東日本大震災以降,原子力損害賠償法に興味あり,同法と東京電力の責任についても検討してみたい。

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・被爆関係資料 その5 原爆症認定訴訟,平成21年5月28日東京高裁判決

・被爆関係資料 その5 原爆症認定訴訟,平成21年5月28日東京高裁判決


事件番号 平成19(行コ)137
事件名 原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成15年(行ウ)第320号,第341号,第343号から第356号,第520号から第523号,平成16年(行ウ)第38号から第43号,第145号,第146号,第304号,第305号)
裁判年月日 平成21年05月28日
裁判所名 東京高等裁判所

判示事項 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づく原爆症認定の各申請に対し,厚生労働大臣がした同申請を却下する旨の各処分は,各申請者の疾病の放射線起因性についての判断を誤り違法であるなどとしてした前記各処分の各取消請求が,一部認容された事例


----------------------------------
54頁
「審査の方針の検討に当たっては,その基礎となる①DS86による原爆被曝の線量評価の相当性,②疫学に基づく寄与リスク(原因確率)やしきい値(閾値)を用いた起因性判断の相当性が問題となるのは当然として,これまでの当事者の主張(特に当審における主張)に照らせば,①の線量評価については,残留放射線の評価,内部被曝の問題,②の原因確率については,審査の方針に挙げられていない疾病について起因性を肯定するだけの科学的知見があるといえるかどうかが重要な問題点として顕在化しているといえる。また,原判決が,急性症状に着目した判断をしているところから,当事者の当審における主張立証の力点がその点にあるので,詳しく検討する必要がある。」

78頁
線量評価について
「(8) 以上を要約すると,次のとおりである。被爆者ごとの線量評価に関する問題については,DS86(あるいはその後継モデルであるDS02)について,その存在意義自体を否定することはできないし,初期放射線の被曝線量評価については他に手段はなく,これに誤差があることを考慮しつつ原爆症認定にあたって利用することは相当であるといえるが,残留放射線(誘導放射線,放射性降下物)についての影響の程度について,審査の方針が定めたような方式により被爆者ごとに機械的に線量評価をしてよいかどうかについては疑問があり,被爆者の内部被曝の影響の程度については,専門家の間で意見が分かれるところであって,内部被曝の影響が無視し得るものであることを前提とした原爆症認定審査については相当とは考えられない。」

106頁
急性症状について
「(8) 以上検討したところによれば,調査結果が示す,被曝距離,遮蔽の有無,入市の有無及びその時期,滞在時間と相関する発現率によって急性症状が現れたことの事実は,初期放射線による被曝線量が少ないかほとんどゼロと評価される者について生じている症状の発症機序が明らかではないとしても,集団的な観察としては,調査結果が示す脱毛等の症状が原爆放射線の影響によるものと推認することができ,これらが原爆の放射線被曝によるものではなく,他の原因によるものであるとする1審被告らの主張は採用しがたい。
(9) 前記「第5 線量評価について」で検討したところの当裁判所の見解は,①DS86に基づいて定められた審査の方針(13年方針)の被曝線量の評価基準について,初期放射線の評価については,爆心地から1000メートルを超える部分についての誤差が大きい難点(過小評価)があるものの,DS86全体の存在意義を否定する科学的知見はないこと,②誘導放射線については,DS86と異なる知見が見当たらないこと,③放射性降下物については,審査の方針に定められた地域に限定されるかについてはなお疑問があること,④内部被曝については,科学的知見としては無視してもよいとする審査の方針は相当ではないこと,⑤そうであるとしても,被爆者ごとに原爆の各種放射線による合計した被曝線量を正確に評価することは困難であり,およそ基準化することは至難というべきであること,以上のとおり要約することができる。
 爆心地から1000メートルを超える初期放射線のDS86による計算上の線量値に誤差があるとしても,その誤差は大きいものではなく,DS86を前提にすると,Z116意見書等によって認められる放射線被曝治療における急性放射線障害のしきい値に関する知見と被爆者の急性症状の調査結果には相容れない矛盾があるとするほかはない。そして,前記のとおり,被爆者の急性症状の調査結果について,原爆放射線以外の原因であると説明することも当を得ているといえないし,DS86に誤りがあると断定することも困難である。このような場合,原爆症の認定過程においては,これをあるがままの前提として判断していくほかはないものと考える。すなわち,原爆症認定における放射線起因性の判断は,放射線や負傷又は疾病に関する科学的知見に基づく法律判断であって,科学的知見が日々発展していく性質が有するものであるから,あくまでもその時点における科学的知見という限定を常に伴うものである性格に照らすと,その時点における科学的知見に基づいて法的判断を行うことになる。本件においては,①DS86,放射線被曝治療,放射線防護学等の科学的知見が被爆者の初期症状をすべて説明し尽くしていないこと,②被爆者調査における被爆者の初期症状が原爆放射線の影響によるものであると考えることが最も合理的であること,③しかし,個々の被爆者に被爆直後に放射線の急性症状類似の症状が現れたとしても,そのことだけで直ちに当該被爆者に相当程度の放射線被曝があったと断定することはできないこと,以上を念頭において判断するのが相当である。
(10) 上記の見地に立って,原爆症認定の放射線起因性判断における急性症状の問題についていえば,まず,前に列挙した被爆者調査の結果からみると,審査の方針(13年方針)が定める線量評価の手法は,特に残留放射線(誘導放射線及び放射性降下物)及び内部被曝の問題についての点で過小評価に陥る危険があり,これをそのまま是認することはできず,審査の方針の基準に基づいた被曝線量を誤りのないものであることを前提に判断することはできないということがいえる。この場合,正確な線量評価ができないことになるが,60年以上前の目に見えない放射線の量を評定することが困難であることは,決して特異なことではない。
 次に,原爆症認定の申請をした被爆者に急性症状が認められる場合には,その具体的症状により,原爆放射線の影響を受けたことの根拠の1つとして考慮することが相当である。この点は,元来,13年方針の第1の1,4)の「既往歴」には被爆者の急性症状を含むと解されることのほか,前記在り方検討会の報告でも急性症状についても考慮すべき分野及び手法を具体的に指摘したことを受けて,再び新審査の方針(20年方針)の第1の2(総合認定)中に「被曝線量」と並んで「既往歴」を明記するなど急性症状の認定及びその意義が有する比重が増していることが認められる。したがって,その急性症状の具体的内容,発症時期,継続期間等を把握し,放射線被曝治療に係る急性症状の知見を参考としつつ検討するのが相当である。」

139頁
原因確率について
(7) 以上整理すると次のとおりである。審査の方針(13年方針)の採用する原因確率については,①基礎資料である放影研の疫学調査に用いられた線量評価では,DS86の初期放射線以外の線量が考慮されておらず,ポアソン回帰分析の手法による解析結果から得られた過剰リスクが低いものとなっている可能性がある,②死亡率調査と発生率調査における過剰リスクには相当差があり,死亡率調査によれば,発生率調査よりも低い過剰リスクとなる可能性があり,③死亡率調査及び発生率調査による結果を一律に10パーセント及び50パーセントの数値を基準に評価することに問題があるという3点において,その正確性に問題があるといわざるを得ない。放影研の疫学調査が,被爆者の晩発障害と放射線との関連性を探求してきた功績は高く評価されるべきである。被爆者医療に当たる医療従事者が,被爆者に発現率が高いと感じられる疾病について,疫学的に放射線との関係が
あるといえるかどうかの裏付けを行ったものであり,また,現在では,遺伝子レベルでの疫学調査も進み,人体の免疫機能への影響の検討にまで至っている。これらが,疾病の発症機序の解明に貢献するであろうことは疑いがない。
 しかし,疫学調査の結果が,原爆症認定の放射線起因性の有無の判断についていかなる程度において認定作業上の貢献ができるかは,別途の諸点から検討を要する。まず,そもそも疫学調査の結果から,原爆放射線と被爆者ごとの疾病との関連性がないということがいい得る資料は,検討する視点によるものではあるが,必ずしも多くはないと思われる。次に,寿命調査,成人健康調査において,線量反応関係が認められる疾病が,がん及びそれ以外の疾病について次第に明らかになった経緯は,長年月の経過及びこの間の多くの科学者等の長期にわたる学的営為の蓄積の後に,当初は気づかれなかった健康上の影響が判明され,その疾病の複雑多様さが確認されるようになったことは前示のとおりである。これら諸活動の中心的な立場にある放影研の上記調査は,原爆放射線と疾病との因果関係の不存在を証明してきたのではないことはいうまでもない。そうであれば,放影研の疫学調査の結果,有意な線量反応関係が認められない部分については,それゆえに放射線起因性の認定判断を遮断すべきであると論決すべきではなく,疫学調査の結果以外の学問的な成果をも考慮に入れて上記起因性の有無につき審査すべきであるとする考慮も求められる。たしかに,原因確率が審査の公平性のために有用であるとの考え方もあり得るが,13年方針が採用した原因確率と称する方式が完全でないとすれば,他の事実からアプローチする道を閉ざすこともまた公平性を失わせるものといえる。」


196頁
放射線起因性の判断基準について
「(1) 以上のとおり,審査の方針(13年方針)は原爆症認定の判断基準として相当とはいえないので,改めて,本件の1審原告ら(取消請求に係る訴えを却下された者を除く。)の放射線起因性を判断するに当たっての判断基準について検討する。その際,13年方針が改められ,その一部はすでに20年方針により原爆症認定が行なわれている段階にあることを念頭に置いて考察する。
(2) 判断の前提としての科学的知見は,これまで検討したところを前提とする。
ア 1審原告らの被曝の有無及び程度については,「第5 線量評価について」及び「第6 急性症状について」において検討したところによる。すなわち,DS86による初期線量の評価について尊重し,定量的判断は困難であるものの,誘導放射線,放射性降下物による放射線,内部被曝の存在について配慮して,被曝の有無及び程度を判断するという基本的考え方になる。
イ 疾病の原爆放射線との関連性については,「第7 原因確率について」,「第8 肝機能障害と原爆放射線との関連について」及び「第9 甲状腺機能低下症と原爆放射線との関連性について」において検討したところを考慮し,さらに,個別の1審原告に必要な知見を証拠上認定しつつ判断をする。
(3) 個別1審原告の事情としては,次の事情を考慮することになる。
ア 原爆被爆の状況被爆地点,被爆時の遮蔽状況等が被曝の程度の判断の基本である。
イ 被爆後の行動被爆後どのような行動をとったかは,誘導放射線の影響,内部被曝の影響を判断する上で必要な事項である。
ウ 被爆後現れた急性症状放射線被曝の有無及び程度の1つの指標として必要な事項である。
エ 被爆前の健康状態,生活状況1審原告らの生活及び健康状態を知ることは,その後の経緯を検討する上での基本である。
オ 被爆後の健康状態,生活状況被爆後の身体の状況がどのようであったかは,放射線被曝の影響があったかどうかについての1つの判断資料となりうるものであり,その前提としては,生活状況を知る必要がある。
カ 申請疾病の内容,発症の経過等申請疾病がどのようなものであり,どのような経緯をたどったのかは重要な事情である。
(4) 判断の基準としては,最高裁平成12年判決に従い,原爆放射線被曝の事実が1審原告らの疾病の発生を招来した関係を是認できる高度の蓋然性が認められるか否かである。
(5) 特に,前提となる事実の認定については,申請疾病に係る客観資料についてはあまり問題がないものの,被爆状況,被爆後の行動については,60年以上前の事実であり,原爆投下の後という客観証拠が少ない特殊な状況にあったのであるから,1審原告らの供述に依存する比重が大きくならざるを得ない。その供述は,他の証拠との対比においても慎重に検討する必要がある。
また,被爆前後の生活状況,健康状況についても,古い事実については客観資料が得がたく,これも同様慎重に検討する必要がある。
(6) 前にも述べたが,判断基準としては,「原爆被爆がなければこのような病気にならなかった」ということに通常人が疑いを差し挟まないかどうかであり,被爆者援護法の精神に則って慎重に判断すべきところである。」


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・被爆関係資料 その4 松谷訴訟,平成12年7月18日最高裁判決

・被爆関係資料 その4 松谷訴訟,平成12年7月18日最高裁判決


事件番号 平成10(行ツ)43
事件名 原爆被爆者医療給付認定申請却下処分取消請求事件
裁判年月日 平成12年07月18日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
判例集等巻・号・頁 集民第198号529頁

原審裁判所名 福岡高等裁判所
原審事件番号 平成5(行コ)17
原審裁判年月日 平成9年11月07日

判示事項 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律八条一項に基づく認定の要件であるいわゆる放射線起因性の意義及びその立証の程度

裁判要旨 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律八条一項に基づく認定の要件であるいわゆる放射線起因性は、原子爆弾の放射線と被爆者の現に医療を要する負傷又は疾病ないしは治ゆ能力低下との間に通常の因果関係があることを意味し、右認定拒否処分の取消訴訟において、被処分者は、右因果関係について高度の蓋然性を立証することを要する。
参照法条 原子爆弾被爆者の医療等に関する法律7条1項・原子爆弾被爆者の医療等に関する法律8条1項

