東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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■立法過程 その11 原子力事業従業員災害補償専門部会報告(昭和50年7月21日)

■立法過程 その11 原子力事業従業員災害補償専門部会報告(昭和50年7月21日)

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V20/N07/197503V20N07.html
原子力事業従業員災害補償専門部会報告書

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昭和50年7月21日
原子力委員会委員長 佐々木 義武 殿

原子力事業従業員災害補償専門部会部会長 金沢 良雄   

原子力事業従業員災害補償専門部会は、昭和46年12月1日以来16回にわたって、原子力事業従業員の原子力災害補償のために当面講ずべき施策について検討を行ってきました。今回その結果をとりまとめましたので、ここに報告いたします。

原子力事業従業員災害補償専門部会専門委員
部会長 金沢 良雄 成蹊大学法学部教授
五十嵐 一戌 理化学研究所労働組合員
石黒 秀治 動力炉・核燃料開発事業団労働組合員
石田 芳穂 日本原子力発電(株)常務取締役
岩波 千春 電気事業連合会専務理
(第1回~第15回)
藤本 得 電気事業連合会専務理事
(第16回)
甲元 二郎 全国電力労働組合連合会
竹下 守夫 一橋大学法学部教授
(第5回~第16回)
中井 斌 放射線医学総合研究所遺伝研究部長
長崎 正造 東京海上火災保険(株)副社長
野沢 喜平 日本ニュクリア・フュエル(株)常務取締役
萩沢 清彦 成蹊大学法学部教授
萩原 荘五 日本原子力保険プール運営委員長(第1回~第5回)
真崎 勝 日本原子力保険プール専務理事
(第6回~第16回)
村田 浩 日本原子力研究所副理事長
山下 久雄 慶応義塾大学医学部教授
吉沢 康雄 東京大学医学部教授
我妻 栄 東京大学名誉教授
(第1回~第13回)
茂串 俊 内閣法制局第三部長
成田 寿治 科学技術庁原子力局長
(第1回~第12回)
田宮 茂文 科学技術庁原子力局長
(第13回~第14回)
生田 豊朗 科学技術庁原子力局長
(第15回~第16回)
相沢 英之 大蔵省主計局長
(第1回~第12回)
橋口 収 大蔵省主計局長
(第13回~第14回)
竹内 道雄 大蔵省主計局長
(第15回~第16回)
近藤 道生 大蔵省銀行局長
(第1回~第5回)
吉田 太郎一 大蔵省銀行局長
(第6回~第14回)
高橋 英明 大蔵省銀行局長
(第15回~第16回)
高木 玄 厚生省官房長
(第1回~第5回)
曾根田 郁夫 厚生省官房長
(第6回~第14回)
石野 清治 厚生省官房長
(第15回~第16回)
小松 勇五郎 通商産業省官房長
(第1回~第5回)
和田 敏信 通商産業省官房長
(第6回~第12回)
井上 力 通商産業省資源エネルギー庁官房審議官
(第13回~第16回)
岡部 実夫 労働省労働基準局長
(第1回~第5回)
渡辺 健二 労働省労働基準局長
(第6回~第14回)
東村 金之助 労働省労働基準局長
(第15回~第16回)


はしがき
 原子力事業従業員が業務上被った原子力損害の賠償については、昭和37年10月に専門部会が設置され、昭和40年5月には講ずべき施策につき報告(以下「40年報告」という。)が出されているが、現況を考察すると残念ながらその趣旨が十分活かされているとは言いがたい。
 当専門部会は、40年報告を議論の前提として検討を進めたが、その結果、40年報告の内容は特に改める必要はなく、実行に移されるべきものであると考える。従って、関係各方面においても現時点の状況に即して40年報告の実現のため一層の努力を続けられることを希望するが、当面早急に講じられることが望ましい施策について結論を得たので報告する。

Ⅰ 認定に関する問題
1 現状
(1) 因果関係の推定
 因果関係の推定制、すなわち医学的に見て蓋然性が高い場合には業務と疾病の発生との間の因果関係を推定する制度(40年度報告ではみなし認定制と称し、その確立が望ましいとしている。)については、要は、医学的に見てどのような要件があれば必然性があるとみるかということであり、実際上の取扱いとしては、労働基準法施行規則第35条第4号に掲げる疾病の認定基準について定めた労働基準局長通達(いわゆる12症例)が制定され、認定権者はこれに準拠して判断しており、事実上12の症例については、業務起因性の判断の円滑をはかっている。
(2) 認定補助機関
 40年報告では、認定権者を補佐するため、専門家により構成された認定補助機関を設ける必要があるとしている。現在のところ、常設の認定補助機関は設けられていないが、業務上疾病の認定に当たっては、各都道府県労働基準局に非常勤医員として医師を配置し、これら医師の意見を聴くとともに、随時必要に応じ専門医の意見を聴いて処理することとし、さらにむずかしい事案については、本省へりん伺させ、本省においては斯界の専門家よりなる専門家会議を設け、事案の統一的な処理を行うこととしている。
2 問題点
(1) 因果関係の推定
 因果関係の推定は、現在、昭和38年の労働基準局長通達(いわゆる12症例)により運用されており、また12症例は、昭和38年以来改正されておらず、その後の医学の進歩に照らして現状では放射線被ばくに起因する業務上の疾病についての準拠すべき基準としては再検討を要すると考えられる。また、現実には12症例に入っていないものは申請し難いという意見もある。
(2) 認定補助機関
 次に認定補助機関についても現在までのところ常設の機関は設置されていない。このため、継続的な資料の収集、調査活動に欠ける点があり、また臨時に招集される専門家会議において認定に必要な作業を行うことは、迅速性の確保等という点で問題がある。
3 対策
 原子力損害、特に放射線障害は、その性質として症状の非特異性、潜伏性等を有するため、放射線被ばくと疾病との間の因果関係の立証が極めて困難な場合が多い。
 従って、当面次の施策によって対処することを提案する。
(1) 因果関係の推定
 因果関係の推定については、前述のように現在は認定権者の判断基準として、いわゆる12症例(認定基準)によって運用されているが、労働省に設置されている専門家会議で今日の医学の知見に基づきこの12症例の見直しを行っており、その速やかな結論を期待する。さらに、その後も認定基準を医学の進歩等に即応し内容のものとすることが必要である。
(2) 認定補助機関
 40年報告において述べられている常設の認定補助機関については、その位置づけ、構成及び行政との関係について種々検討すべき問題があり、今後とも引き続いて検討を要するが、問題は、基本的には既存の行政体制の充実整備に係るものである。当面、放射線医学総合研究所等において、調査研究をさらに推進することとし、その成果の活用をはかるべきである。

Ⅱ 被ばく線量の記録の問題
1 現状
 40年報告では、事業主の負担を軽くし、また労働者の健康管理を図る上からも、健康管理の記録の中央登録制度を適切な公的機関内に確立し、労働者の離職後は同機関においてその記録を保存させることが必要である旨述べられている。
 その後、昭和44年度に科学技術庁原子力局内に個人被曝線量等の登録管理調査検討会を設置し、中央登録の必要性並びにその方法及び内容についての基本的考え方を検討し、昭和45年3月一応の大綱をとりまとめた。
 その後、測定マニュアル策定検討会によるマニュアルの策定を経て、昭和47年2月に原子力局に中央管理に係る具体策を検討するために個人被曝登録管理調査検討会を設置し、中央管理の目的、効果、実施方法等につき検討を行い、昭和48年2月14日報告が提出されている等検討が進められてきているが、未だ制度そのものの実現をみていない。
2 問題点
 上記のとおり検討は進められてきているが制度が発足していないため、従業員が離職、転職した場合の一貫した被ばく線量の把握に困難さがある一方、現行の原子力関係法令上の取扱いとしては事業主が健康診断記録を永久保存しなくてはならないなどの問題点が未解決のまま残されている。
3 対策
 放射線被ばく線量等のデータは疾病の業務起因性の認定に際しての基本的要件であり、全国的規模で統一的に放射線被ばくを伴う業務に従事する者の被ばく線量が登録管理されることが理想であると考える。
 このための中央登録管理制度については、先の個人被曝登録管理調査検討会の報告によって、その基本的考え方、管理対象、処理方法等について一応の方向付けがなされているが、放射線被ばく線量等のデータの的確な把握については、被ばくの可能性のある全生活関係を網らしなければ実効を欠くおそれもあるので、行政的にも実効あるシステムの具体的な可能性を十分検討の上、できるだけ速やかに結論を得るべきである。

Ⅲ 補償体系について
1 現状
 40年報告では、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号。以下「賠償法」という。)を改正して従業員損害を対象とすることが適当でありその際にはまず労災保険の対象外及び超過額についてのみ賠償法で賠償するようにすべきである旨述べられている。しかし、昭和44年に設置された原子力損害賠償制度検討専門部会(注)は、労災保険制度が充実されてきているとともに原子力事業において労災保険上積みの労働協約等が行われる傾向にあること、また同一事業体内の他部門従業員とのバランス上の問題があること等の理由により、今後引き続き検討を進めることとし、当面賠償法を改正する必要はない旨答申で述べており、現在までこの点について賠償法の改正は行われていない。
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(注) この専門部会には、専門委員として、労働者側委員は入っていない。
2 問題点
 従業員損害が賠償法に含まれていないことの問題点は、40年報告に述べられているので重複をさけるが、その後、労災保険制度の充実化及び労働協約による上積み補償の普及等前進がみられるものの、労働協約による上積み補償等は事業者自身の経済的基盤に依存するものであり、保険等の経済的裏付けが無く、協約等の内容も事者業により差がある等の問題がある。
3 対策
 上記の問題点の解決のため、賠償法を改正し従業員損害も対象に含めることを基本的方針とすべきであると考える。その場合、労災保険制度による補償との関係は、他の民事賠償制度と労災保険との関係に準ずるものとするが、その運用に当たっては、労災保険の補償を超える部分について補償を行うようにするべきである。
 その理由は次のとおりである。
① 一般的に労災保険によって補償を受けられない損害、例えば物的損害等については労働者の場合も民法等の私法に委ねられており、その点に関しては労働者も一般人と同様の保護を受けているわけである。従って、原子力損害の特殊性に鑑み、原子力損害の賠償に関して私法上特別の法制度が設けられている以上、従業員についてのみその適用を排除することは必ずしも妥当ではないと考える。
② 労災保険によって補償を受けられない損害についてのみ賠償法を適用することにより、一般第三者に対する損害賠償措置額の減少を最小限におさえることが出来る。
③ 昭和46年10月に原子力賠償責任保険について従業員災害賠償責任担保特約が任意保険の形で付しうるようになったが、同特約は、労災保険の補償対象となる疾病について金額的な上積みを行うものであり、労災保険の補償対象とならない疾病は免責としている。従って補償体系として必ずしも十分といえない。




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2011-05-11 : ・立法過程資料 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■立法過程 その10 原子力事業従業員災害補償専門部会報告(昭和40年5月31日)

■立法過程 その10 原子力事業従業員災害補償専門部会報告(昭和40年5月31日)

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V10/N06/196502V10N06.HTML
原子力事業従業員災害補償専門部会報告

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 原子力委員会は、昭和37年10月「原子力事業従業員災害補償専門部会」を設置し、原子力事業従業員の原子力災害補償に万全を期するためどのような措置をとるべきかを諮問した。
 同部会は、審議の経過において2つの小委員会を設けて、11回にわたる検討を行なった結果、昭和40年5月31日に最終報告書を作成し、原子力委員会に提出した。
専門部会の報告書は次のとおりである。
原子力事業従業員の原子力災害補償に必要な措置について
-原子力事業従業員災害補償専門部会報告書-

昭和40年5月31日

原子力委員会委員長 愛知揆一殿

原子力事業従業員災害補償専門部会部会長 我妻 栄

 原子力事業従業員災害補償専門部会は、昭和37年10月以来11回にわたって、原子力事業従業員の原子力災害補償に必要な措置について検討を行なってきました。今回その結論をとりまとめましたので、ここに報告いたします。

原子力事業従業員災害補価専門部会専門委員
部会長 我妻 栄   法務省特別顧問
    青木 賢一  日本原子力発電(株)労組員
   ※青木 敏男  日本原子力研究所保健物理部長
    吾妻 光俊  一橋大学法学部教授
    天野  恕  日本原子力研究所労組員
    石井 照久  東京大学法学部教授
    石黒 拓爾  労働省労働基準局労災補償部長
    内古閑寅太郎 日本原子力事業(株)常務
    江藤 秀雄  放射線医学総合研究所障害基礎研究部長
   ※大野雄二郎  労働省労働基準局労災補償部長
    乙竹 虔三  通商産業省企業局次長
   ※尾村 偉久  厚生省公衆衛生局長
    寛  弘毅  千葉大学医学部教授
   ※片岡 文雄  中部電力(株)火力部長
    勝木 新次  明治生命厚生事業団体力医学研究所長
    金沢 良雄  北海道大学法学部教授
    坂部 弘之  労働省労働衛生研究所職業病部長
    豊島  陞  原子燃料公社副理事長
    星野 英一  東京大学法学部教授
    牧野 直文  日本原子力研究所保健物理部長
   ※馬郡  巌  通商産業省企業局参事官
   ※森  元行  関西電力(株)原子力部長
    森山  昭  三菱原子力工業(株)労組執行委員長
    山下 久雄  慶応大学医学部教授
    吉沢 康雄  東京大学医学部助教授
    吉田 正一  中部電力(株)火力部長若松 栄一 厚生省公衆衛生局長
          (※印は、最終報告書の決定までに交替した委員)

はしがき
 原子力委員会は原子力事業従業員の災害補償に係る問題を検討するため昭和36年11月「原子力事業従業員災害補償懇談会」を設置し、同懇談会は、昭和37年6月19日に報告書を提出したが、その報告書の中には、将来さらに検討する問題点も指摘されていた。原子力委員会は、この報告書から「原子事業従業員の原子力災害補償に必要な措置」についてさらに審議を行なう必要性を認め、昭和37年10月3日「原子力事業従業員災害補償専門部会」を新設してその審議を行なうこととした。
 本専門部会は、昭和37年10月3日の第1回会合以来11回にわたり、原子力事業従業員の災害補償に係る健康管理、認定、補償および法律上の問題に関する事項について活発な検討を行なってきた。特に第6回部会においては、それまでの審議結果に基づき、さらに専門的な検討を進めるために、「健康管理および認定」問題小委員会および「補償および法律」問題小委員会を設置し、それぞれの問題について検討を行なった。検討の結果は、第7回および第8回専門部会において報告された。われわれは、これらの小委員会の報告に基づき、さらに3回にわたって慎重な検討を行なった結果、諮問事項に関する結論を得たと考えるので、ここにその成果をとりまとめ、原子力委員会に対する報告書を作成した。

第1章 賠償法と労災法との関係
I 概論
 「原子力損害の賠償に関する法律」(昭和37年法律第147号、以下「賠償法」という。」では、原子力事業従業員の業務上受けた原子力損害をその賠償の対象から除外している。
 これに対し「原子力船運航者の責任に関する条約」(1962年、以下「ブラッセル条約」という。)および「原子力損害の民事責任に関するウィーン条約」(1963年、以下「ウィーン条約」という。)は、従業員の原子力損害をその対象に含めている。我々も、従業員損害を対象外とすることから生ずる次の不都合を除くため、賠償法を改正して、従業員損害を賠償の対象に含めることが適当であると考える
①上記両条約を批准する場合に抵触する事項がある。
②第三者に比べて従業員は、労災補償の対象外の損害および労災補償額をこえる損害の賠償については、原子力事業者に対し、民法上の原則により要求しなければならないこと、賠償額の確保が図られていないことという不利益を負うことになる。
③従業員損害については、事業者への責任の集中および事業者の求償権の制限が適用されず、事業者に対して設備、燃料等の資材および役務を提供する者に対して求償権が行使されることとなるので原子力関連産業の育成の見地から適当でない。
 しかし、現在、各国とも近い将来において、ウィーン条約の批准を行なうものと思われ、それと歩調を合わせて、わが国も本条約の批准を行なうことになるものと思われる。したがって、この点についても、本条約を批准するうえにおいて必要な賠償法の改正事項の中にとり入れて現行賠償法を改正することが望ましい。
 現行賠償法の改正に当っては、従業員損害をまず労災法により補償し、労災法の対象外およびその超過額についてのみ賠償法により賠償するようにすべきである。
 また、従業員損害を含めることにより、現行の損害賠償措置額を検討する必要があろうし、さらに、その受給手続等に関する具体的な取扱い方法についても明確にする必要があろう。

II 賠償法と労災法との関係について
(1)現状
(イ)賠償法は、その対象となる「原子力損害」の定義をしている第2条第2項において、ただし書により「当該原子力事業者の従業員の業務上受けた損害を除く」旨定めている。したがって、従業員の業務上受けた原子力損害(以下「従業員損害」という。)は、賠償法の対象から除外されているわけである。
(ロ)ブラッセル条約およびウィーン条約は、「原子力損害」の定義において、従業員損害を除外する旨の条項を有していない(ブラッセル条約第1条第7号、ウィーン条約第1条第1項K号)。両条約において従業員損害をその対象にしていることは、その文理からみても、それらの起草の過程における論義からみても明らかである。両条約はさらに、締約国の労働者災害補償制度が原子力損害の賠償を含む場合においては、その制度の受益者の権利、およびその制度に基づく事業者に対する求償権、代位権は、それらの条約の規定に従う限りで、締約国の法律に定めるところによるものとしている(ブラッセル条約第6条、ウィーン条約第9条第1項)。
(2)問題点
 賠償法が、従業員損害をその対象にしていないということは、より具体的には、つぎの2つの事項を意味する。
(イ)第1は、従業員損害に対する原子力事業者の責任の要件、賠償の額およびその支払いの確保に関する。 まず、責任の要件については、賠償法(第3条第1項)((および両条約(ブラッセル条約第2条第1項、ウィーン条約第4条第1項))は原子力事業者の無過失責任を定めている。従業員損害が賠償法から除外された場合には、まず労働災害補償制度(以下「労災法」という。)の対象となる損害に関する限り、同制度によることになるが、これにおいては、使用者の無過失責任を定めているので(たとえば、労働基準法第75条)、その給付額の範囲内では、賠償法(および両条約)と変らないわけである。
 しかし、賠償法は、賠償の対象となる損害の種類も賠償の額も限定していない(したがって民法の一般原則により、限定されない。)のに対して、労災法によると、第2章で詳しく述べるように、補償の対象とならない損害があることおよび労災法の補償が定額給付であることから問題が生ずる。これは、賠償額とその支払いの確保に関する問題であるが、労災法による補償の対象とならない損害、または労災法による補償の額を超える額(以下「超過額」という。)の損害を被った従業員は、その部分につき、一般原則に従った原子力事業者に対して賠償を請求することになる。
 この場合の事業者の責任を不法行為責任(民法第709条)と解するか、債務不履行責任(民法第415条)と解するかは、なお説の分れるところであるが、いずれにしても、過失責任であることは、ほぼ一致して認められているところである。したがって、従業員は、事業者の故意過失を証明する場合か(不法行為責任と解するとき)、少なくとも事業者が自己に故意過失のないことの証明ができない場合(債務不履行責任と解するとき)に始めて、これらの損害の賠償を得ることができるわけである。
 また、このようにして従業員が賠償を得るための法律上の要件をみたしても、現実にどの程度の賠償を得られるかは、また別個の問題である。これが先に賠償の支払の確保と呼んだ問題である。すなわち、賠償法(および両条約)によれば、原子力損害の賠償に充てるため一定の額の支払いが必ず得られるように措置(「損害賠償措置」と呼ばれる。)が講じられている(賠償法第6条以下、ブラッセル条約第3条第2項、ウィーン条約第2条)。ところが、その損害が賠償法の対象でないということは、被害者である従業員が他の債権者と全く同列において支払を受けることを意味する。
 したがって、原子力事業者が支払不能になれば、従業員は、あるいは賠償額の全額、あるいはその一部の支払を得られなくなるに至るのである。
 もっとも、現実に得られるべき賠償額については、賠償法(および条約)によらないと、必ずしも常に従業員が不利になるわけではない。何故ならば、賠償法(および条約)による損害賠償措置額は、一事故について一定である(ウィーン条約によれば、さらに、原子力事業者の一事故あたり責任額を500万米ドルを下らない額まで制限することができる(第5条)。)から大きな事故が発生した場合には、賠償法の損害賠償措置額から従業員1人の受け得るであろう賠償額が労災法によって同じ従業員の受け得るであろう給付額よりも少ないことがあり得るのである。もっとも、賠償法には、国の援助規定もあり(第16条)、また、賠償法によればそもそも原子力事業者の責任は無限であるから、従業員は、さらに多くを受けることも可能ではある。
 しかし、労災法によっても、超過額について事業者が無限責任を負うこと(前述した故意過失の要件をみたす限り)は全く同じであり、そこで述べたように法律上無限責任を負うということが必ずしも現実に全額の賠償を支払い得ることを意味しないので、このことは実際上あまり意味をもたない(なお、賠償法によると、政令で定める原子炉の運転等については、より少額の賠償措置額でよいことになっており、これを超える国の援助が国の義務でないこととあいまって、条約を批准する場合の問題となるが、ここでは扱わない。)。
 以上を要約すると、賠償法(または条約)によるのと労災法によるのとでは、ある特定の事故において、従業員が現実に得られる額に関する限り、従業員にとってどちらがより有利とは必ずしもいい難いのであるが、一般論としては、労災法による補償の対象とならない損害および超過額については、労災法によると、原子力事業者の責任の要件および賠償額の支払の確保という見地から、従業員にとって不利であるということがいえる(したがって、条約を批准するに当っては、この点で条約と抵触することができない。)。
(ロ)第2には、原子力損害に対する賠償責任の原子力事業者への集中、および第三者が原子力事故の発生に関与している場合これに対する原子力事業者の求償権の制限に関する。
 賠償法(第4条)(および条約(ブラッセル条約第2条第2項、ウィーン条約第2条第5項))によると原子力損害の賠償責任は、原子力事業者のみが負うものとしている(「責任集中の原則」と呼ばれる。)。
 もし、その損害が第三者の過失によって生じたものであっても、原子力事業者は、一定の限られた場合においてのみ、求償権を有するにすぎない(賠償法第5条、ブラッセル条約第2条第6項、ウィーン条約第10条。ただし、両条約と賠償法との間には差異があり、条約批准のさいにはこの点についても問題が生ずる。)。
 このことを従業員損害についてみるならば、これを賠償法(または条約)の対象とすることは、第三者の過失によって原子力損害が生じた場合につき、従業員も原子力事業に対しては賠償を請求できないこと、賠償した原子力事業者は、法律(または条約)の定める限られた範囲においてのみ求償権を有するにすぎないことを意味するのである。これに対し、従業員損害を賠償法の対象から除くということは、第三者の過失によって原子力損害が生じた場合につき、従業員は、責任集中の原則の適用を受けないから、一般原則に従って過失ある第三者に対し賠償を請求することができ(民法第709条)、従業員に対して賠償した原子力事業者は、過失ある第三者に対して求償することができ(民法第709条、第415条)、労災保険給付をした国は過失ある第三者に対して求償することができる(労災法第20条第1項)ことを意味する。
 これは、従業員損害を賠償法の対象にするとしないとによる大きな差異である。
 もっとも、この点は、第三者の利害に関することであるが、賠償法および両条約は、第三者、特に原子力事業者に対して設備、燃料等の資材および役務を供給する、いわゆる原子力関連産業の発達をもその目的の一つとして制定されたものであるから、欠くことのできない重要な点であり、このさい併せて改めることが望ましい(したがって、条約を批准する場合には、この点でも条約と抵触することができない。)。
(ハ)しかし、従業員損害を賠償法の対象とする場合においては、さらに、従業員損害についても一般第三者の受けた損害と全く同様に扱い、労災法上の給付を得させないものとするか、労災法上の給付は全く労災法の原則に従って得させることととし、賠償法上の賠償もこれと無関係に得ることができるようにするかなど、両法による補償の関係をどうするかが問題となる。
 ここにおいて考慮さるべき点は、賠償措置額に従業員損害に対する賠償分がくいこむことから生ずる被害者である従業員と、被害者である一般第三者との利害の調整、および原子力事業従業員を特に保護することにより他産業の従業員との均衡を失するのではないかという問題である。
 前者については、賠償措置額に対して従業員損害がくいこむことをできるだけ少なくするよう考慮すべきであるが、といって、従業員を(イ)に述べたように被害者である第三者よりも不利な地位においておくことは妥当でないから、一般第三者もある程度のくいこみは忍ぷべきである。後者については、賠償法が特に原子力損害について被害者の保護を図っている趣旨、および原子力事業の健全な発達を目的としている趣旨(第1条)から原子力事業の従業員に対し、この程度の取扱いをすることは妥当であるといえる。
(3)対策
(イ)(2)(イ)、(ロ)に掲げた2点は、実質的にみて原子力損害の被害者である従業員の保護という見地、および第三者、特に原子力事業者に対して資材、役務を供給するいわゆる原子力関連事業の健全な発達という見地から、現行法を改めることの望ましい点である。(さらに、条約を批准するためには、条約の保護しようとする利益を少なくとも、これと同程度以上に保護する内容をもった国内法を有しなければならないから、この観点からもわが国内法を改める必要がある。)。
 もっとも、その形式はいずれかの法律において、実質的に(2)(イ)、(ロ)に述べた事項が規定されればよく、必ずしも、賠償法の対象である「原子力損害」に従業員損害を含めるという形をとらなければならないものではない(条約との関連においても、これと実質的に同内容の規定が国内法のどこかにあればよいものと解される。)。
 しかし、上に掲げた内容を、他の法律の制定ないし現行法の修正によって盛りこむことは、立法技術上きわめて困難である。そしてこの目的は「原子力損害」に従業員損害を含ませること、換言すれば「原子力損害」の定義から、従業員損害を除外する旨のただし書を削除するという簡単な方法によって達成しうるから、これに越したことはなく、この方法によるべきである。
(ロ)(2)(ハ)に掲げた点については、現在労災法による補償の道が開かれ、かつ、その補償の資金確保の方法として、労災保険制度が存在する以上、原子力事業の従業員のみその利益から排除する必要もない。
 さらに、賠償法による損害賠償措置分にできるだけくいこまないようにするためにも、従業員は、まず労災法による補償な受けるべきものとし、労災法によって補償を受けられない損害(前述したように2種のものを含む。)についてのみ、賠償法による損害賠償措置から賠償を請求することができるものとすべきである。
 このためには、賠償法中に、その趣旨を定めた規定を設けることが必要であるが、このさい(2)の(ロ)で述べた要請をもみたすことを忘れないように注意する必要がある。例えば、「①原子力事業者の従業員の業務上受けた原子力損害については、原子力事業者は、労働基準法第75条以下による補償の責任を負うものとする。その支払のために、労働者災害補償保険法・・・・・・による保険が付せられているときは、原子力事業者はこれをもって補償にあてなければならない。②原子力事業の従業員は、業務上原子力損害を受けた場合においては、前項の規定によって填補されない損害にかぎり、第3条第1項によって原子力事業者に対し賠償を請求することができる。③前2項に定めるものを除き、原子力事業者の従業員の業務上受けた原子力損害についても、この法律の規定を適用する。」といったような規定が考えられよう。
 なお、労災法による補償の中に、賠償法(すなわち民法の一般原則)によっては得られない性質のもの、すなわち、労災法特有の補償を含むか否かは、判定するのが困難な問題である。もしこれを含むとすれば、労災法による補償のうち労災法特有のものを除いた部分で、賠償法(すなわち民法)上の損害額にみたないものにつき、賠償法による損害賠償措置から賠償を得られることとなる。しかし、この点は、判例、学説も一致せず、そもそもは労災法の解釈の問題であるので、ここで現在いずれかの立場をとり、賠償法でこれに触れることは妥当でない。
 また、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号〕による厚生年金は、恩給的性格をもち、賠償ないし補償的性格をもたないと考えられるけれども、労災保険との間で使用者(および国庫)の二重負担をさけるため併給調整を行なっているので、この点で賠償法と厚生年金保険との関係についてもさらに詳細な検討を要しよう。
(ハ)賠償法による損害賠償措置からの一般第三者に対する賠償金は、従業員損害を含めることによりそれだけ減少することになるが、(ロ)の措置をとることにより、それ程大きくはならないものと考える。
 しかし、現行の措置額は、従業員損害を含めないことを前提として定められたものであるから、従業員損害を含める場合には、従業員数等を考慮に入れて若干増額を行なうことについても考慮の余地があろう。

第2章労災法に関する事項
I 概論
 現行の労災法による保険給付は一応整っており、その水準は相当の程度に達しているが、なお、とくに原子力損害のみの問題ではないが、年金である障害補償の範囲の拡大および遺族補償費の年金化が検討されている。
 労災法は、従来その補償の対象として「労働能力の喪失または減少」による損害を補償するという考え方に立脚してきたが、その基本的考え方を改めて「人間らしい生活を営む能力の喪失または減少」として補償の対象の拡大を図り、放射線障害による業務起因性の立証される不姙症、流(早・死)産についても補償を行なう必要があろう。
 また、放射線障害の非特異性、潜在性等から、現行の労基法施行規則第35条第4号の主旨を推めて、有害放射線にさらされる業務の内容および病名を詳細に規定し、一定期間以上その業務に従事した場合には因果関係の証明を不要とするいわゆる「みなし認定制」の確立が望ましい。
 なお、現在の規則では、一度に25rem以上の被ばくを受けた者の取扱いが明確にされていないので、早い機会にその検討を行ない、これを明確にすべきである。また、この問題に関し、障害発生の防止上何らかの措置を要するような高度の放射線被ばくを労働者が受けた場合には、当該被ばく線量の負荷に伴う当該労働者の就業上の負担に対応する手だてについてもこれを検討する必要があろう。
 さらに、労災補償上の問題ではないが、障害発生前でも高度被ばくや、内部摂取の事実に対する予防的措置を特別な法的体制のもとで行なうことを考慮する必要があろうし、また、遺伝、胎児への影響の問題等についても大きな視野で、あるいは全社会保障制度という問題の中で解決を図る必要がある。

II 保険給付の水準について
(1)現状
 現行労災法による保険給付は、次のとおりである。
 a.療養補償費-必要な療養または療養の費用を傷病の転帰まで支給する。
 b.休業補償費-療養のため休養し、賃金を受けない期間1日につき平均賃金の60%を支給する。
 c.障害補償費-傷病がなおったとき身体に障害が存する場合その程度に応じて一定の金額が支給される。
  第1種障害補償費(障害等級1級~3級)1年につき平均賃金の240日分~188日分
  第2種障害補償費(障害等級4級~14級)平均賃金の920日分~50日分
 d.遺族補償費-平均賃金の1,000日分が支給される。
 e.葬祭料-平均賃金の60日分が支給される。
 f.長期傷病補償-療養開始後3年を経過しても傷病がなおらない場合に、療養補償費および休業補償費に代えて支給する。
(a)傷病給付 第1種傷病給付 1年につき平均賃金の240日分
  第2種傷病給付 必要な療養または療養の費用および1年につき平均賃金の200日分
(b)障害給付 長期傷病者補償を受ける者の傷病がなおったとき身体に障害が存在する場合に支給する。額は障害補償費に同じ。
(c)遺族給付 長期傷病者補償を受ける者が死亡したとき支給する。額は長期傷病者補償を受けた期間に応じて平均賃金の1,000日分~140日分
(d)葬祭給付 平均賃金の60日分
  このほか、付加給付として保険施設が設けられ、外科後処理、義肢等の支給等を行なっている。
(2)問題点
 わが国の現行労災法においては、災害発生から傷病の転帰までの労働者の保護の体制は整っており、その保険給付の水準は、相当の水準に達しているが、年金である障害補償の範囲が限られていることおよび遺族補償費が一時金であることが、国際的に見て問題であるといえる。たとえば、一応の国際的水準を示すものと考えられるILOの社会保障の最低基準に関する条約(1952年第102号)は、廃疾補償(わが国の障害補償費にあたる)は軽微な障害に対するものを除き定期金とすべきこと、遺族補償費も定期金とすべきことを要求しており、先進諸国におけるこれらの補償も年金となっている。
(3)対策
 被災者およびその遺族の保護の見地からみて、労災法の体系としては、年金である障害補償費の範囲の拡大および遺族補償費の年金化を図ることも考えられる。
(労災制度全般について、その改善のための検討が労災保険審議会を中心として行なわれており、これらの問題について検討されている。)
III  補価の対象の拡大について
(1)現状
 労働者災害補害の対象は、労働災害により被った精神的または肉体的な身体のき損状態によって生じた「労働能力の喪失または減少」である。障害補償費の対象となる障害も負傷または疾病の治ゆ後身体に残された精神的または肉体的なき損状態(廃疾)であって、これらの廃疾と業務上の負傷または疾病との間の相当因果関係がなければならないこととされているので、放射線障害による不姙症および流(早・死)産に対しては補償が行なわれていない。
(2)問題点
(イ)不姙症、流(早・死)産は、労災補償の対象となる「労働能力の喪失」であるとはいえないので、これらに対して補償を行なうようにするためには、労災補償に関する基本的考え方を変更するかどうかが問題となる。
(ロ)放射線障害と不姙症、流(早・死)産との因果関係の立証が困難であり、したがってその業務起因性の認定が困難である。
(ハ)労災保険のあり方は、特定の傷病、特定の範疇の労働者に対して特別な保護をする体制にはなく、したがって、放射線障害により、不姙症、流(早・死)産を労災補償の対象とすれば、他の傷病によるこれらの障害との均衡が問題となる。
(注)諸外国における、不姙症、流(早・死)産にする補償の具体例は見当らない。
(3)対策
(イ)現行の「労働能力の喪失または減少」を補償の対象とする建前からみると、放射線障害による不姙症および流(早・死)産に対しては、補償を行なうことは困難であるが、補償の対象を「人間らしい生活を営む能力の喪失または減少」と考えてこれらに対しても補償を行なうようにすべきであろう。
(ロ)不姙症および流(早・死)産は、その発生原因が多岐に亘っているが、医学的な精密検査を行ない、適当な期間観察することにより、放射線に起因するものと判定される場合も考えられ、この場合には業務起因性の認定が可能であると思われるので、補償を行なうことが必要であろう。
(ハ)なお、これに便乗して業務との因果関係の明確にできない他の原因に基づく不姙症および流(早・死)産についても補償を行なうべき旨の要求が出てくるものと思われるが、放射線障害に基づく不姙症および流(早・死)産のように医学的に因果関係の証明可能なものに限るべきである。

IV 「みなし認定制」について
(1)現状
(イ)放射線障害を含む業務上の疾病の範囲については、労働基準法施行規則第35条に、業務と疾病との関連が密接不可分な特定の疾病が具体的に列挙されており、これらの列挙された疾病にり患した場合には、業務と因果関係を有する疾病として取り扱うこととされている。
(ロ)放射線障害の場合には、その非特異性、多様性、潜行性から放射線と疾病との間の因果関係の証明がきわめて困難な場合が多く、放射線障害であると認定されないことも多い。
(2)問題点
 労基法施行規則第35条に列挙された疾病にり患した場合には「業務上の疾病」と推定されているが、実際の取扱いとしては、労働者を診察した医師が同条に列挙された疾病であると診断しても、医学上の診断の前提となる災害の発生状況、有害作業条件、作業期間、有害(毒)物の被ばくの程度その他に関する事実認定が明確でないこと、あるいは必要と認められる医学上の臨床諸検査、他の疾病との鑑別診断が、適切、かつ、十分に行なわれていないこと等の理由により、労働官署において慎重に再検討を行なう場合もあり、その検討に長期間を要し、また、「業務上の疾病」と認定されないこともある。
(3)対策
 労基法施行規則第35条第4項では「ラジウム放射線、紫外線、エックス線およびその他の有害放射線に因る疾病」は「業務上の疾病」とされていても、実際の取扱いとしては、労働官署により診断医師の診断結果について再検討を行なう場合もあり、その際は直ちには「業務上の疾病」と推定されていないので、放射線障害の非特異性、潜行性等からこのような取扱いをすることをやめ、有害放射線にさらされる業務の内容および病名を詳細に規定し、一定期間以上有害業務に従事した場合には、放射線被ばくと疾病、および疾病と業務との因果関係の認定を不要とする。いわゆる、「みなし認定制」(ただし、事業主が反証を挙げれば、「業務上の疾病」であるとの認定を取消すことができるので、実際は「推定」である。)が確立されることが望ましい。
 なお、この場合には、有害放射線にさらされる業務と病名の範囲について、今後、専門的技術的立場から検討を加える必要があり、また、この制度を確立するに当っては、「その要件に該当しない条件のもとで障害を被った労働者に対して、業務上の疾病であるかどうかの認定が不利に行なわれることのないように配慮すべきである。」と改める。

第3章 認定
I 概論
 従業者に発生した疾病または障害を放射線に起因するものと判定し、補償すべきものと認定することは、放射線障害の特殊性から困難な場合が多い。
 放射線障害の判定には、障害そのものの臨床医学的資料およびその他の放射線管理上の資料は勿論のこと、過去長期間にわたる健康管理の記録が欠くことのできないものである。したがって、日常の健康診断、被ばく線量等の測定を徹底させ、これらの記録が正しく保存されていなければならない。
 また、これらの資料があっても、正しい放射線障害の判定を行なうことは必ずしも容易ではないので、放射線障害に関する専門家を主体とする認定補助機関を設け、専門的視野からの意見に基づいて判定し、補償の認定を行なわなければならない。
 放射線障害の判定が困難である主な理由は、次のとおりである。
(1)放射線に起因する各種の徴候は原則として、非特異的性格をもっており、ある徴候により診断されても、これを放射線に起因していると判定するには、少なくとも被ばく状況の詳細が把握されていなければならない。
(2)放射線障害のうち、晩発性障害に属するものは潜伏期が長く、特に、数十年に及ぶものもある。
(3)放射線障害の臨床経過は複雑であり、同一疾病の再発、異なる疾病の続発、併発または再発等多岐にわたっている。したがって、放射線障害による疾病は、治癒状態を永久的なものと判定することは困難である。
(4)寿命の短縮、遺伝的影響等のように個々の事例についての放射線との因果関係の判定が実際上困難なものもある。

II 認定の方法
(1)現状
(イ)労働基準法施行規則第35条第4号(資料1)を参照
(ロ)同上に掲げる疾病の認定基準の改定について(基発第239号:38.3.12.)(資料3)参照
(2)問題点
(イ)放射線障害を臨床医学的な資料および知見のみで判定することは、困難な場合が多いので、認定にあたっては、医学および放射線管理の分野における学識経験者の意見をきく必要がある。
(ロ)放射線との因果関係を判定するには、健康診断が確実に行なわれているとともに、放射線被ばくについての十分な記録がなければならない。
(ハ)上記のことがらが満たされている場合であっても、因果関係の判定は困難な場合があり、その者の職業歴によって認定する方法を加えなければならない場合が生ずる。
(ニ)以上のような新しい見地に立った場合は、現行の認定基準を適用することには問題がある。
(3)対策
(イ)認定機関の改善を行なう。(第3章Vの3参照)
(ロ)健康管理の改善を行なう。(第4章参照)
(ハ)放射線に起因する疾患は、急性、慢性にかかわらず、中央の認定補助機関の学識経験者の意見に基づいて、認定を行なう。
(ニ)認定基準は、認定にあたって学識経験者の意見が十分に反映できるようにし、画一的なものとしない。なお、因果関係が明確にできない場合であっても、一定の疾病に関しては患者がある種の職業歴を持つ者で あれば、放射線に起因するものと認定できるような制度を確立する必要がある。(第2章のIII参照)
(ホ)現行の認定者が認定にあたって斉一を期するためのものであるから、中央に認定補助機関を設置することとなれば、認定基準の改訂も行なわれると思われるので、現在その批判を行なうことはあまり意味がないであろう。

III 認定に必要な資料
(1)現状
 被災労働者が労働災害補償保険法(以下「労災法」という。)に基づき「補償費」の支給を受けようとする場合には、次の事項を記載した請求書を所轄の労働基準監督署長に提出しなければならないことになっている。
(イ)労働者の氏名、生年月日および住所
(ロ)請求人が労働者以外の者であるときは、その氏名および住所ならびにその労働者との関係
(ハ)事業の名称および事業場の所在地
(ニ)負傷の原因および発生状況(事業主の証明が必要)
(ホ)災害の原因および発生状況(事業主の証明が必要)
(ヘ)傷病名および療養の内容(医師の証明が必要)
(卜)請求金額
(2)問題点
(イ)実際に認定を行なう場合には、このほか健康管理の記録等が参照されるであろうが、現行の労災補償は 災害事故等による一般傷病に重点がおかれているため、放射線障害の場合にはこのほかに資料を必要とする 場合がある。
(ロ)(1)の(ホ)のように事業主に「災害の原因」を証明させることは、事業主にその疾病の業務起因性の判断まで要求しているように受取られ易い。
(ハ)(1)の(ヘ)のように最初に診断する医師に「傷病名および療養の内容」を証明させることになっているが、放射線障害について知識経験の少ない医師の診断を受けた結果誤った証明が行なわれることも考え られる。この場合、その証明が後の認定に当って大きな影響を与える可能性がある。
(3)対策
(イ)前記の資料に加えて、認定補助機関に対して次の資料を提出させる。
 (a)日常の健康診断記録
 (b)職業歴、被ばく歴等
 (c)作業の環境、内容、期間等
 (d)医師の診断書および意見書
 (e)その他、上記機関により、特に要求されたもの
(ロ)「災害の原因」については、労災法も事業主に労働者が災害を受けたという「事実」を記載させることを意図しており、業務起因性の判断までさせることは、意図していないので、この点は、法令上の表現の改正もしくは実務の行政指導によって明確にすべきである。
(ハ)医師による「傷病名および療養の内容」の証明および診断書には、症状の診断のみを記載することとし、その疾病と放射線との因果関係は認定に当って認定補助機関の判断にまかせるようにすべきである。

IV 現在補償対象と考えられない障害の問題
 次にのべる各種の障害は、いずれも認定困難であり、またある点では、補償の対象と考えることが困難と思われる。したがって、健康管理を厳重にして、できうる限りこれらの障害をおこさないよう措置すべきである。
(1)遺伝的障害および寿命の短縮が、放射線の影響として現われる可能性がある。しかし、現在のところこれらの影響に関しては、個人について放射線との因果関係を証明することは不可能である。
(2)姙娠中、母体が放射線を被ばくした場合に胎児または新生児に障害が現われる可能性がある。しかし、これらについても放射線以外の要因がきわめて多く、現在のところ、その認定が困難であると思われる。
(3)不姙症および流(早・死)産は、その原因が多岐にわたっているが、詳細な検討を行なえば、症例によっては、放射線に起因すると推定できるものもありうると考えられる。この場合は補償について検討する必要がある。(第2章のII参照)

V 認定機関
1.認定に関しての考え方
 前述のとおり労災法による補償費の支給申請に関し、「傷病名および療養の内容」についての医師の証明が必要とされているが、その医師は、特定されていないので、放射線障害について知識経験の少ない医師が診断した結果、その影響によって誤った認定がなされることも考えられる。
 したがって、認定の前段階として、英国のように国が指定した医師による診断ないし証明を要することとすることも考えられる。しかし、わが国の場合には、当該医師の量的確保の困難性等からこの制度を採用することは、適当でないものと思われる。
 しかしながら、その疾病と放射線障害との因果関係については、その判定が極めて難しいので、認定権者が認定するに当り、放射線関係の専門家により構成される「認定補助機関」を設置することが必要と考えられる。
2.認定機関
(1)現状
 認定権者は、所轄の労働基準監督署長である。しかし、当分の間は、放射線障害のうち一部のものについては、認定の統一を期するために、労働本省において認定することとされている。(未発足ではあるが、労働本省に認定補助機関を設置することとしている。)
(2)問題点
 署長が認定を行なう場合には、国立または大学病院の医師や所轄労働基準局の意見をきいて、また、労働本省が認定を行なう場合には、数名の専門家から成る「認定補助機関」を設置して行なうこととしているが、その構成メンバー等は必ずしも一定の者に依頼するのではなく、一部の者は案件により変更される予定である。
(3)対策
 認定権者を補佐するために、英独のように専門家により構成された特別の「認定補助機関」を設ける必要がある。その機構としては、放射線障害および放射線の生物学的作用に十分な知識と経験を有する医師と、放射線障害の衛生問題、防護技術に十分な知識と経験を有する専門家を、少なくとも1人ずつ含んだものとすべきである。
 この機関は、法律上の認定のための補助機関であってそれ自身認定権を持たないが、認定権者は、ある程度その決定に拘束されるべきで、また、この機関またはその委員は必要に応じ、事実関係について調査し、あるいは資料を要求できる権限が与えられることが必要であろう。
 なお、機関は、差しあたり中央に1つ設置することとし、後、状況に応じて全国を数ブロックに分けて設置することも考えられる。

第4章 健康管理
I 概論
 放射線障害の特殊性から放射線作業従業者または管理区域随時立入者「以下「従業者」という。)に対する健康管理を徹底させる必要があり、医学的な健康診断のほか、放射線被ばく線量の測定評価等の要素を加えなければならない。
 就業前の健康診断においては、従業者となる適性を確かめるとともに、後日放射線障害を判断する基礎となるような個人の正常な状態を把握することに重点がある。
 就業後の健康診断においては、定期的または臨時的な検査により、放射線障害の予測あるいは障害の早期発見を行ない、同時に障害のある場合にはその因果関係を判定して、事後の措置を講じうることとすることに重点がある。
 放射線に起因する疾病の特殊性に鑑み検査または記録保存の上で十分な措置がとられなければならない。

II 就業前の健康診断
(1)現状
 事業主は、従業者に対し放射線施設に立入る前に健康診断を行なうこととなっているが、その健康診断の方法は、次のとおりである。
(イ)問診
 (a)放射線(1MeV未満のX線を含む。)の被ばく歴の有無
 (b)被ばく歴を有する者については、作業の場所、内容、期間、集積線量、放射線障害の有無、その他被ばくの状況
(ロ)検査、検診
 (a)皮ふ
 (b)末しょう血液中の白血球および赤血球の数ならびに血球素量(または全血比重)
 (c)末しょう血液像
 (d)眼(中性子線、α線等の被ばくのおそれのある場合に限る。)
(2)就業前における健康診断は、この種の作業に対する適性の確認と個人の正常状態の把握を目的とし、身体的および精神的状態を検査し、就業後放射線障害と混同されやすい身体状況について、病歴等により体質的な特徴も推定しておく必要がある。
(3)対策
 現在行なっている健康診断の項目を再検討する。特に、問診による家族歴、姙娠歴(被検者が男子であれば配偶者の姙娠歴)、既往歴、被ばく歴の聴取、記録の完全実施を義務づけるとともに、検査、検診に当っては必要に応じて精神医学的検査を含めた適性検査を実施する。

