の健康に係る公害の防止に資することを目的とする。
(故意犯)
第二条  工場又は事業場における事業活動に伴つて人の健康を害する物質(身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質を含む。以下同じ。)を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2  前項の罪を犯し、よつて人を死傷させた者は、七年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
(過失犯)
第三条  業務上必要な注意を怠り、工場又は事業場における事業活動に伴つて人の健康を害する物質を排出し、公衆の生命又は身体に危険を生じさせた者は、二年以下の懲役若しくは禁錮又は二百万円以下の罰金に処する。
2  前項の罪を犯し、よつて人を死傷させた者は、五年以下の懲役若しくは禁錮又は三百万円以下の罰金に処する。
(両罰)
第四条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前二条の罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

・核原料物質の使用に関する規則
第2条11号
ヘ 液体状の放射性廃棄物は、次に掲げるいずれかの方法により廃棄すること。
(1) 排水施設によつて排出すること。
(2) 放射線障害防止の効果を持つた廃液槽に保管廃棄すること。
(3) 容器に封入し、又は容器に固型化して放射線障害防止の効果を持つた保管廃棄施設に保管廃棄すること。
(4) 放射線障害防止の効果を持つた焼却設備において焼却すること。
(5) 放射線障害防止の効果を持つた固型化設備で固型化すること。
ト ヘ(1)の方法により廃棄する場合は、排水施設において、ろ過、蒸発、イオン交換樹脂法等による吸着、放射能の時間による減衰、多量の水による希釈その他の方法によつて排水中における放射性物質の濃度をできるだけ低下させること。この場合、排水口において又は排水監視設備において排水中の放射性物質の濃度を監視することにより、周辺監視区域の外側の境界における水中の放射性物質の濃度が文部科学大臣の定める濃度限度を超えないようにすること。
チ ヘ(2)の方法により廃棄する場合において、当該保管廃棄された放射性廃棄物の崩壊熱等により著しい過熱が生じるおそれがあるときは、冷却について必要な措置を採ること。
リ ヘ(3)の方法により廃棄する場合において、放射性廃棄物を容器に封入するときは、当該容器は、次に掲げる基準に適合するものであること。
(1) 水が浸透しにくく、腐食に耐え、及び放射性廃棄物が漏れにくい構造であること。(2) き裂又は破損が生じるおそれがないものであること。
(3) 容器のふたが容易に外れないものであること。
ヌ ヘ(3)の方法により廃棄する場合において、放射性廃棄物を容器に固型化するときは、固型化した放射性廃棄物と一体化した容器が放射性廃棄物の飛散又は漏れを防止できるものであること。
ル ヘ(3)の方法により廃棄する場合において、放射性廃棄物を放射線障害防止の効果を持つた保管廃棄施設に保管廃棄するときは、次によること。
(1) 放射性廃棄物を容器に封入して保管廃棄するときは、当該容器にき裂若しくは破損が生じた場合に封入された放射性廃棄物の全部を吸収できる材料で当該容器を包み、又は収容できる受皿を当該容器に設けること等により、汚染の広がりを防止すること。
(2) 当該保管廃棄された放射性廃棄物の崩壊熱等により著しい過熱が生じるおそれのある場合は、冷却について必要な措置を採ること。
(3) 放射性廃棄物を封入し、又は固型化した容器には、放射性廃棄物を示す標識を付け、及び当該放射性廃棄物に関して次条の規定に基づき記録された内容と照合できるような整理番号を表示すること。
(4) 当該廃棄施設には、その目につきやすい場所に管理上の注意事項を掲示すること。

・核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
(危険時の措置)
第六十四条  原子力事業者等(原子力事業者等から運搬を委託された者及び受託貯蔵者を含む。以下この条において同じ。)は、その所持する核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉に関し、地震、火災その他の災害が起こつたことにより、核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉による災害が発生するおそれがあり、又は発生した場合においては、直ちに、主務省令(第三項各号に掲げる原子力事業者等の区分に応じ、当該各号に定める大臣の発する命令をいう。)で定めるところにより、応急の措置を講じなければならない。
2  前項の事態を発見した者は、直ちに、その旨を警察官又は海上保安官に通報しなければならない。
3  文部科学大臣、経済産業大臣又は国土交通大臣は、第一項の場合において、核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉による災害を防止するため緊急の必要があると認めるときは、同項に規定する者に対し、次の各号に掲げる原子力事業者等の区分に応じ、製錬施設、加工施設、原子炉施設、使用済燃料貯蔵施設、再処理施設、廃棄物埋設施設若しくは廃棄物管理施設又は使用施設の使用の停止、核燃料物質又は核燃料物質によつて汚染された物の所在場所の変更その他核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉による災害を防止するために必要な措置を講ずることを命ずることができる。
一  製錬事業者、加工事業者、使用済燃料貯蔵事業者、再処理事業者及び廃棄事業者(旧製錬事業者等、旧加工事業者等、旧使用済燃料貯蔵事業者等、旧再処理事業者等及び旧廃棄事業者等を含む。)並びにこれらの者から運搬を委託された者 経済産業大臣(第五十九条第一項に規定する運搬に係る場合にあつては同項に規定する区分に応じ経済産業大臣又は国土交通大臣、船舶又は航空機による運搬に係る場合にあつては国土交通大臣)
二  使用者(旧使用者等を含む。以下この号において同じ。)及び使用者から運搬を委託された者 文部科学大臣(第五十九条第一項に規定する運搬に係る場合にあつては同項に規定する区分に応じ文部科学大臣又は国土交通大臣、船舶又は航空機による運搬に係る場合にあつては国土交通大臣)
三  原子炉設置者(旧原子炉設置者等を含む。以下この号において同じ。)及び当該原子炉設置者から運搬を委託された者 第二十三条第一項各号に掲げる原子炉の区分に応じ、当該各号に定める大臣(第五十九条第一項に規定する運搬に係る場合にあつては同項に規定する区分に応じ第二十三条第一項各号に定める大臣又は国土交通大臣、船舶又は航空機による運搬に係る場合にあつては国土交通大臣)
四  外国原子力船運航者及び外国原子力船運航者から運搬を委託された者 国土交通大臣
五  受託貯蔵者 第六十条第一項各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める大臣

・核燃料物質等の工場又は事業所の外における廃棄に関する規則
(危険時の措置)
第六条
 法第六十四条第一項(原子力事業者等が工場又は事業所の外において放射性廃棄物を廃棄する場合に限る。)の規定により、原子力事業者等は、次の各号に掲げる応急の措置を講じなければならない。
一 放射性廃棄物による汚染が生じた場合には、その場所の周囲になわを張り、又は標識等を設け、及び見張人を配置することにより、関係者以外の者が立ち入ることを禁止すること。
二 放射性廃棄物による汚染が生じた場合には、速やかに、その広がりの防止及び汚染の除去を行うこと。
三 放射線障害を受けた者又は受けたおそれのある者がいる場合には、速やかに、その者を救出し、避難させる等緊急の措置を講じること。
四 その他放射線障害を防止するために必要な措置を講じること。


・海洋法に関する国際連合条約
第百九十四条 海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するための措置
1 いずれの国も、あらゆる発生源からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、利用することができる実行可能な最善の手段を用い、かつ、自国の能力に応じ、単独で又は適当なときは共同して、この条約に適合するすべての必要な措置をとるものとし、また、この点に関して政策を調和させるよう努力する。
2 いずれの国も、自国の管轄又は管理の下における活動が他の国及びその環境に対し汚染による損害を生じさせないように行われること並びに自国の管轄又は管理の下における事件又は活動から生ずる汚染がこの条約に従って自国が主権的権利を行使する区域を越えて拡大しないことを確保するためにすべての必要な措置をとる。
3 この部の規定によりとる措置は、海洋環境の汚染のすべての発生源を取り扱う。この措置には、特に、次のことをできる限り最小にするための措置を含める。
(a) 毒性の又は有害な物質(特に持続性のもの)の陸にある発生源からの放出、大気からの若しくは大気を通ずる放出又は投棄による放出
(b) 船舶からの汚染(特に、事故を防止し及び緊急事態を処理し、海上における運航の安全を確保し、意図的な及び意図的でない排出を防止し並びに船舶の設計、構造、設備、運航及び乗組員の配乗を規制するための措置を含む。)
(c) 海底及びその下の天然資源の探査又は開発に使用される施設及び機器からの汚染(特に、事故を防止し及び緊急事態を処理し、海上における運用の安全を確保し並びにこのような施設又は機器の設計、構造、設備、運用及び人員の配置を規制するための措置を含む。)
(d) 海洋環境において運用される他の施設及び機器からの汚染(特に、事故を防止し及び緊急事態を処理し、海上における運用の安全を確保し並びにこのような施設又は機器の設計、構造、設備、運用及び人員の配置を規制するための措置を含む)
4 いずれの国も、海洋環境の汚染を防止し、軽減し又は規制するための措置をとるに当たり、他の国のこの条約に基づく権利の行使に当たっての活動及び義務の履行に当たっての活動に対する不当な干渉を差し控える。
5 この部の規定によりとる措置には、稀少又はぜい弱な生態系及び減少しており、脅威にさらされており又は絶滅のおそれのある種その他の海洋生物の生息地を保護し及び保全するために必要な措置を含める。
第百九十八条 損害の危険が差し追った場合又は損害が実際に生じた場合の通報
海洋環境が汚染により損害を受ける差し迫った危険がある場合又は損害を受けた場合において、このことを知った国は、その損害により影響を受けるおそれのある他の国及び権限のある国際機関に直ちに通報する。
第二百七条 陸にある発生源からの汚染
1 いずれの国も、国際的に合意される規則及び基準並びに勧告される方式及び手続を考慮して、陸にある発生源(河川、三角江、パイプライン及び排水口を含む。)からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するための法令を制定する。
2 いずれの国も、1に規定する汚染に防止し、軽減し及び規制するために必要な他の措置をとる。
3 いずれの国も1に規定する汚染に関し、適当な地域的規模において政策を調和させるよう努力する。
4 いずれの国も、地域的特性並びに開発途上国の経済力及び経済開発のニーズを考慮して、特に、権限のある国際機関又は外交会議を通じ陸にある発生源からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、世界的及び地域的な規則及び基準並びに勧告される方式及び手続を定めるよう努力する。これらの、基準並びに勧告される方式及び手続は、必要に応じ随時再検討する。
5 1、2及び4に規定する法令、措置、規則、基準並びに勧告される方式及び手続には、毒性の又は有害な物質(特に持続性のもの)の海洋環境への放出をできる限り最小にするためのものを含める。
第二百十条 投棄による汚染
1 いずれの国も、投棄による海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため法令を制定する。
2 いずれの間も、1に規定する汚染を防止し、軽減し及び規制するために必要な他の措置をとる。
3 1及び2に規定する法令及び措置は、国の権限のある当局の許可を得ることなく投棄が行われないことを確保するものとする。
4 いずれの国も、特に、権限のある国際機関又は外交会議を通じ、投棄による海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、世界的及び地域的な規則及び基準並びに勧告される方式及び手続を定めるよう努力する。これらの規則、基準並びに勧告される方式及び手続は、必要に応じ随時再検討する。
5 領海及び排他的経済水域における投棄又は大陸棚への投棄は、沿岸国の事前の明示の承認なしに行わないものとし、沿岸国は、地理的事情のため投棄により悪影響を受けるおそれのある他の国との問題に、妥当な考慮を払った後、投棄を許可し、規制し及び管理する権利を有する。
6 国内法令及び措置は、投棄による海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制する上で少なくとも世界的な規則及び基準と同様に効果的なものとする。
第二百十三条 陸にある発生源からの汚染に関する執行
いずれの国も、第二百七条の規定に従って制定する自国の法令を執行するものとし陸にある発生源からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため、権限のある国際機関又は外交会議を通じて定められる適用のある国際的な規則及び基準を実施するために必要な法令を制定し及び他の措置をとる。
第二百十六条 投棄による汚染に関する執行
1 この条約に従って制定する法令並びに権限のある国際機関又は外交会議を通じて定められる適用のある国際的な規則及び基準であって、投棄による海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するためのものについては、次の国が執行する。
(a) 沿岸国の領海若しくは排他的経済水域における投棄又は大陸棚への投棄については当該沿岸国
(b) 自国を旗国とする船舶については当該旗国又は自国において登録された船舶若しくは航空機についてはその登録国
(c) 国の領土又は沖合の係留施設において廃棄物その他の物を積み込む行為については当該国
2 いずれの国も、他の間がこの条の規定に従って既に手続を開始している場合には、この条の規定により手続を開始する義務を負うものではない。
第二百二十九条 民事上の手続の開始
この条約のいずれの規定も、海洋環境の汚染から生ずる損失又は損害に対する請求に関する民事上の手続の開始に影響を及ぼすものではない。
第二百三十条 執行措置から生ずる国の責任
いずれの国も、第六節の規定によりとった措置が違法であった場合又は入手可能な情報に照らして合理的に必要とされる限度を超えた場合には、当該措置に起因する損害又は損失であって自国の責めに帰すべきものについて責任を負う。いずれの国もこのような損害又は損失に関し、自国の裁判所において訴えを提起する手続につき定める。


・廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(ロンドン条約)

第1条 締約国は、海洋環境を汚染するすべての原因を効果的に規制することを単独で及び共同して促進するものとし、また、特に、人の健康に危険をもたらし、生物資源及び海洋生物に害を与え、海洋の快適性を損ない又は他の適法な海洋の利用を妨げるおそれがある廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染を防止するために実行可能なあらゆる措置をとることを誓約する。 第2条 締約国は、次条以下の諸条に定めるところに従い、自国の科学的、技術的及び経済的な能力に応じて単独で、並びに共同して、投棄によつて生ずる海洋汚染を防止するための効果的な措置をとるものとし、また、この点に関して締約国の政策を調和させる。

第2条 締約国は、次条以下の諸条に定めるところに従い、自国の科学的、技術的及び経済的な能力に応じて単独で、並びに共同して、投棄によつて生ずる海洋汚染を防止するための効果的な措置をとるものとし、また、この点に関して締約国の政策を調和させる。

第3条 この条約の適用上、1
a.「投棄」とは、次のことをいう
i.海洋において廃棄物その他の物を船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物から故意に処分すること。
ii.海洋において船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物を故意に処分すること。

第4条1 締約国は、この条約の定めるところにより、次の(a)から(c)までに別段の定めがある場合を除くほか、廃棄物その他の物の投棄(その形態及び状態のいかんを問わない。)を禁止する。
a.附属書Iに掲げる廃棄物その他の物の投棄は、禁止する。
b.附属書IIに掲げる廃棄物その他の物の投棄は、事前の特別許可を必要とする。
c.他のすべての廃棄物その他の物の投棄は、事前の一般許可を必要とする。2 いずれの許可も、附属書IIIに掲げるすべての事項について慎重な考慮(附属書IIIB及びCに掲げる投棄場所の特性についての事前調査を含む。)が払われた後でなければ与えてはならない。3 この条約のいかなる規定も、締約国が廃棄物その他の物であつて附属書Iに掲げられていないものの投棄を自国について禁止することを妨げるものと解してはならない。当該締約国は、そのための措置を機関に通知する。

附属書I
6.放射性廃棄物その他の放射性物質

附属書II
C 放射性廃棄物その他の放射性物質であつて附属書Iに含まれないもの。締約国は、これらの物質の投棄を許可するに当たつては、この分野における権限のある国際団体(現在においては、国際原子力機関)の勧告を十分に考慮する。


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2011-04-23 : ■法令等 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■原発事故による風評被害対策について考える その3 因果関係の立証

■原発事故による風評被害対策について考える その3 因果関係の立証

1 過去のいくつかの裁判例を見ると,生産者側の請求について,裁判所は,原子力施設の事故と風評被害による損害との間に,相当因果関係が無いとして,請求を認めないか,一部のみ認容するという結論を出している。

 損害賠償請求の要件である因果関係については,条件関係(事実的因果関係「あれ無ければこれ無し」という関係)が存在することを前提に,さらに相当因果関係が必要とされている。相当因果関係とは,当該原因があれば,当該結果が生じることが,(一般通常人からみて)社会通念上、通常のことと認めれることを意味する。

 条件関係は,よほど無関係な減収でない限り、今回の場合は存在するはずであり,問題は相当因果関係である。原子力関係施設の事故後に,消費者の買い控えが生じた事案について,裁判所は,相当因果関係の認定において,以下のような判断をしている。

・平成元年5月17日名古屋高裁金沢支部判決(判タ705号108頁)
「かかる心理状態は,一般には是認できるものではなく,事故を契機とする消費者の心情的な判断の結果であり,事故の直接の結果とは認められない。」「極めて主観的な心理状態であって,同一条件のもとで,常に同様の状態になるとは言い難く,また一般的にも予見可能性があったともいえない」

・平成18年2月27日東京地裁判決(判タ1207号116頁)
「もっとも,本件臨界事故後,一般消費者が納豆商品を買い控えるに至ったことが窺われるものの,それは一般消費者の個別的な心情に基づくものであり,放射線汚染という具体的な危険が存在しない商品であるのにもかかわらず,それが危険であるとして,上記商品を敬遠し買い控えるに至るという心理的状態に基づくものである以上,そこには一定の時間的限界があるというべきである。この時間的限界をどのように画すかは困難な問題であるが,それは一般消費者が上記のような心情を有することが反復可能性を有する期間,あるいは一般的に予見可能性があると認め得る期間に限定されるというべきである。」

・また原子力損害調査研究会の最終報告書(平成12年3月29日)においても「平均的・一般的な人を基準として合理性のあるものであること」とされている。

 これらに共通するのは,その時点,その状況の下で,一般通常人の判断において,買い控えすることが通常(合理的,反復可能性)か否かが問われているという点である。
 ここで一般通常人の判断といっても,それがいかなるものであるかは最終的には裁判所の感覚次第というところがあるが,被害者のすべき紛争解決の準備となるのは,風評被害が起きていた時点での一般消費者をとりまく情報環境の保存である。
 損害を低く見積もりたい側は,その時点で既に十分正確な情報が行き渡っており,一般の消費者の判断としては安全と考えるのが通常で,その他の買い控えは,行きすぎたものであって,特殊な心理状態に基づくものであり,相当因果関係はないと主張するであろう。
 被害者側は,その逆を示す証拠を収集すべきということになる。
 そしてこのような情報は,生産者ら被害者に共通して必要な情報であるから,その収集は,生産者だけでなく,生産者団体,組合,業界団体,自治体等の努力によってなされるべきであろう。

 風評被害が「原子力損害」として認められた訴訟において,以下ような認定がなされている。

 平成18年4月19日・東京地裁判決(判時1960号64頁)JCO臨界事故関係。納豆の風評被害。実際の商品に放射能汚染等はなかったが,臨界事故報道等があり悪風評が生じて売上げが減少。
「本件臨界事故現場から10キロ圏内の屋内退避要請地域については、放射線及び放射性物質の放出による健康影響はないものとされているほか、一部新聞記事にはその旨の報道が先行的になされていたこと、本件臨界事故直後の平成11年10月1日から同月5日にかけて、茨城県などによって事故現場周辺の農林水産物、水質、加工品等の安全性について調査が行われ、いずれも放射線ないし放射性物質による影響は認められない旨の結果が公表されていたこと、同月6日以降は、政府やJA茨木件中央会等もキャンペーンを行うなどして安全性のPR活動を行ったことが認められるが、原子力事故が放射線や放射能の放出といった目には見えない危険を伴うものであること、本件臨界事故が前記のとおり死傷者を出した重大なものでり、事故直後からマスコミで大々的に取り上げられていた(証拠として提出された新聞記事(甲27)を見ると、臨界事故の重大性を報じる記事は、その安全性を示す記事よりもはるかに大きく取り上げられており、このことからも、一般読者に事故の重大性に関する印象が強く伝わっていたことが推測される。)ことなどからすれば、本件臨界事故後、原告の納豆製品を含む茨木県産の加工品について安全性が確認され、その旨のPR活動がなされていたとしても、消費者ないし消費者の動向を反映した販売店において、事故現場から10キロメートル圏内の屋内退避要請地域にある本社工場を「生産者」と表示した原告の納豆製品の危険性を懸念して、これを敬遠し、取扱いを避けようとする心理は、一般に是認できるものであり、それによる原告の納豆製品の売上減少等は、本件臨界事故との相当因果関係が認められる限度で本件臨界事故による損害として認めることができるというべきである。」

この判決では,原子力事業者に有利な情報として,

①臨界事故現場から10キロ圏内の屋内退避要請地域については、放射線及び放射性物質の放出による健康影響はないものとされていること
②一部新聞記事にはその旨の報道が先行的になされていたこと
③事故直後の平成11年10月1日から同月5日にかけて、茨城県などによって事故現場周辺の農林水産物、水質、加工品等の安全性について調査が行われ、いずれも放射線ないし放射性物質による影響は認められない旨の結果が公表されていたこと
④同月6日以降は、政府やJA茨木件中央会等もキャンペーンを行うなどして安全性のPR活動を行ったこと

を挙げ,他方

①原子力事故が放射線や放射能の放出といった目には見えない危険を伴うものであること
②本件臨界事故が前記のとおり死傷者を出した重大なものでり、事故直後からマスコミで大々的に取り上げられていた
③臨界事故の重大性を報じる記事は、その安全性を示す記事よりもはるかに大きく取り上げられていたこと
④一般読者に事故の重大性に関する印象が強く伝わっていたこと

を見て,そのような情報環境の下においては,一般消費者が買い控えようとする心理は,一般に是認できるとして,臨界事故と,風評被害による売上減少と間の相当因果関係を認めているものと思われる。

 要するに,風評被害が生じた時点で,一般消費者が,どのような情報環境下に置かれていたかが問題で,被害者側としてすべきことは,その時点で,消費者の不安につながる関連情報の収集保存であろう。


