東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- : スポンサー広告 :
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その14 「社会的動乱」とは

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その14 「社会的動乱」とは


 まず,条文の読み方としては,「異常に巨大な天災地変」又は「社会的動乱」が素直な読み方であって,「異常に巨大な天災地変」又は「異常に巨大な社会的動乱」という前提ではないだろう。OECDのパリ条約を見ても「a grave natural disaster of an exceptional character」がひとかたまりで,an act of armed conflict, hostilities, civil war, insurrectionと並列で扱われている。


 「社会的動乱」の意味,解釈については,以下の通り。

---------------------------
●ジュリスト1961年10月15日号17頁(No.236)【特集】原子力損害補償 原子力災害補償をめぐって(座談会)我妻栄,鈴木竹雄,加藤一郎,井上亮,福田勝治,堀井清章,長崎正造,杉村敬一郎

井上 なおこの「社会的動乱」という言葉は,一応戦乱と内乱だけを考えています。これは専門部会でも大体そういう御意見でありました。

---------------------------
●昭和37年9月10日初版 科学技術庁原子力局監修「原子力損害賠償制度」46頁
(9)社会的動乱も、質的、量的に異常に巨大な天災地変に相当する社会的事件であることを要する。戦争、海外からの武力攻撃、内乱等がこれに該当するが、局地的な暴動、蜂起等はこれに含まれないと考えられる。

---------------------------
●38-衆-科学技術振興対策特別委…-9号 昭和36年04月12日
昭和三十六年四月十二日(水曜日)
   午後一時三十三分開議

○齋藤(憲)委員 それでは、その次に一つお尋ねを申し上げておきたいのでございますが、それは、第三条第一項のただし書きでございます。「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない。」すなわち、異常に巨大な天災地変または社会的動乱によって生じたところの、原子炉の運転等の際に起こった損害に対しては賠償の責めを負わないでよろしい、こういうふうに規定されておるのでございますが、異常に巨大な天災地変というものは、一体どういうことを意味しておるのか、また、社会的動乱によって損害の賠償が免除されるということは、一体どういうことを意味するのか、これを一つ具体的に御説明をお願いいたしたいと思います。
○池田(正)国務大臣 異常な事態と申しますと、大地震でありますとか、たとえば、関東大震災といったような場合、あるいは大震災以上のもの。また、社会的な動乱とは、どういう表現をしたらいいですか、国家的に重大な不幸な事態とでもいいましょうか、われわれが予測されないような重大な不幸な事態が起こった場合、こういうふうに私どもは解釈いたしております。

---------------------------
●55-衆-内閣委員会-6号 昭和42年05月12日
昭和四十二年五月十二日(金曜日)
    午前十時三十六分開議

○大出委員 社会的動乱、それから異常な天災地変とは、たとえばどういうものをさすのですか。
○村田政府委員 これはいわば国全体が非常に大きな天災地変、先ほどお話がございましたが、大地震であるとかそういうことのためにいろいろ災害が生じましたときには、現在国あるいは地方自治体がいろいろめんどう見ることをいたしておりますが、国として、直接この原子力損害とかなんとかということにかかわらず、当然国民を守るために何らかの措置をしなくちゃならぬようなそういう事態をさしておるということであります。社会的動乱というのは、このことばだけではっきりしませんが、たとえば戦乱の中に巻き込まれるというようなことも含まれるものと思います。

---------------------------
●65-衆-科学技術振興対策特別委…-4号 昭和46年02月26日
昭和四十六年二月二十六日(金曜日)
    午後三時二十分開議

○近江委員 それから、損害賠償責任の集中の問題ですが、この原子力船にかかる場合をお聞きしたいと思うのですけれども、この原子力船における「異常に巨大な天変地変又は社会的動乱」というのは、具体的にどういうことをさすのですか。
○梅澤政府委員 原子力船にかかわります損害賠償責任の免責につきましては、原子力船が戦争あるいは内乱等に巻き込まれた場合は該当いたします。ただ、陸上の炉の場合には、いわば大地震とかいう場合の免責のことがございますが、船の場合には、津波、台風、たつまき等に遭遇した場合、大体これは国際関係から見まして、普通の場合、異常という形になりません。もちろん、とんでもない異常に巨大な天災ということがあり得るかもしれませんが、現在のところでは、そういうものは異常の範囲内には入らないというふうに考えております。

---------------------------
●第3回原子力損害賠償制度専門部会議事要旨(案)
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo04/siryo1.htm
1.日時     平成10年9月11日(金)
         午前10:00~12:00
2.場所     科学技術庁 第7会議室(通産省別館9階)

(事務局)社会的動乱とは戦争、内乱等をいい、異常に巨大な天災地変とは別概念である。

---------------------------



だいたい「社会的動乱」とは,戦争又は内乱等ということだろう。

・「戦争」は交戦状態に入るだろうから,その状態からある程度明白かもしれない。

・「内乱」は,行為者の主観の問題や,暴動等の程度の問題があって,曖昧である。
 刑法77条では,「国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する」とあり,ここでいう「内乱」にもこの刑法の内乱罪のような目的が必要か否か。
 また「原子力損害賠償制度」初版46頁では,前記のように「局地的な暴動、蜂起等はこれに含まれない」とあるが,内乱目的で原発1サイトを狙うテロなどは,局地的ともいえるので,その場合はどうなるのか。


スポンサーサイト
2011-08-04 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その13 「過失」「瑕疵」「不可抗力」「強い不可抗力」の関係

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その13 「過失」「瑕疵」「不可抗力」「強い不可抗力」の関係


 現在の下級審判例では,「原子力損害」については,民法の不法行為規定(民法709条以下,民法717条の土地工作物責任も含む)は適用排除されるが,「過失」「瑕疵」「不可抗力」「強い不可抗力(超不可抗力)」との関係が,理論的には,どうなっているのか検討してみる。

---------------------------------
●民法
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
2  前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
3  前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

●原賠法
(無過失責任)
第三条  原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるときは、この限りでない。
2  前項の場合において、その損害が原子力事業者間の核燃料物質等の運搬により生じたものであるときは、当該原子力事業者間に特約がない限り、当該核燃料物質等の発送人である原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。
---------------------------------



〔まず,民法709条の「過失」と土地工作物責任(民法717条)「瑕疵」との関係〕

ア説 客観説(判例・通説)
 「瑕疵」とは,工作物が、その種類に応じて、通常有すべき安全性を欠いている状態をいう(占有者の責任は中間責任,所有者の責任は無過失責任。「瑕疵」≠「過失」)。

イ説 義務違反説
 「瑕疵」とは,占有者・所有者の設置・保存の安全確保義務違反(なお,義務違反説でも,「瑕疵」=「過失」のように考える立場と,「瑕疵」≒「過失」とする立場がある。)


 判例・通説の客観説を前提にすると,自然災害のような外在的危険との関係では、「瑕疵」は,その工作物の種類に応じ,通常予想される危険に対して,通常有すべき安全性が欠如していたか否かで判断されることになる。



〔「瑕疵」と「不可抗力」の関係〕土地工作物責任について

 通常予想される危険と,通常有すべき安全性との関係は,論理的には以下のようになろう。

1 通常予想される危険(通常予想される自然災害等)発生
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →理論的には事故は起きない。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた(運良く起きないこともある)。
  ※土地工作物責任負う。

2 通常の予想を超えた危険(通常の予想を超える自然災害)発生
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →事故が起きた(運良く起きないこともある)。
  ※「瑕疵」がない以上,要件充たさず、土地工作物責任負わない。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた(運良く起きないこともある)。
  ※「瑕疵」がある以上,原則として土地工作物責任負うが,「瑕疵」があってもなくても同一結果が生じた,あるいは,その事故が「瑕疵」とは無関係に生じた場合は,因果関係なしとして,又は,「不可抗力」によるものとして免責?


 上の1のように考えると,通常予想される自然災害で、損害が発生した場合は、理屈の上では、通常有すべき安全性の有無を問うまでもなく、当然に「瑕疵」ありとなる?。なぜなら、通常有すべき安全性を備えている以上、通常予想される災害がきたとしても、損害が発生するはずがないからである。〔ただし「通常有すべき安全性」を備えている場合が、かならずしも「通常予想される危険に耐えられる状態」とは言えないと考えるなら、また別の可能性あり。〕

 結局、「通常有すべき安全性」の有無が問題となるのは、理屈の上では、上の2の「通常の予想を超える災害」が発生したような場合のみということになるのか?。

 また、土地工作物責任で「不可抗力」免責が問題となるのは,上の2bのような,施設に「瑕疵」があり,かつ,通常の予想を超える災害が発生した場合のみということになろうか。「瑕疵」が無い場合は、「不可抗力」を問題とするまでもなく、土地工作物責任は生じないからである。

※客観説に立って、「瑕疵」は,その工作物の種類に応じ,通常予想される危険に対して,通常備えているべき安全性が欠如していたか否かで判断するとしても、「通常予想される危険」を予見可能性、「通常有すべき安全性」を結果回避可能性ととらえると、ほとんど義務違反説と同様の思考過程に至る。この結果回避可能性の中に、物理的技術的な回避可能性のみならず、経済的制約を読み込むべきかという点で、差が出るのか?。

 
 単純に、思考経済を考えると、

1 まず、事故結果の有無。

2 発生した自然災害が通常予想されるものであるか否かを判断し、そうであるなら、当然に「瑕疵」ありとして、土地工作物責任負う。

3 通常予想される自然災害を越えるものであったら、「通常予想される危険に対して,通常有すべき安全性」を備えていたかを判断し、備えていたなら「瑕疵」がないので、土地工作物責任負わない。

4 備えていない場合は、「瑕疵」ありとなり、原則として土地工作物責任負うが,「瑕疵」があってもなくても同一結果が生じた,あるいは,その事故が「瑕疵」とは無関係に生じた場合は,因果関係なしとして,又は,「不可抗力」によるものとして免責?


※結局、「不可抗力」性の判断は、通常予想される危険を越えるもので〔予見可能性〕、かつ、「瑕疵」の有無にかかわらず、同一結果がもたらされるような場合〔結果回避可能性〕といえるか否かで判断することになる?。



〔「不可抗力」と「強い不可抗力」との関係〕

 原賠法3条1項での原子力事業者の責任については,施設の「瑕疵」すら要件とされない上に,立法過程での議論や,条文の「異常に巨大な」という表現から,1項但書の免責事由は,通常の不可抗力ではなく,特に強い不可抗力,いわば超不可抗力のみを意味するものと理解される。

 そこで,前記と同様に考えてみると


1 通常予想される危険(通常予想される自然災害等)発生
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →理論的には事故は起きない。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた。
  ※土地工作物責任の要件すら満たすのだから,原賠法の責任は当然負う。

2 通常の予想を超えた危険(自然災害)発生(ただし,強い不可抗力「異常に巨大」とはいえない場合)
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →事故が起きた。
  ※原賠法上「瑕疵」は要件ではなく,強い不可抗力ではないから免責はなく,責任負う。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた。
  ※2aと同様,強い不可抗力ではない以上,免責はなく,原賠法の責任負う。

3 通常の予想をはるかに超えた,異常に巨大な自然災害発生(「強い不可抗力」)
 a 施設が通常有すべき安全性を有していた。「瑕疵」なし
  →事故が起きた。
  ※「強い不可抗力」の場合で,原賠法3条1項但書によって免責。
 b 施設が通常有すべき安全性を欠いていた。「瑕疵」あり
  →事故が起きた。
  ※「瑕疵」が作用して,その結果をもたらした場合は,避けえた損害であり,強い不可抗力によって生じたものとは言えず免責なし?。「瑕疵」があってもなくても同一結果が生じた場合は,「強い不可抗力」によるものとして免責。こちらで論じた「過失」の競合と同様の問題。


※「不可抗力」と「強い不可抗力」は程度の問題だから、前記のとおり、「不可抗力」性の判断は、通常予想される危険を越えるもので〔予見可能性〕、かつ、「瑕疵」の有無にかかわらず、同一結果がもたらされるような場合〔結果回避可能性〕といえるか否かで判断することになると考えるなら、結局、「強い不可抗力」は、予見可能性と結果回避可能性を判断する際に可能性を緩く認める〔相当低い場合でも各可能性あり〕という方法で認定していくことになろうか。前にこちらで触れた。