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主    文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理    由
 上告代理人細川清、同富田善範、同高野伸、同久留島群一、同中村和博、同田川直之、同星野敏、同林田雅隆、同木村政之、同小宮山健彦、同宮田智、同佐藤敏信、同岡田文夫、同宮田清美、同内山博之、同黒木弘雅の上告理由について
 一 本件は、長崎に投下された原子爆弾の被爆者である被上告人が、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律(昭和三二年法律第四一号。平成六年法律第一一七号により廃止。以下「法」という。)八条一項に基づき、被上告人の右半身不全片麻痺及び頭部外傷が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の認定の申請をしたのに対し、昭和六二年九月二四日、上告人がこれを却下したため、右却下処分(以下「本件処分」という。)の取消しを求める事件である。
 二 法七条一項は「厚生大臣は、原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対し、必要な医療の給付を行う。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは、その者の治ゆ能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る。」と、法八条一項は「前条第一項の規定により医療の給付を受けようとする者は、あらかじめ、当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生大臣の認定を受けなければならない。」と規定している。これらの規定によれば、法八条一項に基づく認定をするには、被爆者が現に医療を要する状態にあること(要医療性)のほか、現に医療を要する負傷又は疾病が原子爆弾の放射線に起因するものであるか、又は右負傷又は疾病が放射線以外の原子爆弾の傷害作用に起因するものであって、その者の治ゆ能力が原子爆弾の放射線の影響を受けているため右状態にあること(放射線起因性)を要すると解される。原審は、右認定は放射線起因性を具備していることの証明があった場合に初めてされるものであるが、原子爆弾による被害の甚大性、原爆後障害症の特殊性、法の目的、性格等を考慮すると、認定要件のうち放射線起因性の証明の程度については、物理的、医学的観点から「高度の蓋然性」の程度にまで証明されなくても、被爆者の被爆時の状況、その後の病歴、現症状等を参酌し、被爆者の負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因することについての「相当程度の蓋然性」の証明があれば足りると解すべきであると判断した。
 しかしながら、行政処分の要件として因果関係の存在が必要とされる場合に、その拒否処分の取消訴訟において被処分者がすべき因果関係の立証の程度は、特別の定めがない限り、通常の民事訴訟における場合と異なるものではない。そして、【要旨】訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではないが、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とすると解すべきであるから、法八条一項の認定の要件とされている放射線起因性についても、要証事実につき「相当程度の蓋然性」さえ立証すれば足りるとすることはできない。なお、放射線に起因するものでない負傷又は疾病については、その者の治ゆ能力が放射線の影響を受けているために医療を要する状態にあることを要するところ、右の「影響」を受けていることについても高度の蓋然性を証明することが必要であることは、いうまでもない。そうすると、原審の前記判断は、訴訟法上の問題である因果関係の立証の程度につき、実体法の目的等を根拠として右の原則と異なる判断をしたものであるとするなら、法及び民訴法の解釈を誤るものといわざるを得ない。
 もっとも、実体法が要証事実自体を因果関係の厳格な存在を必要としないものと定めていることがある。例えば、原審が右判断の過程において検討対象としている原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律(昭和四三年法律第五三号。平成六年法律第一一七号により廃止。以下「特措法」という。)五条一項が健康管理手当の支給の要件として定めているのは、被爆者のかかっている造血機能障害等が「原子爆弾の放射能の影響によるものでないことが明らかでないこと」というものであるから、この規定は、放射線と造血機能障害等との間に因果関係があることを要件とするのではなく、右因果関係が明らかにないとはいえないことを要件として定めたものと解される。原審の前記判断も、特措法の関連法規である法八条一項の放射線起因性の要件についても同様の解釈をすべきであるという趣旨に解されないではない。しかし、特措法は各給付ごとに支給要件を書き分けていることが明らかであり、同法五条一項が健康管理手当について右の程度の弱い因果の関係でよいと明文で規定しているのと対比すれば、同法二条の医療特別手当の支給については、このような弱い因果の関係では足りず、通常の因果関係を要するものとされていると解するほかはない。そして、これらの特措法の規定と対比すれば、むしろ、【要旨】法七条一項は、放射線と負傷又は疾病ないしは治ゆ能力低下との間に通常の因果関係があることを要件として定めたものと解すべきである。このことは、法や特措法の根底に国家補償法的配慮があるとしても、異なるものではない。そうすると、原審の前記判断は、実体要件に係るものであるとしても、法の解釈を誤るものといわなければならない。
 三 ところで、原審は、本件全証拠を総合検討し、被上告人が現に医療を要する状態にあり、かつ、放射線起因性が認められると認定判断し、本件処分を違法としているので、右の放射線起因性を肯定した原審の認定判断について、以下検討する。
 1 原審が、右認定判断の前提として適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。
 (一) 長崎に原子爆弾が投下された昭和二〇年八月九日午前一一時二分、被上告人(当時三歳五箇月)は、爆心地から約二・四五キロメートル離れた長崎市a町b丁目c番地(現同市d町e番地f)の自宅の縁側付近において、爆風により飛来した屋根がわらにより左頭頂部を直撃され、左頭頂部頭蓋骨陥没骨折、一部欠損の重傷を負った。被上告人は、右傷害により一時意識不明、上下肢運動機能喪失等に陥ったが、マーキュロクロムを塗布する治療を受けたのみであった。その後数日間、被上告人は、自宅にとどまっていたが、下痢症状があり、頭髪が少しずつ抜け始めた。
 (二) 同月一六日、被上告人は、両親と共に、自宅から徒歩で、爆心地から約一・七キロメートルの地点を経てg駅に至り、列車で爆心地の直近を通過して、長崎県南高来郡h町に避難し、一〇日間ほどを過ごした後帰宅した。避難先では、被上告人は、寝たきりであり、治療を受けることはなかったところ、頭部の傷口は化のうし、うみが出ていた。
 (三) 同年一〇月上旬ころ、被上告人は、両親と共に、同県南松浦郡i町に疎開した。同所でも、被上告人は、寝たきりであり、頭髪は一層薄くなった。頭部の傷口は、ふさがらず、水が噴き出すように腐臭の強いうみないし分泌物が流出し続け、医師からいったん短期間で治る旨の診断を受け、治療を受けたものの、傷口の一部がふさがりかけると、今度は別の部分からうみ等が出始めるという状況の繰返しで、治療は効を奏せず、一応の治ゆをみたのは、被爆後二年半ほどたってからであった。このような症状の経過、治ゆの遷延は、治療の不十分、不適切さだけでは十分に説明することができないものであった。同町での治療期間中に、被上告人の頭部の傷口からかわらの破片が出てきた。
 (四) 同年一二月三一日から翌二一年一月一日にかけて、被上告人は、失神を伴う継続的な重度のけいれん発作に襲われ、心マッサージにより息を吹き返した。同様の発作の回数は次第に減少していったが、その後の学校時代を通じて、年に一、二回くらい一時的に意識不明の状態に陥ることがあり、同四二年ころまで続いた。同三四年ころには、約三九度の高熱が一週間ほど継続する症状を呈したが、当時としては明確に感染症とは判定することができず、原因は明らかにならなかった。
 (五) 被上告人は、本件処分時においても、現在においても、右片麻痺(脳萎縮)、頭部外傷と診断され、右半身不全麻痺、右肘関節屈曲拘縮等の障害を有する。被上告人の左頭頂部の頭蓋骨には陥没骨折があって、骨折部分に対応する部分の脳実質が欠損しており、この欠損と側脳室が交通していて、脳孔症と診断されるほか、様々な不定愁訴を有している。これらの根本的治療は困難であるが、症状を緩和させるための薬物療法、理学療法等が現に必要である。
 (六) 高速度で飛んできた小物体による頭部外傷の場合には、脳実質への影響は、受傷した局所では高度であるが、局限性で脳全体に与える影響は少ないのが通常であるのに、被上告人の場合は、脳実質にこれを超える広範な損傷がある。このように広範な脳孔症は、頭部外傷の合併症というだけでは説明することができないようなまれな状態であり、このことは、かわらの打撃以外の要因も加味していることを強く推認させる。
 (七) 昭和二〇年に日米合同調査団が行った調査結果によれば、長崎においては、爆心地から一・五キロメートルの地点で約一八パーセント、二キロメートルの地点で約一〇パーセントの者に、広島においては、爆心地から一・五キロメートルの地点で約一九パーセント、二キロメートルの地点で約七・五パーセントの者に、それぞれ脱毛が生じており、いずれにおいても爆心地からの距離が遠くなるに従って脱毛の発症頻度が減少していたなどとされている。また、昭和四〇年に厚生省が行った調査によれば、被爆地点が二キロメートルを超える場合も、相当多数の者に脱毛等の急性症状があり、四キロメートルを超える場合も、早期入市者で一一パーセント、それ以外の者で三・一パーセントに脱毛が生じたとされている。さらに、昭和六〇年に厚生省が行った調査によれば、爆心地から二ないし三キロメートルの地点で被爆した死亡者のうち急性障害によるものが、長崎においては三・二パーセント、広島においては五・四パーセントであったとされている。
 また、長崎市内の爆心地から約二・九キロメートルの、被上告人の被爆場所とほぼ同一方向の地点で被爆したDは、倒壊した工場の鉄骨製のはりの下敷きとなってせき椎を骨折したが、被爆直後から発熱が続き、しばらくして脱毛が起こり、被爆後一年間無月経であった。外傷部は、容易に治ゆせず、腐食して悪臭を発した。同人は、昭和三四年六月二九日付けで、法八条一項の認定を受けた。
 長崎市内の爆心地から約二・四キロメートルの地点で被爆したEは、被爆の約一箇月後に若干の脱毛があり、一緒に被爆した友人は毛髪全部が脱毛した。
 長崎市内の爆心地から約二・五キロメートルの地点で被爆したFは、被爆直後から発熱し、約一箇月後に脱毛が認められ、約二箇月後に鼻血、おう吐、下痢があった。
 2 その一方で、原審は、右事実関係のほかにも、次の事実を適法に確定している。
 (一) 放射線被爆の人体に及ぼす影響には、確率的影響と確定的影響とがあり、がんの誘発と遺伝的影響のみが前者に属し、それ以外はすべて後者に属するから、本件で問題となるのは確定的影響であるところ、確定的影響には一定線量以上の放射線を浴びないと影響が起こらないしきい値があるとされ、各症状についてのしきい値としては、脳神経細胞の損傷が一〇〇ラド、白血球減少が五〇ラド、脱毛が三〇〇ないし五〇〇ラド、リンパ球の障害による免疫能の低下は一〇ラド強などとされている。
 (二) 原子爆弾による放射線の線量評価システムであるDS八六は、線量評価に関し設置された日米合同の委員会が一九八六年(昭和六一年)三月に承認し、世界中において優良性を備えた体系的線量評価システムとして取り扱われてきたものであり、DS八六によれば、長崎におけるガンマ線と中性子線の空気中線量を合計した放射線量は、爆心地から二・四キロメートルの地点で二・九六三ラド、二・五キロメートルの地点で二・〇九二ラドであり、残留放射線等による放射線量は評価するに足りず、右線量についての不確定性の推定値は空気中線量で一三パーセントであり、臓器線量では二五ないし三五パーセントになるなどとされている。
 3 確かに、右に記載したしきい値理論とDS八六とを機械的に適用する限り、被上告人の現症状は放射線の影響によるものではないということになり、本件において放射線起因性があるとの認定を導くことに相当の疑問が残ることは否定し難いところである。
 しかしながら、DS八六もなお未解明な部分を含む推定値であり、現在も見直しが続けられていることも、原審の適法に確定するところであり、DS八六としきい値理論とを機械的に適用することによっては前記三1(七)の事実を必ずしも十分に説明することができないものと思われる。例えば、放射線による急性症状の一つの典型である脱毛について、DS八六としきい値理論を機械的に適用する限りでは発生するはずのない地域で発生した脱毛の大半を栄養状態又は心因的なもの等放射線以外の原因によるものと断ずることには、ちゅうちょを覚えざるを得ない。このことを考慮しつつ、前記三1の事実関係、なかんずく物理的打撃のみでは説明しきれないほどの被上告人の脳損傷の拡大の事実や被上告人に生じた脱毛の事実などを基に考えると、被上告人の脳損傷は、直接的には原子爆弾の爆風によって飛来したかわらの打撃により生じたものではあるが、原子爆弾の放射線を相当程度浴びたために重篤化し、又は右放射線により治ゆ能力が低下したために重篤化した結果、現に医療を要する状態にある、すなわち放射線起因性があるとの認定を導くことも可能であって、それが経験則上許されないものとまで断ずることはできない
 四 そうであるとするならば、本件において放射線起因性が認められるとする原審の認定判断は、是認し得ないものではないから、原審の訴訟上の立証の程度に関する前記法令違反は、判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるとはいえない。したがって、結局、論旨は採用することができない。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 奥田
昌道)


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2011-08-27 : ・原爆症関連 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・被爆関係資料 その3 原爆症認定制度の在り方に関する検討会

・被爆関係資料 その3 原爆症認定制度の在り方に関する検討会


※原爆症認定に関する政府側の議論は、原発事故による被ばく問題とも関係するはず。


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○原爆症認定制度の在り方に関する検討会
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/zenkokukenkou/dl/110204-shiryo-a_0023.pdf
〔構成員〕
・荒井史男 弁護士
・田中煕巳 日本原水爆被害者団体協議会事務局長
・石弘光 放送大学学長
・智多正信 長崎市副市長
※・草間朋子 大分県立看護科学大学学長
・坪井直 日本原水爆被害者団体協議会代表委員
・潮谷義子 長崎国際大学学長
・長瀧重信 (財)放射線影響研究所元理事長
・神野直彦 東京大学名誉教授
・三宅吉彦 広島市副市長
※・高橋滋 一橋大学大学院法学研究科教授
・森亘(座長) 東京大学名誉教授
・高橋進 株式会社日本総合研究所副理事長
・山崎泰彦 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授

※原子力損害賠償紛争審査会の委員。
http://genbaihou.blog59.fc2.com/blog-entry-41.html


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http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001luvv.html
第三回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録

○日時
平成23年6月13日(月) 10:00~12:00
○場所
中央合同庁舎第5号館 厚生労働省省議室(9階)
○議題
1.開会
2.議事
(1) 原子爆弾被爆者医療分科会関係者からのヒアリング
(2) 原爆放射線に関する科学者からのヒアリング
(3) 裁判官出身者からのヒアリング
3.閉会