2 いかなる情報が,消費者の心理に影響を与えるかは,業種によって,その内容も異なるだろうが,一般には以下のようなものが考えられるのではないか。

・原発事故の内容と危険性,放射能汚染,出荷制限,風評被害に関連する省庁や自治体等のインターネットサイトや,そこにあるPDF書類の保存が必要であろう。
 
経済産業省http://www.meti.go.jp/earthquake/index.html
厚生労働省http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000014j15.html
農林水産省http://www.maff.go.jp/j/kanbo/joho/saigai/index.html
文部科学省http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1303723.htm
食費安全委員会http://www.fsc.go.jp/
消費者庁http://www.caa.go.jp/jisin/index.html
原子力安全委員会http://www.nsc.go.jp/index.htm
観光庁http://www.mlit.go.jp/kankocho/page01_000164.html
福島県http://wwwcms.pref.fukushima.jp/
など
東京電力http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/index-j.html
など

・作物、製品、土壌、水質等の汚染に関する公的機関の情報、組合等や自らした検査結果等も基本情報として当然必要だろう。

・食品等については,自分の作っているものでなくても,同種あるいは近隣であることから被害にあうので,出荷制限や出荷自粛要請のあるものについてはそれらの資料も収集しておくべきである。
http://www.maff.go.jp/j/press/soushoku/ryutu/110420.html
http://www.maff.go.jp/noutiku_eikyo/mhlw2.html

・また,出荷制限や出荷自粛要請の出ている品物が市場に出回るなど,混乱が生じているいることを示すニュースが,何件か聞かれるが,今後も起こりうるから,これらは新聞雑誌等で保存すべきである。これらの事象は,一般消費者が,福島県や近隣県産の商品の買い控え,消費不安に直結するものだからである。
ex.「イオン、出荷自粛のサンチュ販売 7都県で2200パック」
 「生協に出荷制限ホウレンソウ74束 千葉の生産者 一部は消費」

・また原発事故関係が収束に向かっておらず,出口も見えず続いてることも重要で,これらを示す新聞,雑誌記事等も保存すべきである。これらは特に観光業者にとっては重要と思われる。未だに,水蒸気爆発の危険など,より悲惨な汚染の可能性を払拭できていないことから,旅行を控えるということもあるだろうからである。

・食品の買い控えについては,女性誌など雑誌の報道内容も重要であり,関連記事は収集保存すべきである。

・また政府や東電から出てくる情報について,批判的に論評されているものは重要で,情報を持っている当事者や,公的機関の情報開示の不正確さや,遅さや,対応の悪さや,わかりにくさを示すような書類や,記事類は収集しておくべきである。

・さらに,食品について規制値以下でも買い控えが起きるのは,急性放射性障害に対する恐れが原因ではなく,低線量被爆による健康被害を恐れが原因で,これについては確率的影響などと言われ,一般通常人にとってははっきりしないことが多い。おそらく低線量被曝と疾病との因果関係や程度については,専門家でも意見が分かれているはずで,そもそもそのような状態にあることを示すため,関連書籍類は今のうちに集めておいた方がよいかもしれない。

・また,現在,外国による日本製品の輸入規制等が行われており,これも消費者にとっては不安要因となる情報であろうから,その種の情報も収集保存しておくべである。
http://www.maff.go.jp/j/export/e_info/pdf/kensa0421.pdf

・さらにWHOのほか諸外国の食品規制値も,日本の消費者の不安につながっているものであり,それら情報の収集は必要であろう。

・また,一般通常人の認識・情報とは異なるかもしれないが,twitterやネット掲示板等での,議論風評も念のため保存しておくのもよいかもしれない。


〔調べるまでもない客観情報〕
・政府の安全宣言の有無
・原発からの距離
・原発事故からの経過期間

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2011-04-22 : ・風評被害対策 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■原発事故による風評被害対策について考える その2 損害の立証

■原発事故による風評被害対策について考える その2 損害の立証

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【風評被害の種類】
1 人の汚染が恐れられて発生するもの
  避難者の宿泊拒否など
2 物の汚染が恐れられて発生するもの
(1)動産
 a 農作物、海産物、畜産物等一次産品(売れなくなる)
 b 食品加工物(売れなくなる)
 c 衣類・機器等工業製品(売れなくなる)
(2)不動産
 a 土地建物(売れなくなる、価値の低下)
3 場所の汚染が恐れられて人が来なくなって発生するもの
 a 観光業(宿泊施設・運輸業)(客減る)
 b 賃貸業、教育、娯楽、医療、その他サービス業(客・利用者減る)
 c 農業その他産業で労働者の不足による損失(労働力不足)
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1 風評被害といえるか
 まず,農作物等で考えれば,現に放射性物質で汚染されて,規制値を超えいてれば,風評というより現実に財物汚損があるので,賠償対象となる「原子力損害」に該当するはずである。あるいは出荷制限(原子力災害対策特別措置法第20条第3項,食品衛生法第6条第2号)や出荷自粛要請がなされているものも,同様に扱われるだろう。
 問題は,それ以外で汚染が全くなく,あるいは規制値以下で,出荷制限や自粛要請されていないものが,距離の近さ等から風評被害の対象となった場合である。

2 風評被害という営業損害については,他の財産上の損害と同様,その発生・存在を示す証拠と,その金額の評価に関する証拠の収集が必要である。

(1)風評被害の発生,存在を示す証拠
 原発事故による風評被害の発生は,通常,事故発生後,放射能漏れの情報が伝わり,食品や土壌大気等の汚染を示唆する情報が消費者に伝わり,小売店で食品等が売れなくなり,仲買,卸とその情報が伝わり,生産者が出荷しようとしても取引拒否される,あるいは,価格が大幅に下落するという過程をたどるはずである。さらに,その後は,生産者側での廃棄,生産調整等を強いられ,損害が拡大することになるはずである。
 風評被害による損害の発生,存在を示す証拠の収集とは,これら全経緯をできるだけ客観的な証拠で保存することである。
・農産物等の生産者は,自分自身で収集できるものとして,生産,出荷の記録類は当然必要であり,過去の取引関係書類も当然必要となろう。
・また自主的に検査等した場合はその費用等も損害に該当する可能性があるので,機器の入手や検査機関への依頼に関してかかった費用等を示す書類も保存しておくべきであろう。
・また,今回の原発事故は,地震と津波という自然災害を起点としているため,消費者の買い控え,売上げの低下が,大災害後の消費自粛によるものか判然としない可能性があるので,生産,卸,仲買,小売の各段階で,どのような経緯で,当該生産物について,そのような取引停止,価格下落に至ったのか,自治体,業界団体,組合を通してでも,記録,電話調査,録音,アンケート調査,小売店での客の態度に関する小売り関係者の証言等を,可能な限り客観的な形(録音,ビテオ,書類等)で保存しておくべきであろう。
・さらに,生産物の買い手が無くなり,廃棄せざるをえない場合も,廃棄過程は全て,可能な限り客観的な証拠として保存すべきである。廃棄数量等の記録,廃棄過程の写真,ビデオや,あるいは廃棄を業者に依頼するような場合には,その品目,数量,廃棄場所,廃棄方法,廃棄費用等の確認ができる形での領収書類をもらい保存しておくべきである。
・また,福島県やその近接自治体の観光産業などは,原発事故後に多数のキャンセル等が発生し,多大な損失を被ることになるが,キャンセル理由を示す客観的証拠の保存が必要となろう。キャンセル客が,自己の全く個人的な理由でキャンセルすることもあるし,自然災害に対する恐怖からキャンセルした可能性があり,裁判等ではその点について反論が出される可能性がある。そこで,ホテル,旅館等の観光業者としては,キャンセル客からできるだけその理由をきいて,記録し,また風評被害に関する事情を説明するなどして協力を得て,録音やアンケートはがき等で,福島第一原発事故による放射能漏れに対するおそれから宿泊予定等をキャンセルしたかどうかについて客観的証拠を得るべきだだろう。また,旅行代理店等を通した団体予約などの場合は,代理店の協力を得るなどして,キャンセル客に対するアンケート調査をしてでも,原発事故によるキャンセルであったことを示す客観的証拠を入手しておくべきであろう。

(2)風評被害の金額の評価に関する証拠
・それまでの取引価格を示す証拠は,重要な証拠になるので,過去の取引記録は,可能な限り保存しておくべきである。仮に廃業に追い込まれても,捨てずに過去の記録は保管すべきである。また,価格下落後のものも保管する必要がある。
・また,同産地同種商品の小売店での価格等の記録も参考になるかもしれない。
・各紛争解決機関で,損害がどような方法で算出されるか不明であるが,過去数年間の同時期の粗利益の平均額と,原発事故後の同時期の粗利益との差額が,損害になると考えるとすると,それらを示す決算書類,税務関係書類等は当然に必要である。

(3)経営努力,営業努力に関する証拠
 これは,後述の相当因果関係や過失相殺(民法722条2項)に関して問題となるが,ここで論じておく。
 風評被害にあった生産者が,過度に悲観して,過剰な廃棄や生産調整に至った場合は,過失相殺規定(民法722条2項)が適用され,その分,賠償額が減らされる可能性がある。あるいは,その場合,風評と損害との間に相当因果関係か無いとして,請求が認められない可能性がある。
 JCO臨界事故事件に関して,水産加工会社が風評被害による賠償を求めた事件で,平成15年6月24日水戸地裁判決(判時1830号103頁)では,損害の存在を否定した上,「更に取引を求めて交渉したり,当該品物の転売先を探す努力をした形跡は全くないのであり,そのような努力をしてもなお損失を被らざるを得なかったことを認めるに足りる証拠はないから,原告主張の損害には,本件事故との相当因果関係を認めることはできない」などとして請求を棄却している。
 したがって,風評被害を被った者が,廃棄や生産調整する場合には,営業努力をしてもそこに追い込まれざるえなかったという事実を示す証拠も同時に用意しておいた方がよいということである。生産者が取引停止されたり,価格を下げられたりしたら,前記のとおり,その経緯は保存しておくべきだし,他の取引先を探す努力をし,それらも断られたとしたら,その経緯を記録し,また取引を拒否した業者やその先の仲買,小売まで話を聞いて記録しておくべきだろう。また,生産物の場合,出荷時の値段が,生産に要する金額(原価)を下回ると,生産調整はやむを得ないことであろうから,価格交渉経緯の客観的証拠は重要と思われる。さらに,農協漁協等の業者団体による風評被害対策等の努力がなされていることも,その際の営業努力を示す証拠であり,風評被害抑止の業界の努力経過も写真,録音,ビデオ,書類等の客観的証拠で保存しておくべきである。


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2011-04-22 : ・風評被害対策 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■原発事故による風評被害対策について考える その1 序論

■原発事故による風評被害対策について考える その1 序論

 まず,対策としては,

1 現時点から先の風評被害を抑制・阻止するための対策
2 既に発生してしまった風評被害を回復するための対策

 この二方向あると思われるが,ここでは2の対策を考えたい。

 風評被害による損失(営業損害)については,主として東電への損害賠償請求による回復が考えられ,これについては,今のところ以下のような手続きが考えられる。〔今回の原発事故では,風評被害以外の損害も膨大に発生していることから,国が別の仲裁制度等を設けるかもしれない。〕

1 当事者が直接東電に請求して支払いを受ける。
2 業界組織や自治体等の支援を受けつつ当事者が直接東電に請求。
3 裁判外紛争解決(ADR,弁護士会総合紛争解決センターなど)
4 原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介(原賠法18条2項2号)
5 民事調停
6 民事訴訟