--------------------------------------


2011-07-31 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その12 立法技術

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その12 立法技術


〔立法時の考え方〕
 原賠法成立以前の昭和34年のジュリストに,立法にも携わった加藤一郎教授の以下のような論文がある。

・加藤一郎「原子力災害補償立法上の問題点」(ジュリスト190号15頁)
「(2)免責事由
無過失責任を採用した場合には、免責事由をどの範囲まで認めるかが問題になり、それによって、無過失責任の幅が左右されることになる。
 一般理論からすれば、不可抗力が一般的な免責事由になる。不可抗力としては、戦闘行為(たとえば爆撃)地震、風水害などが考えられるが、その内容は必ずしも明確でない。地震の例をとれば、第一に、一般に起りうる程度の地震で原子炉が破壊されたとすれば、それは不可抗力ではなく、はじめからの設計や管理に瑕疵があったことになり、現行法の下でも責任が生じうるであろう。その場合に、どの程度の地震が一般に起りうるものと考えてよいかという基準の問題が起るが、原子炉では、ひとたび事故が起れば大災害の生ずるおそれがあるから、少なくともわが国でわれわれの経験した最大の地震にも堪えうるようになっていなければいけないし、さらに、それに相当の余裕を見て科学的に予想しうる最大の地震にも堪えうるようにしておくべきであろう。このように同じく不可抗力といっても、原子炉のように危険性が大きくなれば、その範囲を狭めて考えていくのが合理的だと思われる。第二に、それでも、われわれの予想をこえるような大地震が起きれば、それはいちおう不可抗力といわざるをえない。それも、そもそもそういう危険のある施設を作ったために被害が起ったのだから、設置者が責任を負うべきだという絶対的な無過失責任も立法論として考えられるが、因果関係の点からいえば、その場合には、施設の設置と損害の発生との間の因果関係が不可抗力によって中断されているとも見られるから、少なくとも一般理論からすれば責任を認めることは困難であろう
 そこで、免責事由についての立法のしかたとしては、次の四つが考えられる。
第一は、はっきり一切の免責を認めないという規定をおくこと(免責否定)で、そこまで重い責任を課することは問題だが、その責任を保険や国家補償でカバーすれば実質的には重くもなくなるので、それらとの関連でそういう方法をとることも考えられる(6)。ただ、そういう規定をおいても、特別の場合には免責を認めるという解釈が出ている可能性がないわけではない。
第二は、何も規定をおかず解釈にまかせること(免責放置)だが、この場合には、第三の方法として「不可抗力」を免責とする規定をおいた場合(不可抗力免責)と、解釈上は似た結論になり、ただ明文の規定があるときよりも不可抗力が狭く解される可能性があることになろう。第四には、「戦争、地震・・・」というように不可抗力を列挙すること(免責事由の列挙)だが、そうしても、地震の程度の問題が残り、「不可抗力としての地震」ということにならざるをえないし、最後に「その他の不可抗力」とう条項が入るとすれば列挙の意味は少なくなってくる。こうしてみると、免責事由の規定のしかたによってそれほど大きな違いは生じないようだが、考え方としては、それをできるだけ狭く限定すべきであろう。そして、実際には、免責を認めた場合に国家補償のような形で被害者保護をはかるかどうかの方が、それよりも大きな問題にとなる。
   (6)西ドイツの法案は、はじめ不可抗力を免責事由としていたが、のちにその規定を削っている。その場合にも理論的に免責が認められるという解釈も出てくるかもしれないが、法案の説明では、施設からの損害であれば因果関係があり責任が生じると考えているようである。それ以外の国では、スイスが戦闘行為、天災、被害者の過失、イギリスが戦闘行為、被害者の過失、アメリカが戦闘行為(あとは州法による)を免責事由としている。被害者の過失はドイツも認めているが、これは過失相殺の問題であって不可抗力とは性質を異にしている。」



この加藤教授の論述を参考にして考えると,

原賠法での不可抗力免責について,立法のあり方として

A 不可抗力免責は一切認めない。その旨を明文化する(免責否定)。
B 免責規定を設けず,解釈に委ねる(免責放置)。
C 「不可抗力」による免責を認めるとする(不可抗力免責)
D 「戦争、地震・・・」というように不可抗力を列挙(免責事由の列挙)制限列挙?
E 「戦争、地震・・・」というように不可抗力を列挙し,最後に「その他の不可抗力」と規定する。 例示列挙?

 しかし,A免責否定で,戦争の場合など強い不可抗力に起因する場合にも責任を負わせるというのは原子力事業者に酷すぎるし,免責否定の明文を置いても,やはり特別の場合は免責するという解釈が出てくる余地があって不都合。
 B免責放置で,解釈で決めるとすると,通常の不可抗力ではなく,特に強い不可抗力に限定しようとする趣旨が貫けない。
 CやEでの「不可抗力」という文言では,やはり解釈の幅がありすぎて,通常の不可抗力ではなく,特に強い不可抗力に限定しようとする趣旨が貫けない。
 かといって全免責事由の制限列挙は技術的に難しい。



・要するに,いかなる場合でも免責しないという立法主義は取らない。
・かといって,通常の不可抗力免責は,原発の危険性,被害の甚大性を考えると,あり得ない。
・単に解釈に委ねたのでは,その辺りの趣旨が曖昧になるので,はっきりさせたい。
・かといって不可抗力性の特に強い事由を,全部列挙することは難しい。




 そこで文言としては,当時のOEEC(OECD)のパリ条約?の文言「a grave natural disaster of an exceptional character」を参考とし、原子力災害補償専門部会の答申(昭和34年12月)では,

----------------------------
1.原子力損害賠償責任
(1)原子力事故による原子力損害については原子力事業者が無過失責任を負うものとし、きわめて特別の場合にのみ免責されるものとする。ただし、この特別の場合は通常「不可抗力」と呼ばれるもののすべてに及ぶのではなく、そのうちでもいわば不可抗力性の特に強いものに限るべきであるから、たとえば「異常かつ巨大な自然的または社会的災害」というなどこの内容を適確に表現する努力のなされることが望ましい
----------------------------

とされた。

 だいたいこういう流れで,この「異常に巨大な天災地変」という文言が決まったのではなかろうか。


 要するに,原賠法3条1項では,原子力事業者に絶対的な無過失責任を負わせることはしない。そういう意味では,3条1項但書は,原子力事業者の責任の軽減を図ったものともいえるが,そもそも絶対的な無過失責任は法論理的にも難しいので,当たり前のことを規定しただけともいえる。むしろ,これは,解釈で軽々に原子力事業者が免責されるのを特に防ぐという意味で,特に規定を設けて,土地工作物責任や営造物責任の場合の不可抗力免責(これもなかなか認められにくいものではあるが)よりも,もっと強い不可抗力が作用した場合に限定するという趣旨で,特に「異常に巨大な天災地変」と規定されたものということだろう。


 このように考えれば、原賠法施行の翌年昭和37年9月10日に発行された,科学技術庁原子力局監修「原子力損害賠償制度」(初版)44頁以下の、3条1項但書の趣旨に関する叙述も理解できる。

--------------------------------
(7)このただし書は、本文に規定する責任の範囲をとくに狭める趣旨のものではなく,当然のことを述べた注意的規定であるとともに,更には免責の範囲の拡大を防ごうとするものである。原子力事業者が責任を負うべき原子力損害は,その原子炉の運転等と因果関係があるものに限られることは当然である((3)参照)。従って,原子力損害が不可抗力によって生じたものであるときは,因果関係が中断して原子力事業者が免責されることは明らかである。しかしながら,原子力事業者が軽々に不抗力によるものと認定されることがあっては,この法律の意図する被害者の保護を充分におし進めることは不可能である。そこで,原子力事業者の無過失責任は,ここに掲げるような不可抗性のとくに強い特別の事由がある場合に限り,因果関係の中断により免除されるものとするのが,このただし書の趣旨である。
--------------------------------


 上の初版の「原子力損害賠償制度」の該当箇所を誰が執筆を担当したのかは不明であるが,その理解は,原賠法成立直前の下の加藤教授の国会答弁とも一致する。



--------------------------------
- 参 - 商工委員会 - 27号
昭和36年05月30日
○参考人(加藤一郎君) 加藤でございます。
第二の問題といたしまして、その場合の免責事由をどこまで認めるかということがございます。この法案では、三条一項ただし書きにおきまして、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」というものを免責事由としてあげております。この点は、ともかく原子炉のように非常に大きな損害が起こる危険のある場合には、今までのところから予想し得るようなものは全部予想して、原子炉の設定その他の措置をしなければならない。従って、普通の、いわゆる不可抗力といわれるものについて、広く免責を認める必要はないわけであります。むしろ今まで予想されたものについては万全の措置を講じて、そこから生じた損害は全部賠償させるという態勢が必要であります。そこで、たとえばここでいう「巨大な天災地変」ということの解釈といたしましても、よくわが国では地震が問題になりますが、今まで出てきたわが国最大の地震にはもちろん耐え得るものでなければならない。さらにそれから、今後も、今までの最大限度を越えるような地震が起こることもあり得るわけですから、そこにさらに余裕を見まして、簡単に言いますと、関東大震災の二倍あるいは三倍程度のものには耐え得るような、そういう原子炉を作らなければならない。逆に言いますと、そこまでは免責事由にならないのでありまして、もう人間の想像を越えるような非常に大きな天災地変が起こった場合にだけ、初めて免責を認めるということになると思われます。そういう意味で、これが「異常に巨大な」という形容詞を使っているのは適当な限定方法ではないだろうかと思われます。これは、結局、保険ではカバーできないことになりますので、あとで出ます政府が十七条によって災害救助を行なうことになるわけであります。
---------------------------------


 結局,3条1項但書は、原発の特殊な危険性から、安易な免責はさせまいという意図を明示する趣旨を有するものであったものと思われ、知りうる過去の最大のものの2、3倍ではなく、過去にみられた程度の揺れの地震、波高の津波などの自然災害に、それに余裕をもって耐えるどころか、簡単に爆発にまで至っているような場合に、免責を認めようとするのは、やはり筋が悪いように思える。
「人間の想像を越えるような非常に大きな天災地変」でなければ、免責されないとするのでは、実際には免責の余地がほとんどなく、3条1項但書が規定された意味が無くなり、そのような解釈は法解釈として間違っているという主張もありうるが、そもそも、この但書は、特に、そのような場合に限って免責を定めたものであって、その他の免責を安易に認めさせないことにこそ意味がある規定であって、今回の事件で、裁判等で免責が否定されたならば、まさしく、50年前に、この但書が、わざわざ規定された意味が発揮された場面であったとさえ言えるかもしれない。とはいえ、世にはさまざな感覚をもった裁判官がいるので、裁判で争ってみなければ、わからないところがあり、また、このあたりは曖昧にしたまま政治的決着がなされ、終わってしまうかもしれない。



〔斟酌規定〕
 なお、無過失責任で、自然災害での不可抗力免責を認めず、そのかわり賠償額の認定において、裁判所が、それを斟酌できるとする立法方法もある。

----------------------------
・大気汚染防止法
(賠償についてのしんしやく)
第二十五条の三  第二十五条第一項に規定する損害の発生に関して、天災その他の不可抗力が競合したときは、裁判所は、損害賠償の責任及び額を定めるについて、これをしんしやくすることができる。

・水質汚濁防止法
(賠償についてのしんしやく)
第二十条の二  第十九条第一項に規定する損害の発生に関して、天災その他の不可抗力が競合したときは、裁判所は、損害賠償の責任及び額を定めるについて、これをしんしやくすることができる。

・水洗炭業に関する法律
(賠償についてのしんしやく)
第十九条 第十六条第一項に規定する損害の発生に関して被害者の責に帰すべき事由があつたときは、裁判所は、損害賠償の責任及び範囲を定めるのについて、これをしんしやくすることができる。天災その他の不可抗力が競合したときも、同様とする。

・鉱業法
(賠償についてのしんしやく)
第百十三条 損害の発生に関して被害者の責に帰すべき事由があつたときは、裁判所は、損害賠償の責任及び範囲を定めるのについて、これをしんしやくすることができる。天災その他の不可抗力が競合したときも、同様とする。
--------------------------

 鉱業法や水洗炭業に関する法律は、原賠法よりも古い法律で、その斟酌規定は当初からあり、原賠法制定時においても、このような斟酌規定を置くことは、可能性としてはあり得たはずだが、原賠法では、このような行き方は採られていない。他国の制度の比較もあったろうが、原発事故が、上の各法津の予想する災害とは比べものにならないほどの甚大なものであること考えれば、当然だったのかもしれない。



〔類似の規定〕
 原賠法3条1項但書に似た免責規定として、以下のようなものがある。ただし、「異常な天災地変」とあるだけで、「異常に巨大な」との規定があるのは、やはり原賠法だけであり、これが我が国の全法大系の中で、最も狭い範囲での不可抗力免責を定めたものであり、1項本文は、あらゆる無過失責任のうち、最も厳格なものと言えよう。

------------------------------
・船舶油濁損害賠償保障法
(タンカー油濁損害賠償責任)
第三条
 タンカー油濁損害が生じたときは、当該タンカー油濁損害に係る油が積載されていたタンカーのタンカー所有者は、その損害を賠償する責めに任ずる。ただし、当該タンカー油濁損害が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 戦争、内乱又は暴動により生じたこと。
二 異常な天災地変により生じたこと。
三 専ら当該タンカー所有者及びその使用する者以外の者の悪意により生じたこと。
四 専ら国又は公共団体の航路標識又は交通整理のための信号施設の管理の瑕疵により生じたこと。
<略>

(一般船舶油濁損害賠償責任)
第三十九条の二
 一般船舶油濁損害が生じたときは、当該一般船舶油濁損害に係る燃料油が積載されていた一般船舶の一般船舶所有者等は、連帯してその損害を賠償する責めに任ずる。ただし、当該一般船舶油濁損害が次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一 戦争、内乱又は暴動により生じたこと。
二 異常な天災地変により生じたこと。
三 専ら当該一般船舶所有者等及びその使用する者以外の者の悪意により生じたこと。
四 専ら国又は公共団体の航路標識又は交通整理のための信号施設の管理の瑕疵により生じたこと。
2 第三条第二項及び第三項並びに第四条の規定は、一般船舶油濁損害の賠償について準用する。この場合において、第三条第二項中「タンカーに」とあるのは「一般船舶に」と、「油に」とあるのは「燃料油に」と、同項及び同条第三項中「タンカー所有者」とあるのは「一般船舶所有者等」と読み替えるものとする。

・海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
(海上保安庁長官の措置に要した費用の負担)
第四十一条
 海上保安庁長官は、第三十九条第一項から第三項まで及び第五項並びに第四十条の規定により措置を講ずべき者がその措置を講ぜず、又はこれらの者が講ずる措置のみによつては海洋の汚染を防止することが困難であると認める場合において、排出された油、有害液体物質、廃棄物その他の物の除去、排出のおそれがある油若しくは有害液体物質の抜取り又は沈没し、若しくは乗り揚げた船舶の撤去その他の海洋の汚染を防止するため必要な措置を講じたときは、当該措置に要した費用で国土交通省令で定める範囲のものについて、国土交通省令で定めるところにより、当該排出された油、有害液体物質、廃棄物その他の物若しくは排出のおそれがある油若しくは有害液体物質が積載されていた船舶の船舶所有者、これらの物が管理されていた海洋施設等の設置者又は沈没し、若しくは乗り揚げた船舶の船舶所有者に負担させることができる。ただし、異常な天災地変その他の国土交通省令で定める事由により、当該油、有害液体物質、廃棄物その他の物が排出されたとき、当該油若しくは有害液体物質の排出のおそれが生じたとき又は船舶が沈没し、若しくは乗り揚げたときは、この限りでない。
<略>
-------------------------------