○議事
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 おはようございます。
まず、開会に先立ちまして、傍聴者の方におかれましては、お手元にお配りしております傍聴される皆様への留意事項を御確認いただきまして、厳守をお願いしたいと思います。また、この部屋少々暑いかと思いますけれども、クールビズでございますので、適宜、上着など取っていただけたらと思います。
それでは、これ以降の進行につきましては神野座長代理にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○神野座長代理 おはようございます。
それでは、定刻でございますので「第3回原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を開催したいと存じます。
初めにお断りを申し上げておきますけれども、本日は森座長がやむを得ない事情で急遽御欠席という事態になりました。座長からの御指示によりまして、座長代理である私が進行役を務めさせていただくことになりました。何分にも行き届きませんので、委員の皆様方には議事の運営につきまして御協力をいただければとお願い申し上げる次第でございます。
 それでは、委員の出席状況につきまして、事務局の方から御報告いただきたいと思いますのでよろしくお願いします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 本日の出席状況でございますが、森座長と潮谷委員が欠席との御連絡をいただいております。
 カメラ撮りはこの辺りまででお願いします。
(報道関係者退室)
○神野座長代理 それでは、議事に入りたいと思います。
改めて私から申すまでもありませんが、この間、東日本を巨大な大地震が襲い、かつ、津波がそれに加わって信じ難いような被害が生じる大災害が起きました。そのため、この間、検討会を延期せざるを得なくなっておりましたが、今回、前回、座長から皆様の方にお諮りをいたしましたとおり、ヒアリングを行いたいと思っております。議事次第、あるいは事前に皆様に御連絡を申し上げているかと思いますけれども、原爆症認定審査を実際に行われている原子爆弾被爆者医療分科会の方、放射線の健康影響に関する科学者の方、それから、裁判官御出身の方からお話をちょうだいするということになっております。
また、前回、田中委員の方から、被爆者医療に携わる医師の方からのヒアリングを含めて御提案がございました。この田中委員の御提案を含めて、今後のこの検討会の進め方については、ヒアリングの後に時間を取ってお話をさせていだきたいと考えております。
 それでは、資料の確認と本日のヒアリングの進め方について、事務局の方から御説明いただければと思いますので、よろしくお願いします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 お手元の資料を確認させていただきたいと思います。
資料1、ヒアリングの参考人名簿でございます。本日の前半でございますが、原子爆弾被爆者医療分科会の関係者と原爆放射線に関する科学者の方からヒアリングを行うこととしております。お名前を紹介させていただきたいと存じます。原子爆弾被爆者医療分科会会長の谷口英樹様でございます。谷口様には原爆症認定制度と医療特別手当の在り方というテーマでお話をいただくこととしております。
続きまして、御紹介させていただきます。京都大学名誉教授で国際放射線防護委員会主委員会委員の丹羽太貫様でございます。丹羽様には放射線の健康影響についてというテーマでお話をいただくこととしております。お二方のお話が終わりましたら、各委員からそれぞれの皆様方に対しまして、御自由に御質問、御発言をいただければと思います。
本日の後半ですが、裁判官出身の方からのヒアリングを行うこととしております。お名前を御紹介いたします。駿河台大学法科大学院教授の岩井俊様でございます。岩井様には原爆症の取消し訴訟を念頭に、判決に至るまでの流れや法律関係の判断に当たって考慮する事項などについてお話をいただくこととしております。岩井様からお話をいだいた後、各委員から自由に御質問、御発言をいただければと思います。
委員の皆様には資料2といたしまして、谷口参考人、丹羽参考人、岩井参考人からの提出資料をそれぞれ配付させていただいております。
事務局から参考資料として2種類の資料をお配りしております。ごく簡単に資料の性格だけ御説明をさせていただきたいと思います。参考資料1ですが、原爆症認定審査体制の資料でございます。おめくりをいただきまして、原爆症認定手続の概要、原爆症認定の審査体制、委員名簿、新しい審査の方針、審査待機者の計画的解消に向けて、医療分科会の開催実績を示したものでございます。
参考資料2は原爆症認定関係訴訟についての資料でございます。めくっていただきまして、平成12年7月に出されました松谷訴訟最高裁判決について、その後の集団訴訟の経緯、平成21年に署名されました確認書について、御参考までに用意したものでございます。
説明は以上でございますが、資料に不足、落丁等がございましたら、事務局までお願いします。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、早速ヒアリングを開始したいと思います。最初に谷口先生からちょうだいいたしますが、時間その他の都合がございまして、20分程度で御発表いただけたらと思います。よろしくお願いします。
○谷口参考人 医療分科会の谷口でございます。本日はよろしくお願いいたします。
資料2の1を御参照いただきまして、大体この資料に沿って御説明を申し上げたいと思っております。
まず「1 制度設立当初からの原爆症認定制度と手当の趣旨」ということで、これは委員の先生方には繰り返しになるかもしれませんけれども、比較的重要なことでございますので、ここからスタートをしたいと思っております。昭和32年、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律が制定されまして、原子爆弾の放射線の傷害作用により疾病にかかり、医療を要する状態にある。これをいわゆる原爆症と申しますけれども、そう認定された方々に対しまして、医療手当が創設されております。これは、原爆症と認定された方は、原爆放射線の影響が立証された疾病に罹患し、その医療についていまだ治療方法が確立されておらず、回復の望みのないまま死に対する不安にさらされている特殊な環境にあるということで、医療に関連して何らかの慰安の手段を与えることにより精神的な安定を図り、同時に幾分でも治療効果の向上を図るということを目的にしたものでございました。
更に、昭和43年には原子爆弾被爆者に対する特別措置法が制定されまして、原爆症と認定された方々に対しまして、特別手当が創設されております。これは原爆症の方は原爆の被害を最も強く受けた方でございまして、健康上、生活上、悪条件下にさらされている上、原爆症にかかっているため、一般人と異なる特別な出費を余儀なくされているということに対して、生活面の安定を図るためでございました。
一方、同じく昭和43年に健康管理手当も創設されておりますけれども、この手当は、立証前の原爆症の可能性もある原爆の放射線の影響を疑われる障害を伴う疾病に罹患したものを対象としておりまして、すなわち、健康管理手当は放射線との因果関係が科学的に厳密に否定できない疾病罹患者まで拡大されたものでございます。
このように、健康管理手当と原爆症と認定されることによる支給される手当、現在の医療特別手当でございますが、この差異が疾病と放射線との因果関係を高度に証明できるかどうかということで差がついていると理解しております。この考え方は後で述べます最高裁判所による判決によっても支持をされていると考えております。
さて、近年の原爆症認定制度と医療特別手当を取り巻く、特に最近の事情でございますけれども、先ほど事務局から御紹介がありましたように、平成12年7月、最高裁判所により、頭部外傷及びそれに起因する右片麻痺が放射線に起因するとして原爆症認定を求めた原告に対し、物理的打撃では説明し切れないほどの脳損傷の拡大の事実などを基に考えると、原告の脳損傷は、放射線起因性があるとの認定を導くことも可能であって、それが経験則上許されないものとまで断ずることができないとの判決がなされております。
この原告の疾病が本当に原爆放射線によるものであったかどうかという、いわゆる科学的な議論というのはあるのでございますけれども、より原爆症認定の判断根拠をわかりやすく示し、明確な科学的根拠に基づいた認定を行うために、平成13年5月、医療分科会では、疫学調査より得られました、疾病の発症が原爆放射線の影響を受けている蓋然性があると考えられます確率、これを原因確率と申しますけれども、これに基づいた審査の方針を導入しております。
しかしながら、この審査の方針によって認定とされなかった方々から却下を不服とした集団提訴が提起されまして、国の敗訴が続いております。このような状況から、平成19年8月、当時の安倍総理大臣より、審査の方針の見直しが指示されております。
これを受けまして、厚生労働大臣の下、科学者による原爆症認定の在り方に関する検討会が設置されております。この検討会では、疫学的な調査に基づく指標として設定された原因確率を、放射線の健康影響を判断する目安として使うことには合理性があるということを前提に、残留放射線についても、個人ごとの移動経路あるいは滞在時間に基づいて線量計算を導入することや、急性症状等も評価して総合判断を行うなどが提言されております。
これと別に、同時期に、当時の与党プロジェクトチームにおきまして、被爆者の方々からのヒアリングを踏まえた議論が行われ、がん、白血病、老人性を除く白内障等の対象疾患のある被爆者で直爆距離あるいは入市時期など、一定の被爆要件を満たすものを積極的に認定すべきであるという提言がなされております。
結果的に我々の分科会では、与党プロジェクトチームの提言を基にした、厳密な科学的知見にこだわらず、より幅広く被爆者救済の立場に立った新しい審査の方針を平成20年度から導入することとなりました。現在も、分科会はこの方針に基づいて認定審査を行っております。
その現在の実情でございますが、新しい審査の方針を導入いたしまして以来、平成20年度以前は月平均10件程度でございました申請件数が、平成20年度以降、月平均700件と急増いたしております。これに対応するため、平成20年4月以降、委員の数を17名から31名と大幅に増加いたしまして、分科会の下に4つの部会を設置し、審査機会の増加を図っております。その結果、月に280件程度の審査を行うことができるようになりましたが、申請件数の伸びはこれを上回り、平成21年10月には最大8,000件の待機件数ということになりました。
この状態を解消し、認定をお待ちいだいている方々に対し、より迅速な審査を行うべく、平成22年5月に、月平均500件以上の処理を目標とする計画を策定いたしまして、審査を行っております。このとき、同時に、新たに2名の委員を追加いたしまして、2つの部会を新たに追加し、審査体制の拡充を図っております。このような取り組みの結果、昨年度は6,435件審査を行いまして、待機件数は昨年度末で約3,000件、現在は2,400件まで減らすことができております。
一方、分科会の委員の先生方も、この業務以外に多数御自分の業務を抱える中で、現委員が現状以上の時間を捻出することは非常に困難でございまして、当分科会の処理能力はほぼ限界に達していると認識しております。
最近の原爆症認定の問題点でございますが、制度の趣旨と現状、大分時間が経ってきて乖離してきているのではないかというお話をさせていただきます。終戦から65年が経過いたしておりまして、被爆者の方々、平均年齢77歳となっております。原爆症として認定の対象となっておりますがん、白内障、心疾患等は、高齢者には非常にポピュラー、珍しくない疾患でございます。例えばがんは生涯で2人に1人は罹患する疾病でございます。白内障に関しましては、程度の差はあるものの、60歳代で66~83%、70歳では84~97%、80歳以上の方では100%の方に白内障の原因である水晶体の混濁が見られると言われております。このように、実際には加齢あるいは生活習慣を原因として疾病が発生している可能性が高いと考えられる中で、現状は、放射線による影響と放射線以外の原因、それによる影響を厳密に切り分けることは非常に難しいという中で審査を続けているわけでございます。
また、この間、医学は進歩いたしまして、制度設立当時、昭和30年~40年代には不治の病と考えられておりましたがんも多くは治癒が期待できるようになり、かつては失明の原因であった白内障に関しても、濁った水晶体を人工レンズに交換する手術等の治療により、日常生活に支障なく暮らせるようになったということもございます。このように、制度設立当初と現在は、疾病にかかった場合の予後あるいは障害の程度が変化していることも事実でございます。
現在の新しい審査の方針、先ほど申し上げました平成20年度から導入しております新しい審査の方針に基づいて、今、審査を行っておりますが、これは各疾患の放射性起因性について、厳密な科学的知見にこだわらず、より被爆者救済の立場に立って幅広く認定対象としております。当然、この中で取り入れられている考え方は、UNSCEAR等の放射線の人体影響に関する国際的に確立されている科学者の合意に沿わないものも含まれております。例えばC型肝炎などはウイルスが原因で起こることは証明されておりまして、放射線の影響も余りペーパー報告などはないんですけれども、認定疾患の中に入っております。
しかしながら、一般社会からは、私ども公的な審査会で基準として用いられるということを理由として、純粋に科学的なガイドラインであるように誤解をされるおそれがございまして、医療現場あるいは労働現場において、国民に放射線の人体への影響に対する不必要な心配を与え、混乱が生じることがないかと懸念をしております。
以上、まとめますと、制度創立当時において、治療法が確立されておらず予後の悪かった白血病や固形がんが、その当時、働き盛りの被爆者の方々あるいはその家族の方々に大きな負担となっていたと思われ、放射性起因性の程度と要医療性の基準により、高額の手当を給付する基準を設けたことは時代の要請であったと考えられます。
一方で、現代においては、被爆者は高齢化が進んでおり原爆症と同じ病名の疾患の罹患率は著しく高くなっております。また、先ほど申し述べましたように、医学の進歩により、これらの疾病にかかっても予後は依然と比べはるかに改善をいたしております。
当分科会といたしましては、最大限被爆者救済の立場に立ち、幅広く認定を行うことを基本として科学的な審査を行っておりますが、科学をよりどころとする専門家集団としては、その基本になる審査の方針の考え方が、国際的に認められた科学的知見に沿わないということもありまして、放射線起因性を科学的に証明されているとは言えない疾病まで認定対象となっている現状に違和感を覚えていることもまた事実でございます。また、放射線による影響と加齢・生活習慣による影響を厳密に切り分けることが難しい中で、疾病や悪性度や予後に関わらず、疾病と放射線との因果関係があると認定された一部の被爆者の方々に医療特別手当という、いわゆる手厚い手当が支給され、それ以外の放射線の影響が否定できない疾病にかかられた方々には、健康管理手当という金額的に大きな差のある手当が支給されているという現在の仕組みが、本当に被爆者の方々の実態に合っているのかどうかということに関しても、分科会の委員の方々から疑問がときどき出されているところでございます。
原爆症制度の在り方につきましては、被爆者援護施策であるがゆえに、放射線との関わりについてはある程度担保されなくてはならないと考えますが、被爆者のみならず、費用負担者でございます国民全体の理解が得られるよう、高齢化いたしました被爆者の方々の実態に即した公平な制度を検討していただきたいと考えております。また、その際には、金額の差が大きい2段階の手当にこだわらず、かかっている疾病の特性、あるいは個人個人の重症度などを実態反映するようなきめ細やかな段階や金額の設定を含め、検討することが必要ではないかと考えております。
以上で、私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、丹羽先生に御発表いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○丹羽参考人 それでは御報告させていただきます。
私に与えられたテーマは、一応これまでの被爆者の研究についての科学的合意形成の過程及び、そのような科学的合意から出てきたリスクの科学についての国際的合意形成。そういう点についてお話をさせていただきます。今の先生のお話にありました、結局放射線というものの位置づけ、そういうものでございます。
(PP)
今回お話しすることは、科学的合意形成のステップと被爆者研究の評価ということ。被爆者の、皆様方の研究が教えてくれたこと。それから、被爆者研究に基づいた放射線リスクに関する国際的合意。この国際的合意は、過去においてチェルノブイリ、今回の福島、そういうようなところにおいても非常に大きな意味を持っております。
(PP)
科学的合意形成のステップというものについてお話しさせていただきたいと思います。研究というものはすべて科学的合意形成に資するか。それはまた違うということを述べたいと思います。
まず、研究の第一段階は、当然ながら、これは研究者個人のレベルで、例えば放射線の健康影響がいかであるかということを研究いたします。そのような研究には、例えば分子・細胞・動物個体での実験的研究がありまして、これは専らメカニズム、健康影響に関する放射線のどのような関与があるかと機構を解明するスタンスであります。あと一つは、被爆者の研究あるいは放射線事故、そのほかにおける人の疫学調査で、これは必ずしも機構ではなくて、実態がいかであるかということを明らかにする。こういう2つの側面があるということであります。これは個人でありますので、そのような個人がどのような結果を出そうが、それはその個人の研究者の責任で行われる。
ところが2番目、その個人の研究者が研究者コミュニティーに対して、自分の研究成果をまずは上げるという過程がありまして、これは学会発表であり、論文発表であって、それをもって世界に発信をするというステップがございます。
そのようなステップを踏みまして、次に学会で発表されたこと、あるいは論文で発表されたことが世界の研究者コミュニティーに対して投げかけられる。そうすると、研究者コミュニティーは研究者により、そのような個人の研究者の研究成果の解析と検証をやる。例えば、大事な実験研究であれば、研究のシステムを持っておられる方は追試。更に自分でもテストをするという過程もできます。それから、いろいろな比較検討により、それが正しいものであるか、もっともであるいうことが検証できます。
疫学研究の場合は、すべての疫学研究というのは対象になる集団が変わりますし、例えば放射線の被爆の状況も変わります。だから、非常に個別的なものでありますが、そのような個別的なものを、例えば世界のいろいろなところでやられている研究を受けて、その比較検討により、より正しいか、あるいはそのような個人の行った研究というものの中身が何か間違いがないであろうか。こういうことを検証いたしまして、科学的な合意形成というものに進んでいきます。こういう過程を経て、ようやく科学的な手順を踏んだ合意形成というものが行われるわけであります。
(PP)
例えば論文発表というのは我々研究者にとっては大変高いハードルでありまして、なかなか簡単ではないということを申し上げます。まずは我々、私も含めてそうなんですが、研究者は思い込みがどうも強いところがございまして、自分でこうであると信じると、一生懸命そのことに合うようなデータが欲しい、あるいは自分で一生懸命実験をくみ上げてそのようなデータを出そうと努力いたします。それで証明できたものを学会で発表するなり、あるいは論文に発表するということになります。実際のデータが、例えば思い込み。自分がこうであろうと考えたことと合致した場合は、たまたま合致したということがあります。バイチャンス。もう一つは、何度調べても合致する。これは結構なことであります。自分の研究、例えば自分の研究室ではうまくいくんだけれども、ほかの研究者がやったデータとはなかなか合わないという場合がある。あるいはほかのデータとも合うという場合がある。
いずれであっても、学会発表は可能です。こういうことを発見しました。また、そのような発見というものは論文になる場合があると括弧で付けましたのは、これは次に述べます論文の査読のシステムと関係しております。とにかく、なる場合もあるし、ならない場合もある。