 原発事故による風評被害といっても,事件の性質としては,通常の不法行為に基づく損害賠償事件と異ならず,民事紛争をいかに速やかに納得いく形で解決していくかが問題となる。

1から3までは,私的紛争解決
4から6までは,国の機関が関与

1と2は,当事者どうしの話し合,直接請求
3から5までは,第三者の関与を前提とする和解の場
6は,裁判による決着(ただし,訴訟手続内で和解解決もある)


 他の種の民事事件と同様で,「証拠が全て」の世界である。1から6までのどの方法,手続をとるにしても,証拠が重要である。ただし,原賠法に基づく,「原子力損害」の損害賠償請求では,次ぎのとおり,加害者側の過失の立証が必要なく,①損害と②因果関係の2点に立証対象が絞られてくるはずである。


〔民法709条,不法行為に基づく損害賠償請求権の成立要件〕
1 故意・過失
2 権利侵害(違法性の存在)
3 損害の発生
4 侵害行為と損害発生との間に因果関係があること
5 責任能力

 今回の事件で,原賠法に基づく請求をする場合,1の故意過失は立証の必要がない。原賠法3条では,無過失責任主義がとられており,被害者は加害者の故意・過失を立証する必要がないし,また加害者が無過失の主張をして争うこともできない。
 また,2の権利侵害について,そもそも,風評被害は,通常の財産上の権利の侵害(営業損害)の問題であり,権利侵害の要件が問題となることはない。
 さらに,東電は,自然人ではなく法人であり,5の責任能力も問題とならない。

 要するに,原子力損害賠償請求事件では,紛争解決のために当事者が立証すべきは,3の損害発生と4の因果関係(相当因果関係)のみである。

 したがって,風評被害を受けた者が,既に受けてしまった風評被害の回復を図ろうとする場合,必要なのは,①損害と②因果関係の立証に必要な資料の収集につきる。これはなにも,被害者自身のためになるだけではなくて,実際に支払いをする東電にとっても,客観的証拠が有れば支払いやすいし,紛争解決に係わる審査委員,調停委員,裁判所等にとっては,当事者に納得いく和解案を提示しやすくなるので,スムーズな解決に繋がり,関係者全員の利益につながるはずである。
 
 そこで,次項以下で,「損害の立証の準備」と「因果関係の立証の準備」のために,いかなる資料を収集すべきか考えてみる。




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■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その9 第17条との関係

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その9 第17条との関係

原賠法17条
「政府は、第三条第一項ただし書の場合又は第七条の二第二項の原子力損害で同項に規定する額をこえると認められるものが生じた場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。」

条文では,16条は,3条1項本文の原子力損害の賠償に関する国の措置(「必要な援助」),17条は,3条1項但書の免責があった場合の国の措置(「被災者の救助」等の措置)が規定されている。
 最近の経団連会長や国会議員らの発言において誤解があると思われるのは,17条についてである。これは3条1項但書の場合に国による賠償の肩代わりや,補償措置を定めたものではなく,通常の災害時に国が当然になすべき被災者救助を注意的に規定しただけのものである。したがって,3条1項但書にあたる場合は,原子力事業者は賠償を免責されるが,かといって国が賠償義務を負うものではなく,その場合の原発事故による被災者は,自然災害の被災者と同様に,国家よって「救助」されるだけである。
 つまり法は,「異常に巨大な天災地変」という超不可抗力によって,原発事故が起きてしまったら,それは全体として巨大な自然災害と同様なものと考えて,通常の意味で災害救助を当然に国家が行うことを意図しているに過ぎない。翻って考えてみると,3条1項但書の「異常に巨大な天災地変」とは,原発事故も含めて全体として自然災害と見てよいほどの巨大なものであることが想定されているということになる。



 以下が,立法過程における17条に関する国会審議である。

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-衆-科学技術振興対策特別委…-13号 昭和35年05月18日
○中曽根国務大臣 条文のどこに書いてあるということはございませんが、この語の定義というものが、そういうふうに立法のときに了解してあるわけであります。そうして今お話になりました、しからば、その異常に巨大な場合にはどうするかという問題については、第十七条に規定してありまして、「政府は、第三条第一項ただし書の場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。」この場合は、一般の災害救助法もありますし、それ以外のこともありましょう。とにかく、そういう場合には、国民の民生に関することでもあり、生命財産に関することでもありますから、最善を尽くして必要最大の措置を行なうわけであります。しかし、それは、十六条とか、そのほかの場合における損害賠償という意味ではなくして、国の一般政策として当然これは行なうべきことでありますが、特に念のためにこれは書いてあるのでございます。
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○中曽根国務大臣 これは災害救助法もございましょうし、ともかく、戦争や内乱が起きた場合に、国が乱れていろいろな事故が起きる、そういう場合におけるいろいろな応急措置、その他全般が入るわけでありますので、今からどうというように限定するわけには参りません。少なくとも、災害救助法程度のことはやるという、最低限のことは言えると思いますが、それ以上は、そのときの情勢によって、政府なり国会なりがきめることになるだろうと思います。
--------------------------
○中曽根国務大臣 外国の立法例で、第十七条のようなものを置いたものはないのであります。しかし、日本の場合は、特に国民の皆さんが心配されるという関係があって、第十七条というのを置きました。さらに「報告及び意見書の提出」というような条文が第六章にございまして、第十九条「政府は、相当規模の原子力損害が生じた場合には、できる限りすみやかに、その損害の状況及びこの法律に基づいて政府のとった措置を国会に報告しなければならない。」また、第二項に「政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力委員会が損害の処理及び損害の防止等に関する意見書を内閣総理大臣に提出したときは、これを国会に提出しなければならない。」こういう条文を特に置きました。これは各国の立法例にはございません。これはすべて国会に事態を報告して、国会の措置を仰げるようにしよう、国会は国民代表の機関でありますから、国家財政等とにらみ合わせて、国民の納得のいく措置をやっていただけるとも考えまして、条文を置いたのであります。茨城県の御要望の後段の方、異常、巨大というような場合まで、すべて国家が、法律上明記して、賠償に応ずるというようなところは書いてございませんけれども、それはほかの立法例にもございません。外国はすべて異常巨大の災害並びに社会的内乱という場合には免責されておりますので、大体外国の立法例にも従っておるのでございます
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○奧村(又)政府委員 この十七条の場合は、先ほど中曽根大臣の御答弁にもありましたように、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたもの」というのでありますから、原子力損害だけじゃなしに、あらゆるり災害が起こるという――十六条は原子力の損実賠償だけに限る、十七条は、ほかに一般の災害もあるわけでありまして、主として行政措置として行なうという意味で書かれてあるので、規定の性格が全然違っておる、かように存ずる次第であります。
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○奧村(又)政府委員 政府部内でその点についてまだ検討しておりませんが、この法律の趣旨からいきまして、十九条の規定は、主として十六条の規正を受けておるのでありまして、十七条はごらんの通り一般的な規定で、率直に言えば、この規定は法律にあってもなくても当然政府のなすべき規定でございますから、十九条は十六条を受けておる、かように私は読みます。もちろん、十九条もこれは含んでおる。しかし、主たるなには十六条であって、十九条の場合は、十七条ももちろん受けてはおりますが、十六条の方を主として受けておる、かように考えます。
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 昭和34年12月12日に,原子力災害補償専門部会長我妻栄から原子力委員会委員長中曽根康弘に答申が出された時点では,以下のように予定されていた。

・「原子力事業者の要求される損害賠償措置では損害賠償義務を履行しえない万一の場合には、原子力事業者に対して、国家補償をする必要がある。」
→原子力事業者の責任の限定

・「損害賠償措置をこえる損害が生じたときにその超過額について国家補償を行なう場合である。この場合には、損害の発生について原子力事業者に故意または重大な過失があるときにのみ、政府は求償権を有するものとする。」
→上の賠償を国家が補償した場合で,原子力事業者が悪意又は重過失なら国は求償できる。



 しかし,昭和36年に現実に原賠法が成立した時点では,先の国会答弁のような制度になっており,我妻栄が,以下のように嘆くことになった。

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・ジュリスト1961年10月15日号(No.236)9【特集】原子力損害補償 原子力二法の構想と問題点 我妻栄
「「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」に該当する事例は稀有であろう。しかし、その場合には、国は「被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする」というだけである(17条)被害者にとっては、まことに心細いものであろう。なるほど、台風・水害の災厄は他にもある。しかし、たまたまそこに原子炉があり、不幸にしてこれに事故を生じたとすれば、風水害だけの損害と原子炉に事故を生じたために増加した損害とは区別されるはずである。後者だけを別に取り扱っても、不都合があるとは考えられない。 そもそも「異常に巨大な……動乱」などはほとんどありえないと考えるのなら、何もわざわざ、補償はしない、国の救助に信頼せよなどと国民に不安を与えずに、国が補償すると気前よく出てもよいはずだろう。それができないのは、原子力事業者に責任のない事項について国が責任をもつことは考えられない、という、答申とは根本的に反した思想に立つからである。」

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 なお,電気事業連合会のサイトでは,以下のように説明されている(4/21現在)。

http://www.fepc.or.jp/faq/1189681_1457.html
「よくあるご質問
事故が発生した場合の損害を誰が補償するのか?賠償額は無制限なのか?わが国では、原子力発電所の運転等により原子力損害が生じた場合、原子力事業者がその損害を賠償することが、「原子力損害の賠償に関する法律」と「原子力損害賠償補償契約に関する法律」の二法により定められています。
この法律は、被害者の救済を確保するとともに、原子力事業者の負担を軽減するという、双方の利益に配慮している点が最大の特徴となっています。
原子力事業者は、同法にもとづき損害賠償措置として、保険会社との間で「原子力損害賠償責任保険契約」を、政府との間で「原子力損害賠償補償契約」を締結しており賠償措置額は1,200億円となっています。
原子力事業者が損害賠償措置額を超えた損害に対する賠償責任を果たせないような場合、あるいは原子力事業者の責任範囲外であるため損害賠償措置で補えない損害(わが国においては社会的動乱、異常に巨大な天災地変)については、国が原賠法上の援助、措置を行うことにより、被害者への補償を確約することで、被害者は確実な賠償または補償を得られます。 」