III 就業後の健康診断
(1)現状
 就業後は、次のとおり物理的な測定と医学的な健康診断を行なっている。
(イ)放射線量および粒子束密度の時間積分量の測定
 (a)放射線測定器または用具を用いて測定する。ただし、30mrem/週をこえるおそれのないとき、または 、器具を用いて測定することが困難な場合は、計算によって算出する。
 (b)測定部位は、最も大量に被ばくするおそれのある人体部位としている。
(ロ)汚染状況の測定
 (a)前記(イ)の(a)に同じ
 (b)測定部位は、最も汚染される作業衣、はき物、保護具、人体部位等としている。
 (c)人体内部汚染の測定は、空気中の模様を計算すること等により行なっている。
(ハ)従業者の線量測定等は、作業中継続して行ない、汚染の測定は、作業終了時に行なう。一時立入者については、10mrem以上被ばくしたおそれのある場合に測定している。
(ニ)健康診断は、放射線作業従事者にあっては、次のとおりである。また管理区域随時立入者は各項目について6ヵ月をこえない期間ごとに行なうことになっている。
 (a)皮ふ(3ヵ月をこえない期間ごと)。
 (b)末しょう血液中の白血球および赤血球の数ならびに血液素量(また全血比重)(6ヵ月をこえない期間ごと。)
 (c)末しょう血液像(6ヵ月をこえない期間ごと。)
 (d)眼(中性子、α線等で被ばくしたおそれのある場合に限る。)
(ホ)従業者が次の一に該当するときは、遅滞なく健康診断を行なうこととなっている。
 (a)RIを誤って飲みこみまたは吸いこんだとき。
 (b)RIにより最大許容表面密度をこえて皮ふが汚染されたとき。
 (c)RIにより皮ふの創傷面が汚染され、またはそのおそれがあるとき。
 (d)放射線作業従業者にあっては、最大許容被ばく線量または集積量を、管理区域随時立入者にあっては、15rem/年(皮ふでは3rem/年)をこえて被ばくしたおそれがあるとき。
(2)問題点
 就業後の健康診断は、従業者の健康状態を把握し健康管理の資料とするとともに、放射線障害または障害のおこる可能性を早期に発見することが主な目的である。したがって、その結果得られた異常所見と放射線との因果関係を明らかにするため、更に精密な検診を必要とする場合があることを配慮する必要がある。
(3)対策
(イ)定期の健康診断
 定期の健康診断は年2回以上実施することを原則とするとともに、作業の実体に応じてその回数を適当にふやすこととし、事業所毎に実施する。
 人体内部汚染の測定、評価について特殊な検査設備を必要とする場合には、特殊の医療施設を利用することとする。
 (a)問診
 現在の一般健康状態および自覚症状について問診し、同時に被ばく線量に関する記録を調査検討する。
 (b)検査、検診
 人体内部汚染のおそれがある場合には、空気中または水中の放射能濃度を測定するほか、被検者の糞、尿および呼気等の検査を行なう。
(ロ)臨時の健康診断
 臨時の健康診断は、前記(1)、現状(ホ)に該当するような事故等が発生した場合、定期の健康診断等で放射線障害と疑われる症状が発見された場合、または作業の種類等により必要と認められた場合に、個別的に行なうこととし、必要に必じて定期の健康診断における検査および検査項目以外の項目についても行なう。
 さらに必要に応じて、被ばく線量の評価を目的として精密測定を行なう。

lV 健康診断後の措置
(1)現状
 健康診断の結果、放射線障害が疑われまたは発見された場合は、次の措置をとる。
(イ)従業者については、必要により放射線施設への立入時間の短縮、立入禁止または配置転換のいずれかの措置をとるほか、保健指導を行なう。
(ロ)一時立入者に対しては、すみやかに医師の診断を受けさせ、保健指導等を行なう。
(2)問題点
 保健指導の内容を明確にし、適切にこれを行なえるよう措置する必要がある。
(3)対策
 保健指導の内容としては、定期的に医師による診察を行ない、保健上の注意を与えるとともに、医師の指示に基づき、保健婦、看護婦等により医学的な注意を与え、生活面の規則、栄養摂取の指導を行なう。また休養している場合は、特に保健婦等による家庭訪問を行なって、健康管理が徹底するよう指導する。

V 離職後の健康管理
(1)現状
 離職後、再び放射線業務に従事する場合を除いては、健康管理は全く行なわれていない。
(2)問題点
 放射線障害は、それが遅発性影響として発現する場合があるので、健康管理のため必要な措置をとる必要がある。
(3)対策
 離職後は、その記録を適当な機関(VI参照)、に保存し、必要があると認められる者に対しては、健康診断が容易に受けられるよう措置する。

VI 健康管理の記録およびその保存
(1)現状
(イ)放射線の測定記録
 放射線量および粒子束密度の時間積分量ならびに汚染状況の測定結果も記録する。この場合、その測定がRIによる汚染の測定であるときは、汚染の状況および測定方法をあわせて記録する。これらが放射線作業従事者についての記録である場合は、3ヵ月ごとに、3ヵ月間の被ばく放射線量の集計および集積線量をあわせて記録する。
(ロ)医学的な健康診断記録
 問診および検査または健康診断の結果は記録する。
(ハ)記録の保存
 これらの記録は、科学技術庁長官が指定する機関に引き渡さない限り、事業主においては永年にわたり保存する。
(2)問題点
 これらの記録の保存については、3年間の保存では放射線障害の特殊性からみて短かすぎ、また事業主に永久保存させることも適当でなく、事業主ごとに個々に保存することは労働者が他の職場に転出または離職した場合にその追跡が困難になる。
(3)対策
(イ)事業主の過重な負担を軽くし、また労働者の健康管理を図る上からも、健康管理の記録の中央登録管理制度を適切な公的機関(たとえば放射線医学総合研究所)内に確立し、労働者の離職後は、同機関においてその記録を保存させることが必要である。
 同記録の閲覧については、当該労働者の利益を考慮してある程度制限を設けるべきであり、たとえば放射線業務者以外の事業主が労働者を雇傭するに当り、当該労働者の記録の閲覧を求めてもその要求に応ずべきではない。
(ロ)離職後においても、診断医師により引き続き健康診断を受けることが必要であると認められた労働者のために、容易に健康診断を受けることができる診療機関を放射線業務を営む事業主から支出された基金および国からの補助金により設置することが望ましい。
 この場合、中央登録管理機関に登録している労働者は、同診療機関において健康診断を無料で受けられるようにすべきである。
(ハ)診療医師に対する同機関への診断結果の報告
 義務の賦課および労働者による診断の結果、自発的登録(健康管理記録の重要性の知識普及による。)により記録の完備を図ることが望ましい。

VII 検査技術等
(1)現状
 別に定めていない。
(2)問題点
 前記健康診断のなかには、検査技術としてかなり高度な技術を必要とするものもあり、これらの検査が確実に行なえるよう措置する必要がある。
(3)対策
(イ)身体内部汚染の検査
 身体内部の汚染を測定する場合の排せつ物の検査は、一部の専門機関を除いては、かなり困難であると思われるので、これらの検査を委託できる機関が設けられることが必要である。
 また、人体内の放射性物質の量を外部から直接測定する装置(たとえばヒューマンカウンター等)は、特殊な機関のみ設置されているので、これらの利用の円滑化を図る。
(ロ)被ばく線量測定器具の性能の向上
 被ばく線量および集積線量の正確な測定は、健康管理上きわめて重要なので、フィルムバッジ、ポケット線量計等の測定器具については、測定結果に信頼性を持たせるため、その性能の向上を図る必要がある。

〔資料 1〕
労働基準法施行規則第35条
法第75条第2項の規定による業務上の疾病は次に掲げるものとする。
1~3略
4 ラジウム放射線、紫外線、エックス線及びその他の有害放射線に因る疾病
5~38略

〔資料 2〕
労働基準法施行規則第35条第4号の認定基準
(昭和27.7.21.基準第547号)
ラジウム放射線、X線、その他の各種の放射能物質による有害放射線に曝される業務に従事する労働者が、その放射線の作用により、左記の何れかに該当する障害をうけた場合には、労働基準法施行規則第35条第4号に該当するものとして取扱われたい。
(1)上皮癌、潰瘍等の身体障害を起こした場合
(2)末しょう血液1竓中に赤血球数が常時、男子においては400万個以下、女子においては350万個以下となった場合
(3)末しょう血液1竓中に白血球数が常時、4,000個以下(男女とも)となった場合上の(2)および(3)号中「常時」とは連続2日間に亘って採血し、1因の採血について、数回測定を行ない、その測定値の平均が、両日の間に、有意の差を認めない場合を言う。
 若し、有意の差を認めた場合には、第3日目更に同様の検査を行ない、その平均値に近い方の値をとること。
 なお、採血は食後の3時間以上を経過した空腹時に耳朶等より行なうものとすること。

〔資料3〕
基発第239号
昭和38年3月12日
各都道府県労働基準局長殿
労働省労働基準局長
労働基準法施行規則第35条第4号に掲げる疾病の認定基準の改定について
放射線および放射性物質の利用は、近年めざましい発展をとげており、放射線障害の予防および診断に関してもおびただしい研究業績が発表されているのにかんがみ、今般、従前の認定基準(昭和27年7月21日付基発第547号通達)を下記のとおり改めたので、その取扱いに遺憾のないようにせられたい。


疾病について
 電離放射線障害防止規則(昭和34年3月31日労働省令第11号)第2条に規定する電離放射線(以下単に「電離放射線」という。)にさらされる業務に従事する労働者が電離放射線の被ばくにより発生すると考えられる疾病は次のとおりである。
1 急性のもの
 ただ1回の被ばくによっておきる急性の疾病および症候群であって、
  (1)急性放射症
  (2)急性放射線皮ふ障害
 がある。これらは、因果関係の究明が容易であるから、外傷等と同様症例ごとに業務上外の認定を行なうこと
2 慢性のもの
 電離放射線の慢性被ばくによって発生する疾病は、次のとおりである。被ばくの程度に関しては、現段階における被ばく線量測定の技術的制約にかんがみ、必ずしも、被ばく線量測定の結果にこだわらず、被ばくの可能性をも考慮することとする。もっとも、その疾病が電離放射線以外の原因によるものであることが明らかなものを除く。
 また、これらの疾病の発生については、潜在性と遅発性について考慮しなければならないので、電離放射線にさらされる業務を離れた後に発病したものを含む。
(1)白血球減少症
(2)貧血
(3)出血性素因
(4)白血病
(5)白血病様反応
(6)皮ふがん
(7)皮ふ潰瘍
(8)慢性放射線皮ふ炎
(9)白内障(限に中性子線をうけるおそれのあるものに発生する危険がとくに大きい。)
(10)骨えそ(ラジウムその他骨に沈着しやすい放射性物質の体内摂取をおこすおそれのある者に発生する危険がとくに大きい。)
(11)骨肉種
(12)肺がん(ラドンおよびその子元素等肺に沈着しやすい放射性物質を吸収するおそれるある者に発生する危険が特に大きい。)

認定について
 急性のものおよび慢性のもののうち、(1)白血球減少症、(2)貧血を除いては、取扱いの統一を期するため、当分の間本省において決定することとするので、関係資料を添えて禀但されたい。
 したがって、急性のもののほかに、地方局において認定するものは、
2.慣性のもののうち、(1)白血球減少症と(2)貧血であって、その一応の認定基準は、次のとおりである。よって、次に掲げる要件のいずれかに該当し、医学上療養が必要であると認められる場合には、労働基準法施行規則第35条第4号に掲げる疾病に該当するものとして取扱われたい。
 しかし、特にあまり顕著でない場合には、ただ一時点の所見のみで診断することは原則として配置前、被ばく作業開始前、もしくは相当期間被ばくから遠ざかっていた時の血液所見と比較した上で診断する必要がある。なお、疑問があるときは、本省に禀伺されたい。
 末しょう血液の1立方ミリメートル中に赤血球数が常時男子においては、400万個未満、女子においては、350万個未満であるが、または、白球素量が血液1デシリットル中男子11.0グラム未満、女子10.0グラム未満であって、これらの貧血の徴候が、寄生虫症(例えば鈎虫症のごとき)もしくは出血(例えば消化管潰瘍、痔核等による)その他の事由によるものではないこと。
2 末しょう血液1立方ミリメートル中に白血球数が常時4,000個未満(男女とも)であること。
 上記1および2の「常時」とは、連続2日間にわたって採血し、1回の採血について数回測定を行ない、その測定値の平均が両日の間に有意の差を認めた場合には、3日目さらに同様の検査を行ない、その平均値に近い方の値をとることとし、採血は食後3時間以上を経過した空腹時に耳朶等より行なうものとすること。




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■立法過程 その9 原子力損害賠償制度検討専門部会答申(昭和45年11月30日)

■立法過程 その9 原子力損害賠償制度検討専門部会答申(昭和45年11月30日)

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V15/N12/197029V15N12.html

原子力損害賠償制度検討専門部会答申

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昭和45年11月30日
原子力委員会

委員長 西田信一殿
原子力損害賠償制度検討専門部会
部会長 我妻 栄

 本部会は、昭和44年10月23日付けで諮問された「現行原子力損害賠償制度につき改善を要する諸点および改善方策」について、14回にわたる審議を重ねるとともに、特に、法律技術的事項については小委員会を設け11回にわたり検討を重ねてきましたが、このたび、次のとおり取りまとめましたので答申します。



原子力損害賠償制度検討専門部会構成員
石田 久市 三菱原子力工業(株)常務取締役
石田 芳穂 日本原子力発電(株)常務取締役(第7回~第14回)
内古閑寅太郎 日本原子力船開発事業団専務理事
加藤芳太郎 東京都立大学教授
金沢 良雄 東京大学教授
笹森 建三 日本原子力発電(株)取締役副社長(第1回~第6回)
荘村 義雄 電気事業連合会副会長
高橋 時男 日本通運(株)常務取締役
谷川  久 成蹊大学教授
長崎 正造 東京海上火災保険(株)専務取締役
萩原 荘五 安田火災海上保険(株)専務取締役
星野 英一 東京大学教授
真崎  勝 日本原子力保険プール専務理事
村田  浩 日本原子力研究所副理事長
青山 博吉 (株)日立製作所副社長
米田冨士雄 (社)日本船主協会副会長
我妻  栄 東京大学名誉教授
荒井  勇 内閣法制局第三部長
梅沢 邦臣 科学技術庁原子力局長
川島 一郎 法務省民事局長
西堀 正弘 外務省国際連合局長
鳩山威一郎 大蔵省主計局長
近藤 道生 大蔵省銀行局長
高橋 淑郎 通商産業大臣官房長
見坊 力男 運輸省官房審議官
岡部 実夫 労働省労働基準局長
小委員会構成員
阿部 士郎 (社)日本船主協会顧問弁護士
荒井  仁 日本原子力産業会議動力炉開発課調査役
下山 俊次 日本原子力発電(株)資材課長
杉村敬一郎 日本原子力保険プール事務局長代理
谷川  久 成蹊大学教授
名和 正樹 日本原子力事業(株)総務課主任
(座長)
星野 英一 東京大学教授

 わが国の原子力損害賠償制度は、「原子力損害の賠償に関する法律」および「原子力損害賠償補償契約に関する法律」が、昭和36年に制定されて以来、すでに10年近くを経過した。この間において、(1)わが国の原子力船「むつ」の就航が近く実現するとともに、わが国と外国との原子力損害賠償制度の相違が原子力船の相互寄港の障害となっていること(2)発電用原子炉の運転が昭和40年に開始されて以来、続々と原子力発電所の建設、運転が進められ、またこれに伴って核燃料物質の運搬がひんぱんに行なわれるようになってきていること等の新しい事態が生じてきている。
 したがって、このような事情の変化に適切に対処するため、原子力損害の賠償に関する諸条約あるいは欧米諸国の原子力損害賠償制度をも参考として検討した結果、現行原子力損害賠償制度に関し、次の諸点について所要の改善が行なわれることが望ましいと考える。



Ⅰ 国の援助および補償契約に関する規定の適用

 現行の原子力損害の賠償に関する法律(以下「賠償法」という。)では、原子力損害賠償補償契約締結の規定および原子力事業者に対する国の援助の規定の適用は、昭和46年末までに運転を開始する原子炉等に係る原子力損害に限定されている。これは、現行の原子力損害賠償制度をその発足後10年経過した時点で、原子力の開発、利用の進展等に応じ再検討するために設けられた規定であるが、今後の原子力の開発、利用の促進のため昭和47年以降に運転を開始する原子炉等に係る原子力損害についても、これら国の援助および原子力損害賠償補償契約の措置を、存続させることが必要である。


Ⅱ 損害賠償責任の制限および国家補償

(1)陸上原子力施設

(イ)現行賠償法は、原子炉の運転等を行なう原子力事業者の損害賠償責任を特に制限せず、万一原子力事故が発生した場合には、原子力事業者は、被害者の被った原子力損害を全額賠償しなければならないこととしている。さらに、このような場合の被害者に対する損害の賠償は、同法に基づき原子力事業者に強制されている損害賠償措置額(原則として50億円)から支払われ、万一その額をこえる原子力損害が発生したときは、賠償法の目的を達成するため、すなわち被害者の保護を図り、および原子力事業の健全な発達に資するために必要がある場合に、政府が当該原子力事業者に対し必要な援助を行なうことになっている。
 一方、原子力損害の賠償に関する諸条約あるいは欧米諸国の原子力損害賠償制度においては、原子力事業者の損害賠償責任を一定の額で制限するとともに、民間の責任保険等の損害賠償措置額をこえる原子力損害が発生した場合には、一定の額までに限り、国が被害者のために補償するいわゆる国家補償制度が採用されている。

(ロ)このような状況にかんがみ、わが国においても、被害者の保護および原子力事業の健全な発達を図るという目的からみて、これら諸外国の例を参考として原子力事業者の損害賠償責任を一定の額で制限するとともに、民間の責任保険等の措置額をこえる原子力損害については、適正な補償料を徴収することを前提とする政府の損害賠償補償契約(以下「国家補償」という。)の拡大により措置することが望ましい方向であると考えられる。
 これに関して、現行賠償法の国の援助の規定は、万一損害賠償措置額をこえる原子力損害が発生した場合の被害者の保護のための措置としては、必ずしも十分ではなく、むしろ、一定の額まで国家補償を拡大することが、被害者の保護という点においてもより確実な措置といえるのではないかという意見、さらに原子力事業者に無過失の損害賠償責任を集中していることとの均衡から考えても無限の損害賠償責任を課しておくことは酷ではないかという意見が強く述べられた
 この場合、諸外国の例にもかんがみ、原子力事業者の損害賠償責任をたとえば400億円程度で制限し、これをこえる原子力損害について、原子力事業者を免責にするとともに、その額までは民間の責任保険等の措置額で不足する分について国家補償により対処しようとするものである。

(ハ)しかし、このような制度を今直ちに現行賠償法を改正して導入すべきか否かについては、次のような慎重論も強かった。
 すなわち、わが国は、地続きで国境を接する欧州諸国とは事情を異にしているので、諸外国の原子力損害賠償制度に合致させなければならない緊急性に乏しいとともに、すでに現行の原子力損害賠償制度のもとにおいて原子力発電所等の建設、運転が続々と進められており、現在までのところ責任制限および国家補償の拡大をしなければ被害者の保護に欠ける原子力事業の健全な発達を阻害するような事態は起っておらず、また近い将来においても必ずしも起こるものとは考えられない。反面、今日、原子力事業者の損害賠償責任を一定の額で制限することは、原子力に対する国民感情あるいは最近の社会情勢からみて必ずしも適当とはいえない。また、万一民間の責任保険等の措置額をこえる原子力損害が発生した場合には、被害者の保護を図り、原子力事業の健全な発達を阻害することのないよう原子力事業者に対する国の援助の規定を十分に活用して、援助措置を講ずることにより対処しうるものと考えられる


(ニ)上記の両意見についてさらに検討した結果、当面現行賠償法どおりとするが、原子力事業者の責任制限および国家補償の拡大については、将来の課題として検討すべき問題であると考える。
(2)原子力船

(イ)原子力船は、陸上原子力施設と異なり、本来それ自身が国際的な移動性のあるものであるので、円滑な相互寄港を図るためには、原子力損害賠償制度について、国際条約を締結するか、または諸外国の制度と合致させることが是非とも必要である。先年、米国のサバンナ号および西独のオット・ハーン号の本邦寄港が実現しなかったのは、わが国との原子力損害賠償制度の相違が大きな障害となったためである。原子力船の原子力損害賠償に関する国際条約としては、現在のところ、未発効であるが、「原子力船運航者の責任に関する条約」があり、原子力船運航者の責任を-原子力事故当たり1億ドル(360億円)で制限するとともに、その制限額まで民間の責任保険等および国家の補償により措置することを義務付けている。このような制度は、すでに米国、西独、フランス等においさても採用れている。
 したがって、わが国の原子力船「むつ」が近く就航する場合に備えて、わが国の原子力損害賠償制度を諸外国の例に合わせ、原子力船について、責任制限および国家補償の拡大をすることが基本的には必要である。

(ロ)このうち、特に、わが国の原子力船が外国の水域に立ち入ろうとする場合、および外国の原子力船が本邦水域に立ち入ろうとする場合においては、「原子力船運航者の責任に関する条約」が発効していない現状では、相互主義の建前等も勘案して、わが国政府と相手国政府と合意した額で、原子力船の運航者の損害賠償責任を制限しうることとするとともに、その額まで確実な損害賠償のための措置を講じさせることが必要である。この場合、本邦水域に立ち入ろうとする外国の原子力船についても、無過失の損害賠償責任が原子力船の運航者に集中されることを明らかにしておくことが必要である。また、わが国の原子力船が外国の水域に立ち入ろうとする場合については、民間の責任保険等の措置額をこえる額について国家補償の拡大等所要の措置を講ずる必要がある。
 さらに、外国の原子力船が本邦水域に立ち入ることに伴い、万一責任制限額をこえる原子力損害が発生した場合の国内の被害者の救済については、領海内におけるわが国の原子力船による原子力損害が発生した場合の被害者の救済とのバランスを失することのないよう考慮することが必要である。

(ハ)わが国の原子力船がわが国の領海内にはいる場合の損害賠償制度についても、一般の船舶について責任制限が採用されているという特殊性および前述の相互寄港の際の措置とのバランスよりみて、責任制限および国家補償の拡大を行なうべきであるとの意見が強かったが、陸上原子力施設の損害賠償責任および損害賠償措置と異なった取扱いをする理由に乏しいとする意見も強かった。
 この両意見についてさらに慎重に検討した結果、わが国の原子力船がわが国の領海内にいる場合の損害賠償制度は、当面現行賠償法どおりとし、将来「原子力船運航者の責任に関する条約」が発効し、これへのわが国の加入が問題となった時点で、再度検討することが適当である。



Ⅲ 損害賠償措置額

(1)現行賠償法では、原則として50億円の損害賠償措置を講じなければならないことになっている。この50億円という金額は、諸外国の例に倣ったものであるとともに、現行賠償法制定当時における民間の責任保険の引受能力の限度とみられたことによるものである。その後の保険会社の資産の増加等よりみて、損害賠償措置額の大幅な増額を行なうべきであるとの意見が強かったが、現在においても民間の責任保険の引受能力から大幅な増額は困難であるとの理由で、損害賠償措置額は、10億円の引上げが限度であるとの意見もあり、また、諸外国の例等を総合勘案し、さらに今後とも、損害保険業界における責任保険の引受能力の拡大のための一層の努力を期待して、当面の措置額としては、60億円とする。

(2)また、現行賠償法は、その政令により、原子炉の運転等の種類に応じ、最低1000万円までの低額損害賠償措置を細かく設けているが、その低額損害賠償措置は、強制的措置としては低すぎるので、諸条約等を参考として、相当の額にまで引き上げることが妥当である。




Ⅳ 従業員災害

 現行賠償法では、原子力事業者の従業員が業務上被った原子力損害については、その対象から除外しているが、これは従業員は雇用契約に基づき原子力事業に従事するもので、このような関係にない一般第三者の被った原子力損害に対する保護をまず優先させるべきものと考えられたほか、従業員については、労働者災害補償保険制度があるので、それに委ねるべきものと考えられたことによる。原子力事業者の従業員災害も賠償法により填補することが妥当であるか否かについては、昭和40年原子力事業従業員災害補償専門部会より労働者災害補償保険制度をさらに充実する必要があるとともに、原子力損害の賠償に関する諸条約との関係において、労働者災害補償保険制度で填補されない損害に限り一般第三者の保護を阻害することのないような形で、賠償法で填補することが望ましいとの答申が出されている。当専門部会としても、この点について再度十分に検討したところ、①労働者災害補償保険制度もILO条約並みの水準に相当充実されてきているとともに、すでに相当数の原子力事業においては、従業員災害について労働協約等により労働者災害補償保険制度の上積みの補償が行なわれていること ②同一の事業体において原子力部門に従事する従業員に限り特別の措置を講ずることは、他部門の従業員との間においてバランスを失することになること ③従業員災害を責任保険等の損害賠償措置で填補する場合には、それだけ一般第三者に向けられる分が少なくなること ④従業員災害を填補するための新しい損害保険を損害保険業界において創設することとなり、検討を進めることとなったこと等の理由により、当面現行賠償法を改正する必要はないものと考える。
 しかし、この問題については、今後とも原子力事業者の従業員の一層の保護のため、慎重に検討を続けることが必要である。また、別に労働者災害補償保険制度については、その給付水準、給付範囲等の改善につき検討が加えられることが望ましい。




Ⅴ その他

(1)責任保険の填補範囲
 現行賠償法では、損害賠償措置額までの原子力損害について、民間の責任保険で填補されない原子力損害(地震、津波、噴火、正常運転に起因する損害、事故発生後10年以降の請求、および保険会社に対する通知義務違反に係る損害)について、政府の補償契約により填補している。
 このうち、通知義務違反に係る損害については、現行賠償法制定時には、海外再保険市場の制約があり、補償契約により填補することになったが、その後海外再保険市場の制約もなくなったので、民間の責任保険で填補することとし、ただし、現在補償契約で行なっているように、事後に原子力事業者から填補金を返還させることが妥当である。

(2)敷地内にある財産および輸送手段に対する損害
 原子炉の運転等が行なわれている施設と同一の敷地内にある原子力事業者以外の者の財産(たとえば建設中の第2号原子炉、建設機械)に対する原子力損害および核燃料物質を運転中の輸送手段(たとえば船舶、航空機、トラック)に対する原子力損害については、現行賠償法上原子力事業者の損害賠責任の対象となるか否か明文の規定はないが、運用上、敷地内にある財産は対象外とされており、また輸送手段に対する損害は対象とされている。
 最近わが国においては、同一敷地内に第2号原子炉が建設される事例が増加するとともに、使用済燃料を含む核燃料物質の運搬が増加しつつあるが、原子力事業者と特別の契約関係にある者のこれら敷地内にある財産および輸送手段に対する原子力損害を対象とする場合には、損害賠償措置からの一般第三者に対する支払額がその分だけ減少することになる。
 したがって、敷地内にある財産のうちの建設機械等および核燃料物質を運搬中の輸送手段に対する損害については、賠償法上の原子力事業者の責任を対象とするとしても、損害賠償措置額のうち、一定の金額は一般第三者に優先的に支払う分として確保されるよう、損害賠償措置に一定の内枠を設けるとか、財産保険で填補させるとかにすることが妥当である。ただし、敷地内にある財産のうち建設中の第2号原子炉についてはいずれ完成後は原子力事業者の財産に帰属するものであり、一般第三者への支払分を確保するために、これに対する損害は、原子力事業者の財産保険で填補させることとし、損害賠償措置からの支払いの対象外とすることが妥当である。

(3)核燃料物質を運搬中の責任の所在および損害賠償措置
 現行賠償法は核燃料物質を運搬中に原子力損害が発生した場合には、一律に受取人である原子力事業者が損害賠償責任を負うこととされており、かつ、そのための損害賠償措置を一回ごとの運搬について講じている。
 核燃料物質を運搬中の責任を運送業者でなく、原子力事業者に集中することについては、現在のところ特にこれを変更する必要はないが、発送人および受取人のうち、いずれの原子力事業者が責任を負うかについては、一律に受取人である原子力事業者とすることは、実務上の問題等もあるので、諸条約等を参考に、原則として原子力事業者間の契約に委ね、責任を負った者が損害賠償措置義務を負うこととする。また損害賠償責任の所在についての特段の契約がない場合には受取人ではなく発送人である原子力事業者が損害賠償責任を負うこととすることが妥当である。
 さらに、核燃料物質の運搬の際の損害賠償措置は事務処理簡素化のため、また損害賠償措置の講じ洩れを防止するためにも一定期間の運搬をまとめてする包括予定保険契約方式を導入することが望ましい。

(4)原子力事業者の求償権の制限
 現行賠償法では、原子力損害を賠償した原子力事業者は、その損害が、①一般第三者の故意または過失により生じた場合はその者に対し ②資材もしくは役務の供給者またはその従業員の故意により生じた場合は、それぞれその者に対し、求償権を有することとし ③ただし、求償権に関し特約をすることを妨げないとしている。
 しかしながら、たまたま過失で核燃料物質を運搬中の輸送手段等と衝突したために、一般の第三者が巨額の求償を受けることになるのは、その者にとって酷であり、さらに現行賠償法の責任集中の原則を徹するためにも、諸条約等を参考に原子力事業者の求償は、関連事業者の場合と同様一般第三者に対しても、故意ある場合に限定することが妥当である。
 さらに故意の内容も諸条約のように「原子力損害を発生させようとする」故意に限定することが望ましい。

(5)過失相殺
 被害者に故意または過失のあった場合の損害賠償額の減額について、現行賠償法は、特に規定しておらず、したがって、民法の一般原則に基づくことになり、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、これを斟酌しうることになる。
 しかしながら、たまたま核燃料物質を運搬中の輸送手段等と衝突し、原子力損害を被った場合等の被害者について、被害者側に過失があったからといって民法の過失相殺の原則をそのまま適用することは、当該被害者に酷であると考えられるので、過失相殺の適用を故意(または故意、重過失)の場合に限る等の配慮をすることが望ましい

(6)運搬中の天然ウラン、放射性生成物および廃棄物の取扱い
 現行賠償法では、天然ウランの運搬は対象となる一方、放射性生成物および廃棄物の運搬は対象とならない。
 しかしながら、天然ウランについては、運搬中の原子力事故の危険性はほとんどなく、また、諸条約でもこれを除外しているので、これを参考に天然ウランの運搬は対象外とすることが適当である。
 また、放射性生成物および廃棄物については、原則として賠償法の対象とすることが望ましいが、ただ工業用、農業用、医療用等のラジオアイソトープについては、諸条約等を参考とし、かつ、その危険の程度も勘案した結果、これを除外することが望ましい。

(7)原子力船および核燃料物質運搬中の船舶に係る損害賠償請求権の消滅
 現行賠償法では、損害賠償請求権の消滅に関し特別の規定をおいていないので、陸上原子力施設に起因する原子力損害については民法第724条の3年の消滅時効の規定が、原子力船および核燃料物質運搬中の船舶の衝突に起因する原子力損害については商法第798条の1年の消滅時効の規定が適用になる。しかしながら、商法第798条の1年の時効は、原子力損害の遅発性を考慮すると被害者に酷であり、かつ、陸上原子力施設の場合とアンバランスであるので、これら船舶の衝突に起因する原子力損害についても民法の規定が適用されるよう措置することが妥当である。

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■立法過程 その8 国会審議(昭和35年5月18日)

■立法過程 その8 国会審議(昭和35年5月18日)

34-衆-科学技術振興対策特別委…-13号 昭和35年05月18日

昭和三十五年五月十八日(水曜日)
    午後一時五十三分開議
 出席委員
   委員長 村瀬 宣親君
   理事 西村 英一君 理事 保科善四郎君
   理事 前田 正男君 理事 石野 久男君
   理事 岡  良一君
      秋田 大助君    小平 久雄君
      橋本 正之君    細田 義安君
      石川 次夫君    岡本 隆一君
      松前 重義君    内海  清君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       横山 フク君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局長)   佐々木義武君
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局次長)  法貴 四郎君
        大蔵政務次官  奧村又十郎君
        大蔵事務官
        (主計局法規課
        長)      小熊 孝次君
 委員外の出席者
        総理府事務官
        (調達庁不動産
        部連絡調査官) 沼尻 元一君
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力政策課長) 井上  亮君
        大蔵事務官
        (銀行局保険課
        長)      中嶋 晴雄君
        労働基準監督官
        (労働基準局労
        災補償部長)  村上 茂利君
        労働基準監督官
        (労働基準局労
        災補償部管理課
        長)      渡邊 健二君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 原子力損害の賠償に関する法律案(内閣提出第
 一三三号)
 科学技術振興対策に関する件
     ――――◇―――――

○村瀬委員長 これより会議を開きます。
 まず、科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。石野久男君。

〈略〉
     ――――◇―――――

○村瀬委員長 次に、原子力損害の賠償に関する法律案を議題とし、審査を進めます。
 質疑の通告がありますので、これを許します。前田正男君。

○前田(正)委員 まず最初に、この法律案の提案理由の説明にもあります通り、原子炉の災害というようなことは、万々一にもあってはいけないことでありますので、災害の予防のためには十分な処置をしてもらわなければいけないと思うのでありますが、しかし、万々一の災害がありました場合において、その責任の所在を明確にしていかなければならない。また、それに対する賠償等の問題をきめていかなければならないというのが、この法律の趣旨であろうと思うのであります。ところが、この第一条に書いてありますのは、「賠償に関する基本的制度を定め、もって被害者の保護を図り、」こういうことが書いてあるのですが、この被害者の保護をはかるということは、要するに、その補償の責任というもの、特に、国家が限度をこえた分に対する補償の責任というものをこの際明瞭にしておるのかどうか、きょう御出席の大臣初め大蔵政務次官もすでに御存じだと思うのでありますが、第三十一国会、すなわち、昭和三十四年三月十一日に、当委員会におきましては、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案というものを満場一致で可決しておりまして、民間の保険の限度をこえる分については、国家の補償責任を明らかにする立法その他必要な措置を講ずべきであるということを申しておるのであります。そういう趣旨もこの法案の目的の中に入っておるのかどうかということを、一つ科学技術庁長官及び大蔵政務次官からおのおのお答えを願いたいと思います。

○中曽根国務大臣 この法律の目的は、万々一の際の原千万損害の場合における第三者、すなわち、被害者の保護ということと、原子力事業の健全な発達と、二つが目的になっておるわけであります。それで、法案の建前としては、無過失責任あるいは集中責任、責任の集中性等は事業を行なうものに帰せしめてあるわけでありまして、第三者に対する保護等の場合は、第一次的には、これらの事業者が責任を負うという建前になっております。しかし、事業者だけにまかせていいというものではありませんので、民間保険でカバーできない分については、補償契約を背景として国家が出動して第三者の保護をはかるという考え方であります。それから五十億円をこえる場合についても、国会の授権の範囲内において国家が出動して被害者の援護をはかるということになっております。そういう意味におきまして、企業体と国家が協力して第三者のために措置を講ずるという考えであると思います。

○奧村(又)政府委員 ただいま中曽根科学技術庁長官の御答弁になった通りであります。

○前田(正)委員 われわれの附帯決議にありますのは、民間の保険の負担の限度を越えた分については国家の補償責任を明らかにするということで、これは、また後に項目別に一つ御質問をしたいと思いますけれども、どうもその補償の責任というものが多少不明確になっておるように思うのであります。
 それから、次に問題となりますのは、第二条の原子力の損害であります。原子力の損害というものは、これは今後非常に広範な問題が予想されるのでありまして、たとえば、もしも災害が起こった場合の放射能の影響する範囲というようなことから退避命令を出すとか、あるいは近所に放射能の汚染を受けたために野菜類とか魚介類の損害も出るとか、こういうようなものが出た場合は、前にもマグロの漁船が補償を受けたようなものもあるようでありますが、そういうような例から見て、こういうような広範にわたったものは全部原子力損害の中に入っておるのかどうか、これを一つ御答弁を願いたいと思います。

○中曽根国務大臣 この第二条の第二項に書いてありますように、原子力損害とは、原子核分裂の作用、つまり、原子炉の内部における作用の影響による分、または核燃料物質によって汚染されたものの放射線の作用、つまり、これはその結果出てきたものの放射能による汚染の作用、それから、これを吸引したとかなんとかいうような場合の毒性作用、こういう損害をいうのでございまして、たとえば、輸送途中におけるいろいろなそういう事故等もこれに入ってくるのであります。

○前田(正)委員 具体的に申し上げますならば、放射能をかぶった場合の退避命令、そういうものの立ちのきによる退避の費用などは入っておるわけですか。

○中曽根国務大臣 それとこれとの相当因果関係がどの程度あるか、そういう判定の問題になりますが、その辺は法律解釈の問題でございますから、原子力局長から答弁いたさせます。

○佐々木(義)政府委員 事故が発生した場合の退避の際に要した費用等に関しましては、もちろん、相当因果関係を持っている場合には賠償額の中に入りますが、ただいま御指摘になりました、いわゆる原子力損害とは何ぞやという損害そのものの定義の中には、そういう費用は入っていないというふうに解釈しております。

○前田(正)委員 そうすると、損害の中には入ってないけれども、補償の中には、民法の相当因果関係の範囲のものは全部入る、こう解釈していいわけですか。

○佐々木(義)政府委員 その通りでございます。

○前田(正)委員 その次に、第三条で問題になっております「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたもの」というのは、国の処置の方で補われることになっておるのでありますけれども、実は、きょう資料として提出願いました賠償補償契約に関する法律案と原子力損害賠償責任保険普通保険約款とを対照いたしますと、普通約款の方では、「地震または噴火によって生じた賠償責任」は除くと書いてありますが、補償契約に関する法律案の三の(1)では「地震又は噴火による原子力損害」というものが入っておるわけであります。それから、約款第七条の(5)の「こう水・高潮・台風・暴風雨等の風水災によって生じた賠償責任」、これは第三条の「異常に巨大な天災地変」と表現が多少違うように思うのですが、どっちへ入るのですか。いわゆる巨大な場合の天災とか地変は、もちろん、十七条の「国の措置」の方に入ると思うのでありますが、異常に巨大でない範囲の洪水・高潮・台風・暴風雨等の風水災によって生じた賠償責任は、この普通保険約款では除かれて、責めに任じてないと思うのですが、それはどこへ入るのですか。

○佐々木(義)政府委員 ただいまお話のございました洪水。高潮・台風・暴風雨等、異常かつ巨大という範疇に入らぬ、その前のようなものは、「風水災危険担保特約条項」という、お手元に差し上げました普通保険約款の二枚目にございますが、特約条項でカバーしてございまして、その方で特約料金のもとに保険金を支払うという建前になってございます。ただ、第十条にございます意味は、地震または噴火等によります、各国にあまり例のないような非常な損害に対しましては、この約款では、再保険等の関係上無理でございますので、そういう問題に対しましてはこの補償契約でカバーするということにいたしまして、いずれにいたしましても、その面からの損害に対しては、カバーし得ない面がないようにというふうに配慮いたしております。

○前田(正)委員 そうするとこの特約条項の分も、第七条の「一工場著しくは一事業所当たり五十億円と」いうところに該当するわけですか。

○佐々木(義)政府委員 第七条でカバーされます。

○前田(正)委員 それじゃ、次に、第三条の「原子力事業者周の核燃料物質の運搬により生じたものである」というところがありますが、もちろん、この「運搬」ということは、国の内外全都を含めた意味だと思いますが、そういう意味に解釈していいわけでしょうか。

○佐々木(義)政府委員 その通りでございます。

○前田(正)委員 そうしますと、第七条のところでありますが、一応問題になると思うのは、特にこの中で「一隻当たり五十億円」ということが書いてあります。実際問題として、アメリカの場合のように、濃縮ウラン等のような核燃料物質を、日本とアメリカの門だけで船が往復して運搬する場合は、日本とアメリカだけの間でありますから問題ないと思うのでありますが、これが各国に寄っていく場合――特に一番問題になるのは、コールダーホールの場合には、使用済み燃料等は返さなければならぬ、そういうものが、イギリスに行くまでの間に各国に符っていくようなときに、この一隻当たり五十億の保険で十分であるかどうかという問題が出てくるのじゃないか。さらに、原子力船が実際に就航できるようになった場合においては、一隻五十億というようなことで原子力船の寄港ができるかどうかという問題が出てきて、五十億では「一工場著しくは一事業所当たり」はいいかもわかりませんが、船の場合は足りないのじゃないか。いずれ、船の場合については、国際的な条約の関係で自家保障体制というものがある程度できると思いますけれども、アメリカの場合なんかは五億ドルも出すことになっておる。これはどう考えておるのか、その点もお聞かせ願いたいと思います。

○佐々木(義)政府委員 国際間の損害賠償額等に関しましては、別途処置する必要があろうかと思います。おそらく、この五十億は国内的な、内海に入った場合の、日本の保険会社対日本の事業者周の保険契約の額を定めてあるわけでございます。

○前田(正)委員 そうすると、別途というのはどういうふうにやるのですか。さっきの三条では、内外の運搬にかかわらず、全部それは原子力事業者が損害の賠償の責めに任ずるようになっておる。国際間のものはどこにも出ていない。あるいはそういう処置を再保険か何かでやられるのかもしれませんが、そういうところはどう考えておられるか、それをお聞きしておきたい。

○佐々木(義)政府委員 この五千億で相手国の加工業者等が承知する場合には、もちろん、それで問題ないわけでございますが、それ以上を要する場合においては別途の処置が必要だ、こういう意味でございます。

○前田(正)委員 別途の処置が必要であるというけれども、それはどう処置を講ぜられるのか、それをお聞かせ願いたい。

○佐々木(義)政府委員 それは、私契約等で、保険契約あるいは契約の内容等で処理をする問題であります。

○前田(正)委員 その点、どうもちょっと不明確のように思いますが、もう一ぺん、国際間の場合の補償体制はどうするかというようなことに対する外国の資料とか、あるいはもう少し考え方があったら、まとめて一つ出していただいて、また、次の機会に私は質問をいたしたいと思います。

○中曽根国務大臣 その点は非常に重要なポイントでございまして、現在、国際原子力機関におきまして、こういうインターナショナルな場合の損害保険あるいは補償という問題につきまして、どうすべきかということを、専門家を集めて研究しております。それから、最近、海上における人命の安全のための国際条約という例の海事機構に関する膨大な条約の総会が近くロンドンで聞かれることになっておりまして、その際、原子力船をどうするかということも議論の主題になっております。それらの問題と合わせまして、日本の場合における各船の寄港地その他における補償の問題も検討いたしたいと思いまして、もう少し国際的標準が確立するのを見まして、国内的法体系の整備を行ないたいと思っております。

○前田(正)委員 大臣の答弁で大体わかりましたけれども、そういうときには、また国内的に必要な法体系その他の整備をされるということでありますから、一つ政府の善処をお願いいたしたいと思うのでありますが、今、日本として具体的にそういう事態が起こってくるということは、コールダーホールの燃料を返す場合とか、あるいは日本で原子力船が建造された場合で、時間的余裕があると思いますけれども、十分な対策を一つ政府としてお願いをいたしたい、こう思います。
 それから第十条についての資料をきょういただきました。いただきましたけれども、補償料のところがどうも不明確であります。保険料的考え方を基礎として算定すると書いてありますけれども、大体こういう補償料というようなものは、保険に対しましては、民間としては相当の責任があるから十分な保険料を払っていると思うのでありますが、民間の保険でカバーできないようなものによって生ずることであります。しかもまた、これはほとんど起こり得ない。災害自身が大体起こり得ない特別の場合のことでございます。特に地震とか噴火によるというようなことはめったに起こり得ないことでございますが、政府はそれを補償しようというのでありますから、当然この補償料というものは、非常に金額の低い管理手数料的なものでなければならぬと思うのでありますが、この政府の案によると、保険料的な考え方ということになると、多少採算を考えたような補償料ということになるのじゃないかとも思います。この点は、一つきょう資料を出された原子力局にまずお聞かせ願って、それに対して大蔵政務次官からの御答弁を一つお願いをいたしたいと思います。

○奧村(又)政府委員 お答え申し上げます。第十条の二項にありますように「補償契約に関する事項は、別に法律で定める。」ということで、今御提案の法律が成立後、政府の方針を検討し、定めるわけでありますが、その中において補償料をどのようにきめるかということでありまして、ただいま各国の例その他いろいろ調べておりますが、はっきり御答弁申し上げるような材料が実はまだございませんので、御了承願いたいと思います。

○前田(正)委員 各国の例等は調べておられると思いますけれども、大体各国とも、こういうものに対しましては賠償措置によって保険でできないものに対する政府の補償というような考え方のものであります。それからまた、原子力の賠償補償でありますから、保険でカバーできないような特別の事態ということでありますので、これは保険料的な考え方でやってはとても事業者としては成立しないのであります。従って、これは政府の補償でありますから、特別な管理手数料的な考え方でやってもらわないと、政府補償という意味が成り立たないのです。保険料的な考えなら保険なんです。人体政府が補償してやろうということでありますから、管理手数料的な考え方できめてやってもらわなければ、これは大体、今、別の法律で定めるということでありますけれども、その考え方というものは、この法案を通すときに私は非常に重要な考え方じゃないか。先ほどから言うように、私たちは、国家補償というものを強く要求して、この法案をぜひ早く作るようにということを再三要求しておるところでございまして、特にこの分については、もう一ぺん、一つ政務次官から、管理手数料的なもので政府としては補償される、そういう考えでおるということを――率は幾らにするということは今明確にはできなくても、考え方を一つ述べていただきたい、こう思います。

○奧村(又)政府委員 重ねてのお尋ねでありまして、大蔵省としても、はっきり申し上げられる限りにおいてはできるだけはっきり申し上げたいと思いますが、お説の通り、こういう災害はあってはならぬし、また、万々一あった場合、その補償料をどう考えるかということであります。科学技術庁の原子力局からも案を持ってきておられます。大蔵省もいろいろ検討しておりますが、ちょっと私としてははっきりお答えいたしかねます。

○前田(正)委員 それでは、その点は一つそういう希望であるということで、われわれとしては、はっきり政府に善処をお願いいたしまして、いずれまた法律で出てくると思いますから、われわれもまた審議さしていただきたいと思います。
 それでは、次に、一番問題でありまする十六条の問題について、一つ明快な御答弁を願いたいと思うのであります。この十六条の最後に「必要な援助を行なうものとする。」とありますが、「必要な援助」の範囲というものは、損害が起こりまして、賠償する必要がある場合には、その必要な範囲すべてに対して、この事業者が自分の責めに任ずべきものは自分の責めに任じ、あるいはまた、保険でやるべきものは保険でやりますけれども、それでカバーできないものに対する必要な援助というものは、すべての賠償を事業者ができるような程度までの必要な援助をするというふうにわれわれは解釈したいと思うのであります。そうしないと、もし一部でも残るということになれば、それから先のことは、結局被害を受けた公衆の方が自分で負担しなければならない、こういうことになるわけでございますから、当然必要な援助というものは、賠償する必要な範囲のもの、それを全部にわたって賠償ができるまでの援助をする、こういうふうに解釈していいと私は思うのでありますけれども、これは一つ大蔵政務次官から明瞭に御答弁願います。