2011-07-25 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その11 因果関係の中断論

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その11 因果関係の中断論


昭和37年9月10日初版発行 科学技術庁原子力局監修「原子力損害賠償制度」44頁以下のある原賠法3条の解説
--------------------------------
(3)原子力事業者の無過失賠償責任も,その原子炉の運転等と因果関係のあるものに限られることは,いうまでもない。「により」は,このことを示すものである。
 因果関係の範囲については,相当因果関係の原則の適用がある。公権力による強制立退き(避難)費用,損害拡大防止費用,汚染を受けた周辺土地の価格の低落等がこの点で問題になるが,要はその場合の具体的な事情に基づき判断することとなろう。しかしながら,汚染がないにもかかわらず地価が低落したような場合は,一般的にいって因果関係がないものと考えるべきであろう。
 因果関係の中断による免責については,本条ただし書が規定している

〈略〉

(7)このただし書は、本文に規定する責任の範囲をとくに狭める趣旨のものではなく,当然のことを述べた注意的規定であるとともに,更には免責の範囲の拡大を防ごうとするものである。原子力事業者が責任を負うべき原子力損害は,その原子炉の運転等と因果関係があるものに限られることは当然である((3)参照)。従って,原子力損害が不可抗力によって生じたものであるときは,因果関係が中断して原子力事業者が免責されることは明らかである。しかしながら,原子力事業者が軽々に不抗力によるものと認定されることがあっては,この法律の意図する被害者の保護を充分におし進めることは不可能である。そこで,原子力事業者の無過失責任は,ここに掲げるような不可抗性のとくに強い特別の事由がある場合に限り,因果関係の中断により免除されるものとするのが,このただし書の趣旨である
(8)日本の歴史上余り例の見られない大地震、大噴火、大風水災等をいう。例えば、関東大震災は巨大ではあっても異常に巨大なものとはいえず、これを相当程度上回るものであることを要する。
(9)社会的動乱も、質的、量的に異常に巨大な天災地変に相当する社会的事件であることを要する。戦争、海外からの武力攻撃、内乱等がこれに該当するが、局地的な暴動、蜂起等はこれに含まれないと考えられる。
(10)これらの事由による原子力損害については、原子力事業者は免責となり、また、この法律により政府が援助を行うのも、原子力事業者が賠償責任を負った場合であるから、ただし書の場合には、原子力損害について賠償を行うものが存在しないことになる。しかしながら、このような場合には、原子力損害と言うよりはむしろ社会的、国家的災害であり、政府が被害者の救助及び被害の拡大の防止につとめるべきことは当然で、第一七条は、このことを念のために規定したものである。
-----------------------------------



 このように,昭和36年に原賠法が成立した翌年に発行された科技庁篇の「原子力損害賠償制度」という書籍では,同法3条1項但書は,「因果関係の中断」による免責を定めたものと理解されていた。〔なお,3条1項但書のような事情について,これを因果関係の中断の問題と言及するものとして,立法前昭和34年の加藤一郎教授の「原子力災害補償立法上の問題点」(ジュリスト190号14頁)がある。〕

 
 ただし,原発事故に,自然災害等の不可抗力が介在した場合に,「因果関係の中断」とはどういう理屈なのか詳細が不明である。

 因果関係については,以下のとおり,事実的因果関係と相当因果関係が必要

1 事実的因果関係(条件関係)
 ア説 不可欠条件公式(「AなければBなし」)で判断
 イ説 合法則条件公式(「AからBが生じたか」)で判断
2 相当因果関係

 果たして,自然力のような不可抗力を,「因果関係の中断」との関係で,理屈上,どの点で扱うのだろうか。

 単純に,不可欠条件公式で扱うと,およそいかなる自然力が介在しようが,そもそも放射性物質の漏出・飛散などというものは,そこに原発が存在しなければ,ありえないものであることは明白なので,条件関係は常に満たされるともいえる。したがって,中断というものは考えにくい。
 合法則条件公式でも,他の第三者の介在ではなく,自然力が介在する原子力災害などでは,介在事情が自然法則に従うものであることは明白なので,条件関係が否定されるとは考えにくく,これも因果関係の中断の話にはなりにくい?。
 かといって,相当因果関係の問題とするとなると,どのみち「相当性」という規範的要素の判断になるので,「因果関係の中断」論とはせずに,端的に「不可抗力免責」の特殊な場合〔不可抗力性の特に強い事由〕の問題として,その予見可能性,結果回避可能性,危険性,結果の甚大さ,被侵害利益の重大性等の諸般の事情を考慮して,法の趣旨,損害の公平な分担の観点から決するということで問題がないはずである。


 結局,この書籍の「因果関係の中断」論の部分は,どういう議論があったのか知らないが,平成3年の改訂版では,(7)が,以下のように書き換えられている。



---------------------------------
平成3年4月30日改訂版 科学技術庁原子力局監修「原子力損害賠償制度」55頁
(7)このただし書は、原子力事業者の免責事由を定めるものである。無過失責任を課し、さらに責任を集中しているので、原子炉の運転等と相当因果関係を有する原子力損害は、全て原子力事業者が賠償しなければならないことになり、危険責任の考え方に基づく責任としては酷に過ぎる場合もあり得る。例えば、戦争のような状況の中で原子炉が破壊され、核分裂生成物が大気中に放置されたような場合に、その被害を原子力事業者に賠償させるのは行き過ぎであり、そもそも民事賠償の問題ではないと考えられる。しかし、一方では、不可抗力による免責が軽々に認められるようでは、被害者の保護を図るというもう一つの方目的が損なわれることになる。そこで(8)、(9)で述べるような非常に稀な場合に限って原子力事業者を免責することとしたものである。このような不可抗力性の特に強い事由について原子力事業者の責任を免除することは、多くの国際条約、諸外国の法制においても認められており、また、無過失賠償責任を定めた他の立法においてもみられるものである。
(8)日本の歴史上余り例の見られない大地震、大噴火、大風水災等をいう。例えば、関東大震災は巨大ではあっても異常に巨大なものとはいえず、これを相当程度上回るものであることを要する。
(9)社会的動乱も、質的、量的に異常に巨大な天災地変に相当する社会的事件であることを要する。戦争、海外からの武力攻撃、内乱等がこれに該当するが、局地的な暴動、蜂起等はこれに含まれないと考えられる。
---------------------------------


 立法当時の旧版にある「このただし書は、本文に規定する責任の範囲をとくに狭める趣旨のものではなく,当然のことを述べた注意的規定であるとともに,更には免責の範囲の拡大を防ごうとするものである。」という部分が削られ,全体として,ずいぶんニュアンスが変わってしまっているが,要するに,改訂版では,特に不可抗力性の特に強い事由についての,特殊な「不可抗力免責」の問題として扱われ,「因果関係」の有無・中断の問題として論じるというニュアンスは後退している。

 因果関係の中断というのは,原発事故との関係では,なじみにくい理屈かもしれない。それは先ほど述べたのように,放射性物質の漏出・飛散による原子力損害は,明らかにそこに原発がなければ発生しないものであり,他の原因によっても生じうる損害とは異なり,いかに異常に巨大な自然力であっても,事実的因果関係が否定されるとは考えにくいからである。ただ,このような「因果関係の中断」論が立法当初,理屈として考えられていたということは,3条但書の事情が,いかに異例なものと考えられていたかを物語っているようにも思える。



※ここでいう「因果関係」は,原子炉の運転等と原子力損害との間の関係(3条1項本文の「により」)を指すものであって,異常に巨大な天災地変と原子力損害との間の関係(3条1項但書の「によって」)ではない。


※なお,原子力事業者の落ち度を一切問題としない完全な無過失責任の場面ではなく,「過失」や「瑕疵」と,自然力との競合を問題とする場面では,同一結果が,「過失」や「瑕疵」が無くても生じたかという問題となりえ,条件関係の否定という点で,因果関係の中断の問題として論じる余地はあるように思える。こちらで,触れた。




テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-07-23 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その10 当事者の見解

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その10 当事者の見解

-----------------------------
http://www.asahi.com/national/update/0428/TKY201104280255.html

東電、賠償免責の見解 「巨大な天変地異に該当」2011年4月28日15時32分

 福島第一原発の事故に絡み、福島県双葉町の会社社長の男性(34)が東京電力に損害賠償金の仮払いを求めた仮処分申し立てで、東電側が今回の大震災は原子力損害賠償法(原賠法)上の「異常に巨大な天災地変」に当たり、「(東電が)免責されると解する余地がある」との見解を示したことがわかった。
 原賠法では、「異常に巨大な天災地変」は事業者の免責事由になっており、この点に対する東電側の考え方が明らかになるのは初めて。東電側は一貫して申し立ての却下を求めているが、免責を主張するかについては「諸般の事情」を理由に留保している。
 東電側が見解を示したのは、東京地裁あての26日付準備書面。今回の大震災では免責規定が適用されないとする男性側に対して、「免責が実際にはほとんどありえないような解釈は、事業の健全な発達という法の目的を軽視しており、狭すぎる」と主張。「異常に巨大な天災地変」は、想像を超えるような非常に大きな規模やエネルギーの地震・津波をいい、今回の大震災が該当するとした。
 一方、男性側は「免責規定は、立法経緯から、限りなく限定的に解釈されなければならない」と主張。規定は、天災地変自体の規模だけから判断できるものではなく、その異常な大きさゆえに損害に対処できないような事態が生じた場合に限って適用されるとして、今回は賠償を想定できない事態に至っていないと言っている。
 菅政権は東電に第一義的な賠償責任があるとの立場で、枝野幸男官房長官は東電の免責を否定しているが、男性側代理人の松井勝弁護士(東京弁護士会)は「責任主体の東電自身がこうした見解を持っている以上、国主導の枠組みによる賠償手続きも、東電と国の負担割合をめぐって長期化する恐れがある」と指摘。本訴訟も視野に、引き続き司法手続きを進めるという。これに対して、東電広報部は「係争中であり、当社からのコメントは差し控えたい」と言っている。(隅田佳孝)
--------------------------------


東京電力の審査会宛要望書
平成23年4月25日

原子力損害賠償紛争審査会
会 長  能 見 善 久 殿

東京電力株式会社
代表取締役 清 水 正 孝

   要望書

 弊社は、貴審査会が定める原子力損害の範囲の判定等の指針(以下「指針」といいます。)について、下記の要望をいたします。

   記

1 貴審査会におかれては、標記指針を定めるに先立ち、被災者保護の観点から、可能な事項から順次指針を提示する方針である、と聞いております(ここで示される指針を、以下「一次指針」といいます。)。
福島第一原子カ発電所の放射性物質漏洩事故(以下「本件事故」といいます。)による原子力損害の発生は明らかであること、本件事故が発生から1ヶ月以上経た現在でも収束しておらず、被害が拡大していること、などを踏まえれば、早急な被災者の救済が必要であることについては、当社としでも十分認識しております。

2 本件事故が平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に起因して発生したものであり、当該地震がマグニチュード9.0という日本史上稀にみる規模の地震であったこと、およびその直後に努生した津波が福島第一原子カ発雷所において14~15メートルまで達する巨大なものであったことを踏まえれば、弊社としては、本件事故による損害が原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」といいます。)3条1項ただし書きにいう「異常に巨大な天災地変」に当たるとの解釈も十分可能であると考えております。しかしながら、弊社は、本件事故の当事者であることを真撃に受け止め、早期の被災者救済の観点から、国の援助を受けて法に基づく補償(法にいう賠償)を実施する準備を進めていることを明らかにするとともに、平成23年4月15日付「原子力発電所事故による経済被害対応本部」の決定を踏まえ、本件事故により避難等を余儀なくされておられる被災者に対し、当面の必要な資金のお支払いをする手続を進めているところです。

3.ところで、原賠法において、原子力損害については原子カ事業者が無制限の無過失責任を負う(同法3条1項本文)とされている一方、その「場合への備え」([原子力損害賠償制度」科学技術庁原子カ局監修、P102)として、原子力事業者が損害賠償すべき額が賠償措置額(1事業所当たり1,200億円)を超え、かつ、この法律の目的である被害者の保護等を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、損害を賠償するために必要な援助を行うという制度が設けられています(同法16条)。この援助は、必要と認められるときには必ずこれを行う趣旨であるとされていますが、本件事故についてその必要があることは明らかです。

4 弊社としても、可能な限り補償を実施したいと考えておりますが、予想される補償額、事故の起きた原子力発電所の安定のために要する費用、電力の安定供給の確保に向けた新規電源確保などを着実に、また安全を確保しつつ実現していくための費用等を踏まえた今後の収支見通しなども考慮すると、すべての補償を弊社が行うこととした場合、最大限の経営のスリム化を断行しても、そのために要する費用を弊社が支出・調達することが困難であることは既に明らかな状況です。この状況を踏まえれば、立法時の審議過程において考慮されていた「一人の被害者も泣き寝入りさせることなく」という原賠法の目的を実現するためには、同法16条に規定された国による援助が必要不可欠であり、そのような要素を欠いたままでは、原賠法の趣旨に反するスキームであるといわざるを得ません。

5 しかしながら、現時点では、国による援助の具体的な方策が確定していないことから、弊社としては、仮に一次指針が策定されたとしても、その全額の弁済をすることは早晩困難になると考えられるため、かえって被災者に対する公正な補償が妨げられるおそれすらあります。また、受付体制(要員、設備)の整備等に自ずから物理的制約のあるなかで、極めて多数の被災者への補償手続を円滑に実現するためには、受付数の均平化なども慎重に図っていく必要があります。さらに、的確な補償額の算定のためには、原子力事故と相当因果関係にある損害を的確に抽出できる判断基準の設定が必要であるとともに、損害を認定するためのエビデンスのあり方についても、指針に何らかの基準が示されることが必要と考えます。以上のように、一次指針の策定に当たっては、当社の実質的な負担可能限度も念頭に置かれたうえ、公正、円滑な補償の実現に資するものとなるようご配慮いただきますようお願い申し上げます。