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■原子力損害関連判例

■原子力損害関連判例

〔風評被害,魚介類〕
①平成元年5月17日・名古屋高等裁判所金沢支部判決(判タ705号108頁)
 敦賀原発風評被害訴訟。昭和56年1月敦賀原発において,日本原子力発電が,放射性物質を漏洩させた事故に関するもの。事故事実の公表後,風評被害が広がり,水産市場関係者が,売上げ減少による損害の賠償を,日本原子力発電株式会社を訴えた。
「前認定のとおり,本件事故の発生とその公表及び報道を契機として,敦賀産の魚介類の価格が暴落し,取引量の低迷する現象が生じたものであるところ,敦賀湾内の浦底湾に放射能漏れが生じた場合,漏出量が数値的には安全でその旨公的発表がなされても,消費者が危険性を懸念し,敦賀湾産の魚介類を敬遠したくなる心理は,一般に是認でき,したがって,それによる敦賀湾周辺の魚介類の売上減少による関係業者の損害は,一定限度で事故と相当因果関係ある損害というべきである。」
「前認定のとおり,事故による影響かどうか必ずしも明らかではないものの,一部売上減少が生じたことが窺われるが,敦賀における消費者が,敦賀湾から遠く離れ,放射能汚染が全く考えられない金沢産の魚まで敬遠し,更にはもっと遠隔の物も食べたくないということになると,かかる心理状態は,一般には是認できるものではなく,事故を契機とする消費者の心情的な判断の結果であり,事故の直接の結果とは認めがたい。金沢産の魚も心情的には不安であるとの理由で賠償を命ずるものとすれば,金沢における消費の低下も是認しなければならなくなり,損害範囲はいたずらに拡大することとなる。したがって,右控訴人らの売上高が本件事故後減少したとしても,消費者の個別的心理状態が介在した結果であり,しかも,安全であっても食べないといった,極めて主観的な心理状態であって,同一条件のもとで,常に同様の状態になるとは言い難く,また一般的にも予見可能性があったともいえない。すると,本件浦底湾における人体に影響のない微量の放射能漏れと敦賀の消費者の金沢産魚介類の買い控えとの間には,相当因果関係はないというべきである。」



〔風評被害,土地価格〕
 宅地販売業者が,売却予定で宅地造成中に,JCOの臨界事故が起き,予定価格での売却ができなかったとして,原賠法等を根拠に損害賠償請求した事例。 
①平成16年9月27日東京地裁判決(判タ1195号263頁)
 原賠法3条1項の「原子力損害」の解釈として,土地価格の下落のような純粋経済損失も「原子力損害」に該当しうる余地を認めつつ,損害と相当因果関係の存在を否定し,請求を棄却した。(事案の特殊性として,裁判所の認定では売却時点では時価はほぼ回復していたこと,事故現場から約3キロの地点であるが汚染はなかったこと,売り出し時点でJCO東海事業所が閉鎖され同所が再度事故を起こす危険がなくなっていたこと等がある)
「この点,原賠法2条2項,3条1項の「損害」とは,「原子炉の運転等」,「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用」と相当因果関係があるすぎり,すべての損害を含むと解すべきであって,条文上何らの限定が加えられていないことから,被告が主張するような人身損害又は物に対する損害を伴わない損害(純粋経済損失)を除外する根拠はないというべきである。」
「なお,原賠法2条2項,3条1項の「損害」を前提のように解する以上,原告が被告の「原子炉の運転等」以外を加害原因として主張していない本件においては,原賠法3条1項による無過失損害賠償責任と別個に民法709条による賠償責任が成立する余地はなく,原賠法3条に基づく請求(主位的請求)が認められない場合には,民法709条に基づく請求(予備的請求)も認められない。」
「本件臨界事故が,東海村の住民に本件土地の放射能汚染のおそれや,被告が再び同様の事故を起こすおそれを意識させ,その結果,本件土地の価格の下落が生じたのであれば,その下落は,本件臨界事故と相当因果関係のある損害につながるということができるが,本件臨界事故が,被告東海営業所が存在することから生じる危険性ではなく,原子力関連施設が存在すること自体から生じる一般的な危険性を再認識させることになり,それが本件土地の価格の下落の主たる原因であるとすると,原子力関連施設の存在すること自体から生じる危険性は,本件臨界事故の前後を通じて変化があったわけではないから,被告が主張するとおり,本件臨界事故と本件土地の価格の下落との間に相当因果関係を認めることはできない。(そのような一般的な危険性の再認識は,東海村だけに限らず,日本各地の原子力施設の存在する土地に同様に生じうる。)」

②平成17年9月21日東京高裁判決(判時1914号95頁)
 ①の控訴審判決。控訴棄却。
一般的危険性が再認識される原子力関連施設の存在状況は,本件臨界事故の前後を通じて変化があったわけではないのであり,そうすると,本件臨界事故と控訴人主張の本件土地の価格の下落損失との間に相当因果関係があるとまで認めることはできない」
「本件証拠関係から認められる被控訴人東海事業所と本件土地との距離ないし位置関係,本件臨界事故の発生状況,本件臨界事故発生後に東海村及び茨城県によって行われた避難勧告等の内容,その後の臨界の終息及びそれが確認されたこと,上記の避難勧告等の解除,本件臨界事故による食品,水,土壌汚染等に対する影響についてなされた茨城県等の検査結果とその公表,前示のような,被控訴人に他する原子力事業許可の取消処分,これに従い被控訴人東海事業所が原子力事業に起因する危険を引き起こす存在でなくなったこと,このような事態に対する一般の認識が広まり,住民の定住志向の回復がみとめられることなどの諸事情を総合して考えると,本件臨界事故と控訴人主張に係る下落損害との相当因果関係を認めるべき根拠と解することはできない」



〔風評被害,加工食品,納豆等〕
①平成15年6月24日・水戸地裁判決(判時1830号103頁)
 JCO臨界事故関係。風評被害により,水産加工会社が製品の取引を拒否され焼却処分せざるをえなかったとして損害賠償請求。損害及び相当因果関係否定。
「以上のとおり,原告の主張は,変遷しており,その内容も不自然であるのみならず,現主張に沿うかのような原告代表者及び証人甲野一郎の供述部分については,これを裏付けるに足りるだけの的確な客観的証拠はなく,かえって,これに反する証拠状況である以上,原告主張の損害があつたと認めることはできない。」「なお,付言するに,前記の点を措いても,原告は,製品や原料の転売が不可能であったと主張するが,原告が乙山社に対して更に取引を求めて交渉したり,当該品物の転売先を探す努力をした形跡は全くないのであり,そのような努力をしてもなお損失を被らざるを得なかったことを認めるに足りる証拠はないから,原告主張の損害には,本件事故との相当因果関係を認めることはできない。」

②平成18年2月27日・東京地裁判決(判タ1207号116頁)
 JCO臨界事故関係。納豆の風評被害。実際の商品に放射能汚染等はなかったが,臨界事故報道等があり悪風評が生じて売上げが減少。
「本件臨界事故によって消費者が納豆商品を買い控えるなどした結果,納豆業界全体の売上げが減少するという風評被害が生じていたものと認められるのであって,本件臨界事故発生と納豆業界全体の売上減少との間には一定限度で相当因果関係があるということができる。」
「もっとも,本件臨界事故後,一般消費者が納豆商品を買い控えるに至ったことが窺われるものの,それは一般消費者の個別的な心情に基づくものであり,放射線汚染という具体的な危険が存在しない商品であるのにもかかわらず,それが危険であるとして,上記商品を敬遠し買い控えるに至るという心理的状態に基づくものである以上,そこには一定の時間的限界があるというべきである。この時間的限界をどのように画すかは困難な問題であるが,それは一般消費者が上記のような心情を有することが反復可能性を有する期間,あるいは一般的に予見可能性があると認め得る期間に限定されるというべきである。」

③平成18年4月19日・東京地裁判決(判時1960号64頁)
 JCO臨界事故関係。納豆の風評被害。実際の商品に放射能汚染等はなかったが,臨界事故報道等があり悪風評が生じて売上げが減少。
「同法が,賠償されるべき損害の範囲について何ら限定を付していないことからすれば,当該事故と相当因果関係が認められる損害である限り,これを「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害」(同法3条1項)と認めて妨げないというべきであり,いわゆる風評被害について,これと別異に解すべき根拠はない。」
「そして、本件臨界事故現場から10キロ圏内の屋内退避要請地域については、放射線及び放射性物質の放出による健康影響はないものとされているほか、一部新聞記事にはその旨の報道が先行的になされていたこと、本件臨界事故直後の平成11年10月1日から同月5日にかけて、茨城県などによって事故現場周辺の農林水産物、水質、加工品等の安全性について調査が行われ、いずれも放射線ないし放射性物質による影響は認められない旨の結果が公表されていたこと、同月6日以降は、政府やJA茨木件中央会等もキャンペーンを行うなどして安全性のPR活動を行ったことが認められるが、原子力事故が放射線や放射能の放出といった目には見えない危険を伴うものであること、本件臨界事故が前記のとおり死傷者を出した重大なものでり、事故直後からマスコミで大々的に取り上げられていた(証拠として提出された新聞記事(甲27)を見ると、臨界事故の重大性を報じる記事は、その安全性を示す記事よりもはるかに大きく取り上げられており、このことからも、一般読者に事故の重大性に関する印象が強く伝わっていたことが推測される。)ことなどからすれば、本件臨界事故後、原告の納豆製品を含む茨木県産の加工品について安全性が確認され、その旨のPR活動がなされていたとしても、消費者ないし消費者の動向を反映した販売店において、事故現場から10キロメートル圏内の屋内退避要請地域にある本社工場を「生産者」と表示した原告の納豆製品の危険性を懸念して、これを敬遠し、取扱いを避けようとする心理は、一般に是認できるものであり、それによる原告の納豆製品の売上減少等は、本件臨界事故との相当因果関係が認められる限度で本件臨界事故による損害として認めることができるというべきである。」



〔風評被害,パチンコ店〕
①平成18年1月26日・東京地裁判決(判時1951号95頁)
 JCO臨界事故関係。風評被害により,パチンコ店の売上げ減少との主張。JCO側が,パチンコ店側に,仮払金(5850万円)の返還を求めた訴訟。損害を否定。
(事故前からの売上げの減少傾向を認定し)「そうである以上、対前年又は対前年同期で比較すれば、本件事故の前後で被告の売上げ等が減少したことは認められるものの、この減少が本件事故に起因するものとする根拠には欠けると見るのが相当である。すなわち、被告の売上げ等の減少と本件事故との間に相当因果関係を認めることはできない。
 したがって、本件事故についての被告の原告に対する不法行為に基づく損害賠償請求権は成立しない。
(3) この点につき、被告は、本件事故により損害が発生した旨主張する。
 確かに、一般的抽象的には、被告が主張するように本件事故により原告東海事業所から一定の範囲内(本件では、屋内退避勧告の発せられた10キロメートル圏内)に居住する住民が外出を控えることは社会生活の経験上あり得るところであり、この範囲と被告の各店舗の商圏が重なり合う部分が存在する場合には、その限度で被告の売上げの減少を観念することが可能である。この際、被告の店舗自体が屋内退避勧告の対象地域内に存在するか否かは必ずしも問題ではない。
 しかし、被告は、全体として又は各店舗の売上げ等の減少を主張立証するのみであり、屋内退避勧告の対象地域と各店舗の商圏との重なり合い等については何ら主張立証しない
。また、前記のとおり、全体として又は各店舗の売上げ等を見ても、全体的な売上げ等の減少傾向が見られる中で更に本件事故の影響による売上げ等の減少が生じたことを裏付けるに足りる証拠はない。」