○奧村(又)政府委員 ごもっともなお尋ねでございます。しかし、一体どんな損害が発生するのかということがわかりませんで、それをすべて援助できるかというお尋ねでありますと、これは非常にむずかしい答弁であります。そこで、十六条の第二項におきまして「国会の議決により政府に属させられた権限の範囲内において」とありますので、御趣旨の通り、あらゆる援助をしなければならぬが、そういう建前でもって国会の議決を求めておるということでありますから、その程度で御了承いただきたい。それ以上は、私はちょっとお答え申し上げられないと思います。

○中曽根国務大臣 第十六条の法文解釈は、第一条に本法律案の目的が明記されております通り、「被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資する」これが大きな目的になっておるわけであります。このために必要がある場合において必要な援助を行なう、すなわち、五十億円をこした場合に、ある事業体が自分で被害者に賠償し得る能力がある、そういうふうに客観的に認められる部分は事業者が出しますけれども、その限度を越えて、しかも、客観的に認定された損害額との間の部分というものは、これは当然第三者に対して賠償すべきものでありまして、その部分に関しては国家が満配するという意味であるとわれわれは解釈しております。そういう立法の趣旨でありますから、第一条に「被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資する」という目的が、実は明記されておるのでございます。ただし、それは国会の議決によって、政府に属させられた権限の範囲内においてという制約がございますから、国会の御意思によって、それが修正されるということもあると思います。法律を作るのは国会でございますから、国会の権限の範囲内ということになるとは思いますが、立法の趣旨は、第三者にいささかも不安なからしめるという意味がございますので、そのように解釈しております。

○前田(正)委員 国会の議決ということは、もちろん、われわれの方も、政府からの報告を受け、また、原子力委員会からの報告をもらいまして、十分に必要な処置を議決しなければならぬとは思います。もちろん、政府は、国会の議決のないものに対してやるわけにはいかぬと思いますが、ただ、きめられている予算の範囲内でやるというわけではないと私は思うのであります。必要ならば補正予算等も出せるわけでありますから、この点については、特に一番関係あると思うところの茨城県の知事からも、われわれ委員全部にあてて陳情が出ておりまして、政府は被害者に対して完全な補償を行なうよう明定されたい、こういうふうに陳情が出ておるわけであります。この点は、大臣の今のお話のように、目的からいっても、必要な援助というものはやるのだということでありますから、いやしくも、被害者の負担になるということのないように、われわれの国会の方においても、政府が必要な議決を求めるなら、当然それをやらなければならぬと思うのであります。とにかく、必要な援助は、保険あるいは事業者自身、あるいはまた、政府の援助というもので、被害者の方には負担がかからないように完全に行なえるのだ、こういうことでなければ、この法律を作った目的は達成できないと思うのでありまして、その点、当事者であります茨城県知事からもそういう陳情が出ておりますので、重ねて大臣と政務次官から、そういう必配はないということだけはっきり御答弁願いたい。

○中曽根国務大臣 第十六条の第一項の後段をすなおに読んでみましても、「原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。」とあるわけです。従って、損害が客観的に認定されて確定された場合には、原子力事業者が、自分で払える分はもちろん払いますが、それで払い切れない部分については、損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。行なうものとするという意味は、行なうを要すというところまで強くはありませんが、国はするものであるという意思表示をしているわけであります。従いまして、その原子力事業者でカバーできない残りの部分については、これは国が行なうという意思表示をしておりますから、法文をすなおに読んだ意味におきましても、そこに空間はないということになると私は思います。

○奧村(又)政府委員 建前として、ただいま科学技術庁長官のお述べになりました通りでありまして、しかも、それを実行するために、二項において「国会の議決により」とありますから、私は、これは補正予算をも組むという場合も想定しておると思うので、それも含めまして、政府に属せられた権限の範囲内において援助を行なうということでありますから、ただいまの御趣旨に沿うものと存じます。

○前田(正)委員 今の御答弁の通りであれば、非常に一般の人は心配はないと思うのであります。また、われわれ国会におきましても、政府が完全に必要な援助を行なうために必要な議決を求められれば、政府からの報告もありますし、また、原子力委員会からの報告もありますので、当然私は議決ができる、こう考えますので、一つ政府は、一般の人が心配ないような処置を行なってもらいたいと思います。
    〔委員長退席、西村(英)委員長代着席〕
 ただ、ここで一つお聞きしておきたいと思いますのは、原子力事業者が、なるほど保険でカバーできるものはもちろんでありますが、保険でカバーできないものに対しても、自分の許す範囲のことはやるべきであると思うのであります。しかし、原子力事業者は、それじゃ破産をするまで全部の負担をしていかなければ、政府は必要な援助をしないのか、こういうことが一つ問題でありまして、原子力事業者というものは、もし破産するまですべて責任を負わなければならぬのだということになってくると、事実上原子力事業者に対しましての原子炉の売買契約というものが、なかなか成立しにくいという問題が出てくるのではないか。だから、当然保険とか、あるいは国家補償ということでやることはやらなければならないし、また、原子力事業者自身も、自分でできる範囲のことはやらなければならぬと思いますが、突き詰めて、破産するまでやらなければ政府が必要な援助をしない、こういうことではないと思う。それでは、この第一条の目的の「原子力事業の健全な発達に資する」ということにはならないと私は思うのでありますが、これはどういうふうに解釈いたしますか、お伺いしたいと思います。

○中曽根国務大臣 その点は、御趣旨の通りでありまして、第一条の「原子力事業の健全な発達」ということもこの法案の目的でございますから、原子力小業が健全に発達できないような措置は含まれないと解釈しております。たとえば、発電会社のような場合には、電気料金というものは、公益事業で統制されて、政府の認可を要するわけであります。電気事業者が勝手に上げるというわけには参らないものであります。そういう面からしましても、発電会社等の経営というものは、一定の限度があり、また、公共性があると思うのであります。そういう上から統制を受けておるものについて、会社が壊滅的打撃を受けて原子力事業が発達できないような措置を、この第十六条において期待しているものではないのであります。やはり国が料金を統制している以上は、ある程度原子力事業あるいは発電事業というものの健全な発注、あるいは大衆に迷惑がかからないようにするということも考慮の中に含まれているものでありまして、御趣旨の通りであるとわれわれは考えております。

○奧村(又)政府委員 これはむずかしいお尋ねでありまして、この法律では、損害が起こった場合に被害者の保護をはかり、それから原子力事業の健全な発達に資するという趣旨でありまして、被害者の保護という規定については、民間における損害に対する保険と、それから、それを補完する意味の政府の補償措置と、それでも足りない場合の第十六条の国の措置というものでありまして、それ以上に国としても、また、財政上の立場もありまして、何かはかに具体的にせよというお尋ねでありましょうが、私は、これで一応被害者と原子力事業者を守る規定は完備しておると思います。

○前田(正)委員 そういう意味じゃなしに、今、大臣から御答弁がありました通り、国が必要な援助を行なうというときには、原子力事業者というものは、保険とか政府の補償とか、あるいは自分で負担できる範囲のものは負担して、それでも足りないところは政府の必要な援助を受けるわけでありますけれども、しかし、原子力事業者が事業として成り立たない、破産をする程度までやらなければ、国は補償しないということではこの法律の目的を達しないから、やはり原子力事業の健全な発展に資するという程度において、国が必要な十六条の援助をする、こういうことでどうか。それは、今、大臣もその通りであるというような御答弁であったのですが、政務次官はどう考えるかということをお聞かせ願いたい。

○奧村(又)政府委員 先ほどの私の答弁は、少し言葉が足りませんでしたので、つけ加えて申し上げますと、原子力事業者が、第十六条の規定の場合に、破産してもかまわぬのかということでありますが、決してさようなことは考えておりません。つまり、第三章の損害賠償措置において、賠償措置が十分できない、その額をこえた場合において、原子力事業者に対して必要な援助を行なう援助の内容というものは、補助もあるし、貸付もあるし、融資もありますし、つまり、国の力を相当加えて、被害者に対しての援助を十分いたしますという意味でありますから、逆に言えば、原子力事業者を破産に追い込むまで、原子力事業者だけで被害者の損害を埋めろという意味を持っていない、こういう意味で、中曽根大臣の御答弁と同一でありますから、御了承願いたいと思います。

○前田(正)委員 わかりました。それでは最後に一点だけ。
 さっき労働省の人がおられなかったので、ちょっと労働省の人にお聞かせ願いたいと思うのでありますが、第二条の第二項でありますか、「原子力事業者の従業員の業務上受けた損害を除く。」ということになっておるのであります。これに対しましては、労働省において別途の処置を考えておられるそうでありますけれども、現在どういうふうにその作業が進行しておられるのか、また、いつごろにその労災法等を修正して提出される考えであるか、そこの作業と時期を一つお聞かせ願いたいと思います。

○村上説明員 今の従業員の損害補償の問題につきましては、立法の過程におきまして、科学技術庁と十分連絡いたしまして検討して参ったわけであります。その点につきましては、私ども、外国のこの種の災害に対しますところの従業員の災害補償という制度がどのように行なわれておるかという点についても十分関心を持ち、検討をいたしたいと思っておりますが、何分にも、外国の例は数少なうございまして、現在のところ、一般の労働者災害補償法の体系で処理しておるというのが大部分のようでございます。従いまして、にわかに、労働省として、労働者の災害補償、特に業務上の災害補償という点から特別な制度を新設するという点については、十分慎重に検討を要するのではないかというふうに考えておるわけでございます。
 なお、前田先生御承知の通り、業務上の災害補償につきましては、たとえば、炭坑の爆発であろうと、あるいは火薬爆発であろうと、災害原因の種類を問わず、一律に、災害が生じた場合には使用者の責任として、労働基準法に基づく使用者責任ということで問題を処理しておるわけでございます。それ以上の災害補償という問題になりますれば、これも前田先生御承知の通りと存じますが、労働基準法の、使用者の災害補償責任と申しますのは、いわば労働基準の最低基準を定めたものでございますので、それ以上の補償をどうするかという点については、労使の問題として、労使間の自主的な取りきめにゆだねておるという制度になっております。そのような関係もございますので、なお慎重に研究、検討させていただきたい、かように考えておる次第であります。

○中曽根国務大臣 従業員の業務上の損害につきましては、労働大車と私との間で、労災法をどういうふうに修正するか、たとえば、後発症というような問題で、今までの労災法の特例のような長年月のものも出てくるかもしれない。そういういろいろな面からいたしまして、原子力従業員の特殊性、あるいは日本の独特な事情、外国の立法例等々も考慮してよく検討しようということで、いずれ、これがための審議会のようなものを設けまして、関係各方面から権威者を網羅して御意見を承りまして、その結論によって労災法に関する措置を行なう、こういう打ち合わせになっております。

○西村(英)委員長代理 松前さんに発言を許しますが、実は、奥村政務次官が建設委員会から出席を求められておりますので、もし奥村政務次官に対する質問がありますれば、先にお願いいたしたいのであります。
    〔西村(英)委員長代理退席、委員
  長着席〕

○松前委員 政務次官はけっこうです。
 この法案に関連して大臣の所見を伺いたいのでありますが、原子力損害の賠償に関する法律案の提案理由の大体の御趣旨は、もっともなところも相当にあるのでありまするけれども、ただ、私どもが非常に心配することは、原子力損害の賠償というような問題を今世間に出す場合において、原子力には損害があるという前提の上に立って、そうしてそれは賠償しなければならないというような印象を、日本の特殊性として与える可能性が非常に強いのであります。御承知のように、原子炉の設置に関しては、東海村は別として、あらゆるところで、日本においては、まことに笑止千万な現象ではありまするけれども、反対運動が起こって、そうしてこのために設置が阻害されてきておる現状であります。それはすなわち、原子力というものは損害を与えるものであるという前提の上に立っておるのでありまして、それに、今度の原千力損害の賠償というような問題をまた発表された場合におきましては、これはまた、国民の中に不安感を与える可能性が非常にあると思う。西欧諸国やアメリカあるいはソビエト等の国情と日本とは、その歴史的な特性が相当違うし、いろいろな意味において社会条件が違うのでありまするから、外国のまねをして、一律にこのような意味においての法律案を出すことに私は反対であるというのではないのでありまするけれども、こういうような出し方について、よほど気をつけなければならないというふうに考えるのであります。そこで一言申し上げたいことは、原子炉の設置に関して、従来原子力委員会は何らの基準も定めておりません。あるいはたった十ワットぐらいの小さな原子炉が危険であると言うてみたり、あるいはコールダーホール型のような膨大なものは危険でないと言うてみたり、一体どこに基準があるのか、感情でやっておるのか、お手盛りでやっておるのか、それがわからない。これが私は現在の原子力委員会の状況であると思う。まことに学者らしくない態度をもって、具体的な数字をもって提示せよという公開質問状を出しても、それに対しては具体的な数字が出てこない。そのような非科学的な取り扱いのもとにおいて、国民はやつはり不安を感ずるであろうと私は思う。こういう意味におきまして、まずもって原子炉設置の基準を、どのぐらいまではどの程度の施設をやれば大丈夫だ、どのくらいのパワーまではどの程度だ、どのくらい以下はこの程度でよろしい、安全でありますよということを、国民の前にまず提示するのが前提条件ではないかと思う。その前提条件の上においてのみこういう問題があとから付随してくるのである、こういうふうに私は思う。今までの原子力委員会並びに科学技術庁全体の取り扱い方を見ますると、まことに支離滅裂、ほんとうにそこに科学的基準というものは一つも定めてない。大体これはよかろう、長たらしく何か理由が書いてありまするけれども、そこにせつ然たる一つの基準というものはない。そうして、つまらぬ、小さなものを危険と言うてみたり、それの何億倍大きなものを危険でないと言うてみたり、一体何のことやら全然わからない。しかも、そういうことを決定したところの委員会におけるその委員というものは、初めから終わりまで変わっていない。同じ委員によって、そういう支離滅裂な結論が与えられておる。こういったような状況において、はたしてこの原子力損害賠償に関する法律案が提案されたときに、やはりこれは原子力に対しては損害があるんだ、賠償まで政府はしなくちゃならないじゃないか、さあ危険だという印象を与えることによって、日本の原子力の発展を阻害するおそれがある。すなわち、前提条件である原子炉の設置の基準が定められてないというところに基本的な欠陥がある、私はこう思う。だから、そういう意味において、科学技術庁長官は、原子力委員長としてどのようなお考えであるかを伺いたいと思います。

○中曽根国務大臣 従来の審査におきまして、支離滅裂であったとは私は思いません。安全審査部会におきまして、一定の基準をもって――まあ抽象的な基準では、平和目的とか、あるいは人員の点とか、技術的能力とか、あるいは資本的要件とか、あるいは炉自体の安全性の確保とか、そういう項目がございまして、それを一々検討してやっておるわけでありますし、安全性につきましては、炉の内部における放射性の限度、あるいは炉体を置いておりまする部屋の中における放射性の限度、あるいは構内におきまする放射性の限度等々、正確に測定いたしまして、そうして、大体国際水準よりもっときびしい限度の放射性の基準限度というものをもって、安全基準をはかっておるわけであります。ただ、日本のような特殊な場合には、周囲に対する環境ということもございますので、まわりの住民との関係とか、あるいは下水、排水というようなことも考慮しなければならぬのでありまして、そういう点は、それぞれのケース・バイ・ケースで考慮しておるのでございます。小さいものだからといって特に重要視するわけでも、軽視するわけでもありませんし、大きいものだからといって、不当におそれるものでもありません。要するに、科学的基準によって、数学的計算をもってはじき出してやっておるのであります。

○松前委員 科学的基準がおありになるそうでありますが、それを一つお示しいただきたいと存じます。今まで二、三の原子炉をお取り扱いになっておられるようですが、あなたの御就任前の問題から引き続いての一連の原子力行政に対するあり方について申し上げておるので、従って、今日もし基準ができておったならば、それを一つちょうだいしたい、そうしてまた、論議をいたしたい、こう思うのです。よろしゅうございますか。

○中曽根国務大臣 技術的な問題でありますから、私の方の法貴次長から答弁させますが、大体何レムぐらい出たらどうであるとか、あるいは周囲の環境におきましては、大体の基準として、この前のファーマー報告というものもある程度考慮に置きながら、日本の状態を考えつつ設置の安全を考える等々、そういう考え方の基準がございます。

○法貴政府委員 ただいま大臣の御説明にありましたように、ある程度の基準があるわけでございまして、たとえば、原子炉の周辺何メートル程度に稠密な人家がないことであるとか、その他、今の大臣のお話にもありましたように、放射線の許容量につきましては相当明確な、国際的な取りきめもございますし、それから規制法でそれを定めておりますし、それから緊急時退避線量等についても、最近、放射線審議会等に諮問しまして、ある程度の具体的な数字が出ております。それから、単なるそういう数字だけでなしに、その数字に対する取り扱い方と申しますか、許容量の与えられた数字と、その廃棄物処理の具体的な方法等に関しましても、ある程度のめどがございますので、そういう点を取りまとめまして、現在考えておりますごく大よその基準的なものというものは、資料としてお出しできるかと思います。しかし、まだ一般的に申しまして、原子炉というのは非常に多種多様でございますので、非常に技術的なこまかい点まで、具体的に基準としてはっきり仕立てるということは非常に困難で、そのために、現在でも安全基準部会において、たとえば、気象条件を安全審査にあたっていかに統一するか、それから立地条件等をいかに統一的に考えるか、それから、緊急時線量の大体の数字はあっても、それを実際に当てはめて――たとえば、それと大気条件との関係において、どういうようにそれが地表に沈降し、それからそれが農作物に入っていって、摂取制限を行なわなくちゃいけないかというような、具体的な考え方を統一するというような問題は、まだすっかり共進的に考え方が統一されておりませんので、今後安全基準部会並びに放射線審議会等の御意見を聞きまして、十分固めていきたいというように考えております。

○松前委員 私が申しまするのは、先ほどお話しをしたように、大体国民の中には、まことに遺憾ながら不安感が残っておりますから、それらの不安感を除去するために、必要なる政治的措置をとる必要がある。しかし、単なる政治的措置だけではこれはできないのでありまして、どうしても科学的根拠を持ったところの基準を通じて、この政治的な行為によってこれを国民に了解せしめる、こういうようなことが非常に私は大事であると思うから、このことを申し上げておる。それがないと、いかにも原子炉は危険だ、危険だというような印象を国民に先に与えてしまっておる歴史的な事実に基づいて、国民は考えるのでありまするから、こういう場合においては、どうしてもやはり、この程度のものならばこのくらいの措置を講じ、この辺でやれば大体大丈夫だ、非常に大きなやつはこういうふうな防護措置を講じ、そうしてまた、こういう環境を整えれば大体これでよろしいのだ、小さいやつはもう大したことはないが、とにかくこの程度やりたまえ、こういうような大体の基準を与えて、国民に――まあこれだけやっておけば大丈夫なんだ、あとは政府で適当にやるからまかしてくれ、こういうふうなところで、国民に対するアピールをする必要があるし、政府はまた、その責任があると実は私は思うのです。これは、私は前からそのことを考えておったのでありますが、完全なものは、もちろんまだ原子炉の開発の途上にありますから、これは永久にできないと思う。これは学問のことはそうだと思います。けれども、現在の段階において、一応の見通しをつけて、そこに基準は私はでき上がるものだと思う。今お話しの個々のもの、いわゆるどの程度の放射能のやつは許容量はどうであるとか、外国よりも少なくしたとか、多くしたとかいうようなお話がありますけれども、それは多くしょうが少なくしょうが、私はそういうこと言っておるのではない。多くても少なくてもいいが、とにかく、われわれは、少なくとも、政府はこの程度ならば、こういう環境のもとにこの程度の施設をし、そしてまた、この程度の運転要員をもってやるならばよろしいというような基準を一つ作って国民に示す必要がある。しかも、それはおおらかなものでよろしい。あまりこまごましたものを一々長たらしくなにせぬでもいいのでありまして、そういうものを国民に示して、こういう基準に基づいて原子炉をどんどんやりなさい、政府はできるだけ援助しましょう、こういう方向に持っていかないと、原子力の開発というものと、これに対する国民的な意欲というものはなかなか沸いてこないし、また、あっても、これがだんだんつぶされていく、こういうふうになると私は思うものだから、実は質問をいたしておるのでありまして、こういう政治的な意味においての国民的アピールとしての、政府の現在の原子力研究の段階における確信ある設置基準、そして、その設置基準なるものについてはいろいろあります。しかし、それも大体大別をして大中小その他に分けて、もちろん、原子炉の型やその他によって違いますけれども、それらのことも多少中に織り込んで、そうして大体の目安を国民に与えてやって、それならよかろう、あとは政府が監督するから大丈夫だろう、こういうふうなところに国民を了解せしめる、こういう必要があると私は思うのでありますが、この点について国務大臣の御意見を承りたい。

○中曽根国務大臣 御趣旨は同感であります。国民に対する啓蒙的意味における安全基準というものを作りまして、一般国民にそれを示して安全感を与えるということは、日本の現在の状態から見ますと、非常に重要であるように思います。従いまして、その方向に向かっていろいろ努力していきたいと思います。

○松前委員 この点はぜひ一つ、あなたの在任中にまずやっていただきたいと思うのです。特にできるだけ早くこの問題をやっていただきたいと思うのは、このような原子力損害賠償に関する法律案等が出てくると、今のところ、少し新聞記事が多いものだから、これが大きく出ませんけれども、ふだんならばこれはだいぶ大きく出る。そうすると、これはまた危険なものだ、政府まで危険だと認めた、こういう印象を与えたのでは、これは開発どころか、むしろ開発を抑制する法律案になりやすい。私がそういう感覚を持ったのは、体験からいっておるのでありますから、この点は政府でもよく考えて、早急にこの問題は、一つ国民に対する指導的な立場においてのアピールを考えていただきたい。アピールだけではありません。それはある程度確信ある科学的基準に基づいてやっていただきたい、こういうふうに思います。
 その次は、いろいろだくさんありますけれども、きょうはちょっと急いでおりますので、後日に譲りまして、要点だけ申し上げて御質問してみたいと思うのです。それは原子力保険と申しますか、この保険に加入するのに、お金を出さなくちゃならないという。原子力業者がお金を積まなくちゃならぬ、こういう話です。これはどうでしょうか。お金を出して原子力をやってもうけようなんという人は、今のところ、だれもおらぬだろうと思うのですけれども、もうけようという人間がいないときに、お金まで出さなければ原子炉設置を許さぬということになると、原子炉設置希望者というものは、よほど篤志家は別として、原子炉設置を誘発し、それから原子力の研究をどんどんやるという政策ではなさそうな感じがするのです。ただし、それに対しては、大蔵政務次官は助成か補助かを出すという話でありますが、助成か補助を出すことはまことにけっこうでありますが、助成か補助かを出されますその金額によって、原子炉の設置という数、その規模というものは制限される、それ以上のものは許されないということになる。そうすると、政府成立の予算以上に原子力開発が行なわれようとしても、それ以上はまかりなりません、それだけは限度として許しましょう、こういうことになるのであります。それ以外は自分で負担なさい、こういうふうになるので、先ほど前田君の御質問まことにけっこうな質問でありましたが、それに関連したものとして、そういう感じを私は持つのであります。原子力の開発を、こういうことによって誘発するのではなくて、抑制しはしないだろうかということ、もう一つは、助成をするとしても、その助成金額によって原子炉開発の限度、アッパー・リミットを完全に押えてしまいはしないか、こういうふうに感ずるのです。これに対して中曽根国務大臣、どういうふうにお考えですか。

○中曽根国務大臣 企業体が行ないます原子炉、たとえば発電というような場合には、当然、保険料等もコスト計算の中に含まれまして、原価に入っていくわけであります。ただ、先ほど御質問がありました補償契約の場合は、一方においては保険料を払い、保険でカバーできないものについては補償料を払うということになると、かなり企業に対する負担も増と考えられますので、保険料等については、原子力事業の健全な発達ということを考えて、考慮しなければならぬと思います。もう一つ考えられますのは、大学等の研究用の原子炉でありまして、日本の現在の状態からいたしますと、研究用原子炉は非常に必要であります。しかし、これが設置にはかなりの費用もかかります。そういう面から見まして、このために、保険料支出等で、相当な負担が大学の公私立を問わずかかるということは、この発展を阻害するおそれがあると思います。従いまして、この法案ができましたらば、当分の間は、原子力委員会といたしましては、そういうような大学等の研究用原子炉につきましては、何か助成を行ないまして、保険料の負担等は軽減せしむるような措置を講ずるように、関係各省と協議して、実現いたしたいと思っております。

○松前委員 大蔵省の御意見はいかがですか。

○奧村(又)政府委員 私は、実は御質問の途中から入りましたので、詳しい内容をちょっと聞き漏らしておるかと思いますが、供託のことをおっしゃっておられるのであろうかと思います。私も、実はこの供託ということは、実際はほとんどないだろう、それよりも、損害賠償措置として、責任保険契約あるいは政府の補償契約ということで、万一の場合に備えるというふうに考えますので、供託はほとんどなかろう。しかし、これは法律の建前として、両方ともない場合には、供託ということも、一応建前としてつけ加えたので、決してそのために原子力事業者がふえないというようなことはないと考えます。

○松前委員 なかなかここはむずかしい問題だと思います。むずかしい問題だと思いますが、いずれにしても、現在のいろいろな経済機構の中で、体制を絶対にくずさないで、そうしてこの原子力開発を促進するような行政、ことに災害に対する補償その他の問題を解決するということを、現在の経済機構をくずさないでやるということは、多少矛盾があるのではないか。この法案の内容に、非常に苦心して作っておられるのでありますが、現在の経済機構というものをあまりくずさないでやるという気持があるものだから、少し割り切れぬところが出てくるのではないか、こういうふうに思っております。たとえば、原子力だけの保険会社でも作って、保険料を払い込ましてやるような会社を作れば、原子炉がどのくらい設置されるか知りませんけれども、たくさん設置せられた場合、非常にもうかる会社だと実は思うのです。災害は起こりませんよ。私は起こらないと信じます。それは、コールダーホール型は災害は起こるだろうという注意はしなくちゃいかぬのでありますが、大体原子炉というものは、これでもかこれでもかと三重、四重に、災害を起こすことが困難中の困難のようにでき上がっておるのです。これは少し原子炉の安全機構を調べてみるとわかります。災実は起こりません。ある意味においては、こんなものは必要ないといっても実は差しつかえないくらいだと思うのでありますが、起こった場合にはどうするかということに対する措置として、一応国民を安心させる意味においても、このことは必要だと思うのです。しかし、災害が非常に例が少ないという話でありましたが、ほんとうに例は少ないのであって、大きな災害等はない。そうすれば、もしこの原子力だけの問題の保険会社を作っても、これはめちゃくちゃにもうかるだろう。もし政府がやらしてくれるならば、われわれがやってもちっとも差しつかえないというくらいに、災害というものは起こらぬだろう、こういうふうに思うのです。そこで、供託とか、保険の金額の問題とか、こういうような問題が、私は、具体的には非常に大きな問題になってくるだろうと思うのでありますがどうも全体から見て、私、詳しい数字を検討したわけじゃございませんけれども、従来の保険会社に押されるような感じがする。やはり原子力は原子力としての主体性の上に立って、そして原子力災害というものはなかなか起こらぬというような前提に立って、また、起こさないという前提の上に立って、この保険その他の問題をここで取り扱っておかなければ、なかなか原子力の開発というものは困難じゃないか、経済負担にたえないのじゃないかという感じが私はするのです。漫然とそういう感じがします。いずれまた、この次に、もう少し勉強して、具体的に御質問いたしますけれども、これは感じであります。どうもこれは、もう少しその辺に対するいろいろな折衝その他において、主体的な立場から、原子力の開発に必要なる特異な問題としてこれを取り扱う、そうして現在の経済的な構造その他に対しましても、原子力に関する限りは特例として認めしめるというようなふうにしないと、なかなか原子力の開発というものは困難ではないか、こういうふうに私は思うのでありまして、その点に対して中曽根国務大臣はどういうふうにお考えになっていますか。

○中曽根国務大臣 原子力関係の事業あるいは研究体制というものは、まだほんとうの初期でございまして、また、国民の上には非常な誤解もあることでありますから、政府といたしましては、ほかの部面以上に力を入れて助成しなければ、日本における発展を期することができないと思います。私は御趣旨には同感でありますので、この趣旨に沿うべく努力して参りたいと思います。

○松前委員 今の問題、御答弁はこの法案の内容に多少影響があるかと思うのでありますが、もう少し私も詳しいことを勉強さしていただいて、再質問をいたしたいと思います。
 そこで、大蔵当局に伺いたいのでありますが、原子炉の災害による損害賠償等の問題に対して、大きな、たとえば原子力発電株式会社のごとき会社は、これは一つの経済的な企業体でありますが、そういうものは別として、研究用の原子炉とか小さな原子炉、そういうふうなものに対して大蔵省から直接助成をなさるのか、文部省を通じてなさるのか。たぶん文部省を通じて助成されると思うのでありますけれども、その文部省を通じて助成されるといたしますならば、一つの弊害を生じてくるおそれがあると思います。官立の学校も、また研究機関も、原子炉を方々に設置するでありましょう。また、設置しなければならないと思う。私学もまたやるでしょう。そのときに、結局圧迫されるものは私学である。現在でも、文部省の私学圧迫と申しますか、私学に対する指導方針は、非常に峻厳にして冷たい。そういうふうな、いわゆる官学偏重の方向に向から可能性がある。そういうことでありますから、この助成に対する何らかの基準をおつけにならなければならないのじゃないか、こういうふうに私は考えるのであります。すなわち、こういうふうな原子力開発に必要なる研究機関並びに教育機関、こういうものの原子炉設置に関して、公平なる助成を行なう措置をどのように講ぜられるつもりであるか、その辺のところを伺いたいと思います。

○奧村(又)政府委員 お尋ねの御趣旨は、非常に広範な問題でありまして、大学における原子力の研究について、私学と官学との間に不公平な措置をするなということについては、まことにごもっともな問題だと思います。そのようにできるだけ配慮して参りたい。この法律に関連しましての大学の原子力研究につきましては、ここにありますように、政令で定めまして、特別の措置を講ずる。また、保険などについては、中曽根大臣が先ほど御答弁申し上げましたように、保険料に対する国の補助ということも、これは研究してみるべき問題であろうと考えるわけであります。

○松前委員 たとえば補償の問題等におきまして、私が申し上げるのは、災害は私は起こらぬと思いますが、しかし、あるかもしれぬから、こういう法律が出る。そのあるかもしれないレア・ケースが起こったときに、これを補償しなくちゃいけない。それから政府はある程度それを補助するということになります。そうなりますと、私学やあるいはいろいろな私企業に対しては、補助金を出すけれども、全額じゃないのです。先ほど前田さんから質問したときの御答弁のように、全額ではないが、国立の研究所やあるいは国立大学等において、何か災害が起こって補償しなければならないときには、補償されるのは全額ですね。そこに大きな差があるということを申し上げておる。そこにどのような考え方をお持ちであるか、伺いたい。

○奧村(又)政府委員 国の施設についての保険とか損害賠償というのは、国が全額賠償をいたします。私学が原子力の研究施設を持つということになれば、これはこの法律に基づく損害賠償の措置が必要になるわけであります。そうしますと、ただいまお尋ねのように、官学と私学との間に非常に差が生ずるということでありますから、私学の場合にどうするかということも、これは十分検討いたしまして、私学の原子力研究も促進できるように善処しなければならぬと存じておりますが、これは今後の検討を待ってお答えいたしたいと思います。

○松前委員 これは非常に大事な問題です。原子力の研究は、御承知のように、まだ緒についただけなのです。従って、今、官学、私学を問わず、あるいは官立の研究所、あるいは私立の研究所を問わず、会社の研究所を問わず、すべてにやはり政府は相当に親心を持ってこれを育成してやらなくちゃならないときだと私は思うのです。民間のものにはその危険性と責任を負わせて、そうして、お前やれというようなことでは、なかなかこれは伸びないと考える。その点は特に大蔵省としてはお考え願って、次の機会に責任ある御答弁を願いたいと思います。
 私は、これで終わります。

○石野委員 私は、前田委員の先ほどお尋ねになりました点について、一つだけ関連してお伺いいたします。
 それは、第十六条の「国の措置」の問題でございますが、先ほど中曽根大臣、それから奥村政務次官の御答弁によりますると、大臣は、第十六条によりまして災害が起きたときには、被害者に対してはこの必要な措置――ということの意味は、国家が満配をするんだという話をなさったと思います。しかし、第十六条を読んでみますると、私は、そういうふうに読めないのであります。ここに書かれておりますのは結論的にいいますと、「原子力」業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。」原子力事業者が損害を賠償するということは、第三条によって規定されておる。第三条によりますと、ただし書きによって損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない。というように免責されておる。そうしますと、この原子力事業者が損害賠償するということは、第三条によって免責されておるわけです。そのはずされたものに対する必要な援助をするわけです。そういうように読まなければいけないわけです。第十六条の前段においても「原子力事業者が第三条の規定により損害を賠償する責に任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため」とある。大臣は、この法の目的を達成するため、第一条の目的規定にあります被害者の保護をはかるということを言っておるわけでありますが、しかし、その次には「この法律の自的を達成するため必要があると認めるときは、」と書いて、それを「原子力事業者に対し、」と受けてきているわけです。その原子力事業者に対して国家が損害賠償するために必要な援助を行なうわけですから、免責されたものに対しては援助がないということになってくる。ですから、第十六条を、大臣が言われたようにするためには書き改めなければいけないし、この条文解釈からいきますと、どうしても免責事項に対しては国家は何も援助する必要はないということになってくる。そのことは、第十六条の二項においてあるいは保護されるかもしれないけれども、大臣が先ほども言っておりましたように、第二項は国会の議決によって制約をするということまで言っておる。制約という言葉の意味は、損害が出て、それが全額何億になるか何兆円になるかわかりませんけれども、それが全部補償できないときには国会の議決によって制約をされるということの意味であろうと思うし、また、その通りであるとわれわれは理解するわけです。従って、大臣が先ほど言われたように、第十六条というものは災害を受けたものに対する満配規定ではないということに私は理解するのですが、私の理解の仕方は間違っておるのでしょうか。

○中曽根国務大臣 今の点は、少し誤解があるようでございまして、第三条におきまする天災地変、動乱という場合には、国は損害賠償をしない、補償してやらないのです。つまり、この意味は、関東大震災の三倍以上の大震災、あるいは戦争、内乱というような場合は、原子力の損害であるとかその他の損害を問わず、国民全般にそういう災害が出てくるものでありますから、これはこの法律による援助その他でなくて、別の観点から国全体としての措置を考えなければならぬと思います。戦争のような場合に船が沈む、その保険の支払い等いろいろな問題も出てきましょうし、戦災にあうこともございましょう。従って、そういう異常巨大な社会的動乱あるいは天災地変というような場合には、これは別個のもので取り扱われるので、その限りにおいては、政府に法律上責任はない、そういうことになるのであります。それで第十六条に書いておりますのは、五十億円までは保険をかける、ところが、五十億円以上の、イギリスでやっておる再保険を引き受けてくれませんから、その五十億円以上の再保険にかからない、保険ではカバーできないものをどうするかということをここで規定したわけであります。その部分については、ここに書いてありますように「必要な援助を行なうものとする。」と書いたのは、行なうことができるというのではないのでありまして、国がやるのだということを明言しておるのです。しかも、それは「原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助」というのですから、その業者の企業能力によっては、銀行から金を借りて、そして被告者に払うという場合もありますし、国が国家融資をしてやるという場合もございましょうし、あるいは補正予算を組んで補助金をやるという場合もありましょう。しかし、いずれの場合にせよ、客観的に損害額が確定された場合に、業者が自分で支払える限度まできて、しかも、もうそれ以上払えない、原子力事業の健全なる発達という面からしましても、これ以上払えないという限度以上の損害額があって、まだ第三者に払ってない、そういう場合には、その全部についてこのような必要な援助を行なって払わせる、そういう意思表示なのでございます。

○石野委員 私は、この第三条のただし書き規定、いわゆる免責事項というものが第十六条においては排除されているものであるということがわかれば、それはそれでよろしいのです。しかし、そういうことになりますると、先ほど前田委員が聞かれておりましたことは、やはり被災者というものは、受けただけのものをなるべく満配してほしい、特に茨城県知事からの要望書というのは、その免責事項に関連する、しないにかかわらず、出たところの損害に対して満配してほしいということの要望が出てきているわけでございます。また、そういうような意味において前田委員は質問されたと私は受け取っておるわけでございます。だから、前田委員の質問は、その第三条の免責事項の意味を排除しておるという意味ではなかったと私は理解しているし、また、それを排除しているものと理解するならば、茨城県の知事から出ているところの意味をはき違えているといわなければならないと思います。だから、私は、この第十六条が、第三条のいわゆるただし書きの免責事項というものが排除されておることによって、その他のものに対する満配という意味ならば、私はそれはよく理解いたします。その場合でも、ここで問題になりますのは、この第三条のただし書きの規定の中にある「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」というものの内容が、今度問題になって参ります。ただいまのお話によりますると、関東震災の三倍大のもの以下のものは「異常に巨大な天災地変」ではない、それ以上のものであるという理解の仕方のように見受けられます。しかし、今度、そうなりますると、第三条におきまするところの「異常に巨大な天災地変」と、いうものが、その三倍以下のものは、そうすると、どこで救済されるのかということが事実上なかなか不明であります。この条文だけを見ますると、かりに、天災地変の内容が、地震及び風水害だという理解に立ちました場合に、地震の限界、風水害の限界というものを正しく出さないと、第三条を正しく読めないということになってくるわけであります。しかし、その第三条の私の懸念するそういう正しい読み方というものは、条文のどこに書かれておりますか。

○中曽根国務大臣 条文のどこに書いてあるということはございませんが、この語の定義というものが、そういうふうに立法のときに了解してあるわけであります。そうして今お話になりました、しからば、その異常に巨大な場合にはどうするかという問題については、第十七条に規定してありまして、「政府は、第三条第一項ただし書の場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。」この場合は、一般の災害救助法もありますし、それ以外のこともありましょう。とにかく、そういう場合には、国民の民生に関することでもあり、生命財産に関することでもありますから、最善を尽くして必要最大の措置を行なうわけであります。しかし、それは、十六条とか、そのほかの場合における損害賠償という意味ではなくして、国の一般政策として当然これは行なうべきことでありますが、特に念のためにこれは書いてあるのでございます。

○石野委員 第十七条の「第三条第一項ただし書の場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずる」、この場合の救助の内容はどういうものかということが、またここで問題になるのであります。「被害の拡大の防止」というのは、これは読んで大体わかります。しかし、今、大臣が答えようとしている内容は、この「被災者の救助」という問題にかかっていると思うのでございます。救助という意味は、普通の意味からいたしますと、助けるのであって、その助ける仕方には、全部を助ける場合もありますし、ごく一部分を助ける場合も出てくるわけでございまして、被災者の側からすると、この問題についてはきわめて不安定であります。私は、この問題は、後日にまたもう少し突っ込んだお尋ねをしなければならないのでございますけれども、しかし、さしあたって、先ほどお話がありました、前田委員も尋ねておられたことに対して、満配できるんだから、国民諸君は不安を持たないようにというような意味の御答弁がありましたけれども、明らかに、第三条のただし書き規定は排除されておる。異常巨大な天災地変は排除されたということになるし、また、社会的動乱によるものも、国の責任はないのだということになって参るわけでございますから、これはなかなか被災者の側としてはそう安心はできないことになる。特に茨城県知事から出ておるところの要望書というものは、ちょうど今私の論じていることを問題にしておるわけでございますので、その点に関する限り、先ほど前田委員にお答えになったことの意味は、非常に限定的であるということをここで私は理解いたしたいと思っております。そこで、この第十七条の「被災者の救助」という問題について、政府はどういう解釈をしておられるのか、この際、一つお聞かせ願いたいと思います。

○中曽根国務大臣 これは災害救助法もございましょうし、ともかく、戦争や内乱が起きた場合に、国が乱れていろいろな事故が起きる、そういう場合におけるいろいろな応急措置、その他全般が入るわけでありますので、今からどうというように限定するわけには参りません。少なくとも、災害救助法程度のことはやるという、最低限のことは言えると思いますが、それ以上は、そのときの情勢によって、政府なり国会なりがきめることになるだろうと思います。

○石野委員 私は、また他日質問をいたしますが、もう一度だけ念を押しておきたいと思います。
 この茨城県からわれわれのところに参っております要望書というものは、法の第十六条に対しましては、「当該賠償措置額をこえる額の全額を補てんする措置を講じ、原子力事業者が被害者に対し原子力損害を完全に賠償し得るよう明定されたい。」このことに関しては、今、大臣から御答弁になったことと大体合致するものと思うのです。しかし、第二項の、第十七条の規定にありますところのものは、「政府は被害者に対し、完全な補償を行なうよう明定されたい。」ということが出ておるわけでございます。こういうことになりますと、この第十六条の規定の読み方は、茨城県の方々の読み方ももうすでに不十分であり、また、第三条ただし書きの規定の問題についても十分な理解が行き届いていないのじゃないかとも思いますし、また、それが行き届いておるとすれば、十七条の規定の方に持ち込んできていることも理解されるわけで、いずれにしても、二つの要望事項は、ひっくるめて申しますと、あそこで出るところの被害については全部満配してほしいということを言っておるわけであります。そういう意味からいたしますと、先ほどの大臣の答弁、また、ただいまいただきました救助の問題につきましては、いわゆる救助法の問題の範囲にとどまるのであって、茨城県の出されておるような意味の満配とか、被災者が受けたものに対する全額補償ということにはほど遠いものであるということが言えるのじゃないか、こう考えます。そうではないのでございましょうか。

○中曽根国務大臣 外国の立法例で、第十七条のようなものを置いたものはないのであります。しかし、日本の場合は、特に国民の皆さんが心配されるという関係があって、第十七条というのを置きました。さらに「報告及び意見書の提出」というような条文が第六章にございまして、第十九条「政府は、相当規模の原子力損害が生じた場合には、できる限りすみやかに、その損害の状況及びこの法律に基づいて政府のとった措置を国会に報告しなければならない。」また、第二項に「政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力委員会が損害の処理及び損害の防止等に関する意見書を内閣総理大臣に提出したときは、これを国会に提出しなければならない。」こういう条文を特に置きました。これは各国の立法例にはございません。これはすべて国会に事態を報告して、国会の措置を仰げるようにしよう、国会は国民代表の機関でありますから、国家財政等とにらみ合わせて、国民の納得のいく措置をやっていただけるとも考えまして、条文を置いたのであります。茨城県の御要望の後段の方、異常、巨大というような場合まで、すべて国家が、法律上明記して、賠償に応ずるというようなところは書いてございませんけれども、それはほかの立法例にもございません。外国はすべて異常巨大の災害並びに社会的内乱という場合には免責されておりますので、大体外国の立法例にも従っておるのでございます。

○石野委員 私は関連ですから、またあらためてやりますが、ただ、今の大臣からの御答弁の中に、十九条の問題が新たに出て参っております。十九条の問題は、十六条第二項の問題に集約されてくる問題でございます。十六条第二項の問題は、いわゆる国会が最高の議決機関であるから、そこできめるんだ。外国の例にもない。しかし、外国の例にもないかわりに、前田委員からも言われましたように、アメリカのごときは、やはり五億ドル、千八百億円というものがあり、その上になお六千万ドルというものが加わっておりますから、大体全体で二千億円をこえるところのものが一応限度として置かれているわけです。日本の場合は五十億円が限度になっておる。それ以上のものは国が幾らにするということははっきりしていない。西ドイツの場合におきましても、やはり五億マルクというものが出ておるわけでありますが、その額は四百二十九億円になっているわけです。それらと比べると、全く雲泥の差がある。しかし、事実上からいいますと、災害の被災率というものからいえば、人口密度の状態とか、あるいはその国の地震とかなんとかという、いわゆる立地的な諸条件からいうと、むしろ、これらのアメリカとか、あるいは西ドイツよりも、もっと厳格に、もっとシビアに、もっと大きい幅で国民に対する安心感を持たせるようなものを政府が処置すべきが当然なのです。それが行なわれていないということになりますから、やはり国民の側からすると、これは災害賠償を受ける面で非常に不安であるということをわれわれは論じておるわけでございますので、今大臣から言われた、外国の立法例にもないようなことがここには書いてあると言うけれども、書いてはあっても、事実上は、むしろ外国の方がそれよりもっと有利な諸条件が規定されておるということをわれわれは頭に入れなくてはいけませんので、政府としてはむしろかえって責任を回避されて、非常にずるい形で国会へしょわせているというようなことになるのじゃないか。また、われわれの常識からいいましても、この場合、国会が臨時的に予算措置をするというようなこともありましょうけれども、ややもすれば、予備金処置とかなんとかということになってしまいまして、これは非常に不安定であるということになろうと思います。しかし、この問題は、後日またあらためて質問させていただきます。
    ―――――――――――――

○村瀬委員長 この際、資料要求に関し発言の通告がありますので、これを許します。岡良一君。

○岡委員 昨日要求をしておりました資料の中で、三点はいただきました。残りの、改正された労災法の中で、従業員の放射能による障害等に関連した条章を抜き書きにしてぜひ一ついただきたい。ということは、きょうも、話を聞いておると、労働省の説明員は、科学技術庁と相談をして今度の労災法の改定をやった。原子力委員会では、従業員の災害補償については、外国の立法例も調査して、あらためて考え直さなければなるまいというようなことを言っておる。従業員に対する災害に対する補償が、政府としても非常に定見がないように思われるので、これはやはりケース・バイ・ケースについて具体的に私どももはっきりとした審議を尽くしたいと思います。
 それからもう一つは、理論的に可能な大型動力炉の災害についてどの程度のものであるかということは、やはりこの際はっきりとお示しを願えれば、非常にけっこうだと思う。というのは、国が補償するということになると、やはりどの程度の補償までが期待できるかということは、私は問題だと思う。たとえば一九五七年ですか、アメリカのマッカラン報告があって、あの報告で見ると、理論的に可能な大型動力炉の最大の災害は、七十億ドルといわれておる。そこで、これがきっかけとなって、プライス・アンダーソン法のあの改正法ができた。そこでは国の一応の責任の限度を五億ドルと設定し、一方では、原子力法に一条を設けて、原子力の安全審査についてはより権威あらしめておるという経緯等もあるので、そういうわけであるから、具体的に、援助か補償かというような問題を論ずる場合にも、どの程度の災害が理論的には予想されるか、また、その確率はどの程度だというようなことは示されてもいいのではないかと思う。そういう意味で、せっかく私どもも責任ある審議を尽くすという意味から、できるだけ資料をお示しを願いたい。
 それから奥村政務次号に特にこの機会にお願いをしておきたいのですが、大蔵大臣にぜひ私は御出席を願いたいと思う。特に昨年、日英動力協定の際、私は大蔵大臣にこの点についても若干質疑をいたしました。私の記憶によると――記憶というよりも、こういう問答があったわけです。あの日英動力協定では、英国側から買った炉については、万一事故が起こっても英国は責任をとらない、こういうように政府と政府との門で英国側を免責しておる以上は――しかも、日英交渉の議事録を見ると、向こう側ははっきり議事録の中で言っておる。原子炉の燃料については、万一にも瑕疵があると災害が起こり、それは予想すべからざる大きなものになるのである。だが、英国側は、これに対して完全であることを努力するが、しかし責任は持てませんよと言っておる。そういう交渉の過程であの免責条項ができておる。だから、政府と政府との間で、責任を持たないでよろしいといって日英動力協定を結んだ。そこで今度は、日本の方でその炉を受け入れたということになると、万一事故が起こった場合、政府としても政治的な責任があるのではないか、だから、国は万一の場合に補償するのかという点を、私は大蔵大臣に御出席を願ってるる申し上げた。そのときの大蔵大臣の御答弁は、どの程度のものが災害として起こってくるのかというようなことについては、まだ何の資料もない。であるから、もっと具体的に数字が固まる段階にくれば、政府としてもやはり明確な態度を申し上げられるのだが、今のところ、入れるか入れないか、協約を結ぼうという段階だから、まだはっきりしたことは言えないかというような御答弁であった。しかし、こうした法律の上で、先ほど中曽根長官の御答弁を聞いておると、原子力事業者は、一応保険なら保険で、政府との補償契約で五十億までは損害賠償をやる、あとは国が援助するということになると、そしてどの程度のものが予想されるかという数字が出てくれば、政府としてもやはりそれについての補償の限界もあろうし、またその態度もあろうと思うので、大蔵大臣にぜひ御出席を願って、その際はっきりとした御答弁を伺いたいと思います。そういう点でぜひ一つ大蔵大臣の御出席を、これは委員長もぜひお取り計らい願いたい、そう思います。