以 上

-----------------------------------




テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-04-28 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その9 第17条との関係

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その9 第17条との関係

原賠法17条
「政府は、第三条第一項ただし書の場合又は第七条の二第二項の原子力損害で同項に規定する額をこえると認められるものが生じた場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。」

条文では,16条は,3条1項本文の原子力損害の賠償に関する国の措置(「必要な援助」),17条は,3条1項但書の免責があった場合の国の措置(「被災者の救助」等の措置)が規定されている。
 最近の経団連会長や国会議員らの発言において誤解があると思われるのは,17条についてである。これは3条1項但書の場合に国による賠償の肩代わりや,補償措置を定めたものではなく,通常の災害時に国が当然になすべき被災者救助を注意的に規定しただけのものである。したがって,3条1項但書にあたる場合は,原子力事業者は賠償を免責されるが,かといって国が賠償義務を負うものではなく,その場合の原発事故による被災者は,自然災害の被災者と同様に,国家よって「救助」されるだけである。
 つまり法は,「異常に巨大な天災地変」という超不可抗力によって,原発事故が起きてしまったら,それは全体として巨大な自然災害と同様なものと考えて,通常の意味で災害救助を当然に国家が行うことを意図しているに過ぎない。翻って考えてみると,3条1項但書の「異常に巨大な天災地変」とは,原発事故も含めて全体として自然災害と見てよいほどの巨大なものであることが想定されているということになる。



 以下が,立法過程における17条に関する国会審議である。

-----------------------------
-衆-科学技術振興対策特別委…-13号 昭和35年05月18日
○中曽根国務大臣 条文のどこに書いてあるということはございませんが、この語の定義というものが、そういうふうに立法のときに了解してあるわけであります。そうして今お話になりました、しからば、その異常に巨大な場合にはどうするかという問題については、第十七条に規定してありまして、「政府は、第三条第一項ただし書の場合においては、被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。」この場合は、一般の災害救助法もありますし、それ以外のこともありましょう。とにかく、そういう場合には、国民の民生に関することでもあり、生命財産に関することでもありますから、最善を尽くして必要最大の措置を行なうわけであります。しかし、それは、十六条とか、そのほかの場合における損害賠償という意味ではなくして、国の一般政策として当然これは行なうべきことでありますが、特に念のためにこれは書いてあるのでございます。
--------------------------
○中曽根国務大臣 これは災害救助法もございましょうし、ともかく、戦争や内乱が起きた場合に、国が乱れていろいろな事故が起きる、そういう場合におけるいろいろな応急措置、その他全般が入るわけでありますので、今からどうというように限定するわけには参りません。少なくとも、災害救助法程度のことはやるという、最低限のことは言えると思いますが、それ以上は、そのときの情勢によって、政府なり国会なりがきめることになるだろうと思います。
--------------------------
○中曽根国務大臣 外国の立法例で、第十七条のようなものを置いたものはないのであります。しかし、日本の場合は、特に国民の皆さんが心配されるという関係があって、第十七条というのを置きました。さらに「報告及び意見書の提出」というような条文が第六章にございまして、第十九条「政府は、相当規模の原子力損害が生じた場合には、できる限りすみやかに、その損害の状況及びこの法律に基づいて政府のとった措置を国会に報告しなければならない。」また、第二項に「政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力委員会が損害の処理及び損害の防止等に関する意見書を内閣総理大臣に提出したときは、これを国会に提出しなければならない。」こういう条文を特に置きました。これは各国の立法例にはございません。これはすべて国会に事態を報告して、国会の措置を仰げるようにしよう、国会は国民代表の機関でありますから、国家財政等とにらみ合わせて、国民の納得のいく措置をやっていただけるとも考えまして、条文を置いたのであります。茨城県の御要望の後段の方、異常、巨大というような場合まで、すべて国家が、法律上明記して、賠償に応ずるというようなところは書いてございませんけれども、それはほかの立法例にもございません。外国はすべて異常巨大の災害並びに社会的内乱という場合には免責されておりますので、大体外国の立法例にも従っておるのでございます
--------------------------
○奧村(又)政府委員 この十七条の場合は、先ほど中曽根大臣の御答弁にもありましたように、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたもの」というのでありますから、原子力損害だけじゃなしに、あらゆるり災害が起こるという――十六条は原子力の損実賠償だけに限る、十七条は、ほかに一般の災害もあるわけでありまして、主として行政措置として行なうという意味で書かれてあるので、規定の性格が全然違っておる、かように存ずる次第であります。
--------------------------
○奧村(又)政府委員 政府部内でその点についてまだ検討しておりませんが、この法律の趣旨からいきまして、十九条の規定は、主として十六条の規正を受けておるのでありまして、十七条はごらんの通り一般的な規定で、率直に言えば、この規定は法律にあってもなくても当然政府のなすべき規定でございますから、十九条は十六条を受けておる、かように私は読みます。もちろん、十九条もこれは含んでおる。しかし、主たるなには十六条であって、十九条の場合は、十七条ももちろん受けてはおりますが、十六条の方を主として受けておる、かように考えます。
---------------------------



 昭和34年12月12日に,原子力災害補償専門部会長我妻栄から原子力委員会委員長中曽根康弘に答申が出された時点では,以下のように予定されていた。

・「原子力事業者の要求される損害賠償措置では損害賠償義務を履行しえない万一の場合には、原子力事業者に対して、国家補償をする必要がある。」
→原子力事業者の責任の限定

・「損害賠償措置をこえる損害が生じたときにその超過額について国家補償を行なう場合である。この場合には、損害の発生について原子力事業者に故意または重大な過失があるときにのみ、政府は求償権を有するものとする。」
→上の賠償を国家が補償した場合で,原子力事業者が悪意又は重過失なら国は求償できる。



 しかし,昭和36年に現実に原賠法が成立した時点では,先の国会答弁のような制度になっており,我妻栄が,以下のように嘆くことになった。

------------------------
・ジュリスト1961年10月15日号(No.236)9【特集】原子力損害補償 原子力二法の構想と問題点 我妻栄
「「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」に該当する事例は稀有であろう。しかし、その場合には、国は「被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする」というだけである(17条)被害者にとっては、まことに心細いものであろう。なるほど、台風・水害の災厄は他にもある。しかし、たまたまそこに原子炉があり、不幸にしてこれに事故を生じたとすれば、風水害だけの損害と原子炉に事故を生じたために増加した損害とは区別されるはずである。後者だけを別に取り扱っても、不都合があるとは考えられない。 そもそも「異常に巨大な……動乱」などはほとんどありえないと考えるのなら、何もわざわざ、補償はしない、国の救助に信頼せよなどと国民に不安を与えずに、国が補償すると気前よく出てもよいはずだろう。それができないのは、原子力事業者に責任のない事項について国が責任をもつことは考えられない、という、答申とは根本的に反した思想に立つからである。」

-------------------------


 なお,電気事業連合会のサイトでは,以下のように説明されている(4/21現在)。

http://www.fepc.or.jp/faq/1189681_1457.html
「よくあるご質問
事故が発生した場合の損害を誰が補償するのか?賠償額は無制限なのか?わが国では、原子力発電所の運転等により原子力損害が生じた場合、原子力事業者がその損害を賠償することが、「原子力損害の賠償に関する法律」と「原子力損害賠償補償契約に関する法律」の二法により定められています。
この法律は、被害者の救済を確保するとともに、原子力事業者の負担を軽減するという、双方の利益に配慮している点が最大の特徴となっています。
原子力事業者は、同法にもとづき損害賠償措置として、保険会社との間で「原子力損害賠償責任保険契約」を、政府との間で「原子力損害賠償補償契約」を締結しており賠償措置額は1,200億円となっています。
原子力事業者が損害賠償措置額を超えた損害に対する賠償責任を果たせないような場合、あるいは原子力事業者の責任範囲外であるため損害賠償措置で補えない損害(わが国においては社会的動乱、異常に巨大な天災地変)については、国が原賠法上の援助、措置を行うことにより、被害者への補償を確約することで、被害者は確実な賠償または補償を得られます。 」


テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-04-20 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その8 国会審議

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その8 国会審議

--------------------------------------
- 衆 - 科学技術振興対策特別委… - 9号
昭和36年04月12日
○杠政府委員 ただいまお尋ねの点の前半のことでございますが、ただいままで私たちが考えておりますのは、おそらくは、関東大震災ほどの地震はなかったのではなかろうかと考えます。しからば、ただいままでの関東大震災よりも多少とも規模の大きい地震があった場合には、この異常に巨大な天災地変と言うかどうかという後半のお尋ねだろうと思うのでございますが、そのことにつきましては、現在、コールダーホール等の審査におきまして、先ほど来問題になっておりますように、耐震ということに十分に気をつけておりまして、関東大地震の二倍ないしは三倍程度の地震がありましても耐え得る安全度というような審査をいたしております。従いまして、関東大地震よりも多少とも出ればというようなふうにわれわれは考えておりませんで、実に想像を絶すると申しましょうか、先ほど申し上げましたように、安全審査の点でも、関東大地震の二倍ないし三倍の地震に耐え得るという非常な安全度をとっておるわけであります。それさえももっと飛び越えるような大きな地震というふうにお考えいただけばいいのではなかろうか・われわれはそのように解釈いたしております。

----------------------------------------
- 衆 - 科学技術振興対策特別委… - 14号
昭和36年04月26日
○田中(武)委員 そういたしますと、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」ということは、俗に言う不可抗力よりかもつと範囲の狭いものですね。
○我妻参考人 おっしゃる通りです。不可抗力という言葉にもずいぶんいろいろ議論があるようですけれども、超不可抗力ということなんですね。ほとんど発生しないだろう。ほとんど発生しないようなことなら、何も書く必要はないだろうということにもなりますけれども、これは先ほどから繰り返して申しますように、無過失責任は私企業の責任を中心として発達したものですから、いかに無過失責任を負わせるにしても、人類の予想していないような大きなものが生じたときには責任がないといっておかなくちゃ、つじつまが合わないじゃないか、そういう考えが出てくるだろうと私は解釈しております。しかし、実際問題としては問題になるかもしれませんけれども、おそらく大したことはないだろう。
○田中(武)委員 そういたしますと、その文句の法律的解釈、これを俗に言うなら、予想といいますか、考えられないような事態、こういうように理解してよろしいのですか。
○我妻参考人 ええ、その通りです。

---------------------------------
- 参 - 商工委員会 - 25号
昭和36年05月23日
○政府委員(杠文吉君)
ここで異常に巨大な天災地変、すなわち関東大震災を例にとりますならば、それの三倍も四倍もに当たるような、そのような天災地変等がございましたおり、それによって生ずるところの損害がもしも原子力施設から生じたという場合には、原子力事業者に責任を負わすということはあまりにも過酷に失しますので、そのような際には、超不可抗力というような考え方から、原子力事業者を免れさせる。

----------------------------------
- 参 - 商工委員会 - 27号
昭和36年05月30日
○参考人(加藤一郎君) 加藤でございます。
第二の問題といたしまして、その場合の免責事由をどこまで認めるかということがございます。この法案では、三条一項ただし書きにおきまして、「異常に巨大な天災地変又は社会的動乱」というものを免責事由としてあげております。この点は、ともかく原子炉のように非常に大きな損害が起こる危険のある場合には、今までのところから予想し得るようなものは全部予想して、原子炉の設定その他の措置をしなければならない。従って、普通の、いわゆる不可抗力といわれるものについて、広く免責を認める必要はないわけであります。むしろ今まで予想されたものについては万全の措置を講じて、そこから生じた損害は全部賠償させるという態勢が必要であります。そこで、たとえばここでいう「巨大な天災地変」ということの解釈といたしましても、よくわが国では地震が問題になりますが、今まで出てきたわが国最大の地震にはもちろん耐え得るものでなければならない。さらにそれから、今後も、今までの最大限度を越えるような地震が起こることもあり得るわけですから、そこにさらに余裕を見まして、簡単に言いますと、関東大震災の二倍あるいは三倍程度のものには耐え得るような、そういう原子炉を作らなければならない。逆に言いますと、そこまでは免責事由にならないのでありまして、もう人間の想像を越えるような非常に大きな天災地変が起こった場合にだけ、初めて免責を認めるということになると思われます。そういう意味で、これが「異常に巨大な」という形容詞を使っているのは適当な限定方法ではないだろうかと思われます。これは、結局、保険ではカバーできないことになりますので、あとで出ます政府が十七条によって災害救助を行なうことになるわけであります。

------------------------------------
- 参 - 科学技術振興対策特別委… - 13号
昭和54年06月01日
○政府委員(山野正登君) これは日本の歴史上余り例を見ないような大地震、大噴火あるいは大風水災等を指しておるというふうに考えておるわけでございまして、たとえて申しますと、関東大震災と申しますのは、巨大ではございますが、異常に巨大とは考えていないわけでございまして、こういったふうなものを相当程度上回るものというふうに考えております。

---------------------------
- 衆 - 法務委員会 - 4号
平成23年03月30日
○加藤政府参考人 御説明いたします。
 御指摘の原子力損害の賠償に関する法律第三条第一項にただし書きがございまして、そこには異常に巨大な天災地変に関する規定がございます。
 これにつきましては、昭和三十六年の法案提出時の国会審議がございまして、その中で、超不可抗力であり、全く想像を絶するような事態であるというような説明がされてございまして、これは、原子力損害につきましては一義的には原子力事業者が責任を負うべきであるという趣旨であるというふうに考えてございます。
 したがいまして、こういう考え方でございまして、賠償に関しましては確定的なことを申し上げる段階ではございませんけれども、いずれにしましても、法律の趣旨、目的に沿いまして、被害者の方々の保護に全力、万全を尽くしてまいりたいと考えてございます。
○稲田委員 では、例外規定には当たらないという判断ですか。そこだけちょっとお伺いいたします。
○加藤政府参考人 現在、詳細につきましては関係部局と検討してございますけれども、原子力損害につきましては、一義的には原子力事業者が責任を負うべきものであるというふうに考えてございます。