〔原賠法と民法709条との関係等〕
①平成20年2月27日・水戸地裁判決(判タ1285号201頁)
 JCO臨界事故関係。近隣住民が被爆及びPTSD等健康被害で,JCO及びその親会社住友金属鉱山に対して,主位的に民法709条,予備的に原賠法3条による損害賠償請求をした。
「同法3条1項にいう「原子力損害」とは,「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用(これらを摂取し、又は吸入することにより人体に中毒及びその続発症を及ぼすものをいう。)により生じた損害」をいう(同法2条2項本文)ところ,原賠法その他の法令上,原賠法3条1項によって賠償されるべき損害の範囲に関する規定は何ら存在しないから,民法上の債務不履行ないし不法行為による損害賠償責任に関する一般原則に従って,「核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用」と相当因果関係がある損害の全てが原賠法3条1項により賠償されることになるものと解するのが相当である。」
「本件事故と相当因果関係がある損害が存在すれば,当該損害について,被告JCOに対して原賠法3条1項に基づいて賠償を請求することができるが,他方,同法4条1項が「前条の場合においては,同条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき原子力事業者以外の者は、その損害を賠償する責めに任じない。」として,原子力事業者以外の者の責任を負わせないことを明記しているため,前記核燃料物質の加工に関する原子力事業者には該当しない被告住友金属鉱山に対しては,原賠法上はもちろんのこと,民法を含むその他のいかなる法令によっても,当該損害の賠償を請求することはできない。」
「原賠法に規定する原子力損害の賠償責任は,原子力事業者に対して原子力損害に関する無過失責任を規定するなどした民法の損害賠償責任に関する規定の特則であり,民法上の債務不履行責任又は不法行為の責任発生要件に関する規定は適用を排除され,その類推適用の余地もないものであるから,本件事故による被爆と相当因果関係があるものとして損害賠償を請求する限りにおいては,原子力事業者に該当する被告JCOとの関係においても,民法上の不法行為に基づいて,賠償請求を認めることはできないというほかない。」

②平成21年5月14日・東京高裁判決(判時2066号54頁)
 ①の控訴審。原審同様,臨界事故と健康被害の相当因果関係否定し,控訴棄却。



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■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その8 国会審議

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その8 国会審議

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- 衆 - 科学技術振興対策特別委… - 9号
昭和36年04月12日
○杠政府委員 ただいまお尋ねの点の前半のことでございますが、ただいままで私たちが考えておりますのは、おそらくは、関東大震災ほどの地震はなかったのではなかろうかと考えます。しからば、ただいままでの関東大震災よりも多少とも規模の大きい地震があった場合には、この異常に巨大な天災地変と言うかどうかという後半のお尋ねだろうと思うのでございますが、そのことにつきましては、現在、コールダーホール等の審査におきまして、先ほど来問題になっておりますように、耐震ということに十分に気をつけておりまして、関東大地震の二倍ないしは三倍程度の地震がありましても耐え得る安全度というような審査をいたしております。従いまして、関東大地震よりも多少とも出ればというようなふうにわれわれは考えておりませんで、実に想像を絶すると申しましょうか、先ほど申し上げましたように、安全審査の点でも、関東大地震の二倍ないし三倍の地震に耐え得るという非常な安全度をとっておるわけであります。それさえももっと飛び越えるような大きな地震というふうにお考えいただけばいいのではなかろうか・われわれはそのように解釈いたしております。

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- 衆 - 科学技術振興対策特別委… - 14号
昭和36年04月26日
○田中(武)委員 そういたしますと、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」ということは、俗に言う不可抗力よりかもつと範囲の狭いものですね。
○我妻参考人 おっしゃる通りです。不可抗力という言葉にもずいぶんいろいろ議論があるようですけれども、超不可抗力ということなんですね。ほとんど発生しないだろう。ほとんど発生しないようなことなら、何も書く必要はないだろうということにもなりますけれども、これは先ほどから繰り返して申しますように、無過失責任は私企業の責任を中心として発達したものですから、いかに無過失責任を負わせるにしても、人類の予想していないような大きなものが生じたときには責任がないといっておかなくちゃ、つじつまが合わないじゃないか、そういう考えが出てくるだろうと私は解釈しております。しかし、実際問題としては問題になるかもしれませんけれども、おそらく大したことはないだろう。
○田中(武)委員 そういたしますと、その文句の法律的解釈、これを俗に言うなら、予想といいますか、考えられないような事態、こういうように理解してよろしいのですか。
○我妻参考人 ええ、その通りです。

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- 参 - 商工委員会 - 25号
昭和36年05月23日
○政府委員(杠文吉君)
ここで異常に巨大な天災地変、すなわち関東大震災を例にとりますならば、それの三倍も四倍もに当たるような、そのような天災地変等がございましたおり、それによって生ずるところの損害がもしも原子力施設から生じたという場合には、原子力事業者に責任を負わすということはあまりにも過酷に失しますので、そのような際には、超不可抗力というような考え方から、原子力事業者を免れさせる。

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- 参 - 商工委員会 - 27号
昭和36年05月30日
○参考人(加藤一郎君) 加藤でございます。
第二の問題といたしまして、その場合の免責事由をどこまで認めるかということがございます。この法案では、三条一項ただし書きにおきまして、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」というものを免責事由としてあげております。この点は、ともかく原子炉のように非常に大きな損害が起こる危険のある場合には、今までのところから予想し得るようなものは全部予想して、原子炉の設定その他の措置をしなければならない。従って、普通の、いわゆる不可抗力といわれるものについて、広く免責を認める必要はないわけであります。むしろ今まで予想されたものについては万全の措置を講じて、そこから生じた損害は全部賠償させるという態勢が必要であります。そこで、たとえばここでいう「巨大な天災地変」ということの解釈といたしましても、よくわが国では地震が問題になりますが、今まで出てきたわが国最大の地震にはもちろん耐え得るものでなければならない。さらにそれから、今後も、今までの最大限度を越えるような地震が起こることもあり得るわけですから、そこにさらに余裕を見まして、簡単に言いますと、関東大震災の二倍あるいは三倍程度のものには耐え得るような、そういう原子炉を作らなければならない。逆に言いますと、そこまでは免責事由にならないのでありまして、もう人間の想像を越えるような非常に大きな天災地変が起こった場合にだけ、初めて免責を認めるということになると思われます。そういう意味で、これが「異常に巨大な」という形容詞を使っているのは適当な限定方法ではないだろうかと思われます。これは、結局、保険ではカバーできないことになりますので、あとで出ます政府が十七条によって災害救助を行なうことになるわけであります。

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- 参 - 科学技術振興対策特別委… - 13号
昭和54年06月01日
○政府委員(山野正登君) これは日本の歴史上余り例を見ないような大地震、大噴火あるいは大風水災等を指しておるというふうに考えておるわけでございまして、たとえて申しますと、関東大震災と申しますのは、巨大ではございますが、異常に巨大とは考えていないわけでございまして、こういったふうなものを相当程度上回るものというふうに考えております。

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- 衆 - 法務委員会 - 4号
平成23年03月30日
○加藤政府参考人 御説明いたします。
 御指摘の原子力損害の賠償に関する法律第三条第一項にただし書きがございまして、そこには異常に巨大な天災地変に関する規定がございます。
 これにつきましては、昭和三十六年の法案提出時の国会審議がございまして、その中で、超不可抗力であり、全く想像を絶するような事態であるというような説明がされてございまして、これは、原子力損害につきましては一義的には原子力事業者が責任を負うべきであるという趣旨であるというふうに考えてございます。
 したがいまして、こういう考え方でございまして、賠償に関しましては確定的なことを申し上げる段階ではございませんけれども、いずれにしましても、法律の趣旨、目的に沿いまして、被害者の方々の保護に全力、万全を尽くしてまいりたいと考えてございます。
○稲田委員 では、例外規定には当たらないという判断ですか。そこだけちょっとお伺いいたします。
○加藤政府参考人 現在、詳細につきましては関係部局と検討してございますけれども、原子力損害につきましては、一義的には原子力事業者が責任を負うべきものであるというふうに考えてございます。

--------------------------------
- 衆 - 経済産業委員会 - 3号
平成23年04月06日
○加藤政府参考人 御説明いたします。
 二点目の御指摘でございます天災地変の点でございますけれども、これに関しましては、原子力損害の賠償に関する法律第三条一項に御指摘の「異常に巨大な天災地変」がございますが、これに関しましては、昭和三十六年にこの法律を提案しまして国会審議で御議論いただいたときに、この天災地変につきましては、超不可抗力あるいは全く想像を絶するような事態というような御説明がなされてございます。これは、原子力損害につきましては一義的には原子力事業者が責任を負うべきであるという趣旨であるというふうに考えてございまして、今回の原子力発電所の事故による損害につきましても、一義的には原子力事業者でございます東京電力が責任を負うべきものであると考えてございます。
 今後、先ほど御説明したような損害賠償法の趣旨、目的に沿いまして、被害者の保護に万全を期してまいりたいと考えてございます。

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2011-04-19 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■2条「原子力損害」の意味・範囲 その14 計画停電による損失

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その14 計画停電による損失

 今回の計画停電で,何らかの損失を被った人が,東電に対して,何らかの請求ができないか検討してみる。ただし,未だ原発事故は終息せず,事実関係も不明である。このため以下は,全て仮定の話であり,特に原賠法以外の責任については,東電側に,今回の計画停電等について,なんらかの落ち度が存在したことが前提である。

計画停電では,下記のとおり,概ね2~3週間ほど混乱があっただろうか。
3月11日 震災津波
3月13日 14日からの計画停電アナウンス
3月14,15日 停電なし
3月16日 停電あり
その後,有ったり無かったり,混乱
4月8日 計画停電原則停止宣言?

【停電による損害】

(契約関係の有無)
・東電と電気供給契約を締結している者
→原賠法3条の賠償責任→過失立証不要,東電は原則無過失又は不可抗力の抗弁もできず
→民法415条の債務不履行責任→過失立証不要,東電が不可抗力又は無過失立証要す
→民法709条の不法行為責任→過失立証必要
・東電と電気供給契約を締結していない者
→原賠法3条の賠償責任
→民法709条の不法行為責任

(現実の停電の有無)
・現実の停電での被害
・停電予定アナウンスでの被害




【原発事故を起点として考えるパターン】

1 原賠法上の責任
 まず,今回の計画停電による損害を,原発事故を起点として考えると,この損害が類型として「原子力損害」に該当しうるかが問題となる。「原子力損害」に該当しうる場合は,相当因果関係のある損害といえる限り,東電側の過失の有無にかかわらず,賠償請求できることになる。
 「原子力損害」の解釈については、こちら。http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-16.html 
まず、「原子力損害」の意味を、2条2項の字義どおり,核燃料物質の原子核分裂の過程の作用又は核燃料物質等の放射線の作用若しくは毒性的作用により生じた損害として、狭く考えていく限定説では、計画停電による損失は、「原子力損害」には当たらないことになろう。
 これに対して、いくつかの下級審判例のように、原子炉の運転等(2条1項)により発生した損害で,2条3項の「作用」と相当因果関係あるもの全てを含むと広く捉える説では、「原子力損害」に該当する可能性がある。
 相当因果関係は、一般の社会通念上、その原因があれば、その結果が生じることが、通常といえるかという観点で判断される。
 そこで,福島第一原発の事故があれば,通常,電力不足になって,不可避的に計画停電に陥るということであれば,相当因果関係は肯定されよう。しかし,福島第一の事故があろうが無かろうが関係なく,大地震と大津波で,火力発電所を含む他の多数の発電所の停止があって,主としてそちらが理由で,必然的に発電量不足が発生し,計画停電に至ったような場合には,福島第一の原発事故があれば,計画停電が生じることが通常であるとはいえないとして,裁判では相当因果関係が否定されるかもしれない。
 また,そうでなくても、原賠法について,今までの判例で扱われた事例は、放射線による身体の障害、原発事故によるPTSD等精神的損害、危険性認識による近隣土地の価値の下落、漁業や加工食品への風評被害等が問題となったものであり、これらに共通するのは、放射性物質の危険性が前提で、その物理的又は精神的影響により発生した損害であって、計画停電による損失をこれらと同様に考えてよいのかは問題である。そもそも原賠法3条は、危険責任の法理に基礎を置くものであることから、核燃料物質の特殊な危険性から、かなり遠い損害であるこういつた損害までは、「作用」(2条2項)によるものとは言えないとして、無限定説に立った場合でも、「原子力損害」には当たらないとされる可能性もある。