○奧村(又)政府委員 ただいまの大蔵大臣に対する当委員会の出席に関する御要求につきましては、なるべく早く御趣旨に沿うように大蔵大臣に伝えまして善処いたします。
    ―――――――――――――

○前田(正)委員 ちょっと、先ほど石野委員の御質問で、私の質問に関連した御発言があったので、特にこの際、奥付政務次官にも明瞭にしておきたいと思うのでありますが、私は、十七条の問題は、先ほど大臣からも御答弁がありました通り、こういう非常事態でありますから、普通の大規模の災害救助と同じようなことで国が十分な処置を講ずるものと、こう考えておるのでありますけれども、この前条の十六条の二項の場合は、保険と、国家補償と、さらに国が援助するわけで、その場合は、国会の議決によってきめられた範囲の援助を満ぱいにおいて十六条で援助されるわけでありますが、十七条の、国のやる処置というようなものは、これに対しましては、当然、国としては完全な処置を講じなければならぬし、同時に、この措置については、われわれも、政府から十九条で報告を受け、また、原子力充員会からも報告を受けまして、国会としては、政府のやるその措置に対しまして十分監督もできるし、要求もできるし、また、国会のきめましたことに対して政府は十分それを尊重して措置を行なうものと思うのでありまして、この十九条に関しては、単に十六条の第二項の援助の、国会の議決により政府に属させられた権限の範囲ということだけじゃなしに、十七条の政府の措置に対しましても、国会が、十九条で政府からの報告を受け、あるいはまた原子力委員会から報告を受けて、国会としてもこういうふうな措置を講ずべきであるというようなことは当然きめることもできるし、申し出ることもできる。また、政府もそういう国会の意思を尊重して、被災者の救助とか、あるいは被害の拡大の防止、こういう特別の事態でありますから、完全な措置を十分にやる、こういうように私は思うのでありますが、その点について大蔵政務次官のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

○奧村(又)政府委員 この十七条の場合は、先ほど中曽根大臣の御答弁にもありましたように、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたもの」というのでありますから、原子力損害だけじゃなしに、あらゆるり災害が起こるという――十六条は原子力の損実賠償だけに限る、十七条は、ほかに一般の災害もあるわけでありまして、主として行政措置として行なうという意味で書かれてあるので、規定の性格が全然違っておる、かように存ずる次第であります。

○前田(正)委員 そうすると、これは中曽根大臣の方がいいかもわからぬけれども、この第十九条の報告の義務の場合は、この第三条第一項ただし書きの場合とは違うわけですな。第三条第一項ただし書きの場合はこの十九条は適用しないで、普通そういう大きな災害があれば、当然政府は国会に報告をしなければならぬでしょうが、また国会も黙っていることはないと思いますけれども、十九条自身、「相当規模の原子力損害」という場合は、第三条第一項のただし書きが入っているのですか、入っていないのですか。

○奧村(又)政府委員 政府部内でその点についてまだ検討しておりませんが、この法律の趣旨からいきまして、十九条の規定は、主として十六条の規正を受けておるのでありまして、十七条はごらんの通り一般的な規定で、率直に言えば、この規定は法律にあってもなくても当然政府のなすべき規定でございますから、十九条は十六条を受けておる、かように私は読みます。もちろん、十九条もこれは含んでおる。しかし、主たるなには十六条であって、十九条の場合は、十七条ももちろん受けてはおりますが、十六条の方を主として受けておる、かように考えます。

○前田(正)委員 一応十六条は受けているけれども、十七条の第三条第一項ただし書きの場合も、相当規模の原子力の損害ということに一応入るだろうと私は思いますから、その点は一つよく解釈して――どうせ、こういう場合には国会の方も黙っていないし、政府の方も完全な措置を講じてもらわなければならぬと思うのです。
 それから、さっきの質問で、どうも原子力局長の答弁によくわからないところがあるのですが、普通保険約款における原子力災害というものとこの法律の原子力損害というものの範囲、特にさっき話しました相当因果関係の範囲内の損害というものとどういうふうに関連しているのですか。約款の方は「原子力災害」と書いてあるし、この法律の第二条では「原子力損害」と書いてありますけれども、民法の担当因果関係の範囲内、さっき言った退避等の場合はどっちに入るのですか、不明確ですから明らかにして下さい。

○佐々木(義)政府委員 損害と書いており、あるいは災害と書いており、この二つの書き方がある、この点はどうかという御質問だと思いますけれども、法的な意味から申しますと、損害の報告の方が主文だと読んでいただきたいと思います。従来の保険約款等では、あるいは災害と書いてあるかもしれませんけれども、一応法律通り損害というふうに読んでよろしいと思います。

○前田(正)委員 そうすると、先ほど私がちょっと聞いたら、退避の費用とか、そういった民法の相当因果関係は、損害の中には入らないけれども、賠償の対象になっているという局長の答弁があったのです。そういう退避命令の退避の費用は、保険では対象にならない。そうすると、原子力事業者が自分の費用でそういうものは賠償する責任を負う、こういう意味ですか。そうして、原子力事業者が自分の責任でやろうと思うけれども、やれない部分は国の援助に行ってやろう、こういう意味ですか。その辺のところを、さっきの答弁でははっきりしないので、一つ御答弁願いたいと思います。

○佐々木(義)政府委員 原子力損害そのものを担保した保険でありますれば、原子力損害は、ここに書いてあります暴走あるいは放射能による損実、あるいは重金属毒性といいますか、こういったような三種類の損害のみをさしているわけでありますが、退避等の費用ということになると、損害額の中には当然入ってくるわけでございます。しからば、その損害額は一体たれが払うのか、こういう問題になって参りますと、これは法律自体の問題というよりは、むしろ、一般民法等で措置する問題でありまして、当然事業者がそれに対して支払い、あるいは事業者が支払えない場合は国が助成するというふうに措置することになってくると思います。

○前田(正)委員 大体わかったのですが、もう少しはっきりするために……。
 今の民法の相当因果関係のようなものは、原子力事業者が支払って、足りないものは国が援助するのですか。保険の対象にはなっていない、あるいは国の保険の対象にはなっていない、こういう意味ですか。

○佐々木(義)政府委員 その通りでございます。

○前田(正)委員 その対象にはなっていないけれども、当然賠償すべきものの範囲に入っておって、今、局長の答弁した通り、原子力事業者がこれを賠償し、足りないところは国が必要な援助を行なう、こういうふうに解釈してよろしいのですか。最後ですから、もう一ぺん確かめておきます。

○佐々木(義)政府委員 その通りであります。

○村瀬委員長 石川次夫君。

○石川委員 大臣もお帰りになってしまったのですが、当委員会及び政府与党に対しまして、この際、特に要望申し上げておきたいと思います。質問ではございません。質問はあらためて申し上げるつもりでございますが、今度の原子力損害の賠償に関する法律案は、前々から多数で要望されて、その要望にこたえて出たものでございますから、われわれとしても、根本的な立場において賛成であることは言うまでもないわけです。ところが、この法律は、説明するまでもなく、日本で初めてこういうものができたという画期的なものだと思います。たとえば、企業が社会共同生活でもってきわめてウエイトの重い役割を有するものとされて、その実態を持つ企業に対して、一体どういうふうに保険というものを課すべきか、また、国家がどういうふうに介入すべきかという点で、民事責任の特例としての無過失有限責任ができた、それから、原子力責任保険としての責任保険というものを強制するという新しい試み、それから、国家補償という問題も出ておるというようなことでございまして、きわめて画期的なものだということが言えると思うのです。ただ、われわれといたしましては、非常にこの前提条件としても問題点がたくさんあるというふうに考えているわけであります。それは、一つは、たとえてみますと、きのうもちょっとお話申し上げたのでございますけれども、原子方の都市両辺整備法案というもの、あるいは従業員の、たとえば健康管理というもの、あるいは付近居住地の人たちのふだんの健康管理がなければ、当然出た災害というものは、この因果関係でもって、証明されないというような、いろいろな関連する法案というものがないがために、これだけ一つ出たのでは、ほんとうにこれは、有名無実とまではいかないまでも、浮いた、効力のないものになってしまうのじゃないかというような危険を感じておるわけです。
 それから、この法律の出た前提といたしまして、実は、この原子力産業というものは国家でやるべきだという意見が非常に強く出たのを、政府の有力者が押し切りまして、経済企画庁であったかと思いますけれども、民間でも完全にコマーシャル・ベースに合うのだというような立場で強力に推し進められて今日にと至り、そして電発が今度は設置をされて、コールダーホールの原子炉ができるようになったというような経過をたどっておるわけでございます。従って、この場合、大蔵省の立場としては、民間の企業に対してはその損害を国家で補償する必要はないのだというふうな論拠もそこから生まれてきたように思うわけです。しかしながら、これを設置される付近の住民の関係としては、民間の事業だという感覚は全然持っておらない。あくまでも公共的な、国家の事業だという立場でこれに協力するという結果が、東海村にコールダーホールの原子炉ができたという結果になっておるわけです。それで、そういうふうな基本的なものの考え方で多少食い違いがあるのじゃないか。従って、それから出てくるいろいろなものの考え方につきましても、たとえば、無過失責任というふうになっておりますけれども、これについては、相当の免責事項というものを残しておるわけです。ところが、西ドイツあたりでは、不可抗力の免責事項というものは除外しておる。施設から出たところのいろいろな損害というものは、その因果関係というものは当然在任があるのだというふうな考え方で、不可抗力による免責というものを除いておるというふうな事情もあるわけであります。それから、最高限の補償金額は、日本と比較にならぬほど高いという比較もあるわけです。それから、国家が現実に責任を持つという意味での、国家補償の保険制度に切りかえるべきじゃないかという考え方があるわけです。また、その他のこまかい点では、災害の認定の問題とか、それから安全審査機構の問題は、モニターを完備して、先ほど申し上げたような因果関係を明確にするというふうな条項を整備しなければいかぬという問題、それから、常備機構として、安全審査部会ができておらなければならないのじゃないかというふうな問題とか、その他一条々々についてはいろいろなこまかい問題がこれにたくさん含まれておるというふうに考えておるわけです。
 ところで、この問題は、今度出て、聞くところによりますと、早急に通常国会で上げたいというふうな意向をお持ちになっておる方もあるように聞いておりますけれども、ちょっとやそっとでは、とてもケリがつかないんじゃないか、相当慎重に、日本で初めてできた法律であるだけに慎重に討議もし、検討をする必要があるというふうに考えておりますので、ぜひこの点はおくみ取りいただいて、悔いのない法案に修正をするという心がまえを作っていただきたい。われわれは、ないよりはある方がいいという考え方でなしに、もちろん、ないよりはあった方がいいことはきまっておれますが、できて固定してしまうならば、それでは非常に不安だということ、この案ができたならば、非常に地元の不安が多いので、この法案のままでは協力は得られないんじゃないかというふうな不安を持っておりますので、ぜひ慎重な審議を特に御要望申し上げております。

○村瀬委員長 本日出席予定でありました防衛庁長官は、日米安全保障条約等特別委員会に出席中でありますので、防衛庁長官に対する質疑は後日に譲りたいと存じます。
 次会は明十九日午後一時理事会、午後一時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。
    午後四時十五分散会
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■立法過程 その7 国会審議(昭和35年5月17日)

■立法過程 その7 国会審議(昭和35年5月17日)

34-衆-科学技術振興対策特別委…-12号 昭和35年05月17日

昭和三十五年五月十七日(火曜日)
    午前十一時十七分開議
 出席委員
   委員長 村瀬 宣親君
   理事 小坂善太郎君 理事 西村 英一君
   理事 保科善四郎君 理事 前田 正男君
   理事 石野 久男君 理事 岡  良一君
   理事 北條 秀一君
      秋田 大助君    細田 義安君
      石川 次夫君    大原  亨君
      岡本 隆一君    松前 重義君
      内海  清君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 中曽根康弘君
 出席政府委員
        科学技術政務次
        官       横山 フク君
        総理府事務官
        (科学技術庁長
        官官房長)   原田  久君
        総理府事務官
        (科学技術庁
        原子力局長)  佐々木義武君
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局次長)  法貴 四郎君
        大蔵政務次官  奧村又十郎君
        気象庁長官   和達 清夫君
 委員外の出席者
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局政策課
        長)      井上  亮君
        運 輸 技 官
        (気象庁観測部
        長)      川畑 幸夫君
    ―――――――――――――
五月十三日
 原子力損害の賠償に関する法律案(内閣提出第
 一三三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 原子力損害の賠償に関する法律案(内閣提出第
 一三三号)
 科学技術振興対策に関する件
     ――――◇―――――

○村瀬委員長 これより会議を開きます。
 原子力損害の賠償に関する法律案を議題とし、政府より提案理由の説明を聴取いたします。中曽根国務大臣。

○中曽根国務大臣 ただいま議題となりました原子方損害の賠償に関する法律案について、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
 わが国における原子力の開発利用は、昭和三十一年原千万基本法の施行を見て以来目ざましい進展を示し、昨年末にはコールダーホール改良型発電炉の設置許可を見る等、今や研究体制の強化とともに実用化へ一歩を進めんとする段階に至りつつあるのでありますが、かかる原子力開発利用の発展に伴い、原子力災害に対する賠償制度の確立が必須の要請とされてきたのであります。
 もとより、原子力の開発利用につきましては、その安全性の確保が絶対的な要件であることは申すまでもなく、万々一にも不測の事態の生じないよう、政府といたしましても原子炉の設置等に際しましては、原子炉等規制法以下諸般の法令及び行政措置により万全の対策を講じており、第三者にまで被害の及ぶような大規模な災害の発生する可能性はほとんどあり得ないと考えているところであります。しかしながら、現代科学の最先端にある原子力の開発利用でありますだけに、なお技術的に未知の点があるとされており、万々が一に災害の発生する可能性を理論的に完全に、否定することは困難な事情にあるのであります。同時に、原子力の災害は万々一にも発生いたしました場合には、放射能による被害規模が広範な地域にわたる可能性があり、また、後発性、遺伝的影響の特異な放射能障害をもたらす危険性があるという特殊性を有するものであります。かかる特殊性にかんがみ、安全性の確保を第一義としつつも、万々一の際における賠償制度を確立いたしません限り、住民の不安は除去されず、また、原子力発電等の事業者も不安定な基盤の上に事業を行なわざるを得ず、原子力研究及び原子力事業の正常な発展は望むべくもないのであります。一方、世界の趨勢に日を転じますと、すでにアメリカ、イギリス、西ドイツ及びスイスの各国におきましては、原子力損害の賠償に関する法制が整備されており、国際原子力機関におきましても、国際条約の審議が進められている現況にあるのであります。
 かかる情勢に対応いたしまして、わが国原子力委員会におきましても、すでに昭和三十三年十月原十力災害補償についての基本方針を決定し、同時に原子力災害補償専門部会を設置して検討を続け、昨年十二月同部会の答申を受け、本年三月には原子力損害賠償制度の確立について決定を行なったのであります。政府といたしましても、すでに原子炉等規制法の一部を改正し、本年初めより、原子炉の段丘につきましては五十億円以下の損害賠償措置を具備させることとして参ったのでありますが、これは暫定的な措置であり、ただいま申し上げました原子力委員会決定の趣旨を尊重いたしまして、鋭意検討を重ねました結果、今般成案を得ましたので、ここに本法案を国会に提出する運びとなった次第であります。
 以下、本法律案の内容につきまして、その重要な点を御説明申し上げます。
 第一に、この法律の目的は、原子炉の運転、核燃料物質の加工、使用及び再処理等の行為を行なうことによって、方々一放射能等、原子力による被害を第三者に与えました場合、その損害の賠償に関する基本的制度を定めて、被害者の保護に遺憾なきを期することにより住民の不安を除去し、同時に、原子力事業者に損害賠償措置を講じさせることにより原子万事業経営の基盤を安定化し、原子力事業の健全な発達に寄与しようとするものであります。
 第二に、原子力事業者の賠償責任につきましては、民法の不法行為責任の特例として無過失責任とし、かつ、康子力事業者に責任を集中することといたしたのであります。無過失責任といたしましたのは、原子力の分野においては、未知の要素が含まれるという実情にかんがみ、原子力損害の発生について故意、過失の存在しない場合も考えられ、また、かりにこれらの要件が存在するといたしましても、その立証は事実上不可能と認められるからであり、一方、近代科学の所産である危険を内包する事業を営む者は、よって生ずる損害については故意、過失の有無を問わず責任を負うべしとして無過失責任を課している各国の例に徹しても妥当であると考えられるからであります。また、原子力事業が広範な産業の頂点に立つ総合産業でありますだけに、損害発生時における責任の帰属が不明確になる場合が予想されるのであります。それでは被害者の保護に欠けるばかりでなく、原子力事業に対する資材、役務等の供給が円滑を欠き、事業そのものの発達が阻害されることとなるおそれが強い点もあわせ考慮して責任の集中を行なったのであります。従ってまた、損害の発生が資材、役務の供給に原因するような場合にありましても、原子力事業者の求償権は原則としてこれらの者に故意がある場合に限って行使できるものとしたのであります。ただし、異常に巨大な天災地変等によって損害が生じた場合まで、原子力事業者に賠償責任を負わせますことは公平を失することとなりますので、このような不可抗力性の特に強い特別の場合に限り、事業者を免責することといたしたのであります
 第三に、損害賠償のための一定の措置を講じない限り、原子炉の運転等を行なわせないこととし、損害賠償責任を担保するための措置を原子万事業者に強制することといたしたのであります。この措置は、原子力損害賠償責任保険にかけるか、または供託をするか、あるいはこれらに相当するその他の方法により、一事業所または一工場当たり五十億円を損害賠償に充てることができるようにしなければならないものであります。ただし、教育用の小型原子炉等、大規模の損害の発生が予想されないものにつきましては、その規模内容に応じてこの金額を引き下げることといたしておるのであります。
 第四に、現在の原子力損害賠償責任保険につきましては、その大半を外国保険市場の再保険に依存しているのでありますが、一定の事由、たとえば日本における地震、正常運転等による損害は外国保険業者がこれに応じないという実情にあるため、保険のみをもってしては賠償責任の全部はカバーしきれない場合があるのであります。このような場合における損害賠償の履行を確保するため、政府といたしましては、原子力損害賠償補償契約を原子力事業者との間に締結し、被害者の保護の完全を期することといたしたのであります。なお、この補償契約の詳細につきましては、さらに検討の上、別に法律をもって定めることといたしておるのであります。
 第五に、ただいま申し上げましたように、五十億円までの損害賠償につきましては完璧を期待し得るのでありますが、五十億円をこえる損害がかりに生じた場合いかにこれに対処するかという問題が残るわけであります。政府といたしましては、このような場合はまずあり得ないと考えておりますが、万々一このような事態に至りました場合は、被害者の保護と原子力事業の健全な発達をはかるというこの法律案の目的を達成するため必要と認められますときは、国会の議決により、政府に属させられた権限の範囲内において、原子力事業者に対し、賠償に必要な援助を行なうことといたしたのであります。また、原子力損害が異常に巨大な天災地変等によって生じたため原子力事業者が損害賠償の責任を負わないような場合におきましても、政府は、原子力損害の被災者の救助や被害の拡大防止のために必要な措置を講ずるものとして、住民の不安に対処することとしているのであります。
 さらに、原子力損害に関する国民的関心、損害、の特殊性等にかんがみ、万々一相当規模の原子力損害が発生いたしましたような場合には、わが国原子力政策の帰趨にもかかる問題でありますので、国家的規模において、すなわち、国民の代表たる国会の意思が十分反映されるような形態で処理されるのが適当であろうと考えるものであります。このため、政府は、相当規模の原子力損害が生じました場合には、できる限りすみやかに損害の状況及びこの法律に基づき政府のとりました措置を国会に報告するものといたしたのであります。また、原子力損害が生じました際、専門的立場から、原子力委員会が損害の処理、損害の防止等につき内閣総理大臣に意見書を提出いたしましたときは、政府は、当該意見書を国会に提出しなければならないものといたしたのであります。
 第六に、原子力損害の賠償につき紛争が生じました場合、その迅速な処理をはかり、被害者の保護に資するため、紛争に関し和解の仲介及びそのための損害の調査評価を行なう特別の機関として、原子力損害賠償紛争審査会を必要に応じ設置するものといたしたのであります。
 第七に、原子力損害につきまして国の特別の措置を講じておりますゆえんのものは、その未知の要素に基づく不安を除くところにその一半の理由があるわけでありまして、今後研究が進み、未知の点が究明されるに従い、国による特別の措置の必要性は減少する方向にあると言えるのであります。アメリカ、西ドイツ等におきましても、国の措置は一応十年程度としている点も参考とし、この法律案におきましても、国の補償契約及び事業者に対する援助措置につきましては、現段階において、一応今後十年に限るものといたしたわけであります。
 以上が原子力損害の賠償に関する法律案の提案の理由並びに要旨であります。何とぞ慎重御審議の上御賛成あらんことをお願いいたします。

○村瀬委員長 以上をもちまして提案理由の説明は終わりました。
     ――――◇―――――

〈略〉
     ――――◇―――――

○前田(正)委員長代理 次に、資料要求に関して発言の申し出がありますので、これを許します。岡良一君。

○岡委員 明日から原子力損害の賠償に関する法律案の審議が始まることになっておりますので、ぜひ次の資料を出していただきたいと思います。
 第一は、各国の立法例でございます。あまりこうかんなものをいただいてもなかなか大へんでございますから、できたら、その重要なポイントについて、それぞれ各国別に表のような形で、日本のものも含めて、一覧表のようなものにしてぜひ一つ出していただきたいと思います。
 それから、この損害賠償の当然前提となろうと思いますが、一体原子炉が、たとえば、コールダーホール型あるいは動力試験伊が万一最大の事故を起こしたときにどの程度の災害を及ぼすかということ、これも若干の予算で調べられてあるはずでございますので、一つ正直に出していただきたい。
 それから、この保険契約約款を一つ出していただきたい。
 それから、大蔵省と交渉中だといいますが、補償契約でございますね、これはさまった決定版じゃなくても、一応その要項的な骨子を一つお願いしたい。
 それから、この法律案では、従業員の損害の補償が除かれております。一方、労災保険もかなり改正されておりますが、改正された労災法の中で、特に原子力従業員の事故に基づく傷害等に対する補償の可能性を私どもはっきりと知りたいので、これはいずれ係りの人に来てもらって聞きますが、事前に、該当する法律案を整備して出していただきたいと思います。
 それから、もう一つは、今、石川君も指摘されました原子力施設周辺都市整備ですが、これも出る、出ると言いながら、出さないままで損害賠償が出てきた。これは、特に日本が原子力施設を東海村に集中しておる関係上、この損害賠償と不可分の問題として私ども重大な関心を払っておりますので、どういう構想があるのか、せめて、その骨子だけでも資料としてお願いしたいと思います。
 それから、ちょっと一点だけ和達長官にお尋ねいたします。それは、気象庁長官としての利達さんではなく、日本学術会議の議長としてのあなたに、私は一言だけお尋ねをいたしたいと思います。
 それは、先ほど中曽根科学技術庁長官の御所信によれば、台風の観測等については、やはり米空軍の観側のデータというものを今後も使用していくということでございます。U2機であろうと、あるいはまた、それ以外のものであろうと、米軍の台風観測というものは軍事目的であります。この軍事目的による観測データというものに日本が依存するというようなことは、学術会議の伝統的な精神から見て、まことに遺憾なことだと私は存ずるのでございますが、議長として、この点いかにお考えであるか、一つ明確な御所信だけをお伺いをしておきたいと思います。

○和達政府委員 学術会議の議長としてでなく、お答え申し上げます。
 気象庁といたしましても、先ほど来のお話にありますように、この気象の研究が軍事目的にならないように、あるいはそれと関係づけられないように、できるだけ努力を払いまして、そうして、お話しのような心配をよく考慮いたした上で、もし、できますならば、また、必要でありますならば、日米の研究協力の体制を作りたいと考えます。

○前田(正)委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は明十八日午後一時より委員会を開催することとし、これにて散会いたします。
    午後零時四十五分散会
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■立法過程 その6 国会審議(昭和36年5月10日)

【立法過程 その6 国会審議】

38-衆-科学技術振興対策特別委…-16号 昭和36年05月10日

昭和三十六年五月十日(水曜日)
    午後一時五十九分開議
 出席委員
   委員長 山口 好一君
   理事 菅野和太郎君 理事 齋藤 憲三君
   理事 中村 幸八君 理事 前田 正男君
   理事 岡  良一君 理事 岡本 隆一君
      赤澤 正道君    有田 喜一君
      稻葉  修君    佐々木義武君
      細田 吉藏君    石川 次夫君
      松前 重義君    内海  清君
 出席国務大臣
        国 務 大 臣 池田正之輔君
 出席政府委員
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局長)   杠  文吉君
 委員外の出席者
        総理府事務官
        (科学技術庁原
        子力局政策課
        長)      井上  亮君
        総理府技官
        (科学技術庁原
        子力局原子炉規
        制課長)    佐藤  紀君
        厚生事務官
        (公衆衛生局企
        画課長)    河角 泰助君
        参  考  人
        (日本原子力産
        業会議副会長) 大屋  敦君
        参  考  人
        (日本原子力研
        究所東海研究所
        化学部分析化学
        研究室員)   中島篤之助君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 原子力損害の賠償に関する法律案(内閣提出第
 一〇六号)
 原子力損害賠償補償契約に関する法律案(内閣
 提出第一〇七号)
     ――――◇―――――

○山口委員長 これより会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 昨九日の委員打合会におきまして、原子力損害の賠償に関する法律案及び原子力損害賠償補償契約に関する法律案の両案について、大阪大学理学部長、原子力委員会原子炉安全基準専門部会長伏見康治君、及び日本原子力保険プール事務所長真崎勝君の両君より意見を聴取し、両君及び政府当局に質疑を行なったのでありますが、この際、委員打合会の経過について御報告申し上げますとともに、その内容の詳細は記録してございますので、本日の会議録に参照としてその記録を掲載することといたしたいと思いますが、これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○山口委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らうことにいたします。
 引き続き、原子力損害の賠償に関する法律案及び原子力損害賠償補償契約に関する法律案の両案を一括議題といたし、参考人より意見を聴取することといたします。御出席の参考人は、日本原子力産業会議副会長大屋敦君、日本原子力研究所東海研究所化学部分析化学研究室員中島篤之助君、以上の方方であります。以上の両参考人は、昨九日御意見を伺うこととなっておりましたが、委員会の都合により、本日御出席を願うことといたしましたので、御了承を願います。
 この際、参考人の各位に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、本委員会の法律案審査のため、わざわざ御出席をいただきまして・まことにありがたく、厚く御礼申し上げます。
 本委員会は、ただいま原子力損害の賠償に関する法律案及び原子力損害賠償補償契約に関する法律案の両案について審査をいたしておりますが、両案について、参考人各位には忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。
 なお、御意見は大屋参考人、中島参考人の順序で伺うことといたし、時間は、お一人約二十分程度といたしていただきまして、そのあと、委員諸君の質疑があれば、これにお答え願いたいと存じます。
 それでは、大屋参考人よりお願いいたします。大屋参考人。

○大屋参考人 私が関係をしております日本原子力産業会議で、昨年から原子力の災害補償の特別委員会というものを設けまして、委員長には岩田宙造博士をわずらわしまして、自来、保険の専門家、産業人、学者、いろいろの方に集まっていただきまして、大体われわれ産業人の意見というものをまとめて参ったのであります。それを中心にして、これからお話を申し上げたいと思うのであります。
 まず、放射能についての恐怖と申しますか、あるいは警戒と申しますか、それは程度の相違はありますけれども、日本ばかりではありません。先進国でもそれが相当重大な問題になっておりまして、そのために、アメリカ、イギリス、スエーデン、スイス、西独、そういうような国で、みな災害補償についての特別立法をしておるのであります。一番古いのがアメリカでありまして、昨年じゅうに、そのほかの国がみな何らかの形で法律を作りました。それから、なお、欧州の経済協力機構、OEECといっておりますが、それとか、あるいは国際原子力機関、そういうところがこの問題を国際的に研究いたしまして、大体結論に達しておるのであります。原子力が国際的に意義の深いことは申し上げるまでもないのでありまして、自然、この原子力に関する災害補償の法律も、先進国に右へならえするということはやむを得ぬと思っておるのであります。
 今回、政府が衆議院に提出いたしました法案を拝見いたしますと、まず、第一に、原子力の健全な発達ということが書いてあります。御承知の通り、原子力の長期開発ということが朝野で問題になっておりまして、いろいろ瞬間的には異見がありますが、大局的には、原子力というものを、革新技術のトップをいくものとして日本で強力に推進しなければいかぬということは、ほとんど異議のない問題になっておるのであります。そういう産業を健全に発達させたいという場合に、万が一起こりました災害補償、損害賠償と申しますか、そういうものは国家も介入して、そうして、これを一つの法制化するということが今度の法律のねらいのようであります。それによりまして、原子力産業というものが経理的に破綻を来たさぬように、つまり、賠償によって会社の根底がゆるがないように、こういうような意味から、原子力の健全な発達を目途といたしまして、この法律が第一に考えられておると思うのであります。第二に考えられておりますことは、もちろん、これは大衆に対して安心感を与えるということと思うのであります。ずいぶん日本では原子炉の施設に反対をいたしまして、各所で相当問題を起こしておりますが、これから日本のエネルギーの解決の一環といたしまして、原子力発電というものを大規模に開発をしなければならぬということは、これは常識であります。それに対して一番問題になっておりますのは、敷地の選定であります。敷地を囲みましての住民が不安を持つことのないように、これも国家が原子力業者と手を組んで、そうして、災害補償あるいは損害賠償というものの責任を負って下さるということが第二の問題であります。
 それから第三の問題は、やや二次的でありますけれども、原子力の開発というものは日本だけではできませんので、どうしても国際的にこれを発達させていく、従って、海外のメーカーから施設を買う、原子炉であるとか、原子燃料であるとか、いろいろのものを海外から供給を受けなくてはならぬのでありますが、その場合に、海外のメーカーは、もしもそれが事故を起こしまして、そうして、日本の大衆が外国のメーカーに対して訴追するというようなことを非常に心配しておりまして、現に、原子力研究所の第三号炉につきましても、相手方のゼネラル・エレクトリックが、その点について非常にやかましい注文を持ち出してきたのでありまして、そういうことに対しまして、この法律では、原子力業者に責任を集中する、原子力業者のみが無過失責任を負うということにしておるのであります。いかなることが起こりましても、原子力業者が直接の責任者でありまして、他の者はみな免責をされるということが、この法律のねらいであると思うのであります。そういう三つの点を骨子にしてでき上がった法律のようであります。
 大体、原子力事業者が、自分の責任においての賠償措置といたしましては、五十億の保険をかけるということになっておるのであります。この五十億という金額も、これを外国と比べますと、大体いいところにいっておるのでありまして――アメリカは別であります。アメリカは、原子力業者の賠償措置として六千万ドルということでありますから、日本の五十億円の約四倍になっておるのであります。それから、イギリスは五百万ポンドでありますから、日本と大体同じ五十億円ということになっておる。そのほかの国々の金額は多少違うのでありますけれども、原子力業者の責任というものに特に限界を設けておりまして、それ以上のものに対しては、いろいろな形式でもって、国家が補償の責任を負うということになっておるのであります。それが、あるものは、青天井のものもあります。あるものは、金額をきめておるものもありますけれども、とにかく、それ以上のものは国家が責任を負うということになっております。日本の今度の法律につきましては、多少そこに違いがあるように思うのであります。日本では、あくまで原子力業者が責任を負うということになりまして、五十億円をこした場合には、政府が国会の協賛を得まして、そうして、原子力業者に援助するという形になっておるのであります。多少、それにつきましてはいろいろ懸念をしておる向きもあるのでありますが、大局論としては、五十億以上の災害が起こることはほとんど予期できないのでありますから、この法律がこの際でき上がることを、原子力に関係のありまする産業人としては、非常に要望をしておると申し上げていいと思うのであります。非常に希望しておるのであります。
 それから、その次の問題は、今委員からお話のありました損害賠償補償契約に関する法律案というものが、もう一つあるのであります。この法律案は、今の五十億の範囲におきましても、保険でどうしてもカバーができないものがあるのであります。日本の保険会社も、当然その大部分というものを海外の保険会社に再保険をするのでありますから、海外の保険会社が受け入れないものを保険の対象とするわけにはいかぬのであります。ちょっと一例を申し上げますというと、地震であるとか、あるいは噴火であるとか、あるいは日常の運転で自然に漏れてくる放射能による損害であるとか、あるいは後発性――十年たったら原子力病が出たというようなものについては、保険がカバーできませんものですから、その保険の穴を国がカバーする、補償するということによりまして、それで原子力業者と国との間に補償契約を結びまして、そういうものに対して一定の補償料を国に納めまして、そういう保険の穴に対して政府が責任をとる、こういうことにしておりますのが補償契約に関する法律案であります。まあ、行き届いております。そういうことで、五十億以内につきましては、国が片棒をかつぎまして、みんなに安心をさせる、また、五十億をこす場合には、国会にその事態を審査していただきまして、そうして、国がその損害の補償を引き受けてやる、こういうことになっておるのであります。
 なお、少しこまかいことを申しますと、この法律案には、もしも原子力の相当規模の損害が起こった場合には、政府は遅滞なしに国会に報告するとか、あるいは原子力委員会が内閣総理大臣にすぐ意見書を出しますと、内閣総理大臣、すなわち、政府は、それを国会に報告をするというような、国会と原子力事故との間の密接なひもをつけておくというふうに書いておるようであります。また、たとえば事故が起こる、事故が起こりますと、被害者が損害賠償を起こす、私は、法律のことはわかりませんけれども、民法の定めるところによりますと、まず、被害者がそういう損害賠償を要求する、そうすると、原子力業者は、それを受けて立つ、話がまとまればいいのでありますが、まとまらなかった場合には、裁判所に持っていくというのが普通の例でありますが、この法律では、特にそういう紛争審査会というものを設けまして、そういう事故が起こった場合には、紛争審査会という、公正な第三者を入れましたものを作りまして、それによって損害の価額を調べたり、損害賠償のいろいろの問題をそこで仲裁をする、そういうような審査会の規定も入っておるのであります。
 そういうことで、大体この二つの法律案の内容は、原子力を実際実行しようとするわれわれにとりましては、満足のものであるばかりでなしに、この法律がありませんというと、今後新しい原子炉の施設の場所を発見するのにも非常に困難を伴いますし、また、海外から機械を買おうと思いましても、先ほど申しました理由で、非常に困難を感ずるというふうなことがありますので、この法律が成立するということを、原子力に関係ある産業人は特にお願いしておる次第であります。
 なお、一言簡単に申し添えたいことは、先ほど申しました責任の限界であります。原子力業者が引き受けます責任の限界というものを、外国では、大体先ほどお話ししました五十億とすれば、五十億を限界としまして、それから以上は政府が引き受ける、国が引き受けるということになっておるのであります。その金を国が原子力業者にやりますか、あるいは大衆に直接支給するかは別問題でありますが、とにかく、それ以上のものは国が引き受けるということになっております。日本は、国会にかけまして、国が援助するということになっておりますので、多少責任の限界について少し不安があるというふうな意見があるのであります。これらにつきましては、今後、海外のいろいろな法制がだんだんに完備して参りますと、結局、原子力の問題は、先ほどお話ししましたように、国際間の関係が非常に深く、原子力船ができ、あるいは原子燃料というふうなものの輸送が盛んになるに従って、だんだん国際間の関係が密になりますので、そういう国際的にいろいろこの法律について改良が施された場合には、そういう慣行を尊重していただきまして、また、先々にはこれに手を加えていただくというふうな事態が起こるかもしれないのでありますが、今日としては、私がるる申し上げました通り、この法律ができておりませんというと、今後原子力の開発には重大な支障がくる、こういうことだけを申し上げて、参考人の意見としたいと思います。

○山口委員長 次に、中島篤之助君にお願いします。中島篤之助君。

○中島参考人 私、日本原子力研究所労働組合に属しております中島でございます。
 それで、最初、本委員会から、私どもの執行委員長であります堀剛治郎に対しまして、参考人として出席するようにというお話があったわけでございます。それで、われわれの方で相談をいたしまして、現在、われわれの労働組合におきましては、いわゆる従業員補償、第二者補償の問題について係争中であるわけであります。それで、本日この委員会において御審議されております法案は、いわゆる第三者の問題についての御審議であると思うわけであります。われわれも、もちろん、たとえば、原子力発電会社に対しましては第三者の立場でありますし、私自身も東海村に住んでおりまして、つまり、一村民という立場もあるわけでございます。その意味におきまして、一応係争中であるから、第二者の問題については、あらためて当然従業員の問題に関する法律案が――率直な意見を申し上げれば、むしろ、この法案より先に当然できているべきはずじゃないかとわれわれは考えているわけでありますけれども、いずれ作っていただけるものと考えまして、本日は御遠慮申し上げます。それで、一組合員ということの資格と、それから東海村に住んでいる村民という立場で、こちらへ私がかわりに参ることになった次第でございます。
 それから、私出て参ります前に、東海村には、村会の中に放射線対策委員会というものが設けられておりまして、そこの方々と私がこの法案に関しまして打ち合わせをいたし、意見の交換をいたして参りました。その結果の両方の意見を合わせて、きょう意見として申し上げさしていただきたいと思う次第であります。
 御承知のように、東海村の村民は、かねがね、このような法案がなるべく早く、原子力研究所ができていろいろな事業を開始する前からほしいということで、いろいろな陳情もいたしたりいたしまして、この法案ができるようにということを、国会あるいはその他各方面にお願いをして参ったということは御承知であろうと思います。そういう立場におきまして、非常に期待をいたしましてこの法案を検討さしていただいたわけでありますが、結論から申し上げますと、はなはだ失望したということを申し上げなければならないと思うのであります。私のこれから申し上げます意見につきましては、お手元に資料の形で、「本法案に関する問題点」ということで、われわれの検討して気がついた幾つかの事項を列挙してございます。これを御参照いただければ幸いだと思います。
 一応順序を追って申し上げますと、第一に、この法案では、原子力損害を完全にカバーできるかどうかという問題でございます。私どもの法律解釈が間違っておるのかもしれませんけれども、この法案は、原子力損害ではなくて、原子炉損害ということならば、わかるのであります。端的な例を申し上げますと、たとえば、原子力研究所で現在アイソトープ製造工場を建設しております。このアイソトープ製造工場に火災などが起こって、放射能がまき散らされる、これは住民の立場から申しますと、原子炉災害と同じ災害であろうということになるだろうと思うのでありますが、これについては適用されないというふうに考えられるわけであります。この点は、一つの大きな問題ではなかろうかというふうに考えております。これは本委員会で慎重に御審議いただきまして、改正をしていただきたいということをお願いしたいわけであります。
 それから、次に、住民の立場から、一体、この原子力損害というものが有効に補償できるかどうか、つまり、この法案の今までよりもはっきりいたしたところと申しますのは、たとえば、今まで災害が起こった場合に、俗な言葉で申しますと、どこへしりを持ち込んでいいかがわからなかった。ところが、これがわれわれ住民からいえば、とにかく原子力事業者にしりを持っていけばいいということだけは明確になったと思うのでありますけれども、さて、そこのところで、原子力災害というものの特徴が、この法案ではどうも十分反映されておらないということを申し上げなければならないと思うのであります。御承知のように、たとえば、私が被爆いたしたとしまして、一体、被爆したかどうかわからないということが、直ちに起こって参ります。たとえば、放射能をかぶったら頭の毛が抜けるとかなんとか、そういうことが起これば大へんよいのでありますけれども、全然わからない。これは単に後発性とかなんとかいうことだけではなくて、ふだんからの線量管理が完全に実施されておって、そうして、とにかく何レムかを浴びたということがわからなければ、たとえ、この法案できまっております紛争審査会に持ち込んだといたしましても、法律的には、おそらく水かけ論争に終わるしかないのではないかというふうに考えるわけであります。この点につきましては、御存じの方もおると思いますが、アメリカのラップ博士なんかの著書があります。「放射線のおそろしさ」という本がありますが、その中に「法廷における原子」という一章がございまして、普通の身体障害の場合でも、そういう補償の問題は非常にむずかしいのだ、放射線災害の場合は、ほとんどこれは泥沼論争になるだけであろうということを書いておられます。この点を、まず御指摘しなければならないというふうに考えるわけであります。たとえば、身体障害が発生したというような場合でありましても、これはかなりの重症の場合でありますけれども、そのような場合でも、それが一体放射線によって起こったものか、あるいは、たとえばお酒を飲み過ぎて起こったものか、白血球が減ったのかということを判定する科学的な基準というものは、非常に困難であるということがすぐ出てくるということであります。それから、御承知の通り、放射線障害というのは、非常に後発的な性格を持っている、あるいは潜在的な性格を持っているものであるということであります。つまり、ある事業所に働いておって、そうして、たとえば十年なり二十年たって、違うところに働いておるときにその障害が起こる。これは、広島の原爆被災者の例などでよく新聞に出てくることでありますが、これは、今、大屋先生もおっしゃった通りでありまして、非常にむずかしい問題が存在するわけであります。それから、最大の障害は遺伝的障害でありまして、これについての不安があるわけであります。こういうような点を、具体的にどうすればいいかということは、紛争審査会を設けるということだけしか書いてないのでは、この法案で、実際上完全にわれわれが求償できると言われましても、事実上は補償されない。補償するという立法者の善意を信じますならば、当然こういう事柄について、もっと具体的にそういう条項が入らなければならないのではないかというのが、私どもの考え方でございます。
 それから第三に、私東海村の村民としましてですが、現在、東海村におきましては、御存じのように、原子炉並びに原子力施設が非常に集中しております。さらに、そこへ、たとえば材料試験炉であるとか、スイミング・プールであるとかいうような、計画中の炉があるわけでありますし、それから、われわれの研究所において、幾つかの臨界集合体も作っていかなければならないという問題もございます。それで、その点に関しましては、われわれは、もし適当な敷地があるならば、もっと疎開して、今後計画する炉については、当然別のところに置かるべきではないかというふうに考えているわけであります。と申しますのは、この七ページに書いておきましたけれども、いわゆる重複効果、原子力委員会の安全審査委員会において、原子炉は一つ一つについて審査をいたされるわけであります。そして、もしかりに、たとえば最大許容線量限界というようなものを考えたといたしまして、それが十分の一以下であるから安全であるというような審査をされておるわけでありますけれども、それがほんとうに十分の一であったとしまして、十基の炉が集まれば一になるという簡単な計算をおやりになる機関も、あるいはそういう考え方も、今まで全然ないということであります。ですから、これは事故のときではなくて、平常運転のときに、すでに許容量をオーバーするような事態が間もなく起こるというようなことに対して、われわれ原子力研究所員も村民も、非常な不安を持っているということを、この委員会で申し上げたいと思うのであります。
 それから、御承知のように、東海村のすぐ隣には前渡の射爆場がございます。それで、この返還の実現につきましては、われわれの労働組合も科学技術庁長官等に対しまして請願書を出し、あるいは村民も返還の運動を進めておるわけでありますけれども、この返還は一向に実現しておりませんし、模擬爆弾の投下がたびたび繰り返されているということは、新聞紙上などでよく報道される通りであります。それから、原研上空の飛行制限というものは、新聞には出ませんけれども、われわれそこに住んで実際仕事に従事しておる者から見ますと、全く守られていないということであります。いつも飛んでおるということが実情なのであります。このような点から考えまして、せっかくの、万一起こり得べき原子力損害に対して賠償しようというような提案理由の精神を空文としないためには、次のようなことを、この法案に先だってやっていただかなければならないのじゃないかというのが、私の意見のおもな内容であります。
 第一は、原子力事業者以外の第三者の方々による放射線の常時監視機関を設けていただく必要がある。そうでないと、事故が起こったかどうかがおからないということになってしまうのであります。そして、それをまた直ちに住民に通報するようなシステムが必要であろうということであります。これは、皆さんもよく御存じのウィンズケールの事故の場合がそうであったわけであります。三日間黙って放射能が煙突から出てしまったのであります。むしろ、こういう場合になりますと、われわれ原子力研究所にはモニタリングのシステムがございますが、原子力研究所員だけがわかって、自動車に乗って逃げてしまう、そして、村の人は残されて、原研の所員がみんな逃げていくけれども、何だろうというようなことであっては、この法案は、おそらく全く立法者の精神に反する、とんでもない社会的不安を引き起こすに違いない。ウィンズケールのような事故が、先ほど大屋先生も申されましたように、原爆の被害を受けたわが国において起こりましたならば、それはおそらくとんでもない、この法案に書いてありますような社会的動乱になりかねないようなことさえ起こすのではないか。その点、私、これは原子力研究所の従業員として、原子力研究の健全な発達という点から非常に心配するわけであります。むしろ、こういうようなことにならないような、そういう賠償法案を作っていただきたいということなんであります。
 それから、原子力施設付近の住民の線量管理を直ちに行なっていただきたいということであります。これはICRPの勧告によりましても、付近周辺の住民というものはどの範囲まで入るかということは、いろいろな議論もあると思いますけれども、とにかく、特殊グループに入る住民であるし、この人口を減らすというような措置も直ちにとらなければならないのでありますけれども、それはあとで申し上げますが、とにかく、いる者に対しては線壁管理を行なっておかなければならないはずであります。すでにICRP勧告を尊重するということはきまっているはずだと思うのであります。
 それから、この損害賠償ということに関連して出て参ります。農産物あるいは水産物等に対する放射性物質の蓄積状況というものを定常的に調査しておかなければ、これは実際損害が起こったかどうかを実は認知できない。ただうわさだけが飛んで、その方面の、たとえば、東海村のイモは放射能が多くて食えないのだというような形のときに、かりに紛争審査会に持ち込んでも、おそらく紛争処理をおやりになる方が立ち往生してしまうだろう、そういうことにしかならないということを私は心配いたします。
 それから、われわれ原子力研究所の労働組合は、コールダーホール炉の設置に対して反対の態度をとったわけであります。それは、すでに東海村に原子力研究所が置かれたということが、第一にコールダーホール炉をそばに持ってくることに反対の一つの理由であるということがあったわけであります。しかし、これは国会の審議その他を経まして、とにかく原子力委員会の方でおきめになったわけであります。おきめになったとしますれば、今度は次にやらなければいけないことは、当然原子力施設の周辺を整備し、とにかく人口密度が極力――八ページのところで強力と書いてありますが、これは極力の間違いであります――極力減少するような措置を当然とらなければならないのじゃないか、いわゆる人口排除区域を設けなければならないのじゃないかということが出て参ります。特に放射線障害に対して影響が大きい乳幼児であるとか、児童、婦人等については、特別の配慮をする必要があるというふうに考えます。
 それから、第五番目に、万一事故が起こりました場合に、そのときに、先ほど申しました通報体制を確立する必要がございます。それは気象の条件などによりまして、当然退避する地域、区域等が変わってくるわけでありますから、そのようなことに応じた幾つかの想定を行なって、退避措置が迅速に実施し得るようにしておかなければならない、そして、その退避が、また有効に行なわれるような輸送機関あるいは道路といったようなものを、かねがね十分に整備しておかなければならないはずであるというふうに考えるのでございます。そういたしませんと、一つの話を申し上げますが、この退避措置を実際どういうふうにやるか、これは御存じのない方もあるかと思いますので申し上げますと、原子力災害の場合には、一番先に子供と女の人と若い青年男子を逃がします。そして、お年寄りが一番最後になります。このようなことを私は非常に心配するのでありますが、今までの日本の、特に村なんかのいわゆる道徳習慣と申しますか、それと全く反した措置をやはりやらなければいけないわけであります。それは放射線による最大の影響が遺伝的障害であることから、当然出てくる結論でございます。そういうようなことを有効に実施しなければいけないということであります。でありますから、このような措置を実際にやるということは、相当大へんなことでありますけれども、できないことではないと私は考えます。これをやりますためには、原子力事業者あるいは原子力委員会というものが、現在原子力を推進する立場と、原子力の使用を規制する立場と、はっきり相反する二面の立場を持っているわけでありますけれども、これを切り離さなければいけないと考えます。ラップさんの言葉をかりますと、あたかもどろぼうと裁判官を同じ席に並べておくようなものだということを申しておられるのでありますけれども、やはり、そういう国民の健康について将来非常に長い世代にわたって影響を及ぼす遺伝的影響を監視すべき、そのような保健に責任を持った、そういう国家機関なりなんなりができなければならないのではないか。また、それに対して地方自治体がどのように協力するかということは、当然なされなければならないと思います。こういうものは、たとえば、このような賠償法案を作ります前に、当然行なわれるべきではないかというふうに考えるのであります。そうして、こういうような措置をきめていきます場合に、昨日、私、伏見先生の話を傍聴したのでありますけれども、これについてはあとで申し上げますが、原子力施設の科学的な事故評価並びにそれに基づく合理的な安全基準の確立を、どうしてもやらなければならないのではないかと私は考えます。そうでなければ、具体的な措置をとることはほとんどできなくなりますから、科学的な事故評価と、それから、安全基準の確立をまず先だってやらなければいけない。きのう伺ったところでは、原子力委員会の安全基準部会においては、まだその結論を出しておられないばかりか、お出しになる意思もないように承ったのでありますが、これでは、われわれ住民の不安は大へん増したわけでありまして、これは非常に信用しがたい、困るということが率直な感情でございます。
 それから、放射線による事故というものは、あらゆる規模のものが起こり得るわけでありまして、これらのうちのあるものは、いろいろ委員から御指摘がありました通りに、その社会的な影響がきわめて広範である場合が含まれてくるわけであります。小さい事故もあります。非常に大きな事故もあるわけでございます。それに対しては、それぞれの規模に応じて適切な措置がとられなければ、深刻な社会的影響が生じ得るわけでありますし、また、逆を言いますと、措置が適切であれば、被害を小さくできるということも申し上げられるわけなんであります。このためには、理由もなく安全だと言うのは間違いでありまして、原子力というもの、あるいは原子力施設というものに必ず伴っている危険というものを正しく住民に知らせて、これに対して起こり得べき被害をできるだけ小さくするように、具体的措置を、少なくともこれは立法措置によって確保していただきたいということであります。そして、そのあとに、この賠償法案というものが当然必要になってくるものである。そうでなければ、空文となるということを私申し上げまして、一応意見とさしていただきたいと思います。