赤字で示した左のような場合の論文というものは、科学的合意に寄与しませんし、だれかがそれは間違いだというような論争になる場合もありますが、普通、大した研究でなければ時代とともに忘れられていくということが通常でございます。右の場合で、しかも価値がある論文。みんなそれは大変新しい発見だと言う論文のみが科学的合意に寄与していくという過程であります。
このような過程を経て、例えば科学的合意に形成するかしないかというのは、研究のタイプあるいは発表の雑誌というものに影響されて、我々研究者はやはりいい論文を書きたいと日々努力するわけであります。
(PP)
論文もいろいろでありまして、発表雑誌による差というのは歴然としております。研究発表する雑誌は非常に大事であります。
査読制度というものが我々研究者の仲間で使われている国際雑誌では一般でありまして、主に19世紀イギリスで発達した制度であります。これは同業者がその論文の内容を厳密に査定して、自分の専門性に応じて、間違いあるいは正しいかと検証する。この査読の検証に耐えた論文のみが普通掲載されるということになります。
しかしながら、査読制度がある科学雑誌であっても格付けは大いに異なります。例えば掲載論文が非常によく引用される雑誌というのは格付けが非常に高くて、みんなそういう雑誌に論文を書きたいわけです。そのような論文は残念ながら、幸か不幸か、当たり前なんですが査読は非常に厳しいです。例えば我々、生命科学、生物学をやっている研究者が一生に1本でいいから書きたいとあこがれている『Nature』というイギリスの雑誌がございますが、これの採択率は10%以下、はるかに切ります。ほとんどの論文は門前払いです。あなたの論文はこういうことで我々のフィールドに合いませんとか、まず門の前でシャットオフされて、門の中に入ったものの採択率が10%以下というもの。
このような格付けのランクとしては、雑誌にインパクトファクターというものがありまして、このインパクトファクターというのは、その論文に掲載された論文の平均引用頻度というものです。これはどういうものかというと、例えば『Nature』誌というものはインパクトファクターが30。例えば『Nature』誌に年間100本の論文が採択されて出ると、30というのはすなわち3,000回、100本が引用される。だから、1回の論文当たり30回引用されるという非常に高い引用率を誇っております。だから我々はそこに出したいと大いに努力するわけであります。
査読制度を持たない雑誌。これは一般誌で、普通の週刊誌などはそうですが、科学的な論文を出すものではありません。自分の意見を出すというところであるということで、科学的合意まで持っていこうと思えば、論文であったら何でもいいというわけでないということでございます。
(PP)
被爆者研究は放射線リスクの世界標準と我々は考えております。これは科学的な合意になっております。それは被爆者研究が非常に質の高い研究デザインを持ち、また、さまざまな面で過去50年以上検証されておるからでございます。原爆が落ちて、急性影響に関する記述があり、胎児影響に関する記述があり、次は白血病が出始めた。しかしながら、子どもさんを調べても遺伝的影響は見られない。それから、固形腫瘍が出始めて、晩発性の非がん影響というもの。時間系列でこのような形で出ておりますが、これは50年以上検証されて出てきたデータであり、何度も何度も検証されております。
(PP)
被爆者研究が世界標準として認められている理由というのは、まずは対象集団が非常に多い。すなわち12万人という多くの被爆者の方々の御協力を得て、非常に厳密な研究デザインを持ってつくられた研究であるからであります。その集団の中には寿命調査集団、成人健康調査集団、胎児被爆者集団、2世の集団。このようなものがセットアップされて、それぞれの方々について非常に緻密な追跡調査がなされております。
線量についても、実測ができないものでありますが、同じ広島型、長崎型の原爆をつくって、更にそれを実際爆発させて距離と線量の関係でテストしたりしております。そのような中から、計算による被爆線量の推定としてDS86、DS02というようなものができて、個人個人の被爆者の線量が策定されており、それが正しいかどうかということを染色体異常の頻度で更に検証する。あるいは数は少ないんですが、歯の奥歯などの内側のエナメル質を使って、電子スピン共鳴法でこのような線量が正しいかどうかの検証もして、おおむね全部が合うということで、線量については非常に厳密であるということである。
それから、調査集団についての厳密な追跡があり、これは健康データであり、死亡あるいは罹患データであり、死因の解析であるということで、非常に長期にわたるものであります。
発表論文は、例えば放射線影響研究の関連の国際誌『Radiation Research』にたくさんこれまで報告されてきておりますが、そこに出された広島、長崎の研究の引用率は非常に高いです。2007年にリー・プレストンという先生が、やはり被爆者研究についての非常に膨大で分厚い論文を掲載されました。これは既にオフィシャルには28回の引用があり、先ほど出てまいりました国連科学委員会の報告とか、そういうものにも常に載録されて高い評価を受けております。
(PP)
調査集団の3つ、4つの集団についてざっくり書いたものですが、寿命調査集団が1958年に設定されて12万人。その中で2万人が成人健康調査。これは被爆なさった方の身体的影響というものを見るもので、同じ身体的影響でも胎内被爆者集団というものがありまして3,600人。1956年に設定されております。それから、次世代影響集団があって、2世集団で7万7,000人。これは50年以上の追跡調査でありまして、世界的に類例がございません。
(PP)
そのような中から出てきたデータを2、3お見せいたします。これは被爆者研究の固形がんの過剰相対リスクと線量。我々はよくいろいろなところで引用するのでありますけれども、大体1Gyぐらい当たった集団でリスクは0.5。すなわち、5割ほどがんのリスクは増えるということで、1998年までの7,851名のがん罹患の死亡の方の中で、848名が原爆放射線に起因するということが推定されておりまして、それから得られた数値であります。
もう一つは、1Gyでこれから計算しまして、がんの生涯リスクは10%増えるであろうということが言われておりまして、これが今の世界の放射線の防護基準の1つの基盤になっております。
それから、100mGy以上で固形がんの頻度は直線的に増えるということであります。
100mGy以下では、試算の点のところでばらついておりますが、統計的な有意性がないということも科学者内ではコンセンサスになっております。
(PP)
次に、このような100mGy以下ではどうなんだということで、100mGy以下で1%の変動ということなんですが、1%の増加を12万人で検証できるどうかという問題は非常に難しいと言うべきであります。がんの死亡の、例えば地域変動をとってみますと、我が国では高発がん県、低発がん県に簡単に分けることができまして、例えば長野県とか山梨県、あの辺りは低発がん県で有名であります。秋田県は全部のがんが高くて、主に胃がん関係が高いということで、それを押し上げております。大阪府は肝がん。大阪及び関西、伊勢は肝がんの頻度が高くて、これは多分肝炎ウイルスの感染頻度の問題であると考えられております。
それで、頻度の地域変動がどのぐらいあるかと言いますかと、高い県と低い県で10%ぐらいの差がございます。そのようなぶれがある中で、1%の増加を検証するというのは非常に難しいということがこれからもわかりますが、1%のぎりぎりのところまで追い詰めたということで、被爆者研究というものが世界標準になるゆえんであります。がん以外の疾患についても非常に長期の追跡で明らかにされました。
(PP)
これは数年前に世界がびっくりしたんですが、これまでがんが中心であると言われておったのが、心疾患であり、白内障であり、脳卒中であるというのが、追跡期間が長くなればなるほど明らかになってきたのは、線量に対して割と直線的に増える傾向が見えてまいりました。しかしながら、リスクの増加自体はそれほど高くありませんので、がんほどの増えではないということであります。これは被爆者研究が世界で初めて明らかにしたもので、それから放射線防護などのシステムがこれを中心にまた変わろうとしております。
(PP)
 胎児期の被爆に関しましても1950年~60年代にイギリスでやられた研究があって、それが一応世界のコンセンサスとなっておった時代があります。胎児は非常に放射線に感受性が高いのではないかと言われておりました。しかしながら、広島のデータを精緻に調べますと、胎児被爆の過剰相対リスクは小児被爆よりかえって低いのではないかという研究が近年明らかになっております。そのために、国際放射線防護委員会、ICRPと言いますが、いろいろなリスクの評価をやり防護の勧告を出す団体でありますが、その団体では、胎児被爆による発がんについて胎児は小児に同等、あるいはそれよりも感受性が低いという結論を出しております。これも被爆者研究が起きらかにした非常に大きいポイントであります。
(PP)
それから、2世の調査。これはこれまでの研究で、一応7万7000人を調べても、いわゆる遺伝的影響というものが見られていない。これも被爆者研究が何度も検証して明らかにしたことであります。
(PP)
このような被爆者研究から得られた科学的合意というものは、ざっくり言いますと、急性の確定的影響は数Gyの閾値線量で発症するということ。
長潜伏期の非がん影響というものは今、確定的影響に分類されておりますが、1Gyで約10%の頻度上昇で閾値はごく小さい、ないしはない可能性もあるというのが被爆者研究から出ているところであります。しかしながら、0.5Gy以下では自然頻度の変動の範囲に入ってしまって、はっきりとないとかあるとかいうことは言えないというのが実際の状況であります。
確率的影響、すなわち、がんでございますが、1Gyでは相対リスクが50%上昇し、1Gyで生涯リスク、死亡リスクが10%増えるということで、50と10でちょっと面倒くさいんですが、これは堪忍してください。それから、閾値はないとしてもよいという考え方であります。ただし、ないかどうかということは、そのすぐ下にあります0.1Gy以下でのリスクは自然頻度の範囲の中であるということで、これはわからない。科学的検証はできないと言うべきであります。胎児被爆は小児被爆同等あるいは低いということ。
科学的合意は0.1Gy以下でのリスクの有無は言えない。しかしながら、放射線防護を考える上では、0.1Gy以下でも直線的増加というものを想定しております。この矛盾に見えるものについては次のスライドで申し上げます。
(PP)
被爆者研究から明らかになった確定的影響と確率的影響をざっくりまとめます。
まず、確率的影響と言われるものは自然発症頻度が必ずあります。例えば数%から数十%の自然発症頻度があり、線量に対して直線的に増加するわけであります。だから、この絵で真ん中のところに点々の自然発症頻度というものがありまして、必ず自然発症頻度、この場合は死亡率で見たら30%、発症率で見ますと50、60%。そのような上に重なって直線的に上がっていく。そのために、この自然発症頻度の変動とか集団によって変わりますので、その変動の中に隠れて0.1までははっきり見えない。科学的にある、ないは厳密には言えないということであります。
これまで確定的影響とされてきた晩発的組織障害。緑色で書いたものですけれども、同様に自然発症頻度がものによっては数%、数十%、あるいは100%まであるというような状況で、放射線は薄く頻度を上げるということで閾値は0.5以上ではないかと言われております。
それに対して、急性の組織障害については自然発症頻度ゼロです。何もない健康な方が下痢をするでもないし、血を吐くわけでもなんでもない。そういうゼロが、ある線量以上を浴びるとどんと出てくるということで、閾値線量は0.5以上ということに、これは非常に丸めた数字でそれぞれの症状によって全部違いますが、このようなことが言われております。閾値以下では影響がない。これがコンセンサスであります。
(PP)
国際的合意がこれから必要になって、それは防護のために国際的な合意というものが必要になっております。科学的合意というものは、まず国際的合意形成が行われて、特にリスク関係を考えるためには国連科学委員会というところに上げられて、そこで更に厳密な検証をされて報告書としてまとめられます。世界21か国からの専門家の合議によって合意されたものを報告として刊行する。だから、最初の研究から科学的合意、国際的合意に行って、国際的合意から防護政策につくられていく。これが国際放射線防護委員会、先ほどのICRPといった組織でありますが、国連科学委員会でのリスク評価に準拠しまして、防護政策になる基準の考え方を勧告する。それが各国政府に行き、防護政策の立案というものになります。
(PP)
だから、最初、一番上のある程度合意された科学的知見。線量とリスクの関係はある線量以上で直線性があります。逆に言えば、直線性があるかないかというのは、ある線量以下ではわからないですということがそこに含まれております。
それが国連科学委員会に行きますと、全部をまとめて国際放射線防護委員会に上げていって、そのような国連科学委員会の報告に基づいて防護基準を勧告する。その場合は防護のため、低線量でも直接閾値なし仮説で、すなわち直線である。だから、ここで直線性があり、あるいはないとも言えるというものが防護という政策的なものを含んだ場合には、これはないと考えて評価しましょうという形で平常時の放射線防護がなされております。緊急時、今の福島のような場合はまた問題が変わってまいりまして、福島などの場合には実際浴びてしまった方々について、それは本当にリスクがあるんでしょうか、ないんでしょうかという議論を真面目に積み上げていく。そのような中で、広島、長崎のデータというものが非常に大きな意味を持っておる。更に、それが登場しておるというのが現状であります。
 以上であります。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。お二人の方からは極めて短時間のうちに要領よく、また御丁寧に御説明をいただきましたことを感謝申し上げます。
谷口先生からは原爆症認定審査に実際に携われている原子爆弾被爆者医療分科会の立場から、原爆症認定制度及び医療特別手当の趣旨、現状、審査の実情、更には問題点と御指摘をいただきました。また、丹羽先生からは被爆者研究についての科学的合意形成やリスク科学についての国際的合意形成について御説明をいだいた上で、放射線の健康医療の影響について、極めて御丁寧に御説明をいただいたところでございます。
それでは、ここでひとつ区切りとさせていただいて、委員の皆様方から御自由に御質問や御発言をいただきたいと存じます。いかがでございましょうか。どうぞ。
○草間委員 今日は谷口先生、丹羽先生にそれぞれ、谷口先生には医療分科会の御説明いただきまして、大変御苦労されている状況がよくわかりました。丹羽先生には原爆被爆者の調査の結果、ありがとうございました。
それで、谷口先生のに関連しまして事務局にお伺いししたいんですけれども、本日の谷口先生の御提案の最後にもありましたし、前回の伊藤参考人からも、健康管理手当と医療特別手当が分けてあること、一緒にしたらどうかというような御提案があったりしました。そこで、健康管理手当あるいは医療特別手当が、例えば健康管理手当3万数千円、あるいは医療特別手当の11万7,000円でしょうか。こういった金額がどういうことで決められたか。今日の谷口先生の御提案の中でも大変両者に差異があるということで、特に原爆被爆者の皆様に関しましては、医療費あるいは介護費等につきましては現物給付という形で行われているわけですので、健康管理手当と医療特別手当がどういう根拠でこういった金額が決められたかというのをお話しいただきたい。
もう一つ、そのほか社会保障給付金。例としては生活保護などがあるかもしれませんけれども、日本ではほかの社会保障給付金というのがどのぐらい支払われているかというのを是非お示しいただいて、同じ国のお金が出ているわけですので、その辺をお伺いしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○神野座長代理 事務局、いかがでしょうか。1番目の点、手当の金額の根拠及び経緯。2番目の点は、他の社会保障との給付についての実態ですが、別途御説明いただくのであればその機会でもいいですし、今、とりあえず簡単に御説明しておいていただけるのであればお願いできればと思います。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 手当の根拠や特に経緯については、昭和35年の医療手当ができたときからの変遷になりますので、それはきちんとした形でまた資料を提示したいと思っておりますが、健康管理手当と医療特別手当とではそもそもの考え方、趣旨が異なります。健康管理手当については、いわゆる原爆症の認定の方とは異なる形で、原爆の放射線に起因する、あるいは要医療というところまでは言えないけれども、そういった方についても、疾病により一般の方よりも多くの出費が必要となっている。それは当時の説明であると栄養補給費、保健薬費等といったかかり増しの費用もあるという中で、一定額の手当を支給しましょうという考え方で、昭和43年当時は月額3,000円だったわけですけれども、それが徐々に変遷を経て、今3万3,000円程度まで上がっているというものでございます。
医療特別手当については原爆症と認定された方々が対象でございます。こちらは原爆症と認定をされたというところで、ある意味、相当重度の方、重症の方でいらっしゃいます。また、生活面でも相当程度、稼得能力という面でも限られているという中で、生活面での安定を期するということも含めて額を設定しております。制度が始まった当時、特別手当と医療手当に分かれていたわけですが、その手当を統合する形で、これもさまざまな変遷がございましたけれども、昭和56年から医療特別手当ということになっております。現在、約13万7,000円になっておりますけれども、健康管理手当の額との違いというのは、今、申し上げましたように、特に生活の安定まで期するかどうかというところまで趣旨として持っているかどうかという違いが大きいところがございます。
これまでの経緯があって今の額が設定されているものでございますけれども、繰り返しになりますが、説明が行き足らないところがあると思いますので、これまでの変遷、根拠、額の設定の考え方については、資料を提示して説明させていだきたいと思います。
また、ほかに社会保障の給付金というのは、草間先生、例えばどんなイメージですか。
○草間委員 例がいいかどうかわかりませんけれども、生活保護とか、そういったものがどのぐらい支払われているかということをお伺いしたいなと思います。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 わかりました。そういう意味では、生活保護の考え方。生活保護でも状況の方によって額が異なると思いますけれども、生活保護でどのような形でお金が出ているのか。また、この手当と生活保護の給付金との関係と言うんですかね。それを収入と認定するかどうかという話もあるかと思いますので、その辺の考え方も含めて、資料として、また御提示させていただきたいと思います。
○神野座長代理 前の資料は、これをもうちょっとバージョンアップしたものがある。前にも一応出ているんですよね。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 第1回目で、本当に概要的な健康管理手当について、あるいは医療特別手当についてという資料は事務局からお示しをさせていただきました。ただ、これは額の根拠とか変遷まできちんと書いたものではございませんので、そういう意味で、もう少し提示をしたいと思います。
○神野座長代理 石先生、どうぞ。
○石委員 両先生の関係と言いますか、意識の中に、この2つを御説明があった中で何か関係などを聞いてわからないんですけれども、谷口先生がやっておられるのは一番現場の生々しいところで大変苦労されているわけです。そして、何か足をこうするとか、具体的には物差しが必要だとお考えだと思いますが、そのときの物差しというのは、恐らく丹羽先生がお出しになっているような科学的な知見ですとか、国際的な合意を得たものがあれば本当はいいんでしょうけれども、そこまでいっているんですか、いっていないんですかというのが私の質問なんです。具体的に科学者がやっている学問の世界の話が、現場のいろんな政策的なジャッジメントをするときに役に立っているのか。あるいはこれはまた別の問題だ、そういう意識はないんだとお考えになるのかどうか。それを確かめたいと思いまして、質問させていただきました。
○神野座長代理 どうぞ。