--------------------------------
- 衆 - 経済産業委員会 - 3号
平成23年04月06日
○加藤政府参考人 御説明いたします。
 二点目の御指摘でございます天災地変の点でございますけれども、これに関しましては、原子力損害の賠償に関する法律第三条一項に御指摘の「異常に巨大な天災地変」がございますが、これに関しましては、昭和三十六年にこの法律を提案しまして国会審議で御議論いただいたときに、この天災地変につきましては、超不可抗力あるいは全く想像を絶するような事態というような御説明がなされてございます。これは、原子力損害につきましては一義的には原子力事業者が責任を負うべきであるという趣旨であるというふうに考えてございまして、今回の原子力発電所の事故による損害につきましても、一義的には原子力事業者でございます東京電力が責任を負うべきものであると考えてございます。
 今後、先ほど御説明したような損害賠償法の趣旨、目的に沿いまして、被害者の保護に万全を期してまいりたいと考えてございます。

---------------------------------


テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-04-19 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その7 過失の競合と立証責任

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その7 過失の競合と立証責任

----------------------------

1「異常に巨大な天災地変」に該当しないとき→3条1項本文の責任あり
2「異常に巨大な天災地変」に該当するとき
(1)原子力事業者に過失なし→3条1項但書で免責
(2)原子力事業者に過失あり(「によつて生じた」の解釈?)
 A 過失があっても無くても当該原発事故が発生したといえるとき
 B 過失と災害が相まって当該原発事故が発生したといえるとき

-----------------------------

 上の2(2)のAとBの場合に,どう解釈するかが問題となる。
 
1 Aの場合
 この場合,原子力事業者の過失の有無にかかわらず,同一結果が生じたといえる以上,不可抗力性ははっきりしており,但書の適用による免責は認められることにろう(択一的因果関係?として,条件関係ないし相当因果関係の否定の問題として捉える余地?)。
 ただし,通常は,過失が存在し競合したような場合では,それが無き場合と全く同一の「その結果」が生じたといえる場面は少なく,過失が競合して損失が拡大しているような場合は,次ぎのBの場合に該当するはずである。

2 Bの場合
 原子力事業者の過失と自然災害が相まってその事故が発生したような場合どう考えるかが問題となる。
-------------- 
・原子力災害補償専門部会の答申(昭和34年12月)
「原子力事故による原子力損害については原子力事業者が無過失責任を負うものとし、きわめて特別の場合にのみ免責されるものとする」

・原子力委員会内定「原子力災害補償制度の確立について」(昭和35年3月)
「原子力損害については、その損害を生ぜしめた原子力事業者が無過失責任を負うものとし、不可抗力性の特に強い特別の場合にのみ免責されるものとする」

・衆議院国会審議(昭和35年5月17日)の中曽根趣旨説明
「無過失責任といたしましたのは、原子力の分野においては、未知の要素が含まれるという実情にかんがみ、原子力損害の発生について故意、過失の存在しない場合も考えられ、また、かりにこれらの要件が存在するといたしましても、その立証は事実上不可能と認められるからであり、一方、近代科学の所産である危険を内包する事業を営む者は、よって生ずる損害については故意、過失の有無を問わず責任を負うべしとして無過失責任を課している各国の例に徹しても妥当であると考えられるからであります。また、原子力事業が広範な産業の頂点に立つ総合産業でありますだけに、損害発生時における責任の帰属が不明確になる場合が予想されるのであります。それでは被害者の保護に欠けるばかりでなく、原子力事業に対する資材、役務等の供給が円滑を欠き、事業そのものの発達が阻害されることとなるおそれが強い点もあわせ考慮して責任の集中を行なったのであります。従ってまた、損害の発生が資材、役務の供給に原因するような場合にありましても、原子力事業者の求償権は原則としてこれらの者に故意がある場合に限って行使できるものとしたのであります。ただし、異常に巨大な天災地変等によって損害が生じた場合まで、原子力事業者に賠償責任を負わせますことは公平を失することとなりますので、このような不可抗力性の特に強い特別の場合に限り、事業者を免責することといたしたのであります」

・ジュリスト1961年10月15日号13頁(No.236)【特集】原子力損害補償 原子力災害補償をめぐって(座談会)我妻栄,鈴木竹雄,加藤一郎,井上亮,福田勝治,堀井清章,長崎正造,杉村敬一郎
(3条1項但書について)井上「これは無過失責任の原則を原子力事業者に適用したが,諸外国の例にもあるように不可抗力性の特に強い天災地変や社会的動乱の場合に,一体原子力事業者に最後まで賠償責任を負わすべきかどうかという点について,結論的にはこういう表現のただし書きをおいたのであります。」
-------------------

 立法経過を考慮すれば,3条1項但書は,原子力事業者に,重い無過失責任を課した一方で,特に不可抗力の強い場合に,例外的に免責するための規定を置いたものと理解されるはすで,過失と自然力が相まって当該原発事故が発生したような場合には,それは原子力事業者の過失が無ければ避けることができた事故ということになり,「不可抗力性の特に強い」(原子力災害補償専門部会の答申(昭和34年12月)等)場合とはいえず,また「異常に巨大な天災地変」には該当するが、当該事故は「によって生じたもの」とは言えないとして、但書の適用による免責はないことになろう。つまり、但書に該当する場合は,無過失責任の負担が緩和され,過失責任の原則に戻る、あるいは無過失の抗弁が許される状態に戻るという理解でよいのではなかろうか。
〔もっとも立法過程を見ると,「異常に巨大な天災地変」については,想像を絶するようなものと考えられていたようで,これは,そもそも過失など問題とならないほどの異常に巨大なものだと考えると,二つが相まってはじめて損害が生じるような、上のBのようなケースは存在しないのかもしれない。〕

3 立証責任の問題
 まず,原賠法3条1項本文との関係で,例外としての同条項但書がある以上,通常の文言の解釈としては,「異常に巨大な天災地変」の存在については,抗弁としてそれを主張する原子力事業者がその立証責任を負うはずである。
 そして「異常に巨大な天災地変」の存在が立証されたとして,無過失の立証,ないし過失があっても同事故となっていたことの立証を原子力事業者が負うべきか,あるいは但書の適用否定を主張し,損害賠償請求する側が,原子力事業者の過失を立証すべきかが問題となろう。
 この点,過失の競合の問題を,因果関係(条件関係+相当因果関係)の存在の問題と理解すると,異常に巨大な天災地変「によって生じた」(因果関係)ことの立証責任は,文理からして,但書適用を主張する側の原子力事業者が負うことになる。そうではなくて,純粋に過失の有無の問題として,通常の不法行為(民法709条)と同様に考えれば,その立証責任は賠償を請求する被害者側にあることになる。もっとも,立証責任の分担は,理論的に厳密に決定しうるものではなく,最終的には,法の趣旨(原賠法1条)や公平の理念等から,裁判所が判断するということになろう。

〔結論〕
・原子力事業者に有利な解釈
但書適用による免責が認められるには,原子力事業者が
①当該災害が「異常に巨大な天災地変」であること
②当該災害と当該原発事故との因果関係の存在
を立証すればよい。

・原子力事業者に不利な解釈
但書適用による免責が認められるには,原子力事業者が
①当該災害が「異常に巨大な天災地変」であること
②当該災害と当該原発事故との因果関係の存在
③原子力事業者の無過失(ないし過失の有無にかかわらず当該事故が発生したこと)
の立証を要する。

2011-04-18 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その6 関東大震災の3倍論の不毛性

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その6 関東大震災の3倍論の不毛性

 その3でみた中曽根答弁(昭和35年月17日)の「関東大震災の三倍以上の大震災」というものが,どこから来たかについて,立法前に政府に答申を出した法律学者等の座談会や概要説明に,以下のような記述があった。
http://www.yuhikaku.co.jp/static/shinsai/jurist.html

----------------------------------
・ジュリスト1961年10月15日号16頁(No.236)【特集】原子力損害補償 原子力災害補償をめぐって(座談会)我妻栄,鈴木竹雄,加藤一郎,井上亮,福田勝治,堀井清章,長崎正造,杉村敬一郎
「井上 これは専門部会でもずいぶん御義論をいただいたわけであります。そして法案では「異常に巨大な天災地変」という言葉を使っています。少なくとも関東大震災の三倍以上くらいの地震これはいまだかってない想像を絶した地震というようなものを一応考えているわけです。およそ想像ができる,あるいは経験的にもあったというのは,この「異常に巨大な天災地変」の中には一応含まれないという解釈をしているわけです。」
「加藤 これは関東大震災のように今まであったものが入らないことは当然でしょうが,その三倍から五倍からか,そこら辺になるときめ手がなくなる。今おっしゃった三倍という見当は,現在作っている原子炉が大体そういう基準でできているのですか。」
「井上 一応そういうことも考慮の中に入っていたわけです。東海村の建設中のコールダーホールの設計基準が,大体関東大震災の二倍程度の地震にたえうるような設計ということになっていますが,一応ここでは少なくとも常識で考えられない,歴史上いまだかったないようなという趣旨です。」

・ジュリスト1961年10月15日号(No.236)31頁【特集】原子力損害補償 原子力損害2法の概要 竹内昭夫
「第一に問題になるのは,「異常に巨大な」という包括的・弾劾的な表現が,具体的にはとの程度の「天災地変又は社会的動乱」を意味するかという点である。」
「-関東大震災や伊勢湾台風のように-およそ経験的に考えられるような程度のものに対しては万全の防護措置がなされるべきは当然であり,じじつ日本原子力発電株式会社が輸入するコールダーホール型原子炉は関東大震災の二ないし三倍の地震までの耐震性をもつよう設計されている。」
「従って,ここで免責される「天災地変又は社会的動乱」とは,現在の技術をもってしては,経済性を全く無視しない限り,防止措置をとりえないような,極めて限られた「異常かつ巨大な」場合を意味するわけである。」
--------------------------------

 結局,この関東大震災の三倍というのは,当時東海村に建設中の原子炉が,関東大震災の2~3倍程度には耐えうるものだから,その「3倍」という数字が,なんとなく使われるようになったものと思われる。
 上の竹内昭夫の「経済性を全く無視しない限り,防止措置をとりえないような,極めて限られた「異常かつ巨大な」場合」というよな記述は,経済性という別の視点を持ち込んでいるようであるが,いずれにしても「3倍」というのは,当時つくられていた原子炉の耐震性の上限よりも上程度という意味のようである。(ただし,この議論は,安全性に関しては,完全に転倒した議論ではあるが。)
 
 このように「3倍」論は,当時作られていた原子炉の地震についての耐震性を基に言われ始めたものであり,立法当時は,津波被害はほとんど想定されていなかったようで,ざっと見たところ議論された形跡がない。今回のように電源が全て喪失し,その結果爆発事故に至り,その原因が主として大津波によるような事件では,「3倍」というのは何の基準にもなり得ないのではないか。

テーマ : 原発事故
ジャンル : ニュース

2011-04-13 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その5 原子力委員会の議論(平成10年9月)

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その5 原子力委員会の議論(平成10年9月)

以下は,平成10年9月に行われた原子力委員会の専門部会の議論である。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo03/siryo3-6.htm
ここでは

「日本の歴史上余り例の見られない大地震、大噴火、大風水災等」

「通常の「不可抗力」よりも大幅に限定し、極めて異例な事由」

「単なる天災地変でなく極めて異例な事由(事業者がどんなに注意しても避けることができない事態、すなわち通常は想定し得ない不可抗力)」

と理解されている。


------------------------------

免責事由(異常に巨大な天災地変)について
1.現状
 今般、「原子力損害の賠償に関する法律(以下「原賠法」という。)」の改正にあたり、検討事項の一つに、原子力事業者の免責事由がある。
 原子力事業者は原子力損害に対する無過失責任を負っているが、原賠法第3条第1項但書では、以下の事由による原子力損害については原子力事業者を免責としている。
 (1)異常に巨大な天災地変
 (2)社会的動乱
 「異常に巨大な天災地変」とは、一般的には日本の歴史上余り例の見られない大地震、大噴火、大風水災等が考えられる。例えば、関東大震災を相当程度(約3倍以上)上回るものをいうと解している。
 原子力損害賠償制度に関する国際条約としては、OECDのパリ条約とIAEAのウィーン条約があるが、前者では「異常に巨大な天災地変(agravenaturaldisasterofanexceptionalcharacter)」が免責となっているのに対して、昨年9月に採択(未発効)されたウィーン条約改正議定書においては、第Ⅳ条パラ3において従来免責とされていた「異常に巨大な天災地変」が免責となっていない。

2.我が国原賠法の考え方
(1)賠償責任の厳格化
 被害者保護の立場から、原子力事業者の責任を無過失賠償責任とするとともに、原子力事業者の責任の免除事由を通常の「不可抗力」よりも大幅に限定し、極めて異例な事由に限るという意図で、上記二つのみを免責とした。
(2)自然災害の取扱い
 「異常に巨大な天災地変」にあたらないものは、原子力事業者の責任となるが、事由により以下のとおり区分される。
 ①地震・噴火・津波→政府補償契約でカバー
 ②①以外の事由(洪水、高潮、台風、暴風雨等)→民間損害保険会社の賠償責任保険でカバー

3.国際条約の考え方及びウィーン条約の改正
(1)パリ条約と現行ウィーン条約
 いずれも「戦乱」と「異常に巨大な天災地変」の二つを免責事由としている。
 ただし、前者は締約国が必ず従うべき絶対的免責事由であるが、後者は各国で別段の定めをすることができる条件付免責事由である。
(2)ウィーン条約改正議定書
 1986年4月に旧ソ連邦で起きたチェルノブイル事故を直接の契機として、1989年5月から改正作業をスタートさせ、昨年9月12日に採択された。
 ここでは、免責事由として「異常に巨大な天災地変」が規定されていない。