○山口委員長 以上で参考人各位からの御意見の発表は一応終わりました。
     ――――◇―――――

○山口委員長 質疑の通告がありますので、この際、これを許します。石川次夫君。

○石川委員 大屋参考人に伺いますけれども、原子力産業会議は、前から熱心にこの法案の通過をはかる立場に立っておられるということは了解をいたしております。先般、日本原子力産業会議からのパンフレットをいただきまして、これによっても、不備な点、また非常に不安な点はないでもないけれども、原子力産業の発展のために、ぜひこれを通してもらいたいというお気持は、われわれもよく理解できるわけであります。この法案の第一条に、目的が書いてあります。それには御承知のように、「損害賠償に関する基本的制度を定め、もって被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする。」こういうことになっておるのですが、実は、私率直に申しまして、そのお気持はよくわかるし、その御趣旨に沿った法律であるということについては疑問の余地はないと思うのですが、この法案それ自体の目的は、原子力事業の健全な発達というものは従であって、実は被害者の保護ということが主目的にならなければならぬ。このことは、原子力委員の有沢先生も非常に強調しておったわけですが、私どうも、この法案を検討していく過程で、いろいろ審議をすればするほど、何か主目的の方が従になってしまって、原子力事業の健全な発達というものが大きく表面に浮かび出てきているのではないか、こういうような印象を非常に強く受けているわけであります。そのことは、結論的に言って、原子力産業の健全な発達に資するゆえんではないのではないか、こういう気持で御質問を申し上げるわけなんでございますけれども、大屋先生は、最後に、この法案というものは、どうしても原子力産業の健全な発達のために、日本における画期的な無過失集中責任制度というものを表わした法律であるから、ぜひ通過をはかってもらいたいという御趣旨の結論であったと思います。
 ところで、今中島参考人の方からもいろいろ御意見が出ておりましたけれども、私は地元の関係もございまして、やはり住民の不安な気持はよく理解できるわけです。このことは、ひとり東海だけの問題でなくて、今後起こるべきあちらこちらの原子力発電炉の問題、あるいは実験炉の問題と共通する問題であるという点で、結論だけを申し上げたいのでございます。今、中島さんからも若干の御意見がありましたが、住民の平常の健康管理の問題、あるいは最大許容量というものはどうなるのだ、あるいは事故の認定を一体どこでやるのだ、一体どこから補償するのかという基準が全然きめられていないし、さらに、周辺整備の問題も、提案される形になっておりながら提案になっていない、その前提が満たされないから、一体、この原子力損害賠償法案でもって自分たちが保護してもらえるのだろうかという不安を、最近非常に強めつつあるように私は感じておるわけです。そういうことは、結局は原子力産業の健全な発達に資するゆえんでないのではないか。従って、これは産業界の立場に立って大屋先生がおっしゃったわけでありますから、産業会議としては、ぜひこの法案を通したいというお気持は私もよく理解できますが、その健全な発達のためには、どうしても住民の不安を除くのだという、あと一歩突っ込んだものの見方をしていただかないと、この法案で満足でございますというような御意見を出されますと、これは産業界の意見だけを取り入れたものだという、勘ぐった見方かもしれませんが、それを裏書きしたような印象を受ける危険が非常に強いと思うのです。それで、申し上げたいのですが、今申し上げたような前提条件が満たされない形では住民は満足できないし、非常に不安だ、その不安を何とか除去しなければいかぬじゃないかという積極的な御意見が産業界の中から出なければいかぬと私は考えるわけですが、その点についての御意見を伺いたい。

○大屋参考人 今度の法律の目的が、第一、第三というような順序で書いてありますけれども、これはまことに紙の裏表のようなものであって、片方の方が大事だというような意味で私は申し上げたつもりはないわけであります。あるいは文章の表現で、そんなふうに聞こえるかもしれませんけれども、その重要さは、放射能障害の防止というもの、とにかくその方が前提になって、それがやがては事業の健全な発達というものに結びつくというふうにお考えになる方が、むしろ常識的であると思います。しかしながら、法律の表現はこういうふうになっておるのであります。健全な発達を第一目的とするようになっておりますが、私たちの考えでは、同じものだというふうに考えておるわけであります。
 それから、いろいろの実際の災害防止に対する施設が足りぬと、今、中島参考人もお話しでありましたが、私も同感であります。そういうような施設が一日も早く促進されることを希望しておるのであります。あるいは産業界が怠慢であるというふうなお考えもあるかもしれませんけれども、いよいよでき上がれば、今後産業界ももっと一生懸命やらなければいかぬというふうなことは感じております。従来は、原子力研究所という小さなものであったのでありますが、今度は原子力発電という大きな放射能障害のチャンスの多いものができたものでございますから、これからは今までのようなわけにいかぬと思いますので、その点は、産業界も十分御趣旨に沿うように研究をするつもりであります。しかしながら、そういう施設がすっかりできなければこの法律は意味がない、こうは私は考えておりません。並行的に進めても、ちっとも差しつかえないものだと思います。少なくとも、これがありませんと、ほかの方にも相当大きな支障を来たしますので、産業界としては、一応この法律の通過を念願しておるような次第でございます。御趣旨には全く同感であります。

○石川委員 産業界の立場に立ちますと、そういう御意見になるだろうと思いますので、大屋さんの立場では、そういう御意見になるだろうと思います。私は、率直に申しまして、地元の関係がありますから、住民の素朴な意見としては、そう言ってはなんだけれども、原子力産業界の発達ということは二の次であります。何としても、自分たちが安全であるかどうかということが重点になる。また、私、国会議員の立場からすれば、もちろん、原子力の健全な発達を遂げられることを心から望んでおるわけでございます。しかし、この法案は、少なくとも、第三者の損害を補償するのだということがあくまでも主目的である、そういうことによって初めて原子力の健全な発達を期待することができるようになる、そういう関係において、この法案の趣旨は貫かれなければならない、この法案については、どうもそう考えざるを得ないわけです。特に地元の住民の気持を代表すると、そういうことになります。従って、産業会議の立場では、やはり同じような、前提となるような事柄については、重大な関心をお持ちであるとおっしゃっておるようでございますけれども、しかし、何とかこの点を――まあ、産業界とすれば、それは、もちろん自由になるということは私もわかります。率直に言って、わかります。わかりますけれども、それでは、目的とした原子力産業の健全な発達が今後非常にむずかしくなるのじゃないかというようなことを考えて、施設ができたらということじゃなくて、このことについては、大いに産業界を代表して、政府の方も督励をするという意思表示といいますか、そういう意欲があれば、勢い、住民あるいは国民もこれに対して協力的なことになる。従って、ひいては原子力産業の健全な発達に資することになる。そういうことで、ぜひ積極的に、こういう点についての前提条件を具備することに極力御協力を願わなければならぬ。それでなければ、なかなか所期の目的は達せられないと思いますので、これは要望として申し上げます。しかし、われわれは、この前提条件が具備されないから、この法案は絶対反対だというようなことを言おうとしているのではありません。少なくとも、形式的には非常に進歩した法案であるという点も認めておりますし、何らかの形で、損害賠償、災害補償を受けなければならぬのだという、この住民らの素朴な気持も尊重しなければならぬということも考えておりますが、なかなかこれだけでほんとうに効力が発生できるかどうかという点については、どうも疑問の点があるわけであります。
 次いで、中島参考人に御質問を申し上げたいと思います。中島さんには、わざわざ村会の中の対策委員会あるいは原子力の従業員の方々といろいろ検討して、丁寧なパンフレットまでいただいて、心から感謝いたします。まことに原子力はむずかしい学問で、私はしろうとの質問で恐縮なんでございますが、率直に言って、原子力については、若い科学者の意見をどこまでもまず第一に尊重すべきであるという点で、中島さんから率直な御意見を伺いたいと思うわけです。
 それは、原子炉の安全基準がなかなかできないという答弁がきのう伏見教授の方からあった。原子炉の安全基準を一つ一つの原子炉についてはやるけれども、それが重なり合った場合の基準ができ得るということは、全然おっしゃっておりませんでした。一つ一つの安全基準については、近いうちに何とか信憑性のあるものができるだろうということはおっしゃいましたが、そのあとのものは非常にむずかしいのだということだけで、そのできる期日などについては全然答弁をされなかった。これはまことに住民としては不安なわけでございます。それでは、放射能をどこまで浴びても、一つ一つの原子炉の安全基準さえ確立されておれば、どんなに重なり合って、全体の常識的な許容量をはるかにオーバーしても、それでかまわないのかという不安を持たざるを得ない。そこで、中島さんにお伺いしたいのですが、安全基準を早くきめるべきだという、非常に強い御主張があったようでございますけれども、一体、きのう伏見教授がおっしゃったように、安全基準を作るということは不可能なことなのだろうか、そういう点の見通しでございます。ICRPではいろいろ基準が作ってありますが、きのうの伏見先生のお話では、三百ミリレントゲン・ア・ウィークというようなことは非常に単純な見方であって、積分されたものでなければならぬというような、非常に学識のあるところを説明されて、私たちちょっと了解に苦しんだわけでございますが、しかし、何とかわれわれでもわかる程度の安全基準というものができ得るというような気もするし、また、できなければ、この法案をほんとうに生かして使うことは不可能ではないかと考えるわけでございますので、その点の御意見を伺いたいと思います。

○中島参考人 お答えいたします。
 私も、昨日伏見先生のお話を傍聴させていただいたわけでございます。私なんかは、実は伏見先生なんかの御激励によりまして、若い者はこれから原子力をやらなければいかぬということで、原子力研究所に行ったわけなんでありますけれども、その尊敬する伏見先生がああいうことをおっしゃるというのは、私非常に理解に苦しむような御発言をきのうされていたと思うのであります。ただいま、率直に申し上げろということでございますから、率直に申し上げさせていただきますが、伏見先生がおっしゃっておることは、原子炉自体の安全、つまり、原力炉そのものの物理的、化学的構造の安全という問題と、それから、原子炉が置かれる、あるいは原子炉を操作する人であるとか、体制であるとか、環境であるとか、つまり、私がちょっと申しました射爆場があるとかないとかいうのは、この第二の因子に入ってくるわけでありますけれども、その問題と混同しておられるのではないかというふうに思うのであります。そうして、第一の問題については、これは非常にむずかしいことが、先生のおっしゃる通り、たくさんあるわけであります。これは非常に皮肉な言い方になりますけれども、そういうふうにむずかしいことがたくさんあるから、私のおります原子力研究所が必要なのだろうと私どもは考えているわけであります。みんなわかってしまったら、原子力研究所は必要でないわけでございます。そういうことをまず申し上げなければならない。そうしますと、現在わからないことがあるということに立って、確かに議論は定性的ではあるけれども、基準というものは、だから逆に、もっと厳格に、敷地なり、あるいはその管理の体制なり、あるいは万一事故が起こった場合の処置の方法といったことをやっておかなければいけないということになるのは、当然のことであろうということであります。敷地の問題に例をとって申し上げますと、たとえば、ここに一平方キロ当たり一人の人間が住んでいるところと、三百何十人パー平方キロという――東海村がそうでありますけれども、そういう二つの敷地があったときに、どっちへ原子炉を置いたらいいか、大きな動力試験炉を置いたらいいかということは、これは科学者の間でも意見の相違のない自明の事柄であるわけでございます。その点につきましては、すでに一九五八年四月の学術会議の総会で、政府に対して、原子炉の安全性についての申し入れをしているわけであります。その内容といいますのは、「原子炉とその関連施設の設置場所についての安全基準を検討すること、設置地域の計画について基本方針をたてること」ということを言っておるわけであります。以下、設置場所について安全基準に合うかいなかの調査を、必要に応じてみずからも行なうし、審査すること、あるいはハザード・レポートの審査を行なうことを、それから、安全監視機構を整備しなければいけないということ、それから、原子炉及びその関連施設の設置後の安全対策の検査と監督、それから、保健物理学者を大量に養成しなければいけないという問題、それから、万一の事故が起こった場合の救援対策について、基本的な問題点を整理し、対策を考えておくこと、それから、災害が起こった場合の補償に関係した問題、そういった問題を総合的に取り上げて考えなければいけないということなのであります。つまり、端的に申しますと、敷地が安全装置になるという言葉がございますけれども、今の私の御説明で御理解いただけるのではないかと思います。ですから、私がきのう非常に不安になりましたのは、安全基準を作らない方がいいというような議論を先生はされておったようであります。これは大きな間違いではないかと思うのであります。われわれがやる科学や技術の問題では、実はわからないことの方が常に多いのでありまして、たとえば、皆さんが今いらっしゃるこの国会議事堂を例にとって申しますと、この中でコンクリートと鉄筋とが反応して、そのメカニズムは物性的にはわかってないことが多いということが申し上げられるわけであります。だけれども、この国会議事堂は安全で、何もこれが落っこちるだろうという心配をしておられる方は一人もいないだろうと思います。これはなぜかといいますと、そこに安全係数というものが当然かかっておるわけであります。学術会議のわれわれの同僚が申し上げたことは、敷地がそういう安全係数のかわりをすることだというふうに御理解願えればいいのであります。こういうことがだんだんわかってくれば、たとえば、次に、そうでない、ここまでは大丈夫だという線が、だんだん科学が発達するほどわかってくるであろうということを言ってよろしいのであります。
 それから、今度の損害賠償法では、たとえば、五十億円というようなことを言っておるのでありますが、コールダーホールの審査のときに、電源開発の大塚君がコンテナーのことを熱心に主張していたのを思い出すのであります。そのコンテナーの価格は、たしか彼の算定によれば十五億ないし二十億程度のものではなかったかと思います。そういうものをつけることによって――つけた方が、私企業の場合でも科学的な得になってくるという関係が出てくる。それが原子力のむしろ健全な発達の方向であるというふうに私どもが考えておることを申し上げたいのであります。この点、また御疑問があればお答えいたしますが、一応それでよろしゅうございますか。

○石川委員 非常に素朴な意見を申し上げて笑われるかもしれませんが、東海村の住民は、これからコールダーホールというものができるし、実験炉、試験炉も原研に集中して、世界にも類を見ないことだというようなことで、一つ一つの原子炉の安全性は安全審査部会でもって通っておりますが、重なり合ったらICRPの基準量をはるかにオーバーしてしまうのではないかという、全く素朴な感情でございます。これは一体どういうふうにごらんになるのかということをまず一つ伺いたい。
 あと二、三ありますので、まとめて質問したいと思います。中島参考人は第二者と第三者を兼ねてこちらへ参考人としておいで下さったわけであります。第二者のいわゆる原研の従業員としては、おそらく労働組合と原研の理事者との間にいろいろな交渉をして、第二者災害補償の問題について話を進めておるのではないかと私は想像するわけであります。第三者の法案が出ますと、実際にどういう程度の補償になるかわかりませんが、第三者の方が、常識的に見て、第二者よりも厚く保護を受けなければならぬ性質のものではないか。もちろん、これはそう分けるという考え方がおかしいかもしれませんが、従業員の場合には、それによって生計を営んでおるのだということで、ある程度覚悟をしておるという立場だろうと思います。第三者の場合は、全然予期しておらないところへ持ってきて、そこで事故が起こって災害を受けたということになると、天災というよりも、人災という格好でありましょうが、第三者に対しては、付近の住民の方が、第二者よりは厚く保護されてしかるべきものであると、常識的に考えざるを得ないわけであります。そうしますと、第二者としての立場で交渉を進めておって、ある程度のめどがついたというふうに仮定をいたします。さて、損害賠償法案によってどの程度の――実際の事故が出ませんとなかなか算定がむずかしいのでありますが、第二者として確保されるべきいろいろな補償、これは非常にむずかしい問題ではございますが、これは第三者の方が高くてもいいというふうに私は考えます。その点について、原研の従業員として、あるいは労働組合員として、どうお考えになっておるか。それから、事実具体的にどの程度進んでおるかという点について、一つ経過と見解をお知らせ願いたいと思います。これが第二点であります。
 あと一つは、非常に素朴な質問になりますけれども、この事故があれば、当然退避をしなければならぬということになりますが、退避訓練をあそこでやったという話を、原研の従業員の場合はどうか知りませんが、付近住民の場合は、私は全然聞いておりません。事故ができますと、相当遠くへ運ばなければならぬということで、おそらくそういう訓練は、簡単に、やれといってもできないわけでありますが、そういう防護、退避の連絡といいますか、そういう体制ができておるのかどうかという点が非常に心配でございます。私は、事故ができた場合に、退避が完全にできるとはとうてい考えられないのであります。その点は、付近の土地に居住する住民としてどういう形になっておるか、一つ率直に現状についてお知らせ願いたいと思います。

○中島参考人 ただいまの石川委員の御質問は三つであったと思います。一つは、重複効果の問題、第二番目が第二者補償の問題、第三番目が退避訓練の問題であったと思います。
 重複効果のことについては、非常に狭い地域に並べてしまえば、当然重複効果が起こる。これは平常運転のことを申しておるわけでありますけれども、アルゴン四一の放出というものは、原子炉によって変わらないのであります。臨界集合体などにおいても、空気の移動放射能で生ずるものでありますから、重なり合い効果が直ちに出てくる、そういうことを申し上げればいいのではないかと思います。そして、この東海村の現状でありますが、御承知のように、JRR1、第一号炉の熱出力が五十キロワットであります。JRR2、これはまだ一メガワットしか出ていないのでありますが、十メガワットであります。それから建設中の国産一号炉が、十メガワット、これまでが確定しています。すでに建設を開始しています。それからJRR4、これはスイミングプール、これが一メガワットという計画でございます。それからJPDR、最近着工いたしましたが、四六・七メガワット、原研では一番大きいものであります。従いまして、原子力研究所のそういう熱出力を総合いたしますと六十八メガワット、CP5が一万キロワット出たとして、たとえば九〇%入れてうまく動いたとして六十八メガワットということになります。それに対して原子力発電会社のお持ちになるコールダーホール型発電炉は六百メガワットであります。ですから、原子力研究所のものを全部合わせましても十分の一であるということなのであります。そのほかにR1工場、原子力燃料公社の再処理施設、それから原子力研究所の中に再処理のパイロット・プラントがあります。これは三十万キューリーを扱えるようなパイロット・プラントでございます。二万キューリー扱えるホット・ラボというものがございます。それから非常に大きな危険性を持っておるものとして原子力燃料公社の再処理工場、こういうものが、全部合わせましてもほんの百万坪というような狭い敷地に集中している。そこに、さらに計画中のものを申しますと、いわゆる工学試験炉、JETRというものをそこに置こう、われわれの意見としては、もう敷地を考え直していただきたいということを言いいたいのであります。それは昨日の打ち合わせ会ですか、委員会の方でいろいろ岡先生からの御討論があったように、相互にその機能を停止させて、そして損害を不必要に拡大するという効果を持っているわけであります。コールダーホールが動き出しまして事故を起こしますと、この辺の炉が全部だめになるという効果が当然あるわけです。ただ、申し上げておかなければなりませんのは、原子力研究所の一番大きなもの、JPDRにはコンテナーがついております。ですから、そういう点については、少なくともコールダーホール型よりは放射能の散逸は少ないだろうということは申し上げられると思います。ですから、今後新しく原子炉を作る場合には、当然あらためてそういうことが原子力委員会の安全審査部会あるいはその他で審議されなければならないのでありますけれども、それが、きのう伏見先生が申し上げましたように、判定の基礎になる安全基準が出されていないのでは、これは困るということを私は申し上げたいのであります。それから、一番大きな問題は、現在ある環境ということで申しますと、射爆場であります。この射爆場の問題を一日も早く解決してほしいというふうに考えております。
 それから、次に御質問のありました第二者補償の問題でありますけれども、第二者補償につきましては、お手元に、やはり第二者の、つまり、従業員の安全保障及び補償についての原研労働組合の基本的な考え方をまとめてございます。これは石川先生御指摘になりました通り、従業員というのは、特にICRP勧告からいたしますと、利害とのバランスという考え方しかない。下限レムはない。つまり、それから利益を受けない者は一つも放射能に当たらないということにしなければいけないという精神からしますと、当然、石川先生がおっしゃったように、第三者の方がこれよりも十分でなければならないと思うのでありますが、第三者補償につきましてわれわれがやっておりますことは、私が最初の公述のところで申しましたように、原子力放射線障害というものの特質からいたしまして、補償ということを考える考え方の第一前提は、とにかく、当たらなくていい人は所内でもできるだけ当たらないようにする、そして予備線量をたくさん残しておく、放射線管理を完全にしておくということが大前提になってくるわけであります。そうした上で、どういうことが出てくるかといいますと、予防補償という考え方、これは新しい言葉でありますから、多少御説明申し上げますと、とにかく被爆したら補償が必要である、保障するというんなら補償が必要であるつまり、区別はつけられない。ICRP勧告から申して、下限レムはないという考え方からして当然のことだと思います。そうして、身体障害者が現われるかどうかということは関係なしに、直ちに予防補償を行なっておかなければならないという点が問題になってくると思います。
 第二点は、身体障害が生ずるような直接障害、これは現在行なわれております労災保険のワクを越えた補償が当然行なわれなければならない。従いまして、さらに療養補償、つまり、医療ですね、それらの問題については完全補償でなければいけないということであります。つまり、たとえば、治療は完全に原研の事業者の責任でやらなければいけない、それから、療養している間に起こる身分上の損失といったものは、全部カバーされなければいけないというようなことを含めて、われわれは完全補償という言葉を使っておりますが、そういうことであります。
 それから、一番大きな問題であります遺伝の影響については、第二代補償の請求権利だけは保証しておく。具体的にどうするかということについては、われわれも数え切れないほどの問題がございます。これは社会全体できめられなければいけない問題なのでありますが、しかし、少なくとも労働組合の立場としては、第二代補償の請求権だけは確保しておかなければいけないというふうに考えております。
 それから障害の認定及び判定は、完全に第三者が行なう。つまり、使用者が行なってはならないということであります。そのために、事業所の中では、労使双方の対等の権利を持った委員から構成される審査委員会を作りまして、そして、それによって行なうという考え方でやらなければいけないわけであります。以上の事柄は、実はすでに申し上げましたように、かなりの人口密度のあります東海村にわれわれの研究所があるということについての科学者の社会的責任という問題からいたしましても、第三者に対して非常に大きな責任があるわけでありまして、この点は、原子力研究所の当局者もさらに大きい責任を持っておるわけでありますが、対等の立場で第三者に対する責任を確保することが第一に必要であるというふうに考えるわけでございます。そのためには、外国の例にとらわれてはいけない。われわれの条件を具体的に、科学的に検討して、その独自の安全保障あるいは補償を考えていかなければいけないというのが、第二者補償についての組合の考え方であります。そして、以上の原則は、現在の理事者との間に意見の不一致はございません。原則的な問題については、相互の了解がほぼできております。そうして、今、当局側の委員と組合側の委員とで合同して答申案を作りまして、それを理事長のところへ出す、そして、当然、それは原子力局あるいは国会方面に、こういう原則に基づいた補償法を作っていただくようにお願いするという段取りになると思うのでありますが、さっきるる御説明申し上げました放射線災害の特質からして、第二者補償に対してさえも、それくらいの補償は必要であるということは、少なくとも、原研の当局者までも認めざるを得ない明白な事実なんだということを御認識願いたいと思います。そうだといたしますと、第三者の問題は、石川先生のおっしゃる通り、さらに厳格なものでなければいけない、手厚いものでなければいけないというのが、われわれの考え方だということを申し上げます。
 それから第三に、これに基づいて退避訓練を行なったかどうかというふうな御質問であります。これはまことに恥ずかしいことでありますが、原研の中においても、実は第二者補償の問題をわれわれは再三要求しておったのであります。始めましたのはCP5型、つまり、五十キロワットのおもちゃのような原子炉ではなくて、CP5第二号炉が動き出すことになって、防護隊を作らなければいけないということになって、初めて理事者側が真剣になりまして、われわれと打ち合わせて作ったという現状でありまして、防護隊は、保健物理部員の犠牲的精神によって、とにかくわれわれは社会的責任があるから防護隊に参加する、しかし、こういう補償は作ってほしいという声明を出して参加したのでありますが、少なくとも、いわゆる退避訓練は、原子力研究所の中においても行なわれておりません。それから、通報体制というものも、まだ十分周知徹底してないということを申し上げておきます。これについては、何年前でしたか忘れましたが、冶金工場においてウランの燃焼事故が起こりました。そのときは、まことにひどいものでありまして、どこへ電話をかけてよいかわからない。三つも四つも電話をかけて、わけのわからない人がたくさん入ってくる。それを、そのときおりました研究員の常識的判断だけで工場を閉鎖しました。そうして、その結果、組合が災害の調査をやりましたときに、一体どれだけのウランが燃えたかということもわからないような始末であったということであります。それに対して所側の方は、これは小さな事故だということばかりを言いまして――これはおそらく、局あるいはその他の御意向を非常におそれたのだろうと思うのでありますけれども、われわれは、新しいことをやっていく以上、ある程度の事故は必ず起こる、それを今後の経験として生かさなければいけないということを組合は主張したのでありますけれども、それは全く無視された。そのことが、現在第二者補償の問題として、ようやく所内の意見一致を見ようとしている段階だということを申し上げたいと思います。

○石川委員 あと一回、念のために伺います。きのう私が伏見参考人に対して、原子炉が複数以上設置される場合の重複効果について伺いましたところが、明確な答弁がなかったわけであります。さらに、昨年、大塚参考人だったと思いますが、伺いましたところが、集中の限度については、学会としても定説がないので困るのだというふうなお話がございました。今のお話ですと、非常にむずかしいことはよくわかるけれども、作らなければならない。住民の素朴な気持から設けなければならぬ、こう思うのです。それ以上に、作ろうと努力をすれば何とかできるというお見通しのように、結論的には伺えたのでありますが、その点を、一応確認しておきたいと思います。
 それから、あと一つ。きのう真崎参考人が言ったのでございますけれども、コールダーホール型がもし事故を起こした場合に、第三者となる原研の損害――原研は第三者となるのですが、第三者の原研の損害は、汚染を除去する費用と、一定期間休業しなければならぬのですが、それに対する休業補償と、両方考えていくというようなことを言われたわけでございます。これは、実際問題として、それだけの費用が出るかどうかという問題もありますし、除去するということがどういうことかも、私しろうとでさっぱりわかりませんが、このことに関して、何か中島さんの御意見があったら、一つ参考にお知らせを願いたい、こう考えておるわけでございます。
 そのほか、いろいろありますけれども、大体私としてはその程度にしたいと思うのですが、先ほど来、何回も参考人が強調されておりますように、第三者機関としてこれを認定する――これ以上の放射能を浴びたら放射能の事故が起こるから退避しろという命令をする機関が全然今のところは確立をされておりません。これはしろうと考えでも非常に危険千万だといわなければならぬので、これについては、一つ科学技術庁長官、きょうは政府には答弁を求めないつもりだったのでありますが、認定する機関がなくて、一体どこから事故になるのか。それからまた、事故になったら、これは事故だから退避しろということを業者の方にまかせておくという格好は、どうしてもこれは危険千万だと思うので、従って、第三者的立場で認定する機関というものは、どうしても必要欠くべからざる前提条件だというふうに考えますけれども、この点についての長官の御意見をこの際伺っておきたい、こう考えます。

○中島参考人 お答えいたします。
 最初の方の問題でありますが、私が申し上げましたのは、たとえばJETR、工学試験炉といったものを、初めから何か東海村の原子力研究所の敷地に置くというふうにきめてしまうのは間違いであって、つまり、その適地がどこかということは、すでに原子炉がそこにあったら、少なくとも相当離して置かなければならぬということが、私が申し上げました学術会議の原子力問題委員会の安全性に関する答申だったと思うのです。私もそれが正しいと考えます。ですから、この国会においても、学術会議の答申は、やはり日本の各方面の科学者が集まりまして、大きな社会的影響を持っております原子炉の安全性について慎重な考慮をいたしまして、そうして、こうした方がよいという勧告を政府に対して行なっているのでありますから、これは当然御尊重いただきたい。これが、やはり現場におります若い科学者としての私の意見でございます。
 それから、第二番目の御質問は、汚染の除去ということであります。これは具体的に言った方がよろしいと思いますが、たとえば、きのうもこの委員会でちょっとお話が出ておりました、SL1の事故の場合の例などを申し上げたらいいかと思います。きのう真崎参考人であったかと思いますが、たしか岡先生の御質問に対して、あの原子力研究所の施設が被災したときには、その財産をすぐ補償するというのではない、その汚染の除却の費用をペイするのだというお話をされたと思います。これはちょっと聞きますとけっこうな議論のようでありますが、これはたとえば、ネコの首にだれが鈴をつけるかという話をしておるのじゃないかと私どもは思います。一体、だれがその除染作業をやるのですかということが、われわれ従業員から言うと申し上げなければならない第一の点でありまして、たとえばSL1の事故のときには、三十五レムまでのメーターしかなかったのでありますが、そのメーターを持って入って行ったら、ふっ切れてしまった。それで行った目的も、除染作業をやろうとかなんとかいうようなこともありましたけれども、第一に、死んだ人の遺体を収容しなければならないということのために、決死隊を募って、その場合には、きのう伏見先生がおっしゃったように、いわゆる国際勧告のレムではないわけでありますが、一時的には非常に高い汚染を浴びても、とにかく救出に行った。それは、もちろんたくさんの要員を用意いたしておりまして、なるべく積分量が小さくなるように、全部を合わせた量が少なくなるように、たとえば三十分たったら交代をするとか、その要員の資格ということも、先ほどから何回も繰り返しておりますように、たとえば、私は子供が二人ございますが、二人いるから、もうあとはいいだろうということでしたら、私は志願しなければならないわけであります。もし、私のところに若い高等学校を出たばかりの助手がおりましたら、それは入らせてはならないということは、一つのモラルの問題であります。これは、われわれ原子力科学者のモラルだと思いますが、そういう意味で入って遺体を運び出したのが限度であるということでありまして、それを全部除染していくというようなことは、できない相談――と言うとおかしいのでありますが、非常に困難だということは申し上げてよろしいのじゃないかと思います。
 それから、もし、その除染がある程度できたといたしましても、次に、原子力研究所で行なわなければならない、非常に微弱な放射線をはかるという点で困ることがあります。つまり、バック・グラウンドが非常に上がって、精密な測定ができなくなるということは当然起こるのでございまして、この点は、岡先生のおっしゃいましたように、日本の原子力研究の発展のために大きな責任を持っておるわれわれの研究所が、その機能を停止してしまうのではないかというようなことを非常に心配しておることを申し上げたいと思います。ですから、あれは、そう申してはなんでありますが、やはり保険屋さんの立場としては当然の御意見だと思いますが、そのためには、幾多のその前にやらなければならないことがあるように考えるのであります。

○池田(正)国務大臣 先ほど来の参考人の方々の御意見、御質問等を承っておりますと、専門のことは私にはわかりませんけれども、とにかく新しい科学であり、新しい産業であるだけに、いろいろまだこれからこうしなければならない、ああしなければならないと中島さんの仰せられたことは、いずれも私はもっともだと思います。それができなければ、それが前提でなければいけないといったような御議論は、私は議論しておるつもりではありませんけれども、これはどうかと思います。これが必要だということはわかります。従って、それをいつ、だれがどうするかということになれば、結局、これは原子力委員会なり科学技術庁が率先してやらなければならないということは、これまた当然であります。ただ、今御質問がありました第三者の通報なり、あるいは退避作業というようなことは、東海村の場合は、茨城県と私の役所で今連絡をとっていろいろ研究いたしておりますが、これはとりあえず、やはり県あるいは警察になりますか、そういう機構を新しく作るか何かいたしまして、そういう設備、機構といいますか、これを整備していきたい、かように考えます。

○石川委員 実は、私の質問は、こまかいことを言い始めるときりがありませんが、法案の審議という形で続けて参りたいと思いますので、本日はこの程度にしたいと思います。ただ、今の長官のお話で、前提条件が具備されなければこの法案はいかぬということでは困るというふうな御趣旨だったと思うのですけれども、私は、この法案それ自体は決して悪いとは思ってないのです。こういう趣旨はけっこうだと思います。けっこうですけれども、今これを適用されるかどうか、あるいは基準は一体どうなるか、どれから以上が一体事故になるか、どれから以上が放射線によるところの障害と認定するのかというふうな、前提条件が具備されないままにこれが通ってしまいますと、前提条件がいつまでたっても具備されないままに放置されてしまうのではないか、こういう不安が、特に地元の住民としては強いということは、御理解いただけると思います。従って、この前提条件についてくれぐれも念を押しておきたい。私は、この前提条件を徹底的に、皆さん方とほんとうに真剣に取り組んで、早い機会にこの前提条件を具備するということが前提にならなければ、この法案だけで事足れりとするような考え方では、非常にわれわれとしては安心できない、こういう気持であるということを、きょうは討論するつもりじゃございませんから、一応私の意見として申し上げまして、私の質問は終わりたいと思います。

○山口委員長 他に御質疑もないようでありますから、参考人各位からの意見聴取はこの程度にとどめます。
 参考人各位に申し上げます。
 本日は、御多用中のところ、長時間にわたり貴重な御意見の開陳をいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表して私から厚くお礼申し上げます。
 本日は、この程度にとどめ、これにて散会いたします。
   午後一時二十二分散会
     ――――◇―――――
  〔参照〕昭和三十六年五月九日(火曜日)
 科学技術振興対策特別委員打合会
   午後一時五十三分開議

○山口委員長 本日は、都合により、正規の委員会としないで、科学技術振興対策特別委員打ち合わせ会を開会いたすことにいたします。
 これより原子力損害の賠償に関する法律案及び原子力損害賠償補償契約に関する法律案について、ただいま、日本原子力保険プール事務所、長真崎勝君及び大阪大学理学部長代見康治君に御出席を願っておりますので、その御意見を承りたいと存じます。
 真崎さん、伏見さんには、御多忙中にもかかわらず、わざわざ御出席をいただきまして、ありがとうございます。
 これより両案につきまして御意見を承りたいと存じますが、真崎さん、伏見さんには忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。伏見康治君、次に、真崎勝君にお願いをいたします。伏見康治君。

○伏見康治君 お呼び出しを受けまして、今おっしゃいました二つの法案についての意見を申し上げることになるのでありましょうが、その方面に関しまして、私は特にその専門家でもございませんし、的確なことを申し上げる柄でないと存じておるわけでございます。しかし、一方、同じ原子力に関連いたしまして、原子炉安全の基準部会の方の仕事をさせていただいておりますので、その方との関連でこの原子力損害賠償に関しましても一応の関心はございますから、その方の関連から見ましたことを二、三申し上げてみたいと思います。
 原子力というものが、もともと原子爆弾から生まれましたように、ほかの科学的エネルギーのようなものに比べますと、けた違いに非常に大きなエネルギーでございますために、それの扱い方によっては、非常に人類の役に立つ方にも使えますと同時に、使いそこないますと大きなやけどをする、そういう性格のものであるということは、いまさら申し上げるまでもないことでございます。原子力の安全をはかり、いかにして人類の幸福のために使いこなしていくかということは、これは決して簡単な問題ではございませんで、科学技術的に十分いろいろな面を研究し、その上に初めて原子力のほんとうの利用というものが始まるわけでございますので、原戸力の安全を守るためのいろいろな準備といったようなものは、原子力そのものを国が推進しようとする限りにおきましては、非常に大切な問題になるわけでございます。原子炉の安全性を守りますためには、原子炉ばかりではありませんで、それ以外のいろいろなものがあるわけでございますが、話を原子炉に一応限定して申し上げたいと思うのでございます。
 原子炉の安全性といったようなものを考えます際に、原子炉の正常運転におきましてもいろいろ問題点がございましょうが、しかし、十分によく設計された原子炉でありますれば、その正常運転ですでに問題が発生するというようなことは、もちろん皆無ではないでございましょうが、一応二次的な問題と考えてよかろうと思います。原子炉の事故に伴ういろいろな損害というものが問題になると思いますが、原子炉の事故を考えます場合に、その事故の大きさというものにはいろいろなものが考えられる。非常に小さな華故から非常に大きな事故までいろいろなものが考えられるわけでございますが、原子炉に関連いたしまして、皆様の御関心を特に浴びております点は、非常に大規模な事故が起きて、非常に多くの方々に御迷惑をかけるといったようなことが起こるのではないか、その点で原子炉に対する災害、損害問題というものが特に問題にされているのだろうと思います。小じかけな事故といったようなものでございますれば、これは何も原子力に限りませんで、それ以外のいろいろな機械にも付随して起こるものでございまして、原子力だけが何か特別扱いをされなければならないということにはならないと思うのでございますが、原子炉の場合には、その潜在的な損害の中で非常にけたの大きなものがある。そのことが特別視して考えられなければならない一つの大きな点であろうと思います。
 原子炉に起こりますいろいろな事故といったようなものは、どんな事故が起こるだろうかということを考えていきますと、それはいろいろ考え方にもよるおけでございますが、ただ起こるか起こらないかという可能性のほかに、こういうものを考察いたしますときに、私たちは、そういう事故が起こる確率と申しますか、そういうことの起こりやすさといったようなことについても十分考慮しながら議論を進めていかなければならないわけでございまして、事故の大きさ、それと、起こる確率というものをいつも並べて考えていく必要があるわけでございます。大きな事故になりますほど、当然そういう事故は起こりにくくなるはずでございまして、小さな事故でございますれば、ある程度ひんぱんに起こり得るということになるのでございましょうけれども、この損害賠償の法律で問題にされておりますような非常に大規模な事故というものは、まずめったに起こらないものということが最大前提になるわけでございます。そういうふうに原子炉そのものがまず作られていなければならないことは当然なことでございまして、また、実際そういうふうに作るということは、十分可能なわけです。絶対に原子炉を安全にしてしまうということは、絶対という言葉の意味にもいろいろ依存いたしますけれども、哲学的な意味での絶対な安全性というものは、私たちは、神様でない限り不可能なことであろうと思うのであります。そうかと申しまして、絶対には安全でないということは、多くの方々には、原子炉というものは非常に危険であるといったような印象を与えてしまうということも、否定できない要素でございます。それで、たとえば一つの原子炉を十年なら十年の長い間運転いたしまして、その間に一回も事故を起こさない。しかし、同じ原子炉を十個なら十個作って並べて運転いたしますというと、それ全部を十年なら十年運転いたしました結果、その中の一つがたまたま事故を起こすというような程度の、そういう程度の確率といったようなものが考えられるわけなんでしょうが、その程度でございますれば、私たちのそれに対処する仕方というものは、ただそういう事故が起こらないようにするというだけでは話が通じなくなってくるわけでございます。と申しますのは、非常にまれにしか起こらないそういう事故に対しまして、その事故が絶対に起こらないようにするということは、原子炉に対するいろいろな安全装置のしかけというものを非常に大げさなものにいたしまして、実際問題として、原子炉の利用というものをその面からつまずかせてしまうというようなたぐいのものにするおそれがあるわけでございます。従って、ある程度の確率の小さな事故に対しましては、私たちは、それを、確率というものと、それから事故の大きさというものをかけ合わせたような量で判断すべきものであるというふうに考えられるわけでございます。もし、その原子炉の事故というものが、よくしろうとの方々が御想像なさいますように、原子爆弾のようなものでございまして、それが爆発いたしましたときには何十万という方々が一時になくなってしまうというような、そういうたぐいの潜在的な事故でございますれば、これは確率が実はいかに小さくても、そういう装置というものは許さるべきものではないということになると思うのでありますが、幸いにしてそういうふうな取り返しのつかない事故というようなものは、現在の原子炉では全く起こらないと断言してよろしいわけでございます。原子炉の事故で相当大きな災害が起こると申しましても、そういう意味での災害ではなくて、非常に広範にわたって放射能を浴びるという意味での災害というものは、いつも問題になるわけであります。直接の爆発効果とか、あるいは焼夷効果といったようなことによって、原子爆弾と同じような災害を国民に与えるといったような面は、全然私たちは想像しなくてよろしいわけであります。そういう、非常にまれであって、しかも、それが起こりましたときに起こる災害というようなものが、ある程度の人々に許容量以上の大量の放射能を浴びせるかもしれない、そういう現象に対しましては、それを絶対に起こらないようにするという技術的な工夫、そういうものは、もちろん絶えずしなければならないわけでございますが、現在考えられる限りの技術の面では、それを最後のところまで絶対起こらないと断言することが不可能なような状態に置かれておりますために、私たちは、そういうことが万一起こったとしても、なおかつ、国民のそういう被害者の方々にあとから何らかの意味において補償するという、そういう手だてが必要になってくるというように考えるわけであります。つまり、考えられる非常に大きな事故が起こりましても、そのあとで適切な手段を講ずることによって、実際上の損害をなくすことができるような、そういう事故であるならば、その原子炉は作ってもよろしいというのが根本的な考え方ではなかろうかと思っております。原子炉の安全審査をいたします場合の根本の精神というものは、そういうところにあるわけでございます。非常に極端な想像をいたしますれば、相当大きな原子炉の事故によって相当広範囲に放射能をまき散らすということが考えられるのでございますが、その場合にも、まき散らしたために、たとえば、その強い放射能を浴びたために即死なさるような方が莫大な数に上るといったような、そういう事故がほんとうに想定されるものといたしますと、私どもは、その原子炉を作るべきものでないと考えるおけなんでありますが、ただその放射能が降って参りました場合に、たとえばある地域に住んでおられる方々に一時退避していただくというような方法によって、その方の安全性を守ることができるというような、そういう程度のものでございますならば、そして、そういうことが先ほど申し上げましたような意味においてきわめて確率の小さいものであります限りにおきましては、そういう事故を潜在的に持っているような原子炉は許されるのではなかろうか、そういうふうに考えております。問題は、そういう事故が起こりましたときに、あとで、たとえば退避させるといったような、そういう手段によって、要するに、とにかく全然お手上げになってしまうといったようなことのないような範囲内で、物事をいつも考えていきたい、究極の手段というものは、必ず何か手があるのだというところに最後のだめを押して、私たちはものを考えていきたい、こう考えているわけであります。
 しかし、そういうことを私たちの頭の中で想定しておりますだけでは、実際そういうことが起こりました場合に適切な措置がとれるかとれないかという第二の問題が当然起こってくるわけでございますが、それは確率の非常に小さなことではございますけれども、関東大震災であるとか、室戸台風であるといったような、そういう程度の災害であるかもしれないわけであります。そういうときに適切な手段がとれるように、ふだんからいろいろな意味で準備されていなければならないと思うわけでありますが、その準備の中の一つの手段として、こういう補償保険というような制度をお作り置き下さるということは、原子炉の安全性の最後のだめ押しをするという意味において適切なことであろうと思っております。
 この法案それ自身につきまして、私は、保険の方のことについても、あるいは法律的な面につきましても、全然しろうとでございますので、特にこまかい点についてどうということを申し上げる資格は全然ないのでございますが、ただ二、三心づきました点を申し上げてみたいと思うのであります。
 その一つは、放射能による損害ということが、この法案の説明にもございますように、いろいろな意味で特殊な性質を持っている。たとえば、だいぶたちましてから、その方の気がつかなかった、もう忘れてしまったころになってから放射能障害が起こってくるといった、そういう特別な性格があるのでございます。そういう何年かたってしまってから放射能障害に当人が気づかれまして、そこで初めて損害賠償を請求されるといったようなことは、そういう形でも行なわれないことはないとは思うのでございますけれども、もし、ある限度放射能を浴びられたということが客観的に証明される場合には、もうそのこと自身をもって損害を受けたというふうになさるということの方が、いろいろな意味で話をすっきりさせるのではないかと私は一応考えるわけでございます。このことは、そもそも原子炉の安全性を守ります上におきまして、一番根本になる放射線の被爆に関します最大許容量という概念がございますが、その概念と通ずるものがあると考えるわけであります。最大許容量といったようなものは、相当場合々々によって実は変わるべきものでございまして、個人的にも差があるでございましょうし、民族的な差があるかもしれませんし、そのほか、いろいろなその方の健康状態とか、そういうことにいろいろ依存しておるべきものであって、一がいには必ずしもきまらないものであろうと思うのであります。しかし、それをきめずにおきますと、一切の話が非常に不安定になってしまいますので、一応最大許容量といったような概念を設けまして、そこで線を引いて、それ以上は被爆させないようにする、そういう基準というものを作るわけでございますが、それと同じようなことを、もし損害という方についても適用するならば、何かこれ以上の放射能を浴びた場合には、それは放射能による損害を受けたものと見なすといったような形に、もしなさいますならば、話がもう少しすっきりするんじゃないかという感じを受けるわけです。その点が一つ。
 それから、もう一つは、補償の方の法律の第五条に「締結の時から当該補償契約に係る原子炉の運転等をやめる時までとする。」ということがあるのでございますが、多くの原子炉が十分長い間使われまして、そして、もう耐用年数が参りまして、そこで、もう原子炉が使えなくなるといったような時期がくるだろうと思うのでございます。二十年なら二十年という年月を経て、そういう時期になるだろうと思うのでございます。そこで、おそらく、その原子炉というものは、それを使わなくなってからどういうふうに始末するかということは、それまでの技術の発展によってどう変わるか、もちろん、今日から予想するということは間違いかと思うのでございますけれども、しかし、一つの有力な考え方というものは、その原子炉はそのままにしてほっておくということではなかろうかと思うのでございます。非常に莫大な放射能が内蔵されておりますものを、それを始末しようといたしますと、かえっていろいろと困難な問題をみずから作り出すというおそれがないわけではないものでございますから、使い古しの原子炉というものは、いわば、そっとほっておくのに越したことはないということがしばらくは続くのではないだろうかと思う。もし、そうであるといたしますと、原子炉が使用済みになりましてからも、相当長い間、その中には、原子炉が働いておりました場合と同じように、潜在的な大きさの放射能を依然として持ち続けるわけでございますので、そういうものがどういうふうに安全に保たれていくかということは、やはり相当真剣に考えておかなければならないはずの問題だと思います。この条文の中には、もちろん、そういうものの跡始末まで含めて書いてあるのだろう、意味はそうであろうとは思うのでございますが、原子炉の持っている潜在的な危険性といったようなものは、その原子炉が動いておるときだけではなくして、あとまでも長く尾を引くものであるという点を、もう少し明確になすった方がいいのではなかろうかという感じを受けた次第であります。
 それから、これは私が申し上げるべき筋ではないのかもしれないのでありますが、いろいろこういう制度をお作りになります場合に、国際的な視野というものがいつも大事な問題になるであろうと思うのでございます。日本独自の考え方で非常にいい考え方が出て、それがたとえ外国と違っておりましても、それで貫き通すということももちろん考えられるわけでありますが、日本の原子力に関する考え方というものは、とにかく後進国でございますので、多くの場合、外国の考え方に従うという考え方の方がいろんな意味で無難であるということが多いだろうと思います。それから、国際的にいろいろなことが通念とされてしまった場合に、それと変わった考え方でもって物事を処置していくということは、いろんな意味で非常に話がむずかしくなるということがあろうと思います。たとえば最大許容量といったような概念は、非常に客観的な概念ではございませんので、日本だけ特別な最大許容量といったようなものを考え、あるいは概念そのものを変えてしまうといったようなことも考えられなくはないのでございますけれども、原子力というものは、ことにその安全性の問題は、実は国境を越えて考えていかなければならない場合が今後しばしば起こるだろうと思います。原子力船がやってくる場合にいたしましても、あるいは出しましたその放射能の雲が隣の国へ行くといったようなことを考えましても、国際的視野でいろいろなことを考えていかなければならないだろうと思うのでありますが、こういう損害補償というものの面におきましても、その国際的なやりとりというものが相当大事な問題であろうと思うのです。そういたしますと、ここに作られております法律が、今できつつあるよその国の法律といったようなものと、どの程度歩調を合わせていくかというような点を、さらによくお考え下すった方があるいはいいのではなかろうか、そういうような感じを受けるわけでございます。
 非常に雑駁でありますが、この法律をながめまして気づきました点を二、三申し上げたわけでありますけれども、冒頭申し上げましたように、原子炉の安全性を守るという観点から申しますれば、こういう損害賠償の法律を作っていただくということは、それ自身は、ぜひ必要な最後の安全性のだめ押しという意味において非常に大事な問題でございますので、こういう性格を持ちました法律が早く確立されることを心から希望する次第でございます。