○谷口参考人 勿論何らかの物差しがないと審議できないわけでございまして、一応公開したものがございますけれども、ある程度の物差しの中で審議をしております。ただ、先ほどの丹羽先生のお話を改めて聞かせていただきまして、やはり科学に立脚した部分とそうではない部分が混在しておりまして、特に平成20年の新しい審査の方針。今、やっております審査の方針を、我々としては受け入れたという言い方をしておりますけれども、その方針でやるようになってからは、その前はいわゆる原因確率と言って、幾分なりとも科学に立脚した審査方針でやっていたわけです。現在は大きくかじを切って、救済という言い方は変かもしれませんけれども、より被爆者の方々を広く認定するという立場に立って、大きく広げた物差しでやっているというところが現状でございまして、なかなか科学者の集団としては、内心違和感を覚えているというのも事実でございます。
○神野座長代理 ありがとうございました。
丹羽先生、補足して丹羽先生のお立場から御意見をいただけますか。
○石委員 具体的な物差し等々に役立てようというような問題意識かあるのか、ないのか。別の問題なのかを聞きたい。
○丹羽参考人 私個人では、被爆者の問題というのは、被爆者個人の方にとってはやはり御経験なさったことが一番大きいわけです。我々、科学者というのは、その中で放射線の部分だけをどう切り出して、それの影響を見るかということが一番大事だと思っておるんです。しかしながら、被爆者の方にとって、放射線もあれば、爆風もあるというものであり、それは混然一体となっておるものでございます。この場合の放射線起因性というものを、逆に言えば、非常にきつく言われると、多分被爆者の心情とハート、それから理性ですか。そこの間のそごというものが、私の話したことと谷口先生のお話になったことのギャップであろうかと思っております。
○神野座長代理 ありがとうございました。
どうぞ。
○荒井委員 私も新しい審査の方針になりましてから、主として、被爆の場所あるいは入市の場所、時間的な関係の事実認定関係でお手伝いをするということで分科会に参加させていただいております。谷口先生から、今日、お話いただきましたように、大変な時間的な制約の中で、あえて言うと、ある意味学問的良心との葛藤の中で頑張っておられるということで敬服をしている次第なんですが、今日は2点お尋ねさせていただきたいと思います。
1つは、主として、今日のお話は今の法律あるいは新しい審査の方針の下での放射線との起因性の関係についての御説明だったと思います。もう一つの要件としての要医療性という問題がございますけれども、審査の中で専門の先生方の見る、いわゆる要医療性の御判断と申請をされる被爆者の方々の、まだ投薬は受けているんだという場面での要医療性の感覚と少しギャップがあるのではないかという気がするんです。今後の制度の在り方を考えていく上において、要医療性の問題については現状のままでよろしいというお考えなのかどうかが1つ。
もう一つは、今日の御説明の終わりのところで、被爆者援護施策であるがゆえに、放射線との関わりについてある程度担保されなければならないがという御説明がございました。大変難しいところであろうと思うんですが、ある程度担保ということをどう制度として実現していくかについて、何か具体的なお考えがございましたらお教えいただきたい。この2つでございます。よろしくお願いいたします。
○神野座長代理 2点、お願いできますか。
○谷口参考人 確かに要医療性のギャップというのは、私どもが審査いたしまして認定と却下の処分を出すわけですけれども、却下の処分を出した方々の中から異議申立てというのがときどき出てまいります。異議申立てについても私どもが審査をしているわけでございますけども、その中で、自分は治療を受けているのに要医療性なしという判断で却下になったのはおかしいという御意見が多々見られるのも事実でございます。
私どもが考えております要医療性というのは、もともとの疾患に対する治療が行われているかどうかということが1点。
もう一点は、例えば悪性腫瘍であれば、現時点で再発の可能性があるかどうか。ですから、再発の可能性を目途として、いろんな検査を、例えば数年にわたって検査を密に行っている期間といったものは要医療性ありと判断するわけです。しかし、明らかにその疾患が治癒したであろうと思われる期間で、例えば病院に通って年に1回、いわゆる健康診断的にやっている。これはこういう制度以外の方々もやっておられることで、それを要医療性の中に入れるかということに関しては少し疑問に思っているというところで、原疾患に対する治療が行われているということと再発の可能性がある期間は要医療性を認めようということで現状はやっております。よろしいでしょうか。
○荒井委員 ありがとうございます。
○谷口参考人 もう一つ、放射線起因性についてのある程度担保というのは、我々の医学者、科学者としてのぎりぎりのところでありまして、先ほど100mSvから直線的に上がるというお話がありましたけれども、それこそ1mSvぐらいのところで議論をしているというのが現状でございます。全く放射線の起因性を考えずにやるのであれば、我々科学者は要らないわけで、本当に事務方だけで審査をすればいいわけです。私どもがその役に任じられて審査をしているということは、やはりある程度の科学的な担保を見ているというところがベースにあるのではないかと私は思っておりますし、恐らく分科会の先生方もそういう思いで御協力をいただいているのではないかと考えております。
○荒井委員 ありがとうございました。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。田中委員。
○田中委員 私からお二人に御質問があるんですが、まず、丹羽参考人はどういう目的で今日の報告をされたかというのがわからないんですけれども、私がおもんぱかると、恐らく谷口先生もおっしゃった、原因確率というのは正しいんだ。それを採用されなかったことについて、谷口先生は若干不満の言葉を述べておりましたけれども、原因確率を出してきたABCC、放影研の研究は国際的に認められているんだということを丹羽先生は主張されたんだと思います。
そのことだけは事実なんですけれども、もともとABCCの基礎的なデータがどういうふうにとらえたかということを考えると、これは残念ながら、米軍の意図があって、初期放射線の影響だけしか見ていない。ですから、線源から発せられる線源の影響だけについては、すばらしい研究であったかと私は思います。私も科学者の端くれですので、そう思います。しかし、今、問題になってきている残留放射線がこの研究の中に全く考慮されていない。だとすれば、今、福島でも問題になっておりますけれども、この研究に大きな欠陥があったと私は思っているんです。そのことを科学者は認めないといけない。とにかく初期放射線という線源から放出された放射線の影響だけは、かなり綿密に実験までやって求められている。しかし、繰り返しになりますけれども、残留放射線の影響は全く考慮されていない。それをどうカバーしていくことかということを科学者が謙虚に反省しながら、これを活用していかなければいけないんだと私は思っております。
そういう意味で、原因確率というのはあくまでも目安。もともと確率そのものが認定する場合の目安にしか過ぎないわけです。防護のために使うわけですから、ある人間の個人の起因性を求めるものではありません。だから、防護のために使うんですけれども、あくまでも目安であるということを、やはり最初に丹羽先生はおっしゃるべきでなかったかと私は思っております。
 それから、谷口先生にですけれども、今、申しましたように、原因確率はあくまでもリスクの問題です。だから、それを被爆者の起因性にそのまま適用するというのは間違っているわけです。防護のためのリスクの数値なわけですから、それを原因確率という数字で出して、しかも、機械的に適用するというのを、最初の新しい審査の方針を決めたときには採用してしまったわけです。そこにもともとの間違いがあった。
その新しい方針を決める前の、なぜ決めなければいけなかったかということについては、最高裁の判決があって、見直しをするときにそういう判断をしてしまった。これは決定的な誤りです。最高裁の判断は、そういう数字を機械的に適用すべきであるとは言っていないんです。むしろそれに必ずしも影響しないでもよろしいということを言っているわけです。それを原因確率という数字を出して機械的に適用した。これがやはり被爆者の、私は被爆者でもありますけれども、怒りを買ってしまったということです。
それでも、なおかつ見直しがやられて、与党PTの方針で決まったわけですけれども、皆、見直しをやっている段階で、丹羽先生はあくまでも原因確率というものが正しいんだ。それから、残留放射線の影響は調べることはできないんだということを主張されたと私は記憶しております。そうでなかったら申し訳ありませんけれども、そういうことを考えれば、谷口先生、やはり原因確率に物すごい郷愁を持っていらっしゃるようですけれども、それはきっぱり捨てていただかなければいけないと思っています。そういう立場で考えていただかないと審査はできないんだと私は思っております。
○神野座長代理 第1の質問は丹羽先生にお答えいただいた方がよろしいでしょうか。その後に谷口先生、お願いします。
○丹羽参考人 まず第1に残留放射線のことですが、残留放射線の扱いというのは今のところ、まずDS86でやられておるということは御存じだろうと思います。西山地区に関しても、たしか長崎が市だったと思いますが、非常に緻密な研究をやっておられて、特に染色体異常の頻度も解析されております。少なくともそのようなデータから示すところでは、これぐらいの線量というのが出ておりまして、それは直接被爆の線量を大幅に変えなければならないということではない。そういう評価が下された結果、今のDS02になっておると私自身は理解しております。
そのほかに、入市被爆の残留被爆に関して、今中先生が随分と精緻な研究をやっておられます。彼のデータを拝見しても、例えば原爆が落ちた後の何日目に入って、市内をこのように動いてという解析がなされていて、そのデータである程度の推定がなされていて、それが非常に高いものであるかということになりますと、今のところはそのようなデータであるとは私は理解しておりません。
もう一つは、歯のESRのデータがまだ残念ながら論文としては出ていなかったと思いますが、入市被爆の方についても一応解析されております。そのようなデータから合わせて、残留放射線の問題というのは非常に大きな寄与をする。今の線量の倍になるとかというものではないと私は研究者として理解しております。
それで、私が申し上げた今日の話は、あくまで放射線という要因だけを切り取って、それと健康影響の関係が今、どこまでわかっているかということを、私自身がこれまで理解したものに基づいて申し上げたのでありまして、原因確率云々に関しては、これは言うなれば政策的な判断である。我々科学者の立ち入る部分ではないと実は思っております。だから、国が原因確率を捨てる捨てない。これは別な話でありまして、私自身はマウスを使った実験を随分長いことやっておりましたし、広島にもおりました。それで、放影研のデータをいろいろ勉強させていただいて、非常に感銘を受けたのであります。そういうことで、私が今日、申し上げたかったことは、放射線の人体影響というものを示すに、広島でのデータというのは世界標準になるまで追跡されてすばらしいものであるということだけを申し上げるということで、それ以外の部分についての言及は私自身はしなかったと理解しております。
以上です。
○神野座長代理 後者の問題について、谷口先生、何かございますか。
○谷口参考人 私は別に原因確率に郷愁を持っているわけではございませんで、やはり現場といたしましては、審査をしていく上で何らかの物差しが要るというのはやむを得ないことでございます。その1つの一助として扱って、今、田中委員がおっしゃった、前の審査方針のときはそれをある程度使っていたということは事実でございます。ただ、機械的に当てはめたというお言葉でしたけれども、実は全くそうではございませんで、先ほど丹羽先生もおっしゃった、残留放射線の推定の線量というのはほぼわかっておりましたので、それは全部つけ加えて審査にしております。ですから、いわゆる原因確率だけを機械的に当てはめていたことはないということは、ひとつ申し上げておきたいと思います。
それから、現在、更に平成20年度の審査の方針が新しくなったところで、実はその審査の方針を決めたときは、委員の先生方から、いわゆる科学というところから大きく足を踏み出してやっていくんだという意見が出まして、そういう立場で、現在は広く厳密に科学的な知見にこだわらずやりましょうというところでやっている。だだし、現場としましては、何らかの基準と言いますか、物差しが要るということだけは御理解いただきたいと思っております。
○神野座長代理 それでは、高橋先生、どうぞ。
○高橋滋委員 まず、谷口先生にお聞きしたいんですが、先ほどC型肝炎の話を言及いただきました。これは新しい審査でも放射線起因性が認められる肝炎となっていると思うんですけれども、C型肝炎に言及されたポイントは何なのかなということを1点お聞きしたいということ。
 それから、新しい指針でも2号要件というのがあるはずでございまして、1号以外に2号で総合的に判断するという一般条項があるわけでございます。その辺の2号要件の運用について少しお教えいただきたいというのが、谷口先生に対しての御質問でございます。
 丹羽先生について1点だけ細かいお話ですが、14ページのスライドでGyの話が出ています。やはりSv換算をするんだろうと思うんですけれども、通常、長崎の場合にどのぐらいのSv換算になっているのかなということを、その被爆の状況によっていろいろと違うと思いますが、どのぐらいのSv換算になるのかなということを教えていただきたい。
以上2点、合計3点です。
○神野座長代理 それでは、最初の2点。C型肝炎の件と2号要件の件について、谷口先生。
○谷口参考人 C型肝炎につきましては、我々が審査をしている疾病がたくさんある中で、この場合はウイルスですけれども、いわゆるほかの放射線以外の原因が明らかであるということで例に挙げさせていただきました。
総合判定の話、2号要件の御質問ですね。
○高橋滋委員 済みません。C型肝炎で認定されているということですか。それとも、認定されていないということですか。
○谷口参考人 認定されております。
○高橋滋委員 その根拠はどういう根拠ですか。
○谷口参考人 ですから、その根拠は科学的な根拠ではないということです。いわゆるC型であろうと、B型であろうと、現状は肝炎も認定される疾患の中に入っているということです。
総合認定の2号要件の件ですけれども、まず被爆要件でございます。オープンにされています2km以内、100時間以内の入市という要件がございますけれども、これは特に法曹委員の先生方に事前審査をしていただいております。例えば3.8km直爆とか、120時間ぐらいで入市とかいうようなことが手帳上はあっても、古い、いわゆる原申とかをずっと見ていただいて、それよりも早く入市したのではないかとか、あるいはそれよりも少し近いところで手帳ではない要件はないかということを個々に精査をしていただいております。そういうことで、手帳上は3.8kmとか4kmの直爆であっても認定に至るケースがあるということが1つでございます。
もう一つは疾患に関しましてですけれども、疾患に関しまして、今、オープンにしているがんとか白血病、いろんな疾患をしてあります。あれにオープンになっていないものの中でも、いわゆる疾患の特異性と言いますか、その被爆者の方々に対する悪い影響と言いますか、そういったものを勘案してオープンにされていない、例えば脳腫瘍。良性の脳腫瘍とかいったものであっても認定になっている。あるいは再生不良性貧血といったものも認定の対象になっている。それが今のところの2号の運用であると御理解いただければと思います。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
 それでは、Svの問題について。
○丹羽参考人 この14ページのものはミスプリというか、昨日の晩につくっておりまして、数値を全部Gyにするべきところを、しかも、ただのGyでmSvとかそういうことでないようにしなければならないのを残しております。
Gyにした理由は、1つは広島、長崎の場合は全身被爆であるということです。それと、Sv表示にするために必要な要因が2つございまして、1つは普通のγ線以外の放射線。すなわち広島、長崎の場合、中性子線なんですけれども、中性子線の寄与はどれぐらいであるかということが問題になります。これの場合は中性子線の寄与が少なくとも低い。
もう一つは、疫学では、Sv表示というのは下手をすると非常に誤解を招くということで、最近は疫学では全部Gy表示でやるということになっております。そのために、ここのところで下の線で線量、ちょんちょんでmSvというところを全部Gyにしていただいて、500という数値は0.5、0.5に変えていっていただきたいと思います。
以上です。どうも失礼いたしました。
○神野座長代理 よろしいですか。
それでは、どうぞ。
○田中委員 追加の質問と言いましょうか、私が申し上げましたのは、ABCCの調査の段階で放射線量を推定していくときに、被爆者たちが残留放射線の放射性降下物による残留放射線の影響を受けていたはずなんです。ところが、それを勘案することができなかった。それが基になっているデータであるということを1つは強調したかった。
2つ目は、疫学調査をやっていくわけですけれども、コントロール。要するに、被爆していない人と被爆している人の比較をする場合に、例えば比較的遠距離、3kmとか4kmの人たちをコントロールとして使っているわけです。そうなりますと、今の福島などを見ていただければわかるように、3kmとか4kmという被爆者たちは大量に放射性降下物を浴びているわけです。そういう被爆者であるわけです。ところが、その人たちがコントロールになってしまった。そういう疫学の結果というのは、やはりそういう弱点があるということを認めていただかないといけないというのが私の言いたかったことです。丹羽先生がおっしゃった黒い雨地域の、長崎の西山地区とか高須地区の人たちについては、審査のところと言いますか、DS86のところで付加する。付加するという線量の評価をしているわけですけれども、もっと被爆者自身が放射性の降下物の影響を受けているということを考えていただかないといけないというのが、私の言いたかったことであります。
○神野座長代理 丹羽先生、何かコメントございますか。
○丹羽参考人 御意見、十分受け止めます。ただ、放射線の影響というのは、線量が幾らであれば身体的影響はどうであったかということの関係をつけるというのが、放射線の健康影響なんです。その場合に線量の寄与がどれぐらいであるか。勿論全部足し算していきます。足し算していって、その寄与がどういうことであるかという形を検討した結果として、一応、今のデータがあるということ。
それと、まず福島の場合を今、言及なさいましたけれども、あれの場合は原発から徐々に吹き上がったものが雲となって飛んでいったという状況。それと、実際、原爆の場合で吹き上がったという状況とは当然違うということで、遠距離に関しての線量測定も十分やっておると私自身は理解しています。だから、その内部被曝とか残留放射線の影響があったというものを込めて、その皆様方がおられて、皆様方の健康状況があり、それを踏まえて実際はデータが出ておると理解しております。
それで、特に遠距離に関して高いというのは20年、30年前から問題で、この被爆者研究の一番当初に、どの集団をコントロール、対象として取るかというのは大議論がありました。実は郡部に行くと、市内の居住の方と疾患のパターンが変わってまいります。がんに関しては郡部の方が高いです。広島という県において、農村部の方々だと思うんですけれども、その辺りでそれではどういう方々をとろうか。そうすると、実際は当時広島の市内におられなかった広島の市民という方々とか、少し遠距離の方で推定線量はこれこれ以下という方々を対象集団として、そのような対象集団として使うにおいては、両者においてもそごがないという議論は、非常に初期のときになされておると理解しております。がんの頻度だけ取れば、郡部の方で高く、だんだん市内に近づくにしたがってリスクが落ちてきて、また市内に入って線量が高くなると上がるという傾向があるというのは20年以上前に研究されております。それに基づいた対象群の取り方であるということで、多分その辺りは初期の論文の著者、チャールス・ランドという方なんけれども、非常に私は尊敬する研究者なんですが、その方の解析というものは、私は科学者として信用に足りると実は思っております。
○神野座長代理 申し訳ありません。予定の時間をかなりオーバーいたしておりますので、この議題につきましては、ここら辺で打ち切らせていただきたいと思います。谷口先生、丹羽先生、本当にどうもありがとうございました。
 引き続きまして、裁判官御出身の方からヒアリングをちょうだいするという趣旨で、岩井先生から御発表をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。