4.免責事由についての諸外国の原賠法の考え方(別紙)
 ヨーロッパ各国の原賠法は、同じくパリ・ブラッセル条約の締約国であっても免責事由について差異がある。これは原賠法全体の仕組み、特に責任制限及び賠償措置の内容と関連している。
(1)英国(パリ・ブラッセル条約締約国)
 免責は戦乱のみで、自然災害は異常なものであっても免責とならない。
 これは、イギリスには大規模自然災害が少ないことにもよるが、事業者の責任が比較的低い金額で制限され、かつその上は明確に国家補償があることによる。
 事業者の付保する責任保険でも戦乱は免責だが、自然災害は異常なものであっても事業者が有責となればてん補される。
(2)フランス、スウェーデン(パリ・ブラッセル条約締約国)
 (フランスはパリ条約第9条により)戦乱、異常自然災害とも免責である。
 責任保険でも戦乱、異常自然災害とも免責である。
 また、事業者の責任は有限である。
(3)ドイツ(パリ・ブラッセル条約締約国)
 免責事由はない。不可抗力免責を一切認めない。これは原子力損害のような大規模被害の際には、企業の利益よりも被害者救済が優先すべきという理由による。
 パリ条約締結に際しても、従来からの立場を変えず、原賠法で同条約の規定を排除した。
 責任保険では戦乱、異常自然災害とも免責となっているが、10億ドイツマルクまでは国が補償する。
(4)スイス
 ドイツと同じく、戦乱、異常自然災害とも免責とならない。
 責任保険では戦乱、異常自然災害とも免責となっているが、国が補償することができる。
(5)米国
 連邦法である原子力法(プライス・アンダーソン条項)では戦乱のみ免責である。異常自然災害について規定はない。米国法制の下では、不法行為責任の性質及び要件については、州法に委ねられている。従って事業者の責任は州法による。(絶対責任や厳格責任他)
責任保険でも戦乱は免責だが、自然災害は異常なものであっても事業者が有責となればてん補される。
事業者の責任は高額だが有限である。
(6)カナダ
 免責は戦乱のみで、異常自然災害は免責とならない。
責任保険でも戦乱は免責だが、自然災害は異常なものであっても事業者が有責となればてん補される。
事業者の責任は有限である。
(7)韓国
 我が国原賠法と全く同じ法体系で、戦乱、異常自然災害とも免責である。これらは国が必要な措置をとる。
責任保険では戦乱、自然災害は免責である。異常でない自然災害は政府補償契約でカバーされる。

5.我が国の他法令
 原賠法以外でも、公害規制法等で無過失賠償責任を課す法令がある。また、異常自然災害については以下のような規定がされており、異常自然災害に起因する損害に対しては事業者を免責とするのが一般的である。
(1)油濁損害賠償保障法(第3条)
 「異常な天災地変」により生じた損害は免責としている。但し、同法を支える「油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約」(条約第3条で「例外的、不可避的かつ不可抗力的な性質を有する自然現象」によって生じた汚染損害は、船舶所有者を免責としている。)自体がパリ条約を参照してできたものであるので、別個の事例とはできない。
(2)大気汚染防止法(第25の3条)、水質汚濁防止法(第20の2条)、鉱業法(第113条)、水洗炭業に関する法律(第19条)、
 損害の発生に関して「天災その他の不可抗力」が競合したときは、裁判所は、損害賠償の責任及び額の確定について、これを斟酌することができる。従って、免責とする余地がある。

6.検討及び考察
(1)我が国原賠法における免責事由のあり方
 各国の立法例をみても明らかなように、免責事由の内容は、責任制限・保険条件・国家補償を含む損害賠償制度全体及び各国の地理的条件等との関連において総合的に検討されるべきである。また、我が国の立法例では異常自然災害に起因する損害は基本的に事業者を免責としている。
 我が国は原賠法制定時に無過失・無限責任制度を採用し、事業者の免責は単なる天災地変でなく極めて異例な事由(事業者がどんなに注意しても避けることができない事態、すなわち通常は想定し得ない不可抗力)に限定したものである
 よって、このような場合にまで事業者に賠償させることは公平を失し、もはや民事賠償の問題とはいえないのではないかと考えられる。
(2)原賠法第17条の規定
 我が国原賠法では、「異常に巨大な天災地変」に起因する損害は事業者を免責とはしているものの、法第17条で、国が「被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずる」こととしている。国による補償とはしていないが、国が災害救助法の適用や特別立法等の措置を講じて被害者保護に遺漏なきを期している。
(3)周辺諸国の状況等
 我が国周辺のアジア諸国の原賠法(韓国、台湾、中国草案、インドネシア)では、異常自然災害に起因する損害が免責とされている。
 以上総合的に勘案すると、現行原賠法において「異常に巨大な天災地変」に起因する原子力損害については国の救済措置がとられること等から、国際的水準には見合っていると考えられる。
 よって、「異常に巨大な天災地変」に起因する原子力損害を原子力事業者の有責に変更することについては、我が国原子力損害賠償制度の仕組み全体に関わるので、今後の国際的動向も踏まえつつ、十分慎重に対応する必要があると考えられる。
以 上
 


別 紙
「免責事由」を規定する各国の原賠法
(1)英国
 第13条(一定の場合における補償の排除、拡張又は減少)
 (4) 本法第7条、第8条、第9条、第10条又は第11条により課せられる義務は、
(a) その義務の違反を構成する出来事又はそれによる傷害若しくは損害の発生が、連合王国内の武力紛争を含む紛争中の敵対行為に帰せられるときは、その出来事により生ずる傷害又は損害について、その義務に服する人に責任を課さない。
(b) 出来事又はそれによる傷害若しくは損害の発生が、自然的災害に帰せられる場合には、それが、合理的に予見することのできなかった例外的な性格を持つとしても、責任を課する。

(2)フランス
 パリ条約第9条(免責)
   運転者は、戦闘行為、敵対行為、内戦、反乱、又は、原子力設備が設置されている締約国の国内法に別段の規定がある場合を除き、異常かつ巨大な自然災害による原子力事故による損害に対して責任を負わない。

(3)ドイツ
 第25条(原子力施設に対する責任)
(1) 損害が原子力施設からの原子力事故に起因する場合は、原子力施設の保有者の責任については、パリ条約の規定のほか、この法律の規定を適用する。(以下略)
(2) 略
(3) 武力闘争、敵対行為、内戦、暴動一揆又は異常かつ巨大な自然災害に直接起因する原子力事故による損害の責任の排除に関するパリ条約の9条の規定は、適用されない。(以下略)

(4)スイス
 第5条(免責)
  1. 原子力施設の事業者あるいは輸送免許保持者は、被害者が故意に損害を引き起こしたことを証明した場合は、責任を免除される。
2. 原子力施設の事業者あるいは輸送免許保持者は、被害者がはなはだしい不注意から損害を引き起こしたことを証明した場合は、全面的あるいは部分的に責任を免除される。

(5)アメリカ
 第11条(定義)
  w. 「公的責任」とは、原子力事故または予防的避難から生じまたは結果として発生する一切の法的責任(原子力事故または予防的避難に対応する過程において州または州の行政区画が負担したすべての妥当な追加費用)をいう。ただし、(i)略(ii)戦争行為に起因する請求、及び(iii)略を除く。(以下略)

(6)カナダ
 第7条(武力紛争による事故に対する免責)
   運転者は、傷害または損害を生ぜしめる原子力事故が戦争、侵略または暴動の過程における武力紛争の直接の結果発生した場合は、第3条に定める種類の傷害または損害に対して責任を負わない。

(7)韓国
 第3条(無過失責任及び責任の集中等)
  1.  原子炉の運転等により、原子力損害が生じた時は、当該原子力事業者が、その損害を賠償する責任を負う。但し、その損害が異例的に甚大なる天災、地変、戦争又はこれに準ずる事変により生じた場合にはそうではない。
-----------------------------------

テーマ : 東北地方太平洋沖地震
ジャンル : ニュース

2011-04-12 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その4 予見可能性

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その4 予見可能性

 下に示したのは,平成21年6月と7月の経済産業省総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会での議論の抜粋である。活断層・地震研究センター長岡村行信氏が,東電側の出席者に貞観地震の評価が軽すぎる点や,連動型地震の可能性を何度も指摘するも,東電側としては,さほど危険視する必要がないとの認識であったようだ。
 結果的にはそれが甘かったわけで,以下のような研究者の指摘があった以上,東電側に予見可能性が全くなかったとまでは言えないのではないか。

------------------------------------
総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会
耐震・構造設計小委員会 地震・津波、地質・地盤
合同WG(第32回)議事録
日 時:平成21年6月24日(水)10:00~12:30
場 所:経済産業省別館10階 各省庁共用1028号会議室
出 席 者: 主 査 纐纈 一起 委 員 安達 俊夫 吾妻 崇 阿部 信太郎 岩下 和義 宇根 寛 岡村 行信 衣笠 善博 駒田 広也 杉山 雄一 高島 賢二 古村 孝志 

○纐纈主査 岡村先生どうぞ。
○岡村委員 まず、プレート間地震ですけれども、1930年代の塩屋崎沖地震を考慮されているんですが、御存じだと思いますが、ここは貞観の津波というか貞観の地震というものがあって、西暦869年でしたか、少なくとも津波に関しては、塩屋崎沖地震とは全く比べ物にならない非常にでかいものが来ているということはもうわかっていて、その調査結果も出ていると思うんですが、それに全く触れられていないところはどうしてなのかということをお聴きしたいんです。
○東京電力(西村) 貞観の地震について、まず地震動の観点から申しますと、まず、被害がそれほど見当たらないということが1点あると思います。あと、規模としては、今回、同時活動を考慮した場合の塩屋崎沖地震でマグニチュード7.9相当ということになるわけですけれども、地震動評価上は、こういったことで検討するということで問題ないかと考えてございます。
○岡村委員 被害がないというのは、どういう根拠に基づいているのでしょうか。少なくともその記述が、信頼できる記述というのは日本三大実録だけだと思うんですよ。それには城が壊れたという記述があるんですよね。だから、そんなに被害が少なかったという判断をする材料はないのではないかと思うんですが。
○東京電力(西村) 済みません、ちょっと言葉が断定的過ぎたかもしれません。御案内のように、歴史地震ということもありますので、今後こういったことがどうであるかということについては、研究的には課題としてとらえるべきだと思っていますが、耐震設計上考慮する地震ということで、福島地点の地震動を考える際には、塩屋崎沖地震で代表できると考えたということでございます。
○岡村委員 どうしてそうなるのかはよくわからないんですけれども、少なくとも津波堆積物は常磐海岸にも来ているんですよね。かなり入っているというのは、もう既に産総研の調査でも、それから今日は来ておられませんけれども、東北大の調査でもわかっている。ですから、震源域としては、仙台の方だけではなくて、南までかなり来ているということを想定する必要はあるだろう、そういう情報はあると思うんですよね。そのことについて全く触れられていないのは、どうも私は納得できないんです。
○名倉安全審査官 事務局の方から答えさせていただきます。
産総研の佐竹さんの知見等が出ておりますので、当然、津波に関しては、距離があったとしても影響が大きいと。もう少し北側だと思いますけれども。地震動評価上の影響につきましては、スペクトル評価式等によりまして、距離を現状の知見で設定したところでどこら辺かということで設定しなければいけないのですけれども、今ある知見で設定してどうかということで、敷地への影響については、事務局の方で確認させていただきたいと考えております。多分、距離的には、規模も含めた上でいくと、たしか影響はこちらの方が大きかったと私は思っていますので、そこら辺はちょっと事務局の方で確認させていただきたいと思います。あと、津波の件については、中間報告では、今提出されておりませんので評価しておりませんけれども、当然、そういった産総研の知見とか東北大学の知見がある、津波堆積物とかそういうことがありますので、津波については、貞観の地震についても踏まえた検討を当然して本報告に出してくると考えております。以上です。
○纐纈主査 やはり地震動も、少なくとも検討したということはないとまずいと思いますけれども、そのようにお願いしたいと思います。宇根先生どうぞ。

(別の委員による別の議論つづく)

○纐纈主査 岡村先生。
○岡村委員 先ほどの繰り返しになりますけれども、海溝型地震で、塩屋崎のマグニチュード7.36程度で、これで妥当だと判断すると断言してしまうのは、やはりまだ早いのではないか。少なくとも貞観の佐竹さんのモデルはマグニチュード8.5前後だったと思うんですね。想定波源域は30少し海側というか遠かったかもしれませんが、やはりそれを無視することはできないだろうと。そのことに関して何か記述は必要だろうと思います。

(別の議論へいって閉会)







---------------------------------------
総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会
耐震・構造設計小委員会 地震・津波、地質・地盤
合同WG(第33回)議事録
日 時:平成21年7月13日(月)14:00~16:30
場 所:経済産業省別館10階 各省庁共用1028号会議室
出 席 者: 主 査 纐纈 一起 委 員 阿部 信太郎 伊藤 洋 岡村 行信 衣笠 善博 駒田 広也 杉山 雄一 高島 賢二 高田 毅士 古村 孝志 翠川 三郎 山本 博文 吉中 龍之進

○東京電力(西村) 東京電力西村と申します。よろしくお願いいたします。
それでは、引き続きまして2点目のコメント回答でございます。
前回のワーキングの会合におきまして、プレート間地震の検討を行う際に、869年の貞観の地震を考慮すべきではないかという御意見をいただきました。
本日、御説明は2点ございまして、1点目は、まず、平成20年3月に私どもから中間報告書を提出したわけですが、その際にどのように考えてきたかということについて御案内申し上げます。それから、2点目でございますが、その中で「日本被害地震総覧」という文献に基づいて諸元を設定しているわけですけれども、それのほかに、前回御質問いただいた佐竹さんほかの論文もあるということもありましたので、こういったものを考えた場合、基準地震動Ssに対してどういった影響があるかということについて検討してまいりましたので、その内容について御説明申し上げます。