○山口委員長 次に真崎勝君。

○真崎勝君 保険会社を規制しております保険業法に基づきまして、日本に生命保険会社が二十ございます。それから、同じく損害保険会社が二十ございます。以下、私が申し上げますことは、損害保険会社の立場を含みつつ、かつ、浅学ではございますけれども、保険学ないしは損害保険の理論というものがございますから、その立場で、ここに御審議されております二つの法案に関連する点を申し上げます。
 第一に、保険、主としてわれわれがこの法案に基づきましてお引き受けするわけですが、これは日本原子力保険プールを通じまして、共同保険――各社の社長がすべて一枚の保険証券に署名いたします。その共同保険の引き受けというのは、主として第三者に対する損害賠償の責任保険でございますが、話をここに局限いたして述べてみたいと思います。
 第一に、保険とは何か、あるいは損害保険とは何かという立場にまず触れますが、これは、やはり危険の分散ということを本旨といたします商法上の会社企業でございます。そして、これは火災保険、あるいは船の保険、あるいは海上輸送の貨物の保険、数十年来発達いたしました損害保険でございますが、過去におきましては、統計学において採用されております大数の法則、従って、危険の、あるいは損害の統計によって保険料率も算定され、そして、たとえば保険証券で担保範囲を広くする、たとえば汽車の一等に乗るということは、保険料は従って届くなる、こういう相関関係があったわけでございます。
 第二に、われわれの損害保険会社におきましては、引き受け能力の制限の問題がございます。これは英語で保険学上キャパシティの問題、こう言っております。この問題を原子力保険の引き受けに適用いたします際に、相当大きな責任保険の金額をお引き受け申し上げ、最高五十億円、さらに、これはこの法律に基づく引き受けでない、つまり、原子力研究所の施設自体の財廉価値というものが将来非常に高くなる、また、原子力発電株式会社が建設されつつあるあのコールダーホール改良型の原子炉の値段も、タービン・ハウスまで入れますと約三百億円、これは原子炉メーカーと発注者である原子力発電株式会社との間の契約書に従って、メーカーズ・クレジットに対する抵当物件ともなります。従って、財産保険も必要になる。そういうこともございますが、かれこれ勘案いたしまして、民営損害保険会社の共同保険といたしまして、引き受け能力の限度がそこにある、こういう問題が一つございます。これは、ものの見方を裏返しにいたしますと、たとえば、原子力発電株主会社の某常務がある英国の権威者から三年前に聞かれた話には、五マイル以内に住む第三者あるいはその財産に対する加害責任が、たとえば五十億円以内、五百万ポンド以内である、こういう見きわめをつけて英国の法律は成立した、こういう説明を受けておられたことも私覚えておりますが、要するに、原子力事故の結果、周辺の住民、その身体及びその所有財産に対してどの程度の損害を与えるであろうか、この可能性または蓋然性の予測の問題が裏にあるわけであります。これについては、保険の側は五十億円まで受けるということは多分いわゆるマキシマム・クレディブル・アクシデントという概念に即応できるのではないか、そして、それで足りない部分が、この法案におきます国家の援助、そういう形で救われるのじゃないか。さらに、国家の援助の方式が、賠償責任保険証券の制限全額五十億円といたしますが、五十億円にプラスされるという現在の日本の法案の行き方は、外ワク方式と通常呼ばれておりますが、そのほかに、アメリカのプライス・アンダーソン法のもと、あるいは西ドイツの原子力法のもとにおける国家の援助あるいは国家の補償が全体の金額の内ワクの中にある、こういうやり方もあると思いますが、これは、たとえば日本が将来参加を予定されております国際原子力機関の条約草案で、両方認める、この問題は、別に大きな問題ではないと思います。
 次に、第三の問題は、賠償責任保険の問題でございます。これは賠償責任が、本来日本の民法七百九条における不法行為賠償責任、民法の賠償責任またはその賠償責任の加害者の責任の発生の要件に過失、故意を除く場合、これは無過失賠償責任でございますが、そういう特別法規、これによります賠償責任のうち、通常伝統的には、たとえば原子力の従業員自体、あるいは労働者災害の雇い主から被用者に対する賠償責任を除いたものを通常第三者賠償、あるいは公衆に対する賠償、英語でパブリック・ライアビリティと申しますが、そういうふうに考えているわけでございます。その場合に、問題点といたしまして商法六百四十一条の規定がありまして、これは保険料を払って保険契約を締結いたします将来の原子炉所有者、法案では原子力事業者、この原子力事業者が故意に事故を招致した場合には、保険会社は保険金を払わぬでよろしい、こういう規定があるわけなんでありますが、われわれは、新しい理論構成を採用いたしまして、この故意を極端に狭めていこうではないか、これは原子力事業者の理事者または取締役会の決議、法人の意思決定という事実がなければ、故意による事故招致は生ぜしめないでいこうじゃないか、そこまで法案がいかれたことを存じております。そして、われわれは、賠償責任保険証券では、さらに一つおまけがつけてある。通常保険証券の担保範囲は、法律による原子力事業者の責任よりも狭い、その間にギャップがあるといわれておりますが、この点につきましては、われわれの賠償責任保険証券は、原子炉メーカーまたは核燃料の提供者、こういう人たちが原子炉事故の被害者から、万々一にもさかのぼって問われる賠償責任は、日米、日英動力協定に規定されてあります免責条項の趣旨に従いまして責任保険で負担するのであります。これにいろいろ理由がありますが、責任の集中の問題、チャネリング・オブ・ライアビリティ、こういう一つの原則をわれわれの場合打ち立てていくつもりでございます。
 さらに、この賠償責任保険における一つの問題といたしましては、加害責任が発生した場合に、その損害査定をどうするか、この問題があります。保険金を被害者にどう払うか、これは前に語られました伏見教授の御意見の中に、最大許容量というもので客観的な基準を設けたらどうであろうか、そういう御意見も承っておるわけでございます。これにつきましては、英国の原子力立法――昨年四月一日から施行されましたあの英国法の解決方法もあるわけであります。これは、最大許容量というものが原子力の平和利用に基づく利益と損害とのバランスの点であって、医学的定義ではない、そういう推論もございますから、結局、時間をかけて五年、十年、二十年、この被害者たり得べき人の行く末を見ていかなければならないのじゃないか、そういう制度が今の法案のもとにも規則あるいは施行法によってできるであろう、私どもこう思っております。それに、さらに、たとえば保険会社は賠償責任保険における加害者の立場になるべき原子炉所有者と、被害者の立場になる放射能を受けた住民、この間の関係の一応外に立つ建前で賠償責任保険を作っております。従って、法案における紛争審査会というものは、結局、即決簡易裁判所的なものであろう、こう思っております。この点につきまして、さらに申し上げるならば、自動車の賠償責任保険法も、強制保険法としてあるわけでございますが、これは、たとえば人を一人轢殺した場合に三十万円――最近五十万円に制限額が上がりました。そういうパー・パースン、人一人当たりの制限がございますが、われわれの方では、これをはずしております。その点において、私どもは、実際の損害査定というものはむずかしいけれども、客観的に妥当な方法が発見できるものだ、こう考えております。
 さらに、第四の問題といたしまして、保険会社が民営保険会社である場合に、日本の地震のように、ほぼ周期性を持って、たとえば関東大震災が六十年後にまた起こるというようなこれは生命保険で申しますと、人間は七十年たつと死ぬというような、必ず起こる危険、こういう危険であるならば損害保険会社はよほどふんどしを締めなければ引き受けられない。それをキャタストロフィ・リスク、大災害の危険、こう申すわけであります。さらに、洪水、津波――日本の室戸台風以下、おととし九月の伊勢湾台風に至るまで、洪水、津波を伴う危険も、それはその危険地帯に住む住民のみが保険を求める、保険用語上逆選択と申します。そういうような日本の地震における周期性、日本の洪水、津波における逆選択の可能性、こういうものが伴う場合には、民営保険会社はなかなか保険証券を発行できないのでございますが、われわれは、この法案に協力いたします前に、この問題をはっきり解決したわけであります。原子力の原子爆弾としての軍事利用は、まさしく大災害危険だ、しかし、原子力の平和利用の問題は全然そうでない、ここに区別がある、そこで賠償の責任保険をお引き受け申し上げる、従って、原子力の平和利用に伴う危険、ここにまた、前参考人の伏見教授の言われましたように、マキシマム・クレディブル・アクシデントの問題、それに結びつけた問題、それから起こる保険会社の引き受け能力の問題、これが出てくるわけであります。
 あとは、原子力保険というものが、なぜ原子力保険プールを通じて引き受けられなければならないか、この問題でございますが、これは原子炉の値段にいたしましても、賠償責任の制限金額にいたしましても、前者は三百億円に達し、後者の付保額は五十億円に達するというような非常に大きな保険金額である。それから、この危険が、前参考人伏見博士の言われました通り、頻度が小さい上に、一たん発生した場合どの程度の波及力があるかわからない、その問題、つまり、保険料の出しにくいという問題でもございます。さらに、原子炉の数は、ただいま世界に三百くらいあると思いますが、その大数法則の貫徹がなかなかできないのではないか、統計の作成がなかなかできないのではないか、こういう問題でございます。さらに、原子力の保険プールを作りまして、よその国の原子力保険プールとの間に――これは岡議員が両三年前に原子炉等規制法が改正されましたときの附帯決議にも述べられましたように、国際的な危険分散、国際協調による補償制度を採用するためにも、この原子力保険プールによる保険及び再保険が必要になったわけでございます。さらに、それによりまして、一般大衆からややともすれば非難をされるおそれのある保険における経費の高くなることを防ぎ、あるいは無用の代理店手数料の支払いを排除する、そういう利益があると思うのでございます。
 あと、責任保険料につきましては、数字がこまかくなりますが、要するに、責任保険料は、まずわれわれの賠償責任保険が支払います分に対する対価であります。これは、責任保険が大がいのものは払ってしまう、それで足りない場合に国家の援助が出るならば、責任保険料の算定というものは、国家の援助に対する補償料とはだいぶ値段に開きがあってもよかろう、賠償責任保険料は高くてもよかろう、こういう考えでございますが、御必要に応じては、もっとこまかい御説明をいたすつもりでございます。
 最後に、なぜここに審議されております補償契約法案が必要であるかということについて触れたいと思います。もちろん、私どもの賠償責任保険証券は、まず、先ほど申し上げましたように、原子炉のメーカーあるいは核燃料の提供者、サプライヤーを守ってあげる保険証券であるという意味において、おまけがついております。さらに、小さな原子力事故によらない賠償責任もある、非原子力責任もあると思います。これは、大風でかわらが飛んで、見物人の頭にぶつかって頭蓋骨を割った、それから、商人が飼っている犬が人にかみついたというような場合の賠償責任ですが、こういう非原子力責任、これもお持ちします。そういう意味でおまけがついておりますが、立法では、原子力事業者の責任になっておりながら、なぜ賠償責任保険証券で持てないか、そういう二つの間のギャップといわれているものがあります。これは、はっきり申し上げますが、地震、噴火のような大災害危険については、なかなか持てないのだということを先ほど触れたわけであります。それから、正常運転の危険も、これは非常にむずかしい問題でございまして、アルゴン四一が空気の逆転層にひっかかりて住民の被害が生ずるであろう、それからもう一つは、海に盛んに廃棄物を廃棄処理するという慣行も必ずしもなきにあらず、そういう意味で、これを持つか持たないかということは非常に重要な問題でございますが、われわれの賠償責任保険で一応持てませんと申し上げたのは、これは国際原子力機関の条約草案でも、それから欧州経済協力機構の条約でも、ニュークリア・インシデント、原子力事故という言葉を使っております。事故がない場合に、一応賠償責任保険で持ちません、こういう意思表示をして参ったわけでございます。どうぞ一つこの点をお含みおき願いたいと思います。
 あとは、民法上の消滅時効が、七百二十四条によりまして二十年でございますが、この責任保険証券では十年になっている。これも条約草案及び条約において、すべて統一的に認められましたところで、おそらく、これはやはり保険会社の会計処理の問題、それから、保険学において、最終的な問題解決の基準であります事故と被害との間、原子力事故と原子力損害との間の因果関係の有無の判定がむずかしくなるのだ、こう思うのです。これも、幸いにして、補償契約法案に組み入れてあるのであります。残るところは、われわれは、核燃料の国際間の輸送の賠償責任につきましては、努力して持ちましょう、保険証券を新たに作って持ちましょう、こう考えております。それから、先ほども触れましたように、商法における保険法が、保険事業者の故意のもの、あるいは保険契約締結の際に、保険料を決定する重要な要素について虚偽の告知をした場合、それから、実際に原子炉稼働中に非常に大きな事情変更が起こった場合に、通知をしなければならない、こういうような商法の保険法上の義務違反、これは要するに、保険契約法上の債務不履行責任が入っているわけですが、これを保険挙上ブリーチ・オブ・ウォランティ、非常に確約保証したものに違反した、こういうようによくいわれておりますが、その確約保証違反の責めの場合に、通常の保険であれば、これは被害者イコール物の所有者ですから仕方がないのですが、被害者が第三者である場合にどうするかという問題、これは、おそらく原子力御当局は、いわゆる主観的要因による契約の失効の場合の被害者をどうするかというふうに説明されたと思うのでございます。これにつきましては、すでに御説明に相なったと思うのですが、事実上起こらない。たとえば、故意による事故招致は理事者の決議のワクをはめて狭くする。それから、告知義務違反は、普通は全然起こらぬ。なぜならば、原子炉設置許可申請書の写しを保険プールの方にも見せていただく、それによって起こらぬ。あるいは通知義務についても、通知をしていただく義務を制限していただく、原子炉の使用方法の変更、原子炉の設計及び構造の変更または改造、それから原子炉のモニタリング・システムの変更、そういうふうに三つ四つ制限することによって通知義務違反を生ぜしめない、そういうふうに、事実上の作業をやることになっておる。
 こいねがわくは、この法案というものを、そのままあるいは十分に御審議の上、たとえ安産であろうと難産であろうと、国際条約にのっとったものであるという私どもの考えをおいれ下さって御審議、御通過願いたい、こう思うわけでございます。

○山口委員長 以上で、伏見さん、真崎さんからの御意見の発表は一応終わりましたが、質疑があれば、これを許します。――岡良一君。

○岡委員 伏見参考人に対しまして、先生は、原子力委員会の安全基準専門部会の部会長をしておられますので、そのお立場から若干お尋ねをいたしたいと思います。
 実は、この委員会で、この法律案が提出をされましてからもしばしば強調されたことは、万一にしても事故が起こらない方がいい、また、起こっても、その事故による災害ができるだけ小規模でなければならない、してみれば、まず原子炉を設置する場合に、こういう立地条件に合致したという安全基準というものをすみやかに原子力委員会は作るべきだ、そうして、たとえ万一の事故があっても、その被害を最小限度にしようという心組みがなければならぬ、であるから、この法律案の大前提は、やはり原子炉が万一事故を起こしても、その被害が最小限度であるべき安全基準というものをわれわれに示してかかるということが、この法の目的にも適するゆえんではないか、こういうことがしばしば強調されておったわけでございます。たまたま、先生は安全基準部会の部会長をしておられますので、この点、率直にお尋ねをいたしたいと存じます。問題は、今申しましたような趣旨から、一体いつ安全基準に関する立地条件というものが設定されるのかということでございますが、どういうことになっておるのでございましょうか。

○伏見康治君 お答えいたします。
 基準部会長を命ぜられましてから、率直に申し上げますと、私のやりましたことは、むしろいかにして基準を作らないかという努力をしてきたような感じがするわけでございます。それはどういうことであるかと申しますと、普通基準というものを考えます場合には、非常に末端的なことをお考えになる方が多いわけでございます。たとえば、その辺にプロパン・ガスならプロパン・ガスを何十気圧かに詰めてボンベを方々に運んでおるわけでありますが、ああいうものが破裂しないための検査基準といったようなものが当然あるわけであります。そういうときに、ボンベの材料について、あるいはその肉厚について、あるいはそれに傷があるかないかの検査方法について、そういったものについての基準が当然あって、それによって公衆の安全が守られているんだろうと、私は詳しくは存じませんけれども、思うわけであります。そういう意味合いの基準というものを原子炉に対しても作ってしまおうというお考えが相当びまんしているように見受けられたわけであります。ところが、原子炉というものは、ボンベのように、同じ形のものを大量に作るということがまずないわけでございます。ほとんど同一形式の原子炉を大量生産するということがまずないわけであります。いわば、原子炉一つ一つが、いつも違った原子炉を作っているということに大体該当するわけでございます。従って、たとえば原子炉のコンテナーならコンテナーを必ずつけろとか、そのコンテナーの厚さを幾ばくにすべきであるかといった、そういう数字を出すということは、ほとんど話が通らないような事柄でございます。そういう意味合いでの基準、尺度といったようなものを、もしお求めであるといたしますと、それは、少なくとも、ここ当分の間は、現実にできる原子炉に対してはほとんど役に立たないものになるのではなかろうかと思っております。そのあらゆる原子炉の型について、また、あらゆる原子炉の出力について、そういうようなものを作るということができれば、もちろん、それはよろしいことでございましょうけれども、おそらく、そういうことは、あらゆるということが何を意味するかにもよりますけれども、ほとんどできない相談だろうと思うのです。一つは、つまり、原子炉にいたしましても、研究が進展するに従いまして、どんどん新しい型のものが考案されてくるわけでございます。この数年来、原子炉というものが、新しい型を作るということに対しましては、あまりはなばなしくなくなりまして、大体落ちついてきたという感じもいたしますけれども、少なくとも、基準部会が作られましたころにおきましては、まだ新しい型の原子炉というものが実際できる可能性がございましたし、現に、たとえば立教大学がお作りになろうとしているような原子炉は、全く新しい型の原子炉として、私たちが勉強し始めた後に登場してきたものであるわけであります。そういうものに対しましても、あらかじめ安全性の基準を微に入り細をうがったものを作っておくということは、現実の問題として役に立たない道具を作っているということになりますし、また、そういう尺度を無理に作りますと、その尺度に合わないものに無理に合わせるという傾向が出てくるということも考えられましたので、むしろ、あわてて基準といったものを作らない方がいいと考えていたわけであります。しかしながら、基準のまた底にあるべき基準といったようなもの、つまり、ほんとうの根幹になる基準といったものは、これは早く確立しなければならないと考えておったわけでありまして、基準部会の一番大きな仕事は、いわゆる最大の許容線量という概念を確立することであったと思うのであります。この基準の根幹になる基準さえ定まっておれば、それを一々の場合に適用していく、そういう方途というものは、相手の原子炉に応じていろいろさまざまに変わり得るわけでありますが、その最も根幹になる尺度さえしっかりしておれば、それをいつでもよりどころにして、相手によりましていろいろな尺度のあてがい方をしていく方針で話がきめられるはずであります。つまり、安全審査ということをやるやり方、機構といったようなものと、その一番根本になる数字、最大許容量といったような数字、その二つを確立しておけば、相手がどんなものが出て参りましても、それを正しくこなしていくことができる、そういうのが私たちの考え方でございました。これは、実際私たちがそういう態度をとったということが、日本だけが孤立してそうなったというわけではなかろうと思いますので、現に、立地条件に関する何か基準といったようなものを作れということは、何も日本ばかりではございませんでして、どこの国でも絶えず要求されておったものと見えます。アメリカの原子力委員会が最近になって提示いたしました立地条件といったようなものもございますが、それも二年前に一ぺん出しましたものを、いろいろな世間の批判を浴びた上でもって一ぺん引っ込めまして、再び二年の間の勉強の上で、あらためて出したようなものでございますが、それにいたしましても、その本文というものをごらんになりますと、要するに、原子炉の立地条件をきめる際の、いわば、こういう点を考えなければならないのだという問題点と申しますか、問題点のようなものが列挙してある。そういういろいろの問題点についてそれぞれ審査すべきであるという、いわば条目が並んでいるだけでございまして、たとえばエクスクルージョン・エアリアという概念はありましても、そのエクスクルージョン・エアリアの半径というものを一元的にきめるということはしていないわけであります。アメリカのAECの出しましたいろいろな数字が出てはおりますが、その数字は付録として出ているだけでございます。しかも、一つの例示として出してあるだけでございまして、あの数字をいつもしゃくし定木に当てがわなければならない、そういう数字であるというふうには私たちは了解していないわけであります。ある特別な仮定、たとえば、放射能の中の希ガスの部分が全部放出されるといったような仮定を置いた上では、たとえば、こんなような数字が出てくるという例示としての計算例はあるわけでございますが、そういう例示的な計算をすべての原子炉にいきなりそのまま当てはめるということではなくして、それぞれの原子炉に応じて、その原子炉の特色を考えに入れて、それに似たような計算をして、エクスクルージョン・エアリアをきめていこうということが示されているだけでございます。エクスクルージョン・エアリアそのものは否定されていないと思うのでございます。もし、立地条件の基準といったようなものを、そういうやや抽象的な、つまり、ある意味では安全性を守るための方針といったようなものだけで御満足いただけますといたしますと、私たちの方の勉強もそれほど進歩していないわけではございませんので、割合に近いうちに、そういう意味での、やや抽象的な形での立地基準といったようなものを、どういうところに原子炉を置くのが好ましいといったような意味でのものでございますならば、作り上げることが実際できるだろうと考えておるわけであります。

○岡委員 原子炉の設計とか、あるいは燃料の規格とかいうようなものは、やはり現在の原子力の開発段階では、より安全な原子炉へという方向に当然進んでいるであろうし、また、いかなければなるまいと思いますが、後段に言われた人口の問題、真崎さんは、先ほど、たとえばアルゴン四一が出ても、気象条件で逆転層が存在したような場合には、これは保険からはずれるのですね。

○真崎勝君 はい。正常運転の場合、補償契約法案で持っていただけるようにできております。

○岡委員 そういうように、気象条件というようなものが、やはり補償契約で補わなければならないというようなことになっておるわけですね。
 それから、人口問題は、これは東海村の現場を御存じの方は一様に心配しておるのでございますが、行くたびに人がふえておる。周辺に家が立て込んできているわけです。しかも、東海村の立地条件、少なくとも、コールダーホールに関していえば、ファーマー報告の四つの条件のうち、一つを満たしておるというような状態にあるわけであります。そういうようなことから考えますと、私は、この安全基準部会が、技術的な安全性ということについては今後の研究と開発に待つといたしまして、国は、気象問題とか、人口問題というようなものについては、当然明確な結論を出されなければならない。特に広島や長崎の経験で、国民感情として一種の不安を持っておる。これがやはり原子力の平和利用の発展に大きな阻害になっておると私は思う。それは伏見さん自身が御存じのように、ああいう関西原子炉という小型の教育用の原子炉を、予算を計上されながら五年、六年待っていなければならぬ、地元がやはり原子炉の危険ということから反対しておる、こういう苦い経験からかんがみても、特に原子炉の立地的な条件、水の関係とか気象関係、あるいは特に人口密度、これは当然ストリクトな、シビアな基準を出すのが基準専門部会の義務じゃないか、ひいては原子力委員会の責任じゃないか。これはいつ出してもいいのだというようなことでは、原子力委員会としても専門部会としても、全く国民に対して無責任じゃないかと私は思う。この法律案に関しても、これは先ほども申しましたように、事故が起こったときに、人に対し、物に対する損害の補償について保険あるいは補償契約、さらには、また、大きな場合は国がやろうとしておる。ならば、やはり事故が起こっても、人や物に対する実際の被害というものが最小限になり得るような立地条件を出すということは、常識上当然やるべきことだと私は思うのです。今、先生のお話を承った範囲では、私は、非常に失望し、遺憾に思っておるのですが、基準専門部会というのはどういう方針でおられるのですか、重ねてお伺いしたい。

○伏見康治君 早く、できるだけ適切に適用できるような基準を発見するということが、私たちに課されている課題であるということは、今、岡さんのおっしゃった通りであろうと思います。それが、いまだに私たちが模索しておりながら、適切な、そういう基準というものにめぐり会っていないということは申しわけないことだと思っております。しかしながら、非常にリジッドな、簡単な基準というものを作りましたために、それがあとの日本における原子力開発の進展に非常に支障を来たすということは、また、十分心配しておかなければならない点であろうと思うのであります。その一つの例を申し上げますと、たとえば、放射性物質の取り締まりに関する規制のようたものが、日本では比較的早く作られたわけでございます。それが後にICRPの方の基準が変わったこともございますが、それを新たに盛り込むために、また、その方の規則をも適宜改変していかなければならなくなったような事情があるわけでございます。いわゆる許容量というものを引き下げると同時に、線量率という概念で今まで物事を考えて参りましたのを、積分された線量というもので物事を考えていくという、そういう立場の変更をもたらしたわけでございます。そういうふうにいたしませんと、つまり、昔の線量率という考え方でもって一切を押えてしまいますと、あまりにシビアに、厳重になり過ぎまして、現実の原子力の技術的な発展といったようなものを非常に阻害する。許される線量率というものをできるだけ引き下げたいという希望と同時に、そういう阻害をしないために、そういう最大許容量というものの概念そのものが、ある意味では変わってきて、いるわけであります。それと同じようなことが、もし立地条件の方でもしばしば起こるということになりますと、そういう基準そのものの信用性と申しますか、そういうものが、いわばないということを示すようなことになりかねないわけでございまして、そういう意味で、私たちは、非常に簡単に、安易に基準を引くということには強くちゅうちょせざるを得ないおけであります。しかし、何も引かなくてもいいとも、私たちは全然考えていないわけでございます。ぜひしっかりした基準を引きたいと思うわけでございますが、その最も根幹になる最大許容量という概念におきましても、なかなか皆さんの御意見の一致しない点があります。お手元に渡っていると思うのでございますが、基準部会で出しました幾つかの報告の中に、たとえば、事故時におけるいろいろなことを考える基準線量という言葉がございますが、その基準線量という言葉だけは作ってあるのですけれども、それの具体的な数字といったようなものにつきましては、まだ完全にはオーソライズされていないわけでございます。いろいろ詳しい計算で、かりに作りました基準線量というものをもとにして、いろいろな数字が小委員会の方々の非常な御努力によって作ってはあるのでございますけれども、その一番根幹になります基準線量そのものが、まだ放射線審議会の方で十分オーソライズされていないわけでございます。私たちとしても、一日も早くその適切な基準といったようなものをぜひ作り上げたいと思うのでございますが、一番根幹になりますところが物理、化学の世界でございませんでして、生物の方の、非常に、何といいますか、いろいろな物事がはっきりしない領域に属することでありますために、その根本が相当ふらつく、そのために、あとから出て参りますいろいろな結論が、全部それに応じていろいろとふらつくといったような、そういう点がございまして、非常にやりにくいという点を御了承願いたいと思うのでございます。
 実際問題といたしまして、安全審査専門部会の方々が、とにかく、現在最善と考えられる考え方をもって、一つ一つの原子炉についてはその安全性を十分に吟味されているわけでございます。その実際の原子炉を取り扱ってごらんになりますというと、机の上で抽象的に安全性を考えておられたときには考えつかないような、新しい要素がいろいろ実は出てくるわけでございます。たとえば、原子炉の上に飛行機が落っこってくるといったようなことは、私たちは、机の前にすわって考えているときには思いつかなかったことでございますけれども、安全審査をやっておられる方々にとりましては、そういう問題も重要な問題として実際提起されて、具体的な例題をやっておる間にそういうことが提起されて、それに対する安全性を十分に吟味されてきたと思うのでございます。そういうような事柄を考えましても、あまりにあわてて抽象的な段階で線を引いてしまうということは、いろいろ疎漏なものを含んでいるおそれがある、そういう点から、あくまでも慎重な基準の線を引きたいと考えているわけでございます。しかし、先ほども申し上げました通りに、大体基準部会としての勉強の時代というものはすでに終わりまして、先ほども引用いたしましたアメリカの出しております立地基準と同じ性格のものでございますならば、私たちの手によってもそういうものがごく近い将来にできるものだろうと考えておるわけでございます。
 もう一つ、基準というものをあわてて作りますことの弊害というものは、最大許容量それ自身について、実はしばしばいわれていたわけでございまして、最大許容量というような概念は、もともと放射線を使うということの利益と、それから受ける損害とのバランスの問題としてきめられるものだというふうに普通考えられております。従って、必ずしも客観的にここから先はいけないのだということが言い切れない要素を含んでいるわけでございます。利益の方を考えますと、最大許容量を越えた相当大量の放射線を浴びるということは、少なくとも放射線科のお医者さんはしばしばやっておられるわけでございます。そういうような点を考えますと、つまり、お医者さんの場合には、そういう最大許容量を越えて、患者にそういうものを当ててもいいといったような、そういういろいろな例外規定があとからあとから出てくるといったようなことにもなりかねないと思うのでありますが、とにかく、基準というものの受け取り方が――私たちが出しました基準というものは、それよりも以下にしたいといったようなつもりで出しました基準というものが、そこまではいいのだというようなふうに、逆に利用される基準になるということがしばしばあるのでございます。従って、とにかく、あわてて基準を作ることのいろいろな弊害ということを考えますと、少なくとも末端的な意味での基準、たとえば、エクスクルージョン・エアリア、たとえば、ファーマー論文に規定されておりますような、そういう趣旨で規定されておりますような基準といったようなものは、そう簡単に作らない方がよろしい、そういう数字をどういうふうにして編み出すかということの公式的なものと申しますか、そういう基準はできるだけ早く作るべきであるし、それはやがてできると確信しておるのでありますが、人の住んではならない地域の半径といったようなものの数字を、たとえば原子炉の出力の函数として一次的に規定してしまうというようなことは、少なくとも、ここしばらくの間はやらない方がよかろうというふうに考えておるわけでございます。

○岡委員 アメリカでこの二月の十日に出した立地基準にいたしましても、民間原子力産業の原子炉設置等に対してチェックになるのではないかということから、その側の反対が予想されるのだということが最近伝えられております。しかし、今のところ、これは七月になればはっきりきまってくる。今、先生のお話を聞きますと、私は、原子炉安全基準部会は、ちょうどアメリカの原子力産業界の代弁をしておられるような気が正直のところするのです。それにもかかわらず、アメリカでは、ああして基準を出しまして、私はちょうどきょうは資料を持って参りませんでしたけれども、しかし、やはり熱出力を函数として排除区域を設ける、制限区域を設けるというプリンシプルは、私は、おそらく異議なく通ると思うのです。ところが、日本では、それも要らない、しかも、一方、東海村には、ここ四年の間に、あるいは五つ以上も原子炉が密集する、こういう状態を一体放置していいのか。私は、政策問題というよりも、一つの人道的な問題として非常に重要な問題だと思うのです。ICRPの勧告も、これは私から申し上げるまでもなく、そのつど、最大許容量というものがだんだん引き下げられてきた。最近の勧告では、最大許容量というものはないのだという考え方で、放射能は浴びなければ浴びないほどいいのだという考え方で、最大許容量というものの概念を新しく把握すべきだ、そして、国民線量という新しい概念を作り出してきた。これは、原子力局にこの前お聞きしたときに、学術会議が、たしか去年か一昨年、最近のICRPの勧告をそのまま採用したというふうなことをせんだって言っておられたようだが、あれはまだしていないのですか。

○杠政府委員 いたしております。取り上げております。それで改正いたしました。

○岡委員 そこで、伏見先生は、たびたび変えれば信用が云々と申されますけれども、その変更の方法は、ICRPの勧告は、あるときには低くし、あるときには高めておるのじゃないんです。少なくとも、過去三回は、絶えず十分の一、三分の一に低めているわけですね。いわば放射能の作用の危険性というものに対して、ICRPはやはり学術的な立場から一般に警告しているわけです。事実低い数字、低い数字と出しているわけです。政府もそれを採用しているわけです。そのことは、結局、この損害賠償法と関係している原子炉施設の周辺における人口を現在のように膨張するがままにまかせていいかどうか。政府の方では、ICRPの勧告をとって低く、低くしておる、人間はふえておる、こういう矛盾をこのままに放置しておくということは、私は、専門部会というよりも、原子力委員会として重大な問題だと思うのです。これは何も与党、野党の問題じゃなく、特に先ほど申しましたように、やはり原子炉というものに対する潜在的な恐怖というものがある限り、事故が起こっても最小限の被害にとどめられるようにすべきで、災害を受ける直接の当事者は、まず人であるということです。ICRPの勧告を見ましても、直接それによって利益を受けるもの、それに出入したりする特殊なグループ、一般公衆と分けておりますが、私は、その原則、ICRPの最大許容量というものをとっておるならば、当然その概念というものはとるべきだと思う。アメリカが現にこの間発表したものはとっておるわけですね。制限区域、排除区域というふうにとっておるわけですが、こういうことは、法律案の前提としてわれわれに示すのが、私は原子力委員会の仕事だと思うのです。今お聞きすると、原子力委員会は、むしろアメリカの原子力産業界のような立場で問題を取り上げられておるようで、私は非常に遺憾だと思うのです。現に、この法律案についても、主査である有沢広已さんがこの委員会の席上ではっきり言っておられる。この法律案は公衆の災害というものを保護するのだ、これがこの法律案の主眼だ、だから、第一条には、「原子力事業の健全な発達」と書いてあるが、それは副次的なものだ。被災者の保護にこの法律案の重点があるということであれば、なおさらのことです。三年前に発足した安全基準部会が、この法律案の前提となる安全基準について、まだそういうお考えであるということでは、私どもとしては納得いたしかねるのです。これは米国の方の数字でも、私ははっきり出しておると思うのです。熱出力の排除区域はどこまでということについては、AECが二月十日に出したあのもの以外に、また別の数字を出しておる。だから、別に原子力委員会が数字を持っておる。数字を持たないで原則を出すはずがないと私は思います。特に、万一事故が起こった場合にどの程度の放射能が放散されるかということについて、はっきり数字を出しておる。僕は、決して数字がないというわけではないと思うのです。そういう点を考えますときに、それでは米国の出したこの安全基準の立地条件が米国で採用になった場合に、日本の安全基準部会は一体これをどう取り扱うのか。ここ一カ月、二カ月のことだと思いますが、一つこの機会に承っておきたい。アメリカはアメリカだ、日本は日本だというふうなことでいかれるのか、この点をはっきりお伺いしておきたいと思います。

○伏見康治君 岡さんのおっしゃることの御精神はよくわかっております。私たちが、なお怠慢のそしりを免れない程度に、とにかく結果を出していないということは事実でございます。大いに今後も御鞭撻を受けまして、できるだけ御満足のできるような基準を早期に作りたいと思うわけです。ただ、お言葉の中で二、三申し上げてみたい点があるのでありますが、一つは、二月にアメリカの出しました数字というのは、はっきり書いてございますように、一つの例として出したものでございまして、あくまでも一つの計算であります。ですから、特に付録として出されておって、本論の中に入っていないわけであります。もちろん、計算例と申しましても、それが現実に当てはまるということを十分予想して作られた計算例でございまして、それが全く架空のものであるということを申し上げておるつもりではさらさらないのでございますけれども、簡単化するための二、三の仮定のもとに計算されたものである。その仮定が一々の原子炉の場合に当てはまるかどうかといったようなことは、また、それぞれの原子炉における具体例について考えるべきであるというのが、この二月の基準の根本の精神であろうと考えております。
 それから、ICRPの線量率というものは、なるほど下がったわけでございますが、今まで一瞬間の線量が三百ミリレントゲンといわれておりましたものが三分の一になりまして、百ミリレントゲンというふうに下がったということは事実なのでございます。しかし、それは、線量率という観点からだけ申しますれば、確かにそういうふうに切り下げられているわけでございますが、線量率で物事を判断するのではなくして、それを積分した値で物事を考える、従って、ある瞬間をとって考えますと、その瞬間では、線量率は百ミリレントゲンをはるかに越えているようなものであっても差しつかえないという考え方が別の面で出ているわけでございます。つまり全く法律的に取り締まるという観点から申しますと、各瞬間ごとに出ている線量率というものは、取り締まりの対象としては一番やさしいわけでございます。それで押えてしまうということは、実際に行政上の手段としては簡単で、守りやすいことであるという点は疑い得ないことであると思いますけれども、そういう線を引っ込めて、積分された線量で物事を考えていくというふうにICRPが変ってきたということは、つまり、そういう線の引き方ではあまりに過重な条件になり過ぎまして、原子力事業の健全な発展を阻害する面があるということであろうと思うのであります。私は、岡さんのおっしゃいますように、アメリカの原子力事業者の立場に立って物事を申し上げているわけではさらさらないつもりなのでございます。要するに、日本の原子力ができるだけ健全な姿で成長するということを希望しておりますので、あくまでも、原子力から出て参ります災害を国民に与えないようにするという方向でもって物事を考えておるということは、強く申し上げておきたいと思うのでございます。ただ、その国民を守るという守り方があまりに粗雑に考えられて、それを行なおうといたしますと、原子力そのものを日本ではあまりやらない方がいいという、非常に否定的な結論になるおそれがあるということを心配しておるだけでございます。

○岡委員 問題は、やはり安全基準部会には、生物学者なり、理学者、科学者、それぞれの専門の権威の方が集まっておられるわけなんです。だから、私は、学問的な良心の上に立っての結論を早く出して、それを具体的にどう取り扱うかということについては、原子力委員会が最終的に決定を下す。ただ、安全基準部会も、結論を、いわば政治的な顧慮から――はるばるこられた先生には非常にぶしつけなことを申し上げるようですが、私は、今の中間報告を見まして、一種の数字的、統計的な興味のまにまに日を暮らすようなことがあってはならないと思うのです。そういう点で、人口密度などは、特にアメリカよりも日本の場合は、先生も現地をごらんになって比較されておわかりだと思うのですが、これは大へんな違いでございます。特に、東海村のごときは密集しようとしているのですから、ぜひ早く出していただきたいと思います。
 それから、先ほどマキシマム・クレディブル・アクシデントの問題が、先生からも、真崎さんからもお話が出ました。原子力局が、昨年産業会議を通じて「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」といったものを作られております。あれは提出されましたか。そしてまた、技術会議としてはどういうふうにお取り扱いになったのですか。この点をこの機会にちょっと承っておきたい。

○杠政府委員 私の方からお答え申し上げます。
 あの報告書は、局が原子力産業会議に委託いたしまして作成したものでございまして、原子力委員会の専門部会でありますところの安全基準部会には提出してありません。

○岡委員 やはり安全基準というようなもの、あるいは災害の補償というようなものを検討される専門部会には、私は、局は当然資料として出さるべきだと思う。
 それでは、伏見先生にお尋ねいたしますが、安全基準部会では、WASH報告は一応討議の対象にされましたでしょうか。

○伏見康治君 ブルックヘブンでの事故解析の報告のことをおっしゃっているわけですか。それは、研究資料としてはもちろん取り扱っておりますけれども……。

○岡委員 WASH報告の方は、ずっと十の八乗でいっているはずですよ。あなたの方で作ったのは、十の五乗から十の七乗だから、ずっと低いんだ。なぜそういうものを出さないんだね。そういうくさいものにふたをするようなことをするから、原子力委員会の安全基準というものに対してわれわれは疑惑を持たざるを得ない。なぜ出さないのだ。

○杠政府委員 原子力局は、原子力産業会議から委託調査の報告を受けておりましたけれども、基準部会並びに安全審査部会に提出して、十分な御参考になるというような判断、確信をいたすまでには、まだ局内の検討も進んでおりませんので、出していないというのが現状でございます。

○岡委員 しかし、これが安全な、妥当なものであるかどうかをだれが判断するのだね。しかも、君は会計課長としてあの金を出して、判こを押しているじゃないか。さて作り上げてみたところが、これは出せない、妥当なものでないなんて……。そうかと思うと、この前、局長は、WASH報告は参考にしたと言っている。WASH報告は十の八乗で、まだ低いものを出さないのだからね。そういうあいまいなことではいかぬと思うので、これはまた、いずれ長官なり、委員長でもこられたときにはっきりだめ押ししておきたいと思う。
 それから、伏見先生、話は余談になりますが、この法律でやりますと、私立大学と国立大学の場合では、差別待遇のようなことになりはしないかという点が心配になるのですが、こういう点、先生は、大学の立場からどう思われましょうか。

○伏見康治君 おっしゃる通りに、差別待遇的な面が出て参ると思うのであります。実際、私立大学の方で原子炉をお作りになりかかっておられる方々をよく存じ上げておりますが、そういう方々は、幾ら保険料を納めなければならないかということを非常に心配しておられるわけであります。そういうものは、国立の大学と全く同じように、特別な、例外的な措置と申しますか、そういうようなものができれば、それに越したことはないと思うのでございますが、そういう国立と私立との区別をなくすのが一般的な意味においていいのか悪いのかということになりますと、私は判断をつけかねますが、その面だけで考えますと、仰せのごとく非常にへんぱな取り扱いになるだろうと思います。

○岡委員 これは事実かどうかわかりませんが、立教大学の武山に貫こうというトリガ2型なんか、向こうのIAでは、十八億くらい保険に入ってくれと言ったとか言わないとかということが伝えられている状況であります。これは伏見先生も非常に差別的だということをおっしゃっておられますが、原子力委員長である科学技術庁長官も、私立大学における理工学部の振興ということには最近非常に奮闘しておられるので、この点は、やはり問題点を提供しておきたいと思います。
 それから、なお、先生御承知の通りだと思うのでございますが、要するに、この原子炉の運転を停止したとき、その原子炉の、いわば放射能の毒性が去ったものではない。運転を停止しても、特に長年運転しておれば、なおさらこの毒性的作用を持つ放射能の蓄積があり得るわけです。ですから、法律で単に「原子炉の運転等をやめたとき。」ということだけでは、この法律案の何条でしたか、「供託物の取りもどし」のところ書いてありますが、学問的にも、常識的にも私は妥当ではないと思うのです。これは、法律を改正するなり、修正するなりして、原子炉の運転をやめても、なお放射能の蓄積があり、それが他に危険を及ぼすような危険が去ったとき、と明確に規定すべきだと思います。この点、先生もそういうような御趣旨を述べられたのですが、重ねてお聞きしておきたいと思うのであります。