○岩井参考人 岩井でございます。裁判官として長く裁判に携わっていた関係で呼ばれたのかと思いますので、この種の事件に関する裁判の状況について、主として一般的なことになりますが、簡単にお話をさせていただきたいと思います。
 まず第1に、民事訴訟の手続の概略を申し上げようと思います。
被爆者援護法による認定申請却下処分の取消しの訴えというのが普通の裁判のスタイルで、これは実は行政事件訴訟であります。行政事件訴訟につきましては、行政事件訴訟法という法律で扱うことになっておりますが、行政事件訴訟法は行政事件に特有な点のみを規定しておりまして、一般的なことについては民事訴訟の例によると定めております。したがいまして、手続は一般的には民事訴訟法によって行われるということになります。
次に、手続き流れのイメージをつかんでいただくために申し上げますと、まず原告が訴えを提起します。原告になるのは認定申請をして却下された被爆者の方で、被告になるのは現行法では国ということになっていますが、その原告が、却下された処分の取消しを求めるという趣旨の訴状を作成しまして、裁判所に提出するということになります。裁判所の方でその訴状を被告に送達する。そして、第1回の口頭論弁期日が開かれるわけですが、やや大きい訴訟事件では、そこで進行協議期日というものが設けられて、事件全体の進行について協議が行われ、審議の計画が定められることが多いかと思います。第1回口頭弁論期日におきまして、原告は訴状を陳述し、被告は答弁書を陳述して、双方が基本的な書証を提出するという扱いになります。
その後、争点整理、証拠の整理の過程がありまして、それを現行法では大きく口頭弁論の形で行う準備的口頭弁論の制度と弁論準備手続という、法廷ではなくて、準備手続室というようなところで行うスタイルのものと2つ設けられておりますが、そこでそれぞれが主張を応酬し、書証等を提出し合って争点を整理するという手続が行われます。そして、その最後に、争点に基づいて、証人や当事者のうちのだれを調べるかということを決定して、準備的口頭弁論を終了し、または弁論準備手続を終結するという扱いになります。
そして、その後に決定された証人や当事者本人について法廷で証拠調べを行うことになっております。現行法では、人証の証拠調べは集中して行うということになっております。また、争点整理が行われた結果として、証人は重要な証人に絞られるという傾向があろうかと思います。証人と言っても事実の証人だけではありませんで、科学的な知見が大きい争点になっている場合には、科学的知見に関する専門的な証人も申請され採用されることもございます。
そのようにして証拠調べが終わりますと、最終的に最終弁論が行われます。これは証拠調べの結果を踏まえて、当事者双方の最終的な主張をまとめて陳述するというものです。そのようにして口頭弁論が終結し、裁判所の方で判決書を作成し、その判決を言い渡すというプロセスになっております。更に、その判決に対して控訴、上告が行われて、最終的に確定するということになるのが民事訴訟あるいは行政訴訟の一般的な流れであります。
 行政処分の手続と訴訟手続を若干対比、対比と言っても私は行政処分の手続に詳しいわけではありませんが、対比してみますと、今申したように訴訟手続では必ず対立した当事者がいて、対立した当事者が主張、立証を応酬して、それに対して裁判所が第三者的な立場で判断するというシステムを基本としております。それらは先ほどの弁論準備手続は別として、基本的には法廷で行われ、手続も民事訴訟法及び行政事件訴訟法の規定に従って行われるということになっております。
次に、法律関係の判断に関する裁判所の基本的な建前について申し上げたいと思いますが、裁判所は御承知のとおり、法と証拠に基づいて判断するというのを使命としております。すなわち証拠に基づいて事実を認定する。基本的に証拠以外のもので事実を認定するということはない。そして、認定された事実に法を適用するということが裁判所の使命であります。それ以外の事情によって判断をすることは原則としてないということになっています。すなわち裁量的な判断、あるいは政治的な判断をすることはありません。もっとも、行政事件訴訟法ではいわゆる事情判決という制度が設けられておりまして、諸般の特別な事情を考慮して、なお、裁量的に請求を棄却するという制度があるという特色はあります。しかし、事情判決の制度は、大きい公益的な影響の出るような事件について行われることが予定されておりまして、原爆症の認定に関する事件ではまずないと考えております。
次に、裁判所の在り方として、当事者の主張に基づき、当事者の提出した証拠だけを基礎に判断するという原則がございます。これは、もともとは民事訴訟の原則であります。民事訴訟では一般市民あるいは企業との間の紛争を扱うということから、当事者にそのような主張、立証のリーダーシップを委ねるということで十分であり、また、かえって当事者にそのようなリーダーシップを与えた方が、真実を究明し適正な判断を得るために適しているという経験によっているかと思います。その結果、当事者の主張した事実以外の事実は判断せず、また当事者の提出した証拠だけを基礎に判断するという原則が行われております。
行政事件訴訟も基本的にはこの民事訴訟の例によるわけですけれども、行政事件の特色としては、私人間の紛争を扱うわけではなくて、公益に関する事項を対象とするという面があります。しかし、先ほど申したように、民事訴訟は当事者のリーダーシップに委ねることがかえって真実を究明し、適正な判断を導くのに適しているという経験に基づいていることから、行政事件訴訟でも基本的にそのようなシステムをとっております。我が国の行政事件訴訟はアメリカの制度をモデルにしておりまして、アメリカでは基本的に行政訴訟を別枠のものとは見ていないということでありますが、そういう思想的な背景もあるかと思います。
しかし、行政事件については先ほどのように公益的な色彩もありますことから、民事訴訟の例外として職権証拠調べを行うことができるという建前になっております。これは、1,訴訟の対象が公益に関する事項であるということ、2,行政事件訴訟の場合には私人が原告となり行政機関を代表する国が被告となるというようなことから、立証等の能力に差異があるということにかんがみ、実質的な公平を保つべきであると考えられることから、職権証拠調べが設けられたと説明されております。
なお、このように訴訟手続を当事者に任せるというと、当事者の流れのままに訴訟がどこに行くかわからないというような御心配もあろうかと思いますけれども、ここに釈明という制度があります。裁判所は当事者の主張に対して質問を発し、それが適正であるかどうか疑義を抱いたような場合には、当事者にそれを釈明して主張を促す、あるいは立証を促すという制度があって、この釈明制度と相まって訴訟が適正に運用をされることが期待されているかと思います。行政事件訴訟については、更に、資料を持っております行政庁側に資料の提出を求めるような釈明処分の制度も設けられております。
以上が、民事訴訟の手続についての概略でございます。
 次に、第2として、原爆症認定の一般的な法律上の要件について簡単に申し上げます。
被爆者援護法の10条の要件がありますと、医療給付が行われるということになっております。そして、医療特別手当の支給もこの要件を具備することが必要とされております。更に、要件を満たせば直ちに医療給付等を請求できるという扱いにはなっておりませんで、これらの給付等を求めるためには、援護法11条で、医療の給付を受けようとする者は、あらかじめ、厚生労働大臣による当該負傷、又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の認定を受けなければならないとされております。
ここで言う認定は放射線起因性の認定だけではなく、要医療性を含めた認定であると解釈されています。したがいまして、11条の認定が給付を受けるための決め手となるわけであります。申請をして認定が得られれば、それによって医療の給付等を請求できるわけですけれども、その認定が却下された場合には、そのままでは医療の給付や医療特別手当の支給を受けることはできませんので、認定申請を却下された被爆者は、裁判所に対する訴えによって、認定申請却下処分の取消しを求めるということになります。その取消判決が得られ確定することによって、厚生労働大臣による新たな認定がされることになり、その際には、判決の趣旨に沿った判断をしなければいけないという拘束力が生ずる建前となっておりますので、そこで取消しの判決が機能するということになっております。
それから、このような認定申請の却下処分の取消訴訟において、要件は、放射線起因性があることと要医療性があることですが、これらの主張、立証責任はどちらにあるのかという点が問題となっております。最高裁の松谷訴訟判決によりますと、この場合も、申請の要件は原告である申請者の方が主張立証すべきであるとされております。これが認定申請却下処分に対する訴訟のシステムと要件です。
次に、司法判断は、これらについてどのように判断するかということですが、行政的な判断との違いというものを意識しながら考えてみますと、大きく見た場合には、個々の申請、あるいは個々の訴訟の事案が法律上の要件に該当するかどうかを判断するという点では、司法判断と行政判断は同じものと考えられます。しかし、行政判断では大量の申請に対し、適正公平な処分を行うということが課題であろうかと思いますが、そのために、申請に関する処分について審査の基準を設け、その審査の基準によって判断するというシステムが予定されております。本件のような科学的な認定のための審査の基準(方針)に直接該当するのかどうかわかりませんが、行政手続法において、審査に対する判断の行政処分においては審査の基準を設けるべきことがうたわれております。
これに対して、司法判断の場合には、法の要件の決め方によるわけですけれども、法律自体が具体的な基準や認定方法を明示している場合、あるいは法律が政令、省令等に判断の基準を委ね、その委任に基づいて政令等で判断の基準を定めている場合には、それらは法令の一部ですので、裁判所もそれらに基づいて判断をするということになります。しかし、そうでなくて、法律で一般的な要件を定めているような場合には、裁判所はその法律の規定そのものを解釈適用することによって判断するということになります。
被爆者援護法の場合には、その認定の基準を具体化した規定はなく、また政令等に基準の設定を委ねておりませんので、裁判所が10条、11条の要件そのものを直接判断するという建前になっております。それでは裁判所の判断も、行政庁の審査の基準(方針)を全く無視して独自に判断するかということですが、決してそうではないと言えるかと思います。例えば最近の判決で東京高裁の平成21年の判決がございますが、これは新しい審査の方針に対するものではなくて、旧審査の方針を対象にしたものでございます。ここでは審査の方針を尊重し、その当否を検討した上で、審査の方針をそのまま適用することが妥当かどうかを検討し審査の方針をそのまま適用することが妥当でない場合に、裁判所としての別途の判断を行っていると言うことができるのではないかと考えます。
 次に、3番目として、原爆症の司法審査における判断の枠組み、松谷訴訟判決等について申し上げます。
これも皆様十分御承知のことについて申し上げることになるかもしれませんが、レジュメに書いておきましたように、1点の疑義も許されない自然科学的な証明ではないが、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することである、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得ることを必要とする、放射線起因性についても、相当程度の蓋然性さえ立証すれば足りるというのではなくて、高度の蓋然性を立証することが必要である、としたものでございます。
松谷訴訟判決に至る判例の流れを若干申し上げますと、まず、民事訴訟あるいは行政訴訟の原則として、裁判所は、証拠がどのような証明力を有するかという点については裁判官の自由な心証によるという原則がございます。立証の程度についてある事実が証明されたというためには、裁判官あるいは一般市民が確信を得る程度のものでなければならない、一応確からしいという推測を生じさせる程度のものでは足りないというのが、古くから確立された理論でございました。そして、これは裁判官の個々的な基準というのでは妥当でないのであって、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を用いることが必要であるということが、民事訴訟法の理論として、松谷訴訟判決以前に確立していたところでございます。
そこに続きまして、いわゆるルンバール判決という事件がございました。これは民事訴訟の医療過誤(不法行為と言われるものですが)に基づく損害賠償請求における因果関係の立証の程度に関する判例でございます。不法行為に基づく損害賠償では加害行為(医療過誤では医療行為)と結果(被害の発生)との間に因果関係があることが必要なわけです。化膿性髄膜炎に陥った子どもに対してルンバール治療を行ったところ、発作が起きて一定の障害が発生した場合に、そのルンバールという治療法と結果発生との因果関係があるかということが問題になった事件です。原審の高等裁判所は、ルンバール治療によって生じた可能性もあるけれども、もともとの化膿性髄膜炎が悪化した可能性もあるとして、結局、因果関係を否定したわけであります。それに対して、最高裁判所はこれを覆して因果関係があるとしたわけですが、ここでこのような医療過誤に基づく因果関係の立証の程度について、要旨、次のように判断しました。
訴訟上の因果関係の立証は一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認できる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持つことができるものであることを必要とし、かつ、それで足りるという一般論を提示したわけであります。これは従来の民事訴訟の理論を、この医療事故の因果関係に当てはめたものでございますが、最高裁判所調査官の判例解説などによりますと、因果関係の立証は自然科学的医学のメカニズムを解明するものではなく、不法行為責任を負わせるための、法的な評価としての因果関係を明らかにするものであるということを言っております。
そして、ルンバール事件は不法行為に基づく損害賠償請求事件に係るものであり、行政訴訟のものではなかったわけですが、その後、松谷訴訟がありまして、この事件では、本件と同じような認定申請を却下した処分の当否が争われたものです。この事件では、原審の福岡高裁は、この種の事件ではルンバール事件のような高度の蓋然性までは必要がなく、相当程度の蓋然性を持って足りると判断したわけであります。それに対して被告行政庁側が上告をしたわけですが、最高裁は原審の判断のうち理論の部分は破って、行政訴訟(認定申請却下処分の取消訴訟)においても、ルンバール事件と同じ基準を適用すべきだとしました。
その要旨を述べますと、要医療性と放射線起因性が11条の認定の要件であるということが第1点。申請拒否処分の取消訴訟においては、被処分者の側が認定の要件を主張立証すべきであるというのが第2点。第3点として、放射線起因性の立証の程度は、民事訴訟の因果関係の立証の程度と異ならないとしたわけであります。そして、ルンバール事件の判決をここで繰り返しまして、訴訟上の因果関係の立証は一点の疑義も許さない自然科学的証明ではない。因果関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することである、高度の蓋然性の判定は、通常人が疑いの差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得ることが必要であるということを言っております。そして、その認定は経験則に照らし、全証拠を総合検討して行うという一般論を提示いたしました。
ここでちょっとコメントをさせていただきますと、最高裁は、そのようにして原審の福岡高裁の判断基準(相当程度の蓋然性)はとらず、高度の蓋然性基準をとったのですが、事案の解決といたしましては、原審福岡高裁の認定した事実に基づいて(最高裁は事実認定というのはしないことになっていますから)、最高裁の基準とした高度の蓋然性が認められるとしたものであります。
 4番目に、司法審査における具体的事実の判断の視点について申し上げます。
司法は法的な判断をする場であり、科学的な真実を究明する場ではないということが言えるかと思います。これは、先ほどの最高裁判決のルンバール事件、あるいは松谷訴訟判決でそう言っております。そうでありますが、科学的知見が基礎になるということはどの判決も認めておりまして、裁判所としては、確立された科学知見を踏まえて判断するということになろうかと思います。
この辺の判断の裁判所のスタイルにつきまして、先ほど来申し上げております東京高裁の平成21年判決というのがございますので、それを紹介いたします。この判決は、科学的知見が不動のものであればこれに反することは違法であるが、科学知見の通説に対して異説がある場合は、通説的見解がどの程度の確かさであるかを見極め、両説ある場合においては両説あるものとして訴訟手続上の前提とせざるを得ない、科学的知見によって決着がつけられない場合であっても、因果関係なしとすることはできないのであって、最高裁の言うとおり、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果を招いたかどうかを肯定できるような高度の蓋然性があるかを判断するということになると言っています。
 戻りますが、この辺は松谷訴訟の最高裁判決も、一般的には科学的知見の評価に言及していませんが、問題となりました閾値論とDS86の基準について触れております。これらを機械的に適用すると、松谷訴訟の松谷さんの症状に対する放射線の影響が否定される可能性があるが、DS86も未解決の部分を含む推定値であり、見直しが続けられている。閾値論とDS86の機械的適用では、その原告に現れたいろいろな症状を十分説明することができない、閾値論とDS86の機械的な適用をすると、治療方法が悪かったということになるが、それだけでは合理性がないのではないかということを言いまして、原告の脳損傷の拡大や脱毛の事実に照らすと、放射線を相当程度浴びたため脳損傷が重篤化したか、治癒能力が低下したと認めることが経験則に合致するという言い方をしております。
 この程度で私の報告ということにさせていただきたいと思います。
○神野座長代理 どうもありがとうございました。
私の議事運営の不手際で既に終了時間を迎えようとしておりますので、ただいまの御発表について、できるだけ簡潔に御質問いただければと思います。どうぞ。
○荒井委員 ありがとうございました。わかりやすい説明をいただきました。
ただ1点、司法は個別判断、行政は言わば大量的に公平にという、そこがメインだということもよくわかりましたし、最高裁判決の高度の蓋然性についての御説明も理解できたのですが、やはり司法の判断と、行政と言いますか、医療分科会での判断との食い違いということが結果としてはかなり出てきていて、この検討会でも大きな関心事の1つになっていると思うんです。科学的知見だけで司法判断があるのではないというのはそのとおりだと思うのですが、やはり高度の蓋然性を肯定する支えとしては、科学的知見なるものが大きな判断の基礎に置かれるのではないか。先ほど丹羽先生のお話からも、科学的な合意形成についてのプロセスと言いますか、コンセンサスがどの辺にあるかという御説明、あるいは論文にもいろいろあるんだという御説明との関係で申しますれば、丹羽先生のペーパーを引用させていただくと『Nature』誌に出るような論文と、極端に言えば一般週刊誌に出るような文章とを同列に論ずることはできないだろうと思うんです。そこで、この手の事件について、司法の場において、当事者双方から論文の評価とか位置づけについての主張、立証というものがどの程度なされているのか。これが1つ。
 もう一つは、裁判所が最終的に依拠するところの調査研究なり論文を、なぜそちらを採用するかということについて、先ほど、専門的知見についての証人調べも時にはあるんだというお話をいただきましたけれども、何か裁判所がそこを採択するかどうかについての工夫と言いますか、どういう勉強をしておられるのか。その辺を少し御説明いただけるとありがたいと思います。
○神野座長代理 2点について、コメントいただければと思います。
○岩井参考人 科学的知見をどの程度考えるかということですが、やはり科学的知見が基礎にあるということは十分に認識されておりますし、当事者双方から多数の論文等が出されますので、それらを十分しんしゃくして判断をするということになっていると思います。
 それから、それらをどう評価して取捨選択するかということですけれども、まず、私どもは素人でございますので、それぞれの論文を正確に理解しようと一生懸命努めます。そして、ある知見に対してはほとんど反対意見が出されていますので、それらを突き合わせます。また、それらの全体的な評価に関する意見の論文も出されますので、それらを総合して、いずれが合理的であるかということを探求するということになります。
しかし、そこでは東京高裁の平成21年判決が言っておりますところですが、対立する科学的知見については、厳密な学問的な意味における真偽を見極めることは裁判手続において必ずしも十分にできることではなく、厳密な意味では訴訟上の課題であるとも言い難いと言っています。これは先ほどのように、因果関係の判断は最終的には法的な判断であるということだろうと思います。そこで、裁判手続において、課題としては一定水準にある学問成果として是認されたものについては、そのあるがままの科学的状態において、法律判断の前提としての科学的知見を把握するということが限度であります。取るに足りない反対説があるから、それだけで確立されていないとしてしまうということではなくて、その評価も含めて論文を読みこなして、場合によっては証人尋問もして判断するということであります。逆に言うと、確立されていないところまで裁判所が踏み込むことはできないということになろうかと思います。そういうようなことでよろしいでしょうか。
○荒井委員 ありがとうございました。
○神野座長代理 ほかに御質問、御意見ございますか。どうぞ。
○長瀧委員 今の荒井先生の後、議論なんですが、多数の論文を裁判官が判断なさるというときに、多数の論文を、先ほど丹羽先生のように国際的な合意というのがなされて、ある程度の合意がある。そうすると、その合意に参加した我々としては、日本としてはこういう科学的なデータを出して、国際的な合意の重要なデータを提供している国であるということを常に主張しているわけです。そうすると、今度、裁判でその合意から離れたものが、裁判官が科学的な判断をするんだとすると、それは国際的な合意と違った判断というと、それは科学的な議論と考えるのかです。
簡単に言いますと、国際的な合意をつくる形成のような社会に対して、日本の裁判官はどういう理由でということを聞きたいんですが、そのときに科学的にと言うと、これはあり得ない。国際的な合意とは違う。ですから、科学的でない、何か司法としての理由をきちっと説明していただけると、私たちも外に対して話ができるんですけれども、そこがどうも、その科学的な合意という言葉で限られた論文をそこの場所で議論して、裁判官という1人の方が国際的な合意と違う判断を科学的にしたと言うと非常に困るわけです。ですから、本当に司法の立場からどういう理由で判決をなさるかというのは常に疑問に思っておりました。
簡単に言いますと、国際的な場所に行って、日本の司法はこういう理由でこういう考え方でこういう判決をしているんだということを、高度の蓋然性の中に科学がどれぐらい入っていてというようなところを、何か一言とか二言で説明できるような説明がないかと思っているんです。
○岩井参考人 難しいことでありますので、私もそういう事件ばかりやっているわけではございませんので、一般的なことを言うと難しいと思います。なお、裁判官1人でということではなくて、通常の事件では合議体でありますので、3人の裁判官が十分に意見を交換してやるわけでございます。
繰り返しになりますが、最高裁の判決では、閾値論とDS86については、なお、機械的な適用をすることは問題があるのではないか、合理的に事象を説明できない部分があるのではないかというような認識に立って、あのような判決をしたと思います。私ども下級審の裁判官も基本的にはそのような考え方でやっているのではないかと推察します。それ以上のことはなかなか正確にはお答えし難いというのが実情でございます。
○長瀧委員 もっと簡単に言いますと、科学的に認められないから、認められないところから司法的に決めるというようなお話なら納得しやすいという部分があるんです。科学的な結論に対して、同じレベルで裁判所が各事例について科学的な判断をするというと、ちょっと抵抗があります。否定できないから認めるという言い方なら、それは別に我々は困らないと思いますけれども、そういう言い方はできますでしょうか。
○岩井参考人 科学的に確立された基準に基づき、基準を想定しながら、個々の事件についての具体的な事実関係を総合して判断するとしか言いようがないかと思います。
○神野座長代理 よろしいですか。申し訳ありません。なかなか難しい問題で、あと特になければ、時間オーバーをいたしておりますので、この辺でこの議論は打ち切らせていただければと思います。岩井先生、本当にありがとうございました。
それから、冒頭に申し上げましたけれども、これからは検討会の運営について議事に入りたいと思っておりますので、今日御発表いただいた3人の方々はここで御退室いただいて結構でございます。どうも本当にありがとうございました。
 それでは、時間をオーバーいたしまして大変恐縮でございますけれども、冒頭に申し上げましたように、次回のこの検討会の進め方について、何か御発言ございましたらば、ちょうだいしたいと思います。いかがでございますか。
田中委員、どうぞ。
○田中委員 前回のときも申し上げて、医師と弁護士の2人の方を、第3回検討会にヒアリングの報告者として呼んでいただきたいということをお願いしたつもりなんです。そのとき、時間の問題もありますからと座長がおっしゃったんですけれども、そのまま決定していただくことにならなくて、その後、今日の第3回の会合を持つのに当たって、事務局の方から私の方に直接お見えになりました。今日御報告いただきました3人の方の報告を受けたいということでありましたので、私どもが提案した候補の方はどうなったんでしょうかと申し上げたんですけれども、それはそのままになりまして、とにかく3人の報告を第3回は聞くことにしてほしいということでありました。それは認められないと私は申し上げまして、検討会の持ち方そのものについて議論をしていだたくというのと、次回どうするかというのは前の会合できちんと決めるということをやっていただきたい。そうでないと、事務局が決めて、それを持ち込んでくるということになりますので、是非それをやっていただきたいというのが私からのプレゼンでございました。この行動は座長にお手紙を出しまして、委員の皆さんにもそれを出しましたので御存じかと思いますので、あえてそれ以上は申し上げません。
○神野座長代理 それでは、今、田中委員の御発言について何かございましたら御意見ちょうだいしたいと思います。いかがでございましょうか。
今日は座長御欠席でございますけれども、森座長に私、前任校のときから、さまざまなこういう立場で責任者を座長としておやりになったときについております。森座長は皆さんもほぼお感じになっているかと思うんですが、極めて中立的に運営しようということについて、特に少数意見に配慮しながら運営しようということについては意をくだいていらっしゃる方でございますので、私も座長の意を酌みながら次回以降決めてまいりたいと思っております。何か御意見ちょうだいできればと思います。
○山崎委員 私の方から、せっかく広島、長崎で日常的に被爆者と向き合って行政を進めておられる副市長さんに、現場の実態についてお話をいただければと思います。
○神野座長代理 どうぞ。
○三宅委員 ただいま山崎先生からの現場の副市長というお声がかかりましたが、今日ここでそれをという話でしょうか。そうではなくて次回にということですか。
○山崎委員 次回にということでございます。
○三宅委員 私、聞くところによりますと、次回は広島、長崎の事務的な実態というようなことをお話するようなことに、そういう方向で準備が進んでいるのではないかと私は思っております。
○山崎委員 私の方から、次回の運営についてというのは議題でございますから、そこでお願いしたいということです。
○三宅委員 わかりました。
○神野座長代理 次回については田中委員にも御指摘いただきました。座長は、ヒアリングをもう一回やるかどうかを含めてということで引き取られていると思います。だから、中身については特にここで決めておりません。
○三宅委員 今の山崎先生の御発言は、この場での私に対する質問かと受け止めたものですから、大変失礼いたしました。
○山崎委員 今後の運営についての議題になっているので、次回、お願いしたいということでございます。
○神野座長代理 よろしいですか。どうぞ。
○田中委員 私が座長に申し上げましたのは、この検討会は何をやるのかということを、きちっと最初に合議をして進めていだきたいということでありました。それは会議の冒頭でということだったんですが、その時間はありませんで、今もなおかつ時間がありませんので、そのことは委員の皆さんに踏まえていただいて、これからの発言等々、運営等々に努力していただければありがたいと思います。次回についてはきちっと決めていただきたいと思っております。
○神野座長代理 それでは、私、事前に森座長の御意向などを拝聴しておりますので、次回の検討会については、私どもが今、ヒアリングしているのは、現状の制度や現状について可能な限り、委員の間で共通の認識を共有できればしたいという趣旨で進めております。次回については、原爆症の申請に携わった医師の方、原爆症裁判に携わった方々から現状の制度、その他についての経緯についてヒアリングを行うということ。それと、ただいま山崎委員からお話がございましたように、広島市、長崎市の行政の方々からもお話をちょうだいするというようなことで、次回のヒアリングをもう一度行いたいと考えておりますが、そういうことでよろしいでしょうか。それでは、長崎、広島、よろしいですか。
○智多委員 準備できる限り対応したいと思います。
○神野座長代理 一応、次回だけ決めさせていただいて、今後の議論、この検討会の進め方については座長と御相談しながら、坪井先生、どうぞ。
○坪井委員 やはり全体の大まかなスケジュールでも出ていないと、その都度考えるのはロスする時間が多いです。したがって、どこかで全体の姿が先に出るべきだと思っております。
○神野座長代理 当面1回ないしは2回ヒアリングを行うということを座長から申し上げているかと思いますので、次回のヒアリングをこのまま行うということにさせていただいて、今後のことにつきましては、座長と御相談しながら進めたいと思っております。ヒアリングについては、座長のお考えですと、一応、次回で打ち切る。その後、皆様から意見をちょうだいしながら、そろそろ本格的な議論を進めていく段階に移らないと検討会の意見がまとまりませんので、そういう大まかなスケジュールで、前回も議長がおっしゃられていると思います。そういうことで、また座長と御相談しながら皆様方にお伝えしたいと思っております。次回につきましては、今のようなことでよろしいでしょうか。
それでは、次回は、今、申し上げましたようなヒアリングをさせていただくということ。それと、今、運営についてさまざまな御議論が出ておりますので、この件については私の方から責任を持って座長に伝え、また座長と御相談の上、多分次回は座長がお出ましいただけるだろうと思いますが、進め方については意見をお伝えした上で御指示を仰ぎたいと思っております。
 それでは、申し訳ありません。私の不手際でもって本日は時間を大幅にオーバーしてしまったことをおわび申し上げまして、これにて終了させていいただきたいと思います。事務局の方から不足して御説明していたことがあれば、お願いいたします。
○和田原子爆弾被爆者援護対策室長 長時間ありがとうございました。
次回の第4回検討会は、6月27日月曜日10時からを予定しております。場所は今回と同じ厚生労働省9階省議室でございます。正式には追って御案内をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○神野座長代理 それでは、重ねてでございますが、時間をオーバーいたしまして、御予定にいろいろ差し支えがあったのではないかと思います。おわびを申し上げまして、本日お忙しい中御参集いただきましたことを重ねて御礼申し上げます。どうもありがとうございました。