2 債務不履行責任
 これは契約上の責任の追及であって,債務不履行(停電等)がある以上,起点を問題とする必要がないので後述。
 なお、上で「原子力損害」に該当すると考えた場合に、契約上の責任も問えるか否か問題となるが、原賠法が不法行為の特則であるという理由で民法709条を排除するとすれば、この場合、債務不履行責任の追及を否定する理由はないと思われる。〔ただし,平成20年2月27日・水戸地裁判決では,原賠法で,債務不履行責任に関する規定も排除するような判決文になっている。〕

3 不法行為責任
 まず,原賠法の「原子力損害」に該当する場合には,判例上は,原賠法以外に,民法の不法行為責任を別途問題とできない(水戸地裁平20年2月27日判決判タ1285号201頁)。
 停電による損失を「原子力損害」以外のものとする場合は,民法709条の不法行為責任が問題となうる。そしてこの場合,原発事故について,東電側の故意又は過失と,原発事故と損害との間の相当因果関係の立証が必要になり,先に述べたのと,同様の問題となり,福島第一の事故があろうが無かろうが関係なく,大地震と大津波で,火力発電所を含む他の多数の発電所の停止があって,主としてそちらが理由で,必然的に発電量不足が発生し,計画停電に至ったような場合には,福島第一の原発事故があれば,計画停電が生じることが通常であるとはいえないとして,裁判では相当因果関係が否定されるかもしれない。



【計画停電を起点として考えるパターン】

1 原賠法上の責任
 計画停電自体は,原賠法2条1項の「原子炉の運転等」に該当しないので,ここを起点とする限り,原賠法上の責任追及はできない。

2 債務不履行責任
 これは計画停電ないしその判断に落ち度あったとして,電気供給契約に基づく契約上の責任を追及するものである。
 東電の電気供給約款(平成22年10月12日)には以下のように書かれてある。〔なお工場等の大口需要家との契約は別ものと思われる。〕

----------------------
40 供給の中止または使用の制限もしくは中止
(1) 当社は,次の場合には,供給時間中に電気の供給を中止し,またはお客さまに電気の使用を制限し,もしくは中止していただくことがあります。
イ異常渇水等により電気の需給上やむをえない場合
ロ当社の電気工作物に故障が生じ,または故障が生ずるおそれがある場合
ハ当社の電気工作物の修繕,変更その他の工事上やむをえない場合
ニ非常変災の場合
ホその他保安上必要がある場合
(2) (1)の場合には,当社は,あらかじめその旨を広告その他によってお客さまにお知らせいたします。ただし,緊急やむをえない場合は,この限りではありません。
42 損害賠償の免責
(1) 40(供給の中止または使用の制限もしくは中止)(1)によって電気の供給を中止し,または電気の使用を制限し,もしくは中止した場合で,それが当社の責めとならない理由によるものであるときには,当社は,お客さまの受けた損害について賠償の責めを負いません。
(2) 36(供給の停止)によって電気の供給を停止した場合または48(解約等)によって需給契約を解約した場合もしくは需給契約が消滅した場合には,当社は,お客さまの受けた損害について賠償の責めを負いません。
(3) 漏電その他の事故が生じた場合で,それが当社の責めとならない理由によるものであるときには,当社は,お客さまの受けた損害について賠償の責めを負いません。
-----------------------

 今回の計画停電が,電気事業法27条によるものではなく,東電の自主的なものであるとすると,その根拠は,上の約款の40条(1)ということになろう。
 この場合,同約款42条,「それが当社の責めとならない理由によるものであるときには,当社は,お客さまの受けた損害について賠償の責めを負いません」とあるので,これは東電の債務不履行について東電に帰責事由がある場合には,賠償責任を負うことを前提とするもので,民法の規定(民法415条)の確認にすぎない。

 事実関係が不明なので,どういう債務不履行がありうるのか考えてみる。

A 客観的に電力不足だった
 →履行不能
 ※不能に至った経緯(発電所の防災対策等に問題?)に,過失が無かったか否かが問題。

B 客観的には電力不足ではなかった
 B1現実に停電された
 →履行遅滞?不能?
 ※そもそも停電実施の判断になんらかの落ち度? 節電の呼びかけで十分だった?
 B2アナウンスだけで現実には停電されなかったが迷惑被った
 →不完全履行?
 ※実施判断および計画に落ち度?
 
 上のどの類型でいくかによって,東電側のどの落ち度(故意又は過失)を突いていくかが異なるが,いずれにしても債務不履行がある以上は,東電側が,計画停電について帰責性なきこと(無過失)の立証をしなければならない。

 なお,どの場合でも,計画停電ないしそのアナウンスと損害との間の相当因果関係の立証は必要である。原発事故を起点にしなくてよい。損害内容によるが計画停電(ないしそのアナウンス)と損害との相当因果関係は比較的容易に立証できそう。あとは東電が無過失ないし不可抗力の抗弁を出してきて,それが認められる否かで勝敗が決まるだろう。

3 不法行為責任
 電気供給契約当事者でなくても,請求可能性がある。ただし,2の債務不履行責任の場合と異なり,請求する側が,東電の故意又は過失を立証しなければならない。それ以外はほぼ同様。
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■2条「原子力損害」の意味・範囲 その13 風評被害6 地価の下落

■2条「原子力損害」の意味・範囲 その13 風評被害6 地価の下落

原発事故と土地価格の低下

(1)汚染がひどく長期間住めない,あるいは土地改良に莫大な費用がかかる。
→地価の低下が当然予想され「原子力損害」といえる。
→事実上売却不能で事故時の地価全部が損害?

(2)汚染がひどいが一定期間経過後に戻って以前と同じく健康に生活できる。
→地価の低下が当然予想され「原子力損害」といえる。
→損害額をどのように認定すべきか?。使用価値×期間?
→しかし,汚染が止んでも,一旦汚染されたということから,その後も忌避される可能性あり。
※風評被害の問題と同様に考える?。

(3)汚染が軽く住んでいても健康に全く問題はない。
→微量といえども汚染があることから,土地が忌避される可能性あり
※風評被害の問題?

(4)近隣ではあるが放射性物質による汚染が全くないもの。
※風評被害の問題

(5)遠方の他の原発施設の付近の土地
※風評被害の問題

※風評被害(考え方http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-44.html
 上の(2)から(5)までの場合で,現実に地価の低下がおきた場合にどのように考えるのかが問題となろう。
 原発事故と地価低下との相当因果関係について,その土地を忌避するかどうかを,一般通常人を基準とする説に立ち,科学的に安全である以上,そのような忌避は特殊な事情であるとして相当因果関係が否定される可能性がある。→地価下落は損害認定されない?
 あるいは,汚染された程度や,原発との距離とか,ひどい汚染土地に隣接するとか,その他諸般の事情を考慮して,一般通常人から見て,そのような忌避が一般に是認されるものであるとされると,原発事故と相当因果関係のある地価の下落として,「原子力損害」と認定される可能性もあるのか?。
 なお、(5)の場合は、下の判例のような判断によると、「原子力関連施設が存在すること自体から生じる一般的な危険性の再認識」に過ぎないとして、相当因果関係が否定され、「原子力損害」には該当しないことになろう。


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〔判例〕
 業者が,売却予定で宅地造成中に,JCOの臨界事故が起き,予定価格での売却ができなったとして,原賠法等を根拠に損害賠償請求した事例
①平成16年9月27日東京地裁判決(判タ1195号263頁)
 原賠法3条1項の「原子力損害」の解釈として,土地価格の下落のような純粋経済損失も「原子力損害」に該当しうる余地を認めつつ,損害と相当因果関係の存在を否定し,請求を棄却した。(事案の特殊性として,裁判所の認定では売却時点では時価はほぼ回復していたこと,事故現場から約3キロの地点であるが汚染はなかったこと,売り出し時点でJCO東海事業所が閉鎖され同所が再度事故を起こす危険がなくなっていたこと等がある)
「本件臨界事故が,東海村の住民に本件土地の放射能汚染のおそれや,被告が再び同様の事故を起こすおそれを意識させ,その結果,本件土地の価格の下落が生じたのであれば,その下落は,本件臨界事故と相当因果関係のある損害につながるということができるが,本件臨界事故が,被告東海営業所が存在することから生じる危険性ではなく,原子力関連施設が存在すること自体から生じる一般的な危険性を再認識させることになり,それが本件土地の価格の下落の主たる原因であるとすると,原子力関連施設の存在すること自体から生じる危険性は,本件臨界事故の前後を通じて変化があったわけではないから,被告が主張するとおり,本件臨界事故と本件土地の価格の下落との間に相当因果関係を認めることはできない。(そのような一般的な危険性の再認識は,東海村だけに限らず,日本各地の原子力施設の存在する土地に同様に生じうる。)」

②平成17年9月21日東京高裁判決(判時1914号95頁)
 ①の控訴審判決。控訴棄却。
「一般的危険性が再認識される原子力関連施設の存在状況は,本件臨界事故の前後を通じて変化があったわけではないのであり,そうすると,本件臨界事故と控訴人主張の本件土地の価格の下落損失との間に相当因果関係があるとまで認めることはできない」
「本件証拠関係から認められる被控訴人東海事業所と本件土地との距離ないし位置関係,本件臨界事故の発生状況,本件臨界事故発生後に東海村及び茨城県によって行われた避難勧告等の内容,その後の臨界の終息及びそれが確認されたこと,上記の避難勧告等の解除,本件臨界事故による食品,水,土壌汚染等に対する影響についてなされた茨城県等の検査結果とその公表,前示のような,被控訴人に他する原子力事業許可の取消処分,これに従い被控訴人東海事業所が原子力事業に起因する危険を引き起こす存在でなくなったこと,このような事態に対する一般の認識が広まり,住民の定住志向の回復がみとめられることなどの諸事情を総合して考えると,本件臨界事故と控訴人主張に係る下落損害との相当因果関係を認めるべき根拠と解することはできない」