○伏見康治君 ちょっと私からお答えしない方がいいと思うのですが、私の申し上げましたのは、表現的に申しますと、何か、今、岡さんの指摘されたようなふうに受け取れますから、ちょっと心配になって申し上げるのですが、局では、あの表現で十分そういう場合もカバーしておるというふうに思っておられるようでございます。

○杠政府委員 お答え申し上げます。
 補償法の第五条にありまするところの「運転等をやめたとき」、その「原子炉の運転等」というのは、親法であります賠償法の第二条に「この法律において「原子炉の運転等」とは、次の各号に掲げるもの及びこれらに附随してする核燃料物質の運搬、貯蔵又は廃棄をいう。」というようになっておりまして、廃棄ということが出ております。従いまして、放射能の危険がなくなるということを前提としておるというふうに御了解願えればと思っております。

○岡委員 それはどうも少し苦しい言い方じゃないだろうかね。廃棄というのは何ですか。それじゃ、運転をやめた、いわば老朽化して使用に耐えなくなった原子炉を閉鎖する、そこで、そこには使用済み燃料というものが残っておる、廃棄というのは、それを取り出して、何か処置することであって、原子炉に残っておる状態はどうするのですか。運転がとまっても残っておる状態は……。

○井上説明員 ただいまの御質問に対しまして、第二条では、ただいま局長からお答えいたした通りでございますが、さらに、もう一条見ていただきたいと思います。第二条の四項の中に「この法律において「原子炉」とは、原子力基本法第三条第四号に規定する原子炉をいい、「核燃料物質」とは、同法同条第二号に規定する核燃料物質(規制法第二条第七項に規定する使用済燃料を含む。)」ということにいたしておりまして、従いまして、使用済み燃料も含めまして、この二条の廃棄の規定を読んでおるわけであります。従いまして、原子炉が運転をやめまして、実際に使用しないというような状態で使用済み燃料の中に残るわけでございます。そういうものが全部廃棄されるまでの状態ということでいいわけであります。

○岡委員 それでは、真崎さんに一つ関連してお尋ねしますが、補償契約の第三条の第四号に「前三号に掲げるもの以外の原子力損害であって政令で定めるもの」とある。これは保険約款の内容として一体何と何ですか。先ほど若干お聞きしました、報告を怠ったとか、気象の逆転層であるとか、あるいは海への廃棄物による損害とか、それくらいでは済まないと思うが、どれくらいあるのだね、一つあげてみて下さい。

○井上説明員 この政令につきましては、ただいま明確にどれというところまで至っておりませんが、現在予定しておりますものは――これはなぜまだ予定だと申し上げるかといいますと、先ほど真崎参考人から御説明がありましたように、民間保険が再保険の関係で、さらに再保険市場である英国等と今後の打ち合わせがあるというような問題がありまして、予定ということを言っておるわけであります。先ほど真崎参考人からお話のありましたように、たとえば、燃料の輸送保険の問題につきましては、これはただいま英国と打ち合わせ中でございます。ほぼ了解を得られそうだということになっております。もし、この燃料の輸送問題が民間保険でカバーされるということになれば、この政令で指定いたしません。しかし、もし、万一再保険市場との関係で、民間保険ではカバーできないということになれば、この政令で規定をして、穴のないようにいたしたいというような考え方でございます。
 それから、さらに、先ほど真崎参考人から、保険会社としてどうしても見れないものとして、たとえば、通知義務違反というような義務違反の問題をおっしゃったわけでございますが、それらも、本来政府の補償契約の対象にするのは法律的に見ますとややおかしいわけでございますけれども、特に第三者保護というような観点からいたしまして、そういう民間の原子力事業者の通知義務違反というような義務違反においても、なお政令でうたいまして、第三条の方に遺憾なきを期していきたいというようなことを、この政令の内容として考えております。

○岡委員 だから、それだけ入れても、結局告知義務の違反をする、それから輸送関係をどうするか、あるいは逆転層の場合、あるいは海中に廃棄した場合、おそらく保険料を納めなかった場合も入ると思う。なかなかそれくらいでは済まないと思うのだが、どういうケースをあなた方は考えておられますか。僕は、これはやはりこの法案を審議する場合、どういうケースがあるのか、これに対してどういう見通しがあるのか、これは、いわばこの犠牲になった者の損害の賠償をしようというのだから、そのケース・バイ・ケースで、保険で救えないものはこの補償で救わなければならぬのだから、はっきりこれは出してもらわなければ困る。

○井上説明員 民間保険の約款につきましては、現行約款では不十分でございまして、この補償契約法が成立いたしました暁には、この補償契約法に合わせまして、民間の現行保険約款を改正していただくという話し合いになっております。従いまして、その話し合いは、大蔵省と私どもと保険プールと、この三者の間で話し合いをいたしまして――私どものところにあります。御承知の災害補償専門部会もその改正の方向について一応タッチいたしておるわけでございますが、その内容といたしまして、どうしても保険の穴になりますのが、ここに書いてあります。契約法の第三条一号の「地震又は噴火によって生じた原子力損害、」二号の正常運転の場合、これは、先ほど真崎参考人が逆転層の問題として説明されたものでございます。それから、第三が、後発性障害の問題でございます。この後発性障害は、先ほど真崎さんは、廃棄物の問題をおっしゃいましたが、廃棄物の問題は、これはどういうのですか。

○真崎勝君 お答え申し上げます。
 正常運転による加害責任は、私が先ほど触れました例は二つございました。それは、アルゴン四一が正常運転に伴って煙突から排出された場合の、ある場合における被害、それから、もう一つは、廃棄物を十分処理したあとで、薄めたあとで海に廃棄する問題と、両方とも正常運転の定義の中に入るだろうと、こう申し上げました。

○井上説明員 先ほどの説明に、さらに追加さしていただきたいと思いますが、その第三点は、後発性障害、ここまでは、明らかに民間保険のいわゆる穴になっております。これにつきましては、明文でこの点を明らかにいたしたわけでございます。
 なお、先ほど御説明申し上げましたように、現行保険約款は、いずれこの法案が通りますと、この法案の趣旨に合わせまして改正していただくわけでございますが、その改正の内容とあわせて政令の制定をいたしまして、穴のないようにいたしたい。そのおもな点は、先ほど説明いたしましたように、運送保険、あるいは先ほど話がありましたように、そういった客観的な要因でない主観的な要因、たとえば、通知、告知義務違反というようなものが代表的なものでございますが、そうした義務違反、あるいは、要すれば、規制法違反というようなものに基づいて事業者が事故を起こすというようなものも、本来、通常の概念では補償契約の対象になりませんが、あえて第三者災害補償、第三者の保護というような観点から、この政令でうたいたいというように考えております。

○岡委員 地震の問題なんですが、コールダーホール改良型にしても、関東大震災の三倍まで耐え得るというような安全装置をもって建設しておられるわけですね。これは、国際保険プールでは、日本は地震国だということでいろいろ問題があるとしましても、せめて七億五千万円ですか、それくらいに地震については細心に注意をしておるのだから、やはりこれは保険でみてやるというわけにいかないものなのでしょうか。

○真崎勝君 これは、地震を非常に大きな地震と、小さな地震と分ける方式を立法者がとられるならば、そういうことも可能でございます。しからば、現在御審議中の法案の第三条第一項で地震の区分けをされるであろうかと申しますと、私個人といたしましては、関東震災の何倍、あるいは別に、物理学的な定義で示されることもあり得ましょうが、そういうことがあれば、必ずしもできないことはないのです。しかし、関東震災の三倍とか、あるいは二倍とかいう定義自体が、実はあの場合、地震計がこわれたと私どもは拝承しておりますし、客観的には不可能じゃないか、そういう気持もいたします。一応それで御答弁申し上げますけれども、これは非常に重要な問題でございます。

○岡委員 第三条ただし書きでは「異常に巨大な」ということになっておりますが、ただ、関東大震災のときには地震計がこわれておったかどうかは別として、やはり原子炉を設置して可なりという安全性については、安全審査部会が太鼓判を押し、また、原子力委員会が、地震については大丈夫だと総理大臣に報告をして、総理大臣が設置の許可をしておるという、きわめて権威ある機関を通じて、地震に対する安全性というものが一応定まっておるわけです。だから、そういう点から、地震を、国内の保険会社もプールも、外国と同じように取り上げられるというのは少し過酷じゃないかという感じがいたしましたが、今の御趣旨のようであれば、私どももまた考えなければならないと思います。
 それから、この保険料率はどういう基準でおきめになるつもりでございますか。

○真崎勝君 先ほどの陳述におきましても触れましたように、まず、基本的には五十億円、あるいは小さな原子炉については五億円、一億円というような共済保険金額もございます。いずれにしても、まず第一に填補すべきは保険の金額である、こう思っております。従って、保険の金額が支払わるべき頻度も非常に高い、従って、補償料と責任保険料との間に料率の違いがあることだけを先ほど御了解願ったわけであります。
 さて、責任保険料の決定は、これまた先ほどの陳述で触れましたように、原子炉事故の頻度と、それから、万々一発生いたしました原子炉事故の加害責任、あるいは事故の被害の復旧の範囲、こういう問題をかみ合わせますと、統計がない上に――統計がないということは、論理的に言うと、帰納的には保険料率がなかなか出にくい、従って、演繹法的に出さざるを得ないのではないか、こういう意見でございまして、結局、これは主として原子炉の許可申請書類を中心として、たとえば、危険調査報告書あるいは原子炉の明細をよく研究して個別的に保険料を出し、かつ、これは国際火災保険というものが成立するわけでございますから、世界じゅうの原子炉のいい悪いを危険の面から判定しまして、よい悪いをポイント・システムで、一番よいものに、たとえば十点を与え、一番悪いものに百点を与える、そういうようないき方は、もちろん論理的には可能でございます。そうして、結局最終的には、厚生省の所管でありまする健康保険において点数単価制、点数をつけた上で一点が幾ら、こういう問題になるわけであります。ここにややともすれば政治的な判断が入ると思うのでございますが、その点を今ここではっきり申し上げますことは差し控えさしていただきます。個別的に料率を出す、ただし、ただいま申し上げたように、国際的なポイント制を採用する、そこまで一つ申し上げておきます。

○岡委員 アメリカの最近の保険料算定の方式が発表されたようですが、これはどういうことになっておりますか。

○真崎勝君 岡委員にお伺い申し上げますが、アメリカの料率算定基準は、むしろ私の了解しておりますところでは、まず第一に、原子炉の熱出力に比例しましたサイト選定、原子炉敷地の基準、次に、必要とさるべき責任保険の保険金額の基準、これは六千万ドル以内でいろいろきまります。最後に、おそらく、熱出力というものは保険料率、ことに責任保険料率には非常に関係を持って参ると思いますが、これは、岡議員が先ほど前参考人に対して述べられた御意見の中の、周辺の人口密度にまた関係を持つということを申し上げざるを得ないのですが、そういう意味で、米国の料率算定方式がどれであるかと疑いを持っております。

○岡委員 その二月十日という、先ほど来のAECの発表したあの基準の中でございましたか、私ちょうど資料を持って参らなかったのですが、関連しまして、これは原子力委員会のその方の専門家の意見だと承知しておるのですが、やはり熱出力と人口密度が保険料率の大きな函数として取り上げられなければいけないということが言われておったと思うのです。特に日本の場合、こうして人口密度も非常に高いことであり、原子炉運転の経験も乏しいことでもありいたしますので、こういう要素は、やはり重要な参考点として保険料率なりの決定に役立てていただかなければならぬのではないかと思う。
 それから、これもこの委員会でときどき問題にしたことですが、御存じのように、東海村には今一つ、二つ試験炉、国産炉、動力試験炉、かりにそれでも四つ、それにコールダーホール、このコールダーホールがかりに小規模な事故を起こしたとしましても、原研の敷地内の大気が汚染される、バック・グラウンドが汚染された場合、原研の機能というものが停止するというようなことにもなる。これはやはり日本のような、そういう条件の中で原子炉を設置する場合、おそらく機能を停止した原研の諸施設に対する補償というものは、五十億くらいでは済まないと思いますが、こういう点は、やはり保険プールとしてはどういうようにお考えでしょうか。

○真崎勝君 お答え申し上げます。
 これは主として、たとえば東海村に二つの敷地がありまして、甲乙といたしますと、甲の敷地の原力炉が事故を起こしまして、乙の敷地に物の汚染を与えたということをおそらく前提とされてお尋ねになったと思うのですが、その場合は物です。人の障害ではございませんで、物に限定いたしますが、物の汚染は、結局汚染の除去技術及び除去に要する期間に比例して賠償責任の金額が変わってくる。そういう意味で、また別の函数がそこにある。汚染除去技術及び汚染除去に要する期間、そうして、その場合に五十億円で保険金が足りるか足りないかという問題は、実は国家の援助もあるわけなのでございますが、その問題を別にいたしますと、その物、たとえば、動産でも不動産でもよろしゅうございますが、不動産は、それがプラントであれば当然稼働される、その結果利益が生ずることもありましょうし、利益というはっきりした会計学上の項目でなくても、長期的な稼働目的がある、それが達成されない。それは、その物の客観的なバリュエイション、価値の評価に反映されているわけです。たとえば、ある物を、ある機械を、あるいはある工場を運転して、一年間に一億円の利益が上がるというような会計計算ができました場合には、その不動産、あるいはその機械装置、あるいはプラントの現在の値段は、キャピタリゼーションと申しますか、現在の値段に換算できるわけです。ですから、取り立てて利益の喪失を払うか払わないかという計算をいたしませんで、物の現在の値段をキャピタリゼーションによって、人間でいえば、ホフマン方式というのがございますが、それと同じように換算できる。一応理論的には、御心配の点は、大きなプラントに関しては確かに五十億円では不足するかもしれない、それだけ申し上げておきます。

○岡委員 五十億というこの金額が一体どうして設定されたのかということが、この前の委員会で問題になったところが、保険会社の方では、これ以上なかなか約束してもらえないからというようなことであったようでした。それですから、先ほどちょっと、かつて考えていなかったが、問題になってきたということで、飛行機のお話が出ましたですね。事実、あそこは危険区域ということで航空局から指定されているわけです。米軍の爆撃機の爆撃演習地域になっているので、いつも問題になっているし、実は地元は非常に心配をしている。茨城県知事その他関係者がわざわざアメリカまで行って、返還問題について、直接地元の代表としまして、撤収してくれというような状態なんです。そこで、保険ということに関連をして、万一飛行機が落ちたら一体どうなるか、これは一体保険でやってくれるのかということですね。これはどういうふうにお考えになっておられますか。

○真崎勝君 お答え申し上げます。
 これは、私どもがただいままで研究いたしましたところでは、原子炉事故が一たん発生いたしましたときには、先ほども触れましたように、原子炉の所有者たる、オペレーターである原子力事業者に責任を集中する、その原則をチャネリング・オブ・ライアビリティ、こう申し上げたのでございますが、保険の立場から申しますと、これは原子炉のメーカーが、もし悪い物を納めて、そうして原子炉事故が起こっても、これは保険証券は守ると申しました。それから、原子炉の核燃料の提供者が、もし悪い核燃料を納めて原子炉事故が起こっても、原子炉の所有者の責任に集中して考えますから、保険金は支払う、こう申し上げたその解釈あるいはその方針の延長に、この航空会社の問題が一つあるわけであります。そうして、今までのところ、われわれは、これは原子炉所有者の責任にする、要するに、飛行機が落ちて、あるいは擬製爆弾が落ちたがために原子炉がこわれたことは、原子炉所有者の責任、こういう意味で保険証券が持つ、こう思っておりますけれども、これは大体立法者の解釈に従いたいと思っております。つまり、この御審議中の法律で、飛行機会社の責任を、実は法案第四条、あるいは第五条で追及され得るようになっているのですが、一応原子炉所有者の責任としておそらく賠償金が払われるように、集中という問題を、法律では非常に形式的にされておりますが、とにかく、原子炉所有者が払う、そうして、さらに、先ほど私が、われわれの責任保険証券はおまけがございますと申し上げたのは、そのおまけの部分で、少なくとも五十億円以内の保険金に関する限りは、航空会社に、保険会社がこれだけ払ったから、五十億円払ったから、お前の方からもらうという商法上の代位求償権を行使しない、こういうふうに解釈して参ります。

○岡委員 原子力局はどう解釈しておりますか。

○杠政府委員 保険会社の方において保険金が支払われるものと考えております。

○岡委員 そうすると、新しい安保条約に伴う施設及び区域に関する新協定においては、この民間事業場にそのような事故があったときには、自衛隊の事故を起こした場合の基準で換算をする、そうして、アメリカが七五%、日本側が二五%ということになっております。そうすると、その求償権というのは、たとえば、日本原子力発電株式会社が政府に持つわけですね、あるいは保険会社が持つのですか、いずれにしても、何かちゃんと政府がくれることになっているのだから、これはどうなる。

○井上説明員 先ほど局長がお答えした通りでございますが、一応飛行機の事故というような問題が起こりますれば、まず、保険会社は保険金を支払う、それによって事業者は被害者に補償をするということになりますが、その場合に、第五条に求償権の規定がございます。これは「第三条の場合において、その損害が第三者の故意又は過失により生じたものであるときは、同条の規定により損害を賠償した原子力事業者は、その者に対して求償権を有する。」という規定になっておりますので、第三者の場合は、一応求償権はすべて発生するわけであります。ただ、その相手が米軍なら米軍であるというような場合には、これは条約等がありますれば、その条約によって処理していく、求償権の行使について処理するというような関係に相なろうかと思います。

○岡委員 そこをはっきりさせておいてもらいたいのです。だから、国と国の約束で、万一原電株式会社に飛行機が墜落して事故を起こした、これが五十億であったとすれば、その七五%、三十七億五千万円は米軍が支払う、残りの十二億五千万円は日本政府が出すのだ、こういう規定があるわけですね。そうすれば、一体だれがこれを請求するのか。この法律のどこで、そのようにして三十七億五千万円と十二億五千万円払った金をだれが請求することになるのですか。

○杠政府委員 この問題につきましては、たしか岡委員が調達庁の次長に対してお尋ねになったことがあると思いますが、真子調達庁次長が答えました通りに、行政協定に基づきまして処理されるのだと考えておりますので、おそらくは、国家というものがその間に介在してくるのではなかろうかと考えております。

○岡委員 問題は、かりに五十億と評価さるべき災害が起こったという場合、アメリカ政府は、日米合同委員会の協議の結果として三十七億五千万円をくれる、日本政府は十二億五千万出さなければならない、そこで五十億という金が出てくるわけですね。これをどういう手続で、だれがその要求をするのかということなんです。この法律上、一体どの条文によってこの求償ができるか。

○杠政府委員 これは、やはり行政協定に基づくものは行政協定の規定するところによって取り扱われるのだというふうに考えておるわけでございます。

○岡委員 そこを、あいまいなことじゃなくて、一つはっきりしていただきたい。今でなくていいです。これまでの経験もあることだから、調達庁とよく調べて報告願いたい。
 それから、今、この間の調達庁の次長の答弁ということを言われましたが、一つ疑問があるのです。それは、原子力研究所に被害を与える、あるいは原電株式会社に被害を与えたという場合、どうもあの協定をさらに読んでみると疑問がある。その結果起こった第三者に対する損害というものは含まれておるのかどうか、これに非常に私は疑義を持ってきたのです。その慰謝料とかなんとかいうことで、金一封で済まされることもあるのじゃないかと思う。その辺、一ぺんよく調達庁とも調べてもらって、次の機会に責任ある御答弁を願いたいと思うのです。
 それから、真崎さんがよくおっしゃいますが、「前項の規定は、求償権に関し特約をすることを妨げない。」と第五条にありますが、そこで、たとえば、外国のメーカーに故意あるいは重大なる過失があって、その外国から持ってきた燃料なりその他のものについて事故が起こった場合どうするのですか。求償権はないのですか。

○井上説明員 この特約がありますれば、もう少し丁寧に言いますと、外国のサプライヤーとこちらの原子力事業者の間に、要するに外国のサプライヤーは原子炉を販買する、こちらは買うというような契約があるわけでございます。その契約によりまして、外国のサプライヤーは、こういう場合に免責される。つまり、求償権の行使は原子力事業者がしないというような契約がありますれば、外国のサプライヤーを追及することはできません。しかし、被害者に対しましては当然保険の給付はございますし、もし保険でカバーできない面がありますれば、先ほど申しましたような国の補償契約によりまして、補償金を国が支出するということによって被害者の保護をするというような関係に相なるわけであります。

○岡委員 具体的な問題としていえば、CP5の例なんかも一つの例じゃないかと私は思う。だから、無理な要求をして出力一万キロワットの発電をする、普通ならば九〇%の濃縮ウランを使っておったものを、二〇%の濃縮ウランしかくれない、そこで詰め込め詰め込めということで詰め込む、そこで被覆に何らかの瑕疵ができたり、ピン・ホールができたりする可能性がある。そうすると、事故の原因には、その核燃料の溶融というものが一番大きなものである。これは詰め込め詰め込めと言ったところで、言わなかったところで、向こうがサプライした燃料に一つの大きな過失があったわけですね。そこで、政府間協定は、とにかく完全であるように努力をするんだ。ところが、向こうの、いわば売り手とすれば、売らんかなで、そういう発見をしたからいいようなものの、そういうようなことで、燃料が溶けやすいものであって、ほんのわずか熱が高くなってもそういう異状を起こしてくるという場合がある。そういう場合、やはり求償権がないわけですか、事業会社と特約しても、求償権を日本は持たないのですか。

○井上説明員 特約がありますれば求償権がないというのが、五条二項の規定の趣旨でございます。

○岡委員 問題は、そういう特約を、法律の執行上自由にまかせるかまかせないかということです。

○井上説明員 自由にまかせるわけでございます。まかせますが、第三者の保護という点につきましては、先ほど御説明いたしましたように、保険によってカバーするか、あるいは保険でカバーされなければ補償契約でカバーするというようなことに相なります。

○岡委員 それは三つの点で私は問題があると思うのです。政府間協定だって、きずのものをもらっていいんだというようなことをいってない。だから、向こうでも、できるだけ完全なものであるように保証するんだといっておる。事実事故が起こって、ふたをあけてみたら、燃料にそういう瑕疵があったということは重大なる過失ですよ。しかし、それはサプライヤーとこちらの原子力事業者の間には、そういう場合に求償権を放棄するということを自由にまかす、そういう一方的なものであっては、日本の原子力が発展するためにもならぬ。それから、そういう損害についても、なるほど、損害賠償法で五十億以内は原子力事業者がかぶるんだということになっておるから迷惑をかけないということでは、それは済まされない。そういう外国のメーカー、サプライヤーの重大な過失に基づく事故についても、日本の保険会社は迷惑を受ける必要はない。場合によっては、政府が何も迷惑を受ける必要はない。両国政府間の協定というものは、そういう趣旨なんだ。向こうもできるだけ誠意を持ってやる、ただ、しかし、向こうのメーカーもマーチャントで、商業的な利益を追求して売ってこないとも限らぬ。だから、そういうものに対して、ただ無条件に求償権を放棄するということを認めるなんて、そんなことでいくんですか、これは大きな問題だと私は思う。

○杠政府委員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げますけれども、これは、先ほど来岡委員がおっしゃっておりますように、国際的な関係、この法律が日本独自のものであってもいいのですけれども、やはり原子力の開発ということは国際的な視野に立っておる問題でありますというようなことで参考人もおっしゃいました通り、そういうような観点に立つということも必要なことでございまして、やはり国際的な商慣行が、大体特約を妨げないというような行き方になっております。それと同時に、先ほど例をあげられました燃料におけるところの瑕疵というようなものにつきましては、もちろん、受け取る側におきましても無条件に受け取るということはあり得ませんので、やはり厳密なる検収行為をいたしますから、その限りにおいて瑕疵がないものだと一応前提せざるを得ないと考えております。従いまして、当初から瑕疵あるものを無条件に受け取って、しかも、特約によってサプライヤーの方は迎えるというような、そのような、実にずさんと申しますか、法体系をとったというふうには考えておりません。

○岡委員 わずか二十本やそこらのものならば、レントゲン写真ででもよく見れるでしょう。一万本、二万本にも達せんとするような大きな燃料を、あなた方レントゲンで一々見るというわけには実際問題としていかぬと思うのです。抽出検査しかないだろう。それとも、全部レントゲンで見て精密にやる、それから国がやるというくらいならわかるのですが、そういうことも実際問題としてあり得るわけだから、そういうあいまいなことを言わないでほしい。無条件に求償権を放棄する協約をサプライヤーと日本の原子力事業者と結ばすなどというようなことを今ごろ野放しにしておくことはないだろう、ないだろうという推定の上に、しかし、万一あった場合にということで、われわれは損害賠償を論議しておるのです。絶対にないという保証がない以上は、無条件に求償権を放棄するということは、日本の原子力業界の将来にとって不面目なのだ。

○杠政府委員 これは先ほどもお答え申し上げましたように、国際的な商慣行になっておりますので、こういう規定を設けなかったといたしますか、そうしましたおりには、おそらくは外国からの炉材料あるいは燃料等の供給というものは受け符ないというふうに考えております。

○岡委員 だから、問題は限定して言っているのです。もし事故が起こる、その原因を追及してみた、ところがサプライヤーの供給した燃料に原因があったということが確認された、それはサプライヤーの重大な過失であった、しかしながら、そのサプライヤーに対して日本の原子力事業者が無条件に求償権を放棄しておる、しかし、政府間協定では、向こうもできるだけ完全なものを供給するということを約束しておる、ところが、できるだけ完全なものをという努力が足らなかったということがはっきりわかった場合は、やはりわれわれは求償権は当然あっていいではないかということなのです。

○真崎勝君 この問題は、私の陳述に関連しまして岡委員から御質問があったと思いますので、私も一言お答えをさせていただきます。
 実は、これは国際問題というよりも、米国の原子力法自体に核燃料の国有原則というものが入っておりまして、米国政府が原子力委員会を通じて原子炉所有者に核燃料を貸与する、その場合に、やはり政府側が免責される、これは国内法として確立されている。従って、これが国際関係であるから神経質になるということは私は考えておりませんけれども、それならば、なぜ神経質にならないでよいかという点につきましては、私なりに、これはやはり物理学上の因果関係が――法律でも、事故と被害の間に因果関係という言葉があるのですが、因果関係において、おもなる原因をどこに定めるか、場合によっては、原子炉が事故を起こした場合に、この核燃料が悪いからという、その派生的な原因を因果関係として追及しないのだ、あるいはメーカーの作り方が悪いのだというふうには追及しないのだ、これは実は、私が数年前原子力保険を勉強しましたときに、一番初めにぶつかった一番大きな問題でございます。これは俗語で申しますと、鐘が鳴るのか、撞木が鳴るのか、鐘と撞木の合いが鳴る、鐘というのが原子炉、撞木が核燃料でございます。事故が起こって、一体どっちに原因があるというときに、原子炉の側に全部集中してしまう、こういうふうに考えて参ります。その他いろいろ理論づけはございますけれども……。もう一つ申し上げますと、保険の引き受け能力に照らしまして、たとえば、原子炉側に賠償責任が必要である、あるいは核燃料のサプライヤーも賠償責任が必要である、こうなりますと、一つの甲という原子炉について、あらゆる関係者が賠償責任をかぶる、これは困るというので、技術的な説明をしております。責任の集中ということであります。従って、これは国際問題が生ずる前に、原子力法で、まず原子炉の事故について、原子炉の所有者は無過失責任を負う。第二に、免責事由は戦争、それから特別の大地震というようなことになります。それと責任を集中する。原子力船でいえば、原子力炉のオペレーターに、つまり鐘の側に責任を集中する。責任というのは、求償権の場合で言うと、要するに特約でありまして、特約というのは免責条項になっております。でありますから、出力が所定の原子力に達しなかったという場合には、これはギャランティの問題になりますから債務不履行の責任で、債務不履行責任と不法行為賠償責任とは区別いたしまして、特約というのは、債務不履行の責任は一応入らない、不法行為賠償責任を鐘の側、つまり原子炉の側に集中する、こういうように私は考えております。

○岡委員 真崎さんのお説は、私の申し上げていることにはずれておるのです。求償権というものがここに書いてあるのですよ。第五条には「その損害が第三者の故意又は過失により生じたものであるときは、同条の規定により損害を賠償した原子力事業者は、その者に対して求償権を有する。」だが、この求償権のところが特約ではない、求償権を免除すると書いてある。これは、おおむね外国のサプライヤーから供給する、今あなたのおっしゃいました、燃料が所定の熱出力に達しないという場合、なるほど、アメリカはユーラトムなんかに対しては、そういう場合における補償はやっております。しかし、問題は、燃料に瑕疵がある。反応度が上昇しても、あるいはまた、冷却材が若干喪失しても、今日までの経験からいっても、まず落ちてくるのは燃料なんですね。だから、燃料が溶融をする、あるいはその危険に瀕して、そこで核分裂生成物質というものが炉内に蓄積され、放散されるという場合に、外国の燃料のサプライヤーに対して責任を免除するということは、もちろん、これは政府間協定もあることだから、向こうが完全であるように努力してくれればいいけれども、さて、調べてみたところがそうでないといった事実がわかったときに、場合によれば、政府が国費をもって損害の賠償をする、あるいは原子力事業者が責任集中の名においてされるということは筋が通らぬ、こう私は思うのです。こういう問題は、いずれまた原子力委員長がこられましてから一つ責任ある御答弁をいただきたいと思いますから、きょうはこの程度にしておきます。

○山口委員長 石川次夫君。

○石川委員 ただいま岡委員の方から詳細な質問があったわけでございますが、私は、実は地元の東海村の近所におるものですから、原子力にある程度の関心を持った素朴な住民の疑問という形で、きわめて非学問的な質問を申し上げますから、一つお答えを願います。
 伏見先生にお伺いしたいのですが、先ほど伏見先生のお話の中で、放射能による障害が後発性を持っておるという場合の判定の基準として、これこれ以上の放射能を浴びた場合には全部放射能障害とみなすのだ、賠償なり障害の認定の基準がないのじゃないということをおっしゃったことは、まことにもっともだと思うのであります。そこで、実は、私、話がもとに戻りますけれども、今度の法案というのは、第三者の安全を確保することを目的とした法案だというふうになっておりますが、私がこの法案を調べれば調べるほど、そういうことが目的ではなくて、今度英国との間に燃料その他コールダーホールの原料の取引をするために、免責条項というような関係で、急いでそれを作らなければならない、あるいは住民に安心感を与えるための一つの啓示的な目標というものが先行して、住民のほんとうに安全を確保するための目的が主眼とされて出された法案であるかどうかということについて、非常に疑問を持ってきておるわけです。ただ、そのことについてのこまかい内容については、あとで、いずれ委員会で質問をしたいと思っておりますが、一番大きな問題の一つは、今申し上げた、住民がどの程度の放射能を浴びた場合に放射能障害ということに見なすかという、その基準が一つもきめられていない。御承知のように、先ほどお話がありましたICRPは、三百ミリレントゲンというものを百ミリレントゲンというものに下げた。しかし、これは積分されたものでないから基準とされないというようなお話があったわけでございます。そういう一つの意見に対しては傾聴に値いするものだと思いますけれども、地元の素朴な住民としては、一つ一つの原子炉を作る場合に、政府は、非常に厳密な安全審査をして、それを許可するというふうな方針をとっております。それが東海村のようにたくさん実験炉ができ、コールダーホールができてくる、それに重なり合って、住民の方は放射能としてかぶることになるわけですけれども、それに対して基準というものが何毛示されていないということになると、地元の住民としては、一体どこから放射能障害ということを認定して、これが今度の法案の対象になるのかという基準がちっともきまっていないじゃないか、それをきめないでおいて、この法案が先に出てくることはおかしいじゃないかという素朴な疑問がどうしても出ざるを得ないわけです。従って、先ほどいろいろ慎重に検討すると言われておるようでございますが、そういう意味での放射能の基準、事故の認定の基準、そういったものが近い将来にできるというふうなお話でしたが、実は、それが先に出て、次にこの法案が出るということでなければ、住民としては、ほんとうに自分たちが補償してもらえるかどうかということに非常に疑問を感ぜざるを得ないと思う。従って、この基準が近い将来できるというのですが、いつごろ一体できるのか、この点は、ほんとうにわれわれとして重大な関心を持っておる。その点を、そう確実に、六月の末にできるかどうかという期限を切るわけにはいかぬと思いますから、大体のめどをお知らせ願いたい、これが第一点であります。
 それから、あと一つ。これは必ずしも伏見先生に御質問することがいいかどうかわかりませんが、いま一つの問題については、非常に個人差があるわけでございます。住民の放射能に対する抵抗力に個人差というものがありますから、平常の健康管理というものが行なわれておって、それで放射能を受けたためにこういう変化が出たということの、ふだんの健康管理というものがこの法案には全然うたってないわけです。
 それと、あと一つは、これ以上の放射能を浴びた場合は事故であるという認定をする、あるいは、これ以上放射能を浴びた場合には、これは明らかに放射能障害であるということを認定する機関というものが全然きめられていない。従って、これはたとえば、原研とかあるいはコールダーホールの原発あたりでは、いろいろそういうことを測定してやるかもしれません。しかし、これはそう邪推してはいけないかもしれませんが、業者の方では、なるべくそういう事故が出たということを発表したくないと思う。極力これを押えるという方向にいかざるを得ないと思う。従って、これは第三者の機関として、これ以上は事故だ、これ以上は退避しなければいかぬというような命令を出す、そういうようなことでなければ、この法案が出たって、一体はたしてほんとうに自分たちは保護されるのかどうかということに疑問を感ずるのは、これは人情だろうと思う。従って、そういう意味での非常にきびしい批判が地元の東海村の方から出ておるということ、このことに対して、一体伏見先生はどういうふうにお考えになっておるか。これは当局に聞くのが筋かもしれませんが、実は、そのことについては、あとでまたゆっくりお話したいと思っておりますので、この際伏見先生の御所見を伺っておきたいと思います。
 それから、あと一つでございますけれども、事故ができた場合の評価は、これは非常にしろうとらしい質問で恐縮ですが、これは真崎先生にお伺いしたいと思います。大体保険会社が当たるというのが建前なんだろうと思うのですが、いよいよとなった場合には、損害賠償紛争審査会というものが生まれるわけです。しかし、初めからその損害賠償紛争審査会が来て、その事故の補償額についての認定をするわけではないのでありますから、これは保険会社がおやりになるのではないかと思いますので、その点を念のためにお伺いしたいと思います。保険会社がおやりになる場合に、たった五十億という金頭だ。これは再保険の国際市場の関係でやむを得ないと思うのですが、コールダーホールでもって事故ができれば、五十億は、ほとんど事業主の方といいますか、原発の方にとられてしまう、第三者の自分たちは恩典にさっぱりあずからないのではないかという、きわめて素朴な不安がある。そういう点で、いろいろ技術的な問題があるでありましょうけれども、この評価は保険会社でおやりになると思うのですが、評価をする際には、普通の状態と、損害を受けた場合の被害の程度といいますか、そういうことを正確に認定する基準というものをお持ちになっておるのかどうか、そういう点を一つお伺いしたいと思います。

○伏見康治君 私からお答えいたしますが、私からだけではなくて、局の方からもお答えしていただきたいと思います。
 私の先ほど申し上げましたことは、実際の放射線障害が現われてからいろんなことを判断いたしまして賠償を求めるというのでは、多くの場合、第一、放射能を浴びたという証拠さえ、おそらくなかなか求めることができなくなるおそれがありますので、そういう観点から、事故が起こりましたときに、その該当される方が浴びた量といったようなものを少なくとも記録する、そうすることによって、その方が将来実際放射線障害の病状を呈されたときに賠償を請求される資格を少なくとも維持されるように、事故が起こったときに、すでにそういう措置を講ずるということが非常に大事なことだろうと考えております。そういうことが法律案の文面には必ずしもよく出ていないように思いますので、そういう点を、もう少ししっかりした方がよろしいのではないかというのが私見でございます。それに関連いたしまして、そういう場合に、これ以上を危険な放射能を浴びたと考える、これ以下は無視するという、そういうけじめは当然あるべきだと思うのですが、そういうけじめというのが、たとえば、原子炉の設置許可をいたします場合の安全審査で、いろいろ事故実験をいたしましたときのその基準線量といったようなものと同じものであっていいかどうかということは疑問があるわけです。それは、また、そういう使い方をする基準線量として、別の意味できめなければならないことであろうと思うのですが、もし、先ほどの御質問が、原子炉の設置許可をいたしますときの安全審査の場合に使います基準線量というような意味でございましたならば、それは割合に近い日にできるのではなかろうかと思っております。私どもといたしましては、主として放射線審議会の御審議を待ってそれを確立したいと考えておるわけでございます。そちらの方の御審議は、もうある程度進行しておると思いますので、ごく近い将来に、そういう意味での基準線量でございますれば、確立できると思っております。もし、先ほど申し上げましたような意味の、別の機能を持ちます基準線量ということになりますと、なおいろいろ議論をしていただかなければきまらないだろうと思います。これが第一の御質問に対するお答えであります。

○真崎勝君 石川議員の二つの御質問に対してお答え申し上げます。
 第一の御質問は、保険会社が被害者の損害の査定を行なうかという問題でございますれば、われわれ保険会社の建前は、法律上加害責任者となります原子炉の所有者と被害者との間の示談、和解、あるいは紛争審査会という即決簡易裁判所、また、それできまらない場合は、実際民事裁判所の判決によってきめる、こうなるわけだと思うのでございますが、実際上、保険会社がどこまで、つまり、陰になってやるかという御質問でありますれば、私どもも職務上、実質上は非常に一生懸命いたします。これは住民のためにいいことか悪いことかという問題になりますれば、私は、先ほど陳述いたしました中で、五十億円という全体の保険金額の中で、一人当たりの金額はきまりません、こう申し上げたわけでございます。そうして、さらに、保険会社あるいは保険プールは、直接被害者から請求を受けません、こう答えたわけでございます。実質上の問題ならば、これはとことんまでやってもよろしゅうございます。それが第一の御質問に対する答えでございます。ただ、昨年の四月一日に英国で施行されました英国の原子力施設許可及び保険法によりますと、事故の際に、動力大臣が、この範囲のものはレジストレーションになっている。つまり、登録命令を出す、そして、これは長年にわたっておそらく健康管理をするだろう、こういうことを先ほど触れました。ですから、これは保険会社だけでやるとは、もちろん申し上げません。これにつきましては、現在の法案で、その施行令、あるいは施行規則で十分いけるのではなかろうか、こう申し上げたわけでございます。
 第二の御質問は、コールダーホール改良型の事故を起こしましたときに、五十億円で十分であるかどうか。これは五十億円で必ずしも十分であるとは申し上げかねますし、そのために一応国家補償とか、あるいは国家の援助という制度があるわけでございます。ただ、私どもの乏しい研究によりますと、コールダーホール改良型のお家元は英国でございます。英国につきまして乏しい研究をいたしましたが、ウィンズケールの事故は一九五七年の十月に起こっております。ヨード一三一の放射能によって汚染された牛乳が廃棄されまして、八千万円の被害があった。これは国有原子炉であるから国が補償する、こういうことになった。それでは、あのときに一体何キューリー放射能が出ましたか、この問題でございますが、これは英国側ではっきりわかっているわけです。ウィンズケールの事故による放射能の放出量は、ヨード一三一が二万キューリー、ストロンチウム八一が八九キューリー、ストロンチウム九〇が二キューリー、概算すれば二万キューリー、こういうわけでございます。それで、二万キューリーで八千万円。また、岡議員の非常に有力な御意見である人口密度に関係いたしますが、二万キューリー出て、日本ではその倍の一億六千万円くらいの補償ではないか、二万キューリーとして、一休マキシマム・クレディブル・アクシデント、それ以上の大きな事故は起こらないだろうか、この問題になると、一つ申し上げますと、ウインズケールの原子炉の一九五七年十月の蓄積放射能の総量は、十の八乗キューリーでございます。従って、これは十億キューリーということになります。それだけ申し上げておけばいいと思います。十億キューリーということは、日本の東海村に作られますコールダーホール改良型の原子炉が何カ月か運転されまして事故が起こった場合に、それ以上の放射能は蓄積されない。念のために広島の原爆はどうかと申しますれば、十の八乗でなく、キューリーで言うと十の十一乗か十二乗くらいでございます。これは爆発の瞬間でございます。ビキニで第五福竜丸が被爆した際の水爆の爆発の瞬間は、十の十四乗くらいのキューリーだろう、こういわれております。そこで、われわれは、この五十億円は、マキシマム・クレディブル・アクシデントをカバーできるであろう、こうお答え申し上げます。

○山口委員長 他に御質疑がなければ、本日はこの程度にとどめます。
 伏見さん、真崎さんには、御多忙中のところ、しかも、長時間にわたり貴重な御発言を承り、まことにありがとうございました。委員長より厚くお礼申し上げます。
 なお、本日委員会に御出席いただくことになっておりました日本原子力産業会議副会長大屋敦君、日本原子力研究所東海研究所化学部分析化学研究室員中島篤之助君の両君につきましては、後日参考人として御出席を願うことといたしますので、御了承願います。
 なお、日本原子力研究所労働組合執行委員長堀剛治郎君に御出席願うこととなっておりましたが、都合により日本原子力研究所東海研究所化学部分析化学研究室員中島篤之助君に変更いたしましたので、御了承願います。
 本日は、これにて散会いたします。
   午後四時三十八分散会
2011-04-07 : ・立法過程資料 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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■立法過程 その5 日米関係(昭和31年)

【立法過程 その5 日米関係(昭和31年)】
原子力委員会月報 昭和36年11月
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V01/N07/19561103V01N07.HTML
特殊核物質賃貸借に関する日米細目協定について

 日米原子力細目協定については、昨年11月いわゆる日米原子力協定が締結されて以来燃料貸与の諸条件を規定するものとして日米両政府間において種々の折衝が行われ、またわが国においては、原子力委員会を中心に慎重に検討を加えてきたが、ようやく両国間において意見の一致を見、11月中旬に調印の運びとなった。
 この細目協定は、現在茨城県東海村に建設中のウォーターボイラー実験炉の所要燃料2kgの賃貸を規定するものであるが、原子力委員会は、原子力開発利用基本計画にのっとり本実験炉を32年4月据付完了し7月本運転開始を可能ならしめるためには、遅くとも11月中には交渉を妥結させる必要があるとの観点から米側の協力を求めたが、米側は、わが国原子力計画を十分認識しつつも、細目協定は米国自身初めてであり、今後のモデルケースとなること、原子力国際機関設立その他の諸情勢から原子力政策を変転したこと等の事情により予想外の日時を費したが、その間、燃料引受後、米国政府の責任を免除する免責条項の規定等の問題点も、燃料引受に当り公正な第三者による検査を実施することを規定した検査条項がわが国の主張により挿入され、これにより日本側の不利を排除する等の妥協が行われた結果ようやく妥結を見た
そこで臨時国会に提出、承認を得れば発効することとなるが、以下にその概略を紹介する。

特殊核物質賃貸借に関する日米協定要綱
1.貸与量
 細目協定により貸与される濃縮ウランは、ウラン235含有量19.5~20%のもの2kgであり、東海村に設置されるウォーターボイラー炉用として貸与される。
 なお、万一の事故等により必要となった場合日本政府の要請があったときは、追加量が貸与されることとなっている。
2.燃料の加工業者への引渡
 日本政府が契約した契約者(燃料の加工業者)より依頼を受領して後120日以内に、AECは加工業者にAEC施設において金属ウラン(その他)の形で引渡を行う。
3.検査
 燃料の質に関する検査は日米両国政府により選択された分析機関により加工過程における適当な一時点においてサンプル調査を行うものとし、検査費用は折半とする。量の検査は加工業者より日米両国政府に証明書を手交するが、別途、加工業者との契約により量の検収を行いうる。
4.日本政府への引渡
 加工業者は30日の予告期間をおいて、日米両国協議の上決定するAEC指定の地点において日本政府に引渡す。引渡は日本政府の適当な領収書の手交により確認され、爾後日本政府は安全保持に関する一切の責任を負う。
5.返還
 日本政府は1960年9月30日までまたはいかなる場合も協定の終期までに日本政府と協議の上でAECの指定する場所において返還するものとする。
6.燃料の再処理
 再処理は次の方法により行う。
 (1)AECがAEC施設で再処理を引き受けたときはAECに恢復費および輸送料を支払う。
 (2)AECが引き受けないときは、AECは民間業者が再処理を行うに必要な措置をとる。
7.賃貸料
 賃貸料は日本政府よりAECに支払うものとし、次の方法による。
(1)使用料
 使用料は20%濃縮ウラン中に含まれるU2351gにつき25ドルとし、これの年率4%とする。
 期間の始期は引渡の時とし、その終期は
(イ)加工業者に引き渡した時は、アメリカに返還されかつ再処理のため加工業者に引き渡されたときとする。
(ロ)AECに引き渡した時は、再処理完了の日または通常完了すべき時期のいずれか早い方とする。
 (2)消費および減損料
 消費料および減損に対する費用は貸与されたときと返還時とにおける価値の差額とする。
 返還時の燃料の価値は分析機関による分析によるものとし、分析費用は折半とする。
 (3)燃料価値計算の根基は、20%濃縮ウラン中に含まれるU235が1g25ドル、天然ウラン(0.72%)中に含まれるU235が1g5.62ドルとし、これに正比例させた計算により行う。
 (4)支払方法
 使用料は年払とし、消費および減損料は分析証明書受領後30日以内に行う。
8.米国政府の免責
 日本政府は燃料の引渡を受けた後は、燃料の生産、加工、所有、貸与、占有、使用等に起因する一切の責任について米国政府の責任を免除するものとする

9.AECの証明書(別途交換公文による)
 AECから加工業者に対し金属ウランの品質に関する証明書を渡し、その写しを日本政府にも送るものとする。

訪英原子力発電調査団の出発
訪英原子力発電調査団のうち、一本松副団長以下、嵯峨根、法貴、藤波、弘田、辻本、大山、稲生の8氏は、10月15日羽田発エール・フランス機で出発した。なお、駐英原子力アタッシェに決定した村田書記官も一行とともに出発赴任した。