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2011-08-26 : ・原爆症関連 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・被爆関係資料 その2 原爆症認定に関する審査の方針

・被爆関係資料 その2 原爆症認定に関する審査の方針


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http://shoruisouko.xsrv.jp/kntk/ss2.pdf
原爆症認定に関する審査の方針
平成13年5月25日
疾病・障害認定審査会
原子爆弾被爆者医療分科会

 疾病・障害認定審査会運営規程(平成13年2月2日疾病・障害認定審査会決定)第9条の規定に基づき、原爆症認定に関する審査の方針を次のように定める。

 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成6年法律第117号)第11条第1項の認定に係る審査に当たつては、それぞれ、以下に定める方針を目安として、これを行うものとする。

第1 原爆放射線起因性の判断
1 判断に当たつての基本的な考え方
1) 申請に係る負傷又は疾病(以下「疾病等」という。)における原爆放射線起因性の判断に当たつては、原因確率(疾病等の発生が、原爆放射線の影響を受けている蓋然性があると考えられる確率をいう。以下同じ。)及び闘値(一定の被曝線量以上の放射線を曝露しなければ、疾病等が発生しない値をいう。以下同じ。)を目安として、当該申請に係る疾病等の原爆放射線起因性に係る「高度の蓋然性」の有無を判断する。
2) この場合にあっては、当該申請に係る疾病等に関する原因確率が、
① おおむね50パーセント以上である場合には、当該申請に係る疾病の発生に関して原爆放射線による一定の健康影響の可能性があることを推定
② おおむね10パーセント未満である場合には、当該可能性が低いものと推定する。
3) ただし、当該判断に当たつては、これらを機械的に適用して判断するものではなく、当該申請者の既往歴、環境因子、生活歴等も総合的に勘案した上で、判断を行うものとする。
4) また、原因確率等が設けられていない疾病等に係る審査に当たつては、当該疾病等には、原爆放射線起因性に係る肯定的な科学的知見が立証されていないことに留意しつつ、当該申請者に係る被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴等を総合的に勘案して、個別にその起因性を判断するものとする。

<略>

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http://www.jtuc-rengo.or.jp/rentai_katsudo/peace/kakuheiki/data/hibakusya/20080326.pdf
新しい審査の方針
平成20年3月17日
平成21年6月22日改

疾病・障害認定審査会
原子爆弾被爆者医療分科会

 疾病・障害認定審査会運営規程( 平成13年2月2日疾病・障害認定審査会決定) 第9条の規定に基づき、原爆症認定に関する審査の方針を次のように定める。
 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律( 平成6年法律第1 1 7 号)第11 条第1 項の認定に係る審査に当たっては、被爆者援護法の精神に則り、より被爆者救済の立場に立ち、原因確率を改め、被爆の実態に一層即したものとするため、以下に定める方針を目安として、これを行うものとする。

第1 放射線起因性の判断
1 積極的に認定する範囲
(1) 被爆地点が爆心地より約3.5km以内である者
(2) 原爆投下より約100時間以内に爆心地から約2 k m 以内に入市した者
(3) 原爆投下より約100時間経過後から、原爆投下より約2 週間以内の期間に、爆心地から約2km以内の地点に1 週間程度以上滞在した者から、放射線起因性が推認される以下の疾病についての申請がある場合については、格段に反対すべき事由がない限り、当該申請疾病と被曝した放射線との関係を積極的に認定するものとする。
(1)悪性腫瘍( 固形がんなど)
(2)白血病
(3)副甲状腺機能亢進症
(4)放射線白内障( 加齢性白内障を除く)
(5)放射線起因性が認められる心筋梗塞
(6)放射線起因性が認められる甲状腺機能低下症
(7)放射線起因性が認められる慢性肝炎・肝硬変
 この場合、認定の判断に当たっては、積極的に認定を行うため、申請者から可能な限り客観的な資料を求めることとするが、客観的な資料が無い場合にも、申請書の記載内容の整合性やこれまでの認定例を参考にしつつ判断する。

2 1に該当する場合以外の申請について
 1に該当する場合以外の申請についても、申請者に係る被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴等を総合的に勘案して、個別にその起因性を総合的に判断するものとする。

第2 要医療性の判断
 要医療性については、当該疾病等の状況に基づき、個別に判断するものとする。

第3 方針の見直し
 この方針は、新しい科学的知見の集積等の状況を踏まえて随時必要な見直しを行うものとする。


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2011-08-25 : ・原爆症関連 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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・被爆関係資料 その1 原爆被爆者援護法

・被爆関係資料 その1 原爆被爆者援護法



原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律
最終改正:平成二三年六月二四日法律第七四号

前文
 昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾という比類のない破壊兵器は、幾多の尊い生命を一瞬にして奪ったのみならず、たとい一命をとりとめた被爆者にも、生涯いやすことのできない傷跡と後遺症を残し、不安の中での生活をもたらした。
 このような原子爆弾の放射能に起因する健康被害に苦しむ被爆者の健康の保持及び増進並びに福祉を図るため、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律を制定し、医療の給付、医療特別手当等の支給をはじめとする各般の施策を講じてきた。また、我らは、再びこのような惨禍が繰り返されることがないようにとの固い決意の下、世界唯一の原子爆弾の被爆国として、核兵器の究極的廃絶と世界の恒久平和の確立を全世界に訴え続けてきた。
 ここに、被爆後五十年のときを迎えるに当たり、我らは、核兵器の究極的廃絶に向けての決意を新たにし、原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう、恒久の平和を念願するとともに、国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ、あわせて、国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記するため、この法律を制定する。

第一章 総則
(被爆者)
第一条  この法律において「被爆者」とは、次の各号のいずれかに該当する者であって、被爆者健康手帳の交付を受けたものをいう。
一  原子爆弾が投下された際当時の広島市若しくは長崎市の区域内又は政令で定めるこれらに隣接する区域内に在った者
二  原子爆弾が投下された時から起算して政令で定める期間内に前号に規定する区域のうちで政令で定める区域内に在った者
三  前二号に掲げる者のほか、原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者
四  前三号に掲げる者が当該各号に規定する事由に該当した当時その者の胎児であった者

(被爆者健康手帳)
第二条  被爆者健康手帳の交付を受けようとする者は、その居住地(居住地を有しないときは、その現在地とする。)の都道府県知事に申請しなければならない。
2  被爆者健康手帳の交付を受けようとする者であって、国内に居住地及び現在地を有しないものは、前項の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、その者が前条各号に規定する事由のいずれかに該当したとする当時現に所在していた場所を管轄する都道府県知事に申請することができる。
3  都道府県知事は、前二項の規定による申請に基づいて審査し、申請者が前条各号のいずれかに該当すると認めるときは、その者に被爆者健康手帳を交付するものとする。
4  前三項に定めるもののほか、被爆者健康手帳に関し必要な事項は、政令で定める。

第二章 削除
第三条  削除
第四条  削除
第五条  削除

第三章 援護
第一節 通則
(援護の総合的実施)
第六条  国は、被爆者の健康の保持及び増進並びに福祉の向上を図るため、都道府県並びに広島市及び長崎市と連携を図りながら、被爆者に対する援護を総合的に実施するものとする。

第二節 健康管理
(健康診断)
第七条  都道府県知事は、被爆者に対し、毎年、厚生労働省令で定めるところにより、健康診断を行うものとする。

(健康診断に関する記録)
第八条  都道府県知事は、前条の規定により健康診断を行ったときは、健康診断に関する記録を作成し、かつ、厚生労働省令で定める期間、これを保存するものとする。

(指導)
第九条  都道府県知事は、第七条の規定による健康診断の結果必要があると認めるときは、当該健康診断を受けた者に対し、必要な指導を行うものとする。

第三節 医療
(医療の給付)
第十条  厚生労働大臣は、原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し、又は疾病にかかり、現に医療を要する状態にある被爆者に対し、必要な医療の給付を行う。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは、その者の治癒能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る。
2  前項に規定する医療の給付の範囲は、次のとおりとする。
一  診察
二  薬剤又は治療材料の支給
三  医学的処置、手術及びその他の治療並びに施術
四  居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五  病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
六  移送
3  第一項に規定する医療の給付は、厚生労働大臣が第十二条第一項の規定により指定する医療機関(以下「指定医療機関」という。)に委託して行うものとする。

(認定)
第十一条  前条第一項に規定する医療の給付を受けようとする者は、あらかじめ、当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生労働大臣の認定を受けなければならない。
2  厚生労働大臣は、前項の認定を行うに当たっては、審議会等(国家行政組織法 (昭和二十三年法律第百二十号)第八条 に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴かなければならない。ただし、当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因すること又は起因しないことが明らかであるときは、この限りでない。

(医療機関の指定)
第十二条  厚生労働大臣は、その開設者の同意を得て、第十条第一項に規定する医療を担当させる病院若しくは診療所(これらに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)又は薬局を指定する。
2  指定医療機関は、三十日以上の予告期間を設けて、その指定を辞退することができる。
3  指定医療機関が次条第一項の規定に違反したとき、担当医師に変更があったとき、その他指定医療機関に第十条第一項に規定する医療を担当させるについて著しく不適当であると認められる理由があるときは、厚生労働大臣は、その指定を取り消すことができる。
(指定医療機関の義務)
第十三条  指定医療機関は、厚生労働大臣の定めるところにより、第十条第一項に規定する医療を担当しなければならない。
2  指定医療機関は、第十条第一項に規定する医療を行うについて、厚生労働大臣の行う指導に従わなければならない。

(診療方針及び診療報酬)
第十四条  指定医療機関の診療方針及び診療報酬は、健康保険の診療方針及び診療報酬の例による。
2  前項に規定する診療方針及び診療報酬の例によることができないとき又はこれによることを適当としないときの診療方針及び診療報酬は、厚生労働大臣の定めるところによる。

(診療報酬の審査及び支払)
第十五条  厚生労働大臣は、指定医療機関の診療内容及び診療報酬の請求を随時審査し、かつ、指定医療機関が前条の規定により請求することができる診療報酬の額を決定することができる。
2  指定医療機関は、厚生労働大臣が行う前項の規定による診療報酬の額の決定に従わなければならない。
3  厚生労働大臣は、第一項の規定による診療報酬の額の決定に当たっては、社会保険診療報酬支払基金法 (昭和二十三年法律第百二十九号)に定める審査委員会、国民健康保険法 (昭和三十三年法律第百九十二号)に定める国民健康保険診療報酬審査委員会その他政令で定める医療に関する審査機関の意見を聴かなければならない。
4  国は、指定医療機関に対する診療報酬の支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会その他厚生労働省令で定める者に委託することができる。
5  第一項の規定による診療報酬の額の決定については、行政不服審査法 (昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。

(報告の請求及び検査)
第十六条  厚生労働大臣は、前条第一項の規定による審査のため必要があるときは、指定医療機関の管理者に対して必要な報告を求め、又は当該職員をして指定医療機関についてその管理者の同意を得て、実地に診療録その他の帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。)を検査させることができる。
2  指定医療機関の管理者が、正当な理由がなく前項の規定による報告の求めに応ぜず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の同意を拒んだときは、厚生労働大臣は、当該指定医療機関に対する診療報酬の支払を一時差し止めることができる。

(医療費の支給)
第十七条  厚生労働大臣は、被爆者が、緊急その他やむを得ない理由により、指定医療機関以外の者から第十条第二項各号に掲げる医療を受けた場合において、必要があると認めるときは、同条第一項に規定する医療の給付に代えて、医療費を支給することができる。被爆者が指定医療機関から同条第二項各号に掲げる医療を受けた場合において、当該医療が緊急その他やむを得ない理由により同条第一項の規定によらないで行われたものであるときも、同様とする。
2  前項の規定により支給する医療費の額は、第十四条の規定により指定医療機関が請求することができる診療報酬の例により算定した額とする。ただし、現に要した費用の額を超えることができない。
3  厚生労働大臣は、第一項の規定により医療費を支給するため必要があるときは、当該医療を行った者又はこれを使用する者に対し、その行った医療に関し、報告若しくは診療録若しくは帳簿書類その他の物件の提示を命じ、又は当該職員をして質問させることができる。

(一般疾病医療費の支給)
第十八条  厚生労働大臣は、被爆者が、負傷又は疾病(第十条第一項に規定する医療の給付を受けることができる負傷又は疾病、遺伝性疾病、先天性疾病及び厚生労働大臣の定めるその他の負傷又は疾病を除く。)につき、都道府県知事が次条第一項の規定により指定する医療機関(以下「被爆者一般疾病医療機関」という。)から第十条第二項各号に掲げる医療を受け、又は緊急その他やむを得ない理由により被爆者一般疾病医療機関以外の者からこれらの医療を受けたときは、その者に対し、当該医療に要した費用の額を限度として、一般疾病医療費を支給することができる。ただし、その者が、当該負傷若しくは疾病につき、健康保険法 (大正十一年法律第七十号)、船員保険法 (昭和十四年法律第七十三号)、国民健康保険法 、国家公務員共済組合法 (昭和三十三年法律第百二十八号。他の法律において準用し、又は例による場合を含む。)若しくは地方公務員等共済組合法 (昭和三十七年法律第百五十二号)(以下この条において「社会保険各法」という。)、高齢者の医療の確保に関する法律 (昭和五十七年法律第八十号)、介護保険法 (平成九年法律第百二十三号)、労働基準法 (昭和二十二年法律第四十九号)、労働者災害補償保険法 (昭和二十二年法律第五十号)、船員法 (昭和二十二年法律第百号)若しくは独立行政法人日本スポーツ振興センター法 (平成十四年法律第百六十二号)の規定により医療に関する給付を受け、若しくは受けることができたとき、又は当該医療が法令の規定により国若しくは地方公共団体の負担による医療に関する給付として行われたときは、当該医療に要した費用の額から当該医療に関する給付の額を控除した額(その者が社会保険各法若しくは高齢者の医療の確保に関する法律 による療養の給付を受け、又は受けることができたときは、当該療養の給付に関する当該社会保険各法若しくは高齢者の医療の確保に関する法律 の規定による一部負担金に相当する額とし、当該医療が法令の規定により国又は地方公共団体の負担による医療の現物給付として行われたときは、当該医療に関する給付について行われた実費徴収の額とする。)の限度において支給するものとする。
2  前条第二項の規定は、前項の医療に要した費用の額の算定について準用する。
3  被爆者が被爆者一般疾病医療機関から医療を受けた場合においては、厚生労働大臣は、一般疾病医療費として当該被爆者に支給すべき額の限度において、その者が当該医療に関し当該医療機関に支払うべき費用を、当該被爆者に代わり、当該医療機関に支払うことができる。
4  前項の規定による支払があったときは、当該被爆者に対し、一般疾病医療費の支給があったものとみなす。
5  社会保険各法若しくは高齢者の医療の確保に関する法律 の規定による被保険者又は組合員である被爆者が、第一項に規定する負傷又は疾病について被爆者一般疾病医療機関から医療を受ける場合には、当該社会保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律 の規定により当該医療機関に支払うべき一部負担金は、当該社会保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律 の規定にかかわらず、当該医療に関し厚生労働大臣が第三項の規定による支払をしない旨の決定をするまでは、支払うことを要しない。