-----------------------------

上のJCO事故の控訴審判例で類推すると

 福島第一原発について,原発事故が終息し,避難勧告が解除され,現場の放射性物質が全て処理され,政府によって安全宣言がなされ,廃炉等によって再び同様の事故が起きる危険性がなくなり,水や食品,土壌等について,放射能汚染か無いことが自治体等の検査によって確認され,そのような事態に対する一般の認識が広まるに至っている場合には,その時点で,仮に何らかの理由で地価が低下していても,それは原発事故と相当因果関係ある損害とは言えないということになるのであろうか。
 しかし,今回の事故と,比較的短期間(2ヶ月程度)で安全宣言がなされ,汚染も今回ほどひどくは漏れなかったJCO事故とでは,全く様相が異なってくるのではないか。



なおJCO事故のついて原子力損害調査研究会の損害認定指針は以下の通り
------------------------------------
5[財物汚損]
(指針)
 現実に発生した以下のものについては、損害と認められる。
 I)  動産については、当該動産が本件事故の発生当時茨城県内にあり、その種類、性質及び取引態様等から、平均的・一般的な人の認識を基準として、本件事故により当該財物の価値の全部又は一部が失われたものと認められる場合には、現実に価値を喪失し又は減少した部分について損害と認められる。
 II)  不動産については、i)売却予定のない所有不動産の価値が下落したことを理由とする請求については、現実の損害発生を認めることはできず、賠償の対象とは認められない。
ii)不動産売買契約の解約、不動産を担保とする融資の拒絶又は売却予定価格の値下げを理由とする請求については、請求者の側が、当該不動産が屋内退避勧告のなされた区域内にあること、その不動産取引について既に売買契約等が締結されているか締結の可能性が極めて高い状況であり、対価額等も確定しているか確定しつつあること、平成11年11月末までに生じた解約や値下げであり、これらに応じざるを得なかった相当な事由があったこと、更に解約の場合には当該不動産を緊急に売却処分せざるを得なかった相当な事由があったこと、その解約や値下げが本件事故を理由とするものであること、当該請求の合理性(損害の発生と損害額)を立証した場合には、賠償が認められる余地がある。
iii)賃料の減額を行ったこと又は本件事故後に賃貸借契約を解約されたことを理由とする請求については、請求者の側が、当該賃貸不動産が屋内退避勧告のなされた区域内にあること、現に賃貸借契約が締結されていたこと、平成11年11月末までに賃貸借契約の解約又は賃料の減額がなされ、これらに応じざるを得なかった相当な事由があったこと、賃料の減額又は解約が本件事故を理由とするものであること、当該請求の合理性(損害の発生と損害額)を立証した場合には、賠償が認められる余地がある。
(備考)
 1)  I)については、前記4[検査費用(物)](備考)の1)に同じ。
 2)  II)のi)、ii)については、不動産の特殊性に由来する価格形成過程の複雑さ等にも十分配慮して、賠償の要否及び範囲を慎重に検討する必要がある。
 不動産の価格は、取引当事者の取得目的等に大きな影響を受けるものであり、これを一義的かつ客観的に把握することが非常に困難であることが多い。
 不動産の価格は、景気等からも大きな影響を受ける。そして、一般的な動産とは異なり、一度下落した価格が再び上昇することも十分にあり得る。
 不動産の価格が一時的に下落したとしても、当該不動産が滅失して利用可能性を喪失することはなく、これを廃棄する行動に出ることも考えられない。
 3)  II)のii)については、不動産の売却の予定がない以上損害が現実に発生しているとはいえないうえ、仮に価格が一時的に下落したとしても将来回復し又は上昇する可能性があること、本件事故による価値の下落分を一義的かつ客観的に把握できないこと、価格の下落が見られても、不動産自体の利用可能性は些かも失われないこと等からして、賠償の対象とすることは妥当でない。
 II)のii)については、当該価格で売却できることが確定していた又は確定しつつあった状況のもとで、本件事故の発生を理由に当該減額又は解約(合意解約)がなされたこと等の前記各事実を請求者が立証した場合には、賠償が認められる余地がある。これに対して、当該減額又は解約が本件事故の発生を理由とする旨を立証できな
い場合、当該価格で売却できる状況又は売却できつつある状況にあったことが確定していなかった場合、売却交渉が進行中であったが売買代金額等の売買条件が全く未確定であった場合等では、本件事故に起因する「損害」が発生したものと認めることは極めて困難である。
 II)のiii)についても、本件事故の発生を理由として賃貸借契約を解約又は賃料の減調額がなされ、これらに応じざるを得なかった相当な事由があったこと等の前記各事実が請求者によって立証された場合には、営業損害の考え方に準じて相当な期間の減収分について損害と認められる余地がある。
   4)  なお、損害が発生したと認められる場合であっても、賠償すべき損害額の算定にあたっては、損失の公平かつ適正な分担を図る見地から、具体的な事実関係に従って、過失相殺や原因競合等の法理論を適用すべき場合(例えば、その性質から廃棄の必要性が認められない動産を軽率な判断で廃棄してしまった場合など)もあり得る。

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■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その7 過失の競合と立証責任

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その7 過失の競合と立証責任

----------------------------

1「異常に巨大な天災地変」に該当しないとき→3条1項本文の責任あり
2「異常に巨大な天災地変」に該当するとき
(1)原子力事業者に過失なし→3条1項但書で免責
(2)原子力事業者に過失あり(「によつて生じた」の解釈?)
 A 過失があっても無くても当該原発事故が発生したといえるとき
 B 過失と災害が相まって当該原発事故が発生したといえるとき

-----------------------------

 上の2(2)のAとBの場合に,どう解釈するかが問題となる。
 
1 Aの場合
 この場合,原子力事業者の過失の有無にかかわらず,同一結果が生じたといえる以上,不可抗力性ははっきりしており,但書の適用による免責は認められることにろう(択一的因果関係?として,条件関係ないし相当因果関係の否定の問題として捉える余地?)。
 ただし,通常は,過失が存在し競合したような場合では,それが無き場合と全く同一の「その結果」が生じたといえる場面は少なく,過失が競合して損失が拡大しているような場合は,次ぎのBの場合に該当するはずである。

2 Bの場合
 原子力事業者の過失と自然災害が相まってその事故が発生したような場合どう考えるかが問題となる。
-------------- 
・原子力災害補償専門部会の答申(昭和34年12月)
「原子力事故による原子力損害については原子力事業者が無過失責任を負うものとし、きわめて特別の場合にのみ免責されるものとする」

・原子力委員会内定「原子力災害補償制度の確立について」(昭和35年3月)
「原子力損害については、その損害を生ぜしめた原子力事業者が無過失責任を負うものとし、不可抗力性の特に強い特別の場合にのみ免責されるものとする」

・衆議院国会審議(昭和35年5月17日)の中曽根趣旨説明
「無過失責任といたしましたのは、原子力の分野においては、未知の要素が含まれるという実情にかんがみ、原子力損害の発生について故意、過失の存在しない場合も考えられ、また、かりにこれらの要件が存在するといたしましても、その立証は事実上不可能と認められるからであり、一方、近代科学の所産である危険を内包する事業を営む者は、よって生ずる損害については故意、過失の有無を問わず責任を負うべしとして無過失責任を課している各国の例に徹しても妥当であると考えられるからであります。また、原子力事業が広範な産業の頂点に立つ総合産業でありますだけに、損害発生時における責任の帰属が不明確になる場合が予想されるのであります。それでは被害者の保護に欠けるばかりでなく、原子力事業に対する資材、役務等の供給が円滑を欠き、事業そのものの発達が阻害されることとなるおそれが強い点もあわせ考慮して責任の集中を行なったのであります。従ってまた、損害の発生が資材、役務の供給に原因するような場合にありましても、原子力事業者の求償権は原則としてこれらの者に故意がある場合に限って行使できるものとしたのであります。ただし、異常に巨大な天災地変等によって損害が生じた場合まで、原子力事業者に賠償責任を負わせますことは公平を失することとなりますので、このような不可抗力性の特に強い特別の場合に限り、事業者を免責することといたしたのであります」

・ジュリスト1961年10月15日号13頁(No.236)【特集】原子力損害補償 原子力災害補償をめぐって(座談会)我妻栄,鈴木竹雄,加藤一郎,井上亮,福田勝治,堀井清章,長崎正造,杉村敬一郎
(3条1項但書について)井上「これは無過失責任の原則を原子力事業者に適用したが,諸外国の例にもあるように不可抗力性の特に強い天災地変や社会的動乱の場合に,一体原子力事業者に最後まで賠償責任を負わすべきかどうかという点について,結論的にはこういう表現のただし書きをおいたのであります。」
-------------------

 立法経過を考慮すれば,3条1項但書は,原子力事業者に,重い無過失責任を課した一方で,特に不可抗力の強い場合に,例外的に免責するための規定を置いたものと理解されるはすで,過失と自然力が相まって当該原発事故が発生したような場合には,それは原子力事業者の過失が無ければ避けることができた事故ということになり,「不可抗力性の特に強い」(原子力災害補償専門部会の答申(昭和34年12月)等)場合とはいえず,また「異常に巨大な天災地変」には該当するが、当該事故は「によって生じたもの」とは言えないとして、但書の適用による免責はないことになろう。つまり、但書に該当する場合は,無過失責任の負担が緩和され,過失責任の原則に戻る、あるいは無過失の抗弁が許される状態に戻るという理解でよいのではなかろうか。
〔もっとも立法過程を見ると,「異常に巨大な天災地変」については,想像を絶するようなものと考えられていたようで,これは,そもそも過失など問題とならないほどの異常に巨大なものだと考えると,二つが相まってはじめて損害が生じるような、上のBのようなケースは存在しないのかもしれない。〕

3 立証責任の問題
 まず,原賠法3条1項本文との関係で,例外としての同条項但書がある以上,通常の文言の解釈としては,「異常に巨大な天災地変」の存在については,抗弁としてそれを主張する原子力事業者がその立証責任を負うはずである。
 そして「異常に巨大な天災地変」の存在が立証されたとして,無過失の立証,ないし過失があっても同事故となっていたことの立証を原子力事業者が負うべきか,あるいは但書の適用否定を主張し,損害賠償請求する側が,原子力事業者の過失を立証すべきかが問題となろう。
 この点,過失の競合の問題を,因果関係(条件関係+相当因果関係)の存在の問題と理解すると,異常に巨大な天災地変「によって生じた」(因果関係)ことの立証責任は,文理からして,但書適用を主張する側の原子力事業者が負うことになる。そうではなくて,純粋に過失の有無の問題として,通常の不法行為(民法709条)と同様に考えれば,その立証責任は賠償を請求する被害者側にあることになる。もっとも,立証責任の分担は,理論的に厳密に決定しうるものではなく,最終的には,法の趣旨(原賠法1条)や公平の理念等から,裁判所が判断するということになろう。

〔結論〕
・原子力事業者に有利な解釈
但書適用による免責が認められるには,原子力事業者が
①当該災害が「異常に巨大な天災地変」であること
②当該災害と当該原発事故との因果関係の存在
を立証すればよい。

・原子力事業者に不利な解釈
但書適用による免責が認められるには,原子力事業者が
①当該災害が「異常に巨大な天災地変」であること
②当該災害と当該原発事故との因果関係の存在
③原子力事業者の無過失(ないし過失の有無にかかわらず当該事故が発生したこと)
の立証を要する。

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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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