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原子力委員会月報 昭和31年12月

特殊核物質の賃貸借に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の協定について
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V01/N08/19561202V01N08.HTML
 この協定(以下細目協定という。)の概要については、前号で紹介したが、その後日米両政府の交渉の最終段階において、かなりの変更が加えられ、ようやく去る11月23日ワシントンにおいて調印され、またわが国においては12月12日国会の承認を得て国内法上の手続を完了したので、1年余の交渉の末ようやく発効の段取りとなった。
 以下最終段階における変更の事情等を中心に細目協定の内容等について若干の解説を加えることとする。
 細目協定は、昨年11月14日調印された原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(以下本協定という。)にもとづいて、目下茨城県東海村に建設されているウォーターボイラー型実験用原子炉用の燃料としての20%濃縮ウラン2kgの貸与の条件等の細目を規定したものであり、細目協定の発効により、初めて本協定の効力が実際に動き出し、現実の燃料の貸与が行われることとなるのである。これにより、先に原子力委員会において決定した原子力開発利用長期基本計画により、最初にわが国に建設されるウォーター・ボイラー型実験炉が計画どおり32年4月ころには試運転が開始されることとなり、わが国の原子力開発の記念すべき第1歩が印されることとなるのであって、細目協定の締結は、きわめて重要な意義を有するものである。
 細目協定の締結が、本協定締結以来1年余の長時日を要したことについては、種々の理由が考えられようが、原子力をめぐる国際情勢が1年間できわめて目まぐるしい発展を示したこと、アメリカ自体がかかる協定の締結について経験がないこと、日米両国の国内法制上の相異から、その調整に種々の困難があったことなどが考えられよう。
 すなわち、第1に原子力をめぐる国際情勢は昨年8月のジュネーヴ会議以降、その平和的利用面に対する各国の関心が異常に高まり、軍事的利用面以上に、平和利用面における研究開発が進められかつその成果が次々と表われ、また秘密事項等も大幅に解除され、このような機運は原子力国際管理のための諸国の協力の機運を盛りあげ、国際原子力機関規約も最近遂に採択決定されて近くその発足が予定され、またわが国もこれに加入することとなっている。
 米国においても、かかる国際情勢の推移が反映され、原子力委員会の強い統制の考の下にあった1946年原子力法が改正され、民間の関与、国際協力等の面において従来の考え方に思い切った改革を加えた1954年法が成立したが、この傾向はその後も逐次強められている。
 わが国においてはジュネーヴ会議以降国内の原子力に対する関心が高まり、本協定締結当時これに対し各界から賛否の論議が巻き起り、世の注視をあびたが、その後原子力委員会を中心にわが国の原子力開発のプログラムが慎重に検討され一応の成案を得たのとあいまって、世論も原子力開発の急務を痛感するにいたり、わが国の原子力開発の立遅れを克服するため、むしろ細目協定のすみやかな締結をいそがれるに至ったのである。
 このような情勢の下に、本協定締結後ただちに細目協定締結の折衝に入ったのであるが、米側は三十数カ国と協力協定を締結しているにかかわらず、現実の燃料貸与の条件を規定するいわゆる細目協定の締結は、わが国に対するケースが最初であり、また前述の国際情勢の推移等とも関連して、交渉中途において、濃縮ウランの貸与形式から売却方式への変更、南濃縮ウラン235および233、プルトニウム等の供与、免責条項の本協定への挿入等を随時申し入れ、これがため本協定の改訂を申し入れてきたが、日本側としてはいちいちこれらの問題について再検討を加えることを余儀なくされ、また、米国原子力法の規定上から燃料の引渡後は一切の米国政府の責任を免除するとのいわゆる免責条項の問題、燃料に対する検査権限を規定する検査条項の挿入を主張する日本側の意見、燃料の成型加工が米原子力委員会施設から民間会社に変更されたことにともなう引渡返還責任等に関する法律上の諸問題、米国における機密上の問題から諸チャージ(賃貸料)の内訳がなかなか明確にされなかったため、わが国の財政法との関係上生じた問題等各般の問題がかさなり、予想外の日時を費したが、両国間のたびかさなる折衝と妥協とによりようやく別掲のとおり妥結したのである。
 細目協定は6カ条から成るが、第1条では、合衆国原子力委員会は、日本政府に対し、日本原子力研究所が建設するノースアメリカン航空会社製の溶液型研究用原子炉(いわゆるウォーター・ボイラー型研究用原子炉)の操作に使用するため、19.5~20%濃縮ウラン2kgを貸与することを規定している。この場合貸与を受けるのは日本政府であり日本原子力研究所は日本政府の授権の下にさらに日本政府から貸与をうけることとなる。また貸与量2kgは同位元素U-235の数量であり、したがって20%濃縮の場合のウランの量は10kgである。なお、喪失、破壊など不測の事故に備え、かかる場合には日本政府の要求によって必要な追加量が貸与されることとなっている。
 燃料の成型加工は当初米国原子力委員会の施設で行うことが予想されていたが、その後前述のように米国における政策が変更され民間会社の関与を認めることとなった結果、わが国に貸与される燃料の加工にあたっても、日本政府が米国民開会社と加工契約を締結し、これにもとづいて米国原子力委員会が当該契約会社に対し、六弗化ウランの形で燃料を加工業者に渡すこととなっている。
 第2条は、燃料の引渡および返還手続ならびに検査に関することを規定している。
 すなわちA項は、前述のように成型加工が民間会社で行われることとなったため、米国原子力委員会は、日本政府の契約した加工業者に対し、日本政府の確認した要請を受理した後120日以内に、必要量を、同委員会の要求する料金および条件の下に引渡すことを規定している。
 B項は、いわゆる検査条項であって、交渉の過程において日本側の主張により加えられたものである。すなわち後述のように」米国側は日本政府に対し燃料を引き渡した後は一切の責件を免除されることを主張し、日本側はこの条項を認めるためには、せめて燃料引受時に、なんらかの検査を行い、これが協定に定められた条件を満足するものであることを確認した上で引き取ることが絶対に必要であるとの見地から強くこれを主張し、これがここに加えられることとなった。
 なおこの検査は、両政府の選定する分析機関により、製造過程において(なるべく最終段階により行うことが了解されている。)抜取検査を行うものとされ、またチャージ決定の根基となる濃縮度の決定はこの分析の結果により決められることとなっている。また検査の公平を期するため分析費用は日米折半で負担することとなっており、量の検査については加工会社が日米両政府に対し証明書を発行することによるものとされているが、日本側は別途加工業者との加工契約の条項中において分量検査の条項を加えこれにより検査を行うことが了解されている。
 C項およびD項は、日本政府への燃料の引渡手続を規定したものであり、加工業者は30日の予告期間をおいて、日米合意のうえ決定される積出港に燃料を送付し、ここで米国原子力委員会から日本政府に引き渡されることとなる。このような複雑な形態をとったのは、米国原子力法上、原子力委員会以外のものは燃料を所有することができないこと、しかも加工は民間会社で行うこと、貸与関係は日本政府と原子力委員会との間で行われること等の諸関係を規制したためである。
 なお日本政府は引渡を受けた後は濃縮ウランの保全等ならびに安全、健康等に関する保護措置について全責任を負うものとされている。
 E項は、返還の手続を規定したものであり、1960年9月30日までに返還することを規定するとともに、燃料の再処理に関し、原子力委員会の施設で行う場合と、民間会社で行う場合との二つのケースについてその手続を規定している。
 第3条は、賃貸料の内容、支払方法等を規定したものである。
 賃貸料の内容は、当初、使用料、消耗料、減損回復費、再処理費等に細分されていたが、それぞれの内容については必ずしも明らかでなく、ようやく20%濃縮ウラン1g25ドルであり使用料はその年率4%であることが明らかにされたていどであった。一方日本側は、財政法等の立前から、この協定により5ヵ年間の賃貸料支払の負担を負うこととなり、この協定の国会承認を受けることにより国庫債務負担権限を受けるため(31年度予算では予算総則に濃縮ウラン賃貸料に関する国庫債務負担行為の規定を欠いたため)その限度額を明確にすることを要するとの理由で、米側に強くその内容の明示を求めたのである。その後徐々に内容も明らかとなり、内容としては(1)使用量(前記の計算方法と同じ)(2)消費および減損料(貸与されたときと返還されたときにおける価値の差額)とし、根基は20%濃縮ウラン中のU-235 1g25ドル、天然ウラン中のU-235 1g5.62ドルとし、これに正比例させた計算によるとされた。
 ところが、調印直前において、米側では新価格がアイゼンハウアー大統領から発表され、たとえば20%濃縮のものは1g16.12ドルと改訂されたため、またまた協定案の内容も変更を加えられることとなり、日本側は25ドルに代え16.12ドルとすることを主張したところ、米国原子力委員会は、今回発表された価格はいつ変更されるか保証し難いこと、したがってこれをそのまま協定中に規定することは、将来変更された場合、米国原子力委員会自体がウランの価格に関し自ら定めた規則に違反することとなること等の理由により、価格そのものを規定することに同意せず、米国原子力委員会が設定する価格の表で、燃料の引渡時において実施されている価格によるとすることを主張し、調印直前において意見の対立を見たが、問題が法律解釈上の問題であり、かつかかることにより燃料の入手が遅れ、ひいてはウォーター・ボイラー型原子炉の運転が遅れることとなっては、わが国としても甚だ不本意であるので、改めて解釈上の問題に関し検討を加えた結果、日本国内の法律上の解釈としては、この協定により債務負担権限を与えられるものでなく、したがって濃縮ウラン賃借に要する予算は毎年度予算に計上することにより確保し、万一賃貸料の著しい値上りその他の事由により所要貸借金額を支払いえない事態が生じたときは、協定の期限内においても返還の権限を保有するものであること、すなわち、いつ返還しても日本政府は法律上損害賠償等の責を負うものでない旨解釈するとの申入れを行い、米側もこれは法律解釈上の問題であるのでその点了承し、その旨公文を交換し妥協したものである。
 第4条は、いわゆる免責条項であり、日本政府は米国政府および委員会に対し、燃料引受後は、その製造、所有、賃借、占有、使用から生する一切の責任(第3者に対する責任も含めて)を免除することを規定したものである
 この条項は、昨年米側の最初のドラフト以来加えられているものであり、さらに米国の後の他国との協力協定では本協定に入れられているものである。米側はこの条項は国内原子力法にもとづくもので絶対に削除できないとの見解を示し、また他の各国との協定にもすべて挿入しているが、この点は一般の賃貸借契約の観念からはかけ離れたものであり、かつ、わが国財政法においても、その第8条で国の債権を免除する等の場合法律の規定を要するものとして強くこれを規制しているので、わが方としては強くこの条項の削除を要求したのであるが、米側の主張も強く、結局前記検査条項を加えることにより、本条項は存置されることとなった。
 第5条は、まったく米国内の法制上の要求にもとづく規定であり、わが国には無関係であるが、米国議会の議員の収賄等を禁ずる主旨の規定である。
 第6条は、この協定の有効期限を規定したものである。
 以上がこの細目協定の交渉の経過、概要および問題点のあらましであるが、次ページ以下にその日本語および英語による正文ならびに交換公文を掲げることとする。
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原子力委員会月報 昭和36年12月

特殊核物質の貸貸借に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会との間の協定
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V01/N08/19561203V01N08.HTML

 日本国政府及びアメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会(以下「合衆国委員会」という。)は、1955年11月14日に署名された原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(将来改正され又はこれに代るものを含む。)に基く特殊核物質の賃貸借に関し、同協定に含まれるすべての条件、規定及び保証に従って、次のとおり協定する。

第 1 条
 合衆国委員会は、日本国茨城県那珂郡東海村日本原子力研究所に設置されるノース・アメリカン航空会社製の溶液型研究用原子炉の操作における使用のため、同位元素U-235を19.5パーセントから20パーセントまでの間に濃縮した約10キログラムのウラン、すなわち、2キログラムのU-235を含むウランであって原子炉用物質を製造するため日本国政府が雇用する契約者がアメリカ合衆国において製造する同物質に含まれるものを同政府に賃貸することにここに同意する。
合衆国委員会は、さらに、たまたま喪失され又は破壊された相当の量の原子炉用物質の代替に必要な追加量の同位元素U-235を19.5パーセントから20パーセントまでの間に濃縮したウランを日本国政府の要請に基き同政府に賃貸することにここに同意する。

第 2 条
A 合衆国委員会は、前記の原子炉のための原子炉用物質をアメリカ合衆国において製造するため日本国政府が雇用した契約者から同政府が確認した要請を受理した日の後120日以内に、同物質を製造するために必要な量の同位元素U-235を19.5パーセントから20パーセントまでの    ふつ 間に濃縮したウランを、六弗化ウランの形状で、同委員会の施設において同契約者に引き渡すものとする。契約者に対する引渡は、合衆国委員会が同契約者について要求する料金及び条件(原子炉用物質を受領し、かつ、アメリカ合衆国において製造作業を行うために必要な許可を含む。)に従わなければならない。
B 日本国政府及び合衆国委員会は、同政府が雇用する契約者が原子炉用物質を製造する過程において、同政府及び同委員会が選定する分析者によるアメリカ合衆国における分析のため試料を取り出す時点について合意するものとする。その製造された物質の濃縮度は、その分析の結果によって定められる。分析の費用は、日本国政府及び合衆国委員会が均等に分担するものとする。その原子炉用物質の量については、同物質を製造した契約者が日本国政府及び合衆国委員会に証明するものとする。
C 日本国政府が雇用した契約者が前記の原子炉のための原子炉用物質の製造を完了したときは、同契約者は、同政府及び合衆国委員会に対する30日の予告の後、同物質を同委員会が同政府と協議の上指定するアメリカ合衆国内の積出港に送付しなければならない。その場合、合衆 国委員会は、指定港におけるその原子炉用物質の日本国政府への引渡のたゆ及び輸出の実施のため必要な措置を執るものとする。合衆国委員会は、その原子炉用物質をその契約者から日本国へ積み出す費用については、責任を負わない。
D 前記の原子炉用物質に含まれる濃縮ウランの輸出地における日本国政府による受領は、適当な受領証によって証明されるものとする。日本国政府は、その後は、前記の協力のための協定の規定に基くその濃縮ウランの保全並びに同濃縮ウランのあらゆる喪失及び破壊(原因のいかんを問わない。)について並びに健康及び安全の危険に対する保護措置について全責任を負うものとする。
E 日本国政府は、1960年9月30日までに(別段の合意がある場合を除く。)、かつ、いかなる場合にもこの協定が終了した時に、この協定に基いて同政府が賃借した濃縮ウランを含むすべての原子炉用物質を、適当な放射能的冷却の後、合衆国委員会が受諾する健康及び安全の危険に対する適当な保護措置に従って、同委員会が同政府と協議の上指定するアメリカ合衆国内の到着港に同政府の負担において送付するものとする。その場合、合衆国委員会は、その原子炉用物質を再処理するため受領することに同意しないときは(同意したときは、日本国政府は、合衆国委員会に対しその原子炉用物質を同委員会の仕様に合致する六弗化ウラン又は合意される他の形状に再処理するための料金を支払い、かつ、同物質を再処理する同委員会の施設への同物質の輸送の費用を支払うことに同意する。)、同委員会の仕様に合致する六弗化ウラン又は合意される他の形状にアメリカ合衆国において再処理するため日本国政府が雇用する契約者への指定港における同物質の輸入及び引渡に必要な措置を執るものとする。契約者に対する引渡は、合衆国委員会が同契約者について要求する料金及び条件(原子炉用物質を受領し、かつ、アメリカ合衆国において再処理作業を行うために必要な許可を含む。)に従わなければならない。合衆国委員会は、その原子炉用物質を日本国からその契約者へ積み出す費用については、責任を負わない。

第 3 条
 日本国政府は、同政府が原子炉用物質を製造するため雇用する契約者が製造する同物質に含まれる同位元素U-235を19.5パーセントから20パーセントまでの間に濃縮したウランの賃借に対し、次に定める料金の合計金額を次に定める時に合衆国通貨で合衆国委員会に支払うものとする。
(a)この協定に基いて賃借される濃縮ウランであって日本国政府が雇用する契約者が製造した原子炉用物質に含まれるものにつき、同物質に最初に含まれている濃縮ウランの価額の年率4パーセントの使用料。その使用料は、その原子炉用物質が日本国政府に引き渡された日から、
(1)同と物質が、アメリカ合衆国に返還され、かつ、合衆国委員会の仕様に合致する六弗化ウラン又は合意される他の形状への同物質の再処理及び再処理され潅同物質の同委員会への送付のため同政府が雇用する契約者に引き渡される日又は
(2)同委員会がアメリカ合衆国に返還された同物質を再処理のため受領することに同意した場合は、その再処理が完了した時若しくは同委員会がその再処理のため妥当であると決定する期間が満了した時のいずれか早い時までのものとする。
(b)(1)原子炉用物質に最初に含まれ、かつ、この協定に基いて賃借される濃縮ウランの量及び 濃縮度から決定される価額と(2)アメリカ合衆国に返還される同物質に含まれるウランの量及び濃縮度から決定される価額との差に等しい消耗及び濃縮度低下補償の料金。返還される原子炉用物質に含まれるウランの量及び濃縮度は、同物質がアメリカ合衆国に返還された後妥当な期間内に、日本国政府及び合衆国委員会が選定する分析者がアメリカ合衆国において行う同物質の証明された分析の結果又は合意される他の方法によって決定される。その分析の費用は、日本国政府及び合衆国委員会が均等に分担するものとする。
(c)この条の規定の適用上、日本国政府に引き渡されるそれぞれの量の原子炉用物質に含まれる濃縮ウランの価額は、合衆国委員会が設定した各種の濃縮度の同位元素U-235を含むウランの価額の表であって当該物質が同政府に引き渡された時に実施されているものに従って決定されるものとする。アメリカ合衆国に返還されるそれぞれの量の原子炉用物質に含まれる濃縮ウランの価額は、当該物質が日本国政府に引き渡された時に同物質に含まれる濃縮ウランに適用された価額の表に従って決定されるものとする。引き渡され又は返還された原子炉用物質に含まれるウランの濃縮度が価額の表中の二の連続した濃縮度の間にあるときは、当該濃縮度に対する価額は、それらの二の濃縮度の間の直線内挿法によって決定されるものとする。
(d)使用料は、年払いとする。消耗料及び濃縮度低下補償料は、日本国政府が前記の証明された分析の結果を受領した日から30日以内に支払われるものとする。合衆国委員会が返還された原子炉用物質を同委員会の仕様に合致する六弗化ウラン又は合意される他の形状に再処理することに同意したときは、同委員会の再処理料及び同物質の到着港から再処理施設への輸送のため生じた同委員会の費用は、同委員会からそれらの料金及び費用の請求書を日本国政府が受領した日の後30日以内に支払われるものとする。

第 4 条
日本国政府は、この協定に基いて賃借する原子炉用物質に含まれる濃縮ウランの生産若しくは製造、所有、賃借又は占有及び使用から生ずる原因のいかんを問わないすべての責任(第三者に対する責任を含む。)について、その濃縮ウランが合衆国委員会から同政府に引き渡された後は、アメリカ合衆国政府及び同委員会に対しその責任を免かれさせ、かつ、損害を与えないようにするものとする


第 5 条
 アメリカ合衆国議会の議員若しくは準州代表又は同国の属領代表は、同国の法律に従い、この協定のいかなる部分にも、また、それから生ずるいかなる利益にも関与し又は参加することができないものと了解される。

第 6 条
 この協定は、日本国がその国内法上の手続に従ってこの協定を承認したことを通知する日本国政府の公文を合衆国委員会が受領した日に効力を生じ、1955年11月14日に署名された原子力の非軍事的利用に関する協力のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(将来改正され又はこれに代るものを含む。)の期間が満了し、又は同協定が廃棄されるまで効力を存続する。

 以上の証拠として、この協定の当事者は、正当な権限によりこの協定に署名させた。

 1956年11月23日にワシントンで、日本語及び英語により本書2通を作成した。

日本国政府のために
  谷 正之
アメリカ合衆国政府を代表して行動する合衆国原子力委員会のために
  ハロルド・S・ヴァンス
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■立法過程 その4 内定(昭和35年3月)

【立法過程 その4 内定(昭和35年3月)】
原子力災害補償制度の確立について
原 子 力 委 員 会 内 定
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V05/N03/196005V05N03.html
 当委員会は、昭和33年10月29日に「原子力災害補償についての基本方針」を決定したが、その具体策については、さきに原子力災害補償専門部会から答申を受け、検討の結果、下記の内容で原子力災害補償制度を早急に確立する必要があるとの結論に達した。
 なお、原子力事業の従業員の業務上の損害については、別に原子力関係の従業員のための災害補償制度の確立を図ることとした。

1. 目   的
 原子力の核的災害の特異性にかんがみ、原子力損害賠償を保障する制度を確立することにより、万一の場合における第三者の保護を図り、あわせて原子力事業の健全な発達に資することを目的とする。

2.制度適用範囲
(1)原子力事業者
 本制度の対象となる原子力事業者は、原子炉の設置者のほか、再処理核燃料物質の加工および使用等のうち特に定めるものを行なう者を指すものとする。
(2)原子力損害
 本制度の対象となる原子力損害は、原子力事業側の偶発的事故であると否とをとわず、核燃料物質等の特性により生じた損害とし、一般災害を含まないものとする。

3.原子力損害賠償責任
(1)無過失責任
 原子力損害については、その損害を生ぜしめた原子力事業者が無過失責任を負うものとし、不可抗力性の特に強い特別の場合にのみ免責されるものとする。
(2)責任の限度
 原子力事業者の責任の限度額は、損害賠償措置の金額と国家補償額との合計額とする。
(3)責任の集中
 原子力事業者に、第三者に対する原子力損害についての責任を集中し原子力事業者以外の者は責任を負わないものとする。
(4)求 償 権
 原子力事業者との間で燃料の供給、設備の請負等について直接間接の契約関係にある者の故意によって原子力損害が生じたとき、およびこれらの関係のない者の故意または過失によって原子力損害が生じたときは、原子力事業者はこれらの者に対し求償権を有するものとする。ただし、これらの求償権に関し特約をすることを妨げない。

4.損害陪償措置
(1)損害賠償措置の強制
 原子力事業者による損害賠償の確実な履行を確保するため、一定の損害賠償措置を講じていなければ、原子力事業の操業を行なわしめないこととする。
(2)損害賠償措置の内容
 損害賠償措置は、原子力損害賠償責任保険、供託その他これらに相当する措置によって、現在の段階では1工場または1事業所あたり50億円とし、小規模のものについてはこの金額を低めるものとする。
(3)原子力損害賠償責任保険
 損害賠償措置として認められる責任保険のてん補すべき危険の範囲は原子力事業者の原子力損害賠償責任を可能なかぎりカバーするものとする。

5.国 家 補 償
(1)損害賠償措置の金額までの原子力損害が発生した場合において、損害賠償措置によっては損害賠償が行なわれないときは、政府は原子力事業者に対し、損害賠償に要する金額を交付し、第三者に対し賠償せしめる。
(2)損害賠償措置の金額を超える原子力損害が発生した場合においては、政府は原子力事業者に対し、財政事情の許す範囲内において、その超える部分の金額を交付し、第三者に対し賠償せしめる
(3)補 償 料
 原子力事業者は、一定の基準による補償料を政府に対し納付するものとする。
(4)政府の返還請求権
(1)、(2)の場合には、原子力損害の発生について原子力事業者に故意があるときにのみ、政府は返還請求権を有するものとする。
(5)国家補償の適用期間
 国家補償は、昭和46年末までに事業の許可を受けた原子力事業者に対して適用する。

6.原子力損害賠償処理機関
 原子力損害が生じた場合には、特別の賠償処理機関を設置して、原子力損害の調査を行なうほか、国家補償の場合にあっては原子力損害の評価および原子力損害賠償に関する紛争の処理を行ない、原子力損害賠償責任保険により損害賠償が行なわれる場合にあっては保険のてん補すべき額に関し裁定する等、第三者に対する損害賠償が公正かつ迅速に行なわれるよう配慮するものとする。
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■立法過程 その2 審議経過(昭和33年11月~34年11月)

【立法過程 その2 審議経過(昭和33年11月~34年11月)】

原子力災害補償専門部会
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V04/N02/19590206V04N02.html

第1回(昭和33年11月25日(火)10.00~12.30)
議  題
1.部会長の決定
2.部会長代理の指名
3.原子力災害補償問題海外調査員調査事項
4.IAEA会議に関する意見交換
5.今後の運営方針
議事内容
 原子力災害補償専門部会の設置理由ならびに審議事項について事務局から説明があり、現行の原子炉等規制法による原子炉等設置許可の手続および許可基準と事故時における災害補償との関係ならびに10月29日原子力委員会決定の原子力災害補償についての基本方針について質疑がおこなわれ、審議事項の内容が明らかにされた。なお原子力災害補償問題海外調査員派遣要領、IAEAの補償問題専門家会議の開催等につき報告があった。

第2回(昭和33年12月16日(火)10.00~12.40)
議  題
1.今後の運営方針
 イ)日本原子力産業会議原子力補償問題特別委員会について
 ロ)原子力保険プール結成準備委員会について
 ハ)原子力に関する法律問題について
2.原子炉等規制法一部改正について
議事内容
 今後の運営方針決定の参考とするため、従来調査研究をおこなってきた日本原子力産業会議原子力補償問題特別委員会、保険約款等の立案審議をおこなってきた原子力保険プール結成準備委員会および文部省科学研究費を受けて研究を進めている東京大学法学部の原子力に関する法律問題についてそれぞれ担当者から活動状況、今後の進め方等について説明があり、また事務局から原子炉設置者に災害補償のための措置を講ぜしめることを目標とする原子炉等規制法一部改正案について報告があった。

第3回(昭和34年1月29日(木)13.40~17.00)
議  題
(1)原子力保険プール結成について
(2)原子炉災害について
(3)原子炉等規制法の改正について
議事内容
 現在結成準備中の原子力保険ブールの業務内容、特に原子力賠償責任保険普通保険約款案について逐条説明があり、原子炉等規制法の改正との関係、事故後における保険金額復元の問題等について討議が行われた。次いで原子炉安全審査専門部会部会長矢木栄専門委員から原子炉災害について、主として原子炉の技術的安全性の側面から災害の様相、発生の確率ならびに過去の実例等について説明があった。原子炉等規制法の改正については政府部内における意見調整の問題点およびその解決見通し等につき説明があり、法律に付随する政令の内容等については今後専門部会で固めていくこととした。

第4回(昭和34年2月17日(火)10.00~12.30)
議  題
 原子力災害補償問題海外調査員報告、その他議事内容
 欧米各国における原子力災害補償問題について調査した海外調査員から各国の補償制度ないしその案ならびに原子力保険の動向等について調査結果の報告があり、fiancial protectionと国家補償との関係、再保険と関連する各国の保険約款の内容等について質疑が行われた。
 次いで原子炉等規制法の改正について国会に上堤された最終案につき報告があった。
 なお今後の専門部会の運営方針として原子力保険、国家補償、法制問題の3点の審議を進めることとし、とりあえず規制法改正点の実質的内容をなす原子力保険の約款案を取り上げることとなった。

第5回(3月6日(金)10.00~12.30)
議  題
原子力賠償責任保険普通保険約款案について
配布資料
(1)原子力賠償責任保険普通保険約款解説書
(2)英国原子力施設(許可および保険)法案仮訳
(3)原子力の分野の第3者責任に関する協定(案)
(4)第4回議事録
(5)各国原子力災害補償立法制度一覧
(6)西独原子力の平和利用およびその危険に対する防護に閑する法律案
(7)スイス原子エネルギーの平和利用および放射線に対する保護に関する連邦法案
議事内容
 事務局幹事から配布資料の説明があり、次いで島村調査官から原子炉等規制法一部改正法等の国会審議状況について説明があり、原子力賠償責任保険普通保険約款の審議に入り、民間保険と国家補償との関係、地震の問題、バックグラウンドの問題の意見が出され、次回に引き続き審議することとなった。

第6回(3月19日(木)10.10~15.10)
議  題
(1)第1回原子核災害に対する民事責任および国家責任に関する専門家会議について
(2)原子力賠償責任保険普通保険約款(案)について議事内容
 第1回原子核災害に対する民事責任および国家責任に関する専門家会議(IAEA)に出席した長崎専門委員から会議の模様について報告があり、次いで原子力賠償責任保険普通保険約款の逐条審議に入り、特別立法の問題、運送危険の問題、原子炉事故の問題、保険金額復元方式の問題等について討議が行われた。

第7回(4月16日(木)10.00~12.30)
配布資料
(1)核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律に対する付帯決議
(2)西独原子力保険プールによるドイツ連邦共和国大蔵大臣宛陳情抜粋
(3)第6回原子力災害補償専門部会議事録
議事内容
 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律の公布に至るまでの経過報告が事務局から説明された。次いで原子力賠償責任保険普通保険約款案の問題点に関する見解を損保側専門委員から述べられ、検討を行った。それらの問題点は保険料、輸送、 Occurence base、公権の命令、復元、地震、時効、告知義務違反等であった。

第8回(5月14日(木)10.10~12.10)
議事内容
 前回に引き続き原子力賠償責任保険普通保険約款案について討議を行った。

第9回(5月29日(金)10.00~12.00)
配布資料
(1)原子力賠償責任保険普通保険約款案審議の要約(案)
(2)部会の審議事項(案)
(3)放射能調査の展望
(4)原子力委員会参与会、専門部会名簿
(5)第8回原子力災害補償専門部会議事録
(6)英国保険委員会回答文
議事内容
1.英国委員会からの回答について
 資料により逐次説明を行った。
2・原子力賠償責任保険普通保険約款案審議の要約について
 内容について審議し、字句の修正等を行った。
3.本部会の運営方針について
 資料により討議を行い、次回までに星野委員と幹事が相談の上、審議方法を考慮することとなった。

第10回(6月18日(木)10.00~15.00)
議事概要
 原子力賠償責任保険約款審議の要約について事務局幹事から前回審議の修正点および英国側の盛り込んだ修正点の説明ののち審議を行った。また当専門部会の今後の審議事項について討議を行い、最後にIAEA専門家会議の報告があった。

第11-13回(7月13日(月)~15日(木)9.30~12.00)
議事経過
 星野委員から「原子力災害補償専門部会審議事項(法律関係)の問題点および試案」について説明があり、特別立法を行なう場合の法律上の問題点-主として民法の不法行為責任との関連について意見の交換が行なわれた。すなわち、国家補償の必要の有無およびその根拠、無過失責任を採用すべきか否か、無過失責任を採用した場合に天災、戦争等について一定の免責事由を認めるべきか否か、設置者の責任を一定額に制限すべきか否か、責任を設置者に集中すべきか否か、因果関係の立証について特別の規定を置くべきか否か等である。
 討議の結果、細部については若干の意見の相違はあったが、原則的には意見の一致がみられた。

第14回(9月17日(木)10.00~12.00)
議事経過
(1)原子力局から昭和34年4月2日公布「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を改正する法律」の施行に必要な同法施行令(案)(損害賠償措置の基準を定めることが中心)を提出し、各委員の意見を聞いた。
(2)星野委員から前回の部分の討議の結果を基とした「原子力損害賠償保障法案要綱」について説明があった。本案は国家の関与の方法として、(1)国家再保険、(2)国家補償、(3)国家補償契約の3種に大別できるが、それらについては次回の部会で討議することとした。

第15回(10月1日(木)10.00~16.00)
議事概要
 前回に引き続き「原子力損害賠償保障法案要綱」について審議した。国家の関与の方式について種々議論があったが、国家再保険方式はその元受保険たる民営保険について、てん補範囲、告知義務違反の場合の解除権等について、従来の保険の原則を著しく修正しなければ被害者の保護を図りえないこと、また政府との補償契約については、結局契約強制となり、契約といっても強制にすぎない等の理由から国家補償によるのが最も適当であるとの結論に達した。
 国家補償については、保険等により設置者等が講ずる損害賠償措置を超過する部分のみならず、保険によりてん補されない損害についても行なうのを適当とした。
 また国家補償を行なう場合、これを有償とすべきか否かについても議論はあったが、特に無償とする理由はなく、有償とするのを適当とした。
 今回の審議を基として、「原子力損害賠償保障法案」を作成し、次回からこれを審議することとした。

 第16回、第17回(10月27日(火)、11月17日(火)10.00~16.00)
〔議事概要〕
 第15回までの審議を基にして作成した原子力損害賠償保障法案(仮称)について審議した。主として問題となったのは(1)無過夫責任を認めるとした場合において、いかなる範囲および表現不可抗力の免責を認めるべきか、(2)一定の免責を認めた場合において、事業者が免責される事故による損害について、国家補償を行なうべきか、(3)責任集中を行なう場合、求償権についていかなる規定を行なうべきか、(4)責任保険について締約強制、てん補範囲、保険金額の復元の問題、(5)国家補償については有償とするが、その性格、形式をいかにするか、(6)損害賠償処理委員会の性格、任務をいかにするか等であった。
 審議の結果、だいたいの意見の一致をみたので、我妻、鈴木、星野、竹内各委員からなる小委員会において、これを基として、本専門部会の答申案を作成し、次回(12月1日)の専門部会に付議することとした。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V04/N02/19590206V04N02.html
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■立法過程 その1 基本方針(昭和33年10月)

【立法過程 その1 基本方針(昭和33年10月)】
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V03/N11/195801V03N11.HTML原子力委員会
原子力災害補償についての基本方針の決定

 原子力災害補償の問題は、かねてからその重要性が指摘され、原子力委員会でも検討が進められていたが、このほどその基本方針が決定し、また専門部会の設置、調査員の派遣も決定された。また動力炉調査専門部会も設置がきまり、これで合計11の専門部会がおかれることとなり、委員会の強化が行われた。いっぽう英国から原子力公社の理事コッククロフト卿が来日し、また米国原子力委長のグレアム氏も来訪するなど、わが国原子力をめぐる国際間のうごきも活発となっている。
 原子力委員会においてはかねてから原子力災害補償について検討をかさねていたが、10月29日開催の第41回定例会議において「原子力災害補償についての基本方針」を一部字句修正の上採択した。またこれに関連して原子力災害補償専門部会の設置も別項のように設置が決定された。

原子力災害補償についての基本方針
昭和33年10月29日 原子力委員会
 原子炉等による万一の重大な核的災害に基く第三者の損害賠償の問題については、原子炉設置者等が所要の賠償能力を具備することが可能となり、同時に被害者たる第三者に対して正当な補償を適確に行えるような体制を確立し、原子力に携る事業者及び第三者の不安を除去することをもって、その基本方針とする。このため、下記のような方針をとることとする。
 記
(1)原子炉設置者等が原子炉の運転等を行うに当っては、それによる災害に基く損害を賠償する相当の能力を具備することを必要とするよう、所要の措置を講ずる。
(2)(1)の能力を実質的に具備できるようにするため、現行保険業法に基く原子力責任保険の実現を促進し、原子炉設置者等が当該原子力責任保険に加入することを可能ならしめる。
(3)さらに、損害賠償に関する種々の問題を解決するため、諸外国の動向を参酌の上、民営の原子力責任保険を主体とする原子力災害賠償補償制度の確立を図る。
(4)以上の措置のみで不十分な問題がある場合には、国家補償の問題を含めてその解決策につき更に検討する。
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■立法過程 その3 答申(昭和34年12月)

【立法過程 その3 答申】
 以下は,原賠法成立前の昭和34年12月,原子力災害補償専門部会長我妻栄から,原子力委員会委員長中曽根康弘にあてられた,答申書である。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/ugoki/geppou/V04/N12/19591206V04N12.html


-------------------------------------
原子力災害補償専門部会の答申
 原子力災害補償専門部会は昨年10月22日付で原子力委員会から原子力賠償責任、原子力責任保険、その他国家補償等の問題について審査を求められた結果、12月12日付で原子力委員会委員長に次のとおり答申した。
昭和34年12月12日  

原子力委員会委員長
中曽根康弘殿
原子力災害補償専門部会長    
我妻栄 

 本部会は、昭和33年10月22日付で審査を求められた原子力賠償責任に関する問題、原子力責任保険の問題その他国家補償等の問題について、18回にわたる審議を重ね、かつ数回の小委員会を開いて結論を得たので、次のとおり答申する。

 原子力事業は、いうまでもなく、学術上および産業上きわめて大きな利益をもたらすと同時に、万一事故を生じた場合には、その損害の及ぶところは測り知ることのできないものである。しかも、その運営に関しては、科学上未知の点が少なくないといわれている。したがって政府が諸般事情を考慮してわが国においてこれを育成しようとする政策を決定した以上、万全の措置を講じて損害の発生を防止するに努めるべきことはもちろんであるが、それと同時に万一事故を生じた場合には、原子力事業者に重い責任を負わせて被害者に十分な補償をえさせて、いやしくも泣き寝入りにさせることのないようにするとともに、原子力事業者の賠償責任が事業経営の上に過当な負担となりその発展を不可能にすることのないように、適当な措置を講ずることが必要である。
 上記のことは、諸外国において進められている立法作業においても例外なく認められている原理である。本専門部会は、これらの立法作業の内客とこれに関連する研究を詳細に検討し、あわせてわが国の事情を考慮し、上記の原理を次のような仕組によって実施することが適当と考えた。
 第1に、原子力事業者は、その事業の経営によって生じた損害については、いわゆる責に帰すべき事由の存在しない場合にも賠償責任を負うべきである。けだし、近代科学の所産たる不可避の危険を包蔵する事業を営もうとする者は、よって生ずる損害については故意過失の有無を問わず賠償責任を負うべし、とすることは、今日ではすでに確立された原則であり,交通事業等についてはすでに広く適用されていることだからである。
 第2に、原子力事業を営むにあたっては、一定金額までの供託をするかまたは責任保険契約を締結する等の損害賠償措置を具備することを条件とすべきである。このことは原子力事業者の損害賠償義務の履行を確保することを第1の狙いとするものであるが、責任保険の方法による場合には、万一の場合に生ずる巨額の賠償責任を毎年支払う保険料に転化することによって原子力事業の合理的経営を可能ならしめるものである。
 第3に、損害賠償措置によってカバーしえない損害を生じた場合には国家補償をなすべきである。損害賠償措置はそれによって確保される金額に限度があるだけでなく、現実の問題としては、種々の理由によって賠償義務の履行の確保として不十分な場合を生ずることを否定することができないが、かような場合には政府が補償を行ない、被害者の保護に欠けるところがないようにしなければならない。ただし、国家補償を行なうについては、原子力事業者からあらかじめ適当な補償料を徴収すべきのみならず、場合によっては補償 した全額を原子力事業者から求償することにして、原子力事業者の責任と政府の原子力事業の助成政策との 調和を図らなければならない
 なお、本部会は、損害賠償措置の実際上の中心となる責任保険については原子力保険プールの作成にかかる数次の保険約款を逐一検討し、できるだけ多額かつ完全な責任保険の実現を目指して努力を重ねたが、外国の保険会社に対する再保険引受の折衝の必要等の障害のため、まだ最終的に約款の確定をみるに至っていない。しかし、基本的な方向はすでに明らかになったと考えるので、その線に沿って今後も努力を続けるよう期待する。
 以下、損害賠償責任、損害賠償措置,国家補償、賠償処理委員会の順序で大綱を述べる。
 なお、この答申については、大蔵省主計局長石原周夫委員が3および4の項について、銀行局長石野信一委員が2項の(2)のうち「損害賠償措置として認められる責任保険契約の内容は、政令で定めることとする」の部分および同項の(3)のうち責任保険契約の締結の拒絶に関する適当な措置の部分について、それぞれ態度を保留したことを付記する。

1.原子力損害賠償責任
(1)原子力事故による原子力損害については原子力事業者が無過失責任を負うものとし、きわめて特別の場合にのみ免責されるものとする。ただし、この特別の場合は通常「不可抗力」と呼ばれるもののすべてに及ぶのではなく、そのうちでもいわば不可抗力性の特に強いものに限るべきであるから、たとえば「異常かつ巨大な自然的または社会的災害」というなどこの内容を適確に表現する努力のなされることが望ましい。
(2)無過失責任を負担する「原子力事業者」とは、原子炉の設置者のほか、加工、再処理、核燃料物質の使用等原子力損害を生ずる危険性のある事業を行なう者のうち政令で定めるものを指すものとする。
(3)無過失責任の対象となる「原子力損害」とは、核燃料物質等の放射性、爆発性その他の有害な特性によって第三者のこうむった損害を指し、一般災害による損害を含まないものとする
(4)「原子力事故」とは、偶発的事故のみでなく、広く原子力損害の発生原因となったすべての出来事や状態をいう。したがって、常時運転による放射能の緩慢な累積をも含む。
(5)「原子力事業者」に、被害者である第三者に対する責任を集中し、それ以外の者はこれらに対する責任を負わないものとする。ただし原子力事業者との間で燃料の供給、設備の請負等について直技間接の契約関係にある者の故意または重大な過失によって原子力事故が生じたとき、およびこれらの関係のない第三者の故意過失によって原子力事故が生じたときは、原子力事業者は、これらの者に対し求償することができるものとする。

2.損害賠償措置
(1)原子力事業者による損害賠償の確実な履行を確保するため、法律の定める一定の損害賠償措置を具備しなければ、原子力事業の操業を行なわしめないこととすべきである。
 この損害賠償措置は、民営の原子力損害賠償責任保険を中心とするが、供託その他これらに相当する措置によってこれに代えまたはこれを補うことを認めるのが妥当であろう。その額は現在の段階では1工場または1事業所あたり50億円とし、小規模のものについては、例外的にこの金額を低めるのが妥当である。しかし,将来は民営保険の引受能力等を考慮して上記の最低限度額を引き上げ、それによって国家補償のになうべき役割を民営責任保険を中心とする損害賠償措置に順次移していくことが望ましい。
 損害賠償措置の金額が損害の発生によって減少し、将来発生する事故による損害賠償措置として不十分になったと認められる場合には、政府は事業者に対しその補充を命ずることができるものとすること。
(2)損害賠償措置として認められる責任保険契約の内容は、政令で定めることとする。填補すべき危険の範囲については、コンプレヘソシブ・ライアビリティ方式が理想であることはいうまでもないところであって、そのような保険を実現するよう努力を続けるべきであるそれとともに、保険者による契約解除はその者の通知後一定期間経過後にのみ効力を生ずることとし、通知義務違反、保険料支払の慨怠等の事由による保険者の免責についても約款に適当な規定を加えるとともに、保険契約の締結・履行について適切な行政的監督を行ない、事故発生後に法の期待に反して保険金の支払を受けえないような事態が生ずるのを防止する必要がある。
(3)原子力事業は慎重な審査に基づいて許可され、かつその運営についても厳重な監督が行なわれるものであるから、保険者が正当な理由がないのに責任保険契約の締結を拒絶することのないように適当な措置を講ずることが望ましい。なお、保険料率は合理的な利潤を含めて適正な額とするよう行政的規制の方法を確保すべきである。

3.国 家 補 償
(1)原子力事業者の要求される損害賠償措置では損害賠償義務を履行しえない万一の場合には、原子力事業者に対して、国家補償をする必要がある
(2)国家補償は次の三つの場合に行なわれる。
 第1は、責任保険契約に関し告知義務違反等の瑕疵があるために法律上要求される損害賠償措置が不十分であった場合である。この場合には事業者みずから賠償すべきことは当然であるが、被害者の保護に欠けるところがあると認められる場合には、一応国家補償をした上で政府が事業者に求償することとする。
 第2は、責任保険契約で填補されない危険によって損害が生じたため保険金の支払を受けえない場合である。コンプレヘソシブ・ライアビリティ方式の採用によってかような場合を生じないように努力すべきこと上記のとおりであるが、現在の段階では、国家補償を行なって被害者の保護に万全を期するとともに工作物の設量、保存に瑕疵があったために事故が生じたと認められる場合にかぎり、政府が事業者に求償することができるものとすることが妥当であろう。
 第3は、損害賠償措置をこえる損害が生じたときにその超過額について国家補償を行なう場合である。この場合には、損害の発生について原子力事業者に故意または重大な過失があるときにのみ、政府は求償権を有するものとする。
(3)国家補償については、原子力事業者に政令で定める基準により補償料を納付せしめる。その額については、原子力事故とりわけ損害賠償措置の額をこえるごとき損害を生ぜしめるような大事故の生ずるおそれがきわめて少ないことを考慮した上で、政府は、原子力産業の発展に関するその政策的立場から妥当な基準を定めるべきである

4.原子力損害賠償処理委員会
 原子力損害が生じた場合には、行政委員会を設けてその調査損害賠償の支払計画、支払方法の樹立およびその実施ならびに損害賠償に関する紛争の処理を行なうこととする。そしてこの委員会の行なった裁決に対する不服については、高等裁判所に対する不服の訴のみを認める等特別の措置を講ずるべきである。
------------------------------------

上の答申書で重要ポイトンとしては

・立法趣旨 概ね 原賠法に反映
「 政府が諸般事情を考慮してわが国においてこれを育成しようとする政策を決定した以上、万全の措置を講じて損害の発生を防止するに努めるべきことはもちろんであるが、それと同時に万一事故を生じた場合には、原子力事業者に重い責任を負わせて被害者に十分な補償をえさせて、いやしくも泣き寝入りにさせることのないようにするとともに、原子力事業者の賠償責任が事業経営の上に過当な負担となりその発展を不可能にすることのないように、適当な措置を講ずることが必要である」

・原子力事業者の無過失責任については,危険責任の法理が前提とされている。
「第1に、原子力事業者は、その事業の経営によって生じた損害については、いわゆる責に帰すべき事由の存在しない場合にも賠償責任を負うべきである。けだし、近代科学の所産たる不可避の危険を包蔵する事業を営もうとする者は、よって生ずる損害については故意過失の有無を問わず賠償責任を負うべし、とすることは、今日ではすでに確立された原則であり,交通事業等についてはすでに広く適用されていることだからである。」

・原賠法の3条1項の損害責任に反映
「(1)原子力事故による原子力損害については原子力事業者が無過失責任を負うものとし、きわめて特別の場合にのみ免責されるものとする。ただし、この特別の場合は通常「不可抗力」と呼ばれるもののすべてに及ぶのではなく、そのうちでもいわば不可抗力性の特に強いものに限るべきであるから、たとえば「異常かつ巨大な自然的または社会的災害」というなどこの内容を適確に表現する努力のなされることが望ましい。」
→1項但書について「不可抗力性の特に強いものに限るべき」と意見

・原子力損害の意味範囲 原賠法2条2の意味・範囲 一般災害による損害を含まないとしており,「原子力損害」の外側の損害がありうることを前提としている。
「(3)無過失責任の対象となる「原子力損害」とは、核燃料物質等の放射性、爆発性その他の有害な特性によって第三者のこうむった損害を指し、一般災害による損害を含まないものとする。」

・責任集中の原則 原賠法4条 この答申書では,故意又は過失を前提に,原子力事業者から,他の取引業者への求償を認めている。←重要(現行法は5条で故意の場合のみ求償可)
「(5)「原子力事業者」に、被害者である第三者に対する責任を集中し、それ以外の者はこれらに対する責任を負わないものとする。ただし原子力事業者との間で燃料の供給、設備の請負等について直技間接の契約関係にある者の故意または重大な過失によって原子力事故が生じたとき、およびこれらの関係のない第三者の故意過失によって原子力事故が生じたときは、原子力事業者は、これらの者に対し求償することができるものとする。」

・なお,この答申にある以下のような,限定責任論については立法段階では採用されなかった。詳細はこちら
「原子力事業者の要求される損害賠償措置では損害賠償義務を履行しえない万一の場合には、原子力事業者に対して、国家補償をする必要がある」


2011-04-07 : ・立法過程資料 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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