(被爆者一般疾病医療機関)
第十九条  都道府県知事は、その開設者の同意を得て、前条第三項の規定による支払を受けることができる病院若しくは診療所(これらに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)又は薬局を指定する。
2  被爆者一般疾病医療機関は、三十日以上の予告期間を設けて、その指定を辞退することができる。
3  都道府県知事は、被爆者一般疾病医療機関に前条第三項の規定による支払を受けるについて著しく不適当であると認められる理由があるときは、その指定を取り消すことができる。

第二十条  厚生労働大臣は、第十八条第三項の規定による支払をなすべき額を決定するに当たっては、社会保険診療報酬支払基金法 に定める審査委員会、国民健康保険法 に定める国民健康保険診療報酬審査委員会その他政令で定める医療に関する審査機関の意見を聴かなければならない。
2  国は、第十八条第三項の規定による支払に関する事務を社会保険診療報酬支払基金、国民健康保険団体連合会その他厚生労働省令で定める者に委託することができる。

(報告の請求等)
第二十一条  第十六条の規定は、第十八条第三項の規定による支払のため必要がある場合に、第十七条第三項の規定は、一般疾病医療費を支給するについて必要がある場合に、それぞれ準用する。

(一般疾病医療費の支給の制限)
第二十二条  被爆者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に負傷し、又は疾病にかかったときは、当該負傷又は疾病に係る一般疾病医療費の支給は、行わない。

第二十三条  被爆者が、闘争、泥酔又は著しい不行跡によって負傷し、又は疾病にかかったときは、当該負傷又は疾病に係る一般疾病医療費の支給は、その全部又は一部を行わないことができる。被爆者が、重大な過失により、負傷し、若しくは疾病にかかったとき、又は正当な理由がなく療養に関する指示に従わなかったときも、同様とする。

(政令への委任)
第二十三条の二  この節に定めるもののほか、第十一条の規定による認定、指定医療機関及び被爆者一般疾病医療機関について必要な事項は、政令で定める。

第四節 手当等の支給
(医療特別手当の支給)
第二十四条  都道府県知事は、第十一条第一項の認定を受けた者であって、当該認定に係る負傷又は疾病の状態にあるものに対し、医療特別手当を支給する。
2  前項に規定する者は、医療特別手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3  医療特別手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、十三万五千四百円とする。
4  医療特別手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、第一項に規定する要件に該当しなくなった日の属する月で終わる。
(特別手当の支給)
第二十五条  都道府県知事は、第十一条第一項の認定を受けた者に対し、特別手当を支給する。ただし、その者が医療特別手当の支給を受けている場合は、この限りでない。
2  前項に規定する者は、特別手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3  特別手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、五万円とする。
4  特別手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、第一項に規定する要件に該当しなくなった日の属する月で終わる。

(原子爆弾小頭症手当の支給)
第二十六条  都道府県知事は、被爆者であって、原子爆弾の放射能の影響による小頭症の患者であるもの(小頭症による厚生労働省令で定める範囲の精神上又は身体上の障害がない者を除く。)に対し、原子爆弾小頭症手当を支給する。
2  前項に規定する者は、原子爆弾小頭症手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3  原子爆弾小頭症手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、四万六千六百円とする。
4  原子爆弾小頭症手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、その者が死亡した日の属する月で終わる。

(健康管理手当の支給)
第二十七条  都道府県知事は、被爆者であって、造血機能障害、肝臓機能障害その他の厚生労働省令で定める障害を伴う疾病(原子爆弾の放射能の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。)にかかっているものに対し、健康管理手当を支給する。ただし、その者が医療特別手当、特別手当又は原子爆弾小頭症手当の支給を受けている場合は、この限りでない。
2  前項に規定する者は、健康管理手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3  都道府県知事は、前項の認定を行う場合には、併せて当該疾病が継続すると認められる期間を定めるものとする。この場合においては、その期間は、第一項に規定する疾病の種類ごとに厚生労働大臣が定める期間内において定めるものとする。
4  健康管理手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、三万三千三百円とする。
5  健康管理手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、その日から起算してその者につき第三項の規定により定められた期間が満了する日(その期間が満了する日前に第一項に規定する要件に該当しなくなった場合にあっては、その該当しなくなった日)の属する月で終わる。

(保健手当の支給)
第二十八条  都道府県知事は、被爆者のうち、原子爆弾が投下された際爆心地から二キロメートルの区域内に在った者又はその当時その者の胎児であった者に対し、保健手当を支給する。ただし、その者が医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当又は健康管理手当の支給を受けている場合は、この限りでない。
2  前項に規定する者は、保健手当の支給を受けようとするときは、同項に規定する要件に該当することについて、都道府県知事の認定を受けなければならない。
3  保健手当は、月を単位として支給するものとし、その額は、一月につき、一万六千七百円とする。ただし、次の各号のいずれかに該当する旨の都道府県知事の認定を受けた者であって、現に当該各号のいずれかに該当するものに支給する保健手当の額は、一月につき、三万三千三百円とする。
一  厚生労働省令で定める範囲の身体上の障害(原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。)がある者
二  配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。第三十三条第二項において同じ。)、子及び孫のいずれもいない七十歳以上の者であって、その者と同居している者がいないもの
4  保健手当の支給は、第二項の認定を受けた者が同項の認定の申請をした日の属する月の翌月から始め、第一項に規定する要件に該当しなくなった日の属する月で終わる。
5  第二項の認定を受けた者が新たに第三項ただし書に規定する都道府県知事の認定を受けた場合における保健手当の額の改定は、その認定の申請をした日の属する月の翌月から行う。
6  第二項の認定を受けた者が第三項ただし書に規定する者に該当しなくなった場合における保健手当の額の改定は、その該当しなくなった日の属する月の翌月から行う。

(手当額の自動改定)
第二十九条  医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当及び保健手当(以下この条において単に「手当」という。)については、総務省において作成する年平均の全国消費者物価指数(以下「物価指数」という。)が平成五年(この項の規定による手当の額の改定の措置が講じられたときは、直近の当該措置が講じられた年の前年)の物価指数を超え、又は下るに至った場合においては、その上昇し、又は低下した比率を基準として、その翌年の四月以降の当該手当の額を改定する。
2  前項の規定による手当の額の改定の措置は、政令で定める。

(届出)
第三十条  第二十四条第二項、第二十五条第二項、第二十六条第二項、第二十七条第二項又は第二十八条第二項の認定を受けた者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、厚生労働省令で定める事項を届け出なければならない。
2  都道府県知事は、医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当又は保健手当の支給を受けている者が、正当な理由がなく前項の規定による届出をしないときは、その支払を一時差し止めることができる。

(介護手当の支給)
第三十一条  都道府県知事は、被爆者であって、厚生労働省令で定める範囲の精神上又は身体上の障害(原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。以下この条において同じ。)により介護を要する状態にあり、かつ、介護を受けているものに対し、その介護を受けている期間について、政令で定めるところにより、介護手当を支給する。ただし、その者(その精神上又は身体上の障害が重度の障害として厚生労働省令で定めるものに該当する者を除く。)が介護者に対し介護に要する費用を支出しないで介護を受けている期間については、この限りでない。

(葬祭料の支給)
第三十二条  都道府県知事は、被爆者が死亡したときは、葬祭を行う者に対し、政令で定めるところにより、葬祭料を支給する。ただし、その死亡が原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかである場合は、この限りでない。

(特別葬祭給付金)
第三十三条  被爆者であって、次の各号のいずれかに該当する者(次項において「死亡者」という。)の遺族であるものには、特別葬祭給付金を支給する。
一  昭和四十四年三月三十一日以前に死亡した第一条各号に掲げる者
二  昭和四十四年四月一日から昭和四十九年九月三十日までの間に死亡した第一条各号に掲げる者(当該死亡した者の葬祭を行う者が、附則第三条の規定による廃止前の原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律(昭和四十三年法律第五十三号。以下「旧原爆特別措置法」という。)による葬祭料の支給を受け、又は受けることができた場合における当該死亡した者を除く。)
2  前項の遺族の範囲は、死亡者の死亡の当時における配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹とする。
3  特別葬祭給付金の支給を受ける権利の認定は、これを受けようとする者の請求に基づいて、厚生労働大臣が行う。
4  前項の請求は、厚生労働省令で定めるところにより、平成九年六月三十日までに行わなければならない。
5  前項の期間内に第三項の請求をしなかった者には、特別葬祭給付金は、これを支給しない。

(特別葬祭給付金の額及び記名国債の交付)
第三十四条  特別葬祭給付金の額は、十万円とし、二年以内に償還すべき記名国債をもって交付する。
2  前項の規定により交付するため、政府は、必要な金額を限度として国債を発行することができる。
3  前項の規定により発行する国債は、無利子とする。
4  第二項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除き、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。
5  前各項に定めるもののほか、第二項の規定により発行する国債に関し必要な事項は、財務省令で定める。

(国債の償還を受ける権利の承継)
第三十五条  前条第一項に規定する国債の記名者が死亡した場合において、同順位の相続人が二人以上あるときは、その一人のした当該死亡した者の死亡前に支払うべきであった同項に規定する国債の償還金の請求又は同項に規定する国債の記名変更の請求は、全員のためにその全額につきしたものとみなし、その一人に対してした同項に規定する国債の償還金の支払又は同項に規定する国債の記名変更は、全員に対してしたものとみなす。

第三十六条  削除

第五節 福祉事業
(相談事業)
第三十七条  都道府県は、被爆者の心身の健康に関する相談、被爆者の居宅における日常生活に関する相談その他被爆者の援護に関する相談に応ずる事業を行うことができる。

(居宅生活支援事業)
第三十八条  都道府県は、被爆者の居宅における日常生活を支援するため、次に掲げる事業を行うことができる。
一  被爆者であって、精神上又は身体上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるものにつき、その者の居宅において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活を営むのに必要な便宜を供与する事業
二  被爆者であって、精神上又は身体上の障害があるために日常生活を営むのに支障があるものを、都道府県知事が適当と認める施設に通わせ、入浴、食事の提供、機能訓練その他の便宜を供与する事業
三  被爆者であって、その介護を行う者の疾病その他の理由により、居宅において介護を受けることが一時的に困難となったものを、都道府県知事が適当と認める施設に短期間入所させ、必要な養護を行う事業

(養護事業)
第三十九条  都道府県は、精神上若しくは身体上又は環境上の理由により養護を必要とする被爆者であって、居宅においてこれを受けることが困難なものを、当該被爆者又はその者を現に養護する者の申出により、都道府県知事が適当と認める施設に入所させ、必要な養護を行う事業を行うことができる。

第四章 調査及び研究
(調査及び研究)
第四十条  国は、原子爆弾の放射能に起因する身体的影響及びこれによる疾病の治療に係る調査研究(次項において「原爆放射能影響調査研究」という。)の推進に努めなければならない。
2  国は、原爆放射能影響調査研究の促進を図るため、公益社団法人又は公益財団法人であって、原爆放射能影響調査研究を主たる目的とするものに対し、予算の範囲内において、当該法人が行う原爆放射能影響調査研究に要する費用の一部を補助することができる。
第五章 平和を祈念するための事業
(平和を祈念するための事業)
第四十一条  国は、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記し、かつ、恒久の平和を祈念するため、原子爆弾の惨禍に関する国民の理解を深め、その体験の後代の国民への継承を図り、及び原子爆弾による死没者に対する追悼の意を表す事業を行う。

第六章 費用
(都道府県の支弁)
第四十二条  次に掲げる費用は、都道府県の支弁とする。
一  医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当、保健手当、介護手当及び葬祭料の支給並びにこの法律又はこの法律に基づく命令の規定により都道府県知事が行う事務の処理に要する費用
二  第三十七条から第三十九条までの規定により都道府県が行う事業に要する費用

(国の負担等)
第四十三条  国は、政令で定めるところにより、前条の規定により都道府県が支弁する同条第一号に掲げる費用(介護手当に係るものを除く。)を当該都道府県に交付する。
2  国は、政令で定めるところにより、前条の規定により都道府県が支弁する同条第一号に掲げる費用のうち、介護手当の支給に要する費用についてはその十分の八を、介護手当に係る事務の処理に要する費用についてはその二分の一を負担する。
3  国は、予算の範囲内において、都道府県に対し、前条の規定により都道府県が支弁する同条第二号に掲げる費用の一部を補助することができる。

第七章 雑則
(譲渡又は担保の禁止)
第四十四条  この法律に基づく給付を受ける権利は、譲り渡し、又は担保に供することができない。

(差押えの禁止)
第四十五条  この法律に基づく給付を受ける権利及び第三十四条第一項に規定する国債は、差し押さえることができない。

(非課税)
第四十六条  租税その他の公課は、この法律に基づく給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない。
2  特別葬祭給付金に関する書類及び第三十四条第一項に規定する国債を担保とする金銭の貸借に関する書類には、印紙税を課さない。

(不正利得の徴収)
第四十七条  偽りその他不正の手段によりこの法律に基づく給付を受けた者がある場合は、厚生労働大臣(当該給付が都道府県知事により行われた場合にあっては、都道府県知事)は、国税徴収の例により、その者から、当該給付の価額の全部又は一部を徴収することができる。
2  前項の規定による徴収金の先取特権の順位は、国税及び地方税に次ぐものとする。

(戸籍事項の無料証明)
第四十八条  市町村長(地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市においては、区長とする。)は、第二十四条第一項、第二十五条第一項、第二十六条第一項、第二十七条第一項若しくは第二十八条第一項に規定する者又は第三十三条第一項に規定する遺族である者に対して、当該市町村の条例で定めるところにより、これらの者の戸籍に関し、無料で証明を行うことができる。

(広島市及び長崎市に関する特例)
第四十九条  この法律の規定(第六条、第五十一条及び第五十一条の二を除く。)中「都道府県知事」又は「都道府県」とあるのは、広島市又は長崎市については、「市長」又は「市」と読み替えるものとする。

(再審査請求)
第五十条  広島市又は長崎市の長が行う被爆者健康手帳の交付又は医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当、保健手当、介護手当若しくは葬祭料の支給に関する処分についての審査請求の裁決に不服がある者は、厚生労働大臣に対して再審査請求をすることができる。

(都道府県等が処理する事務)
第五十一条  この法律に規定する厚生労働大臣の権限に属する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県知事並びに広島市長及び長崎市長が行うこととすることができる。

(事務の区分)
第五十一条の二  この法律(第三章第五節、第六章及び第四十八条を除く。)の規定により都道府県並びに広島市及び長崎市が処理することとされている事務は、地方自治法第二条第九項第一号 に規定する第一号 法定受託事務とする。

(権限の委任)
第五十一条の三  この法律に規定する厚生労働大臣の権限は、厚生労働省令で定めるところにより、地方厚生局長に委任することができる。
2  前項の規定により地方厚生局長に委任された権限は、厚生労働省令で定めるところにより、地方厚生支局長に委任することができる。

(省令への委任)
第五十二条  この法律に特別の規定があるものを除くほか、この法律の実施のための手続その他その執行について必要な細則は、厚生労働省令で定める。

(罰則)
第五十三条  第七条に規定する健康診断、第九条に規定する指導又は第三十七条に規定する事業の実施の事務に従事した者が、その職務に関して知り得た人の秘密を正当な理由がなく漏らしたときは、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

第五十四条  第十条第二項各号に掲げる医療を行った者又はこれを使用する者が、第十七条第三項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定により報告若しくは診療録若しくは帳簿書類その他の物件の提示を命ぜられて、正当な理由がなくこれに従わず、若しくは虚偽の報告をし、又は第十七条第三項の規定による当該職員の質問に対して正当な理由がなく答弁せず、若しくは虚偽の答弁をしたときは、十万円以下の過料に処する。

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http://law.e-gov.go.jp/announce/H21HO099.html
原爆症認定集団訴訟の原告に係る問題の解決のための基金に対する補助に関する法律
(平成二十一年十二月九日法律第九十九号)

(趣旨)
第一条  この法律は、原爆症認定集団訴訟に関し、これを契機に原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(平成六年法律第百十七号)に基づく医療の給付を受けるための認定に関する見直しが行われたことを踏まえ、訴訟の長期化、被爆者である原告の高齢化等の事情にかんがみ、平成二十一年八月六日に関係者の間において行われた原爆症認定集団訴訟の終結に関する基本方針に係る確認の内容に基づき、原告に係る問題の解決のための基金に対する補助に関し必要な事項を定めるものとする。

(定義)
第二条  この法律において「原爆症認定集団訴訟」とは、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律第十一条第一項の認定の申請に係る却下の処分の取消しの訴えであって、平成十五年四月十七日から同日後同条第二項に規定する審議会等が当該認定に関する意見を述べるに当たっての新たな審査の方針が初めて定められた日の前日までの間に提起されたもの(同日までに取り下げられたものを除く。)をいう。

(補助)
第三条  政府は、予算の範囲内において、一般社団法人又は一般財団法人であって、原爆症認定集団訴訟の原告に係る問題の解決のための支援を行う事業(以下「支援事業」という。)を行うもの(次条において「支援事業実施法人」という。)に対し、支援事業に要する費用の一部を補助することができる。

(基金の設置等)
第四条  前条の規定により補助金の交付を受ける支援事業実施法人は、支援事業に関する基金を設けるものとし、同条の規定により補助を受けた金額をもって当該基金に充てるものとする。この場合において、当該支援事業実施法人は、支援事業に要する費用に充てることを条件として政府以外の者から出えんされた金額を同条の規定により補助を受けた金額に加えることができる。


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2011-08-24 : ・原爆症関連 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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原子力損害賠償法について検討してみます。(リンクはご自由に)
なお、引用部分以外は私(一応法律家)の意見ですので、判例・学説・実務等で確定したものではありません。他の考えでも裁判等で争い認められる余地があります。

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