(東電側のシミュレーション説明が続く)

被害地震総覧で諸元の幅を考慮する際には陸に近づけばマグニチュードは小さ目になると考えられますが、ここでは、仮に目いっぱい近づけた上でマグニチュードを大きくすることを考えた場合どうなるかということを併せて示しております。その際、佐竹さんほかが提案されている波源モデルの耐専スペクトルのレベルに対して、ほぼ同じか、比較して若干小さめになっていることがわかります。
以上ですが、あとは参考文献ということでございます。説明は以上です。

○纐纈主査 ただいまの御説明に御質問等ございましたらお願いいたします。岡村先生。

○岡村委員 貞観ですけれども、確かに地震動をどういうふうに推定するかというのは難しいとは思うんですが、ここでは佐竹ほか(2008)の断層モデルをそのまま、そこから地震動を計算されているんですが、そもそもこういう地震って何なんだということを今の知見で考えると、やはり連動型地震と言われているものだろうと考えるのが妥当だと思うんですね。それは、17世紀ですか、千島海溝で起こったとか、2004年のスマトラ沖地震がそういうものに相当すると考えているわけですけれども、そういう地震というものは、要するにもう少し短い間隔で普通に起こっている震源域が、複数の震源域が同時に破壊する、そういうことで起こるのだろうと言われているわけですね
そういうふうに考えると、やはりここは、塩屋崎沖地震というものが1つある。もう少し北に行くと宮城県沖地震というものもある。そこをまたぐようなところでこの貞観の地震というものは考えざるを得ない。津波の情報だけではですね。そうすると、やはり今わかっている震源域のところは連動の範囲に含まれるのではないかと考えるのが、今の知識では妥当かなと私は思うんですよね。だから、これだとちょっと外れますよね。塩屋崎沖地震よりちょっと遠いところに貞観の震源モデルを考えて、それとは別のものだというイメージで今、話をされているんですけれども、別にしていいとはなかなか考えにくいのではないかと私は思います。
○纐纈主査 いかがでしょうか。
○東京電力(西村) 御指摘ありがとうございました。それぞれの地震をどのように同時活動させるかということは、なかなか難しいところだと我々思っているところですが、まずここで申し上げたいのは、塩屋崎沖自体が、それぞればらばらだったものを、同時活動を見るということを今回やっているということ、それから、貞観の地震も、波源モデルということもありますので、本来、もう少しばらばらしていたのかもしれないということはあるかと思いますが、仮にこういったものを考えた場合、目いっぱい見たとしてもということで今回ちょっと見てみたということです。
御指摘のように、例えば今回の貞観の地震と塩屋崎沖をつなげるかどうかということについては、ちょっと我々もそこまでできるかどうかというところがまだ十分な情報がないのかなと思いますが、そうは申しましても、今回ごらんいただきましたように、まず、こういったそれぞれの地震を考えても、Ssのレベルから考えますと、まだ余裕があるということを踏まえてこのようにさせていただいていると考えています。
ただ、まとめの中でも申し上げましたように、貞観の地震についてはまだ情報を収集する必要があると認識しておりますので、引き続き検討は進めてまいりたいと思ってございます。
○纐纈主査 岡村先生、よろしいですか。

(略)

○名倉安全審査官
今回、この貞観地震の記載を追加することによりまして、39ページから参考文献を記載しておりますけれども、その次の40ページに佐竹ほか(2008)の文献ということで記載させていただいております。

(中間報告修正差分等の説明つづく)

○纐纈主査 どうぞ、御意見ありましたら。岡村先生。
○岡村委員 最初の中間報告の案で、また貞観の話ですけれども、どちらも23ページに貞観のことが書いてあって、ここでは、新たな知見の波源モデルを震源断層と仮定した上で地震動を計算したと。それで、小さいということしか書かれていないんですね。先ほど私が申し上げたのは、それでは足りないのではないですかということを申し上げたつもりで、要するに塩屋崎沖地震、それも連動させているということですけれども、貞観はそれ全体を含むものである可能性があるということなので、それで十分とは思っていないというつもりで言ったんです。それは、東京電力さんも、それでまた検討するとお答えになったと私は理解したので、そのことを少し何か検討していただきたいと思います。
○名倉安全審査官 済みません、逆にお聴きしたいのは、これは、今さまざまな研究機関において、こういった知見をいろいろと、調査結果が今どんどん得られているような状況でありまして、今後、いろいろな知見が得られていく中で、その時々に応じた対応をすべきということであるのか、それとも、今の中間報告における検討の中でそれをやるべきとおっしゃられているのか、そこのところはどちらということで理解すればよろしいでしょうか。
○岡村委員 この中間報告の性格をどう考えるかだと思うんですね。ただ、現状でわかっていることは、先ほど申し上げたことなわけですね。そこからどういう地震動が考えられるかということは、まだ研究としては全く行われていない話ではありますけれども、ただ、そういう海溝型地震に関する知見というものを考えると、それなりのものを考えるべきではないかというのが私の意見です。だから、それをここに入れていただけるのかどうかということだと思います。だから、地震動に関しては、よくわかっていないということもありますから、今後検討するということでもいいのかもしれないですけれども、ただ、実際問題として、この貞観の時期の地震動を幾ら研究したって、私は、これ以上精度よく推定する方法はほとんどないと思うんですね。残っているのは津波堆積物ですから、津波の波源域をある程度拘束する情報はもう少し精度が上がるかもしれないですが、どのぐらいの地震動だったかというのは、古文書か何かが出てこないと推定しようがないとは思うんですね。そういう意味では、先延ばしにしても余り進歩はないのかとは思うんですが
○名倉安全審査官 今回、先ほど東京電力から紹介した資料にもありましたけれども、佐竹ほか(2008)の中で、当然、今後の津波堆積物の評価、それは三陸の方もありましたが、それから、多分、南の方も今後やられる必要があると思いますが、そういったものによって、位置的なものにつきましては大分動く可能性があるということもありますので、そこら辺の関係を議論するためのデータとして、今後得られる部分がいろいろありますので、そういった意味では、今、知見として調査している部分も含めた形でやられた方が信頼性としては上がると私は思っていますので、そういう意味では、その時々に応じた知見ということで、今後、適切な対応がなされることが必要だと思います。その旨、評価書の方に記載させていただきたいと思います。
○纐纈主査 よろしいですか。
高島先生。
○高島委員 今の問題なんですけれども、例えば南海トラフなどでは、例えば宝永地震のときには、東海、東南海、南海が大体一緒に動いていたと。常にその様に震源域が壊れているわけではないわけですね。それで連動とおっしゃっていると思うんですけれども、そのときの地震動はどうなるか。浜岡については3つと2つと1つとそれぞれ計算していますよね。そういう御趣旨の指摘かと思ったんですけれども、佐竹先生ほかが書いているこのペーパーを知見と呼ぶのはどうかという気がします。文献や論文の類だと思うんです。知見というのはもう少し広く、属性的に明らかになったときに呼ぶのかなという気がしたんですが、表記上どうなんでしょうか。
○纐纈主査 ただ、連動させてしまうと、多分、佐竹ほかの結果によれば、津波の結果に合わなくなってしまうんですよね。
○岡村委員 このモデルは、津波堆積物の分布域まで津波が浸水するというか、それを説明するためのモデルなんですよ。要するに、どこにおいても滑り量とかいろいろファクターを変えていけば、ある程度のものはできるわけですよね。ですから、福島沖を含むようなモデルで、例えばもう少し幅を狭くするとか、沖側の部分をもう少し狭くするとかというような形で延ばせば、多分、津波の浸水域を合わせることはできると思うんですよね。このモデルをつくるときにはいろいろなファクターがありますから。
○纐纈主査 多分おっしゃるとおりだと思いますが、それだと、常識的なスケーリングとかなり離れてしまうので、地震動のモデルとしてはあり得ないものになってしまうのではないかと思いますけれども。
○岡村委員 それは、そこまで断言できるほど解析されているのかわからないですが、どうしてそういうふうに思われるわけでしょうか。
○纐纈主査 断層面サイズが大きくなれば、滑り量もそれに比例して当然大きくなりますから。
○岡村委員 いやそれほど、このモデルも、例えば大体同じ範囲で、5m、7m、10mといういろいろな計算をしているわけですよね。そのぐらいの差でかなり変わってくるということですから、私は、一応、モデルはみんな議論しましたけれども、少しずらして震源域を含むような形にすること自体はできるのではないかと思います。それは、やってみないとわからないですが。
○纐纈主査 御本人がそうおっしゃっているのでは、そのとおりかもしれません。
○名倉安全審査官 事務局からよろしいですか。
今回の中間報告におきましては、東京電力の方は津波の評価をまだ提出しておりません。そういうこともありまして、本報告で津波のところもやってくるはずですし、その中で、こういった知見も踏まえた場合の評価といったものが一体どういうふうにできるのか。その場合に、東京電力が設定した津波の解析条件ではありますけれども、そういったものに対して、津波堆積物のところ、要は得られているところの結果、そこら辺、ちょっと検討できるかどうかということはありますが、少しそういったもの、津波の波源を設定するときの考え方等との整合性もとった上で、地震動評価上何か影響があるのかという位置付けの検討は、少し必要なのかなと思っております。
○纐纈主査 何らかの記述をいただくということで御納得いただいたということでよろしいでしょうか。

ほかにいかがでしょうか。高島先生。

(別の議論がつづく)

○岡村委員 あともう一点、またしつこいようですけれども、貞観ですが、貞観をどう扱うかというのは、やはりここも先ほどの福島と同じような問題があると思いますので、そこに全く触れないというのはちょっとどうかと思うんですけれども。
○東北電力(広谷) 貞観の地震につきましては、一応、中間報告書の方にも、この地震が海洋プレート内地震か、もしくはプレート間地震であった場合、敷地に与える影響という形で、簡単な記載はしてございます。ただ、やはり先ほどの佐竹ほかに対しまして直接的な記載は特にしておりません。
先ほど、東京電力さんの方から説明がありましたけれども、仮に佐竹ほかモデルに対しましてモデル8とかモデル10というものがありましたが、等価震源距離的に見ますと、この2つの断層についてはやはり女川と福島とほぼ同じようなところに位置しておりますので、今後、福島で検討されるようなことにつきましては、女川についても同じように鋭意検討していく必要があると考えてございます。

(別の議論へ行き閉会)
-------------------------------------


2011-04-08 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その3 立法過程と解釈

■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」その3 立法過程と解釈

-------------------------------------
原子力災害補償専門部会の答申(昭和34年12月)
「原子力事故による原子力損害については原子力事業者が無過失責任を負うものとし、きわめて特別の場合にのみ免責されるものとする。ただし、この特別の場合は通常「不可抗力」と呼ばれるもののすべてに及ぶのではなく、そのうちでもいわば不可抗力性の特に強いものに限るべきであるから、たとえば「異常かつ巨大な自然的または社会的災害」というなどこの内容を適確に表現する努力のなされることが望ましい」

原子力委員会内定「原子力災害補償制度の確立について」(昭和35年3月)
原子力損害については、その損害を生ぜしめた原子力事業者が無過失責任を負うものとし、不可抗力性の特に強い特別の場合にのみ免責されるものとする。

衆議院国会審議(昭和35年5月17日)の中曽根趣旨説明
「異常に巨大な天災地変等によって損害が生じた場合まで、原子力事業者に賠償責任を負わせますことは公平を失することとなりますので、このような不可抗力性の特に強い特別の場合に限り、事業者を免責することといたしたのであります。」

同中曽根答弁
「第三条におきまする天災地変、動乱という場合には、国は損害賠償をしない、補償してやらないのです。つまり、この意味は、関東大震災の三倍以上の大震災、あるいは戦争、内乱というような場合は、原子力の損害であるとかその他の損害を問わず、国民全般にそういう災害が出てくるものでありますから、これはこの法律による援助その他でなくて、別の観点から国全体としての措置を考えなければならぬと思います」
------------------------------------

「異常に巨大な天災地変」の意味について,関東大震災の三倍以上というのは,すでに上の昭和35年の中曽根答弁に出ているが,もともと誰がいつ言い出したのかについては,今のところ不明である。過去になく,考えられないほど巨大なという意味かもしれないが,科学的根拠はなさそうである。そもそも,地震の何(震度・規模・加速度・損害規模など)を比較するのか不明であり,あまり意味がなさそうである。

 以下,「異常に巨大な天災地変」の意味を論理的に考えてみる。
 著名法学者が関与している原子力災害補償専門部会では,単なる不可抗力ではなく,「不可抗力性の特に強い特別の場合」をさすものとしているから,これは,おそらく誰の目からみても,天災等によって避けようのない事故が発生する場合を意味しているはずである。原賠法3条1項但書は,例外的に巨大な自然力が作用した場合に不可抗力の抗弁,いわば超不可抗力(我妻)の抗弁を認めたような規定である。
 
 不可抗力であったか否かは,自らの危険の支配可能性を超えたところにある統制困難な出来事であったか否かが問われ,それについては,結局は,結果回避可能性と予見可能性が問題となり,それらが経済的合理性のある範囲で可能であったか否かも問題となる(竹内昭夫「現在の技術をもってしては,経済性を全く無視しない限り,防止措置をとりえないような,極めて限られた「異常かつ巨大な」場合」ジュリスト1961年10月15日号(No.236)31頁)。

・予見可能性
・結果回避可能性
・経済的制約性

 これを原発事故で考えるなら,

①経済的合理性のある範囲内での調査研究等による予見可能性
②経済的合理性のある範囲内での防護措置の可能性

 が検討対象になるはず。

 ただし,これは通常の不可抗力の有無の判断であり,土地工作物責任(民法717)や営造物責任(国賠法2条)の前提となる予見可能性等と異ならない。

-----------------------
※(営造物(国賠法2)の「瑕疵」の認定の前提となる自然力の予見可能性)
昭和49年11月20日 名古屋高等裁判所判決(判タ318号121頁)
「災害をもたらす自然現象(外力)に対し道路の設置または管理の瑕疵を問い得るためには、まず当該自然現象の発生の危険を通常予測できるものであることを要すると解するのが相当であるが、元来、発生するか否か、発生するとしでもその時期・場所・規模等において不確定要素の多い自然現象について、いかなる場合に発生の危険が通常予測できるといえるかが問題となる。
 <要旨>思うに、自然現象については、必ずしも学問的にその発生機構が十分解明されているとはいい難いが、自然現象のもたらす災害は、学問的にすべてが解明されなければ防止できないというものではなく、また、そのために防災対策をゆるがせにすることは許されないのであつて、その当時において科学技術の到達した水準に応じて防災の行動をとり得るものであり、防災科学はまさにそのような見地に立つて、自然現象発生の危険性を検討し防災対策を研究する総合的な学問の分野である。そして、道路の設置・管理も当然このような防災科学の見地を取り入れて検討されるべきものである以上、当該自然現象の発生の危険を定量的に表現して、時期・場所・規模等において具体的に予知・予測することは困難であつても、当時の科学的調査・研究の成果として、当該自然現象の発生の危険があるとされる定性的要因が一応判明していて、右要因を満たしていること及び諸般の情況から判断して、その発生の危険が蓋然的に認められる場合であれば、これを通常予測し得るものといつて妨げないと考える。」
------------------------

 この判例では,「自然現象の発生の危険を定量的に表現して、時期・場所・規模等において具体的に予知・予測することは困難であつても、当時の科学的調査・研究の成果として、当該自然現象の発生の危険があるとされる定性的要因が一応判明していて、右要因を満たしていること及び諸般の情況から判断して、その発生の危険が蓋然的に認められる場合であれば」予見可能性があるものとされるが,原賠法3条1項但が「不可抗力性の特に強い特別の場合」を意味すると考えると,その予見可能性については,上の判例より,さらに厳しく認定されるべきはずで,蓋然性が相当低いものであっても,やはり予見可能性があった(予見可能性がなかったとは言えない)と解されるのではないか。

 また,同様に,3条1項但が「不可抗力性の特に強い特別の場合」を意味すると考える以上,②経済的合理性のある範囲内での防護措置の可能性についても,通常の工作物や営造物の場合よりも,厳格に判断されることになるのではなかろうか。

 そして,福島第1の事故の場合,経済的制約の中でも今回の津波に対する防護措置(結果回避策)はおそらく可能であり,またその津波の規模・発生についても,以前から,貞観地震等について,学者・研究者から,東電側に指摘があり,その予見可能性が無かったとはいえず,特に強い不可抗力性(超不可抗力性)があった場合には当たらないのではないか〔このあたりの問題は,事故前の段階で,どの程度の確実さをもって,巨大地震と大津波の可能性が伝えられ,東電がどの程度の情報を得ていたのか,当時の科学的調査の状況等の諸般の事情が関係してくるので,一概には言えないが,経済産業省の経済産業省総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会の会議録をみたところでは,研究者がかなり執拗に,今回のようなカスケード型の大震災を考慮すべき旨を東電側の出席者に対して発言しているものがあり,次項で見てみたい。〕

 防護措置の可能性については,事故後から考えると,さまざな方策が考えられるが,そもそも他の発電所との比較でも,福島第一の防護はやはり科学的,技術的かつ経済的にも本来可能であったということになるのではないか。
 今回の地震後の津波について,福島第一にやってきた波だけが特別に強度のエネルギーを持っていたとは思えない。他の発電所にも同様にやってきたわけで,仮に福島第一だけ波高が異常に高かったとしても,それはもともと持つ津波のエネルギーというより,海岸までの地形等の影響だろうし,それは調査すれば分かる所与の条件であって,防護策が不可能ということにはならないだろう。

 さらに、3条1項但書で原子力事業者が免責される「損害」は、天災地変「によって生じた」ものでなければならない。
 特に強い不可抗力性がある場合に免責しようとした法の趣旨からすれば、「によって生じた」といえるためには原子力事業者側の原発の設置・保存・管理や事後対応に、落ち度があろうが、無かろうがその損害が生じたといえる場合でなければならないはずである。巨大天災と、原子力事業者側の原発の設置・保存・管理・事後対応の過失が相まって初めて、その損害が生じたような場合は、そもそも避けようがあった損害であり、特に強い不可抗力によるによる損害とはとても言えないからである。
 つまりその時点で予見可能といえるような災害について、通常考えうる耐久性・備えすら無く、また、災害後の誤った判断・対応があって事故が発生したような場合は、本来避け得た損害といえ、天災地変「によって生じたもの」ではなく、但書による免責はないものと考えられる。
 このあたりの問題は、今後の事故調査等によって明かにされるべきである。


2011-04-08 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その2

【3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その2】

ネット上にあった原子力損害賠償制度専門部会報告書(案)原子力委員会原子力損害賠償制度専門部会によると。
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo05/siryo2.htm#4

------------------------------------
4.免責事由(異常に巨大な天災地変)

(1)国際的動向
 パリ条約及び現行ウィーン条約では、異常に巨大な天災地変が免責となっているのに対して、昨年採択されたウィーン条約改正議定書においては、従来免責とされていた異常に巨大な天災地変が免責とされなくなったため、我が国原賠法がこの点について改正を要するかどうかの検討を行った。

(2)現在の免責事由の取扱い
 原子力事業者は原子力損害に対する無過失賠償責任を負っているが、原賠法第3条第1項但書では、異常に巨大な天災地変による原子力損害については原子力事業者を免責としている。異常に巨大な天災地変とは、一般的には日本の歴史上例の見られない大地震、大噴火、大風水災等が考えられる
 我が国原賠法の考え方としては、被害者保護の立場から、原子力事業者の責任を無過失賠償責任とするとともに、原子力事業者の責任の免除事由を通常の不可抗力よりも大幅に限定し、賠償責任の厳格化を図っている。
 また、免責事由の内容は、責任制限、保険条件、国家補償を含む損害賠償制度全体及び地理的条件等との関連において総合的に検討されるべきものである。

(3)我が国における免責事由の検討
 我が国は原賠法制定時に無過失・無限の賠償責任及びいわゆる責任の集中を制度として採用し、更に事業者の免責は単なる天災地変でなく、異常に巨大な天災地変に限定しており、このような場合にまで事業者に賠償責任を負わせることは妥当ではないと考えられる。
 また、異常に巨大な天災地変による原子力損害が生じた場合には、法第17条で、国が被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講じて被害者保護に遺漏なきを期すこととしている。
 以上の点を踏まえ、現行原賠法において異常に巨大な天災地変による原子力損害については国の救済措置が別途講じられることとなっていることから、国際的水準との関係においては、改めて法改正を要しないと考えられる。

-------------------------------------


この議論によると「異常に巨大な天災地変」とは、一般的には日本の歴史上例の見られない大地震、大噴火、大風水災等が考えられるとのことである。

しかし,地震のどの点を比較するのか不明であって,震度・マグニチュード・加速度など考え得るが,そもそも,地震学発展以前の地震について正確な震度・マグニチュード・加速度など推定の範囲でしか得られない。日本の歴史といってもどこまで遡って考えるべきかあいまいである。

wikiによると超巨大地震として以下のものが挙げられている。
・アメリカ北西部カスケード沈み込み帯の地震(カスケード地震)(M8.7 - 9.2、1700年)
・アリカ地震(M9.0 - 9.1[5]、1868年)
・カムチャツカ地震(Mw9.0、1952年)[6]
・チリ地震(Mw9.5、1960年)
・アラスカ地震(Mw9.2、1964年)
・スマトラ島沖地震(Mw9.1 - 9.3、2004年)
・東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)(Mw9.0、2011年)

当然であるが,1700年以前にもこのような超巨大地震があったはずで,これ以外には存在しないということではなかろう。これを見ると,マグニチュード9を超える超巨大地震は,世界的にはあんがい頻繁に起きてる感じがする。

日本の地震の歴史をみると,wikiを見る限りはM9超えの地震は,今までなかったような記述になっている。ただし,これも古い地震については,推定ということになろう。wikiの地震年表で気になったのには,869年7月9日に起きた貞観三陸地震である。M 8.3~8.6と推定されているが,発生場所が今回の地震と似ていて,津波の被害も相当大きかったものと推定されている。(津波災害は繰り返す
場所的にいっても今回の地震が,貞観地震に似たものであったとすると,日本の歴史上例の見られない大地震とは言えないことになろう。なお,地震の「加速度」比較では,別の頁で比較したように,東日本大震災(福島第1原発付近)は,阪神淡路大震災よりも揺れは小さかった。

毎日jpに以下のような記事がある。
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110327k0000m040036000c.html
----------------------------------------
「福島第1原発:東電「貞観地震」の解析軽視
産総研の研究チームが仮定した貞観地震の震源域と周辺で起きた過去の宮城県沖地震の震源域(産総研の図を基に2010年5月作成)
東日本大震災の発生メカニズム 東京電力福島第1原発の深刻な事故原因となった大津波を伴う巨大地震について、09年の経済産業省の審議会で、約1100年前に起きた地震の解析から再来の可能性を指摘されていたことが分かった。東電は「十分な情報がない」と対策を先送りし、今回の事故も「想定外の津波」と釈明している。専門家の指摘を軽んじたことが前例のない事故の引き金になった可能性があり、早期対応を促さなかった国の姿勢も問われそうだ。」「◇専門家「貞観の再来」多くの専門家は、東日本大震災を「貞観地震の再来」とみている。同研究所などは05年以降、貞観地震の津波による堆積(たいせき)物を調査。同原発の約7キロ北の福島県浪江町で現在の海岸線から約1.5キロの浸水の痕跡があったほか、過去450~800年程度の間隔で同規模の津波が起きた可能性が浮かんだ。東電によると、現地で測定された地震動はほぼ想定内で、地震によるトラブルは少なかった。一方、非常用電源の喪失などの津波被害で、原子炉が冷却できなくなった。」
----------------------------------------

今回の大震災は,たぶん地震(の揺れ)だけみると,さほどの揺れではなかったはずで,原発付近の加速度は阪神大震災より小さいのだから,日本の歴史上例を見ないほどの揺れの大きな震災とは言えないはずである。では,その直後にきた津波はどうかというと,貞観地震後津波が,地層の調査でかなり内陸部まで津波が遡上してきていた痕跡が見つかっている上,それが福島原発から北に7キロ程度しか離れておらず,歴史的には十分に例があったのではないかと思われる。このあたりの問題は,地震学や古地震学の専門家の議論が必要。


2011-04-05 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop

■3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは その1 関東大震災の三倍?

【3条1項但書の「その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によつて生じたものであるとき」とは】
------------------------------------
科技庁での議論
第3回原子力損害賠償制度専門部会議事要旨(案)
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/songai/siryo/siryo04/siryo1.htm
1.日時     平成10年9月11日(金)
         午前10:00~12:00
2.場所     科学技術庁 第7会議室(通産省別館9階)

(5)免責事由(異常に巨大な天災地変)について
事務局より資料3-6に基づき、説明があった後、主に次の質疑応答があった。
(村上)結論は賛成だが、関東大震災の三倍以上とは、何が三倍ということか。また、社会的動乱と異常に巨大な天災地変との関係はどういうものか。
(下山)一般的には、震度・マグニチュード・加速度であろうが、三倍といったときには、おそらく加速度をいったものであろう。関東大震災がコンマ2くらいなので、コンマ6程度のものか。発生した損害の規模でなく、原因、主に地震の規模であろう。
(事務局)社会的動乱とは戦争、内乱等をいい、異常に巨大な天災地変とは別概念である。
(能澤)原子炉は加速度で関東大震災の三倍までは耐えられるよう設計しているだろうが、一般の建物等の被害はそれをはるかに超えるものとなるだろう。
(部会長)異常に巨大なといったときの基準は、現時点では加速度であろうと推定できる
なお、資料の中で原賠法以外の法律を引いているが、天災その他の不可抗力が「競合したとき」に斟酌できる。異常に巨大な天災地変「によって」生じた損害を免責とする原賠法とは必ずしも同一に論じられないということに注意すべきである。
 これは今回は免責事由に残すが、政府の事後的バックアップにより、国際水準には達しているという理解としたい。」
------------------------------------

この議論では,地震の加速度で関東大震災の三倍という意見がでている。
ネットで調べると
関東大震災   300から400ガル程度
阪神淡路大震災 800ガル程度
東日本大震災(福島第1原発付近) 550ガル程度

今回は揺れそのものについて「加速度」3倍ということはなさそうである。

---------------------------

http://www.meti.go.jp/press/2011/04/20110401013/20110401013.pdf
平成23年4月1日
原子力安全・保安院
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震時に福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所で観測された最大加速度値について、本日、東京電力株式会社が公表しましたので、お知らせします。

1.平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(以下「今回の地震」という。)により、福島第一原子力発電所1~3号機及び福島第二原子力発電所1~4号機の原子炉は、自動停止しました(福島第一原子力発電所の4~6号機は定期検査中)。
2.今回の地震時に福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所の原子炉建屋基礎版上で観測された最大加速度値については、耐震設計審査指針に照らして策定された基準地震動Ssから算定される加速度値を、一部のプラントで超えるものの、それ以外のプラントでは下回っています。
3.今回公表された値は、全ての地震観測記録が得られていない状況での暫定値であるため、原子力安全・保安院としては、今後回収される地震観測記録を含めた詳細な分析結果が報告され次第、今回の地震の揺れが設備に与えた影響の有無、程度等を検討するよう、東京電力株式会社に対し、指示する予定です。

----------------------------

2011-04-05 : ■3条1項但書「異常に巨大な天災地変」 免責規定 : コメント : 0 : トラックバック : 0
Pagetop
ホーム

プロフィール

text2

Author:text2
原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

全記事のリスト表示

全ての記事を表示する

検索フォーム

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

QRコード

QR

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

アクセスカウンター

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
ニュース
636位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
時事
284位
アクセスランキングを見る>>
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。